千歳「二人の空間」 (347)

「提督!いい加減にしてよ!」

またか……
扉を壊す勢いで入ってくる千代田をみてうんざりした。
次に言うことも予想できる。

「千歳お姉が嫌がっているでしょ!!」

やはりな。
当たっても嬉しくない予想などむなしいだけだった。

「そうは言ってもな……千歳には私の秘書艦として働いてもらっているわけだし」

俺としては真面目な子にやってもらいたいわけだが、この鎮守府には千歳以外に白羽の矢が立たなかったのだ。

「じゃあ、お前がやるか?」

「えっ……わ、私じゃなくても良いでしょ!」

やはり秘書艦というのは好まれない役目なんだろうか……
あれほど煩かった千代田の文句が途切れた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422794727

千歳のハートフルry(ハートフルとは言ってない)な話を書いていこうかと思います。

可愛い子が壊れていくのが見たい人はどうぞ見ていってやってください。

重複しとるで
千歳「二人の空間」
千歳「二人の空間」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1422794822/)
どっちかHTML化依頼出すんやで

>>3
マジか

指摘サンクス

とりあえずこっちでやっていこうかと思います

「……前みたいに響ちゃんに任せたらどうなのよ」

「ほう……」

「な、なによ」

「年下に仕事を押し付けるとは。良いご身分なことだ」

「うぇっ」

千代田がよくわからない声で呻く。

「……響でもいいんだが、この前大本営から情報が入ってな」

「情報?」

「聞けば、ある事件が起きた鎮守府の秘書艦が響だったらしい」

「……えっ、それだけ?」

「悪いか?」

「願掛けですらないし……。提督ってそんなの気にするんだ……小さい人」

「願掛けというより、直感と言うかなんと言うか。小さいとか言うな」

その話を聞いたとき、何故か知らないがゾッとしたのだ。
勿論その人とは接点もない。
なぜだろう。他人事には思えなかったのだ。

「まぁ、俺が落ち着かなければ秘書艦としてはダメだろ」

「千歳お姉なら落ち着くんだ」

千歳。私がここに勤めてから今に至るまで何度助けてもらったことか。
もはや私の片腕と言っても過言ではない。少なくとも私は彼女を相棒のように思っていた。

「……ふーん」

「なんだ?」

「いや~なんでもないですよ?私から千歳お姉をかっさらった提督さん」

何やら刺々しい物言いだ。

「そんなつもりは無いんだがな……」

むしろかっさらわれたのは俺の心と言うか何と言うか……
勿論そんなことは口が割けても言えやしない。

「……提督お兄」

……ん?

「……お、おい待て!今なんて言った!?」

立ち上がるも千代田はすでに扉に手を掛けている。

「何にも言ってませんよ~。千歳お姉がいないなら私は出ていきますね」

そう言い残して千代田は出ていった。

「いや、あれは……」

今のは卑怯だ。
提督お兄……こう、心に来るものがあるな……

「どうしました?提督」

「うぇっ!?」

扉のそばに立つ千歳。用事から帰ってきたらしい。
先程の千代田のような声がでた。
これはなかなかに恥ずかしい。

「……提督?」

「いや、なんでもない。少し考え事をだな」

「全く……私が秘書艦ってことをいいことに。自分の分はちゃんと仕事は終わらせてくださいよ?」

「……善処しよう」

当然私も常日頃から仕事はしている。
今の方が珍しいのだ。

と言うか、さっきのあれは不意打ち過ぎるだろ……

「提督お兄……か」

ビクリと千歳が震えた。
酒でも変わらない顔が段々と赤く染まっていく。

「……聞こえてた?」

一応確認をとる。
千歳の目が鋭くなった。だが、顔が赤いのであまり怖くない。

「…………そ、そんなこと考えていたんですか……?」

顔はますます赤く染まる。

「い、いや!そもそも千代田がだな」

その言葉で納得したのか、千歳は大きく溜め息をついた。

「全く千代田ったら……あとで言っておきますね」

「あ、あぁ。そうしてくれるとありがたい」

俺は目を背けながら返事した。
恐らく俺の顔も負けじと赤く染まっていることだろう。

執務室に独特の空気が流れ始めた。
甘いような、温いような空気。
気分は悪くは無いんだが……表現できないもどかしい空気。

この流れ……いけるか?
そう思った俺は机の引き出しから小さな箱を取り出した。

「あのだな……」

「はい……」

「その……だな」

「はい……」

「……お」

そこだ、そこで「お前が欲しい」とかなんとか言うんだ。
心の中で別の俺が指示を出す。

「お?」

「お……腹、減らないか?」

我ながら大したへたれ具合だと思う。
中の俺は呆れ顔で方をすくめた。

せっかく準備した指輪。
これは、巷では何の役にも立たないが、ここでは重要な意味をなす。
レベルが上限に達した艦娘にしか価値がないという指輪。
キツい制約だが、目の前の彼女はそれを満たしている。
あとはこれを渡すだけ。

そのあと一歩が踏み出せない。

「…………はぁ」

もしかすると彼女も薄々感づいているのかもしれない。深い溜め息を吐いた。

「……午後七時です」

心なしか睨んでいるように見えなくもない千歳はぶっきらぼうに言った。
窓を見ると既に日は傾き、沈みそうな太陽は真っ赤に燃えている。

「……そうだな、鳳翔さんの店に行くか」

「今日は提督の奢りでいいですか?」

むすっとした顔で尋ねる千歳。
何故、などと聞くのはやぶ蛇になりかねん。
そう思って俺は、おう、とだけ答えた。

暖簾を手でのけると、鳳翔と目があった。

「あら、提督……と、千歳さん。いらっしゃいませ」

「とりあえず適当に焼酎瓶1本とグラスふたつと……」

「とりあえず枝豆で」

「かしこまりました」

横の千歳が言うと、クスリと笑って奥へ入っていく鳳翔。他に客はいなかった。

カウンターに座ると、千歳が隣にちょこんと座る。
可愛らしいが、一時間後には周りが驚くほどの強酒の本性をさらけ出すのだ。

「何飲もうかしら……」

早速次の酒をメニューで探し始める千歳。
正直財布がどこまでもつかわからない。
俺は、今日は焼酎を飲んだあとはシラフを突き通すことを覚悟した。

「お待たせしました。焼酎と枝豆です」

「ありがとう」

受けとると、颯爽と千歳がひとつのグラスを奪い取る。

「お前、もう少し待ってくれよ」

「いいでしょ?このくらい」

彼女は早速開けた瓶から自分のグラスに注いだ。

「はい、提督もどうぞ」

千歳が瓶を渡してきた。

「あぁ、ありがとう」

なるべく少なく入れる。これで今日の酒は終わりだ。

「……あら、なかなか少なく入れ
ましたね」

「……まぁな」

今日はこれで終わりにする。なんて言うと彼女は余計に怒るだろう。

「あまり気分が進まなくてな……。まぁ、休肝日にしようかと」

「ふーん……」

興味無さげにグラスを傾ける千歳。彼女は一気に口に含んだ。

「~~っ!美味しいわ!」

「そりゃよかった」

満足げにグラスを置く千歳。
対して俺は少ない一杯をちびちびと飲む。
……この差は何なんだ。俺はむなしくなってきた。

今日はこれでお休みなさい

2200からちょいちょい投下します

2200からちょいちょい始めようかと

あれ
書き込めてるやん
失礼しました

時間になりましたのでちびちびと投下していきます

以下投下

「……ねぇ提督。辛くないんですか?」

枝豆に手を伸ばしながら千歳が尋ねる。

「……何がだ?」

「休肝日ですよ。今日は私、かなり飲もうかと思ったんですけど……今日は休肝日、止めませんか?」

悪魔の囁きが聞こえる。
悪魔は枝豆を口に入れた。

「……いや、俺のことは気にしないでやってくれ」

かなり心が揺れたが、千歳のかなり飲む宣言が俺に歯止めをかけた。

「…………そうですか」

「悪いな。俺は枝豆で腹を満たしておくよ」

そう言って枝豆に手を伸ばすと千歳の手に当たった。

「て!提督!?」

「おっと!す、すまんな」

急いで手を引っ込める。千歳も同じように引っ込めた。

「別に嫌だったわけじゃ……」

「いや、 触っていいとは一言も言ってないから……」

「あの……でも……」

言った後に後悔した言い訳どころか余計に泥沼にはまってしまった。

顔を反らす千歳。頬がさっきほどではないが、赤くなっている。
まぁ、おそらく俺も人のことは言えないはずだが。

「…………」

「…………」

何故か罪悪感のようなものを感じる。
彼女も同じなんだろうか。

「…………と、とりあえずどうぞ!」

場を和ませようとしたかったのか、既に空になった俺のグラスに注ぎだした。

断ろうかと思ったが、今とは違うぎこちなさが生まれそうなので、素直にグラスを手にとった。

「……旨いな!」

「ですね!」

正直言ってこれは一杯目のであって、今飲んだのは味なんて何も感じなかった。
それでも千歳は必死に頷いてくれた。

「楽しそうですね」

鳳翔が笑いながら話に入ってきた。

「私も混ぜてくださいよ」

いたずらっ子のような目の鳳翔。こんな顔をする彼女はとても珍しい。

「そ!そうか。なら、鳳翔も一杯――」

気まずかった俺は渡りに船と思いながら瓶を鳳翔に差し出す。

「だ!ダメですよ鳳翔さん!」

だが、それを千歳が阻止する。
彼女は先程のように瓶を奪い取った。

「こ、これは私と提督のお酒ですから!」

「…………千歳……お前」

なんて意地汚いんだよ……
そう思わずにはいられない必死さだった。
そのお陰で俺は落ち着いたが、彼女は自分が何を言ったのかわかってないようだ。
相変わらず酔うのが早い。

「あらあら」

にこりと笑う鳳翔。

「そうですね。これはお二人のお酒でしたね。失礼しました」

笑いかたは違うが先程から雰囲気が変わっていない。

「はい!そうで…………!いや、あの!」

ようやく自分が何を言ったのかわかったらしい。
いつもの落ち着いた性格はどこへやら。
千歳はおどおどし始めた。

「あのな……横にいるのが少し恥ずかしいと言うか」

「は……はい。重々反省しています……」

酔いとは別の理由で赤くなっている千歳。
そんな様子を見て微笑む鳳翔。

「本当に仲の良いことですね」

「別に、提督とはそんな仲じゃ無いんですけど……」

「あら?そうだったの?」

鳳翔がこちらを見た。

「うん……まぁ、まだだ。そ!それよりも――」

適当に答えて場の雰囲気を変えようと試みた。が、ここで反応したのは千歳だった。

「ま…………まだってなんですか……」

「!…………いや、それは……」

互いに足を引っ張り合う。二人で泥沼にはまってしまった。
落ち着かなければ、ここからは簡単には抜け出せない。

別の客が入ってきて鳳翔が離れた後も、俺たちは落ち着いて酒が飲めなかった。

「いいのか?」

「はい、もう満足です」

結果として、千歳はいつもの半分も飲まなかった。
俺に合わせてくれたのだろうか。それならば申し訳ない。

「……千歳」

「はい。どうしました?」

言うのを躊躇ったが、呼んでしまったので腹をくくる。

「明日は……休肝日じゃないから……その、な」

腹をくくってなおこのどもり具合。俺は言い終わる前にたまらずそっぽを向いた。
だが、俺の言いたいことが伝わったらしく、千歳はクスクス笑いだす。

「ええ。また明日もご一緒してくださいね」

いつもより安い会計を済ませ、店を出る。
初夏の夜は夜風が生ぬるい。そんな風が俺たちを撫でた。

「……なぁ、千歳」

「はい。なんでしょうか」

もう彼女の酔いは覚めたらしい。
いつも通りの彼女だった。
酔っていないか尋ねようとしたが問題ないようだ。

「……いや、なんでもない。」

「もう、何も無いのに呼ぶなんてまるで…………あっ!」

急に元気になる千歳。
何か勘違いしているようだ。

「この流れで……」

千歳は何か呟いている。
だが、俺にはよく聞き取れ無かった。

しばらく歩いていると、温い風が吹くと共に雲から月が垣間見えた。

「おっ、今日は月が綺麗だな」

月に見とれて、そんな言葉が口からこぼれた。

「!?は、はい!!」

「……どうした?」

千歳が突然上擦った声を出した。

「…………えっ?」

「いや、いきなり変な声出したから……まだ酔っているのか?」

「……えっ!?」

「ん?」

怪訝な顔をしたが、やがて納得したのかまたもや深く溜め息をついた。

「……もう提督のことなんて知りません!バカ提督!」

そう言い残して千歳は走り出した。

「……は?」

突如機嫌が悪くなった千歳。俺が何か言ったからなんだろうが……特に気に障るようなことは無かったはずだ。

「おいおい、上司をバカ呼ばわりは止めろよ」

そうぼやくが、既に千歳は遠くに見える。
俺が厳しければ即刻懲罰室送りだっただろう。まぁ、勿論うちには存在しないが。

しかし何故いきなり機嫌が悪くなったのか……
俺は悶々としながら鎮守府へ帰った。

今日はここまで

もう一度言っておきますが、ここはかわいい千歳さんが壊れていくのを意気揚々とみるスレです

決して甘いイチャラブが延々と続く話ではありません

そこら辺りを考慮して読んでいただけると幸いです

では、お休みなさい

ヤメロー!ヤメロー!

>>27
なに、まだ千歳はヒビすら入っていない
恐れることは何もないんだ

早く千歳が崩壊するのが見たい!と言う方は代わりにこれでも見ておいてください(ステマ)

電「お姉ちゃん達はズルいのです」
電「お姉ちゃん達はズルいのです」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1421946879/)

ダイマじゃねーかww

>>31-32ダイレクト?確かに大井っちにダイレクトに罵られるのが好きですが……(すっとぼけ)

おういいから続き書くんだよ

>>34まあ、そう焦るな

今日も2200からできたらなぁ……的な

新作早くて歓喜
さあ、本当に壊れてるのは誰だ?

>>36壊れるのは千歳だって言ってるだろ!いい加減にしろ!

君たちライアゲームしてるんとちゃうんやから、もう少し素直に読もうぜ……?

兄弟が病むなんて……そんな分かりやすい設定使うバカなんて今日日全然居ねぇぞ←

①まず霞と曙を呼び、二人の間に立ちます。

②片方(どちらでも可)の頭を撫でます。

③焼きもちを焼いてきたら、放っておいた方の頭を撫でます。

④以下無限ループ。

っていう永久機関を考えたが霞ちゃんが乗ってくれそうに無いんで諦めました。


はい、そろそろ始めますね

大井っちに罵られたいがために中破させて入渠させる。
このハイリスクハイリターンは病み付きになるな……

以下投下

「提督ーー!」

扉を開けた俺の前に立ちはだかっていたのは千代田だった。
まるで犬の威嚇ようにこちらを睨みながら唸っている。

「なんだ……?」

「千歳お姉を怒らせたわね!」

「そう、それだ」

「……ん?」

俺の態度に拍子抜けしたのだろうか。千代田はきょとんとした目で私を見た。

「……どうかしたんですか?」

「いや、ちょっとな……」

俺は大まかながらことの顛末――と言っても、鳳翔のところでの会話が主だっているが――を話した。

「…………ふーん……」

「千代田。お前にはわかるか?」

俺は今夜のことを千代田に話した。

あれから5分ほどかけて鎮守府に戻ってきたが、いまだに彼女の機嫌が悪くなった理由がわからなかった。

「……提督」

「おう」

「ノロケですか?」

「は?」

「客観的に考えてください。提督の立ち位置が私だったとします」

「おう……仲のいい兄弟だな」

「違います!」

千代田は大声で否定した。
そろそろ時間的に迷惑甚だしいが、彼女は俺を解放する気はまだ無いようだ。

「違うのか?」

「あっ、いや、違いませんけど……」

俺はそこで察しないほどのバカではない。
彼女の言いたいことはわかるが、照れ隠しでこう言ってしまったのだ。

「じゃあですね……!そうですね。提督の立ち位置が隼鷹さんだとしましょ……あ、やっぱこれも無しで」

恐らく同じ感想で返してくると践んだのだろう。

「あぁ、うん。千代田の言いたいことはわかった」

ウンウン唸る千代田に声をかける。早いところこの話を切り上げたかった。

「それで、どうして千歳が怒ったかわかるか?」

「……よくわからないです。もう少し千歳お姉が怒るまでのやりとりを詳しくお願いします」

「そうだな……たしか、酔いが覚めたか聞こうとして、途中で止めた」

「ふんふん」

「で……」

そのあと何か言ったのは覚えている。
その何かが思い出せない。

何か手がかりが無いかとキョロキョロと辺りを見回す。
そんな俺の目に玄関の窓から月が見えた。

「あっ、そうだ。たしか、月が綺麗だったんで――」

「あっ、わかりました」

遮って彼女は言った。

「もうわかったのか」

「はい。やはり提督のせいですね」

「……何故そうなったんだ」

「そうですね……。ご自分で調べてください。痴話喧嘩なんて知りません。お休みなさい」

「痴話喧嘩………」

さっきまでの興味は失せたのか、千代田は、きびすを返して自分の部屋へ入っていった。

「何なんだいったい……」

とりあえず靴を脱いで自室へ向かう。
今日は無駄に神経を使って疲れた。月が綺麗だとか言うのを調べてから寝るとしよう。
そう思って部屋に入る。

そのあとネットで調べた俺は暫く狼狽えていたのだった。

目覚ましの音に目を覚ます。
0600。起床時間だ。
そろそろ行動しなければならない。

俺は背伸びをして、窓を見た。
直射日光は入ってこないが夜が明けたことは一目瞭然だ。

「…………よし」

気合いを入れて布団から立ち上がる。

窓を開けると潮風が部屋に勢いよく流れ込んできた。

遠目に、昔は動いていた漁船が見える。
あの漁船を見て気が引き締まるのは職業柄というやつなんだろう。

「……ん?」

その漁港の少し手前。珍しく人影があった。
目を凝らすと川内だとわかった。

「あいつまた勝手に夜に出掛けたな……」

夜に出掛ける。と言っても、別に夜の街に出掛けてアブナイことをしているというわけではない。……はずだ。

「おい、川内」

俺の呼び掛けに気づいて、鎮守府前まで近づいてきた。

「おはよう。……あぁ、提督か」

「俺だ。……お前、どこに行ってたんだ?」

「えっ?夜なんて海以外にどこにいくのさ」

逆に問われて俺は面食らった。

「……あれだよ。繁華街的な」

むしろ、夜に海へ繰り出す奴の方が圧倒的に少数派だろう。

「夜の海は深海棲艦のいるいない関係なく危険なんだ。行くとしても俺の許可を取ってからだ」

「取ってからー?昨日居なかったじゃん」

「……待て。お前、何時から海へ出てたんだ?」

昨日は、いつもよりかは早めに帰ることができたと思っていたんだが……

「んーと……23時ぐらいからかな」

早すぎる。いや、海へ行くには遅すぎるんだが……あぁ、ややこしい。

「ともかく、夜の街……や海は危ないからな」

気を取り直して説得を試みる。

「街って夜戦より危ないの?」

「それは無いな……いや待て。論点がずれてる。俺が言いたいのは俺に報告してからってことで……」

「ずらしたのも居なかったのも提督じゃん。今度からそうするよ。じゃあ、私は寝てくるねー」

まるで自己完結のようにしゃべり尽くして川内は鎮守府の中に入って行った。

今日はこれで
いやぁ、全く病みませんな………

突然だが直下の人、好きな子を一人教えてくれ

はえーよ……

「HEY!提督~、ティータイムにするデース!」

元気よく執務室に入ってきたのは金剛を筆頭とした四姉妹。
お盆を持っているのは榛名だ。

その声に釣られて時計を見ると、午後3時。確かに一休みするにはいい時間だ。

「あぁ、ご一緒させてもらえるならありがたい……だが」

ここで、問題点が1つ浮上する。すなわち

「ところで……今日の茶菓子は誰が?」

「それは、榛名デス!」

元気に答える金剛を見て提督は胸を撫で下ろした。

「前の比叡のあれは正直言って酷かったからな……」

「そ、そんなこと言わないでくださいよ!」

比叡が悲鳴のような抗議をする。

「だが、榛名なら安心できるな」

「は……はい!ありがとうございます!」

「外に行くつもりですがよろしいですか?」

「あぁ、問題ない」

申し訳なさそうに霧島が尋ねるが、提督は何も気にしないようだ。

「じゃあ、早速ここにお盆を持って行こうか」

そう言って榛名に近づき手をさしのべる。だが

「い、いえ!榛名は大丈夫です!榛名が責任を持って配ります!」

そう言うや否や榛名は目的地までお盆を運び、紅茶を入れ出す。

「準備オーケーネ!」

その間に金剛達は椅子をセッティングする。

「じゃあ、私は提督の隣にシマス!」

「それなら私はその隣です!」

ここまではいつもの流れ。
だが、榛名は違った。

「榛名はどこでも構いません」

いつもなら、控えめながら提督の横を取りに行く榛名。
だが、今日は何故かそれをしなかった。

「榛名は、提督さん達と居られるなら構いません」

無理をして笑っているような笑顔。

「…………霧島は比叡の隣デス」

それを見た金剛は、霧島に指示を出した。

「榛名は我慢しすぎデスヨ。もう少し、自分のワガママを言えるようになるといいネ」

「お姉様……」

こうして決まった席に座ると、ティータイムは始まった。

「提督はこちらにお座りください」

榛名の言われるままに提督は座る。
その右隣に金剛。

「じゃあ、いただきます」

提督の合図で皆が紅茶をすすり出す。
ただ、榛名は違った。

「榛名、ワガママ言ってもいいでしょうか?」

「ん?どうした…………?」

ガクン、と首が倒れる。
酷い眠気に教われたからだ。

「榛名は、提督さんと一緒にいたいです」



これが、提督が最後に見た外の景色。

【ワガママ】

榛名は出尽くしてて逆にむずかしい……
ロークオリティなのはごめんなさい

今日は2300から投下予定

日向みたいなしっかりしたお姉さんをデレデレにさせてしばらく放置してみたい
きっと素晴らしいことになるでしょう

以下投下

「なんだあいつは……」

「提督?どうしました?」

しばらく窓辺にたたずんでいたが、後ろから声がした。

「ん?……おう、千歳。おはよう」

振り向くと、既に着替え終わった千歳が扉の前に立っていた。

「おはようございます。そろそろ起きる頃かと思いまして」

そう言う彼女はほんのりと顔が赤い。

「どうした、熱か?」

「い、いえ。私は健康です」

主張するが、やはりどこか落ち着きがないように見える。

「それならいいが、もしも辛くなったら――」

「強いて言うなら」

強めの口調で俺の心配の言葉を遮る。

「強いて言うなら、提督が……あ、あの言葉の意味を理解してくれたから……です」

言い終わると彼女の顔は一気に赤くなった。

「ん?…………!」

そうだ。千代田の物言いに釣られて調べてから眠ったんだ。
思い出すと、千歳に連られるように顔が火照りだした。

「あ、あー……その、な」

「……はい」

どこか期待した目をする千歳。
そんな彼女に俺は、首をかきながら小声で言う。

「そんな意味で言ったわけでは……」

「……はい?」

千歳の笑顔が少しだけ歪んだ。

「あっ、ヤバい」

「はい?」

率直な感想を俺は口に出してしまった。
口から漏れた言葉が彼女の顔を大きく変える。

「…………今なんと」

「いや……可愛いな~と……」

「はい?」

千歳の顔は和らがない。
どうやらいつもなら通じる手では収拾がつかなくなるほどお怒りらしい。
これは俺もお手上げだ。

「その……すまん」

「あら?どうして提督さんが謝るのですか?」

作り笑顔で笑う千歳。
なんだろう。
俺の母親のような怒り方に少しだけドキッとした。

「えっとだな……。そういうのはまだ早いとか思ったりだな」

嘘だ。
千歳は見た目も駆逐艦のように犯罪的では無い(ある意味一部を除く)し、レベルも十二分に達している。

だが、俺の気持ちが定まっていないのだ。

「……提督さん」

そうこう考えるうちに、いつのまにか彼女の笑顔が絶えていた。

「今日はお暇を頂いてもよろしいですか?」

「えっ……あの、お前は秘書艦――」

「失礼しました」

彼女は、俺が言いきる前に部屋を出ていく。
勢いよく閉められた扉は嫌な音をたてた。

「…………ヤバい」

あれは、かなり怒っている。少なくとも、あれほど怒った千歳を俺は知らなかった。

「俺が悪いんだよな……?」

いつまでも女々しく指輪を出さずに、彼女なりのチャンスを全て流し、結果彼女を怒らせた。

「……これは、俺以外誰も悪くないな」

あの怒り具合はバカ、と叫んでいた昨日の千歳なんてものじゃない。昨日のなんて可愛いものだった。
実際に可愛かったのだが。

だがさっきのはどうだ。あんな怒りかた、結婚していたら実家に帰ってしまうレベルではなかろうか。

むしろ、それを考えると千代田が怖くなってきた。
昨日の可愛い怒り具合で、深夜に帰ってきた俺を怒るために玄関にいたほどだ。
瑞鶴のように爆撃されてもおかしくない。

「――――提督!!」

噂をすれば影。そんなタイミングで千代田が勢いよく入ってきた。

「おい、せめて着替えてから来いよ」

千代田は、パジャマという艦娘にしてはレアな格好をして部屋に飛び込んできた。

「そんなことはどうでもいいから!」

息が荒いのはすっ飛んで来たからだろう。

「なに!?起きたら千歳お姉に抱きつかれてたんだけど!!」

喜んでいるのか怒っているのか。どちらともとれる表情をしている。

「すまん。俺のせいだ」

「千歳お姉、泣いてたよ?」

「そうか……」

互いに何も言わなくなってしまうと、余計に後悔を感じる。

「なあ千代田。俺はどうしたらいいんだろうな……」

「今更アドバイスを聞くの?」

やけに辛辣な言葉が俺の心をえぐる。

「……頼む」

俺は頭を下げた。



「……これが、最後かも知れないよ?」

「どうすればいいんだ?」

「そんなの決まってるじゃない」

…………やはりか。

「指輪、持ってるんでしょ?」

その言葉に反応して自然と机に目を向ける。

「わかってると思うけど、千歳お姉も待ってるんだよ?」

「薄々感づいていたが……やはりそうなのか」

あの、妙な空気が流れるときにこちらを見る目。
あれは、彼女なりのアピールだったのだ。

「千歳お姉も私も、ずっと待っているんだよ?」

そう。後は俺が男気を魅せるのみ。

「……そうね。今すぐ謝りに行って。その時に指輪も渡すように」

「今すぐか」

「提督お兄はバカなの?早く言ってあげないと千歳お姉が可哀想なだけよ?」

「…………よし」

千歳が可哀想。その言葉で覚悟を決めた。

「たぶん、千歳お姉は私たちの部屋にいるよ」

「千代田、色々とありがとうな。また今度、何でも聞いてやろう」

机から箱を取り出して部屋を出た。

「千歳ぇ!」

千歳の部屋の扉を勢いよく開ける。千代田の予想通り、千歳はそこにいた。

「……なんですか。寝巻きのままで」

いつもよりトーンが低い返事が布団の中から返ってくる。
着替えていないことを思い出したが、そんなこと関係ない。俺は足に力を入れ、1つ深呼吸をした。

いつもの俺ならここでどもっていたに違いない。

「1つワガママを聞いてくれ」

だが、そのせいで彼女が苦しむと言うのなら、話は別だ。

「なんですか?生憎本日はお暇を頂いておりますので、書類は他の方に――」

「俺と、付き合ってくれ」

「…………えっ?」

どこかで何かの落ちる音がした。
ようやく千歳が布団から顔を出した。

「…………今なんて……」

答える前に隠し持っていた箱を見せる。
千歳に見えるように開くと、千歳が小さく叫んだ。

「俺と、ケッコンしてくれ」

勿論のことながら、俺の心臓は暴れている。今に心臓発作が起きてもなんらおかしくはないだろう。
手汗がみるみる出てくるのが見なくても感じられる。

千歳の瞳は震え、零れそうな涙を必死に抑えていた。

「言うのが遅くなった。すまない」

頭を下げながら箱を突き出す。

「どうか、これを受け取ってくれないだろうか」

そろそろ受け取ってくれないと、俺の心臓が壊れかねない。手汗もヤバい。

「…………私、心配だったんですよ?」

涙声で千歳が語り出す。

「私がレベル99になって、大本営から指輪が送られてきて、どれほど経ったか知っていますか?」

確か、送られてきたのは雪の降る寒い朝だった。

「……あれは、2月だったか」

「3ヶ月、ずっと待ってました」

「……すまない」

千歳が指輪に手を伸ばす。

「ですが」

彼女は、震えながらも指輪を手に取った。

「ですが、今日のところは多目に見てあげます」

決壊する涙を拭いて、ようやく千歳は笑ったのだった。

「…………はあぁ!」

よかった。全て上手くいった。

安心したからか、段々と心臓が落ち着いていく。

「もう少しだけカッコつけていてくださいよ……」

「仕方ないだろ……これ言うのに何ヵ月かかったと思っているんだ?」

「私が悪いみたいな言い方ですね……」

頬を膨らませる千歳。
思わず俺は彼女を抱き締めた。

「ひゃっ!」

千歳は可愛らしい悲鳴をあげたが、抵抗はしなかった。

「て、提督……急に大胆になりましたね」

「今俺の顔が見えないからそんなことが言えるんだ。とても赤いぞ」

「私もです」

しばらくして離れると、名残惜しそうな顔で見上げる千歳と目があった。

「本当だ。とても赤いな」

「も……もう!意地悪はやめてください!」

拗ねて千歳は布団を被ってしまった。

「……ところで、秘書艦の件だが」

「私以外に任せるんですか?」

「それは控えたい。か…………彼女のそばにいたいものだろ」

ピクリと布団が動く。

「……今はちょっとアレなんで……後で行きます」

「そ、そうか。じゃ、俺は着替えに戻るかな」

頭のあった位置が軽く上下した。恐らく頷いたのだろう。

「じゃあ、後で」

「……はい!」

そう言葉を交わして扉を開ける。
正直このままスキップでもして帰ろうかと思えるほど心は浮かれていた。

だが。そんな俺の心は一瞬で冷める。

「~~~~~っ!?」

廊下に足を踏み出した直後、何か硬いものを踏んだ。

「なんだ……っ?」

そこには、不時着したような彩雲が墜ちていた。

「やべっ」

せっかくの彩雲を提督自身が壊したとなれば、皆からどれほど怒られるだろう。

俺はとぼとぼと自室に向かったのだった。

今日はここまで
ここ数日でわかった。俺はいちゃラブなんて書けない

やっとこさ告白まで持ち上げました
後は落とすだけです

皆さん何か勘違いしてませんかねぇ……

明日明後日は諸事情により投下出来ません
すまんな

今日は2300からで

鳳翔さんには喪服が似合うなぁ……
誰か書いてくれないかな(チラッ

以下投下

「提督聞いたよ~」

そういいながらバシバシと俺の背中を叩くのは隼鷹。既に出来上がっているようだ。

俺の一世一代の告白は既に広まっていて、夜は空母達による祝いの会が開かれた。

開いてくれたのはありがたいのだが……

「いやぁ~めでたいねぇ~!」

らっぱ飲みで一升瓶の日本酒を飲む隼鷹。

「熱いですね……」

手で顔を扇ぐ祥鳳。よほど熱いのか、いつもよりも肌の露出が多い。

「翔鶴姉!これ半分あげるわ!」
「ありがとう。瑞鶴」
「ここは子供の来るところじゃありませんよ~」
「誰が駆逐艦やねん!うちも怒るで?」

他にも至るところで空母達のどんちゃん騒ぎ。
俺が遅れてきてみれば、もはやただの煩い飲み会になっていた。

「おいおい……」

いくら鳳翔が店を貸し切りにしてくれていても、これでは煩い客が店を制圧したようにしか見えない。

というより、主役を放って置いて飲むなよ……

「これは……酷いですね」

一緒に遅れた千歳が引きぎみで笑っている。

「……そうだな。でも、お前も――」

「はい?」

「……いや、なんでもない」

お前もいつもあんな感じだぞ、なんて言えばまた機嫌が悪くなるだろう。
そう思いとどまって口を閉じた。

「提督~ここに座りなよ!」

隼鷹が空いている席を手で叩く。
上司より優しく叩いているように見えるのは気のせいだろう。

「……おい。隼鷹。一人分しか空いてないぞ」

「ん?それが?」

「そこは、俺と千歳が隣同士になるようにセッティングしておけよ……」

「んー?……あぁ、そうだね。うっかりしてたよ~」

アッハッハ、と豪快に笑う隼鷹。なんの祝いかすら覚えていないようだ。

「その……皆」

咳払いしてから声をかけるとようやく静まった。

「今日は俺たちのためにこんな席を用意してくれてありがとう。もう始まっているようだが……まぁ、そういうのはおいておこう」

「ひゅー!」

隼鷹の謎の掛け声を合図に拍手しだす空母達。
横の千歳はうつむいているが、恥ずかしいのだろう。

「……ところで、茶を濁すようで悪いんだが」

俺はポケットから彩雲を出した。

静まり返る一同。

「提督さん!壊したの!?」

立ち上がって瑞鶴が責める。

「確かに、俺が踏んでしまった。そこは謝ろう」

「何よその偉そうな――」

「ダメでしょ瑞鶴。提督さんが困っているじゃない」

翔鶴が宥めてくれたお陰で瑞鶴が座った。

「……確かに、踏んだのは俺だ。だが、これは廊下に落ちていたんだ」

先程とは違う空気でざわつきだす。

なかなかレアな彩雲。これを求めるために出撃を怠り、罰を受けた提督もいると聞く。
これが廊下に落ちていた。
もしも俺がかなり厳格な奴だったら、犯人は即解体だったであろう。

「何度も言うが、下を見ていなかった俺にも落ち度はある。叱らないので、持ち主は名乗り出てほしい。」

皆周りをきょろきょろと窺っている。

「この場で告白するのが嫌なら、後で私の部屋に来ても構わない」

「…………あの」

思わぬところから声があがった。

「どうした?鳳翔」

先程から壁に背を預け立っていた鳳翔が、そっと手をあげた。

「今に言うのは憚れるんですが……千代田さんがいません」

再びざわつく会場。
念のため見回してみるが、確かに千代田は見当たらなかった。

今日はここまでで

さっきも言いましたが、次回は3日後に

君早すぎるで……

むしろ書いてもらってありがたいです
誰も書かずにスルーほど悲しいものはありませんし、元々私自身の趣味を押し付けてるみたいなもんですし

早くて少しびっくりしましたが

「不幸だわ……」

そう呟いて項垂れるのは山城。
素直になれない彼女の、精一杯の努力の末に取り付けた提督とのデートプランは、思わぬ結果で幕を閉じた。

「なんで屋外のコースにしたのよ……」

――――その日は晴れだから、ピクニックなんてどうかしら

姉の扶桑の助言通り、天気予報では傘マークなどどこにも見られなかった。
勿論、盲信している姉の言葉に疑いは持っていない。

「私のせいかしら……」

外の土砂降りを見てそう思う。

「そうよ。私のことなのだから、こうなることは予想できていたはずよ……」

項垂れていてもどうにもならない。

「……せめて提督とお話でもしていようかしら」

そう考え、彼女はのそのそと立ち上がった。

「ねぇ、提督。暇で仕方な―――」

「ねぇ司令官。僕の買い物に付き合ってくれないかな」

山城よりも先に声をかけていたのは、時雨。

「あぁ、ちょうど予定が抜けて手持ち無沙汰だったんだ」

「それならちょうどよかった。こんな雨の日にショッピング。いいとは思わない?」

「時雨らしいと言えばらしいが……」

困り顔の提督に笑いかける時雨。

「大丈夫。きっと提督も好きになると思うよ」

二人の会話が続く扉の向こう。山城は
その扉を開けずに踵を返した。

「何が幸運艦よ」

ぶつくさ呟きながら自分の部屋に入る山城。
ふと窓を見ると楽しそうに門をくぐる提督と時雨の姿が見えた。

「提督は、あなたのために時間を空けてくれたわけじゃない」

時雨の後ろ姿に声をこぼす。
当然窓を隔てた向こう側には届かない。

時雨は知らない。忙しいはずの提督になぜ余裕があったのか。
時雨は知らない。忙しい提督が誰のために時間に余裕を作ったのか。

全ては、彼女の運に持っていかれた。
あんな、相対的なものであの立ち位置をとられたのだ。

「……よし!」

あることを思い立った山城は、ノートを取り出した。

「…………あら?山城、寝ちゃっているのかしら」

部屋に戻った扶桑は、机に倒れる山城を見た。
何やらノートにまとめていたようだ。

「なんのノートかしら……」

気になったのでそっと最初のページを開く。

最初に名前が載っていたのは、雪風。その次に伊58。そこからパラパラとめくっていき……

「あら?」

めくっていくと、鉛筆のみで書かれた白黒のノートに赤色を捉えた。

「……時雨ちゃん?」

時雨の名前が赤ペンの二重丸でより強調されている。

「これは……」

「見ましたね?」

「山城!……もう、驚かさないでほしいわ」

「すみませんお姉さま。話しかけるタイミングを見失ってしまっていました」

眠そうに目を擦る山城。

「……ふふっ」

扶桑からノートを受け取った彼女は突然笑った。

「私たち、改二に改造してもらえてとても幸運ですね」

突然何を言い出すのかと思えば、扶桑には全く話がわからない。

「とにかく、お姉さまをここに書かなくてすみます」

彼女は幸せそうに笑っていた。



【相対性】

皆さんおはようございます
今日は2200から始めます

皆さんおはようございます
今日は2200から始められると思います

書き込めてるやん
タイムラグあるんか……

段々と弱気になっていくの何があったのかと

誰か大井っちの病む話書いてくれへんかな……

>>101今は情緒不安定なんだよ言わせんな恥ずかしい

こんばんは
新しく増えた艦娘に戸惑いを隠せない今日この頃。いかがお過ごしでしょうか
いったい日本でユーちゃんの身にナニがあったのか……本当に気になる

以下投下

「千代田さん……ですか」

珍しく神妙な顔つきの赤城は呟いた。彼女の箸は休まず動いている。

「赤城さん。提督のお話を聞きましょう」

加賀のストップで赤城は不服そうに箸を置いた。
心なしか俺を睨んでいる……

「いや、すまない皆。この話は終わりにしよう」

俺は空気を和ませようとなるべく明るい
声で言った。別に赤城に負けたわけではない。

「じゃあ、食べますね!」

言うやいなや箸を握る赤城。彼女のお陰でなんとか空気は緩くなった。

「…………提督。私は千代田を読んできますね」

「いえ千歳さん。言い出しっぺの私が行きますよ」

無理矢理俺の横に座った千歳。
席を立とうとする彼女を止めたのは鳳翔だ。

「それは悪いですよ!」

「主役がここにいないでどうするんですか?」

千歳はその言葉に反論できずに、渋々と座り直した。

「その……すまん」

俺も鳳翔に頭を下げた。

「いいんですよ。ちょうど追加の食材も欲しかったですし」

微笑みながら黒い鞄を見せる鳳翔。

追加の食材か……ますます頭が上がらない。

「では、お二人ともごゆっくり」

にっこりと笑った鳳翔はそそくさと店から出ていった。

「鳳翔、性格変わったな……」

いつも、側で微笑みながら佇んでいた彼女が、なかなか言うようになったではないか。

「そうですね……」

「いいことでもあったんだろうか……」

鳳翔を見送った後もしばらく、俺と千歳は僅かに揺れる暖簾を見ていた。

ユーはナニをしに日本へ?

「……提督。鳳翔さんがああ言ってくれたことですし、私たちもいただきましょう」

「ん?……おう、そうだな。では、遠慮なく……!?」

ひとまずテーブルに向かった俺は唖然とした。
先程まではあまりテーブルに目が行かなかったので気づかなかったが、かなり豪勢なものだった。

まず目に入ったのが鯛の刺身の船盛。
鯛の目が、新鮮さを物語っている。

「すごいな……」

祝われる本人が言うのはアレなのだが、少し豪華すぎるような気がする。

「まだカッコカリで、籍を入れるわけではないんだがな……」

「そうですね……えっ?」

「グォフッ」

目を開いてこちらを見る千歳と、千歳とは俺を挟んで反対側の酒を吹き出す隼鷹。
二人の反応が重なった。

「な、何言い出すのかと思えば……」

「……何か変なこと言ったか?」

「ちょっと……もしかしてもう酔ってんの?」

「まだ何も食べてないが」

「…………提督」

赤城が声をかけてきた。箸は止まっている。

「どうした?食べないなら、俺がいただくぞ?」

「それはダメです。それよりも、自分で何をおっしゃったのかわかってないのですか?」

皿を俺から遠ざけた赤城。
はて、何か気にさわるようなことを言っただろうか……
俺は刺身は諦めて手元の茶碗蒸しに手を伸ばした。

「提督。あなたは、『まだ』カッコカリで、籍を入れるわけではない。そうおっしゃいました」

「あぁ、確かにそう言っ……」

ようやく自分の発言の意味を理解した。
茶碗蒸しに刺したスプーンをそのまま離してしまった。

お風呂温かかった
>>105評価してやろう

以下投下

「いや、これは違うぞ!?」

千歳に向けて必死に手を振るが、当の千歳は反応が無い。
ただぼうっと座っている。

「キミ……それは恥ずかしいんとちゃう?」

箸を片手に龍驤がからかいに来る。

「自覚は無かったんだよ。龍驤は向こうで菓子でも食ってろ」

「誰が駆逐艦やねん!」

逆にからかい返してやると、思った以上に反応がよかった。
今日はすでにこのネタでいじり尽くされていたのか。いつもならすぐに落ち着く龍驤は不機嫌そうに離れていった。

「ん……?」

魂が戻ってきたかのごとく、千歳が突然動き出した。
拗ねた龍驤とのやりとりのお陰で、千歳が意識を取り戻したのだ。

「……提督…………」

この赤い顔も見るのは何度目か。
呼んだにもかかわらず千歳はなかなか目をあわせてくれない。
かといって、そういう俺も彼女を直視できない。

「その……な?………」

気がつけば騒がしかった空母たちが、俺たちに視線を集めていた。

そんな状況を感じて、ますます言葉を出せなくなる俺に何を思ったのだろう。千歳は笑った。

「……提督はここまでくるのに3ヶ月かかったんですから、正直今は大して期待してません」

「…………それは酷くないか?」

さぁ?と言わんばかりに首を傾げる千歳。

「ですが……そうですね。この戦争が終われば。その時には良いお話があればうれしいかなぁ……なんて」

恥ずかしそうに言葉を濁したが、その意図は十分に伝わってきた。

「い、いやぁ~いいもん見せてもらいました!」

そう言って隼鷹はガブガブと酒を平らげる。さっき吹き出してしまった酒を取り戻すかのような勢いだ。

「千歳さん……かっこいいわね」

翔鶴が尊敬の眼差しで千歳を見つめている。

確かにかっこよかった。俺より千歳の方が男気あるじゃないか。

「男としては……どうなんだろうな」

こういうのは一般的には男が率先して言うセリフだ。
だが、それを言えなかった自分の情けなさと、はっきり言った千歳への尊敬。
複雑な心境だ。

「…………はぁ」

溜め息を吐いて再度茶碗蒸しに手を伸ばす。
口に含むと、まろやかな卵の風味とだしの旨味が舌に広がった。

「どうしたんですか?美味しくないならいただきますよ?」

わざわざ寄ってきた赤城が俺の茶碗蒸しに手を伸ばす。

「いや……自分の情けなさを噛み締めていただけだ」

赤城を制してもう一口いただく。

そのときだった。

「すみません、遅れましたっ!」

ガラッと大きな音を立てて戸が開く。
荒い息をあげて千代田が入って来たのだった。

「千代田さん。できればもう少しゆっくりと戸を開けてほしいですね」

その後に続いて鳳翔も帰ってきた。

「お帰り、鳳翔」

俺が声をかけると、鳳翔はにこりと笑って

「はい。ただいま帰って参りました」

などと茶目っ気たっぷりの返事を返す。
もしかすると、実は酔っているのかもしれない。

「千歳お姉ゴメン!少し用事があって遅れたの!」

平謝りをする千代田。その態度からしてかなり反省しているように見える。

「そこまで、というより全く怒ってないぞ」

主役が来る前に始まるようなどんちゃん騒ぎだ。メンバーが遅れて咎めるようなやつは一人もいない。

「もう、千代田ったら……」

酒の注がれたグラスを片手に笑う千歳。
勿論彼女もそんな無粋なことはしない。

「あっ、そうだ!」

何かを思い出したようで、千代田は俺と向き合う位置に腰を下ろした。

「改めて、よろしくね。提督お兄!」

全員の手が止まった。

「やだ、千代田ったら……」

好感触をみせるのは千歳ただ一人。
静まる会場。和やかなムードが一瞬にして凍りついたのを感じた。

「……提督」

「どうした祥鳳。まず服を着ろ。せめてさらしは巻け」

「そういうのは、いいんでしょうか……?」

するすると服を羽織る祥鳳。サラシはどこかいってしまったようだ。

「……そういうのとは?」

「呼ばせ方を強要するのはどうかと思うんですけど……」

「…………」

真剣に心配するような眼差しで俺を見る祥鳳。
こいつは俺をいつもどんな目で見ているんだ……
そう思わずにはいられなかった。酔っているからだと信じたい。

「そんなことしてみろ。千歳に嫌われる」

嫌われる。まではいかないかも知れないが、印象が悪くなるのは間違いない。

「おっ?つまり、千歳が言わせてるのか?」

おどけてみせる隼鷹。どうやら彼女は追加の酒を待っているようだ。

「違うよ。私が勝手に言ってるの」

千代田が立ち上がって、無理矢理俺の横に座ろうと近寄ってくる。
無理矢理入られてきつそうにしていた加賀が座り直した。

「待て千代田。すまないがここは満席だ」

空いている席は無いかと辺りを見回すと、向こうに空いている席が見えた。

「ほら、あそこの……瑞鳳のいるとこに座ってこい」

酒に弱いのか、既に瑞鳳は座敷の席で横になっていた。
そういえば、ここで瑞鳳と会ったことがない。

「え~?私、提督お兄の隣がいいなぁ……」

そう言うと千代田が俺の腕に抱きついてきた。

…………俺にこんな趣味は無かったんだがな。
これも、心を打つ言葉と言うのだろうか。正直俺はとても焦っていた。
恋人の妹。これほど心が揺らぐシチュエーションがあったとは……

「だ、だがここには席が――」

「千代田?」

とりあえず適当に言葉を並べようとしたが、それよりも先に千歳が千代田を呼んだ。ただそれだけだ。

「……はーい。ご免なさーい」

だが、まさに鶴の一声。
心境はともかく、千代田は素直に瑞鳳の席に向かった。

「……ありがとう」

「告白した当日に、恋人の妹に鼻を伸ばすなんて……」

そう言って刺身を食べる千歳。
その皮肉に心臓が跳ねた。

「あれは、千代田が……」

「すぐに拒否すれば良いのに、提督はしませんでしたよね?」

目をそらし続ける千歳。

「その……すまん」

「いいですか?私と提督は、その……つ、付き合ってるわけですし……んっ」

恥ずかしくなったのか、千歳は箸を置いてグラスの酒を一気に飲んだ。

「……提督は、その事をよく考えて行動してくださいね?」

ようやくこちらに目をあわせてくれた千歳。
どこか冷たさを感じさせるような目だ。

「わかった。気をつけよう」

とはいえ、妹相手にそこまでむきにならなくてもいいんじゃないのか?
そう思う辺り、俺は恋人という意味が掴めていないのかも知れない。

「他の人にうつつを抜かさないこと。今度したら、お仕置きですからね?」

「そ、そうか……十分に気をつけよう」

「はい!」

俺の返事に満足したようで、再び刺身をつつく千歳。
なんとか事なきを得たようだ。
なるべく早めに千歳が怒る境界線を見つけなくては……

「どうぞ、追加の料理です」

お盆を持った鳳翔が俺たちの間から料理を出す。
その中から貰ったふろふき大根をつつきながら、俺は、彼女の心配性をどうしたものかと考えていた。

書き溜めは全力で消費していくスタイル。嫌いじゃない
というわけで、今日はここまで
皆さんそろそろ病ませろとお思いでしょうが、一番そう思っているのは間違いなく私です
道のりが長い……

では、お休みなさい

君たちもう少し素直に読もうや……

今日も少しだけ
2200ぐらいから

時間になりましたそろそろやっていこうかと思います
病むまでが長いヤンデレを楽しむスレとはいったい……

以下投下

「提督。こちらを手土産にどうぞ」

帰りの会計は、何故か俺が半分出すはめになった。
この会を考えた隼鷹いわく、皆そこまで食べるとは思ってなかったらしい。

「お前ら……」

あまり使うことの無いクレジットカードを取り出す。
無用心なのは承知の上だが、俺は現金を持ち歩く方が好きなのだ。

そんな料金を払った俺に、鳳翔が風呂敷に包まれた何かを持ってきた。

「なんだ?これは」

「今日の残り物です。さすがに捨てるのは勿体ないので……明日の朝にでもどうぞ」

赤城たちもさすがにあの量はキツかったようだ。受け取った包みはとても重かった。

「そうか、ありがたくいただくよ」

中を覗くと三段に分かれた重箱。正直明日の朝で食べきれるか不安だ。

「提督お一人で食べてくださいね」

「おう……鳳翔の料理は美味しいから、まぁ楽勝だろう」

クスリと笑う鳳翔。彼女も少し酔ったのか、顔が火照っている。

「ありがとうございます」

「言っておくが、お世辞じゃ無いからな?正直、毎日でも食べたいぐらいだよ」

「あらあら……そんなこと言っちゃって……本気にしちゃいますよ?」

「ん?何が――」

「提督。もう夜は遅いし、帰りましょう。ね?」

突然酔った千歳が絡んでくる。
覚めるのも早いはずだが、今日はまだ覚めていないらしい。

「ん、そうだな。それじゃ、悪いが後片付けとかは頼むぞ」

「…………えぇ。わかりました。またのご来店をお待ちしていますね」

微笑んで頭を下げる鳳翔。さすがは本職。板に付いている。

そんな鳳翔に見送られ、店を出る。そこで気づいた。

「……本職は艦娘か」

よく考えれば違うではないか。俺は一人で訂正を口にした。

「私がこれ、運びますね」

そんなことを考えていると、千歳が包みを俺から取り上げた。

「いや、俺が持つぞ」

こういうときこそ男の出番だ。
そう思って手を伸ばす。

「ダメですよ!こういうのは女の人の仕事ですからね?」

「……それが女の仕事なら、男の仕事が無くならないか?」

「とにかくダメで――きゃっ」

それは一瞬の出来事だった。横を向いて話しかける千歳。彼女は前の小石に気がつかなかった。

「千歳っ!」

手を伸ばすと、彼女は俺の手をとった。
嫌な音を立てて落ちる重箱。千歳はこけずに済んだ。

「……大丈夫か?」

「おかげさまで……フフッ」

千歳が何故か笑った。

「……どうしたんだ?」

まさか、そんなに俺の顔が変だったか?
必死すぎる形相は、確かに笑ってしまうようなところがあったりする。

「いえ、なんでもありません。でも……」

視線を落とす千歳。その先には、ほどけた風呂敷から漏れる料理。
残念なことに、見事に中身はぶちまけられていた。

「す、すみません!」

「まぁ……確かに残念だが、俺としては千歳が転ばなくて良かった」

こぼれたものを重箱に戻す。勿体無いが、捨てざるを得ない。

「鳳翔に謝らないとな……」

そう思いながら肉団子をつまみ上げる。当然鳳翔の手作りだ。

「それは、私が行きます」

「いや、俺が……」

俺が行く。そう言おうと思ったが、千歳の目を見てとどまった。
先程も見た冷たい目。深海のような、その瞳。
それでいて、どこか力強さを感じる。

「私に、行かせてください」

拾い終えた千歳のその暗い表情。かなり反省しているのだろう。

「……それなら、俺の分も謝っておいてくれるか?」

元はと言えば、渡された俺が持たなかった俺がわるいのだ。
それをわかっていて千歳に任せるのは気が引けるのだが、彼女の熱意(?)に負けてしまった。

「はい。明日にしっかりと言っておきますね」

「あぁ、よろしく頼む」

しかし……惜しいことをした。
残り物とは言ったものの、なんやかんやで俺はすべて料理を味わえていなかったのだ。
先程に見た肉団子もその一つ。
他にも、魚の煮付けらしき物も見えた。

「食べたかったなぁ……」

そう呟く俺に千歳が言った。

「それなら、私が作りますよ!」

「千歳の料理……か」

そういえば食べたこと無い。
味は千代田が何度も自慢してきたので悪くは無いだろう。

「提督にいただいてもらいたいんです」

万が一。あり得ないのだが、不味かったとしても、恋人の作ったご飯という事が十分な調味料に思えた。

「確か卵があったから……」

横で思案顔の千歳。
そんな彼女を見て、俺は幸せを噛み締めていた。

そんな俺に千代田が寄ってくる。

「提督お兄!」

「…………どうした」

「いや?とくに何も無いよ」

先程と同じように腕にくっつく千代田。
俺の告白以降、やけにスキンシップが過剰になっているのは気のせいではないはずだ。

「……なら、離れてくれ」

昨日の俺ならデレデレしていただろう。
だが、俺は千歳が隣にいる幸せを味わいたいのだ。
そう思って千代田に素っ気なく対応する。
心なしか千歳も満足そうにみている。

「俺には……千歳がいるんでな」

「提督……」

「ふーん……」

感慨深いような顔をする千歳。
つまらなさそうに口を尖らせる千代田。
どうだ。お前のちょっかいを上手く捌いてやったぞ。

「……ん?提督」

「どうした?」

これ以上は無駄だ。そうたかをくくっていた。

「なんか、固いものが当たっているんだけど」

「ブフォッ」

「提督!?」

吹き出す俺。目を大きくあける千歳。
そんな俺らを見てニヤニヤ笑う千代田。
こいつは何を言い出すんだ。当然ながらそんなことは無い。

「二人とも、どうしたの?」

口ではそう言うが、俺にしか見せないニヤケ顔は、からかっているようにしか見えない。

「千代田!離れなさい!提督も!その……落ち着きなさい!」

顔を赤くして怒鳴る千歳。

「千歳お姉~どうしたの?顔が赤いよ?」

そう言いながら千代田は俺の胸をさする。
そこでようやく気がついた。

「……これか」

懐から例の彩雲を取り出した。

「あー。彩雲か~」

「なっ!!」

絶句する千歳。想像していたのとは違ったようだ。

……そうだ。大事なことを忘れていた。
悶々と狼狽えている千歳はひとまずおいておき、千代田に尋ねる。

「この彩雲は千代田のか?」

別にあの場に居なかったから、と疑っている訳ではない。
あくまでも全員に聞かなければならないからだ。

「あー……そうよ」

案外早く犯人は見つかった。

今日はここまで
ただの下手なイチャラブじゃねぇか……

このまま千代田交えたいちゃラブにしてもええんやで(にっこり)

>>130スレタイ詐欺は駄目ってばあちゃんに教えられて育ったんや。すまんな

おっそうだな(前スレを見ながら)

どこに行っても龍驤ちゃんは天使だなあ

>>132なんでや!スレタイ回収までしたんやで!

>>134^^

今日も2200に少しだけ

深刻な書き溜め不足
誰か私に時間をください

以下投下

「そ……そうか」

あまりにもテンポのいい展開に、俺は拍子抜けした。

「どこにありました?」

対する彼女には悪びれた様子も無い。

「お前たちの部屋の前に落ちてたよ」

へぇー、と興味がない返事に俺は戸惑う。

「いや……確かに壊したのは俺だが……一応お前の持ち物なわけだし。な?」

はじめは謝らせようというつもりは無かったが、ここまで興味なさげな雰囲気でいられるのは少し困る。

「千代田……いつも自分の物の管理はちゃんとって言ってるでしょ?」

千歳も一緒に注意を促してくれるが、反省の色は見えない。

「お兄が壊したの?」

「いや……まぁ、俺が踏んだわけで」

「……まぁ、無くした私が悪いんだし、お相子ってことで」

釈然としないが、それ以外の解決策が出るわけもなく。俺は千代田に従った。

「でも見つかって良かったわ。先月から無くしてたから、心配だったの」

先月……?

「千代田、それは本当なのか?」

「たぶんそのくらいになるかな……」

紛失したならすぐに届け出ろ。いつもならそう言ったはずだ。
だが、これは廊下。それも、千代田の部屋の前に落ちてたのだ。一ヶ月見つからないはずがない。

「……提督」

不安そうに千歳が近づいてくる。

「どうしたものか……」

再び彩雲を見る。
主翼は完全に折れていたりと壊れてしまっているが、特に汚れてはいない。

「誰か持っていたのか……?」

その線で考えるが、怪しい奴など全くもって思い当たらない。

「……まぁ、見つかったってことでいいか」

暫く考えたが、この鎮守府のメンバーの誰かを疑うなんて無粋なことはやめた。
ここには信じられる奴等しかいない。持っていたのは、何か理由があってのことだろう。

「……今日こそ早く寝るか」

そう頭を切り換えて足を速めたのだった。

あれから何事もなく布団入った俺は、翌日0600でスッキリとした目覚めを味わった。二日酔いはないらしい。

「提督。おはようございます」

「あぁ、おはよう」

支度を終えて扉を開けると千歳が立っていた。

「今日の予定は……1700から大本営にて会議が行われます」

「そうか……」

それを聞いて、せっかくの爽やかさが消え失せてしまった。

「あの固っ苦しいの嫌いなんだよな……」

やれ進行具合はどうとか。やれ艦娘の扱いがどうとか。
実にどうでもいい内容ばかりだ。
正直言って、時間の無駄でしかない。

「仕事ですので……」

千歳から同情の目を向けられる。彼女もあの空気は好きではないらしい。

とはいえ、それもこの鎮守府の長である自分の仕事。

「……はぁ」

ため息をつきながら食堂へ足を向ける。

「提督。昨日一晩中考えたんですけど、少しだけよろしいですか?」

「ん……?なんだ?」

階段を下りながら返事をする。

「提督は、上司とは言え私の恋人です」

「……そうだな」

そっちの話か。会議の話かと思っていた俺は耳を傾けた。

「それで、他の女性に話しかけたりするのはどうかと思います」

「……いや、部下に女性しかいないんだけど」

もしかして、これが「束縛系」ってやつなのだろうか。
それとも、ただの嫉妬か。
この手の話に疎い俺にはその違いがわからない。

「せめて、私が心配しない程度でお願いします」

「……善処しよう」

立場上そうとしか言えない。
彼女もわかってはいるのだろう。渋々ながら俺の言葉に頷いた。

窓から入る光が廊下を明るく照らす。
その窓から見える壊れた漁船。
自分のモチベーションが上がるのを感じる。

「……さぁ、今日も頑張ろうか!」

ついでに千歳の不安を吹き飛ばそうと、そう意気込みをいれて食堂へ入った。

「あっ。提督、おはようございます」

まず目に入ったのは大盛りの……カレー。盛りすぎて何かわからなくなっている。

「……おはよう赤城。今度からもう少し奥で食べなさい」

まさか朝から食欲が失せるとは思わなかった。ついでに上げたばかりのモチベーションも下がる。
一気に足取りが重くなる。

「奥ですか……」

何やら赤城は深刻な顔つきになる。

「でも、そうしたらおかわりが面倒くさいじゃないですか」

「……そうか」

食料費は給料から月始めに自動で落とされているのでいくらかかっているのか知らないが、もしかして俺って給料かなり貰えているのか?
そう思わずにはいられない。

そんなことを考えていた時。

「……提督」

静かだった千歳が俺を呼んだ。
とても冷たく、聞いただけで背筋に悪寒が走る。

「な、なんだ?」

「先程言ったばかりじゃないですか」

さっき……となると、女性との会話が云々ってことか?

「いや……朝の挨拶だぞ?」

「それは、おはよう。です」

それは……いささか冷たすぎやしないだろうか。
それとも、そう考えるのはおかしいのか……?

「……今度からちゃんと注意してくださいね」

その凛とした声は、千歳が作ってくれた朝食をとっている間もずっと俺の頭に響いていた。

今日はここまでで
いやぁ……本当に病みませんね……

それと、やはり書き溜め赤字がハンパない
もしかしたらいっそのこと書き終わるまで投下しないかも知れません
明日の書きための量で決めますが、その時はご了承ください

病む、病むって何だ?

>>148(好きな相手への一途な思いを)躊躇わないことさ!

皆さんこんばんは
新生提督の増加の勢いがものすごいことに戸惑いを隠せません
もう収まるかと思っていたんですけど……
どんだけ提督増えるんや

今日はなんとか投下できそうです

最近如月が轟沈するテーマのssが増えてきましたね
これがアニメ効果か……

乗るしかない。このビッry

以下投下

1100。食事やその他諸々の用事を終えて執務室の机に着いた。
着いたのはいいんだが……

「なぁ、千代田。千歳っていわゆる束縛系なのか?」

仕事を頼もうかと思った矢先、千歳は出ていった。
鳳翔のところに向かったらしい。

その時の千歳はすごいものだった。

「いいですか?秘書艦は私なんですから、代理なんて選ばないでくださいよ」
ここから始まり、俺の反対もあって、結局妹の千代田なら「まだ」信用できる、と落ち着いた。

そして、その千代田にも入念な注意をした後にようやく鳳翔の元に向かったのだ。

「それとも、俺がおかしいのか?」

「う~ん……あれは千歳お姉がおかしいよね」

その言葉に安心する。と同時に千歳が心配にもなる。

「あいつ、なんか気負いすぎていないか?」

告白まで時間のかかった俺が言える立場ではないが、たかが恋人だ。
いくら相手が大事だからと、そこまで強制する必要はないだろう。

「私の作戦が裏目に出ちゃったかな……」

タハハ、と苦笑する千代田。
軽いノリだが、俺としては深刻な問題だ。

「……ん?作戦ってのは?」

千代田の口から彼女らしからぬ言葉が飛び出た。

「あれだよ。私が提督をお兄って呼ぶやつ」

あぁ……あれか。

あれは意識してやってたのか。
少しだけ残念がっている自分がいる。

「あれをしたら、お互いが意識して深い仲になるだろうって」

自慢げに言う千代田。余程自信があったのだろう。
確かに、意識はした。

「したにはしたが……たぶん逆効果だ」

あそこまで露骨だと、ただ単に煽っているようにしか見えないだろう。

「あそこまでしたら、パッド入れてる龍驤に巨乳巨乳言ってるようなもんだぞ」

「えっ?えっと…………そっか」

千代田の顔が沈む。

「私、逆に千歳お姉を困らせていたんだ……」

彼女は俺たちの仲を本気で心配してくれていたのだ。
多少空回りしていても咎めるつもりはない。

「千代田、ありがとうな。千代田がいたから、俺たちは付き合うことができたんだ。確実にお前のお陰だ」

俺は立ち上がり、千代田の頭を撫でた。

「提督……セクハラで訴えるよ?」

「お兄ちゃんだからセーフ……にはならないか。許してくれ」

されるがままに頭を撫でられる千代田。

しばらく撫でると、千代田は顔を上げた。

「……よし!元気になった。ありがとう、提督お兄」

「……おう」

最後にポンポン、と軽く頭を叩いて手を離した。

「たぶん、千歳お姉は提督に見て欲しいんだよ」

気を取り直して、千歳がなぜこうなったのかを二人で考察する。
仕事は山積みだが、これはこの鎮守府の最重要案件だと俺は判断した。

「だからって、挨拶だけはどうかと思うけどね……」

「見て欲しいって……むしろあいつ以外に目が行ってないんだけど」

「……そういうのをお姉に言ってあげなよ」

千代田が呆れたと言わんばかりにわざとらしく肩をすくめる。

「それが言えてたらもっと早くに指輪を渡せてるぞ」

俺と千代田が同時に溜め息を吐く。

「あそこまで指輪を渡さずにイチャイチャできたくせに」

「それとこれとは別なんだよ……」

異性の友達からの次の壁は厳しいのだ。

「そこまでがこんなに厳しいなんて……私達も思わなかったよ」

……私達?
彼女の呟きに違和感を感じた。

「私達って言うのは、誰のことだ?」

「鳳翔さん」

千代田はさらりと答える。
鳳翔が?
これは全く予想できなかった。

「まぁ、店をわざわざ用意してくれたことを考えれば、そうなのか……?」

彼女は空母組の中では最古参。俺が右も左もわからない時は色々助けてもらったものだ。
そういえば最近、俺は鳳翔と話をした覚えが無かった。
したとしても大抵は千歳のことだ。

「大きな声では言えないけど。あの人、千歳のこと嫌いだろ?」

勿論鳳翔は居ないのだが、念のため声を小さくする。

「いつも俺が千歳の相談をしたら微妙な顔つきになってさ……」

事実、一昨日に店に行ったときも、俺の後ろの千歳を見た時に反応が妙に遅れた。
すぐに笑顔に戻ったが、あれはそういうことじゃないのだろうか。

「……えっ?」

「二人で話しているときも入ってくるし。……いや、別に嫌だってわけじゃないけど」

その時の千歳が拗ねているようにも見えたからだろうか。

まるで信じられないとでも言いたげな目の千代田。

「俺があの人を頼って相談するだろ?そしたら、『それなら、いっそのこと千歳さんを諦めない』って言ったことすらあるぞ」

「嘘……でしょ?」

本当に信じられないらしい。
確かに、あのときは俺も肝が冷えた。

「今は、ウジウジすんなっていう鳳翔なりの後押しだったんだと解釈しているが」

ただ、あの据わった目は苦手だ。

「……まぁ、鳳翔が千歳のことを嫌っているってことは、あくまで俺の推測だから」

宥めるが千代田は聞く耳を持たない。泳ぎまくる目は、動揺しているのが見てとれる。

「どうしよう……お姉と喧嘩になってたりしないかな……」

「……いや、ないだろ」

たぶん、と付け加えるのはやめた。

「いや、だって――」

「万が一。そう、万が一、鳳翔さんが千歳のことを苦手にしていたとして、だ」

こんなこと、おおらかな彼女達に限ってありえない。だから、あくまでも仮定の話だ。

「あの人は表には出さないでくれるだろうし、千歳は気づいていない」

つまり、表面上は何事もないのだ。むしろ、彼女達なら仲良くしてくれるだろう。

「完璧だろ?」
「秘書艦千歳、ただいま戻りました」

俺の声と、千歳の声が重なった。

今日はここまでで

正直鳳翔さんのところはもう少し上手くできたかなぁと反省してます。無理矢理感が否めない出来になってしまいました
日々精進します

明日も出来れば投下します
では、お休みなさい

今日は投下できそうにないです。すまんな
明日には必ずや

書けばやって来るってのは都市伝説じゃなかったんだな
ただいま我が鎮守府に大量の電とちとちよがやって来ています

今日は2200から始めたいなぁ……と

ちとだけ一人派遣してくれませんかね?

>>170
書いたらやって来た
あとはわかるな?

遅れました。すみません
少しながら投下していこうかと思います

以下投下

「お、お姉お帰り!」

千代田がやけに大きな声で千歳に返事をした。
さっきまでの話を誤魔化そうとしているのがまるわかりだ。

こいつは嘘をつけないタイプの人間……艦娘のようだ。

「……千代田」

「へ?」

千歳に呼ばれすっとんきょうな声をあげる千代田。

「お仕事はどこまで進んだの?」

「あっ」
「あっ」

今度は千代田と重なる。

「……提督はダメダメですから、まぁ仕方がありません」

そう言って千歳は俺から目をそらし、千代田を見た。

「えっ……おう」

千歳の中では、俺は諦められるほどダメなのか。
一応やることは期日前に終わらせているんだが……

「問題はあなたよ、千代田」

隙を見せない言葉の羅列に千代田も聞くしかない。

「まずは、この書類を終わらせるの。その次に任務。そして遠征――」

それからも、てきぱきとルーチンワークの順序を説明する千歳。

「――で、終わりよ」

「ほぇー……」

俺も千代田もぐうの音が出ない。

「それともうひとつ」

「うげぇ……」

蛙のような声で唸る千代田。
そんな彼女に淡々と指摘する。

「今回は私の代理だから、まぁいいけど、次回から『お帰り』ではなくて『お邪魔しています』って返事しなさい」

千歳は千代田に見向きもせず机に向かう。

「千歳……?」

「どうしました?仕事をしていない言い訳ですか?全く、私がいないとなんにもできないじゃないですか」

「お姉……」

「それと、提督に無意味に近づくのは控えた方がいいわよ」

溜め息をついて俺の机の横に立ち書類に目を通す千歳。
もはや妹のことなど眼中に無いようだ。

「……『お帰り』もダメなのか?」

お帰り。とは、その場で共に生活する者が、戻ってきた者に使う言葉。
そしてお邪魔しています、とは、他の場所で生活する第三者が、戻ってきた者に使う言葉。

「……私は何か間違えましたか?」

「今のはどういうことだ」

千歳がキョトンとした目で俺を見る。

「この部屋は、提督と秘書艦である私の部屋です。基本的には余所者が軽々しく入ってはいけないんです」

どこか落ち着いた口調の千歳。
奥に見える千代田の目が潤んでいる。

「余所者……」

言葉が辛辣なことを除けば、あっているのかも知れない。
だが、俺には千歳の言葉が正しいとは到底思えなかった。

「私は決めたんです」

千歳が堂々と宣言する。

「提督は恋人である私を見てくれません」

「い、いや!十分に見ているぞ!!」

本当だ。逆に、他の子に贔屓していると思われてないか心配なほどに。

俺の言葉に千歳が止まる。
思い返せば流れにそぐわない発言だったが、万事休すとなるか。

そんな思いはすぐに砕けた。

「嘘つき」

「なら、私は?」

「それは――」

「提督は私と隔たりなく話してくれていますか?私と話していて楽しいですか?私といて笑ってくれていますか?」

「…………」

俺は何も言えなかった。
自分ではしているつもりだった。
そんなことは言い訳にすらならないだろう。

「この指輪を貰っても、何も変わりませんでした」

昨日は嬉しそうに見ていた指輪。
それを見る彼女の目は、昨日と打って変わって厳しい。

「むしろ、提督には『恋人』という言葉が手枷になっているように思えます」

そこは否定できなかった。
恋人だから、と取った態度はどこかよそよそしかったかもしれない。

俺の中の恋人という関係が、かえって壁を彼女に感じさせてしまっていたのだ。

「話を戻しますが、私は怖いんです」

「怖い……」

はい、と頷く千歳。視線は一ミリたりともずれることなく俺に刺さる。

「私なんてすぐに捨てられるんじゃないか。他の人に提督を盗られるんじゃないか」

「……だから、見て欲しい、と?」

「恋人という関係を変に意識しないでください。そうじゃないと……私、提督から指輪をもらったことを後悔してしまいます」

目を伏せる千歳。深海のような、見つめていると引きずり込まれそうな黒い瞳。
そこに、一瞬だが光が投じられたように見えた。

俺はようやく彼女の本音が聞けた気がした。

「わかった」

しばらくして俺は頷いた。

「千歳が不安になると言うのなら、千歳の気が済むまで俺が目を離さないでいてやろう。そして執務室は、特別な事が無い限り俺とお前の空間だ。そういう特別扱いならいいだろう?」

だが、とそこで一呼吸おく。

「たとえ千歳が俺の彼女でも、残念だが俺はここにいる皆を見守らなくてはいけないんだ」

「…………」

「そこは、わかってくれるか?」

俺が出来る最大限の譲歩だった。

「……わかりました」

声は低いが、受け入れた千歳の顔は少しだが晴れていた。

「……そ、それなら私出ていくね!」

弾かれたように千代田が回れ右をして扉に走った。

「……千代田」

千歳がボソリと呟いた名前で千代田の足が止まる。
後ろ姿だけでも震えているのがわかった。
今の彼女には、姉に拒絶されたことが響いているのだろう。

「……さっきはごめんなさいね。もう少し言い方があったわね」

そんな彼女に千歳は謝った。

「……うん!」

扉を閉める彼女の声は、震えながらも明るいものだった。

今日はここまでで

大抵のジェットコースターは、上がった後に肩慣らしの如く小さく落ちる場所がありますよね?
そこで安心させておいて、その後にものすごい落下がやって来る…と

深い意味はありませんが

「あっ」
「あっ」

互いに近づいていた足音が同時にピタリと止んだ。

「叢雲ちゃん……」

「……吹雪」

向かい合った者の名を互いに口にするが、その目は手元に向けられている。

「……それ」

吹雪の言う「それ」とは、叢雲が手に持った小さな箱。
可愛らしくラッピングされたハート型の箱だ。

「……あんたこそ」

かく言う吹雪の手にも、形は違えどラッピングされた箱が。

「…………」

互いに何も口に出さず、かといって一歩も退かず。
まるで、二人の間にある扉を取り合うように互いを警戒する。

「…………叢雲ちゃん。それ、手作り?」

妙に重苦しい空気の中、吹雪が口を開いた。

「!ち、違うわよ!誰があいつのためにわざわざ作るのよ!」

取り乱す叢雲。吹雪は黙って一挙一動を見守る。

「これはっ、そこに落ちてたのよっ!」

「………………」

「あいつのじゃないかと思って届けるだけなん――」

言い終わる前に叢雲の手から箱は落ちた。
吹雪がはたき落としたのだ。

「――――えっ?」

狼狽を通り越して唖然とする叢雲。

「ダメだよ叢雲ちゃん」

諭すように吹雪は語りかける。

「落ちてた食べ物を拾うなんて、汚いよ?」

「ち……違うの!」

拾おうと身を屈める叢雲。
だが、それよりも先に吹雪の足が箱を踏みつけた。

「あ……」

「落ちてた食べ物を司令官に渡そうとしたの?」

吹雪は足を退けずに踏みにじる。

「あぁ…………」

ようやく退けられたが、もはや箱は原型をとどめていない。
中は見なくてもその惨状は十分想像できる。

「…………そんな……っ」

あまりにも唐突過ぎて涙が出てこない。
しかし、彼女の心は踏み潰されていた。

「そのゴミ、折り畳むのは手伝ったから、後始末は自分でやってね」

そう言って吹雪は執務室へ入っていった。


【バレンタインデー】

今日は2300から始めたいです

言い忘れてたけど、俺は吹雪好きですからね!
俺の初期艦です

素直じゃない子の心のをへし折る鎮守府とか恐い
色々こじらせた大井っちほんとすき

時間ですので、ちょいと投下します

>>195握手

以下投下

「…………さて」

ここで終わればいいエンディングなのだが、そうは問屋が卸さない。

「千代田と何をしていて、書類が一枚も終わってないんですか?」

「いや……千歳の好きなものを聞いていたんだ。レストランにでも行こうかと」

嘘だ。当然ながら、お前がおかしいって相談していた、なんて言えるはずもない。

「……ありがたいですが、そんな提督らしからぬことをされても私は嬉しくありません」

「あぁ、十分にわかったよ」

クスリと笑う千歳の目には生気が宿り出していた。

「ですから、いつものように今度一緒にどこかに飲みに行きましょう」

「あぁ、鳳翔の店にでも――」

「あそこはしばらく営業中止ですよ」

「――え?」

「鳳翔さんが過労で倒れたようで」

「……そうか」

確かに、あの人数の料理の準備から後片付けまで。俺には到底出来る事ではない。

「今度労いに行くか……一緒に」

「はい」

一緒に酒を飲む。これが俺らの距離感だ。
俺は笑顔で答える千歳を見て再認識した。

「……そういや、弁当について鳳翔さんはなんて?」

「特に何も」

千歳は素っ気なく即答した。

「そうか……」

やはり、鳳翔は千歳が嫌いなのか?

そう考えるも、そんな理由など思い付かず。

「……提督?」

「どうした?」

「そろそろ出撃の時間です。」

「あー……わかった」

千歳に促された俺は思考を放棄した。

さて、昨日の今日で動けるものはいるのだろうか……

「空母組は行けるか?」

赤城は行けそうだったが、他の面子はいかがなものか。そう考え尋ねる。
休暇の連絡は千歳に届けるように言っているので、千歳に聞けばわかるのだ。

「二、五航戦、軽空母はほとんどダウンしています」

「……今日は休むか」

空母達が主力となるここは、今日のところは出撃は諦めざるを得ない。

「天龍艦隊に遠征に行ってもらって、今日は終わりにしようか」

「それが良いかと。ですが、書類は会議までに終わらせましょうね」

賛同する千歳は、先程まで取り乱していたとは思えない落ち着きぶりだ。

「わかってるよ」

俺は安心して机に座った。

「……ふぅ」

「お疲れさまです」

デスクワークが終わったのは、昼食を挟んだ後の午後4時。
机に向かいっぱなしだったので、終わる頃には首が凝っていた。

背を反らすと背骨からポキポキとなる音が小気味よい。

「さて……休みたいが」

「そろそろ本部へ向かわないと間に合いませんよ」

休みなんて全然無い。
ここは深海棲艦などは、頻繁に現れるわけでは無いので楽な方のはずなのだ。
だがその代わりなのか、デスクワークが多忙な鎮守府から流れ込んで来ている気がしてならない。

「……はぁ」

ここで愚痴をこぼしても何も変わらない。

「……行くか」

俺は吐き出すように言った。

「私はどうしましょう……?」

恐る恐る千歳が聞いてくる。

基本的に、会議には秘書艦を連れてくることが義務づけられている。
だが、そのようなことを覚えているのは果たして何名いるのか……

昔はどうだったか知らないが、今は連れてくることが珍しい。
あろうことか、元帥殿でさえ同伴させていないのだ。
逆に、変に生真面目な奴だと難癖付けられたりするから厄介なのだ。

「……来いとは言わない。自由でいいぞ」

「着いて行きたいですが、それでは提督が変に目立ってしまうのでは……」

彼女はあの固い雰囲気が嫌いなのは知っているが、俺の事もあって千歳は躊躇っているのだろう。

しばらく悩んだ末に、彼女は膝に添えた手を握りしめながら

「……遠慮しておきます」

そう言った。

俺が悪目立ちするのを避けてくれたのだろう。

「……ありがとうな。今日は無理そうだが……明日。明日にでも二人で飲みに行こう」

千歳の顔が上がる。だが、その顔はそこまで喜んでいるように見えなかった。

「どうした?」

何か気にさわるようなことを言っただろうか。
そう不安が煽られたが、千歳が控えめに言い出した。

「うれしいですけど、私はこの部屋で二人で飲みたいな……なんて」

てへ、と舌を出して誤魔化す千歳。黙って見ていると顔が赤くなっていくのがわかった。

……俺の彼女可愛すぎるだろ。

しばらく見とれていたが背景の奥にあった時計が視界に入って正気に戻った。

「よし!帰りになんか酒を準備してくるから明日に二人で飲もう」

休みとはいえ、恐らく鳳翔なら持っているだろう。
図々しいが見舞いのあとにあわよくば……よし、いける。
鞄を持って扉に手をかける。

「ありがとうございます!」

今日一番の元気よさと笑顔の千歳。
月並みの表現だが、さっきまでの疲れがぶっ飛んだように体が軽くなるのを感じた。




「では、行ってくる」

カッコつけて、普段全くしない敬礼までして鎮守府を出た俺は、スキップするような足取りの軽さで駅へと向かったのだった。

今日はここまで
壊れた千歳だと思った?残念!可愛い(主観)千歳でした!

次の主役は、この話が終われば安価で決めようと思います

まだ終わってませんが

事務的に高翌雄型に飼われたい

今日は2300から始めたいです

時間となりましたんで、チマチマと投下しますね

以下投下

「…んう?……!」

目が覚めた俺は、倒れていた体を起こした。

会議という口実の元で行われる、互いの成果を発表しあう機会。
あまりにも手持ち無沙汰で思わずうとうとしていた。

幸い大した話は無かったようで、周りを見渡すがほとんどが轟沈しかけだった。

「……おいおい」

思わず呟いてしまうが、それもそのはず。
自分の列の奥に見える完全に頭が下がりきった人物。
彼は、この会合の開会宣言をしていた人物だ。

「この国大丈夫かよ……」

自分の事は棚にあげて不安になった。

「えー……本日の活動報告会はこれで終了とさせていただきます……」

司会を任されている者はチラリとその人に視線を送っていたが、しばらくした後に諦めて閉会を宣言したのだった。

人々がのそのそと出ていくなか、その人は中々起き上がらない。

「あの……」

少し不安になったので、その人に近づく。
声をかけても反応はない。

「お、終わりましたよー……」

小声で囁く。
開会を宣言した人を閉会後に起こすとは……
複雑な気持ちに駆られながらも肩を揺さぶった。

すると

「はわわ、すみません!」

ずいっ、と割り込んでくる少女。艤装を着けているから艦娘か?

「元帥さん!起きてくださいなのです!」

「……えっ」

「んうーぅ……ん?」

元帥、と呼ばれた男は顔をあげる。
俺は彼の襟首に光る勲章を見た。

「電ちゃんか……もう少し寝かせろよ……」

元帥はそう唸りながら俺の手を握ってきた。

「……げ、元帥殿でありましたか」

出来るだけ優しく手をほどく。

「……ん?誰だこの手は」

気がついたらしい。
ひとまずは挨拶を、と馴れない敬語で自己紹介をする。

「じ!自分はとある鎮守府の指揮官で――」

「こんなゴツい手が電ちゃんのあのプニプニした手なわけあるかぁ!!」

「…………はい。違います」

この人が、元帥だって?
本当にこの国は大丈夫なのか……?

「げ、元帥さん……」

秘書艦の子ですら若干ひいている。

「んお?……電ちゃんか」

正気を取り戻した……と言うよりも目が覚めたようだ。

「あぁいうことは止めて欲しいのです」

やれやれ、とでもいうかのようにため息をつく秘書艦。

「いや~……やっぱり人は温もりが近くにあると引き寄せられるんだよな」

妙に悟った顔で呟く元帥。もうこの国はダメかもしれない。

「……ん?」

こちらに気がついたようで、再度自己紹介をする。

「自分はとある鎮守府の指揮官である者です!」

やり馴れない敬礼を今日に二度もするとは思わなかった。

「この人は、元帥さんを起こそうとしてくれていた人なのです」

「ふーん……」

元帥が興味無さそうに相づちを打つ。
が、それ以上に会話の進展はなかった。

「………………あの」

この空気を変えねば。
そう思って切り出してみるが、続く話題が思い付かない。

変な空気が漂い出したとき、突然元帥が

「ん……お前、今日は暇か?」

そう言ってきたのだ。

すまん
眠すぎるから今日はここまでで
思った以上に睡魔が強いんや……すまんな

どうしてホモが湧いているんですかね……

今日は2230ぐらいから始めたいと思っています

熱が出てきてしまったんで、今日は中止ということで
本当にすみません

壊れてしまう大井っちを書いてくれたら元気になる気がする

ん?今超純愛大井っち書くって

とりあえず回復したっぽい
このまま何事もなければ2200から投下するっぽい

>>227純愛なんて書けないっぽい。それよりも純愛()の方がいいっぽい

提督も北上さんもほしい欲張りな大井っち
ただし別々のケージに飼う的な

>>230素晴らしい想像力だ。是非続きを書いていただきたい

以下投下

「カンパ~イ!」

「か……乾杯」

気前よくグラスをぶつけてくる元帥。
対して俺はそこまで余裕が持てなかった。

……何がどうしてこうなったんだ。

初対面の、しかも上司中の上司である元帥。
そんな人と酒を飲むことになるとは……

「どうだ?この店。いいだろ?」

「そ、そうですね……」

こっちは緊張してそれどころでは無い。
確かに、出てくるつまみや用意された酒の味は最高だ。
しかしながら、味覚よりも緊張が上回っているため十分に楽しめられない。

「…………こういう店は初めてか?まぁ、肩の力を抜けよ」

「は!はいっ!」

単なる言葉のはずなのだが、何故か余計に気が引き締められたような気がする。

「いっつもいっつも元帥さんは酒酒酒。いきなり初対面の部下を連れて酒を飲むなんてバカなのです」

「……ハハハ」

自分の上司をバカ、と一蹴する秘書艦。
ひとまず俺は渇いた笑いで流した。

「ほら、リラックスしろよ。見た感じ、お前も敬語は苦手なタチだろ?今日は無礼講だから。いつものように喋ってくれ」

自分で徳利を傾けてグラスに注ぐ元帥。
彼の言葉で俺の心臓は大きく跳ねた。

「……バレました?」

確かに、敬語には自信があるわけではなかったのだが、こうも意図も容易く見破られるとは思わなかった。

「雰囲気が、俺に似てるからな」

何故か決め顔で答える元帥。
……それは、喜べる事なのだろうか。
昨日までの俺なら、手放しで喜んでいたに違いないのだが……

「じゃあ……いや、やっぱり止めておきましょう」

あんな一面――と言うよりも、あれが本性なんだろう――を見てしまったとは言えど、自分の上司であることには代わりない。
腐っても鯛とはよく言ったものだ。

すでに敬う気ゼロの俺だが、あくまでも敬語を使う。

「……そうか」

元帥は、素っ気なくも安心したような、そんな目で返事をした。

「あの」

折を見て俺は口を開く。

「どうして私を招待してくださったのですか?」

「いやぁ……大した理由では無いんだけどな」

「はぁ……」

大したことはない。そう言っておきながらどこか躊躇っている元帥。

「……俺の知り合いに似てたもんでな」

元帥を隔てて俺の反対側に座っていた秘書艦の動きが止まった。

「知り合い……ですか?」

「まぁ、喋ってみれば性格は全く違ったんだが……そういうことだ」

どこか暗い顔の元帥。向こうに見える秘書艦も同じように俯いている。

「……もしかして、軍にいる人ですか?」

「……先月に、ある鎮守府が崩壊した話は聞いただろ?」

大本営から来た連絡だ。

「そこで指揮を取っていたよ」

「それは……」

俺の持っている情報では、彼は未だに発見されていない。
元帥の声が重い理由がわかった。

「……そうですか」

わかってもどう返事をすればいいのかわからなく、結局俺は相槌を打つことしかできない。

「……すまねぇな。君には興味の無い事なのに、無理矢理誘って」

「いえ……その方とは、仲がよかったんでしょうね」

「俺と同じ町の出でな、小さい頃もよく遊んでいたんだ」

徳利を逆さにするが、彼の酒は出てこない。

「お前も追加で注文するか?」

そう言ってくれたが、とても飲む気にはなれなかった。

「いえ、結構です。それよりも……」

そこで言葉を濁し、元帥の奥に目を向けた。
俺が元帥に顔を向けると、どうしてもその奥の秘書艦の子が視界に入る。

「彼女、泣いてませんか?」

俺は小声で耳打ちした。

それを聞くやいなや、元帥は彼女の方を向いた。
やはり、見間違いではなく目に涙が溜まっている。

「……電ちゃん。君には辛かったか。横で勝手に話しててすまんな」

謝る元帥。何か複雑な事情でもあるのだろう。
恐らく、彼女もその関係者なんだな。
そう思った。

この世界には病んだ艦娘しかいないんか

>>236
全く……君は数も数えられないのかい?
登場人物の1/3にも満たないんだぞ?
なお前作

以下続き投下

「……司令官さんは、生きています」

ぽつりと漏らした声。
確かに惨劇があった現場には彼の体は出てこなかったらしい。

だが彼女は、そんなことではなくもっと別のことを知っている。
それっきり口を閉じた彼女は、俺にはそんな風に見えた。

「……提督さん」

沈黙の後にこちらを覗くように顔を上げる彼女。

「ちゃんと、部下には心を配ってあげてくださいね」

「そ、それは出来るだけそうして――」

「何を思っているのか。何をして欲しいのか。ずけずけと言う子もいるでしょうが、提督さんを思って心の内に溜め込む子もいるのです。そんな子たちの心も汲み取ってあげて欲しいのです」

その言葉に千歳の顔が頭をよぎった。
頭の中を見透かされたような気がして、背筋に悪寒が走った。

「それは、提督さんの為でもあるのです」

まっすぐに俺の目を見て、彼女は寂しげに言った。

「素直になれない子の内面を汲み取る……か」

あのあと、しんみりした空気に耐えられなかったのか、急遽ここでお開きを元帥が宣言したことにより解散となった。

元帥の秘書艦の言葉は俺の言葉には響いた。響いたのだが、

「うちにいるだろうか……」

千歳は露にしてくれたことだし……他に思い付く子は出てこなかった。

「いない……よな?」

そう思いたかったが、何故かできない。

「……おっ?提督か?」

駅から出たところで立ちすくんでいた俺に声をかけたのは、隼鷹だった。その傍らに飛鷹もいる。

「一緒に飲みに行こうかと思ったのに執務室には忙しそうな千歳しかいないから、私たちだけで行ったんだよ?」

「あ……あぁ。会議があってな。また今度一緒に行こうか」

ったく……と肩をすくめる隼鷹。
彼女もずけずけと言うタイプだな。そんなことをつい思ってしまう。

「飛鷹はすぐに潰れるし、千歳も全然口を開かないし、鳳翔さんも寂しそうで、酒が美味くなかったからさ。本当に頼むよ?」

鳳翔……?それと千歳?

「隼鷹。お前達はどこで飲んでいたんだ?」

千歳の話では、鳳翔は過労で倒れていたはずだが……

「鳳翔さんのところですよ……」

グロッキー状態の飛鷹がボソリと言った。

「そこ以外で飲むことなんて……滅多にないですよ」

「おい飛鷹。辛いなら喋らなくてもいいぞ?私の方が元気だからさ」

庇う姿はさすが姉妹と言ったところか。

「私たちが飲んだら、他の店なら破産するからな」

「そ……そうか」

テヘヘ、と頭をかく隼鷹。
だが、俺には彼女達の飲みっぷりよりも気になることがあった。

「今日は、鳳翔のところは開いているのか?」

「当たり前だろ?むしろ、しまっている日なんて聞いたことがないね」

胸を張る隼鷹。この様子なら毎日行っているのだろうか。

「今日は休みじゃ無かったのか……?」

そう尋ねる俺に、はぁ?と呆れたように隼鷹は間抜けな声をあげた。

「そんな話どこで聞いたのさ。気になるんなら、今からでも見に行ったら?」

「……ちなみに、千歳はどこだ?」

「千歳もまだ店に残っているよ」

「……そうか。ありがとう」

鎮守府方向へあった足の先の向きを変える。

「俺も用事が出来た。ちょっと鳳翔のところに言ってくる」

「明日は飲みに行こうなぁ~」

歩き出した俺の後ろから隼鷹の声が聞こえた。

今日はここまでで

提督の明日はどっちだ!?


台詞が多いキャラ全員病んでるように見えてきたわ……

>>245つまり、ちとちよとヒャッハーか

今日は2300から
途中で落ちちゃったら明日の朝にでも

風呂場で鼻血でパニックになってました。申し訳ない

以下投下

店の外の暖簾は片付けられていたが、確かに鳳翔の店の光は灯っていた。

ここから鎮守府へ帰る近道は、どうやっても駅を通らなければならない。
千歳は基本的には真面目な性格だから、こんな時間に俺に連絡無しで寄り道はしないはず。

「つまり……」

ここまでの道で千歳とすれ違わなかったことを考えると、彼女はここにいるのだろう。
そう結論付ける。

暖簾を潜り、引き戸に手をかけた。

「……ん?」

手が止まる。
戸を引こうとしたとき、中から何やら声が聞こえたのだ。

「――――――提――!」

「―――――消―――邪―――」

千歳と鳳翔の声だろう。戸を挟んでいるので会話の内容はわからないが、穏やかではなさそうだ。

「あん―――――死―――――!」

「―――悪―――――――!」

ヒートアップする会話。互いに金切り声に近い怒声をあげている。

ヤバい!

そう判断した俺が急いで戸を開けた。

「あなたがいたから提――」

「止めるんだ!千歳!鳳翔!」

店に飛び込んで二人の間に割って入った。

「……………………提督」

目の前にいたのは殺気立った目の千歳。対して奥の鳳翔は落ち着いていた。

「千歳……」

「…………どうして来たんですか」

聞いてくる千歳。手元には 彗星一二型甲 。これには見覚えがある。

「……千歳、それはお前のだろ?」

ただの彗星とは威力が桁違いのそれ。

「仲間に向けるとはどういうことだ」

俺の目をまっすぐと見る千歳。口は開かない。

「提督。彼女は異常です。今すぐ解体処分を下すべきです」

早口で言い切る鳳翔。彼女の目に迷いはない。

「あなたが――」

「千歳!」

俺の声で千歳は声が途切れた。

「提督。今すぐにでも大本営に報告してください。元帥殿でも構いません」

急かす鳳翔。彼女の声は震えている。

「提督!私の話も聞いて!」

錯乱に近い状態の千歳はわなわなと震え、息が荒くなっている。

俺を挟んでせめぎ会う両者。

「……あぁ。ひとまず互いに落ち着こうか」

深呼吸した上で、俺は提案した。正直俺には話が全く見えていなかった。

だが、そんな俺でも異常なことは十分に理解できた。

「鳳翔」

「はい。なんでしょうか」

落ち着きを払って返事をする鳳翔。その目は確かに冷静さを物語っている。

「どうして千歳を処分しようと思うんだ?」

「………………えっ?」

鳳翔の目の色が僅かに変わった気がした。

「千歳は確かに錯乱しているかも知れないし、君に危害を加えようとしたのかも知れない」

『汲み取ってあげてくださいね』
その言葉が俺の頭の中でずっと反響していたからか。
鳳翔の中が少しだけ覗けた気がした。

「だが、即行解体を要求するとは君らしくもない」

いかなることがあっても笑顔で答えていた鳳翔。それは今も変わらない。

「……これは、提督の為を思ってのことです」

目の色が一瞬変わっただけで、それもすぐに戻る鳳翔。

「もしかして君は、自分にとって邪魔な千歳を――――」

「違います」

断言する彼女。口角は変わらずに笑っているが目の奥はそうとは思えないものだった。

「提督、いいですか?」

優しく子供を叱るように鳳翔は語りだした。

「千歳さんは、提督にとって絶対に邪魔な存在でしかありません」

あくまでも冷静に、鳳翔は諭す。

「提督のもとに一番ながく居るのはこの私です。当然提督のことは私が一番理解しています」

「違います!」

親の敵を見るような目で走り出そうとする千歳。そんな彼女を俺は手で制した。

そんな場景を見ても彼女の顔色は変わらない。

「提督も、千歳さんがいなかった時はよく笑っていました」

思い出し笑いをしてクスリと笑う。

「しかし、あなたが現れて形式上あなたが秘書艦となりました」

「そのときに鬱陶しい千歳さんは提督から幸せな時間を奪っておいて、妹が欲しい、と駄々をこねたんです」

言われて思い返す。鳳翔と話す機会が減ったのはあの頃からか。

「優しい提督は、千歳さんのためにわざわざ千代田さんを探しに行きました」

惚れた女性の頼みだ。断るはずもない。

「っ…………」

千歳の顔が険しくなるも、彼女から反論は出てこない。

「その間、提督は楽しそうでしたか?苦痛でしか無かったはずですよ?何せ、あくまでも形式上の秘書艦の頼みを聞こうとしていただけなんですから」

「……違います」

千歳の否定の声は先程よりも小さくなっている。

「いいえ?違いません。あなたは何も知らないのに、高々と提督の秘書艦であることをバカのように自慢していただけなんです」

俺はあえて口を挟まない。

「提督は、ある程度この鎮守府になれたら秘書艦を戻す。ずっとそう思っていました」

ノンストップで話す鳳翔。口調は相変わらずだが、切羽詰まったような印象を受けた。

「そしたら、まさか千歳さんが提督を唆して秘書艦を返さないとは……驚きでした」

「返すものじゃないわ。私の場所です」

多少落ち着きを取り戻したが、依然として睨み続ける千歳。

「強奪した今は、ですよね?本来その役目は私のものなんです」

ニコリと微笑む鳳翔。正論を言っているかのように堂々としている。

「私と提督は繋がっているんですよ?だから、お互いの事が手に取るようにわかります」

照れながらも自慢げに鳳翔は言った。

「……今のは意味がわからなかったんだが」

尋ねるが鳳翔の顔は揺るがない。

「私の中にはあなたが居て、あなたの中には私が居る」

口にするだけでさぞかし恥ずかしかったのだろう。頬を赤らめる鳳翔は、まるで初々しい恋愛をしているかのような顔だ。

「いいですか千歳さん?いつも提督の近くに居たのは私です。あなたはあくまでも一時的な秘書艦なんですよ」

「そんなの嘘です。提督はあの弁当は何も口にしていませんよ」

「………………ふふっ」

バカらしい、とでも言いたいのか。鳳翔は小さく笑って千歳の言葉の返事とした。

「あれがなくても、私と提督さんはもう繋がっていたんですから。そんなことは意味がないですよ。今朝も言ったじゃありませんか」

「嘘ですよね……提督」

絶望した顔で俺を見る千歳。
だが、俺には何も答えられなかった。

「…………鳳翔。秘書艦を代わってほしかったのか?それなら言ってくれれば多少は考慮していたかもしれない」

それを聞いた鳳翔の口角が下がった。

2200から始めようかと思っていましたが、今日で終わらせたいんで、もう少し時間くだせぇ
書き終えたら全部吐き出すんで

「……あら。どうしてですか?繋がっている提督なら私の気持ちがわかって下さいますよね?」

必死な顔で迫ってくる鳳翔。こんな彼女は初めて見た。

「私は提督のことがなんでもわかります。何が好きで何が嫌いで何時に起きて何時に寝て。逆に提督も私のことをわかっています。そうですよね?ねえ」

「鳳翔」

鳳翔の動きが止まった。
それは俺に呼ばれたからか、はたまたこれ以上詰め寄ることができないからか。

彼女をそっと押して優しく突き放した。

「君は……勘違いしている」

ためらいはあったが、意を決して言った。

「俺と君は繋がってなんかいないし、かといって離れているわけでもない」

「…………嘘ですよね」

「誰とも繋がってなんかいない。敢えて言うならば、一番近くにいるのは千歳だ」

「提督!」
「嘘ですよね」

嬉しそうな明るい声と、どす黒く奥底に溜まっていたような低く暗い声。
その二つが重なった。

「嘘じゃない。だが、君を嫌っているわけでもない」

「当たり前でしょう。なんせ、私たちは繋がって――」

「だが、一番愛しているのは千歳だと断言できる」

「……そうですか。千歳さんに騙されているんですね。私にはわかりますよ」

「違うな」

「いいえ。提督は正気ではないから気づいていないのかも知れませんが、千歳さんは提督を誑かしているんです」

俺の言葉に聞く耳を持たない鳳翔。気がつけばまた近くまで歩み寄って来ていた。

「鳳翔。よく聞いてくれ」

鳳翔の肩に右手をかけるが、今度は突き放さずに掴んだ。
空いた左手で後ろに居た千歳を引き寄せた。

「俺は、千歳を愛している。彼女のことを悪く言ってみろ。ただじゃおかない」

「提督……」

「………………ふふっ」

おしとやかに笑う鳳翔。だが、達観したような笑みには幸せは感じられなかった。

「君は疲れているんだ。しばらく休んでくれ」

「嫌です!」

突如鳳翔が叫びだす。

「正直に言おう。君は異常だ」

「違います!!私はおかしくありません!!提督が騙されているんです!!」

「例えそうだとしても、君の思考回路がはっきり言って異常なんだ」

「……私がですか?」

尋ねてくる鳳翔。顔で微笑んでいるだけで目の奥に光は無い。

「朝から晩まで誰が提督を見守っていたと思いますか?」

「そんなことは頼んだか?」

左側にいる千歳は何も言わずに、ただ俺と鳳翔のやり取りを見ているだけだ。

「私にはわかりますよ。この人を辞めさせる口実が欲しかったんですよね?ちゃんと伝わってます」

「そんなことは毛頭無い」

「照れなくても良いですよ?私とあなたの仲じゃないですか」

「俺の部下で、特別なのは千歳だけだ」

「違います。隠さなくても大丈夫ですよ?ちゃんと見ていました。嫌々告白して、泣いていたでしょう?本心を見せてください」

「彩雲でか?」

鳳翔が悪戯っ子のように笑う。

「ええ。少しだけ千代田さんにお借りしましてね。返そうと思っていたんですが、少し取り乱してしまって……つい墜としてしまいました」

「……そうか。聞きたいことは全部聞けたよ」

鳳翔との話は平行線。交わろうとこっちが寄せても予想だにしない方向へ曲がる。
いつもの彼女ならこんなことはないのだ。

……やむを得ない。
苦渋の決断とはこういうものをいうのだろう。そう考えながら俺は携帯を取り出す。

電話の向こうは、先程連絡先を交換した相手だ。

「すみません元帥さん。しばらくの間引き取って貰いたい部下がいるんですが」

鳳翔の目が更に開かれる。
彼女は俺の右手を振り払ってしがみついてきた。

『……これまた急な話だな。どうし――』

「嫌です!!提督と一緒にいたいの!!お願いします!!離れないで下さい!!」

『――なるほど。しばらく隔離して落ち着かせたい。と』

この距離で叫ばれては当然受話器も拾わざるを得ない。元帥もすぐに察してくれた。

『確かに、今の感じじゃ大本営のお偉いさん達は即解体を言い渡すだろうな』

「よろしくお願いします」

『……すぐにそっちに俺の部下を送ろう。しばらくなだめておいてくれ』

かなり分が悪い賭けだったが、そこまで時間を掛けることなく元帥は決断した。

「ありがとうございます」

電話越しだが頭を下げる。俺は心の底から彼を尊敬できた。

電話を切って鳳翔とみつめあう。
絶望しきった顔の彼女に、俺は出来るだけ優しく話しかけた。

「鳳翔。お前は、今は少し疲れているんだ。だから、半ば強制的だが休暇を言い渡す」

「そんな……」

「治ったら、迎えに行く。約束しよう」

彼女の目に僅かだが光が宿った。

「……本当ですね?落ち着いたら戻ってきてくれるんですね?」

「約束しよう」

「…………………………私が許しません」

千歳が左手に抱きついてくる。まるでここは自分の場所だと言い張るように。

「……頼む千歳。最後の我が儘だ」

俺の目をじっと見る千歳。

「…………わかりました。最後の我が儘てすね」

千歳が深く重い溜め息を吐く。彼女にとってはこれが苦渋の決断なのかもしれない。

「…………提督がそうするなら、私もそれに従います」

千歳が折れてくれたことにより、鳳翔は頷いた。

「これで、電達は帰るのです。提督さん、夜分遅くに失礼しました」

ぺこりと頭を下げる元帥の秘書艦。鳳翔は車の中に居てもずっと俺から目を話さなかった。

「電。発車しますよ」

車から別の人が呼び掛けられた彼女は慌てて鳳翔の隣に乗り込み、それを合図として鳳翔は連れられて行った。

「……これで、よかったのだろうか」

「……提督は間違えていません」

慰めるような柔らかい声。全てが許されるような気がした。

「…………帰るか」

車が見えなくなって数分。俺たちはようやく帰路に着いた。



あまりにもショッキングな出来事があったあとだからか、皆が寝た鎮守府は、余計に静かに感じた。

「……提督。また明日会いましょう」

そっと扉を開けながら頭を下げる千歳。何か悩んでいるようにみえる。

彼女に別れを告げて階段を上る。
入った後に扉の鍵をかけただけでどっと疲れが涌き出てきた。

「…………眠い」

風呂に入ることも面倒臭く感じ、そのまま布団に倒れた俺はそのまま眠りに着いた。



目が覚めた俺は、鎖で縛られていた。

「おはようございます」

突然のことで頭が回らない俺に頭を下げる千歳。

「今日は提督にお話があって伺いました」

唯一自由な首を捻って周りを見渡す。
ようやく、ここは自分の部屋ではなく執務室だと理解した。

口に何か入っている。そのせいか、うまく声は出ず、響かない唸り声がかすかに漏れるだけ。

昨日の一件で落ち着いたはずの千歳は笑っていた。

「あれから一晩中考えたんですけど、もっといい方法がわかりました!」

彼女は意気揚々と話す。

「私の話を聞いてくれます?」

嬉しそうに言う千歳。話せない俺に拒否権はない。

「最高の解決策を思い付いたんです」

「鳳翔さんのような偽物の関係ではなく、本当に繋がることが出来る方法……それは、私たちがここだけで生活するんです!!」

「トイレは私が片付けます。食事は私が用意します」

「仕事は私がみんなを指示します」

「鳳翔さんからヒントをもらったんですけど、これにしましょう。二人っきりの邪魔されない空間……ふふっ」

そんな馬鹿げた考えは捨てろ。

そう声にならずにただの唸り声が漏れるだけ。

「これが私の最後の我が儘、聞いてくださいね?」

渋々認めていた俺の最後の我が儘。
これで許されると思っているのか、彼女は最後の我が儘とした。

うっとりとした表情を浮かべる千歳。
俺は彼女に主導権をにぎられているのだ。
恐らく、彼女の言う最高の空間作りのために俺はいるのだ。

「あっ、祝い酒、用意してますよ?」

後ろ手に隠していた酒の瓶。俺に見せつけながら彼女は笑って

「これは、私と提督のお酒ですから」

これで終わりです……前作との質の落差が半端無いですね!(白目)

敗因:風呂敷の広げすぎ

打ち切りじゃないですけど、次回作にご期待ください

今人っているん?

居ないんかな……

明日に次回作の安価をとりますね

まってめっちゃいるやん

0030に一番近い人から↓2の人で

……川内?
えっこの子って病むの?

今回みたいな過ちは繰り返さないよう、しっかりと入念な書き溜めをしようと思うんで次に立てるんはいつになるかわかりません
思い出したときに酉検索していただけたら幸いです

それでは今日はここまでで
おやすみなさい

こんなのぬるま湯じゃないですか……
せめて源泉レベルにまで温めないと

「あなた……北上さんと何してたんですか?」

士官学校の一生徒である青年は追い詰められていた。

「その……大井先生」

「はい。怒りませんから、教えてくれませんか?」

ニコリと笑う大井。彼女はここの教師だ。
それに対して青年は、もうすぐ卒業を控えたただの生徒。大井とは約3年の付き合いだ。
教師と生徒。ただそれだけの関係。

『大井っちには内緒だからね?』

だが、彼には言えない秘密があった。
大井の友達の北上という女性に気に入られ、二人で休日に遊びにいくような仲になっていたのだ。

『君……明日も休みなんでしょ?』

そして先日。北上は半ば強引に彼を自分の家に泊まらせ、そのまま一夜を過ごした。

「あの……」

彼は悩んでいた。
正直に言えば、二人の関係を壊すようなことになりかねない。
かといって黙っていても、常に自分のことを気遣ってくれている大井が追求の手を緩めることは無いだろう。
真実に辿り着くまでの時間稼ぎにすらならない。

結果、彼が選んだのは

「……俺が、無理矢理北上さんを…………」

自己犠牲の手本のようなものだった。

こうすれば目の前の怒っている彼女は容赦なく自分に怒り、北上は悲劇のヒロインとして扱われ、全てが丸く収まる。

当然自分は罪を犯したことになるが、3年間姉のようにずっと面倒を見てきてくれた彼女への、最悪ながら最大限の恩返しに思えた。

面倒を見てくれていたとは言っても、彼女からすれば自分は一生徒でしかない。
そんな自分の暴走でことが収まるなら、これしかない。

そう考えた。

「…………もう少しで卒業だったのに」

呟くように言った彼女の目には怒りが垣間見える。
それが誰に対するものか、青年はわかっていない。

「……はい」

何も言えない青年。3年間の努力を棒に降ったことにある種の達成感を感じていた。

足の横に添えられていた握りこぶしが上げられる。
青年は殴られる。そう覚悟した。

だが

「でも安心して」

肩に優しく添えられた手。顔を上げるといつものように微笑む大井。

「私が、何とかしてあげる。心配しなくてもいいわ」

聖女のような笑み。その裏に潜むものに青年は気づかない。


【青春時代】

大井っちで練習

…………ふぅ

山城は一回書いたし、書かなくても……な?

安価で二人選んで書くで
2200に来るつもりやで

人いるかな?

この虚しさよ

いるんか
とりあえず↓1

浦風……
ひとまず安価下でいいですか?

大丈夫ですよ

>>320すまんな
今度書くんで許してください

ロードショーで感動してる人もいるというのに、俺はなんてもんを書いているんだろう……

「酒匂クイズー!」

突如大声で宣言する酒匂。咎めるものは誰もいない。

「酒匂が好きなモノなーんだ?」

可愛らしい笑顔で尋ねる酒匂。

「……なんだろうな」

提督は答えは知っている。
知っているが、こう言わないと彼女は怒るのだ。

「答えはね、『私の目の前に――」

「失礼します」

「……んぅ?翔鶴さん?」

酒匂の答えを遮って、ノックして入ってきたのは翔鶴だ。

「先日の報告書です」

「あぁ、ありがとう」

そこで、提督にあるいたずら心が芽生える。

「なるほど……酒匂の好きなものって、翔鶴だったのか」

「…………えっ?」

ノックに反応して振り向いていた酒匂の顔に焦りが出てくる。

「ち、違うよ!?酒匂の好きなものは、司れ――」

「確かに翔鶴は可愛いし、気だてがいいし、優しい。俺も好きだな」

「て!提督!?」

酒匂への追い討ちのつもりが、翔鶴の顔は赤くなっていく。

「私など、そんな素晴らしい女性ではありません……」

「……………………」

黙る酒匂。
彼の思っていたより面白い反応はしてくれなかった。

「……どうだ?酒匂。答えはあっているのか?」

「…………バカ、違うよう……」

静かになった酒匂。沈んでいくように段々と下を向いていく。

「……失礼しました」

翔鶴は顔の赤いまま執務室から出ていった。

その日はモヤモヤした変な空気のまま一日が終わった。



「酒匂クイズー!」

昨日と同じ時間に彼女のクイズは始まった。

「酒匂の好きなモノなーんだ?」

「…………わからないな」

苦笑いで答える。彼女を怒らせないために。

「答えはね、『私の目の前にある』だよ!」

「……俺か」

「正解!今度は間違えなかったね!」

「……あぁ」

昨日と変わった点は2つ。

1つは提督がクイズに正解した点。
もう1つは……

「まぁ、司令のために昨日のミスリードは消しとおいてあげたからね!」

難易度が少しだけ下がっていた点。


【ドボン問題】

阿賀野型でやろうよ(提案)

>>330一人一人で……(震え声)

「さすが夕雲だな」

出撃で見事MVPを取った夕雲を誉める。

「提督、私を選んで良かったでしょう?」

余裕のある含み笑いの夕雲。

「ぶち疲れたわ……」

一方、ボロボロになった秘書艦の浦風。

「大丈夫か?浦風」

見るも無惨な大破だった。

「俺があそこで深追いさせてなければ……すまん」

「大丈夫じゃけぇ。安心せぇ」

にかっと笑って明るく取り繕う浦風。

思えば、幾度となく彼女に頼る一方で、休みらしい休みを与えられていなかった。
そう思った提督は

「しばらく浦風は休みにしようか」

そう提案した。

「えっ?じ……じゃけど提督さん……うちがいんかったら、何も――」

浦風から笑顔が消える。
大声では言えないが、提案はデスクワークがさほど上手くない。ほとんど浦風がやっていたのだ。
だから、彼女は自分の立ち位置にあぐらをかくことができていた。

そんな彼女にとって、この提案は全く予想できなかったことだ。

「代わりに夕雲。頼めるか?」

そこで白羽の矢が立ったのは、夕雲。

「 私、始めてなんですけど……一緒に頑張りましょうね 」

作っているかののような微笑で夕雲は承諾した。

大人びていて、どこか一歩引いた位置に立っているような彼女。
だが、彼女が目の前の男性に特別な好意を抱いていることを浦風は知っている。

「……というわけだ。浦風。安心して休暇を謳歌してくれ」

「じゃけど…………」

しつこく食い下がる浦風。秘書艦から降ろされたことに彼女は絶望していた。

「なに、いざとなれば全員で片付けるよ」

ははっ、と笑いを付け足した提督だが、はたしてどこまでジョークのつもりで言ったのか……
浦風に些か不安が残る。

「とにかく、休んでくれ。これは命令だ」

「……提督さんがそう言うんなら」

職権濫用にもとれる命令だったが、浦風は渋々ながらも認めた。

「じゃあ、5日間の休暇を言い渡す」

こうして浦風は後ろ髪を引かれる思いで執務室を後にした。

「まったく……」

「ははは……」

浦風が再び執務室に足を踏み入れたのはきっちり5日後だった。

「何人の女をタブらかしたんじゃ……」

たかがデスクワークと侮ってはならない。

「うちが見てただけで15人は出入りしとったんじゃが」

「ほとんどがちょっかいをかけに来た奴等なんだけどな……」

「なるほど、やっぱり邪魔じゃったか」

苦笑いをしながら首の後ろを掻く提督。
本当に彼がどうやってここに配属されたのか理解に苦しむ。

「……まぁ、安心せぇ」

胸を張る浦風。

「うちが秘書艦なら提督さんはもう大丈夫じゃ。他のやつらに任せるわけにはいかん!」

おどけて見せる浦風。

「本当にありがたみがわかったよ……ありがとう、浦風」

「な、なんじゃ?素直じゃね」

内心ニヤニヤが止まらない浦風。それを顔には出さずに眉を寄せる。
これで、彼女の地位は安定したも同然だろう。

「じゃあ、早速デイリー任務を……」

「もうやったんじゃけど」

さらっと答える浦風に提督は驚いた。

「……相変わらず仕事が早いな」

「ついでにウィークリーも一部じゃがの」

思わず立ち上がる提督。

「まだ週明けだぞ?……どうしてだ?」

「 だって、うちが強ければ、みんなを護れるけえね! 」

笑顔で彼女は答えた。



【邪魔者】

落ちが弱いかな……
とりあえず浦風

最後に一人安価下
これで店じまい

「よぉ、出雲丸」

「提督!私は飛鷹ですっ!」

「いやぁ、反応が楽しくてつい」

「まったく……提督だけですよ?私を出雲丸って呼ぶの」

「特別扱いだ。自慢してもいいぞ?」

「えっ……」

「なーんてな。じゃあな」



「特別……フフッ」

「おっ、龍驤。髪切ったのか」

「見たらわかるやろ?」

「似合ってるな。かわいいぞ?」

「……君ィ。そういうのは、もうちょっといい雰囲気の娘に言ってあげるもんやで」

「ん?龍驤には言ったらダメなのか?」

「…………アホ」


「……………………」




「おっ、飛鷹。髪の毛バッサリ切ったな」

「!そうよ!イメチェンってやつね」

「中々似合ってるじゃないか」

「フフッ。ありがとう。特別に提督から誉められるなんて嬉しいわ」

「大丈夫か?比叡。指を切ったって聞いたが」

「司令。そこまで大事じゃないですよ~。指も大したことありません!」

「いや、しかしな……」

「全く司令は心配性なんですから……」


「……………………」



「おい飛鷹!」

「あっ、提督!」

「大丈夫か?料理中に指を怪我したらしいじゃないか」

「たぶん大丈夫かなぁ……と」

「こんな指をざっくりいって大丈夫なわけあるか!しばらく休みなさい。特別に休暇を言い渡す」

「!はい!……フフッ」

「隼鷹!大丈夫か!?」

「そんなすっ飛んで来なくても大丈夫だって、たかが中破だからさ。それに、随伴艦が旗艦を庇うのは当然でしょ?」

「こっちはそれが心配なんだ!まったく……中破だからよかったものを、轟沈なんてしたらどうするんだ?」

「そんなら私の墓に酒でも供えて、艦隊には代わりに飛鷹でも――」

「馬鹿野郎!お前がいなくなれば皆悲しむんだ!わかっているのか?」

「……そこには提督も入っているのかな?」

「当たり前だ。むしろ、俺が一番悲しむな」

「っ…………ふーん。まぁ、沈まないようにはするかなー」

「頼むぞ」


「……………………」



「おい飛鷹!大丈夫なのか!?」

「あっ!提督!」

「大破したって聞いたから心配したんだぞ?」

「特別にすっ飛んで来たんですか?」

「?…………まぁ、そうだが」

「……フフッ」

「どうした?何かおかしかったか?」

「いえ、頑張ったかいがあったなぁ……と」


【特別】

飛鷹とか難しくね?
個人的にはそう思いました(ロークオリティの逃げ道)

では、これで店じまいということにさせてもらいます
お付き合いありがとうございました

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom