勇者「いい出来だ」鍛冶屋「当たり前ですよ」魔子「?」(19)

国が魔族と同盟を結んだのは10年前

魔族がこの村に越してくるようになったのは3年前

魔子「今日はシチューでいいですか?」


私が魔族の娘と暮らすようになったのは1年前だ

鍛冶屋「うん、お願い」

鍛冶屋「そうだ魔子、一昨日作ったイチゴのパイってまだ残ってる?」

魔子「残ってないです」

鍛冶屋「そうか・・・」

魔子「・・・はあ、明日商店で材料を買ってきます。今日は我慢してください」

鍛冶屋「ありがとう。早く食べたいな」

3年前、国は各町村に『人口の1割以上を魔族にする』ことを義務付けた

それまでやたらとツルハシやら木を切るための斧などの注文が多いと思っていたら
なるほどこういうことだったのか

建築業者は猫の手も借りたいほど忙しかったらしい。まあ、私は一人で頑張っていたが

ただの原っぱだった土地に真新しい家がどんどん建てられていった

「注文した斧はできたか!?おお、これはよく切れる!もう40頼むよ」

この忙しさが落ち着いたら旅に出よう。そうしよう

毎日きつかったな、ほんと

何とかその日の仕事を捌き終え、久しぶりにと庭いじりをしていたところ

魔爺「先月からこちらに引っ越してきた魔爺です。孫ともどもこれからよろしくお願いします」

魔子「第一村人・・・発見です。よろしくお願いします」

鍛冶屋「あ、はい。よろしく」


なんとこのかっこいい老人とかわいらしい女の子、魔族だそうで。

人間と変わりないではないか

魔爺「宜しければこちら、お召し上がりください。」

鍛冶屋「あ、わざわざありがとうございます」

魔爺「イチゴのパイです。先ほど作ったばかりですので、せっかくですので温かいうちに」

鍛冶屋「イチゴのパイ・・・ですか?」

魔子「私が作った。甘くて美味しい」

魔爺「では我々はこれで」ペコッ

鍛冶屋「ええ。ありがとうございます」

私は甘いものが好きだ

2週に1度は甘味処に行き、女性に交じってあんみつ団子を頬張る

イチゴのパイ?初めて聞いた。リンゴのパイなら一度食べたことがある

興味のままに気の向くままに、飲み物を用意する前に包みを開けた

鍛冶屋「美味い!これほど美味い甘味は初めて食べる・・・」

感動した。この世に生を受けて早30年、このような『美味』を味わえるとは思ってもみなかった

魔子「ですよね、上手にできてよかったです」

鍛冶屋「!?」

鍛冶屋「き、君はさっきの女の子・・・どうして!」

魔子「玄関が空いていたので」

理由になってない・・・あ、いや、一応は理由になるのか?

鍛冶屋「いやいや、玄関が空いていたら入ってきてもいいわけではないよ」

魔子「そうなんですか?私が住んでいた国では『鍵がかかっていない→入っていいよ』だったので」



魔子「それにしても、美味しいと言ってもらえて安心しました」

鍛冶屋「安心?」

魔子「はい。人間の食べ物を作るのは初めてだったので」


文化の違い?があるみたいだ

鍛冶屋「まあ、とにかく。とにかくって言葉で済ましていいのか分からないけど!」

鍛冶屋「すごく美味しかったよ。忘れることはないと断言できるほどの美味だ」

魔子「喜んでもらえて何よりです」

魔子「では失礼します、爺を待たせているので」

鍛冶屋「うん」

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