真姫「ファインダーの先」 (59)

真姫ちゃん主人公、時系列としては星座編URが出た頃で。
さくさくいっくにゃー


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真姫「………授業早く終わって、かつ練習なくて帰ってきたはいいけれど」

真姫「ビックリするくらいに暇ね……」

真姫(あれ、確かやりたかったことを学校で考えていた気がしたけど………何だったかしら……?)

真姫「…………。あ、そうだ、思い出した」




真姫「ええと、何処にしまったかしら……」ガサゴソ

真姫「……あった。これと後は……」

真姫(普段使っているポーチに携帯とお財布入れて。……着替えるのは面倒臭いし制服のままでいいかしら?あ、でも下校一応寄り道禁止か……セーターに着替えて、……だったらスカートも、確か頂き物の制服にぴったりなのが……)

真姫「………まあまあ、ってとこね」

真姫(いっそ私服に着替えちゃえばよかったかしら……ま、いいか)

真姫「ママー、少し出掛けてくるわ」
ハイハイー


真姫「……」スッ

真姫「……折角パパの知り合いの方から貰ったデジカメ、棚の奥で腐らせてしまうのは勿体無いものね」

真姫「前々から何か撮りたいとは思っていたけど、μ'sの風景は希が撮っちゃうし………普段は携帯が有るから使わないしで中々機会もなかったから、丁度良いわ」

真姫「さーて、この真姫ちゃんに撮られるに相応しい場所は果たしてあるのかしらねー?」

真姫(人通りも殆どと言って良いくらい無い道だし、行儀悪いけど歩きながらカメラの電源を入れて、っと)

真姫「あ、前の充電の残り、まだあったみたいで良かったわ……これで電池切れとか洒落にならないもの」

真姫「使う前に、折角だから今の状況に合わせてカメラをカスタマイズしたいわね。昔状況に応じて変えられるって聞いたことがあるし」

真姫「ええと………?シーン設定?たいまー?ここ押すのかしら?」ポチッ

真姫「ええ、わっ、変なの出てきた!へ?エフェクト?ちょっ、ナニこれ聞いてないんだけど!意味わかんない!」オロオロ

穂乃果「あ、そんな時は、右下辺りにある『back』っていう戻るボタンを押すといいよー」

真姫「わ、分かったわ!戻るボタン戻るボタン戻るボタン………back!あった!」ポチッ

真姫「………はぁ、やっと元に戻った。あっ、ありが……―――ってなんで穂乃果がここに居るのよ!?」ビクッ

穂乃果「え、今気がついたの?…いやあ、お使いの帰りに真姫ちゃん見掛けたから、つい声かけちゃった!」ニコニコ

真姫「そ、そう。……何にせよ助かったわ、ありがと」

穂乃果「いやあ、お礼ほどじゃないってー。でも、真姫ちゃんとデジカメ、ってなんだか珍しい組み合わせだね。それにその機種ウチん家のと殆ど同じものだしさ!他の人が使ってるのって久しぶりに見たよ」

真姫「私とデジカメを新しいユニットみたいに言わないで……色違いってこと?」

穂乃果「うん、多分ね。あ、真姫ちゃん貸して貸して!見てたら穂乃果もカメラで写真撮りたくなってきた!」

真姫「だっ、ダメよ!まだ一枚も……」

穂乃果「へ、撮ってないの?」

真姫「あ…その……。……うん」

真姫(……何だかダメな子みたいで、ちょっと恥ずかしい)

穂乃果「そっかあ……はじめの一枚は、やっぱり自分で撮りたいよね!じゃあ穂乃果にはまた今度使わせてよ!それなら……あ、良ければそのカメラの使い方、簡単に教えてあげよっか?穂乃果よくいじってるから、もうお母さんよりも詳しいですぜい」ニヤッ

真姫「………」

穂乃果「そ、そんなうさんくさい目で見ないでよー!悪い風にはしないからさー!」

真姫「いや、逆に言葉で怪しいってば…。そうね。じゃあ、お願いできる?」

穂乃果「あいあいさー!なんだか、真姫ちゃんに教えるなんて新鮮だなあ」

真姫「それ、先輩の口から出る言葉じゃないわよね……」

穂乃果「あ、あはは……いやあ、面目無いです……じゃあそこの電柱の所で……」



真姫「なら、このボタンでフラッシュを切って…」

穂乃果「そうそう!で、そこで切り替えができるから、上の所を捻ると」

真姫「あ……出来た。じゃあ、ここに設定すれば……」

穂乃果「その通りだよ。……おー、流石は真姫ちゃん飲み込みが早いね!まだ殆ど教えてないのに、大体のやり方覚えちゃった」

真姫「!と、当然でしょ!」

穂乃果「これで真姫ちゃんも晴れてカメラマスター!いやあ、穂乃果がお母さんに教えたときはもう大変で大変で……って、うわわもうこんな時間!?」

真姫「あれ、いつの間にか10分以上経ってたのね……」

穂乃果「真姫ちゃんに会う前にも大分寄り道してたから帰らないとマズいなあ……、じゃあ穂乃果そろそろ行くね?いい写真、撮れるといいね!」

真姫「え、ええ―――」


真姫「……あ、穂乃果ちょっと待って!」

穂乃果「?」

真姫(ここまでやって貰ったのに、何もしないのは失礼よね……)

真姫「………その……写真、撮ってもいい?」

穂乃果「へ?穂乃果の?」

真姫「………」コクン

穂乃果「……え、でも、試し取りはさっき消しちゃったし……一枚目だよ?何かもっと特別なものとか」

真姫「嫌なの?」ジトッ

穂乃果「滅相もないです!全然!」ブンブン

真姫「…じゃあ撮るわよ?」

穂乃果「サー!」ビシッ



穂乃果「穂乃果はピースでいいの?真姫ちゃん」

真姫「………えっと……」カマエ

穂乃果「?」

真姫「………」パシャッ

穂乃果「いきなりでしかも無言っ!?」

真姫「何よ!ダメなの!?」

穂乃果「だ、ダメじゃないけど……人を撮るなら掛け声は欲しいよ、やっぱり」

真姫「……はいチーズ、とか?」

穂乃果「うんうん」

真姫「次から気を付けるわ」

穂乃果「よしよし、じゃあもう一枚、真姫ちゃんも一緒に撮ろう!」

真姫「え?構わないけど……」

穂乃果「さっき教えたタイマー、って機能だよ。これを設定して、この塀のスキマに置いて、っと……これで、十秒後に自動でシャッター降りるんだ」

真姫「ふうん。便利な機能ね」

穂乃果「さーて、急がないと。どんなポーズを……あ、そうだ!真姫ちゃんいえーい!」ダキッ

真姫「うぇ!?く、くっつかないで穂乃」

穂乃果「真姫ちゃんいえーい?」ユサユサ

真姫「………うぅ」

穂乃果「いえーい!?」ユサユサ

真姫「ああもう!いえーいっ!」

パシャッ――



穂乃果「じゃねー!」

真姫「……ええ、また明日………」

真姫「………ハァ」

真姫「すごい疲れたけど………穂乃果のお陰で、なんとかカメラの使い方をマスター出来たわ」

真姫「で、結局撮れたのが満面の笑みの穂乃果の写真……有明笑顔っていうのかしら?後、私と穂乃果のツーショット………」

真姫「…………」ジーッ

真姫(……まあ、悪くないんじゃない?)

真姫(その後、こうして辺りを伺いながら、当てもなくさ迷っている訳だけども)

真姫「さて、次は何を撮ろうかしら……気が付けばいつの間にか、よく知らない道まで来ちゃったわ」

真姫「まあ、この真姫ちゃんに限って迷ったなんてこと有り得ない……」

真姫「……………………」

真姫「…………筈…」

真姫「…………。無事に帰れればいいんだけれど……って、あれ?」

真姫(あのマンションの壁に貼られているポスター、よく見たらオトノキのじゃない)

真姫(そういや、エリーと希が前にポスター頑張って作ってたわね……オープンキャンパスの案内のヤツ)

真姫「………」

真姫「折角だから、撮りましょ」

真姫「…………」カマエ

真姫「………はい、チーズ」パシャッ

真姫「………………」カクニン

真姫「…あ、ちょっとぶれたわね」

真姫「もう一度………」カマエ


希「なーなー、その台詞は人を撮るときに使うんやない?」ヌッ


真姫「キャア!?いきなりレンズの目の前に表れないでよビックリするわよ希っ!」

希「んー?いやあ、真姫ちゃんが一人で面白いことしてるのが悪いんよ♪」

絵里「真姫からしたらそんな理由で驚かされるこっちの身にもなりなさいよ、ってことよね。ハァイ、真姫」

真姫「エリーまで…何してるのこんなところで」

絵里「それは私達も聞きたいわよ?真姫こそ、制服のままこんなところでカメラなんか構えて……」

希「しかも撮ってるのはウチらが作ったポスター。ちょっとした不審者やん?」

真姫「…………別に何でもないわよ」

絵里「目を逸らしながら言われても……」

希「不審者マッキーやんなー」

真姫「て、てか先に質問したのはこっちなのよ?答えなさいよっ」

希「ああ、それはこれのためなんよっと」スッ

真姫「むぐっ!?……な、何………こへ、クへーフ?」

希「せやでー」モグモグ

絵里「ええ。美味しいでしょ?」モグ

真姫「……………」ゴクン

真姫「……まあまあね」

絵里「素直じゃないんだから……」

希「クレープが美味しいって評判のお店の車がそこの通りに来ててな?えりちに誘われて行ってきたんよ」

絵里「まあ、行ったかいはあったと思うのよねー。希のはイチゴソースだけど私はチョコソースのにしたわ。こっちも食べる?」

真姫「………くれるなら……」

絵里「ふふーん、やっぱり美味しかったのね?はいどうぞー」ニヤニヤ

真姫「……………」イラッ

真姫「………えいっ」モグモグモグ

絵里「あっ、そんなにいっぺんに食べないでってば!私の分が無くなるじゃない!」

真姫「しーらない。ゴチソウサマっと」ペロリ

絵里「あ、ああ………」ガクッ

希「真姫ちゃんはイチゴとチョコ、どっちが良かったん?」

真姫「イチゴね。当然でしょ?」

希「ふふ、やろやろー?」ニヘラ

絵里「こ、これだけ食べておいて……!もー!真姫ってばー!」

真姫「……まあ、チョコも美味しかったけど」

絵里「!でしょ!」ドヤチカ

真姫「……ふふ」クルクル

希「ふんふん、………で?」

真姫「…で、って?」

希「いや、ウチらの事情は話したやん?だから……」

絵里「あ、そうそう。今度は真姫の番ね。結局、そのカメラは何なの?」

真姫(誤魔化せなかった…まあ、隠すほどのことでもないわね。考えたら)

真姫「……別に。ちょっと撮るものを探してるってだけよ」

希「?真姫ちゃんの趣味って写真撮影だった?」

真姫「いや………違うケド」

絵里「へえ、なんだか珍しいじゃない?じゃあ、折角だから私達も撮ってもらおう………いえ、そうね……」チラッ

希「……?何?えりち」

絵里「……」ニヤッ

絵里「ねえ、真姫。希のこと、撮ってあげてくれないかしら?」

希「え」

真姫「ええ、まあ別に……構わないけど。なんで?」

絵里「さあて、ねー?」チラチラ

希「あ、いや、ウチはその……別に……撮らなくても……ね?えりちで十分……」アセ

真姫「………なんで希は焦ってるの?」

希「え?いや別にそんなこと全然全くもって無いよ?全然無いよ?」フルフルフルフル

絵里「もっしかっしてー、いっつも撮ってばかりの希サンは、撮られるの苦手だったりしちゃうのかしら?ねえねえー?」ツンツン

希「………えりち、分かって言っとるやろ………!」ジトッ

絵里「そりゃあ、かれこれ三年も一緒にいれば気づくわよ」

真姫「………なんか、今日のエリーは三割増しでウザいわね……?本当にそうなら希が可哀想よ。止めてあげなさい」

希「ま、真姫ちゃん……!」ウルッ

絵里「あら、ヒドイ言われようね?何時も撮られてばっかりな希に仕返しできるまたとないチャンスなのよ?活用しない手は無いでしょ」

真姫「あ、それもそうね。乗ったわ」

希「真姫ちゃぁん!?」ガーン


真姫「はい希、こっち向いてー」パシャッ

絵里「ほら希笑って笑って!ぎこちないわよー!」

希「あ、うう………!?」パニック

絵里「はい、そこでポーズ!」

真姫「決まってるわよ、もう一枚とるから動かないでね………」パシャッ

絵里「希、そこで腕を前に!」

希「ううっ……こ、こう?」スッ

絵里「そうそう!希!ハラショーよ!次はセクシーポーズに行きましょうか♪」

希「えっ?えっ!?」

絵里「希なら行けるわ!そう、そうよ!ハラッショォーー!!!」

真姫「流石希………この真姫ちゃんでさえ、つい見とれちゃうわ……!」

真姫「………………」パシャシャシャシャ


希「あ、う、うううう……っ


……ってなにやらせてんの!?二人の馬鹿!やめやめやめーっ!」ウガー

絵里「あら、ここまで?希にしてはよく持った方だし、最後まで流れで押し通せるかしらと思ったのだけど。あー、面白かったわ!」

真姫(…………。…あんまり行きすぎなのは消しておきましょう)ピロン

絵里「普段の撮影の時とか、生徒手帳の証明写真とかは平気なのに、ホント変な希よねー」

希「えりちのばかぁ……」クスン

絵里「ゴメンゴメン」ナデナデ

真姫「…………」

真姫「…………えい」パシャッ

絵里「?今何か撮った?」

真姫「別に、何にも撮ってないわよ?」

希「あーもう!真姫ちゃん!えりちのことも一杯撮ったって!ウチも加勢するから!」ビデオカマエ

絵里「ふふーん、じゃんじゃん来なさい♪」

真姫「………その仕返しは、なんか焼け石に水って感じだけど」

希「それならそれでいくらでも方法はあるんやよー!
えーりち!かしこいかわいいー?」RCE

絵里「エリーチカァ!」ドヤチカ

真姫(かしこくない……絶対かしこくない生徒会長の醜態がビデオカメラに納められてる……)パシャッ

希「ふ、ふふ……クレープで舞い上がってるえりちのテンションが戻ったとき……それが年貢の納め時や………!」ブツブツ

絵里「ペリメニとクレープは世界を救うのよー!」キャッキャッ

真姫「やけにテンションが高いのはクレープのせいだったのね……」

真姫(この二人は本当に受験生なのかしら……?)パシャッ

真姫(悩みとか無さそうで……)

真姫「………」

真姫(まあ、楽しそうだし……いっか)カメラオロシ

真姫(大分話し込んじゃったわね……あんまり暗くなる前に帰らないとだし)

真姫「じゃあ、私はそろそろいくわ」

希「えー、行っちゃうん?」

絵里「あ、真姫!やっぱり最後に私と希のツーショットお願いできる?」

真姫「……ええ、良いわよ?」カマエ

絵里「希、お願い・」

希「……はあ……仕方ないなあ、えりちは……」

絵里「考えたら私と希の二人だけってのも、なかなかないのよねー。いい機会♪」

希「うちからしたら災難でしかないよ……」

真姫(本当、幸せそうで何よりねまったく)

真姫「じゃあ……」

真姫「………」スゥ

真姫「―――ハイ、チーズっ!」

えりのぞ『いえいっ!』パシャッ


真姫「何だかんだでノリノリだったわね、あの二人」

真姫「希も最初は渋ってた癖に…」

真姫「ふふ、更に写真が増えたわね」ニヤ

真姫「写真集でも出せそうな希の画像の数々と、最後に撮った二人のピースの写真と………」

真姫(―――密かに撮った、絵里が希を慰めている写真)

真姫「……見ているだけで硝子の花園でも歌いたくなるわね」

真姫「あー、隠し撮りとかバレたら怒られそう、……」

真姫(………黙っておけばばれないわよね?)

真姫「…………」

真姫「……――ひーみーつのぶーらんこー……あーなたと……ゆれなーがらー……」

真姫「いーまー……♪」

真姫「…………」

真姫「…本当良くもまあこんな歌歌えるわねあの二人は。曲つけておいて言える立場じゃないけど」ハァ

真姫「海未もマトモなようでマトモじゃないということなのかしら。彼氏欲しいのかしらあの先輩。破廉恥破廉恥言ってるくせに…」

真姫「って、そうじゃなかったわね」

真姫「さーて、次は何を……」

ニャア

真姫「………?あ、」

真姫(猫、ね)

真姫(真っ白で、ちっちゃな猫が塀の上に――)

真姫「………可愛い」ウズ

ねこ「ニャー」

真姫(でも、野良は逃げられちゃうから撫でられないし……)ムム

真姫(……そうだ、折角なんだから写真に撮っておきましょう)カマエ

真姫(動かないで……お願いだから)

真姫(さん、にー……いち……)

真姫(はい、チー)

ねこ「ニャアッ!」タッ

真姫「あっ!路地裏に……」

真姫「だから心の中でお願いしたのに!逃げられたら意地でも撮りたくなるじゃないの!」ダッ


真姫「はぁ、はぁ」

真姫(分かれ道……どっちにいったかなんて見当も付かないし…完璧逃げられたわね)

真姫「猫……撮りたかったな」ハァ

真姫(まあ、また、野良猫なんて見掛けるでしょ)

真姫「さて、帰り道は―――」クルン

真姫「………あれ?」

真姫(どっちから来たんだったっけ私)

真姫「………………」

真姫(もしかしなくても、迷――――)

真姫「だからそんなことないってば!この真姫ちゃんが迷うわけないでしょうが!!」

真姫(…何はともあれ…………取り合えず、何か撮らなきゃ気がすまないわ)

真姫「…………まあ、路地裏も記念よね……」パシャッ

真姫(………でも、こんな物寂しいトコの写真なんて、撮ったって……)カクニン

真姫「…………?」

真姫(あれ?)

真姫(………………物寂しい、けど)

真姫(なんだか、ファインダー越しだと変な暖かみと言うか、深みがある気がする)

真姫(…………もしかして)

真姫「写真と現実とだと、見える景色って、違うのかしら……?」

真姫(だとしたなら―――)

真姫(………ちょっと、面白いわね)クス

真姫「……。少し歩いてからもう一度、撮ってみましょ」テクテク



真姫「………あ、出口見えた」

真姫(まだそんなに経ってないと思ったけど結構歩いてたのね……そうそう、出る前に、一枚風景撮っておきましょうか………って、あ)

真姫「人……出てきちゃった」

真姫(建物の裏口っぽいところから、メイドさんが二人……ゴミをもって、背筋の伸びた長髪の人と、灰色のとさかみたいな――)パシャッ

真姫「あっ」

真姫(間違えてシャッター押しちゃった!?)

「……っ、誰です!?って……」

「あれ?真姫ちゃん?こんなところで何してるのー?」

真姫「………め、メイドのことりに海未……?」

真姫(……ああ、ここ、ことりのお店の横道なのね……何となく見覚えあったのよ、出口の先の景色――)

真姫「って海未がメイドっ!?」バッ

海未「り、臨時のバイトですっ!普段からじゃないですから!」カァァ

真姫「そ、そうなの……?」

ことり「うん、ことりがお願いしたの。人手が足りなくて…」エヘヘ

真姫「……ふぅん?まあ、お疲れ様。やっぱり似合ってるわね、二人とも」

ことり「えへへ、ありがと」

海未「有り難うございます…ちょっと、恥ずかしいですがね」

ことり「ダメだよ海未ちゃん、メイドさんが恥ずかしがってちゃ!」

海未「い、いいじゃないですか……私は裏方ですから滅多に人前には出ないのですし……」

ことり「そうじゃなくて、心掛けが大事なの!ご主人様に対して、見えないところでも敬意を払わなくちゃ。対価の分だけ尽くさないことは、失礼に値するんだよ」チラッ

真姫「…………?」

ことり「…………」ジーーーーーーーッ

真姫(こ、ことりからなんかプレッシャー感じる……同意しろって、こと?)

真姫「………そうね。メイドになりきれてないメイドになんか仕えられたって、皆嫌な気持ちになるだけよ」

真姫(まあ、知らないけど――ことりが嬉しそうにサムズアップしてるからこの台詞で正解のようね)

海未「う………それも、そうですね。精進します……」シュン

真姫「…………」ウグ

真姫(沸き上がる罪悪感……)

真姫「……でも。恥ずかしがってる海未も……メイドとして、それはそれでアリなんじゃないの、ことり?」ボソボソ

ことり「う……まあ、そうなんだけどねえ……これ、アイ活と同時進行の海未ちゃん恥ずかしがりや体質改造計画の一歩だから、退くわけにはいかないんだよ………」ボソ

真姫「………そういうこと……」

真姫(わざわざ海未を誘うなんて変だと思ったのよ)

海未「?」

真姫(確かに、まだライブでも時たま恥ずかしがってたりしてるものね)

ことり「……まあそれとは別にことりの個人的趣味も含まれるけど」

真姫「そんなのは含まないで捨てなさい!」

海未「あの……?」

ことり「……だからこそねっ!ことりとしては、折角メイドとしてバイトしてるんだから、海未ちゃんにはお願いされて写真撮られたりしても、柔らかい笑顔で対応できるくらいにはなってほしいなあって、そう思ってるんだけどさー」ニコー

海未「あ、うう……スミマセン、なかなか上手く行かないです……」ショボン

真姫「ふぅん…………あっ」

真姫「……なら――撮ってあげましょうか?今ここで」チャキ

すいません、サクサク行くつもりでしたが一旦切ります。星座編りんまきURも出る一年生限定勧誘は今日までですので皆様是非

>>1です、再開サクサク行きます


海未「…おや、カメラ……?真姫が何故?」

ことり「あれ、それ穂乃果ちゃんのカメラにそっくりだねぇ」

真姫「ええ、穂乃果のとは色違いみたい。……別に理由はないけど、今、このカメラで、何か撮ろうと思って歩いているの。だから、よければなんだけど」

ことり「ことりたちに被写体になってくれってこと?」

海未「……この服でですか?」

真姫「まあ、そうなるわね」

ことり「うーん………本当はメイド服のことりの撮影は、店内で食べ物を注文しなきゃいけないんだけど、真姫ちゃんだし…店長さんにバレたら……んん、まあ、大丈夫、だと、思う!
でも、海未ちゃんは……大丈夫?」

海未「!?い、今すぐ着替え………っ………いえ、それではなにも変わらない……私、頑張りますね、ことり!……真姫、どうぞ撮ってください!いくらでも!どんどん!私から羞恥心が消え去る位に!!」ババンッ

真姫「一体どれだけ撮らせるつもりよ!?」ビクゥ

ことり(……ええと、前向きにはなったけど……果たして何枚撮ったら消えるのかなあ、海未ちゃんの羞恥心って)アハハ


ことり「あ、でも真姫ちゃん、ことり達早めに戻らなきゃだからあんまり居られないけど……大丈夫?」

真姫「そんなに時間とらせないわよ。二、三 枚撮らせて貰えれば、それで……」

ことり「了解ー、だよ!海未ちゃんも大丈夫?」

海未「ええ……さあ、お願いします」キリッ

ことり「海未ちゃん!メイドさんなんだから笑顔笑顔!」ニコー

海未「あっ、えっと、……こうですか?」ニタァ

真姫「何その気持ち悪い笑顔やめて」

海未「きもっ……!?」ガァン

ことり「ええと、海未ちゃん意識すると変になっちゃうからなあ……そうだねえ……」

ことり「海未ちゃん!ことりのまねっこしてみて!」

海未「まね……ですか?」

ことり「うん!えっとね……」

ことり「(・8・)」

海未「いや無理ですって!何ですその顔!?」アセアセ

真姫「……口ってこんな風に曲がるの……!?」


ことり「(・8・)ピュアピュア~」

真姫「逆にこっち撮りたくなるわ」パシャッ

ことり「さあ、海未ちゃんも真姫ちゃんもことりと一緒に、ね?」

真姫「無理に決まってんでしょ!私まだ人間で居たいの!」ウガー

ことり「えっ!?ことりも人だよ!?」

海未「あ……ふふっ……二人とも面白いです」クス

ことり「」ハッ

ことり「真姫ちゃんッッッ!」チュンチュンッ!

真姫「ええ、はいチーズ!」パシャッ

海未「きゃっ!?……ちょ、二人とも!?」

ことり「どう?真姫ちゃん撮れた?」ソワソワ

真姫「ええ、いい感じじゃない?」カチカチ

真姫「ほら………」ソッ

ことり「わっ、この海未ちゃんかーわいいっ!流石真姫ちゃん!これ、後でプリントしてくれないかなぁ……?」

真姫「ええ、別に構わないわよ?」クルクル


海未「えっと、その、……いきなり撮影ってずるくないですか?」

ことり「そんなことないよ?」

海未「いやでも」

ことり「そんなことないよ?」

海未「だって………」

ことり「そんなことないよ?」

海未「………そうですね」

真姫(押しきった………)

ことり「まあ、それはさておき。こーれーで、海未ちゃんにも、メイド服でもちゃんと笑顔は作れるって分かったもん。働いてるときにも、ちゃーんと、笑ってね?」

海未「う、でもやっぱり私には無理ですよ……」

ことり「むむ、これはもう……特訓、しかないね」

海未「と、特訓!?そんな、習い事でも無いのですし……」ワタワタ

ことり「甘いよ海未ちゃん!チョコにハチミツかけたくらいあまあまだよっ!」

真姫(……ことり、ノリノリね……)クス

真姫「そうね、パワーアップするのに特訓は不可欠よ、海未。μ'sだって、同じでしょ?練習して、出来るようになることも多いわ」

海未「そ、それはそうですけど……」オドオド


真姫「………そうね…………」

真姫「……ねえ海未、こっち見て」

海未「はい?なんで―――」

真姫「はい、チーズ」パシャッ

海未「」ビクッ

海未「だ、だからいきなり撮らないでくださいッ!」

真姫「悪いわね……ことりー」

ことり「はいはーい!」

真姫「はい、チーズ」パシャッ

ことり「ん?いえーい!」ピース

海未「……。……。何がしたいんです?真姫」

真姫「ええと…今、ことりも同じように不意打ちで撮ったけど、動揺しなかったでしょ?」

海未「それはまあ、ことりは慣れているからで……」

真姫「だから、こうして不意打ちに撮ることを何度もすれば、早くに慣れるかも、っていう提案よ。それこそ……特訓、って感じだけど」

海未「……まあ、一理はありますが……それ、いつ特訓するんですか……?お店では無理ですよね?」

真姫「…………」

真姫(それもそうね。考えたら海未は今すぐ慣れなくちゃいけないのに、この案じゃダメかも……)

真姫「じゃあ、別の………」

ことり「うん、成る程、一理あるかも。早速お店の中で試してみよう……ことり頑張るね!ガンバって撮影の許可勝ち取って、海未ちゃんのこと、お仕事中にもいっぱい撮って、慣れさせてあげるから!」

海未「えっ?」

真姫「えっ」

ことり「安心して海未ちゃん、このミナリンスキーにお任せだよっ!」ドヤッ

海未「………い、いやいやいやいや!む、無理ですよ!万一許可出ても営業に支障が出ますって!真姫、撤回してくださ―――」

ことり「早速店長さんにデジカメ借りなくちゃ!戻るよ海未ちゃん!」ズリズリ

海未「いやぁぁ!!嘘でしょう!?ことり、話を聞いてくださ―――」

ことり「~♪」ソシラヌフリ

海未「ことりー!?」

真姫「え、あの」

ことり「あ、真姫ちゃん、アイデアホントにありがとー!今度来てくれたらサービスするねぇ!」

真姫「あ、うん、ありがと……?」

海未「真ぁ姫ぃぃ!!!あ、明日の練習、覚えてなさ―――」ズリズリ

真姫「え、いや、その――」パシャッ

真姫「……あっ」

バタン


真姫(否定する間もなく行っちゃった……。……間違ってシャッターを切っちゃってとんでもない写真が撮れたし、いやこれどうすればいいのよ)

真姫「………」カクニン

真姫「………わ」

真姫(こ、これは人には見せられない……でも、二人には悪いけど、最高のショットね。ことりに引きずられる海未が凄いキレイな構図で撮れた)

真姫「……いや、引きずられる構図って何よ……」

真姫(ホント、疲れてるからかもしれないけど、なんだか二人ともハイだったわね……、私も少し、悪乗りしちゃったわ)

真姫「………明日は、海未からできるだけ遠くにいることにしましょ……」

真姫(………でも)

真姫(また、何枚か写真が撮れた。一覧を見れば、皆の色んな顔が写ってる)

真姫「……ふふ」ニッ

真姫(家を出たばかりの頃は、想像もつかなかったわね)

真姫「さーて、と。でも、折角なら、もっともっと撮ってから帰らないと……ね」

真姫「次は何処に行こうかしら?……」ピリリリ

真姫「………?メール?」


真姫(花陽から……えっと、今から、今日出た宿題の『星の動きの撮影』を、公園でやっちゃおうって、凛ちゃんと決めました。早い時間だけど、もう星も出ているから。真姫ちゃんもどうですか……ねぇ?)

真姫「そういやそんな課題も出てたわね……。!」

真姫(……丁度、手元にカメラ……)

真姫「……。……りょ、う、かい」カチカチ

真姫「………送信………っと」

真姫(まあ、撮影はまたの機会でもいいし……残りのメモリーは星に使いましょ)

真姫(……本当だ、まだ明るいのにもう星が見える)

真姫「……じゃあ、公園に行こうかしら?」

にこ「公園なんかになにしにいくのよー?」

真姫「そりゃ宿題の……―――ってにこちゃん!?」バッ


にこ「やっほ。あんたと会うなんて奇遇ね、真姫ちゃん。こんなところで手ぶらで何してんの?」

真姫「べ、別に何にも……にこちゃんこそ、その荷物……買い物帰り?」

にこ「ま、ね。夕飯作んなきゃなんないから……って、よく見たら手ぶらじゃなくて、あんたなんでカメラなんか持ってんの?何?」

真姫「あ、いや、これは………」アセ

真姫(わざわざ写真撮るためだけに出掛けた、ってわかったらにこちゃんのことだもの、からかわれるかも……!)

にこ「あーっ!もっしっかっしって……にこにーの美貌をわざわざ撮るために持ってきてくれたの!?でもごめんねぇ、にこ、今はプライベートだから、撮影はNGっていうかぁ~」

真姫「…………ソウネ、ゴメンネニコチャン」

にこ「ちょっとそこ、なんで棒読みに磨きがかかってんのよ」

真姫「別に…」

真姫(そもそも分かられる心配がなかった。にこちゃん変なところ抜けてるし)


にこ「む……しっ、仕方ないわねー!にこにーの広い心に免じて、特別に、と、く、べ、つ、に!撮らせてあげるわ!……ほらカメラ構えなさいよ!」

真姫「………」カチ

真姫「ちんちくりんのにこちゃん撮らなくたって平気だから別にいいわ」フッ

にこ「むきーっ!馬鹿にすんな!ちょっとそこに正座しなさいよ!」ジタバタ

真姫「嫌よ、なんでそんなこと……」

真姫「私がしなくちゃなんないのっ!」サッ

パシャッ

にこ「ふへっ!?」

真姫「……ふふ、にこちゃんのアイドルらしからぬ写真ゲット」

にこ「な、なんでシャッターボタン押してないのに写真撮れてんのよ……!って、あー!あんたいつの間にタイマーセットしてたの!?」


真姫「教えてもらったし、不意打ちの方が面白そうだなって思って……案外うまくいったわね。さすが私」

にこ「消せ!今すぐ消しなさい!にこのアイドル人生においての汚点になりかねないわ!」

真姫「ここでこれも穂乃果に教えてもらった、消さないためのロックをかけてみるわ」ピピッ

にこ「ぁぁぁ!真姫ちゃんの鬼!ひーどーいー!……もう、ちょっと貸しなさいよ!」バッ

真姫「あっ!返しなさいよにこちゃん!」

にこ「ほうほう……うちのカメラと大差ないのね、機能的には。なんか意外……よーし、ここはにこにーが直々に、真姫ちゃんのこと撮ってあげるにこっ!別にこれっぽっちもさっきの写真のこと恨んでないから気にせずとられるにこよ」

真姫「明らかに恨んでるじゃない!」

にこ「はいちーずっ!」パシャシャシャシャシャシャシャ

真姫「何か一杯撮れてない!?にこちゃん何してるのよ!」バッ

にこ「ぷっ、くふふ……!この真姫ちゃん面白すぎ……!」カチカチ

真姫「………っ、お返しに撮ってやるわよ!」サッ

にこ「にっこにっこにー!」バッ

真姫「ポージング早っ!?」パシャッ

にこ「ふふ、にこに死角はないわ……かかってきなさい真姫ちゃん!」

真姫「……上等よっ!後悔させてやるわ!」サッ

にこ「にこにーラブリースマーイルッ!にこにースペシャルにっこにっこにー!」

真姫「くっ、隙がない……!」パシャッ

真姫(それなら……!)

真姫「……あっ、あんなところに希が!」ビシッ

にこ「へ?希なんてどこにも……」

真姫「すかさずはいちーずっ!」パシャッ

にこ「ひゃぁっ!?……ちょ、騙し討ちなんて卑怯じゃない、真姫ちゃんのクセに!」

真姫「何とでも言いなさいっての!ふふん、このマッキーを出し抜こうなんて100年早いのよ!」

にこ「じゃあ天下のスーパーアイドルにこにーを出し抜こうなんて、真姫ちゃんのクセに200年早いにこー!」

真姫「う、なら300年!」

にこ「400!」

真姫「500!」

にこ「600……と見せかけて1000!」

真姫「ななひゃ……っ、せ、1100!」

にこ「あーあ、もしかして真姫ちゃんつられちゃったのー?やっぱりまだまだねー」ニヤニヤ

真姫「っ違うわよ!もう一回勝負しなさいってば!もーっ!」ウガー

ギャーギャー……


にこ「………」ゼーハーゼーハー

真姫「………」ゼーハーゼーハー

にこ「……ねえ真姫ちゃん」

真姫「……何」

にこ「私達って、何してたんだっけ……」ハァ

真姫「知らない……ワカンナイ……」スーハー

にこ「……あーもー、馬鹿なことしてたらすっかり日が暮れてきちゃったじゃない!しまったなー、夕飯シチューだってのに…早く煮込まなきゃ…もう…」

真姫「元はと言えばにこちゃんが原因でしょ。人のせいにしないでよ……」ハー

にこ「ったく、こんなときまで遊んでたらキリ無いわね、ホント。……無駄に楽しかったし……凛とか穂乃果とか居なくて良かったのは幸いかしら?もっと騒がしくなってたでしょうし」

真姫(……素で楽しかったとか言われると、少し照れるわね)

真姫「っそ、そうね……凛とか居なくて本当………ん?凛?」

真姫「…………」

にこ「どうかした?」

真姫「ええと、何か忘れてる気が……するような…」

にこ「ハッキリしないわね……何なのよ」ハァ

真姫(…………あ、空の上、いつの間にか星が明るく………)

真姫(―――星?)

真姫「あ、ああっ!!!忘れてたわ!」

にこ「だから何がよ?」

真姫「り、凛と花陽と、公園で待ち合わせしてたのに………どうしよ……」

にこ「あーあ……。さっきの公園ってそういうこと。まあ、ちょっとくらいの遅れなら、急げば大丈夫でしょ。あの二人なら」

真姫「………嫌われてないかしら………」ズーン

にこ「なんで無駄にネガティブなのよ」

真姫「だ、だって……」オロオロ

にこ「…………。ちょっと待ちなさい」ガサガサ

にこ「………ほらこれ。幾つか買ったからあげるわ。万一怒ってたら二人に渡せば、まあ、なんとかなるんじゃない?」

真姫「何これ、星のヘアピン……?3つセットの……」

真姫(センスはさすがにこちゃんと言うべきか……ワンポイントの星がしっかり目立ってる、白色のシンプルなヘアピン。……結構、可愛い)

真姫「……あ、アリガ―――」

にこ「勿論タダじゃないにこよ?」

真姫「お金取るの!?要らないわよそんなの!」バッ

にこ「違うわよ失礼ね、これは先払いよ」ヤレヤレ

真姫「……何に?」


にこ「恥ずかしがりやのどこぞの年下カメラマンは、素直にフィルム見せてくれそうにない気がするからー。今度絶対見せてもらうために、ヘアピンで閲覧料支払っておくの。ね、いいアイデアでしょ?」

真姫「…………。別に、そんなつもりは……」

にこ「あ、もし元から見せてくれるつもりだったなら、この投資に値する、にこに笑われないような………スッゴい写真を撮っておくことね。言っておくけど、にこは辛口で有名なんだから!そんな自信なさげな顔で下手な写真撮ったら、どうなっても知らないわよー?」ニッ

真姫「……………」

真姫「……カレーの中辛も食べられないくせに?」クス

にこ「う、うるさいわね!言葉のあやよ、あや!……それじゃ。チビ達が待ってるし私帰るわね。あんたも急ぎなさいよ!」

真姫(顔を真っ赤にしながら走り去るにこちゃんに、私は後ろから声をかける)

真姫「―――絶対期待を裏切ってやるんだから!せいぜい楽しみにしてなさいよ、にこちゃん!」

にこ「―――やれるもんならやってみなさいよ!」

真姫「―――――」パシャッ

真姫(ネオンの灯りでシルエットになった姿と、高くあげられたサムズアップの右手、薄闇の夜空に白銀の月と散らばる星ははなんだかファンダジックで―――電源が入ったままのデジカメで、自然と、シャッターを切ってた)

真姫(さっきの台詞。きっと、彼女なりに発破をかけてくれたんだと、思う。自信なさげな顔……か。私には似合わないわね。今は、大丈夫かしら?)

真姫(その背中が人混みに消えるまでを見送って。ちらり、手元のヘアピンを一瞥。さて、本当に急がなくちゃ、ね)


真姫「この通りのすぐのところだったのね……」テクテク

真姫(数分で付いちゃった)

真姫「………怒ってないといいんだけど」ハァ

真姫「えっと、中央広場のベンチ……だから、えーと………たぶんそこら―――」キョロキョロ

凛「――だからね、凛としてはURなんてあってもなくても変わらないと思うんだよ全然変わらないんだよ!分かる、かよちん!?」

花陽「うんまあ、凛ちゃんがURがいくら引いても出ないことだけは分かったんだけど……」

真姫(………居た)サッ

真姫(………ってなんで私は花壇の影に隠れてるのよ!にこちゃんだってきっと怒ってないって言ってたし!大丈夫、大丈夫……)

真姫(………でも、なんだか怖い………もう少し、心の準備を整えてから……)

花陽「………あれ?真姫ちゃん?」ヒョコ

真姫「!!!!」

真姫(早速バレた!?)

凛「にゃ?……本当だ、真姫ちゃん……何してるの、そんなところで……」ジッ

真姫(完ッッッ全にフルハウスー!?!?)

真姫「…………ア……」

凛「?真姫ちゃん?」

真姫「………アッアラ、カヨチャンリンチャングーゼンネ、コンナトコロデビックリー」ギーコギーコ

凛「いや、凛たち呼んだし偶然じゃないよね!?真姫ちゃんどうしたの!?」

花陽「というか、そんな呼び方だったっけ……?な、なんか動きがぎこちないよっ!?」

真姫「……ちょっと取り乱してたわ」スーハー

花陽「真姫ちゃんってそんな取り乱し方するの……?大丈夫?」

凛「てか真姫ちゃんおっそいにゃー!待ちくたびれて先始めちゃおうかと思ったよ!」プンスコ

真姫「……う、ごめん………」シュン


花陽「………………」

花陽「………凛ちゃん人のこと言えないでしょ?今日だって凛ちゃん遅れてきたよね……?」

凛「う、ごめん………」サッ

花陽「真姫ちゃんも気にしなくていいよ?凛ちゃんなんか、酷いときは待ち合わせ時間に起きるときだってあるんだからさ……冬の寒空って、耐えられるのは20分位だよね……」トオイメ

凛「あのときは散々謝ったじゃん!ごめんってばかよちーん!!!」

真姫「……………」

真姫(あんまり遅れてきたの気にされてない……のかしら。それはそれで悲しいけど……ああもう、面倒臭い子ね、私って本当)ハァ

花陽「でもでも、心配になるから……遅れるなら、出来れば連絡は入れて欲しかったかなあ」

凛「凛もかよちんも何かあったのかな?って話してたりしてたんだよ。まあ、無事に来てくれて何よりだけどさ」



真姫「っ………」

真姫「…………ご、ごめん…なさい」

凛「うむ、反省したなら結構けっこ…。…って、なんでにやけてるの……?気持ち悪いよ真姫ちゃん」

真姫「っ、うるさい!」ドスッ

凛「にゃがしゅ!」ガフッ

花陽「あわわ、凛ちゃん真姫ちゃん仲良くね?」

凛「ひどい目に遭ったにゃ…」サスサス

真姫(しまった嬉しくてつい……えっと、どうしよう、どうしよう、…そうだ、こんなときこそ)

真姫「……。…二人、その、これなんだけど」スッ

凛「にゃ?なにこれ、ヘアピン?……星ついてる!いいじゃんいいじゃん可愛いよ!」

花陽「わ、可愛いね……!新しく買ったの?つけてみてよ真姫ちゃん、きっと似合うよっ!」

真姫「あ、いやそうじゃなくて……にこちゃんがくれたんだけど……」

凛「あー、流石にこちゃん」

花陽「にこちゃん流石です……」

真姫(皆色々からかうわりに、にこちゃんが凄いって言うのは認めてるのよね……なんだか面白いわ。かくいう私も………なのは絶対言わない)


真姫「その、二人にもって……にこちゃんが」

花陽「二人……?三つだよ?」

凛「三セットあるの?というか真姫ちゃんとにこちゃん二人で遊んでたの?いいなぁ、凛も遊びたかったなぁ」

真姫「そうじゃなくて……いや遊んでないわよ!」

凛「怪しいにゃ~」ニヤニヤ

真姫「にこちゃんに会う前にことりや海未、エリーに希、穂乃果にだって会ったわよ!全く!」

花陽「へぇ、スゴいね真姫ちゃん。この短時間で皆に会ってるんだ……!あれ?それなら……」

凛「今凛とかよちんに会ったので、μ's、コンプリート!だね?」

真姫「……本当ね。皆に会っちゃったんだ」

凛「真姫ちゃんどんだけぶらついてたんだにゃ?」

真姫「別に、大して歩いては無いけど……って、だからそうじゃなくて!これ、三つあるから三人分ってことよ!」

花陽「あ、一人一個ずつってこと、なの?」

真姫「………まあ。そう、ね」

花陽「本当に!?わぁ、可愛いし、とっても嬉しいなぁ……ありがと、真姫ちゃん!にこちゃんもありがとう!」

凛「ありがと……う、凛に似合うかなぁ……?」

真姫(……何で自信なさげなのよ)

真姫「………何言ってるの、バカじゃないの、当たり前でしょ?嫌でも付けてあげるんだから。

花陽が」

凛「なんか真姫ちゃん凛に対しての風当たりが強くないかな!?てかかよちん!?」

花陽「はーい、凛ちゃんつけるよー」ガシッ

凛「にゃぁぁ!?ちょ、待っ――」




凛「………うう、髪の毛抜けた……」グスグス

花陽「凛ちゃん似合ってる!その服にもばっちしだねぇ。これで三人、お揃いだね!」

真姫「そうね。花陽も似合ってるわよ?というかよく見たら凛、その服って……スカート、よね」

凛「うぇ!?……あ、これは、その……かよちんが……その……」ボソボソ

花陽「これ家のタンスのなかで眠ってて、凛ちゃんに似合いそうだなって思って…ついこの前、プレゼントしたんだ。折角スカート、履いてくれるようになったし。勿体無いもん!制服っぽくて可愛いよねぇ、これ!真姫ちゃんもそう思わない?」

真姫「ふーん…」ジーッ

凛「………ぅ」ドキドキ

真姫「…?ねえ、ちょっと背中のタグ見せて?」

凛「……ふぇ?」


真姫「……あれ、これ、私のセーターと同じところのじゃない」

花陽「言われてみれば、真姫ちゃんも何だか制服っぽいね!……というか」

真姫「よく気がついたわね、ブラウスはオトノキのよ」

花陽「……着替えなかったの?」

真姫「ちょっとメンドクサクって……補導されなきゃ別に」

花陽「大雑把だねぇ……」



凛「………。……」スカートツマミ

凛「………って、そ、そんなことはどうだっていいんだよ!早く観察の用意始めないと!お星様行っちゃうよ!」

真姫「いや、何処によ……」カメラカマエ


花陽「……わ!真姫ちゃんのデジカメ初めて見た」

凛「まーたまた、かよちんってば……ってホントだ!真姫ちゃんがデジカメ持ってるなんて!」

真姫「あなた達の中の私のイメージってどうなってるの……?」ハッ

真姫「そうだ、二人とも並んでくれない?」

花陽「ふぇ?」

凛「別にいいけど……何する気にゃ?」

真姫「写真を撮るのよ」

凛「えっ」

真姫「はい、チーズ」パシャッ

凛「にゃっ!?」ネコノポーズ

花陽「は、はわわっ」ピース

真姫「……ん、ありがと」

真姫(…よし、とっても可愛く撮れた)

真姫(もっともっと、いろんな写真を撮らないと…もういっぱい撮った、なんて少し思っていたけど、こんな枚数じゃ到底、にこちゃんには見せられないわ。……私もまだ、満足しきれてないし)

真姫(もっと色んなものを撮らなくちゃ。路地裏の景色も、空の色も、μ'sの皆の色んな顔も……逃げられた野良猫だって、全然撮れてないんだから。これから、ファインダーの先の景色を、私はどれくらい残せるのかしら?なんだかワクワクしてきた……)

真姫(ふふ、暫く学校にカメラ持っていくのも面白そうね………)ニッ

凛「あのー……ま、真姫ちゃん?その写真は一体どうされるおつもりで……?」

真姫「秘密」

凛「にゃ、にべもない!?」

真姫「冗談よ。特に使い道は考えてないけど……まぁ、今度、他のもまとめて見せてあげるから」

花陽「えっ、本当?楽しみにしてるね!」

真姫「ええ、花陽の期待も裏切らないよう頑張ってみるわ」

花陽「?……『も』?」

真姫「あ、いえ、こっちの話よ」

凛「そっか……………」スカートイジイジ


花陽「あ……そういえば、真姫ちゃん自身は写真は撮って貰ってるの?」

真姫「……穂乃果と撮ったくらいかしら?そんなに無いわね」

花陽「じゃあ、真姫ちゃんの分は花陽がスマホで撮ってあげましょう!」

真姫「いや……別に、撮らなくてもいいわよ」

花陽「遠慮は禁物だよ、真姫ちゃん!」

真姫「………。じゃあ、お願い」

花陽「うん!楽しみにしてて!……ところでさ」

花陽「凛ちゃんの格好、真姫ちゃん的にはどうかなぁ、似合ってると思う?」

凛「へ!?」バッ

真姫「は?なんでいきなり?」

花陽「さっき真姫ちゃんが凛ちゃんの服見てから、凛ちゃん、そわそわしっぱなしだから……ね?」チラ


凛「かよちん!?べ、べつに凛は……」

真姫「……何?感想が欲しかった……の?」

凛「え、いや、その……」ウロタエ

凛「………………ぅ……まぁ……」カオマッカ

真姫「………」ハァ

真姫「ならちゃんと言いなさいよ。本当あなたって、自分の事にはとことん臆病よね……面倒な人」

真姫(……人のこと言えた立場じゃないけど、今はいいでしょ)

凛「…えへへ…そうかなぁ?」

真姫「…………安心しなさい、似合ってないなら……そういうから、ちゃんと……」

凛「…………っ、ほ、本当?本当に?」パチクリ


真姫「嘘ついてどうするのよ。……悪かったわね花陽、さっきの質問、答えなくて」

花陽「ううん、私は全然平気だよ?だよねだよね!凛ちゃん似合ってるよねぇ!」キャイキャイ

真姫「…………まあ、事実を否定する気はないから」

凛「か、かよちんも真姫ちゃんも恥ずかしいよ……!ああもう!とっとと始めようよ!どんどん暗くなっちゃうにゃ!早く終わらせないとなんだから!バインダー持ってくからね!二人も早く来てよー!?」ダッ

真姫「あ、待ちなさいよ!」ダッ

マキチャーン、アソコイッパイホシアルヨッ!
エッ、ヨクアンナノミツケラレタワネ!?






花陽「……………ふふ。二人とも仲良しだなぁ」スマホカマエ

花陽「後で、私と真姫ちゃんの事も、凛ちゃんに撮ってもらおうっと……」

花陽「取り合えず、一枚かな。二人とも……はい、チーズっと!」パシャッ

花陽「………うんうん、スッゴクいい感じ!さて、私も後を……って、あ、そんな早くいかないでよ、ちょっと待ってよぉ、凛ちゃん、真姫ちゃぁーん!」

これにておしまいです。
11月のUR追加からチマチマ書いていた毒にも薬にもならないssでした。μ'sのみんなのだらけた毎日もっと増えませんかね?りんまきの服装は正座編の画像をどこかで参考にしてくださると嬉しいです。

お付き合いいただいたかた、有難うございました!

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