紳士「恋愛、してみませんか?」 (62)


男「恋愛ですか?」

紳士「そうです、貴方が望むような恋愛、叶えてみませんか?」


あまりにも唐突な邂逅

だが、これはきっと夢に違いない

ならば断る理由もない


男「いいですね、恋愛」

紳士「それでは、契約成立ですね」

紳士「貴方を憧れの世界へお連れしましょう」



紳士「申し遅れました、私のことは――紳士――とお呼びください」



紳士「では、快適な恋愛生活をお楽しみください」



そう言って、紳士は去っていった


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―――――――――――――――――――――――――――
――――朝


男「……」

男「……やっぱり夢か」


男(こんな夢見るなんて……俺はどんだけ欲求不満なんだ……)

男(早く飯食って学校だな)


――――リビング

男(あれ、母さんも父さんも居ねえ)

男(手紙……?)


―――――――――――――――――――――――――――

男へ

しばらく旅行に行ってきます
留守にするけど、よろしく頼むね

      母・父より

―――――――――――――――――――――――――――



男(唐突過ぎんだろ……)

男(せめて前日に言ってくれ……)

男「妹ー!居るかー!」

返事はない

男「家ん中俺だけかよ……自分で作るか」


ピンポーン

男(こんな朝早くから客?)

ガチャッ

?「おっはよー!」

男「……」

?「朝ごはん作りに来たよー!」

男「……えっと、どなた?」


幼馴染「小学校からずっと一緒なのに……ヒドイよ!」

男(……まだ夢の中なのか……ならばそういうことにしておこう)

男「……そ、そうだったね」

幼馴染「そうだよ!……お邪魔しまーす」

幼馴染「それじゃあ、朝ごはん作るね」

男「よろしく頼む」


幼馴染が作った朝ごはんは格別だった


男「ごちそうさま」

幼馴染「それじゃ、学校行こっか!」

―――――――――――――――――――――――――――
――――学校 昇降口

幼馴染「じゃあ、また帰りね!」

男「……あ、ああ」


――――教室

男「なあ、友」

友「ん?どうした?」

男「俺には幼馴染がいるのか?」

友「毎朝一緒に学校に来てんだろ、自慢か?」

男「……今日の夢は長いな」


男「なあ、俺、欲求不満みたいなんだ」

友「そりゃ3年になった今でも彼女いない歴=年齢じゃしょうが無い」

男「……」

友「どうした?」

男「……俺は一生懸命勉強したんだ!!」

男「きっと高校ってもっと夢のある、まるでギャルゲのような世界なんだと!」

男「俺は……希望をもって死ぬほど勉強したんだ……」

友「なるほど」

男「だが現実はどうだ?宿題と部活ばっかりでそれどころじゃねえよ……」

友「まあ、忙しいわな」

男「あぁ……彼女欲しい」


友「だが、お前は1つ間違えをしている」

男「……?」

友「恋愛できてないのは、お前が忙しいからじゃない」

友「お前が単純にモテないからだ」


男「」


男「くっそ!それでもギャルゲの世界へ行きたい!」

友「そんな事言ってると余計モテなくなるぜ?」

男「」

男「いいよな、友は。最近女の子と仲良くやってるらしいじゃねえか」

友「ふふ、まあね」ニヤニヤ

男(死んでくれ)


?「ねえ、男くん、まだ進路希望表提出してないみたいなんだけど、持ってる?」

友「ああ、委員長さん、おはよう」

委員長「おはよう」

男「……い、委員長さん……?」

委員長「どうしたの?」



男(俺の知ってる委員長はメガネの真面目を絵に描いたような人間だ)

男(こんな髪が綺麗で清楚な美人じゃない)



男「い、いや、今は持ってないんだけど……」

委員長「そう?明日は持ってきてね?」

―――――――――――――――――――――――――――

友「お前、今日おかしいぞ?大丈夫か?」

男「……結構ヤバイかもしれない。顔洗ってくるわ」

――――洗面所

男「……夢が覚めない……」


紳士「それは夢ではありませんから」


男「うわぁああああああ」

紳士「そんなに驚かないでください」

男「……だ、誰?」

紳士「昨晩、お会いしましたね」

男「……も、もしかして、紳士さん」

紳士「そうです。どうですか?新しい世界は」

男「新しい世界……?」

紳士「世界は貴方が恋愛をしやすい世界へと変革されたのです」

男「だから、委員長さんも別人に……?」

紳士「その通りです。彼女も――攻略対象――ですから」

男「朝の幼馴染も?」

紳士「その通り、貴方には名ばかりの幼馴染がいますね」

男「……」

紳士「彼女も攻略対象ですから」

男「……まるで」


男「ギャルゲの世界へ来てしまったみたいだな」


紳士「簡単に言うとそういうことです」


男「そ、そんなベタな展開……」

紳士「しかし、貴方にとって、これが現実。紛うこと無きリアルなのです」


男「……俺にこれからどうしろよ?」

紳士「この世界をお楽しみください。それでは」


男(消えてしまった……)


男「教室へ戻ろう……」

ドンッ
誰かにぶつかった

?「す……すみません」

男「こちらこそ、すまん。怪我はないか?」

?「大丈夫です……、って、先輩じゃないですか!」

男「……?」

後輩娘「私ですよ、毎日部活一緒なのに忘れちゃったんですか?」

男(この子も変革された攻略キャラってことか?)

後輩娘「先輩に連絡があって来てあげたんですよ?」

男「ご、ごめんね」

後輩娘「いいです、今日の部活は自主練になりましたので、それだけです」

男「わざわざありがとう」

後輩娘「いえ、それでは」ニコッ


男(こんな可愛い後輩がいるなんて……幸せだな)


―――教室

男(次はどんな子がやってくるんだろう……)

?「おにーちゃーん!」

男「……誰か呼ばれてるぞー。」

?「ねえ、お兄ちゃんってばぁ!!」

男「……え?俺?」

?「そうだよ、寂しいから会いに来ちゃった!」

男(攻略キャラか……)

妹「ねえ、トランプしようよ!」

男(攻略キャラなら恐れることはない!)

男「いいぜ!早くやろう、スピード当たりでどうだ」

妹「いいね!そうしよう!」


男と妹は教室中の視線を集めながらトランプで遊んだ

―――部活

男(今日は自主練って言われたけど、一応来てみたが……)

後輩娘「あ!先輩!先輩も自主練ですか?」

男「ああ、一応素振りくらいはしようかと」

後輩娘「じゃあ、一緒にやりません?」

?「私も混ぜて欲しいなっ!」

後輩娘「あれ、女先輩、どうしたんですか?」

女先輩「遊びに来ちゃったっ!」

男「……俺が3年ってことは、大学生……?」

女先輩「そうだよっ!この前合格祝ってくれたじゃん」

男「……そ、そうでしたね」


男(ということは、あの三つ編みの地味っ子がこんなにナウいヤングに……)


女先輩「また大学で剣道続けようと思ってるんだけど、まだ道場開いてなくて」

後輩娘「じゃあ、一緒に素振りしましょう!」

女先輩「よし!鈍ってるけど頑張っちゃうぞー!」


男(女の子2人と練習……!幸せ!ギャルゲーバンザイ!)

―――昇降口

男(疲れたけど楽しかったなぁ……)

幼馴染「もう!遅いよ?」

男「あ、ごめん、待っててくれた?」

幼馴染「もう40分待ってるんだけど?」

男「すまん……」



男(夢にまで見た幼馴染との下校!)




―――自宅前

幼馴染「じゃあ、またね!」

男「またな!」


男(へへっ、俺って青春してるぅーー!!)

―――自室

男(やっぱギャルゲの世界って最高だな)

男(ようやく俺にも華のある生活が……!)



紳士「楽しんでくれているようで何よりです」


男「う、うわああぁあああああ」

紳士「もう慣れてください」

男「し、紳士さんか」

紳士「どうですか?新しい世界は」

男「楽しいよ。俺はずっと、こんな青春を待ち望んでいたんだ!」

紳士「それはよかった。一応今日で全員攻略キャラは登場しました」


男(幼馴染、後輩娘、女先輩、妹、委員長か)


紳士「どなたでも、お好きな人をお選びください」

男「えっと、これってギャルゲなんだよな?」

紳士「はい、そうです」

男「何度でもやり直したり出来るってこと?」

紳士「もちろん、一度クリアすればタイトルに戻ります」

男「また初めからやり直せると……ということは、好きなだけ青春できる!?」

紳士「貴方が望み続ける限り」

男「やったー!楽しむぞぉー!!」



妹『おにーちゃーん!夕ごはん出来たよー!』

男『今いくよー!』


紳士「それでは、私もお暇させていただきます」

――――食卓

妹「お兄ちゃん、美味しい?」

男「ああ、旨いよ!」

男(いつもは不味い妹の料理だが、変革した世界の妹の飯は旨い)

妹「たくさん食べてね!」

男「おう!」



男(どの子から攻略しよっかな……)


―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――
――――翌朝

幼馴染「おっはよー!今日も朝ごはん作るよ!」

男「おう、頼むよ」


妹「ねえ、お兄ちゃん!ダメだよ!私が作る!」

男「そうか、今日は朝から妹も居るんだ」


男(元の幼馴染も妹もこんなことしてくれない!)


―――――――――――――――――――――――――――

男(結局仲良く2人で作った)

男「美味しいよ」

幼馴染「よかったー、やったね、妹ちゃん!」

妹「ふふ!私の愛が入ってるからね!」

幼馴染「えー!なら私も……ううん、何でもないよ////」


男(か、可愛い)


妹「幼馴染さんには負けない。ねえ、お兄ちゃん、早く学校行こうよ!」

男「ああ、そうだな!」

―――――――――――――――――――――――――――
――――通学路

幼馴染「もう桜散っちゃいそうだね……」

男「そうだな……」

妹「お兄ちゃん、今度お花見でもしようよー」

幼馴染「いいね!しよっか!」

妹「幼馴染さんには言ってないんだけど」

男「まぁまぁ、仲良くしてくれ」


男(両手に華とはこのことか……)


後輩娘「あれ、先輩じゃないですか!」

男「ああ、おはよう」

後輩娘「楽しそうですね!私も混ぜてくださいよ!」

妹「えー!また増えるの?」

幼馴染「いいじゃない、……どうせ私には敵わないでしょうし」ボソッ

後輩娘「それでは、お言葉に甘えて」


男(華が両手に収まりきらない!ははっ!)



―――――――――――――――――――――――――――
――――昇降口

幼馴染「じゃあね、男くん!」

妹「ご飯作って待ってますね、兄さん!」

後輩娘「では、また部活で」

男「ああ、みんな、またね」


~~~~
~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

幼馴染「え?怪我しちゃったの?」

幼馴染「しょうが無いなー。これ、絆創膏あげる」

幼馴染「もう、泣いてたら男らしくないんだぞっ」




幼馴染「ひ、久しぶり、最近会わないね……」

幼馴染「はは……違うクラスだもんね」

幼馴染「え?うん……またね」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~
~~~~



?「……れ!」

?「これ!起きんか!」

男「……え?」

友「おい、男、起きろって」

男「ああ、俺、居眠りしちまって……」

先生「全く、疲れてるのは分かるが、ちゃんと起きておかんと知らんぞ」

男「は、はい。すみません」


男(夢……か……)

―――――――――――――――――――――――――――
――――昼休み

委員長「よいしょっと!」

男「あれ、委員長、どうしたの?」

委員長「ああ、この書類職員室まで持っていかないと行けないんだけど……」

男「結構量あるし、持って行くよ」

委員長「そう?スゴく助かる……!」


男「委員長も大変だね、毎回毎回、こんな風に」

委員長「ううん、これが仕事だから」

男「偉いと思う」

委員長「え?……あ、ありがとう……」ポッ


――――職員室

委員長「失礼しましたー」

委員長「ありがとう、すごく助かったわ!」

男「いいえ、どういたしまして」

委員長「えっと、男くん、お昼まだ?」

男「えっ、ああ、まだだけど」

委員長「あの、よかったらお礼にパンでも奢るから一緒に食べない?」

男「い、いいの?」

委員長「うん!ちょっとしたお礼。さ、行きましょ!」


男(女の子と一緒にお昼ごはん!ヒャッホー!ギャルゲー最高!)


ちょっと空けます

誰から攻略するか安価で

>>20

妹で

レスありがとうございます

妹から始めますね

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――――購買

男「女の子に奢ってもらうなんて、申し訳ないな……」

委員長「いいの。それが私の気持ち」

男「ありがとう……うん、美味しい」

委員長「それはよかった」ニコッ


男「あれ、友じゃん」

男(友が隣に女の子連れてる……)

友「ああ、男」

男「その子誰よ」

友「部活の後輩だよ」

後輩ちゃん「こんにちわ」

男「ほう、隅に置けないねぇ……」

友「そういうお前も委員長とは……まあ、お互い頑張ろうや、じゃあな」


委員長「……私達も昼食にしましょうか」

男「そうだね」


2人はベンチで並んで食事をした



―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――
――――教室

男(まさか、友が後輩の女の子と上手くやってるとは……)

男「なあ、友」

友「どうした」

男「付き合ってるの?」

友「いや……付き合ってるわけじゃないな」

男「ほう、でもその気はあると……?」

友「まあ、そういうことだな」

男「くっそー!俺も負けないからな!」

友「……昨日と……別人だな」

男「へへっ!俺も青春してるからな!」

友「……なるほど」


―――――――――――――――――――――――――――
――――部活

後輩娘「先輩!稽古お願いします!」

男「おう、いいぞ!」

男(今までは女の子にお願いされることなんてなかったのに……!)



女先輩「次は私とやろう」

男「え……先輩強すぎなんで……」

女先輩「そんなことじゃ強くなれないぞ?」

男「……ええ!頑張りますとも!」

―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――
――――自宅前

男(いやー、疲れたけど実にいい稽古だった)

ガチャッ

男「ただいまー!」

妹「あ!お兄ちゃん!お帰り!」

妹「ご飯にする?お風呂にする?それとも……」

男「あ、風呂で」

妹「ねえ!ちょっと!」

男「あはは、悪い悪い」

妹「もーっ!」

―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――
――――風呂

男(いやー、実にいい!実にいい世界だ)

男(女の子と一緒に昼ごはん!素晴らしい日だった!)


ガタッ

男「……?」

妹「お兄ちゃ~ん!入るよ?」

ガラガラ

男「おい!ちょっと待て!ちょっ」

妹「残念!もう入っちゃった!」

男「……」

妹「背中流してあげようと思って」


男(ちゃんとタオル巻いてるだけセーフなんだろうか……)


妹「ダメだった……?」

男「え、えっと……」

妹「あれ?それとも妹に欲情しちゃってるの?」

男「い、いや!断じてそれはないぞ!」

妹「ならいいじゃん!」


ジャバー


妹「お兄ちゃんの背中広いねー」

男(血の繋がった妹だ……絶対ダメだぞ!俺!)

妹「どうしたの?」

男(いや、これはギャルゲーだ。実際の妹はこんなことしない。ならば楽しめ!)

男「ん?何でもないよ」

妹「そっかー、どう?気持ちいい?」

男「ああ、ありがとう」

妹「ふふ……じゃあ私先に出てご飯作っとくね」

男「ああ、ありがとう」

妹「……またあとでゆっくり入ろっと」

―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――
――――自室

男「はぁ……妹と風呂に入ることになるとは……これが俺の夢だとしたら相当病んでるな」

紳士「お楽しみのようですね」

男「うわぁぁあああ」

紳士「もういいですよ」

男「……ああ、紳士さんか」

紳士「どうですか?決まりました?攻略する女の子」

男「んー、迷ってる」

紳士「実は、ギャルゲー同様、好感度メーターというものがございまして」

男「誰が一番好感度が高いかが分かるってことか」

紳士「左様にございます。このようになってます」


幼馴染   ■■■■■
妹      ■■■■■■■■■
後輩娘   ■■■
女先輩   ■■■■
委員長   ■■


男「妹が一番高いのか……」

紳士「初期値が予め高いキャラでしたから」

男「……うん、初めは妹からだな!」

紳士「そうですか。それでは明日もお楽しみください」



男「明日に備えて今日は早く寝よう」

男「明日も青春できるといいな……」

男「……ZZZZZ」


―――――――――――――――――――――――――――


~~
~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

妹「おにーちゃん!遊んでー!」

妹「次わたしが投げるー、えーい!」

妹「ねえ、お兄ちゃん!」



妹「あぁ……兄貴……」

妹「またソファーなんかで寝て……」

妹「毛布毛布……よし、これでよし」

妹「……風邪引くなよ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~
~~

―――――――――――――――――――――――――――
―――――翌朝

男「……夢か」

男「……今日は土曜日……もう少し寝よう」


ガチャッ

妹「お兄ちゃん!起きて!」

男「……今日学校休みだぞ?」

妹「一緒にお出かけしようよ!」

男「お出かけ?」


男(……初めは妹からだったな……)

男「わかった、行こう」

妹「ホントー?やったー!私朝ごはん作ってくるね!」


男(攻略のチャンスだな……)

―――――――――――――――――――――――――――
――――中心街

妹「久しぶりにお兄ちゃんとお出かけ♪」

男「その白いワンピース、似合ってるよ」

妹「そう?ふふ……ありがとっ」


男(……俺も伊達にギャルゲーばかりやってない)


――――洋服屋

妹「わぁー、たくさんあるね」

男「せっかくだからなにか買ったら?」

妹「そうだね……じゃあ、お兄ちゃんが選んで?」

男「あんまり期待すんなよ?」


チャリーン アリガトウゴザイマシター


男(結局、無難にカーディガンを買ってあげた)

妹「今から着ちゃおっかなー。値札取ってもらったし」


ガサゴソ


妹「どう?似合う?」

白のワンピースの上に薄いピンク色のカーディガン

男「……すごく可愛いよ」

妹「それ本心?」

男「ほんと、これはマジで可愛い」

妹「……あ、ありがと/////」

―――――――――――――――――――――――――――

―――――レストラン

男「注文決まった?」

妹「決まったけどさ……ねえお兄ちゃん?」

男「どうした?」

妹「私達さ、周りからどんな風に見えてるのかな?」

男「……」

妹「だって2つ違いだよ?……恋人と思われてたりして……!」

男「……だといいな」

妹「……え?」

男「いや、何でもないよ」

妹「……お兄ちゃん……」ポッ

―――――――――――――――――――――――――――


――――夕方 見晴台

妹「すごい……綺麗な夕日……」

男「綺麗だな」

妹「お兄ちゃん!今日はすっごく楽しかったよ!」

男「ああ、俺も楽しかったよ」

妹「お兄ちゃんがいれば……彼氏なんていらないな」

男「……」

妹「えと、なんていうか、お兄ちゃんが理想の彼氏ってことね///」

男「……ありがとう」

妹「……お兄ちゃん」

男「なんだ?」

妹「お兄ちゃんはさ、私の事、どう思ってる?」

男「……」


男(これは……ギャルゲーで言うところの、ルート分岐かな)

男(しっかり答えねば……!)


男「俺はお前のこと、好きだよ」

妹「……ホントに?」

男「ああ、でも血が繋がってるから、どうしようかと思ってな」

妹「……」

男「……どうした?」

妹「……ねえ、なんでそんなこと言うの?」

男「何が?」

妹「……私達、血が繋がってないの、知ってるでしょ?」



男「……へ?」

妹「私達、別々のお腹から産まれてるんだよ?」

男「いやいや、いきなり何を言うんだ。俺はお前が産まれて間もない時から知ってるぞ?」

妹「ヒドイよ……そんな嘘つくなんて」

男「は?だって、俺、お前が産まれた時病院まで行って……」

妹「……私、先に帰るね」

ダダッ


男「おい!待てよ!」

男「……どうなってんだよ……」



紳士「お困りのようですね」

男「……ああ、どうなってんだ」

紳士「そうですねー。言うならば世界の変革の一部ですよ」

男「妹が、俺と血が繋がってないって……」

紳士「この世界ではそういう設定なんです」

男「じゃあ、今までの、俺と血が繋がってる妹はどこ行ったんだよ?」

紳士「……さあ、どこでしょう?」

男「おい!はっきり答えろ!」


紳士「それでは、私はこのへんで」スッ

男「まだ話は終わってないぞ!」


男(……消えちまった)

―――――――――――――――――――――――――――
――――自宅

男「……ただいま」

母「あら、男、今帰ったの?」

男「え?もう旅行終わり?」

母「ずっと家放っておくわけにも行かないし、帰ってきちゃった」

男「そ、そう……」


?「おや、男くん、おかえり」

男「……」

?「ん?どうした?」

男「……おっさん、誰だよ」

?「お、おっさんかぁ……」

母「こら!お父さんに失礼でしょう!」

父「頑張ってお父さんになるって決めたんだけどなぁ……」

男「……これも世界の変革か……」

父「どうした?」

男「……親父……」



―――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――
――――自室

男(妹は部屋に篭ったまま出てこない……)

男(俺の本当の妹は……どこなんだ……)

男(……疲れた、もう寝よう……)

―――――――――――――――――――――――――――



~~
~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

後輩娘「あっ、初めまして、よろしくお願いします」

後輩娘「こ、こうですか?参考になります!」

後輩娘「今日、部活ですね!」



後輩娘「……先輩……」

後輩娘「私、強くなりますから」

後輩娘「ずっと、見ててくださいね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~
~~


―――――――――――――――――――――――――――
――――翌朝

男「今日は部活か……」

男(昨日のことがあるからな……どうしたもんか)

男(せめて妹に、挨拶くらいしてから行くとしよう)


妹の部屋の前


男「なあ。昨日はごめんな。俺ちょっとおかしかったわ」

「……」

男「じゃあ、部活行ってくるな」

「……」


―――――――――――――――――――――――――――
――――道場

後輩娘「あ!先輩、おはようございます!」

男「……おはよう」

後輩娘「……どうかしたんですか?」


男(この子も……変革で昔の後輩娘とは違う。別人なんだ……)


男「なあ、俺のこと……嫌いか?」

後輩娘「え?そ、そんなことないですけど……むしろ……」

男「……俺が君に怒ったことあるの、覚えてる?」

後輩娘「……」

後輩娘「……す、すみません。全く記憶にないです……」

男「いや、いいんだ」


男「……」

―――――――――――――――――――――――――――


男(俺は彼女に、試合の時、厳しく怒ったことがあった)

男(負けたことを審判や先生のせいにしていた彼女を、怒鳴りつけてしまった)

男(今思えば、それから彼女に話しかけられたことはない)

男(完全に、嫌われてしまったに違いない)


女先輩「おや、男くん、悩み事かね?」

男「ああ、先輩……」

女先輩「人生の先輩である私が話を聞いてあげようじゃないかっ!」

男「……」


男(昔の先輩は、地味だけど優しかった)

男(明るくはないけど、強くて、俺がスランプの時必死で悩んでくれた)

男(……先輩……)


男「いや、何でもないんですよ。ホントに」

女先輩「そうかい?何かあったら遠慮なく言ってよ?」

男「はい、ありがとうございます……」


男「……」

―――――――――――――――――――――――――――
――――自宅

男(はぁ……)

男(シャワー浴びたし、妹の所にちゃんと謝りにいくとしよう)


――――妹の部屋前

男「なあ、起きてるか?」

「……」

男「昨日は本当にすまなかった。俺、ちょっと具合悪くてな」

「……」

男「できれば開けてほ……」

ガチャッ

妹「……体調悪いの?大丈夫?」

男「……ああ、大丈夫だ」

妹「いいよ、入って」

男「ありがとう」

―――――――――――――――――――――――――――


妹「私……4年前に親が離婚して、父さんに引き取られて」

妹「すごく、寂しかったんだ……」

妹「それで、去年お父さんが再婚して……お兄ちゃんが出来た」

男「……」

妹「新しいお母さんも優しくて、お兄ちゃんもすっごく優しくしてくれて」

妹「今、とっても幸せ」

妹「……私、お兄ちゃんのこと、大好き」

妹「もちろん、その気持ちは、兄として大好きってことなんだけど」

妹「血が繋がってないこと、ずっと気にしてた」

妹「だからね……ちょっとショックだった」

男「……ごめんな」

妹「ううん、悪気があったわけじゃないだろうし、いいよ」


男(この妹には、これまで――親が再婚してから――の記憶というものがある)

男(その記憶は一体……)

男(どこから持ってきたのだろうか)


男「大丈夫、お前はずっと、俺の大切な妹だ!」

妹「……お兄ちゃん……」


男「もし、許してもらえるなら、また明日から一緒に登校しよう」

妹「……」

妹「……うん、こちらこそごめんね」



男(一応この件は解決かな……)


―――――――――――――――――――――――――――
――――自室

男「……」

男「なあ、居るんだろ?」


紳士「お呼びでしょうか?」


男「この世界は一体なんなんだ……」

紳士「何なのか、と聞かれても的確な答えは持ち合えわせておりません」

男「……どうすればこの世界は元に戻るんだ……」

紳士「ほう。元の世界に戻したいと……?」

男「……ああ」

紳士「初めはあれほど喜んでいらしたのに」

男「こんな世界……どうかしてる」

紳士「そうですか……」

男「おい、教えろ」

紳士「そうですねぇ……」

男「おい!いいから教えろ!!!」

男は紳士の胸ぐらを掴み持ち上げた

紳士「おやおや、それは流石に反則ですね」


男(……急に眠気が……)

紳士「それでは、ヒントをお教えしましょう」

紳士「クリアすれば、タイトルに戻れる、ということです」

男「……クリア……」


「それでは、良い夢を……」

―――――――――――――――――――――――――――


~~
~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

女先輩「あ、新入り君?」

女先輩「もっと腰を入れて打ったほうがいいよ、そうそう」

女先輩「なかなか……いいんじゃないかな」



女先輩「卒業、祝ってくれてありがとう」

女先輩「実は君に助けられたことも多い」

女先輩「いつかまた、稽古しよう」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~
~~

―――――――――――――――――――――――――――
――――翌朝

男「……」

男「……くそ、あの紳士……」


男「……クリアすれば、タイトルに戻れる」

男「……なるほどな」


――――自宅前

幼馴染「おっはよー!」

男「おはよう」

幼馴染「今日はもうおじ様とおば様がいらっしゃったのでご飯は作れませんでしたね」

男「そうだな、毎日楽しみにしてたのに」

幼馴染「えっ、ホント……?嬉しい」


妹「ちょっと、イチャイチャしないでもらえる?」

幼馴染「あら、妹ちゃん、おはよう」

妹「ふんっ!」


男(なんだか、以前に増して幼馴染を敵視してるな……)


妹「ねえ、お兄ちゃん、早く行こっ!」

男「ああ、待てって」

幼馴染「置いて行かないでよー!」


―――――――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――――――――――――――
――――教室

友「よう!おっはよう!」

男「おはよう……なんだか元気そうだな」

友「ふふ、女の子と上手くいってるものでね」

男「俺も一歩進んだ感じだ」

友「ん?委員長?」

男「いや、そうじゃないんだけどな」

友「じゃあ幼馴染ちゃん?」

男「いや」

友「まさか、妹ちゃんじゃあねえだろうなぁ?」

男「……ははっ」

友「図星なのか……」


委員長「あら、おはよう、男くん!」

男「……お、おはよう」

委員長「なんだか元気ないみたいね」


男(昔の委員長には、よく勉強教わったな……)

男(今も言ったら教えてくれるだろうけど、それは違う気がする)


男「あれ、また荷物運び?」

委員長「……うん、そうなの」

男「半分持つよ」

委員長「またやってもらうなんて悪いよ……」

男「いいって、ほら」

委員長「じゃあ、お言葉に甘えて……」



―――階段

男「委員長はさ、昔のこと、覚えてる?」

委員長「昔って?」

男「俺と初めて話したこと」

委員長「……うん、覚えてるよ。私が教科書忘れた時、貸してくれたよね」

男「……」

委員長「でも同じ教室で同じ授業なんだから貸したら男くんの分、無くなっちゃうよねって」

男「……」

委員長「あの時からかな、男君のこと、面白いなーって思ったの」


男(……彼女がいってること)

男(俺が教科書を貸したなんて事実)

男(俺の記憶には一切存在しない)

男(記憶の捏造……だよな)


ガタッ

委員長「あ!危ない!!」


ドタドタドタ

男は階段を踏み外した

―――――――――――――――――――――――――――


~~~
~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

委員長「えっと、ここがわからない?」

委員長「これはね、こっちを先に括ってから計算すると楽だよ」

委員長「……どういたしまして」



委員長「男くん、私、教えること、楽しいよ」

委員長「……教師になろうと思うの」

委員長「夢、見つけてくれたの、男くんかもね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~
~~~



―――――――――――――――――――――――――――

男「……」

男「ここは……保健室?」

委員長「あ!やっと目がさめたんだね……!」


男「……柔らかい枕……だと思ったら、膝枕……?」

委員長「……私の責任だから」

男(膝枕とか人生初だぞ……柔らけぇ……)


男「えっと、俺は階段を踏み外して……」

委員長「そうだよ……もうびっくりしたんだから!」

男「ごめんよ。かえって迷惑になっちゃったね」

委員長「そんなことないよ。でも今度からは無理しないでね」

男「……ああ」


―――――――――――――――――――――――――――


―――――――――――――――――――――――――――
――――自宅

妹「お兄ちゃん!階段から落ちたって本当!?」

男「……でももう大丈夫だよ」

妹「はぁ……ホントに心配したんだからね!」

男「悪かったよ」


男「なあ」

妹「何?お兄ちゃん?」

男「後で部屋行っていいか?」

妹「……いいよ」


―――――――――――――――――――――――――――
――――妹の部屋

男「……」

妹「……」

男「……結構真剣な話なんだ」

妹「なに……?」

男「俺は、お前のことが……好きなんだ」

妹「……妹としてってことでしょ?」

男「いや、そうじゃないんだ」

妹「……女の子としてってこと?」

男「そうだ」

妹「……そんな、いきなり言われても困るよ……」


男「お願いだ!付き合ってくれ!」

妹「……お兄ちゃん……」

男「だめか?」

妹「……」

男「なぁ?」

妹「……」

男「……あれ?」


男(どうなってるんだ、妹が動かない)

男(……壁の時計も止まってる……!?)



紳士「いささか、早足ではありませんか?」

男「……やっぱりお前か」

紳士「きっとこのまま進めれば、妹さんは、貴方の告白に対して頷くでしょう」

男「……」

紳士「そして貴方はこのゲームを終了する」

男「……ああ」

紳士「本当にそれでいいのですか?」

男「……」

紳士「この素晴らしい世界を貴方は永久に生きる権利を有しているのです」

紳士「それを、いとも簡単に捨てると」

男「……」

男「人の気持ち弄びやがって……!」

男「新しく変革された女の子にはそれぞれ新しい記憶があった」

紳士「ええ、そうですね」

男「お前はそんな事実どうやって作ったんだ……」

紳士「そんなもの、簡単なことですよ――そういうプログラムですから――」

男「……プログラム……!?」


紳士「私が開発したプログラムですから……」

男「そんなもの、何のために……」

紳士「企業秘密としておきましょう」

男「……あの子達の優しさも、笑顔もプログラムなのか……?」

紳士「……」

男「……それでも、俺はこのゲームをクリアする」

男「こんな世界、終わらせてやる」

紳士「そうですか……それは残念です」

紳士「それでは、時間を再び再生しましょう」

紳士「では……」

紳士「最後のひとときをお楽しみください……」


―――――――――――――――――――――――――――










―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――

男「……ここは……」


「お兄ちゃん!ずっと一緒にいようね!!」


男「……クリアした……のか……」


幼馴染「おめでとう、男くん」

男「……幼馴染……?」

後輩娘「おめでとうございます、先輩」

女先輩「おめでとっ!男くん!」

委員長「おめでとう、男くん」


男「……ここはどこなんだ……」


紳士「エンディングです」



紳士「貴方は無事、エンディングを迎えた」

紳士「だから今までの登場キャラを総出演と、言うわけですね」

男「……みんな……」

男「なあ、紳士」

紳士「なんでしょう?」


男「もし世界が戻ったら、あの子達はどうなるんだよ……」


紳士「もう世界には不要な成分ですから……消えるでしょうね」

男「……嘘だろ……」

男「……みんな……」


男「なあ!みんな!聞こえるか!」

男「俺、絶対みんなのこと忘れないから!」

男「世界が元通りになっても!忘れないから!」



紳士「そろそろエンディングが終わります」

男「……ああ」

男「さようなら、みんな」

―――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――――――――

男「……」

男「ここがタイトルか……」

男「……選択肢が並んでる」


男「最初から」

男「続きから」

男「……ゲームを終了する」



男「……これで終わりか」

男「じゃあな、みんな」



――――――ゲームを終了する

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―――――――――――――――
――――――――
――――



―――――――――――――――――――――――――――

男「……朝か」

男「今日も1日、頑張るとしよう」


男「おはよう、妹よ」

妹「ああ、おはよう、兄貴」


―――――――――――――――――――――――――――

男「おはよう、友」

友「……!」

男「……どうかしたのか?」

友「俺、やっと……やっと……!」

男「どうしたんだよ」

友「やっとクリアしたんだ……元に戻った……!」

男「何をわけの分からんことを」

友「昨日やっと告白して、ゲームをクリアしたんだ!」

男「またわけの分からん恋愛ゲームの話か」


友「……やっぱり俺の知ってる男はこの男だよな!」






―――――今の貴方は



―――――――本当の自分だと、自信を持って言えますか?







おわり

く~疲(ry

テーマは「今日の自分は昨日の自分であると言えるのか」でした

やっぱり女の子との恋愛を描くのは非常に苦手です
想像とだいぶ違ったエンディングだったら嬉しい反面、ごめんなさい

もっと女の子を可愛く描けるようにしたいところです

それでは、読んでいただきありがとうございました

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