杏子「ごめんな……」(300)

さやかちゃんが魔女になった後、私達がさやかちゃんだった魔女の所へ向かう途中、ほむらちゃんが先回りしてその魔女を殺してしまった。

杏子ちゃんはそれに激怒し、ほむらちゃんとの協定を破り、隣町へ帰って行った。
ほむらちゃん曰くさやかちゃんを助けることはもう不可能だったらしい。

その後、ほむらちゃんの正体を聞いた。繰り返す時の中、杏子ちゃんが魔女になったさやかちゃんと心中したことがあると言っていた。そのことを話した時のほむらちゃんの声はとても悲しかった。

数日後、ワルプルギスの夜が街に現れ、ほむらちゃんは一人でそれと戦うこととなった。キュゥべえに煽られて外に出てきた時、ほむらちゃんがちょうどワルプルギスの夜を倒した。

だけど、一人で戦って無事で居られる訳もなく、わたしがほむらちゃんの所へ駆け付けた時、彼女は瀕死だった。

私はほむらちゃんの死を看取ることしか出来なかった。契約すればほむらちゃんは生き返る。でもそんなことしたらほむらちゃんを更に苦しめることになる。

ほむらちゃんの執念に、流石のキュゥべえも驚嘆し、私のことを諦めると言って去って行った。

これがほむらちゃんの望む結末だったのかな?

背後に人の気配を感じた。

マミの忘れ形見って云うのか、あたしの妹弟子って云うのかそういうのもあったかもしれないが、他人の為に祈って堕ちて行くあいつを見てられなかった。

でも、あたしは何も出来やしなかった。あたしの昔話はあいつの心に響かなかった。

結局、全て虚しく、さやかは魔女になってしまった。

その魔女をぶっ倒せばさやかのソウルジェムが戻って来たり、その魔女を説得すれば元に戻ったりすると思ってた。

だけど、あたし達が魔女の元に辿り着いた時、あのイレギュラーがトドメを刺していた。

あいつ曰く元に戻ることなんて無いと言っていた。諦めたような目をしたあいつらしい答えだと思ったよ。

あたしはぶっちぎれたよ。勝手に諦めて出来るかもしれない可能性まで奪いやがった。

あたしはあいつとの協定をナシにして街へ帰って行った。

数日後、隣町に大嵐が来た。ああ、あの魔女が来たんだな。

数時間後、嵐がいきなり消えた。あいつが倒したのか。まぁあたしには関係ない話だ。

背後に人の気配を感じた。

私はなんの為に契約したのでしょうか。願いが大雑把すぎたかもしれません。

私が識ったのはとある少女の物語。
何度も時を繰り返し一心不乱に恩人の少女を助けようとするも、何度繰り返しても失敗してしまう。
最期は恩人の少女を助けることに成功するが、彼女は命を落としてしまった。

その少女はそれで良かったのだろうか?目的こそ遂げても、彼女の幸せは訪れなかった。

彼女がその後生きていれば幸せになれていたかもしれない。

私は彼女の関わった人物を訪れることにした。

美樹家の墓まで行くわけにもいかないので、家に押し掛け『不良に絡まれたところを助けてもらったことがある』と言い写真に手を合わせに行った。

彼女の想いもまた虚しく、彼女の願いで腕が治った少年は、彼女の友達の少女と傷を舐め合う形で交際しているようだ。

次に訪れたのは……これは巴さんのお墓なのでしょうか。木で組まれた単純な十字架に縫いぐるみが一つ。
干からびた花が二つと新しい花が二つ。

彼女は人としての死を迎えることは出来なかったようだ。
だからこんな簡素な墓なのだろうか。私は割れたせいで使えなくなったティーセットの無傷の物を備えてその場を後にした。

次は彼女自身のアパート。彼女にはお墓は立ててもらえないのでしょうか。
次に訪れる先で聞くことにしましょう。

部屋に飾り気がかけらもない。彼女は本当に目的こそがすべてだったことが伺える。

次の目的地に向かう途中、何故か女の子が小銭を落とす光景を予見した。

予見通りのことが起きたので、その女の子のポケットに自分の連絡先を忍ばせた。

そういえばこの子も私も彼女の物語の中に出ていましたね。悪役でしたが。

次は彼女が救いたかった恩人の少女、そして暁美ほむらの物語の中で私が殺した少女、鹿目まどかの元へ向かうことにした。

本当は最後にするつもりだったが、道順を考えた結果こちらを選ぶことにした。時間なんていくらでもあるのに。

……そろそろさやかの幼馴染の坊やの腕が死刑宣告受けるんだったかな?

あと、マミを殺った魔女が出るのも今日辺りだ。

マミの弱点はあたしとキリカで補える。
つまりマミを殺った魔女はあたしらでどうにかすればいい。

坊やの腕は……
恐らく契約以外で治るとしたら、余程強い治癒魔法くらいだ。

当然そんな魔法を使える知り合いは居ない。

マミのリボンは筋肉や腱の代わりにはなっても神経の代わりにはならない。
さやかがご丁寧にも坊やの元の病状を教えてくれたのが今になって活きるとは……

キリカの加速、あたしの幻覚も全く意味が無い。
昔、風見野で喧嘩したあの看護婦も外科ではなく内科だと言っていたし……

さやかの契約阻止を諦めるか、さやかが坊やの腕を諦めるか……だな。

杏子「なぁ、ほむら」

ほむら「なんですか?」

杏子「自分の命を投げ打ってまで助ける価値のある人間ってどんなんだろうな」

  「見返りなしで」

ほむら「難しい話……」

   「私は……やっぱり自分が一番大事です。命を投げ打ってまで……同じ様にしてくれる人なら…佐倉さんとか」

杏子「おいおい、あたしが見返り無しでなんてそんなケチ臭い人間に見えるか?」

ほむら「いや…その……」

杏子「ま、居ないよな」

さやかが契約するのは多分病院の屋上だ。
ここから数日は病院に張りこむとしよう。


……


……

杏子「何回も脱皮してウザかったけど、大したことねえな。マミも大技じゃなくて、マスケットで戦ってれば死ぬことはなかったんじゃないか?」

気が向いたら、アイデアがあればまた書く。

引き伸ばしですねこれは。

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