霖之助「今、春が来て君は」 (57)

注意
>>1はこれが初作品です。また、東方も香霖堂を読んだ以外は全て二次創作などで得た知識です。
魔翌理沙×霖之助の要素を含みます
やおい(山なし意味なしオチなし)です
それでもよろしければ、しばしのお付き合いお願いいたします。


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三月に入ってから、ストーブを焚く頻度も減ってきた。この分だと春はもうすぐだろう。
こんな日には窓から入って来る明りで本を読むに限る。

――カランコロン

そう考えた途端、白黒の人影が店の中に入ってきた。

魔翌理沙「おっす香霖、邪魔しに来たぜ」

霖之助「……それは商売の邪魔か?それとも読書の?」

魔翌理沙「どっちもだぜ」

霖之助「まったく……」

悪びれもせず言い放つ魔翌理沙、いっそ清々しいとでも言うべきか。

魔翌理沙「相変わらず辛気臭い顔だな香霖は、そのうち黴でも生えてくるんじゃないか?」

霖之助「辛気臭くて結構。それより何の用だ?」

魔翌理沙「用が無いと来ちゃいかんのか?」

そんな事を言いながら魔翌理沙は、机の前に椅子を引っ張り出して来た。

魔理沙「ん?」

机の上にはこの間拾って来た道具が幾つか置いてあった。
その中の一つに、魔理沙は興味を示したようだ。

魔理沙「なぁ香霖、この道具は?」

霖之助「それかい?それは『ラジオカセットレコーダー』と言うらしい、用途は音を再生する物だそうだ」

魔理沙「この道具が音を出すのか?うんともすんとも言ってないじゃないか」

霖之助「ああ、どうやらこの道具単体では音を出せないらしいんだが……」

魔理沙「例によって使い方が分らない、って訳か」

霖之助「そう言う事だな」

>>3 ありがとうございます

まったく、道具なんて用途が分れば使い道は何とかなる。と考えていたが、そろそろ改めるべきかもしれない。

魔理沙「まったく、これじゃあただのガラクタだぜ」

霖之助「返す言葉もないよ」

魔理沙の呆れたような声に、僕は肩をすくめながら答えた。

魔理沙「うーむ、どうすれば音を出すんだろうなコイツは」

そう言って魔理沙は、机の上に置いてあったそれを持ちあげた。

魔理沙「む、意外と重いな。中に何か詰まっているのか?」

霖之助「そうらしい、もしかしたら音を鳴らす仕組みが入っているのかもしれないな」

魔理沙「振っても何も言いやしない。面白そうだと思ったけど、使い道が分らないのなら意味がないぜ」

ゴトッと机の上に道具を置くと、魔理沙はつまらなそうに口をとがらせた。

アンカーをするときは不等号だけではなく数字も半角にするといい

>>6 重ね重ねありがとうございます・・・

それからしばらく、魔理沙は店内の商品をあさったり、僕のお気に入りの本を見つけ出しては文句を言ったり。
まぁつまりは、いつも通り過ごしていたのだが。

魔理沙「ああ、そうだ。もしかしたらこの店のガラクタの使い方が分るかも知れん奴がいたな」

唐突にそんな事を言いだした。
  
霖之助「本当かい?」

魔理沙「本当だぜ」

魔理沙はよく嘘をつく、この間も幻覚の見えるキノコを食わされて大変な目に会った所だ。

魔理沙「むぅ、その目は信じていないな?」
 
霖之助「君はよく嘘をつくからね、あまり信用できん」

魔理沙「まったく……困った奴だな香霖は」

霖之助「困った奴は君だろう?どの口が言うんだ、どの口が」
 
魔理沙「私のこの可愛らしいお口だぜ」

霖之助「そう言う事を聞いているんじゃない」

魔理沙「まぁいいや、それでこのガラクタの使い道が分る奴の話なんだが」
 
相変わらず人の話を聞かない魔理沙は、先ほどの話の続きを始めた。
 
魔理沙「お前も、守矢神社くらい知っているだろう?」
 
霖之助「ああ、だいぶ前に、天狗の新聞に載っていたな」
 
なんでも一晩にしていきなり湖と神社が現れたという話だ。その時には魔理沙も霊夢もどたばたとしていたので覚えている。
 
魔理沙「その守矢神社はな、元々外の世界の神社だったんだよ」
 
霖之助「ほう?」
 
魔理沙の話を纏めるとこうだ。
守矢神社は元々、由緒正しき神社であったらしい。
だが信仰が思うように集まらなくなってきたため、近くの湖ごと幻想郷(ここ)に引っ越してきたという。

魔理沙「早苗たちは元々外の世界の住人だからな、ここのガラクタの事も分るかもしれないぜ?」

霖之助「ふむ、それもそうだな」

言われてみればしばらく前、霊夢が守矢がどうだとか言って騒いでいた、

期待

速報で霖之助さんssが読める日が来るとは思わなかった

期待

どうやら今回の話は本当らしい。
その早苗さんとやらに来てもらえれば、もしかしたら店の商品の使い方もわかるようになり、この店も繁盛するかもしれない。

魔理沙「おっ、やっと信じたな」

ぶぅぶぅと文句を言っていた魔理沙が詰め寄ってきた。
はて、僕はそこまで表情に出すような性格ではなかったが……。

魔理沙「香霖の考えている事くらいお見通しだぜ!何年一緒にいると思ってるんだ?」

霖之助「さて、何年だったかな?」

だが、言われてみればそうである。
魔理沙は物心付いた頃から、よく香霖堂(うち)に遊びに来ていた。
彼女にしてみれば、生まれた時から一緒にいるような物だろう。

魔理沙「む、適当な反応だな、失礼しちゃうぜ……でも、私と香霖の仲だ、今度紹介してやろう」

霖之助「まぁ、そこそこ期待して待たせてもらうよ」

なんだか近頃、霊夢の気まぐれが魔理沙にも移ってきた気もする。
とりあえず、気長に待たせてもらうとしよう。

>>11 >>12 ありがとうございます!
とりあえず、一応出だしの部分、序破急の序が終わった所なので
本日の投下は此処までとさせていただきます。
ご質問等、ご指摘等がございましたら遠慮なくお願いします。

ms・・・
>>10 >>11 の方たちでしたね・・・orz

これでいいんですかね?

ほっ……よかった
あ、今のうちに予告しておきますが、そんなに長い話じゃありません
長くても1週間程度で終わるかと

どうも、>>1です
これから本日分、投下いたします

それから二、三日後。
三寒四温とは言ったもので、この間までの温かな気候はなりを潜めて、雪もちらつき始めた。
こういう日はストーブと明りを点けて、読書をするに限る。

――カランコロン

??「すいませーん。ここが、こうりんどう?でいいんですよね?」

そう考えた途端、緑の人影が店の中に入ってきた。
なんだか最近似たような事があった気がするが……

霖之助「いらっしゃい。ええと、この店は初めてかな?」

??「はい、魔理沙さんから話を聞いて来ました」

霖之助「魔理沙から?」

??「はい!あ、申し遅れました。私は守矢神社の風守、東風谷 早苗と申します」

そう言って早苗は深々とお辞儀をした。どうやら魔理沙や霊夢と違って礼儀正しい子らしい。

霖之助「そうか、君が外の世界から来たって話の」

早苗「はい……そういうあなたは、もしかして、こうりんさんですか?」

霖之助「ああ、その名前は魔理沙がつけたあだ名みたいなものさ」

霖之助「僕の名は、森近 霖之助。この『香霖堂』の店主さ。宜しく頼むよ」

どうやら魔理沙は思いのほか早く伝えてくれたらしい。忘れられていなくて何よりだ。

早苗「それで、外の世界の道具を集めているんでしたっけ?」

霖之助「厳密に言えば外の世界の道具“も”だけどね。集めたはいいが使い方が分らなくて困っていた所なんだ」

自分の非を認めるのは少し癪だが、背に腹は代えられない。
今回の所は、彼女を頼るとしよう。

早苗「そうなんですか……それにしても色々ありますねぇ」

物珍しそうな表情で、店内を見回す早苗。店主としては非常に有難い反応だ。

霖之助「どうだろう?見覚えのある物なんかあるかい?」

早苗「そうですねぇ、結構ありますけど……あ」

早苗が目を留めたのは、この間拾って来た『ラジオカセットレコーダー』だった。

霖之助「これかい?」

早苗「ラジカセですね!」

どうやら外の世界ではラジカセと略して言うらしい。

霖之助「確か音を再生する道具らしいが、他にも何か必要みたいなんだ。心当たりはあるかい?」

早苗「えーっと、こういうタイプのラジカセはどこかに電池を入れる所がある筈なんですけど……」

霖之助「電池?」

早苗「はい、乾電池っていって、あの、金属でできていて細長い形をしたものです」

ふむ、確か時々そんな名前の物が流れついていた。
大きさや形が少し違ったが、纏めて入れておいた筈だ。

霖之助「ちょっと待ってくれ……コレの事かい?」

早苗「はい、そうです。えっとどこかにそれを入れる所がある筈なんですけど」

そう言いながら、早苗はラジカセを持ち上げてあちこちいじり始めた。

早苗「あっ、ありました!ここの蓋を開けて……」

ラジカセの底の部分にあった蓋を開き、早苗は太い乾電池を幾つかはめ込んだ。

早苗「これで使えるようになる筈です」

そう言って早苗はラジカセについてあるボタンを押したのだが……

霖之助「音が出るには出るが、ザーッという音しか聞こえないね……これはこういう道具なのかい?」

早苗「あうぅ……ラジオは電波がないから付けても意味はありませんでしたね」

霖之助「ラジオ、というのは?」

『ラジオカセットレコーダー』というのがこの道具の名前だったが。

早苗「あ、ラジオって言うのは……なんて説明すればいいんでしょうか、声や音楽を電波にして届ける物で……」

霖之助「電波、ねぇ」

とにかく、このラジカセは幻想郷では使い物にならないのだろうか。

早苗「あ、でもカセットテープがあれば音楽を聴けますよ」

霖之助「ふむ、電池の次はカセットテープと来たか……確かそれも流れて来たな、済まないがまたしばらく待ってくれ」

掌に載るくらいの大きさで、二つの穴があり、何か文字が書いてあるあの妙な板。
確かそんな名前で、用途は『音を記録する』だったか。

霖之助「よし、これでいいのかな?」

早苗「はい、それです!……えーっと、どれがいいかなぁ」

しばらく早苗はカセットテープの入った箱を漁っていたが、そのうち一つ取り出すとボタンを押してカセットテープをラジカセの中に入れた。

早苗「今度こそ、これでいい筈ですよ!」

ややあって、ラジカセから音楽が聞こえ始めた。


 あなたは もう 忘れたかしら
 
 赤い 手ぬぐい マフラーにして
                ♪

霖之助「おお!」

コレは実に興味深い。

早苗「あははっ、成功しました!」

霖之助「ああ、ありがとう……何かお礼をするべきだね」

一方的に恩恵を受けるだけでは商売人の名折れだ、彼女にはしっかりとお礼をしなくてはなるまい。

早苗「あっ、それでしたら……」

霖之助「何だい?」

早苗「霊夢さんのお祓い棒や、魔理沙さんのミニ八卦炉って霖之助さんが作ったんですよね?」

霖之助「ああ、そうだよ?特にミニ八卦炉は僕の自信作でね……」

早苗「でしたら!私にも同じような物をお願いしたいです!」

霖之助「だったら、どんな物がいいかい?出来るだけ要望を聞くよ?」

早苗「そうですねぇ、まず……」

しばらく早苗のリクエストを聞いていたが、中々大変な物になる予感がする。
ボタン一つで色々な物に変形するお祓い棒……僕としても腕が鳴りそうだ。

霖之助「話し続けて少し疲れたろう?今、お茶を淹れよう」

早苗「ありがとうございます」

霖之助「待っている間、店内の物を自由に見るといい。一つくらいだったら、サービスするよ」

さて、まずはお湯を沸かさなければ。

霖之助「さて、お茶が入ったよ」

早苗「あ、すいません」

霖之助「今、お茶請けを持ってくるよ」

さて、確か上等な饅頭が棚にあった筈だが……

  ガラリ

[このお饅頭ツケで頂くわよ 霊夢]

  パタン

霖之助「はぁ……また霊夢か」

霖之助「すまないね早苗、どうやら霊夢が食べてしまっていたようだ」

早苗「あ、はい……」

思ったよりさらりとした返事が返ってきて拍子抜けしていると、早苗は柱を見ながら僕に質問をしてきた。

早苗「あの……この柱、傷が何本か入っているんですけど、これって?」

霖之助「ん?ああ、よく気づいたね。それは魔理沙と霊夢の背比べの痕さ」

小さな頃、魔理沙と霊夢はよく背比べをしていた。
魔理沙は小柄な事を気にしていたから、霊夢に負けては悔しがっていたものだ。

早苗「そんな事があったんですねぇ……霊夢さんたちと、仲がよろしいんですね」

霖之助「何、腐れ縁のようなものさ。特に魔理沙の事は、彼女が生まれたころから知っているよ」

母親の腕に抱かれて、スヤスヤと眠っている魔理沙の姿は、いまでも覚えている。
考えてみれば、魔理沙も成長したものだ。

早苗「へぇ……小さい頃のお二人のお話、もっと聞きたいです!」

霖之助「そうだね、お茶請けの代わりと言っては何だが、覚えている限りでいいなら話すよ」

こちらで本日の分は終了です
ご質問、ご指摘がございましたらどうぞ。
ちなみに早苗はこの後登場する予定はございません。



>>22
風守ではなく風祝では?

>>32
あっ……失礼しましたorz

あ、言い忘れていましたが
次の投下はもしかしたら二、三日後になるかもしれません。

どうも、こんばんわ>>1です
どうにか本日分を投下できそうなので、今から投下しようと思います。
あと、できれば本編が終わった後も、小ネタ的な物を出来ればいいな、と思っております。

早苗が店に来るようになって、しばらく経った。
僕はと言うと、ラジカセを使って音楽を流しながら読書をするのが日課になっている。
さて、今日はどのカセットにしようか。

――カランコロン

……なんだか最近、読書しようとすると誰かがやって来る気がする。

霊夢「霖之助さん、いる?」

霖之助「霊夢か、この間はまたやってくれたね」

霊夢「何の事かしら?」

霖之助「棚にあった饅頭、食べただろう?」

饅頭の代わりに入っていた手紙を突き出しながら言っても。

霊夢「ああ、アレね。ツケといて、その内返すわ」

いつものこの調子だ。

霊夢「それより、何それ?」

霖之助「ああ、これかい?これはラジカセと言ってだね」

霖之助「外の世界の道具で、音を再生する事が出来る道具だ」

霊夢「へぇ…面白そうね。どうやって再生するの?」

霖之助「この『カセットテープ』をセットして使うんだ、色々あるから一つ選ぶといい」

僕がカセットテープが入った箱を指さすと、霊夢はその中をしばらく漁っていたが。

霊夢「この『かぐや姫』って奴にしましょう、最近本人にあったばかりだし」

霖之助「多分彼女とは関係ないと思うがね……」

早苗に教えてもらった通りに、カセットをセットしてスイッチを入れる。
しばらくすると、ピアノとギターの音色が流れてきた。


 汽車を待つ君の横で 僕は時計を気にしてる
         
    季節外れの雪が 振ってる
                    ♪ 

霊夢「へぇ、本当に音が出るのね」

失礼な事に、どうやら信用していなかったらしい。

霖之助「ああ、この間早苗が来てね、使い方を教えてもらったんだ」

霊夢「早苗が?」

霖之助「ああ、魔理沙が紹介してくれたそうだ」

霊夢「そう言えばこの間守矢神社に行っていたわね」

いつの間にか勝手気ままにお茶を入れていた霊夢は、お茶を啜りながら応えた。

霖之助「お礼に彼女にも何か作ってあげる代わりに、これからもここに来てくれるそうだ」

霊夢「何を作るつもり?」

霖之助「彼女からのリクエストがあってね、これが中々骨が折れそうな依頼なんだ……」

そう前置きして、早苗からの依頼の内容を説明しようとした時、
ラジカセから流れてきた歌の歌詞が、僕の耳に留まった。


  時が行けば 幼い君も

 
 大人になると 気づかないまま               
               ♪


霖之助「……」

霊夢「霖之助さん?」

霖之助「え?あ、ああ。すまないね、霊夢。まず最初にお祓い棒の形にしてほしいと言う話で……」

霊夢に話しかけられて、ふと我に返った。

霊夢「どうしたのよ霖之助さん?急に黙りこんだりして」

霖之助「いや、何でも無いよ……」

何でも無い筈だ、多分……おそらく、きっと。

本日の分はこれだけになります。
多分次回で終るかと……
質問ご指摘、またここまで見た所の感想などございましたらどうぞ。

拙作なれども、もうしばらくお付き合いお願いします。

どうもお久しぶりです>>1です
一週間とか抜かしておきながらかなりの時間をかけてしまい
誠に申し訳ございませんでした

今回の投下で、ひとまず最後とさせていただきます
それではもうしばらく、お付き合いお願いいたします

四月に入り、暖かい日が続いていた。
桜もだんだんと咲いてきている、そのうち魔理沙が帽子の上に花びらを載せてやって来るだろう。

霖之助「……」

だが僕は、外の桜には見向きもせず、先ほどからずっと同じ曲をリピートして聴いていた。

霖之助「なごり雪も 降る時を知り ふざけ過ぎた 季節の後で……」

ここしばらく、気づけばこの曲を聴いていた。
何故だろうか。

霖之助「……分りきった事だな」

あの曲の中で、男はいつの間にか大人になっていた女性に別れを告げていた。

霖之助「今、春が来て君は……」

ふと、立ち上がって柱に刻んだ傷を撫でる。
僕の膝のあたりから徐々に登ってゆく傷の位置は、腰のあたりで途切れていた。

霖之助「……」

僕の脳裏に浮かぶのは、ある少女の半生だ。
考えてみれば、あの頃からどれだけ経つのだろうか。

――カランコロン

魔理沙「おーっす香霖!いるか?」

霖之助「やあ、魔理沙か」

噂をすれば影、という奴か。

魔理沙「ん?何だよ香霖、また懐かしいモン見てるじゃないか」

霖之助「ああ、少し昔を思い出していてね……」

魔理沙「なんだよ、いつもに増して辛気臭いな、過去を振り返るだなんて」

霖之助「たまには昔の事を思い返すのもいいじゃないか」

魔理沙「私は、あの頃よりもずっと大きくなったぜ?」

魔理沙は、僕の目の前に立って見せる。

霖之助「ああ、本当に大きくなったね」

本当に、ずいぶんと成長したものだ。

魔理沙「…珍しいな、香霖が私の事にすぐ頷くだなんて」

霖之助「そうかい?」

魔理沙「いつもだったら私の事を子供扱いしてくるぜ」

霖之助「心情の変化って奴さ」

魔理沙「ふぅん」

そのうち魔理沙は、いつものように店をあさったり、最近の事を話し始めた。

魔理沙「……でなぁ、その時の霊夢ったら傑作だったぜ」
 
霖之助「ほう、あの霊夢がうろたえると言うのは中々の事じゃないか」

魔理沙のする他愛もない話を聞きながら、僕はまたあの歌の事を考えていた。

僕と魔理沙の付き合いも中々に古いものだ。
僕にとっての魔理沙は、いつまでも世話の焼ける妹分であり、そして幼い少女のままだった。
だが、そんな事は無いのだ。
彼女も、年を重ねて、そして大人へと成長している。
今こうして僕の前で話している魔理沙は、僕の中での魔理沙とは違っていた。
背が伸びて、体つきも少女のそれから大人へと成長している。
いつの間にか、彼女は大人へと近づいていた。

魔理沙「……どうしたんだよ香霖?やっぱり今日のお前、おかしいぞ?」
 
ふと、魔理沙が話しかけてきた。

霖之助「いや、そんなつもりは毛頭ないのだが」

魔理沙「そんな事は無い、ちょっと私におでこ貸して見ろ」

そう言って魔理沙は、自分の額と僕の額に手を当てた。

魔理沙「熱は無いようだな……って、何見てるんだよ?」

どうやら僕は、魔理沙の事をまじまじと見つめていてしまったらしい。

霖之助「いや、何でも無いさ」

僕はククク、と笑ってごまかす。

霖之助「でも、強いて言うなら……そうだね」

妙なものを見る目つきでこちらを見ている魔理沙に、僕はあの歌と同じ事をいってやった。

霖之助「魔理沙、綺麗になったね。あの頃より、去年より、ずっと」



 今春が来て君は 綺麗になった

去年よりずっと きれいになった
               ♪

と、言う訳で。
こちらの物語は、これにて終了となります。
オチナシどころか尻切れトンボな閉幕となりましたが…

ご指摘、感想などございましたらどうぞ。
HTML化については、後日行う予定です。

では

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