あの日見た加賀の笑顔を僕たちはまだ知らない【艦これ】 (25)


短編
某アニメとは関係ありません
特に何の意味もありません

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正規空母加賀
彼女が表情を崩すことはあまりない
赤城の話では

「感情の起伏は激しいんですよ・・・」

という事だが私は見た事が無い

凛とし佇まいで艦隊をけん引する彼女

誰もが憧れ、その強さに魅了される

しかし彼女もどこか寂しかったのかもしれない

その瞳に映るのは唯一敵のみ

だと思っていたのが一週間前


彼女は今


私の目の前で泣いている

必死に瞼を動かし止めようとするも

涙は溢れてくる

誰もが彼女を慰められない

1人彼女は悲劇に彷徨う

それは無念、後悔あるいは最愛の人を失った時の悲しみに似ているかもしれない

事の発端は一週間前

夕闇に染まる街の一角で起こった


―― 一週間前 ――


提督「あぁ…残業嫌だな…」

カンカンカン・・・シュワー・・・

提督「公園か…俺も子供の頃はよく遊んだな…」チラッ


加賀「…」カンカンカン

加賀「…」シュワー

加賀「…」ニヘラ


提督「…」


加賀「…」カンカンカン

加賀「一航戦、出撃します」シュワー

加賀「やりました」


提督「んん~?」


彼女は公園にいた

滑降部の傾斜角度は基本的に、水平に対して45°以下とし、滑降部全体を平均しても35°以下とする

あの遊具


滑り台にいた


提督「いったい何の夢だ…」

目をこすろうとも、頬を叩こうとも夢から覚めない

唖然として見ていると、夢中で遊んでいた加賀と目線があった

彼女は俺の方に近づいてくる
そして俺の手を取り、元来た道を戻る

反抗?

そんなことは目の前の光景に比べれば些細なもの
俺はただ彼女の行動の意図が知りたかった
加賀は滑り台の前まで来ると

加賀「提督、どうぞお先に」

俺に先を譲ってくれた

提督「あぁ…」カンカンカン

提督「…」シュワー

提督「…」


提督(うん、わからん)

加賀「提督、掛け声をかけると楽しいです」カンカンカン

加賀「見ていてください」

加賀「加賀!全力で参ります!」ビシィッ!!!

加賀「…」シュワー

加賀「このように」

提督「あ・・・あぁ…」

加賀「さぁ…もう一度・・・」


期待に目を輝かせる彼女


提督「あぁ…」

提督「…」カンカンカン

提督「提督!推して参ります!!」シュワー

提督「上々ね」


思った以上に恥ずかしい


加賀「素晴らしい、まさに鎧袖一触です」パチパチ

加賀「提督、次は私の番です」


提督「…」プルプル


なんだろう・・・
この何とも言えない状況・・・


その後俺と加賀は何十往復も日が暮れるまで滑り台を堪能した。
そして今、彼女と共に鎮守府の帰路へとついた。

加賀「…」

提督「…」

どうしようか…
なんて聞けばいい?

滑り台好きなの?
いや好きなんだからやっているんだろうし…

恥ずかしくないの?
恥ずかしくはなさそうだったな…

様々な考えを巡らせていると、加賀が話しかけていた」

加賀「・・・提督」

提督「ど、どうした?」

加賀「楽しかったですか?」


これはツァーリ・ボンバーだなぁ…

加賀「…」ジー


どうしよう…凄い見ている・・・


提督「あぁ…そうだな…」


やっちゃった
俺視線に
負けちゃった


加賀「そうですか!!」


その時の加賀は、まるで初めて遊具に触れたような子供の様に
自然で・・・暖かく柔らかい笑顔をしていた
初めて見る彼女の笑顔
俺は少し高揚した


加賀「どうしました?」

提督「いいや・・・」


この時の俺は知らなかった・・・

これが悲劇の幕を開けることなど・・・


――六日前――

提督「あぁ…今日も残業嫌か…」

カンカンカン・・・シュワー・・・
イヤーチョットドシタノサ!!

提督「今日は仲間がいるのか…」チラッ


瑞鶴「離してってば加賀さん!!」ジタバタ

加賀「五航戦、出撃よ」カンカンカン

瑞鶴「それ私のセリフ・・・キャッ!!」シュワー

加賀「いい感じじゃない♪」

瑞鶴「お願いだからやめて・・・」

加賀が瑞鶴を抱えて滑っていた

なんというか…加賀が後ろから太ももの後ろ側に手をまわして抱えているから
瑞鶴の・・・下着が・・・


瑞鶴「ちょっと提督さん!!何見てんのよ!!爆撃するわよ!!」

提督「ふむ…これは中々・・・」


加賀「アウトレンジで…決めたいわね!」カンカンカン

瑞鶴「お願いだからそれやめて!!」

提督「随分仲良くなったな…」

瑞鶴「そんなんじゃない!!」

加賀「いい感じじゃない♪」シュワー

瑞鶴「だからもー!!」


提督「暗くならないうちに帰ってこいよー」


マッテタスケテ…
バクゲキスルワヨ
イヤホント…

カンカンカン
シュワー

イヤー





提督「あぁ…今日も今日とて残業か…」

カンカンカン・・・シュワー・・・
アメハ・・・イツカヤムサ…

提督「今日も仲間がいるのか…」チラッ

加賀「…」カンカンカン

時雨「…」

加賀「…」シュワー

時雨「楽しいかい?」

加賀「えぇ…」

時雨「あとどのくらい滑るんだい?」

加賀「沢山よ」カンカンカン

時雨「そうかい…」シュワー


提督「…」


時雨はただ遠くを見ていた
ただただ受け入れがたい現実から逃れるために

提督「…」

加賀「あら、提督」

時雨「…」

加賀「ご一緒しますか?」

提督「…遠慮しておくよ」

加賀「そうですか…では・・・」


去って行く彼女達
どこか助けを求めていた時雨は
ずっとこちらを見つめていた






――四日前――

この日、加賀は鎮守府にいた
木材や工具を使い、何かを作っていた

提督「加賀…何を作っているんだ?」

加賀「滑り台を」

提督「何故?」

提督「みんなが喜ぶと思って…」

提督「何故、喜ぶと思ったんだ?」

加賀「私が楽しいから…」

提督「そうか…」



加賀よ…お前の楽しいことはみんなの楽しいことじゃないんだ…
俺はその一言がどうしても言えなかった…


そして今日、滑り台は完成した
多くの駆逐艦は喜んでいた
しかし快く思わないものもいた
その完成した滑り台を見た瑞鶴が一言


瑞鶴「いい加減にして!あんたの遊びにあたし達を巻き込まないでよ!!」

加賀「!!」

加賀「…ごめんなさい・・・・・・」

瑞鶴「みんなもどうせ迷惑だと思っているわ!!」

加賀「!!!!!!」


提督「おい瑞鶴!言い過ぎだ!」

瑞鶴「人のパンツ見てたくせに偉そうなこと言うな!!」

提督「ううむ…」

それを言われると弱い
少しの静寂の後、加賀が口を開いた

加賀「私は…みんなと楽しくしたい…それだけ…」

瑞鶴「それが迷惑だって言ってんのよ!!」

加賀「…」ポロポロ

瑞鶴「え…?」

加賀の瞳から涙がこぼれた
ひとつ二つ
雫は川となり頬を伝う


加賀「あなたたちは私を避けるじゃない・・・」

瑞鶴「それは…」

加賀「練度の足りなさを指摘したら怒って…」

瑞鶴「うっ…」

加賀「表情が無いとか陰口叩いて…」

提督「むっ…」

加賀「艦載機を飛ばしたくない雨の日を喜んで…」

時雨「それは個人の自由だと思うな…」

加賀「…」グスグス


提督「…」

やっと気づいた…
これは不器用な彼女なりの歩み寄りだったのだ
人が何が好きなのかわからない、だから自分の好きなものならと
そんな不器用さが裏目に出た
いや出させてしまった

加賀「うっ…」グス


赤城「加賀さん…」

加賀「赤城さん…」

天龍「加賀さん…せっかくだし使っていいか?」

天龍「ちび共がうずうずしてんだ」

駆逐艦's「…」ウズウズ

加賀「えぇ…いいわ…」


その言葉と同時に駆逐艦たちは滑り台に群がる


加賀「…」グスン

赤城「加賀さんの気遣いが、私も嬉しいわ」

赤城「今度一緒に大二郎に行きましょう」

加賀「はい・・・」



瑞鶴「…」

加賀「五航戦…」

瑞鶴「…私が好きなのは不埒な真似をした提督への爆撃よ……」

加賀「…」

瑞鶴「手伝ってくれるんでしょ?」

加賀「…」グスン

加賀「もちろんよ」

瑞鶴「さっきは酷いこと言ってごめんね?攻撃隊発艦はじめ!!」バユウ

加賀「許すわ…」バシュウ


提督「うむ…仲良きこ―――ズガアァァァァン


それから加賀の顔には笑顔が増えた

人当たりもよくなったため、連携もうまくいき

我が鎮守府の戦力は大幅に上がった

だが俺は以前に見たあの笑顔に勝る笑顔はまだ知らない

時雨にそれを話すと…


時雨「確かにあの日提督の見た加賀の笑顔を僕たちはまだ知らない」

時雨「だから僕たちは燃えるのさ」

時雨「たくさん笑わせてやろうってね!」


そんな時雨の意気込みを快く思う

視線を外に向けると、駆逐艦たちと瑞鶴

そして加賀がいた

瑞鶴と加賀は仲良く二人で滑っている

以前の彼女達からは考えられない事だ


提督「人に心を打ち明けるのは難しいな…」

時雨「そうだね…」


加賀もいつか他の人の前であの笑顔を他の人に見せるのかと思うと

少々嫉妬する


時雨「言いたいことがあるなら言った方がいいと思うよ」

提督「そうだな…」


窓を開け、大声で彼女を呼ぶ。
彼女はそれに了承し滑り台を離れる





加賀「お呼びでしょうか…」


以前から言いたかった一言
ずっと言い淀んだ一言が今なら言えるかもしれない
加賀の勇気に背中を押されて…


提督「加賀…」

加賀「はい?」


澄んだ目をした彼女を見つめ
暖めた言葉というボールを彼女に投げかける
果たして彼女は受け取ってくれるだろうか…
どうか受け止めてほしい…あの日の笑顔で…








提督「今日夜戦しないか?」


加賀「お断りします、瑞鶴さん」

ガチャ

瑞鶴「はいはい爆撃でーす」


提督「お前はよん―――ズガアァァァァン



瑞鶴「いえーい」ぱちーん

加賀「美事だわ」ぱちーん




提督「…」プスプス

時雨「…失望したよ……」クスクス


くそ…瑞鶴め…
瑞鶴への恨みビームをためていると
加賀は俺の前にしゃがみ込んだ


加賀「提督、物事には順序があります…」

加賀「そして提督には足りない言葉があります」

加賀「それをお聞きした上でなら」

加賀「夜戦もやぶさかではありません」

提督「そうだったな…」


俺は立ち上がり彼女と向き合う。


瑞鶴「いいとこ見せてよね、提督さん」

時雨「二度も失望させないで欲しいな」


今度こそ…今度こそあの笑顔を…



提督「ひに―――瑞鶴「はいアウトー」ズガアァァァァン


提督「」


時雨「ふっ…ふふ・・・」

瑞鶴「加賀さんも大概だけど、提督さんも素直じゃないわね~」


お前らにもあるはずだ…ストレ―ト投げようとしたらシュートすることが
言葉にならない感情を、指先に込めて奴に送信する

しかし以外にも受信したのは彼女
床に座り込み、仰向けに倒れた俺の頭を膝に乗せ指を掴む


加賀「仕方のない人ですね…」

加賀「夜戦はお断りしますが、夕食ぐらいはご一緒しましょう」


時雨(あっ)

瑞鶴「あら」



加賀「今しばらく…お待ちしていますよ…」

加賀「提督…」



提督「あっ…」









口から届いた貴方の手紙

受け取り先は私の心

見上げた瞳に映りし光

真夏に輝く貴方はひまわり

貴方が私を照らすなら

私もあなたを照らしましょう




おしまい

なんとなく思いついたので書きました
短編もたまにはいいですね
失礼します

ひにんです

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