みちる「将棋やるわよ!」(47)

蒔菜「突然何言いだすのよさチルチル」

みちる「いや私、自分の才能に気が付いちゃったっていうかー」

幸「バカのみちる様には到底無理かと思われます」ニコッ

みちる「ちょっとサチー!あんた笑顔で人の可能性ないがしろにしてんじゃないわよー」

蒔菜「どこでそんなんに興味もったん?」

みちる「いやーさっきNTTで将棋見たのよ」

蒔菜「サッちん、電話会社でそんなんやってた?」

幸「多分NHKの事だよ蒔ちゃん」

蒔菜「全然違うじゃねーか!この脳内容量3kb!」

みちる「ちょっ!ファミコンのゲームよりないじゃないのよ!!」

幸「初手から大ボケをかますとは、みちる様中々の好手です」

みちる「地味に将棋用語使ってんじゃないわよ!ムキー!」

蒔菜「でもする事ねーし、チルチルにちょっと付き合ってもよくね?」

幸「そうだね」

みちる「あんた達将棋のルールしってんのぉ?」

幸「見たことならば....」

蒔菜「なんか駒動かして戦う?たしかそんなんだったのよさ」

みちる「ププー、まるっきり初心者じゃなーい、仕方ないから私が解説してあげるわー」

幸「そのルールブックわかりやすい?蒔ちゃん」

蒔菜「うおーわかりやすっ!おげおげ、大体わかったのよさ!」

みちる「ちょっと人の話聞きなさいよ!」

蒔菜「んー、やるにしても将棋盤と駒がないのよさ」

幸「テレテレッテテー、将棋セットー」

蒔菜「ありがとサチえもん!」

みちる「用意はやっ!」

蒔菜「早速一局やってみるのよさ!」

みちる「ふふん、私に勝てるかしらん」

蒔菜「えっ、チルチル将棋できんの?」

みちる「いやいや、私から提案したんですけど!」

蒔菜「まぁ、しゃーなしな?」

パチッパチッ

幸「振り駒の結果、先手番がみちる様に決まりました」

蒔菜「なんか本格的なのよさ」

みちる「さぁ行くわよ!ていっ!」パチッ

幸「先手、5六玉」

幸「ここまで、一手をもちまして蒔ちゃんの勝ちです」

蒔菜「マジで話になんねーのよさ」

みちる「えー!?さてはあんた達グルね!」

みちる「イカサマなんて通用しないんだからね!」

蒔菜「やっぱ全然ルールわかってなかったのよさ」

幸「みちる様、王は全方位に一マスずつしか進めませんよ」

みちる「嘘!?全然役に立たないじゃない!こんな駒リストラよ!」

幸「みちる様、これは王がいないと成り立ちませんよ」

蒔菜「ちょっとこの金髪教育しなおす方向で行こうぜサッちん」

幸「御意」

ーーーーーーーーーーー
蒔菜「だから2歩だっつってんだろ!」

みちる「こうしないと負けるじゃないのよ!」

由美子「あら、何やってるの?」

幸「こんにちは榊さん、将棋ですよ」

由美子「またしぶいゲームしてるのね.....」

みちる「んお?なんだよし子」

由美子「よし子じゃない!」

由美子「私将棋はちょっとわからないわね....」

由美子「チェスならよくやるんだけど」

蒔菜「えっ?あれ二人用のゲームじゃね?由美ちゃん何言ってんの」

由美子「知ってます!」

幸「多分CPUと遊んでもらってるんだよ蒔ちゃん」

蒔菜「おめーPC以外友達いねーのか?」

由美子「います!!います!!!!」

由美子「いるもーん!!」バンッ

蒔菜「あーあ、外に出ていっちゃったのよさ」

幸「友達でも探しに行ったのでしょうか.....」

みちる「ちょっとぉ、よそ見してないではやく次指しなさいよ!」

天音「みんなー!おやつできたよー!!」

蒔菜「yeaaaaaaah!!今日はシュークリームなのよさ!」

天音「ん?あんた達将棋やってんの?」

蒔菜「いやーチルチルがやるって言い出してさ」

天音「みちる強いの?」

蒔菜「多分まだ猫が指したほうが手ごたえあるんじゃね?」

みちる「ムキー!まだ私の王詰ませたことないくせに何言ってんのよー!」

幸「すべて反則負けですからね、王手すらかかっていません」

蒔菜「天姉は将棋わかるの?」

天音「私結構やったよ?初心者には負けないかな」

幸「意外ですね、天音さんに将棋の経験がおありとは」

天音「結構面白いからね、久しぶりにやりたいねー」

蒔菜「天姉も一緒にやるのよさ!」

天音「うんうんやろやろ!!4人いるし、どうする?総当たり戦にする?」

蒔菜「それで行くのよさ、じゃあ最初のカード決めるのよ?」

みちる「ねぇ!まだ対局終わってないんだけど!」

幸「おっとっと、手が滑ってしまいました」ガッシャーン

みちる「ぎゃーー!!何すんのよ幸!絶対わざとでしょ!!」

幸「みちる様、ホイップとカスタードが入ったダブルシュークリームですよー」ヒョイッ

みちる「ちょっ投げ....」パクッ

みちる「何これすごくおいしい!もっと頂戴!」ムシャムシャ

天音「犬かアンタは....」

幸「では最初の対局者のカードをこちらのくじ引きで決めさせてもらいます」

蒔菜「んーどれどれ、うおー!天姉とだ!!」

天音「蒔菜が相手かー、お姉さんとしちゃ負けられない対局だねー」

幸「....」ジーッ

みちる「何よその『うわぁ、こんなルールも覚えられないようなチンパンジーが相手かよ』みたいな顔は!」

幸「すごいです!表情だけですべて心の内を読んでしまうとは、この小嶺幸、驚愕してる所存です」

みちる「ム カ つ く ---!!見てなさい、私の駒が躍動する姿を!」

幸「はいはい、せめて一回ぐらいは王手をかけてくださいね」

天音「それじゃどっちのカードから先にやる?」

幸「いえ、こちらは100円ショップの将棋盤がありますので同時進行で」

みちる「え!安っぽ!!私こっちの豪華な盤のほうがいいんだけど!」

幸「みちる様、シュークリームです」ヒョイッ

みちる「うまうま♡」パクパク

蒔菜「早く始めるのよさー」

天音「じゃあ先攻は蒔菜でいいよー」

蒔菜「わかったのよ、うりゃっ!」パチッ

天音「ふむ、ではでは私はこれで」スッ

蒔菜「うえっ!?7八飛車?」

天音「四間飛車しらないの?」

蒔菜「なんだそれ?」

幸「私が説明しましょう」

幸「将棋の攻め方には大きく分けて振り飛車、居飛車があります」

幸「居飛車は飛車が初期位置に留まり戦う、のに対して」

幸「振り飛車は序盤に位置を変えます」

幸「どこに留まるかは様々で、三間飛車、中飛車、右四間飛車、向かい飛車等など」

幸「さらにその形から派生する戦い方も様々なのです」

幸「天音さんが選んだ四間飛車だと角交換四間飛車というのが派生の戦法で代表的です」

幸「それは序盤に角交換をしたことから攻めが早く展開の激しい将棋になるのです」

蒔菜「ほえー」

幸「ですが、振り飛車は基本的に相手の出方を待ち、カウンターを狙うものなのです」

幸「俗に受け将棋ともいいます」

天音「そうそう、私の将棋は基本的にサッちゃんの言う受け将棋なの」

蒔菜「ドMの天姉にはピッタリな戦法なのよさ」クスクス

天音「あ?いてもうたろかワレ」パチッ

蒔菜「普通に角交換すんのかよ!」

みちる「ちょっとぉ、サチー、あんたの番なんだけどー」

幸「みちる様、角は前には進めません」

みちる「えぇー!!またぁ!?」

幸「こっちの台詞です」

幸「今から私が指導碁ならぬ指導将棋を指してあげましょう」パチッ

みちる「ぐぬぬ....サチのくせに生意気な」

ーーーーーーーーーーー
天音「王手」パチッ

幸「うっ....、この銀を取ると詰み」

幸「ありません」ガクッ

天音「やったー!全員に勝った!」

蒔菜「天姉強すぎなのよさ....、こっちは全然攻められないし」

天音「蒔菜は攻めが素直すぎるのよ、もっと勉強すれば強くなると思うよ」

蒔菜「よぅし、サッちん今日は徹夜で対局すっぞ!!」

幸「レンジャー!」

みちる「ぐやじい!!なんで全敗なのよ!」

蒔菜「ルール覚えたのはいいけどチルチル弱すぎなのよさ」

幸「みちる様には少し難しすぎますね、このゲームは」

天音「みちるの気持ちわからないでもないかなー、これ負けたらすっごく悔しいもん」

幸「安心してくださいみちる様、私がこれから指導をしてあげますので」

みちる「いいもん!!誰の手も借りないもん!覚えときなさいよあんた達!」タッタッタッ

幸「あっ、みちる様!」

蒔菜「拗ねて行っちまったのよさ」

天音「みちる.....」

みちる「ぐぬぬぅ....」

リサ「みちる、負けて悔しいの?」

みちる「ぐ や じ い !!」

リサ「一緒にやらない?将棋」

みちる「え、リサ将棋できるの?」

リサ「今日見ててルールも一応把握したし、考え方も大体わかった」

みちる「すごいね、私なんか全然だよ....」

みちる「リサが指してよ、そしたら絶対....」

リサ「私がもし勝ったとして、キミはそれで気が晴れるの?」

みちる「それは....」

リサ「みちる、キミと私は一心同体」

リサ「キミが怪我をしたら私は痛いし」

リサ「キミが笑えば私も楽しい」

リサ「だからキミが悔しかったら私も悔しい」

みちる「リサ....」

リサ「私達、友達じゃない?」

みちる「うん」

リサ「私はいつもキミのこと見守ってるから」

リサ「一緒に勉強して一緒に強くなろう?」

みちる「うん....うん、ありがとねリサ」

みちる「私やる」

リサ「なら本屋に行って将棋の参考書買いに行こう」

みちる「うん!よし、俄然燃えてきたわ!」

リサ「ふふふ、キミは調子いいんだから」

ーーーーーーーーーー
リサ「ここはどう指す?」

みちる「ここに銀将を打って....」

リサ「違う、今キミは必死の状態、つまり王手になる手しか指せない」

みちる「えー....、どうしたらいいの」

リサ「まず銀をここに打つ」パチッ

みちる「タダじゃない!」

リサ「でもこの手は相手が銀で防ぐしかないから逃げ道がなくなる」

リサ「それで飛車で金を取って捨てる」パチッ

みちる「飛車がとられちゃうじゃない」

リサ「そう、言い換えれば私はとるしかない」パチッ

リサ「でもその取った金を玉頭に打てば詰み」パチッ

みちる「わー本当だ、詰んでる」

リサ「コストを払ったならそれに見合う利益を取りに行く」

リサ「これが戦略ゲームの基本なんだよ」

みちる「はえ~、すごいね」

リサ「でもみちる、キミは本当に強くなった」

リサ「詰みの手順が見えてさえしてれば本来キミの勝ちだ」

みちる「えへへ、そうかなぁ....、リサが教えてくれたからだよ」

リサ「そろそろあの子たちにリベンジしてもいい頃なんじゃないかな」

みちる「よし!絶対勝つんだからね!」

リサ「応援してるよ」

テレビ「後手、3五歩」

蒔菜「あの眼鏡のおっさん苦しそうな顔してえげつない手指すのよさ」

幸「やっぱりプロは違うね」

みちる「マキナーー!!勝負よ!」

蒔菜「お、チルチルじゃん、最近部屋に引きこもってたから心配してたのよ?」

蒔菜「んで、今度は何?麻雀、オセロ、バックギャモン?どうぶつしょうぎ?」

みちる「違うわよ!本将棋よ本将棋!!」

幸「あの飽きっぽいみちる様がまだ続けていたとは、意外です」

蒔菜「どれどれ見てやろう、サッちんお茶いれてきて」

幸「緑茶だね」

みちる「もう前までの私とは違うんだからね!」パチッパチッ

蒔菜「威勢はいいから将棋で示してほしいのよさ」パチッパチッ

蒔菜「(ルールも覚えられなかったチルチルに負けるはずがないのよさ)」

ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー

幸「....」

蒔菜「....」

天音「夕飯できたよー...、ってあれ?また将棋やってんの?」

天音「....ていうかどうしたの?二人とも目を丸くして」

蒔菜「負けた.....」

天音「へ?」

蒔菜「チルチルに負けたーーーーーー!!!!」

天音「えぇぇぇぇぇぇ!!!」

みちる「やった!3連勝!」

蒔菜「まさかこんなに強くなってるとは思ってなかったのよさ...」

幸「今ここにいるのは本当にみちる様なのでしょうか....」

幸「みちる様、りんごが2つ、みかんが3つありました」

幸「合わせていくつですか?」

みちる「6つ!!」

幸「こ、これは....間違いなくみちる様です....!」

天音「なんで将棋ができて足し算ができないのよ.....」

天音「でも意外、まさかみちるが勝つだなんて...」

蒔菜「認めらんねーのよさ!!」

みちる「まぁ才能の差って奴かしらねー」

幸「今までカースト底辺だったみちる様が...」

蒔菜「うおー、サッちん!その胸で泣かせてくれ!!」

幸「あっ////、泣くのはいいけど揉まないで蒔ちゃん」

みちる「もう負ける気がしないわね!!」

天音「完全に天狗になってるわね」

天音「あれ、誰か来たみたい」

??「あれ、ここは...どこでしょう」

蒔菜「えっ...」

幸「羽生善治先生!?」

天音「嘘!?」

みちる「誰よそれ」

天音「あんた知らないの?将棋をあまり知らない人でも知ってる有名人よ?」

幸「では無知なみちる様に簡単なプロフィールを」

幸「羽生先生は、ほとんど勝率が8割を超すという超強豪棋士なのです」

幸「序盤中盤終盤すべてにおいて隙が無く、どんな戦型も指しこなすオールラウンドプレイヤー!」

幸「数々の指した局面の中に見える妙手とも思える手が魅力で、実はそれは読むのが難しい好手なのです!」

幸「それに魅了されたファンはきっと数しれないはずです...」

みちる「何かよくわからないけどすごいのねー」

羽生「いえ、私は別に妙手と思って指してるわけではないですけどね、ええ」

蒔菜「ここで会ったのも何かの縁なのよさ!サインくれ!」

幸「私もお願いします!!」

羽生「ええ、いいですよ」キュッキュ

蒔菜「やったーサインもらったのよさ!!」

幸「ヤフオクだね、蒔ちゃん」

天音「あんたら最低ね...」

天音「というか羽生さんみたいな人がどうしてここに?」

羽生「ええ、実はですね、とある用事でこの辺りに来ていたんですけども」

羽生「何か強い棋力というかそういうものを感じましてね」

羽生「気が付けばこの施設に無意識に惹きつけられてましたね、ええ」

幸「その強い棋力とは...」

羽生「あっ、あなたですね、ものすごい棋力を感じます、ええ」

みちる「わ、私!?」

羽生「長年将棋で数々の棋士と関わっているのでー、見た感じで大体棋力がわかるんですよ、あはは」

天音「まさかそこまでみちるの実力が...」

蒔菜「納得いかねーけど、すげーのよさ...」

羽生「時間よろしいですかね?よろしければ一局指してもらいたいんですけど...」

みちる「ははははは、はい!!」

幸「振り駒の結果、先手番がみちる様に決まりました」

幸「持ち時間は10分です、では始めてください」

羽生「よろしくお願いします」

みちる「よ、よろしくお願いします」

天音「みちる、頑張って!!」

蒔菜「美浜の星になるのよー、チルチル!!」

みちる「ま、まかせときなさいよ!」

パチッパチッ

みちる「これでだいぶ優勢に...」

バチッ

幸「後手、6七歩」

蒔菜「あ、これは激辛なのよさ...」

天音「さすがプロ...」

みちる「あぁ、もうダメ...」

リサ「みちる」

みちる「リサ...」

リサ「さすがにプロの実力には敵わないよ、しかもトップ」

みちる「そんなの...わかってるけど」

リサ「...もしかして勝ちたいの?」

みちる「.........」

リサ「フフッ、すごい身の程知らずだね」

みちる「わ、悪かったわね!どうせ私はバカですよー!」

リサ「まぁたしかにこんなできすぎた展開も珍しいし」

みちる「リサ...力を貸して」

リサ「一緒に指そう、どうせなら全力を出したいよね」

みちる「ありがと!!」

リサ「じゃあ時間も惜しいし、頑張ろう!!」

みちる「うん!」

羽生「(多分これ勝ちましたね、ええ)」

羽生「(あまりにも手が凡庸...私の見間違えでしたかね、ええ)」

みちる「」ゴゴゴゴゴ

羽生「なっ!?」

羽生「(棋力が上がっていく5000...6000...8000!?)」

羽生「(やはり見間違えなどではなかった!この娘、一体何者!?)」

みちる「」パチッ

幸「先手、5五角」

天音「上手い受け、あんな手があったなんて...」

羽生「(上手く受けられてしまった)」

羽生「(このままでは攻めが途切れて、形勢がひっくり返ってしまう!)」

パチッパチッパチッ

みちる「」バチィッ

羽生「は...」

幸「せ、先手、7二金」

羽生「(シ)」

羽生「(シビれましたぁーーーーーーー!!)」

羽生「負けました」

幸「ここまで、86手を持ちまして、みちる様の勝ちです」

天音「...」

蒔菜「...」

幸「...」

みちる「か、勝ったーーーーー!!!」

羽生「対局ありがとうございました、まぁそうですねぇ、あの手はシビれました、ええ」

羽生「では私はこれで、またお会いしましょう、ええ」

天音「すごいよみちる!プロに平手で勝つなんて!!」

蒔菜「神なのよさ!!チルチル神!!胴上げ不可避!」

幸「みちる様...こんな立派になられて」ホロリ

リサ「勝ったねみちる!」

みちる「やったわね、リサ!!」

リサ「私達の絶え間ない努力が実を結んだんだよ!!」

みちる「将棋やっててよかった!」

みちる「この勝った時の快感をみんなにも知ってほしいわね!」

リサ「さぁそこのキミも」

みちる「将棋やるわよ!」

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