穂乃果「朝起きたら女の子になってた」 【ラブライブ】 (64)

ニコ「もとからじゃない」

ホノカ「そうだった」



こうなるはずだった。

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ホノカ「みんな、落ち着いて聞いてね……。私女の子になっちゃった」

ウミ「何をバカなことを……うわあああああ! 本当だ!」

コトリ「この胸の膨らみ、キュッとしたウエスト……まさか」

ホノカ「ビックリしたよ。朝起きたらこんなんで」

エリ「一体どうなっているの?」

ノゾミ「スピリチュアルここに極まれり」



ニコ(え……?)



リン「穂乃果ちゃん女の子みたい!」

ハナヨ「すごい……なにこれ」

マキ「信じられない、けど」



ニコ(え? にこが変なの?)

コトリ「大変! なんとかしなくちゃ」

ウミ「え……!?」

エリ「待って! おかしいわ」



ニコ(だよねおかしいよね!?)



エリ「ことりがまともなこと言ってる!」

マキ「あの気味悪い笑い声を発さないなんて……誰?」

コトリ「みんなひどいよぉ」

リン「おかしい! あの残虐でスケベなことりちゃんが!」



ニコ(なに言ってんだ)

コトリ「実は……朝起きたら邪悪な心が浄化されてピュアピュアになっていたの」

ノゾミ「なんやって!?」

うみ「にわかには信じられません……」

ハナヨ「でも、女体化した穂乃果ちゃんにもセクハラしないし、元に戻そうとさえしてる。

心がピュアになったとしか考えられないよ」

ノゾミ「いったい二人とも、何があったんや」

エリ「さっきから気になっていたのだけれど」

ノゾミ「どうしたん? えりち」

エリ「希、その妙な口調はなに?」

ノゾミ「バレてしもうたか」

ウミ「そういえば!」

ノゾミ「実は朝起きたら、変な関西弁になってん」

エリ「そんな……希まで」

ノゾミ「ウチもこんなん嫌なんやけど……」

エリ「どうしてそんなバカみたいな喋り方に……」

ノゾミ「どうにもダメなんよ。何回かに一回、シリアスな空気になると標準語に戻ったりはするんやけど」

ウミ「他のみんなも異常はありませんか?」

ハナヨ「実は……」

ウミ「花陽も……。どうなってしまったんですか?」

ハナヨ「朝起きたら私、小泉花陽になってたの……」

マキ「なにそれ! 意味わかんない!」

ハナヨ「昨日までは別の何かだったはずなのに」

ウミ「さっきから感じていた違和感はこれですか」

エリ「確かに……! 別の何かだったのは覚えてるのに、なんだったかは思い出せない」

ハナヨ「私自身も忘れちゃってて……」

ニコ「ちょちょちょ、別の何かって何よ」

ハナヨ「何ていうか、人じゃない」

ニコ「人じゃない!?」

リン「ここまで来たら凛も言わなきゃだね」

ウミ「凛も!?」

リン「実は凛、朝起きたら記憶喪失になってたの」

エリ「えっ、とてもそうは見えないけど」

リン「ある部分だけ抜けてて……」

エリ「なにを忘れてしまったの?」



リン「凛が未来から来たってことはみんな知ってるよね」

エリ「ええ」

ウミ「もちろんです」

マキ「なによ、今更」



ニコ(あああああああああ!?)

リン「実は未来の記憶だけスッポリ抜けちゃったんだ」

ウミ「じゃあ、還る方法も?」

リン「うん……なんにも覚えてない」

マキ「そんな」



ニコ(あ……なんかもう合わせるしかないなコレ)



エリ「仕方ない。私も白状する」

ウミ「絵里……あなたもですか」

エリ「私は朝起きたら、ごく普通の女子高生になってたの」

ニコ「なんですってー!」



ウミ「え、普段と何が違うんですか?」



ニコ(もうわっかんねえ)

エリ「今まで黙っててごめんなさい。実は私、ロシアの諜報員だったの。

でも朝目が覚めたら機関からの連絡が途絶えてしまっていて」

ウミ「だから絢瀬なんて見たことない名字を……」

エリ「ええ。偽装の際に書き間違えたまま」



ニコ(この国終わったな)



ニコ「それ言うなら凛ちゃんや真姫ちゃんも苗字……」

ウミ「何を言っているんですかにこ。

星空は未来では高橋さんの次に多い名字だそうですよ」

ニコ「あーそー……」

ウミ「にこ……あなたも変ですね。正直に言ってください」

ニコ(なにをどう言えばいいんですか)



ニコ「実はぁ、にこ、朝起きたら宇宙No.1アイドルになってたにこぉ」



マキ「にこちゃん……どうしちゃったの!?」

ニコ「えぇ……」

ウミ「宇宙……なんですか? 正気とは思えません」

マキ「にこちゃんが一番重症みたいね」

ニコ「はあ!? はあー!? 普段のにこはどうなってんの?」

ウミ「ああ、元の自分もわからないなんて……」

マキ「清楚で」

ウミ「おしとやかで」

マキ「情熱的で」

ウミ「それでいて華やかで」

マキ「明るくて」

ウミ「でもどこかシリアスな空気があって」

アルパカ「キャピキャピで」

ウミ「おさげで」

アルパカ「割とハイスペックで」

ウミ「ラスボスで……」

ニコ「超羨ましいんですけどそのにこ」

ウミ「ああぁ……なんか違う……それ違う」

ニコ「そんな顔しないでよ!」

ウミ「ま、真姫は?」

マキ「私? 私は別に普通よ」

ハナヨ「あっ! おにぎり床に落としちゃった」

リン「掃除前だから汚いよ。もう食べられないにゃ」



マキ「待ちなさい! 勿体無い! 食べ物であれば食べられる!」

ハナヨ「そ、そんな真姫ちゃん、床に這いつくばってまで」

ニコ「真姫ちゃんも相当悲惨なことに……」

ウミ「どうやら真姫はいつも通りですね」



ニコ「これいつも通りなの!?」

マキ「ガツガツ。勿体無い勿体無い。おいしいわ花陽」

ハナヨ「うれしい! ありがとう真姫ちゃん」

ウミ「よかった。一人でも正常な人がいて。みんなから見て私はどうでしょう?

自分では何も気がつきませんが」

ホノカ「海未ちゃんも普通だよ」

コトリ「うん。今のところ何も」

ウミ「そうですか、それはいいのですが……。みんながそんな調子だと私も不安になります」

ノゾミ「せやね。でも海未ちゃんは見た感じ変わらんよ」

ウミ「そのふざけた口調なんとかならないんですか」

ノゾミ「ひどい……ウチだってウチとか言いたくないんよ」

ニコ「もうダメ我慢できない! みんな揃いも揃っておかし過ぎる!

いや、いつも通りでしょ!? いや! あれ! 私何言ってるんだ!?」

ハナヨ「ひいっ! にこちゃんが怖い……」

ニコ「え!? ごめん!」

ホノカ「おーい、みんな落ち着ついて」

ハナヨ「そんなこと言われても……」

ホノカ「大丈夫。大丈夫だよ。きっとみんな戻れるよ」

ハナヨ「穂乃果ちゃん……!」

ホノカ「それにもし、万が一、億が一、戻れなくても。

みんなはみんなだよ。私は変わらずみんなが大好きだよ」

エリ「なに言ってるの、みんな混乱するのは当然よ。ここは一度……」

ウミ「穂乃果……!」

コトリ「穂乃果ちゃん、ありがとう」

マキ「穂乃果らしいわね」

リン「穂乃果ちゃん! うん、そうだよね」

ノゾミ「流石穂乃果ちゃんやね」

エリ「穂乃果万歳」

ガタガタガタガタ

ウミ「ひ、ひいいあああああ!

忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ忘れろ」

コトリ「どうしたの海未ちゃん!」

ウミ「うぅ……私は謎の組織と戦ってなんかないんです……」

ホノカ「えっ?」

エリ「まさか海未まで」

ノゾミ「何言ってるん海未ちゃん!

海未ちゃんはたった一人で戦って、今まで何回も私たちを助けてくれたのに!

まさか覚えてないの?」

ウミ「それは妄想ですごめんなさい妄想ですごめんなさい」

ノゾミ「うそ! 私たち目の前で戦う海未ちゃんを見てきた!

謎の組織と異次元バトルを繰り広げる海未ちゃんを」

エリ「待って希、標準語に戻ってる!」

ノゾミ「あっ、ホンマや戻ってるやん!」

エリ「あっ……」

ノゾミ「あっ……」

マキ「海未は自分の正体を中二病の妄想だと思い込んでるのね。ガツガツ」

ウミ「や、やめてください……!

みんなして私をいじめないでください……ふえーん」

マキ「どうやら、正常なのは私だけみたいね。ごっくん。ごちそうさま花陽」

ハナヨ「お粗末さま」

リン「あれ? 真姫ちゃん、バッグ開いてるよ」

マキ「あ、待って」

リン「え……なにこの札束」

マキ「待って」

リン「いち、じゅう、ひゃく、せん……!?」

マキ「違う。待って待って待って待って待って」

リン「うわあああああ! 真姫ちゃんがついに銀行強盗を」

エリ「なんですって!? 犯罪だけはダメでしょう真姫」

ニコ「ロシアのスパイが何言ってんのよ」



ニコ(……あっ、なんか適応してきちゃってる)

マキ「ちがうの、これは……」

エリ「自首しなさい真姫」

マキ「実は、朝起きたら大金持ちになっていたの」

コトリ「ええ!? あのクッソ貧乏な真姫ちゃんが!?」

マキ「そうよ悪い?」

ホノカ「どうして隠そうとしたの?」

マキ「バレたらたかられるに決まってるじゃない」

ホノカ「そりゃそうだ」

リン「凛はこれで高級ラーメンが食べたいにゃー」

マキ「盗らないで!」



・・・・・

・・・・・



高坂穂乃果

朝起きたら女の子になっていた。もとの性別は不明。

ちなみにハーレムは健在。



園田海未

朝起きたら激闘の日々を妄想だったと言い出した。

本人は忘れているが異常に強い。



南ことり

朝起きたらピュアピュアハートになっていた。

かつての怪物は見る影もない……?



西木野真姫

朝起きたら大金持ちになっていた。

しかし貧乏性が抜けない。



星空凛

朝起きたら未来の記憶だけ喪失していた未来人。

つまりただの現代人。



小泉花陽

朝起きたら小泉花陽になっていた何か。

本人含む誰も、もとは何だったのか覚えていない。



東条希

朝起きたら微妙に関西弁になっていた生まれも育ちも東京の不幸ガール。



絢瀬絵里

元某国のスパイ。

朝起きたらごく普通の天才美少女になっていた。



矢澤にこ

朝起きたらみんながおかしい。

そして次第に適応していく自分が怖い。



・・・・・

気が向いたらつづく。

ニコ「……これでよし、と」

ニコ(……)

ニコ「とりあえず今のみんなの状態をまとめてみたけど……なんだこれ」



ニコ「性別不明、スパイ、未来人、人じゃない何か……まともじゃないわ。

いったいどうなってんだか……」



ニコ(やっぱり、にこがおかしくなっちゃったの?)



ニコ「いやいやいや……私は正常のはず」



ニコ「にこがおかしいんじゃないの?)



ニコ「確かにこういう場合、『実はおかしいのは主人公でしたー!』ってオチはよくあるけど。

でもにこはおかしくなんかない。やっぱり……」



ニコ(いつからにこは主人公なのよ)



ニコ「何言ってんの。にこはいつでもこの世界の主人公なんだから」

先生「……でこの五四運動なんだが……。矢澤、これは何年だ」

ニコ「うわ、はいっ! えーと……」



ニコ「あ、確かイクイク! 腰運動! って覚えてたから……1919年です」

先生「正解だ」



ニコ(知ってる問題でよかったわね)



ニコ「ああ……本当よかった。希に感謝しなきゃ。

それにしても、先生や他の生徒は普通っぽいのよね……。

やっぱりおかしくなったのはμ’sのみんななんだわ。……なんとか私が正気に戻してあげなきゃ!」



先生「そしてこの『…1919年』といえば他にも様々なことが起こった。

他に三つ、挙げてみろ矢澤」

ニコ「はいっ! また私!?」



先生「授業中にごちゃごちゃ喋ってるからだヴォケ」



・・・・・

【こっちの西木野真姫の話。】

放課後。



ニコ「はあ……」

ホノカ「どうしたのにこちゃん」

ウミ「ため息をつきたくなる気持ちもわかります。みんなこんな様子じゃ……」

コトリ「そうだよねぇ」

ウミ「加えてにこは記憶もなくなっているようですからね」

ホノカ「そっか、自分だけ状況が凛ちゃんと被ってて嫌なんだね」

ウミ「そっちじゃありません」

リン「でもそれは凛も嫌だにゃ」

ウミ「ちょっと黙ってください」

コトリ「まあまあ、海未ちゃん。水でも飲んで落ち着いて」

ウミ「ありがとうございます。ズズッ……」



ウミ「こんな優しいことり嫌ですっ!」

ボゴォ! ガッシャン!

海未が勢いよくテーブルに水の入った水筒を置くと、テーブルが真っ二つになる。床にヒビが入る。



ウミ「あれ、テーブルが……」

エリ「老朽化が進んでいたのね。買い替えなきゃ」

リン「ぷぷー! 海未ちゃんついてないにゃ」

マキ「こぼれた水が勿体無い! タオル! タオルで吸収するのよ!」



ふきふき!



マキ「後で絞って飲みましょう。生絞りタオルジュース」

コトリ「おえー! 真姫ちゃんはもうお金あるのに」

マキ「そうだった……でも体に染み付いてるのよ」

ノゾミ「習慣はそうそう変えられんからね。癖になってるんよ。……うっわまた関西弁……もう喋るの嫌や」

マキ「そうなのよ。今までぱんつも週一枚でやりくりしてたのに」

ニコ「週一枚?」

マキ「ええ。平日5日履いて、土日で洗濯」

ニコ「練習あるときは……?」

マキ「洗濯間に合わないときは履いてないわ」

ニコ「履いてな……!?」

マキ「実は今日も履いてないの。癖になっちゃってて。はあ、この開放感」

にこ「それ違う意味でクセになっちゃってるよ……」

コトリ「それは大変! ことりのぱんつを履いてください!」



ぬぎぬぎ



ホノカ「ちょ、ぶはぁ……!」

ウミ「あっ! 穂乃果が鼻血ブーです」

エリ「当然よ! 女体化とはいえ穂乃果は穂乃果!」

コトリ「なにが?」

リン「ピュアだからわからない!」

ホノカ「ぶっ、はあ、はあ」

コトリ「穂乃果ちゃん! しっかり!」

ホノカ「は、は、ことりちゃん、真姫ちゃん……ありがとう……」

コトリ「穂乃果ちゃあああああぁぁぁぁぁ……え? なんで?」

マキ「あっ……ことりのぱんつ……人肌に暖かい」

ニコ「履くな」

ハナヨ「でもこれじゃことりちゃんがのーぱんにっ!」

コトリ「あ、私はスペアぱんつあるので」

ニコ「なんであるの……ていうかそっちを真姫ちゃんに……もういいや」



そのあと、穂乃果ちゃんはまいそうされました。

しあわせそうな顔をしていました。



……とりあえず私はμ'sがイカレてしまった原因から考えることにしました。



――矢澤にこ

もしかしたらつづく。

【こっちの南ことりの話】

今回は、このオトノキに伝わる怖い怖いお話をしようと思う。

それは昼夜問わず、そこから這い出てくる。

そう。墓標だ。この学校にあるひとつの墓標。

その直下の地面が、もりもり……もりもり……と動き出したら、気をつけなくては。



ギィ……



ボコ……



ヒタ、ヒタ……



それはユラユラと、彼女たちのもとへ……。



ニコ「……でね、その先生二連続で私に当てたのよ。1919年ってそんなにたくさんの出来事あったかしら?」

エリ「三一独立運動、パリ講和会議、ワイマール憲法……この三つくらいなら中学生でもわかるんじゃなくて?」

ノゾミ「あー、聞いたことあるねー」

ニコ「えー? そうだっけ」

エリ「教科書に載ってるわよ。……ほら、『…1919年』の……」



ユラ……ユラ……

マキ「ねえ花陽、あなたのぱんつ、履かせてくれない?」

ハナヨ「ええ!? ごめん嫌だ」

リン「真姫ちゃんはあれ以来他人のぱんつを履きたいという変な性癖に目覚めてしまったのだった」




ピチャ……



ギィ……



ウミ「ことり、そこの私の水筒とってくれませんか?」

コトリ「はいどうぞ」

ウミ「ありがとう……こんな優しいことり嫌です!」

水筒「グッシャー」

コトリ「わあ、海未ちゃん、ステンレス製の水筒握りつぶしちゃダメですよ?」

水筒「ぎゃあああああああああああ!」

ウミ「あわわ、私にそんな握力あるはずが……そうです、これはきっと気圧の変化で」

マキ「ああ、こぼれた水がもったいないっ!」

コトリ「またそれかよ」

マキ「ふきふき! あ、そういえばことり。この前のぱんつのお礼」

コトリ「お礼なんてそんな」

マキ「お金なんて使ったことないから相場がわからないんだけど」

ウミ「さらっと悲しいこと言いますね」

コトリ「そんなつもりじゃないんだよ、お礼なんていいんだよ」

マキ「100万円くらいでいい?」

コトリ「ひゃ……!? ちゅ、ちゅーん……100万かぁ……ゲヘ。

はぅ!? いやいや、私どうしちゃったんだろう。いやいや、いらないよ。お礼なんて」

すでにそれは、扉の前まで迫っていた。

がちゃ……



マキ「だれ!?」



ホノカ「あー……うー……」



マキ「……だれ?」



ホノカ「穂乃果だよ!」



コトリ「きゃー! ゾンビ!」



ホノカ「穂乃果だよっ!」



ウミ「そんな! 穂乃果はこの前鼻血ブーで死んだはず……」

ホノカ「生き埋めしてくれてるんじゃないよ、死ぬとこだよ」

ニコ「まさかあのあとずっと埋まってたの? 確かに埋葬したけども」

ホノカ「そうだよ忘れないでしょ普通」

マキ「タイヘン! 手術しなきゃ」

ホノカ「急だな」

マキ「穂乃果を縛り付けて!」

エリ「了解」

ホノカ「急だな……ちょ、絵里ちゃん待って動けない」



マキ「ではこれからオペを始めます」

ホノカ「急だな……私何されるの?」

マキ「メス」

リン「はい」



ホノカ「わたしなにされるの!?」



エリ「待ちなさい、真姫」

マキ「邪魔しないでエリー」

エリ「まず、輸血が必要よ」

マキ「そうだった、私としたことが」

ホノカ「むしろ輸血だけでいいよ? 鼻血でちょっと貧血なだけだよ? 手術とかいらないよ?」

マキ「穂乃果をゾンビから直してあげなきゃ……!」

ホノカ「わたしゾンビじゃないよ?」

マキ「電動ノコギリ」

リン「はい」



ホノカ「わたしなにされるの!?」

マキ「この中に、献血をしてくれる人はいない?」



……。



マキ「誰もいないの?」



ニコ(そろそろ、つっこまなくていいの?)

ニコ「そうだった。なんかすっかり毒されちゃって傍観しちゃってた……コワイコワイ」



マキ「薄情物! 穂乃果に血をあげるって人はいないの!?」

ニコ「ちょっとマッキー、みんなも、穂乃果はばっちり生きてるでしょうが、悪乗りはそのへんに……」

マキ「もういいわ! 私が輸血するんだから!」

ニコ「聞きなさいよ」

マキ「穂乃果と私を管で繋いで……これでよし! ではオペを……しまった! これじゃ執刀できない!」

ニコ「聞けよ」

コトリ「そんな! このままじゃ穂乃果ちゃんが!」

マキ「……しかたない。あなたがやるのよ。……ことり」

コトリ「私が!?」

マキ「裁縫が得意なあなたならできる!」

ホノカ「私は縫い物感覚で身体切られるんですか」

コトリ「そんな……無理だよ」

マキ「私が指示を出す。あなたはそれに従うだけ」

コトリ「そんな……」

そのとき、ことりの脳内に"あの日"の記憶が蘇る。



コトリ「む、無理だよ……無理だよ……」

マキ「できる!」

コトリ「……!」

マキ「私を信じて」

コトリ「む、むり……」



そのとき、震えることりの手に、みんなの手が重なる。



エリ「私もサポートする」

ノゾミ「ウチもや」

ハナヨ「みんな、協力するよ。ことりちゃん」

リン「ことりちゃん……!」

ウミ「ことり! 今がそのときなんです!」



コトリ「みんな……。わかった。私やるよ!」

マキ「よし。じゃあまずお湯を沸かして」

コトリ「お湯?」

マキ「今教室にある、オペに使えそうなものを煮沸消毒するのよ」

コトリ「今、使えそうなものは……」

エリ「縫い針、糸」

ノゾミ「はさみ、木工ボンド」

ハナヨ「電子辞書」

リン「白菜、しらたき」

ウミ「しいたけ、お肉」

マキ「よし! 全部まとめて鍋につっこんで!」

ニコ「待てぇ!」



どぼーん!



コトリ「グツグツ……いい感じです!」

マキ「よし! じゃあはさみを取り出して穂乃果を開腹するのよ!」

コトリ「どうやって……?」

マキ「こう……スパーっとよ!」

ホノカ「待って! 説明雑! 待って! ホントちょっと待って!」

コトリ「ああああああ!」



ウミ「ことり!? いったいなにが!」



コトリ「間違ってチーズケーキを鍋に落としちゃった!」



ノゾミ「なんやって!?」



ニコ「なんで!? なにをどう間違ったの!? なんでチーズケーキあるの!?」



コトリ「うぅ……ごめんみんな……やっぱり私には無理だった……」

ウミ「……」

コトリ「ごめん……ごめん……」

ウミ「おいしい」

コトリ「え……?」

ウミ「泣かないでことり。このお鍋、とってもおいしい」

コトリ「う、海未ちゃん……!? そんな訳ないよ……不味いよ、食べちゃダメ、やめて」

ウミ「パクパク。いえ、やめません。おいしいです」

コトリ「嘘だ……私を庇ってる……」

リン「うーん! おいしいにゃー!」

エリ「あら、ほんとにおいしい」

ノゾミ「うん、おいしいよ、だから泣かないで」

ハナヨ「パクパクもぐもぐガリガリ。この電子辞書も美味です!」

コトリ「みんなまで……やめてよっ!」



ニコ「あんたは、みんなを疑うの? 黙って食べてみなさい」

コトリ「え……?」

ニコ「ほれ、あーん」

コトリ「あーん…………! お、おいしい!」



こうして、みんなの力もあって"あの日"のトラウマを克服したことり。

そのあとはみんなで、鍋パーティになりました。



このとき既に、私はある重大な、おかしなことに気がついていた。

そしてそれを見て見ぬふりをしていた。



――矢澤にこ

気分がよかったらつづく。

【こっちの矢澤にこの話】

ニコ(私がおかしいんじゃないの?)

ニコ「違う。みんなが変なんだったら。私は正常よ。そうじゃなくちゃ」

ニコ(……)



既にお気づきだろうが、どうも最近私は一人漫才というか一人喋りというか。

もう一人の私と会話なんかしちゃうことが多い。



ニコ「みんな、『朝起きたら』『朝起きたら』って、なんなのよもう」



ニコ(私もね、朝起きたら……)

朝起きたら、私の身体は勝手に動き出した。

まるで私の意識と関係なく。いや、まるで別の人間の中に私の意識だけがある感覚。

これは私の身体のハズなのに!

私の身体は勝手に動いて、勝手に喋り出した。

私の意識は残ったまま。

そうして学校に私の身体が着くと、みんなの様子も変だった。

私は私の身体に脳内で語りかける。

ニコ(にこがおかしいんじゃないの?)

私の身体は答える。

ニコ「いいえ。私は正常よ」

ニコ「最近、みんなの呼称が安定しないの。前は呼び捨てだった気がするだけど、ちゃん付けしたり」

ニコ(ずっと前からちゃん付けじゃなかった?)

ニコ「違う! もうやめてよ……私はあなたを認めない」



認めてしまったら、私ってなんなの?

認めてしまったら、みんなの言う「朝起きる前」の矢澤にこは存在していたことになる。

でもそれは私ではない。

それを認めてしまったら、私は……。

私のこの記憶はなんなのよ!

私が朝起きた瞬間にできた「何か」だなんてそんなの認めるもんですか!

おかしいのは私じゃない!

みんなのほうなんだから!

ニコ「ただいまー」

ココロ「お帰りなさい!」

ココア「おかえり!」

ニコ「こたろうは?」

ココロ「奥でモグラ叩きをしています」

ニコ「どれどれ」

コタロウ「あ、おかえりー」

ニコ「ただいま。あっ、ほら。モグラ落ちてるわよ」

コタロウ「えー?」

ニコ「にこにーモグラじゃない! ダメよステージから落としちゃ。にこは常にセンターなんだから」

コタロウ「あるよー……?」

ニコ「え?」

ニコ(ちゃんと9個、モグラはセットされてる……)

ニコ「じゃあ……私が拾ったこのにこにーモグラはなんなのよ……?」



なんでふたつもあるのよ。

ところによりつづく。

【こっちの東条希の話】

ノゾミ「にこっちー、占ってあげるー」

ニコ「急になによ?」

ノゾミ「いいからいいから。そこ座って?」

ニコ「へいへい」

ノゾミ「むむー……」

ニコ「……」

ノゾミ「むむー……」

ニコ「あの……」

ノゾミ「むむむむむ!」

ニコ「……」

ノゾミ「こ……これは……?」

ニコ「よくあるやり口ね。不安を煽ってどうしたんですか? て聞かせるやり方」

ノゾミ「……!? いや、なんやこれ……ホントそういんじゃなくて……」

ニコ「な、なによ」

ノゾミ「これはまるで……そんな! にこっちこれって……」

ニコ「なんなのよっ!」

ノゾミ「そうか……そういうことやったんやね。全部わかった」

ニコ「全部……?」

ニコ(聞くべきかしら……)

ニコ(怖い……けど!)

ニコ「……教えて。全部ってなによ? 私はなんなのよ」

ノゾミ「……にこっち、落ち着いて聞いてね。あなたは一億……」

エリ「みんなおはよう!」

ノゾミ「あ、えりちおはよー」

ニコ「もおおおおおお! 思わせぶりで半殺しやめてよ」

エリ「どうしたの? まだ二人しかいないのね」

ノゾミ「そうやね」

エリ「ぷっ! 本当その関西弁いつ聞いてもツボだわ」

ニコ「ねぇちょっと……さっきの占いのつづき」

ノゾミ「……」

ニコ「希?」

ノゾミ「もういやや」

ニコ「え?」

ノゾミ「もう関西弁いやや!」

エリ「ちょ、希!?」

ノゾミ「みんなに馬鹿にされて笑われてもう我慢できひんの!」

エリ「ご、ごめ……」

ノゾミ「もういいわ!」

ニコ「……行っちゃった」

エリ「ちょっと言いすぎたかしら」

ニコ「あとで謝っときなさいよ」

エリ「ええ……」

リン「おはよー! 今希ちゃんとすれ違ったけどなにかあったの?」

ハナヨ「なんだかすごい形相だったけど」

マキ「あんまりひどい顔だったからガスマスクをプレゼントしたわ」

エリ「ちょっといろいろあってね」

ニコ「ていうか絵里がひどいこと言ったのよ」

エリ「だから、戻ったら謝るってば」



その日、希は戻ってこなかった。

ウミ「昨日は結局希はきませんでしたね」

コトリ「あのアホみたいな関西弁もないとさみしいかも」

エリ「オルァ! ことりィ!」

コトリ「は、はいっ!?」

エリ「みんなも! もう希の関西弁バカにするの禁止!」

ホノカ「先人きってやってた人がなに言ってんのさ」

エリ「はいー! 穂乃果アウトー! バァン!」



バァン!



ことり「きゃああ! 穂乃果ちゃんが撃たれた!」

ウミ「絵里! どこにそんなものを隠して」

エリ「私は元ロシアンスパイ。忘れた?」

コトリ「血が止まらない!」

マキ「ティッシュ詰めときなさい」

コトリ「はーい」



ガチャ

ノゾミ「……」

エリ「あ! 希っ」

エリ「あのね……昨日はその……え何そのガスマスク」

ノゾミ「シュコー……シュコー……」

エリ「の、希」

ノゾミ「シュコー……シュコー……」

エリ「な、なにか言ってよ……」

ノゾミ「シュコー……」

エリ「ねぇ……私が悪かったから……」

ノゾミ「シュコー……」

エリ「のぞみぃ……」

ノゾミ「シュコー……」



希はダークサイドに堕ちた。

希は……その日を境に一言も言葉は発することはなかった。

口を閉ざし、彼女は声を出さなくなった。

そのガスマスクのしてで、彼女がどんな顔をしているのかも、見えなくなった。

しばらく空く。落ちてなかったらつづく。

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