【咲-saki】久「須賀くん、出来ちゃったみたい」 (673)


~~久の家~~

京太郎「いやー、スパゲッティ美味しかったっす、ごちそうさまでした」

久「お粗末さまでした。あら、口の横に赤いの付いてるわよ……ほら拭いてあげるからじっとしてて」フキフキ

京太郎「自分で出来ますよ」

久「お姉さんに任せなさい、せっかくの男前が台無しよ、うん、これでよしっと」

京太郎「ありがとうございます……じゃあ先にシャワー浴びて来ますね」

久「……ねえ、須賀くん、その前にちょっと大事な話があるんだけど」

京太郎「へ?」



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422543387


部長とこういう関係になってから、もう2ヶ月にもなるだろうか

京太郎「長くなりそうですか?お酒でも飲みながらゆっくり話しますか?」

どうせいつもの、麻雀部の話だろうと思った。冷蔵庫の方へ向かっていく俺を部長は引き止めた。

久「今日はそういう話じゃないのよ」

内心ドキッとする。別れ話を切り出されるのだろうか?俺は静かに椅子に腰掛けた。

部長は、微動だにせず、俺の方を見つめていた。

少し居心地が悪くて、俺は頬を掻いた。

京太郎「……で、話とは?」

久「実はね、生理が来てないの」


京太郎(マジか……セイリがキてないのか)

部長は顔色一つ変えずに俺を見つめている

京太郎(そういう時ってなんて言うのが正解なんだ?『それは大変ですね』?)

京太郎(いやいや、そういう意味じゃないよな……)

京太郎(女の子が男に言うソレって、そういう意味じゃないよなぁー!)

京太郎(一体いつだ?いっつもゴム付けてやってんのに?)

京太郎(いや、待て、最初の頃にヤった時、ヤってる最中にゴム外れて、そのままって事が……あの時は、お互いムード壊したくなくって)

京太郎(いや、でも、外に出したし……可能性はゼロじゃないけど、いや、ゼロじゃないけど)


久「ねえ須賀くん」

京太郎(確かあの時は二回戦だったような……いや、三回戦目だったか……薄まってるはずだろ)

京太郎(それに、危険日に中出しで妊娠する確率って、そんなに高くないって聞いたことあるぞ)

京太郎(いわんや外出しをはって、いや、もうその事を考えるより)

京太郎(まだ俺、未成年で学生だし……いや、それは向こうもわかってる)

京太郎「あっ、はい」

京太郎(現実的に考えて……産むのは……待て、まずはこの場を何とかしなくちゃ)

京太郎(ウキウキで泊まりに来たのになぁ!なんて日だ、今日は)


京太郎(いや、ちょっとまてよ、部長のことだ、俺をからかうためにそういうドッキリを)

京太郎(あり得る、イメージ出来る!きっとそうだ、絶対!)

久「……」

京太郎(でも、部長って案外気遣いの人だし、俺を試すようなドッキリはしてこないよな……)

京太郎(すごい真剣……少し震えているし……ホントなんかなぁ)

京太郎「そ、そうですね……それはつまり、出来ちゃったってこと……ですよね」

久「……」

次は部長が黙りこんでしまった。時計の針の音がいやに耳に触った。


俺の脳裏を、昨日までの部長との甘酸っぱい日々が走馬灯のように走る。

昨日までの俺は間違いなく世界で一番幸せな男だと思っていた。それを確かめるために、今日も一緒に過ごそうと思っていた矢先のことだ。

京太郎(マジでどうしよう……)

京太郎(ホントは喜ばなくちゃいけないことなんだろうけど……俺達にはまだ重すぎるよ……)

京太郎(部長もこれから就職とか色々あるのに)

京太郎(俺だって、まだ人並みに青春を謳歌してもいい年だろ?)

京太郎「はぁ……」

久「……ッ」ピクッ


無意識に出た俺の深い溜息に、部長は少し震えた。怯えているようにも、見えた。

京太郎「す、すみません!そ、そう言う意味じゃなくて」

久「……うん」

京太郎「その、調べたん……ですか?」

久「今日、薬局で検査キット買って……陽性だったわ」

京太郎「……そう、ですか」

この時、彼女は俺にどんな反応をして欲しかったんだろうか。


久「……でね、出来れば早いうちに……その」

京太郎「……」ゴクリ

久「一緒に、お医者さんの所に……どう、かしら?」

やけに喉が乾く。目の前のこの女に抱くべき愛おしいという気持ちを、嫌悪感がとぐろを巻いて飲み込もうとしている。

何を考えているのかわからない。その体の中に、何を飼っているのか想像もつかない。

俺は……

①『わかりました……一緒に行きましょう』
②『少し一人で考えさせて下さい』

↓1


京太郎「わかりました……一緒に行きましょう」

そう言うと、部長は顔を少しあげて俺を見た。

久「ありがと……明日は日曜日で病院もやってないでしょうから……明後日とか……どうかしら?」

京太郎「月曜日ですね、大丈夫です」

それから部長はまた黙りこんでしまった。

京太郎(何を考えているんだろう、この人は今)

久「ねえ、須賀くん」

京太郎「……なんですか?」

久「……ちょっと一人になりたいから、今日は」

京太郎「……わかりました」

そそくさと荷物をまとめて、俺は部長の部屋を後にする。

久「……ごめんね」

玄関を出るときに、部長がそう呟いたのが、俺にもはっきり聞こえた。


京太郎「バッキャローッ!!」

俺は一人、自宅近くの路上で叫んだ。

京太郎「チクショウ……なんだってんだ……どうすりゃいいんだよ……」

京太郎(無理だ……考えれば考える程、無理だ。今の俺にそんな甲斐性なんかねぇ)

京太郎「終わっちまったのかなぁ……俺の人生……」

京太郎(そうならない方法が一つだけ……俺にも思いつくけど……部長は……)

京太郎「クソッ!クソッ!」ガンガン

電信柱に当たっても仕方がない。

京太郎「……」ピッポッパッポッピ

京太郎「……咲、今大丈夫か?」



京太郎「おー、咲、ここここ」

咲「どうしたの、こんな夜に?先輩大丈夫なの?」

俺は自宅近くの小さな居酒屋に、咲を呼び出した。

京太郎「……」

咲「よっこいしょっと、店員さーん、生中1つくださーい」

咲「京ちゃん?何かあったの?顔色が悪いけど。もしかして先輩に振られたとか?」

京太郎「……実はさ……」

俺は今日の出来事を咲に打ち明けた。

咲「なるほど、ね。で、やるせなくなって私を呼んだと。京ちゃん、今日の飲み代京ちゃん持ちだよ?」

京太郎「……はぁ……いいよ、それくらい……」グビグビ

咲「で、先輩とは話したの?」

京太郎「いや、一人になりたいって言うから帰ってきた……俺も一人になりたかったし」

咲「私呼んでるじゃん」

京太郎「そうだな……はぁ……」

咲「タメ息多いね、幸せ逃げるよ?」

京太郎「幸せ、か……」


京太郎「どうすっかな……この年で」

咲「避妊しないからだよ」

京太郎「いや、避妊はしてたって!」

咲「ホントォ?」

京太郎「ああ、いっつもゴム付けてヤってたし」

咲「なら絶対に出来ないじゃん。いくら京ちゃんの精子でもゴムは破らないでしょ。ホントに思い当たる節はないの?」

京太郎「……実は一度、失敗して……でも、チャンと外に出せたんだ!信じてくれ咲!」

咲「うーん……怪しい……」

京太郎「ホント運が悪いよ……あっ」

咲「それ、部長が聞いたら泣くよ?」


京太郎「でもさ、どうしろっていうんだよ……」

京太郎「この年でパパなんて……無理だろ……実際はさ」

咲「うん、無理だね」

京太郎「だよなぁ……」グビッ

咲「で、ぶちょ……先輩は、どう考えてるの?」

京太郎「それが分かれば苦労しないよ……実際、聞くのが怖い」

咲「それが一番大切だと思うけどなぁ、私が先輩だったら京ちゃんに幻滅してるよ。彼氏さんなんだから、私に愚痴る前に二人で話しくらいしなきゃ」

京太郎「うるせぇよ……わかってるよ、話して決めなきゃってことくらい」

咲「で、京ちゃんはどうしたいの?」

京太郎「それを聞くのか、咲ぃ……」

咲「多分先輩も一番気になっているところだと思うよ」

京太郎「俺は……」

①『……堕ろすしかないだろ』
②『まだ整理がつかないよ』

↓1


京太郎「……まだ整理がついてない」

咲「うん」

京太郎「現実味がないっていうかさ、昨日まで部長とこんなことになるとも思ってすらいなかったんだし」

京太郎「突然過ぎて。どうしたらあの人を幸せに出来るか……イメージすら沸かない」

京太郎「まだお互い若いし、何がなんだかわからないんだよ」

京太郎「クソッ!なんでだよっ!ああっ!」ガタンッ

咲「京ちゃん!お店に迷惑だよ、とりあえず、出よ?」

京太郎「ああ……もうこんな時間か」

京太郎「会計は俺が持つ……咲、今日はありがとう」

咲「いいよいいよ、これくらい。私で良ければいつでも相談に乗るよ」

京太郎「で、今日は……」

咲「もう終電はとっくにないと思うけど?」

京太郎「……泊まってくか」


京太郎「ちょっと、コンビニ寄っていいか?」

咲「飲み物切らしてるの?」

京太郎「いや、その……」

咲「あ、生でヤるの不安なんだ」

京太郎「はい、そのとおりでござんす」

咲「私はピル飲んでるから大丈夫だって前言ったじゃん」

京太郎「……」

咲「ね?京ちゃんも生の方が気持ちいでしょ?今日、先輩とやれなかった分、私で、ね?」

京太郎「……」ゴクリ

その晩は何故か異常な程、興奮していた。

日が昇るまで、咲を抱いた。


こんな感じで安価を交えつつ気ままにやっていこうと思いますので、よろしくお願いします
慣れてきたら自由安価とかも出したいです
他のキャラも適当に出していきたいと思っています

明日の夜に続きます

おやすみなさい


月曜日、俺は部長と初めての産婦人科外来を受診することになった。

授業を休んで、午前中から二人で少し離れた街へ向かう。これがデートなら、なんて楽しいんだろうかと思うくらい、清々しいまでのすかっ晴れだった。

でも、俺達は電車の中で終始無言で、部長もいつものように体を引っ付けてくるような事はなかった。

病院選びも部長に全て任せていたので、俺はただの付き添いの友人のような感覚だったのかもしれない。

小奇麗なマタニティクリニックでは、待合で待っている間、周りにジロジロ見られているような気がしてむず痒かった。

部長は周りの妊婦さんに比べて飛び抜けて若かったし、付き添いの男性が少ないし、いたとしても俺よりずっと年上の大人ばかりだった。

待合での子どもたちの喧騒や、名前を呼ぶ大声――何もかもがやかましかった。

部長が隣で問診票に慎重に何かを書き込んでいる。時折り、手帳を見ながら。

俺はのぞき見る気すら起きなかった。


「竹井さーん、竹井久さーん」

部長を呼ぶ声が待合に響く。

久「ねえ、須賀くん、呼ばれたわよ」

京太郎「あ、ああ」

どれくらい待ったのだろうか。部長に肩を叩かれて、俺は立ち上がった。

やかましい待合の奥に、診察室があった。

入り口で部長と看護師さんが何やら話して、俺の方を見た。

京太郎「じゃあ、部長、俺、ここで待ってますから」

最大限気を使ったつもりだった。

久「アナタも入るのよ、あと、ここで部長呼ばわりは止めて、久でいいから」

京太郎「は、はあ……」


「はじめまして、医師の……です、竹井久さん、ですね?」

若くて爽やかな先生だった。少しハギヨシさんに似ているかな?

久「はい」

「そちらの男性は?付き添い?お名前を伺ってもよろしいですか?」

京太郎「あ、あの、今日はぶちょ、久さんの、付き添いで、あの、須賀京太郎と申します」

「若いねぇ……結婚されてるの?」

久「いいえ、私たち、まだ学生で」

「うん、うん、そっかぁ……まずは検査しましょうか」

「じゃあ、須賀さんは待合の方でお待ちください。検査終わりましたら、お呼びします」

それだけで俺は診察室から大混雑の待合に追い出されてしまった。


どれくらい待ったのか覚えていない。頭が空っぽだった。

この喧騒の中、逃げ出そうという気すら起こらない。


肩を叩かれた。

「あのー!竹井さんのお付き添いの方ですか!?」

ナースが、いら立ちを隠そうともせず、俺を現実に引き戻した。

京太郎「あっはい」

「さっきからお呼びしてるんですけど!2番診察室にお願いします!」

京太郎(何か大事件でもあったのかなぁ……部長、大丈夫かな)


部長が座っている椅子の隣に、誰も座っていない丸椅子が置いてあった。

診察室には医者と部長が座っていて、無表情の年季の入ったナースが後ろで立っていた。

「まあ、須賀さん、お掛け下さい」

医者も、先ほどの若いものじゃなくて、俺の親父くらいの年齢のおっさんに変わっていた。

ちらっと部長の顔を見ながら、俺は腰掛けた。顔の化粧が崩れていた。

幾つかどうでも良さそうな質問をされた後(病人でもない俺の話を聞いて何になるんだ?)、医者はこう言った。

「ご妊娠されてます」

京太郎「嘘だろ!」

俺は顔を真赤にして立ち上がった。診察室の外にも響かんばかりの怒号だったと思う。

京太郎「なあ、嘘だろ!!」

その場の誰も、顔色一つ変えやしない。頭に血が上って、それからすぐに、引いてゆく。

力なく、俺は椅子にまた座った。


それから呆然と医者の話を聞いていた。

要点はこうだ。お腹に赤ちゃんがいる。妊娠7週。中絶できるのは21週まで。どちらにしても、準備やお金が必要なので、至急親に相談しろ。

病院を出て、俺達は近くの喫茶店に入った。

京太郎「……どうしよっか」

俺は無意識に、懐から煙草を取り出した。

久「ここではやめて」

部長は俺の手を抑えた。彼女の手はやけに冷たかった。

京太郎「なんでだよ……」

久「なんでって……」

京太郎「なんでだよっ!ああっ!」

久「ちょっと、須賀くん、ここで大声やめてっ!」

京太郎「チクショウ!コラッ!見世物じゃねぇぞ!……はぁーっ……はぁーっ……」

久「大丈夫?須賀くん……ごめんね……私のせいで、本当に……ごめんねっ……」

部長らしくない、泣きそうな声だった。半ば痙攣を起こしたように、震える俺の隣に来て、背中を擦ってくれた。

久「ね、お店、出ましょう?……ほら、立てる?」

部長に半ば引きずられるように、俺は店を出た。


結局俺達は駅前の広場で、少し話し合うことにした。

空の色はいつの間にか鈍って、もうとっくに夕方だった。木枯らしが寒くって、俺と部長は寄り添うようにベンチに座った。

京太郎「ごめん、頼りない男で」

久「いいのよ。一緒に、話聞いてくれただけで、私は……救われてるんだから」

京太郎「で、どうしよっか」

久「……私は、親があんなのだから……ねぇ……」

部長が俺の手をギュッと握った。

この時、俺は彼女を愛おしいとさえ思った。力があれば、守ってやりたいと思った。


咲「堕ろしちゃいなって。それしかないよ。あの女だってそれはわかってると思うよ?」

咲「京ちゃんは優しいから。きっとあの女は、京ちゃんのそこに漬け込むよ。お金のことも、その後のことも、出来る限りたくさん京ちゃんに集ると思うよ?」

咲「こういうことはね、早いほうがいいよ。そのせいでそっちの居場所がなくなったら、こっちにいつでも来ていいんだよ?」

俺は布団の中で煙草を吸いながら、耳元でささやく咲の言葉をボーっと聞いていた。


久「……須賀くんはあの男みたいに、私のコト、捨てないよね?」

俺は……

①『……親に、相談してみます』
②『少し考える時間を下さい』

↓1


京太郎「わかりました……俺が、親に相談してみます」

長い沈黙のあと、ひり出すように俺は言った。喉がカラッカラに乾いていた。

部長の手の握りが、ギュッと強くなった。

それから、しばらく部長が何も言わなくって、俺は気になって部長の方を見ると、彼女は唇をかみ、しゃくり声1つあげずに泣いていた。

京太郎「部長……」

俺は部長の肩を強く抱いた。彼女は、俺の胸の中で少しうずくまって、俺はじっと空のある一点を見つめていた。

久「久って呼んで……」

体を許しても、そう呼ぶことは許してくれなかった――男にそう呼ばれるのは怖いから――訝しむ俺に、部長は目を伏せながらそう答えた。

京太郎「久っ……」

俺は久の体を強く抱きしめた。


それから1週間が経った。俺はまだ親に電話できずにいる。

京太郎(約束、したけどなぁ……)

京太郎(俺んちそんなに裕福じゃねーし……親も俺の学費の払ってくれるだけで精一杯だよな)

京太郎(うーん……医者はどっちにしろ金がいるって言ってたけど)

京太郎(早ければ早いほうが安いみたいだな)ネットで検索

京太郎(それにこの額なら久さん、工面できそうだなぁ)

京太郎(俺は友達少ないから無理だけど、あの人、友達多いし、色々プロとの付き合いもあるみたいだし)

京太郎(俺は未成年だから金借りれないけど、久さんなら街金とかで……)

京太郎(あれ?これって、わざわざ親に連絡する必要ないんじゃね?)

京太郎(実家遠いし、宗教上の理由で堕ろすの許してくれるかわからんし)

京太郎(実際に色々しなくちゃいけないのは久さんだけど)

京太郎(俺たち別に夫婦ってわけじゃないし)

俺はそんなことをウンウン考えながら、ネカフェの個室でずっと煙草を吸っていた。


久『ちょっと電話していいかしら?』

ふと携帯を見ると、LINEで久さんから連絡があった。

3週間前の週末に一緒にネズミーランドに行った時に撮った、彼女の写真がアイコンだった。

それは、今の俺達からは想像出来もしないほど、希望と愛に満ち溢れている笑顔だった。

京太郎(絶対、親の件だよな……はぁ……)

癖で既読をつけちゃったし、もう夜も遅い。ここで電話に出れないのは流石におかしい。

俺は貴重品を持って、ネカフェの電話エリアに向かった。


久「あのね、いいニュースがあるのよ」

電話口の向こうから、本当に久しぶりの彼女の明るい声が聞こえてきた。

久「麻雀の件なんだけど、今日の夕方、協会の人からね、連絡あって」

久「ほら、半年後の世界大会の日本選抜にね」

久「私、選ばれちゃったのよ!内定もらっちゃった♪」

久「うん、うん……ありがと。楽しみだわ~、ほら、他の大学からも昔私たちがインターハイで戦った懐かしい顔ぶれが揃ってるらしいのよね」

久「洋榎もメンバーに入ったって聞いたから、電話したんだけど、あ、愛宕洋榎覚えてる?」

久「私の方が先で、まだ洋榎に連絡は行ってなかったららしくて、あの子怒ってたわ!」

久「ウチのドキドキを返せって!今日1日ずっと電話の前で待ってたらしいわ」

久「まさか選ばれると思ってなかったから~ウチの大学からは美穂子だと思ってたし」

久「うん、うん」


久「いや、実はまだ内定段階だから、内密にってことで、部活のみんなにも言ってないんだけどね」

久「来週メンバー揃えて記者会見の時にお披露目らしいのよ」

久「ずっとやって来た事が、報われたわ」

久「ありがと。支えてくれて」

久「え?俺は何もしてない?……ううん、あなたが私と同じ大学に入学してくれて、また同じ部活で一緒に戦えて……とても助けられてるのよ?」

久「うん、高校の時からそう。あなたは表舞台で輝く私たちのために、誰よりも見えないところで頑張ってくれた」

久「そんな君に私は惹かれたのよ」

久「うん、うん、本当にありがと」


京太郎(なんだこれ……久さん、忘れてんのかな、あのこと)


久「でね、例の件だけど……」

京太郎(な訳ないですよねー)

久「どうだった?話、進めてくれてるかしら?」

久「いつも頼ってばかりでごめんね……」

京太郎「あの、そういう状態で……日本代表に……なれるんすか?」

久「……聞かれてもいないこと、言う必要ないでしょ?……でもお腹の中に子供いたら、無理よ」

久「ハードスケジュールだし、途中でお腹出てきたら、大変なことになるわ」

久「大学の名前に泥を塗ることになるし、絶対にそれだけはイヤ。みんなに迷惑かけることになるし」

京太郎「じゃ、じゃあ!(なんだぁ!久さんも堕ろすって考えだったんだ!お金の件も、多分何とかなるよね、代表だし)」

久「……内定は喜ばしいことだけど、実はまだ保留してるのよ。3日以内に返事しろってなってるんだけど」

京太郎「え?」

久「産むことになるなら、私、辞退しようと思う」

京太郎(ええーっ!)


久「あなたに頼りっぱなしじゃいけないと思って、私も色々調べて、計画を考えたんだけどね」

久「こういう話はやっぱり直接会って話したいから」

久「明日の練習の後、ウチに来てもらえるかしら?」

京太郎「す、すみません、明日はバイトが……」

久「じゃあ明後日」

京太郎「あ、明後日は、その……わかりました」

久「じゃあね……頼りにしてるわよ……『京ちゃん』♪」


それで電話は切れた。いつもの久さんだった。

だから逆に不気味だった。向こうは俺が親に相談して話を進めているものだと信じているのだろうか。

それとも信じてすらいないで、俺を絡め取ろうとしているのだろうか。

京太郎「……明後日か。腹ァ、くくらないと」

京太郎「でも……まだ産む気なんて……あったのかよぉ……はぁ……」

京太郎(そういえばその話、全然してなかった……お互い逃げてたんだ)

京太郎(明後日、決めよう。もう、全てはっきりと打ち明けよう)

京太郎(久の夢のため、そして俺達の人生のため……今回は堕ろす……それしかないって……伝えなきゃ)


~~翌日の夜~~

色々なことで頭がいっぱいだが、とりあえず食うために働かなくちゃいけない。

親は無理して俺を東京の大学へ送ってくれた。学費と、毎月僅かばかりの仕送りを貰っているけれど、それだけじゃ生きていけるワケがない。

幸い、高校生の頃にハギヨシさんに教わったスキルで今の仕事も上手く行っている。

俺は、都内の三つ星レストランでウェイターの仕事をやっている。

これが案外割がいい。お姉さん方からチップもたくさん頂ける。

純「須賀、オメー最近疲れてねーか?」

京太郎「いいえ、大丈夫っす。ただちょっとテストの勉強が忙しくって」

純「そういうキャラじゃねーだろ?アッチの方が乾く暇ねーんじゃねーの?」

京太郎「嫌だな、純さん」

バックヤードで軽口を叩き合う井上さんは俺の1つ上の先輩で、同郷、しかも龍門渕の麻雀部だった。世間は案外狭いものだと感心させられたものだ。

純「おい、お姫様が来たみたいだぞ?」

京太郎「いや、お姫様って……俺よりずっと年上ですよ」

……

咏「よぅ、近くに用があってついでに邪魔しにきたぜ、京ちゃん」

彼女がやってくると、レストランに若干の緊張が走る。三尋木咏はそういう女だ。

京太郎「ありがとうございます……」

俺は彼女のグラスにワインを注ぐ。彼女の相手は俺の仕事だ。そのために俺は雇われているといっても、最近では過言ではないかもしれない。

三尋木咏……表の麻雀プロとして知らない人はいないであろう高嶺の存在、そしてこのレストランの重要な出資者らしい。

右も左も分からない頃、俺は彼女に見初められて……

咏「相変わらず似合ってるねぃ、そのカッコ」

京太郎「そ、そうですか?」

咏「あいかわらずウブそうなところも可愛いねぇ……仕事終わったら時間あるかい?給仕姿の京ちゃんもいいけど」

京太郎「……」

咏「ん?」

京太郎「はい、大丈夫っす」

咏「ふふっ、なんだいその間は?あとでゆーっくり聞かせてもらおうかねぇ……」


~~ちょっとリッチなホテルで~~

咏「はっ……はっ……んっ……」ギュッ

京太郎「んっ……熱いっす……咏さんの中」

咏「ふふっ……あっ……そこ」ビクンビクン

京太郎「んぐっ……はぁはぁ…はぁ……」ドピュー


京太郎「あれ?タバコ変えました?」

いつもより甘ったるい匂いの煙草を彼女は吸っていた。

咏「ああ、これ。ちょっとねぇ……それよりさ、京ちゃん、やるじゃん」

京太郎「え?何っすか?」

俺は内心ドキッとした。彼女が久さんとの事を知っているはずはないだろうが……

咏「えーい、惚けちゃってぇ」ツンツン

京太郎「ほ、本当に何のコトっすか?」


咏「いやー、京ちゃんも男になったねぇ、知らんけど」

京太郎「いや、ホントに……」

咏「自分の女を日本代表にするために、抱いたんだろ?小鍛治さんを」

京太郎「へ?小鍛治さんって……小鍛治プロっすか」

咏「あれ?違うの?」

京太郎「いや、小鍛治さんなんてテレビで見たことしかないっす」

咏「……じゃあなんでもないわ」シラー

京太郎「ちょっと!詳しく教えて下さいよ!久さんのことですか!?」


咏「いやっ……んっ……実はねっ……」

咏「最近までっ……京ちゃんの大学からはっ……んっ……福路美穂子って決まってたんだけどねっ……」

咏「大学の力関係でっ……7大学から必ず一人までってのはっ……規定事項なんだけどさ」

咏「突然さっ……5日前にっ……内定連絡直前にっ……あっ……小鍛治さんの筋からっ……代表をっ……」

咏「東京帝国大学のっ……代表選考をっ……福路美穂子からぁ……竹井久に変更しろってぇ!」

咏「圧力かかってっ……土壇場で変えたって訳っ……私はてっきり京ちゃんが」

咏「竹井ちゃんを……大学麻雀選手の夢をっ……叶えるためにっ……あぁ!!」

咏「あっ……ちょっと、京ちゃ、激しっ……駄目、駄目ぇちょっと、落ち着てっ……」

咏「あぁぁ……」クター

京太郎(……どういうことだ?小鍛治さんなんて縁もゆかりもないぞ?)


咏「京ちゃん、ちょっと激しすぎだぜ……竹井ちゃんの名前出した途端……」

京太郎「で、なんで小鍛治さんなんすか?」

咏「さあ?それは知らんし……アッチの方はちょっと闇が濃すぎて、ウチもノータッチだねぃ」

咏(あわよくば京ちゃんから足がかりを掴みたかったんだけどねぇ……うーん……)

咏「でも、最近京ちゃん疲れてね?どうしたんだぃ?」

京太郎「……そう見えますか?」

咏「ちょっとらしくないよ」

京太郎「実は……」

俺は咏さんに久さんとの事を全部打ち明けた。疲れていたんだと、思う。誰かに話して楽になりたかったんだと思う。

咏「下衆だねぇ、京ちゃん……付き合ったばかりの彼女を孕ませるなんてねぇ……」

咏さんは、妖しく笑っていた。


咏「カッカッカ……で、ずっとウジウジ悩んでたって訳か」

京太郎「その言い方は酷いっすよぉ」

咏「ウチは堕ろすしかないと思うけどねぇ……竹井ちゃんはどう考えてるんだい?」

京太郎「いや、内定ゲットしたって喜んでたんで、つい久さんも同じ考えだと思ってたんですが」

京太郎「実は産むかもみたいな感じで、まだ返事してないみたいなんっすよ」

咏「でも妊婦さんに世界戦は重すぎるし、色々やっかみも入るだろ、知らんけど」

京太郎「今……決断すれば……間に合いますかね?」

咏「それは知らんけど……とりあえず、堕ろして代表受けるなら、連絡くれよ」

咏「もう病院行っちゃったんだろ?そこのスタッフの口止めとマスコミ対策位はなんとか出来るよ」

そう言って咏さんは深く煙を吐いた。

京太郎「ありがとうございます……」

俺は頭を深々と下げた。

咏「で、他に力になれる事はないかい?京ちゃんの頼みなら……」

京太郎「……」ゴクリ、

①内々に堕ろせる手段を紹介して欲しいんですが
②いえ、もう大丈夫です。後は自分たちで頑張ってみます。ありがとうございます。

↓1

京太郎「実は……内々に堕ろせる手段を……探しているんです」

咏「どういうことだい?」

京太郎「……その、もし彼女が絶対産む!みたいな感じで駄々をコネても……有無を言わせず堕ろせるっていうか」

咏「……そうか」

京太郎「あの、すみません、そんな都合のいい手段、ないっすよね」

咏「……頭に浮かんでいるから私に聞いたんだろ?」

京太郎「……」

咏「〈ミフェプリストン〉とそれに類似する薬剤。今日では極めて入手が困難な薬だけどさ……妊娠初期なら内服で堕ろせる薬だ」

咏「京ちゃんはそれをこっそり盛るつもりだろ?彼女に」

京太郎「……はい」

咏「で、それを手に入れる闇のルートを紹介して欲しいって訳か」

京太郎「はい。差し出がましいお願いですが」


咏「別に私はソッチの方に詳しい訳じゃないんだけどねぇ」

咏「……金曜日の午後3時以降に、この住所にある病院に言って相談してみるといい」

俺は咏さんから、都内の住所が書かれた名詞を貰った。

京太郎「ありがとうございます。恩に切ります」

咏「いいんだよ、京ちゃん」

京太郎「じゃあ、明日も早いんで」

咏「じゃあねぇ~」

俺は服に着替えてそそくさとホテルを後にした。


咏「ひとつ人の道を踏み外したねぇ、京ちゃん」

咏「もう二度と会うこともないだろう。達者でな」


フィクションです、すみません、Wikiで調べて薬の名前出したのは間違いでした。
申し訳ありません。ドラッグXとしておいて下さい。
とりあえず明日また続きを書きます


京太郎「おじゃましまーす」

久「いらっしゃい」

部長は大学や協会から金を貰っているのか知らないけれど、オートロック付きの中々いいマンションで一人暮らしをしている。

前に俺が親に相談するから任せて下さいと言ってから、少し明るくなったみたいだ。

久「ご飯、食べてきたの?」

京太郎「はい。食堂でついでに」

久「コーヒーでも淹れる?」

京太郎「お願いします」


机の上に、付箋が何枚も貼られた資料の束が置いてあって、俺は嫌なプレッシャーを感じていた。

少し麻雀部の話をした後、本題を切り込んできたのは久さんだった。

久「でね……ご両親の方……どうだった?」

京太郎「じ、実はですね……」

京太郎「ウチもあまり裕福じゃなくて、これ以上心配かけたらお袋は倒れちゃいそうだし、親の宗教が、その、堕ろすのに……ちょっと厳し目ので……その……」

久「……」

京太郎「あ、嫌、俺はその神様別に信じてないんで、俺は大丈夫なんですが」

久「……つまり、相談してないのね?」

京太郎「……はい」


少し間をおいて、彼女は小さく息を吐くと精一杯の笑顔でこういった。

久「いいのよ。……辛い役目を押し付けちゃってごめんね」

京太郎(折込済みって訳だよなぁ……なんたってアノ部長だ)

久「で、今日はそんなことよりも、あなたの考えを聞かせて欲しいの」

京太郎「……」

久「……やっと聞けるわ。前に、京太郎くんが、私を見捨てないで抱きしめてくれるまで……ずっと怖くて聞けなかった」

久「教えて?あなたの考えを」

①「今回は堕ろしましょう」
②「俺は久さんの考えを尊重したい」

↓1


京太郎(俺の答えは決まってる)

京太郎(産むという選択肢はまずありえない。久さんも伝統と栄光の帝大麻雀部を追われることになるだろうし、俺なんか福路さんとかに殺されかねねぇ)

京太郎(……駄々をコネても、それに対する次善の策は用意できそうだ)

京太郎(自然に今回は運がなかったと、久さんに気付かれずにやるしかない)

京太郎(俺が罪を被ってでも、彼女を……救ってやるしかねぇ)


京太郎「……俺は、久さんの考えを尊重したい」

久「……」

京太郎「どっちにしても、体を痛めるのは久さんだ。俺は、あなたの決定に全力で尽くす。そういう覚悟だ」

久さんの目が、少し泳いだ。

久「そ、そう……ありがと」


久「嬉しいわ、アナタがそういう考えで居てくれて」

京太郎「久さんの考えを……聞かせて欲しい」

久「実はね、ずっと言いたくて言えなかったことがあるの」

久さんは携帯電話を取り出して、どこかに電話をかける。

久『あー、靖子?例の件だけど、ごめんなさい。正式にお断りすることにしましたから。明日、協会の係の人に連絡するわ』

京太郎「……へ?」

久『なんで?なんでって……多分……麻雀より大事な用が出来ちゃったから』

久『どうせ、美穂子で大丈夫なんでしょ?なんで”突然”、私にお鉢が回ってきたのか知らないけど』

久『まあ、私より実績も実力もある美穂子を差し置いて選ばれるのはそもそも目覚めが悪いと思ってたし』

久『色々相談に乗ってくれて、ありがとう、うん』ピッ


久「ふぅー……何か吹っ切れちゃった……大学入った頃からの夢だったけど」

京太郎「あ、あの……久さんが……その、麻雀は……いや、キャリアが……え?え……」

久「私、産みたいの」


京太郎(いや、まだ大丈夫だ……咏さんに聞いておいて良かった……まだチャンスは……俺の人生は終わりじゃねぇ……)

京太郎「そ、そっか。でも、大学の方は……どうする?」

久「うーん、少なくとも麻雀部には居られないわねぇ……麻雀関連でずいぶんお金も貰ったし、みんなを裏切ることになるけど」

久「この部屋ももう引き払うわ。月20万もするし」

京太郎(ゲッ……そうだよなぁ、山手線の側だしなぁ……)

久「でね、住むところなんだけど……あなたの部屋に引っ越そうかと思うの」

京太郎「は、はぁ……ってええ!?ウチ、狭いっすよ!?」

久「別にいいわよ、狭くて汚くても。でもタバコはやめてよね」

久「でも産みたいんだけど、現実的にお金とか、その後の仕事とか、色々厳しいのよね」

京太郎「ふ、藤田プロに……その」

久「靖子?あの人とは友達続けたいと思ってるけど、麻雀部も協会も全部裏切ってしまう訳だから」

久「もうソッチの仕事にもつけないわ……うーん、どうしよっかしら」


それから机の上にあった資料を見せられながら、空が白むまで俺は久さんに人生設計の話を聞かされていた。

俺はただ、ただ頷くだけで、頭を空っぽにしながら話を聞いていた。

そんな頼りない俺を、久さんは叱るでもなく、心配そうに体を擦ってくれた。

でも、俺は一つだけ約束を取り付けた。

京太郎「なぁ……その、麻雀部の方だけどさ」

京太郎「今すぐ辞めるってのはやめてくれ。あと、にっ妊娠してるってことも……もう少し秘密にしよう」

久「え?なんで?どうせお腹出てきたら、バレるわよ」

京太郎「もう少し待ってくれ……絶対、親に相談して、お金の工面とか頑張るから……親に土下座してでも、大学辞めてでも……なんとか工面するから……」

京太郎「それが決まるまで、大事な決定を、しないで欲しい」

久「……」

京太郎「頼むっ……これくらい、俺を……信じてくれっ……」

久「……わかったわ。でも待てるのは妊娠12週くらいまでよ……あと1ヶ月くらいで……お腹もどんどん出てくるらしいし」


京太郎(あと1ヶ月……それまでに……内々に終わらせるしかねぇ……よな)


俺は一人でトボトボと始発で自宅に帰った。

布団に横たわり、すぐに咲に電話をかけてみた。

咲「むにゃむにゃ……おはよ、京ちゃん」

京太郎「咲、今大丈夫か?」

咲「電話なら大丈夫だけど……今マカオにいるからちょっとすぐには会いに行けないよ……ふぁぁ……こっちままだ太陽出てない……」

京太郎「電話でいいから、相談に乗ってくれ。実は……」


咲「え!?部長、産みたいって!?」

咲は心底ビックリしたような声を出した。

咲「先輩はもっと賢いと思ってたんだけどなぁ……じゃあ、代表の方は?」

咲「えぇ……辞退するんだ……前途洋々の船出が、一転難破寸前だねぇ……京ちゃんも罪な男だよ」

咲「うん、それで、三尋木プロに紹介してもらったルートで、うん……それ、大丈夫なの?」

咲「今週末すぐに行く……うん、ホントにそんな便利な薬、売ってくれるの?ヤバイお医者さんに決まってるよぉ……」

咲「多分、モグリだろうし、薬の副作用も……あ、飲むのは京ちゃんじゃないよね」

咲「どっちにしてもお金がいると思うよぅ……大変だねぇ、京ちゃんも」

咲「あ、あとさ、私の知り合いに耳年増のバアサンがいるんだけど、その人にね、その話それとなく話したらさ」

咲「あの人、外出しで妊娠する確率に妙に詳しくってね……うん、うん」

咲「医学的には1回だけなら乗ってた飛行機が落ちるくらいの確率らしいよ。京ちゃんの話がホントならだけど」

咲「巷の外出しで妊娠した~ってのは、大体実は中で出しちゃってるんだって。みんな言い訳、したいよね。特に男の方はさ。女は気づいてると思うけどぉ」

咲「まあ、眉唾な話だから、信じる信じないは京ちゃんの自由だけど」


咲は最後に意味深な話をして、電話を切った。

俺はただただ、疲れていて、そのまま深い眠りに入ってしまった。

続きは夕方か夜に書きます

再見!


京太郎(ここ、だよな……)

咏さんに貰った名刺に書かれていた住所と、スマホの地図での現在地とを何度も見比べた。

築数十年であろう、古い鉄筋コンクリートの雑居ビル。

京太郎(大きな看板くらい出せよ…)

エレベータの前に小さく各階の看板が出ていて、目的とする『赤阪メンタルクリニック』は3階だった。


「どういったご用件で」カタカタ

京太郎「あっ、あの……Eコースでお願いします」

「そこを左に曲がって、扉があるんで、その奥で待ってて下さい」カタカタ

京太郎(受付嬢からして何かヤベー……)


赤阪「ようこそ。お医者の赤阪です」

京太郎(関西の人か?結構美人……意外)

京太郎「あ、ある人に紹介されて来ました、片岡です」

赤阪「……今日はどうされましたか?」

京太郎「あ、あの、実は……」

俺はここに来た目的を話した。


赤阪「ほーん、で、堕ろしたい、と」

京太郎「はい。向こうは産むつもりなみたいなんで、こう、気付かれないように……今回は残念だったって事に……」

赤阪「ええ薬がありますね」

京太郎「ほ、ホントですか!?」

赤阪「数種類の生薬を調合して低容量の屍を混ぜた油薬をカレーに混ぜて食べさせれば、気付かれないで堕ろせますね」

京太郎(何か胡散臭いな……俺がネットで調べた中絶薬じゃなくて、この人が作るのか??)


京太郎「ち、ちなみにおいくらですか?」

赤阪「300万円になりますね」

京太郎「えっ!ちょっとそれはぼり過ぎじゃないですか!そんなにお金あったらみんな幸せになってますよ!」

赤阪「……」ニコニコ

京太郎「あの……もう少し安く……出来ませんかね?」

赤阪「……」ニコニコ

京太郎「お願いします!」

赤阪「ウチはヤオヤやないでぇ~ボケはひな壇の上だけにしとかなアカンで~」ボソボソ

京太郎(300万、か……ローンで行けるか?クソッ、足元見てきてんな……)

京太郎「いや、そんなに高いなら他のトコ行きます……ネットで頑張れば、密輸入出来るかもしれないし」

赤阪「……ウチではお腹の中の子の値段は一律300万円で請け負っとります~~文句あるんなら回れ右でお帰りや~~」

京太郎「ああ、帰るよ、このボッタクリが!」バタン

赤阪「世の中ナメとるガキにはつける薬はあらへんな~~」


京太郎「クソッ……あてが外れた……」



久「それじゃあ、福路美穂子の、世界での活躍を祈念して……カンパーイ!」

一同「カンパーイ!!」

今日の夜は、俺達の大学の麻雀部から大学世界選手権の代表選抜に選ばれた福路さんの壮行会だった。

1年生の俺は端っこで、環の中心にいる福路さんと、久さんを遠巻きに眺めている。

清澄高校と違って、大所帯の大学麻雀部。久さんはそこでも頂点に登りつめた。

俺はただのマネージャーだ。

京太郎(入って最初の頃は部活もすっごい充実していたんだけどなぁ……)

夏頃、久さんが部長になって、俺と付き合いだしてから、周囲の俺に対する目は変わった。

マネージャーの男たちからは距離を取られ、それまで親しくしてくれた先輩や同級生も、俺から離れていった。

次第に、部内での俺の立場は、腫れ物を触るような扱いになっていった。

50人近くが集まった大きな居酒屋の一室は、大学生の飲み会らしい盛り上がりを見せていた。

俺は、そこに居場所がなかった。だから、一人でボーっと、周りを見て、色々な思いを馳せていた。


清澄高校の頃は、何もかもが充実していた。

俺は完全に3年間、裏方だったけれど、みんな良い奴ばかりで、勝っても負けても一緒に喜び、悲しむことが出来た。

でも今は、どうでもいい。単に割り当てられた仕事をこなしているだけだ。

俺は席を立って、居酒屋の外の灰皿の前で煙草吸っていた。

京太郎「もう9週目、だよな……やばい……絶対に……どうしよう……」

このまま逃げ出そうかという考えが、頭の中に浮かぶようになってきた。

「あれ、京太郎君……」

京太郎「ああ、成ちゃんか」

お手洗いから出て、廊下から外で煙草を吸っている俺の姿が見えたのだろうか。

俺は慌てて煙草の火を消した。


成香「どうしていなくなったのかって、みんな心配してましたよ?」

京太郎「いや、そんなこと……そっか、心配してくれてありがとな」

成ちゃんは何故か俺との接し方を変えずに居てくれた唯一の麻雀部員だった。

最初の頃は、色々ドジを踏む彼女を、同じ一年生という立場から色々話を聞いてアドバイスしたりしていた。

そういう関係だった。

まだまだレギュラーには遠いけれども、最近は期待の新人として注目を浴びている一人にまで成長していた。

そんな彼女が俺と話すだけでも不利益になりやしないかと、最近では俺の方から彼女を避けていた。

成香「それにしても美穂子先輩、カッコいいですね!日本代表ですか……素敵です」

京太郎「成ちゃんも2年後はそうなってるかもよ?」

成香「そんな訳ないじゃないですか……」テレッ

……外で俺達は久しぶりに話し込んだ。嫌なことを全部忘れて、本当に楽しい時間だと思った。


成香「あはは……あっ……京太郎君、そろそろ戻りましょう?」

京太郎(あの中に戻ったら、また……クソッ……この子とこのままどっかに行ければ……)

京太郎「あっ……成ちゃん」

成香「何ですか?」キョトン

俺は……

①「相談したいことがあるんだ」(ゾロ目で成ちゃんお持ち帰り)
②「……なんでもない、戻ろっか」

↓1


京太郎「……相談したいことがあるんだ」ギュッ

俺は成香の小さな手を握った。

成香「えっ……」

京太郎「俺を……助けてくれ……」

成香「ど、どうしたんですか?京太郎君?どこか調子でも悪いんですか?」ドギマギ

京太郎「……いや、そうじゃない……俺は……」


誓子「コラコラ」

成香「あっ、ちかちゃん」

誓子「戻るよ、成香」

成香「で、でも京太郎くんが……」

誓子「……私が相談に乗っとくから、先に戻ること!美穂子が呼んでたよ、成香のこと。先輩命令だから」

成香「は、はい……」チラッチラッ

京太郎「……」


京太郎「絵森さん……」

誓子「少し前から見てたわ」

京太郎「覗き見とは趣味が悪いっすね」ボソ

誓子「あなたには竹井さんがいるでしょ?」

京太郎「……俺はただ、成ちゃんに話を聞いて欲しかっただけで」

誓子「その成ちゃんって呼ぶの辞めてくれるかしら?彼女、純真だから、あなたのこと何も分かってないのよ」

京太郎「……すみません」

誓子「はっきり伝えておきます。成香に手ェ出したら殺すぞクズ野郎」

京太郎「……すみません」

誓子「ハッタリじゃないわよ?伝えたわ……文句あるなら竹井さんにでも泣きつくことね。

でも、こればっかりはどんなことになっても本気でやるから」


絵森さんは路上にぶちまけられた吐瀉物でも見るかのように、うなだれる俺を一瞥して宴会場に帰っていった。

俺は……

コンマ
01~50 「勃起していた」
51-98 「気まずすぎる……今日はもう帰ろう……」
ゾロ目 「犯す……あのクソアマ……」

↓1


京太郎(絵森さん、麻雀そんなに強くないけど、妙に人望あるんだよなぁ……)

京太郎(……はぁ……クズ野郎って言われちまった……)シナー

京太郎(……やっぱそうだよなぁ……なんでこんな事になったんだろ……)

京太郎「はぁ……今日はもう帰ろう……」

とりあえず、席に戻り、一次会が終わるのを見届けてこっそり抜けだして俺は家に帰った。

京太郎(来週、部長がこの部屋泊まりに来るって言ってたな……ちょっと掃除しないと……特に咲が変なもの置いってないか心配だぜ)

京太郎(あっ、咲に合鍵返してもらわないと……アイツ、夏頃ここをホテル代わりに使ってたからな……)


今日はここまでにしておきます

ちかちゃんは絵森(えもり)じゃなくて桧森(ひもり)だよー
字面が似すぎてて違和感なかったけど

久「へー……男の子の部屋ってこういう感じなんだ」

下見、という名目で久さんが俺の部屋にやってきた。

万年床と、その周りに数冊の雑誌、足元にはゴミ袋、小さなちゃぶ台が勉強机兼食卓。ビールの空いた缶を煙草の灰皿代わりにして、貯まったら捨てる。

久「ちょっと色々見せてよ……」

玄関から丸見えのキッチン、トイレが脇にある風呂場(それも一人が体を丸めてやっと入れるヤツなのでもっぱらシャワー用)

小さな冷蔵庫、冬なのに置きっぱなしの扇風機、脱ぎっぱなしのパンツやTシャツ……

何もかもが久さんには珍しいのだろうか。

久「ふふっ……もし、私が和とかだったら卒倒してるわね」

京太郎「本当に大丈夫っすか?」

久「高校の頃も、小汚い団地にママと二人っきりだったからね……帰ってきた気がするわ……」

京太郎「……とりあえず飯、作ります」


冷凍ご飯を解凍して、もやしと肉を炒めたものを作った。

京太郎「こんなモンですが……」

久「あれ?須賀くん、料理得意よね?ウチでも何度もお洒落なの作ってくれたじゃない?」

京太郎「いいんですよ、ここではこれが一番美味しんです」

久「そうね」クスッ

久「じゃあ、頂きます」

久さんは少し料理に口を付けて、箸を止めてしまった。

京太郎「モグモグ……あれ、やっぱ舌に合わないっすか?」

久「……ごめんね、そういうワケじゃないんだけど、ちょっとご飯生臭くって……それに油の匂いが」

京太郎「もしかして……」

久「うん、実は先週辺りからつわりって奴で……本とか読むに私は軽い方っぽいんだけど」

京太郎(飲み会とかでもお酒にも食べ物にも何も手を付けてなかったのって、それか……)


久「まあ、もう少しの辛抱よ」

京太郎「何なら食べれそうっすか?」

久「そうね、みずみずしい果物とか、薄味のクラッカーなら……いつも少しなら喉を通るわね……」

京太郎「そんなのウチにないっすね……じゃあ今から買ってくるんで、ちょっと休んでて下さい」

久「うん……ありがと」


近くのコンビニ

京太郎(クラッカーはあったけど果物はバナナしかなかった……チクショウ、少し離れたスーパーに行くかっ)

京太郎(ちょっと遅れるって連絡しないと……あっ……携帯忘れた……まあいっか)

京太郎(全力で走れば10分くらい遅れるだけさ!)


京太郎「ただいま、ちょっと遅くなりました……グレープフルーツとリンゴとクラッカー、買って来ましたよ」

久「うわぁ!美味しそうっ!……寒かったでしょ、ほら、手、温めてあげる」

京太郎「あざっす……大丈夫ですよ、グレープフルーツとリンゴどっちがいいですか?」

久「じゃあグレープフルーツもらおっかしら」

京太郎「少し待ってて下さい、切って盛りつけますから……」

キッチンでグレープフルーツを切る俺を、久さんはじっと見つめていた。


京太郎「はい、お待たせしました」

久「じゃあ頂きます……んっ、おいし~」モグモグ

京太郎「はぁ、良かったです」

久「あれ、あなたの分がないじゃない」

京太郎「いや、俺は別に……」

久「ほら、あーん」

京太郎「え?」

久「あーん」

部長は大きく口を空けた。俺も釣られて開けたら、グレープフルーツをポンっと入れられた。

京太郎「んぐっ……なんか、付き合いたての頃みたいっすね」

久「……ほら、私にも食べさせて」

京太郎「……恥ずかしいな……はい、あーん」


久「ねえ、この部屋、テレビとかないの?」

京太郎「ええ。NHKが来ても堂々とありませんって言ってますよ。いつ連中にガサ入れされても大丈夫っす」

久「ふーん……」ニヤニヤ

京太郎「な、なんっすか」

久「あなた、何か私に隠してなーい?」

京太郎「……はて?」

久「さっき、あなたが買い物に行ってる間に、ね?」

京太郎「ま、まさか……」

久「布団の下から見つけちゃいました―!なになに、『瑞原はやり、28歳、夏~牌のお姉さんの記録~』って、あなたずいぶん昔の写真集ねぇ」

京太郎「実家から持ってきた俺の高校時代からの相棒なんです……それだけは勘弁して下さい……他のは全部捨てましたから……!」

久「プッ……他にもたくさん持ってたんだ……ふーん……」ニヤニヤ

京太郎「あっ、いや、その……」

久「まあ、いいわ。何か可愛くって、怒る気も失せちゃった」

京太郎「た、助かったぁ~」

久「でもアナタ、最近コッチの方はどうしてるの?」

そう言いながら、彼女は俺にもたれかかってきた。


京太郎「あっ、いや、その……」

久「若いんだから……大変でしょ?自分で……するの」スリスリ

京太郎「……」ゴクリ

もう久さんとは3週間近くご無沙汰だった。

京太郎「だ、大丈夫なんですか……?その……」

久「アッチの方はもうちょっと待って。でも、コッチでなら」

久さんは口を大きく開いて、手でジェスチャーした。

京太郎「ああ、じゃあ……」

京太郎(久さん苦手だと思ってたけど……)


久さんが俺のパンツを下ろしてくれる。俺のソレはすでにギンギンに硬くなっていた。

久「アナタは動かなくていいから……そこにもたれ掛かってて」

布団の上であぐらをかき、壁に背を付けて、俺は彼女に任せる事にした。

久「元気ねぇ……」チュッ

怒張して天井を向くソレにくちづけして、彼女は舐め回してくれた。

俺の股ぐらに、顔をうずめ、おしりを突き出して四つん這いになりながら、あの部長がご奉仕してくれる姿はあまりにも刺激的だった。

久「ンチュッ……ンッ……ハァ……」

京太郎(テクニックじゃねぇ!すげーわ、部長……何か、もう……)

京太郎「ああっ……いいっすね……もうちょっと下の方もお願いします」

久「ふぁい……ングッ……」ジュッポジュッポ

京太郎(ゼッテーこの時期に妊娠しなかったら、こんな事してくれなかったよ、この人)

久「ジュッポジュッポ……プハッ……ねえ、他に希望ない?」

顔を真赤にしながら上目使いで俺に媚びる部長。

京太郎(どういう結果になっても一人で責任をとる覚悟がないから、俺に頼るしかないんだ、この人は。根っこでは、一人ぼっちで産むことも堕ろすことも選択できない臆病な人)

京太郎「続けて」


久「はいっ……ンチュッ……」

京太郎「もっと舌、動かして下さい」

久「ンッ……ンッ…ンッ…」

京太郎(いつも自信に満ち溢れて、みんなの中心で、表舞台でもスポットライト浴び続けた部長も)

久「アンッ……ンンッ……」ジュッポジュッポ

京太郎(もう終わりだなぁ……俺みたいなクズ野郎と一緒に沈んでくんだ)

久「ンッ……クッ……ンッ……」ジュプジュプ

京太郎(ああ、顎疲れてきてんだな……)

京太郎「ちょっと動き遅くなってきてますよ、やる気あるんっすか?」

久「プハッ……はあ……はあ……ごめんなさいっ……ンンッ……」ジュッポジュッポ

京太郎(俺も打つ手なしだ。300万円なんて逆立ちしても……かと言って、ここまで来たら堕ろして下さいってお願いしたら)

久「ンンッ……ンンッ……」ジュッポジュッポ

京太郎(俺はこの人に一生負い目感じて生きなくちゃいけねぇ)

よしなんだかんだ幸せなキスをして終了しそうだな!


久「ヤッ……ンッ……」レロレロ

京太郎「うっ……(玉舐めやばっ……)」

久「ンッ…ンッ…」レロレロ

京太郎(早くイキなさいって目で見るなよ……もうここまで来たらどっちが破滅のギリギリ手前でブレーキを踏むかの勝負だ)

京太郎「キンタマばっかり舐めてないで、竿のほうお願いしますよぉ」

久「ハイっ……ングッ……」

京太郎(この人も絶対ハナからそのつもりで俺に産みたいみたいな事言ったに違いねぇ!それで俺をこのチキンレースから降ろそうとしてきたんだ……ッ!)

久「ンッ……ンンッ……」ジュッポジュッポ

京太郎(貧困の中から這い上がるために、この人がどんな努力をしてきたのか、俺が一番知っている)

久「ンンッ……ンンーッ……」チュプ……チュプ……

京太郎(だからこんなことでまた、華やかな舞台の上から降りたくないだろ?知ってしまったらもう次は耐えられないさ、あの貧しさは……)


久「ンッ……プハァッ……ハァ……ハァ……」

京太郎「……」ニヤニヤ

久「んっ、ごめんなさい」

京太郎「まあ今までフェラなんてほとんどしてくれなかったですから、仕方ないっすよね。」

久「いえ、大丈夫よ……ンッ……ンンーッ」ジュポポッポポ

京太郎(だから俺の取る一手はこうだ。産むなら俺の子を産んでいい。もう部長と心中だ。部長が産みたくないですって俺に懇願するまで折れねーぞ)

京太郎(ただ1つ分かっている……俺はこの人を愛しているんだ。だから、この人が堕ろすというなら、俺はその後の彼女を全力で支える。それは決めた)

京太郎(なあ、お前も十分苦しんでたんだろ?もういいだろ……堕ろした後、二人でのんびり海外でもいこう。まだ俺達はやり直せる、まだ俺達には希望も未来もある)

京太郎(でも、もし子供が……部長が本気だったら……俺は多分……耐えられる自信がない)

京太郎(だから……折れてくれっ……頼むっ……久っ……)


久「プハッ……もうヤダァ……」

京太郎「ほら、泣き言言ってないで、続けて下さい……」

久「はーッ……はーッ……はいっ……ングッ……」

京太郎(期限の12週まであと2週間……そろそろお腹が出てきて周りに隠せなくなるだろう……そうしたら絶対この人は折れる……)

京太郎(それまで心を鬼にするしかねぇ……そして、堕ろしたいですって言わせて)

京太郎(300万円、コイツに出させてやるっ……)

久「……」

そろそろ0時だ。(俺もイキそうだし)フェラは勘弁してやるか、と思った時だった。

コンマ偶数:携帯電話が鳴った
コンマ奇数:部屋のチャイムが鳴った

↓1

なんかカイジっぽさが

プルルル!プルルル!

京太郎「うぉん!」ドピュッドクドクドク

突然、俺の携帯電話が鳴った。驚いて久さんの口の出してしまって、彼女はそれを口でしっかりと受け止めていた。

京太郎(で、電話!?この時間に!?俺は友達が少ないし、だ、誰だ?)

久「あーっ……ングッ……ゴクッ……ちょっと、電話鳴ってるわよ……あーっ……取ってきてあげる」

彼女が机の上の携帯電話の方へ向かう。

京太郎「ちょ、ちょっと……」

俺は腰砕けで立ち上がることすら出来なかった。

京太郎(いや、マジで誰だ?咲や咏さんとかには、ここに置いてない携帯で連絡とって……)

久「あら?懐かしい名前ねぇ……」

京太郎「だ、誰っすか?」

久「咲よ、咲。宮永咲。いやー、ホント懐かしいわぁ……私は、もう3年も会ってないわね。あなたは連絡取り合ってるの?」

京太郎「え……」

久「ね、出ていいかしら?私が代わりに……咲と久しぶりにお話したいし」


続きは後日

~~番外編~~

世界麻雀連合主催 学生麻雀世界大会

――国内ではインターハイに並び人気があり、世界中の麻雀道を志す学生が出場を夢見る大きな大会である

爽「って、そういう設定なのね」

国内では慣例的に7つある帝国大学の麻雀部から1人づつ、そして他の大学・高校の中から一番優れた人材を1人選抜して計8人で毎年挑む

哩「ひぃ、ふぅ、みぃ……でも一人おらんとね」

出場資格は学生であることと、賞金がかかったプロの大会への出場経験がないこと

シロ「記者会見に遅刻とか……はぁ……ダルいヤツ……」

優勝賞金ゼロ。ただ純粋に名誉を賭けて、そして各国とも国家の威信を賭けて挑む。

マホ「緊張します……マホ、まだ高校生だし……この中で一番若いから」ボソッ

出場するだけで栄誉と言われる大きな大会

セーラ「あざといんじゃボケェ!こん中で一番メディア出てるのアンタやろ。なあ、主将はん」

高校生の出場は過去にも数件例がある。小鍛治健夜、戒能良子、宮永照……高校卒業後そのままプロに入り、ビッグタイトルをとる怪物たち。

洋榎「おお!調子乗るんやないでケツの青いガキンチョが(しかし、なんや、きな臭いみたいやな、この大会……久が内定貰ったと聞いとったけど)」

記者会見でのお披露目前の控室で選手たちの顔見せが行われる。歴代の多くが、過去のインターハイで活躍した名選手となる。


美穂子「ああ、みなさん、喧嘩はやめてください……」オロオロ

卒業後そのままプロに入った宮永照をはじめ、資格のないものが呼ばれなかったものの、歴代最高クラスのメンバーと評される今年の日本代表。

トシ「さあ、ほら、そろそろ始まるよ……記者さんに変なこと聞かれても、余計な事は言わないこと……わかったかい?」

セーラ「センセー……名古屋の代表がきとりませーん」

洋榎「ちと後でシメとかなアカンなぁ」

トシ「人形でも置いておくから大丈夫だよ、ほら、それ聞かれたら私が答えとくから」

トシ(同世代でトップクラスが欠けるのは例年のことだけど……これだけ揃えられたら負ける気はしないねぇ……)

トシ(ただ、東京と名古屋のゴタゴタが……リスクか……東京の方はとりあえず手打ちになったみたいだけど、名古屋の方は……)

トシ(今もこのホテルの最上階で出場権を賭けて……チッ、小鍛治のガキが……協定破って何になる……今年の名古屋代表はちょっと格落ちだが)

トシ(5人の団体戦だ……バックアップ程度でいいのにさ)

シロ「トシさん……」

トシ「ああ、悪いね、ちょっと考え事をしてた……じゃあ、行くか」

――求められるのは優勝――しかし日本代表の船出に暗雲が立ち込めていた

学生麻雀の頂点を決める大会の選手披露式――

トシ「北海道帝国大学、獅子原爽。東北帝国大学、小瀬川白望~~~~京都帝国大学、主将、愛宕洋榎~~」

~~大阪姫松高校体育館~~

絹「うわっ、おねーちゃんめっちゃピースしてる、恥ずかしいなぁ……」

のよー「でも洋榎らしいのよー」

漫「姫松の主将は、日本の主将にもなりましたね……」

のよー「慣例的に東京と京都で主将を持ち回っとるらしいのよーメンツも毎年7大学ばかりやし、日本じゃ権威主義満載の大会になってるのよーこんな半世紀前の慣習が残ってるのは異常やねー」

漫「はぁ……7大学からしか選抜されんのは、いけすかんですねぇ……他の大学からだって出たいのたくさんおるのに」

絹「あれ?名古屋の人、おらんやん……人気あるからってけしからんなぁ」

代行「……」ニコニコ


トシ「目標は優勝!優勝旗を我が国にもたらすことが絶対の使命であり……」

あのー、名古屋の佐々野が来てないんですがー

洋榎「おいおい、監督が話しとんのに遮るなやアホンダラ!」

いや、でもーー


後ろの席でこそこそ選手たちが話している。

爽「実際コイツらちゃちゃのん目当てだぜ。雑誌でも実力がない割に一番取り上げられてたし」ボソッ

マホ「いけ好かないですね―、あと獅子原さん、マホ、か弱い女子高生キャラで売ってるんでよろしくお願いしまーす」ボソッ

爽「爽でいいよ。……大手芸能事務所と組んで、大学内でも上が居たのに、政治家使ってねじ込んだってもっぱらの噂だけど」ボソッ

マホ「へぇ!マホもその事務所とタイアップしたいですぅ……爽さんもそういう話好きな人ですか」ボソッ

爽「ま、選ばれても格下相手にしか使わないだろうけど、盛り上がるんだろうな、マスコミは」

マホ「でもショージキ、ガチのスタメンは東京大阪京都九州マホで決まりじゃないですかねー、爽さん、そんな余裕でいられるんですか?」

爽「コイツはっきり言うねぇ……ホントに高校生か?って、何か裏方が騒がしいな」


黒服がトシさんに何か耳打ちする。

会場の記者たちは、「早く佐々野を呼べ」とざわついている。

トシ「皆さんにお知らせがあります。ただいま遅れている佐々野についてですが」

トシ「結論から言いますと、佐々野は来ません」

ふざけるなーっ!ちゃちゃのんを呼べ―!何のために集めたんだー!

トシ「……」

シロ(あっ、トシさん……キレる……)

トシ「少し黙れ、ゴミども」ボソッ

酷い暴言だ……これは問題ですなぁ……大丈夫かね、この代表……


西田記者「すみません、佐々野が来ないというのは、どういう意味でしょうか?」

トシ「……実は先刻までこのホテルの最上階で、世界大会の出場権を賭けて、麻雀を打っていたそうです」

西田記者「というと、まさか……」

トシ「麻雀協会の者が立ち会って、佐々野はイカサマなしの正当な戦いで敗れた事を確認済みです」

「どういうことですか!?どこの誰が佐々野を倒したんですか!?まさか大学内の内ゲバ!?ただ、1回代表内定者に勝てば出られるという前例を作るのは良くないですよ!」

トシ「……私が説明するより……顔を見れば、皆さん納得してくれるんじゃないかな」

爽「おっ……アイツは」

マホ「……」ブルッ

洋榎「……そういうことかい」ニヤッ

美穂子「まさか……」

記者会見の会場に遅れてやって来たのは――


記者会見の会場に遅れてやって来たのは――

トシ「今大会で、あの前時代的な協定はしまいだねぇ……日本代表に弱卒はいらんっ!必要なのは強者のみっ!これで役者は揃ったっ!」

トシ(なあ、これでいいんだろ、小鍛治)

小さなざわめきが、彼女の姿を認めたものから、順に大きな歓声へと変わっていく

西田「まさか……あの伝説から3年……全く足取りを掴めなかったけど……麻雀続けてたなんて

トシ「最後の代表は、長野県立長野麻雀大学麻雀部ッ!1年生ッ!」

トシ(まったく……突然いなくなって突然帰ってくる……不思議な血だ……見てるかい、宮永。どうやらアンタの形見はどうやらまだ……)


咲「やっ。また表舞台で頑張ります、宮永咲です」

西田「うおおおおおおっ!!!!」


帰ってきた!あのインハイの伝説の立役者、宮永咲が3年間の沈黙を破って帰ってきた!

~~番外編、終わり~~

>>159
ちかちゃんごめんなさい……
ご指摘ありがとうございます

続きは夜にでも書きます。

かわいい弟子がペット取られたって泣きついてきたからちょっと細工したとかそんなん

続き

久「……咲と久しぶりにお話したいし」

京太郎(なんで咲が俺の普通の携帯の方に……って、そっか、咏さんとかと違って、高校時代からの携帯だから……!)

京太郎「いや、それは、ちょっと渡して下さい」

プルルル!プルルル!

久「……はい、京ちゃん♪」

久さんは通話ボタンを押して俺に携帯を渡してきた。

京太郎(まさか……疑ってんのか?でも、咲はどうしたんだ……こっちにかけてくるなんてありえねぇだろ)

京太郎「あー、ごほん、もしもし、咲……か?久しぶりだな―!こんな夜遅くにどうした!?」

久さんは俺の肩にもたれ掛かって、俺の顔をじっと見てくる。汗がたらりと流れる。

咲『……あっ、京ちゃん、”久しぶり”なのに突然電話しちゃってごめんね……』

京太郎(よし、察してくれたみたいだな……)

京太郎「ごめん、ちょっと今取り込み中だからさ、後で……おんっ!?」

咲『ど、どうしたの?』

京太郎「いや、なんでもねー……な、何の用!?」


咲『あの、テレビ、見てくれた?8時からやってた記者会見……なんだけど』

京太郎「あ、記者会見?世界大会の代表の?み、見てないけど……」

久「……」

咲『じ、実はね、私、選ばれたんだ』

京太郎「は……はぁ―?お、お前、大学生だったっけ?』

咲『うん、実は、高卒の資格とってね、長野のちっちゃい大学の大学生やってるんだ』

京太郎(おいおい、嘘つけぇ―!お前が大学生っぽい事やってるの見たことないぞ!)

京太郎『そ、そうだったんだ、全然連絡なかったから死んだのかと思ってたぞ―あはは』

咲『でも、ウチの大学の麻雀部、実は一人しかいなくって……』

咲『あのね、京ちゃん、すっごい差し出がましいお願いになるんだけどね』

咲『……』

京太郎「なんだよ、咲」

咲『こんなこと頼める人、私にはもう京ちゃんしかいないし……うん、実は大会出場者は一人付き人を付けられるんだ』


咲『私と一緒に、麻雀、やって欲しい』

京太郎「……」

咲『京ちゃんが東京のすっごい有名な大学に入って、そこで頑張っているのも……噂で……聞いてるよ』

咲『その大学からも一人出場するから……京ちゃんが私の付き人になったら、多分ソッチには居られなくなるのかもしれない』

咲『でもっ……私は、京ちゃんが欲しい!』

京太郎(……なんでこっちの携帯で電話かけて来たんだろう……)

京太郎(都合のいい男と女の関係じゃなく、友人としてってことか……それとも……)

京太郎「……少し、考える時間を、くれ」

咲「……わかった。じゃあ……コッチの携帯で……待ってるよ、京ちゃん……アッチはもう捨てちゃったから……」

それで電話が切れた。


久「ねえ、何の話だったの?妙に真剣な顔だけど」

京太郎「ああ、あの咲が世界大会の代表に選ばれたって……」

久「えっ……」

京太郎「長野のちっちゃい大学で学生やってるらしい……」

久「そう……咲が……代表……」ガリガリ

久さんはみるみる青ざめて、震えていた。

久「で、何よ……考える時間って……」

京太郎「……一緒に世界大会に出て、支えてくれって頼まれて……アイツ、昔っから友達、居ないから」

久「ねえ……あなたは……」

京太郎「……高校の時、アイツを麻雀部に誘ったのは俺だった」

京太郎「……ちょっと外の空気吸ってくる……すまねぇ……」

ジャンバーを羽織って、俺は部屋を逃げるように出た。


京太郎(……こんな一流大学には入れたのは奇跡みたいなもんで、大所帯の麻雀部は実は俺、向いてなかった)

京太郎(こっちの麻雀部にはもう居場所がねーし……どっちにしても久さんが卒業したら辞めなきゃならねぇ)

京太郎(俺はなんで大学でも麻雀部に入ったんだ?……弱くて選手としての芽がないのはわかっていた)

京太郎(でも、麻雀をする女の子たちを、裏で支えて、彼女たちが輝くのを見て、一緒に喜べるのが、楽しかったんじゃねえのか?)

京太郎(部長はこんなことになって、麻雀を捨てちまった)

京太郎(どうすりゃいいんだ、俺……)


久「ねー、靖子……ちょっと調べて欲しい事があるんだけど、うん」


部屋に帰るとパジャマに着替えた部長がちょこんと座っていた。

京太郎「……ただいま」

久「ねえ……お願いがあるの」

京太郎「……何」

久「……咲の頼み、今すぐ断って」

京太郎「えっ……」

久「私のせいで、あなたが部活に居辛いの、わかってるわ。それをわかってて、気を回せなくて、本当にごめんなさい」

京太郎「そ、それはいいんですよ……逆に気を使われるだけですから、久さんが口出しても」

久「あなたには本当に、悪いこととしたわ……年下なのに、迷惑かけっぱなしで……」


京太郎「……」

久「……お願い、私、何でもするから、咲の頼みだけは、今すぐ断って」

京太郎「……」

久「麻雀だけじゃなくて、アナタまで取られたら、私、絶対生きてけない」

久「お願い……」


俺は……

①堕ろしてくれたら……考えておきます
②咲は俺の大切な友人です

↓1から先に3票得た方が京太郎の決定になります。お願いします

2

弱った部長ってかわいいよね


京太郎「咲は……俺の大切な友人なんです」

久「で、でもっ!私はあなたの……」

京太郎「……もう限界です、俺」

京太郎「別れましょう」

京太郎「気持ち悪いんです、アナタといると」

京太郎「あなたの、そのお腹の中に、何が棲るのかわからない」

京太郎「それが、どんどん俺を蝕んで、もう耐え切れない」

京太郎「それに、最近のアナタの言葉は空っぽだ。俺を……実はもう愛してなんかいないんでしょ!?」

京太郎「都合のいい男、お金も責任も取らせようって算段なんでしょ!?」

京太郎「そのお腹の子供だって、俺の子かわかったもんじゃない!」

京太郎「そうだ、俺の子じゃない!だから、別れましょう、もう、別れましょう」

それは発作に近かった。心の奥底に封じ込めていた怪物が、溢れてしまったんだ。

その怪物を心のなかに忍ばせたのは誰だ?一瞬、それが俺の頭をよぎった。

01-50 久「……アブアブアブ」        痙攣を起こして倒れる
51-98 久「お願いっ、捨てないでっ……」 泣いて懇願する
ゾロ目 久「そ。まあいいわ」       エンディング!

↓1

ゾロ目や!(白目)

久「っ……!ちょっとそんな訳ないじゃないっ!!」

久「私は、私は、アナタだけ!アナタだけを!」

京太郎「嘘つけ!この……」

久「ヤメてぇ!それ以上言わないでぇ!もう、無理、もう無理っ!」

京太郎「産みたいですってふざけるなよっ!俺に託卵しようとしてるんだろ、この売女!」

久「あっ……あっ……あの、ヒューッヒューッ」

呼吸音が変になったと思った瞬間だった。

久「……アブアブアブ」

部長は白目を向いて、口から泡を拭いてその場に倒れこんだ。

京太郎「だ、大丈夫……ですか?」

俺の頭の熱が引いて行くのがわかる。

すぐに部長は痙攣し始めた。これが癇癪発作という奴なのだろうか。いつもクールで、明るくて、責任感があって、優しかった先輩。

そして、誰よりも可愛かった俺の彼女。


それから救急車を呼んで、病院に運んで3日が経った。

まだ彼女は目が覚めない。

俺は3日間、付きっきりで彼女の側に座っていた。

彼女の家族は誰もやって来なかった。

大学の友人がやって来ても、気の毒そうな目をして、そしてその隣にいる俺を見て、そそくさと帰って行ってしまう。

それを見て、俺は気がついた。もう、この人には俺しか居ないんだと。

医者から、妊娠の継続は不可能だと教えられた。ただ、本人の意思が確認できない以上、中絶には俺の同意がいるらしい。

久さんは、俺に産みたいと言った。堕ろしたいとは一言も言ってはいなかった。

世界大会はどうなるんだ。咲はどうしてるんだ?携帯電話は鳴らない。俺からかけろってことなんだろう。

咲は大切な友人だ。でも、俺にとってこの人が大切な人であることには、何ら変わりはない。

京太郎「すまねぇ……本当にっ……すまねぇ……」

俺は、言ってはならない事を、この人に言ってしまった。

その時、病室の扉が空いた
00~50 藤田プロ
51~80 咲
81~99 久の父親 エンディング!

↓1

あわあわの口を拭いて?


オッサンが病室に入ってきた。

そのオッサンは、自分が竹井久の父親であると名乗った。

京太郎「すみませんっ……」

俺は土下座した。オッサンはそんな俺を一瞥すると、久さんの耳元で何かを伝えて、すぐに帰っていった。


久さんからは、中学校の頃、自分を捨てたクズ親だとしか聞いていなかった。

次の日、医者が中絶の手術をした。同意書には父親がサインしたらしい。

それから久さんは程なくして目を覚ました。

久「……出てって」

俺に言った言葉はそれだけだった。俺はその言葉に従うしかなかった。



咲に電話する気力もわかなかった。

部屋を畳んで、俺は実家に帰ることにした。

大学もスッパリ辞めて、長野の故郷に帰る為の駅の待合で、久しぶりに電話がかかってきた。

知らない携帯の番号からだった。

京太郎「はい、もしもし」

「……須賀、京太郎さんですか」

京太郎「はい」

「私、宮永咲の姉の宮永照と申します」

京太郎「あ!……お名前はかねがね」

「至急、都内の~~病院に来てもらえませんか?危篤状態で、うわ言のようにアナタの名前を呼んでいます」

え、咲さん死ぬの?これもう(なにが起こってるか)わかんねえな



京太郎「えっ……」

「何分、謝りたいことがあるそうで」

京太郎「……」

「……私も、姉でありながら、彼女には何もしてやれなくて……看取りを……あなたに」

京太郎「俺には……そんな資格、ありません」

ーー詰んでいたんだ、初めから

「お願いします……後生ですから……咲は、呪われてしまって、もう、可哀想で可哀想うで」

京太郎「許してください……」

生臭い匂いと一緒に、念仏が遠くから聞こえてきた。

しまったっ、と俺は思った。

思った時には、俺ももう、呪われていた。


バッドエンド

唐突なホラー要素やめろwwww


とりあえず読んでくれてありがとうございます。
ハッピーエンドも書きたいので、今どこから書き直すか考え中です。

蛇足にならなきゃいいのですが。

ちかちゃんの足舐めたらハッピーエンドにいけると思う(KONAMI)


久「とりあえず、服だけ持って行くわ。部屋狭くて私のじゃ狭くなる一方でしょうから、家具はソッチの使わせて。

  でも、ちょっと部屋の布団、変な匂いしたから新しいの買わない?」

京太郎「いや、すみません、買ってから一度も洗ってないんで……」

久「うーん……」

久さんは結局、部屋を引き払って俺の狭くて汚い部屋に越してくる事になった。

妊娠週数12週ーー

少し、久さんのお腹が出てきている。

京太郎(何かとんでもない事になってしまった気がする……)

節子、それコピペや


結局、久さんは服と新しい布団と、何故かテレビを持ってきて俺の部屋に住み着くことになった。

久「もちろんタダで住むワケじゃないわ!掃除洗濯なんでもやるし、キチンと家賃半分払うわよ」

久「アナタも人肌寂しい夜は過ごさなくていいし……ね?」

京太郎(まあ久さんと一緒に過ごすこと自体に文句あるワケじゃないけどさ……ちょっと息苦しいんだよなぁ……)

久「テレビを持ってきたのはね、流石に何も娯楽がないのはどうかと思ったのよ」

京太郎「まあ、テレビ一緒に見るのも悪く無いっすね」

久「週末はレンタルビデオ屋で色々借りてみましょうよ……再生機も持ってきたし」

京太郎「何か新婚さんっぽいなぁー」

久「……あの、京太郎君」

京太郎「な、なんっすか?」

久「……将来のこと、どう考えてるの?」


京太郎「将来って……」

久「惚けないでよ。子供も産むことになるんだし、ねぇ?」

俺は……

①結婚、的なことですか?
②大学のことですか?

↓1


京太郎「結婚、的なことですか?」

久「っ……嬉しいっ……考えてくれてたんだ……」

京太郎「さ、流石に、まだ若いっすよ」

久「……じゃあ、この子の父親、誰になるのよ」

京太郎「うっ……俺ですけど……籍を入れるってのは、ちょっと性急すぎやしませんか……」

久「バカ!産まれる前に入れとくもんよ、普通は!」

京太郎「……そ、そうなんですか?」

久「……そういうもんよ……ねー?」

お腹を擦りながら、子供に同意を求めるような素振りは正直怖いからやめて欲しい。

京太郎「ま、まあ適切な時期に善処したいです……」

久「ま、いいわ。それより今は大切な話があるんだけど」


京太郎(マジか、これ以上大切な話があるのかよ……)

久「あのね、今後の病院のことだけどーー」

京太郎「あっ!テレビに和、出てますよ!」

久「ムッ……ちょっと話の途中なんだけどなー」

京太郎「すげーよな、アイツ……俺と同い年なのに、もう初タイトルだよ……」

久「さすが私が育てただけ、あるわね!」

京太郎「ちょっと、和は最初から育ってましたよぉ、いろんな意味で」

久「どういう意味よー!」

京太郎「え、いや、ごほん、ごほん、オッパイ、ごほん」

久「なーに、私じゃ不満だっていうの?」

咲さん抱けるくらいだし・・・


福与『ふくよかじゃない福与恒子と』

すこやん『すこやかじゃない小鍛治健夜の』

福与『インカレティービー!』

福与『さあ、今日のニュースは学生日本代表、ブルネイ相手に白星スタート……ってブルネイってどこー』ピッ


京太郎「まあ、もうテレビは飽きましたね、寝ましょっか」

久「……うん」

結局部長は、麻雀部を辞めてしまった。色々な人に迷惑をかけた、とこの1週間塞ぎがちで、慰めるのが大変だった。

ついでに俺も麻雀部から追い出された(当然っちゃ当然だ)


電気を消して、俺達は狭い布団に入った。

京太郎(結婚、かぁ……子供の事もマジで何とかしないといけねぇのに)

京太郎(俺達はホント、まだ若すぎるよ……)

久「グスッ…グスッ……」

京太郎(まーた始まった……いっつも電気消して布団入るとこうだ……)

京太郎(まあ久さんも不安だよなぁ……親もロクに連絡取れないみてーだし、麻雀部も辞めて)

京太郎(頼れるのが、こんなクズみたいな俺だけって)

京太郎(はぁー……咲や咏さんみたいにサッパリしてる娘の方が好きなんだけど……)

京太郎(昔は久さんも一緒にいてすっごい楽しかったんだけど)

京太郎(なんで道、間違っちゃったんだか)

俺は、彼女が寝付くまで、胸の中で泣かせて、頭を撫でるのが仕事みたいになっていた。

クズッ...クズッ......に見えた


久「あなた、もう昼よ」

京太郎「あっ、ああ……」

顔を洗って、久さんが作ってくれた料理を食べる。料理と言っても、米と味噌汁くらいな質素な料理だ。

俺はとりあえず大学を休学にすることにした。

親の判子が必要だったので、適当に偽造したものを出したら案外あっさり休学できた。

久さんはどうしたのか。何も言わない。怖くて聞けない。

京太郎「仕事、探さなくっちゃなー……」

久「ね、前やってたバイトは?」

京太郎「ちょっと割が良かったんですけど、お客さんとトラブルになっちゃいまして」

久「そ。……ごめんね、私も働きたいんだけど、こんなお腹じゃ雇ってくれるとこ、なくて……」

京太郎「いいんですよ、久さんは。俺が頑張らなくっちゃ」

といっても、日に日に貯金だけが減っていく。

もう数えたくない。あと何日、いきられるのか、俺は知りたくない。


京太郎「はぁ……働きたくねーよ……」

バイトを探しに行くと嘘をついて、いつも公園で俺はたばこを吸っている。

一人っきりになれる、唯一の時間。

これがなかったら、俺はもう死んでいるだろう。

京太郎「……ついこの前まで、こんな事に成るなんて、想像すらしてなかったよ」

社会の風は意外と冷たい。それを身をもって知れただけでも社会勉強。

いや、多分、これはまだ温い風だ。多分、このままじゃ、俺達は地獄を見るはめになる。

京太郎「……金、何とか工面しねーとな……」

①咲に電話して頼む
②和に電話して頼む(ゾロ目で成功!)

↓1

1


京太郎「……なるべく他人に頼りたくないんだけど、そうも言ってられないか」

京太郎「俺が頼みやすくって、一番金持ってそうなの……咲しかいないわ」

ピッポッパッポッピ

咲「なぁに、京ちゃん」

京太郎「ああ、咲……ちょっと折り入って頼みたい事があるんだ」

咲「……」

京太郎「他の事でも、色々、相談に乗って欲しいんだ、前みたいに……この前の件は、謝るからっ!」

咲「……すっごく苦しかったんだよ」ブツブツ

京太郎「は?」

咲「まあいいやっ……帝国ホテルの1304号室に泊まってるから……今日の夜なら会えるよ」

京太郎「わかった、ありがとう」


俺は久さんにバイトの宛を見つけたと嘘をついて咲の元を訪れた。

ひと通り、ヤることをヤってから、話を切り出した。

京太郎「なあ、咲……頼みがあるんだ」

咲「んっ……京ちゃんの頼みなら、何でも」

京太郎「……金、貸して欲しい」

咲「……いくら、いるの?」

京太郎「そうだな……ちょっと額が大きいんだ」

咲「ちょっと、今はいじらないでよぅ……んっ……いくらなのさ」

京太郎「三百万円」

咲「あんっ……そんなにぃ?何に使うの?」

京太郎「わかってるだろ?……すまねぇ……こんなの、頼めるの、お前しかいない」

咲「ふふっ……みんなに言ってるんでしょ、同じこと」


京太郎「咲ぃ……頼むよ……俺を助けてくれ」

咲「うーん、京ちゃんに貸したいのはヤマヤマなんだけどねぇ……むしろあげてもいいんだけどぉ」

京太郎「……意地悪言わないでくれよ」

咲「……」

京太郎「……咲」

咲の結論
01~50 部長がお願いに来るならいいよ
51-98  京ちゃんの頼みは断れないや
ゾロ目 私にも子供くれるならいいよ

↓1


咲「そうだね……300万円はちょっと大金だからなぁ」

京太郎「……」

咲「そのお金が、あの女のために使われちゃうって、ちょっと私が惨めすぎない?ねえ京ちゃん……」

京太郎「なんだ、咲」

咲「……私にも、赤ちゃんちょうだい」

京太郎「……はい?」

咲「今、ピル飲んでるんだけど、今日から辞めるからさ……準備出来たら連絡するから、私に仕込んで?」

京太郎「あの、咲……それは……ちょっと」

咲「……惨めな女だよね、私って。お金を餌に京ちゃんとの愛の結晶欲しがるなんてさ」

京太郎「咲……」

咲「私だけで育てるからっ……京ちゃんはたまに私を抱いて、お金貰うついでに、会いに来てくれるだけでいいからっ……」

咲「京ちゃん……」

咲は泣いていた。多分、咲は心の一番深いところで部長に負けたんだ。そんな気がした。

京太郎「咲っ……!」ギュッ


京太郎「結局、朝帰りになっちまった……久さん、怒ってないかな……」

京太郎(でもこれで当面の金銭的問題は解決されたかなぁ……)

京太郎(それにしても咲、あいつなんであんな金持ってるんだ?麻雀日本代表なんてはした金しか貰えないっていう建前らしいけど)

京太郎(うーん、謎だ)


京太郎「た、ただいまー……」ソローッ

久「おかえりなさいませ」

京太郎「うわっ……起きてたんっすか!?そ、そんな三指ついて出迎えるなんて、ベタな真似しなくても……」

久「……」

京太郎「す、すみません、連絡もせず」

久「いいのよっ、帰ってきてくれただけで……私、すごいホッとしてるわ」


京太郎「あ、あの」

久「言い訳しないでいいのよ?男の甲斐性なんだから……」

一晩中起きてたであろう、久さんの目元には深いくまができていた。

妊娠12週なのに痩せこけた彼女は少し可哀想だった。

京太郎「久さん、今日は寿司、食いに行きましょうよ!」

久「……そんなお金、どこにあるの?」

京太郎「いや、実はですね、ちょっと、とりあえず50万円、ほら!これだけあれば」

久「……」

京太郎「あ、危ないお金じゃないですよ?キチンと稼いだっていうか、その……」ゴニョゴニョ

久「……さすが、私の旦那様ねっ!」ギュッ

京太郎(あ、あの、まだ結婚してる訳じゃないんだけど……)

久「じゃあ、今日は久しぶりに贅沢したいわね!」

京太郎「ああ、任せとけ!」


こんな感じで続く事にします
仰るとおり投げっぱなしエンドはよくないっすね

明日は夜になると思います。よろしくお願いします。


久「ねえねえアナタ」

京太郎「……あ、ああ」

久「いいモノ貰っちゃったんだけど、気になる?」

京太郎「いいモノ?」

久「ふっふっふ……じゃーん!これよ!」

京太郎「ぼ、し、健康手帳……っすか」

久「あれ?反応薄いわね?」

京太郎「いや、おめでとうございます!よ、よく手に入りましたね……」

久「……あのね、お母さんはみんな貰えるものなのよ?今までなかったのが異常なだけで」

京太郎(妊娠16週……どんどん外堀を埋められてる……)


久「病院でも怒られちゃったわ、なんでずっと受診しないんだって!幸い、赤ちゃんに何もなかったから良かったけど」

久「あともっと栄養あるもの食べなさいって。おすすめの献立表貰ったから」

久「それと、明後日あなたも一緒に病院来て欲しいんだけど」

京太郎「え?」

久「いやー、近頃はお父さんの方も予防接種とか色々あるらしくてね、うん」

京太郎「あ、ああ……」

京太郎(……ゆっくりとだけど、久さんのお腹が大きくなってるのが俺にもわかる。アピールするためか知らないけど、最近は何故かピッチリした服着てるし)

京太郎(……実際、咲からとりあえず貰った50万円で急場はしのげているけど、危機的状況である事に何も変わりはねぇ)

京太郎(俺は雀の涙ほどの親の仕送りしか収入源がないし、咲にたかって生きていくってのは……)

京太郎(こんなの俺のやりたかった人生じゃねぇよ……)はぁ……

久「……」


久「……あのね、京太郎君」

京太郎「なんすか?」

久「私、やっと安定期に入ったのよね……つわりもなくなって体調もいいし」

京太郎「そうですか……よかったっすねぇ」

久「それでね、ちょっと息抜きに遊びに出かけない?……この前テレビでやってたんだけど、電車で1時間くらいのところに美味しい焼き肉屋さんあるらしいのよ」

京太郎「あ、焼き肉いいっすね。がっつり肉なんて久しぶりだなー」

久「お酒も飲みましょ、私も少しなら付き合うわ」

京太郎「え?お酒って飲んでいいんっすか?」

久「ビール一杯くらいならオッケーらしいわ……心配してくれてるんだ、ありがと」

京太郎「あ、いや……」

京太郎(俺ってホントお人好しだよなぁ……)


夕方に二人で電車に乗って少し西の方へ向う。

途中で高校生がたくさん乗っかってきて煩わしかった。

京太郎(あー……俺もついこの前までこいつらと同じお気楽な身分だったのに)

京太郎(……幸せそうな面しやがって……このクソガキ共が……)

鏡に映る俺の顔は、夏頃に比べて10は老けたと思う。顔に締まりが出てきたわけでも、渋みが出てきたわけでもない。

信じられないほどにくたびれた男がいつも鏡の前に立っている。

京太郎(久さんも、咲もこんな俺のどこがいいんだか)

咏さんも離れていった。他にちょっと遊んでいた子たちも連絡がつかなくなった。

京太郎(まだ間に合うか……確か……21週までは……)

京太郎(でもよぉ、最初のぺったんこの頃に比べて……こんな俺にでも、中に何かいるってのはわかっちゃうだよ……)

京太郎「ちくしょう……」

久さんに聞こえているのかいないのか。俺の肩にしなだれかかって、彼女は顔を伏せていた。


焼き肉屋

京太郎「おっ、きたきたビール」

久「あなた……」

京太郎「あ、ああ……いや、いっつも久さんだったじゃないですか、今日も久さんお願いしますよ、こういうの俺、やったことないんで」

久「じゃあ、お手本。私がやるのはこれが最後、次からはアナタよ?……ごほん……私たち三人の未来に」

久・京太郎「カンパーイ!」

京太郎(そ、そうすればいいのね……)


京太郎「やー、肉っすねー」モグモグ

久「肉ね。うん、おいし」モグモグ

京太郎「あー、脂こんな乗ってるよぉ~!」モグモグ

久「ふふっ……幸せそう」パシャ

京太郎「いやぁ、勝手に撮らないでくださいよぉ」

久「私の待ち受けケッテーよ♪」

京太郎「は、恥ずかしいなぁ、もう……」


京太郎「はー、たらふく食ったー……食べ放題って素晴らしい!」

久「うーん、素晴らしい時代よね。3000円で好きなだけお肉食べられるなんて」

京太郎「でも今の俺たちにはすっげー贅沢でしたよ……この後、どうしますか?」

久「んー?」ダキッ

京太郎「……お疲れのようですね、お姫様。おやっあそこに何やら休憩できそうな建物が」

久「任せるわ、王子様♪」」

京太郎(ひっでぇ三文芝居だぜ……露骨な店選びだろ、ちくしょう……)


久さんがシャワーを浴びている間、俺はテレビでも見ながらぼけーっとビールを飲んでいた。

その時、『嶺上海上保険』さんからメールが来ているのに気がついた

京太郎(何々、例の件準備出来ました、週末出張お願いします。土曜朝8時上野駅13番線トイレ前集合)

京太郎(承りました、と……これで残り250万、かぁ……ひっでぇ事してるよな、俺)

京太郎「はぁ……」

久「お待たせー誰にメール?」

京太郎「あっ、バイト先の馬場さんに週末の仕事の件で」

久「誰よそれ」


京太郎「まあ詳しくは後で話すんで、今はいいじゃないっすか」

久「そうね……」

京太郎(やっぱ胸少し大きくなってきてるなぁ……やったぜ!)

京太郎(でもお腹出てんのがちょっと気になる……)

久「ん?どったの?」

京太郎「あっ、いや、久しぶりで手順忘れちゃって……」

久「またまた~」

京太郎(激しくは出来ねぇよな……まあ、久さんも激しいのあんま好きじゃないし)

俺は……

ゾロ目:たたなかった(エンディング)
それ以外:卒なくこなせた

↓1


お互い適当に愛撫しながら……

京太郎(よし、勃った!ちょっと不安だったけど、まだ若いから大丈夫だよな、流石に)

京太郎(マジでお腹の出っ張りが気になるぜ……いや、忘れろ、今は忘れろ、萎えちまう……)

京太郎「そろそろいっすかね……ゴムゴム~ゴムゴムのピストン~っと」

久「ちょっと、ふざけてるの?」

京太郎「いや、俺はいつも本気ですよぉ」

久「……ねえ、今日はなしでいいわよ」

京太郎「え?あっ、そっか」

久「……」

京太郎「じゃ、じゃあ今日は後ろからの気分なんで、逆子体操でお願いしまーす」

久「あんまりふざけてるとぶっ殺すわよ」ボソッ

京太郎「ヒエッ……じゃ、じゃあい、挿れますね……」


久さんと生でヤるのは二回目だ

京太郎(ああー……やっぱ中の感覚違うような気がする……)

京太郎(少し硬いなあ)

久「ちょっと、あんまりゴリゴリしないでよっ」

京太郎「そ、それはフリっすか?」

久「いや、ダメッ、そこっ……」

京太郎(あーっ、久さんとヤるの久しぶりだわ……うん、部長みたいなタイプの女はバックで突くに限るね!)

京太郎(それにしても、1回外出ししただけで妊娠するって……)

京太郎(駄目だ駄目だ、それ考えると呪い殺されちまう……忘れろ、忘れろ)

京太郎(あー……週末は咲とかぁ……咲は相変わらずまな板だし、まだ部長の方が楽しいなぁ)

京太郎(そういえば俺が抱いた女で一番女の子っぽいの久さんだ……)ずーん

京太郎(クソッ、和とか福路さんとか近くにいたのによっ、クソッ)パンパン

久「あっ……ああんっ……」



……事後

久「ねえ、京太郎君」

京太郎「んあっ……なんすか?」

久「……お腹、触ってみて」

京太郎「……はい」

久「どう?」

京太郎「……まだ、わからないっす」

久「ビックリして動いてくれると思ったんだけどねぇ……もうちょっとかしら」

京太郎「この中に、俺たちの赤ちゃんがいるって信じられないっすね……あっ、いや、俺、まだガキなんで」

久「……もうパパになるんだから……しっかりしてよ?……でも、ありがとう」

京太郎「何をだよ……」

久「んっ……」

時間が迫っていたので、俺たちは服を来て電車で部屋に帰った。

久さんはその晩、夜泣きしなかった。


土曜の朝、俺はよれよれのスーツを着て駅の待ち合わせ場所で彼女を待っていた。

久さんには出張だと嘘をついた。彼女も薄々わかっているのか、特に詮索してこなかった。

まだバイトしたて(それも嘘)の俺が、土日の出張なんてあるはずがない。

咲「お待たせ、京ちゃん」

化粧を綺麗にのせた彼女は、高校の頃よりちょっと大人っぽくなっていた。

京太郎「で、どういうプラン?」

咲「はい、新幹線のチケット。北の方に行こうよ。うーんと北に。なんなら津軽海峡でも超えて」

京太郎「おいおい……」

咲「冗談。岩手の山奥に温泉旅館予約しといたから、夕方にはつくと思う」

京太郎「そうか」

咲と二人で新幹線に乗り、俺は東京を離れた。

晴れた冬のいい日だった。


今日はここまでにしておきます

岩手の駅で新幹線を下りて、そこからタクシーで温泉旅館まで向う。

タクシーの運ちゃんは、若い俺たちを見てどう思ったのだろう。あまり話しかけては来なかったが、時折りバックミラーでのぞき見ているのがわかった。

俺はバツが悪くて、ずっと窓の外を見ていた。東京と違ってこっちは雪国だった。

途中、半分山道になった。

「お客さん、悪いね、ここら道悪くって。ちょっと揺れるよ」

凍りついた轍でガタガタになった道を丁寧に走っている。


ひなびた風光明媚な温泉旅館だった。つくまでに、東京から新幹線で岩手に来るのと同じくらい、駅から時間がかかったのは難点だったけれど。

「染谷様ですね、お待ちしておりました」

京太郎「おい、勝手に先輩の名前使うなよ」

咲「ふふっ」

客は俺たちしか居ないんじゃないかというくらい、ガランとしていた。

咲「部屋に家族風呂あるのが売りらしいんだ」

京太郎「いいね、後で入ろうぜ」

部屋に荷物をおき、椅子にかけて一服しながら、俺はまた窓の外を見た。

冬の山はいやに静かだった。


浴衣に着替えて、大浴場で汗を流してから、食堂で飯を食う。

咲の浴衣姿は久しぶりに見た。1年生の時の合宿以来だ。

京太郎「ああ、染谷さんだけど元気にやってるかなぁ」

咲「故郷に帰ったんだっけ?……不義理ばかりで、私……スカートも返さなかったし」

京太郎「あの人、あんまり気にしてなかったぞ」

咲「それはそれで寂しいなぁ」

京太郎「そういう意味じゃなくてなぁ……今度菓子折りでも持ってけよ。アッチに行く機会でもあれば」

咲「そだね……うん、このわかめの味噌汁美味しいね」


部屋に戻ると布団が2つ、隣合わせで敷いてあった。

咲「それじゃあ、京ちゃん……不束者ですが、よろしくお願いします」

京太郎「あ、ああ……でも……ホントにいいのか?……俺はお前に何もしてやれないよ」

咲「いいんだよぉ……私が赤ちゃん、欲しいだけだから……んちゅっ……んむっ……」

ここまで来たら抱くしかあるまい。お金の件もある。

咲「ん……むちゅっ……ぷはぁ……あむっ……むちゅっ」チュッ 

京太郎(こいつの唇やわっこいんだよなぁ……)

咲「あぁん……んっ……もうっ……」

京太郎(まあ、胸もないわけじゃないしな、ないわけじゃ)



咲「んっ……はうっ……」チュッチュ

京太郎(咲ちゃんはじっくりキスしながら色々弄れば……でも妙にコイツ今日受け身だなぁ)

咲「ねえ、京ちゃん……下……」

京太郎「ああ……んっ?おい何だこりゃ」

京太郎(まだ始まったばかりだというのに、彼女の下は信じられないくらい濡れていた)

京太郎「ドロッドロだ……やべっ……すごい糸引いてるし」

京太郎(俺はない胸を弄るのをやめて、中に指を入れた)

咲「はんっ……ちょっとぉ……いきなりぃ…」

京太郎(何かヤバイんじゃねぇか?危ない薬ヤってるとか)

咲「京ちゃんの……もう……早く……」

京太郎(中、あったけぇ……早く挿れちまおうか……)ギンギン

咲は仰向けになって足を広げて、俺を待っていた。パンツを下ろすと、俺のももう臨戦態勢が整っていた。


京太郎「……ホントにいいんだな?」クチュリ

咲「うんっ……今日のために……準備ばっちりだよ……京ちゃんの赤ちゃん仕込んでぇ…」

京太郎「ホントに、責任とらなくていいんだな!?後から文句言われても困るぞ」クチュクチュ

咲「ひゃっ……擦り付けながら、そんな話やめてよぉ!」

京太郎(ちょっと怖い……咲だから大丈夫だと信じたいけど、部長の件があるし)チュッチュ

咲「今、キス反則っ……酷いよ酷いよ、京ちゃあん……早くぅ…」

京太郎(コイツ、腰擦りつけて来やがる……クソッ、一筆とっとけばよかった……)

京太郎「くっ……ちょっと紙とペン、探して……」

咲「そんなに心配なら、カメラやビデオで撮っていいからぁ!

  流出したら、私が二度と人前に出れないくらいっ……乱れた姿っ……京ちゃんに握らせてあげるっ……」

咲「私が後から何か文句言ったらそれで脅してよぉ……んっ……」


京太郎「え、いいの?」

咲「京ちゃんにだけだよ……絶対に誰にも見せないでね……」

京太郎「わかった。」

京太郎「とりあえずさっ、挿れる前に、カメラに向かって約束してくれ」ぴっ

咲「はい……これから私、宮永咲は生セックスでっ……孕ませてもらいますがぁ……」

咲「責任は全て私にあるのでっ……相手の方に迷惑かけません……だからっ早く!」

京太郎「はいカット!約束守れよ!」

咲「ずっと我慢してたんだからぁ……京ちゃんとの本気の……」クイクイ

京太郎「……もう俺も我慢できねぇ」ずぷっ


咲「~~~~~っ!やったぁ……初めての京ちゃん……あっついよぅ……」

京太郎(一瞬水の中に突っ込んだんかと思うくらい、スッと奥に入って……うおっ……360度四方から絞ってきやがる……)

京太郎「うっ……あっ、やべ……くそっ、気を抜いたら狩られるっ……」

咲「ぁあ”!奥っ!はううっ!」ビクッ

京太郎「ちくしょう、いきなりクライマックスだぜ!動くぞ、咲!」ジュッグジュッグジュップ

咲「駄目っ、今、おなかの中っ……」

京太郎「あぁーっ!たまんねぇ!」じゅっぷ……っ……じゅぷ……っ

京太郎(こいつ、こんな名器だったか?)

咲「ひゃんっ!あっ、はっ、ひっ、ひーっ!来ちゃう、来ちゃう!京ちゃん!」

京太郎「クソッ!もう射精るっ!!」ズポッ

咲「あああんっ!深いぃ……ひんっ…あっ……イクッ!」

京太郎「おおおおおおお!」ドクンッ!ビュ……ドクドクドク……

京太郎(これが本場の中出しか……)


京太郎「孕めっ……俺の子供!咲!」ドクッ

咲「いあっ!……っ!っ!」ガクガク

京太郎(だ、大丈夫かコイツ?)

突然痙攣し始めた咲を、俺は中に挿れたまま抱きしめていたが……

京太郎(やべっ、全部持ってかれる、抜かねぇと!)

京太郎(ジーザスっ!背中に足絡めやがって!あと、爪たてるな!)

京太郎「ぐっ……ぐおおおおおっ!」


不意に、後ろの足の力がふっと抜けた。

京太郎「うおっ!」じゅっぽん

腰だけ抜けて、俺はマヌケな声をあげてしまった。

咲「あんっ!……はーっ……はーっ……びっくりした?」

京太郎「あ、ああ……キンタマごと中に吸い上げられるかと思ったぜ……だ、大丈夫か、咲は……」

咲「んっ……幸せ……すっごい……熱い……お膣の奥から……伝わるよぉ……んちゅっ……」

京太郎「……」

俺たちはそれからしばらく無言で抱き合っていた。


咲「……喉乾いた」

京太郎「俺も。冷蔵庫に冷やしたポカリあるからとってくるぜ」

咲「ねぇ、最中、ビデオ撮ってたの?」

京太郎「そんな場合じゃなかったよ……声だけ録音しといたんだけど、多分変な声しか入ってねーな」

咲「いやいや、京ちゃんめっちゃ喋ってたじゃん。途中で笑いそうになったよぉ」

京太郎「うるへー、ほら、ポカリ」ポイ

咲「ん……ごくごく」

京太郎「で、どう?出来た?」


咲「デリカシーがないなぁ……まだ卵、出てないと思う」

京太郎「え?咲って爬虫類だったの!?」

咲「泣いちゃうよ?……女の子って、出るのわかるんだよぉ」

京太郎「何が」

咲「赤ちゃんの卵」

京太郎「そういうもんなの?じゃあ今の意味無いじゃん」

咲「ううん、京ちゃんの種、2、3日は私の中で生きてるからさ……でもピル明けだから排卵できるかちょっと不安なんだ」

咲「でね、京ちゃん……今夜は私が卵出す……お手伝い……お願いします」

京太郎「要するに寝かせなきゃいんだろ?任せとけって……」


俺たちは休憩をはさみつつ日が昇るまで交わり続けた。


咲「やばっ……京ちゃん、ちょっと今は勘弁してっ……」

京太郎「ん……んぐっ!イクぞ、咲!」ドクドクッ

咲「イヤーーーー!あっ!イクゥーー!!」プシャァァ

京太郎「おっ……おおっ……びしょびしょ……」ずぽっ

咲「あっ……だめっ……ダメッ……」ピュッピュ

京太郎(ポカリ飲み過ぎたか……全部出てるじゃん……これ、畳まで濡らして……弁償とかあるんかな……)

京太郎(まあ咲持ちだし、いっか)


京太郎「はーっ……はーっ……咲、すまん、ちょっと休ませて」

咲「もう何回目だろ?」

京太郎「わっかんねー……ちょっとキンタマ痛くなってきた」

咲「だらしないなぁ……私のかばんの中に、赤阪さんから貰ってきた栄養ドリンクあるからそれ飲んで続きやろうよ」

京太郎「赤阪さんってあの?……毒じゃねーだろうな」

咲「毒?あの人いっつも徹麻空けにみんなにスッキリするドリンクくれるいい人だよぉ」

京太郎(おいおい、大丈夫かな……)ゴクゴク

京太郎「んー……なんだ、こりゃ、胃の奥が熱い……咲、コレヤバイ奴……」

咲「でも勃ってきたでしょ?漢方薬らしいよ」

京太郎(頭の奥まで熱い……ぐるぐる回る……あっ……ヤらなくちゃ)

咲「理性もぶっ飛ぶ、いくのんスペシャルって言って調合してくれたんだけど……いやっ!」

京太郎「うおおおおおっ!」パンパン

咲「ひゃんっ!京ちゃんのケダモノっ♪」


京太郎(咲の尻って意外とイイよなぁ~何か叩きたい)パシーン

咲「はうっ!ちょっと、いきなり叩かないでよっ!」

京太郎「いや、綺麗な桃尻だなーと」

咲「もうっ……はぁ……はぁ……あっ……」

後ろからゆっくり出し入れしている時に、咲が突然震え始めた。

咲「キテる……お腹……」

京太郎「どうした?」

咲「京ちゃん、お願いします」

京太郎「ああ、分かった……」

俺は腰のくびれを掴んで、思いっきり動いた。

程なくして、射精に至り、息を切らしながら抜くと、咲はごろんと仰向けになった。

咲「はっ……はっ……はっ……」

息を短く切りながら、潤んだ目で天井を見ている。

咲「ううっ……」

呻き声をあげながら、咲は小さく身を捩った。

京太郎(写メ写メっと……この顔……咲のプロフィール画像決定だな)

咲「京ちゃん……私、今、すっごい幸せだよぉ……」


一泊二日の小旅行だ。

くたくたになりながら帰り支度を始めようと起き上がると、フロントから電話がかかってきた。

京太郎「え?何?大雪で交通機関全部止まってる?はい、はい、タクシーもこの山道来れないと」

咲「どうしたのぉ?」

京太郎「ちょっとカーテン明けて」

咲「うん……うわっ!」

窓の外は冬の嵐だった。一面真っ白で、10m先も見えないんじゃないかというくらい。

京太郎「はあ、今日中には帰りたいんですが、はい、とりあえず雪がやまないことにはなんとも、ですか」

京太郎「ちょっと連れと相談して、はい、折り返し連絡します」ガチャン


京太郎「雪やまえねぇと帰れないっぽい。何とか出来ませんか、咲さん?」

咲「私にも出来ることと出来ないことがあります」

京太郎「じゃあどうすれば……」

咲「……」ウルウル

京太郎「はぁ……もう一泊、する?」

咲「うん♪」

京太郎(久さんに連絡しねーとな……出張で山奥居て、大雪にやられて帰れませんって)

京太郎(はぁ……これ、大丈夫かね……)

その日もまったり、時に激しく俺たちは一日中お互いを貪りあった。


流石に次の日には天気が回復していて、何とか山を降りることが出来た。

~~岩手の新幹線の駅で~~

咲「いや~楽しかったね、京ちゃん♪」

京太郎「あ、ああ……」ゲッソリ

咲「あ、渡しそびれてたんだけどさ、はいこれ」

咲はかばんの中から分厚い茶封筒を取り出した。

京太郎「おっ……おおおおおおお!(それは紛れも無く250万円!)」

京太郎「あ、ありがとう、助かります!」

咲「ちょっと待って」ヒョイ

京太郎「え?ちょうだい……」


咲「実は、もう1つ茶封筒があります」

京太郎(まさか、更にボーナス……?)

咲「これなんだけど」

咲がおずおずと取り出したのは、薄い茶封筒だった。

京太郎(……中身は小切手?……現金の方が嬉しいよ、咲ぃ……小切手の下ろし方なんて知らないし)

咲「中身はね、新幹線のチケット。札幌行きだよ」

京太郎「あっ……」

咲「札幌まで残念な事に私と隣の席だよ。分厚い方を選べば一人さびしくお金と一緒に東京まで。どっちか1つ、選んで」

京太郎「咲……!俺は、こんなつもりで一緒に来た訳じゃ……」

咲「ずるい女でしょ、私って」

京太郎「……」

咲「でも、私にも最後のチャンス、ちょうだい……それくらい、夢を見たって……いいでしょ?」グスン

京太郎「泣くなよ」

咲「さあ、京ちゃん!選んでよ!泣いても笑っても、これが最後……だよ……」


俺は……

①分厚い方の封筒をとる
②薄い方の封筒をとる

↓先に3票得た方に進みます。

片方はエンディングにするかも。続きは後日書きます。おやすみなさい
ただ、一応セーブポイントにしておきます(エンディングにする場合、ここから戻って先に進むかも。あくまでかも。)
お気楽にお願いします


女が喘いでいる。

クレゾールの匂いがやけに強い部屋で、男に抱かれている。

股を広げて、苦しそうによがっている。


「お金、足りひんなぁ」

「すみません」

「もっとええとこ、移ろっか」

「はい」


「難儀やなあ、アンタも。変な男につかまって。あんな事なければ今頃、たいそうええ大学出て、それに釣り合うええ男と幸せになっとったんかねぇ」

女は唇を噛んでいた。


京太郎「ぎゃああああああああ!!」

京太郎「はぁ……はぁ……はぁ……」

咲「ど、どうしたの、京ちゃん」

京太郎「あっ、あれ……はあ……夢かぁ……はぁ……」

咲「びっくりしたよぉ……断末魔に聞こえた」

京太郎「すまん、起こしちまって……ちょっと水飲んでくる」

酷い夢を見た。動悸はまだ収まらない。


寝室に戻ると、咲は眠っていた。

京太郎(俺はあの時、咲と一緒に何もかも捨てて逃げ出した)

京太郎(あの人からは、連絡すらない)

京太郎(時折り、良心の呵責みたいなものに襲われる事もあるけれども、なるべく考えないようにしている)

京太郎(お腹、出てきたなぁ……予定は来月だっけか)

京太郎(俺もしっかりしなくちゃ)


咲と駆け落ち同然に、北海道に逃げ出して、しばらくはヒモだった俺も、働き始めた。

まだ見習いだけれども、料理屋でキリキリ働いている。

咲はお金の心配はないと言ってくれたが、俺は子供に働く父親というものを見せてやりたい。

「遅えぞ!新入り!」

京太郎「す、すみません、皿洗いに時間がかかってしまいまして……」

「かーっ!まず言い訳か!最近の若いのは……ポコチン付いてるのかァ!」ボコー

京太郎「ぐえっ……す、すみません!い、今すぐやります!」

ついこの前まで甘ちゃんで右も左も分からない俺は、ボロ雑巾のように扱われていた。

京太郎(チクショウ……ハギヨシさんは優しかった……)


京太郎「なあ咲……仕事辛えよ……叱られてばっかだし、朝早えし、嫌なことも言われるしよ……」

咲「よしよし、よしよし」

京太郎「でもその子が社会に出るまではどんな辛いことあっても頑張るから……」

咲「うん」

京太郎「なあ、咲。夢があるんだ、俺」

咲「なあに?」

京太郎「一人前になってさ、お金貯めて、小さなお店を出したいんだ」

京太郎「俺と咲、二人で切り盛りできるような小さい店」

京太郎「咲はドジだから心配だけどよ」

京太郎「年取っても、みんなの笑顔が絶えないような、暖かくて美味しい料理を出せる店を……」

咲「京ちゃん」

京太郎「愛しているぞ、咲」


「おい、京太郎!奥さんの病院から電話だ!」

京太郎「へ、へい!」

「今すぐ行って来い!べらぼうめぃ!」

京太郎「親方、ありがとうございます!咲!……!」

俺は幸せの絶頂だった。歯車が噛み合って、何もかもが上手く回りだしていたんだ。

仕事もようやく馴染んできて、あの腐ったような時間の流れから決別できたと思ったんだ。


店の前にタクシーが用意されていた。親方の、粋な計らいだと思った。

京太郎「バツバツ病院まで!飛ばして!」

俺は勢い良く乗り込むと、まるで映画のワンシーンのように行き先を告げた。

揺杏「あいよ」

タクシーが動き出した。


仕事場から、咲のいる病院まで車で大体30分だ。

揺杏「ニイさん、何かいいことあったのかい?」

タクシーの運転手は、若い女の人だった。

京太郎「え、ええ、妻が出産で」

揺杏「そら、めでたいねぇ」

俺は腕時計をチラチラ見ながら、流行る気持ちを抑え、運転手さんに聞いた。

京太郎「あの、ここからどのくらいですか?」

揺杏「まあ、20分だね」

京太郎(うん、間に合うかな……いや、もう産まれてたりして)

揺杏「ニイさん、これからパパになるんだな」

京太郎「え、えへへ……」


揺杏「若いのに立派だねぇ……奥さんはさぞ、べっぴんさんだろ?」

京太郎「あっ、わかります?」

揺杏「まあ、人相でね……この商売長いとわかるんだよ」

京太郎「あとどれくらい?」

揺杏「まあ、そう急かすなって。15分ってところだな」

京太郎「あー、緊張してきたー……」

揺杏「それはそうと、ニイさん、若い頃はずいぶん遊んだだろ?」

京太郎「いやいや、それほどでもないっすよ」

揺杏「いやー、その顔は女泣かせの顔だ、間違いないね」

京太郎「あ、はぁ……」

ふと、あの人の顔が浮かんでしまった。


タクシーは信号で停まった。

長い赤信号に、カタカタ足を動かしてしまう。

京太郎「長いっすね!この信号」

揺杏「まあね。北海道一、長い赤信号だ」

京太郎「そうなんっすか」

揺杏「そして、アンタずいぶんたくさん恨み買ってるね」


京太郎「降ります」

俺はタクシーの扉に手をかけた。

揺杏「赤ちゃんの魂はどっから来るんだか……生命の等価交換って奴だな」

女はどこか諦めたように宙を見ていた。

揺杏「トんでもない客とあいのりしちまったなァ……」

ぎょっとした。タクシーは交差点のど真ん中に停まっていた。

どでかいトラックが絶叫のようにクラクションを鳴らしながら、俺の方へと突っ込んできた。


責任とる京ちゃんエンド

~~番外編~~

私、本内成香は一年ほど遠回りをして、ちかちゃんと同じ東京のおっきな大学に合格することが出来ました。

揺杏「あざといなー、成香は。東大って言えばいいのに!」

成香「はわわ……」

爽「まー、そういう設定だからな」

誓子「なによそれ」

北海道に残った二人が、夏に東京に遊びに来て、私たち有珠山高校麻雀部のプチ同窓会が開かれています。


爽「それじゃあ私たちの変わらぬ友情に」

「かんぱーい」

揺杏「ユキが居ないのは残念だけどね」

ユキちゃんは、牌のお姉さんになるために修行中です。忙しくて今回はお断りでした。

誓子「ねえ、爽、あなた進級できたの?」

爽「あー……聞かないでくれ……ま、まだ1年生」

揺杏「うわっ、ダサっ」

爽「お前と遊び歩いていたせいだけどね。私は一応籍はおいてるから」

爽さんと揺杏ちゃんは、何をやっているのかよくわかりません。


宴もたけなわ、楽しい時間はあっという間に過ぎます。

揺杏「なー、チカセン、最近男とかどーお?」

誓子「まあ歳相応には」フーン

爽「チカは負けず嫌いだからね」

こういう話は私、いつも寝た振りしてます。

揺杏「ところで成香に春は来たのかなー」ウリウリ

成香「飲み過ぎて眠いです……ムニャムニャ」

誓子「それが最近気になってる男がいるの、この子」

爽「おっ!大学生やってるねぇ!」

揺杏「どれどれ、お姉さんが恋愛相談に乗ってやろう」

成香(同い年なのに……酷いです)


揺杏「でー、相手どんな奴よ」

誓子「それがね、同じ部活のマネージャーで。写真があるんだけど」

成香「ち、ちかちゃん!」

爽「眠いんじゃないのかよ……」

誓子「どう思う?彼」

揺杏「うわっ!イケメン!成香にはもったいない!クソ、よこせ!」

成香「もうっ……京太郎君とはそんなんじゃ」

爽「んー?」

誓子「どう?爽」


爽「こいつは駄目だな」

成香「ひどい!京太郎君はいい人です!仕事もマメだし、優しいし!」

揺杏「あはは、これは熱に当てられてるねぇ」

誓子「はい、爽、正解」

成香「な、なんでですか……」

爽「何か憑いてる」

それでその話題はそれっきりになりました。


番外編終わり


一応希望がたくさんあった成香ルートのつもりです。

今日はここまでにしておきます
続きはまた後日

通報しました


京太郎「こっちの分厚い方で」

咲「そ、そう……」プルプル

お金を取ったら、咲は震えていた。

京太郎「……すまん」

咲「い、いいんだ、京ちゃん、そ、そういう、約束だし」

咲は必死に涙を堪えていた。

咲「じゃあね、京ちゃん。気が向いたら、顔、見に来てよ」

咲は後ろを向いて、その場から逃げ出した。


京太郎「ま、待てよ!咲!」ギュッ

咲「はふぅ……何?抱きしめるなんて……」

京太郎「俺はお前の一番にはなってやれねぇ……でも、咲、俺にはまだお前が必要だ」

京太郎「俺の近くに居てくれ……たまに会いに行くからさ……」

咲「……」

京太郎「……写真、ばら撒くぞ」

咲「……脅されちゃあ仕方ないなぁ……はぁ……私って馬鹿な女」

京太郎(咲は金持ってるしな、いざって時に頼れるのはもうこいつくらい……捨てとく手はねぇよ)

俺たちは東京行きの切符を買って、一緒に帰った。

京太郎(さて、問題は久さん……LINEに返事がねえのが怖すぎる……)


咲と駅で別れて、夜遅く、俺は自宅に帰ってきた。

京太郎(電気消えてる……寝てるのかね……うん、腹くくった)

京太郎「……た、ただいまー……遅くなりましたー……」

部屋の暗闇の中に、久さんは座っていた。

俺は慌てて、電気を付けた。

京太郎「あ、あの……!し、仕事が……」

久「匂い」

京太郎「はい?」

久「生ごみみたいな匂いするから、とりあえずシャワー浴びてきて」

こーわーいー


俺は言われるがままに、シャワーを浴びている間、どう言い逃れをするかを考えていた。

京太郎(仕事が長引いたってことで、えっとどういう仕事だっけ)

京太郎(まあ240万円は久さんにも知られていない俺の通帳に預けておいたから、セーフとして)

京太郎(10万円見せれば納得してくれるかなぁ)


久「ずいぶん長いシャワーだったわね♪」

シャワーから出るとやけに上機嫌の久さんが、簡単な料理を作って待っていてくれた。

京太郎「あ、あの、俺……ごめんなさい!」

久「んー?何に?」

京太郎「遅れちまって、いや、大雪にやられて……」

久「そ。なら仕方ないわね。まずはお仕事、ご苦労様でした」

そう言ってタオルを渡してくれる彼女を、俺は心底愛おしいと思った。


妊娠18週ーー

俺は考えるのをほとんど放棄して、いつもの公園のベンチでタバコを吸っていた。

咲とは相変わらずズブズブの関係を続けているし、久さんとの関係も曖昧なまま、時間だけが過ぎていく。

京太郎(この前の一件以来、久さん抱かせてくれない……やっぱ感付かれてるのかなぁ)

京太郎(それにしても生ごみみたいな匂いはねーよ……)

京太郎「はぁ……マジで八方塞がりだぜ……」


揺杏「……」ジロジロ

京太郎(なんだこい……この人、さっきから半分浮浪者っぽい俺のこと……)

黒くて綺麗な髪をまとめた、女子大生風の格好をした美人が、俺の側に寄ってきていた。

揺杏「いやー、オニイサン、どうしたのさ、こんな昼間っから」

京太郎(……逆ナンって奴か?俺もまだまだイケるのかね……いや俺には久さんが)ドギマギ

京太郎「何の用ですか?」

もう駄目みたいですね・・・



揺杏「用がなくちゃ話しかけちゃ駄目かい?」

京太郎「いや、そんな事……」

彼女はさも当たり前のように、俺の隣に座ってきた。

京太郎(コレがモテ期……相変わらず胸がない女にモテるなあ、俺)

揺杏「私、岩館揺杏。ユアンって呼んでいいよー、兄さんは?」

京太郎「す、須賀京太郎っす」

揺杏「ふーん、じゃあ京ちゃんだな」

京太郎「いやいや……で、壺でも買って欲しいんですか?あいにくお金、ないっすよ」

揺杏「うわっ……そーゆーの傷つくんだけど」

京太郎「笑いながら言われても」


揺杏「京ちゃんはお仕事何してるの?」

京太郎「俺、一応大学生っす」

揺杏「へー!どこ大?」

京太郎「いや、多分聞いても分かんないようなちっちゃい大学」

揺杏「そうなんだ、大人っぽいから社会人かと思ったよ」

京太郎「ゆ、ゆあんちゃんは?」

揺杏「私?いやー、実は芸大の4年生なんだ」

京太郎「ゲイ大?」

揺杏「うげっ、勘違いされがちだけど、ソッチの意味じゃないよ、芸術的な何か勉強する大学」

揺杏「ミケランジェロとかラファエロとかみんなで勉強してるの。知ってるぅ~?」

京太郎「まあ名前くらいは。彫刻や絵が何億円もする人でしょ?」

揺杏「うんうん、そういう認識だよねぇ~」

あっ・・・絵を買わされるのか(絶望)


京太郎「で、ゆあんちゃんは?」

揺杏「実はさー……」

彼女は衣装を作る学部で、卒業間近で卒業作品を作ったが、モデルが居なくて困っていると言った。

京太郎「えっ、もう冬ですよ!?卒業間近じゃないっすか」

揺杏「いやー、ずっと作ることばっかでさ、着てもらう人の事考えてなかったんだわ、これが」

揺杏「それで昨日からずっと街でモデルになってくれる人探してたんだけど、ぴーんと来なくてねぇ」

京太郎「俺なんか、浜に打ち上げられたイワシとたいして変わらないっすよ」

揺杏「なんだいそれは……でさでさ、差し出がましーお願いなんだけど!」

揺杏「京ちゃんにモデル、お願いしたいんだよね!どう?お礼は弾むよ!」パタパタ

ふと、彼女を何処かで見たことがある気がしたが、どこで見たのか思い出すことは出来なかった。


俺は……

①「こんな俺でよければいいっすよ」
②「お礼ってなんすか?」

↓1

2


京太郎「お礼ってなんすか?」

少し胡散臭い話だと思ったので、確認をとる。

お礼だよーって10円玉を貰っても仕方がない。

揺杏「そうだなー」

彼女が距離を詰めてきて、俺の腕に抱きついてきた。

揺杏「最初に見た時からカッコイイと思ってたんだぜ」

京太郎「あ、あの……(胸、当ててんだろうけど、何もなくて悲しくなるぜ……)」

揺杏「京ちゃんも男の子だろー?」

俺の股に手をのせて、耳に息を吹きかけられた。不覚にもゾクッとした。

京太郎「前払いとか、ありっすか……」

揺杏「あはっ♪」

最初からハッピー(ハッピーとは言ってない)ENDしかないからあきらメロン


俺は休憩所で、揺杏ちゃんの身体をじっくり堪能した。

京太郎(セックスうめーなゲイ大生……たくさん咥えてんだろーな……)

揺杏「どう?ニイさん、気持よかった?」

京太郎「あっはい」

揺杏「じゃあ早速だけどモデルになって欲しーんだけどさ」

京太郎「はぁ」

揺杏「あれ?もちろんこれで終わりじゃないよ。終わったらもっとサービスするよ~?」

京太郎「マジっすか」

揺杏「じゃあ、車、乗ろうか」

京太郎「俺、頑張ります!」

セックスの後の気だるさを押し込めて、俺は揺杏さんの車の後部座席に乗った。

助手席には変なぬいぐるみが乗っかってたから。

完全に気が抜けていた。車の中のお香の匂いと、夜の街の対向車のライトが眠気を誘う。


揺杏「げっろ……あの人、コイツのどこがいいんだかマジで」

まどろみの中で、そんな声が、聞こえた気がする。


鉄さびの匂いで目が覚めた。

京太郎「あれ……俺……」

目隠しをされて、後ろ手で縛られ、椅子に座らされているのがわかる。

京太郎(やっべ……あれ、どうして……確かセックスした後……誰としたんだっけ?)

京太郎(ええっと……)

揺杏「目ぇ、覚めたみたいだよ、サワヤ」

京太郎「この声……揺杏ちゃん……?」

揺杏「ちゃん付けするんじゃねーぞ、ボケ、私のほうが年上だし」

目隠しを取られると、目の前に先ほど抱いた女が立っていた。

やらかした、と思った。ヤバイ相手を抱いてしまった。

爽「言うほど変わらんけどねー」

倉庫みたいな場所だった。女が二人、縛られた俺の前に居た。まだ仲間がいるかもしれない。動悸と、喉の渇きが収まらなかった。


爽「で、どうだったこいつ?うまかった?」

揺杏「いやー、サンマの腐った匂いだったよ、マジで。ヘッタクソだったし」

爽「それは残念だな」

京太郎「……」

俺はただ、うなだれていた。手と足をカチャカチャ動かしても、がっちり椅子に縛り付けられていて、到底抜けられそうもなかった。

京太郎「あんた、確か……」

爽「私の事知ってるのか」

揺杏「アンタ有名人だよ、ほら、日本選抜」

爽「ああ、そっか、コイツも一応麻雀部員って話だったな」

京太郎「……要求は」

揺杏「へ?」

京太郎「いや、ほんと、勘弁してくれ……警察には言わないからさ……」

揺杏「ぷっ……あーっはっはっは……なあ、爽、コイツ私たちを笑い殺そうって作戦だぜ」

京太郎「なんで俺だけこんな目に……」

クソアマァ!


遠くから汽笛が聞こえた。

京太郎(ちくしょ、どっかの港だ、ここ……獅子原さんだっけ、この人……)

京太郎(確か、インハイの時の咲の相手だった……ああ、そっか、こっちの岩館さんは、久さんの……)

爽「因縁だな」

京太郎「こんなことして……何が目的なんだよ……アンタ達」

爽「お前、宮永咲の男だろ」

京太郎「咲……?咲は……はい」

爽「あいつ、元気にしてたか?」

京太郎「え、ええ……」

爽「ちょっとばかし、咲には世話になっててねぇ……悪いな、アンタの事がどうって訳じゃないんだが」

揺杏「ま、私抱けてプラマイゼロって事にしてよっ!」パタパタ

爽「ま、サイコロだな」

そう言って獅子原さんは拳くらいの大きめのサイコロを俺の手に握らせた。彼女の手は妙にじっとりと暖かかった。

爽「振ってくれ」

偶数の目が、黒く塗り潰されていた。

俺はなされるがままに、サイコロを振った。

コンマ
奇数:半殺し
偶数:殺し

↓1

こわいお


黒く塗りつぶされていない目が出た。

揺杏「おっ、ツイてるね、京ちゃん」

京太郎「助けてください、助けて……なんでもしますから……知ってること、何でも話しますから」

爽「助かったよ、アンタ」

京太郎「ほ、ホントですか!?」

爽「だからそんなみっともない命乞い、するなよ」

京太郎「……」

揺杏「京ちゃん、ちょっと口開けな。舌、切っちゃうから」

京太郎「もがっ」

口に、布を詰められた。

懐から、彼女はペンチを取り出した。

京ちゃんがクズだから目立たないけど変な人多すぎィ!


京太郎「ひぐっ……ひぐっ……」

俺はみっともない声をあげていた。

右手の爪を全部と、左手の爪を3本剥がれた時、小便を漏らしてしまった。

揺杏「うわっ、きったね」

爽「咲にコイツの悲鳴聞かせてやるか」

揺杏「そっか、なら」

口の布を取られた。

爽「携帯のパスワードと咲の出る番号教えろ」

京太郎「うぐっ……ゼロキュウイチロクです……咲は、嶺上海上保険……」

京太郎(咲の奴……何してんだよ……なんで俺をこんな目に合わせるんだよぉ……ちくしょう、連れてきたのは失敗だった……)

俺は、頭のてっぺんまで走る激痛に苛まされながら、そんなことを考えていた。

封筒もサイコロも

二択どっち選んでもひどすぎ
何させたいのよこのスレ…

>>503
どっち選んでもって普通に最後の選択肢間違えてバッドエンドになっただけじゃん

>>507
①「こんな俺でよければいいっすよ」
②「お礼ってなんすか?」

警戒して②選んだろうに、①と展開一緒っぽいじゃん
しかもすこぶる気分悪い展開

>>510
引っかけに引っ掛かっただけだろ
同じ展開かなんて分からんし>>509も言ってるけどそういう展開が嫌なら最初から読むべきじゃない


爽「おー、咲か、私だ、私」

爽「この前のオトシマエ、お前の男でつけさせて貰ってるわ」

爽「安心しろよ、下には手ェ出してないから、あ、揺杏が寝たんだっけ」

爽「電話切ったら殺すぞ」

また爪を剥がれた。痛みのあまり、とんでもない悲鳴を出してしまう。

揺杏「へっへっへ」

爽「ほら、励ましてやれよ」


咲「京ちゃん!京ちゃん!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

耳元で咲の声が聴こえる。もうどうでもいい。

爽「小鍛治に泣きついてもいいんだぜ。私はこれから上に行く人間だからな」

爽「どんなことでもやるぞ、咲」

爽「これに懲りたらもう、あんな真似しないほうがいい……」

何やら遠くで話し声が聞こえる。頭に袋を被せられた。

揺杏「死ぬんじゃねーぞ、ニイさん」

俺の頭に、重たい何かが思いっきりぶつけられた。

>>512
引っ掛けだろうか?
封筒の片方を選んだらトラックと衝突、もう片方を選んだ流れでは、この様。
サイコロの目半分の確率で死だ、選ばせる選択式としてはアンフェアだと思う


京太郎「ぶはっ……はぁ……はぁ…いてぇよぉ……」

頭に冷たい水をぶっかけられて、俺は意識を取り戻した。

揺杏「今回はこんくらいで勘弁してやるってさー」

手錠をかけられたまま、俺は硬いコンクリートの床に寝転がされている。

爽「警察とかマスコミとかにチクったらさー」

爽「次は竹井久だぞ」

京太郎「ひ、久さんには手を出すな!……あの人は、俺の」

揺杏「ならもっと大事にしてやれよー。二股とかサイテーの男のやることだぜ?私らが言うのもなんだけど」パタパタ!

爽「じゃあ、咲が来たらよろしくな。あとであいつに場所教えとくから助けに来てくれると思う」


二人が倉庫からいなくなって、俺は一人、冬の冷たい倉庫の床で涙を流していた。

体中が痛くて、眠れやしなかった。

今日はここまでにしておきます

咲「京ちゃん!京ちゃん!」

咲「憩さん、早く診て!」

憩「こら酷いわ、とりあえず近くの病院運ばな」

京太郎「け、警察には……言わないでくれ……」

憩「大丈夫ですーぅ、心得てますからー」

咲「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

咲は涙を流して頭を下げていた。俺はそんな咲の方から目を逸らし続けた。


憩「折角の男前が台無しやけど、まあ少し安静にしとれば治るから」

包帯をまかれて、俺はベッドに寝かされていた。

全身青あざだらけで、顔は見れたものじゃなかったけど、骨が折れていたのは鼻と頬と鎖骨。

あと歯も数本失って、肋骨にはヒビが入っていたものの、致命的な怪我ではなかった。

爪を剥がされた指は、ソーセージのようにパンパンに膨れて今は使い物にならないけれど、時間がたてば治るらしい。

咲「京ちゃん……絶対復讐するから、安心して。京ちゃんの前に引っ張りだして、何倍にも傷めつけてやる!」

咲「京ちゃんが好きなことやらせてあげるから。ね?すぐ連れてくるから、それまで我慢してて」

京太郎「いいんだ……そっとしてくれ」

咲「でも!そんなんじゃ、京ちゃんの気が収まらないでしょ!?」

京太郎「もう、いいんだ……俺を、巻き込まないでくれ……」

咲「……ご、め、ん」

俺はあまりの恐怖にへこたれてしまった。


咲はずっとベッドの側に座っていた。

京太郎「帰ってくれ……もう顔も見たくない」

咲「ごめんなさい」

京太郎「もうこんな人生嫌だ……俺は、俺は……」

体中が熱を持って、最初の夜は一睡もできなかった。

俺が激しくうめいて、助けてくれー助けてくれーともがいていたら、咲は黙ってナースコールを押してくれた。

看護師さんがやってきて、変な薬を点滴に混ぜていたけれども、痛みは一向になくならなかった。

京太郎「咲!出てけ!お前のせいだ!お前のせいだ!」

そんな俺に咲は申し訳無さそうに謝り続けていた。

京太郎「お前と付き合ってなければ、あんな悪い連中に、殺されかける事もなかったんだ!」

ただ、本当に、堪忍袋の緒が切れていた。

京太郎「いてぇ……あー!痛い!熱い熱い、クソッ、咲のせいだ、お前のせいだ、チクショウ!」

俺は、ベッドに咲がいるのを確認して、そんな言葉を一晩中吐いていた。


咲の顔を、ふと見た。顔に生気がなかった。彼女の顔を見ていると、俺まで絶望的な気分になる。

だから、検査の時に、荒川さんに、咲に出て行って欲しい旨を告げた。

検査から帰ると、咲は病室に居なかった。

せいせいしたけれど、病室はがらんとしてしまった。

久「あなた!」

入院して3日目、久さんを呼んだ。彼女は、ズタボロになった俺を見て、泣いていた。

久「ごめんね、ごめんね、わ、私のせいで……」

京太郎「久さんのせいじゃない」

久「でも、でも、アナタに苦労ばっかりかけて……」

京太郎「いいんだ、もういいんだ……」

頭が割れるように痛かった。もう俺は、自分の生きる価値は一切なくなってしまったと思った。


京太郎「なあ久さん」

久「なあに?」

入院して1週間、腫れが引いて、痛みも和らいできた。退院の目安の話も出てきた頃だ。

京太郎「俺に、資格、あるのかな」

久「何のよ」

京太郎「父親の、資格」

久さんは、何も答えなかった。

京太郎「怖くてさ、病院の通路で他人とすれ違うだけでも、苦しいんだ」

久さんは、俺のベッドに腰掛けて、足を優しく擦ってくれる。

京太郎「あの日から、辛くて苦しいことばっかで……逃げてばかりいた」

京太郎「その報いが、コレだと思うんだ」

京太郎「楽に、なりてぇ……やり直してぇよ……」

俺たちはずっと無言で、多分、お互いに答えを探していたんだと思う。


夕食が出る時間帯になろうとしていた時だった。久さんが口を開いた。

久「……堕ろそっか」

喉が、ごくっと鳴った。

そろそろ20週になる頃だ。おなかの中に何かいるのが嫌でもわかる。

結論を出すことからも俺は逃げ続けて、彼女に言わせてしまった。

俺は自分を呪った。どこで俺はこんなになったのか。

高校の頃の俺が見たら、信じられない顔をして、多分いまの俺をぶっ殺すだろう。

俺は……

①「……はい」
②「……もう少し時間を下さい」

↓ 先に三票あった方から先にエンディングを書きます。自分で出来に納得できたら、もう片方は書かないかもしれません。
よろしくお願いします


続きはまた後日
作者腰痛のため土日は書けませんが、急病にならなければ火曜日には帰ってきます

乙です
できれば分岐毎にあるエンディングは全部見たいな

>>552
そう言って頂きありがとうございます。
分岐もその時は色々考えてるんですが、どうも行き当たりばったりなもんで

来週中には完結予定です
エンディングは残り2つ用意してるので、それで終わりです。すみません


京太郎「……はい」

俺は恐る恐る久さんを見た。彼女は憑き物が落ちたように微笑んでいた。

久「はぁー……なんか、すっきりした」

京太郎「すみません……俺……」

久「いいのよ、いいのよ。私も途中から意地になってただけだから」

久「なんとなーく、コレ、無理だなってわかってた」

久「でもね、最初に産みたいって言ったのは本心よ」

久「あの時、堕ろしたら、須賀くんがどこか遠くに行っちゃうんじゃないかって、不安だったの」

久「そういう打算が一番だったけどね、産みたいって言う気持ちはそんな計算抜きだった。」

久「でも、あなたが堕ろしてって言うまで、絶対に私から言わないぞーって、意地はってた」

京太郎「俺、俺……うぇっ……」

久「男の子なんだから、泣かないの」


久「要するに、お互い子供だったのよね……そんな私たちが親になろうって、無理な話よ」

俺は嗚咽を漏らしながら、彼女の話を聞いていた。

久「はー……何やってんだか、私。ホント馬鹿だわ」

久「麻雀もやめちゃって、大学もやめちゃって、友達とほとんど縁切れちゃった」

久「須賀くん、あなたにも迷惑かけたわね。ごめんね、ほんと。」

久「どうしよっかな~これから。綺麗な体になって、まこのところに転がり込もっかしら」

久「私たち、まだ若いんだし、やり直せることだけが希望よね」

久「ねぇ、須賀くん、私、やり直せるわよね?私、また、生きてるって実感、得られるわよね?」

部長は絞りだすように言った。俺は何も返す言葉もなかった。


久「あっ……動いてる……」

部長はおなかに手を当てた。

京太郎「最後に、許してくれるなら……触っていいですか?」

久「うん」

確かに、久さんのおなかの中で、何かが静かに動いていた。


部長が帰った後、俺は病室で一晩中泣き明かした。


俺たちはお金を出し合って、しかるべき手段で、子供を堕ろした。


彼女が居なくなった部屋は少しがらんとして、俺は大切な何かを失ったことに気がついた。

京太郎「はぁ……すっきりしねぇなぁ……」

退院して怪我も良くなってきたが、俺は何もやる気が起きなかった。

休日、部屋でゴロゴロしていると、部屋のチャイムがなった。

久「竹井です」


京太郎「お茶、出しますよ」

久「いいのよ、すぐ帰るから」

おなかのへこんだ部長は、昔のままだった。

京太郎「今日は」

久「挨拶に。広島に行くことになったわ。まこのツテで事務の仕事紹介してもらえそうで」

京太郎「そうですか」

久「須賀くんは?」

京太郎「ぼちぼちっす」

久「そ。」


積もる話もたくさんあるけれど、部長が広島に行く新幹線の時刻もある。

近場の駅まで送る道中、一言も会話はなかった。

駅の入口で、彼女はもうここまででいいと言った。

久「アナタも前を向いて進むのよ。ほら、シャンとしなさいよ」

笑いながら、俺の肩を叩く部長は、高校の時と何も変わっていなかった。

京太郎(女ってつえーわ……)

そんなことをぼんやりと考えていた。

久「……それじゃあね、須賀くん。もうお別れね。体には気をつけるのよ」


京太郎「あのっ……」

久「何?」

京太郎「俺っ……酷いことばっかしてっ……ホントにっ……部長には……」

久「お互い様。気にしないで」

彼女は寂しそうに笑っていた。

京太郎「すみません」

俺は彼女を抱きしめていた。

久「ちょっと。やめなさい」

京太郎「俺、あなたが居ないと駄目だ。」

京太郎(理屈じゃねぇんだよなぁ……俺にとってこの人は……)


京太郎「次は絶対、幸せにします。俺、生まれ変わります。だから……」

彼女は俺を押し放して、背を向けて駅の方へ歩き出した。

久「……」

京太郎「煙草も辞めるし、まっとうな仕事にも就く!あなたが側に居ない間、俺の心にはぽっかり穴が空いて……」

京太郎「気が付かなかったんだ。俺にとって、部長はどんなに大切な存在だったか」

京太郎「俺にとって、アナタと一緒にいることが、大学出ていい企業に努めて程々裕福な暮らしをすることより、幸せなんだ」

京太郎「頼む……久さん……」

京太郎「行かないでくれ。頼むっ……俺の人生賭けるから……結婚してくれ、久さん」

彼女の足がとまった。

久「……信じられるわけないのよ、この屑」


京太郎「迎えに行きます、俺、絶対、あなたに相応しい男になって……それまで、待ってて下さい」

久「……」

京太郎「それまで、どうか」

久「はぁ……何年後になるのやら……それまで新しい男見つけちゃうわよ、私」

京太郎「ならまた振り向かせてみせます。俺にはもうあなたしか見えない」

久「どーせ、3日後には別な女に同じこと言ってるんでしょ?」

京太郎「久さん……」

久「……私って馬鹿ね。あの人も、ママに同じこと言ってた。結局居なくなっちゃったけど」

久「結局、蛙の子は蛙。……約束、守りなさいよ」

京太郎「じゃ、じゃあ!」

久「最後に宣言して。世界で一番私を愛してるって」

京太郎「……愛しています、須賀京太郎は、竹井久を世界で一番、愛しています」

久「っ……!ねぇ、きょ、京太郎君、新幹線もう間に合わないわ、どうしてくれるの?」

京太郎「とりあえず、染谷さんに謝って下さい。今日は俺んちで再出発をささやかに祝いましょうか」

Happy End!

ご愛読ありがとうございました!


遅くなってすみません……寝坊したりしてました。

続きもありますが、ここから先は閲覧注意です。
気分を害する可能性があるので、それでもいいよって人と咲はどうなった!って人は読んでくれると嬉しいです。

風呂入ってからまったり書いていきます。1時間後くらいかな?


久「ってわけで、私たち」

京太郎「俺たち、結婚しました」

まこ「おめでとさん」

俺が22歳になって、仕事が軌道に乗り始めた時、俺たちは籍を入れた。

今日は染谷さんを交えて、居酒屋でささやかな結婚披露宴のようなものを開いた。

まこ「時に、京太郎、今何やっとるんじゃ?」

京太郎「建設現場で働いてます……肉体労働なんで俺向きです」

まこ(頑張っとるんじゃなぁ……最初、久からこの話聞いた時は耳を疑ったけんのぉ)

久「私も働いてるわ、って言ってもお金苦しい月に雀荘で荒稼ぎしてるだけだけど」

京太郎「やめろって言ってるのに、まあ久さんのストレス解消みたいなものですよね」

久「うん、ずっと家にこもってるだけじゃ、気が滅入っちゃうからね~」


まこ「いや、でも久と京太郎が……世の中何が起こるかわからんのぉ……で、詳しく馴れ初めでも聞かせてくれんか?今日は」

京太郎「ま、まあ……」

久「大学の頃ね、付き合いだしたの。あの頃はまだ青くってね、いろんな迷惑みんなにかけて、ふたりとも大学やめちゃったんだけど」

まこ「あー、あの頃、ワシに色々相談しとったのって」

久「そ、それ。まあウジウジ悩んでたんだけど、京太郎君が私の事愛してくれるって言ってくれたから」

京太郎「いやー、ホントにご迷惑おかけしました」ペッコリン

まこ「いや、それはいいんじゃが……おっ、和がテレビ出とるぞ」


恒子「全日本選手権個人戦、前半戦終了です、トップ目は原村プロ、5000点差で2位の獅子原選手を離しています。夢野プロが、獅子原選手と1万点差の3位、ラスはこれまた意外、宮永プロです」

恒子「小鍛治プロもこの日本一を決める舞台に十数年前に立ちましたが、その経験を踏まえてこの流れをどう見ますか?」

すこやん「十数年前ってのは余計だよ……この決勝卓、若い世代で占められていますね、若い世代の台頭が著しい」

すこやん「この世代は良い選手が揃っていますね」

すこやん「特に原村プロはこの冠を取れば海外に舞台を移すと噂されていますから……夢野プロは初めての大舞台で若干の緊張が見られるか。」

恒子「ねえねえ、アマチュアが一人いるんだけど!」

すこやん「勉強不足だなあ、アナウンサーさん!全日本選手権だけは7大タイトルで唯一アマチュアからも出場できるの!獅子原選手は四年前の学生選抜で日本代表に世界一の栄冠をもたらした名選手……まあ陰側だけどね」ボソ


まこ「いやー、すごいの……あっという間にスターダムを駆け上がって」

久「和も呼ぼうと思ったんだけど、さすがに、ね」

まこ「あの宮永っての、咲のお姉さんじゃな」

久「……」

京太郎「……」

まこ「なあ、何かあったんか?」

京太郎「いや、いいじゃないですか、咲の事は!ちょっと、昔の事です、ほんと、俺が馬鹿だったんです」

久「ば、番組変えましょ!」


照「ねえ」

爽「なんだ?」

照「咲の事、知ってるんでしょ。教えて」

爽「こりゃ意外だなー……宮永プロから話しかけられるなんて。光栄です」

照「……なんで出たの?」

爽「日本一取れば、小鍛治さんが遊んでくれるって言うからさ」

照「その左手、どうしたの?」

爽「質問が多いな、あんた。これ?あんたの妹さんとの勝負でね……まあ左手1つで安い買い物だったよ」

照「……」

爽「私に勝てたら、あの娘の結末、教えてやるぜ」


憧「そういえばユキは獅子原さんと同じ高校出身だね。その点から解説をどうぞ!」

ユキ「あっ……三代目牌のお姉さんになりました、ゆきりんでーす★」

ユキ「応援よろしくお願いいたします」ペッコリン

ユキ「爽先輩とは一年だけでしたけど、同じチームでお世話になりました」

憧「副将と大将……当時の新道寺のような特別な絆があったりするんでしょうか?」

ユキ「えっ……別にそういうのは」

憧「な、何か思い出のエピソードとかありますか?」

ユキ「そういえば、中学校の頃、いじめられっ子だった私を拾ってくれたのがあの人でした」

ユキ「あの人が居なければ、きっと今の私は居なかったと思うので、それは感謝しています」

憧「はー……いい話ですね」ホロリ

ユキ「そうなんですか?」キョトン


まこ「まあ何にせよ、結婚おめでとさん」

久「ありがと……まこ。」グスン

まこ「それにしてもあんた、いい相手ゲットしたのぉ」

久「えへへ……あげないわよっ」

まこ「京太郎も、こんなええ嫁さん居ないんだから大事にせぇよ」

京太郎「はいっ!もちろんです」

まこ「それじゃあ邪魔者は帰るから、後は二人でしっぽり語り明かすとええ」

久「今日は本当にありがとう……まこくらいしか、祝ってくれる人、いなくて、私たち……」

まこ「久、アンタに涙は似合わんわ……辛いことも多いだろうけど、困ったらウチを頼ったらええ」

まこ「京太郎に愛想つかしたら、いつでも広島に逃げて来てええぞ!」

京太郎「ちょ、ちょっと染谷さん!」

まこ「冗談じゃ。それじゃあ幸せにな」

後ろを向きながら、手を振って、染谷さんは居なくなった。



京太郎「良かったっすね、染谷さん呼んで」

久「うんっ……少し、救われたわ」

京太郎「じゃ、今日はホテル予約してるんで」

久「……」ギュッ

京太郎「そろそろ子供欲しいな、俺たちも」

久「ごめん……」

京太郎「いや、久さんが謝ることじゃないよ、こればっかりは時の運みたいなものだし」

生活が安定してきた頃、久さんは子供をねだったので、俺は一層頑張ることにした。

ただ、恵まれなかった。

京太郎(一年間中出しを続けて妊娠する確率は80%くらいらしい……うーん……)

京太郎(ちなみにコンドームの妊娠確率が2%ってのは、一年間理想的な使用方法をした場合、一年間に妊娠する確率なんだ!)

京太郎(中で破けたりしない限り、絶対に大丈夫だと俺は思うけど、まあデータの中の理想的ってのもよくわからないぜ!)

京太郎(ピルの方が効果が高くて、0.3%だな。ピルとコンドームを併用することが性病予防や望まない妊娠の回避に繋がるんで、個人的にはおすすめだ!)

京太郎(ただピルは副作用があるんで、しっかり病院で出してもらうのがいいと思うぞ!)

京太郎(あと、2年間中出しセックスをして妊娠できない状態を不妊症という。医学的な理由によるものもあるし、女性だけでなくて男性側の問題も実は多いんだ。あと、単純に相性が悪いってのもあるさ)

京太郎(石女って言葉があるけれども、それは古い言葉って認識を持つことが大切だぜ!)






久「ねえねえ、あれ、桜島よ!」

京太郎「煙出てますねー」

俺たちの新婚旅行は鹿児島だった。

久「今日は指宿で一泊、楽しみだわ~」

俺の運転するレンタカーの中で、久さんは目を輝かせていた。

大人っぽいところもあるけれども、可愛いのが久さんの魅力だ。

京太郎(俺たちの間で、最初の妊娠の話は殆どタブーになっていた)

京太郎(俺も考えてもしかたがないので、考えないようにしている)

京太郎(そういうことも大人になるには大切だと思っている)

京太郎(ただ、この頃、嫌な考えがどうしても頭を過るんだ)

京太郎(どうしてあの時妊娠したのか、部長は何かを隠していなかったのかって)


京太郎「なあ、久さん……」

久「んっ……なあに?」

京太郎「あの時、俺を恨んでたのか?」

久「あの時って?思い当たる節がありすぎて」

京太郎「やだなぁ」

久「あっ……そこっ……」

京太郎「ん」

久「……何でも聞いていいのよ……答えてあげる、今日は」

俺は……

①「あの時、妊娠したのって、何か心当たりありますか?」
②「咲と浮気してたこと……」
③ 自由

↓1 安価とったら飯買って来ます。少し遅れるかも


京太郎「あの時、妊娠したのって、何か心当たりありますか?」

久「……」ピクッ

久さんが固まったのがわかった。

京太郎「……俺、久さんを信じてますし、過去のことなんて今はどうでもいいんですが」

京太郎「何か気になるんです……俺、1回だけ生でヤったのは覚えているんですが」

京太郎「それだけで妊娠するかって、凄い疑問なんです」

京太郎「……最近ずっと生でヤってんのに出来ないし」

久「……」

京太郎「久さん!」ギュッ

久「ふーっ……ごめんね、アナタ」

京太郎「……」

久「ずっと話せなかったけど、もう私たち、一緒に生きてくんだし……教えるわ」

~回想~

久「咲!ここ、ここ!」

咲「部長~!」

久「ちょっと、もう部長は辞めてよ」

咲「私にとっては部長は部長ですよぉ」

あの夏、まだ須賀くんと付き合う前、私は咲と3年ぶりに会った。

咲は少しだけ大人びた雰囲気をまとっていた。

咲「凄いですね……帝大の麻雀部の部長なんて」

久「まあね~、咲はなにしてるの?高校辞めてから足取り掴めなくて、みんな心配してたのよ?」

咲「先輩方にもご心配おかけしました……私、お姉ちゃんに追い付くため……ネリーちゃんと中国で武者修行してたんです」

久「なにそれ」

咲「決勝終わった後、二人で意気投合して……そのまま……あの子は中国は金が集まるって言って……」

咲「ずいぶん無茶しました……身体も賭けたりして……もちろん勝ちましたが」

咲「途中から何か違うって、思ったんです。私、ネリーちゃんと違ってあんまりお金にも興味なくって」


喫茶店でお茶をしながら、私たちは昔話に花を咲かせていた。

久「でね、須賀くんが私を追っかけて麻雀部に入ったのよ」

咲「京ちゃんが?」ピクッ

この時、咲の反応が少し変わったのがわかった。可愛いと思った。

久「そういえば、須賀くん、ゆーきと別れたみたいね」

咲「そ、そうなんですか……」

久「私も前に、須賀くんと二人で飲んだ時に、やっと聞き出せたんだけどね」

久「まあ初恋なんてそんなもんよねーお互い、若くってさ、最初はいいんだけど何も見えないのよね」

咲は見るからに落ち着きがなくなっていた。彼女が須賀くんにほのかな恋心を持っていたのは私にもわかっていたから。


咲「じゃ、じゃあ京ちゃんは、今、相手、居ないんですか?」

久「んー?多分ね」

咲「そ、そうなんだ……」ホッ

久「そんなに気になるの?」

咲「いえ、そんなんじゃ……ううん、もうやめにします」

咲「部長、お願いがあるんです。」

咲は覚悟を決めた顔をしていた。

咲「私、京ちゃんが好きなんです。ゆーきちゃんにとられちゃった時は凄い後悔して、何度も自分を責めたけど」

咲「……私、京ちゃんとお付き合いしたいんです。部長、協力して下さい」ペッコリン

久「きょ、協力って……」

私はこの時、咲の真剣な顔つきに気圧されていた。

咲「……お願いします……私、逃げ出すように高校から居なくなっちゃって、今から京ちゃんに連絡取るのちょっと怖いんです」

この時、私は須賀くんのことを可愛い後輩だと思っていたけど、特に恋心を抱いていたワケじゃない。

久「わかったわ、咲。協力してあげる……今度三人で飲む機会セッティングしてあげるわ。一次会終わったら私消えるから後は頑張るのよ」

咲「はいっ!ありがとうございます、部長!」

久「もうっ、部長呼びはやめなさい……」

でも咲が欲しがっているのを知って、その日から私まで須賀くんが欲しくなっていた。

はっきりとした理由なんてない。あるとしたら、多分、私が賤しい出身だからって事だけなんだろう。



今日はここまでにしておきます


久「それから、私、咲を出し抜いてあなたと付き合ったワケ」

京太郎「そ、そんなことがあったんすか……」

久「軽蔑するでしょ?」

京太郎「でも、久さんには俺から告白したような……」

久「そういう風に仕向けたのよ。ちょっと気がある振りしたら、あなたコロッと私に落ちちゃったわ」

京太郎(クソ、このアマ……)

久「最初は遊びのつもりだったけど、ちょっと火が付いちゃってね」

久「アナタを愛しているのは本心よ……」

京太郎「俺も……色々ありましたけど、結局久さんのこと愛してますから」

京太郎「それで、あの妊娠の件は……」

久「うん……それはね……」


私と須賀くんが恋仲になって一月くらいした頃だろうか。

ある日、ふと須賀くんから変な匂いの香水がすることに気がついた。

ある時は、服の襟にあの茶色い髪が仕込まれたりしていた。

明らかに咲は私を挑発していた。


京太郎「げっ……気がついてたんですか」

久「まーね。私も付き合って1月もせずに浮気するクズ男だとは思ってなかったのが誤算」

久「まあそのまま怒って別れても良かったんだけど、部活の方もあるし、何よりあなたがいい男だった」

久「それに、咲には負けたくなかった」

京太郎「……」


久「ねえ、京太郎君、あなた咲と生でやってたでしょ」

京太郎「な、なんで……」

久「女の勘よ。あなた、生で挿れようとして、私が止めてた事、何回かあったの覚えてない?」

京太郎「そんなことあったっけ」

久「ト・ボ・ケ・ル・ナ……私、すっごい傷ついたんだからね」

京太郎「いや、ホントすみません……」

京太郎(クソ、ねちねちと昔のことを……)

京太郎「で、最初の妊娠の……」

久「呪」


嫉妬で気が狂いそうになりながらも、私は平静を装っていた。

咲と須賀くんが生でヤっているのは間違いないと睨んでいた。

向こうは恐らく正妻気取りなんだろう。咲には大学のキャリアなんてないし、どうせ子供でも強請って須賀くんを絡め取ろうとしているんじゃないかと気が気じゃなかった。

久(私も子供を……でも……この時期に産むなんて無理)

久(……須賀くんだって無理よね……でも、咲に負けるのだけはイヤ)

久(……どうしようかしら……)

久「咲さえ居なくなれば」

私は、靖子に相談した。


藤田「確かにそういう類のオカルトは存在するけどな」

彼女はキセルを吹かしながら、真剣に私の想像に乗ってくれた。

藤田「オカルトを使わなくても、直接暴力に打って出る手も、もちろんあるが」

久「ダメよ。私も咲の事、色々調べたんだけど、彼女ちょっと闇に繋がってるらしくて……小鍛治さんに師事してるらしいの」

藤田「いや、すまん。この話は聞かなかったことに」ガタッ

小鍛治健夜の名前を出したら、靖子は席を立とうとした。

久「ちょ、ちょっと!じゃあ、そういう方向じゃなくていいから!」

藤田「はー……お前、ヤバ男に首突っ込んでるんじゃないだろうな」プカー

久「須賀くんはいい男よ。高校の時から知ってるけど」

藤田「あー、あのマネージャーかー……」

久「一応、マネージャーじゃないんだけどね」


藤田「そんなにイイ男だったか、あれ」

久「ちょっと、怒るわよ?」

藤田「いや、すまん。まあ恋は盲目って言うし」ボソッ

久「で、何とか繋ぎ止めたいんだけどさ、どうしたらいいかな」

藤田「そういうのはしっかり話しあうのが一番だと思うぞ」プカー

久「それはそうなんだけどね……咲に負い目もあるし、もしかしたら須賀くんが咲を一番って言ったら」

久「私、多分、彼、殺しちゃう」

藤田「いや……私にどうしろと」

久「とりあえずー~~~~~~~する、そういうオカルトってないかしら?」

藤田「た、多分ある……でも私はこれ以上相談に乗れない」

藤田「お前の事はずいぶん昔から気にかけていたが……この件に関しては」

藤田「赤阪先生が書いた呪術の教科書一式、貸すからそれで勝手にやってくれ。もうお前も大人だ、自己責任で頼む」

靖子は便利な大人だった。昔、私のママが困っていた頃の彼女の面倒を見たってだけで、私に優しくしてくれる。


京太郎(怖っ……オカルトってなんすか……)

布団の中で寄り添うこの女が今更ながら怖くなってきた。

京太郎「よ、要するにそのオカルトで、妊娠した、と」

久「そうよ。安心してね、須賀くんに毒、持ったわけじゃないから」

久「冗談だったのよ、最初は。ゴムに穴あけたのも、妊娠しやすくなるお薬飲んだのも」

久「ぜーんぶ、もし身ごもったら、あなた、どうしてくれるんだろうって」

久「結局、私の事、選んでくれるって信じてたのよ?」

久「そして、最後には私のこと、選んでくれた。子供堕ろした時は、正直苦しくて色々迷ったんだけどね」

久「アナタに選ばれて、私、幸せ。大学も出れなかったし、昔の夢も1つも叶わなかったけど」

久「咲に勝てたし、今、一身にアナタの愛を受けられて……」


京太郎(この人、ちょっと大学入っておかしくなっちゃった)

京太郎(でも、もう俺にはこの人しかいないんだ……)

京太郎「愛してます、久さん。過去にどんな事があろうと、俺たちはもう、二人で生きてくしかないんです」

京太郎「だから、今は、俺の胸の中で休んで下さい……心配ばっかりかけてホントすみませんでした」

久「ありがと、京太郎君……でも、早く子供欲しいな」

京太郎「はい……俺たちもそろそろ、ですね」

久「そうそう、最近咲からよくお手紙が届くのよね」

京太郎「え?」

久「私宛に……アナタに似た可愛い子供だったわ……もう3歳になるらしくって……女手1つで育てるの、大変だろうけど頑張ってるみたい」

京太郎(ま、まさか、あの時の……)

久「私も、負けてられないわ。……続きをしましょ、京ちゃん♪」


カン!


ご愛読ありがとうございました!

勘違いされてる人たちがおりますが、私は久も咲も大好きです。(むしろその二人が一番好き)
あと、最近では有珠山勢が熱いですね……!
結構適当に書いたんで、矛盾点とかあると思いますが、ご愛嬌ってことで。

ハッピーエンドがかけてよかった。
ちなみに出産ルートだとTrue Endのつもりでした。

キャラディスに感じられた人には申し訳ない!

それじゃ依頼出してきます。アデュー!

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom