店員「メニューです」ｽｯ

冬馬「あ、ありがとうございます」

冬馬(……なんか男の隠れ家的なところに行こうと思って裏道のカレー屋に入っちまったが)

冬馬(客俺しか居ねえぞ……)

「ここ、相席いいかな？」

冬馬「……ああ、1人は寂しいから別にいいぜ」

「いやあすまないねえ。僕も1人で食べるのは少し抵抗があったから」

冬馬「……ってアンタ善澤のおっさんかよ」

善澤「やあ、久しぶり冬馬君」

冬馬「…………」

善澤「……バレンタインデーはどうだった？」

冬馬「あァ！？」

善澤「ご、ごめん」

冬馬「……いや、いいんだけどよ」

善澤「……うん」

冬馬「…………」

善澤「…………」

冬馬「…………だよ」

善澤「ん？」

冬馬「ゼロだってんだよ……！！」

善澤「」

善澤「……いや、それは流石に嘘だろう？」

冬馬「……確かにファンからは貰った。貰ったけどよ……何か違えだろ……」

善澤「ああ……そういう」

冬馬「しかも何か混入してたらダメだからって全部廃棄された」

善澤「…………」

冬馬「…………それだけだ」

善澤「…………」

冬馬「…………」

善澤「……とりあえず何か注文しようか」

冬馬「……ああ」

善澤「じゃあ僕は『野菜と愛情たっぷり店長特製カレー』で」

冬馬「……グリーンカレー」

善澤「あ、後ラッシーも2つ頼むよ」

店員「かしこまりましたー」

ﾀｯﾀｯﾀｯ

冬馬「…………」

善澤「…………」

冬馬「……俺さ」

善澤「……なんだい？」

冬馬「アイドルになってからプライベートで女と喋ったこと無え」

善澤「…………」

冬馬「厳密には喋ったことあるけど天海たちに喧嘩売っただけだし」

善澤「…………」

冬馬「…………」

善澤「……まあそれは君がアイドルとして忙しかったから」

冬馬「でも12月に315に移籍してから仕事減ったじゃねえか」

善澤「…………」

冬馬「…………」

善澤「……タバコ吸っていいかい？」

冬馬「ダメ」

善澤「そう……」

善澤「…………」

冬馬「…………」

善澤「……で、でも315プロにも女の子が居るじゃないか！！ ほら、あの水嶋咲ちゃんとか」

冬馬「……女の子モドキだろ」

善澤「……そうだけども」

冬馬「しかも俺あいつとあんまり仲良くねえし」

善澤「…………」

冬馬「……ぶっちゃけ北斗と翔太ぐらいしか友達と呼べる友達が」

善澤「もういい！！ もういいよすんだ冬馬君！！」

冬馬「…………」

善澤「…………」

冬馬「…………」

善澤「……春香ちゃんとかは？」

冬馬「……12月に1回喋ったっきり」

善澤「……うん」

冬馬「その時にライブのチケット渡したけどよ……」

善澤「うん……」

冬馬「何故か我那覇が来てくれたぜ……」

善澤「響ちゃんは可愛いなあ……」

冬馬「ああ……わざわざサイリウムまで用意して来てくれてよ……」

善澤「健気だなぁ……」

冬馬「でもライブが終わった後に楽屋まで差し入れしに来ようとしたらスタッフに止められたらしいぜ……」

善澤「響ちゃん……」

冬馬「『うがああああ！！ 自分我那覇響だぞ！！ アイドルだから冬馬たちの関係者だぞ！！』……って言ってたが変装してたから誰だかわかんなかったぜ」

善澤「響ちゃんは鈍臭いなあ……」

冬馬「我那覇はいいヤツだぜ……」

善澤「そうだね……」

冬馬「……でもなんで我那覇なんだ」

善澤「多分春香ちゃんが横流ししたんじゃないかな」

冬馬「横流しって……天海が我那覇に転売したってことか？」

善澤「いや、ただ渡しただけだでお金とかは動いてないと思うけど……」

冬馬「でも横流しって金払って我那覇がチケットを天海から買うってことだよな……」

善澤「ごめん間違えた……」

冬馬「大丈夫か芸能記者……」

善澤「穴掘って埋まりたいよ……」

冬馬「荻原みてえなこと言ってんじゃねえよ」

善澤「荻原じゃなくて萩原だよ……」

冬馬「マジかよおっさんの資料には荻原って書いてたぞ」

善澤「それ多分黒井のミスだよ」

冬馬「もうボケが進んでんのか……」

善澤「普通オギとハギって間違えないからね……」

冬馬「なんかおぎやはぎみたいだよな……」

善澤「寒いよ……」

冬馬「すまん」

店員「野菜と愛情たっぷり店長特製カレーとグリーンカレー、ラッシー2杯でーす」

善澤「あ、どうも」

冬馬「……ン」

店員「……後これもどうぞ」ｽｯ

冬馬「これは……？」

店員「私からのサービスですよ」

冬馬「……！！ アンタ……」

店員「オカマ店長の親戚から頂いたマカダミアナッツです☆」

店長「いっぱいあるから気にしないでいいわよ〜」

冬馬「……ああ、うん。あざす」

善澤「…………むふっ」

店員「冗談ですよ。はい、これ」ｽｯ

冬馬「……チロルチョコ？」

店員「今手元にこれしか無かったんですけどですけど……315プロでも頑張ってくださいね！！ じゃ！！」

冬馬「お、おう……」

善澤「……ははっ、良かったじゃないか冬馬君」

冬馬「ああ……涙が出そうだぜ……」

善澤「しかもあの子中々可愛いかったじゃないか」

冬馬「ああ……でもこれチーズ&チーズ……」

善澤「……絶対にゲテモノだよねそれ」

冬馬「……しかも消費期限切れてる」

善澤「…………」

冬馬「…………」

善澤「……ははっ、そんな時もあるさ」

冬馬「……チクショウ」



おわり