男「行き倒れのエルフを保護した」(441)

男「もう夕方かいろいろ買ったしもう帰ろう」

男は週に二度の買い物に市街地に来ていた。食料、研究材料、道具などを買い
路地を歩き気付けば暗くなり始めていた。

男「少し買いすぎたかな…ま、いいか」

両手にぶら下げた荷物に目をやりそんなことを考えていたとき…

?「誰か……いな…い…か?」

声が聞こえた、か細く力のない声だった。

男(だれかいるー!)

内心、面倒事は御免だと立ち去ろうとしたが、今にも力尽きようとしている
誰かを探さずにはいられなかった。


男「いた!」

その人物…少女は案外簡単に見つかった。外傷は無いようだ。
しかしひどく衰弱している様子だった。

少女「水…」

男「はいはい、これ飲みなよ」

少女「……」ゴクゴク

男(喉乾いていたんだね、あれ?これ水じゃない…ま、いっか)

少女「よし復活!そなた感謝するぞ」プハッ

まるで何事もなかったように起き上がり少し驚いたが男は慌てず

男「君、名前は?こんな所で何をしてるの?」

少女「申し遅れたな、私はエルフと申す」

男(なんか堅苦しいな…)


エルフ「一度『まち』とやらに来てみたかったのだ!」

男「それだけ?なんで倒れていたの?」

エルフ「それは…」グゥ-

エルフ「……///」

エルフのお腹が鳴ってしまい恥ずかしそうにしていると

男「…冷えるし家来ない?このとうり帰り道でね」

手に持つ荷物をアピールするように振った

エルフ「ああこれは申し訳ない、とりあえず付いていくとしよう」

男(もっと警戒されるかと思ったけど杞憂だったな)

男(見た目からすると10~15歳ってとこかな、でもなんでこんな所に?)

~男の屋敷~

エルフ「ここがそなたの家か」

男「家というより屋敷だね」

エルフ「明りが点いていないな…もしや、そなたこの広い家に一人暮らしなのか?」

男「…」グサッ

エルフ「図星か、悪いことを言ってしまったな?」

男「あー、かなり痛い所を突くね」ハハッ

エルフ「気にするでない仕方のないことだ」

男「君本当に子供?とにかく家入りな、料理作ってやるから」

エルフ「本当か!?」パァァ

料理という言葉を聞いてエルフの表情が一気に明るくなる


~大広間~

男「さてとまず聞くがどのくらい食べていないんだ?」

エルフ「食べていないとは心外だ、こう見えても昼は水をたくさん飲んだ!」

男(何日も食べて無いってことか…)

エルフ「…なぜ何も言わずにこちらを見る?その哀れむような眼はなんだ?」

男「グスッ…いや、いいだいたいわかった…ズズッ」

エルフ「だからなぜ泣きそうになるのだ?そなたはよくわからぬな…」

男は気を取り直し料理を作ることにした。話はそれからだ

男「(体のことも考えて)スープにするか」

エルフ「『すーぷ』とは?」

男「少なくとも水よりはずっとうまい」

エルフ「そうなのか!では待つとしよう」

~数分後~

エルフ「まだなのかー?」ウズウズ

エルフは料理が出てくるのを今か今かと待っていた

男「まだだよ、そうだ暇ならこの家を見て回るといい、暇つぶしにはなる」

エルフ「では、見て回るとしよう」

エルフが立ちあがろうとした時、思い出したようにこう言った

男「ああ、ちょっと待って」サラサラ…

エルフ「?」

男はどこからからか取り出した紙に何かを書いてエルフに渡した

男「はいこれ」スッ

エルフ「これは?」


男「転移用魔方陣とでも言うべきかな」

エルフは興味深そうに見つめる

エルフ「ふむ、そなたは魔法を使えるのか?」

男「そこら辺の事はまた後でね、料理ができ次第ここに強制移動するから」

エルフ「なるべく早く頼むぞ」

男「というか動けるの?さっきまで倒れていたけど?」

エルフ「うむ、そこらへんは問題ない。水を飲んだからな」

さっきまで倒れていたことを忘れているかのように元気に答えた

男(この子水でいいのか?……おっと焦げる焦げる!)

男が鍋に気を取られている間にエルフは部屋を出ていた。


~2f廊下~

部屋を出てから数分後、エルフはいくつか部屋を見て回ったあと、
次はどこの部屋に行こうかと考えていた

エルフ「それにしてもこの屋敷は広いな…気を抜けば迷子になりそうだな」キョロキョロ

廊下を歩いていると、ふと一つの部屋が目に入った。見た目は何の変哲もない扉だが
何か言葉では表せない変なものを感じた。

エルフ「うーん?何か変な感じがするなここは」

エルフ「ま、気にしていても良いことはない、入るとするか」ガチャ


~研究室~

エルフ「この部屋は…?」

部屋の中は意外と簡素な造りだった、整理された高い本棚、机と椅子
別に珍しくもない、いかにも研究室といった感じであった。一つを除いて…

エルフ「何だこれは?こんな物、他の部屋には無かったぞ」

その部屋の真ん中に大きな魔方陣が描かれていたのだ
近くに行くと誰かに声をかけられた

「君はそこで何をしているのかな?泥棒に見えないこともないけど?」

声の主はそう言った

エルフ「こんなに堂々としている泥棒がどこにおる」

エルフも負けじと返す


「ごもっともだね、じゃあ迷子かな?」ケケッ

まるで遊んでいるかのように声の主は笑っていた

エルフ「生憎、私はそなたと言葉遊びをしている暇はないのだが?」

「つまらないねー、君さ子供に見えないって言われない?」

エルフ「ああ、よく言われるな」

「ま、当然だろうね、容姿と口調が合っていないしね」

「それにボクに怖がる様子も見せないしね」ケケッ

声の主はやはり少し笑っていた

エルフ(こやつは何なのだ?さっきから声はするが姿は見えぬ…)キョロキョロ

「あーそっかそっか見えないのか、忘れていたよ」

声とともに、エルフの目の前に小さな黒髪の子が現れた

狐「初めまして、ボクは狐よろしくね!」

休憩がてら背景説明

場所…魔法と武術が混在する世界、剣士から錬金術師まで幅広い職業がある
   男はその町の錬金術師が使っていた(いわく付きの)屋敷を格安で購入

人物

男…22歳、男、楽だという理由から動きやすい服装を好む
言うまでも無く主人公、狐から貰った日本刀が武器(狐があげた事は知らない)
  魔法、錬金、剣術の結構な使い手(別に珍しくは無い)
  実はエルフの混血、見た目は人間だがエルフの里にいたこともある
  好きな物…お茶

エルフ…15歳くらいの女の子、長い白髪、緑のワンピース
この物語のヒロイン?行き倒れていた所を男に保護される
    あてにならない転移魔法が得意(どこ行くか不明)
    堅苦しい話し方なのは古い文献を読んで育ったため
    好きな物…水、スープ
嫌いな物…まずいもの

狐…17歳くらい?女の子?短めの黒髪、巫女服
男の屋敷のいわくの正体、前の持ち主が材料探しの旅で東の島国(日本)
  に行った時、興味本位で付いて行くと帰れなくなった、かわいそう?な子
  獣型から人型になれる、ほんの少し魔法を使える
  初対面でも口調は変わらない
  好きな物…御神酒、稲荷寿司、お茶
  嫌いな物…本

>>11見難い

背景説明

場所…魔法と武術が混在する世界、剣士から錬金術師まで幅広い職業がある
    男はその町の錬金術師が使っていた(いわく付きの)屋敷を格安で購入

人物

男…22歳、男、楽だという理由から動きやすい服装を好む
  
  言うまでも無く主人公、狐から貰った日本刀が武器(狐があげた事は知らない)
  魔法、錬金、剣術の結構な使い手(別に珍しくは無い)
  実はエルフの混血、見た目は人間だがエルフの里にいたこともある
  
  好きな物…お茶


>>12続き

エルフ…15歳くらいの女の子、長い白髪、緑のワンピース
    
    この物語のヒロイン?行き倒れていた所を男に保護される
    あてにならない転移魔法が得意(どこ行くか不明)
    堅苦しい話し方なのは古い文献を読んで育ったため
    好きな物…水、スープ
    嫌いな物…まずいもの

狐…17歳くらい?女の子?短めの黒髪、巫女服
  
  男の屋敷のいわくの正体、前の持ち主が材料探しの旅で東の島国(日本)
  に行った時、興味本位で付いて行くと帰れなくなった、かわいそう?な子
  獣型から人型になれる、ほんの少し魔法を使える
  初対面でも口調は変わらない
  好きな物…御神酒、稲荷寿司、お茶
  嫌いな物…本

支援!


エルフ「あ…ああ、よろしく」

あまりに突然な登場で呆気に取られるエルフ
無理もない、何も無かった場所に突然人が出てきたのだから。

狐「いやーまさか男が女連れ込むとはね、驚いたよ」

狐「んー?何か言いたそうだね?」

エルフ「まず、どこから現れた?そんな魔法は見たことが無い!」

狐「(説明めんどくさいな)君さー男から何か渡されてない?」

エルフ「私の質問は無視か!?」

狐「そんなのどうでもいいしね、どうなの?持ってるの?」

エルフ「持ってはいるが…素性も知れぬ者に渡したくは無い」

狐「あらら、見事に信用されてないねー」


エルフ「当然だ、訳もわからぬ所から突然現れた者を信用できるわけがなかろう?」

狐「ごもっともだけどさ、ボクはそろそろ男に会いたいんだよ」

エルフ「男を知っているのか?」

狐「同じ家にいて知らないはず無いでしょ」

エルフ(どうする?信用はできそうだが…)

考え込んでいる所に狐が一言

狐「君が持っている物は魔方陣だ、違うかい?」

突拍子もない質問にエルフは驚く

エルフ「なぜそう思う、私はまだ何を渡されたか言ってはいないが?」

狐「男の考えそうなことはわかるよ、これでもまだ信用できないかい?」

エルフは何か考えている様子だった

エルフ「(少なくとも敵意は無いな、ならばよいか)わかった、渡そう」


狐「そう言ってくれると助かる」

エルフ「しかし何の為に使うのだ?」

狐「これを使って男の場所に転移する」

エルフ「できるのか!?それならそうと早く言ってくれれば良かったものを」

狐「聞かれなかったからね、じゃあ行くよ」ブツブツ

狐が何か唱えだすと、二人の体が光に包まれ始める。

エルフ「な、なあ?これ本当に大丈夫なのか?」アセアセ

狐「大丈夫!大丈夫!そんなに失敗してないから!」ニコッ

エルフ「失敗したことあるのでは無いかあああぁぁぁ!」シュン!

光に包まれ二人は消えた


書き溜め尽きたので今日はここまでです。
>>14支援ありがとうございます!やる気が出ます。

ここは支援に見てるアピール以上の意味はないよ
期待したいが説明で設定出しすぎじゃね?

>>23薄々は思っていました…
狐とエルフが出てくることで混乱するかなーと思ったので
色々説明入れました


~大広間~

男「さて、あらかたできたから呼ぶかな…ん?」ゴソ…

男は気付いた魔方陣にうっすらと光が出ていることに

男「なんで?あのエルフは魔力が弱まっていたはず…」

そんなことを言っている間に光は強くなって行く、

男「まあいいや、この辺でいいかな」

男「でもこんな不十分な魔法だと結構衝撃来るんじゃ…」

男はとりあえず適当な場所に魔方陣を置いた
一段と光が強くなり場を包み込む、そして現れたものは…


エルフ「痛たた…成功したのか…?」

エルフと男の知らない子供がドタッと床に落ちてきた

狐「ボクに聞かないでよ、成功率低いんだから…」

エルフ「今、何と言った?」

狐「えーと…成功率低い?」

エルフ「やはりか…そなたを信じた自分に後悔するぞ…」

男「もめてる所悪いけど質問良い?」

エルフ「そなたは…ということは成功したのか?」

狐「みたいだね、それでなんだい?」

男「エルフの隣の君は誰?」

エルフ「どういうことだ?知り合いではなかったのか?」

狐「ボクは男を知っているけど男は僕の事を知らないよ」

エルフ「…なあ、先ほどからそなたの信用が下がりっぱなしだがどう思う」

狐「ボクは気にしてないよ」


エルフ「少しは気にしろ!」

狐「そんなことより男が置いてきぼりだけど?」 

エルフ「ああ、そうであったな、その前に…」

男「何?」

エルフ「そなた本当にこやつを知らぬのか?」

男「知らないね、本当にこの屋敷にいたの?」

エルフ「いたのだ、魔力らしきものもある」

狐「正確に言えば前の家主についてきたんだよ」

男「あー、そういえば前の家主は東の島国に行ったことがあるとか聞いたね」

狐「それなら話が早い、ボクが何者かだいたいわかるよね?」


狐「そんな感じで合ってるかな」

エルフ「このような小さき者が、か?」

狐「小さいとは心外だなぁ、君も相当でしょ?」

狐はエルフの胸あたりを見てそう言った

エルフ「今どこを見て言った!」

狐「正に自分の胸に聞いてみれば?」ケケッ

エルフ「余計なお世話だ!」

狐「話が逸れたね、ボクは狐、男のことは主と呼ばせてもらうよヨロシクね!」

男「こちらこそよろしくね、僕は男えーと…?」

狐「ああそっか、狐とでも呼んでくれればいいよ」

男「じゃそれでいいや、狐こちらこそよろしく」


男(でも狐ってここら辺にはいないはず…うーん)

考え事をしていると黙っていたエルフが業を煮やして男に言った

エルフ「のう、男よ」

男「なんだい?(…あれ?)」

エルフ「お腹減ったからすーぷとやらをくれ」

男「ゴメンご飯まだだったね、じゃあ話はその後にしようか」

狐「ねえねえ男」

男「何だい?」

狐「『すーぷ』ってなーに?」

男「君もか!?スープってそんなに知名度低い?」

男「じゃあご飯にしようか」

二人「わくわく」

男が用意したものは簡単なものだ、スープ、パン、サラダetc…
しかし量は作り置きするつもりだった為、三人でも満腹になるほどだった


~食後~

エルフ「うむ、美味しかったごちそうさま」ケプッ

男「おおーたくさん食べたなー」

狐「ごちそうさま、男の作る料理は美味しいね」

エルフ「でも少し余ってしまったぞ…」シュン

男「ああ別に構わないよ?保存できるからね」

男「じゃ、お腹を満たした所で説明してもらおうかな?」

エルフ「男、まずは私から話そう、あそこで倒れていた理由だが…」

男「その前に、なぜ僕の名前を知ってるの?」

エルフ「?さっき狐に名乗っていたではないか」

男「そういえばそうだね、じゃ続けて?」

>>27>>28の間が一つ抜けてる気がしてならない


エルフ「まず、結構な準備を整え里から出てきて、五日目にこの街に着いた」

狐「君、相当前に出て来てたんだねー」

エルフ「さらに二日後の昼、広場に出て水を飲んだ」

男「つまり今日?」

エルフ「そうだ、その後…」

今日の話に差し掛かると急に言葉に詰まってしまった

狐「どしたの?まさか変な人に捕まったとか?」

半ば冗談で言ったことだった

エルフ「な、なぜわかるもしや頭の中を読んだか!?」

狐「…本当?冗談で言ったんだけど」

エルフ「本当だ変な商人に捕まってのー」

狐「……」

エルフが話している中、狐は何か違和感を感じていた。

男「話が読めた、そこから全魔力を使って転移したんじゃない?」

エルフ「そなたら本当に頭の中を読んではいないよな?」

>>31
忘れてました>>27から改めて投下します

>>27の続き

男「本で読んだよ、神様の使いだったっけ?」

狐「そんな感じで合ってるかな」

エルフ「このような小さき者が、か?」

狐「小さいとは心外だなぁ、君も相当でしょ?」

狐はエルフの胸あたりを見てそう言った

エルフ「今どこを見て言った!」

狐「正に自分の胸に聞いてみれば?」ケケッ

エルフ「余計なお世話だ!」

狐「話が逸れたね、ボクは狐、男のことは主と呼ばせてもらうよヨロシクね!」

男「こちらこそよろしくね、僕は男えーと…?」


狐「ああそっか、狐とでも呼んでくれればいいよ」

男「じゃそれでいいや、狐こちらこそよろしく」

男(でも狐ってここら辺にはいないはず…うーん)

考え事をしていると黙っていたエルフが業を煮やして男に言った

エルフ「のう、男よ」

男「なんだい?(…あれ?)」

エルフ「お腹減ったからすーぷとやらをくれ」

男「ゴメンご飯まだだったね、じゃあ話はその後にしようか」


狐「ねえねえ男」

男「何だい?」

狐「『すーぷ』ってなーに?」

男「君もか!?スープってそんなに知名度低い?」

男「じゃあご飯にしようか」

二人「わくわく」

男が用意したものは簡単なものだ、スープ、パン、サラダetc…
しかし量は作り置きするつもりだった為、三人でも満腹になるほどだった


~食後~

エルフ「うむ、美味しかったごちそうさま」ケプッ

男「おおーたくさん食べたなー」

男としては多すぎたかなと思うほどの量だったがそんなに余らなかった

狐「ごちそうさま、男の作る料理は美味しいね」

エルフ「でも少し余ってしまったぞ…」シュン

男「ああ別に構わないよ?保存できるからね」

男「じゃ、お腹を満たした所で説明してもらおうかな?」

エルフ「男、まずは私から話そう、あそこで倒れていた理由だが…」

男「その前に、なぜ僕の名前を知ってるの?」

エルフ「?さっき狐に名乗っていたではないか」

男「そういえばそうだね、じゃ続けて?」


エルフ「まず、結構な準備を整え里から出てきて、五日目にこの街に着いた」

狐「君、相当前に出て来てたんだねー」

エルフ「さらに二日後の昼、広場に出て水を飲んだ」

男「つまり今日?」

エルフ「そうだ、その後…」

今日の話に差し掛かると急に言葉に詰まってしまった

狐「どしたの?まさか変な人に捕まったとか?」

半ば冗談で言ったことだった

エルフ「な、なぜわかるもしや頭の中を読んだか!?」

狐「…本当?冗談で言ったんだけど」

エルフ「本当だ、変な商人に捕まってのー」

狐「……」

エルフが話している中、狐は何か違和感を感じていた。


だが考え込む狐を気にせず話は進む

男「話が読めた、そこから全魔力を使って転移したんじゃない?」

エルフ「そなたら本当に頭の中を読んではいないよな?」

男「そしたら魔力切れで疲れて動けかった訳だ、そして偶然見つけた僕に水をもらい復活
と」

エルフ「私の説明は聞くに値しないとでも言うのか?」ジワ…

男「悪かったから泣きそうにならないで?」

エルフ「馬鹿を申すな!泣きそうになどなっておらぬわ!」プイ

エルフは拗ねてそっぽを向いてしまったが男は気にしなかった

狐「ねえ主?一つ疑問があるんだけど」

男「どうぞ?」

狐「魔力切れの状態は水で復活しないよね?」

男「いやー恥ずかしい話、水と間違えて錬金した液体の薬を渡しちゃってね…」

狐「それが偶然魔力を回復したってこと?」

男「そゆこと、どうなるか心配だったけどね」


狐「なあ主―」

男「なんだい?狐?」

狐「主の後ろに鬼が立ってるよ?」ケケッ

男がそんなわけないだろうと後ろを向くと…

エルフ「聞こえたぞ?私に水ではなく変なものを飲ませたのか?」

エルフが怒りに満ちた様子で立っていた

男「そんな怖い顔しなくても…許して?」

エルフ「許さぬ、そなたには罰を受けてもらう!」

男「ええー、許してくれないの?」

エルフ「当たり前だ!私に変なものを飲ませたのだから、罰を受けるのは当然であろう?」

狐「筋が通ってるね」

男「狐も味方しないか…で?僕はどんな罰を受けるのかな?」

エルフ「罰として明日もすーぷを作ること!良いな!」

男「へ…?」

自分が想像していた物より相当軽く、驚く男


エルフ「あのスープは絶品だった…美味しいものは手間がかかるであろう?」

男「ま、ハズレではないね、そんなに美味かった?」

狐「主、多分お腹空いてたからだとおもうよ?」コソッ

エルフ「だったら手間の掛かるものを作らせれば罰になるではないか!」

男「その発想はどこから来るんだろう…」

エルフ「良いな!明日も作るのだぞ!」

エルフが見事な啖呵を切りビシッと決めていると狐が一言

狐「エルフ…お前明日も泊まるのか?」

エルフ「なっ…///(なんということだ!これでは泊まりを希望するようなものではないか!)」

狐の的確な一言で顔が真っ赤になるエルフ

男「そうなるね、まぁ別にいいけどさ」

エルフは顔が恥ずかしさのあまり部屋の隅に行ってしまった。

>>41ミス


エルフ「あのスープは絶品だった…美味しいものは手間がかかるであろう?」

男「ま、ハズレではないね、そんなに美味かった?」

狐「主、多分お腹空いてたからだとおもうよ?」コソッ

エルフ「だったら手間の掛かるものを作らせれば罰になるではないか!」

男「その発想はどこから来るんだろう…」

エルフ「良いな!明日も作るのだぞ!」

エルフが見事な啖呵を切りビシッと決めていると狐が一言

狐「エルフ…お前明日も泊まるのか?」

エルフ「なっ…///(なんということだ!これでは泊まりを希望するようなものではないか!)」

狐の的確な一言で顔が真っ赤になるエルフ

男「そうなるね、まぁ別にいいけどさ」

エルフは恥ずかしさのあまり、部屋の隅に行ってしまった。


男「顔真っ赤なエルフはおいといて、次は狐の番だ」

狐「そうだね、なんでも話すよ?」

男「まずは、なんでこの屋敷にいるのかを教えて?」

狐「さっきも言ったけど前の家主についてきただけだよ」

男「それだけ?」

狐「帰れなくなって住み着いちゃった♪」テヘ

男「そんなに明るく言われても…じゃもう一つ、なぜ人型になれるの?」

狐「そ、それは…」

狐は急にどもってしまった

狐(主と話したくて練習した、なんて恥ずかしくて言えないよー!)

男「無理強いはしないからいいよ?」


狐「う…うん!それが良い!誰にでも話したく無いことは一つや二つあるきゃらね!」

男(明らかに動揺してるよなあ…噛んだし…)

狐(ああああぁぁぁなんであそこで噛むかなぁ…うぅ…)

男「さてエルフは…?」

部屋の隅を見るとまだうずくまっていたので狐にこっそりとある気になることを話した。

男「なー狐?」

狐「なんだ?主?」

男「さっきのエルフの話だけど…」

狐「主も感じたか?」

男「ああ、もちろん」

二人「あれは嘘だな(ね)」

今日はここまでです。ミスが目立ったので明日はもっと慎重に投稿します
おそらく7時~8時位にいつも書くと思います。
最後に>>31指摘ありがとうございました。全く気付いてませんでした…


狐「何か変だったんだよねー『何か』が」

男「おそらく魔力切れは本当だろうね」

狐「ただ捕まったことが嘘でしょ?」

男「多分ね、嫌な事でもあったのかな?」

狐「そんな感じだね、何かはわからないけど…」

男「深く聞かない方がいいかな?」

狐「ま、ほっとけばいつか話すよ」

男「そんなもの?」

狐「そんなものだよ」


そんなことを話していると隅にいたエルフがやっと復活した

エルフ「ん…?そなたら何をコソコソと話しておる?」

狐「ああ、そろそろ遅いしね、お風呂に入りたいと話してたんだよ」

男「エルフも入る?広くて結構良いよ?」

エルフ「では入らせてもらうとしよう、だが…」

男「何か引っかかる?」

エルフ「着替えはどうするのだ?」

狐「あ、ボクもそれ気になってた」

男「なんとかなるよ、僕の服以上に女物の服が大量にあるから」

エルフ「なぜ、男の家に女物の服がある?まさか女装趣味か!?」

男「そんなように見える?」

エルフ「見える」

男「そこまでキッパリと言われるとへこむな…」ハハッ


狐「男って意外と精神弱いもんねー」ケケッ

男「なんで知ってるの!?」

狐「ボクがこの家にどれだけ住んでると思ってるのさ、男の事は大体わかるよ」

エルフ「ふーむ、男は精神が弱いのか…」ニヤッ

男「え…笑顔が怖いよ!?」

エルフ「まあ良いそれより今は風呂だ、着替えがあるという部屋はどこだ?」

男「そこの廊下の角」

狐「どんな服でもあるの?」

男「詳しい種類は知らないから自分で見てくれる?」


~衣装部屋~

男「ここだ」

男(ここ僕の屋敷で一二の広さを誇る部屋なのにね…)

エルフ「お、おい男ここは本当にそなたの家か?」

エルフが驚愕するのも無理はない、重たそうな扉を開けると数百着という服が並んで掛けてあり、
部屋の正確な広さがわからないほどだ

男「ここにどっかのアホな女が置いてった大量の服がある、気に入ったのがあればもらっていいから」

男(まー結構際どいのもあるけどね…)

エルフ「なー男この派手な服はどうだ?」

そういってエルフが手に取った服はメイド服だった、ご丁寧にカチューシャまで付いている。
なぜかとても気に入っているようだ

男「その服って派手なの?ま、気に入ったならいいけど」

エルフ「これだこれにするぞ!」

なんかちょっと具合悪いんでここまでです。次は二日後くらいかな?
(私の勝手な想像ですが)見ている人も少ないようなので休ませてもらいます
もし楽しみにしている人がいたなら申し訳ありません


男「そんなに気に入ったか?」

エルフ「この服は前に本で見てずっと着たかったのだ!」

狐「どうして?」

エルフ「可愛いだろう?」

狐「また漠然とした理由だね、あ、あった」

男「狐も決まったか?」

狐の手元には今着ている巫女服とあまり変わらない服があった

狐「なんでボクの服によく似た巫女服まであるの?」

男「さあ?あいつ曰く素材が違うらしいよ?」


狐「素材って…主の言うアホな女に会ってみたいね」ケケッ

男「やめとけ、トラウマ確定だ」

エルフ「随分な物言いだな」

男「嫌いだからね」

とここで狐があることを思い出す

狐「あれ、そういえばお風呂だったらこんな服ダメじゃないのかい?」

男「いや、今選んだのは明日の服だ、ネグリジェだっけ?それは風呂場にあるから」

エルフ「じゃあ初めからさっさと案内しろ、男よ」

男「急に上から!?」

狐「そうだー案内しろー!」

男「はいはい、こちらですよってね」


~大浴場~

狐「……」ポカーン

エルフ「男…」

男「何?」

エルフ「そなたの屋敷はどうなっておる!」

男「なんで怒ってんの?」

エルフ「最初から気になってはいたがこの屋敷は広すぎる!」

男「知らないよ!」

エルフ「大広間に、衣装部屋、研究室に広間ほどの部屋が他たくさん、挙句の果てには
大浴場だと!?一体どうなっておる!」

男「僕に言われても困る、それは前の家主に言って?」

エルフ「その家主がいないからそなたにぶつけているのであろうが!」

男「うわ…理不尽、怒ってないでさっさと入って?」


男「僕は寝る部屋を用意して広間にいるから」

狐「わかったよ、じゃあねー」

エルフ「こ、こら男まだ話は終わっとらんぞ!」

狐「はいはいおとなしく入ろうねー」ケケッ

エルフ「なにをする!おい待て引きずるなあああぁぁぁぁ」ズルズル

エルフは狐に脱衣所へとひきずりこまれたが、狐はすぐ出てきて

狐「あー男、一応言っとくけどさ…」

男「何か用?」

狐は笑いながら言った

狐「覗かないでよ?」ケケッ

男「変なこと言ってないで早く入りな」

狐「はーい(ちょっと残念かな…)」


~入浴中~

狐「おお、見てよエルフ!泳げるよこのお風呂!」バシャバシャ

狐は広い大浴場で犬掻きといえなくもない微妙な泳ぎ方をしている

エルフ「そなたは子供か?広いとは言っても行儀良く入れ」

狐「体はまだまだ子供だもーん」バシャバシャ

狐はからかうように言う

エルフ「そなた、私を馬鹿にして楽しんでいるであろう?」

狐「あれ?いまさら気付いた?」ケケッ

エルフ「やはり楽しんでいたのか?」

エルフは静かに怒りを見せながら言った


狐「怒ってるとこ悪いけどさ」

エルフ「なんだ!」

狐「ボクは男を何年も見てたから親しく話せているけど、君はなんで親しげに話せるの?」

エルフ「む…それはだな」

狐「話せないこと?」

エルフ「いや、簡単に言えば懐かしい気がする…だな」

狐「懐かしい?」

エルフ「うむ、私が恩を感じている人物だ」

狐「その人の名前は?」

エルフ「名前は知らぬ…偽名しか教えてくれなかった…」


狐「じゃそれでいいよ」

エルフ「その名は…ん?なぜ今日会った素性も知れぬものに言わねばならぬ?」

狐「わーお、素晴らしいほどの拒否だね」

エルフ「よく知らぬものに詳しく話さない方がいい…これは受け売りだ」

狐「でもさーこれから一緒に暮らす訳だしこの程度話せなくていいの?」

エルフ「そなたはたまに正論を言うな…ならば話してやろう」

狐「よしっ!」

エルフ「その者は旅人と名乗っていたな」

狐「旅人ねえ…もしかして一目惚れとか?」ケケッ

エルフ「ば、馬鹿なことを申すな!惚れてなどおらぬわ!」



狐「(図星だね…)一目惚れねー」

エルフ「だ、だから惚れてなどおらぬと言っておろうが!」

狐「嘘だって顔に書いてあるよ」ケケッ

エルフ「だから惚れておらぬと…」カァァ

狐「恥ずかしがっちゃって、そんなキャラだっけ?」

エルフ「そなたもしや、からかっていないか?」

狐「あれ?初めから言ってなかったっけ?」

エルフ「ふざけるな!からかわれて楽しい者などいるはずがないだろう!」

顔を真っ赤にして怒りだすエルフ


狐「顔真っ赤だね、のぼせた?」

エルフ「そなたのせいであろうが!」

狐「おー怖い怖い、怒ると血圧あがるよ?」

エルフ「大きなお世話だ!だいたい私はまだそのような歳では無い!」

狐「響くからギャーギャー騒がないでよ、胸ないくせに…」

エルフ「む、胸の話は今関係ないであろう!だいたいそなたも同じであろうが!」

狐「フフフ…ボクは貧しいだけだよ?」

エルフ「わ、私もあるであろう!?」

狐「見栄は張れてるけど残念ながら壁が見えるよ?」

エルフ「おい…泣くぞ?」


狐「泣いてみれば?」

エルフ「できるならそうしている…はぁ、疲れる…」

狐「じゃ出よっかボクは汗を流せればいいしね」

エルフ「そうするか今日は色々ありすぎた…」

狐「色々って?」

エルフ「色々は色々だ、私はもう寝ることにしよう…」

狐「ちぇっつまんないのー」トテトテ

二人は早めに大浴場を後にした


~広間~

男「寝具って何がいいんだ?」

男は一人呟いた

男「エルフはベッドっぽいし狐は布団とかいうやつだろうな…」

男(どっちも無いな…こんなときは)

男「魔法を使うか…じゃあいつらが出てからでいいか」

男はそう言い残し部屋を出た

男(多分長いよね)

~1f廊下~

男「ここだ」

屋敷の廊下を進み一つのドアへとたどり着く

男「解錠」

重そうなドアがゆっくりと開かれる


~召喚の間~

ここは屋敷の隠れ部屋とも言える場所だ、大きな部屋には家具の類が一切無く
あるのは床に書かれた魔方陣しか無い

男「出てきてくれるかい?僕と契約せし精霊イフリート…」

魔方陣から炎が吹き出し、その炎が答える

「呼んだか?わが主…」

男「呼んだよ、久しぶりだね」

「ああ、久しぶりだ最近何してたんだ?」

男「特に何もしてないね」

「ガハハハッそうかいそうかい」

炎らしきものは豪快に笑った

男「時間が無いから要点だけ言うよ?よく聞いてくれ」

「…焦ってるな、何かあったみてぇだな?」


男「簡単に言うと『あれ』が来た」

「『あれ』って言えば…あ!燃えるゴミの日か!」

男「変わって無いみたいで結構だけど、次ふざけたら凍結させるよ?」

「ジョーダンだって目が本気だぜ?」

男「ふざけてないでどうするべきかな?今後の身の振り方は」

「そんなこと言われてもゴミの事はよくわからねぇよ」

ふざけた様子で話している炎とは対照的に男は少し怒っていた

男「吹き荒れろ吹雪の如き凍てつく風よ…」ブツブツ…

「わわっ!タンマタンマ!凍り始めてるから!」

男「次ふざけたら凍結と言ったはずだけど?」

「わかったよ…ほっとくのが一番じゃねーの?」


男「やっぱり?でもなあ…」

「ま、ツケを払うときが来たのさ、そうだろ?た・び・び・とさん?」

男「ツケねえ…踏み倒せないかな?」

「無理だろうな、おとなしく払え」

男「借金取りじゃないんだから…、まあしばらく様子見ってことで」

「その結論なら俺いらなくねーか?」

男「ま、今日は会いに来ただけだから」

「アホなこと言ってないで…ん?」

男「どうかした?」


「…主、広間に誰か来たみたいだぞ?」

男「嘘だろ…早すぎるぞあいつら、じゃあな!」

男はそう言って部屋から出てしまった

男「えーと…施錠!」ガチャ

男「これで良し!」

男は召喚の間を飛び出し一目散に広間へと向かった

~広間~

エルフ「なんだ、何も用意していないではないか」

狐「主ーどこー?」

男「ここだ」

どうやら二人は今来たようだ着替えも完了し後は寝るだけといった様相だ

エルフ「男、どこに行っていたのだ?」

男「トイレだトイレ、まさかこんなに早いとは思っていなくてね」

狐「ふーん、で寝る場所は?」

男「どんなので寝たい?」

エルフ「選べるのか?」

男「もちろんさ」


狐「ならボクは布団を頼もうかな」

エルフ「じゃあ私は…てんがい?付きとやらを頼む」

男「はいはい布団に天蓋付きね…ほいっと」サラサラ…

狐「魔方陣を書けば出てくるの?」

男「適当に書いて投げれば出せるよ、大体の物はね」ポィ

男が魔方陣を床に投げると日本でよく見る布団と、どこかのお嬢様が使っていそうなベッドが現れた

男「こんなとこかな?」

狐「すごい!すごい!久々の布団だよー!」

狐は布団の上でバタバタとはしゃいでいる、楽しそうだ

エルフ「ここまでくると何でもありじゃな…男よ」

男「一日で消えるけどね、ま、一時しのぎってワケ」

既に二人は布団に潜り込んでいる、狐に至ってはもう目が開かなくなってきているようだ


男「明日は早いって訳でもないが早く寝ろよー」

エルフ「わかっておる」

狐「おやすみー主」

男「おやすみ、エルフもなー」

エルフ「あ、ああ、おやすみ男」

~夜~

エルフは夢を見た、それはまだ幼い時のエルフが里にいる夢―――

大きな木の下に見慣れない人がいた、赤いマントを地面に敷き寝転がっていた

幼エルフ「あなたはだーれ?」

「えーと…旅人とでも名乗っておこうかな」

幼エルフ「ぎめい?」

旅人「偽名って…難しい言葉を知ってるね、君は?」

幼エルフ「エルフ…」

旅人「エルフか、よろしくね」


幼エルフ「おにいさんなんでここにいるの?」

旅人「うん?行き倒れて拾われた…のかな?」

幼エルフ「いきだおれ?」

旅人「そこからか…要するに助けられたってこと」

幼エルフ「ふーん」

旅人「君は何をしてるの?」

幼エルフ「ここおきにいりのばしょ、いつもここでほんをよむの…」

幼エルフの手元を見ると確かに本を持っていた

旅人「本か…何を読んでるの?」

幼エルフ「よめないとこがあるからわかんない」

旅人「読めないの?」


幼エルフ「うん、まだしらないのがたくさん」

旅人「ハハハ…そうかじゃあ読んであげようか?」

幼エルフ「いいの!?」パァァ

よほど嬉しかったのだろうか、元々明るかった顔は更に明るくなり
まぶしさを感じるほどだ

旅人「わからないとこは聞いてね?」

幼エルフ「うん!」


~数十分後~

旅人「今日はここまでかな」

幼エルフ「もうおわり?」

旅人「僕にもやることがあるからね」

幼エルフ「あしたもここにいる?」

旅人「いつでもいるけどそれがどうかした?」

幼エルフ「あしたもよんで!」

旅人「お安い御用さ、また明日ね」

幼エルフ「やった!ばいばーい」

幼いエルフは元気に帰って行った

今、少し立て込んでいて次にいつ書けるかわからないので
もし落ちそうだったら保守お願いします


~朝方~

外が明るくなり始めた頃にエルフは起きた

エルフ「夢か…懐かしい夢だったな」

エルフ「思えば私は毎日あの木の下に行っていたな…」

そこでふと思う

エルフ「そういえば、旅人はいつから私の傍から居なくなった?」

エルフは自分の幼いときの記憶を思い返す。木の下で旅人と毎日話していた事は
思い出せるがそこからの記憶はまるで穴が空いたように何も無かった


エルフ「何かモヤモヤするな…旅人が消えたのはいつだ?うーん…」

エルフは頭を抱え悩んでいた

エルフ「ん?なんだこの紙は」

ふと部屋を見渡すと紙が目に入る、そこにはこう書かれていた

エルフ「この部屋で寝てるからお腹空いたら起こしに来て?とな?」

紙の裏にはご丁寧に簡単な地図も書いてある

エルフ「考えていても仕方ないか」

エルフは少し混乱する頭を気にせず眠りについた


~召喚の間~

話は昨晩エルフと狐が眠りについた頃に戻る
男は再び召喚の間へと来ていた

男「森の大賢者の一人娘、来てくれる?」

魔方陣から大量の羽が吹き出す――

男「相変わらずすごい魔法だね」

「マスター何か用?」

大量の羽の中心から真っ白な梟が現れ、ゆっくりと床に降下する

男「久々の再開なのに冷めてるねー」

「いつものこと…で?何?」

男「とりあえずその魔法を解いてくれない?」

「―分かった」ブツブツ

梟が何か唱え出すと部屋の羽が消え…黒いローブを着た少女が現れた


「これでいい?」

男「それでいい、流石に梟と話すのはね…」

「―そう」

男「さて本題に入ろうか」

「何かあった?」

男「あのエルフが今この屋敷に来てる」

「何故?」


男「恥ずかしながら…気付かずに招いちゃってね」

「あれはあなたの弱み――どうするの?」

男「それを教えて欲しくて君を呼んだのさ」

「どうしようもない」

男「うわ即答…やっぱり?」

「無論、過去のツケを払って」

男「君も借金取りみたいな事を言うね」


「君も?」

男「イフリートにも同じことを言われたのさ」

イフリートという言葉を聞き、若干怒っている…ような気がした

「あのバカと一緒にされるのは嫌…」

男「珍しく怒ってるね、何かあった?」

「あいつは私の羽を焼こうとした、許さない―」

少女とは思えないような怖い目を見せている

男「怖っ何か黒いものが見えるよ?ま、落ち着け」ナデナデ

男は落ち着かせようと少女の頭を撫でた


「マスター?何故撫でる?」

男「落ち着いてもらおうと思ってね、嫌?」ナデナデ

「嫌じゃない」

少女の顔が嬉しそうだ。どうやら落ち着いたらしい

「それで?」

男「ん?」ナデナデ

「私を呼んだからには相応の理由があるはず」

男「ああそっかそっか」ピタッ

「(手が止まった…残念…)」




男「えっとね、エルフと狐に君の魔法を教えて欲しい」

「マスターの願いなら構わないけど―」

男「けど?」

「狐とは誰?」

男「ああ知らないのか、何かずいぶん前からここにいたらしいよ?」

「ずいぶん前から…?それは…女?」

男「見る限りではね、17歳くらいかな?」

「マスターに近づく女は死ね」ボソッ

男「サラっと怖いこと言うな、小さく言っても聞こえてるぞ?」


「マスターの隣には私が居れば良い―」ブツブツ

男「はいはい、また今度な」

このままでは話が進まないと話題を戻そうとするが少女が話しかけてくる

「マスターはずるい…」

男「突然どうしたの?というか僕ってずるい?」

「相当」

男「へこむよ?」

「へこんだ姿も見たい」

合間を見て投下していますが、またしばらく無理だと思います。
読んでくれている方、支援してくれた方、申し訳ありません


男「はいはい、そろそろ話を戻そうか」

「でももっと話したい…」

残念そうに少女がポツリと呟くと男が一言

男「あーあ、魔法を教えてくれればいくらでも話せるのになー」

「……!!!」


男「でもこのままだとその話もできないなー」

わざとらしい口調だったが、効果は予想以上だった

「それで!?いつから!?どのように!?」

男「おおすごい食いつき…」

「マスター早く!詳細を!」

予想以上の興奮に少し引く男

男「あ、ああさっきも言ったけどエルフと狐に魔法を教えて欲しい」

「どの程度!?やれと言われれば初級から禁術まで!」

少女は今にも飛びかかりそうな勢いで捲し立てるように話す


男「まず禁術はいらない、初めは適性からお願いしないとね」

「いつ!?明日から!?」

男「そろそろ落ち着こうか」ナデナデ

そう言って男はまた少女の頭を撫でた

「はふ…マスターが言うなら…」

男「明日早速お願いできる?」

「了解…あとは?」

男「あと?いやこのままお帰り願おうかと…」


「魔法を教えるとしても魔方陣から人を呼び出せば驚く」

男「だろうね、あんまりやらないからね」

「つまり私を帰してまた呼び出すと説明が面倒、魔力も無駄」

男「確かに…あれ?珍しく饒舌だね?」

そんな男の言葉は無視して少女は続ける

「つまり私を泊めるべき」

男「すごい結論だね」

男「でもそれって明日二人が居ないところで呼び出せば解決じゃ?」


「………」

男「………」

「私を泊めるべき」

男「リテイク!?」

「返事は?」

男「yesと答えないと?」

「泣く」

男「泣きそうには見えないけど?」

「心で泣く」

男「何かほっといても良さそうだけど?」

「寂しいと死んじゃう」

男「大丈夫寂しさでは死なないから」


「とにかく泊めて」

男「いつもより積極的だね…わかったよ(ま、甘えたい年頃なのかな?)」

「聞き分けが良くて嬉しい」

男「あーそうだ僕の部屋で良い?」

「…!!!」


男「実は広間で二人が寝てるから邪魔したくなくてね」

「分かった!さあ早く!」

男「何か急に元気になってない?じゃ出るか」

男「施錠!」ガチャ

「で?マスターの部屋はどこ?」

男「2階かな」


~2f寝室~

男「この部屋だよ」

「殺風景」

男「君さオブラートに包むって言葉知ってる?」

「オブラート?おいしい物?」

男「おいしくはないかな?」


男(確かにちょっと寂しいかな?)

男の寝室は質素な部屋で机、椅子、ベッド等、必要最低限の物しかなく
広い部屋の割に物が無く、正に殺風景であった

男「ああ言い忘れてたけどさ」

「何?」

男「なんて呼べばいい?」

「今更?」

男「いつも名前で呼んでなかったからね」

「梟…」

男「フクロウ?」


男「フクロウ?」

梟「私の名前…」

男「ふーん」

梟「変?」

男「変じゃないけど、何でそんな名前かなーって思っただけ」

梟「聞きたい?」

男「別にいいや、よろしくね梟」

梟「(むぅ…いじわる…)こちらこそ、マスター」


男「さて…もう寝る?」

梟「でもベッドが一つ…」

男「別に二人で寝れば問題ないでしょ?梟ちっちゃいから」

梟「ちっちゃくない!」

男「僕の半分以下の背で何言ってるの?」

梟「むー」プクー

男「ほっぺ膨らませてないでほら寝るぞ?」

梟「え?」

男「え?」


梟「寝る?私と?マスターが?同じベッドで?」

梟の頭に疑問符が飛び交う

男「今更そこ?別に変な事はしないから安心していいよ?」

梟「そのような人とは思っていない」

男「僕のイメージどうなってるの?」

梟「紳士」

男「悪く言うと?」


梟「へたれ」

男「君はオブラートという言葉を早く覚えてくれないか?」

梟「前向きに検討する」

男「それはやりませんと一緒だ」

梟「善処する」

男「君さては意味知ってるね?」

梟「……」

男「……(何この沈黙)」

梟「近日中改めて」

男「最終手段使ったなコイツ!?」


梟「マスター」

男「何だい?」

梟「そろそろ言葉遊びは飽きてきた」

男「じゃあ寝ようか、梟はそのままで寝れる?」

梟「まったく問題無いむしろどんとこい」

男「んじゃ適当に入ってくれ、おやすみー」

梟「お…おやすみ」

男「……」グゥ

男はベッドに潜り込んですぐ眠ってしまった、そんな姿を梟はじっと見ている


梟「あああああ…どうしよどうしよ」

梟はもともとクール?な性格などでは無かった、普段の言動は男に注目させるための
傍から見れば理解不能な梟なりのよくわからない作戦である

梟「久しぶりに呼ばれていきなりベットインとか…///」

梟「き、緊張する…寝るだけなのに…」

梟は男を起こさないよう慎重にベッドに潜り込んだ

梟(ど、どどどどうするべき?)

梟(ね、寝れない……こんなにマスターが近くに…)


梟「(マスター寝てるよね?)…なら」ギュ

梟は寝ている男をギュッと優しく抱きしめた

梟「おやすみなさい…」ドキドキ

ドキドキと高鳴る鼓動を抑え梟は眠りについた…訳ではなかった

梟(やっぱり眠れないよ…///)

こうして夜は更けていく―――――


~翌朝~

エルフ「おい、狐」

狐「何だい?」

エルフ「これはどうするべきだ?」

狐「さぁ?」

二人は地図に書かれた通り寝室へと来て男を起こそうと布団を捲った
だがそこで見たものは――

梟「むにゃ…」

男に抱きついて寝ている少女だった


狐「まず状況を整理しようか」

エルフ「そうだな、確かあの紙に書いてあった通りに男を起こしに来て…」

狐「部屋に鍵が掛かってなくて入った、ここまでは合ってるよね?」

エルフ「ああ、部屋に入った後、何か妙に膨らんでるなと思ったな」

狐「確かにね、何かと思って捲ると――」

エルフ「私たちの知らぬ女が男に抱きついて寝ていた訳だ」

狐「やっぱり気分悪い?」

エルフ「当然だ、一応私の恩人だぞ?」

狐「そりゃそうか、それよりどうするこれ?」

エルフ「どうするもこうするも…起こすしかなかろう」

狐「ま、起こした後にゆっくりと聞かせてもらおうか」ケケッ


エルフ「…そうだな」

狐「もしかして怒ってる?」

エルフ「何故私が怒りを感じるのだ?」

言葉はいたって冷静だが今にも拳が飛んできそうな雰囲気だ

狐「後ろに黒いものを感じるからね」

エルフ「気のせいだ」

狐「ま、いいや起きてー主ー」

しかし男は起きない


エルフ「そんなに弱い言い方では起きるはずがないであろう?」

狐「じゃーどうするのさ?」

エルフ「愚か者にはこうするに決まっておろう!」

起きない者にする行為といったら相場は決まっている
エルフは二人に向かって大声で叫んだ!

エルフ「起きろ!!!このたわけが!!!!」

耳を貫くような怒鳴り声が響く

男「うるっさいな……ん?エルフに狐?」

梟「耳痛い…(あれ?私マスターに抱きついて…あわわわわ…)」

狐「お目覚めかな?主?」

以上書けなかった部分でした
溜め尽きたんで今日も終了です


エルフ「弁明があるなら聞こうか?」

男に向かってエルフは怒りを露わにして言う

男「朝から何?僕の寝起きは悪いんだけど?」

まだ眠たそうにしている男に狐は言った

狐「寝起きでハッキリしないのはわかるけどさ、その隣の子は?」

男「隣の子?…あ」

ここでようやく怒りの理由に気付いた様子の男


エルフ「そのヤバッみたいな顔はなんだ?」

男「怒りの理由に気付ちゃったからね」

狐「おめでとうと言うべきかい?」

男「朝から憂鬱だよ全く…」

エルフ「とにかく!何か言うことはないのか!」

男「朝から怒ると血圧上がるぞ?」

エルフ「だから私はそのような歳では無い!」

男「狐、なんでエルフはご機嫌ななめ?」

狐「ボクもご機嫌ナナメだけど?」


男「僕何かしたっけなあ…」

すると忘れられていた梟が更に二人を怒らせるようなことを言ってしまう

梟「マスターこの二人はだーれ?」

…ちなみに寝起きで頭が回らず素である

狐「聞いたよ?マスターだって?いい御身分だねー主?」

エルフ「聞き捨てならぬな…そうであろう?狐よ?」

二人の顔が更に般若のように変わる

狐「君と意見が合うなんてね、驚きだよ」ケケッ


男「余計なこと言うなよ…狐も敵になったぞ?」

梟「…ごめんなさい」シュン

エルフ「というかお主はさっさと腕を離さぬか!」

梟「嫌!もう少しこのままがいい!」

梟は断固拒否といった感じだ

男「火に油を注がないでよ梟…」

エルフ「フフフ…話すことは山ほどあるぞ?男?」

狐「完全同意ってやつだね」

男(さて…逃げるか)


二人「さあ!説明してもらおうか!」

男「とりあえず説明は後!さあご飯にしようか!」

男はごまかすように脇に梟を抱え部屋を飛び出した

狐「あ、逃げた!」

エルフ「追うぞ!狐!」

狐「もちろん!」


~広間~

男「ったくあいつら何なんだ?」

梟「嫉妬?」

男「何に嫉妬するって言うのさ…」

梟「マスターが魅力的だから」

男「嘘でも嬉しいね」

梟「嘘などでは無い、私の本音」

男「そういえば梟…?」


梟「何?」

男「いまさら口調戻しても遅いぞ?」

梟「何の事?(まさか…)」

男「昨晩と言えばわかる?」

梟「!!!」

男「いやー長い付き合いだけど気付かなかったねー」

梟「あぁぁ…私の努力の作戦が…」

男「たかが10歳が何言ってるのさ」

梟「大体、私のことを相手にしないマスターがわるい!」

男「見事な責任転換だね」


梟「どこから聞いてたの!?」

男「え?」

梟「昨日どこから聞いてたかって言ってるの!」

男「さあね『久々に呼ばれてベッドインとか…///』なんて聞いてないよ?」

梟「初めから聞いてるじゃん!マスター!」

男「さあてどうだったかな?」ケケッ

男はからかうように狐のような笑い方をした

男「というか無理せずに元々の喋り方でいいからね?」

梟「むー…」

男「返事は?」

梟「わかった…(次はどんな作戦で…)」

男「言っとくけど次の作戦は無駄だよ?」


梟「そんなことかんがえてなななないよ!?」

男「これからは素で勝負しなよ?」

梟「むー…とりあえず、マスターあの二人はどーするの?」

男「とりあえずご飯食べさせればおとなしくなると思うよ?」

梟「そーゆーのでいいの?ペットじゃあるまいし」

男「細かいことは気にしない!」

男「さー朝ご飯の用意だ、昨日の残りでいいか」

梟「マ…マスター!悪魔!悪魔!」

男「急に何を言って……あ、あはは…」

エルフ「鬼の次は悪魔呼ばわりか…流石に少し来るものがあるな」

男の目の前には悪魔…もといエルフと狐が仁王立ちしていた

狐「君は怖い顔だもんねー」

エルフ「今はそなたも…だが?」

狐「ボクも!?」


男「あいつら二人は漫才でもしてるのか?」

梟「さあ?」

エルフ「さっきはよくも逃げたな?さあ其処に直れ!成敗してくれる!」

男「お前は役人か!とりあえずご飯食べて落ち着け」

梟(食べものではつられないでしょ…)

エルフ「狐どうする?」

狐「ボクは食べるけど?」

梟(ウソでしょ!?)


エルフ「仕方ない、腹が減っては戦はできぬからな一時休戦だ」

梟「ご飯で休戦ってそーとー緊張感ないね、マスター?」

男「それ以前に緊張感って概念はあるのか?」

エルフ「男?何をしておるー?早くご飯にせぬか」

狐「ボクお腹空いたよー」

二人はさっきまで怒っていた事をなかったことのように行儀良く料理を待っていた

梟「…無さそう」


~食後~

狐「ごちそうさまでした」

エルフ「さて、食事も済んだところで説明願おうか?」

男「まだ忘れてないのね…」

エルフ「当然であろう?私の記憶力を馬鹿にしてもらっては困る」

狐「もしかしてさ胸に行く栄養がぜーんぶ頭に行ったんじゃない?」

エルフ「何か言ったか!」

狐「なーんにも言ってないよ」ケケッ

休日に結構書いたんで暫くは安定した投下になると思います。
ss初投稿ですが楽しんでいただけていれば幸いです。


男「というか何でさっきまで烈火の如く怒ってたのさ?」

エルフ「それは…その…」

狐「男に一目惚れだってさ、つまり嫉妬だね」

エルフ「そ、そんなことは言っていないであろう!大体そなたが私の恩人に似ているから悪いのだ!」

男「まーた理不尽な…」

エルフ「だ、大体!私がそなたに惚れているなどとは天地がひっくり返ってもありえぬ事だからな!かかか勘違いするで無いぞ!?」

そう言うエルフの顔は真っ赤である

男「はいはいわかりましたよってね」


狐「あー忘れてた主ー?」

男「何さ?」

狐「ボクは今怒っているんだけどさ」

男「顔は嬉しそうだけど?」

狐(良い事思いついたからね♪)

狐「主は罰を受けるべきだとは思わないかい?」

男「まさか僕が怒らせた責任を取れと?」

狐「物わかりが早くて助かるよ、で罰だけど…」


男「罰は確定なのか…できる範囲で頼むよ?」

狐「なーに簡単さ今日の夜はボクと寝てもらうよ?」

男「なんでエルフといい狐といい罰じゃない事を罰って言うんだか…」

狐「楽で良いと思わないかい?」

エルフ「おいそこの二人、仲が良い事は結構だが…私の話はまだ終わっていないぞ?」

男「ゴメンゴメンじゃあどうぞ?」


エルフ「そなたの横のちんちくりんは何者なのだ?」

梟「マスター『ちんちくりん』ってなーに?」

男「あれだちっちゃくて可愛いって意味」

梟「か…かわいい!?マスター!私、かわいい!?」

男「可愛いよ?狐とエルフと同じくらいかな?」

梟(かわいいって言われたかわいいって言われたかわいいって言われた…///)

男「よし沈静化成功」

狐「狙ってやったのかい?」

男「昔からこう言うと心がどっか飛んでくみたいでね、よく利用してるんだ」


エルフ「利用とはな……そなたも人が悪いな」

男「策士と言ってくれ」

エルフ「ならば策士殿?彼奴は何者で?」

狐「エルフってさどっちかって言うとボク寄りじゃない?」

男「あの少女は梟っていう名前で君達に魔法を教えてもらうために呼んだ」

狐「主おかしくないかい?」

男「どこが?」

エルフ「何かおかしな所があったか?」


狐「いやさ、エルフは明日帰るんじゃ無かったっけ?」

男「そうだっけ?」

エルフ「初耳だな」

狐「昨日『すーぷを作れ』って言って今日泊まるのはわかるよ?」

エルフ(あれは恥ずかしかったな…)

狐「なら明日帰るんでしょ?行き倒れだったら帰らなくちゃ」

男「あ!すっかり忘れてたよく気付いたな狐」

狐「当然のことだよ」


エルフ「あーそのことなのだが…」

エルフは言いにくそうに言葉を返す

エルフ「私は帰らぬから心配する必要は無いぞ?」

男「いやあるからね」

狐「あるね」

男「里から出てきたんなら帰らなきゃ」

エルフ「馬鹿を申すな、抜け出して来たというのに帰る馬鹿がどこにおる」

男「自慢げに言われても…」

狐「君、抜け出して来たの?」


狐「君、抜け出して来たの?」

エルフ「言って無かったか?」

狐「…お転婆なお嬢さんだこと、ねー主ー?」

男「お転婆にも程度ってのがあるでしょ…」

エルフ「と・に・か・く!私はしばらく帰れぬからな世話を頼む」

男「偉そうに言うな!」

エルフ「帰れぬのだから仕方あるまい?」

腕を組み完全なる開き直りである

狐「すごいね押し売り並に厄介だよ」

男「押し売りの方がまだよっぽどマシだよ…」


梟「……マスター?」

男「おお復活か何?」

梟「何のお話をしてたの?」

男「君の紹介、丁度良いから二人に自己紹介しな?」

梟「えーと…はじめまして!私は梟、10歳です!これからよろしくね!」

エルフ「私はエルフだ、歳は15…だったかな?聞けば魔法を教えてくれるとの事
どうか宜しく頼む」

狐「梟ちゃんボクは狐、歳はナイショだよ、ヨロシクね!」

梟「はい!エルフさんに狐さんですね?おぼえました!」

男(つーか梟ってそんな喋り方だったのか…)

業務連絡です。
外せない用事があり、おそらく月曜日辺りまで投下ができません。
土曜か日曜にもしかしたら少し書けるかもしれません。


男「梟はこんな小さな子だけど魔法の腕は一級品だから」

狐「主のお墨付きか、頼もしいね」

エルフ「私は心配でならぬがな……で、男よ?」

男「何だい?」

エルフ「いつから魔法を教えてくれるのだ?」

男「梟、今からでもお願いできるかい?」

梟「もちろん!」

狐「まずは何からだい?」


梟「もちろん!」

狐「まずは何からだい?」

梟「まずはてきせいけんさをするのでこれを着てください!」

梟はどこからともなく黒いローブを取り出す

エルフ「どこから出した!?」

梟「そんなことはささいな問題!きにしない!」

狐「適性検査ってやらなくてもよくない?」

男「適正をチェックしてそこを重点的に伸ばすから必要な事なんだよ」


男「普通はやらないけどなるべく早く習得して欲しいからね」

梟「あのさ…どーして主はボク達に魔法を教え込もうとするのさ?」

男「親切心って回答じゃダメかい?」

狐「まあいいよ」ケケッ

梟「はーいじゃあきがえて庭に来てくださいねー?」

男「僕は先に行ってるから庭は梟に聞いてくれ」

狐「場所くらいわかるさ」

男「一応だよ」

エルフ「ふん、私の魔法に驚くなよ?」

男「期待はしないよ?」


~数分後、庭~

男「お、来たな」

エルフ「待ったか?」

男「待ってないね、本当着替えの早い事で」

エルフ「そなたは着替えぬのか?」

男「動きにくいのは嫌いでね、そのまま寝れるような服だから問題ないよ」

狐「さー主?ろーぶとかいうのを着たよ?感想はないのかい?」

男「何て言って欲しいかは知らないけどさぁ…」

男は狐のローブ姿を見ると見過ごせない個所があった


~数分後、庭~

男「お、来たな」

エルフ「待ったか?」

男「待ってないね、本当着替えの早い事で」

エルフ「そなたは着替えぬのか?」

男「動きにくいのは嫌いでね、そのまま寝れるような服だから問題ないよ」

狐「さー主?ろーぶとかいうのを着たよ?感想はないのかい?」

男「何て言って欲しいかは知らないけどさぁ…」

男は狐のローブ姿を見るとどうしても見過ごせない箇所があった


狐「さあさあ感想はないのかい?」

男「その尻の部分の膨らみは何?」

狐を後ろから見た時、異様な物が嫌でも目に入る。腰のあたりが不自然に膨らんでいて
背中も少し膨らんでいるのだ

エルフ「恥ずかしげも無くそなたはよくそういうことを言えるな」

男「だって目立つからねその膨らみ」

エルフ「前が膨らんでいないから斯様な事を言われるのだ」

エルフは嫌味のように言う


狐「君に言われたくはないね」ケケッ

エルフ「大きなお世話だ」

狐「ま、一応言っとくとボクの尻尾だよ」

男「は?」

狐「いやだから尻尾」

エルフ「しっぽ?そなた人では無いのか?」

狐「最初に言った…って君は聞いてないのか隅っこで固まってたもんね」ケケッ

エルフ「風呂では普通であったであろう?」


狐「こうやってたたんで髪に隠せばバレないよ?」

耳をたたんで見せる狐、小さな耳はすっかりと隠れじっくりと見なければ
とてもわからないだろう

エルフ「短い髪でよく隠せるな…」

狐「まーね」

男「要は魔法が不完全って事かい?」

狐「一生懸命がんばったけど尻尾は消せなかったの!」

狐(大体、本嫌いなボクが変化の魔法を読んで覚えたって事自体が奇跡だよ)

男「耳は普通なのに…」

狐「しょーがないでしょ!尻尾消すと耳が戻っちゃうんだよ!」


エルフ「というかキツく無いのか?」

狐「キツいよ?若干だけどね、袴からうまく出せるから巫女服なのさ」

男「なら尻尾を消して耳を出せば?」

狐「それを今やろうと思ってたトコ――えいっ!」

えいっという掛け声と共に後ろの膨らみが消え代わりに獣の耳が出てきた

狐「どう?」

エルフ「成功だな」

男「まー耳は気になるけどいいさ」

狐(耳ノータッチ?悲しい…ふかふかで結構手触り良いよ?)

とりあえずここまでです。書き溜めもないし、また明日


梟「あのー」

エルフ「どうした?梟?」

梟「説明にうつっていいですか?」

狐「ゴメン忘れてた良いよ?」

梟「え~とまずお二人には私の考えたてきせいけんさを受けてもらいます!

エルフ「で?具体的に何をすれば良いのだ?」

梟「はい!この紙をもつだけです!」

梟はまたもやどこからともなく紙を出した

狐「本当にこんな紙を持つだけで良いのかい?」

半信半疑ながら狐が紙を持つとすぐさま変化が現れた。持っていた紙が薄い水色に染まったのだ

梟「成功です!狐さんはどうやら氷系の魔法が得意なようです!」

狐「主、説明してこの子説明苦手でしょ?」

男「説明は得意なはずなんだけどなぁ…まぁ要するに」

男「梟の魔法適正は紙を持つとそれに何か色が付く、その色で適正を調べるのさ赤だと火、青だと氷、緑なら風って具合にね」

エルフ「色とはまたよくわからぬ原理だな…」


そう言いつつもエルフは紙を手に取る

男「梟が勝手に作った魔法だから細かい事は僕も知らないんだけどね…」

エルフ「さあ鬼が出るか蛇が出るか見ものだな」

エルフの持った紙は狐と違い瞬時にでは無く徐々に黄色く染まっていった

エルフ「黄?これは一体何の魔法だ?梟」

梟「雷です!ピカピカ光ってしびれる魔法です!」


エルフ「雷か…中々に良いとは思うが…」

納得していない様にも聞こえるが顔は満面の笑みである

狐「さて主?適性がわかったわけだけどどうするの?」

男「ここからは個別で指導だ、とはいえ同じ庭でだけどね」

狐「ボクは主に教えて欲しい!」

男「狐は僕の担当だよ?僕も氷系なんでね」

狐「やった!」


エルフ「ということは私は梟か」

梟「はい!よろしくお願いします!」

男「だけど今日は市街地に行くぞ」

エルフ「何故だ?せっかくやる気だというのに…」

男「三人分の服に日用品…いろいろ揃えないとね」

エルフ「昨日の買い物はどうしたのだ?」

男「結構買い込んだけど少し足りないのさ、なにせ三人も増えるとは思っていなかったからね」


梟「マスター?」

男「どうしたの梟?」

梟「ねむいからおるすばんでいい?」

男「昨日寝れなかったみたいだし良いよ、適当に過ごしてて?」

梟「じゃあおやすみ~ふわぁぁ…」

梟はよほど眠かったのか大きなあくびをしてすぐに屋敷に戻っていった

男「じゃあ二人とも着替えてまたここに来て」


エルフ「着替えとは昨日の服のことか?」

狐「目立つんじゃないかい?」ケケッ

男「いろんな国の人が来てるし『珍しい服だな』位だよ」

エルフ「その言葉に嘘偽りは無いな?ならば良いが…」

狐「じゃあ着替えてくるよー」

男「梟が寝てるから静かに頼むぞ?」


エルフ「その位の気遣いは心得ておる」

~数十分後、市街地~

男の屋敷から歩いて数十分の市街地にメイド服を着たエルフと、巫女服の少女と、やる気の無さそうな男が歩いていた。傍から見ればとても異様な光景である

狐「まさか主の言う通りになるとはね」

男「でしょ?」


ここは街一番の市街地である。多くの商業施設が集まりここに来れば食材だろうが
薬草であろうが手に入るであろう。連日、客足が減ることは殆ど無い。
そんな人ごみの中を多少珍しい一団が通っても誰も気にする事は無かった

狐「ボクの耳も隠したしバッチリだね」

男「尻尾は出てるけどね」

エルフ「服の中でであろう?いくら人が多いとはいえそのようなこと誰が聞いているかわからぬぞ?男」

狐「へーきさボクらの格好見てもあんまり気にしてないみたいだしね」

エルフ「狐はもう少し緊張感をもったらどうだ?」

狐「ボクの長所を奪うようなこと言わないでよ」ケケッ


男「喋ってるとはぐれるぞ?」

狐「いざって時はなんとかなるさ」

男「説得力を感じないよ…」

狐「ま、そんな話は置いといてさ、何を買うんだい?」

男「メインは食料さ、他には…まぁついて来てくれればいいよ」

エルフ「資金は大丈夫なのか?」


男「幼気な子供に心配されるとはね…」

エルフ「わ、私は子供などでは無い!」

男「僕から見ればまだまだ子供さ」

エルフ「むぅ…そなたは意地悪だな」

男「それよく言われるよ」

狐「そんな話は置いといてさ、まずどこに行くのさ?」


男「え?ああ、まずはあっちの路地にね」

エルフ「路地?店には行かぬのか?(まさか怪しげな所へ連れていこうとしているのか!?)」

男「いや立派な店だよ?」

狐「主、矛盾していないかい?」ケケッ

男「路地にある店だからしょうがないでしょ」

エルフ「路地にある店?そのような所で何を買うつもりだ?」


男「説明めんどくさいからついて来てくれ、はぐれないでね?」

狐「もちろんさ」

~路地裏の商店~

路地に入り数分歩いた所に店があった。そこは一見、店とは思えないような造りをしていた。店というよりむしろ古ぼけた小さな酒場といったほうがわかりやすいであろう

男「やってる?」

商人「旦那ぁ居酒屋みたいなノリで来られても困るって毎回言ってるでしょう?」

狭い店内のカウンターでひげを蓄え眼鏡を掛けた男は言う
カウンターは低くもないがエルフが覗き込もうとしなければ見えないほどだ

男「なーんかしっくりくるんだよねー」


商人「どうせならbarみたいに入ってきて欲しいもんだね」

男「まぁ酒場っぽいけどね」

狐「主?ここでホントに合ってるのかい?」

エルフ「随分と埃っぽいな…」

商人「おやおや…いきなり失礼な発言だな、お嬢さん方?」

狐「お世辞が上手いねさすが商売人」

商人「褒められたら喜べ、子供らしくないだろう?」


エルフ「もとより子供に見られたいなどとは思っておらぬ」

狐「右に同じさ」

商人「手厳しい嬢ちゃんらだ」

男「ゴメン商人…僕の居候って事で見逃して?」

商人「もとより真に受けちゃいねぇから別にいいさ」

男「ありがと、じゃあ早速いい?」

商人「よっしゃ!旦那、本日は一体何が入用で?」

男「初心者用の魔装銃と剣、あと弓矢も」

商人「おや?珍しいな旦那がそんなもん買うなんて、いつもは錬金の材料だろ?」

男「いやさ、この子たちの訓練にね」

男は背伸びをして様子を伺っている二人を指さしながら言う

商人「さて他には何かあるかい?」


男「あと…僕が預けといたヤツ」

商人「――いいのかい?」

商人は訝しげな顔をする

男「構わないさ、時が来たってヤツ」

商人「わかった…最初のは送っておくんだね?」


男「ああ、僕のはここで渡してくれ」

商人「言うと思ったさ」ゴソゴソ

商人はカウンターの下から布が巻かれた長い何かを取り出す

商人「手入れは欠かしていない、切れ味も抜群だ」

男「慣れないこと頼んで悪かったね」

商人「お得意様の頼みは断れないのさ、それにこれほどじゃないがウチの店にもあるぜ」


男「お代は?」

商人「ざっとこんなもんだね」

商人は予測していたかのように値段が書かれている紙切れを渡す

男「あれ?意外と安いね」

エルフ「どれどれ……!?」

エルフは驚いた。覗き込んだ紙には見事に0が並んでいた。

男「ざっと100万ってトコかな?」

狐「ひゃひゃひゃくまんえん!?」

エルフ「よくわからぬが高いのであろう?狐」

狐「高いに決まってるでしょうが!」

エルフはお金の価値もよくわからないようだ…世間知らずにもほどがある

エルフ「そうなのか?いまいちよく分からぬな…」


狐「エルフは何か好きなものはないのかい!」

未だ興奮冷めやらぬ狐はエルフに怒鳴るように尋ねる

エルフ「そうがなり立てるな耳が痛い、自慢ではないが私は耳だけは良いのだ」

狐「うるさいよ!だいたい百万円って聞いて興奮しない奴は居ないよ!」

エルフ「少しは落ち着けそなたらしくない――ああ、好きなものだったな…すーぷか?」

男「ハハハハ!ならスープを百杯飲んでもまだ足りないな」


エルフ「 」カチーン

狐「固まっちゃったよ」ケケッ

男「お遊びはここまで本当の値段は?」

商人「金貨50枚ってとこだな」

狐「100万は嘘なのかい!?」

男「もちろん100万も払ったらそこらへんの国がひとつ買えるぞ」


狐「…なら50枚も相当高いんじゃない?」

男「察しがいいね、まぁ豪邸が一件立つくらいさ」

男「ちなみに金貨、銀貨、銅貨とあって金貨5枚もあれば三年遊んで暮らせる位かな」

エルフ「高いことに変わりはないで無いか!?」

男「…金は冗談抜きで腐るほどある」

狐「なんで?」


男「種明かしはまた今度さすぐに言ってもつまらない」

エルフ「秘密が多い男は好かれぬぞ?」

男「ミステリアスな奴に惹かれる人もいるだろう?」

エルフ「みすてりあす?」

男「不思議とか謎に包まれたとかそうゆう感じ」

エルフ「ああなるほど、ならばそのような奴に恋焦がれるのはごく一部であろうよ」


男「ごもっともな意見どうもエルフ。狐、何か買う?」

エルフ「無視か!?」

狐「う~んあるっちゃあるけどムリだよ」

商人「どういう意味だ?」


狐「ボクの欲しい物は全部ある国にしか売って無いからね」

狐はまるで挑発するような感じを見せている。むしろわざと挑発しているに近い

商人「おいおい…バカにするな、この店には古今東西ありとあらゆるものが揃ってるぜ?
    何ならイモリの黒焼きでも用意してやろうか?」

男「いやいらないから」

狐「そうだね…小手調べに油揚げはあるかい?」

商人「は?」


狐「だから油揚げさ」

男「あぶらあげ?あるかい商人?」

男の住む国に油揚げは存在しない、だから男は狐の言ったものが食べ物かどうかすらわからなかった

商人「どんな珍品が出るかと思えば…」

狐「あるのかい?」

商人「あんた東の出身だね?」


狐「漠然としてるね、というかそもそもピンとくるならわかるだろう?」

商人「ふーむ…その落ち着いた物言いずいぶんと位が高いように思えるが?」

男「分かるの?」

商人「俺は伊達に商売人やってるワケじゃないぜ、旦那」

狐「細かいことはいいからさ、ついでに酒はある?」

商人「油揚げに酒ねぇ東から来たって事は米酒か――あるぜ」

商人はあっさりと肯定した。それは狐にとって大変に意外なことだった


狐「ま、元よりこんな店で買えるなんて思っていないからねって―――え?」

商人「だからあるっての」

狐「そそそそそそれはホント!?」ガタッ

エルフ「どうした狐、言葉が裏返っておるぞ?」

狐が男の屋敷――正確には前の屋敷の主に付いてきてしまってから大好物の御神酒ももちろん油揚げも食べていない。
今までは男や屋敷の前の主が作った食べ物を見えない状態で勝手に食べて(人と同じく食べないと死んでしまう)生活していた

狐「主!どのくらい買ってくれる?」バシバシ

男「叩くな少しは落ち着け…腐るもんでも魔法かけるから問題ないし、どうせ余裕あるし勝手にどうぞ?」


狐「商人!油揚げは全て、酒は二升でいいや!」

商人「油揚げ全てかよ…こりゃあまた仕入れねぇとな…」

男「代金は?」

商人「なーに在庫処分に丁度いいさ、お代は結構!」

男「本当にいいの?」

商人「何とかに二言はねぇ!送っとくから安心しな」

男「なーんか怪しいけどありがと、狐これでいいかい?」

狐(くぅ~~~!数年ぶりの神酒だよ!それに油揚げまで!よだれが…)ジュル…


男「ヨダレは拭きな?さて次は…と」

男は商人に軽く会釈をし店を出た。男の買い物は魔方陣で転送されるため荷物は布が巻かれた棒だけである。それは男の左手にしっかりと握られている

エルフ「次はどこだ?」

男「無料で服と寝具を手に入れる」

エルフ「…一応聞くがやましいことでは無いよな?」

男「人聞きが悪いよあくまでも『平和的に』さ」

男の平和的にという言葉が妙に強調されたのは気のせいだろうか

やってます。このssが詰まったときに気晴らしで書いてたものを投下してます
もしかしたらこれより人気があるかもしれませんね。
↓リンクですうまく貼れてますか?
犬娘「恩返しですっ!」男「いらん」
犬娘「恩返しですっ!」男「いらん」 - SSまとめ速報
(http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1337589735/)



~とある富豪の家~

店から出てすぐに男達は魔方陣でとある富豪の家に来ていた。

男「おーい居るかー?」

狐「ちょっと!?ガンガン叩いてへーきなの!?」

エルフ「そうだぞ!?見るからに高そうだし壊れたらどうする!!」

男「別にいいんだよ」

狐とエルフは早々に慌てていた…まあ理由は珍しく男なのだが


エルフ「もう少し方法というものを考えぬか!」

男「やーだね」

町を見下ろすように建てられた一軒の屋敷――否、屋敷というより御殿である。
外観は普通、しかしその圧倒的な広さから中の様子が伺える

男「早く出てこーい」

狐「主、そろそろヤバくない?」

その屋敷の巨大な最早それは門と呼んだ方が相応しいくらいに思えるドアを
男はガンガンと勢い良く蹴飛ばしていた。

男「出てこないから入るか」


エルフ「おいそこの強盗」

男「強盗!?それは大変だ!一体どこ?」キョロキョロ

エルフ「そこのキョロキョロしてるお前だ!」

男「もしかして僕?」

狐「他に誰もいないよ?」ケケッ

男「強盗とは心外だなぁ…あくまでも平和的にさ」

エルフ「…ならば聞こうか、どうやってこの馬鹿でかい屋敷に入るのだ?」


男「そんな物決まってるさ」

エルフ「申してみよ」

男「黙って一刀両断!」

男は心底楽しそうに言う。まるでこれからイタズラをする子供のようである

狐「いや落ち着こう?主らしくない」

男「この家広すぎるから来客がわからないからいいのさ」


エルフ「いや他に何か方法はあるであろう?」

男「あるけど…めんどくさいじゃん?」

狐「それは同意」

エルフ「多少めんどくさくても方法を選べ方法を」

男「はぁ…無駄に常識があるから困るよ」

エルフ「誰が無駄だ」


狐「それで?どうするの?」

男「しかたないな…」

男は少し考えて大声で言った

男「おーい!執事!」

エルフ「は?」

エルフは首をかしげ狐は呆気にとられていた。二人とも何言ってるんだコイツ?位に思っていたしかし簡単にガチャリと扉は開き――

「お呼びでしょうか?」


黒縁の眼鏡をかけスーツを着こなした執事が現れた。いかにもである

執事「おや?男様でしたか、本日は大変静かな来訪ですね」

男「まあね」

執事はそこで男の横…正確には男の後ろから顔を出しているエルフと狐に目を遣る

執事「おや…?お連れの方で?」

男「ああ、家の居候だそっちのメイド服を着た奴がエルフ。もう片方のちっちゃい黒髪が狐っていう子たち」


執事「狐様にエルフ様ですか、私は執事と申します。以後お見知りおきを」

エルフ「ご丁寧にどうも、私はエルフだよろしく頼む」

狐「ボクは狐さ堅苦しいことはナシにして狐さんって呼んでよ」

執事「承知しました。男様、お嬢様にご用事ですか?」

男「できれば内密にこの子たちの服とベッドを送っといてくれる?」

執事「内密に…ですか?」


男「ほら僕はアイツ苦手だから、じゃよろしくね用事はそれだけ帰る事にするよ」

執事「畏まりました。…一つよろしいですか?」

男「どうぞ?」

執事「お嬢様が会いたがっております」

男「…三日後に来るって伝えといてくれ、じゃね」

男はよっぽど女が苦手なのか、早口で伝え早急に立ち去ろうとするが…


「待ちなよ」

男「げっ…女…」

女「ゲッとはなんだゲッとは」

執事の後ろから女が出てくる。服装は美しいドレスで見るからに高そうだ

狐「主、誰?」


男「ほら、昨日言った衣装持ちのアホ女」

なるべく聞こえないようにこっそりと話す。本来なら速攻で帰りたかったが見つかったからには仕方ない

エルフ「筋金入りの大富豪だな」

女「いやーそんなことないよ?アタシはぜーんぶ継いだだけだからさ」

男「そうか、それじゃ…」

男はそう言って立ち去ろうとするが女は逃がさなかった

女「おんやぁ~?どーこ行こうとしてるんですかー?」

男の肩をがっしりと掴み逃がさない、振り払おうとすればできるがそんなことをする男ではなかった


男「いやーちょっとそこらへんに…」

エルフ「私たちを置いて何処に行こうというのだ?」

女「ほらほら~アンタのツレもこう言ってるし~」

男「丁重にお断りさせていただきます」

女「ったく…ならこっちにだって考えがあるもんね~」

男「考え?」

女「え~とエルフちゃんに狐ちゃんだっけ?」

ld変わったかも…
風邪で調子でませんので寝ます。皆さんもお体大切に


狐「何だい?」

女「ちょーど今、そう!たった今!豪華な料理が完成したんだけど食べてく?」

エルフ「頂こう」

男「考えってご飯で釣るのかよ!?」

女「にひひひひ、食欲にはだーれも勝てないもんね~」


狐「主、早くしてよ冷めちゃうよ?」ケケッ

男「狐もっ!?」

いつの間にか狐は女の後ろに立って手を振っていた

女「ほ~らねさあどうするさ?こっちは3人そっちは1人だよ?にひひひひ」

男「悪魔だ…悪魔がいる」

女「にゃははは、なんと言おうとこっちの勝ちだもんね~民主主義バンザイ!」

男「…こういうのを悪魔と呼ぶんだろうな」


女「何とでも言うがいいさ!アタシの心はへーきだもんね」

男「…仕方ないごちそうになるか、少し早いけど」

女「にひひっ!は~いじゃあこちらでーす」

狐とエルフそして渋々ながら男も女の屋敷に入って行った


~女の屋敷~

男たちが通された部屋は食堂だった。大きな机に白いテーブルクロス…典型的なお金持ちの内装と言った感じだ。そこに並べられている食事は、絢爛豪華な物ばかりである。

執事「どうぞ召し上がってください」

狐「いっただっきまーす!」

エルフ「」キョロキョロ

男「どうかした?」


エルフ「いや…この屋敷は使用人が一人だけなのかと思ってな」

女「あ~ウチにいるのはそこの執事だけだねそれがどうかした?」

エルフ「いやなに掃除が大変そうだと思ったまでだ」

女「掃除はすることあんまりないなぁ…こう魔法でホコリとかヨゴレが付かないようになってるらしいから」

狐「らしいってなにさ」


狐は食べることに集中していたがしっかりと話は聞いていたようだ。

女「そこの朴念仁に聞けば?アタシは魔法の才能からっきしだからさ~にひひっ」

男「誰が朴念仁だアホ」

女「アホってゆーな!アホって!だいたいアタシのイメージどうなってるのさ!」

男「金だけはあるアホ」

女「ひどいっ!?」


エルフ「男、流石に酷すぎないか?」

男「いいんだよ、この屋敷に魔法かけてるのは僕だからね」

狐「主がこの家の魔法かけてるの?」

男「まあね、床を魔方陣の形に削るだけで完成だし」

女「サラッと言ってるけどスゴイ事なんだよね?執事」

執事「ええ、勿論でございます。この大きさの屋敷に全体魔法を施す事は並大抵の魔術師ではできません」


女「どのくらいスゴイの?」

執事「お嬢様がこの屋敷で一人で生活する以上です」

女「…それってバカにしてる?」

執事「割と真面目な話です」

女「泣くよ?」

執事「タオルをご用意しましょうか?」

女「…男といい執事といい、今日はヘコまされるよまったく…」

インフルエンザで寝込んで投下できませんでした。今日は投下します


~食後~

女「さ~てっと楽しい楽しいお話の時間だよっ!」

男「よし食べたし帰ろっか」

狐「そうだねおいしかったよ!」ガタッ

エルフ「帰るぞ男、梟も待っておるであろうからな」ガタッ

男「じゃそういうことで…」

男どころかエルフと狐まで席を立つなんとも気のあった三人である。


女「キミたちひどすぎない!?」

男「いや梟かわいそうだし」

女「いやいやいやいやここに呼びなよ!」

ちなみに女は梟を知っている。男が来た時たまに連れてくるので遊んでいた事もありそれなりに仲は良い。
もっとも男が来る事は殆ど無く「楽しかったから」と梟が勝手に来ている事が多かった。

男「仕方ないか…大賢者の一人娘来てくれ」

女の言う通りにするの事は不本意だったが寝かせたままという訳にもいかないので呼び出すことにした。
自然、詠唱もなげやりである。


梟「ふわぁぁ…ますたぁーなーに?」

寝惚け眼をこすりながら梟が現れる。

男「とりあえずほら顔洗って場所わかる?」

梟「はぁい…むにゅ…」

梟は寝起きのはっきりしない頭で執事について行く、賢者の娘でも寝起きは頭が回らないようだ。

女「よぅし!帰ってくるまでお話タ~イム!」


狐「あのさなんで君はそんなに話したいのさ?」

女を指さしながら言う。

女「男が誰かと一緒に行動するなんてめずらしーからだよ」

エルフ「珍しいのか?」

女「そうだよ?誰かと一緒にいるなんて考えられなかっからね~」

男「余計なこと言うなっての」

狐「ふーん主がねー」ケケッ


女「そうだよ~昔はアタシの扱いひどいし執事しか信用しないし、使い魔にしか心開かないし…」

そこで女は気付く、後ろから鋭い視線で睨まれている事に。

男「それ以上話すなら内側を凍らせるよ」

女「いや罰が重すぎだよ!!」

男「これでも最大限の譲歩なんだけど」

男と女の不穏な空気を変えようとエルフが切りだす

エルフ「男、話の腰を折って悪いが此奴は一体誰なのだ?」


男「ん?言ってなかったっけ?」

狐「言ってないよ?」

女「あっれー?アタシ自己紹介してなかった?」

エルフ「そなたは料理で私たちを釣っただけではないか」

女「あ」

男「やっぱりアホだ」

女「アホじゃない!」

狐「ケンカはもういいからさ自己紹介しない?」


女「そだね、アタシ女!キミたちは?」

エルフ「私はエルフと申す。男に拾われた」

狐「ボクは狐、呼び捨てでもいいよ」

簡単な自己紹介が終わり女は考える。男を暫く部屋から出せないかと。

女「あ、そうだ執事!確か魔法陣の書き換えじゃなかったっけ?」

執事「いえまだまだ先ですが…」

女としては男に話を邪魔されないために体よく追い払おうとしたが執事には通じなかった。真面目な執事は嘘も嫌いなのだ。

id変わったけど1です。完全に治ったのでまたがんばります。


男「あのな、追い払おうとしてるのが見え見えだ」

女「ソ、ソンナコトナイデスヨ?」

もはやわざとすら思えるほどに棒読みである

狐「大根役者だね」ケケッ

男「はぁ…わかったよ三十分位でいい?」

女「さっすが男!やっさし~」


男「はぁ…執事、魔法点検行くよ」

執事「喜んでお供させて頂きます」

男「あ、その前に梟のご飯頼める?」

執事「畏まりました」

男「というか梟どこ行ったのかな、洗面所わかると思うけど…」

執事「おそらく寝ぼけて道を間違えたのでしょう似たような内装ですからね…」

ガチャ バタン


女「よぅし!どうせだからアタシの部屋いこっか」

エルフ「うむ、ここは話すには不都合であろうからな」

女「ちゃ~んとついてこなきゃ迷子になるよ?にひひっ」


~女の部屋~

女の部屋は白の家具で統一されており、その部屋に一つ四角い机と椅子があり、そこを三人で座り囲んでいる。狐とエルフの足は床から浮き、まるで小さな姉妹が歳の離れた女性と話している感じである

女「にひひっ男はいなくなったし話を始めよっか!」

エルフ「しかし何を話すというのだ?」

女「とりあえずエルフちゃんに質問タ~イム♪」

エルフ「たいむ?香辛料か?」

女「似てるけどちがうっ!時間って意味!」


エルフ「そうか、して何を聞く?」

女「そうだね~まずはキミと男の出会いでもきこっか」

女(男が女の子を二人連れてるなんてな~んか引っかかるしね)

エルフ「簡潔に言えば行き倒れ動けなくなっていた所を助けられた」

女「はい?」

エルフ「いやだから行き倒れ動けなくなっていた所を救助されたのだが?」


女「いやそーじゃなくてさ!え?なに?それだけ?」

エルフ「そなたは一体何を望んでいるのだ…」

狐「もっと派手な事じゃない?たとえば手篭めにしたとか、むりやり連れて来たとか、買ったとか」

女「うんそうだね!狐ちゃんの回答百点!ってちっっがーう!」

エルフ「やかましい女だな少しは静かにしたらどうだ」


女「やかましくて悪かったね!ってこれもちがう!」

エルフ「一体何を言いたいのだ?」

女「いやだってさあの男だよ?年中無休戦闘魔法バカ朴念仁のあの男だよ!?」

エルフ「いや私は男に昨日助けられてよく知らぬのだが?」

狐「にしても戦闘魔法バカってひど過ぎでしょ」

女「エルフちゃん男とは本当に初対面なの?」


エルフ「ふむ、私と男は会った事があると?」

女「そゆこと!会ったこととかないと男が一緒にいるはずないしね」

エルフ「いや初対面だ間違い無い」

女「じゃあどうしてだろ…?」

エルフ「単に私がかわいいからでは無いか?」


狐「自惚れが強いね」ボソッ

聞こえていないのか、無視しているのかエルフは狐に言い返さなかった

女「エルフちゃんの意見は却下してと――じゃあ狐ちゃんは?」

狐「ボク?」

女「エルフちゃんには特に心当たりがないみたいだし狐ちゃんにな~んかないかなぁって」

狐「まずボクは元々男の家に住みついてたんだよ」


女「でも男からそんな話は聞いたことないよ?」

狐「そこら辺を話すと長いしなによりボクが飽きちゃうから割愛させてもらうよ」

女「そこ重要そうな気がするけど!?」

狐「エルフが来た日ちょうど変化の術…魔法ができてさ、男のとこに現れたって感じ」

女「その後は?」


狐「ご飯食べて簡単な自己紹介して寝た」

女「こっちも収穫なしか…う~ん」

頭を掻いて悩む女。女は元々男と旧知の仲であり、よく知っていた。
だからこそ男が見るからにか弱そうな少女二人と一緒にいるなど考えられなかった

女「じゃあさ狐ちゃんっていったい何者なの?」


女「変化の術とか言ってたし女の子じゃないの?」

狐「ボクはいわゆる神様の使いってやつだね」

あっさりとそして何事も無いかのように言う狐

女「はぁ!?」

狐「まぁ何年も元いた場所に戻ってないから今はただの耳としっぽの生えた人さ」

女(な~んだ獣人か召喚されたのかな?あれ?でも神の使い…う~ん…)

狐「あ~!信じてないでしょ?」


女「いやいや信じてるよ?ただそんなに珍しくないからさ」

狐「ええ!?そうなの!?」

エルフ「何だ気付いていなかったのか?そなたのような獣人なぞ珍しくも無いぞ?
    誰でも召喚できる低級な使い魔だからな、私の里でも頻繁に召喚されていたな」

狐「うそっ!?」


神様の使いということに自信を持っていた狐は珍しくないと言われショックを隠しきれない様子だった

エルフ「さて…私達の話ばかりするのもつまらぬ、男の話をしてはもらえぬか?」

女「男の話?別にいいけどさ、重くてくらーい話だよ?」

エルフ「構わぬこれから一つ屋根の下生活するのだ、なるべく知っておいたほうが良いであろう?」

女「は?一つ屋根の下?だれと?」


エルフ「男とに決まっておろう、他に誰がおると言うのだ?」

女「三人で?」

狐「たぶん梟ちゃんもいるし四人かな」

女「ありえない…まさか男はロリコン!?」

エルフ「どうしてそうなる」


女「幼児体型ばっかだからだけど?」

狐・エルフ「「悪かったな!!」」

エルフ「だ、大体私はまだ発展途上だ!!」

狐「ボ、ボクだってこの前背が伸びたもん!」

予想以上に女の言葉が効いたらしく軽く混乱しているようだ

女「もん?」

狐「あ、いや……の、伸びた!」


女「ごまかせてないよ?」

エルフ「そ、そんなことはいい!男の話をせぬか!」

女「はいはいわーかった、なら本日のラインナップはこうなっておりまーす」

女は画用紙を取り出した。そこには意外に丁寧な字でこう書かれていた


・これまで何してたの?

・使い魔ってなに?

・基本的なスペックを教えて!

・交友関係どうなのよ?

・謎の美しい女性、女とは?

やたら最後の文章だけが色付きで強調されていた


女「この五つになっておりま~す」

エルフ「ここからか…何を選ぼうか迷うな」

狐「どれか一つは時間で聞けないかもしれないし…う~ん……」

女「ほらほら~なんなら五番目のヤツでも…」

狐「エルフ、ボクからいい?」

エルフ「構わぬ」


狐「やっぱ三番!」

女「基本的なスペックね」スッ

女「男は現在無職。七年前に王国遠征軍に参加、敵勢を圧倒し報酬としてかなりの金貨を得る。
  両親とは既に連絡を断っていて交流無し。」

淡々と機械的に話した女、いつの間にか赤縁の眼鏡をかけ口調も変わっている。
勿論、狐とエルフは不思議に思ったが、これはこれで話しやすいしむしろラッキー位に思っていた

狐「無職なの?」

女「仕事は六年前に辞めています」


エルフ「それほどまでに報酬金が高かったのか?」

女「ええ、もし敵国に寝返られたら莫大な被害が出ますからね、さらに年ごとに金貨50枚支給されているようです。
  相当寝返られるのは嫌なようですね」

狐「でもいくらお金が高くても仕事をやめなくてもいいじゃんか」

女「仕事仲間にちやほやされることが嫌だったようです」

エルフ「ちなみにどんな仕事をしておったのだ?」


女「魔法の研究開発です。合成魔法の作成が主な成果です」

エルフ「合成魔法とは?」

女「今言った通り、例えば炎と氷魔法を組み合わせ相手を氷漬けにし氷の中で炎が燃え
  相手を焼き焦がします。氷は相手が燃え尽きるまで溶けません」

エルフ「…考えるだけで恐ろしいな」

狐「女ちゃんはどうしてそんなに詳しいの?」

女「全て私の執事に調べてもらいました」

>>237放置してる間書き溜めてましたから。
長らく放置してすいません。また明日投下します。


エルフ「自分で調べたことは?」

女「……次の質問は?」

エルフ「(図星か)使い魔について聞こうか」

女「男の使い魔は三人…人と数えるのはどうかと思いますが人とさせてもらいます」

エルフ「うむ続けよ」


女「梟、イフリートそして詳細不明が一人」

狐「不明?執事でもわからなかったってことかな?」

女「ええ、三人いることはわかりましたが最後の一人がどうしてもわかりませんでした」

エルフ「使い魔の役割は?」

女「梟は魔法役、イフリートは攻撃役となっているようです」


エルフ(どちらも知らぬな、旅人が使役していた奴では無いようだな)

狐「魔法と攻撃がいるなら最後の一人もわかるってものじゃないのかい?」

女「予想ですが治癒役ですね。私と執事は便宜上ヒーラーと呼んでいます」

狐「だろうね治癒がいれば戦いが有利ってなもんだし」

エルフ「ふむ…そなたの執事でも無理だったひーらー?とはどんな奴なのだ?」


女「あまり表で活動しないので、どのような使い魔かわかっていないんです」

狐「なにそれ、キミの万能型執事くんじゃダメなの?」

女「執事曰く男が一番ひた隠しにする秘密だと」

エルフ「肝心な所はわからずか……」


女「しかし意外ですね…」

エルフ「何がだ?」

女「てっきりエルフさんなら『使い魔などどうでもいい』と言うと思ったのですが…」

エルフ「ふん…そなたには関係ないであろう」

ここで眼鏡を掛ける前の女なら「つれないなぁ~」とでも言い終わったのであろう、
しかし今の女はそれをしなかった。女自身も男の行動に繋がるものが無いかと探っている


女「ならこちらが質問する番です。エルフさんはなぜそんなに使い魔のことをきいたのですか?」

エルフ「答えぬ――と言ったら?」

女「質疑応答がこれにて終わりになるだけですが?」

この返しはある程度予測していた。正直、エルフが一番困る返しだった。なぜならエルフは旅人=男?
ということを疑っているため少しでも情報が欲しい、そのためこの場を終わらせるわけにはいかないのだ

エルフ「……私の恩人を捜すため…では駄目か?」


女「…まぁ合格にしてあげます」

エルフ「信じるのか?案外、嘘かもしれぬぞ?」

女「嘘なら嘘で別に構いませんから、信じようが信じまいが私の勝手です」

エルフ「…好きにしろこの臍曲がりが」

狐「へそ曲がりはどっちだか…」

やれやれと言った表情の狐、このやりとりにも少し慣れた様子がうかがえる


狐「主の交友関係は?」

女「私と執事、市街地の商人…あとは昔の職場の同僚です」

狐「多いの?少ないの?」

女「生きていく上では問題は無いでしょう」

女「交友関係はこんなところです。あとは一番の質問ですか」

狐「五番目は?」


元より五番目の質問をする気はないが、狐は少しからかいも含めて言った。
だが女も答える気は無いらしく五番目についてはスルーした

女「これまで何をしていたかについてですが…」

清々しいほどに無視を決め込む女、狐はムッとしているがそれも気にしていないようだ

女「実のところよくわかっていません」

狐「はい?」

女「二度三度エルフの居住区に行った事がある、遠征軍に参加した位しかわかっていないんです」


狐は面をくらったようにポカーンとしていた。今まで完璧な情報だったためわからないという言葉に衝撃を受けた
だがエルフは一人で考え事をしていた

エルフ(居住区……つまりは里か…だが私のいた里とは違う可能性もあるな)

狐「あのさだったら書かないでよ、わからないことを言われてもさー」

女「お恥ずかしい限りです」

エルフ(結局、旅人には繋がらぬか…やはり切り込むべきは里についてか…)

保守ありがとうございました。パソコンがフリーズして書き溜め吹っ飛んだので書けませんでした。
もう少し書きます。


~その頃 地下倉庫~

男は梟を連れ執事と共に屋敷の地下倉庫に来ていた。地下倉庫というと埃まみれできたないというイメージだが、
この屋敷には男の魔法が効いているため塵一つ落ちていない。その魔方陣が地下倉庫にあり、既に詠唱は完了していた

男「詠唱終了……魔法の強化を確認…」

執事「今回は早いですね」

男「いつもと違って弱っている物を強化する訳じゃなくて、強いのをより強化するだけだからね」

執事「今頃、お嬢様達は何をしているのでしょうね?」

梟「きっと楽しくおしゃべりしてるんですよ、いいなー」


男「楽しい会話だといいけどね、たぶんエルフたちが僕について聞いてるよ」

執事「そう思いますか?」

男「僕を少し怪しんでたからね」

執事「ふむ…お嬢様が口を滑らせないか心配ですか?」

男「ちゃんと情報操作してるよね?」

執事「もちろんでございます。男様に言われた通り情報は添削してあります」


男「三年前の遠征については?」

執事「仰せのままに七年前と伝えています」

男「あれ~?嘘は嫌いなんじゃ?」

執事「はて?何の事でしょう?男様に聞いたところ確かに七年前と――不思議ですね
   私の記憶違いでしょうか?」

クスリと笑いながら執事は言った。

執事「私は男様に七年前と聞いたのです。そしてそれを報告し、その後で三年前と言われた…嘘はついていません。
   ちょっとした要約ですよ」


女は執事が調べたと言っていたが実の所、執事が男に真正面から聞いたのだ。
もちろん男は本当の事は話さなかったし、執事も嘘である事はもちろん見抜いていた

男「うわ…わざとらしいにも程があるよ」

執事「嘘は嫌いなだけで、嘘をつかないとは言っていませんからね」

男「執事がお嬢様に隠し事ですか…世も末だ」

執事「まったくです」


執事「それにしても私どもの言うヒーラーとはどのような使い魔なのですか?存じ上げていないもので…」

男「エルフ以外なら誰に見られてもかまわないさ、だけど……」

梟「けど?」

男「隠し玉って最後まで取っておくものでしょ?」

執事「ごもっともですね、しかしエルフ様に見られては何故いけないのですか?」

梟「私もきになりますー」


男「執事の言うヒーラー……いや僕の使い魔アコライトはエルフの記憶のカギだからさ」

執事「カギ…ですか?」

男「僕がハーフエルフってことは前に言ったよね?」

執事「ええ確かに母親がエルフ、父親が人間でしたね」

男「これを見てよ」

男はポケットから何も書かれていない紙を取り出した。大きさは手のひら大で白い紙である


執事「紙ですね、見た所魔方陣も何もなくまさに白紙でしょうか」

男「これをどこでもいいけど体に当てる」

男は左手首にその紙を置き詠唱を始めた

男「我が身体に流れる忌むべき血よ…ここに集いて我が身体を在るべき姿に変えよ!」

手首の紙が赤く染まると共に男の体が変化を見せる。耳が尖り、体つきが細身になった


男「はぁ…何度やっても慣れないねコレ」

執事「…男様ですか?」

声も若干だが高くなり執事の知る男とは一致する所もあれば違っている所もあり
執事は少し混乱した

男「僕はギリギリ人間らしくてね、身体の血を抜くとエルフになれるんだよ」

人の血を抜けば抜くほど純粋なエルフに近付き、逆もまた然りと付け加えた


執事「なんとも反応に困りますが…一体どんな仕組みなのですか?」

男「僕の母親の魔法でこうなったらしいけど詳しくは知らない」

梟「体にえーきょーは?」

男「ちょっと目眩がするかな、たいした事は無いけど」

執事「エルフの男様…ですか」

男「うん、僕は今までこの姿でエルフの里――つまりは居住区に何度か行った」


執事「エルフ様との出会い…でしょうか?」

男「うん、六年前かな、エルフの里の近くで倒れちゃってね、たぶん日頃の無理が体にきたんだよ
  初めて合成魔法が完成して嬉しくてあんまり寝てなかったし」

執事「しかし何故里に?」

男「里でしか扱ってないハーブを買いに行こうと思ってね、今は商人が仕入れてくれるんだけど」

梟「はーぶ?」

男「良い香りの葉っぱだよ」

梟「へー」


執事「里の近くで倒れて…どうなったのですか?」

男「よくわかんないけど助けられたっぽい、気付いたらどこかの家のベッドの上さ」

執事「それで?」

男「目が覚めたら女のエルフが傍にいて、僕の事を見るなり叱責さ、あんなところでなにしてたー!ってね」

男「なんでも近々人間との戦争があるとかでふらふらしてないで訓練しろ!って感じだったね」

執事「助けてくれた人がエルフ様だったのですか?」

男「いや、エルフの族長の娘だったらしいよ」

執事「もう一度聞きますが助けてくれたのはエルフ様では無いのですか?」


男「エルフとはその里の大きな木の下で寝てたら勝手に本持って来たんだよ
  んでそれを読んであげたら懐いたと」

執事「その戦争はいつ?」

男「十日後って言われたよ」

執事はいそいで六年前の戦争について自分の記憶に検索をかけたが何もそんな記憶は無く不思議に思った

執事「私の勉強不足でしょうか?そんなことは無かったと記憶しています」

男「そりゃあ無いだろうね、世間的には反逆者の粛清って事になってたし」


梟「せんそうはどうなったの?」

男「……負けたよ、人間の軍が里に夜襲をかけて来て火を放った。指揮したのは騎士だったかな」

執事「卑劣な…」

唇を噛みしめる執事、梟は横でよくわからないといった表情を浮かべている。

男「僕はエルフの兵士に言われて転移させたり治療したり、とにかく人間の兵から逃げ遅れているエルフを逃がした。
  魔法がまだ使えないのもいたし、転移魔法は難しいからね。でも……」

執事「どうなったのですか?」


男「僕に懐いていたエルフがいなかった」

執事「!」

男「住民は転移完了、でもあのエルフはいなかった」

梟「え…?」

男「なんで気付けなかったんだろうね――僕の人生最大の失敗さ」

語り部のようにとても落ち着いて話す男、強い感情が込められ聞く者を引きこんでいた

執事「しかしそこまでしてその里に戦争を仕掛けた理由は何だったのですか?」

男「…原因は鉱物」


執事「鉱物…ですか?」

男「そう、その鉱物は鋼よりも硬く、羽根よりも軽く、おまけに魔力も込められた」

執事「そのような物があったのですか?」

男「さすがに羽根より軽いのは脚色だけど他の二つはあったよ。それも豊富に」

梟「なるほど」

梟はポンと手を打って初めて何を納得したのかはわからないが納得していた


執事「たったそれだけのために?」

男「うん、それに当然火に強いからね火計は作戦としては妥当だ」

執事の頭に先ほどの燃えるエルフの里の情景が浮かんだ。燃えていく家、侵攻する人間の兵士
それを必死に食い止めるエルフの兵士……あまりに鮮明に浮かび上がり執事は冷静さを失った

執事「だからといって…!」

男は執事の言いたいことを察知したのか畳みかけるように言葉を連ねる

男「夜襲は僕が気付けばよかったし、しかも僕のせいで一人の
  エルフの少女は昔の記憶が皆無なんだよ?」

執事は男の落ち着いた言動で少し冷静さを戻し言った

執事「…そこが一番引っかかります。それとエルフ様の記憶とどう関係が?」


男「執事、梟、自分の故郷が燃えている光景は覚えておきたい?」

執事「それは…」

梟「いやです!私はそんなのいやです!」

男「うんそれが正しい反応だろうね」

男「ところで記憶のカギとなる使い魔は覚えてる?」

執事「アコライト様でしたか?」

男「呼んであげるよ里で起こった事はアコライトの方が詳しい」

男は床に書かれている魔方陣を利用してアコライトを呼び出そうと詠唱を開始した


男「追放されし聖女の黒き光は闇でこそ輝き光を枯らす、万物に等しく絶望を与える者…アコライトよ我が前に…!」

「…だーかーらーその呼び出し止めてって言いましたよね?」

昼間だというのに黒い光が辺りを包み男たちの視覚を奪う。暗闇から聞こえた声からは性別しか判断できない

執事(女性…?)

梟「暗闇在りしその場所に一握の希望を示さん、闇を祓いて光を導く!」

梟が暗闇の中、魔法を唱えあっさりと闇が消えた。光が戻りそこにいた者は……


「マスター!いいかげんに変えてください!」

赤い法衣らしき物を着た女性だった。やせ型で色白の肌からはどことなく儚さを感じる。耳は尖りエルフに見えないことも無い

男「執事、梟、紹介するよ僕の使い魔のアコライト お察しの通り治癒魔法の天才さ」

アコライト「もーマスター!アタシの詠唱変えてください!誰が追放された天使ですかっ!」

男「だって何故か基本形がそれだし…」

アコライト「それに!アタシは黒い光なんか出せません!もっとピュアピュアです!!」

男「ピュアピュア?昼寝してて追放されたのは、一体誰だったかなぁ?」

アコライト「あれはその…魔が差したというか…若気の至りというか…ゴニョゴニョ」


男「ついでに階級も上位だったのに落とされたし、堕天使に片足突っ込んでる状態でしょ?」

アコライト「魔法は衰え知らずだからいーじゃないですか!あと堕ちてません!」

執事「あの…男様、説明を」

さっきまでのシリアスムードはどこへやら、まるで風に飛ばされたようにどこかへいってしまった

男「紹介するよ。僕の一番古い付き合いのアコライト、執事の言うヒーラー」

アコライト「マスターそちらのお堅い方は?」

執事「私はお堅い方ではなく執事です。この屋敷で働いております。以後お見知りおきを」

アコライト(うわ…カッチカチだね、堅いにも程があるよ…)


アコライト「それで?マスター怪我でもしましたか?血の気が失せてるだけで
怪我なんか見当たりませんが?」

男「今日はちょっと趣向が違ってね」

アコライト「趣向とかどーでもいいです!さっきの詠唱はなんですか!なんで強制召喚なんですか!」

使い魔の呼び出し方には大まかに分けて二つある。一つはその使い魔に対応した基本形となる詠唱をすることで
強制的に場に召喚する強制召喚である。

もう一つとして任意召喚がある。しかしこの方法は使い魔との信頼や、性格などが関係するため
魔力の消費が少ないという長所があるが好まれてはいない。

今回、アコライトが怒っている理由は男は普段、任意召喚を好んでいるにも関わらず強制で呼び出されたことだった

男「呼んでも来ないから」

アコライト「それだけっ!?」


男「いやそれだけって…最重要なんだけど…」

アコライト「じゃあ次から必ず来るんで任意にしてください」

男「そこまでこだわる?」

アコライト「強制だとさっきみたいに真っ暗じゃないですか…」

男「堕ちるから悪い」

男は状況を楽しむようにはにかみながら話している

アコライト「だーかーら!堕ちてませんってば!」

梟(マスターがいきいきしてる…)


男「さて…今回アコライトを呼び出した理由なんだけど…」

アコライト「そうでしたね、怪我でもしました?でも血の気が失せてる以外、いたって元気そうですけど?」

男「ああそっかそっか戻るよ」

手首に先ほどの紙が触れると紙から一気に赤色が消え、白くなって行く、同時に男の体つきが元に戻って行った

男「あ~やっぱクラックラするな…なんで戻してんのにクラクラするんだろ…」

アコライト「状態異常緩和…」ブツブツ

アコライトが何か呟いたかと思うと男の目眩が瞬時に和らいだ


男「おーさすが、しかも高速詠唱か――流石に全快は無理みたいだけど」

高速詠唱とはその名の通り普通の魔法の詠唱を高速で詠唱するというものである。
いちいち長く時間のかかる詠唱を、短縮できないかと考えた魔法使いが研究を重ね完成させた。だが消費する魔力が大幅に増大するため、速さの割にあまり使われることは無い

アコライト「マスターの体が第一ですから当然です!」

男「ありがと、で本題だけど…」

アコライト「あり?治癒じゃないんですか?」

男「六年前のエルフの里の話をしてくれる?」

アコライト「マスターの許しがあるなら喜んで!」

男「だってさ執事、梟、質問があるならアコライトにどーぞー」

執事「では…まずカギについて聞きましょうか」

アコライト「カギ?」


男「ほら、あのエルフの記憶のヤツ」

アコライト「あれですか…執事さんはどこまで知ってますか?」

執事「騎士が夜襲をかけて里が燃えた…あたりですかね」

アコライト「あ~そこか…えっとね…」

男「所々端折って要点だけでいいんだけど?」

アコライト「は~い、そんじゃまぁ色々あってエルフちゃんはアタシが介抱していました」

執事「端折りすぎでは?まったく話が繋がりませんよ?」

アコライトは話の75%程を解説無しに端折った。さらに執事の丁寧なツッコミも無視した


アコライト「介抱してたんですけど精神に結構キテたみたいで回復は可能でしたが…」

執事「無視ですか」

アコライト「中身の問題というか、心の奥深くというか…」

執事「ふむ…精神的にダメージをくらい、壊れた…という表現でしょうか?」

梟「マスターこわれたってなーに?」

男「梟はまだ知らなくていいことだから、忘れて」

梟「わっかりました!」

梟の素朴な疑問が終了し、アコライトがまた話し始めた

アコライト「さすがに私も精神的なものはどうしようもないんでどうしようかと思っていたら」

アコライト「『もういやだ!こんなのいらない!』って、エルフちゃんが錯乱しながら言ったんですよ」

執事「それで?」


アコライト「それを聞いてピーン!ときて、記憶を消したらなんとかなるかもってやってみました」

執事「なぜそうなったかあえて聞きませんが…結果は?」

アコライト「だいっせいこー!」

アコライトはピースサインをしながら満面の笑みで言った

執事「…そうですか。カギの話にさっさと戻ってください」

…執事が先程からどことなく怒っているように見えるのは気のせいだろうか

アコライト「マスターから治癒以外の魔法も教えてもらっていたのでそれらを
応用してなんとか記憶の封印を施しました」

執事「封印?削除の間違いでは?」

アコライト「いや~さすがに消すのはちょっと…一応、聖女ですし」

男「元な、元聖女」

アコライト「はいそこうるさーい」


執事「なるほど…封印故にあなたがカギだと?」

アコライト「そゆこと、ちなみにエルフちゃんの記憶はマスターが近くにいると
徐々に戻っていく仕組みになってます」

男「それ聞いてないけど!?」

アコライト「言い忘れてました。テヘッ」

男「テヘッじゃないよ!どうりで朝怒ってたわけだよ!」

アコライト「(怒ってた?)記憶はマスターの近くにいると染み出すみたいに出ますからね~」

男「アコライトの姿を見たら解けるってのじゃなかったのか!?」

アコライト「あのーそんなこと言ったことありませんよ?早とちりじゃありませんか?」

そういえばそうだったかもしれないと、男は頭を抱えた


男「アコライト…そのエルフがどこにいるか知ってるか?」

アコライト「どっかの里に飛ばしたはずです」

男「…他でもない僕の屋敷だ、おまけに数日、長ければ数ヶ月共同生活だ」

アコライト「はひ?」

男「中途半端な魔法はやめろって言ったのに…今回は僕もわるいけどさぁ…はぁ…」

アコライト「あ…あはは……」

アコライトはもう笑うしか無いといった感じだった。先ほどまでの元気さは欠片もない


男「アコライト」

アコライト「はい?」

男「エルフの記憶が戻った場合、最悪の結果になる確率は?」

アコライト「最期の記憶がパンチありますからねぇ…30%?」

男「無視できる?」

アコライト「問題はないでしょうね、アタシの魔法も進化しましたから!」

男「ついでにアコライトの姿を見て記憶がもどる可能性は?」

アコライト「90%強ですね、やったのアタシですし」

アコライトと話していると執事が話しかけてきた

執事「男様、そろそろお時間かと」


男「何の?」

執事「そろそろお嬢様の会話が終了するころかと」

男「ああそっか、なら戻ろう」

アコライト「さあ、もどりましょ~♪」

男「混沌へと還れアコライト」

アコライト「えっ!?ちょっとm…!」

男は強制的にアコライトを還した。強制召喚の真逆、更に高速詠唱を重ねた合成魔法である
まだ言いたいこともあったのであろうがおかまいなしだった

男「さてと…食堂だっけ?」

執事「はいおそらく先に戻られているかと」


~食堂~

男たちが食堂に戻るとそこには既にエルフたちがいた。そして女はまだ眼鏡を掛けている

エルフ「来たか、案外遅かったな」

男「ちょっと話が盛り上がっただけ、待たせたかな?」

梟「おまたせです」

エルフ「いや、ついさっき来た所だ、気に病む必要はない」

狐「いちいち古風な言い回しだねー疲れない?」

早々に狐の笑いながらの嫌味が出た、別行動は三十分ほどの時間だったが
男は新鮮に感じた

エルフ「これは私の癖だからな――いわば個性だ疲れることなどありえんよ」

狐「へー」

梟「ふーん」


執事「そろそろお帰りになりますか?」

男「勿論さ、やっぱり居心地悪いよ。特に眼鏡をかけた女…とかね」

女「取れますよ?」

男「取っても嫌いな事に変わりは無い」

女「ぐすっ…」

執事「お嬢様、ハンカチです」

女「…ありがと」

男「じゃね」

エルフ「世話になったな」

狐「ごちそうさまでしたってトコかな」

梟「またきますー!」


執事「ぜひまたお越しください」

男「気が向いたらね」

狐「とか言いつつまた来るんでしょ?」

男「…そう見える?」

ちなみに男は三日に一度は女の屋敷に来ている。嫌い嫌いと言いつつやってることは真逆だった

狐「伊達に主の家で引きこもってないよ!」

エルフ「誇れることでは無いぞ?」

狐「苦節数年…主の行動は全て把握しているっ!」

男「…さっさと帰ろうか」

狐「えー無視?」

一段落ついたんで今日はここまでです。④、あげ、ありがとうございました。


~男の屋敷~

男たちは商人の屋敷で買った品を選り分けていた。特に膨大な量の油揚げには手間取った

梟「マスター、これはなーに?」

男「んー?」

梟が手にしていたのは黒い紙だった。そこに白い字でこう書いてあった

『旦那、忘れてたこっちもこっちだが武器の金は別ですぜ? 商人』

男「あ、忘れてた…」

『追記 ついでに新商品も来たから見てったらどうだ?』


男「新商品?なんだろ…?」

狐「どうかしたの?」

男「アハハ…武器のお金払ってなかった」

狐「武器?」

男「大部分はそれの手入れ――見せたほうが早いか、その布取ってみて」

男は狐に床に置いておいた長い物の布を指して言った。狐は手早く剥ぎ取った。包まれていた物を見た瞬間、狐はとびきり嬉しそうな顔をした

狐「主、なくしたわけじゃなかったんだね!」

男「え?」

狐「え?ってひどいよ主?ボクの精一杯のプレゼントなのに…」

男「プレゼント?」

狐「そーだよ!主の布団の上に置いといたの覚えてないの?」


男は思い出したように手のひらをポンと叩いてこう言った

男「覚えてるよ…深夜に重い棒がいきなり落ちてきたこと」

狐「そうだったっけ?」

男「これ切れ味は凄まじいけど、結構重いよね」

狐「その重さを利用して切るんだよ。力を抜いて流れるように」

素振りをして動きを伝える狐、だがその姿は子供が手を振り下ろして遊んでいる様にしか見えないので
参考にはならず、可愛いことしか伝わってこなかった

男「? 振るには力が必要でしょ?」


狐「慣れればわかるよ。最も汚してほしくはないけどね」

男「ああ、今まで以上に大切に扱うよ」

外が暗くなってきたので、とりあえず狐との会話を止めて早く商人のところに行くことにした

男「とりあえず行ってくるから、剣とか触らないでね?危ないから」

そう言うと男はカギの束をエルフに渡した。数十個の黒い鍵が連なり結構な重さがあった

エルフ「察するに、ここの鍵か?嫌に重いが」

男「うん、たぶん安全に開く…はず」

梟「はず?」

エルフ「『安全に』か、なにやら怪しいな…」


男「ま、まあ毒の煙とかはないし、爆発は…まあ…うん……」

狐「ありそうだよっ!?」

男「一応、僕の部屋は開けないでくれ…危ないから」

エルフ「そこまで言われて開ける馬鹿がいるはずがなかろう!」

男「じゃよろしくー」

狐「いってらっしゃーい」

エルフ「気をつけてな」

梟「早く帰ってきてねー」

男は一応、刀を持って出かけた。夜の市街地は何かと物騒になるため武器はもっていって損はないだろう。もちろん武器の代金も忘れてはいない


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エルフ「さてと…帰ってくるまで暇だな、何かしないか?」

狐「ボクは御神酒もあるしさっそく晩酌を…」

エルフ「ばんしゃく?」

狐「お酒を飲むこと♪」

手首をクイッと曲げ、お猪口を傾ける仕草をする狐。心底嬉しいのか服に隠れている尻尾がバタバタと動いていた。傍には既に徳利が五本と油揚げが準備されていた

エルフ「おさけ?」

狐「まさか酒を知らないの?」

エルフ「知らぬ」

梟「おいしいんですかー?」


狐「はぁ…酒を知らないとはね…人生の95%損してるよ」

エルフ「そうなのか?」

狐「エルフって何歳だっけ?」

エルフ「15だったかな?」

狐「梟ちゃんは――見た目でアウトだね」

狐「よし、二人とも子供だね回れ右!」

エルフ「誰が子供だ!」

狐「ボクは一人で飲むのが好きなのさエルフはこの屋敷を見て回れば?」

エルフ「そこまで挑発まがいのことをされておとなしく引き下がる者がいると思うか?」

狐「主なら引き下がりそうだけどね、最もキミは――」

エルフ「悪かったな!!」

エルフは狐が言わんとしていることが分かったのか、遮るように怒った


~数十分後 路地裏の商店~

男「やってるよね?」

商人「おう」

男「まず、忘れないうちに金貨十一枚」

商人「一枚多いぞ?」

男「利子ってことにしといてよ」

商人「別にいいんだが…じゃ次だ」

男「新商品だっけ?」


商人「ああ!やっとアルキミア鉱石が手に入ったんだ!」

男「アルキミア鉱石?」

商人「これはなそのまんまだとたーだーの白い石だが魔力を込めると
   それはそれは素晴らしい銀色の輝きを放つってシロモノでな」

興奮しながらまくし立てるように話し始める商人

男「銀の輝き…?」

商人「でな、これがまた強度がたけーんだよ。ちょっち加工は面倒だが無視できる程度だな
   更には武器やら防具やら何にでも使えんだよエルフの居住区にしかねーのと価格が難点だが…」

男「いくら?」

商人「お、珍しく乗り気だねぇ旦那。お得意様価格ってことでそうだな…塊一つ金貨二枚でどうだ?」


男「3つもらおうかな」

商人「あいよ!自分で持ってくかい?」

男「全部送っておいて、それと狐が買ったお酒の追加、代金はここに置くよ」

商人「もう無くなったのか?」

男「多分、今日か明日で終わるかも狐が買った分をそのまま追加で」

商人「あいよっ!ちょっと待っててくれ!酒代含めて金貨6枚と銀貨10枚だ」

商人はアルキミア鉱石を取りに店の奥へと消えた。

男「アルキミア鉱石…か…十中八九間違いないと思うけど…」

商人「旦那、包んどいたぜ」

男「ありがと、じゃ僕は帰るよあの子たちが心配でね」

商人「毎度ありっ!今後ともごひいきに!」


~帰路~

男「にしても…」

買いすぎたな、とまたもや男は思う。今頃、大きな袋にエルフたちが騒いでいるのかと思うと笑えてきた。
ちなみにアルキミア鉱石の解析に魔力を使用する可能性があるので帰りは徒歩である。辺りは薄暗くもう数十分で完全な闇に包まれるだろう

男「アルキミア鉱石…間違いないな速く帰って調べよ」

更に歩を進め、広場のような場所に来たとき男が何か察知した。
それは気のせいで片づけられるほどの微妙なものだったがやけに気になった

男(う~ん…狙われてるのかな?だとすると――)

男はバッと後ろを振り向いた。気配の正体は男と同じくらいの背丈の黒い服を着た人物だった。
ロングソードをを振りかぶり切りかかる直前だった


男「運の悪い人だ」

とっさの出来事だったが振り下ろされた剣が男に届くことは無かった。
男は剣が振り下ろされる刹那、体を滑らせるように横にずらし回避した

黒服「…チッ」

黒服は振り下ろした勢いをそのまま利用するように手首を返し男の右腕を切った。
それほど深くはなかったが、右腕を赤く染め上げるには十分だった

男(切られたけど動くか…ちょっと油断したかな)

黒服「第98小隊所属 男だな?来てもらおうか」

男「そっちから仕掛けてそれは無いんじゃない?」

黒服「お前があの程度で死ぬようならそれまでだった。それだけだ」


男「ふーん…今の内に逃げれば死ななくて済むけどどうする?」

黒服「どういう意味だ?」

男「アンタに殺されるほど僕は弱くない」

言うが早いか今度は男の方が先に仕掛けた。鞘から抜かれた型も何もない我流の連撃が
速く鋭く黒服に襲いかかる
黒服はそれを受けきった。そして一度距離を取り、再度剣を構え突進してきた。
男は迎撃の構えを取り迎え撃つ、だが黒服の行動は斬撃ではなかった

黒服「目先に惑わされるとはな…爆炎!」

切りかかる動きをフェイントにして近距離からの高速詠唱
予測を一切していない魔法を避けることは難しい――が


男「問題です。転移魔法最大の利点とはなんでしょう?」

黒服はその言葉を自分の真後ろから聞いた

黒服「貴様…!」

気付いた時には既に遅し、黒服の首には刀が突き付けられていた

男「最大の利点――それはいつでも相手の背後を取れることさ」

男「さーて、お聞かせ願おうか?っとその前に武器から手を離してもらおうか」

黒服「…これでいいか」

黒服はすんなり武器を捨てた。このような状況に慣れている風にも見える

男「まず誰の命令?」

黒服「察しがついているだろ?」


男「念には念をってヤツさっさと答えろ」

男は手にした刀に更に力をを込める

黒服「…大臣だ」

男「なぜ大臣が?」

黒服「数ヶ月先に戦争を仕掛けるんだとよ」

男「エルフの居住区か?」

黒服「愚問だな、この国が仕掛けるなんざそこしかない」

男「僕が呼ばれる理由は?」


黒服「アンタは強いんだろ?だから呼ばれるんだろうよ」

男「それにしては早いよね?何故?」

黒服「知るか、お堅い大臣の考えることなんざ知りたくもねぇ」

男「他に知っている情報は?」

黒服「無いよ、俺も信用されてる訳じゃないんでな」

男「…それだけ聞ければ十分かな」

黒服「…俺をどうするつもりだ?」

男「捨て駒に用は無いよ、おとなしく帰れば殺さないであげるよ」

男は黒服の首に当てていた刃を下ろし背を向け歩きだした

黒服「待て、お前は参加するのか?」


男「参加って戦争に?何故?」

男は振り向きもせずに答える

黒服「『不安材料は取り除け』これは命令だ、アンタが来ないなら俺はアンタを殺す」

男「答えは行かない、なんならエルフの援軍になるよ」

黒服「そうか、ならば!」


黒服は音も無く落ちていた剣を素早く拾い、男に切りかかった

男「あーあ…おとなしく帰れば――」





男「死ななかったのに」

辺りに鮮血が飛び散る。男の刀が黒服の首を容赦なく切り落としたのだ。
黒服の最期の一撃は男の体にかすり傷一つすら与えること無く終わった。

男はそんなことは気にもとめず血振るいをして納刀した。
それがさも当然であるかのように人を切ったという意識も無いほどに

男「ただの人間風情が僕に刃向かうなんて百年早いよ」

男(返り血で汚れたか…魔法で何とかしとこう)

黒服の死体を気にする様子もなくまたゆっくりと歩き出す男
足取りは軽く後ろめたさなど微塵も感じていない

最近全く投下しなかった理由ですが、今日投下したのをずっと考えてました。
長く考えた割に稚拙ですいません。明日からまたがんばります


~男の屋敷~

エルフたちは先程、片付けをとっくに終え食後の休憩を取っていた。途中で石やら酒やらが送られてきたが梟の魔法でそんなに手間取らなかった。
ベッドや服は男がエルフたちのために大部屋を開放しそこに搬入済みである

男「ただいまー」

エルフ「おかえ…ど、どうした!?男!?」

男「? 何かあった?」

エルフ「何かあったではないわ!そなたの腕だ!」

男「腕?――あ」

男は黒服に切られていた右腕を思い出す。治癒を忘れ、服は変色し、腕を伝った血が固まり手の甲に黒くへばりついていた。

男「気にしないでいいよ、もう止まってる」

エルフ「だからと言って治療をしなくてもいいという理由にはならん!」

男「…別に平気なのに」


エルフ「男!手当する道具はどこだ!」

男「涼やかなる癒しの風よ、この場に吹きて我に癒しを与えん」

男は冷静に詠唱を行い腕の傷を治した

男「これでいい?」

エルフ(今の魔法は…!)

狐「主、それができるなら最初からやりなよ」

男「いやー忘れてた忘れてた」

男「これでいいかな?エルフの気持ちもありがたいけどこっちの方が楽だから」

梟「おーい、エルフさん?」


エルフ「……あ、ああ治ってなによりだ」

男「どうかした?」

エルフ「なんでもない、なんでも…ないぞ?」

狐「なんで疑問形なのさ?」

男「…まぁいいよお風呂は沸かしておいたから好きに入って、僕は疲れたから寝るよ」

狐「主、ボクもねる」

エルフ「…私は風呂に入ってから寝ることにしよう」

梟「私もー」

男「あんまり遅くまで起きてちゃダメだよ?」

エルフ「わかっておる」


~男の部屋~

狐「主、はいこれ」

男「これは?」

狐が早々に取り出したのはお猪口だった。狐の手のひらにすっぽり収まるくらいの大きさである
傍にはまた五本の徳利があった。どうやら飲まずに取っておいたらしい

狐「飲もうよ」

男「商人のお酒?」

狐「そだよーこれはもう香りからして間違いなく美味い!」


狐は自分のお猪口に酒を注いで一気に飲み干した。少女の姿で酒を飲む様子は極めて異質だ

狐「~~~~~~~~~~~!!」

男「ははは、美味しそうだね」

狐「そりゃあもう!もう!もう!」

男「でもこれ美味しいね全身に染み渡るって言うのかな」

狐「ぷはっやっぱりボクの勘に狂いはない!」

徳利ごと飲んだほうが早いほどの勢いで酒をかっくらう狐
時々油揚げをつまみながら楽しそうに飲んでいる

狐「ほら!もっとジャンジャン飲もうよ!」

男「そうだね、たまには飲むとするか!」

狐「そうこなくっちゃ!」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~エルフの部屋~

エルフ(先程の回復魔法…旅人の使用したものと同じだ…)

エルフ「外出の隙に探れば良かったな…」

梟「どーかしましたか?エルフさん?」

エルフ「いや、何でもない気にするな」

梟「そうですか…ふわぁぁ…」

エルフ「眠いのか?」

梟「そうなん…ですけど…まだ…おはなしを…」

エルフ「明日話せばよかろう?丁度私も寝ようかと思っていた所だ」


梟「そうですか…おやすみなさい…」

エルフ「おやすみ、梟」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

エルフは再び夢を見た。今度の夢もまた旅人がいた戦争まであと五日の場面である

旅人「やあ、また会ったね」

幼エルフ「またですね」

旅人「…もしかして転んだ?」

幼エルフ「えっ!?」

旅人「膝すりむいてる」


幼エルフ「はい…あしがもちゅれて」

旅人「もつれて、ね」

幼エルフ「…かみまひた」

旅人「涼やかなる癒しの風よ、この場に吹きてこの者に癒しを与えん」

幼エルフ「あ…」

旅人「これでいいか、女の子に傷が残っちゃかわいそうだ」

幼エルフ「ありがとうございます!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

旅人「エルフは毎日、毎日本ばかりで飽きないの?」

幼エルフ「へーきですよ」

旅人「ならいいや、今日はどんな本を持って来たの?」

幼エルフ「これです」

旅人「こりゃまた古いものを…」

幼エルフ「はやくっはやくっ」

旅人「わかったよ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~^

旅人「はい今日はここまでまた明日ね」

幼エルフ「ありがとうございます!…じゃなくて」

旅人「じゃなくて?」

エルフ「よきにはからえーです!」

旅人「使い方間違ってるからね?」

エルフ「なんとっ!?」

旅人「それじゃまた明日ね」

幼エルフ「たびびとさんひとつきいてもいいですか?」

旅人「なんでもどうぞ」

幼エルフ「たびびとさんのほんとーのなまえがしりたいです」

旅人「ああ、偽名だもんね。まぁ今更隠す必要もないか」

旅人「僕の名前は―――――」


目が覚める、中途半端なところで夢が終わり現実へと引き戻されたエルフは叫んだ

エルフ「だから名前を教えぬかー!」

エルフ「またしても肝心な所を聞き逃したではないかー!!」


エルフ「旅人め、どうやら私を本気で怒らせてしまったようだな?私の行動力は目を見張るものがあるぞ?
    なにがなんでも旅人と男に繋がるものを見つけてみせようではないか!!」

隣の小さなベッドで梟が寝ているがお構いなしに機関銃の如く喋り続けるエルフ

梟(…エルフさん何を騒いでいるんでしょう…)

エルフ「いや、待てよ…?私はこの後も旅人の事を旅人と変わらずに呼んでいたな…」

エルフ「…絶望的ではないか」


エルフ「そうだ…!耳だ、旅人の耳はエルフの耳であった!ならば男は…!」

エルフ「あ…人の耳か…むむむ……」

エルフ「うーむ…旅人は男では無いのか?だがそうなると…」

梟(うるさいですね…)

エルフ「ならば顔はどうだ!?」

エルフは2回の夢を思い出す。2回の夢に共通して旅人の顔は幸いにも鮮明に思い出すことができた

エルフ「顔は違うな…だが随分昔のことだからな…アテにはならぬか…」

エルフ「何か…何か決定的な物が欲しいな…」

エルフ「決定的なもの…マント、魔法、武器…あとは何がある?」


~翌日 広間~

男「今日から魔法の練習に入るぞ」

エルフ「うむ楽しみだぞ」

狐「はーい!」

男「昨日も言ったとおり狐は僕が、エルフは梟が教えるから」

エルフ「よろしく頼むぞ、梟」

梟「どろぶねにのったきもちでまかせてください!」

男「…泥船は沈んじゃうよ?」

梟「あり?」


男「ともかくお昼になったら広間集合だからね?よろしく」

梟は男に元気よく返事をすると、エルフの手を引いて庭へと走って行った

狐(主と二人きり…これは…チャンス!ボクの魅力を見せつけて主をメロメロに…」

男「邪念が漏れてる」

狐「え!?」


男「幼児が何を言ってるんだか…」

狐「幼児じゃないもん!ボクはこーみえて250歳だもん!」

男「人間基準で?」

狐「う…じゅ…」

男「じゅ?」

狐「15歳…」

男「はい、残念でしたー」

狐「いーもん!主を絶対絶対落としてみせるもん!」

男「神様なのに邪念が溢れてるなぁ…」

狐「おっと、ボクはあくまでも神様の『使い』だからね?勘違いしちゃ困るよ」


男「…それ重要?」

狐「重要さ」

男「じゃあさ何かこう…天変地異を起こすとかできないの?」

狐「神様ならできるんだろうけどさ、こーんな可愛い女の子にそんな大それたことできるわけがないとはおもわない?」

男「なるほど…」

狐「さっきも言った通りボクは『使い』だからそんなこと元々できないんだよケケッ」

男「そっか、じゃ全くの素人に教えるつもりでやるからね?」

狐「わくわくするね!」


男「まずは使える魔法の確認だ、なにが使える?」

狐「変化と…火?」

男「火?とりあえずやってみてくれる?」

狐「狐火!」

ポッと音がして、狐の手のひらにマッチの火ほどの小さな炎が灯る。
風が吹けば飛びそうなくらいに弱々しく、火も点くか不安になるほどだ。

男「えーと…こ、個性的だね…」

狐「…主」

男「なに?」

狐「魔法教えて」

男「…わかった」


~一方その頃 梟&エルフ~

梟「それじゃーエルフさんなにか使える魔法はありますか?」

エルフ「フフン、聞いて驚くな?なんと転移魔法が使えるのだ!」

梟「………」

エルフ「どうした?驚かぬのか?」

梟「きいておどろいちゃいけないんですよね?」

エルフ「…こういう時は驚くものと決められている」

梟「びっくりしました!さっそく見せてください!」

エルフ「取ってつけたようだが…まぁよかろう特別だ」


エルフ「転移魔方陣展開…」

エルフの足元に紫の光る魔方陣が現れる。安定した詠唱でここまでは順調だったが…

エルフ「!」

魔法陣に亀裂が入る。術者の未熟さによるものだ

梟「魔封じ!」

亀裂が入ると魔法陣に込められた魔力が漏れ出し、暴走してしまう
梟は勿論それを知っていたため素早く魔法を封じる魔法を詠唱し事なきを得た

エルフ「…すまぬ失敗した」

梟「あれだと百回やってもむりですあきらめてください」

自身より小さな梟からの辛辣な言葉に無駄にプライドが高いエルフはかなりへこんだ。

エルフ「……無理だとはわかっているが、私はこれしかできぬのだ…」

梟「だいじょーぶですよ!私にまっかせてください!」


エルフ「一応これでもたまには成功するのだぞ?」

梟「わかりました。それじゃはじめますか」

エルフ「何をだ?」

梟「だいして!『梟ちゃんの魔法講座!』」

いきなり謎の講座が始まった、受講者はエルフしかいないが気にしていない様だ

エルフ「…素朴な疑問だが魔法に関する所だけは言葉が詰まらないのは何故だ?」

梟「魔法使いですから、そこらへんがしっかりとできなきゃだめですから」

エルフ「…わかった、説明を続けてくれ」

梟「エルフさんは雷にてきせーがあったのでまずはそれからやります」

エルフ「よろしく頼む」


梟「まずは、雷のいめーじをつくってください」

エルフ「ふむ…」

目を閉じイメージを固めるエルフ。音、轟、光…イメージはすぐにできた

雷の魔法は他の魔法よりも融通が利く、魔法に融通というのも変な話だが
例えば物に火を点ける場合、炎の系統の魔法を当てれば良いが、雷でも同じことができる
電流を当てて気絶させることも可能といったように様々に応用ができる

梟「いめーじができたらあとは使いたい場所や人物を思い浮かべるだけです。今はじめんにやってみてください」

エルフ「こうか?」

前触れもなく梟の横に光が刺さるように落ちてきたが、それは雷とは程遠く勢いはあるものの
地面に落ちたそれは小さな焦げ跡をつけただけだった。
根本的な魔法ができない状態で転移魔法ができるはずがない、失敗の原因は明らかであった


梟「うーん…あっとうてきな魔力不足ですね、あと能力も」

エルフ「…そなた、私をどこまで惨めにするのだ?」

梟「い、いえ!そんなことは…」

エルフ「…魔力はどうすれば増えるのだ?」

梟「えっと、べんきょうするとか…ほんをよむとか…がんばるとか」

エルフ「何か手っ取り早い方法はないものか?」

梟「かんたんな魔法をおぼえるとあがりますよー」


エルフ「簡単なのだな?ならば教えてくれ雷は後回しだ」

梟「よていへんこうです『梟ちゃんの初級魔法講座』でいきます」

エルフ「それ変える意味あるのか?」

梟「きぶんです」

『梟ちゃんの初級魔法講座』

梟「まずは鍵開けです」

エルフ「…これでもかと言うほど犯罪臭がするのだが」

梟「べつにもんだいないですよ、マスターも覚えてますからね」

エルフ「…そうか。して、どのようにすればよい?」

梟「いまからとびらをつくるのでそれを私のいうとおりにあけてみてください」


~数十分後~

エルフ「こうか!」

ガチャ

梟「おお!」

エルフ「開いた…やった開いたぞ!」

梟「鍵開けの魔法はきそのきそなのでしっかり覚えてくださいね」

梟「今日はこのままかんたんな魔法をおしえることにします」

エルフ「うむ。改めてよろしく頼むぞ梟」

梟「はいっ!」


~男&狐ペア 屋敷2f研究室~

男「ここでいいか」

狐「あ、ボクの寝床だ」

男「言っとくけどここは僕の屋敷だよ?」

狐「いーじゃんか、主のことたまーに手伝ってたし」

男「あ、そういえば僕の魔法書読んだんだよね?」

狐「…おこる?」


男「怒らないよ、単純によく読めたなーと思ってね。僕の読んでるヤツは変に回りくどい書き方だから」

狐「本嫌いのボクが読める訳ないじゃん」

男「はい?」

狐「途中の挿絵みたいのを見よう見まねでやってみただけ、いや~我ながらスゴイと思うよ」

男「だから不完全なのか…」

狐「ま、いーじゃん尻尾かわいくない?」

男「僕は耳の方が好きかな」

狐「じゃー両方だ!」

何故かどうあっても耳と尻尾を意識させたいようで耳を出したり尻尾を出したりしていた
変な所だけ器用なものである


最終的には両方出すことに落ち着いたが、尻尾の方は服に隠れて見えないので
正直、男にはどうでもいいことだった

男「なでてあげるから集中しようね」

男は優しく狐の頭を撫でた。耳の近くに手が行く度にピクピク動いて可愛らしかった

狐「にへへ…///」

男「はいおしまい」

狐「もっと!」

男「じゃ魔法を覚えられたらご褒美としてやろう」

狐「え~今がいいー」


男「なら今後一切無しだ」

狐「さ、早く教えて」

男「…切り替えが早い」

狐「それはボクの取り得!」

男「…何から教えるかな…小さめの氷でも作ってみるか」

男「高速詠唱で短縮するとして…良し!」

高速詠唱は上級魔法になるほど、普通に詠唱した時との差が大きくなる
今回教える魔法は初心者でも三分で覚えられるほどの物なので大差は無い

狐「決まった?」


狐「決まった?」

男「細かいことは考えないで氷柱から始める」

狐「寒いときに屋根とかにあるやつ?」

男「それだね、攻撃魔法の入門としては最適なんだよ」

狐「どーすればいいのさ?」

男「梟とはやりかたが違うけどまずはこれだね」

既に見慣れた魔方陣が書かれた紙
これまでの物と相違点は無い

男「これを持って氷柱って言えばいい」


男「これを持って氷柱って言えばいい」

狐「よーし…氷柱!」

狐の手のひらに乗っていた魔方陣から鋭く尖る氷柱が飛び出した
それは狐の前髪を掠め止まった

男「…予想以上かな」

狐「あああ主!?念のために聞くけどボクに刺さってないよね?ね?ね?」

男「かすり傷も無いよ」

狐「よかったぁ…」

誰でも簡単に覚えられる魔法とはいえ、やはり差が生まれる。
男はそれなりに時間がかかると予測していたが、大きな間違いであった。


男(これだったらもっと高度な魔法を教えてもいいかも)

狐「主~もっと安全な魔法を教えてよー」

男「攻撃魔法に安全を追求されてもなぁ…」

狐「そうだけどさ…」

男「ちょっと早いけど休憩にしようか。狐だったらもっと
  高度な魔法を覚えられると思うからその準備もしないと」

狐「はーい」

男は次に教える魔法と、休憩のためにお茶でも持ってこようかと部屋を出て行った。すると――

「ふーん。あれがキミの主か…」

そんな声がした。


狐「誰!?」

「キミの保護者…とでも言うべきかな」

声の主は前触れも無く現れた――いや、現れていたのは光の球だった

狐「ボクの保護者は喋る光の球なのかい?」

「…まさか会って三秒でそんなことを言われるとはね…参ったよ」

狐「…キミは一体何者?」

「さっきも言ったけどキミの保護者ってトコかな?親って言ってもいいかもしれないけ
どね」

狐「キミが保護者ねぇ…」

光の球から聞こえる声に狐は聞き覚えがあった。正にそれは、うんざりするほど聞いた自分自身の声だった


「やっぱりキミ呼ばわりか…なーんか嫌な感じだなぁ…」

狐「初対面でも口調が変わらないのがボクの長所だからね」

「でも、目上の人かそうじゃないかは区別した方がいいよ?」

狐「ふーん…じゃあキミはボクの目上の人物ってことになるのかな?」

「そうなるね、ま、ボクは上とか下とか気にしないけどさ」

狐「…で?そんな上下を気にしない光の球が、一体ボクに何の用?」

「じゃ本題だ、この国で言う魔法も覚えて、やっと一人前になったみたいだね」

狐「ケケッ まだまだ、半人前だよ」

「そんなこと言わないでよ、ボクだってやりたくてやってるワケじゃないんだよ?
無駄に形式とか格式にこだわる先人たちの伝統ってやつでね」


狐「ふーん、大変だね」

「変な人について行ってここまで来たキミほどじゃないさ」

狐「ケケッ そうかもね。続きをどうぞ?」

「じゃ遠慮なく、えーと…一人前になったキミとの約束を果たそうと思います」

狐「約束?」

「キミがボクの元を離れ一人前になったら、何でも一つ願い事を叶えるってのさ」

狐「はぁ?」

突拍子も無い回答に驚く狐、まさかいきなり現れた光の球にそんな事を言われるとは
それこそ神様でもない限り思いつきはしないだろう

「あー信じてないね?折角こんなところまで来たって言うのにさ…」


狐「ふーん、大変だね」

「変な人について行ってここまで来たキミほどじゃないさ」

狐「否定はしないよ。続きをどうぞ?」

「じゃ遠慮なく、えーと…一人前になったキミとの約束を果たそうと思います」

狐「約束って?」

「キミがボクの元を離れ一人前になったら、何でも一つ願い事を叶えるってのさ」

狐「はぁ?」

突拍子も無い回答に驚く狐、まさかいきなり現れた光の球にそんな事を言われるとは
それこそ神様でもない限り思いつきはしないだろう

「あー信じてないね?折角こんなところまで来たってにさー」


狐「願い事を叶えるって人にはロクなのがいないからね」

「それには同意見だよケケッ」

狐「それで?話の続きは?」

「ああ、そうだったね、じゃ願い事をどーぞ」

狐「…さっきも言った通りさ、キミが本当にできるかわからないのに、『この願いをお願いします』って返事が出来ると?」

「もっと物事を柔軟に考えようよ、折角のチャンスだよ?それに、目の前にいきなり光の球が現れて、願い事をしろ…なーんて伊達や酔狂でできると思うのかい?」

狐「だってなーんにも覚えてないもん」

「はぁ…これだけ話してまだ思い出さないか…」

狐「三か月前の記憶も危ういからね」


「ああ!もう!じれったい!」

光の球が一瞬強く光ると、駆け抜けるように狐の脳裏に次々に浮かんできた

狐「これって…」

「その時のキミの記憶だよ」

浮かんできた記憶は言うまでも無く狐の昔の記憶だった。そして、たしかにそこには誰かと約束をする、小さな狐の姿があった。

狐「……なるほど。さしずめキミは神様ってところかな?」

「ケケッそうでもなければこんな事は出来ないとは思わないかい?」

狐「ボクのことをずっと見てたってこと?」

「まぁね、監視はしてたさ」

狐「まさか神様がボクを見てたとはね…何か変な気分」


「でも神様以上に心強いものがると思うのかい?」

狐「ないだろうね ケケッ」

「じゃ好きな願い事考えといてね、強く願ったら叶えるからさ」

狐「え?ちょっと!まだ話は…」

「じゃーねー」

止める暇(というか止める手立ても無いが)も無く光の球は消えてしまった

狐「…消えた」

ガチャ


男「お茶が入ったよ」

狐「あ、ありがと」

男「ん…?」

狐「どうかしたの主?」

男「狐、ここに誰か来なかった?」

狐「来てたけど、なんでわかるの?」

男「いや、何か違和感があるなーと」


狐「なにその便利機能」

男(おかしいな…僕が気付かないなんて…)

男の屋敷には魔法が施してある。それは外から何かが侵入した場合に男はそれを察知できるという魔法である。魔術師から庶民まで入ってくる何かがあれば必ずわかるはずだった。

狐「ボクの保護者だってさ」

男「狐の保護者、か……」

狐「ま、気にするほどのことでもないみたいだよ?人畜無害ってやつかな」

男「…そうだといいけどね」

需要があるかわかりませんがまだまだ続きます。
楽しんでいただけていれば幸いです。


~数時間後 狐&エルフ自室~

狐とエルフは夕食後、すぐに自室へと戻った。
初日に死にそう(に見えた)エルフの血色は元の健康な色に戻っていた。

狐「あーつかれたー」

エルフ「同じくだ…」

慣れない魔法を使った所為で普段以上の疲労感を感じていた。
二人とも寝具に寝転がって、後は寝るのみと言った体勢である。

狐「そういえばさー」

エルフ「何だ?」


狐「梟ちゃんなんで呼ばれたんだろうねー」

エルフ「…大方、私とそなたの魔法の指導についてであろうよ」

狐「ケケッ 今日はがんばったから、ほめられてるといいなー♪」

エルフ「…そなたの笑い方はやはり何とかならぬのか?」

狐「まーたその話?ま、ボクの笑い方ってひねくれてるもんね。でも、気にしないでよ」

エルフ「自分でひねくれ者と言っていて、何とも思わんのか?」

狐「思わないさ。自覚しているだけマシとは思わないかい?」

エルフ「確かに一理あるな、自覚しているのとしていないのとでは天と地ほどの差がある」

狐「そうでしょ?」


エルフ「ならばそれを直す事はできぬのか?」

狐「やーだね、できるけどやりたくないよ」

「このひねくれ者め」とまたエルフが言うと、狐はそれを聞いてまたケケッと笑った。
なんだかんだで仲の良い二人だった。

エルフ「ああ、そうだ狐」

狐「なにさ」

エルフ「魔法の練習はどうであった?」

狐「まあまあってトコかな、エルフは?」


エルフ「…可も無く不可も無くといった所だな」

狐「何かスゴイのを覚えたって感じだね?」

エルフ「私を誰だと思っておる、魔法に長けた種族エルフだぞ?」

狐「それならさ、やってみてくれない?」

エルフ「…馬鹿を申すな、こんな所で使えば男に迷惑がかかるであろう?」

狐「それもそうだね、この部屋が壊れでもしたら困るしね」

エルフ(言えぬ…攻撃魔法など一つも覚えておらぬとは…)


~男の部屋~

男「梟、エルフの魔法はどうだった?」

梟「雷の系統はいっさいおぼえてません」

男「そうか…」

梟「きょうおしえたのは、解錠、施錠、解毒、五感強化です」

男「…あと三日でせめて雷の初級呪文は覚えさせてくれ」

梟「…てきびしい」

男「それと、僕は今日から少しこの屋敷を離れるから三人でなんとか頑張ってくれ」

梟「マスターおでかけするの?」

男「…ああ、エルフの記憶の調節も兼ねてね」

梟「…どのくらい?」

男「三日かな、それと武器を送るから練習させておいて。練習自体は執事と女に頼んでおくから」

梟「りょうかいしました!」


~召喚の間~

男「イフリート出て来てくれ」

魔方陣から炎が噴き出し、人の姿を形成していく…

イフリート「我が主、何の用事だ?」

男「ちょっと僕について来てくれる?」

イフリート「かまわねぇが…なら久しぶりにちゃんとした服にするか」

やたら装飾の付いた服が黒いスーツのような格好へと変わって行った。

男「便利だね炎って」

イフリート「ガハハハ!俺の特権だからな」

イフリートは男の右腕ともいえる使い魔である。
炎の精霊と言うだけあって火と名の付く物なら、色から形までなんでも扱える
服の形の炎を形成するなど朝飯前だ。


イフリート「ま、こんなもんか、それで?どこに行くんだ?」

男「エルフの真相を知りにってトコかな」

男はそう言って巨大な二つの荷物の一つから黄色く染まった紙を取り出した
エルフの適正検査の時に染まった物だ

男「この紙に染み込んだ魔力からこの屋敷に来るまでいたであろうエルフの居場所に転移する」

イフリート「まーたよくわからねぇことを…」

男「ついでにアルキミア鉱石の実験とか錬金とか、ここだと危ないかもしれないから」

イフリート「そのバカでかい荷物はそのためか?」

男「そうだよ」

イフリート「よっしゃ!俺は準備バッチリだ!」

男「じゃあ行こうか」


~エルフの里~

月明かりに照らされた風景をみて男は呟いた

男「なるほど…そういうことか…」

まるでどこかの探偵が言いそうな台詞だ。この場がもし殺人現場等であれば不思議は無いが、もちろんそんなことはある訳が無い

イフリート「…主、確認だがここに間違いはねぇのか?」

男「信じたくはないけど…間違いない」


~数分前~

男たちが転移した場所はエルフが来たであろう土地である。
雲一つ無い空の綺麗な三日月が照らしていた。

男(明りが点いている家が一つも無い…)

元々、人間より魔法に秀でているエルフという種族は言うまでも無く日常生活に魔法を使っている。
夜に明かりを点けたり、火を灯したり、暑いときには心地よい風を吹かせたりもした。

そんな彼らの住む土地のはずだが、男の言う通りどこにも明かりが一切点いていなかったのだ.
それが三日月の光をより一層引き立て、静けさに拍車をかけていた.


イフリート「主、とりあえず誰かいないか探してみようぜ」

男「外には誰もいないみたいだから適当な家を訪ねようか」

手始めに三軒ほどノックしてみた、どの家も不思議なことに返事が無かった

そして四件目

男「何かおかしいな…」

男とイフリートの頭の中にはすでにある結論が浮かんでいた――すなわち残酷で残忍な惨殺という結論が


イフリート「主と俺が思ってる事は一緒だと思うぞ?」

男「でも、信じたくない」

イフリート「だけどよ…」

男「鍵は…開いてるか、入ろう」

イフリート「…おう」

扉の先には凄惨な状況が広がっていた
広いとはいえない部屋の中は荒らされ、物が散乱していた

男「次だ」


男は次々と扉を開けていった家の中はどれも似たようなもので、食器が散乱している家
食べかけの食事がある家、窓がガラスが割れていた家もあった。
それらを調べ終えたのが数分前の出来事だ。


そして、今に至る

イフリート「…主、確認だがここに間違いはねぇのか?」

男「信じたくはないけど…間違いない」

男たちが転移した場所には『誰もいなかった』

家の中。
外の広場。
全て等しく荒らされどこにも誰もいなかった。


男「家を残してもぬけの殻…か」

イフリート「……そうだといいがなっと」

家の影、つまり月明かりに照らされず暗い場所をイフリートが指差すが暗く何も見えない。

男「…どうかした?」

イフリート「悪人が考えることなんざ想像つくんでね…ほれ」

イフリートは右手に炎を灯して物影を照らした。
その地面には何も落ちていなかったが明らかに他とは違っている点があった。

男「黒い染み…」

人がいないが家が残されている。
家の中には争った形跡があり、中には食べかけの食事があった家もあった。
――この二つで達する結論は一つだろう。


男「血痕…か」

イフリート「ああ、それしかない」

男「となると、ここで起こったことも一つしかないね」

イフリート「惨殺…だな」

男「…だね」

イフリート「なんで里の奴らは逃げなかったんだ?転移とか手はあるだろ?」

男「転移だってエルフが皆使える訳じゃない、魔法が苦手なのも当然いるし
  運の良い奴だけ助かったって所かな…」


イフリート「でも体が無いぞ?」

そう、あったのはあくまでも血痕だけ、殺されたことを証明する死体はどこにも見当たらなかった。

男「考えにくいけど、持って行ったのかな?」

イフリート「主でも何でかわからねぇのか?」

男「うーん…実験かなぁ?」

イフリート「人間ってのは何で実験が好きなんだろうな?」

男「…でも実験ならまだ生きてるかも」

イフリート「だといいけどな」


男はふと、黒服が言っていた一ヶ月後の戦争のことが頭に浮かんだ。

男「イフリート、戦争を止める方法はあるのかな?」

イフリート「説得とかか?」

男「どちらも長年いがみあっていたら?」

イフリート「そりゃあ、どっちかを潰すかって――」

イフリートはそこまで言ってようやく気付いた、男が何を考え何をするつもりなのかを。


男「やっぱりそれしかないか…」

男は大きくため息を吐いてから持ってきた荷物を漁り始めた。

イフリート「なぁ、まさかとは思うが…」

男「それ以上は言っちゃダメだよ。誰が聞いてるかわかったもんじゃない」

イフリート「…わかった」

男「じゃ、アルキミア鉱石の実験を始めるよ」


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男「うーん…」

男は雪のように真っ白な石に手をかざし、難しい顔をしていた。

イフリート「どうすんだこれ?」

男「まずは魔力を注いでみるよ」

かざしていた手から青い光が溢れ、白い石に染み込むように消えていった。石に変化は無い。

男「何も起こらない?」


イフリート「もっとやらねぇとだめなんじゃねぇか?」

男「それじゃ、もう少し…」

先程と同じようにゆっくりと魔力を注いでいくと石に変化が現れた。
白い石は段々と銀色に輝き始めた。

イフリート「こいつはおもしれぇ!」

男「一定量まで注ぐとこうなるみたいだね、商人の言った通りだ」

イフリート「限界はどのくらいなんだろうな?」

男「うーん…限界は無いと思うよ」

イフリート「このヘンテコな石が、か…」


男「じゃ次」

男は少し離れた所に紙を敷き、そこに新しくアルキミア鉱石を置いた。

男「イフリート、石に当てないように火球を撃ってみて、威力は高めで」

イフリート「どりゃ!」

イフリートは掌を前に突き出し、火球を発射した。すると…

イフリート「ん?」

当てないように放った筈の火球は進行方向を変えて石へと当たった。
そして石はその魔力を吸収し、淡く銀色に輝き始めた。


イフリート「主、バカにもわかるように解説を頼む」

男「もちろんさ」

男の話によると、石の下に置いた紙には誘導の魔方陣が書かれていた。
本来なら飛んでいる魔法の進行方向を変える程の力は無いが、アルキミア鉱石と相性が良かったらしく
このような結果になった。ということらしい。

男「注いでる時からもしかしてって思ってたけど、まさか本当にできるとは…」

イフリート「実験はまだやるのか?」

男「後は僕にとっての加工しやすさのテストかな。寝てても良いよ」

イフリート「いや、俺はなんか、腹の足しになるもんはねぇか見てくる」


男「火の精霊ってご飯食べるの?」

イフリート「味覚はあるからな。腹いっぱいとかわかんねぇけど美味いもんはくいてぇ」

男「それじゃ僕の荷物に色々入ってるから食べていいよ」

イフリート「おお!――でも主はくわねぇのか?」

男「足りなくなったら屋敷に戻るよ」

イフリート「なら、遠慮なく…」


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男「よしこんなもんかな」

アルキミア鉱石に関する実験が一通り終わり、次は錬金に取りかかろうとしていた。

男「えーと――魔装銃に、爆雷の種、アルキミア鉱石に中和剤…仕上げに鉄を少々…」

地面に大きな魔方陣を描き、その上にどこからか見つけて来た大きな壺に次々に材料を放り込んでいく。

男「あとは暫く待てば完成!」

イフリート「…何ができんだ?」


男「さあ?」

イフリート「わからねぇのか?」

男「僕の錬金術って行き当たりばったりだからね」

イフリート「…前から思ってたが錬金術ってのはなんなんだ?金を作るだけじゃねぇのか?」

男「正確には金を作ろうとした…かな」

イフリート「ってことはできなかったのか」


男「例え話をしようか、錬金術の基本は等価交換――つまり、何かを作るには
  それ相応の対価を払う必要がある。材料とか、足りない分を埋める魔力とかね」

イフリート「なるほど、わかりやすい」

男「でもそれだったら金を作れる訳が無いだろう?」

イフリート「金を作るには金が必要ってことか?」

男「そういうこと、でも例えば金を作りたいから銀を使ったらどうかな?鉄は?銅は?」

イフリート「…できそうな雰囲気はあるな」

男「でもそれはあくまでも雰囲気なんだ、金になるかって言えばならない、なるはずが無い」


イフリート「そこがわかんねぇんだよな…いくら金でも大量の何かがあればできそうなんだよな…」

男「ならイフリートが持てないほどの金を持っていたとしよう」

イフリート「おう」

男「そこに見知らぬ人が現れてこう言うんだ『鉄を大量に差し上げるのでどうか金をください』とね。どう思う?」

イフリート「いくら大量でも鉄は鉄だからな…断る」

男「つまりはそういう事さ、『金と鉄を交換してくれ』極端な話、『金とガラクタを交換してくれ』ってことさ」

イフリート「釣りあわねぇってやつか」

男「あ、それわかりやすい」

イフリート「…まぁなんだ、錬金術がめんどくさいってのはよっっっくわかった」

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