モバP「未踏の一歩」 (47)

モバマスSSです。

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事務所

P「……おぉ!?」

小梅「……♪」

頼子「きゃっ…!」

文香「ひっ!」ビクッ

P「今のは驚いたな」

頼子「そうですね」

小梅「こんな風にガバっと出てきたよね」

P「小梅ぐらいのだったら可愛いんだけどな」

文香「……」サッ

P「文香がそうやって出て来ても大丈夫だって。ただ、中身出てたらちょっとアレかもだけど」

小梅「…出るの?」

文香「残念ながら…無理ですね」

P「当然だな」

頼子「…そうですね」

キャー

P「しかし、二人もこんなものを見るなんてな」

頼子「見たい訳では…ありませんが、少し気になりまして」

文香「…同じです」

P「そうかそうか」

小梅「私は…好きだよ」

P「それは、知ってる。俺は普通だ」

小梅「普通?」

P「ストーリー次第だな。今のところ楽しいぞ」

小梅「そっか…気に入って貰えるように…頑張る」

P「夜更かしはあんまりするなよ」

小梅「……うん」

P「そっちの二人もな」

頼子「お気遣いありがとうございます……」

文香「…はい」

翌日

事務所

頼子「……くぁ」

P「珍しいな」

頼子「あっ…いえ、今のは…」カァァ

P「別にいいって」

頼子「はい」

P「ちなみに何を読んでたんだ?」

頼子「よく…分かりましたね」

P「付き合いが長いからな」

頼子「それだけ…見ていてくれているということですね」

P「捉えようによってはそうだな」

頼子「はい。ありがとうございます。実はですね……」

P「うん」

頼子「えっと…こういうものを」ヒョイ

P「ファッション雑誌か」

頼子「はい。…意外ですか?」

P「いや、年頃の女の子なら普通だと思うけど」

頼子「そうですか…それは、初めて買ったんです」

P「そうなのか。どっかに行く予定でも?」

頼子「……」

P「ん?」

頼子「あ、いえ、なんでもありません。気分転換。という物でしょうか。文字の世界に浸るだけでは、現実に置いて行かれてしまいますから」

P「俺もこういうの読まないとなぁ」

頼子「スーツだから問題ないかと…」

P「ほら、私服の時のコーデとかさ」

頼子「あ…なるほど…」

P「読んだ感想はどうだった?」

頼子「え?」

P「夜更かしするくらいに読んだのかなぁっと思ってな」

頼子「…これです」

P「これ……あっ!」

P「ごめんな」

頼子「いえ…知っていました。長い付き合いですから」クスクス

P「悪いな」

頼子「平気ですって…。この間は気づいてくれましたし」

P「ならいいけど…」

頼子「…はい」

P「似合ってると思うぞ」

頼子「本当ですか?」

P「あぁ、清楚だし」

頼子「…演技かもしれませんよ?」

P「まさか」

頼子「…さぁ。どうでしょうか。でも、嬉しいです。例えお世辞だったとしても」

P「お世辞なんかじゃないさ」

頼子「その言葉。そのまま受け取っておきますね」

P「そうしてくれ」

言い忘れていましたが、古典シリーズです。

今回は、頼子と文香のお話になると思います。

頼子「この服のモチーフはですね…キャンバスなんです」

P「キャンバス?」

頼子「えぇ、アイドルを始める前と同じで真っ白なんです。何色でもなれました」

頼子「…ここで、改めて貴方に色を添えて頂けたら…そんな子供みたいな希望がモチーフです」

P「なるほどな…」

頼子「アイドルというお仕事には少しだけ…なれました。私のことを見たことがある人も増えたと思います。ただ、貴方のアイドルとしては進歩していないのかな…と」

P「ん?」

頼子「皆が…同様に成長しているから…です」

P「皆が忙しいのはいいことだよな」

頼子「えぇ。嬉しい悲鳴です」

P「アイドルに慣れてきた頼子はさ」

頼子「…はい?」

P「なんというか、シャンとしてる気がする。猫背だったのも直ってきてるし」

頼子「そう…ですね」

頼子「ただ、本の海に浸かっていればよい。という訳では…ないですから」

頼子「見られる。そういう意識が…宿ったのかもしれません」

頼子「ファンの方は私を通して…各々が描く古澤頼子を見ている…でしょうが、制作側の人間にはPさんの姿が見えているかもしれないですね」

P「俺がか」

頼子「…はい。そう考えると自然と背筋が伸びてきました」

P「なるほどな」

頼子「えぇ…隣を歩くには、姿勢が良い方が絵面的にも…いいですから」

P「そうだな。カメラ映りも良さそうだ」

頼子「はい…。私を通してPさんが評価されるのは…私としても嬉しいですから」

P「ありがとな」

頼子「いえ…こちら…こそ」

P「本当にそういう服も似合うと思うぞ。新しい可能性だ」

頼子「ありがとう…ございます。昨日の自分に自信が持てます」

P「あぁ、自信を持ってくれていいと思う」

頼子「…はい」

頼子「あの…一つよろしいでしょうか?」

P「どうした?」

頼子「私の我儘を一つ聞いて貰ってもよろしいですか?」

P「どうぞ」

頼子「…美術館に行く相手。募集してます」

P「…時間があれば」

頼子「時間は作るものです」クスクス

P「確かにな」

頼子「…私は、慎ましやかに、清楚にいられないのかもしれませんね」

P「誰かに何かを頼むのに遠慮していたら、それが慎ましくて清楚って訳じゃないと思うけどな」

頼子「そうですか」

P「一歩引くのと、踏み出さないのは全然違うからな」

頼子「そうかも…しれませんね」

P「まぁ、俺も時間作るようにはするな。息抜きも兼ねて」

頼子「えぇ。是非とも。それでは、レッスンに行ってきますね」

P「あぁ、行ってらっしゃい」

頼子「……」ピタ

P「どうした?忘れ物か?」

頼子「あ、いえ、大したことじゃないんですが一つ…お聞きしたいことがありまして」

P「なんだ?」

頼子「桜の木の下には、何が埋まっているんでしょうか?」

P「死体じゃないのか?」

頼子「今度機会があれば…掘ってみたいですね」

事務所

ちひろ「うーん…」

P「どうかしましたか?」

ちひろ「頼子ちゃんとか文香ちゃんと話す時のプロデューサーさんって」

P「なんですか?」

ちひろ「まどろっこしいですよね」

P「え?」

ちひろ「傍から聞いてて二人の会話が所々分からないんですよ」

P「まぁ。そうかもしれませんけど」

ちひろ「私も仲間に入れて下さいよー」

P「分かりましたって」

ちひろ「本当ですか?」

P「俺としてはそこまで変な話をしている訳じゃないんですけどね」

ちひろ「そうかもしれませんけど」

P「分かってますって」

ちひろ「そう言えば、さっきのお話ですけど」

P「はい」

ちひろ「桜の木の下には死体が埋まってるんですか?」

小梅「……ほんと?」

P「おっ、小梅いたのか」

小梅「う、うん…それより…」

P「実際は知らないけどな」

ちひろ「あ、そういうことでしたか……びっくりしましたよ」

小梅「ないの…?」

P「それは、実際に掘ってみないなとなぁ」

小梅「むむむ……」

P「桜って綺麗じゃないですか」

ちひろ「そうですね」

P「あれだけ綺麗だったら死体とか埋まってないとおかしいかなって」

ちひろ「そうなんですかね…?」

P「ほら、綺麗なモノの裏にはドロドロしたものの何かが…的な感じです」

ちひろ「あぁ、なるほど…」

小梅「でも…夜の桜って…光ってる気がします…」

P「花びらが散る時に光って見えるよな」

小梅「もしかして…桜の下の人の人魂が……」

ちひろ「素直に綺麗って言えなくなっちゃいそうなんですけど…」

小梅「綺麗…だと思うけど」

P「幻想的だな」

小梅「…うん」

ちひろ「散り際が良いって言うんですかね」

P「まぁ、今度桜でも見に行きましょうよ」

ちひろ「この話の到着点がそこなんですね」

小梅「…いく」

P「ちひろさんは?」

ちひろ「勿論行きますよ。決まってるじゃないですか」

ガチャ

文香「こんにちは」

P「お、お疲れ様」

文香「は、はい…」

文香「あれ…」キョロキョロ

P「ちひろさんはちょっと外出てるな」

文香「そう…ですか」

P「なにか用があったのか」

文香「いえ…そういう訳ではないです」

P「そうか」

文香「ちょっと…喉渇きませんか?」

P「まぁ、少しはな」

文香「ちょっと給湯室使いますね…」

P「どうぞ」

P(なにか買ってきたのかな?)

文香「こういうものは…好きですか?」

P「ホットチョコレートか」

文香「…はい」

P「たまにはいいな」

文香「…良かったです」

P「うん。ありがとう」

文香「…はい」

文香「隣、いいですか?」

P「どうぞ」

文香「失礼…します」

P「なんか、昼下がりの喫茶店みたいだな」

文香「え…?」

P「いや、こんな風に落ち着いてホットチョコレートなんて洒落たもの飲むなんて」

文香「そう…なんですかね?」

P「と個人的に思っただけだ。そもそも、あんまり喫茶店には行かないから実際はなんとも」

文香「私も…そうですね。三人で出掛けた時が最後かもしれません…」

P「俺もそうかもしれない。随分前のような気がするけど」

文香「――昔に生きる。変化を求めず、情緒溢れる予定調和の中で風情を感じながら暮らすのも悪くない」

P「ん?」

文香「貴方が席を外した時に古澤さんが私に言った言葉です」

P「そうなのか…」

文香「私は…それでもいい。そう考えてました」

P「待つだけは嫌なんじゃなかったのか?」

文香「…それは、忘れて結構です」

P「公園でさ」

文香「はい?」

P「文香が言ったセリフを覚えてるか?」

文香「…えっと、あの時のことはあんまり覚えてなくてですね」

P「まぁ、一杯一杯だったもんな。多分」

文香「えぇ…」

P「アイドルが、鷺沢文香の変われる切っ掛けになったら嬉しいなって思ってさ」

文香「…はい。私は変わったと思います…。それがいいのか悪いのか分かりませんけれど」

文香「ただ、現在、この場で…こうして貴方の隣でこうして…お話が出来ていることだけを見れば大成功です」

P「そうか」

文香「えぇ…」

文香「ただ…あんまり露出が多いお仕事は…」

P「評判はいいんだけどな」

文香「だ、だとしても…です」

P「そう言えば、なんでホットチョコレートなんだ?」

文香「たまたま飲みたくてですね」

P「そうなのか」

P(楓さんならチョコっとだけホッとするからとか言いそうだな)

文香「それに…チョコっとだけホッとしませんか?」

P「……ん!?」

文香「だ、大丈夫ですか?」

P「い、いや、ちょっと予想外の回答が返ってきてな」

文香「や、やはり、まだ、楓さんのようには…」

P「いや、そんなことはないんだけど」

文香「笑って貰えてるのか…どうなのか…判別が出来ませんね…」

P「面白かったよ」

文香「それは…良かったです。頑張った甲斐がありました」ニコ

P(ちひろさんどこに行ったんだろう…)

文香「少し…暑いですね」

P「そうか?あんまり感じないけど」

文香「そうですか?」

P「あぁ。文香も暑いならコート脱げばいいんじゃないか?」

文香「…あ、そ、そうですね」

P「そう言えば、なんでずっと着てたんだ?」

文香「ホットチョコを出そう…それだけ考えていたので…」

P「そうなのか…わざわざありがとう」

文香「い、いえ…私がしたいと思ったことなので…」

文香「ちょっと、コート掛けてきますね…」

P(甘いもの飲むと疲れがとれた気がするなぁ)

P(これ、毎日飲んでたら絶対太りそうだけどな)

文香「……」

P「お、おかえり……?」

文香「な、なんでしょうか」

P「…いや、別になんでも」

P「仕事しないとなって」

文香「せ、せめて感想だけでも…頂けると…」

P「どうした?イメチェンか?」

文香「あ、えっと、店員さんに勧められてですね…」

P「そういう格好も好きだったんだのか」

文香「えっと…どうなんでしょう?」

P「いや、それならそれで、そういう恰好の雑誌とかもあるからさ。新しい文香を売り出すのもいいと思うけど」

文香「えっと…それは、まだいいです」

P「ん?」

文香「と、とにかく、いいんです…!」

P「そうか…」

文香「はい。あ…えっと…ですね。その…なんて言いますか」

P「似合ってると思う。けど、露出多くないか?」

文香「で、ですよね…」カァァ

文香「今日着て来て思いました…」

P(だからコート着てたのかもな)

P「ちなみに、店員さんにどういうのがいい。とか言ったのか」

文香「……」コクン

P「なんて言ったんだ?」

文香「えっと…聞きたいですか?」

P「無理にとは言わないけど」

文香「ゆ、誘惑です」

P「ん?」

文香「お、男の人を誘惑…する…ような…って」カァァ

P「な、なるほど。い、意外に大胆だな」

文香「や、やっぱり、忘れて下さい…」

文香「は、恥ずかしくて顔から火が出そうです…」

P「自分で言ったのに」

文香「き、聞いてくるから…です」

P「悪い悪い。ちなみに誘惑したい相手とかいるのか?」

文香「え…?」

P「いやさ、文香がそんなこと言うなんてよっぽど思ってる相手がいないとなって」

文香「…秘密です」

P「そうか」

文香「…はい」

事務所

P「あ、そう言えば」

文香「は、はい」

P「桜の木の下には何があるか知ってるか?」

文香「死体…ですかね」

P「流石だな」

文香「わ、私は見たことがありませんけどね。ただ、綺麗なモノの下には…ドロドロした物があると思いますよ」

P「ドロドロとしたものか」

文香「…はい」

P「アイドルってさ花みたいだと思わないか?」

文香「花…ですか?」

P「いや、こう原石みたいな子をしっかり育てる感じがさ」

文香「才能が花開く。そんな言葉も…ありますからね」

P「その下には何があるんだろうなって」

文香「…私には分かりません」

P「俺も分からないな」

文香「ただ…日の目を見るアイドルが居るということは…見なかった方もいるということは分かります…」

文香「たまたま運が良かった…そんな認識です」

P「言い方を変えると、想いを吸って花開くのかもしれないな」

文香「想い…ですか?」

P「こうありたかった。こうなりたかった。そんな人の願望だよ」

P「諦めた人間は、誰かにその夢を託すか、嫉妬するかだと思うし」

文香「そうかも…しれませんね」

P「それを集めて綺麗に水晶のようにして、花開くのかなって」

文香「…詩人ですね」

P「どうだろうな」

文香「そう言えば、聞いてどうとなるものではありませんが…誘惑するとは…どういうことなのでしょうか…?」

P「俺には分からないな」

文香「そうですか…」

P「ほら、俺が誘惑ってイメージ湧かないだろ?」

文香「…確かに。どちらかと言うと翻弄ですかね」

P「弄ばれるのか」

文香「あ、いえ…そういう意味ではなく…ですね」

文香「弄ぶ…?」

P「そんなことはしてないと思うんだけどな」

文香「私にも…分かりません」

文香「今回、この服を着て分かったことがあります…」

P「実は結構気に入ってるとか?」

文香「そ、そういう意味ではなくて…です」

文香「例え、服だけ見てくれだけを飾り立て浮ついていても、誰かに振り向いて貰えないということです」

文香「誰かを誘惑するには、心からその人を想うことが重要なのだなって」

P「幸せ者だな。そこまで思われる人は」

文香「…そうですね。まだ、足りないようですが」

P「ん?そう言えば、昔は夢に出てくる人は自分のことが好きだから、わざわざ出てきたらしいな」

文香「えぇ…そうらしいですね」

P「そんなに想ってるならその人の夢に出てきそうだな」

文香「かもしれませんね…」ニコ

事務所

ちひろ「ただいま戻りました~」

頼子「ただいま帰りました」

P「お帰りなさい」

ちひろ「ただい…文香ちゃん来てたんですね」

文香「あ、はい…」

頼子「…中々セクシーな恰好…ですね」

文香「あ…やっぱりそうですか」

ちひろ「どんな男の人も一発で落とせそう…ですよね!プロデューサーさん」

P「えぇそうですね。悪い虫が付かないか心配にはなります」

文香「…はい」

頼子「そうですね」

頼子(魅力的…ですもんね)

P「頼子の恰好も清楚っぽいしちょっと心配だな」

頼子「そうですか…?」

ちひろ「ただのお父さんじゃないですかプロデューサーさん」

P「ちひろさんは大丈夫だと思うんで安心してください」

ちひろ「…なんか、それはそれで嫌ですね」

文香「スーツだから…かと」

頼子「…それに芯がしっかりしてそうじゃないですか」

ちひろ「あ、そういうことなんですね。なるほど!」

ちひろ「褒めても何も出ませんってば!」ベシベシ

P「痛いですって」

頼子「そう言えば…桜はいつ頃咲きますかね」

P「いつだろうなぁ。四月から五月かな」

頼子「それじゃ、その時に夜桜でも見に行きましょうか」

文香「……?」

文香(何の話だろう…?)

P「あぁ、構わないぞ。文香もどうだ?」

文香「あ、はい。私も…行きたいです」

頼子「綺麗だといいです…ね」

文香「桜は散り際が綺麗だと…思います」

P「二人共似合いそうだな。なんて言うか幻想的な感じだ」

頼子「撮影もしてみたいですね…」

P「それじゃ、二人共頑張ってな」

頼子「はい」

文香「分かりました」

スタジオ

頼子「あの……」

P「ん?どうした?」

頼子「いえ、ちょっと時間が余ってしまって」

P「時間…?あ、そうか。頼子と文香別々の担当を撮ってから一緒に撮るんだっけか」

頼子「そうですね。私の方が後だったので、ちょっとだけ時間が出来ました」

P「そういうことか」

頼子「何か…飲まれますか?」

P「いいよ。俺が買うから」

頼子「あ、すみません…」

P「いいって」

頼子「Pさんはブラックですか?」

P「よく分かったな」

頼子「いえ、甘いものを飲んだ後なので苦い物が恋しくなるのかな…と」

P「名推理だ」

頼子「ただ、良く見ているだけですよ」

頼子「アイドルって…」

P「うん」

頼子「人気、勢いがかなり重要な部分を占めて…いると思います」

P「まぁ、確かにそうかもな」

頼子「えぇ…入った時期の違いなど長い目で見ればあまりないのかもしれませんね…」

P「どうだろうな…」

頼子「私は…他の皆さんのように、階段を駆け上がることは…出来ないのかもしれません」

頼子「ダンスが得意とか、アイドルとして自ら誇れる何かがあるとは…思えません」

P「どうした?」

頼子「いえ…ふと、皆さんを見ていてそう感じただけです」

P「個人差はあるさ。裏を返せば足元をしっかり踏みしめているってことだしな」

頼子「足踏みをしているだけ…かもしれませんけどね。すみません。たまにこんな風に思ってしまうことが…あります」

P「問題ないさ。前に言ったように俺は全力でプロデュースするからな」

P「頼子だけが出来るものを表現してみたらいいさ」

頼子「私だけが…というのも、難しいですね…」

P「簡単じゃないだろうな。これだけアイドルがいる訳だし」

頼子「もあしかしたら、同じ事務所内にも同じようなタイプがいるかも…しれませんですしね」

P「考えてみろよ」

頼子「なにをですか…?」

P「今まで、こういう古典とかこういう感じのことをやってたアイドルっているか?」

頼子「わ、私は…そこまでアイドルに詳しいわけでは…」

P「俺も俺の知識不足のせいかもしれないが、知らない」

P「つまり、初めてのことなんだよ」
頼子「初めての…」

P「あぁ、パイオニアだ」

頼子「カッコいい言葉ですね…」

P「もし、頼子のあとに頼子に似たアイドルが自分よりブレイクしたとしても、その人は頼子が、アイドルがこういう仕事を出来た
って実績があるからだと思うんだ」

頼子「も、物は言い様ですね…」

P「嘘は言ってないつもりだけどな」

頼子「嘘は混じってない…ですね」

P「本で読んだけど、ある人が『初めてのことは時に失敗することはある。だけど、挑戦しなければ成功はないんだ』って言ってたな」

頼子「確かに…そうですね」

P「あぁ、ちなみにその人は海を渡った向こうで偉大な記録を残したんだ」

頼子「偉大な…」

P「挑戦した結果だよな。線路も何もない所を歩く決意をした」

頼子「…はい。私がそうなのか分かりません…。踊ったり、歌ったりもしますから。ただ、他に私のようなアイドルが一回も出ていない番組もあるのは…事実です」

P「考えようによってはさ」

頼子「はい」

P「誰も踏んでない雪に自分の足跡を付けられるって凄い気持ちよくないか?」

頼子「…最高ですね」ニコ

P「お、笑ってくれたか」

頼子「ありがとうございます…おかげ様で元気が湧きました」

頼子「そろそろ、時間ですね」

P「お、行ってこい」

頼子「…はい」

頼子「あ…いいですか?」

P「どうした?」

頼子「その…手を握ってくれませんか?」

P「いいけど…」ギュ

頼子「もし、私がまた、俯きそうになったら…手を差し伸べて下さいね?」

P「あぁ、勿論」

頼子「支えさえあれば、きっと貴方の期待を超えてみせますから」

スタジオ

文香「あの…」

P「お、来たのか」

文香「え…?」

P「いや、さっき頼子も来たからさ」

文香「なるほど…私も古澤さんにここにいるって聞きましたから」

P「そうか。なるほどな」

文香「…はい」

P「撮影は順調そうか?」

文香「はい…問題ありません」

P「それは、良かった」

文香「えぇ…」

文香「何を…飲まれているんですか?」

P「これか?コーヒーだよ」

文香「やっぱり…甘い物はお好きじゃありませんでしたか…?」

P「いや、好きだよ。ただ、今はブラックを飲みたい気分なんだ」

文香「それなら…いいですけど」

P「あぁ、それでいい」

文香「私は…甘い物の方が好きですね」

P「そうなのか」

文香「えぇ、何と言いますか落ち着きます」

P「なるほどな」

文香「でも…Pさんにブラックを勧められてしまったら…そっちも好きになってしまうかもしれません…」

P「どっちでもいいのか?」

文香「…押しには弱いんです。昔から」

P「そこまで無理に勧める気はないから安心してくれ」

文香「でも…Pさんに勧められるのは悪い気はしませんから」

P「そりゃまた、どうして」

文香「…秘密です」

P「秘密なこと結構あるんだな」

文香「…はい。私だって女の子ですから」

文香「古澤さんと…どんなお話をしたんですか?」

P「他愛もない話だよ」

文香「そ、そうですか…」

P「編集者の話かな」

文香「編集者の…あっ!」

P「文香が俺に言ってくれた話を少しだけ引用させて貰った」

文香「お役に立ったなら…幸いです」

P「編集者として俺はしっかり出来てるか?」

文香「そうですね…若干の作者に大して甘やかすきらいがあるとは思いますけれど…悪いとは思いません」

P「お、それはまたどうして」

文香「だって…私が甘いものが、大好きですから…♪」クスクス

P「そろそろ、行かないとだな」

文香「そうですね…」

P「俺も後で行くから頑張ってな」

文香「…はい」

文香「あ…一ついいですか」クルッ

P「忘れ物か?」

文香「先程…夢のお話が出たと思いますけれど」

P「出たな」

文香「夢とは、記憶の整理にも一役買ってるそうですね」

P「らしいな。暗記物やる時はしっかり寝た方がいいのもそこから来てるらしい」

文香「私が思うに…記憶の中でも衝撃的なものが…夢の中でも優先順位が高いと思います…」

P「まぁ、確かに」

文香「失礼します…」

ギュー

P「どうした…?」

文香「あ、いえ、そのしっかりと覚えて貰うには…手を強く握った方がいいのかな…と」

P「まぁ、確かにそんな経験あんまりないしな」

文香「それは…よかったです」ホッ

文香「それじゃ、行ってきます」

P「行ってらっしゃい」

文香「あ、そう言えば」

P「まだ何かあるのか?」

文香「こういう服ですが…貴方がもっと見たいと言われるんでしたら…二人きりでなら…見せてあげます……」ボソボソ

P「え、あ…」

文香「あ、いえ…気にしないで下さい…。失礼します…!」

P「最後のが一番衝撃的な気がするな」ポリポリ

終わりです。

見て下さった方ありがとうございます。

そう言えば、明日はサンクリですね。

私も古典シリーズの小説版を出す予定ですので。

会場に行かれる方は立ち寄って頂けると幸いです。

簡単な解説です。

『桜の樹の下には死体が埋まっている』

と言うのは、聞いたことのある方が多いと思います。

これは、梶井基次郎 『櫻の樹の下には』という短編の冒頭です。

こちら青空文庫で読めますので、興味がある方は一読どうぞ。


もう一つ。

『初めてのことは時に失敗することはある。だけど、挑戦しなければ成功はないんだ』

こちらはメジャーリーガー野茂投手です。

野茂選手については割愛します。


それでは、失礼いたしました。

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