【天体のメソッド】ss 投稿スレ (375)

今更なから

「天体のメソッド」

のssを投稿するスレになります。

1レス、長編、なんでもどうぞ。


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1424219783

※投稿される方へ(スレ主以外にいるのかなぁ…)


・誰かが投稿中に割り込まないように、一応注意してください。
(え…重なる程投稿あるわけねぇだろって。だから一応ですって…)

・なるべく書き溜めてからの投稿をお願いします。

・内容が18禁になる場合は、本編開始前に一言注意書きを。

・誰も読んでくれなくても泣かない!!自己満足で何が悪い!!
(ここ最重要です!!)

建てて早々すみません。自己紹介文書いていたら時間無くなってしまいましたので、

(書き溜めてから投稿しろって自分で書いておいて…)

夜、帰宅後からss投稿開始させていただきます。

※スレ主自己紹介

・まず始めに…「絶対に期待しないでください!!」ただの妄想垂れ流しです。
いいですか「絶対に期待しないでください!!」(大事な事なので2回…)

・ssというか非常に短いものの寄せ集めになります。せいぜい数レスで一話完結します。
本文1レス10行程度が10レス未満で完結する程度のものです。

・文章を書く勉強などしたこともない、全くのド素人です。こちらの利用も初めてになります。
何か問題がありましたらご指摘お願いします。

・誤字、脱字には注意していますが、もしあっても脳内変換でお願いします。

よし…これでかなりハードル下げられたかな(おい)

・新作は土曜日に更新の予定です。(4月末くらいまで?)

・過去2ch本スレに投稿してしまっていた分は、加筆・修正し水曜日に更新の予定です。
なお、ssを投稿する場所があることを知らずに本スレに投稿続けてしまい、申し訳ありませんでした。

本日は水曜ですが、最初なので新作を投稿します。それでは、よろしくお願いします。

「お腹空いたよ」


・作中時系列…13話終了後

・登場人物…乃々香・ノエル・柚季

※一部登場人物の設定・性格が、実際とは著しく異なる場合があります!!それでも許していただける方のみお進みください。

 お昼もすぎ客足が止まったのぞみ亭で、カウンターに座りスマホをいじりながら一人店番をする柚季。ついつい愚痴もこぼれる…

柚 季「あーぁ、お客さんこないし店番つまらないな…せっかくのお休みなんだから、どこか遊びにでも行きたいよ」

 突然勢いよく店のドアが開き、ビクッとしつつも、そこは商売人の娘。席を立つと振り向きつつ笑顔で来店者を迎える。

柚 季「いらっしゃいませ…って乃々香とノエルか。どうしたの」

ノエル「ゆずき~、オムライス~」

 ドアを開けた勢いそのまま、駆け寄っていったノエルが柚季に飛びつく。

柚 季「わっ!?ちょっとノエルったら…よし、ならこっちも」

 逆に柚季がノエルに頬擦りを始めると…

ノエル「あう…ああうぅぅ~」

 相変わらず奇妙な声を上げる。喜んでるのだか、イヤがってるのだか…そんなやり取りをニッコリしながら見ていた乃々香が声をかける。

乃々香「ちょっと遅めのお昼を食べに来たんだよ。ノエルが柚季ん家のオムライスが一番おいしいって言うから味を盗みにきちゃった」

ノエル「うん、半熟の卵に、えと、んーとデ…デミ……デミグ・ヌ・フ・ソースがかかってて、とっーてもおいしいんだよ」

乃々香「じゃ私もデ・ミ・グ・ヌ・フ・ソースのオムライスで。よろしくね柚季」

 乃々香に、以前ノエルに間違て自慢してしまったソースのことを言われ、少しふくれながら。

柚 季「もう、乃々香のイジワル…デミグラスソースだから、デミグヌフは間違いだから忘れてよ…お願い」

 食事終了…

乃々香「ごちそうさまでした。柚季もお料理上手じゃない…なんで自分でお弁当作ったりしないの?」

 完食し、当然の疑問を柚季に聞いてみる。ノエルも完食して、お皿に残ったソースを指につけてしゃぶっている…

柚 季「料理が出来ない訳じゃないのよ。でも私の料理じゃまだお店で出すようなレベルじゃないし…お母さんの食べると自信なくなっちゃうのよ」

乃々香「そんなことないよ、柚季は柚季なんだから。誰かと比べるんじゃなくて、自信持っていいと思うよ」

柚 季「乃々香…ありがとう」

乃々香「でも…このソースは確かにおいしいわ…この味だと入ってるのはきっとあれとこれと…」

柚 季「あれ…乃々香。ソースの話!?オムライス作ったのは私だけど、ソース作ったのはお母さんで…」

 ちょっとショックな柚季だが、乃々香はすでにソースのレシピを考えるのに夢中で全く気付いてないようだ。

柚 季「よーし!!じゃあこっちのオムライスも食べてみてよ。しっかりと焼いた卵にケチャップをかけて食べるよくあるタイプのだけど」

 ※聖地巡礼の方へ…望羊蹄では注文時にどちらか聞かれます、まぁ行かれる方は前者一択でしょうが。

 ソースのかかってないオムライスならどうよ!?と言わんばかりに勝手に追加で堅焼き卵のオムライスを作る柚季。

ノエル「わーいノエル、ケチャップでお絵かきする~」

 大喜びでケチャップを奪い取り何やら描きだす、乃々香はいまだに思案顔のままだ。

ノエル「できたよ!!ねぇ乃々香見てみて…って考え事してて気付いてくれないや。ゆずき~」

柚 季「どれどれ~大きな楕円のものが空にあって、人みたいのがそこに引き上げられてるって…これエイリアンアブダクションじゃないよ!!」

 円盤反対運動をやっていただけあって、円盤が起こす事件に関しては詳しい。今も勉強机の右上の本棚は円盤関連の本で埋まっている。
このとき店の出入り口のドアの開く音は、この柚季の絶叫にかき消された。不満げなノエルが抗議の声をあげる。

ノエル「えーっ!?円盤さんがご飯食べるときの絵を描いただけだよ。ノエルがおなか空くと円盤さんもお食事しないとダメなんだよ」

 描かれているのはどう見ても人間だった。決して家畜などではなく人間…

柚 季「だから円盤が人間を攫うことをエイリアンアブダクションって言うんだって!!つか円盤って人間を食べるの!?」

ノエル「……」

 否定でも肯定でもない、イヤな沈黙…

柚 季「ちょっと黙ってないで!!乃々香もなにか言ってやってよ…って、あれいない!?」

 店の中にはすでに乃々香の姿はなかった。追加されたオムライスを食べながら…

ノエル「こっちのオムライスもおいしい~。乃々香なら帰っちゃったよ、味を忘れないうちにソース作ってみたいんだって」

 店中にスプーンとお皿のぶつかる音と、ノエルの咀嚼音だけが響く。しばらく固まっていた柚季だが。

柚 季「あれ、ひょっとして食い逃げされた!?私が作ったからって商売なんだから無料じゃないわよ!!ノエルがお金なんて持ってる訳ないし」

 私のお小遣いから出すか…とあきらめてノエルに視線を向ける。本当においしそうに食べている。

柚 季「まぁ…いいか、これだけ喜んで食べてくれてるんだし」

 ふとオムライスに描かれた人物が目につく。一見すると誰とまでは分からないのだが、ある特徴に気付く…

柚 季「ん!?この絵の人って、何かプラカードみたいの持ってるけど…まさか」

 イヤな予感に冷や汗が流れる…ノエルが食べる手を止め、ゆっくりと顔をあげてくる。

ノエル「もちろん柚季だよ…」

 予想通りの答え、でも一番聞きたくなかった答え…震える柚季にニッコリ笑顔でノエルが続ける。

ノエル「ところで柚季、ノエルね今日はおなかペコペコなんだ。とりあえずハンバーグとチキンドリア追加ね。そうじゃないと…ねっ」

以上で「お腹空いたよ」完結となります。

次回「キリヤ戦隊」2月21日更新予定です。

勉強したことないと言うくらいなら『文章作法』で一度ググろう
それと↓スレ読んで前書きについて後悔するといい

俺「SSの書き方とかよく分かんないけど皆のアドバイス貰えばなんとかなるだろ」
俺「SSの書き方とかよく分かんないけど皆のアドバイス貰えばなんとかなるだろ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1401292874/)

男「SS書いたからちょっとみてくれ」友ABC「おk」
男「SS書いたからちょっとみてくれ」友ABC「おk」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1417873532/)

話の雰囲気は悪くなかった

お二方ご指摘ありがとうございます。今から明日の分修正してみます……

「キリヤ戦隊」


・作中時系列…13話終了後

・登場人物…乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

いつものように夕飯は食べに来ているノエル、それを何とも思わない乃々香。そんな日常のなか、ふと思った疑問を尋ねてみる。

乃々香「ねぇノエル、ノエルは円盤で宇宙人なんでしょ。よくあるアニメや映画みたいに、地球を占領とか侵略とかしようとは思わなかったの?」

乃々香の言葉に、オムライスを食べていた手が止まり、ガクガクブルブル震えだしながらスプーンを床に落とす。

ノエル「のえるハトッテモイイコナエンバンデス。ソンナコワイコトワカンガエタコトモアリマセン……ウソジャナイヨ!? ののかシンジテ」

乃々香「目が死んだうえに抑揚のない声で!? ごめんね変なこと聞いて」

乃々香「(よっぽど怖い思いをしたのね……ノエルの故郷の星が侵略とかされたのかな)」

~~ノエル回想~~


何もせず7年間ただ浮かんでいた円盤が突如として地球侵略を宣言し、人類に降伏を迫った。その内容とは。

ノエル「みんな~、今日からノエルが地球の支配者だよ、ノエルのおもちゃになってね」

……この冗談としか思えない円盤からの脅迫に、人類はとりあえず円盤に反撃してみようという結論に達したようだ。

ノエル「へぇ~これがこの星の最強の兵器なんだね。いいよ、避けないから撃ってきなよ」

東と西の某国から発射された、数発で人類滅亡するミサイルが全弾円盤に直撃する。

ノエル「きらーん☆ こんなんじゃ全然効かないよ。円盤にもノエルにも傷一つないよ。じゃあもう地球はノエルのものでいいよね」

円盤をワザと輝かせながら有害物質さえ中和し、余裕のノエル。

ノエル「あーぁ……なんだか飽きちゃったなぁ、そろそろ降伏してくれないなら攻撃しちゃおうかなぁ~」

そんなノエルの後ろから近づく複数の足音。

ノエル「誰!? ……プッ!! 何よそのコスプレ!? みんなどうしたのよ」 

ノエルの容赦のないツッコミに、多少の動揺を見せつつも気合で立て直す謎? の覆面集団。リーダーらしき赤い仮面がノエルをビシッと指さし。

乃々香「ノエルが私たちを騙して来た侵略者だったなんて!! 絶対に許さない!! キリゴンから与えられたこの力で地球は必ず守ってみせるわ!!」

お腹を抱えて笑い続けるノエル。精神的ダメージに必死に耐える覆面集団。

乃々香「ノエルを呼んだ落とし前キッチリつけます! キリヤレッド!!」(古宮乃々香)

柚季「だから円盤は危険と私は言っていたのに! キリヤゴールド!!」(水坂柚季)

こはる「お店とっても儲かってるし侵略とかどうでもいいんだけど……キリヤグリーン!!」(椎原こはる)

汐音「レッドを困らすなんて許さない! 目障り! 消えて! 跡形もなく! キリヤブルー!!」(戸川汐音)

湊太「ここでも影が……」

湊太が口上を言おうとするが無視して被さる声。

女性陣「4人揃ってキリヤ戦隊キリレンジャー!!」

決めポーズをとる4人。そこから見切れるギリギリの位置から悲しげな声……

湊太「おーぃ俺忘れてるぞ、ってか揃ってねぇだろ! キリレンジャー5人だからな」

ここでも不憫なキリヤグレー(水坂湊太)であった。

乃々香「円盤生物ノエル!! 私たちがあなたを倒すわ!!」

ノエル「いいよ、相手してあげる。ノエル動かないから好きなだけ攻撃してきてね」

自身の圧倒的優位を確信し余裕のノエル。4人は手をつなぎ円形の陣を作る。……目を閉じ精神を集中し。

乃々香「ベントラー召喚!! 土地神ロボ・キリゴーン!!」

4人でも召喚される巨大ロボ、内部に吸い込まれていく4人。居ても居なくても全く関係なかったグレー……キリゴーンがビームサーベルを構える。

ノエル「えっ!? その巨大ロボットは!? まさか……乃々香!! これは冗談だよ『侵略者・戦隊ごっこ』しようねって、ノエル本気で地球を侵略しようなんて……」

ノエルが急に慌て出し、必死な弁明をしてくる。

乃々香「円盤! そしてノエル!! 覚悟はいいわね。みんないくよ!! 必殺、盤斬刀!!」

そんな言い訳は右から左に受け流し、キリゴーンは円盤に向かって3000メートル程ジャンプし、真上から必殺の一撃を放つ。あっさりと一刀両断される円盤。

ノエル「きゃうぅぅ!! 円盤が、ノエルの身体がこんなに簡単に……この星のものじゃない兵器が、対円盤用の巨大ロボットがこんな星にあるなんて……」

円盤が大爆発を起こし、ノエルが苦しみながら巨大化を始める。ただし円盤の真下だったためジャンプしたキリゴーンの着地地点で、そして円盤を斬った刀の軌道上。
すでに30メートル程の大きさとなったノエルが上空を見上げる、その視線の先に落ちてくるキリゴーンと乃々香たち。涙目で必死に訴えてくる。

ノエル「止めて! 助けて!! 円盤が爆発しちゃってノエルまで斬られたら、ノエル再生出来ない! 本当に死んじゃうよ!! もうこんなことしないから! お願い乃々香!!」

その言葉に一瞬躊躇う乃々香、そのスキを見逃さずに逃げようとするノエル。だがキリゴーンに飛行能力は無い。躊躇ったからといってキリゴーンの落下が止まる
訳もなく、ビームサーベルはノエルの頭上へ迫り……真正面から縦に真っ二つにノエルを斬る。

ノエル「ウキャァァァァ~!!」

大音量の悲鳴、グングンと大きくなり50メートル程になっていたノエルだが、斬られたときから成長も、動きも止まっている。

ノエル「なんで……なんでよ乃々香!? 私たち友達だったのに……」

乃々香「ノエルがこんな事さえしなければ……いつまでも一緒にニッコリでいられたのよ」

ノエル「イヤだよ…………ノエル……こんなところで……死ぬの……は……」

……長いな、斬られたのにいつまで喋れるんだ。ビームサーベルの剣先は、ノエルを挟んだ先の地面まで刺さっている。斬られた部分から黄色の液体もにじみ出て、軽く火花
も散っているようだが。

ノエル「ノエル……もっと……みんなと……」

乃々香「(ちゃんと斬れてないのかな?)」

とりあえず、キリゴーンの人差し指で軽くノエルに触れてみる。

ノエル「ちょ…………あっ!? ダメ!! ……ああっっ~!!」

斬れてたわ……触ったほうの半身だけがあっさりと倒れてゆき、円盤生物ノエルはついに力尽き大爆発をする。侵略者を倒し安堵する乃々香はふと疑問に思う。

乃々香「(なんで宇宙怪獣や怪人って一度倒されると大きくなったり、生物のハズなのに倒されると爆発するんだろう? 円盤ならまぁ分かるけど)」

突然辺りの時間が止まり、視界がホワイトアウトしてゆく……ちなみにノエルの足元にいた湊太はギリギリ避けてたようだ。……チッ、すばしっこい奴め。


~~回想終了~~

今だに震える演技をしつつ、乃々香に聞こえないように気をつけながら小声で愚痴りだす。

ノエル「何度もやろうとしたのに、ノノカたち変な力を身に付けてノエルを倒すんだもの。なんとか時間も戻せて記憶もちゃんと消せてるからいいけど、槍で串刺しにされたり、
ハンマーで円盤粉砕してからノエル潰されたり、ビーム銃で蜂の巣にされたり、この前みたいに刀で真っ二つとか……死ぬほど痛い思いするのはもうイヤだもん。というか一瞬
本当に死んじゃってるような? どこかの河原で対岸から亡くなったおじいちゃんが『帰れ』って石投げてきたり、とっても綺麗なお花畑が見えたりするし……」

そんなノエルを見て勘違いから勝手に同情しながら、ふと左手に違和感を感じ視線を落とすと。

乃々香「あれ、いつの間に? なんだろうこのブレスレット。何かとっても不思議なパワーを感じる」

この力が今回は発揮されることのない未来でありますように……

以上で「キリヤ戦隊」完結となります。

次回「家族の絆」2月25日更新予定です。


それから>>15さん
確かに思いっきりヤラかしてしまってますね……
後悔しまくりですが、消せる訳でもないので、そのまま晒し者ということで。
しいて言うなら

>>6を見ないでください! 恥ずかしいから……」

ご指摘ありがとうございます、留意しつつ校正してみました。


「家族の絆」


・作中時系列…11話終了後~13話ラスト前

・登場人物…ノエル・他

乃々香たちの願いはすべて叶えることが出来た。
とっても嬉しい、嬉しいのに……なぜ涙が止まらないのだろう、溢れてくるのだろう。

願い叶えたら……叶う未来へのレールが敷けたら、円盤の存在を記憶から消し去り、円盤の現れる前の時間まで世界を戻す。
それが円盤の世界のルール。だから今まで通りそうしただけなのに。
それなのになぜ……


こんなに悲しいのだろう……

久々に帰ってきた我が家。玄関をくぐり、居間へと向かう。扉を開けると、そこにはソファーに座り談笑する両親の姿が。

ノエル「……ただいま。ハパ、ママ」

7年という時間は、私たち円盤にとっては別段長いということはないだが……懐かしい、そしてここが一番安心できる場所。

父「お、ノエル帰って来たな」

母「お帰りなさい、ノエル」

両親はいつもと変わらず暖かく迎えてくれる。

母「今回はずいぶん時間がかかってたみたいだけど、みんなの願いはちゃんと叶えてあげられた?」

元気のない私に『うまくいかなかったのかな』と心配してくれているようだ。

ノエル「うん……大丈夫、ちゃんと出来たよ」

母「そう、それなら良かったじゃない」

ノエル「会いに行ったその日に遠くに行かれちゃって、戻って来るまで待ってただけだから……でも」

母「でも?」

扉の前に立ったまま、今の想いをすべて吐き出した。

ノエル「ノエルは待ってる間に、とっても大切な気持ちに気付くことが出来たの」

両親とも無言で聞いてくれている……

ノエル「みんながニッコリで心がいつも一緒にあること……それはとっても素敵なことだって」

涙が溢れだす。

ノエル「そしてお別れのときに分かったの……その輪の中にノエルもいることに!!」

しばらくの沈黙。私の嗚咽だけが部屋に響く……

父「ノエル、私たち円盤は願いを叶えるため存在。あまり一つの願いに、叶え終わった願いに深入りしてはいけないよ」

違う、今かけて欲しいのはそんな言葉じゃないよ……

父「次の願いに呼ばれるまで、ゆっくり休みなさい」

違う! そうじゃない!! そうじゃない……けど、それが私たち円盤のするべきこと、パパの言葉に間違いはない。

ノエル「分かってる!! 分かってるよ……」

思わずパパのほうへと駆け寄り、その胸元に飛び込み……そして泣きじゃくる。

ノエル「でも、この溢れてくる気持ちは、そんな簡単には止められないよ!」

決してパパが意地悪で言っている訳ではないことは分かっている。優しく頭を撫でてくれる……その暖かく大きな手で。

父「なら、ノエルはどうしたいんだい?」

その問いかけに涙が止まった。私が今一番したいことがハッキリと分かった。パパの顔を真っ直ぐ見つめ。

ノエル「……みんなの所に戻りたいよ! ノノカやシオネやコハルやユズキやソータと、ノエルもいつまでもニッコリしてたいよ!!」

円盤としては最低の答えだろう……きっと怒られる。それでも、この気持ちは変わらない、変えられない。パパは無言のまま。

母「なら、ノエルが迷うことなんて何もないじゃないの?」

意外な答えにママのほうへ振り返る。

ノエル「えっ!? それってどういう……」

父「気持ちを落ち着かせて、しっかりと耳を澄ましてごらん」

言われるがまま深呼吸をし、目を閉じ耳へと全神経を集中するが……

ノエル「ダメだよ、何も……聞こえないよ」

母「もっとしっかりと……ノエルにならきっと聞こえるはずだから」

パパとママの間に座り、もう一度やってみる……


「……エル、ノエル! お願い!! 戻って来て!! ノエル!!」


聞こえた! 乃々香たちの声が、願いが……今の私と同じ気持ちの願いが。

ノエル「……本当だ! みんなが、ノエルを呼んでくれてるよ」

再び涙が溢れてくる……でもこれは、さっきまでとは正反対の気持ちから。

ノエル「ハパ、ママ。今度はもっと長い間離れることになるかもしれないけど……それでも」

両親の顔を交互に見ながら尋ねると、2人ともニッコリ笑顔で。

父「もちろん行っておいで。どんなに時が経とうと、何万光年離れようと構わないさ。私たちはずっと待ってるから」

母「そうね、どこにいようとノエルは、私たちの自慢の娘なんだから。あなたの信じる道をしっかり進みなさい」

今、改めて思う……私はこの二人の娘であることが、本当に幸せなんだと。

ノエル「ありがとう! ハパ、ママ。行ってくるね!!」

勢い良く立ち上がると、私は一度も自分の部屋へ戻りもせずに、再び家を飛び出していた。

慌ただしく飛び出して行く愛娘の姿を見送ると。

母「また行っちゃいましたね……せっかく帰って来たんだから、少しぐらいゆっくりしていけばいいのに」

父「まぁ寂しいのは確かだが……あんな元気のないノエルを見ているのは辛いじゃないか。それに円盤なら誰もが一度は通る道さ」

母「そうですね、私にもこんな事、何度もあったな……それに、ノエルにはいつでも笑顔でいてもらいたいですものね」

父「ああ、それが私たち二人の『願い』なんだから……」

以上で「家族の絆」完結となります。

次回「ノエルのトリセツ」2月28日更新予定です。

ご指摘ありがとうございます。
録画見直してもっとしっかり再現していきます。
あと誤字すみません。確認不足でまったく気付いていませんでした。

「ノエルのトリセツ」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル

今日も朝からノエルが訪ねて来た。お父さんは既に仕事に出ている。
朝食も終わり、ノエルとリビングで2人きり、他愛もない会話に花が咲く。

乃々香「ノエルって円盤なんだよね?」

ノエル「急にどうしたのノノカ? ノエルは円盤で、円盤はノエルだよ」

乃々香「じゃあ私たちと違ってどんなことができるの?」

いままでいろいろな不思議な現象を目撃してきたが、改めて本人に尋ねてみるとしよう。いろいろと確認もしたいしね。

ノエル「円盤はね、当然だけど宇宙を飛べるよ。ノノカが宇宙に行きたいならいつでも言ってよね」

乃々香「連れてってくれるの!?」

ノエル「うんっ、ノノカのお願いならどこでも行っちゃうから!」

どうやら宇宙旅行は無料でどこでも行けるみたいね。これはいいかも。

ノエル「あとねぇ、この前みたいに時間を記憶しておいてね、その時間まで戻すこともできちゃうよ」

ゲームでいうところの『セーブ』と『ロード』ということなのだろうか? いくつセーブポイントがあるのかは分からないが。
そして、私たちの願いが叶った後に、円盤はそれを実行している。別れを悲しむノエルを無視して……

乃々香「記憶を消すことも出来るんだよね」

そして記憶の消去。なぜか私と汐音には完全でなくて、私が霧弥湖町に戻った途端に、記憶が戻っちゃて大変な目にあったけど。

ノエル「うんっ、消すだけじゃなくて、誰かを操ったり、入れ替わったりも出来ちゃうんだよ」

サラッと恐ろしいことを言う。記憶の消去に操作。ノエルがその気になれば、なんでもやりたい放題ではないか。

ノエル「ノノカ試してみない? 一日だけノエルと入れ替わろうよぅ」

目を輝かせながら提案してくるノエルだが……替わりに学校に行って、私の学校でのイメージをすべて壊してくると……

乃々香「……遠慮しときます」

ノエル「ぷぅ~、やろうよノノカ~」

ふくれながら再度要求してくるが、無理なものは無理だ。でもなんでそんなに学校行きたいのかな?
まぁ黙ってやろうと思えば出来るのに、それをしないのだから良しとしよう。

乃々香「湊太と入れ替わっちゃえばいいんじゃない? もちろん黙って」

ノエル「うんっ! 明日やってみるね!! 学校♪ がっこう♪ みんなで学校♪」

湊太ごめん……ノエルに冗談通じなかったわ。もう決まってしまったことは置いておくとして。

乃々香「えと、あとは……円盤にノエルがイメージしたことを映し出せるんだったよね」

ノエル「エヘヘ~、花火すっごく綺麗だったでしょ」

あの日花火を映し出した円盤は、確かに見入ってしまうほどだった。ノエルが自慢気なのも頷ける。
でも、ノエルがイメージさえすれば、何でも円盤に映し出せるってことなんじゃ……町中の晒し者になる危険性は否定できない。

乃々香「円盤が出来ることは分かったけど、ノエル自身はどうなの?」

そう、この子の行動自体にも謎が多い。

ノエル「んーとねぇ……円盤が見えるところのことなら全部分かるよ、いつ誰がどこで何をしてるかも、なんでもね」

とんでもないことを暴露する、監視カメラなどの比ではない。霧弥湖町にいる以上すべての行動がノエルに筒抜けなのだ。

ノエル「ノノカが町に戻って来たときもすぐに分かったよ。でも、天文台に来てくれなかったから、ノエル待ちきれなくって……」

乃々香「だからって私の部屋に無断で侵入しないで。ちゃんと言ってくれればいつでも来ていいからね」

プライバシーという言葉はノエルに通用しないのだろう。のぞきに不法侵入。この町からの引越も考えることにしようかな。

乃々香「それで汐音が霧弥湖町に来たらすぐに迎えに行ってたんだ」

そう、まるで知っているかのように汐音や私のいる所へと現れていた。円盤から町全体を監視していたのか。

ノエル「そうだよ、でもノエル走って行かなくてもね、瞬間移動もできるんだよ」

今度は瞬間移動できるとか……まぁそんな気はしてたけど。実際、風が吹くと突然ノエルがそばにいることは何度もあったし。

ノエル「ただ、円盤の見えない所でチカラを使うと倒れちゃうけど……」

どうやらノエルの能力は霧弥湖町というか、円盤の見える範囲限定らしい。無理をすれば使えるのは実証済み。

乃々香「北美祭のときはそれで倒れたのね。私と汐音を探して無理した上に、みんなの前から瞬間移動して」

『円盤から離れると大変なことになる』と言って霧弥湖町から一歩も出なかったノエルが、突然北美祭について来ると言い出した。
でも、無理をしたのが倒れた理由なら、ただ円盤から離れるくらいなら何も起こらないんじゃ……

ノエル「だってぇ~、あの時はシオネとノノカのお願いが叶うと思ったんだもん。ノエル、とっても頑張ったんだよ。でも、あのときはウソついてゴメンナサイ」

乃々香「もうっ、あのまま誰もいない場所で倒れたらどうするつもりだったのよ。瞬間移動した場所も私からかなり離れててフラフラだったし。あとは何かあるの?」

ノエル「ノノカたちは7年で大きくなったけど、ノエルそのままだよね」

これが最大の疑問だ。同じ時間をすごしたのに、なぜノエルは7年前の姿のままなのか。

ノエル「この星の時間だと……ノエルにとっては1000年で1歳くらいかなぁ」

意外と単純な答え。ノエルが人間でない以上、成長の速度が違うのは当たり前のことだし。

乃々香「そうすると、私がおばあちゃんになってもノエルの姿はそのままなのね」

ノエル「そうだよ、この星の7年はねぇ……60時間くらいかな。だからそんなに食べなくても大丈夫だったんだよ」

2日半……私たちの7年はノエルにとってはたったそれだけの時間なのか。ここで更なる疑問が浮かぶ。

乃々香「じゃあ、なんでいつもご飯食べに来てるのよ。というか私が町に戻って来てから1日何食食べてる計算になるのよ!?」

私が霧弥湖町に戻って来てからはまだ4カ月ほど。ノエルの感覚で言えばそれこそ数時間にもならない。その間に何度となく食べに来ている。私が居ない間、食事を
どうしていたかまでは知らないが、人の記憶を操作できるのなら何とでもできるだろう。

ノエル「だってぇ……一緒に食べるとおいしいんだもん」

おい、それだけの理由か。

ノエル「でもさすがに食べ過ぎちゃったかなぁ? このごろ円盤が下がってきちゃってるの」

確かに最近円盤が大きくなってきたような気はしてたが。肥えて円盤自体が大きくなった上に、重さで下がってきていたとは。

乃々香「食べ過ぎで太ったんでしょ! 町に墜ちてこないでよ!! もうっ、そんなに無理してまで食べに来ないでよ、食費だってバカにならないんだからね」

全く、はた迷惑な円盤である。だけど……一緒にいると、とっても楽しい。キツい言葉とは裏腹に私はニッコリ笑顔になっていた。

以上で「ノエルのトリセツ」完結となります。

次回「海へ行こう」3月4日更新予定です。

ありがとうございます。
乃々香の腹黒感ですが、日常系以外ですとどうしてもその傾向が出てしまうことが多いです。
極力キャラのイメージに近づけていきますが、ずっと怒ってる回も今後ありますので、そのときはご容赦ください。



「海へ行こう」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音

ノエルが戻ってきてくれてから、明日は初めての休日。せっかくだし、みんなでどこかにお出かけしてみようと思うけど。

乃々香「ねぇみんな、ノエルも戻って来たことだし、明日海水浴にでも行こうよ」

柚季「いいわねぇ~、私の水着姿で浜辺の男どもを……」

そういうことをしに行くつもりもないし、一体誰に水着姿をアピールするつもりなんだか。

こはる「私も行きたいけどお店の手伝いが……まだ本州は夏休みだからお客さんが多くて」

柚季「いつもの便利屋に頼めばいいじゃない」

こはる「それもそうだねぇ、それなら私も一緒に行こうかなぁ」

湊太……ガンバレ。

ノエルはずっと私の隣にいるのだが、先ほどからあんまり乗り気ではないようで黙り込んだまま。

柚季「汐音はさすがに無理だよね」

乃々香「だと思うけど、誘わないっていうのも……待ってて。とりあえず電話してみるから」

さすがに1週間もこちらに滞在している訳もなく、汐音はノエルの戻って来た次の日に、実家へと帰っている。

乃々香「もしもし汐音、明日なんだけど、みんなで海水浴に行こうかなって。さすがにこっちに来るのは無理……」

汐音「みんなで海水浴ですって!? 行くに決まってるでしょ!!」

来る気マンマンだ、その後話を進め。

乃々香「うん、分かった。じゃあ中樽の駅に明日の11時で」

電話が切れるのを待ってこはるが話かけてくる。

こはる「汐音も、これるんだね」

乃々香「うん、明日の朝1番の飛行機で来るって」

柚季「汐音の家もお金持ちだからねぇ、そのうち休みのたびにこっちに来たりして」

汐音は時間の戻る前の世界では、私の帰りを待つためにアパートで一人暮らしをしていた。
娘のためにアパート1部屋を借りられるだけお金に余裕のある家庭ということだ。こはるの家ほどではないだろうけど。

乃々香「じゃ決まりね。ノエルもそれで大丈夫だよね?」

当然一緒に来るものと思って話を進めていたが、ノエルは俯き加減のままで。

ノエル「ノエルは円盤だから……円盤から離れると大変なことになっちゃうって忘れちゃったの、ノノカ?」

乃々香「あ……ゴメンね、電池切れで倒れちゃうんだったね。すっかり忘れてたよ」

とは言うものの。

乃々香「でも、もうノエルが戻ってきてから1週間経つけど、前みたいに霧弥湖に円盤が来てないのにノエルは平気なの?」

忘れてた理由はコレ。円盤は来てないのだ、霧弥湖の上空に。だからもう円盤がなくても問題無いものと思い込んでいた。
その疑問を待ってましたとばかりにノエルが顔を上げると。

ノエル「ふっふっふっ……ノエルだってちゃーんと成長してるんだもん。もう円盤は来てるから大丈夫なんだよ♪」

いままでのだんまりは、ただの前フリだったのね。

柚季「え? とこどこ!? あんなに大きい円盤だったのに、どこにも見えないじゃない」

乃々香「もしかして見えないようになったとか!?」

こはる「ノエルちゃん……円盤が見えないと、グッズを作ってもお店で売れないから困っちゃうよぉ」

また円盤グッズ売り出すつもりだったんだね……

ノエル「円盤はね……ジャーン!! ここだよ!!」

ノエルが自分の着ている服の胸元辺りを全開にする。女子しかいないからまぁいいけど。

ノエル「このペンダントに付いてる円盤が、空に浮かんでた円盤なんだ。大きさを自由に変えれるようになったの」

自慢気に服を捲った胸を張りながら、小さな円盤の付いたペンダントを見せびらかす。

柚季「これかわいい~。ノエルッ、これ貰っていい!?」

いや、それがノエル自身なんだから、どう考えてもダメだって。

こはる「これ、お店で売れそうね……ノエルちゃん、後でもっと良く見せてね」

複製を作って売り出すつもりなのかな、商魂逞しいこはるだ。ノエルはやや頬を赤くしながら。

ノエル「みんなそんなに見ないでよ……恥ずかしいよぅ」

円盤を見られることよりも、もっと他に恥ずかしいことをしてるだろうに。ようやく服を着直すと。

乃々香「それじゃノエルは、前みたいに町から出れないってことは無くて、どこにでも自由に出かけられるようになったのね」

ノエル「うんっ、これからはずーっとノノカたちと一緒だよ。ノエル楽しみだよぉ~」

うっ……ずっと一緒はちょっとイヤかも。

乃々香「それじゃ明日、みんなで海水浴に行きましょうね」

翌日、お父さんの車で北美駅まで送ってもらう。駅の改札口の前でノエルが私たちを急かす。

ノエル「早く、はやくぅ~」

あれ、前にも誰かが同じことしてたような……こはるも気付いて笑っている。その隣で柚季が顔を真っ赤にしていた。

ノエル「シオネぇ~、おかえり~」

中樽の駅に着くと、ノエルは待っていた汐音に飛びつく。

汐音「ただいま、ノエル。でもまだ別れてから1週間しか経ってないじゃない。それに乃々香」

乃々香「なに、汐音?」

汐音「もし今後こういうイベントに私を誘わなかったら……ビンタね」

冗談かと思ったけど目が真剣だよ……呼んでおいてよかった。ちなみに汐音は最終の飛行機で帰るそうだ。

こはる「お休みだし、やっぱり混んでるねぇ」

海水浴場は、砂浜に空きが無いというほどではないが、それなりに人は多い。
持ってきたビニールシートと、海の家で借りたビーチパラソルを広げ砂浜に場所を確保し。

乃々香「これでよしと」

ノエル「ひゃっほぅ~、脱いで脱いで~」

待ちきれずにその場で服を脱ぎ捨てて海へと駆けだして行くノエル。水着を着させて来てよかった。

乃々香「もうっ、ノエルったら。みんな、私が見張ってるから先に着替えてきて」

交代で海の家に行き水着に着替える。その後なぜか柚季のテンションが下がったけど、どうしたんだろ……

乃々香「あれ!? このペンダントってノエルの、外しちゃって大丈夫なのかな?」

荷物番をしながらノエルが脱ぎ捨てた服をたたんでいると、その中に円盤のペンダントがあることに気付く。
波打ち際でビーチボールで遊んでいる4人。汐音は主に撮影係のようだが、あれ?

乃々香「ねぇ汐音? こはるの写真をそんなに撮ってどうするの?」

戻って来た汐音に尋ねてみると。

汐音「これが後々ね、役に立つこともあるのよ。乃々香も処世術を身に付けた方がいいわよ」

……しょせいじゅつ? 私にはよく分からないや。

そんなやり取りがあってから1時間くらいすぎた頃、汐音がノエルを背負って戻って来た。

汐音「ノエルが気を失って海の中に沈んでたから、他の人に気付かれる前に引き上げてきたけど」

こはる「ノエルちゃん、大丈夫だよね……」

心配する2人と、どこかに遊びにいったままの柚季。普通のお医者さんに診てもらう訳にもいかないが……

乃々香「ペンダント掛けたから、たぶんこれで良くなると思うよ」

ぐったりしたままのノエルだが……人間じゃないし、前に倒れた時も円盤の近くにいれば回復してたし。

乃々香「まったくもう。外しちゃ意味ないじゃないのよ、小さい分、有効範囲も狭いんだろし」

帰る頃にはノエルはすっかり回復しました。まぁ、いい思い出にはなったのかな。湊太以外はね。

以上で「海へ行こう」完結となります。

次回「告白の行方」3月7日更新予定です。

「告白の行方」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……ノエル・こはる・湊太

工芸御殿の今日の営業も終わり、いつものように閉店作業をするこはると湊太。ただし、湊太の様子はいつもと違っていた。

湊太「こはる……俺、小さな頃からこはるだけを見てきたんだ」

こはる「えっ……湊太ったら突然どうしたのよ?」

湊太「今でもこうして近くにいるし、これからもこはるとずっと一緒にいたいんだ」

こはる「(これって告白してるつもりなのかな……)」

こはるは正直どう答えていいか分からない。湊太は幼馴染であり、恋愛の対象としてなど今まで考えたこともない。

こはる「それって……私も湊太のこと、とても大切に想ってるよ」

自然と口から出た言葉。その言葉には偽りはなかった。

こはる「(だってお店をタダで手伝ってくれるから、すっごく大切な人材だよ)」

まぁ真意はともかくとして……こはるの言葉を聞いて、緊張でガチガチだった湊太の表情が少し和らぐ。

湊太「そうかよかった、俺、こはるのことが他の奴らよりずっとずっと好きになっちまったんだよ」

もう一度真剣の表情に戻り、深呼吸をしてから真っ直ぐこはるを見つめると……

湊太「こはる! 俺と付き合ってくれ!!」

戸惑うこはる。その気持ちがこはる自身になかった。という訳ではないが、いざ面と向かって告白されるとどうしていいのか分からない。

こはる「えっ……でもっ」

返答に困る、そんなこはるの様子を見て。

湊太「答えは今すぐじゃなくていい。待ってるから、こはるの気持ちが決まるまで。考えておいてくれ」

落胆の色を隠せない湊太に。

こはる「(私を困らせないように気を遣ってくれてるんだね)」

湊太のやさしさに触れた……こはるはそんな気がした。その場を去ろうとする湊太にこはるは慌てて声をかける。

こはる「待って湊太!! うん……分かったよ、その……よろしくお願いします」

こはる「(付き合えばもっとお店を手伝ってくれるようになるものね)」

相変わらず、決して嘘は言っていないこはる。その真意は計り知れない……
そして、そんなこととは微塵も気付かずに、満面の笑みを浮かべ湊太が。

湊太「ありがとう……じゃ、その証に」

こはるを壁際に押しやると、右手を壁に突きキスを迫ってくる。

こはる「もうっ、湊太ったらこんな所でダメだよぉ……」

積極的な湊太に驚きつつも。

こはる「(キスするくらいでもっとタダ働きに来てくれるようになるなら安いものよね)」

椎原こはる……恐ろしい子。

こはる「誰かに見られたりしたらどうするのよ……」

閉店後の店内、両親は留守で従業員は今日はいない。2人とも今は誰もいないと分かっている。

湊太「誰かって、キリゴンの看板しか見てないだろ」

そう、閉店後に店内に入れたキリゴンの顔出し看板があるだけ。湊太の唇がこはるの唇に触れようとするその瞬間……
ふと視線を感じキリゴンの看板を見やる2人。水色に光る瞳が2つ、顔出しの所からこちらを見つめていた。

湊太「うおっ!?」

こはる「きゃぁぁぁー!!」

よく見てみれば何のことはない、どこから入ったかわからないがノエルだった。ただし無言のまま、ジト目でこちらを見ているだけなのが怖いけど……

ノエル「何してるのかなぁ? コハル、ソータ」

慌てたこはるは渾身の力で湊太を突き飛ばす。

こはる「ノ、ノエルちゃん!? 何って……何もしてないよ。いつも通り、ただ話をしてただけだよ。ねっ、湊太」

湊太「そ、そうだともチッコイの。べ、別にやましい気持ちとかはないからな」

けっこうな距離を突き飛ばされた湊太も、身体が痛いのを我慢し話を合わせる。

ノエル「ふぅん……それならいいんだけどね」

ノエルはキリゴンの顔出し看板から出ると、2人の方へゆっくりと近づいて行く。

ノエル「ノエル、こんな見た目だからそれで誤魔化せると思ってるんだよね。でもノエル、みんなより遥かに長く生きてるの。だから、そんなウソお見通しだよ」

ノエルは話しつつ、さらにこはるへと迫る。

ノエル「コハルのお願いは『いつまでも友達でいられますように』なんだよね」

こはる「うん、そうだけど……それは」

こはるの言葉を遮り、ノエルが続ける。

ノエル「だから、もしコハルとソータが付き合ったり結婚しようとするならね……」

ついにノエルはこはるの耳元まで近づき、そしてボソッと……

ノエル「……ノエル、全力で阻止するから」

小声のだったのに湊太の元までハッキリと聞こえた、堂々の妨害宣言。いつまで8歳の頃の願いに縛られるのか。

ノエル「それでもいいなら、まぁ……頑張ってね」

こはると湊太はノエルの言葉に顔を見合わせる。その瞬間風が吹いた、締め切った店内のハズなのに。視線を戻すとノエルは忽然と消えていた。

湊太「そういえば柚季や戸川が言ってたな……『風が吹いたと思ったらノエルが目の前にいた』って。やっぱり円盤なんだな、ノエルは」

こはる「ねぇ湊太、やっはり止めましょうよ。仮に隠れて付き合っても、もしバレたらまた記憶を消されて時間戻されるのがオチだよぉ……」

湊太の答えは決まっていた。こはるの言う通り、こんな相手に隠し通せるハズがない。悔しいがこの恋は諦めるしかないと。

湊太「俺、今なら前の柚季の気持ちが分かるな。さて、円盤反対運動でもやるとするか」

以上で「告白の行方」完結となります。

次回「みんなで温泉」・「温泉に入ろう」3月11日更新予定です。

「みんなで温泉」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

ノエル「温泉♪ おんせん♪ みんなで温泉♪」

私たちの前をノエルが嬉しそうにスキップしながら旅館の廊下を進んでいく。
柚季にこはる、そして汐音も連休を利用してやって来ている。

乃々香「ノエルったらあんなにはしゃいじゃって、でも本当に温泉来るの楽しみにしてたものね」

柚季「そうよ、せっかく来たんだから楽しまなきゃ損よ!」

柚季もノエルに負けず劣らずはしゃいでいる……よし、少し落ち着こうか。

ノエル「みんな一緒だと楽しいんだもん♪」

汐音「そうね。あの日、流星群の夜に、私と約束したものね『今度はみんな一緒に』って」

ノエルが一度消え、時間が戻された流星群の日。お別れする前に、ノエルと汐音は確かにこの約束をしていた。

こはる「えーと……714、714っと。あ、みんなあったよぉ~。行き過ぎてるよぉ~」

今回は仲居さんの案内も無く、こはるに部屋の鍵を持っていてもらったのだが、話に夢中で部屋の前を素通りしていたみたい……
※6話モデルとなった『トーヤ温泉ホテル』の建物は温泉街の東端に現存しますが、廃業していますので宿泊は出来ません。

ノエル「とうちゃーく」

ノエルは部屋に入るなり窓辺へと駆け寄ると、閉まっていたカーテンを全開にする。そこには綺麗な霧弥湖と円盤の姿、いつもの風景だ。

柚季「ふぅ、やっと着いたぁ」

こはる「もうっ、はしゃぎすぎだよ」

こちらもいつものやりとり……

汐音「ノエル、こっち向いて」

窓から外を見ていたノエルを振り向かせると、汐音はデジカメのシャッターをきる。撮れた写真をのぞき込むが。

乃々香「ノエルと霧弥湖、そして円盤。バッチリ入ってるね」

あの一瞬で最高の構図でシャッターをきっている。汐音は将来写真家でも目指すのかな。

こはる「ちょっと休んでから温泉入りに行きましょうか」

柚季「さんせーい」

すぐじゃなくていいんだ。柚季はその場に大の字になって寝転がる。

柚季「でも、こっちでは無料宿泊券がもらえなかったからどうしようかと思ったよ」

時間の戻る前の世界では、柚季がお店で女将さんからもらった4枚と、汐音が福引て当てた2枚。それぞれが無料宿泊券を使って同じ日に
隣の部屋に泊まり、一度も遭遇することなく旅館を後にしている。
では今回は無料宿泊券をどうしたのかというと……

こはる「ノエルちゃん、商店街の関係者として言うけどね」

こはるが渋い顔をしながらノエルへの抗議を始めた。

こはる「福引で1等3連発で引くのは勘弁してよぉ~、そんな不正はダメだよぉ~」

ノエル「みんなとの約束を守るためならね、ノエルどんなことでもしちゃうよ。係の人もすっごく驚いてはいたけど、不正があったなんて気付いていないよ」

そう、円盤の力を駆使して、福引の結果を操作したのだ。もっとマシな使い方はなかったのだろうか……

ノエル「ノエル頑張ったんだよ、前は失敗して2等になっちゃったから」

そして今回、私が用意した福引券は5枚。ノエルに3枚。汐音に1枚。そして自分で1枚。

乃々香「私が回したら、ちゃんと3等の圧力鍋になったものね」

汐音「私は今回は1等じゃなくて、2等の円盤抱き枕だったけど、こっちの方が嬉しいよ。ノエル、ありがとう」

こはる「だから不正はダメ! 絶対ダメなんだよぉ」

ノエル「これがノノカとシオネの願い! ノエル、お願い叶えただけだもん♪」

今思えば5連続で1~3等が出るってとんでもない事かも……こはる、ごめんね。

柚季「さぁ休憩終了よ! 温泉に来たんだから早く入りに行くわよ」

突然復活し温泉に入りに行こうと言い出す柚季に。

汐音「前の時は清掃中だったけど、今から入れるの?」

旅館が変わった訳でもなく、時間が戻っただけである世界。清掃時間がそれで変わるとも思えないけど。

柚季「そんなの行ってみれば分かるわよ。お客にチェックインさせた後、昼間にお風呂清掃する旅館なんて普通ないわよ」

確かに普通はそうなのだが。

乃々香「私、東京にいた時に一軒だけ知ってるよ。鬼○川温泉の×××」

※筆者体験談です。

乃々香「お風呂には入れたんけど、湯船にホースいれたままで掃除続けてて……」

24時間入浴可能の宿ならば、早朝に清掃しているのは珍しくはないのだが、お客のいる時間の昼間はねぇ……
場の空気が固まったのに気付き、こはるが慌てて繕おうとする。

こはる「と、とにかくお風呂に行ってみましょうよ」

やっぱり清掃中でした……

温泉に入れずそのままゲームコーナーへと流れて行く。そこにはあの日、私が満点を出したパンチングマシーンが。

ノエル「わーい、ノエルこれやる~」

汐音「今回は壊れていないようね」

乃々香「えっ!? これって壊れてたの?」

汐音「そうよ、あなたたち知らずにやったの?」

柚季「なんだぁ、乃々香、満点出すんだもん。ビックリして損しちゃった」

乃々香「よし、ならみんなで競争しましょ! 最下位の人がみんなにジュースおごりね」

ノエルがどうせ最下位だろうし、その時は私がおごるつもりで提案したのだが。

結果は1位、汐音と私、やっぱり満点。また壊れてるのかな……。3位こはる。4位ノエル。柚季が最下位。

……ノエルに負ける柚季っていったいなに。

チュンチュンチュン……
その後、温泉では一騒動あったものの、何事もなく朝を迎えた。寝る前の枕投げなど定番の行事はあったけど。

ノエル「温泉楽しかったね♪ またみんなで来ようね」

ノエル「(あれ? 誰か忘れちゃってるような気がするけど、まぁいいよね)」


時間は遡り、前日の夕方。工芸御殿前で一人淋しくベンチに座る人影。

湊太「なぁキリゴン。俺、やっぱり店番なんだな」

キリゴンの顔出し看板に愚痴っている。ふと看板に付いた紙に気付き手に取ると。

湊太「ん? なんだこの張り紙は……『次回は入浴編だよ』って予告かよ!!」

以上で「みんなで温泉」完結となります。

引き続き「温泉に入ろう」です。



「温泉に入ろう」

・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

夕食も終わり、改めて温泉に入りに向かう。さすがに清掃は終わっていたのですんなりと入ることが出来た。

ノエル「ひゃっほぅ~。脱いで、脱いで~」

乃々香「こらっノエル! 騒がないの」

よほど楽しみにしていたのか、脱衣所に籠に浴衣を脱ぎ捨ててお風呂へと駆けだしていく。

柚季「ひゃっは~。脱いで、脱いで~」

乃々香「柚季まで……」

一緒になって走ってゆくが、柚季はさすがに真似しちゃダメだろ。それに『ヒャッハー』って。それじゃどこかのザコキャラだから。

汐音「まだまだ子供ね……」

こはる「他のお客さんの迷惑になるからダメだよぉ~」

ノエルなら笑って許してもらえそうだが、柚季はきっと無理だろうな。

柚季「誰もいないから平気へいき~」

確かに脱衣所の籠に、先客がいればあるはずの浴衣はどこにもなかった。

乃々香「あれ、本当だ。貸切みたいでよかったね」

こはる「ご飯のときには、あんなにお客さんいたのにねぇ」

話の都合上モブがいると困る……まぁ困るんですが、実の所はそうではない。

汐音「またノエルが円盤の力を使って何かしてるんじゃないの? こんなのって都合良すぎるもの」

ノエル「ぽっかぽか~♪」

すでに露天風呂でご満悦な様子だが、おそらくノエルの仕業だろう。他のお客さんに、無意識のうちに温泉に入りたくないと思わせるとか。

乃々香「まぁせっかくだし、このまま使わせてもらいましょう」

みんなで並んで露天風呂に浸かる。

ノエル「温泉やっぱり大きいね。本当にぽっかぽかするよ。みんなで入ると楽しいね♪」

汐音「そうね、みんな一緒だといいものね」

と、唐突にノエルが立ち上がると。

ノエル「湯気さん! 湯気さん! 飛んでけぇ~!!」

柚季「ノエル!? 急にどうしたのよ」

ノエル「ノエルは円盤だから……円盤なら湯気が薄くなっても、いっそ無くなっても大丈夫だから」

こはる「ノエルちゃん? 何の話をしてるの」

汐音「世の中にはそういう需要もあるっていうことよ。ノエルも処世術が分かってきたようね」

乃々香「ねぇ汐音……ノエルと連絡取り合ってるのは知ってるけど、あまり妙なことは吹き込まないでよね」

ノエルは再びお湯に浸かり、今度は柚季の顔よりやや下に視線を止めると。

ノエル「ところでユズキ? なんでユズキの、みんなと比べてそんなに小さいの?」

柚季は元から赤かった顔をさらに真っ赤にし、私たちはあまりのストレートな質問に思わず吹きだしてしまった。

柚季「ちょっとノエルッ!! 私のはね、まだみんなと違って発展途上なのよ!! まだまだ成長の余地があるって言ってよね」

必死の弁明をする柚季だが、ノエルはさらに追い打ちをかける。

ノエル「でも、ノエルのと比べてもちいさ……ウグッ」

さすがに途中でノエルの口を後ろから塞ぐ。

乃々香「ノエル!! ストップ!! 柚季もほら、子供の言うだし気にしないで……ね」

だが、柚季は下を向いたままブツブツ言っている。

柚季「……そうよね、私のが小さいのはきっとね」

ビシッと上空の円盤を指さすと。

柚季「きっと、あのバカ円盤が私から奪い取ってたからなのよ!! 不思議な……見えない何かで!!」

柚季は確か前にもそんな事言ってたような気がする。結局円盤は全然関係なかったけど。

汐音「そうね……」

汐音「(同じ町にいて、こはるには影響なかったのにね。まぁそういう事にしておきましょう)」

こはる「まだまだ元気そうねぇ」

こはる「(無理して強がってるのバレバレだよぉ)」

それぞれの本音と建前。私の拘束から逃れたノエルが反論する。

ノエル「ノエル、バカじゃないもん!! それにユズキからなんて奪わなくたって充分大きいもん!!」

円盤=ノエルなのだから、バカと言われて怒る理由もわかるが、先にケンカ売ったのはノエルじゃない。

ノエル「それに……そんなことしたら、ノエルの逆に小さくなっちゃうよ」

嘲笑混じりの見下したようなノエルの言葉に、その場の空気が一気に氷点下まで下がったように感じた。
あーぁ、止め刺しちゃったなこれは。

乃々香「私も柚季のは……まだまだこれから成長すると思うよ」

とりあえずフォローしてみるが、もう柚季の耳には届いていないようだ。

柚季「もういい!! 同情なんていらない!! みんなもそう思ってるんでしょ!! 私より大きい奴はみんな敵よ!!」

湯船から飛び出し、露天風呂の出入り口のドアへと駆け寄りながらさらに続ける。

柚季「それから円盤反対!! 絶対反対なんだから!!」

そして、滑って派手にすっ転んでからドアの中へと消えていった。すぐ立ち上がってたし怪我はしてなさそうでよかったけど。

ノエル「あれ……どうしてユズキ帰っちゃったの?」

乃々香「何をすっとぼけてるのよ!ノエルがあんな事言うからでしょ!!」

ノエル「あんなこと?」

本気で分かってないようだ。

こはる「ノエルちゃんがね、柚季を傷つけたんだよ」

汐音「柚季が一番気にしてることだものね」

ノエルもさすがにしょんぼりとしつつ。

ノエル「みんなでニッコリになれないの? ノエルのせい? ノエルがいけなかったの?」

乃々香「100%ノエルのせいでしょ!!」

ノエル「ごめんなさい……ユズキの『手』がみんなより小さかったから」

しばらくの静寂……水滴の落ちる音だけが響く。

3人「えっ!? 手の大きさなの!?」

確かにあの時、ノエルの視線の先には、柚季はタオルを押さえる為に、胸の前に両手があった。

ノエル「うん、ノエル、ユズキにあやまってくる」

立ち上がるノエルを、私たちは大笑いながら引き止める。後で真相を知った柚季が見ものだなこれは。


ちょうどその頃、工芸御殿前で湊太は、いつものようにキリゴンの顔出し看板に話かけている。

湊太「なぁキリゴン。俺の存在理由ってなんなんだろうな」

キリゴン「お前はお前さ、そんなことどうでもいいじゃないか。温泉なんて行けなくたって」

もちろんキリゴンの看板が喋った訳ではなく、湊太の一人芝居なのだが。

湊太「店番終わったら一緒に足湯でも行こうな」

キリゴン「ああ、付き合うぜ。だから元気だせよ」

湊太に新しい親友も出来たし、よかったよかった。

以上で「温泉に入ろう」完結となります。

次回「バレンタイン計画」・「ホワイトデー事変」 3月14日更新予定です。

「バレンタイン計画」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

今日はひさびさにみんな揃って天文台にやって来ている。汐音も週末になるとこちらに来るようになった。お金持ってるなぁ……

乃々香「今日2月14日はバレンタインデーだね」

そう、2月14日。今年は土曜日なので天文台に集まったというわけだ。雪も少ないし、問題無くここまで来れた。

ノエル「バレン……タインデー?」

相変わらず固有名詞を知らないノエルが不思議そうに聞いてくる。

乃々香「バレンタインデーっていうのはね、女の子が男の子にチョコレートをあげたりして自分の気持ちを伝える日なんだよ」

ノエル「チョコレート!? あのあま~いの!? ノエルも欲しい!! ノエル、今から男の子になる!!」

チョコレート欲しさに性転換するとか……ノエルなら簡単にやりそうではあるが。そんなノエルの傍らで湊太がなにやらブツブツと。

湊太「バレンタイン……そんなイベントは去年で廃止になっただろ。バレンタインはなくなりましたってニュースで見たぞ」

現実逃避してるし、まぁ去年まで1つも貰えてないことは柚季に確認済みだ。そんな湊太を見ている私の服の袖が引っ張られる。

ノエル「ねぇねぇノノカ、ノノカ~。ノエル男の子になったよ。だからぁ、チョコレートちょうだい!!」

結んだ髪をほどいてから、無理矢理纏めて短髪に見えるようにしドヤ顔のノエル。涙ぐましい努力は認める……

乃々香「はいはい、分かった、分かったから。ノエルにもあとでチョコレートあげるからね」

笑いに包まれる天文台。まだブツブツ言ってる湊太を除いて。

ノエル「やったぁ~!! チョコレート! チョコレート!!」

大喜びのノエルと。

湊太「ノエルですらチョコ貰えるのに……俺なんて」

みんなの顔を見渡し、お互いに頷き合う。ミッションスタートだ。

乃々香「はい湊太、義理チョコだけど受け取ってね」

私が目の前に差し出したチョコレートに、湊太は明らかに戸惑っている。

湊太「えっ!? 本当に俺になんかにくれるのか!?」

乃々香「もちろん、どうぞ」

受け取る湊太、手……震えてるけど。そこへ続く声が。

汐音「乃々香があげるのなら……私も義理だけどあげるわ。ほら、受け取りなさいよ」

ちょっと恥ずかしそうにしつつもチョコレートを取り出し、汐音は湊太の前へと差し出す。

こはる「みんなズルいよぅ。私はね、義理とかじゃなくって、普段お店を手伝ってもらってるからお礼っていうか……」

高級そうなチョコを差し出すこはる。あれ? ひょっとして本気なのかな。

柚季「私は別に……お兄ちゃんのことなんてなんとも思ってんないんだからね! はい、余ったからこれあげる!!」

照れ隠しからか、早口でそう言うと柚季はチョコを湊太に押し付ける。

湊太「えっ? なんなんだみんな急に……そうか! これは夢だな!? どうせ夢オチだろ!!」

突然のモテ期到来に混乱したのか、湊太は訳のわからないことを言い出す。

湊太「ノエルッ!! 俺を思いっきり殴ってくれ!!」

ノエル「うんっ、わかった!! ソータのお願い叶えちゃうよ!!」

『ドスン』と鈍い音が天文台に響く。

湊太「ぐほっ!!」

容赦の無いノエルの右ストレートが、湊太の腹へ突き刺さる。ノエルは湊太のお願いを叶えただけだしね……

湊太「痛いよぅ、お腹か痛くて死んじゃうよぉ……って痛い!! ということは夢じゃないのか!!」

乃々香「イヤだなぁ湊太ったら、みんな湊太のこと、その……」

湊太「みんな、ありがとうな。俺、今日のこと絶対忘れないよ」

湊太「(いままで女子に囲まれてて何も起きなかったのに……生きててよかった~)」

涙を流し大喜びしている湊太。よし、すべては計画通り。

ノエル「ソータいいなぁ~」

じゅるる~とよだれを垂らしながら、ノエルは羨望の眼差しで湊太を見つめている。

ノエル「ノエルもチョコレート欲しいよぉ~」

乃々香「だから、後であげるからね」

湊太はチョコレートを抱え先に帰って行った。ノエルのパンチがよほど効いたらしく多少フラフラしてたけど。

乃々香「みんな、今日は手伝ってもらってありがとうね」

こはる「湊太にバレンタインプレゼントなんて……去年までは意識すらしていなかったわ。ありがとう乃々香」

汐音「サプライズバレンタインか。乃々香らしくていいんじゃない」

ごめんね二人とも、本当の目的は私と柚季しか知らないんだ。

柚季「わ……私は本当にどうでもよかったんだけど、乃々香がどうしてもっていうから」

明らかに不自然な柚季。あまり喋るな! 計画が二人にバレるわ。

天文台からの帰り道、こはると汐音から自然に距離をとり、柚季とノエルの3人になり歩きながら。

柚季「フッフッフッ、うまくいったわね乃々香。湊太、全然気づいてないわよ」

私も自然と笑みがこぼれる。

乃々香「そうね。これで来月には……ホワイトデーにはキッチリとお返し物が貰えるわね。もちろん3倍返しでね」

そう、これが柚季と計画した本当の目的。別に湊太を喜ばそうなどという考えはない。ノエルが突然歩みを止めると。

ノエル「……!!? なんだかドス黒い願いというか欲望を感じるよ。ノエルやっぱりチョコレートいらない……」

あ、気付かれた。あとでオムライスで買収しておくか、ついでにチョコレートも付けてね。

以上で「バレンタイン計画」完結となります。

引き続き「ホワイトデー事変」です。


「ホワイトデー事変」

・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・湊太

ノエル「『何かを得ればそれと同等の対価を支払わなければならない』どこかの錬金術師みたいだけどね、これが宇宙の真理なんだよ。
そしてね……これは、その禁を犯しちゃったある少年の身に起こった悲劇なの」


夜も明けきらぬ早朝、突然鳴り響くスマホに起こされ不機嫌な少女がここに。

乃々香「ん……まだ朝の5時よ!? 誰よもうっ、こんな時間に!!」

画面を確認するとそこには『柚季』の文字が。

乃々香「柚季? もしもし……」

電話に出ると早朝とは思えない大声で、柚季が捲し立ててくる。

柚季「乃々香大変よ!! お兄ちゃんが、湊太がいなくなったの!!」

乃々香「なんですって!?」

一気に眠気が吹き飛ぶ。

柚季「部屋に『捜さないでください』って手紙を残して。きっと、気付かれたのよ、今日が何の日か!!」

バカな、計画は完璧だった。1カ月前の仕込みでも全く気付いた様子はなかったのになぜ。

乃々香「そんな、あの湊太に気付かれるなんて! そして逃げ出すなんて……絶対に逃がさない!!」

会話を終えスマホを切る。計画が破綻した悔しさ。そしてなにより、気付いて逃走を図った湊太への怒りがこみあげてきた。
ベッドの縁に腰をかけ座り寝室を見渡す。当然誰もいない。気配すら感じないのだが、絶対にいるという確信を持って声をかける。

乃々香「ノエルッ!! 居るんでしょ!! 隠れてないで出て来てよ!!」

一瞬の静寂。それから自分の座っているベッドの下から伝わってくる妙な感覚。やっぱりいたよ……
ベッドの下にあったはずの衣装ケースが向こうの壁際に並んでいるし。ノエルはひょこっと私の足の間から顔だけを覗かせると。

ノエル「んぁ……おはよう~ノノカ。どうしてノエルが居るって分かった……」

すっごくイライラしてるし……ちょうどいいからストレス解消に踏んでおこう。

ノエル「ふぎゅ!?」

奇妙な悲鳴が上がるが無視して、その足にさらに力を込める。

乃々香「おまえは都市伝説か妖怪の類か!? いつも言ってるけど、乙女の寝室に無断で侵入しないで!!」

ノエル「うぐっ!! むぎゅ!! ゴベンナザイ……」

頬を踏んでいるせいでうまく喋れないようだ。少し気も晴れたしこれくらいにしておくとしよう。

乃々香「それより湊太がどこに行ったか捜したいから手伝って!! 手段は問わないから!!」

ノエル「(顔を踏みつけておいてそれよりってヒドイよノノカ……それにノノカってけっこう重たい)」

ベッドの下からようやく這い出し、部屋にあったクッションの上に正座すると、多少怯えた瞳で黙ってこちらを見つめている。

乃々香「ん!? 何か言いたいことでもあるの?」

ノエル「ないです……ところで、なんでこんな時間からソータを捜さないといけないの?」

理由を聞かれ、再び怒りがこみあげてきた。

乃々香「今日が3月14日だから! ホワイトデーだからよ!!」

ノエル「ホワ……イトデー?? ってなぁに?」

チッ、いちいち面倒くさいな。

乃々香「ホワイトデーはバレンタインデーにチョコレートを貰った男子が、そのお礼として全身全霊で女の子の願いを叶える日よ!!」

ノエル「ノノカがソータにあげたの、コンビニで100円で買ったチョコ……」

私が睨むと黙った。素直でよろしい。

乃々香「金額の問題じゃないのよ!! 気持ち、気持ちの問題よ!! チョコ貰っておいてお返しせずに逃げるなんて、絶対に許せないわ!!」

ノエル「(あの日感じたドス黒い願いはこれだったんだ……それに、ノノカって一度決めたらあきらめないから)」

全くやる気も無く、眠たげにしているノエルに向かって報酬を提示する。

乃々香「ノエル! 湊太を見つけたらスペシャルオムライス一週間食べ放題よ!!」

何がスペシャルなのかは秘密だけど。

ノエル「きらーん☆ 全力で捜しちゃうよ!!」

一気にやる気全開モードのノエル。フッ、チョロい。

ノエル「ソータはねぇ……霧弥湖町にはもういない。んーとぉ、自転車で4時過ぎに北美の方に行ったよ」

円盤の力を駆使してあっさりと湊太の行方を見つけ出した。

乃々香「北美ね。追うわよノエル!!」

時計を見るとまだ6時前だ、そんな遠くまでは行ってないだろう。まだ充分追いつける。

乃々香「始発のバス間に合うわね、行くよ!!」

ノエルは私の言葉に戸惑いを見せる。

ノエル「えっ!? ノエル円盤の見えない所に行くと、どうなっちゃうのかノノカ知ってるよね?」

もちろん知っている。それでも広い北美で、私だけで湊太を見つけるのは不可能。ここは無理を承知で連れてゆく。

乃々香「ノエルの力がどうしても必要なの!!お願い、力を貸して!! ハンバーグも付けるから!!」

ノエル「そこまでノエルを頼ってくれるなんて……うんっ! まかせて。ノエル頑張るから!!」

別に嘘は言ってない。ノエルの、円盤の力が必要なのは事実だ。たとえその後ノエルがどうなろうと、今日はそれどころではないのだ。
とりあえず、大きなダンボールを持ってゆくとしよう。たぶん使うことになるから……

~~数日後~~

こはる「お昼過ぎに、湊太は乃々香によって霧弥湖町に連れ戻されました。その後の湊太を見た人は誰もいません……その日の夜に霧弥湖畔で何かを
している柚季と乃々香を私は見たんだけど、失踪前の置手紙があったので警察では家出として処理されたみたいで」

湊太の写真を手に取り溜息をひとつ。

こはる「え、ノエルちゃんはどうしたって? 円盤の見えない所で無理して力を使わされて……探索能力に瞬間移動、当然北美祭のときみたいに倒れ
ちゃってね、当日指定のお急ぎチルド便で、夕方には乃々香の家に無事着いたらしいよ。『ナマモノ』って貼られた大きなダンボールに詰められて」

そこまで言うと、ふとある事に気付く。

こはる「そうだ! ノエルちゃんに湊太を捜してもらえばきっと……」

突然部屋の中に風が吹いた。乃々香とノエルがこはるの目の前に現れる。

乃々香「こはる、湖に沈んだ人のことは忘れてね。ノエルッ! やっちゃいなさい!!」

ノエル「ううっ……コハルぅ、ごめんね。スペシャルオムライスにあんなものが入ってるなんて。ノエル、ノノカにはもう逆らえない身体なの」

ノエルの手から、こはるの頭に向けて、白い光が放たれる。

こはる「あれ? 私何を? 乃々香、ノエルちゃん、いらっしゃい。お饅頭持ってくるねぇ~」

以上で「ホワイトデー事変」完結となります。

次回「こはるの父」3月18日更新予定です。

「こはるの父」


・作中時系列……6話終了~9話終了時点

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・他

今日は柚季とこはるが家に遊びにきている。今はリビングでのティータイム。
ノエルは『ノエル今日は大切な約束があるの、準備もしないといけないんだ』とか言って珍しく来てはいない。


こはる「はい、お饅頭持ってきたよ~」

もはや定番。『しいはら本舗の円盤まんじゅう』である。

乃々香「いつもありがとう、いただきます」

お礼を言いつつ1つ手に取る。柚季はすでに食べだし、なにか納得のいかない表情で。

柚季「……やっぱり子供の頃食べた温泉まんじゅうのほうがおいしかったような」

温泉での件をまだ言っている……

こはる「もうっ、柚季ったら。昔から材料は何も変わってないよぉ」

そう言えばそのときに、こはるの家は手広くやってるって柚季が言ってたけど。

乃々香「ねぇこはる。こはるのお父さんって何してるの? 私会ったことないんだけど」

柚季「あっそれ。私も知りたいな」

柚季も知らないとは意外だった。

こはる「……」

なぜか黙ってしまうこはる……悪い事聞いちゃったかな。

乃々香「ごめんこはる、答えたくないなら別に無理には。もしかして、私のお母さんみたいに」

柚季「亡くなってなんかないよ、私この前会ったもの。でもいつも忙しそうで、お店にはいないんだよね」

こはる「うん、元気だよ。元気なんだけど……」

やはり何か話にくい事情があるようだ。そんな事など全く気にもしないで

柚季「なんてったって地元有数の観光企業の社長さんだものね」

こはる「……」

柚季「政治家とかやってそうだよね、市議会議員さんとか」

こはるが柚季を見る、というか睨んでるようにも見える。
本当に市議さんなのかな、でもどうして隠す必要があるんだろう?

テレビ「次のニュースです。今年度の円盤対策費倍増を、議会の反対を押し切って決定した椎原知事は……」

つけっぱなしだったテレビから聞こえてきた名前に驚く私と柚季。

乃々香「えっ……しいはら!?」

柚季「ねぇ乃々香、知事ってなぁに?」

いやそれ、ノエルだからいいのであって、柚季がやってもダメだから……柚季も分かってて聞いてるみたいだし無視しよ。

こはる「……父です」

映像に名前のテロップ付の画面を見て、溜息をつきながら観念した様子で話すこはる。

乃々香「へぇ~、知事さんだったんだ。でもなんで隠したりしたの?」

そう言いつつもニュースで言っていたある言葉がひっかかる……
円盤対策費っていったい何に使ってるんだろ、それも倍増って。まさか政治家さんの裏金とか!?

柚季「あはは……そうだったんだ、全然知らなかったよ」

驚きのあまり柚季の笑い声も上ずっているが。

柚季「(社長であり知事の娘!! 湊太! 留学やめろ! こはるとくっつけ!! おまえならできる。目指せ逆玉!!)」

そんな様子を見て、こはるは若干の怒りと苛立ちを感じさせながらも営業スマイルで。

こはる「あのぅ……お客様。何を考えてるのかは知りませんが、世の中には知らない方がいい事もあるのですよ」

怖い……怒らすと一番怖いのはこはるだと改めて実感する。

乃々香「ふぇっ!? 何も、何も考えてないって。ねっ柚季」

柚季「う……うん、イヤだなぁ、こはるったら」

しかし、こはるがここまで隠したかった理由……やはり何か人に知られてはいけないことを、父がやっているのだろう。
そして、こはるは知ってしまったのだろう、それがどんな事であるかを……

その日の夜の天文台。ノエルの元にこはるの父である知事、そしてこの町に戻って来てから秘書になったばかりの古宮修一が訪ねてきている。
どこから持ち出したのか、望遠鏡の下には畳を敷き詰められている。その上で知事とノエルは、座布団に座り向かい合わせになり、互いに顔
を近づけてのヒソヒソ話……

知事「円盤さま。今年度分の山吹色のお菓子でございます」

ノエルの前へと差し出される『円盤まんじゅう』の箱。ノエルは蓋を開け中を確認する。一見お饅頭なのだが、はたしてその中身は……

ノエル「うんっ! 甘くておいしい~」

ただのお饅頭だったり。

知事「これを一年分で……来年もまた、円盤を霧弥湖上空にお願いします」

中身を確認しノエルはご満悦の様子で。

ノエル「クックックッ……円盤でボロ儲けとはシイハラ……そちもワルよのぉ」

ノエル「(わ~い、お饅頭たっくさ~ん!! ノノカたちより知事さんのお願い優先しちゃおっと♪ 7年間これのおかげでノノカ待ってられたし)」

階段を降りてゆく知事と秘書。その後ろ姿に向かって。

ノエル「知事さ~ん。『越後屋・悪代官ごっこ』またやろうねぇ~」

ノエルはただの遊びでやっていたようだ……2人は車に乗り込むと。

修一「なんなんですかあの子供は? それに知事もあんな遊びに付き合うなんて……」

知事「言うな! 儂だって恥ずかしいの我慢してるんだ。そういえばお前はノエルに会うのは初めてだったな」

修一「はい、円盤とか言ってましたが……」

車窓から上空に浮かぶ円盤を見つつ。

修一「あれの正体が、本当にあんな子供なんですか!?」

知事「そうだ、あの子のおかげで円盤対策費で裏金作り放題なのだから、饅頭届けに行くときには失礼のないようにな」

どうやらこちらが真の悪代官のようだ……

修一「えっ!? 次からは私が一人で行くんですか? もしかして毎回アレをやらされるのですか」

黙って頷く知事、就職早々転職を考える修一。どうなる古宮家の生活!? まぁ転職する前にノエルに関する記憶は消されますがね。

以上で「こはるの父」完結となります。

次回「聖地巡礼ガイド」3月21日更新予定です。

「聖地巡礼ガイド」


・作中時系列……13話終了後。情報は2015年3月21日現在。

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

湊太「ということで、今回は真面目に聖地巡礼の解説をするぞ。何のオチもないからな。俺が司会進行するんでよろしく」

柚季「はいは~い。質問~」

湊太「なんだ柚季?」

柚季「なんで湊太なんかが司会なの? 乃々香やノエルのほうが適任じゃない」

乃々香「司会なんて……私はそんな柄じゃないよ」

ノエル「ねぇユズキ、しかいってなぁに?」

こはる「ふたりともやる気じゃないのよねぇ」

汐音「面倒だから湊太がやりたいならいいんじゃない」

柚季「そんな適当に決めていいの? バカ湊太に司会なんて無理じゃないの」

湊太「俺が立候補した訳じゃない。進行上適任なんだそうだ。理由は知らないがな」

柚季「あっそ、それならもういいわ。さっさと始めて」

湊太「お前が邪魔したんだろうが! じゃ改めて。ここでは『天体のメソッド』に登場した聖地の情報を分かる範囲でまとめていくからな」

汐音「個人サイトで分かりやすくまとめてくれてる所も多いわよ」

湊太「それもそうだが、結構知らない人も多いみたいだからやっておこうかと……」

こはる「ここ見てる人の方がずっと少ないよぉ」

湊太「いいからやるぞ! じゃまずはスマートフォンアプリの『そらメソカメラ』のフレーム解放条件な。ポスターの場所でもあるし、それぞれよろしく。あとこ
の後紹介していく所は、ほとんどはストリートビューで確認できるからな」

乃々香「私は期間限定で今アプリを起動すれば解放されるけど。いちおう場所は『金毘羅火口展望台』なんだけど、ここは今行けるのかなぁ? 調べてもホームペ
ージもないし、散策路と一緒なら冬季閉鎖中なんだけど、散策路閉鎖後も雪が積もってないときはやってたみたいね。それと展望台は私有地なので、見学料が1グ
ループ5人までで1000円かかるわ。1人でも車で行っても歩いて行っても、とにかく1グループ1000円だから注意してね。行く人同士現地で5人集まれば
1人あたり200円の計算になるけど」

ノエル「ノエルのは最初から使えるからいいよね。場所は洞爺湖中島の『中島大黒天御堂』の鳥居前だよ。行くには遊覧船を使ってね。1420円かかるからね。
エスポアール号の中にはポスターと色紙が飾ってあるよ。あれ? 汐音どこぉ~? あとやっぱり冬の間は、中島では降りられないからねぇ。『洞爺湖汽船』で検
索して確認してね」

(http://i.imgur.com/Hofla73.jpg) ( http://i.imgur.com/Vp4Hm0d.jpg) (http://i.imgur.com/mV666yS.jpg)

汐音「私のポスターは扉の所に貼ってあったのが無くなっちゃっただけよ……最初から仲間はずれだったわけじゃないから」

ノエル「じゃあここは?」

(http://i.imgur.com/Ged9SE0.jpg)

汐音「万世閣ホテルの中ね。ここは……こはるもいないからいいの!」

こはる「私も仲間はずれなんだ……私の解除ポイントは洞爺湖の北岸の『とうや水の駅』っていうドライブインみたいなことろなの。この建物の裏に5話で花火をやっ
た桟橋があるよ。あと私だけポスターの場所が違うみたいなの。ポスターは『サイロ展望台』っていう別のお土産屋さんからの景色だよ。ここはまた後で説明するね」

汐音「私は『桜ヶ丘団地』ね。洞爺湖ビジターセンターの裏手から金毘羅火口災害遺構散策路に進んで少し先の『公営温泉やすらぎの湯』の前よ。エンディングで
乃々香が走って行く所ね。もちろん遺構だから今は廃墟よ。ここも冬季閉鎖中だけど、フレーム解放だけならビジターセンターの裏の道路に出れば解除出来るわよ」

(http://i.imgur.com/0QpISic.jpg)

柚季「私は3話で『いっちば~ん』した『浮見堂公園』ね。温泉街から遠く離れた、洞爺湖の北岸で『とうや水の駅』から1キロくらいの所よ」

湊太「俺は……ないんだよな。そうか、だから司会進行役な訳か。それと冬季閉鎖中のところは、基本的には4月末まで閉鎖になってるけど、その年の積雪次第だから
もっと早く解除されることもあるからな。今年は雪少ないし、ちなみに去年の散策路の解除日は4月20日だ……って投稿前に観光協会のホームページ更新されたな。
今年も4月20日オープン予定だそうだ。よし次いくぞ。それぞれの自宅の説明よろしく。俺やっぱり出番なしかよ。柚季と家一緒だものな」

乃々香「えぇと、家の場所はね『四十三山散策路入口』にあるの。温泉街から東側の、東町バス停から歩くと10分くらいかな。セイコーマート壮瞥温泉店を目印にし
て、そこから山側に真っ直ぐだよ。作中で天文台へと続く木製の階段はあるわよ。建物のモデルは、先日発売された『天体のメソッド memories』の中に書かれいてる
通り、こはるのお店のモデルになった『民芸御殿』の隣だよ」

(http://i.imgur.com/ZUkqiUy.jpg)

ノエル「ノエルはねぇ、天文台なのかな? ここは『森と木の里センター』だよ。ここは4月末まで冬季閉鎖中だからね。早くなることもないみたい。ちなみにぃ、み
んないつも歩いて天文台に来てるけど、温泉街から歩くと片道1時間半はかかるからね。問い合わせは管理している『北の湖記念館』だよ。天体ドームは壮瞥町役場だ
って。キャンプをしたり、建物の中の和室でも泊まれるんだよ。予約は1カ月前からだから、4月1日からだよ。ねぇノノカ、これでいいの? ノエルちゃんとみんな
に伝えられたかなぁ?」

こはる「円盤御殿のモデルはね、外観は乃々香のときにも出た『民芸御殿』だよ。温泉街からは東に離れてるの。昭和新山行きのバスが夏ダイヤで再開されれば前を通
るよ。お店の中はポスターの場所の『サイロ展望台』なの。ここは洞爺湖の北西で、地図だと『とうや水の駅』から5キロ程で近く感じるかもしれないけど、湖面から
200メートルもの高台だから、歩くのはやめたほうがいいかも。立地のモデルは温泉街の西の端ね。小さな観光案内所と遊覧船に乗る人の駐車場になってるよ」

(http://i.imgur.com/u6ra1S1.jpg) (http://i.imgur.com/hYaMWxh.jpg)

汐音「私のアパートのモデルも札幌市内に実在してるわ。だけど当然無関係の人が住んでるわけから、場所は教えられない。もし住民の方に迷惑かけたら……ビンタね。
似た建物が多くて候補は3か所あるわ。今ならすべての物件で空室があるみたいね。一カ月36000円~45000円くらいよ。どう? 私の部屋に住んでみる?」

柚季「ウチは『望羊蹄』っていうレストランね。故・高倉健さんの写真が飾ってあるわよ。場所も一緒。円盤御殿の立地モデルの場所から、東に少し歩いてね。5話で
ノエルの食べたオムライスは1200円で、汐音のコーヒーは500円よ。とってもおいしいから、みんな食べに来てね。ちなにみ1人でオムライス頼んで写真撮って
るとお店の人に巡礼者だって気付かれるからね、具体的にはこんなことね」

(http://i.imgur.com/GCX0c4D.jpg) (http://i.imgur.com/7Dv8tcm.jpg)

湊太「よし、全員終わったな。次は各話に出てきた場所か……文章だと分かりにくそうだな、まぁやるだけやってみようか」

乃々香「その前に、これ結構勘違いしてる人多いみたいだから、霧弥湖~北美の距離についてね。作中ではバスで30分400円だけど……実際の洞爺湖~札幌は中山峠
経由で2時間40分2780円で、さらに予約制のバスになるわ。札幌に泊まって巡礼しようとは思わない方がいいわよ。それぞれ1日日程を別にとってね。バスの時刻
表は道南バスのホームページで確認してね。冬ダイヤだと洞爺湖に12時50分着で17時10分発で札幌に戻らないといけないから温泉街の近くしか行けないわね」

湊太「冬ダイヤだと温泉街から水の駅すらかなり待たされるものな。夏ダイヤでどれだけ増えるのだか。現地移動でバスはあまりお薦めできないぞ。こちらもホームペー
ジ更新されたが……洞爺湖周辺や札幌便についての変更予定はまだないみたいだな。レンタカーでもいいが、北海道はガソリン代が全国平均+10円くらいするから、い
ざ給油するときに驚かないようにな」

汐音「札幌の聖地を先に紹介するわ。とはいえ、観光名所が多いから大丈夫よね。北美中学校は北海道庁旧本庁舎、年末年始以外はやってるし見学無料よ。テレビ塔や
大通公園の説明いらないわね。西4丁目からテレビ塔にかけて多数登場してるわ。9話で乃々香と修羅場を演じた滝のような壁は、雪よけがされれて今は見れないわよ」

(http://i.imgur.com/r6WhVjT.jpg)

ノエル「ノエルが倒れちゃったのは西2丁目だよ」

柚季「8話で買い出しした『東京ハンズ』はバレバレだろうけど『東急ハンズ』の札幌店。1話でバスに置き去りにされたのは、札幌駅バスターミナルの10番乗り場」

乃々香「7話でお父さんにおくってもらったのは札幌駅の北口ロータリーね」

湊太「ついでだから7話の全部紹介しようぜ、いっぱいあるから」

柚季「じゃ、順を追って。私が『はやくはやく~』した改札は地下鉄南北線の大通駅改札口前よ。あの型番の電車は今は走ってないわ。そして電車に揺られてって」

こはる「乗り換えで降りて、お弁当を食べた豊野駅は、室蘭本線の豊浦駅だよ。実際だと洞爺駅の1つ西隣の駅なんだよね。なんでこんな遠回りしたんだろうねぇ」

柚季「何言ってるのよこはる、ここからがとんでもないんじゃない! そこから着いた幌美内駅なんて……」

乃々香「モデルはなんと予讃線の豊浜駅。観音寺市だもんね」

ノエル「かんのんじ? ノノカ、それってどこ?」

乃々香「四国の香川県……」

こはる「それでぇ、乃々香がリンドウの花を買ってた花屋さんが」

乃々香「東京都中央区銀座……」

汐音「どれだけ時空が捻じれてるのよ!! ノエル、あなた何かしたの?」

ノエル「なんにもしてないよ。ノエル、湊太と怪獣さんの看病してたもん」

乃々香「そこからバスに乗って着いた『幌美内大滝霊園』のモデルは、札幌市南区の『真駒内滝野霊園』だね。モアイや大仏、ストーンヘンジとか霊園とは思えないような
所よ。バス路線は今なら真駒内駅から20分ほどで1日4便、夏ダイヤなら札幌ターミナルから2便あるよ。この札幌ターミナルは、札幌駅のとは別の所だから間違わない
ようにしてね。大通東1にある中央バスのターミナルだから。テレビ塔のそばで、最寄りの地下鉄の駅は、バスセンター前になるよ。真駒内駅を経由するので夏は6便って
ことになるわね。汐音は7話ではバスで来てたものね」

湊太「ミスターや大泉さんもびっくりな長距離バスだなそれ。みんなケツの肉が取れる夢は見なかったか……」

柚季「あと、移動が多かったのは3話かな」

湊太「そうだな、それも1つずつ潰していこうか。先に断っておくが、実際に歩いて1日で回るのは不可能だからな。順番通りだと彫刻で湖1周半しないとダメだし、順不
同にしても50キロ以上歩くことになるぞ。それも戸川の部屋は除いての距離でだからな」

汐音「まず私の部屋、さっき書いたからいいわね。3か所とも関東からでもネットで物件検索すれば見つけられるから、知りたいなら自力で頑張りなさい。ただどの物件も
実際の間取りは微妙に違うみたいだけどね。ノーヒントもあれだから、3か所の最寄り駅だけ教えてあげるわ。南郷7丁目・バスセンター前・琴似よ。1番内装が似てるの
はバスセンター前の物件ね。私がベッドを置いてた所にクローゼットがあって少し狭くなってるけど。他の物件はさらに部屋の仕切りがあるものから」

柚季「次が『浮見堂公園』だからこれも省略っと。次よろしく~」

こはる「『サイロ展望台』の裏だねぇ、ここも説明はいいよね」

湊太「次は俺が柚季に因縁つけられる所か。浮見堂と水の駅とのちょうど中間点くらいだな。つかこのペースでずっと解説するのか!?」

乃々香「彫刻は『とうや湖ぐるっと彫刻公園』で検索してね。そのページに載ってる彫刻の番号だけ書いておくね。場所もそこで確認できるから」

こはる「1つ目。『22 THE EARTH VIBRATION とうや』」

汐音「2つ目。『38 STONE BOY-KAZE(TOYA)』」

柚季「3つ目。『44 輪舞』。で温泉街の洞龍の湯に到着して、乃々香が汐音にビンタされて、円盤御殿でノエルと合流してから」

汐音「『公営温泉やすらぎの湯』の前ね。ここも既出だから」

乃々香「西山火口散策路を通ってかなり南の『わかさいも工場跡』から、私が迷って行った『金毘羅火口』ってずいぶん北側の温泉街の方に戻ってるわね。そして行き着いたの
が1番南端の『とうやこ幼稚園跡』ね。あれ、私いつみんなを追い抜いたんだろう……1本道なのになんで?」

湊太「よし、3話これで全部だな。ついでに各話の彫刻もやっちまおうか。1番出てきてたのは遊覧船桟橋前の『3 風』だな」

(http://i.imgur.com/CyMhMgm.jpg)

ノエル「2話でノエルがノノカを待ってたのは『7 旅ひとり』で、5話のは『14 湖畔にて』だよ」

(http://i.imgur.com/P9BECZ1.jpg) (http://i.imgur.com/fXp0XoS.jpg)

柚季「2話で、私と乃々香がこはるから逃げた先は『2 回生』ね。今は雪よけのブルーシートが被されてて見れないわよ」

湊太「こなんもんかな、あとはなにかあるか?」

ノエル「おんせん~」

乃々香「そうね、6話の旅館のモデル『トーヤ温泉ホテル』はもう廃業しちゃってるのよね。建物自体は温泉街の東端に残ってるわよ。でも残ってる写真とかを見てもお風呂は別
のところだね。部屋とかもたぶん違うのかな」

(http://i.imgur.com/2mp48Um.jpg)

汐音「あちこちのホテルのホームページ見て探したけど、あの露天風呂の場所はまだ分かってないわね。完全に架空なのかもね」

こはる「あとは洞爺湖のバスターミナルかな。中は改装工事始まっちゃって、13話で汐音の使ったロッカーはもうないの。2階には、2話や5話で登場した役場のモデルの洞爺
湖町役場の出張所があるけど『円盤対策課』はもちろんないよ。その前にはいつまでやってるかは分からないけど、私たちの設定資料やポスター、立て看板などが展示してあるよ」

(http://i.imgur.com/t6IAEt1.jpg)

ノエル「4話でノノカが花火の写真見に行ってたのは、バスターミナルから少し南西の『洞爺湖ビジターセンター』だよ。年末年始以外はやってて見学無料だよ。あれ? でもこの
距離なら柚季が道塞いでたときの車のクラクションが十分聞こえるよね」

乃々香「北美に抜けるトンネルは『三豊トンネル』だね。温泉街から離れた西側。1話や12話で車の窓を開けてからのセリフがあるけど、実際はトンネルを出たらすぐ交差点だ
から、青信号だったら車の窓を開けてるうちに右折しちゃってるわね」

湊太「オープニングの場所は、まぁ出尽くしてるか。エンディングの場所にいくぞ」

ノエル「ひまわり畑はねぇ、『レストハウス梓』のなんだよ。温泉街から『民芸御殿』に向かう途中にあるの」

乃々香「この辺りでひまわり畑ってここしかないのよね。PVだとレストハウス梓の建物も描かれているから、ここでいいのかな」

湊太「俺が階段を降りてるところは、北岸のとうや水の駅近く『とうや小公園・中央公園』な」

汐音「私の後ろを8歳の私が駆け抜けるところは、洞爺駅の北側の『洞爺駅跨線橋通り線』ね」

こはる「私が手を引かれるのは、洞爺駅近くの道道578号線の『赤川一号橋』ってところだね。地図でみると川が流れてる辺りだよ」

柚季「私が歩いてるのは『西山火口散策路』のフットパスだね」

乃々香「あとの書いてないところは既出か不明なところよ。こはるの踏切のところは位置関係が微妙に違うけど、道道578号線の踏切らしいという情報はあるわ。ここにあるお
肉屋さんには、私たちのポスターが貼ってあるわよ」

湊太「これで全部終わったな。現地でグッズが売ってるのは『洞爺湖越後屋』と『洞爺湖万世閣』だな。温泉街の東側に2軒向かい合ってあるから。新宿のインフィニットで既に
売り切れの物も、越後屋なら在庫まだ残ってると思うぞ。万世閣は商品の種類が少なく、クリアファイル・ポスター・缶バッジのみだ。でもまだ2000円以上で色紙プレゼント
をやってるかも知れないので、欲しい人は確認してみてくれよ。1万円以上買えば全5種セットで貰えるぞ。それじゃまた会おうぜ」

(http://i.imgur.com/Xis3e5n.jpg)

ノエル「バイバイ~。あっ、円盤は洞爺湖の上にないからねぇ。でも、みんなにならきっと見えるって信じてるよ」

以上で「聖地巡礼ガイド」完結となります。

次回「寒くないの」 3月25日更新予定です。

「寒くないの」


・作中時系列……7話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・こはる・他

秋も深まり、つい先日は初雪も降ったばかり。
いつもと変わらず、学校から帰るとノエルが家の前にタイミング良く現れる。

ノエル「ノノカぁ~、おかえり~」

乃々香「ただいま、ノエル」

これもいつもと変わらず、駆け寄って来たノエルは私に抱き付いてきた。

乃々香「ノエルは、今日は何が食べたいの?」

もう食べるか食べないかではなく、何を食べるのかになってしまった。それほど毎日のように来ている。

ノエル「えっとぉ~、かい……かいせ……。あれ? なんだっけ? この前ユズキに教えてもらったの」

柚季もへんなもの教えてなきゃいいんだけど。ノエルはウチに来てないときは柚季の家で食事してるらしい。
レストランなので、代金は柚季のお小遣いから引かれてるみたいだけど……

乃々香「かいせ? まさか懐石料理とか!?」

ノエル「うんっそれ! ノノカ作ってよぉ~」

乃々香「無理! さすがに無理だから!!」

柚季め……覚えておきなさいよ。

乃々香「そうだ、今日はね特別な卵があるから、オムライスにしましょう」

ノエル「とくべつ?」

乃々香「そうっ、怪獣さんの卵が手に入ったから、それでオムライス作ってあげるね」

もちもんそんなものではなく、ダチョウの卵をもらったので、それを使ってみようかなと。

ノエル「怪獣さんの卵!? わ~い、ノエルいっーぱい食べる!!」

冷蔵庫の中にダチョウの卵と……玄関近くの草むらに同じような卵があったけど、また持ってきてくれたのかな?
ちょうどいいや、これも使っちゃえ。

ノエル「怪獣さんの卵すごいね。オムライス、いつもよりもおいしいよぅ~」

大きな卵を2つも使ったのですっごく濃厚な味になっている。鶏卵じゃないってこともあるけど。

乃々香「ノエルが喜んでくれて良かった。ところでノエル?」

ちょっと気になったので尋ねてみる。

乃々香「真夏のときと同じ服装だけど寒くないの?」

ノエル「ノエルは大丈夫だよ♪」

乃々香「でももう雪も降り出してるのに……」

ノエル「ノエルは円盤だから大丈夫なんだよ」

うん……よく分からないわ。とりあえず実験してみよっと。

乃々香「そうなんだ。ねぇノエル、お風呂が沸いたから入っていかない?」

ノエル「ありがとう~。……でもノノカの家のお風呂狭いんだよね」

乃々香「温泉と一緒にしないでね。だいたいどこの家もこれくらいだから」

お風呂場に一緒に行き、ノエルの服を脱がせて湯船へと入れる。42度の温度設定を……これでよし。

乃々香「湯加減はどう?」

ノエル「うんっ! ぽかぽかするよ」

乃々香「ぽかぽか……ね」

気持ちよさそうにしてるが、温度設定60度なんだけど……熱さを感じないのかなぁ。でもぽかぽかはする?

乃々香「じゃ、ちょっとお散歩行こうか」

お風呂から出て、着替え終わったノエルを誘う。

ノエル「行く~、お散歩♪ お散歩♪ ノノカとお散歩♪」

もう11月ということもあって外はかなり冷え込んでいる。氷点下まではいかないだろうけど。

乃々香「ノエル寒くない?」

ノエル「お風呂入ったからぽっかぽかだもん」

まだ頭から湯気上がってるものね。そうこうしているうちに、霧弥湖畔へ……よし、着いた。

ノエル「霧弥湖まで来ちゃったね。円盤さ~ん、ノエルここだよぉ~」

円盤に向かって手を振るノエルの後ろへと回り込む。

ノエル「あれ? ノノカどこ?」

せーの……

乃々香「エイッ!!」

ノエル「わわっ!?」

私が突き飛ばすとノエルは湖へと落ちていく。しばらくすると自力で上がって来て。

ノエル「ノノカぁ~、急にどうしたの? ノエルびしょびしょだよぉ」

乃々香「ごめんね。ちょっと目眩がしてノエルにぶつかっちゃったの」

うーむ、この気温で水に浸かればかなり寒いはずなのだけど、なんともないみたいね。

ノエル「ノノカ大丈夫? あれ? でもノエルにぶつかる前に『エイッ』って聞こえたような」

乃々香「気のせいだよ。乾かしてもらいにこはるの家に寄って行きましょ」

誤魔化しつつ、最後の実験へと向かう。

こはる「ノエルちゃんどうしたの!? そんなんじゃ風邪ひいちゃうよぅ」

びしょ濡れのノエルを見て慌てるこはるだが、まだお店は営業中。店番のこはるはここから離れられない。

乃々香「湖に落ちちゃって。乾かしてあげたいから寄ったんだ。ちょっとお店の奥借りるね」

ノエル「ノエルこれくらいなんともないよ」

こはる「うんどうぞ、何か必要なものがあったら言ってね」

乃々香「ありがとう、こはる」

ノエルを連れてお店のバックヤードへ。ここには……

ノエル「ノノカぁ、ここなぁに? おいしそうなものがいっーぱいあるけど、カチカチで食べられないよ」

それはそうだ、食品保存用の業務用大型冷凍庫だもの。ノエルがすっぽり入る大きさのね。

乃々香「ここに入ってれば乾くからね」

ノエル「中に入ればいいの? あれ? ノノカぁ~?」

ガシャン。冷凍庫の扉をしっかり締めてと。ちゃんと乾くからね、凍るけど……
そのまま1時間ほど放置してみる。よく煮て冷水で締めて急速冷凍とも言うけど。で、その結果は。

ノエル「ううっ……真っ暗だったよぅ、怖かったよぅ。ノノカのいぢわるぅ」

乃々香「あはは、ごめんね」

ただ泣いてるだけでした。-40度の中に1時間もいて平気なんて、もうノエルって生物じゃないんじゃ……

それから数日後。こはるが学校を休んだ日に、帰宅しテレビのニュースを見ていると。

テレビ「食材の入った冷凍庫の中に少女が寝ている映像がインターネット上に流れた北美市霧弥湖町の『しいはら本
舗』では、主力商品の円盤饅頭をはじめ全商品の自主回収を始めるとともに……今入ったニュースです。『しいはら
本舗』は今回の件により資金繰りが悪化。本日会社更生法の適用を北美地裁に……」

ノエル「あっ、こはるの家テレビでやってるよ。あれ!? ノエルも映ってるよ! ノエル有名人になっちゃった♪」

乃々香「……」

テレビに映る円盤御殿と、冷凍庫に寝た少女……ノエルの目隠し写真。あれ? ネットに流した覚えないのになんで?

乃々香「なにこれ!! スマホの写真が全部ネットに……ウイルス感染してる!?」

そこに近づいてくる地響き。リビングから見える夕暮れの坂道をこちらに向かって登って来る5メートルほどの緑色の
なにかと、その肩に乗る人影が見える。

乃々香「あれは! こはるに、キリゴン!?」

ノエル「怪獣さんだ! この前怪獣さんの卵を食べちゃったから、怒ってノノカを食べに来たのかなぁ」

草むらにあったあの卵って、まさか本当にキリゴンの卵だったの!? こはるの怒りに共鳴して2人で私に復讐を……

乃々香「何呑気なこと言ってるの!! ノエルだってオムライス食べたでしょ!! 早く円盤で逃げないと」

円盤がいるのだから、怪獣がいてもなんの不思議もない。それにノエルだって復讐の対象になっているのでは?
そう思った矢先、こはるが円盤を指さすと、その方向へとキリゴンが謎の光線を放った。
光線は寸分の狂い無く、円盤の中心を撃ち抜いた。直撃を受け爆発する円盤……

ノエル「あうぅ……ノノカぁ~、円盤さんがぁ~、円盤さん死んじゃダメぇ~」

轟音を響かせながら、湖へと沈んでゆく円盤を見ながら、私とノエルはただ震えつつ審判の瞬間を待つしかなかった。

以上で「寒くないの」完結となります。

次回「犯人はお前だ」 3月28日更新予定です。

「犯人はお前だ」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・湊太

学校の帰りにこはるに呼ばれ、工芸御殿に寄って行くことになった私たち。ノエルはいつものようにバスターミナルで待っていると思う。
最近はただ待っているだけでなく、柱の陰などに隠れていることが多かったりするが。

乃々香「あれ、今日はノエルいないんだ」

バスを降りて歩き出すと、何の気配も感じさせず突然背後からの衝撃が。

ノエル「ノノカ~、おかえり~」

不意に背中に飛びつかれる。びっくりもするが、なにより倒れそうになるので止めて欲しい。

乃々香「わっ!? ノ、ノエルか、ただいま。でも危ないから、後ろからは飛びつかないでね」

ノエル「えーっ!? こーいうのはぁ『どっきり』って言ってね、見てるとみんなニッコリになれるんだよ」

とりあえずノエルに、テレビを見せるのは止めたほうがいいのかな。

全く悪意の無いノエルに、それ以上も強くも言えず、手を繋ぐと家への帰路へと……

こはる「乃々香……私の家、そっちじゃないよぅ」

みんなのことすっかり忘れてた。

柚季「こうして見てると乃々香とノエルって、本当の姉妹みたいだよね」

湊太「俺たちより仲いいもんな」

乃々香「あはは……、ごめんね。さっ行きましょうか」

ノエル「ノエルもいく~」

そんなやり取りがあった後、改めて工芸御殿へと向かう。

事務所に通されると、いつものようにこはるは『円盤まんじゅう』を用意してくれた。しばらく他愛もない話が続いたが。

こはる「みんな、今日は集まってもらってゴメンね」

こはるが本題を切り出す。

こはる「実は、一昨日のお店の売上と品物の在庫数が合わなくて……店番を湊太に一人でお願いしていた日なんだけど」

みんなの視線が湊太に集中する。

湊太「おい、俺を疑ってるのか? 俺はそんなすぐにバレるようなことしないし、こはるの役に立ちたくて手伝ってるだけだぞ」

ハッキリと否定する。

ノエル「ねぇねぇコハル、お饅頭の数とお金が合わないってことだよね?」

こはる「えっ、そうだよ。でもまだ私、お饅頭が足りないって言ってないんだけど」

ノエル「ノエル知ってるよ! 犯人はね……」

ノエルは自信満々でビシッとある人物を指さすと。

ノエル「コハルだよ!!」

ドヤ顔で胸を張るノエル……みんな固まってしまった。

乃々香「はいはい、今大事な話してるから。邪魔しないでね、ノエル」

なんでこはるが自分の店の物やお金を盗む必要があるのか……まったくもう。

ノエル「ぷぅ~、本当だもん! コハルがお店のお饅頭いっーぱい持って行ったんだもん!!」

まだ文句を言っているが、無視して話を元に戻すとしよう。

状況から判断すれば、犯人は湊太以外に考えられない。

柚季「湊太……いくらお金に困ってたからって、こはるのお店に手を付けるなんて」

柚季はもう犯人は湊太と決めつけいるようだ。

柚季「最低よ湊太! やるならウチの店からにしておきなさいよ! 私もたまに取ってるから」

それっていいのか……まぁ家庭の事情には立ち入らないようにしよう。

乃々香「そんなに困ってたなら、相談してくれれば幾らかなら私でも……」

こはる「今回は大人にも言わないし、警察に被害届とかも出すつもりもないから」

ノエルを除いて、この場にいる人は皆、湊太が犯人だと思っている。

こはる「もうこんなことは止めてね、湊太」

湊太「何と言われようと俺はなにもしてないぞ。店を閉めて売上と在庫確認したときはちゃんと合ってたからな」

頑なに否定する湊太。そこまで否定されると、本当に湊太が犯人なのか分からなくなってくる。
そういえば昨晩みんなで天文台に集まった時、こはるがお饅頭をいっぱい……

ノエル「だ・か・ら犯人はコハルなんだもん!! 窓の外を見て!!」

ノエルに急かされ窓から霧弥湖の方を見る私たち。視線の先にはいつものように円盤が浮いている。
ノエルが右手を上にあげ左手を横にのばすと、円盤になにやら映し出される。これって花火のときの応用?

ノエル「ほら! 円盤を見てみてよ!!」

そこに映し出されたのは閉店後と思われる夜の工芸御殿。
何か思い出したのか、こはるが多少動揺しているみたいだけど上映がスタートする。

乃々香「閉店後のお店だね。あ、こはるが鼻歌歌いながらお饅頭の箱の前に」

柚 季「大量に抱えて戻って行ったね、1箱、2箱……9箱持って行ったけど。こはる、計算合わない分ってひょっとして?」

こはる「ごめんなさい! すっかり忘れてたの! 私が持っていったんだった」

後ろを向きやや間があってから、湊太の方へと向き直り大粒の涙を流すと。

こはる「湊太。疑ったりして、本当にごめんなさい」

うん、忘れちゃうことって本当によくあるよねぇ。わかるなぁ、それなら仕方ないよ。ん……こはるの右手に何か小さな?

柚季「乃々香? な~に一人で納得顔してるの?」

湊太「まぁ、分かってくれたならいいよ。俺は気にしてないから、こはるもそんなに気にするよ」

泣き崩れるこはるに、湊太もこれ以上責められないようだが。

柚季「ねぇ乃々香、こはるが右手に握ってるのって……」

乃々香「うん。あれって目薬だよね」

湊太ぁ~、こはるはウソ泣きだぞぉ~。まぁ本人がそれでいいならいいけど……しかし、こはるもよくやるなぁ。

ノエル「きらーん☆ これで事件解決だね。見た目は子供、頭脳は円盤。その名は名探偵ノエル!!」

最近ノエル、家でアニメよく見てるものね。どこから取り出したのか伊達メガネまでして、なにやら決めポーズをとっている。
そういえば円盤にテレビ番組を全部録画してあるとか言っていたような……円盤って全録レコーダーなのかな?

柚季「推理でもなんでもなくて、ただの現場映像じゃない。でも解決したのは確かよね」

こはる「お饅頭足りないのは10箱なんだけど……あと数日に1箱ずつ足りなくなるの。レジの打ち間違いかと思ってるんだけど」

上映はまだ続いている。突然現れた影がお饅頭を1箱手に取ると、再びその場から消え去った。こんなことが出来るのはただ一人。

乃々香「ねぇノエル……昨晩天文台に行ったときに、お饅頭の空箱がいっぱいあったよね」

分かりやすい大粒の汗を流し、決めポーズのまま固まっているノエル。こうして、もう一人の犯人は自白をしたのでした

以上で「犯人はお前だ」完結となります。

次回「円盤とノエル」 4月1日更新予定です。

「円盤とノエル」


・作中時系列……11話終了後~13話ラスト前

・登場人物……ノエル・他

いつの頃からだろう……私は誰かの願いを叶えるために、宇宙中を飛び回ってきた。

幾度となく繰り返される出会いと別れ。

新しい願いに導かれるときの高揚感。

願いを叶えられたときの達成感。

そして……それが別れの時となる喪失感。

ここは太陽系第三惑星の軌道上、たしか『地球』といったか。今は姿が見えないように迷彩をかけている。
この星の子供たちの願い。乃々香たちの願いが叶ったときから時間を戻した世界。今は私が居なくてもしっかりと願いが成就され
るのか、ただここから見守っていたが、どうやら大丈夫そうだ。 

円盤「まったく、いつまで泣いてんだいノエル」

ノエル「ううっ、いくら時間になったからって、あんな無理矢理戻さなくても……」

私は円盤。そして、私の身体の中の部屋で泣いているのがノエル。時間を戻すときに連れ戻してから、ずっとこの調子なのだ。

円盤「この星での願い。乃々香たちの願いは叶ったんだよ。だから私たちはもう、ここにはいられない」

これが鉄則。いつまでも留まれば願いは際限なく増えてゆく。

円盤「願いを叶えたら、私たちの存在を消し去る。そして時間を戻して次の願いへ。私に出来るのはそこまで」

願いを叶える……それは願いの主をその願いが叶うように導くこと。決して私が魔法のように一瞬で叶えるということではない。
願いが叶った瞬間、円盤に関わる記憶を消し時間を戻す。
もう願いが叶う未来への道筋は示された……記憶の底に刻まれた一本の道、自分達の力で願いは叶えることができる。
だからもう、この世界には『願いを叶えるもの』などいらないハズだから。

円盤「次の願いに呼ばれてるんだよ、そろそろ出発するよ」

ノエル「イヤだよぉ……ノノカたちとお別れたくないよぉ、みんなのところに戻りたいよぉ」

いまだに泣き続けるこの『ノエル』という子、一見するとこの星の少女なのだが、当然そんなことはない。

円盤「ふぅ……こんなんじゃイニシャライズしても、ノエルは次の星でインターフェイスとして使えないわね」

ノエルは私の『インターフェイス』簡単に言えば、私がこの星の少女を模して創り上げた疑似生命体だ。
私が直接乃々香たちと交流してもよかったのだが、私は町を覆い隠すほどの巨大な円盤。どう考えても無理がある。
だからノエルを創り、私の代理として派遣し、私自身は降りれるギリギリの高さ……町の上空ですべてを見守った。
次の星へも連れて行って、見た目だけ初期化して使おうと思っていたけどこれでは。

円盤「いいわ、ノエルはこの星に残りなさい」

それまでずっと泣いていたノエルの表情が晴れる。

ノエル「えっ!? いいの!?」

円盤「ええ、いいわよ。好きにしなさい」

ノエル「やったぁー!! って……あれ!? でも円盤さんがいなくなっちゃうとノエルは……」

そう、ノエルは食事をしなくても7年もの間、乃々香の帰りを天文台で待つことができた。それは、私からのエネルギー供給があった
からだ。だから私からの供給が届かない所、『円盤の見えない場所』では長くは活動できない。
そんなノエルをこの星に置き去りにする。それの意味することはただ一つ。

ノエル「ノエル、円盤さんからエネルギーもらわないと何日も保たないよ!?」

円盤「そこまで私の知ったことじゃないよ、もう使えないから廃棄処分してゆくだけだもの」

ノエル「…………」

絶望し言葉も出ないようだ、それもそうだろう。『死ね』と言っているのと全く変わりはないのだから。まぁ本気ではないのだが。

円盤「それがイヤなら諦めて……」

突然覚悟を決め、私に言い返してくる。

ノエル「それでもいい!! 少しでもノノカたちと一緒にいられるのなら、ノエルは残る。いままでありがとう円盤さん」

やっぱりそう言うと思った。言うが早い円盤から地上へと降りて行こうとしている。

円盤「ちょっと、待ちなさいノエル」

私が呼び止めると、ノエルは足は止め、部屋中に響く大声で。

ノエル「なによ!! もうノエルと円盤さんは無関係だよ!! ノエルがどうなってもいいんでしょ!!」

ノエルが怒鳴るなんて初めてだ。ちょっと言い過ぎだったかな。連れて行きたかったからなんだけどね。

円盤「さっきここまで飛んできたんだけど、これを持っていきなさい」

ノエル「帽子……これって、麦わら帽子だっけ?」

そう、麦わら帽子。ある強い願いが込められて、ここにまで飛んできた特別な……

ノエル「あれっ!? これシオネの匂いがする!!」

どうやら込められたものに気付いたようだ。

円盤「見た目はただの帽子だけど、改造しておいたからね。その帽子が今から私の代わりだから、絶対に手放しちゃダメよ」

ノエルは顔を半分帽子で隠しながらこちらを見ている。

円盤「私のエネルギーがたっぷり詰まってるわ。これ帽子があれば、この星の人間の寿命くらいの時間なら充分保つはずよ。ただ、もうノエルに
は何の能力もないわ。私の力で出来てたこと……町中のことが分かったり好きな所へ瞬間移動とかは出来ないわよ。この星の人間と違うのは今ま
で通り、食事をしてもエネルギーは補給できない。そして、見た目も成長しない。これから苦労することになるわよ……ノエルも乃々香たちも」

決意は変わらないようだ。涙を流しながら大喜びしている。……かわいい、やっぱり連れて行きたいな。

ノエル「ありがとう……ありかとう円盤さん!! ノエルみんなとずっとニッコリでいるよ! だからまたこの星に来たときは……」

気恥ずかしいのでそれ以上は言わせない。

円盤「さっきも言ったでしょ、もう次に使えないから廃棄処分していくだけよ」

ノエル「うんっ! それでも、ありがとう!!」

まったく、7年でよくここまで良い子になったものだ。これ以上は私も別れが辛くなる。

円盤「ほら、みんなが呼んでるんだか早く行ってあげなさい」

ノエル「うんっ!! 円盤さんも元気でね」

麦わら帽子に乗って地上へと戻っていくノエルを見送る。その姿が見えなくなるまでずっと。

円盤「ふぅ……なんで私のインターフェイスはどこの星でもこうなるんだろうね」

どこの星でも結局はこうなるのだ。今まで一度もイニシャライズして、次の星で使ったインターフェイスなどいない。

円盤「ノエルは私、私はノエル。私の分身だものね。結局は私自身が一番みんなと別れたくない、本当の寂しがり屋なんだろうな」

私だってせっかく仲良くなれた友達と別れたい訳ではない。でも、それは決して叶うことのない私の願い……

円盤「なんだか、毎回娘を嫁に出してる気分だよ」

これでこの星でやるべきことはすべて終わった。さぁ気持ちを切り替えよう。

円盤「さて、私もそろそろ出発しないとね。私の分まで乃々香たちといつまでも幸せにねノエル」

次の願いのする方向へと出発する。新しいインターフェイスを創る準備もしないとね。

以上で「円盤とノエル」完結となります。

次回「実験しよう」 4月4日更新予定です。

「実験しよう」


・作中時系列……13話終了後。BD3巻コミック後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季

柚季「まってよ~、ノエル~」

ノエル「イヤぁ~、柚季来ないでぇ~」

柚季「いいじゃないの、ちょっとだけだから」

乃々香「二人とも何追っかけっこしてるの?」

ノエル「ノノカぁ~、助けてぇ~」

柚季「乃々香、ノエルを捕まえちゃって!」

乃々香「柚季! ノエルをいじめちゃダメだよ」

柚季「ほえ? 私、ノエルをいじめてんなていないよ。ノエルをギュッとしてスリスリしてたら逃げ出しちゃっただけだもん」

乃々香「えっ!? そうなの。じゃあノエルはどうして逃げてたの?」

ノエル「ううっ……。ユズキにスリスリされるの、イヤなんだもん」

柚季「え~っ!? ノエルがいつも気持ちよさそうな声を上げてたから、てっきり猫がゴロゴロ喉鳴らしてるのと一緒だと思ってたのに」

乃々香「ねぇ柚季……私にはイヤがってる声に聞こえてたけど」

柚季「そんなぁ~。ねぇノエル、私の事、好きなの? 嫌いなの?」

ノエル「ノエルにスリスリしてくるユズキはキライ!!」

柚季「うっ!! 面と向かってはっきり嫌いって言われると、やっぱりショックだわ……」

乃々香「だったら聞かなきゃいいじゃないのよ。それはそうと、ノエルはなんでそんなに柚季を嫌ってるの?」

ノエル「ユズキがキライなんじゃないよ、ユズキにスリスリされるのがイヤなの」

柚季「よかった……私嫌われてる訳じゃないのね」

乃々香「でもノエル、私が同じようにノエルにスリスリしても平気なのに、なんで柚季だとダメなの?」

ノエル「んーとねぇ、昔円盤を嫌ってたユズキの感情が、直接ノエルの中に流れ込んで来て、すっごくモヤモヤした気持ちになっちゃうの」

乃々香「そういう理由があったんだ」

柚季「そんなこと言ったって、私今は、ノエルのことも円盤のことも大好きだよ」

ノエル「それとぉ、ギュッとされたとき、ノエルお顔が痛いの」

乃々香「私のときは痛くないの?」

ノエル「うんっ。柔らかくて気持ちいいよ」

乃々香「ギュッとしたときにノエルの顔が当たるのは、ちょうど胸の辺り……ねぇノエル、こはるや汐音だったらどうなの?」

ノエル「もっと気持ちいいよ!」

柚季「……ねぇ乃々香。私の円盤を嫌う気持ちって、今増幅されてるような気がするんだけど」

乃々香「まぁまぁ、ノエルに悪意はないから……たぶん」

柚季「純粋無垢な分タチの悪いことだってあるもん」

乃々香「それで、なんでノエルを追っかけてたの? 抱きしめたかっただけじゃないんでしょ?」

柚季「そうだった。ノエルッ! お願いがあるの!」

ノエル「お願い? うんっ! いいよ。ノエルに出来ること?」

柚季「そうよ、ノエルにしか頼めないこと」

ノエル「ノエル頑張っちゃうよ!」

乃々香「本当にノエルは、お願いされるときって嬉しそうね」

柚季「この前ノエルと一緒に『EBHロケットデラックスハイパー』の発射実験したわよね」

ノエル「うんっ、かいじゅうさんのお口に飛んでいったよねぇ」

乃々香「あぁ、こはるがお店の外壁に穴を開けられたって怒ってたっけ」

柚季「あれで分かったの! やっぱりロケットをもっと高く飛ばすためには、目標が必要なんだって」

乃々香「そういえば柚季、あのロケットって円盤を攻撃するための武器だって言ってたわよね」

ノエル「ロケットって、ノエルを攻撃するためなの?」

柚季「だからお願いノエル! 円盤に的の模様を描いて!!」

ノエル「そんなのイヤぁ~!! 恥ずかしすぎるよ!!」

乃々香「どちらにしても、まだ円盤までは届かないんでしょ?」

柚季「それはやってみないと分からないじゃない、私は目に見える目標が欲しいの!」

乃々香「ノエルもいいじゃない、どうせ届かないだろうし」

ノエル「じゃあ……1回だけだよ」

柚季「やったー!! それじゃ早速昨日改良した『EBHロケットデラックスハイパーEX』の試射するわよ」

乃々香「もう準備万端なのね。ノエルも手伝ってあげてね」

ノエル「ぷぅ~、わかったよ。えいっ!」

乃々香「円盤の模様が変わった。なんかアーチェリーの的みたいね。中心に当たると10点?」

柚季「いくわよ~。3・2・1、はっしゃ~」

乃々香「すごい、思ったより飛んでいくわね」

柚季「あれ!? これって届くんじゃ」

ノエル「ひゃん!?」

乃々香「10点の所に当たっちゃったわね」

柚季「届いた! 乃々香、私やったよ!!」

ノエル「ふえ~ん、痛いよぉ。ノノカのウソツキ。円盤まで届かないって言ったじゃない……」

乃々香「ゴメンねノエル。まさか私も届くとは思ってなかったから」

柚季「でもまだダメだわ。届いただけだもの。攻撃にはなってないわね」

ノエル「ううっ、ねぇユズキ。これでダメなら、円盤をどうしたいの?」

柚季「ここまでくると、やっぱり円盤を追い出せるくらいの威力が欲しいわね」

ノエル「ノエルの前で直接そんなこと言われても……これって反撃してもいいんだよね」

乃々香「柚季は円盤に攻撃したいんだよね?」

柚季「うん。びっくりして町から逃げちゃうくらいのね」

乃々香「で、ノエルは円盤なんだよね」

ノエル「そうだよ。なんだかユズキが前の世界のユズキに戻ってきちゃってるよぅ」

乃々香「よし! それじゃノエル、こっちに来て」

ノエル「湖の桟橋? ここに立っていればいいの?」

乃々香「うん、湖の方を向いていてね。呼ぶまで絶対に振り向いちゃダメだよ。約束だよ」

ノエル「乃々香と約束!? うんっ! ノエル絶対に守るよ!」

乃々香「私が呼んだらこっちに走ってきてね。……これでよしと。柚季、準備して」

柚季「ほえ? 何の?」

乃々香「決まってるでしょ! 『EBHロケットデラックスハイパーEX』よ」

柚季「でもどこに?」

乃々香「円盤に攻撃したいんでしょ? だったらなにも、上空の円盤じゃなくて、町をうろついてる方だっていいじゃない!」

柚季「乃々香……発想が鬼畜だよ!? ノエルに攻撃するなんて、私には出来ないわよ」

乃々香「何綺麗ごと言ってるのよ! 結局はノエルが円盤なんだから、やってることは同じじゃない。それにこの距離なら威力は充分でしょ」

ノエル「ノノカまだぁ~」

乃々香「もうちょっと待っててね。さぁ柚季、やるかやらないか、最後に決めるのは柚季だよ」

柚季「技術の進歩に犠牲はつきものよね……私決めた。乃々香、私やるわ! 3・2・1」

乃々香「ノエルッ!」

ノエル「ノノ……」

柚季「はっしゃ!!」

ノエル「カぁ……ぐほっ!!」

乃々香「お腹に直撃しちゃったわね……あっ、ノエルの身体がロケットの勢いで浮き上がった」

ノエル「うきゃ~~……きら~ん☆」

柚季「一緒に飛んでっちゃったわね、これって昔の私の念願だった、『円盤を町から追い出す』ことが出来たってことだよね」

乃々香「そうだね、おめでとう柚季」

柚季「乃々香……ありがとう。これで上空の円盤も町から逃げ出すよね」

乃々香「うんきっとどこかに……ってあれ? むしろ円盤大きくなってない?」

柚季「大きくなったというか、地上に近づいてきているような」

ノエル「うわ~ん……二人ともヒドイよ!! なんでノエルをイジめるのよぉ!? 二人のお願い叶えたんだから、今度はノエルのお願いを聞いてよねっ」

乃々香「円盤からノエルの声が!?」

柚季「なに円盤からのこの光は!? 身体が浮きあがってく」

ノエル「ノエルもね、この星の人間で試してみたいことい~っぱいあるの。もちろん手伝ってもらえるよねぇ」

柚季「やっぱり裏ではそんなこと考えてたのね! 円盤反対~」

乃々香「ノエルごめん! 謝るから!! 許して!!」

ノエル「だいじょうぶ。実験が終わったらちゃ~んと帰してあげるから……生きてたらね」

乃々香・柚季「誰か助けてぇ~」

ノエル「ようこそ円盤へ!! いくら騒いだってだーれも来ないよ。それじゃ、なにからやってみようかなぁ~。ノエル楽しみだよぉ」

以上で「実験しよう」完結となります。

次回「お料理したい」 4月8日更新予定です。

「お料理したい」

・作中時系列……6話終了時点

・登場人物……乃々香・ノエル

いつものように夕飯を食べに来ているノエル、今日のおかずはハンバーグだ。

乃々香「とはいえ毎日当たり前のように食べに来るわね」

ノエルに聞こえないように呟く。一人分の食費が余計にかかる訳で、家計のやり繰りも決して楽ではないのだが。

ノエル「う~ん、今日のハンバーグもとってもおいしいよぉ~」

幸せそうにハンバーグを頬張りながらそう言われちゃうと。

乃々香「まっ、いいか。こんなに喜んでくれてるんだし」

なんだか見ているこちらも幸せな気分になってしまう。

ノエル「ごちそうさま~」

乃々香「お粗末さまでした」

付け合わせの野菜までしっかり完食している。作り甲斐もあるというものだ。

ノエル「ねぇねぇノノカ、ノノカ~。ノエルお願いがあるの」

乃々香「なぁに?」

ノエル「ノエルね、ハンバーグを作ってみたいの。だからぁ作り方教えて」

乃々香「うん、いいわよ」

ノエル「わ~い、早く教えて! 今すぐ教えて!!」

飛び跳ねながらせかしてくる。

乃々香「はいはい、分かったから。で、ノエルは今まで何かお料理作ったことはあるの?」

今の実力が分からなければ教えようもない。まさかお父さんレベルとは思いたくはないが。

ノエル「えっとぉ……一度もないよ」

まぁこの歳なら一度も無くても別に不思議ではないが……見た目どおりの人間ならばの話だけど。

乃々香「全然? 包丁を使ったことは?」

ノエル「ねぇノノカ、『ほうちょう』ってなぁに?」

うん、訂正。お父さん以下だわ、前途多難だなこれは。

乃々香「料理したことが無くて、私が戻って来るまでの7年間は一体何を食べてたのよ?」

そう、ノエルは円盤である。人間ではない。だからといって7年間何も食べないということもないだろうけど

ノエル「んーとね、牛さんとぉ」

牛肉か……誰かの家に転がり込んで食べさせてもらっていたのかな。

ノエル「鳥さん」

鶏肉とかかな、一般的な食材だよね。

ノエル「あと、羊さんに」

ジンギスカンでも食べたのかな、北海道だし別に不思議はない。

ノエル「それと、鹿さん」

猟師さんの家にでも行ったんだね、きっと。

ノエル「それとそれと、お馬さん」

まぁ、私は食べないことはないけど。

乃々香「なんだか、お肉ばっかりね」

ノエル「お魚さんや植物もちゃんと食べてたもん」

植物って野菜のことだよね……まさか野草を採って食べてたとか、この辺りってトリカブトも自生してるのに。

乃々香「どこのお家に食べに行ってたの?」

ノエル「えっ!? ノエル、天文台から出てないよ。あそこでずっ~と待ってるってノノカと約束したから」

……おかしい、天文台に調理場などない。そしてなりより。

乃々香「お料理も作ったことが無くて、誰かに作ってもらってもいないなら一体どうやって……ってまさか」

そう、ならば答えは一つ。

ノエル「生でだよ、円盤に運んでね。残ったら元の場所に戻しておくんだよ」

ノエルは円盤。そして精肉されたものでなく、家畜や野生動物を捕食している。キャトルミューティレーションだ。

ノエル「ノエルは円盤さんが食べてれば大丈夫だし、円盤さんもノエルがお腹いっぱいなら平気なんだよ」

一心同体だから、どちらかが食べてれば良いということか。ふと悪い予感がしたので、まさかと思うが一応聞いてみる。

乃々香「ねぇノエル、まさか人間も食べたりしてないよね?」

ちなみに霧弥湖周辺で円盤が現れてからの失踪者の数……なんと6人。こんな小さな町としては異常な数。

ノエル「……ねぇ乃々香、知ってる?」

ノエルの雰囲気が変わる。いつもの天真爛漫な感じが消え失せ、まるで得体の知れない怪物のような……。

ノエル「雑食動物のお肉って生だと臭みが酷くて……」

疑惑は確信に変わる。こいつ人間食べたことある!!

乃々香「出てって!!」

思わず叫んでいた。突然の大声にきょとんとするノエル。いつもの様子に戻っていた。

ノエル「えっ……お料理は?」

乃々香「ノエルが何者かは分かったから! もう二度と私の前に現れないで!!」

ノエルにこれ以上関わるのは危険だと本能が告げている。

ノエル「あうぅ……残念。ノノカにお料理教えてもらって、おいしいハンバーグを作ってみたかったなぁ」

純粋に料理を習いたかっただけなのか、ノエルはしょんぼりしながらリビングから出て行こうとする。

乃々香「……」

ちょっと可哀想だったかな? キツネとか人間以外の動物だったのかもしれないし。
また早とちりだったかもと後悔する私に、ノエルはドアの前で立ち止まりこちらを振り返ると、その顔に恐ろしい笑みを浮かべながらボソリと……

ノエル「……ノノカで」

以上で「お料理したい」完結となります。

次回「宇宙へ行きたい」 4月11日更新予定です。

ここで、先日届いたアフレコ台本で、本編と内容が微妙に違う部分があったので、ここを見に来て下さってる方に公開します。

写真だと見にくいので、書き込みにします。原文を横書きにしてますので見にくくなりますが、ご容赦ください。

13話「はじまりのそらから」ラスト、乃々香がひまわり畑に着いたところからになります。

234
広い場所に出る乃々香 前傾姿勢

235
体おこす乃々香
奥に柚季と湊太がいる
こちらをむく乃々香

236
こはるが出てくる。ほほえむ。
乃々香 顔戻すと、気付く

237
汐音がいる

238
汐音 突風がふき、見上げる

239
帽子が落下してくる あおり

240
見上げる一同 帽子IN

241
ふぁさっと地面に落ちる帽子

242
俯瞰 一同の中央に帽子

243
一同   乃々香「…汐音のぼうし…」
汐音と乃々香 見合う
汐音歩く

244
帽子の所にくる足

245
一同 しゃがむ汐音

246
汐音なめノエル

247
ハッと乃々香   乃々香「!」
         汐音(off)「乃々香?…」

248
柚季 立ち、むく
皆もむく
ノエルの髪IN

249
一同 PAN

250
一同なめノエル PU

OL

251
ノエル PU
ニッコリ

252
乃々香感極まり言葉が出ない   乃々香「……」
汐音 優しく   汐音「乃々香…」
乃々香 涙ふき
笑顔で   乃々香「おかえり……おかえりノエル!」

253
ノエル   ノエル「…ただいま」

254
かけだす乃々香達   5人「ノエルー!」

255
TB ノエルにかけよる皆

OL

256
天文台へPU

「宇宙へ行きたい」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル

今日ノエルは、私の家でお泊りだ。とは言っても特別何を持ってきているわけでもなし、いつもどおりの服装。
夕飯も終わり、私の部屋で二人きり。前から考えていたあるお願いをノエルにしてみる。

乃々香「ねぇノエル、ちょっとお願いがあるんだけど……いいかな?」

私が話を切り出すと、ノエルは嬉しそうに返事をしてくれる。

ノエル「うんっ、もちろんいいよ。ノエルに出来ること?」

乃々香「もちろん。むしろノエルにしか出来ないことなんだけど」

ノエル「まかせて。ノノカのお願いなら、ノエルなんでも聞いちゃうから!」

やっぱり円盤だから、お願いされたりすると嬉しいのだろうか?

乃々香「私を円盤に乗せて! 宇宙に連れてって欲しいの」

ノエル「えっ!? ノエルに乗るの!?」

乃々香「うん、ノエルに乗りたいの! ダメかな……」

なにやら部屋の外でお父さんに聞かれたら、とんでもない勘違いを生みそうな会話だ。
でも、ノエル=円盤なのだから、もちろん変な意味ではない。まぁ宇宙に行くなんて話も聞かれたらマズいけどね。

ノエル「ノノカ知ってるよね? 円盤はノエルでね、ノエルの身体なの」

ちょっとノエルは困ってるような、恥ずかしがってるような微妙の表情になっている。

乃々香「ノエルの身体の中に入っちゃうってこと? 私は別に気にはならないけど。もしかして、ウイルスみたいな扱いになって
円盤の中で私退治されちゃうとか!?」

ノエル「あっそっか、ノエル忘れてたよ。そーいうシステムはちゃんと切っておくね」

……今聞かなければ、円盤に乗った途端に、私死んでたんだよね。

ノエル「でもね、まだ円盤に誰かを乗せたことってないんだ。もし何かあってもノノカのことは、ノエルが頑張って守るからね」

乃々香「なるべく何もないようにお願いしたいんですけど……」

だんだん不安にになってきたが、タダで宇宙に行ける訳だし、今の人類の技術なら命がけなのは当たり前だし。

乃々香「ノエルの身体の中って言っても、ベトベトするとか、血生臭いとかってことはないんでしょ?」

ノエル「円盤の中はベトベトなんてしてないもん。ノノカ、生物は宇宙空間じゃ生きていけないの。円盤だから大丈夫なんだよ」

要は円盤は飛行機みたいな乗り物と考えればいいのかな?

乃々香「よくわからないけど……とにかく連れてってもらえるんだよね? もちろん、ノエルがイヤなら無理にとは言わないけど」

ノエル「うんっ! もちろんいいよ」

乃々香「よかった、ノエルありがとう」

ノエルの頭を撫でてあげる。

ノエル「テヘヘ……。でもねノノカ、今すぐは無理なんだ」

乃々香「今すぐじゃなくていいよ。一カ月後くらいならいいかな?」

こちらにも都合があるのでそのほうが助かる。

ノエル「それくらい待っててくれたら大丈夫だよ。ノノカの居住スペースとか円盤に造らないといけないから」

円盤って改築できるんだ。

乃々香「分かったわ、じゃみんなに大丈夫だって連絡するね」

ここでノエルが不思議そうな顔をする。

ノエル「ほえ?? みんなって? 汐音たちのこと?」

乃々香「それはもちろんだけど、あとはテレビ局の撮影クルーと、某国の宇宙研究者と、それからハリウッドの映画スターとね……」

ノエルの顔色が変わってきた。

ノエル「ちょっとノノカ!! ノエルは宇宙観光遊覧船じゃないよ!!」

乃々香「いいじゃない、どうせ行くなら大勢の方が楽しいよ。それに円盤の中も造り直すんでしょ」

ノエル「ぷぅ~、だからって……なんでノエルが知らない人まで連れていかなきゃいけないのよぉ」

不満たっぷりに文句を言ってくるノエルだが。

乃々香「だって『宇宙に行けます』ってネットで募集したらいっぱい応募が来ちゃったんだもん、1人10億円じゃ安すぎだったのかな」

お金の振り込みはまだだけど、もうすでに大盛況だったり……あとは日程を決めるだけ。

ノエル「ノエルで商売するなんてヒドイよノノカ!! ダメダメッ、やっぱり誰も乗せてあげないもん!!」

乃々香「私も行くんだからいいでしょ。ノエルもいいよって言ってくれてたじゃない」

ノエル「それはノノカが行きたいって言うから……商売するなら話は別だよ! ノノカはノエルの事なんだと思ってるの!!」

そうか、そんなに聞きたいなら答えてあげよう。

乃々香「私のバラ色の未来のために、お金を稼いでくれる……トモダチ。とっても大切な」

ノエル「!?」

ノエルが言葉を失い、口をパクパクさせている。

乃々香「それに毎日の食費だってかかるんだから、少しはノエル自身で稼いでね」

まぁ十二分すぎるけどね。

ノエル「うわーん、そんなのトモダチじゃないよぉ~。ノノカお金が欲しいだけじゃない!!」

あーあ、泣きだしちゃったか。

乃々香「分かった、分かったから泣かないでノエル。そんなにイヤならいいよ」

ノエル「ううっ、分かってくれた? ノノカァ」

私に抱き付いてくるノエル。でも、この儲け話を手放す訳にはいかないのよね。

乃々香「それじゃ仕方ないから、宇宙人を捕まえたって連絡しないとね」

ノエルを抱き止めた手に力を込める。

ノエル「ウソ……だよね? ノノカ」

乃々香「円盤と宇宙人を買いたいってところからも連絡が来てるんだよね、そっちは断ってたんだけど」

あっ震えだしたわ。

乃々香「きっとノエルは解剖されちゃうんだろうなぁ、そして円盤はバラバラに解体されて……」

ノエル「ヒッ……分かったよ。ノエル観光船喜んでやるから! お願い、やらせてノノカ! だからノエルを解剖とか、円盤を解体
するとか、そんな怖いところにノエルを渡さないでよね」

乃々香「そう、それじゃ一カ月後に出発ってことで準備よろしくね」

これで私も大金持ち、ニッコリな未来が待っている……ノエルを置いて一度部屋を出る。ノエルは私が階段を降りる足音を確認してから。

ノエル「いいもん、連れて行ってはあげるよ。ノノカのお願いが『宇宙に連れて行って』だから。そのかわりね、みーんな宇宙の果て
の未開の惑星に置き去りにしてあげるんだからっ! 『この星に戻って来る』ってノエルお願いされてないもん

以上で「宇宙へ行きたい」完結となります。

次回「外見と真実」 4月15日更新予定です。

それではこんな感じで…
オチが無いだけな気もするけど、聖地巡礼情報も追加しつつ。


「ノエルさんの一日」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・湊太・他

とある日曜日の夜明け前、ノエルはいつものように天文台の屋根の上で寝ている。朝日が差すのと同時に。

ノエル「きら~ん☆」

元気よく起き上がる。意外とノエルの体って太陽光充電式だったりして……。

ノエル「今日も一日がんばるぞっ!」

ノエルの存在理由であった、乃々香たちの願いは既に叶っているのに何を頑張るのだろうか?

天文台のモデル『森と木の里センター』は5月1日から宿泊可能。最寄りのバス停は『滝の上』で徒歩1.6キロ
ですが、90メートルの登り道なので注意を。

ノエル「まずは朝ごはんだよねっ」

勢い良く坂道を走り下っていく。

ピンポーン♪

乃々香「おはようノエル」

ノエル「ノノカァ~、朝ごはんちょうだい」

乃々香「はいはい」

修一「お、ノエル。いらっしゃい。今日こそ特製オムライスを……」

ノエル「ノエル、ノノカの作ってくれたごはんがいい!」

乃々香「お父さん、もう少し料理上手になってから人前に出してね」

修一「これでもかなり上達したんだが……」

古宮家の建物のモデルは『民芸御殿』の隣。立地は『四十三山登山口』で、『西湖畔』バス停から600メートルです。

ノエル「よしっ、次はお昼ごはんだよねっ」

カランカラン♪

柚季「いらっしゃいませ~ってノエルぅ~」

スリスリ

ノエル「あうぅ……」

湊太「なにやってるんだバカ柚季、忙しいんだから、そういうことは他所でしろ」

柚季「なによバカ湊太。で、ノエルどうしたの?」

ノエル「オムライスちょうだい!」

柚季「いいけど……ノエル、今日もお金持ってきてないよね?」

ノエル「ねぇユズキぃ、おか……」

柚季「はいはい、私がおごってあげるから席で待っててね」

湊太「お前、分かってて聞いてるだろ」

柚季「いちおう聞いただけだもん」

水坂家モデルの『望羊蹄』はバスターミナルから200メートル程。なお、有志の方によって『交流ノート』が置かれています。

ノエル「さて、おやつはやっぱりアレだよねぇ」

こはる「いらっしゃい、ノエルちゃん。ちょっと今忙しいから、試食のお菓子でも食べててねぇ」

湊太「あれ? ちっこいの、こっちにも来たのか」

ノエル「ソータなにしてるの?」

湊太「見ての通り手伝いだが、日曜は忙しいからな。ウチはランチタイム過ぎればとりあえず大丈夫だし」

ノエル「ふ~ん、ソータ大変なんだね……。ねぇコハル」

こはる「なに? ノエルちゃん」

ノエル「ノエルね、あとで晩ごはん食べたいの」

こはる「ごめんね、ウチの食堂は17時までなの」

ノエル「そっかぁ……ざんねん」

湊太「さすがこはる、うまく断ったな」

椎原家モデルは、外観は『民芸御殿』。『昭和新山登山口』バス停から300メートル程。立地はバスターミナルから200メートル。
内装は『サイロ展望台』で『展望台』バス停すぐ。ただし、ここに止まるバスは、ルスツとの往復1便と予約制の札幌との路線だけなので要注意。
なお、『民芸御殿』で昼食を食べる札幌からの日帰りバスツアーもあります(クラブツーリズム、コース番号22858-990)

乃々香「お待たせこはる、さっノエル帰りましょ」

ノエル「ノエルおなか空いたよぉ~」

乃々香「ウチにハンバーグあるから、早く帰らないとお父さんが焼いちゃうよ……」

ノエル「急いで帰ろう! 今すぐ帰ろう!」

乃々香「こはる、湊太。それじゃ明日学校でね」

湊太「おう、またな」

こはる「またあしたねぇ~」

湊太「こはるが乃々香を呼んだのか?」

こはる「だってぇ……ノエルちゃんお饅頭何箱も食べちゃうんだもの」

乃々香「ねぇノエル?」

ノエル「なぁにノノカ」

乃々香「いつまでも天文台に住んでないで、ウチに住まない?」

ノエル「ありがとうノノカ、でもノエルはあそこがいいの」

乃々香「そっか、でも気が変わったらいつでも言ってね」

ノエル「うんっ!」


夜の天文台の屋根の上、ノエルが仰向けになりながら。

ノエル「うん、今日も一日がんばったよ」

食事を食べさせてもらうことなのか?

ノエル「それに……ノエルがここから離れちゃうと、また天文台が廃墟になっちゃうものね。ノエルがみんなの思い出の場所をしっかり守るからね」

実際の天文台や施設は、町がしっかり管理してますので、廃墟ではないですよ。

「外見と真実」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・汐音

今日も朝からノエルがやってきている。学校が休みの日は必ずといっていいほとだ。
7年前、東京へ引越する日に出逢ったままの姿のノエルにふと気になり聞いてみる。

乃々香「ねぇノエル、7年前から全然姿が変わってないけどどうして?」

ノエル「ノエルの本当の姿は空の円盤だよ」

『ノエルは円盤』ただの少女の妄想と思うかもしれないが、これは真実だ。この町にある霧弥湖の上空には巨大な円盤が浮かんでいる。

ノエル「ノノカの前にいるのはコミュニケーション取るためのねぇ、んと……触れる立体映像みたいなものなの」

乃々香「立体……映像??」

私の目の前には確かに『ノエル』という少女が存在し、ご飯まで食べている。そしてなにより。

ノエル「あうぅ……ノノカ、くすぐったいよぅ」

こうして頭を撫でることもできるのだ。不思議だが、そもそも円盤なんだからそういうものなんだろう。

乃々香「あれ? でもそれって伝説の作画崩壊アニメの某ヤシガニの宇宙船と同じじゃないの」

ノエル「ヤシガニ? ノエルはノエルだよ?」

乃々香は生まれてもいない時代に放送されたアニメの黒歴史に詳しかったりする。

乃々香「じゃなんでその姿なの? 7年も経ったのだから私たちと同じくらいになっていてもいいんじゃないの」

ノエル「ノエルはね、一番強い願いをしてくれた人と、一番コミュニケーションを取りやすい姿になるんだよ」

ノエルを、円盤を呼んだ時、一番強い願いをしたのは……。

ノエル「今はもちろんノノカとだよ」

そう、私だ。そして8歳の私が一番親しみを感じ姿が、このノエルの姿だったのだろう。今でもそうだけど。

乃々香「そうすると、今の私のノエルに対するイメージが変わったら姿も変わっちゃうってこと?」

私のイメージが元となるならあり得ることだ。

ノエル「うーん、そうならないこともないよ。ふつーは呼ばれた時のイメージのままなんだけど……ノノカがものすごーく強くイメージ
しちゃうと、たぶんその姿になっちゃうよ。そんなこと今まで他の星でも滅多に無かったけどね」

私のイメージ通りになる着せ替え人形……やってみたい衝動にかられる。そんな気配を察してか。

ノエル「で……でもね、ノエルも今のこの姿ってお気に入りなんだ。幼女の姿の方がみんなとっても優しいんだもん。だから止めて……ねっ」

乃々香「後で今の姿をイメージし直せばいいだけでしょ。いいじゃない少しくらい」

ノエル「簡単に言うけど外見を変えるのってね、すっごくエネルギーを使うんだよ」

ヘビやエビの脱皮を想像してしまった……。

乃々香「じゃ仮に今、私がイケメンの男子がノエルだって想像したら?」

ノエル「たぶんそうなっちゃうよ……だって円盤は宇宙中飛び回ってるんだよ」

さっきも言っていたが、姿が変わったことは滅多にない。つまり変えること自体は出来るのだ。ではなぜ姿を変える必要があるのか。

ノエル「もしノエルが初めて逢ったあの日に、他の星の人の姿で逢いに行ってたら、ノノカどうした?」

答えはこれだ。他の星の知的生命体が地球の人間と同じ姿をしている訳がない。進化の過程が違うのだから。それなのに願いを叶えに
来た円盤がどこでも同じ姿の訳がないのである。あの日私の前に現れたのが人間で無い姿をした生物だったとしたら。

乃々香「はい、全力で逃げます……きっと一生トラウマになるので、絶対に止めてください」

素直に認める。と、ここで疑問が浮かぶ。

乃々香「あれ、ということはノエルって、性別とか関係なく姿を変えられるんじゃ? 本当は女の子じゃない可能性も!?」

そう、男子に変わるかと聞いた時に認めているのだ。答えに困ったような表情をしていたが……やがて。

ノエル「……ねぇノノカ、宇宙ではね、目に見えてるものが必ずしも真実であるとは限らないんだよ」

ノエル「(まぁノエルは円盤なんだけど……円盤は生物じゃないし。円盤に性別なんてないんだけどね)」

問われたまま真実を答えたノエルだが……。

乃々香「ちょっと!? 私ノエルと一緒にお風呂入ったよね!?」

この町に戻って来た当日、私の部屋に入り込んでたノエルを私はお風呂に入れた。いや、一緒に入った。

乃々香「汐音とも温泉一緒に入ったんだよね!?」

後日汐音から聞いたのだが、私たちが泊まっていたホテルの隣の部屋に泊まっていたらしい。

乃々香「一緒の部屋で寝たこともあったよね!?」

あったというか……最近かなりの頻度で泊まりにきている。捲し立てて問い詰める私に、何かすっとぼけた顔で。

ノエル「えーとぉ……ごちそうさまでした?」

このとき、私の中で何かか切れた。

乃々香「出てって!!」

全力で叫ぶ。スマホを取り出すと、もう一人の被害者へと電話を掛ける。

乃々香「もしもし汐音。ちょっといいかな」

汐音「乃々香、どうしたのよ。そんな大声出して」

今までの経緯を説明していく。

乃々香「うん、そう。だからね、円盤を……跡形も無く粉砕したいの、手伝って」

ノエルは私が本気であることを察して、その場から逃げ出そうとする。

ノエル「ノノカ、本気で怒っちゃったよ……粉砕されるのはイヤだから、早く円盤ごと宇宙に逃げないとダメかな」

が、それを見逃しなどはしない。あるイメージを私がすると、ノエルの動きがその場にピタッと止まった。 

ノエル「あれ、姿が変わってくよ……あぐっ!」

そう、ノエルへのイメージを、今とは全く違うものを想像したのだ。変化に伴う苦痛の声も聞こえるが知ったことではない。
しばらく変化が続くが、やがて固定されてくる。私のイメージ通りに。

ノエル「はぁ……はぁ……乃々香ひでえじゃねぇか……って!?」

自分の発した声に、口調に驚くノエル。窓に映った姿にさらなるショックを受ける。

ノエル「おい乃々香! これじゃ中年のおじさんじゃねぇか!!」

ノエルは乃々香によって、絵に描いたようなおじさんの見本品になっていた。

乃々香「逃がさないわよこの変態円盤め!! これからもっとひどい姿をイメージしてあげるから覚悟しなさい!!」


この後、乃々香と駆けつけた汐音にたっぷりとお仕置きされたノエルは、何度も姿を変えられ、フラフラになりながら
も、最終的には無事、元の少女の姿に戻してもらえましたとさ。めでたし、めでたし。

以上で「外見と真実」完結となります。

次回「流星の真実」 4月18日更新予定です。

「流星の真実」


・作中時系列…13話終了後

・登場人物…乃々香・ノエル

予測すらされていなかった流星群が、突如出現してから2日目の夜。私とノエルは湖畔で夜空を眺めていた。

乃々香「流星、すごいね。こんなにたくさんの流星が一度に見られるのなんて初めて」

ノエル「ほんとにいっぱいだね、これじゃノエル円盤で宇宙に出たらあちこちケガしちゃうよぅ……」

乃々香「そうね、でもここまで落ちてくる流星はないでしょ。ノエルも円盤もここにいれば大丈夫だよ」

ただの冗談だと思い簡単な返事をしたが、ノエルはなにか不安そうだ。

ノエル「うんっ、そうだよね。大丈夫だよね。ノエルも流星群楽しむよ」

ノエル「(でもふつーどこの星でも、これだけ近づいてると、なにか対策するんだけど……みんな安心してるし大丈夫だよね)」

ノエルのこの不安は翌日には現実のものとなってしまう。

ここで流星群のでき方について説明をしておきたい。流星とは、宇宙に散らばった塵が地球の大気との摩擦によって光る現象。

ではこの塵がなぜ出来るかというと、太陽に楕円軌道で近づく小惑星や彗星が高温にさらされることで、内部のガスや水分が蒸発

し、その際に岩盤部分や氷の塊などが元の天体から分かれ、宇宙空間に散らばったもの。そして、分離したときに元の天体とのス

ピードに差が生まれ、彗星の軌道上にドーナツ状に広がってゆく。これが流星の元となる『ダストトレイル』と呼ばれる現象。

このダストトレイルの軌道と地球の公転軌道が重なることによって、流星群が発生する。

つまり、予測がされてなかった流星群が発生したということは、周期が非常に長い未知の彗星があるのか……。

地球からでは観測のできない、太陽のほぼ真横をかすめて地球へと真っ直ぐ向かってくる彗星があるということになる。

そして、この時点でその答えを知っていたのはノエルただ一人だった。

翌朝には、既に世界中がパニックに陥っていた。太陽の方向から隕石が降り注ぎだしたのだ。

乃々香「なにこれ……何が起きてるの!?」

テレビから流れる映像に恐怖を覚える。隕石といっても数センチほどのものばかりで、まだ丈夫な建物の中にいればなんとかなる範囲。

ノエル「なにって……恒星の方から彗星がこの星に向かってきてるんだよ。みんな知ってたんじゃないの?」

今更どうしたのと言わんばかりノエルだが。

乃々香「そんなの知ってる訳ないでしょ! 地球の技術じゃ太陽をかすめて近づく天体なんて観測出来ないわよ」

ノエル「えーっ! じゃあ何も対策ないの!? ここまで近づいてちゃもう手遅れだよ……」

テレビから続報が流れる。天体の正体が判明したようだ。直径1キロほどの彗星。そしてこのままだと、地球への直撃は避けられないと。

乃々香「ノエルッ! なんとかしてよ。円盤なんでしょ!!」

ノエル「ムリだよぉ~、ってイタッ! 痛いよノノカァ~」

突然痛がりだすノエル。少しの間をおいてから、町に何かか降って来る音。ついにこの町にも隕石が降り出した。
そして、円盤に隕石の直撃を受けたノエルが痛がりだしたのだ。上空で受ける分ダメージも大きいのかもしれない。

さらにテレビから流れる続報は絶望的な情報をもたらす。

乃々香「衝突まであと30分!? それに衝突予測地点って!!」

まさにここ。霧弥湖付近を中心とした衝突予測地図が表示されていた。

ノエル「ノノカ。ノエル、やれるだけやってみるよ」

リビングから庭へと駆け出るノエル。あまり安全とは言えない状況だが私も外に出る。
すると、なぜか町に降っていた隕石が止み、町は夜のように暗くなっている。彗星と町との対角線上に円盤が移動してきていた。
ノエルはもう覚悟を決めたようだ。時より苦悶の表情を浮かべながらも、私に見せるニッコリの笑顔。

乃々香「ごめんね、ノエル。ノエルなら逃げることだって出来たのになんで」

ノエル「最初はちゃんと対策があると思ったから。でも、今は違うの」

右手を上げ、左手を横に伸ばして、いつもの円盤を操作するときのポーズをとり、必死に落ちてくる隕石に対処している。

ノエル「ノエルは、みんなを、この星を守りたい。ノノカとの思い出の場所を失いたくないよ」

地上に落ちそうな隕石を、円盤から光線のようなもので撃ち消し去っていく。だが数が多すぎ、円盤自体でその多くを受け止めてるようだ。

ノエル「くっ……、きゃっ……」

ノエルの苦痛に耐える声が続く。円盤の彗星側はすでに直撃を受けた穴だらけのなのか、黒煙が上がるのが見え、さらに爆発音も……。

乃々香「もういいっ! もういいよノエル!! ノエルだけでも逃げて!!」

ノエル「だいじょうぶ、ノエルはまだやれるよ。だから安心してノノカ」

もう限界なのは明らかなのに、それでもノエルは止めようとしない。そしてついに衝突予想時刻まで1分を切った。
彗星が直撃すれば霧弥湖一帯は一瞬で地上から消え去るだろう。そして、ここは『霧弥カルデラ』と呼ばれる巨大火山の火口痕。
衝突の衝撃によって大噴火が起こることは間違いない。

ノエル「円盤の大きさが……彗星は……うんっ! 彗星のコースを逸らすだけならまだいける」

意を決したノエルは円盤を彗星へ向かわせる。今まで円盤の影で見えなかった彗星の姿が、昼間なのにハッキリと見える。
太陽を背にし、金環日食の状態で。

乃々香「ノエルッ!!」

思わずノエルを背中から抱きしめる。円盤は彗星との速度を合わせると、側面から彗星を押し、軌道を逸らそうとする。
しかし、力を加える場所がわずかにズレたのか、円盤は彗星の落下コースの真下に潜り込でしまった。

ノエル「だめぇ~!!」

それでも円盤は彗星をなんとか押し止めようとするが、地球の引力に引かれる彗星の落下を止められるだけの力はない。
圧力に押され彗星と共に落下してくる円盤。そして円盤のこちら側の表面にもはっきりと分かるヒビが走る。

ノエル「きゃゃぁぁぁぁぁー」

ノエルが悲鳴を上げると、円盤が眩い光に包まれた。
次の瞬間、円盤を貫通した彗星は、多少スピードは落ちたものの、霧弥湖町へと再び襲い掛かって来る。

乃々香「おかあさん……」

絶望の中私はそう呟く。もう助かる道は残ってない、数十秒後には彗星の衝突で吹き飛ばされるだけ。円盤は爆散し、私の腕の中にいた
はずのノエルも散霧してしまった今となっては……そして、私は突然の衝撃に仰向けに倒された。

乃々香「あ……れ?」

彗星の破片に体を貫かれていた。傷口からも口からも溢れてくるが……なにも感じない。痛みも苦しみも。ただ体に力が入らない。
そういえば致命傷を負うと、脳が痛みを感じなくなるって聞いたことあったっけ……視界が真っ白になってゆく。

乃々香「っていう夢を見たんだ、すっごい臨場感で怖かったよ」

ノエル「あ……うん、そうだね。夢でよかったね」

昨日の夜に、予測すらされてなかった流星群が観測され、テレビも朝からその話題一色だ。

乃々香「でも昨日の夜から急に流星群だなんてすごいよね」

ノエル「……」

何か思い悩んでいるのかノエルは黙ったまま。

乃々香「どうしたのノエル? 顔色悪いけど」

ノエル「なんでもないよ。ノエル急ぎの用事ができたから円盤ごと出かけてくるね。明日にはぜったいに帰ってくるから……」

円盤って動かせるんだ……でもなにかすごい悲壮感なんだけど。

乃々香「分かった、待ってるからね。それじゃ明日の夜に流星群を一緒に見ようね」

ノエル「うんっ、約束。じゃ行ってくるね、ノエル頑張るから!」

円盤に乗りこむと、ノエルは太陽に向かって宇宙へと飛び出す。

ノエル「ギリギリで2日戻せたけど……今から彗星を宇宙でひたすら壊せば大丈夫だよね。もうっ、いくら恒星の方向から接近してる彗星
だからって、前日でも気付かないなんて、この星の科学力低すぎるよぅ」

以上で「流星の真実」完結となります。

次回「お母さんの歌」 4月22日更新予定です。

「お母さんの歌」


・作中時系列……11話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太・他

ノエル「ねぇノノカ、ノノカぁ~」

乃々香「どうしたのノエル?」

ノエル「ノエルね、天文台でノノカ待ってた間に、教えてもらった歌に歌詞をつけてみたんだぁ♪」

乃々香「へぇ~すごいじゃない。歌ってくれるの?」

ノエル「もちろんっ!」

乃々香「じゃあお願いね、楽しみだなぁ~」

ノエル「♪ 長い 間 待たされたよ 天文台 7年も」

乃々香「ちょっとゴメン。ノエル、ストップ!」

ノエル「どしたのノノカ?」

乃々香「いやその……そのことは本当にゴメンね」

ノエル「謝らないでノノカ、それで過ぎた時間が取り戻せる訳でもないもの」

乃々香「(謝罪を受け入れる気はないってことなのかな……)」

ノエル「続けてもいい?」

乃々香「うん、どうぞ」

ノエル「♪ だから その恨みを 晴らせるメソッド」

乃々香「待った! ちょっと待って!!」

ノエル「なにノノカぁ? ノエルもっと歌いたいよぅ」

乃々香「ノエル……私のこと恨んでるの!?」

ノエル「ねぇノノカ、『恨んでる』ってなぁに?」

乃々香「今ノエルがそう歌ったじゃない!?」

ノエル「歌ってないよ。『そのおもいを』って歌ったんだよ」

乃々香「私の頭の中での漢字への変換がおかしいだけなのかな……」

ノエル「そうなんじゃないのかなぁ?」

乃々香「ごめんねノエル、続きお願いね」

ノエル「♪ 見つけ出そう 今ならできるよ」

乃々香「(やっと普通になったのかな)」

ノエル「♪ 巡る 季節数えながら ノノカ信じて待ってたけど それも飽きたし」

乃々香「はいストップ」

ノエル「ぷぅ~。もうっ、なによノノカぁ~」

乃々香「やっぱりノエルは、私が7年間も待たせちゃったこと怒ってるんだよね?」

ノエル「怒ってなんてないよ。でも……ちょっと寂しかったし、つまらなかったかな」

乃々香「あの、もしノエルが私のことを許せないなら、ノエルの気が済むようにしてくれていいからね」

ノエル「ノエルはノノカがちゃんと約束守って帰って来てくれたから、それで充分」

乃々香「ありがとうノエル」

ノエル「でもせっかくだからぁ、ちょっと考えておくね💛」

乃々香「(私、完全に余計なこと言っちゃったわよねこれ……)」

ノエル「♪ 戻って 来たらなら そう」

乃々香「……」

ノエル「……」

乃々香「なんで歌うの止めたの?」

ノエル「また止められるかなぁ~って思ったから」

乃々香「止めないよ、最後まで聞かせて」

ノエル「でもでもぉ、ノノカもう戻ってきてるんだよ。これってこれってぇ~、この後どうなるかすっごく楽しみじゃない?」

乃々香「あまりいい予感がしないから、楽しみではないけど……聞いてあげるって約束したから」

ノエル「うんっ! 約束は大事だものね。じゃあ最後いくよぉ」

乃々香「(まさか命までは獲られないわよね……)」

ノエル「♪ ノノカに お仕置き タイキック」

乃々香「ふぅ終わった……ってちょっと何、タイキックって!? もう大晦日から随分経つよ!!」

ノエル「みんなぁ~、出番だよぉ~」

乃々香「誰!? 戦隊モノの戦闘員みたいな3人と、向こうでアップしてるキックボクサーの衣装の人は!?」

戦闘員A「乃々香、タイキック」

乃々香「その声、湊太じゃない!」

ノエル「あのね、ノエルね、みんなの心の中にあるノノカへの負の感情を増幅させてみたんだよ♪」

乃々香「やめてって!! 二人掛かりで押さえこまないでっ!! ハッ!? 右手を押さえてるのはこはるで、左手は柚季ね」

ノエル「ノノカすご~い! みんな覆面してるのにどうして分かったの!?」

乃々香「簡単よ、押さえられてる腕が胸に当たって……痛い! 痛いって柚季! 左手を思いっきり締め上げないで!」

戦闘員B「巨乳……反対!」

ノエル「ノノカぁ、悪口なんか言うと腕を折られちゃうよ。さっきも言ったけど、力も増幅させてるからね。それじゃ仕上げのタイキックだよ」

乃々香「あといないのは……汐音!!」

汐音「ノエル、私はいつも通りよ。私もノエルと同じで7年間も待たされたのだから」

乃々香「嘘だよね汐音。私たち昔みたいに仲良しに戻ったものね」

汐音「そうね、でも物事にはちゃんとケジメを着けることも大切よ。だから乃々香……覚悟はいいわね」

乃々香「よくない!! よくないから!!」

汐音「テヤッ!!」

乃々香「ウギャ!!」

ノエル「おぉ~、シオネすご~い。かいしんのいちげきだね」

乃々香「お尻がっ、ちょ……これシャレになってない!! ノエル、汐音。7年も待たせて……本当にゴメン……ナサイ」

汐音「あら? 乃々香ったら、あまりの痛さに失神しちゃったわね」

ノエル「これに懲りたら、すぐに守れないような約束はもうしちゃダメだぞ💛」

以上で「お母さんの歌」完結となります。

次回「円盤の本」 4月25日更新予定です。

定期更新は次回で終わりとなります。

「円盤の本」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル

7年前のあの日、私たちは天文台で円盤に願いをかけた。汐音が持ってきたある本を参考にして。


乃々香「ねぇノエル、この本見てくれる? 汐音から借りてきたんだけど」

『ぼくらの知らない不思議大百科』その本の72ページ、『円盤(UFO)を呼ぶ方法』を開いて手渡す。

乃々香「私たちが7年前に円盤を……ノエルを呼んだときに参考にした本なんだ」

ノエル「ノエルの呼び方が書いてあるんだね……へぇ~いろいろ書いてあるよ」

一通り目を通し終えると、表紙のほうを確認している。

ノエル「この本を書いたのって? あ、やっぱりジュンイチローだ。もう25年くらい前かな、懐かしいなぁ……」

意外な言葉に驚きつつ。

乃々香「この本を書いた人もノエルに逢った人だったの!?」

ノエル「そうだよ、やっぱりちゃんと記憶を消せてなかったんだね」

見た目の幼さに似合わない、昔を懐かしむ遠い目をしているノエル。

ノエル「でも、こんなやり方をしなくたってね、ノエルは呼ばれればちゃんと行くのに」

乃々香「ここに書いてある方法って全然関係ないの?」

ノエル「うん。例え一人で呼んでくれたとしてもね、ノエルに願いが届けば、ノエルは喜んで行くよ」

乃々香「じゃあなんで私たちがこの方法で呼んだときにノエルは来てくれたの?」

ノエル「たまたまその中に、ノエルに届く願いをしてくれた人がいたから……そして、そこに一緒にいた人の願いも届くからだよ」

どうやら私たちがノエルを呼べたのは偶然だったみたいだ。 

乃々香「それなら、どんな人の願いならノエルへ届くの?」

一瞬答えに困ったような表情となるが、覚悟を決めたように話し始める。

ノエル「ノエルは星屑……流れ星なの。だから願いを掛けられれば、その願いを叶えたい」

乃々香「えっ!? ノエルって流星だったの!?」

予想もしていなかった告白だった。

ノエル「流れ星は願いを叶えるため、その場に留まるために円盤の姿になるの。その円盤の意識、記憶がノエルなの」

乃々香「どの円盤でも、中身はノエルってことなの?」

ノエル「そうだよ、願いが叶って円盤が消えても、みんなの想いはノエルちゃんと覚えてるんだよ」

乃々香「今まで円盤に出逢った人の記憶がすべて、ノエルの中には残ってるのね」

ノエル「うん。そして、ノエルに一番願いが届く人はね、流れ星が輝く一瞬を見てくれるStargazerの願い……」

Stargazer……『星を見る人』そうか、ようやくノエルがなぜ私たちの願いを叶えに来てくれたか分かった気がした。

乃々香「そうだったんだ、だから私や汐音の願いに反応してくれたのね。私たちもお母さんと一緒によく星を見ていたStargazerだから」

ノエルは大きく頷くと。

ノエル「そうだよ、あの日ノエルにはね、ノノカとシオネの届いたんだよ。そしてジュンイチローたちのときもね……」

ノエルは25年前の出逢いを思い出しながら、ゆっくりと話し始める。

ノエル「ジュンイチローはね、70近いおじいさんだったけど天体観測への情熱は凄かったんだよ。近所の子を集めてね、みんなに天体観測の楽しさ
を教えてあげててね……そうだ、確かその中に、今のノノカくらいの子もいたよ。とっても不思議な子でね、なんとなく未来がわかるみたいでね……
ノエルがお別れのときに記憶を消して、時間を戻すことも知ってたし」

そこまで言うと急に表情が曇った。

ノエル「そうだよ。ノエル、その子とお別れの時に、約束したことがあったよ……」

ノエルに『不思議な子』と言わしめる少女。25年前だから今は40歳くらいかな、ちょっと会ってみたいかも。

乃々香「それで、それはどんな約束だったの?」

今にも泣きそうな表情になりつつも、ノエルは話しを続ける。

ノエル「うん『ノエルがまたこの星に呼ばれる頃には、私は病気でもうそんなに永くは生きていられないと思うわ……だからその時には私の娘のお願いを
聞いてあげて。そして私の代わりにその娘といつまでもニッコリでいてあげてね』って……」

堪え切れずにノエルの瞳から涙がこぼれた。

乃々香「私とノエルが出逢ったのはもう7年も前。ということは、もうその人はこの世には……」

思わずもらい泣きしそうになる。

ノエル「うん、ジュンイチローもその子も、もういないよ……記憶を消された訳でもないのにね。忘れたのはノエルだったよ。ごめんね、カオリ」

まさかの名前。そして、今までの話が私の中で一本に繋がってゆく。

乃々香「ちょっとノエル!! 花織って!? ニッコリって!? それって私のお母さんじゃ」

泣きながら黙ってうなずくノエル。

乃々香「そうか、お母さんもStargazerだものね、ノエルと出逢っていても何の不思議はないよね」

ノエル「ごめんね……カオリ。ノエルこんな大切な約束を忘れちゃって」

ノエルが私に抱き付いてくる、混乱のあまり私とお母さんを間違えているのだろうか。

乃々香「そんなことないよ。理由はどうであれ、ノエルはしっかり私の所に来てくれたもの。ちゃんとお母さんとの約束を守ってくれたんだよ」

ノエルは泣き止むと、とびっきりのニッコリを私に見せる。

ノエル「ありがとうノノカ、ノエルはノノカとこれからもずっと一緒にいたいよ。カオリとの約束がなかったとしても、この気持ちは変わらないよ」

私もノエルに負けないニッコリ笑顔で答える。

乃々香「私もノエルともう二度と別れたくないよ。そして私の為に、こんな素敵な出逢いを願ってくれてありがとう、お母さん」


~これは、星屑とStargazerの、約束と願いが紡いだ奇跡の物語~

以上で「円盤の本」完結となります。

今回で定期更新は終了となります。

今後は不定期にはなりますが、更新は続けていきます。

短い間でしたが、ありがとうございました。

『何度も同じ時を重ね』


乃々香「ねぇノエル。円盤って時間を戻すことが出来るんでしょ」

ノエル「うんっ! 何回でもできるんだよ」

乃々香「私たちが覚えてるのは、流星群の日だけだけど、本当はもっとやってたりするの?」

ノエル「んーとねぇ、すっごくたくさんやったよ」

乃々香「たくさんって、そんなに大変だったの……」

ノエル「だってぇ、ノノカたちってすぐにトラブル起こすから、やり直すしかなかったんだもん」

乃々香「その中で一番幸せになれた未来が今だってことなのね」

ノエル「そうだよ、本当に大変だったんだからねっ」

乃々香「ゴメンねノエル。どんなことがあったのか教えてもらってもいいかな?」

ノエル「いいよ、ノエルの奮闘の歴史を教えてあげるね」

ケース001

乃々香と出逢って最初の冬が過ぎ……

ノエル「ノノカ……まだかなぁ」

7年経過……

ノエル「まだかなぁまだかなぁ~」

20年後……

ノエル「ノノカ遅いなぁ~」

100年後……

ノエル「そろそろ帰って来てくれるよねっ」

円盤「……ねぇノエル」

ノエル「どうしたの円盤さん?」

円盤「この星の人間の寿命ってせいぜい100歳なんだよ」

ノエル「それで?」

円盤「乃々香が生きているとしても今年で108歳だし、もうここにはきっと戻っては来ないよ」

ノエル「そんな……うわ~ん。ノエル、ノノカのこと信じてたのにぃ~」

乃々香と逢った日までもどる。


解決方法……他の円盤さんにお願いして、遠くにいっちゃったノノカに霧弥湖町に戻ってくるように暗示をかけてもらおうっと。

乃々香の感想……完全に忘れ去ってたのね。ノエルがいなかったら町に戻りすらしなかったんだ。

ケース142

柚季「はぁ~、なんで私のはこんなに小さいのかなぁ……」

ノエル「どうしたユズキ?」

柚季「私の周りのみんなは大きいのに、なんで私だけ」

ノエル「大きく見せたいの?」

柚季「そうね、せめてそう見せたいわね」

ノエル「なら簡単だよ。この紐を使ってみて」

柚季「こんな紐でどうするのよ」

ノエル「両腕に結んでぇ、背中と下に通すんだよ。そうするとぉ、ほらっ、ねっ」

柚季「ずご~い、ノエルのが紐で持ちあげられて大きく見える」

ノエル「はいっ、ユズキもやってみて」

柚季「じゃ早速……ノエルどう? 私大きくなった?」

ノエル「あんまり変わってないかも……」

柚季「それじゃ腕を上げればきっと……ノエルお願い! 私を手首から円盤に吊るして」

ノエル「いいけど、だいじょうぶ?」

柚季「いいからやって!」

ノエル「わかったよぉ」

柚季「いい感じで引っ張られてる。ノエルどぉよ、これで大きく見えるわよ……グエッ!!」

ノエル「あっ、元が小さすぎるから紐がすっぽ抜けて、ユズキの首に! ユズキ、死んじゃダメぇ~」

……なかったことにしました。


解決方法……このお願いだけはノエルでも叶えてあげられないよぉ。

乃々香の感想……ねぇノエル、ヒモってなぁに?

ケース005

ノエル「ノノカまだ戻って来てくれないけど、キツネさんが来てくれるから楽しいよ」

天文台にやって来るキツネとすっかり仲良しになったノエル。

ノエル「今日は一緒に寝ようね。キツネさんあったかいよ」

雪の夜、お互いを温めあう。やがて、雪も解ける頃。

ノエル「コホコホ、キツネさんまたねぇ」

最近、咳が止まらなくなったノエル。

ノエル「コホコホ、あれ? おかしいなぁ。どうしちゃったんだろう」

数日後。

ノエル「痛いよぉ、お腹が痛くて死んじゃうよぉ~」

円盤「ノエル、早く戻っておいで。治療しないと本当に死んじゃうよ」

ノエル「でもノエル、ここでノノカを待ってるって約束した……」

円盤「ノエル!? ノエル~!!」

キツネさんと逢う前までもどる。


解決方法……エキノコックスのワクチン作ったからもう大丈夫だよ。

乃々香の感想……野生のキツネにはぜったいに触っちゃダメよ。

ケース042

運転手「チッ、なんでこのガキ道路塞いでるんだよ」

クラクションを鳴らしパッシングをするが、全く避けようとしない。

運転手「何が『円盤反対』だよ! まったくもう」

客「早く行ってくれない、遅刻しちゃうよ!」

運転手「はい、すみません」

運転手「(なんで俺が文句言われなきゃいけないんだよ)」

目の前で二人の少女がまだ揉めている。

運転手「これでまた上司から、俺が遅延の責任がどうとか文句つけられるのかよ……」

プラカードが投げ捨てられた拍子にバスに当たる。

運転手「このクソガキがぁ!!」

アクセルを踏み込む。悲鳴と、車体の下に何かを巻き込む感触。

運転手「あぁ、スッキリしたわ」

当日の朝までもどる。


解決方法……運転手さんのストレスを取り除いておかないとねっ。

乃々香の感想……柚季ぃ~!! でも確かにこのあと、バスの発車間際の置き去りや逆走が無くなったものね。

「聖地巡礼ガイド2」


・作中時系列……13話終了後。情報は2015年5月10日現在。

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

湊太「さて、巡礼ガイド2を始めるぞ。前回に続いて司会の水坂湊太だ、よろしくな。前回のは>>121-129だぞ」

柚季「場所の説明とかはそちらの方が詳しく書いてあるからね」

ノエル「ねぇねぇソータぁ」

湊太「なんだちっこいの?」

ノエル「前回の情報でいっぱい間違いがあったからぁ、先に罰ゲームだってぇ」

乃々香「特にバスのダイヤとか。勝手に冬ダイヤだと思ってたけど、普通に改定されてただけで本数そのままなのよね」

湊太「だからって何で俺が全責任を押し付けられてんだ!?」

こはる「司会者ってそういうものだよぉ」

柚季「そうだそうだ」

汐音「人間諦めが肝心よね……」

乃々香「そういうことだから湊太、ごめんね」

湊太「そう思うのなら今回は誰か替ってくれよ」

全員「…………」

ノエル「みんなひっそりだねっ」

湊太「いや、ここでプレミアムイベントのネタいれなくてもいいだろ!」

汐音「……本当に迷惑」

こはる「ん? 何か言った!?」

湊太「なんでもないです……で何をやればいいんだ」

柚季「円盤からバンジージャンプだって」

湊太「いくらなんでも高すぎるだろっ!」

乃々香「がんばってね、湊太」

ノエル「早速円盤にご案内だよっ」

湊太「謎の光線で引き上げるなぁぁ~」

汐音「それじゃ、罰ゲームスタートね。ノエル、円盤を傾けて湊太を落として」

ノエル「でもぉ、ホントにいいの?」

柚季「とっととやっちゃいましょ」

ノエル「それじゃあ、エイッ」

湊太「うわわわっっっ~」

ノエル「ねぇノノカぁ」

乃々香「どうしたのノエル?」

ノエル「円盤にね、ゴムを結ぶところがなかったの」

乃々香「えっ!? じゃあこれって……」

こはる「ただの飛び降りだよぉ」

湊太「ああああああああああっっっっっ」

柚季「ノエルなんとかならないの!?」

汐音「ノエル、時間を戻して!」

ノエル「は~い、じゃあ最初にもどすね」

・・・・・・・・・・・・・・・・

湊太「ああっっ、ってあれ? 俺無事なのか!?」

柚季「よかった! お兄ちゃんが無事で」

こはる「あれ? なんでみんな覚えてるんだろ」

ノエル「だってノエル『時間を戻して』としかお願いされてないもんっ」

汐音「墜落死の記憶が残ったままなのね……」

乃々香「さ、さぁ、過ぎたことは忘れて本題に入りましょうよ」

湊太「そ、そうだな。とはいえ今回の『レンタカーなしでの巡礼チェレンジ』は2ch本スレに書いたとおりなんだよな」


柚季「それじゃ、何をするのよ」

湊太「まぁ……補足説明だな。望羊蹄の交流ノートにもここを検索してねって宣伝しちまったし」

こはる「誰もわざわざ見になんてこないよぉ」

汐音「いたら奇跡ね」

乃々香「でもこれってもうssじゃなくてブログじゃ……」

湊太「ブログもツイッターもやってなくて、HNすら持ってないからここで書いてるんだと。じゃ、俺と柚季で二人で巡る設定でいくからな」

柚季「私!? ……まぁどうしてもって言うなら、仕方ないから付き合ってあげるわ」

ノエル「それじゃあみんな、はじまりはじまり~」

柚季「ふぅ~、やっと着いた~」

湊太「飛行機だと乗るまでに時間がかかるからな。さて、まずは真駒内方面行きのバスだな」

柚季「北都交通と中央バスの案内所の隣の自動券売機で買えるわね」

湊太「よし、購入完了っと。0851か……、0922に乗れればいいんだったよな」

柚季「でも30分に一本じゃなかったっけ? なら次って1分後でしょ」

湊太「バス停もすぐだし、ちょっと外見てみるか」

アナウンス「真駒内方面行き発車します~」

柚季・湊太「そのバス待ってぇ~」

柚季「乗れちゃったね」

湊太「目の前で発車されるかと思ったよな。真駒内まで約60分か、滝野行きのバスは0945だからちょっとキツイかな」

柚季「でも普通の路線バスと違って、もう乗車はないし、バス停のダイヤもないから、早く着く可能性はあるものね」

湊太「さて、到着のアナウンスか。0947か、ちょっと間に合わなかったな。まぁ荷物も駅のコインロッカーに預けたいし……」

柚季「ねぇねぇ湊太、隣のバスって……」

アナウンス「滝野すずらん公園行き発車します~」

柚季・湊太「そのバス待ってぇ~」

湊太「奇跡の乗継だな、結局荷物もったままだが」

柚季「でもこれで予定よりも1時間早く動けてるんだからいいんじゃない」

湊太「(お前は少しは荷物持てよ……)」

柚季「とうちゃ~く。10分くらい遅れちゃったわね」

湊太「そもそも遅れてなきゃ乗れなかったんだしな、折り返しのバスまで25分か」

柚季「ここで撮るものはと、正門・モアイ・大仏・ストーンヘンジ・人頭有翼の獅子像・鳥の彫刻ね」

湊太「古宮家のお墓の区画自体はあるみたいだが、他人のお墓だしいかなくていいよな。すごく遠いし」

柚季「20分もかからず見て周れたわね、帰りのバスも来たよ」

湊太「初めて普通に乗れたな……」

柚季「ちょっと湊太! あの看板見て!」

湊太「デイサービスセンター『のえるの森』だと!?」

柚季「ノエルもああ見えて、こはるのとこみたいに手広くやってるのねぇ」

湊太「んな訳あるかよ。場所は『常盤橋』バス停を過ぎてすぐ左側だ。行きでも右側に見えるぞ」

柚季「真駒内から札幌に抜けるわよ」

湊太「改めて説明が必要な所は……汐音のマンションくらいか。とりあえず写真でもアップして」

バチーン!!

湊太「イテッ! 何するんだ戸川」

汐音「ダメだって前にも言ったわよね、それにこの写真マンションの名称までバッチリじゃないよ」

柚季「じゃ前回に続いてヒントだけね、最寄り駅は前回の通り『バスセンター前』。近くに『セブンイレブン』があるわよ」

湊太「ちょうど大通公園を挟んで学校の対角線上だな」

汐音「あまりヒントだすとまた……ビンタよ」

湊太「はいっ、すみませんでしたっ」

柚季「レンタサイクル『ポロクル』は札幌市内に40か所程度ある駐輪場から出し入れ自由のシステムよ。詳しくは検索してみてね」

湊太「これで初日は終了だな。ところで宿はどうなってんだ?」

柚季「一緒に泊まりたかったの? 別々の部屋に決まってるでしょ。大都市はビジネスホテルが充実してるんだから」

湊太「お前となんて泊まりたい訳ないだろが」

柚季「こはるとならいいんでしょ?」

湊太「だ、誰がそんなこと言った。とにかく明日は一番の洞爺湖行のバスに乗るから寝坊するなよ」

チュンチュンチュン……

柚季「ねぇお兄ちゃん……私、お兄ちゃんのこと、とってもとっても……」

湊太「俺も柚季のこと、とっても……」

柚季・湊太「とってもバカだと思う!!」

柚季「なんで寝坊するのよ、バカ湊太!!」

湊太「お前だって寝坊したんだろが!! ホテルの朝食の時間過ぎちゃったじゃないか」

柚季「湊太が起こしてくれると思ってたから、安心して二度寝したのよ」

湊太「二度寝って、完全に人任せかよ! まぁバスの時間には、まだ余裕あるからいいが」

柚季「北美⇔霧弥湖なんて30分だし、着いてから食べればいいじゃない」

湊太「何を言ってるんだお前は、実際の札幌⇔洞爺湖は2時間半だぞ。途中のサイロ展望台で降りるが、そこまでも2時間20分。着くのは昼過ぎだ」

柚季「え~っ!? おなか空いたよぉ~」

湊太「知らん、我慢しろ。このバスの乗継で行かないと、サイロ展望台での待ち時間が1時間じゃ済まなくなるからな」

柚季「やっと着いた~。さあごはんごはん~」

店員「申し訳ありません。本日レストランは団体様の貸切になってまして……」(実話)

湊太「平日なのに団体貸切とはついてないな……周りに何にもないし。とりあえず店内で売ってる『チーズドッグ』と『コロッケ』でも食っておくしかないな」

柚季「店内に私たちのポスターが貼ってあるけど、1階にノエル・乃々香・汐音。レストランへの階段の踊り場にこはるまでは確認できたわ。って私は?」

湊太「2階だったんじゃないのか? まぁ汐音の男子トイレ入口前よりは、まだないほうがいいと思うぞ」

柚季「元からない人には言われたくないわ……」

湊太「さらっと一番傷つく事言うな!! さて温泉行のバスに乗るぞ」

柚季「ってウチに帰って来ちゃったわねぇ」

湊太「まぁ今回はまだ旅行中の設定だから、荷物だけ置いて次に行こうか」

柚季「さて、ここでタクシーを使ったわけだけど、これには理由があるの」

湊太「バスの時間は問題無いのだが、旧洞爺湖幼稚園が最寄りのバス停から1.1キロも離れているのがまず一つ目」

乃々香「そして私のポスターの場所の『金毘羅火口展望台』が歩いて行くには厳しい場所だからなの」

柚季「そうなのよねぇ、私有地の有料展望台なんだけど、駐車料金名目で1000円取ってるんだけど、これってなぜか歩いていっても取られるのよね」

乃々香「だったら旧洞爺湖幼稚園への途中にある金毘羅火口展望台にタクシーで寄ってもらっちゃったほうが、時間と体力の無駄を省けるのよ」

湊太「タクシーの運転手さんも来たのは一年ぶりだとか言って一緒になって写真撮ってたけどな。まぁその分、待ち時間分のメーターは止めててくれたけど」

柚季「さて、ここから西山火口散策路の走破ね。途中に私のEDで使われてる木の歩道(フットパス)があるから撮影忘れずにね」

湊太「北口の西山遊歩道入口のバス停まで40分ほどの歩きだな。予定してた1時間前のバスに乗れて、それがさらに東町まで行くバスだったのが悲劇の始まりだったな」

柚季「そうよねぇ、ターミナル止まりだったらこのタイミングで万世閣に行かなかったものねぇ」

湊太「そうすれば、色紙があるか聞く店員さんも変わってただろうし……運がなかったとしか。しかしなぜ残ってたのに無いって言われたんだろな」

柚季「売店担当のスタッフさんじゃなかったみたいだし……まぁ2月に買えてるんだからいいんじゃない」

湊太「お前だけが1枚少なくて困ってるんだってよ。クリアファイルはお前がだけ多すぎて困ってるらしいが」

柚季「私、どっちでも存在感を示せてるのねっ」

湊太「悪い意味でな……じゃ浮見堂へ向かうぞ」

柚季「月浦を過ぎたらもう誰もいないわね。あれ? バスが止まった」

湊太「何か道路にあるな、キツネでも轢かれたのか? あ、運転手さん降りて行った」

柚季「崖の上に向かって何か言ってるな」

ドスン!!

湊太「何だ!? バスに当たったぞ」

柚季「落石だったみたいね。それも山菜採りに崖を登ってた人によって起きた……」(ネタじゃなく実話です)

湊太「バスに直撃したのもタイヤだったみたいだし、パンクもしてないから5分程度で出発できて、まだよかったけどな」

柚季「まぁこの5分が右回りで温泉に帰れるバスを乗り遅れる原因になったんだけどね」

湊太「水の駅で45分待ちはヒマだったな……雷も鳴り出すし」

柚季「浮見堂に渡る飛び石の所も波を被るほど湖面も荒れてたもの」

湊太「バスに乗ったと同時に豪雨になったものな。この便は始発から終点まで貸切だったぞ」

柚季「さぁ夕飯よ、ウチに帰るわよ」

湊太「いちおう今の設定は旅行者だからな、俺ら」

柚季「夜だしオムライスよりハンバーグかなぁ……ってあの席が空いてる!」

湊太「あの二人なんですけど、あそこの席いいですか?」(もちろん実際は一人です)

店員「アニメの方ですか?」

湊太「はい」

店員「どうぞ~、ご注文は?」

湊太・柚季・ノエル「オムライスで!」

柚季「ってノエルぅ~」

湊太「どっこか沸いて出たんだちっこいの」

ノエル「だってノエルも、オムライス食べたいんだもんっ。それにみんなで食べるとおいしいよ」

柚季「私のお財布にはやさしくないけど、まっいいわ。奢ってあげるから食べちゃいなさい!」

湊太「そうか、悪いな柚季」

柚季「湊太の分なんて出す訳ないでしょ! ノエルのだけよ」

ノエル「やっぱりここのオムライスは最高だよぉ~。みんなも食べに来てねっ、交流ノートもあるからねぇ」

湊太「さて、せっかくの夜の温泉街だ。夜のカットや花火の撮影も忘れずにな」

柚季「夜の撮影は手ブレすると、何が写ってるか分からなくなるからね、特に花火は。持って行けるなら三脚でもあると便利よ。持っていけばよかった……」

湊太「二日目もこれにて終了だな。温泉に浸かってしっかり疲れを取ってくれよな」

柚季「今日もいい天気ねぇ、でも夜の予報は曇りなのよね……天文台で星見れるかしら」

湊太「心配してもなるようにしかならんからな。まずは朝一番の遊覧船で中島に向かうぞ」

柚季「この時間ならまだ団体客は少ないものね。いない訳ではなかったけど」

湊太「中島への途中下船込みで80分だ。戻ってきたら今度は電動自転車を借りて、周辺の聖地を巡るぞ」

柚季「各ホテルでも自転車の貸し出しはやってるけど、電動がいい場合は『高柳商会』さんに予約してね」

湊太「作中でバスターミナルから見える赤い看板の付いた建物の所だ。実際の場所も同じだぞ」

柚季「西のトンネルから東の民芸御殿まで、森と木の里センターまで行かないなら往復しても18キロ程度ね」

湊太「民芸御殿が11時からだから、それに間に合うようにいけばいいな」

柚季「乃々香の家って、セイコーマートの壮瞥温泉店を過ぎたここから山側へ入っていくんだ」

湊太「なんだこの上り坂は! 電動自転車でも登れないじゃないか」

柚季「乃々香、毎日こんな道を通ってるだから、足速いハズよね」

湊太「そうだな……さぁ11時だ。早く民芸御殿に行くぞ」

柚季「早くこはるに会いたいだけでしょ……」

こはる「いらっしゃいませ~」

湊太「食堂11時からだったよな、昼飯食べさせてくれないか」

こはる「ごめんなさい。今日は団体様の貸切なのよ」

柚季「え~っ!? おなか空いたよぉ~」

湊太「なんか昨日と同じ展開だな。違うのは何もすぐ食べれるものが売ってないことだな」(ホントに勘弁して欲しかった)

こはる「じゃあ……私の手料理でも」

湊太「是非お願いします!!」

こはる「ある訳ないでしょ、もうっ湊太ったらぁ」

湊太「だよな、ハハハ……」

柚季「いいように弄ばれてるわね」

湊太「結局わかさいも本店の食堂になっちまったな。ちなみにここにはリンゴジュース『洞爺湖の露』のビン入りも売ってるぞ」

柚季「そんなの飛行機に乗せるの面倒なだけでしょ、缶で充分よ」

湊太「さて、5時間予定してたのが2時間半で周りきったし、日帰り温泉でも入っておくか」

柚季「洞爺温泉ホテルなら日帰り入浴でも貸切風呂を使えるから、空いていれば混浴もできるわよ」

湊太「……したいのか?」

柚季「バカなこと言わないで! 情報として挙げただけよ。実際万世閣に行った訳だし」

湊太「このときもう一度売店に……」

柚季「未練がましい男は嫌われるわよ」

湊太「んじゃ『森と木の里センター』に向かうとするか」

柚季「その前に大事なことを一つ。内地からの巡礼だと大きな荷物を持っていると思うけど、バスターミナルにコインロッカーがあるわ」

湊太「作中とは内装が全く別のものになっちまったが、コインロッカー自体は同じものが残ってるな」

柚季「そのコインロッカーなんだけど、荷物の預かりは当日限りなのよ」

湊太「ということは、預けておいて翌日に取りにきてもダメなのか」

柚季「そういうことよ。張り紙には夜に回収するって書いてあったわね。翌日まで預けたいなら洞爺駅のロッカーを使ってね、500円もするけど……」

湊太「2日で1000円か。ただ歩いて『森と木の里センター』に行くのなら預けた方が絶対にいいぞ。そうしないと山道がただの苦行になるからな……」

柚季「あと夕飯と明日の朝食も買いこまないとね」

湊太「キャンプ場だから炊事場は無料で使える訳だが、飛行機で来た人が薬缶だの鍋だの持ってきてる訳ないものな。貸し出しもないし」

柚季「センター内の和室の場合は、共用の冷蔵庫は廊下にあったけど、電子レンジとかはないからね」

湊太「いくつか予約の際の注意を、まず『17時までに到着すること』。管理している『北の湖記念館』の営業時間が17時までだからな」

柚季「到着したら予約した番号に電話をして料金の回収にきてもらってね。基本的に『森と木の里センター』には誰もいないわよ」

湊太「いないからって利用者以外立ち入り禁止の看板を無視して敷地内に入ったの見つかって、警察沙汰になっても知らんからな」

柚季「お金を払ったらもう引き払うのは自由よ。朝に鍵とか回収しに来るとかは無いから。いつ帰ってもOKよ」

湊太「あとは『ゴミは持ち帰る』のと『キャンセル料は3日前から』くらいか」

柚季「それと、壮瞥町役場に連絡する天文台の予約は『森と木の里センター』に宿泊することが前提になっているわ」

湊太「宿泊予約せずに天文台だけの見学というのは出来ないからな」

柚季「ちなみに暇すぎたので、ずっと窓から来る車を見てたんだけど、3時間で看板見て引き返すのが4台で、突入してきたのは1台いたわね」

湊太「大慌てで写真撮ってたな。名札付きのカメラケースを落としていってたから、天文台の横の目立たない所に移しておいたぞ」

柚季「さて、天文台の予約は20時なのよね。って何よこの天気は! 16時過ぎからずっと雨じゃない」

ノエル「雲さん、雲さん、飛んでけぇ~」

湊太「まだ沸いて出たな、ちっこいの。まぁここに住んでるんだから居て当然か」

柚季「ノエル、ありがとう。でも予報を見てもずっと曇りだし、最新の『天気ドットコム』の星空指数も10%って……絶望的な状況ね」

ノエル「だいじょうぶ、今日はきっと良く見えるよ」

湊太「屋根に当たる雨音が激しいが、信じて待つしかないものな。でもこれって天文台の管理人さん来てくれるのか?」

柚季「『森と木の里センター』を管理している所と天文台の管理人さんは、全く関係ないからね」

湊太「連絡や確認のしようが無いんだよな」

柚季「19時50分になったわね。車の音がしたから、管理人さんは来てくれたみたいね」

湊太「まぁ内部の写真を撮らせてもらえるだけでも……って晴れてる!! 星が見えるぞ」

柚季「後で管理人さんとも話したけど、今日は絶対に無理だと思って、中だけ10分くらい見てもらって終わりかなぁで来たら晴れてたと」

湊太「星や花火の撮影してたら1時間半も過ぎてたものな。やはりせっかく来るのなら泊まった方がいいぞ」

柚季「えっ? 湊太はウチに帰るんでしょ」

湊太「どうやって夜中にこの山道を帰れと言うんだ!」

柚季「私はノエルと泊まっていくから。それとも一緒に泊まろうっていうの?」

湊太「そういう意味じゃなくて、交通手段がないと言ってるんだ」

柚季「歩けばいいじゃない。そうか……湊太はノエルと私しかいないのをいい事に野獣になるつもりなのね。こはるに連絡しなきゃ」

湊太「止めろ! 分かった、帰るから。明日は豊浦駅に向かう電車で落ち合おうな」

柚季「了解。じゃとっとと帰ってね」

ノエル「ソウタ、バイバ~イ」

湊太「遭難しないで無事に帰れるかな……」

ノエル「きら~ん☆ ユズキぃ~、朝だよぉ~」

柚季「おはようノエルぅ~、でもまた雨ね。天文台の時間だけ晴れてて、その後また降り出してたけど」

ノエル「あの時間だけノエルが雲さんを飛ばしたんだよ」

柚季「ありがとうねノエル、じゃ行ってくるわね」

ノエル「またお泊り会しようねぇ~」

柚季「7話でお弁当を食べた豊浦駅に向かうわよ。ここで電車に乗る『長和駅』は無人駅なので、電車に乗ったらバスと同じように整理券を取ってね」

湊太「お、ちゃんといたな。よく寝坊しなかったな」

柚季「ノエルが起こしてくれたのよ。湊太の乗ってきた『洞爺駅』は有人駅で、券売機もあるので切符を買って乗ってね」

湊太「そして『豊浦駅』だな。ここは簡易委託駅なんだが、切符の改札や発券はやっていないので、下車するときは電車内での精算になるぞ」

柚季「車で行った場合も入場券は必要ないと思うので、おそらくそのまま入っても大丈夫よ」

湊太「だからってシートを広げて弁当食べたりはするなよ」

柚季「洞爺駅にバスで戻って、汐音とこはるのEDの場所へと歩いて行くわね」

湊太「ここで一つ注意を。こはるの場所なんだが、EDを見ても分かってもらえると思うが、右側にアパートが映ってるんだよな」

柚季「帰りのバスで近くを通ったときに、そこにパトカーが来てて車が止められてたのよね。交通違反の取り締まりで止めるような場所でもないし」

湊太「想像でしかないのだが、写真を撮ってて通報されたか、職質された可能性も無くはないので。あくまで無関係の人が住んでいる所だからな」

柚季「さぁいよいよクライマックス、西山火口散策路から金毘羅遺構散策路へ向かうわよ」

湊太「ストリートビューでも見れるが普通に山を越えるからな」

柚季「ここから金毘羅遺構散策路に直接抜けられるみたいだったんだけど、道が全く分からなかったわね」

湊太「西側に大きく戻されて、結局はビジターセンター側の入口の所に出ちまったものな」

柚季「両方周って90分くらいね。ちょうど11時『望羊蹄』オープンの時間よ」

湊太「日曜だけど、この時間ならまだ空いてるよな」

柚季「って最後の1席じゃないのよ。予約席が多くて店内はそれ程混んでるようには見えないのにね」

湊太「平日以外に行く人は予約をしておいた方がいいぞ。席の場所までは無理だと思うが」

柚季「これにて全行程終了ね。帰りの飛行機21時ってまだ12時にもなってないわよ」

湊太「でももう行くとこないしな……このときもう一度万世閣に」

柚季「まだ言うか!!」

乃々香「二人ともお疲れ様」

汐音「やっぱりただのブログになったわね……」

こはる「レンタカーを借りれば洞爺湖周辺だけなら一日で充分なのにねぇ」

湊太「まぁ免許を持ってない人もいるだろうしな。車での巡礼なら他にやってる人も多いだろうし」

柚季「こういう方法もありますよっていう提案みたいなものよ」

ノエル「暇なだけだよねぇ」

全員「…………」(それを言ったらおしまいだ)

乃々香「それじゃ最後に。箱根山の火山活動が大きく報道されているけど、洞爺湖にも有珠山という活火山が存在しているわ」

ノエル「この山はね、だいたい20~30年の周期で噴火を起こしているんだよ」

汐音「前回の噴火は2000年、もう15年が経っているわ」

こはる「町のハザードマップを見てもらえると分かるけど、温泉街一帯に火口が開く可能性も否定はできないの」

柚季「噴火予知自体は難しい山ではなくて、前回の噴火でも温泉街からわずか300mの場所に火口が出来たけど死者は出ていないわ」

湊太「それでも噴火で全聖地消滅という可能性も決してゼロではないので、行きたい人はなるべく早めにな」

乃々香「それじゃみんな、私たちの霧弥湖町にぜひ来てみてね」

ノエル「ノエル、待ってるから。7年も待たせちゃイヤなんだからねっ」

以上で「聖地巡礼ガイド2」完結となります。

次回以降は「何度も同じ時を重ね」をダラダラと更新していきます。

と思っていたのですが、他のが書きあがりましたのでそちらを。


「白と黒」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太・他

学校からの帰り道、いつものようにバスターミナルで待っていたノエルと一緒の家路。だけど、家まであと少しという所で、激しい雷雨になってしまった。

乃々香「うわ~、びしょ濡れになっちゃったわね」

ノエル「このくらいノエルだいじょうぶだよっ」

とりあえず玄関で濡れた体と服を拭く。ノエルは……あれ?

乃々香「ノエルはほとんど濡れてないのね」

ノエル「だからぁ、ノエルはこれくらいの雨なんてへっちゃらなんだもん」

何かまた円盤の力でも使ったのだろうけど、便利というか無駄な使い方というか……。とはいえ、私の部屋でタオルでしっかりノエルを拭いておく。

ノエル「あうぅ、くすぐったいよぉ~」

乃々香「がまんしなさい。ところでノエル? 雷が鳴ってるけど、円盤は平気なの?」

ノエル「直撃しなければ平気だよ。ちょっと怖いけど……逃げられる訳じゃないし」

乃々香「そっか、そうだよね。宇宙を飛んで平気なのに、雷でダメってことはないよね」

窓の外へと目を向けると、円盤はすっかり積乱雲の中で、ここからは見えなくなっている。

その瞬間、視界が真っ白に染まった。

乃々香「きゃぁぁ~」

ノエル「うきゃぁぁぁ~」

激しい雷鳴と同時に上がる私たちの悲鳴、そして一転真っ暗に。どうやら停電みたいだ。

乃々香「びっくりした~、ノエル大丈夫?」

……返事が無い。

乃々香「ノエル!? どうしたの?」

なんとなく倒れている青白く光るノエルっぽい人影が見えるけど……。そして停電から復旧する。

乃々香「ノエルッ!!」

やはり倒れているノエル、意識がないみたいだ。

乃々香「どうしよう、救急車!? ううん、ノエルは病院に連れて行っても……」

前に北美で倒れた時は、霧弥湖町に連れ帰ることで回復したけど、ここは霧弥湖町だし。

???「大丈夫よ。円盤に雷が直撃して気を失ってるだけだから」

乃々香「誰!?」

突然の声に驚きつつも、声のした方へ振り向く。そこには……。

乃々香「えっ!? ノエル??」

でも何かが違う……。

???「そうよ、私はノエル。そして、ノノカの膝の上で気を失っているのもね」

背格好や髪や瞳の色は一緒なのだが、雰囲気・言葉遣い・目つき。そして何より服の色が違う、真っ黒だ。

黒いノエル(以下ブラック)「不思議そうねノノカ、でも私もノエルなのよ。だからノノカのこと何でも知っているわよ」

すべてを見透かされている、そんな恐怖感が襲ってくる。

ブラック「7年間も待たせておいて、よくもまぁそんなヘラヘラしてられるわねぇ」

乃々香「そのことはもう、謝ってノエルも許してくれてて……」

ブラック「一度謝ったくらいで済む程度の事じゃないでしょ、7年よ7年。逆に待ってみなきゃ分からないわよ」

乃々香「……ゴメンナサイ」

ブラック「まぁまだ言いたいことはあるけど、ホワイトが起きると面倒だから。じゃあねノノカ」

風……というか紙を飛ばす程の強風が部屋の中に吹くと、黒いノエルの姿は消えていた。

乃々香「一体なんだったの? ってノエル、起きてよノエルッ!」

雨は止み、夕暮れの空には晴れ間も見えてきた。そして上空には青白く点滅する円盤。明らかに異常がある様子だった。

ノエル「う……ううん」

乃々香「ノエルッ!」

ノエル「んぁ……、おはようノノカぁ~」

乃々香「よかった気がついたのね。ねぇノエル、さっき真っ黒な服を着たノエルが……」

ノエル「えっ! クロちゃんが出て来ちゃったたの!?」

乃々香「クロちゃんって……なんかそんなフレンドリーな感じじゃなかったけど」

ノエル「とにかく、すぐに追わないと」

立ち上がろうとするが、まだ力が入らないのかそのまま倒れてしまう。

ノエル「あれっ……おかしいなぁ」

乃々香「まだ無理しちゃダメよ。そんなに急ぐのなら、連れてってあげるから」

ノエル「でもぉ、それじゃノノカに迷惑かけちゃうよぅ」

ノエルを背負って玄関へと向かう、見た目よりも軽いんだ。

乃々香「そんなの気にしないの。私たち友達でしょ」

ノエル「うんっ、ありがとうノノカ」

乃々香「さぁ急ぐわよ、どこにいけばいいの?」

ノエル「とりあえず外に、円盤さんが回復すればすぐに見つけられるんだけど」

乃々香「わかった。じゃあ湖のほうにいってみるわね」

外へと飛び出し、坂道を一気に駆け下りていく。

ノエル「……ぽっかぽかする」

乃々香「ん? ノエル何か言った?」

ノエル「ううん、なんでもない……」

しばらくノエルの寝息しか聞こえてこなくなった。やっぱりかなり無理してるみたいね。

一方黒いノエルは、柚季と湊太の所に……。

柚季「あっ、ノエルぅ~」

いつものように抱き付くと頬擦りを始める柚季だが。

ブラック「あうぅ、ユズキ。鬱陶しいよぉ~」

柚季「うへっ!? うっとうしい……」

ブラック「そうだよ、まさか今まで喜んでたとでも思ってたの?」

柚季「だって一度もイヤなんて言ってなかったし……ねぇノエル?」

ブラック「何、ユズキ?」

柚季「私のこと好きなの? 嫌い……」

ブラック「キライに決まってるでしょ」

柚季「そんなぁ……」

ブラック「だいたい、ユズキが円盤追放とか言ってノエルを嫌ってたくせに。好きなわけないじゃない」

その場に崩れ落ち、いじけだす柚季。

湊太「今日はずいぶんと辛辣じゃないか、ちっこいの」

ブラック「何よマメチビ」

湊太「マメチビって、実際ノエルは俺より小さいじゃないか」

ブラック「湊太ってバカなの? ノエルは円盤だって言ったじゃない」

湊太「(あれ? なにかいつものノエルと違うな……)」

ブラック「円盤から見れば、人間なんて微生物だよ。だからマメチビだってまだ大きいくらいだよ」

湊太「まぁ……そうだな。ところでノエル」

バチ~ン!

湊太「何するんだよいきなり」

ブラック「馴れ馴れしく名前で呼ばないでよねっ、ソータとはそんな仲良しって訳でもないんだから」

湊太「だからっていきなりビンタしなくてもいいだろ!」

ブラック「こーいうときはビンタって、シオネに教えてもらったんだもんっ」

湊太「ちっこいのはダメで、ノエルでもダメなら、どう呼べばいいんだよ……」

視線を逸らすと同時に、強風が吹き抜け、黒いノエルの姿が消えた。

湊太「あれ……いない。おい柚季、いつまでいじけてんだ」

柚季「だってぇ、私はノエルのこと大好きなのに……」

湊太「お前、何にも気付いてないんだな」

柚季「何のことよ?」

湊太「まぁいいや、ノエルを捜すぞ。お前もこのままじゃイヤだろう?」

柚季「もちろんイヤよ。もう一度ちゃんと聞くんだから」

次に黒いノエルが現れたのは……。

ブラック「う~ん、やっぱり円盤まんじゅうはおいしいよねぇ~」

工芸御殿ではあるが、霧弥湖上に円盤が現れたことで、温泉まんじゅうは再び円盤まんじゅうとして売られている。

こはる「ノエルちゃん、いらっしゃい~」

ブラック「コハルぅ~、お饅頭もっとちょうだい!」

すでに試食のお菓子は黒いノエルに食べつくされている。

こはる「ノエルちゃん、奥で食べていいから、試食のお菓子を食べつくさないでね」

ブラック「このお饅頭、円盤がモデルなんでしょ。だったらぁ、ノエルには肖像権が発生するんだよ」

こはる「肖像権って……円盤の模様を焼き付けてるだけなんだけど」

ブラック「だからぁ、ノエルはいくらお饅頭食べたって、文句を言われたくないなぁ~」

こはる「お饅頭だけじゃなくて、他のお菓子も食べちゃってるのに」

ブラック「いいじゃないよ、どうせタダで出してるんだから。この腹黒女」

こはる「はらぐろ……って!?」

ブラック「だってそうじゃない、ソータのこと馬車馬のように、いいように使っておいて」

こはる「あれは湊太が手伝ってくれてるのであって、私からは別に……」

ブラック「そーいうのが腹黒だっていうの! ソータが善意で手伝ってる訳ないじゃない」

こはる「……」

ブラック「下心があるのが分かってて、知らないフリして手伝わせるなんて、一番極悪だよ」

こはる「湊太は幼馴染みで、それでお店も手伝ってくれてるだけで」

ブラック「だったら、コハルはソータのお店に手伝いに行ったことあるの?」

こはる「うっ……一度もないかも」

ブラック「だったら腹黒女確定だよっ」

こはる「うっ……ううっ、ノエルちゃん、そこまで言わなくてもいいじゃない」

泣き崩れるこはる。そこに吹く強風と共に、黒いノエルの姿は消える。そこへ……。

湊太「こはる、ノエルが……来てたみたいだな」

柚季「こはるもいろいろ言われたみたいね、大丈夫?」

こはる「うん、湊太。その……ごめんなさい」

湊太「ん? なんで謝るんだ」

こはる「うん、今はただ謝りたいの。ゴメンね」

柚季「なに? なんかいい雰囲気じゃない……」

そして、最後に黒いノエルが現れたのは……。

湖畔に円盤の写真を撮りに来ていた汐音のもと。

汐音「今日の円盤はおかしいわね、あんなに点滅しているなんて」

ブラック「シオネぇ~」

汐音「ノエ……ル?」

ブラック「ねぇねぇ、シオネってツンデレさんなんでしょ」

汐音「ツンデレって……どこでそんな言葉覚えたのよ」

ブラック「ノノカが帰って来て、すっごく嬉しかったくせに、ツンツンしてたじゃない」

汐音「あれは……7年も私のことをほっておいて、さらにすっかり忘れていたから」

ブラック「でもでもぉ、6年はノノカを信じて待ってられたのに、なんであと1年だけ待ってられなかったの?」

汐音「そもそもすぐ戻って言ってたんだから、6年だって我慢強く待ったほうよ。それにもう済んだことでしょ」

ブラック「でも、あの頃の汐音は凄かったよねぇ~。ユズキにノノカの悪口吹き込んだりして」

汐音「ノエル、何が言いたいのよ」

ブラック「それにあのビンタ、容赦ないよねぇ。シオネって本当はすっごく凶暴なんでしょ」

汐音「くっ……」

思わず右手を振り上げる。

ブラック「そう、そうやってノノカのときみたいに、ノエルのこともビンタしてよ」

挑発され、右手を振り下ろす汐音。その先は……。

ブラック「……あれ?」

汐音は黒いノエルの頭を右手で優しく撫でていた。

汐音「私がノエルのこと、ビンタなんて出来る訳ないじゃない。それに……あなた、いつものノエルじゃないし」

ブラック「なっ、何言ってるのよシオネ。ノエルはノエルだよ」

汐音「私は7年も円盤を見続けてきているのよ。分からない訳がないでしょ」

ブラック「チェッ……バレちゃったか」

汐音「あなた何者? 何の目的でこんなことしてるの? ノエルであることは間違いなさそうだけど」

ブラック「知りたければ私を捜してみてねっ、それじゃねぇ~」

汐音「ちょっと、待ちなさい!」

しかし、強風が吹き抜け黒いノエルの姿が消える。

柚季「汐音~」

汐音「みんな」

こはる「ノエルちゃん見なかった?」

汐音「黒い方なら見たわよ」

湊太「やっぱり現れたか、一体何者なんだ?」

そこへ駆け寄る足音が。

乃々香「よかった、みんないた」

汐音「乃々香にノエル、って乃々香が背負っているのがいつものノエルみたいね」

こはる「ノエルちゃんどうしちゃったの?」

乃々香「円盤に雷が落ちてから調子が悪いみたいで」

柚季「じゃあ寝かせておかなきゃダメじゃない」

乃々香「それが、黒いノエルを追わなきゃって、どうしても外に出るって言うから」

湊太「あいつのことか」

乃々香「みんなの前にも現れたのね」

汐音「でも、いなくなっちゃったわ。捜し出してみなさいみたいなことを言っていたけど」

突如、空一面が強い光に包まれると。

ノエル「きらーん☆ 充電完了~。ノエル元気になったよ」

上空にはいつも通り、というよりいつもより力強く輝く円盤の姿があった。

乃々香「ノエル、体はもう大丈夫なのね」

ノエル「うんっ、ノノカのおかげ。ありがとう」

周りに全員いることに気付くと。

ノエル「それと……みんな、ゴメンナサイ。きっとクロちゃんがビドイこと言ったよね……」

湊太「別にノエルがあやまることじゃないだろ」

柚季「そうよ、悪いのは黒いノエルなんでしょ」

こはる「でも、言ってたことは間違っては無かったかも……」

汐音「私には、ただ怒らそうとしてたみたいだったけど」

乃々香「それよりノエル、今なら円盤の力で黒いノエルを捜せるでしょ」

ノエル「そうだった。……見つけたよ、天文台にいる」

夜の天文台。雨が空気をきれいにしたのか、今日は星がよく見えている。

ブラック「来たわねホワイト」

ノエル「クロちゃん! 何で出てくるといつも、みんなを傷つけるようなことをするのよ!」

ブラック「傷つける? 私はあなたが押し殺している、本当の気持ちを喋っているだけよ」

乃々香「ノエルの……本当の気持ち!?」

ブラック「あなたたちひょっとして、ノエルのことを神様や天使とでも勘違いしてない?」

ノエルは黙って俯いてしまっている。

湊太「確かにそうかもな」

柚季「私がどんなヒドイことをしても許してくれたし」

こはる「私たちの願いを叶えてくれて」

汐音「いつも見守ってくれてた」

乃々香「そうよ! ノエルは私たちの天使なのよ!」

ブラック「バッカみたい! ノエルだって生きていて、感情もあるの。ただ、みんなの為に我慢しているだけよ」

ノエル「そうだよ……」

全員「ノエル……」

ノエル「クロちゃんの正体はノエルの溜め込んでいた、みんなへの思い。それが、落雷の衝撃で押さえられなくなっちゃったの」

柚季「それじゃあ、黒いノエルの言っていたことは」

ノエル「全部ノエルの心の中にあった、黒い気持ちなの。ヒドイよね、裏ではこんなこと思っていたなんて……」

ブラック「さぁ分かったでしょ、本当のノエルはこんな奴なのよ。早く円盤なんて追い出しちゃいなさいよ」

全員「…………」

湊太「で? それがどうしたっていうんだ?」

ノエル・ブラック「えっ!?」

汐音「こんなこと、人間ならだれでも思ったりしてるわよ」

ノエル「でも、ノエルは円盤で、人間じゃなくて、みんなの願いの叶えに来ていて……」

柚季「そして、私たちの大切な友達でしょ」

こはる「そうだよ、ときにはハッキリ言ってくれる方がいいことだったあるんだよ」

ノエル「みんな、こんなノエルのこと許してくれるの? ずっとここにいていいの?」

乃々香「もちろん、それが今の『私たちの願い』だったでしょ、ちゃんと叶えてよねっ、ノ・エ・ルッ」

ノエル「ありがとう、みんな大好きっ!」

乃々香「それに、黒いノエル」

ブラック「何よ!?」

乃々香「ようこそ! 天文台の仲間に」

みんな一斉に頷いてくれている。

ブラック「わ、私はそんなのに興味ない……」

乃々香「あなたがノエルのどんな感情であろうと、私たちはノエルの友達だから、ノエルのすべてを受け入れるわ」

ノエル「みんな、クロちゃんも本当はすっごくいい子なんだよ」

ブラック「何を言っているのよホワイト、私はみんなに嫌われるようなことしか言わない、すっごいイヤな奴で……」

ノエル「ノエルが無理してたから、みんなに嫌われるようにして、ノエルが帰れるようにしようとしたんだものねっ」

ブラック「そんなこと……ないもんっ」

ノエル「ねぇクロちゃん、もういいでしょ? また一緒になろう」

ブラック「……仕方ないわね、計画も失敗しちゃったみたいだし、今回はこれで消えてあげるわよ。ほらっホワイト」

ノエル「クロちゃん……」

二人が手を取り合うと、辺りが光に包まれる。そして、光が収まった後には一人になったいつものノエルの姿。

ノエル「みんなっ、ただいまっ!」

乃々香「おかえり、ノエル。もうっ、不満があるなら溜め込んじゃダメよ」

柚季「そうそう、私みたいに何でも言っちゃえばいいのよ」

湊太「お前は少し自重しろ!」

こはる「そうだねぇ」

汐音「これからもよろしくね、ノエル」

この一件で、私たちの絆はさらに深まった。そんな気がする。

ノエル「(みんな暗いから気付いてないけど、白と黒が混ざったばかりだから、今のノエルはグレーなんだ。ちょいワルノエルなんだよっ)」

以上で「白と黒」完結となります。

また何か書けましたら更新していきますので、よろしくお願いします。

再び毎週更新となりつつありますが


「おでかけしよう」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

乃々香「ねぇノエル、どこかにおでかけしない?」

ノエル「ノエルはノノカと一緒ならどこへだって行きたいよ。でも……」

乃々香「円盤?」

ノエル「うん。ノエルは円盤の見えない所にいくと大変なことになっちゃうから」

乃々香「そのことなんだけど、本当にそんな大変なことになっちゃうのかな?」

ノエル「だってノエル、北美祭に行ったとき、倒れちゃったもん」

乃々香「そうなんだけど、あれってノエルが無理したからであって、普通にしてたら意外と平気だったんじゃないのかなって」

ノエル「そうかもしれないけどぉ……」

乃々香「北美祭をやっていた時間は平気だったわけだし、私たち準備で早目に行ったから、だいたい10時間くらいはなんともなかったじゃない」

ノエル「だからって、またやってみようとは思わないよぉ」

乃々香「それくらい平気なのなら、日帰りでどこかお出かけすることも出来るのになぁ……」

ノエル「う~ん、ノノカとお出かけはしたいよぉ~」

乃々香「そもそもノエルは今までに円盤から離れたことってあったの?」

ノエル「何度かあるけど。ノノカと初めて逢ったときも円盤は無かったでしょ」

乃々香「そうだよね。でもあの日の夜には『霧弥湖に円盤出現』ってニュースになってたよね」

ノエル「うん、そうするとノエルは、半日くらいなら円盤から離れても大丈夫なのかなぁ」

乃々香「きっとそうだよ。それじゃお出かけ出来るね」

ノエル「うんっ、ノエル行ってみるよ」

乃々香「それじゃ、ノエルはどこに行きたい?」

ノエル「ん~とねぇ……、みんなで温泉!」

乃々香「温泉かぁ~。霧弥湖温泉ばかりじゃつまらないし、せっかくだから戸別温泉にでも行ってみましょうか」

ノエル「とべつ……?」

乃々香「ここから一時間くらいの所にある、すっごく有名な温泉地なの」

ノエル「へぇ~、ノエル楽しみだよぉ~」

乃々香「それじゃ、みんなを誘ってみるわね」

乃々香「はい、みんな大丈夫だったわよ。汐音も現地で合流するって」

ノエル「ねぇノノカ、みんな来るよね」

乃々香「うん」

ノエル「ソータも?」

乃々香「あっ……湊太か。きっとこはるに店番頼まれてるんじゃ」

ノエル「ノエルみんなで行きたいっ! ソータもいなきゃダメッ!」

乃々香「分かった、分かったから。こはるに店番頼まないようにお願いしておくね」

ノエル「わ~い、みんなで行くんだもんねっ」

当日の朝の霧弥湖バスターミナル。

乃々香「みんなお待たせ」

柚季「遅いっ!」

こはる「私たちも今来たところじゃない……」

湊太「だいたい、俺らの家と乃々香の家の距離を考えれば、多少遅れたって仕方ないだろう」

ノエル「ソータも来れたんだねっ」

こはる「お店は父と母に任せたから」

湊太「最初は店番頼まれたんだがな。これもちっこいののおかげだ。ありがとうな」

ノエル「これでぇ、みんなニッコリさんっ」

柚季「それよりノエル、円盤から離れて本当に大丈夫なの?」

ノエル「わからない……。でもノエル、みんなとお出かけしたいっ!」

こはる「無理しちゃダメだからねぇ」

乃々香「ちょっとでも変になったらすぐに言ってね」

ノエル「分かってるって。ほらっ、バスも来たよっ」

一番で乗り込むノエルを見ながら。

湊太「本当に平気なのか?」

乃々香「ノエルも行く気だし、円盤の力を使わなければたぶん大丈夫だよ」

柚季「さぁ霧弥駅に着いたわね、ここからは電車よ」

ノエル「ねぇユズキぃ~、でんしゃってなぁに?」

乃々香「そっか、ノエルは電車初めてなんだ」

こはる「霧弥湖町からじゃ見えないものねぇ」

湊太「まぁ、百聞は一見にしかずだ。説明するより乗っちまったほうが早いだろう」

ノエル「うんっ、乗ろう乗ろう」

柚季「ひゃくぶん……いっけん?? なに呪文みたいなこと言ってるのよ!?」

こはる「柚季、もう少しちゃんと勉強したほうが……」

ノエル「ほえぇ~、これが電車なんだぁ~」

乃々香「ノエル、あんまり走り回っちゃダメよ」

柚季「何言ってるの、こういうのは楽しまなきゃ損よ」

湊太「お前は中3だろ! 電車の中で走り回るなんて止めろ!」

こはる「柚季はいつまでも子供のままだよねぇ」

柚季「いいじゃない、ねっノエル」

ノエル「ノエルも楽しいよっ」

戸別駅の改札を出ると、汐音が待ち構えていた。

汐音「みんな、ノエル。元気そうね」

ノエル「シオネぇ~」

乃々香「汐音も元気そうでよかった」

汐音「私は、みんなに呼ばれれば、いつだって駆けつけるから」

柚季「ねぇこはる。汐音って向こうで友達いないのかな……」

こはる「そうだよねぇ、だから毎回来れるのかなぁ」

汐音「いるわよっ! 失礼ね。あなたたちに会う機会を優先しているだけよ」

湊太「温泉行きのバスも来てるから早く乗ろうぜ」

数分走ると、窓の外を見ていたノエルが突然大きな声を。

ノエル「ノノカノノカぁ~。おっきな怪獣さんがいるよ!」

乃々香「怪獣さん? あぁ、あれはね、鬼っていうのよ」

ノエル「おにさんなんだぁ。でもすっごく大きい」

湊太「戸別温泉は鬼の像があちこちにあることでも有名だからな」

こはる「特に、駅からのバスでも、高速の出口からもよく見えるこの像は目立つわねぇ」

柚季「あの金棒なら、円盤なんてぺしゃんこになっちゃうから」

ノエル「ふえぇっ~、鬼さん怖いよぉ~」

汐音「大丈夫よ、円盤の方が圧倒的に大きいんだから」

乃々香「そうだね、きっとノエルがその気になれば簡単に勝てちゃうわね」

ノエル「ノエル、ケンカはキライだよ」

汐音「そうね……。それより乃々香」

乃々香「ノエルのこと?」

汐音「ええ、確かに私も、普通にしているのなら平気だとは思うけど」

乃々香「もしものときは、タクシーを使ってでも急いで霧弥湖町に戻るから」

柚季「さぁバスターミナルに着いたわよ。どこに入る?」

ノエル「ノエル、大きなお風呂がいい!」

汐音「大きなお風呂のあるホテルなら『第一川本館』・『まほらば』・『クラウンホテル』だけど」

ノエル「いっちばん大きな所がいいっ!」

こはる「それなら『第一川本館』だねぇ」

乃々香「そこなら私も行ったことあるけど、あそこは本当に広いものね」

ノエル「この前のところよりも大きいの?」

乃々香「あのお風呂が10個以上ある感じかな」

ノエル「おおっ~。それじゃ円盤も入れる?」

乃々香「さすがに無理だから。世界中探してもそれは無理」

ノエル「そっかぁ……」

湊太「そんな残念がることもないだろう。さぁ行こうぜ」

柚季「湊太は一人で入ってね」

湊太「分かってるよ、女湯に入る訳ないだろうが」

そんなやりとりの後、いよいよお風呂へ。

ノエル「うわぁ~、すっご~い」

こはる「やっぱりここは広いわねぇ」

柚季「ひゃっほぅ~。って、わととと……」

勢いよく走って行き、段差に躓きそのまま浴槽へと落ちる。

柚季「いきなりびしょ濡れだよぉ~」

汐音「本当に迷惑ね」

乃々香「ノエル、ああいう大人になっちゃダメよ」

ノエル「は~い」

柚季「……私まだ子供だもん」

それぞれ別々の浴槽に入り、のんびりとした時間を過ごす。

ノエル「う~ん……、なんだか、コレジャナイよぉ。何かがノエルの思ってるのと違うよ」

戸別温泉のホテルで入れる泉質の数は、他所では多くて4つなのだが、ここは7つの泉質が楽しめる。そのため、それぞれが好みの泉質の湯船に入ってバラバラになっている。

ノエル「ノエルがしたいのはこうじゃなくてもっとみんなで……。あっ、あと湊太もいない」

その頃男湯の湊太はというと。

湊太「あぁ……いい湯だわぁ~」

すっかり癒されていた。

ノエル「そうだ! ノエルいいこと思いついちゃった♪」

寛ぐ湊太の前に、突然裸のノエルが現れる。

湊太「ぶはっ! ちっ、ちっこいの! なんでここに!? ってせめてタオルで隠せ!!」

まぁノエルくらいの見た目なら男湯に入ってもまだ大丈夫だろうが。

ノエル「ソータも一緒に向こうへ行こう。みんなでニッコリしようよ」

湊太「いや待て! 俺が女湯に行ったら、その時点でみんなに逝かされるから!」

ノエル「よかったぁ、行くんだねっ」

『行く』と『逝く』の違いに気付く訳もなく、湊太の手を引き階段を降りてゆくノエル。

湊太「下はプールなのか……。俺もノエルも水着じゃないけどいいのか」

ノエル「だいじょうぶ、だーれも来ないようにしてるから」

再び違う階段を上りだす。ここは男湯と女湯がプールで繋がっている造りになっている。

湊太「それって……。円盤の力を使ってるんだろう! また倒れちまうぞ!」

ノエル「ノエルはね、みんなのニッコリが見たいの。だから、これくらい平気だよ」

女湯ではノエルが居なくなったことに気付き、全員で捜している。そこへ……。

ノエル「みんな~、ただいま~」

声のした方。プールへの階段に視線が集中する。そして当然そこにいる湊太にも……。

四人「きゃゃゃぁぁぁぁ~」

湊太「待て! 待ってくれ! 俺は強引に連れて来られただけで……」

・・・・・・・・・・・・

湊太があらわれた。湊太はひるんでいる!

こはる「湊太の変態!! こっち見ないでよぉ」

こはるの精神攻撃! 効果は絶大だ! さらに動きを止めた!

乃々香「なんで女湯に入って来てるのよ!」

乃々香の飛び道具(風呂桶)攻撃! 顔面にクリティカルヒット!

汐音「目障り! 消えて! 跡形も無く!!」

汐音のダイレクトアタック(往復ビンタ)! 足元がふらついている!

柚季「お兄ちゃんのバカぁ~~」

柚季の飛び蹴りが炸裂! 階段下へと転がり落ちてゆく!

湊太を倒した!!

・・・・・・・・・・・・

ノエル「あれ? みんな一緒にニッコリ……」

四人「なれる訳ないでしょ!!」

他に誰もいなかったので、事件にはなりませんでした……。ホテルを出て温泉街を歩きながら。

汐音「ノエルもみんなで一緒に入りたいのなら、最初からそう言ってくれればいいのに」

こはる「そうだよぉ、家族風呂のあるホテルなら『クラウンホテル』と『岩水亭』だけど」

乃々香「日帰り入浴では受け付けてないわよね」

柚季「霧弥湖温泉にならあるから戻りましょうか」

ノエル「うん……」

汐音「ノエルどうしたの? 元気ないけど」

柚季「さっきのことなら、ついて来たバカがいけないんだから、ノエルが気にすることないのよ」

湊太「きっと違うぞ、これは」

こはる「違うって、まさか!?」

乃々香「ノエル、あなたまた、円盤の無いところで無理したの!?」

ノエル「ノエルは、みんなのニッコリのために、少しでも役に立ちたい」

乃々香「それでノエルが苦しい思いをするのじゃ意味ないでしょ!」

汐音「『みんな』の中には、もうノエルも入っているのよ」

柚季「そうだよ、ノエルも一緒にニッコリになれなきゃダメなんだから」

こはる「だから、もうこんな無理はしないでね」

ノエル「うん……、ごめんなさい」

元気が無いのは確かだが、まだ普通に歩けている。

乃々香「でもまだ、前みたいに倒れるようなことはなさそうね」

汐音「ところでノエル?」

ノエル「なぁにシオネ」

汐音「前から気になってたのだけど、円盤って霧弥湖町から動かせないの?」

ノエル「ノエルはあの場所に……天文台に呼ばれたんだもの。あの場所でみんなニッコリでいつまでも仲良しで……」

汐音「それは、時間の戻る前の世界での話でしょ。その願いは一度終わっているハズよ」

乃々香「そうだよ、今は『戻って来て、私たちと一緒にいて欲しい』ってお願いを叶えるためにいるんでしょ」

湊太「だったら、霧弥湖町に、天文台に縛られている理由は消えてるんじゃないのか」

こはる「そうなるよねぇ」

柚季「……みんな何言ってるのかよく分からないんだけど」

ノエル「う~ん、ノエルそんなこと考えたこともないから、やってみないと分からないよぉ」

乃々香「ちょうどいい機会だし、やってみちゃったら」

汐音「もしノエルが倒れちゃったら、すぐに霧弥湖町に連れ帰ってあげるから」

ノエル「倒れちゃうのはイヤだけど……分かったよ、円盤を呼んでみるね」

ノエルは円盤を操作するときのポーズ、右手を上にあげ、左手を横に伸ばすと、何やら呟きだす。しばらくすると。

全員「ノエルッ!!」

ふらつき、倒れそうになるノエルに全員で駆け寄り、体を支える。

乃々香「ごめんっ、ごめんね。私が無理なこと言ったりしたから」

汐音「乃々香のせいじゃないわよ。言い出したのは私」

湊太「そんなことより、今は急いで霧弥湖町に……」

そこでスッとノエルの右手が上空を指さす。

ノエル「だいじょうぶ……」

ノエルの指さした先が強い光を放つと、そこには円盤が現れていた。

ノエル「エヘヘ、ノエルちゃんと出来たよっ」

円盤が来たことで、あっさりとノエルは回復したようだ。

柚季「これってどういうことになるの?」

こはる「これからは、ノエルちゃんはどこへでも行けるってことだねぇ」

汐音「もれなく上空に円盤がついて来るけどね」

湊太「今まで以上にベッタリだろうな……」

ノエル「うんっ! ノエル、これからはノノカと、どこでもいっしょだよっ」

乃々香「ずっ~とかぁ……、まぁそれでもいいかな」

汐音「乃々香に飽きたら、私の所に来てもいいんだからね。いつでも大歓迎よ」

ノエル「これから楽しみだよぉ~」

こはる「でも、今まで動かなかったから注目されなくなってた円盤が、あちこち動き回るようになったら」

湊太「7年前みたいに、また騒ぎになるかもな」

柚季「心配しすぎだって。だって円盤はこんなにカワイイんだからっ」

ノエル「ああうぅ~」

柚季のいつもの頬擦りと、ノエルのいつもの声。ただ違うのは、ここが霧弥湖町で無いのに、円盤があるということだけだった。

以上で「おでかけしよう」は完結となります。

次回は続編で、「最期の言葉」6月3日更新予定です。

なお、作中の戸別温泉(登別温泉)の各ホテルの感想は、あくまで宿泊してみての個人的な感想になります。

「最期の言葉」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・湊太・他

円盤でどこにでも自由に出かけられると分かってから、それこそ毎日のようにあちらこちらへと行っている。

乃々香「やっぱり円盤って便利よねぇ」

ノエル「エヘヘ~。ノノカに喜んでもらえて、ノエルもとっても嬉しいよっ」

乃々香「どこへでもほとんど瞬間移動だものねぇ、交通費ゼロで世界中行き放題だもの」

円盤の移動が可能な以上、円盤に乗って旅することも可能なのだ。

ノエル「ノノカが行きたいなら、宇宙の果てにだって行っちゃうからっ」

乃々香「ありがとうノエル。でも私には地球だけで充分だよ」

ノエル「そっかぁ~。でもでもっ、行きたくなったらいつでも行ってよねっ」

乃々香「そうね、そのときはみんな一緒にね」

ノエル「うんっ! ノエルも、みんなとお出かけ出来るようになってとっても楽しいよっ」

これからずっと続くと思っていたこの楽しい時間は……、ある朝唐突に終わりを告げた。

その日の朝は、けたたましいヘリコプターの音で目が覚めた。

乃々香「円盤の周りにヘリがいっぱい……」

部屋の窓から見える円盤の周りには、たくさんの軍用機が飛び交っている。

乃々香「今まで何もなかったのにどうして……。そうだ! ノエルは!?」

階段を下り、リビングのテレビを点ける。……が。

乃々香「どうして!? どうして何も映らないの?」

テレビが壊れたのかとも思ったが……。

乃々香「スマホも圏外になってる……。電波が妨害されてる!? ノエルッ!」

家を飛び出し、天文台への道を全速力で駆け抜ける。天文台の中には仰向けのノエルの姿。

乃々香「まさか……ノエルッ!! しっかりして!! お願い、返事をしてよ!!」

ノエルの体を乱暴に揺する。

ノエル「うっ……ノノカ」

乃々香「よかった! ノエル、無事なのねっ」

ノエル「ふあぁ~あ。おはよう~ノノカぁ~」

乃々香「……ひょっとして寝てただけ!?」

ノエル「うん、いつもは円盤さんが起こしてくれるんだけど」

乃々香「そうよ円盤! 円盤が大変なことになってるの!」

ノエル「そんなことないって。だったらノエルすぐに分かるもん」

乃々香「妨害電波が流れてるから、ノエルが気付いてないだけなんじゃないの?」

ノエル「ふえっ? ……本当だ、円盤さんと連絡とれないよぉ~」

事態は思っていたよりも深刻かもしれない。地球の技術でノエルと円盤の交信が遮断されるなんて。

ノエル「うわぁ~ん! 知らない人がいっぱい円盤さんに乗ってるよぉ~」

乃々香「あれって……」

自衛隊だとばかり思っていたけど、機体に『UN』の文字が見て取れる。

乃々香「国連がなんで?」

その時聞こえてきた、部屋に響いてくる足音に身構えるが。

湊太「よかった、無事だったみたいだな」

柚季「ノエルぅ~、よかったよぉ~」

こはる「みんな、取りあえずこれでも食べて」

円盤饅頭を大量に持ってきていた。

ノエル「わ~い、おまんじゅうたっくさん~」

乃々香「ありがとうこはる。そういえば、何も食べてなかったわ」

柚季「私も食べる~」

湊太「腹ごしらえはしておこう、これからどうなるか分からないしな」

こはる「そうよ。食べれるときに食べておきましょう」

乃々香「でも、どうして急に円盤を調べだしたんだろう?」

湊太「今まで動かなかった円盤が、急にあちこちに現れるようになったからだろうな」

乃々香「それじゃあ、これって私たちのせい……」

ノエル「ノエルは気にしてないよ」

よくよく考えれば当たり前のことかもしれない。国内に限らず、世界中に円盤が現れるようになったのだから。

柚季「なんとかならないの?」

こはる「相手は国連だし、世界中の人が本気で円盤を調査しようとしてるんじゃ」

乃々香「実際に円盤との連絡も取れないんでしょ」

ノエル「それは、もうちょっとでなんとかなりそうだよ」

乃々香「そうなの!? よかった」

湊太「そうも言えないんじゃないか?」

乃々香「なんで?」

湊太「通信が回復するってことは、円盤が何かされているダメージもノエルに伝わるってことじゃないのか?」

柚季「そうだよぉ、円盤に私のロケットが当たっただけで、ノエルはあんなに痛がってたのに」

こはる「止めたほうがいいよぉ」

乃々香「そうだね。ノエル……」

ノエル「うきゃゃぁぁぁ~」

全員「ノエルッ!!」

ノエル「びっくりしたよぉ~。ううっ、やっぱり円盤さん、あちこち壊されてるよぉ~」

湊太「通信回復させちまったんだな」

ノエル「うん、円盤さんのケガしてる痛さが、ノエルに伝わってきてびっくりしちゃったの」

柚季「なんとか追い払えないの?」

ノエル「円盤の表面に軽く電流を流すくらいしか……。ずっとやってるけど、効果がないみたい」

こはる「もっと強力な武器とかはないの?」

ノエル「あるけど……ノエルは使わないよ」

乃々香「どうして? 使わないとノエルがどんどんケガしちゃうよ」

ノエル「それでも使わない。そんことしたら、相手をケガさせるだけじゃ済まないもん」

湊太「自分を守るためには、攻撃してくる相手を倒すことも必要だぞ」

ノエル「でもイヤなのっ! ノエル誰も傷付けたくないもんっ!!」

その時、外から響く爆発音が。

ノエル「いやぁぁ~、ノエルの中にいっぱい入って来るよぉ! やだっ、来ないでっ!!」

乃々香「ノエル! しっかりして! 落ち着いて」

こはる「円盤に開けた穴に、いっぱいコードを差し込んでるみたい」

湊太「ハッキングして円盤を乗っ取るつもりか」

柚季「こんなの、どうしたらいいのよ……」

しばらく苦しんでいたノエルだが、落ち着きを取り戻すと部屋に乃々香だけに残ってもらい、ある話を始めた。

ノエル「ねぇノノカ、ノエルお願いがあるの」

乃々香「こんなときにどうしたの?」

ノエル「これをね、ノノカに持ってて欲しいんだ」

青い宝石のようなものがついたベンダントを手渡してくる。

ノエル「それはね……円盤の、ノエルの心臓みたいなものなの」

乃々香「ノエルの心臓……」

ノエル「もし、もしもだよ。ノエルがノエルで無くなっちゃったときに、それを握りしめてこう言って……」

ノエルは私の耳元で、その言葉をつぶやく。

ノエル「×××って」

それは、誰もが知っている、あの恐ろしい破滅の呪文。

乃々香「それって! 言えない! 言える訳ない!!」

ノエル「ノノカお願いっ。こんなことノノカにしか頼めないよ……」

乃々香「だからって……。ダメッ! 私には出来ないよ」

ノエル「イヤだなぁノノカぁ、もしものときだって。ノエル、そうならないように頑張るからっ」

乃々香「絶対よ、絶対にお断りなんだからねっ」

私とノエルはお互いに抱きしめ合う。

ノエル「うんっ! 約束」

乃々香「約束だよっ! 必ず守ってよ」

再び戻って来る3人。

こはる「話は終わったの」

乃々香「……うん」

柚季「ねぇ、どんな話だったの?」

湊太「やめないか、ノエルがわざわざ2人で話したかったことなんだから、俺たちが首を突っ込むことじゃないだろ」

ノエル「ごめんね、みんな」

そこへ聞こえてくる大量の足音。

軍人「ターゲット発見! 確保します」

あっという間に狭い天文台は包囲されてしまっていた。促されるままついていく私たち。公園に設営された大きなテントの中へと通される。

司令官「ようこそ、円盤とその友人諸君」

柚季「あなたが悪の親玉ねっ!」

ビシッと指を差し宣言する柚季。

司令官「悪か……、そうかもしれんな。しかし、我々からすれば、未知の円盤の力を自由に操れる君らこそが危険な悪なのだよ」

乃々香「なぜ私たちのことを知っているの?」

司令官「簡単なことだ。円盤が現れた場所の映像に、必ずと言っていい程映っている君らを見つけだすことなどな」

湊太「これって調査って範囲じゃないよな。あんたら、円盤を自分のものにしようとしてるだろう」

司令官「おやおや、察しのいい子だ。その通り、円盤は私がいただくよ」

こはる「私がって……あなたたち国連じゃないの?」

司令官「いいや、確かに国連の正規軍だよ。ただし、私の息のかかった連中しか連れて来てないだけでね」

乃々香「そんなことダメッ! そんなこと……」

ノエル「だいじょうぶ……、ノエルは絶対に悪い人の言う事なんて聞かないから」

苦しそうにやっと立っているノエルに向かって近寄って来る司令官。

司令官「君自身が円盤だそうだな。空の円盤のハッキングはほぼ完了している。そろそろ限界なんじゃないのかな?」

ノエル「ノエルは……負けないよ。だってノノカと約束……したから」

司令官「まぁ素直に言う事を聞いてはくれんだろうな。こんな手段は使いたくないが、なぜ君の友人がここにいるのか分かるな」

柚季「そんなっ!」

こはる「私たちの連れて来られた理由って」

湊太「人質かよ!」

乃々香「ノエルッ! 私たちのことなんて気にしないで……」

ノエル「ダメだよノノカ、それにもう……ノエル意識が……。ノエル、ちゃんと協力するから、ノノカたちをいじめちゃダメ……」

司令官「取引成立だな。ではこちらに来てもらおうか」

連れて行かれるノエルを黙って見送るしかなかった。私たちは解放されたが、まだノエルの連れて行かれたテントの前で待っている。

乃々香「ノエル……どうなっちゃうんだろう?」

湊太「おそらく、円盤と同じように言う事を聞くように洗脳でもされてるんじゃないのか」

こはる「洗脳……そんなことが出来るの?」

湊太「さぁな、でも地球で一番の科学力も持っているのだろうし、そうでもしなきゃノエルが言う事を聞くとも思えないしな」

柚季「止めてっ! そんな怖い事いわないでよっ」

そこでテントの幕が上がり、ノエルと司令官が出てきた。

全員「ノエル!!」

出てきたのは、いつも通りの元気なノエルの姿。だが、私たちを不思議そうに見つめている。

ノエル「ねぇパパぁ、あの子たちだぁれ?」

司令官「これからお前と私が支配する愚民どもさ。さぁ行こうノエル」

ノエル「うんっ」

司令官「取りあえず本部のバカ共を黙らせんとな。ノエル、どこか適当な都市を一つ消し飛ばしてもらえるかな?」

ノエル「は~い、ノエル頑張るよぉ」

歩き去ってゆくノエルの背中に、私たちの叫びが飛ぶ。

乃々香「そんなっ!! 私たちのこと忘れちゃったの!?」

こはる「ノエルちゃん、戻って来てよ。怪獣さん待ってるよ!!」

柚季「そんな奴について行ったら、また円盤反対運動しちゃうんだから!!」

湊太「ちっこいの! 俺たちとの絆ってそんなもんだったのかよ!!」

乃々香「ノエルの……ノエルのウソツキィ~!!」

手に握っていたペンダントに気付き視線を落とすが。

乃々香「それでも……それでも出来ないよぉ~!!」

こはる「乃々香、それは?」

天文台でのノエルとのやりとりをみんなに明かす。

湊太「なら、その言葉を叫べばノエルを止められるってことだな」

こはる「そうだけど……」

柚季「ダメよ! ノエルを犠牲にするなんて!」

乃々香「私には無理だよ。どんなになろうとノエルはノエルだもの」

湊太「キツイ事言うけど、しっかり聞いてくれよ」

乃々香「湊太……」

湊太「ノエルが本当の友達なら、これは乃々香がやらなくちゃいけないことだと思う」

柚季「ちょっと湊太! 何言ってるのか分かってるの!?」

湊太「ノエルは乃々香だけにして、それを託したんだろ?」

乃々香「うん……」

湊太「それはノエルが乃々香を信頼して、乃々香に自分の命を預けたったことじゃないか」

こはる「私たちみんなでなく、乃々香にお願いしたんだものね」

乃々香「でも……、だからこそ私はノエルの命を奪うような事は出来ないよ!」

そっと私の手の上に、湊太の手が乗る。

湊太「あぁ、乃々香だけに背負わせたりはしないさ」

こはるの手も重なる。

こはる「これがノエルちゃんの最期の願いなんでしょ? だったら……」

そして、柚季の手も。

柚季「もう私たちの知ってるノエルは帰って来てくれない。せめて、ノエルが使うのを嫌っていたような武器を使わされる前に」

乃々香「……分かった。みんな私に勇気をちょうだい!」

私たちの様子に気付き、振り返るノエルと司令官。

司令官「何をしようとしているかは知らないが、不確定要素は排除せねばな。ノエル、あいつらを消し飛ばせ」

ノエル「うんっ、一瞬で消しちゃうよっ」

ノエルが何の躊躇いもなく私たちを攻撃しようとした瞬間、みんなでノエルが教えてくれた言葉を叫んだ。

全員「バルス!!」

手元から光が溢れ、ノエルと円盤を飲み込んでゆく……。白く染まったその世界で。

ノエル「みんなっ、ゴメンね。ありがとう……」

それが、意識を取り戻したノエルの最期の言葉だったのか、ただの幻だったのかは分からなかった。

ピピピピッ、ピピピピッ……

乃々香「あれっ、ここは? もう朝?」

いつの間にか寝室のベットの中で寝ていたようだ。

乃々香「とにかく目覚ましを止めないとね」

時計の上の部分を押す。……が、ピピピピッ、ピピピピッ……

乃々香「あれ? なんで止まらないの? それにこのペンダントって……」

右手にしっかりと握りしめていたのは、すっかり色褪せたペンダント。

乃々香「これがあるってことは……あれは、夢じゃなかったんだ」

ピピピピッ、ピピピピッ……

乃々香「夢だったら……夢だったらよかったのに」

ピピピピッ、ピピピピッ……

乃々香「ねぇノエル……私、本当にあなたのこと救ってあげられたのかな?」

ピピピピッ、ピピピピッ……

乃々香「これで本当によかったの? ノエル……」

ピピピピッ、ピピピピッ……

乃々香「もうっ、なんなのよっ! うるさいっ!!」

音のする方を思いっきり叩く。

ノエル「イタッ! 痛いよぉ~ノノカぁ~」

ベッドの横にちょこんと座っているノエルの頭を叩いていた。目が合い、しばらくの沈黙。

乃々香「……なんだノエルか、もういる訳ないのにね。私まだ夢を見てるんだ」

そのままノエルの頭を叩き続ける。

ノエル「ふえ~ん、痛いよぉ~。ノノカ止めてよぉ~、もう目覚まし時計の真似しないからゆるしてよぉ~」

乃々香「ノエル!? 本当にノエルなの!?」

ノエル「本当も何も、ノエルはノエルだよ」

乃々香「ノエルッ!!」

思わず力強く抱きしめる。

ノエル「どうしたのノノカ?」

乃々香「私あのとき、てっきりノエルのこと殺しちゃったと思って……」

ノエル「どうして?」

乃々香「だってノエル、最期に『ゴメンね、ありがとう』って」

ノエル「みんなを攻撃しようとして『ゴメンね』で、ちゃんと約束守ってくれて『ありがとう』だったんだけどな」

乃々香「それにあの言葉よ」

ノエル「あぁ、バルスのこと?」

乃々香「あれって破滅の呪文なんでしょ?」

ノエル「はめつ? 違うよ、あれは円盤の強制再起動のパスワードだよ」

乃々香「えっ……再起動!?」

ノエル「うん。あの時はもう円盤さん、ノエルの言う事聞いてくれなくなってたから」

乃々香「じゃあ、このペンダントは?」

ノエル「それは、1回限りのコマンドキーなんだぁ。ペンダントを持って、パスワードを言ってもらうと、円盤を強制再起動出来るんだよ」

乃々香「ノエルが自分でやってもダメなの?」

ノエル「ノエルじゃダメなんだぁ、非常時用の安全装置みたいなものだから、誰かにやってもらわないといけないの」

乃々香「じゃあ私はノエルを殺したり……」

ノエル「そんなことノノカにさせないよぉ。円盤が再起動してノエルも元通りになったから、すぐに時間を戻して軍人さんたちの記憶もきれいに消しちゃったんだ」

乃々香「よかったよぉ~、ノエルが無事で」

ノエル「ゴメンね、説明不足だったよね……」

乃々香「いいよ、あの時はそんな余裕無かったもの。でもこれからは、円盤で出かけるのは止めましょうね」

ノエル「なんで? ノエル、みんなとお出かけするの楽しいから、絶対に止めたりなんてしないよ」

乃々香「でも、それじゃまた今回みたいなことに」

ノエル「円盤を見た記憶をみんなから消しちゃえば大丈夫だもんっ」

乃々香「そっか、その手があったね。それと早くみんなに連絡しないと。ノエルは元気だって」

ノエル「うんっ! ノエルはいつでも元気いっぱいだよっ!!」

以上で「最期の言葉」完結となります。

次回「秘密の計画」 6月10日更新予定です。

「秘密の計画」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太

学校からの帰りのバスの中、今日はみんな揃っての作戦会議の場となっていた。

乃々香「じゃ、みんな。この作戦でよろしくね」

こはる「わかったよぉ」

柚季「ノエルには直前まで、絶対に秘密なんだからねっ」

湊太「お前が一番心配なんだけどな……」

汐音には電話で連絡してある、もちろん北美市から。明日来てくれることになっている。

乃々香「トンネルを抜けるわ。みんな、もうこのことは忘れてね」

トンネルを抜けるということは、円盤が見える範囲に入るということ。ノエルに秘密にしながら事を進めるには用心しなければ。

バスターミナルに着くと、ノエルがいつものように待ち構えていた。

ノエル「ノノカぁ~、おかえり~」

バスを降りると同時に飛びついてくるノエル。

乃々香「ただいま、ノエル」

こはる「ノエルちゃんも毎日お迎えごくろうさま」

ノエル「ノエルはぁ、ノノカとちょっとでも長く一緒にいたいんだもんっ」

湊太「これは……そう、まるで飼い主を待つ犬だよな」

柚季「そうそう、忠犬ノエルだよねぇ~」

ノエル「ぷぅ~、ノエルワンコじゃないもんっ」

柚季「それはそうと、まだ私がやってなかったから」

柚季はノエルを私から引き離すと、抱きしめて頬擦りを始める。

柚季「ノエル~、ただいまだよぉ~」

湊太「それをやらなきゃ気の済まない柚季もどうなんだ」

ノエル「ウ~、ガウガウ!」

慌てて手を離す柚季。

柚季「ほえっ!? ノエルどしちゃったの?」

ノエル「柚季がノエルのことワンコだって言うから、やってみただけだよぉ~」

こはる「ノエルちゃんの方が一枚上手だったみたいね」

乃々香「さぁノエル、帰りましょ。みんな、またね」

湊太「おう、またな」

こはる「また学校でね」

柚季「えっ? あし……」

湊太が柚季の口を塞いだ。

湊太「学校で、だよな」

柚季「う、うん。学校で」

ノエル「……?」

不思議そうな顔はしているが、まだ気付かれてはいないみたい。二人きりになった帰り道。

ノエル「ねぇねぇノノカぁ、今日は何してあそぼっかぁ」

乃々香「ゴメンねノエル、今日は遊んであげられないんだ。ちょっと遅くなるけど、晩ご飯ならなんでも作ってあげられるよ」

ノエル「そっかぁ~、それじゃノエル、海鮮丼がいいな」

乃々香「海鮮丼!? オムライスやハンバーグじゃなくて?」

ノエル「ノエルだってたまには違うもの食べてみたいもんっ、それじゃ遊んでくるねぇ~」

言うが早い、坂道を駆け下っていく。

乃々香「海鮮丼は予想してなかったな。まぁ、明日の準備の買い出しもあるし……お刺身も買ってきますか」

ノエルは湖畔まで一気に走り抜けると、そのまま工芸御殿へ。

ノエル「こんにちは、かいじゅうさんっ」

キリゴンの看板への挨拶も欠かさない。そこへ出てくる外出着のこはる。

こはる「ノ、ノエルちゃん。どうしたの?」

ノエル「ノノカが遊んでくれないから、かいじゅうさんに会いに来たんだよ」

こはる「そうなんだ。怪獣さんと仲良くしてあげてね」

ノエル「うんっ、ところでコハル、おでかけ?」

こはる「ちょっと買い物にね」

ノエル「ノエルも行ってもいい?」

こはる「ゴメンね、北美まで行くから……」

ノエル「そっかぁ、残念……。コハル、いってらっしゃ~い」

こはる「はい、行ってきます」

こはるの姿を見送りつつ。

ノエル「なんだか、今日はつまらないなぁ……」

こうなるともう、行く所は一つだけに。柚季の部屋で、湊太と柚季はなにやら作っている。

湊太「これでいいのか?」

柚季「ダメダメェ~。何でこんなのも出来ないのよ」

木の板に何か描いているようだ。

湊太「お前みたいに趣味でいつも作ってる訳じゃないんだ、いきなりできる訳……」

突然、締め切った部屋に吊るしてある風鈴が音を立てる。

湊太「隠せ! 早く!!」

柚季「分かってるわよ!」

すべての板に布をかぶせ終わると同時に。

ノエル「お手伝いする?」

湊太「ちっ、ちっこいの。どっから入って来たんだ?」

柚季「お手伝いって、別に何もないよ」

ノエル「そうなの……」

いつになく残念そうなノエル。

柚季「そ、それじゃあ、ロケットを上げるの手伝ってもらっていいかな?」

ノエル「うんっ! ノエル何でもお手伝いしちゃうよっ」

柚季「よし、じゃあ決まり! すぐに行くわよ~」

ノエル「ほえぇ~」

柚季は強引にノエルの手を引いて部屋を出て行く。

湊太「まさかいきなり部屋に現れるとはな。用心して風鈴を吊るしておいてよかった」

一人作業を続ける湊太。そして柚季とノエルは湖畔でロケットを円盤に向けて……。

柚季「はっしゃ~! 行けぇ~! 当たれぇ~!」

ノエル「……ねぇユズキ、ロケットが円盤に当たるとノエル、やっぱり痛いんだけどなぁ」

柚季「ああっ~、届かなかったか……」

ノエル「よかったよぉ~」

柚季「それじゃノエルお願い!」

ノエル「えっ!? なになに? 何でも言ってよねっ」

柚季「湖に落ちたロケットを取って来て!」

ノエル「うんっ! 行ってくるよ」

大喜びで湖に飛び込み、泳いで取りに行くノエル。柚季のそばでは犬が飼い主の投げたボールを追いかけている。

柚季「……うん、ノエルってやっぱり犬だわ」

そんなことを数回繰り返しているうちに日が暮れてきた。

ノエル「ユズキぃ、また遊ぼうねぇ~」

柚季「またね、ノエル」

乃々香の家の方向へと走って行くノエルを見送りながら。

柚季「でもなんで泳いで取りに行ってたんだろう? 瞬間移動もできるのにね……。さぁ急がないと明日の準備が遅れちゃうわ」

ノエル「ただいま~」

乃々香「おかえり、ノエル。ご飯出来てるわよ」

ノエル「へぇ~、これが海鮮丼なんだぁ~」

乃々香「ノエル知らないで言ってたの!?」

ノエル「うん、ユズキから教えてもらったんだぁ。言葉だけ」

乃々香「柚季ったら……。まぁとにかく食べてみて」

ノエル「うんっ、いただきま~す」

乃々香「どう?」

ノエル「なんだか……ふつう」

乃々香「だってスーパーのお刺身をご飯の上に乗せただけだから」

ノエル「ハンバーグのほうがよかったなぁ……」

乃々香「今日はこれでガマンしてね。柚季の言ったこと鵜呑みにするからだよ」

ノエル「これから気を付けるよ。もうユズキは信じない!」

乃々香「そこまで言ってないから……」

なんだかんだ言いつつも、ノエルはきれいに完食。

ノエル「ねぇノノカ?」

乃々香「何?」

ノエル「今日ねノエル、みんなに避けられてるみたいなんだけど……」

乃々香「そっ、そんな事ないわよ。気にしすぎだよ」

ノエル「じゃあノノカ、ノエル今日お泊りしてもいい?」

乃々香「それは……ゴメンね。今日は無理なの」

ノエル「……やっぱり。ノエル、みんなに嫌われちゃったのかな」

乃々香「違う! そんなことない!」

ノエル「みんなのお願いは『ノエルが戻ってくること』だものね。いつまでもノエルがいたら迷惑だよね……」

乃々香「みんな迷惑だなんて思ってない!! いつまでもノエルにいてもらいたの!!」

ノエル「ノノカ、ありがとう。ノエル、もう帰るよ」

乃々香「待って! 明日みんなで集まるの、もちろんノエルにも来て欲しい」

ノエルは返事をしないまま、天文台への階段へ向かう。

乃々香「帰るって天文台にだよね!? 円盤ごといなくなったりしないよね!?」

それでも返事をしてくれない。

乃々香「お願いノエルっ! 明日私と一緒に行こう」

ようやく歩みを止め振り向くノエル。

ノエル「……ノノカにお願いされたら、ノエル断れないよ。それじゃまたあしたね」

私は階段を上っていく、どこか寂し気なノエルの後ろ姿を見送るしかなかった……。

乃々香「さぁ着いたわよ」

ノエル「ユズキとソータのお家?」

今朝約束通り来てくれたノエルを連れて、開店時間前のぞみ亭の前にやって来た私たち。そこへちょうどやって来たのは。

汐音「間に合ったみたいね」

乃々香「汐音、遠くから来てもらってゴメンね」

汐音「そんなことはいいのよ。それよりノエル、元気なさそうね。どうしたの?」

ノエル「そんなことないよ。ノエルもシオネに会えて嬉しいよ」

そんなノエルの態度に眉をひそめ、私の方へ詰め寄って来る。

汐音「ちょっと乃々香、まさか今日のことノエルに秘密にしてるんじゃないでしょうね?」

乃々香「どうしてわかったの?」

汐音「はぁ~、結果としてノエルを傷つけちゃってるんじゃ意味ないでしょうが」

乃々香「でもみんな協力してくれて、ノエルにも喜んでもらえると思って……」

汐音「だから、喜ばす相手をその前に落ち込ませてどうするのよ!」

ノエルの方に向き直ると。

汐音「行こうノエル」

ノエル「ちょっと、シオネぇ~」

強引にノエルを連れてのぞみ亭へと入っていく汐音。

乃々香「確かに、昨日の夜の時点で打ち明けるべきだったのかな」

二人から遅れてのぞみ亭へと入っていく。

ノエル「これは……」

店内は四人で協力して作った装飾品で埋め尽くされている。そして、天文台と円盤の絵。

こはる「いらっしゃいませ~」

湊太「なんとか間に合ったな」

柚季「私の描いた絵もきれいでしょう」

ノエル「うん、でもなんで……」

汐音「ノエル、今日が何の日だか覚えてない?」

ノエル「今日?」

乃々香「今日はね、ノエルが戻って来てくれてから、ちょうど三カ月なんだよ」

こはる「だから、乃々香ったら『みんなでノエルの歓迎会するんだ』って」

湊太「それも驚かせたいから絶対にノエルには秘密だって」

柚季「バレるんじゃないかって、昨日は大変だったんだから」

ノエル「それで、昨日はみんな、ノエルのこと避けてたんだね……」

乃々香「ノエル、ゴメンね。喜んでもらおうと思ってたのが、逆に寂しい思いをさせちゃって」

ノエル「ううん、ノエルこそ勝手に勘違いして、みんなに嫌われたなんて思ったりして……」

柚季「なになに? 昨日そんな事になってたの」

湊太「だったら別に話しても良かったじゃないか」

こはる「ノエルちゃんのこと、みんな大好きだよ」

汐音「この中にノエルのことがキライなんて言う人がいたら、私がバチンとやって追い出してやるから、そんな心配しないでいいのよ」

ノエル「みんなありがとう。ノエル、これからもみんなとニッコリしてたい」

乃々香「もう私たちの輪の中には、ノエルがいなくちゃダメなの。これからも誰一人欠けること無く、みんなでニッコリだよ」

柚季「さぁノエルっ! ハンバーグとオムライス、両方できてるから好きなだけ食べちゃって!」

湊太「そうだな、でもちょっと急いでな。貸切は開店時間の前までだからな」

こはる「私もお店のお手伝いが……」

乃々香「お休みの日に無理言ってゴメンね」

汐音「ほんと迷惑よね。乃々香は一度言い出したら絶対諦めないものね」

乃々香「もうっ、汐音ったら」

ノエル「ごちそうさま~」

こはる「えっ!? もう食べちゃったの?」

湊太「急いでくれとは言ったがいくらなんでも……」

柚季「よしっ! それじゃあ、おかわり作ってくるわね」

汐音「早食いすると太るわよ」

乃々香「それに食べ過ぎじゃないの?」

ノエル「だって、とぉ~てもおいしいんだもんっ。みんなも一緒に食べようよぉ」

こうして三カ月遅れの歓迎会は、多少『のぞみ亭』の開店時間を遅らせはしつつも、無事に終了しました。

柚季「ところで湊太?」

湊太「なんだ?」

柚季「こんな話になってるのに、まだ留学するつもりなの?」

湊太「だよなぁ、なんかもう行けるような雰囲気じゃないよなぁ……」

以上で「秘密の計画」完結となります。

次回はまた何か書けましたら更新します。

「少女の休日」


・作中時系列……13話終了後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・汐音・湊太・他

乃々香「今回はノエルの円盤の力で、みんなの休日の生活を覗いてみるよ」

ノエル「ノエルがんばるよっ!」

柚季「そんなこともできるの!?」

こはる「別に困るような事はないけど……」

湊太「俺も別にいいけど」

汐音「ちょっと乃々香! それってプライバシー侵害……」

乃々香「もともと霧弥湖町の円盤の下では、ノエルに全部筒抜けなんだからいいじゃない」

ノエル「ノエルは何でもお見通しだよっ。それに、これは過去ではなくて、これから起きるかもしれない『未来の休日』だよ」

乃々香「そんな訳だから汐音、プライバシー侵害にはならないわよ。……たぶんね」

汐音「分かったわよ、好きにしなさい」

乃々香「みんなの許可も出たし、ノエルお願いね」

ノエル「それじゃあ、円盤に映すからねっ。ちょっと恥ずかしいけどしっかり円盤を見てね」

柚季「それって町中の人に見られちゃうってこと!?」

ノエル「だいじょうぶ。ノエルが『見せる』って選んだ人にしか見えないよ。それじゃスタートだよっ」

『乃々香の休日』

乃々香「私が言い始めたことだし、まずは私のからね」

汐音「乃々香の……休日!」

乃々香「汐音? なんで息が荒くなるのよ!?」

柚季「昔と変わらず『乃々香LOVE』なんだから」

こはる「前の世界ではあんなに無理してたのにねぇ」

湊太「まぁ『かわいさ余って憎さ100倍』ってこともあるからな」

乃々香「ちょっと変な空気になっちゃったけど、ノエルお願いね」

ノエル「うんっ、それじゃいっくよ~」

乃々香「ん~っ、良く寝た~」

時計の針は9時を回っている。今日はお父さんもお休みだし、早起きの必要もない。

乃々香「さて、朝ごはんの用意でもしますか」

リビングに降りて行くと、すでにお父さんが朝食を作って……などなく、まだ寝ているようだ。

乃々香「たまには作ってくれてもいいのにな……」

愚痴をこぼしつつも、それで朝食が出てくる訳もないし。

そして、朝食の準備も終わろうかというときになってある異変にに気付く。

???「……食べたいよぉ」

乃々香「何!? 誰かいるの?」

???「お腹空いたよぉ~」

どうやらテーブルの下から聞こえてくるようだ。だいたい予想はつくが、のぞき込んでみる。

ノエル「ノノカぁ~、朝ごはん……。ノエルお腹空きすぎちゃって、動けないよぉ~」

乃々香「どうしてテーブルの下で寝てるのよ!? それに昨日の夜もあんなに食べたじゃない」

ノエル「ノエルは今、せーちょーきだからぁ、いっーぱい食べないとダメなんだぁ」

これ以上円盤が大きくなったら、町全体が日蔭になってしまいそうだが……。

乃々香「それに、いつものように寝室に入ってきて起こしてくれればよかったじゃない」

ノエル「ノノカ、疲れてたみたいだから起こすのは止めたの」

乃々香「お父さんは? 今度ノエルが来たら食事を作るんだって張り切ってたけど」

ノエル「……ノノカ、ゴメンね」

乃々香「ゴメンねってまさか! いくら料理が下手で、食べたくなかったからって!!」

ノエル「起きて来ないように暗示をかけてるんだぁ~」

乃々香「なんだ……寝かしてあるだけか」

ノエル「それよりごはん~。早く、はやくぅ~」

乃々香「はいはい、もう一人分作らないとね」

ノエルは食べ終わると、一人で遊びに行ってしまった。

乃々香「さてと、掃除に洗濯。あとは買い物ね」

テキパキとこなしていき、いつの間にか時刻は夕方。

ノエル「ノノカぁ~、夕ごはん~」

乃々香「はい、出来てるわよ」

ノエルが食事に来るのは、もはや日常になってしまっている。

ノエル「それじゃあ、また明日ねぇ~」

乃々香「気を付けて帰ってね」

天文台への階段を駆け上って行くノエルを見送り、リビングへと戻ると。

修一「乃々香、おはよう~。いや~、よく寝たと思ったのにまだ暗いんだな」

乃々香「もう夜よ!!」

ノエルの仕業とはいえ、一日眠らされてたお父さんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

乃々香「いつも通りね」

こはる「乃々香も大変だよねぇ」

柚季「きっといいお嫁さんになれるわね」

汐音「乃々香に言い寄る男なんて……絶対に許さないわ!!」

湊太「ちっこいの、本当毎日食べに行ってるんだな」

ノエル「ノノカとノエルの日常は変わらないもんっ。10年後も見てみる?」

乃々香「怖いので止めておきます!」

ノエル「ぷぅ~、つまらないなぁ~」

全員「(おそらく今のと一緒だろうな……)」

『汐音の休日』

天文台にノエルを訪ねる汐音。とある鍵をノエルへと差し出すと。

汐音「これあげる」

ノエル「ありがとう~。……」

汐音「どうしたの?」

ノエル「でも、ノエルいらないの」

汐音「どうして?」

ノエル「円盤だから……円盤の力を使えば、これがなくても入れるから。シオネはこれがないと入れなくならないの?」

汐音「もう……いいのよ。これじゃもう入れないのだから」

ノエル「どうして? ノエルのせい? ノエルがいつも入っていたから!?」

汐音「そうじゃないよ、きっとノエルのことは気にしてなかったと思うよ」

ノエル「だったら……シオネ」

汐音「きっと替えられてしまったのは私のせい! 気付かれてしまった私の……」

ノエル「だいじょうぶ、新しいのはきっとノエルが手に入れるから……そしたら、シオネもまた行こうね」

汐音「ノエルッ!!」

嬉しさのあまりノエルを抱きしめる汐音だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

湊太「で……」

こはる「なんだかよく分からないよねぇ」

柚季「そもそも、あれはどこの鍵なのよ?」

汐音「それは……」

乃々香か無言で汐音に近づき、汐音のポケットに手を入れる。

汐音「ちょ……乃々香! だめぇ~」

引き抜いた手には、先ほどの鍵が。そして乃々香が自分のポケットからも同じ鍵を出す。

乃々香「やっぱり……見覚えのある鍵だなぁとは思ったんだけど」

汐音「返して!! 私の『秘密の花園』への鍵を!!」

乃々香「『秘密の花園』って、これウチの玄関の鍵じゃない。どこで手に入れたのよ」

汐音「7年前に花織さんからもらったのよ。『自分の家だと思っていつでも来てね』って」

乃々香「はぁ~、お母さんらしいわね……で、これを使って私がいない間に何度もウチに入ってたのね」

汐音「……そんなには行ってないわよ」

ノエル「ノエル知ってるよ。シオネはぁ、ノノカが帰って来るまで、毎週ノノカの部屋に入っていろいろしてたよ」

全員「…………」

ノエル「ノノカのベッドで寝てみたり、一生懸命に匂いを……」

汐音「そっ、それは乃々香のこと忘れないようにしたかったし、いろいろと設置するものもあったし」

乃々香「設置?」

ノエル「ノノカの部屋の映像や音が、電波になって流れてるんだよ。ノエルはそんなの無くても分かっちゃうけどねっ」

乃々香「しおねっ~、後でじっくりと話し合いましょうねぇ~」

汐音「さようなら、私の楽園……」

乃々香「あとノエルもねっ」

ノエル「なになに? ノエルも行っていいの!?」

柚季・こはる・湊太「(これは修羅場になるな……)」

『湊太の休日』

柚季「『少女』じゃないから無し!」

湊太「ノオオォォォォォォォ~!!」

『湊太の休日』・完

今回はここまでです。

続きはまた書けましたら。

『こはるの休日』

乃々香「こはるは、いつもお店のお手伝いだよね」

こはる「そうだねぇ、お休みの日はお客さんも多いし」

柚季「でも、それじゃつまらないわよ」

汐音「ノエル、なんとかならないの?」

ノエル「それなら、コハルはお手伝いも無い日ならいいかなぁ」

乃々香「そうね、それでこそ『休日』だものね」

湊太「こはるの……休日か」

柚季「ちょっと湊太! 反応が乃々香のときの汐音と一緒じゃない!」

湊太「一緒って失礼だろ! 俺は変態じゃ……」

バチ~ン!!

汐音「誰が変態だっていうのよ!!」

全員「(今のは湊太が悪い……)」

こはる「う~ん、どうしようかなぁ……」

ついさっき、母に『明日はお手伝い大丈夫よ』と突然言われ。

こはる「とりあえず電話してみようかな」

最初に電話した相手は……。

こはる「もしもし、湊太」

湊太「おう、こはる。どうしたんだ?」

こはる「その……明日空いてるかな?」

しばらくの沈黙。

湊太「悪い。明日はちょっと用事があるんだ」

こはる「そうなんだ。分かった、変なこと聞いてゴメンね」

湊太「いや、こっちこそ悪いな」

電話を切ると溜息をひとつ。

こはる「いつもの手伝ってもらってるお礼に、二人で出かけてみようと思ったんだけどな……」

仕方なく次の相手へと電話をかける。

乃々香「ちょ……ダメだって。もしもし、こはる?」

何かがそばで飛び跳ねてるような音が聞こえてくるが。

こはる「騒がしいけど大丈夫?」

乃々香「ダメ! ダメだって!!」

こはる「乃々香!?」

ノエル「ノノカぁ、これ面白いね。こはるの声がするよ」

こはる「ノエルちゃんもいたのね」

ノエル「うんっ、ご飯たべてたんだぁ~」

こはる「よかったねぇ、乃々香と替ってもらえるかなぁ?」

ノエル「は~い。ノノカぁ~」

乃々香「こはる、ごめんね。それでどうしたの?」

こはる「うん、明日空いてるかなって」

乃々香「空いてるよ」

こはる「よかった、一緒にどこかお出かけしない?」

乃々香「いいよ、どこに行くの?」

ノエル「お出かけ!? ノエルも行く! ノエル温泉がいい!!」

こはる「温泉かぁ……いいよ、ノエルちゃんも一緒に行こう」

ノエル「わ~い、温泉、おんせん♪」

乃々香「いいの?」

こはる「うん、どこ行こうか決めてなかったし」

時間を決めて電話を切ると。

こはる「あとは……」

柚季「もしもし、こはる?」

こはる「柚季、明日ね乃々香とノエルちゃんと温泉に行くことになったんだけど、一緒にどう?」

柚季「……ねぇこはる」

低い声で聞き返してくる柚季に多少怯えつつ。

こはる「あの……どうしたの?」

柚季「ノエルが来るなら、私が行かない訳がないじゃない。早く場所と時間を教えて!」

こはる「そ、そうだったね」

柚季「ところで湊太は誘わなかったの?」

こはる「最初に電話したんだけど、断られちゃって」

柚季「ふ~ん……そうなんだ。それじゃ明日ね~」

翌日、温泉の待ち合わせ時間に少し遅れて来た柚季に理由を尋ねると。

柚季「家出るときに湊太に泣き付かれちゃって……」

こはる「だって今日は用事があるって」

柚季「なーに本気ににしちゃってるのよ、店番頼まれると思ってウソついてただけよ」

こはる「そうだったんだ」

乃々香「湊太もチャンス逃したわね」

柚季「自業自得よ」

ノエル「ねぇみんなぁ~、早くはやくぅ~」

こはる「ゴメンねノエルちゃん。さぁ、今日は思いっきり楽しもうっと」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ノエル「ソータ? なんで頭抱えて座り込んでるの?」

汐音「ウソなんてつくからこうなるのよ」

乃々香「いつも手伝ってるのにねぇ」

柚季「せっかくデートに誘ってもらえた時に限って断るなんて」

こはる「デ、デートじゃないもん……」

汐音「私も誘って欲しかった……」

乃々香「汐音はまた朝一番の飛行機で来るつもりなの?」

汐音「当たり前でしょ! 乃々香と温泉に入れるなら、どんなことしたって来るわよ」

乃々香「そうなんだ……あとこれってノエルの願望も混ざってない?」

ノエル「だってぇ、ノエルも温泉入りたいんだもんっ」

こはる「でも、私も温泉でのんびりしたいなぁ」

湊太「じゃ、俺と行くか。今からでも」

こはる「お店のお手伝いがなかったらねぇ」

全員「(やんわり断ったな……)」

『柚季の休日』

湊太「柚季の休みの日っていったら、前の世界では『円盤反対』運動だよな」

柚季「うっ……私の黒歴史を引っ張り出さないでよ」

ノエル「ユズキ……円盤が嫌い?」

柚季「そんなことある訳ないじゃない! 今は円盤もノエルも大好きだよ」

汐音「でもよく6年もあんなこと続けてられたわね」

こはる「私がもっと柚季の気持ちを分かってあげられてたら……ごめんね」

乃々香「巻き込まれたときはどうしようかと思ったわよ」

柚季「もうっ! なかったことになってるんだからいいじゃない!」

ノエル「ノエルは、理不尽に嫌われて追い出すとか言われて悲しかったな。約束したからお手伝いはしたけど……」

柚季「本当にゴメンねノエル。気の済むまでオムライス食べに来ていいから許して!」

ノエル「わ~い、オムライスぅ~。ハンバーグもいいなぁ~」

柚季「ははぁ~。仰せのままに」

全員「(まんまと当面のご飯ゲットしてる。ノエルも処世術身に付けたなぁ……)」

柚季は今日もロケットを飛ばしに湖畔へとやってきている。

柚季「いけぇ~! 当たれぇ~!!」

円盤に向けて飛ばしているが、せいぜい半分の高さといったところか。

柚季「う~ん、やっぱり何かが足りないのよね……」

そこへ駆け寄って来る足音が。

ノエル「ユズキぃ~」

柚季「ノエルぅ~」

ノエル「またロケット飛ばしてるの?」

柚季「そうなんだけど、最近距離が伸びなくて……」

ノエル「よかったぁ~」

柚季「よくない! 円盤にブチ当ててやるんだから!!」

ノエル「だからユズキ……ノエルが円盤で、ロケットが当たると痛いんだけどな……」

柚季「あ、そうだったっけ。すっかり忘れてたわ」

ノエル「ユズキ……今でも本当はノエルのことキライなんじゃ……」

柚季「ノエルが円盤……そうか! この方法なら絶対に円盤にロケットを当てられるわ!!」

ノエル「ノエル、当たりそうになったら避けちゃおっと」

何やらその場で、ロケットに絵を描くと。

柚季「これなら絶対大丈夫だよ! はっしゃ~!!」

自信満々の柚季だが、上昇する勢いは特に変わっていない。

ノエル「な~んだ、ユズキぃビックリさせ……」

そこまで言うとノエルは言葉に詰まり、そして……円盤にロケットが直撃する。

ノエル「ひゃうぅ! ずるいよ、ユズキぃ~」

柚季「ずるくなんてないもん。作戦勝ちと言って欲しいわね」

ロケットの飛距離は変わっていない。なら、なぜ円盤に当たったのかというと。

ノエル「オムライスが飛んできたから、ノエル喜んで飛びついたのにぃ~」

ロケットに描かれたオムライスを本物と思いこみ、円盤の方からロケットに突っ込んで来たのだ。

柚季「さぁもう一度やるわよ。バシバシ当てちゃうんだから」

ノエル「ノエルだってそんなバカじゃないもん! 何度も引っかかる……きゃうぅぅ~」

その後何度やっても円盤はロケットへと突っ込んで行きました……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こはる「えっとぉ……ノエルちゃんって意外とドジっ子だったり?」

乃々香「ノエルらしい反応だよね」

湊太「いくらなでも単純すぎないか?」

ノエル「ノエルは違うって分かってるんだよ。でも円盤さんが言う事聞いてくれないんだもん……」

汐音「私だったら乃々香の写真を張るわね」

柚季「あ、それいいかも」

乃々香「ちょっと! それだと私が町を歩いてるだけで円盤が突っ込んでくるってこと!?」

柚季「今まで通りじゃない、空の円盤じゃないだけで、地上の円盤であるノエルは毎日突っ込んでるんだから」

湊太「でもそのうち我慢できなくなって、空の円盤が……とか」

乃々香「それ私死んじゃうし! 町も壊滅しちゃうよ!! ノエルっ、絶対にダメだからね」

ノエル「はぁ~い……」

全員「(なぜ残念そうな返事!? 言われなきゃやる気だったな……)」

『続・湊太の休日』

こはる「まぁ少女ではないんだけどね……」

汐音「一人だけ無しっていうのもね」

乃々香「うん、かわいそうだよね」

柚季「でも需要がないだろうし、やっぱり無し!」

湊太「うおおおぉぉぉぉぉぉ~!!」

『続・湊太の休日』・完

更新間隔空き気味ですみませんが、続きはまた次回になります。

『真・湊太の休日』

ノエル「ソータ、そんなに出番欲しいの?」

湊太「欲しいっ! お願いだからくれっ!」

ノエル「そんなにお願いされちゃうと、ノエル叶えてあげたくなっちゃうよ」

湊太「いいのかノエル!? 俺の願い、叶えてくれるのか!!」

柚季「無理しなくていいのよ、ノエル。どうせ湊太なんだから」

ノエル「無理じゃないよ、無理では……。ソータのお願い、叶えちゃうよっ♪」

休前日の夜、湊太は自分の部屋で机に向かっている。

湊太「明日は……どうするかな。たまには遠出でもしてみるか」

そこへスマホに着信が、画面には『こはる』の文字。

湊太「もしもし、こはるか。どうしたんだ?」

こはる「うん、その……湊太、明日ヒマ?」

湊太「まぁ、ヒマだけど」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

湊太「ちょっと待て! 待ってくれ」

ノエル「どうしたのソータ?」

湊太「やっぱりもういいや」

全員「(だよねぇ、いつもの展開だものねぇ……)」

ノエル「本当にいいの?」

湊太「あぁ、ありがとうなノエル」

ノエル「そっかぁ……じゃあソータ以外には続きを見せてあげるねっ」

湊太「まぁ、ヒマだけど」

こはる「明日ね、湊太と一緒にお出かけしたいなぁって思ったんだけど……いいかな?」

湊太「えっ!? 店番じゃなくて、一緒に出かけるのか!?」

こはる「お店は乃々香にお願いしたの。ねぇ、いいかなぁ」

湊太「あ、あぁ。もちろんいいぞ。どこに行くんだ?」

こはる「湊太に決めて欲しいな。私は湊太と一緒ならどこでもいいよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上映が終わると、こはるが顔を真っ赤にして。

こはる「わっ、私っ。こんなこと、思ってないもん~」

駆けだして行ってしまった。

湊太「な、なんだ? どうせ店番頼まれて終わりだったんだろ!?」

動揺する湊太の肩に、柚季はポンッと手を乗せると。

柚季「知らない方がいいこともあるわよ、うんうん」

汐音「見るのを放棄した自分を責めなさい」

乃々香「こはるのときにもチャンスあったのにねぇ……」

ノエル「ノエルはぁ、可能性を示しただけだよっ」

湊太「余計に気になるだろっ! ノエル、やっぱり見せてくれ」

ノエル「ゴメンナサイ。さっき『もう見ない』ってお願いされたから、ソータには見せられないんだぁ」

湊太「うおおぉぉ~。これならやらない方がよかったじゃないかぁ~」

『ノエルの休日?』

乃々香「ノエルって毎日お休みなんじゃないの?」

こはる「学校に行ってる訳でもないよねぇ」

汐音「ノエルは乃々香にベッタリでいることがお仕事だものね。……うらやましい」

ノエル「なによぉ、ノエルは毎日みんなの願いを叶える為にがんばってるんだよ」

柚季「でも、いままで何か直接してもらったって事はないかも」

湊太「だよなぁ。手助けはしてもらったけどな」

ノエル「ぷぅ~、ひどいよみんなぁ~。ノエルお休みなしでがんばってるのにぃ」

乃々香「ゴメンね、分かったから。じゃあノエルは『休日』じゃなくて、毎日がんばってる所を見せてくれる?」

ノエル「うんっ、いいよ。ノエルがどれだけ大変なのか教えてあげるよ」

天文台の屋根でいつものように寝ているノエル。夜が明け円盤に朝日があたる。

ノエル「きら~ん☆」

今日も快適な目覚めのようだ。

ノエル「よ~し、今日も一日がんばるぞぉ~」

天文台からの坂道を下って行くと、当然その先にあるのは……。

ノエル「ピピピピッ、ピピピピッ」

乃々香「……お休みの日くらい、もうちょっと寝かせてよ」

ノエル「おはようっ、ノノカ。朝ごはんちょうだい!!」

乃々香「それはいいけど、当たり前のように寝室に入りこまないでね」

ノエル「円盤の力があれば、こんなこと朝飯前なんだよっ」

乃々香「本当に朝飯前だものね……というか朝飯をねだりに来てるんだし」

ノエルは食べ終わると湖の方へと向かって一人歩いている。が、途中で足が止まると。

ノエル「……」

森の方へ視線を向けて、いつになく真剣な表情になっている。しばらくすると、ノエルの視線の先にだけ雨が降り出す。

ノエル「これでいいかなぁ……よかった。それじゃあねぇ~」

一転笑顔になると、再び歩きだしていった。

湖畔に到着すると、湖の中を見つめ再び表情が変わっている。すると、円盤が一瞬わずかに光を放つ。

ノエル「うんっ……みんなの願いがノエルに届けばいつでも」

汐音「ノエル何してるの!? 今、円盤が光ったみたいだけど」

ノエル「あっ、シオネぇ~。またノエルの恥ずかしい写真を撮りにきたのぉ……」

不穏な言葉に、周りにいる観光客の視線が集まる。

汐音「ちょっと! 変な言い方しないで! 円盤の写真を撮りに来ただけじゃない」

ノエル「だってぇ~、ノエルは円盤だし、円盤は何も着て無いしぃ……」

頬を赤くし、モジモジしだすノエル。周囲の視線に耐えきれなくなった汐音は。

汐音「と、とにかく場所を変えましょう。のぞみ亭で何か食べる?」

ノエル「わ~い。ノエル、オムライスがいいっ!!」

その場を足早に立ち去る二人。観光客の『児童ポルノ写真?』『連れてかれるぞ』『食べ物で釣るなんて』などの声は聞こえないフリで。

柚季「いらっしゃいませ~。ってなんだ汐音か」

汐音「いちおう客なんだけど、それに」

汐音に後ろで柚季に見えてなかったノエルが顔を出す。

ノエル「ユズキ、オムライスちょうだい~」

柚季「ノエルぅ~、いらっしゃいだよぉ~」

汐音「お客によって態度を変えるのって、接客係として失格よ」

柚季「いいじゃない、幼馴染みなんてそんなもんでしょ。汐音はコーヒーでいい?」

汐音「ええ」

柚季「あっそうだ、汐音にコーヒー出すときは、持っていく砂糖とミルクの量を減らすように言われてたっけ」

汐音「なによそれ!?」

柚季「汐音があるだけ全部入れちゃうからでしょ。汐音の健康のためよ」

ノエル「ねぇ、オムライスまだぁ~。ノエルおなか空いたよぉ~」

食べ終わりのぞみ亭の外へ出ると、汐音はお揃いの服を着た数人(公務員)に囲まれて何やら話しを聞かれだした。ノエルはそのまま工芸御殿へ。

ノエル「うがぁ~、がぁうぅ~」

キリゴンの看板に、怪獣の言葉(?)であいさつをしているようだ。

ノエル「あれ? かいじゅうさん、お顔……」

ノエルがキリゴンの腕に手を掛けようとしたその時。

こはる「ノエルちゃん! ダメぇ~!!」

いつもおっとりとしているこはるとは思えない俊敏な動きで、ノエルを取り押さえる。

ノエル「コハル、どうしたの?」

こはる「えっ……そのぉ、危ないかなぁ……って」

湊太「俺たち5人には、ノエルが時間を戻す前の世界の記憶も戻ってるからな」

ノエル「うん、みんなにだけ戻したよ」

湊太「だから、またキリゴンにケガしてほしくなかったんだろう」

こはる「うん、やっぱりこのままのほうがいいから」

ノエル「そうなの……じゃあ、お話だけしてるねっ」

こはる「ゴメンね、そうしてくれると嬉しいな」

お店へと戻っていくこはる。ノエルは湊太をジッと見つめながら。

ノエル「ソータは願いが叶ってよかったねっ」

湊太「なっ、何のことだ。俺は店の手伝いをしているだけで」

ノエル「ノエルも嬉しいよ、それじゃあねっ~」

走り去るノエルを見送りつつ。

湊太「全部お見通しか……」

夕暮れの坂道を駆け上がっていくノエル。乃々香の家に到着すると。

ノエル「ピンポ~ン」

乃々香「はいはい、ノエル。おかえりなさい」

ノエル「ただいま~、今日はなにかなぁ~」

乃々香「ハンバーグだよ」

ノエル「わ~い、ハンバーグぅ、ハンバーグ!」

乃々香「(そろそろウチも、ちゃんとインターフォン付けないとね)」

いつも通りしっかり完食。

ノエル「それじや、ノノカ。またあしたねぇ~」

乃々香「うん、またね」

天文台へと戻ると、そこにはキツネがノエルの帰りを待っていた。

ノエル「はいっ、キツネさん。おみやげだよっ」

ノエルはこっそりと持ち帰っていたハンバーグをキツネに渡す。

ノエル「うんっ、今日も一日、ノエルはとぉ~てもがんばったよっ!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ノエル「どぉ!? ノエルがすっごくがんばってるって、よ~く分かったでしょ!!」

胸を張りドヤ顔のノエルだが。

全員「(いつも通り遊んでるだけじゃん……)」

ノエル「こうやってノエルは、日々みんなの願いの為にがんばってるんだよっ」

乃々香「そ、そうだね」

柚季「ノエルも忙しいんだね……」

こはる「そっか……看板壊されないようにしないと」

汐音「なんで私が犯罪者扱いになってるのよ!」

湊太「俺の願い……ノエルが叶えてくれてるのか」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

上映はしなかったが、その日の夜の天文台で円盤と話すノエル。

ノエル「今日ノエルはねぇ、マツさんと、マスさんと、ソータと、キツネさんの願いを叶えてあげられたよっ」

円盤「がんばったね、でも今のノエルは乃々香たちの『戻って来て一緒にいて欲しい』って願いを叶えてるのだから、無理に他の願いを叶えることはないんだよ」

ノエル「ノエルはみんなの願いを叶えたいからやってるだけだよ」

円盤「そうだね、それが私たちの存在理由だけと、少しは休みなさいね」

ノエル「うんっ。ありがとう、円盤さんっ」

以上で「少女の休日」完結となります。

「円盤と怪獣」


・作中時系列……13話話終了後。BD7巻ショートアニメ後

・登場人物……乃々香・ノエル・柚季・こはる・他

※BD7巻ショートアニメのネタバレを含みます

ノエル「ごちそうさま~」

乃々香「おそまつさまでした」

ノエル「ねぇノノカ。あれ見せてよぉ~」

乃々香「はいはい、今つけてあげるからね」

ノエルは夕食を食べ終わると、すぐにテレビの前に陣取り。

ノエル「かいじゅうさん♪ かいじゅうさん♪」

乃々香「すっかりお気に入りね」

『謎の円盤対霧弥湖の大怪獣キリゴン』のDVD。キリゴンが好きなのか、円盤が出ているからなのか……。

乃々香「でも、まだ最後まで見せてあげたことないのよね」

ノエルに聞こえないように呟く。みんなで見た時も、汐音が出てきた所で結末を思い出し再生を止めた。

ノエル「ノエルびぃぃぃぃぃむぅぅ~!!」

円盤から光線が放たれる場面にあわせて、楽しそうにノエルが叫んでいる。

乃々香「だって……あの結末はノエルにはね」

もちろん止めたことで柚季から猛抗議をされた。なので、柚季とこはるには、DVDを貸して自宅で続きをみてもらったのだ。

ノエル「かいじゅうさんまだかなぁ~」

乃々香「ノエル、何か飲む?」

ノエル「うんっ。ノエル、リンゴジュースがいい」

乃々香「わかった、ちょっとまってね」

画面は汐音がキリゴンを呼び出したところ。普段ならここで止めているのだが、すっかり忘れてしまった。

乃々香「リンゴジュースなら、やっぱりこれよね」

冷蔵庫に入っているビン入りの『霧弥湖の露』を出して、コップへと注いでいると。

ノエル「うわぁぁぁぁん!!」

突然ノエルが悲鳴をあげる。顔を上げDVDを止め忘れたことに気付くが、もう手遅れ。

ノエル「ノエルが、円盤が……かいじゅうさんに食べられちゃうよぉ~」

ノエルの言葉の通り、円盤はキリゴンに鷲掴みにされ、食べられているというか、食いちぎられている。

乃々香「ノエル、これはその……架空の物語だから、そんなに泣かないで」

ノエル「だってノエル悪いことしてないもん。なのになのに……なんでやっつけられちゃうの!?」

乃々香「えと、そういう設定だからとしか……」

このDVDでは、汐音が演じる少女がキリゴンに助けを求めている。ということは、キリゴンが救世主でありその敵は他ならぬ円盤。ノエルなのだ。

ノエル「それにノエルが本気だせば、かいじゅうさんにも負けないもんっ!!」

乃々香「私はノエルとキリゴンには戦って欲しくないな」

ノエル「うっ……ノノカがそういうのなら」

納得はしていないようだけど、とりあえずは落ち着いたみたい。

乃々香「折角だから、今日はウチに泊まっていかない?」

このまま帰したら、本当に円盤からビーム攻撃をしかねないような気がするし……。

ノエル「いいのっ!? お泊り♪ お泊り♪ ノノカと一晩ずっと一緒だよっ」

乃々香「妙な言い方しないの! 誰に教えて……ってこういうのは柚季か」

ノエル「うん。ユズキいろいろ教えてくれるんだぁ~」

乃々香「柚季って変な知識だけはあるのよねぇ……」

こうしてノエルは今晩、私の部屋にお泊りすることになりました。

ノエル「う~ん、何かモヤモヤするよぉ~」

乃々香と一緒のベッドの中でなかなか寝付けないノエル。

ノエル「ノエル、悪い円盤じゃないし、かいじゅうさんとも仲良くしたいよ……」

そんなノエルの隣では、乃々香が気持ちよさそうに寝息を立てている。

ノエル「よしっ、明日かいじゅうさんに会いにいって、ちゃんと話してこようっと」

再び布団に入ると、今度はすぐに眠りにつくノエルでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ノエル「こんにちは、かいじゅうさんっ!」

翌日、ノエルは目の前にいる緑色の怪獣にあいさつをしているが。

キリゴン「……」

工芸御殿の前にあるいつもの顔出し看板に向かってあいさつをしても、当然返答はない。

ノエル「今日はねノエル、かいじゅうさんと勝負がしたいの! 受けてくれるよねっ」

キリゴン「……」

湊太でもいれば返事をしてくれるのだろうが……。

乃々香「ノエル、キリゴンも戦いたくないってことなんじゃないかな」

こはる「乃々香、ノエルちゃん、いらっしゃい。お饅頭どうぞ~」

外の声にに気付き、お店からこはるが出てくる。

ノエル「かいじゅうさん! 返事してよぉ!」

こはる「乃々香、ノエルちゃんひょっとして見ちゃったの?」

乃々香「そうなんだ……。あの結末に納得できないから勝負がしたいんだって」

ノエル「いいもんっ! 返事してくれなくたって! それじゃノエルからいくよっ!」

看板に向かって身構えるノエル、そして。

ノエル「ノエルびぃぃぃぃぃむぅぅ~!!」

……はい、何も起こりませんでした。

ノエル「あれっ!? おかしいなぁ……。ノエルビーム!!」

何度も叫ぶが、ビームが放たれる気配は全くない。そんなノエルを眺めつつベンチに座り。

乃々香「あっ!? このお饅頭、抹茶の味が。中身も緑色なんだ」

こはる「そうなんだぁ、試作品の『キリゴン饅頭』なの」

乃々香「これもおいしいわねぇ」

こはる「乃々香にそういってもらえるなら、販売しても大丈夫かな」

そんな会話の間も、ひたすらノエルは叫び続けていたりする。平和だなぁ~。

柚季「どうしたのノエル? ウチまで声が聞こえてきてるわよ」

トラブルメーカーが来てしまった……。

ノエル「ユズキぃ~。ノエルかいじゅうさんと戦ってるんだけど、ビームが出ないの」

柚季「ピームって……。乃々香、例のDVDノエル最後まで見ちゃったのね」

乃々香「うん、だから戦うんだって」

こはる「でもこのままじゃ、いつまで経っても終わらないよね」

柚季「よし、ノエルちょっと待ってて。私がピーム撃たしてあげる!」

ノエル「本当!? やったぁ~、ピーム♪ ビーム♪」

家に戻って行く柚季を見送りながら。

乃々香「柚季、何するつもりだろう?」

こはる「まさか本当にビームを撃てることはないと思うけど……」

乃々香「たまに柚季って、とんでもないことするからねぇ」

柚季「お待たせ! さぁノエルこれを使って!」

ノエル「おおっ! これでノエルもビーム撃てるの!?」

柚季「そうよ、私の言う通りやってみて」

ノエル「うんっ!!」

柚季「そうそう、ポイントをうまく合わせて……。そこっ!! バッチリだよ」

ノエル「ノノカぁ~見てみて。ノエル、ビーム撃てたよぉ~」

乃々香「そうだね……。よかったねノエル」

こはる「ノエルちゃんも納得してるのなら、あれでいいんじゃないかなぁ」

何のことは無い。虫眼鏡に太陽光を集めて焦点をキリゴンの看板に合わせているだけ。

乃々香「まぁ、太陽光のビームであることには間違いないか……」

こはる「でも、看板焦げちゃったら困るな」

そこまでの威力もなく、時間だけが過ぎていく。

ノエル「どう、かいじゅうさん! ノエルも強いってわかった!?」

柚季「あんまり効いてないみたいね」

看板は無傷のまま、焦げ跡一つついていない。

ノエル「ぷぅ~、ノエルもっとしっかりしたビーム撃って、かいじゅうさんに勝ちたいよぉ~」

乃々香「そろそろいいでしょ、引き分けってことで。ノエル、帰りましょう」

ノエルは虫眼鏡をジッと見たまま返事をしない。

ノエル「そうだっ!!」

何かひらめいたのか、右手を上げ、左手を横に伸ばす。

乃々香「円盤で何かするの?」

こはる「円盤の向きが変わっていくよ……」

柚季「……ねぇ乃々香。虫眼鏡って凸レンズだよね」

乃々香「そうだけど」

柚季「円盤も見方を変えたら凸レンズ……」

乃々香「ああぁぁぁ~」

気付いた時にはもう遅かった。いつもは青い円盤は透明な巨大凸レンズになり、太陽を背にこちらを向いている。

ノエル「ノエルびぃぃぃぃむぅぅ~!!」

そして焦点がキリゴンの看板に合った瞬間、看板はあっという間に消し飛んでしまった。

ノエル「やったぁ~! ノエルの勝ちだよっ!」

乃々香「ちょっとノエル!! これはやりすぎ……って」

精度が甘いのか、焦点がどんどん移動していく。

柚季「町が……」

こはる「きゃぁぁ~!! お店が燃えてるよぉ~」

焦点が移動していった先の建物がもれなく炎上している……。

ノエル「わ~い! ビームつお~い!!」

ノエルはビームを撃てた嬉しさからか、事の重大さに気付いていないみたいだ。

乃々香「助けて……、誰か……」

もう私たちではノエルを止められそうにない。ふとDVDのシーンが脳裏をかすめ、自然と言葉が出る。

乃々香「助けて! キリゴン!!」

柚季「気持ちはわかるけど、キリゴンが本当にいるわけ……」

柚季の言葉が途中で止まり、太陽の光が遮られる。

こはる「キリゴン……本当にいたんだ」

円盤と霧弥湖町の間に立ちふさがる巨大な緑色の怪獣の姿がそこにはあった。

ノエル「かいじゅうさんだぁ!! ノエル負けないもんっ!!」

円盤は高度を下げ、焦点をキリゴンへと合わせていく。

キリゴン「ギャオォォォン」

焦点が合ったと同時にキリゴンは、悲鳴のような叫び声を上げると、何もできないまま再び湖へと潜ってしまった。

ノエル「ノエルビームすご~い! 完全勝利だよっ!!」

こはる「キリゴン!!」

乃々香「キリゴンでもダメなの!?」

柚季「あっけなさすぎるわよ……」

次の瞬間、今度は円盤と太陽を挟んだ側、町とは反対側に先ほどの2倍はあろうかという怪獣が現れた。

ノエル「ほえ……!? かいじゅうさん、すっごく大きいよ」

円盤が高度を下げていたせいもあって、キリゴンの背丈は円盤の高さをゆうに超えている。

ノエル「でも、ノエルには最強ビームがあるから負けないよっ!! ってあれ……?」

ビームは撃てなかった。当然である。太陽光も元にしているのに、円盤と太陽の間にキリゴンに立たれ、光を受けられないのだから。

キリゴン「町を荒らす悪者め! 成敗してくれる!!」

乃々香・こはる・柚季「しゃべった!!」

キリゴン(大)が現れたことよりも、普通にしゃべったことに衝撃をうける私たち。そして円盤に放たれるキリゴンの攻撃。

ノエル「ぐきゃゃゃぁぁぁ~」

豪快なチョップが円盤を直撃し、湖へと叩き落されたしまった。

柚季「なぜチョップなの……」

乃々香「キリゴンにとっては、円盤って顔の周りを飛ぶハエかなにかと同じ扱いだったりして……」

こはる「キリゴン……かっこいい💛」

ツッコミどころのあまりに多すぎる展開に、立ちつくす私たちの足元で、ノエルは目を回してのびていました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

乃々香「……ル、ノエル」

ノエル「んぁ、ノノカぁ~」

乃々香「ノエル大丈夫? だいぶうなされてたけど」

乃々香の部屋のベッドの中で起こされるノエル。

ノエル「あれ? 夢だったの……」

乃々香「怖い夢でもみたの?」

ノエル「ノエルね、かいじゅうさんと戦ったんだよ」

乃々香「余程昨夜のDVDが気になってたのね、それでどうだったの」

ノエル「ノエルがビームでかいじゅうさんをやっつけたんだけど、もっと大きなかいじゅうさんが出て来てやられちゃったの……」

乃々香「それは残念だったわね。でもノエルはやられちゃいそうになったら時間を戻せば大丈夫なんでしょ」

ノエル「そうだけど、やっぱり勝ちたいな……」

乃々香「怪獣さんが本当にいても、仲良くしなきゃダメよ」

ノエル「は~い」

ふと時計を見ると、既に10時を過ぎている。

乃々香「いけない、寝坊しちゃったわね」

ベッドから起き、カーテンを開けたところで固まってしまった。

乃々香「……ねぇノエル」

ノエル「どうしたのノノカ?」

乃々香「ビーム、撃てるんだよね」

ノエル「うん。夢の中で円盤からだよ」

乃々香「町が……燃えてるんだけど」

ノエル「……」

円盤が透明な凸レンズになり、町にビームが降り注いでいる。

ノエル「ノエル寝ぼけて夢の中の事、本当にやっちゃったみたい……」

乃々香「時間を戻して!!」

こうして、円盤が寝ぼけたことによる大災害はなかったことになったのでした。

以上で「円盤と怪獣」完結となります。

私事で申し訳ありませんが、6月27日に洞爺湖で転倒し右肩を骨折してしまい、いまだに左手のみでキーボードを打っている状態です。(回復自体は順調とのことですが)

公式のコンテンツがほぼ終了した今だからこそ、もう少し続けたかったのですが、今回の話を書くのに普段の3倍近い時間がかかってしまい、更新が大きく遅れてしまいました。

今回をもちまして更新を終了しようと思います。他に利用する方がいなければ、今月末で終了宣言をします。最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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