こずえ「こずえぱすてる」 (28)

 
 
※地の文あり。しかも全部ひらがな

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424224960

じむしょは、まっくろでっさん。

おひさまは、おれんじくれよん。

「おはよう、こずえ」

「ふわぁ……」

そして、めのまえには、にじいろえんぴつ。

「随分と寝てたな。もうお昼だぞ?」

「おひる……」

おやつのじかん。

ぴんくいろのえのぐを、さがさなきゃ。

「どこか行くのか?」

「うん……かなこのところ……」

「そっか。気をつけてな」

そういってにじいろえんぴつは、わたしにせなかをむけた。

まっくろけのそふぁからとびおりて、まっくろけなゆかへちゃくちする。

じむしょのなかはまっくろけ。ぜんぶえんぴつでかいたみたい。

だけど、にじいろえんぴつがいるから、さみしくない。

「……かなこ……」

ぴんくいろのえのぐ。

あまい、あまい、おかしをくれるえのぐ。

まっくろけなじむしょからでると、きみどりのえのぐがたっていた。

「こずえちゃん、こんにちは」

「こんにちは……ちえり……」

きみどりのえのぐは、しゃがんでわたしのめをみた。

「どうしたの?」

「かなこのところ……いく……」

「かな子ちゃんのところ……じゃあ、一緒に行きますか?」

きみどりのえのぐはわたしにてをさしだした。

「うん……」

わたしはそのてをにぎる。

するときみどりのえのぐは、ゆっくりとあるきだした。

おれんじくれよんのたいようが、まぶしい。

くろいえのぐでぬりかためられたあすふぁるとは、いまにもとけてしまいそう。

「こずえちゃんは……」

「なにー……?」

「こずえちゃんは……その……どこから来たんですか?」

「どこから……?」

きみどりのえのぐは、とたんにいろをにごらせる。

ふあんのむらさきと、こうきしんのきいろがまざる。

「……こずえは……くろのくにからきたの……」

「くろのくに?」

「うん……」

そのばしょは、どこもかしこもまっくろだった。

わたしのまわりにいるのも、くろ。

たてものも、そらも、たいようも、くろ。

くろ、くろ、くろ。

「……よく、わからないです」

「そう……」

きみどりのえのぐはすこしざんねんそうに、あおいろをうかべた。

「それじゃあこずえちゃんは……好きな物、とかありますか?」

「すきなもの……」

ぴんくいろのえのぐは、すき。だけどいちばんじゃない。

きみどりのえのぐも、すき。だけどいちばんじゃない。

ならいちばんは

「にじいろえんぴつ……」

「虹色鉛筆……?」

「うん……」

くろをさみしくなくしてくれる、にじいろえんぴつ。

わたしがいちばんすきなもの。

「うーんと……そ、そんな文房具があるんですね。今は」

「ぶんぼうぐー……?」

「あ、えっと……こずえちゃんには、わからないですかね。クレヨンとかのことです」

「くれよんならわかる……」

たいようをえがいてるもの。

じむしょのなかにも、なんほんかあった。

「くれよんは……なんだか……へん……」

とてもこえのおおきい、おれんじのくれよん。

どうぶつのきぐるみをきる、きいろのくれよん。

みんな、へん。

「へ、変ですか?私は好きですよ?」

「うん……へんだけど……すき……」

「……こずえちゃんは、難しいです」

「ふわぁー……?」

きみどりのえのぐが、あたまをなでる。

あったかくて、おちつく。

「そろそろかな子ちゃんの家につきますね」

「うん……」

なんだかごちゃごちゃしている、みんなのおうち。

いろんないろが、いろんなものが、まざりあったいろとりどりの、すてきなばしょ。

ぴんくのえのぐも、きみどりのえのぐも、ここにすんでいる。

はいいろしゃーぷぺんの、かいだんをのぼって。

くろいろまじっくでぬりつぶされた、ろうかをあるいて。

あまいあまい、おかしのおへや。それが、ぴんくのえのぐのおうち。

「かな子ちゃーん」

こんこんと、くっきーのどあをのっくする。

「はーい。今出ますー」

そしてすこしして、ぴんくのえのぐがどあをあけた。

「あ、智絵里ちゃん。いらっしゃい」

にっこりと、ぴんくのえのぐはほほえんだ。

てには、おいしそうなしろとあかがのっていた。

「こずえちゃんがかな子ちゃんの家に行くって言うから、着いてきちゃったんです」

「あがってください。今ちょうど、ケーキを焼いたところだったんです」

「けーき……」

それが、しろとあかのなまえだろうか。

「こずえちゃんも、一緒に食べよう?」

「うん」

ぴんくのえのぐは、まいにちこのじかんにあまいものをもってる。

……つくってる?

たぶん、そう。

「それじゃあ、あがってください」

「お邪魔します」

「おじゃまします……」

くっきーのどあをとおりぬけて、ちょこれーとのろうかをあるく。

たどりついたのは、まかろんのおへや。

きょうはすてきな、てぃーぱーてぃー。

じむしょは、まっくろでっさん。

おひさまは、おれんじくれよん。

「おはよう、こずえ」

「ふわぁ……」

そして、めのまえには、にじいろえんぴつ。

「今日もかな子のところに行くのか?」

「うん……」

にじいろえんぴつは、きょうもいそがしそう。

「……?」

そういえば

まっくろのじむしょのなかにある、ひとつだけのしろ。

かがみ、っていうんだっけ。

「……ふわぁ」

まっくろそふぁからとびおりて、かがみへむかう。

「こずえ?鏡がどうかしたか?」

かがみは、じぶんのすがたをうつすらしい。

ふとおもった、じぶんは、なにいろなんだろう。

しりたい。みたい。

「……」

かがみにうつったのは―――

ああ、なんだ。

やっぱり、わたしは、くろのくに。

さみしくて、つめたくて。

どこにでもあって。

どこにもない。


「どうしたんだよ。こずえ」

だけど

「ううん……なんでもない……」

「?」

にじいろえんぴつなら、

きみどりのえのぐなら、

ぴんくのえのぐなら、

わたしをかえてくれる。

そんなきが、しているんだ。


おわり

ちなみにCoはマーカーです。

では、短いですがありがとうございました。

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom