佐久間まゆ「負けませんから」 (48)


 空が綺麗なオレンジ色に染まった夕暮れ時。

 346プロのカフェテリアで、お気に入りの席に座って。

 まゆは一人、ぼぉっと空を見上げていた。

「シンデレラプロジェクト、ですかぁ……」

 思わず口をついて出るのは、プロデューサーさんから聞かされたお話。

 来年の春頃に始動する、346プロアイドル部門の新プロジェクト。

 オーディションやスカウトを通じて新人アイドルとなる女の子を一から集め、デビューさせる。

 その企画の担当者として、プロデューサーさんに白羽の矢が立ったらしい。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1422013712


 当然ながら、片手間で出来るような楽な仕事ではなくて。

 始動させるまでも大変なら、始動させた後はもっと大変になりそうなプロジェクト。

 つまりそれは、プロデューサーさんはそちらに注力しなければならないことを意味していて。

 ――頭では、理解しているつもりなんですけどねぇ……。

『そういう訳で、皆さんの担当を外れることになりました』

 淡々と言ったプロデューサーさんの顔が浮かぶ。

 次に、動揺を隠せない皆の顔が。

 そして最後に――そんな中で一人、冷静な表情をしていた“あの人”の姿。


「お待たせしました、ホットコーヒーです。ごゆっくりどうぞ」

 そう言った店員さんに会釈を返して、まゆはカップを持ち上げる。

 二度、三度と吐息で冷ましてから、ゆっくりと口に含んだ。

 その瞬間、口の中に広がる苦み。

 まるでそれは、今のまゆの心の中のようで。

「やっぱり、まゆには美味しく感じられません……」

 プロデューサーさんが何時も飲んでいるコーヒー。

 ミルクも砂糖も居れずにブラックで。


 たとえば二人でカフェに入ることがあった時。

「まゆも同じものを」

 そんな風に注文して、何も入れずに美味しそうな顔で飲みたくて。

 何度かブラックを飲む練習をしてみたけれど。

 その度に結局はミルクとお砂糖を入れて飲む羽目になる。

 普段であれば、多分そうしていた。でも、今日は何だかそれが悔しくて。

 もう一口、飲んでみる。やっぱり、口の中に広がる苦みはまゆには合わなくて。

 まゆは思わず、眉を――。


『眉をひそめるまゆちゃん……ふふっ』

 不意に、頭の中に楽しそうな“あの人”の顔が浮かぶ。

 それを掻き消したくて、さらに口に含んだ。

 ――やっぱり、苦い。

 まゆは口を離したくなった。けれども、それは何だか負けを認める気がして。

 それが、何に対してなのかは分からなかったけれど。

 まゆは一気にぐいっと飲む。

 口いっぱいに広がる苦みに、まゆは思わず――。


「眉をひそめるまゆちゃん……ふふっ」

 また“あの人”の声が、脳内に響いて――――?

「ここ、いいかしら?」

 どうやら今度のは、実際に耳に聞こえた声だったらしい。

 まゆが座る席のテーブルを挟んだ真向かい。

 そこに、いつの間にか“あの人”――高垣楓が立っていた。

「……別に、構いませんけど」

 そう答えれば、「ありがとう」なんて言って席に座る。


「店員さん、こっちに持ってきてください」

 お盆を持った店員さんに、笑顔で手を振り振り。

 どうやら注文自体は既に済ませていたらしい。

「お待たせしました。こちらご注文の――」

 そう言って店員さんが、お盆に載せて運んできたカップをテーブルに置く。

「――ホットコーヒーになります。ごゆっくりどうぞ」


 よりにもよって、注文はまゆと同じもの。

 何も入れないまま、楓さんはカップを掴む。

 それを見て、まゆは思わずきゅっと下唇を噛みしめた。

 きっと、大人な楓さんならブラックコーヒーも楽に飲めるのだろう。

 澄まし顔で美味しそうに味わって、まゆの劣等感を刺激するのだ。

 優雅に口元へとカップを運ぶ。そんな動作すら洗練されていて、悔しい。

 一口飲んで「美味しいわ」なんて無意識の嫌味を繰り出してくるだろう相手を――。


「にが……。やっぱり私には荷が重かったみたいね……ふふっ」

 そんな風に言いながら、楓さんがミルクとお砂糖をコーヒーに入れる。

 普段まゆが入れるよりも、多く。

「…………楓さんは、ブラック飲めないんですかぁ?」

 “楓さんも”ではなく、“楓さんは”。そんな自分の言葉に思わず苦笑い。

 負けず嫌いというより、この場合はただの子供の意地張りで。

 それから、きっと先程までの独り相撲が恥ずかしかったのもあった。

「ええ。飲めるようになれたら、とは思っているんだけど」

「そう、ですかぁ……」

 理由は、訊ねなかった。その必要も無かったから。


 ――高垣楓。

 彼女は、まゆが欲しいものを全て持っていて。

 たとえば、一見すればクールで落ち着いた物腰。

 口を開いて変なことさえ言わなければ、という注釈はいるけれど。

 その大人な雰囲気は、プロデューサーさんとどこか似通っていて。

 それから、年齢。見た目からは決して実年齢を感じさせないのに。

 でも、確かに彼女はプロデューサーさんと同世代の大人の女性で。

 身長は、同世代女性の平均より10cm以上も高くて。

 大柄なプロデューサーさんと並んで歩く姿は、まるで違和感がなかった。


 一方のまゆは、どうだろうか。

 クールな大人のように振舞おうとすれば、多分できなくもない。

 でも、それはきっと楓さんと比べたら作り物めいていて。

 幾ら努力をしたって、まゆとプロデューサーさんの年齢差が縮まる訳ではない。

 まゆが一つプロデューサーさんに近付けば、彼も一つまたまゆから離れていく。

 同世代と比べても低い身長。彼と並ぶとまるで親子みたいで。

 身長の伸びに効果があると言われるようなことは、それこそ読モ時代からやってきている。

 でも、一向に効果は出なくて……。

 まだ伸びる見込みはあるのか、それとも成長が止まってしまったのか。それすら分からない。


 男女の理想の身長差というのが、よく女性誌なんかでも話題になったりする。

 まゆが何かで見た時の記事には、確か15cm前後。

 ちょうど、プロデューサーさんと楓さんの身長差と同じくらい。

 他でもない、まゆ自身。読モ時代にティーン誌のインタビューで15cmくらいと答えた。

 ――今なら、30cm以上って答えますけれど。

 それでも、そんな身長差が理想なんて言う人は、きっと滅多に居ないだろう。

 たとえば彼の両隣に、それぞれまゆと楓さんを並べた上で。

「どちらの女性が、この男性とお似合いに見えますか?」

 そんな風にアンケートを取ったとして――まゆの方を選ぶのなんて、世界中できっとまゆだけだから。


 綺麗なだけなら、よかった。まゆは、可愛さで勝負すればいい。そう思えるから。

 けれども、楓さんは時折、まゆも嫉妬してしまうような可愛い面を見せる。

 時折見せるそういう素の姿を知る人達は、冗談半分に『25歳児』なんて言ったりするくらいで。

 それは悪口ではなくて、あくまでも愛称のようなものだったけれど。

 であるならば、まゆは一体どうやって彼女に立ち向かえばいいというのだろう。


 ――ずっと恋焦がれていた、年末ライブでの「お願い! シンデレラ」のセンターポジション。

 でも、選ばれたのはまゆではなく楓さんで……。

 もちろん、これは単純にアイドルとして負けてしまっただけだ。

 たとえ、プロデューサーさんが楓さんに、まゆが考えたくないような想いを抱いてしたとしても。

 それを仕事に持ち込むようなことは、絶対にしないと思うから。

 けれど……。


 ――シンデレラプロジェクトのことを、プロデューサーさんが話した時。

 たった一人だけ、表情を変えていなかった楓さん。

 或いは、彼女だけは前もって聞かされていたのかもしれない。

 それくらいなら、有り得るだろう。

 担当を外れるということを、特別な相手に前もって話すくらいなら。

 だとすれば、それはアイドルとして負けた訳ではなく。

 女の子として負けたということで。


 アイドルとしても、恋する乙女としても。悔しいけれど、勝てそうになくて。

 それでも、これまで自分の中にある弱い気持ちに気付かないフリをして頑張ってきた。

 でも、そろそろそれも限界なのかも知れなかった。

 決着は既に付いているのかもしれない。

 そんな風に考えるのは、とても恐ろしくて仕方がなかったけれど。


 アイドルと、担当プロデューサー。

 その関係性が無くなってしまったら、まゆと彼を繋ぐものは他に何があるのだろう。

 これまでなら、運命の赤い糸って笑顔で答えられた。

 だけど、思ってしまうのだ。

 プロデューサーさんの大きな手のひらの、太い小指に結び付いた赤い糸は――。

 まゆの小指では無くて、目の前の女性の小指に結び付いているのではないか、なんて。


「まゆちゃんは――」

 これまでずっと黙っていた楓さんが、口を開く。

 いつの間にか、まゆは俯いてしまっていたらしい。

 楓さんの声に、ゆっくりと顔を上げた。

「私のこと、苦手?」

「ずいぶんと、直球で来るんですねぇ……」

 そういう話題は、もう少しオブラートに包んで訊ねてくるかと思っていたから。


「いい機会なのかな、と思って」

 そう答える楓さんは、世間の人がイメージするような大人な雰囲気で。

 たとえばこれが子供っぽさが全面に出た態度での質問だったのなら、まゆは誤魔化したのかも知れないけど。

「……正直に言って、苦手です」

 直球の質問を、真正面から受けて立つ。

 そんなまゆに、楓さんは特に表情を変えることもなく。


「それは、アイドルとして? それとも――」 

「両方、かもしれません。でも今、まゆを特に悩ませているのは、後者についてです」

 続くだろう言葉を遮り、予測して。まゆは淡々と答えた。

 せめて心の底からキライになれるくらいに、嫌な人であってくれたら。

 であれば、まゆも心置きなく行動出来たのに。

 たとえば少女漫画に出てくる、主人公に意地悪をする嫌われ役の恋のライバルみたいに。

 そう思わせてさえくれないから、楓さんは苦手な相手だった。


「そっか……」

 楓さんは、たった一言呟いて、カップに口を付ける。

 元の色からすっかり変わったミルクコーヒー。

「多分……まゆちゃんは、色々と考え過ぎだと思うわ」

 カップを置いて、まゆへと視線を向ける。

 自分を苦手だと明言した相手を見つめる、その瞳は優しい色を湛えていて。

 普段がどうであっても、この人はやっぱり大人の女性なんだと感じさせた。


「私も、まゆちゃんと同じくらい、実は自信が無いから」

 楓さんが優しく微笑みながら、そんなことを言う。

「…………まゆ、昔仲違いしちゃったお友達の気持ちが、今ようやく分かったかも知れません」

 読モとして人気が出始めた頃の、ふとした会話。

 彼女はまゆを『可愛い』とかってたくさん褒めた後に、「私なんて全然魅力無くて」って自分を卑下したのだ。

 まゆは、そう思わなかった。

 まゆには無いような明るさがあって、笑った時、笑顔がとても可愛くて。

 彼女は、確かにまゆに無い輝きを持つ魅力的な女の子だった。ただ、自分に自信が持てないだけで。


 だから、まゆはそれをはっきりと否定した。

 それは嘘偽りのない、本心からの言葉だった。

 あの子は「ありがとう」って言って笑ってくれて。

 その笑顔は、何時もの可愛らしい笑顔とは、少しだけ違って見えたけれど。

 でも、それから。徐々に彼女との距離は離れていって。

 暫くして、彼女があの時のことを皮肉みたいに受け取っていたことを知った。

 陰口を聞いてしまうという形で。

 それが、当時のまゆには納得できなかった。


 ――きっと、楓さんは本気で言っているのだろう。

 慰めでもなく、心から。当時のまゆと同じように。

 それが十分なくらいに伝わってくる。

 でも、まゆには到底そんな風に思えなくて。

 だから、それは下手な慰めにしか思えなかった。

 あの子みたいに皮肉だと受け取らなかったのは、楓さんがそういう人ではないと知ってるからで。

 もしも他の人からであれば、或いは皮肉だと受け取っていたくらいに。


 そんなまゆの内心を見抜いたのだろうか。

 楓さんは困ったように笑って。

「多分まゆちゃんは、必要以上に私を意識しちゃってるだけ。

――年齢も、身長も、確かに人から見たら、プロデューサーとお似合いなのかもしれないけど」

 まゆの身体が、びくりと震える。

 楓さんが口にしたのは、まさしくまゆが楓さんに抱くコンプレックスそのもので。

「でも、少なくとも私は……。

プロデューサーと一緒に居て、そういうことで特別何か意識して貰えてると感じたことはないから」


「大事なのは、他の人がどう思うかじゃなくて。自分と、相手がどう思うかでしょう?」

「それは、そうかもしれません。でも……」

 楓さんの言うことは、紛れもなく正論だと思った。

 でも、どうしてもまゆはそれを素直に受け入れられなくて。

 その理由を考えて、まゆの脳裏に思い浮かんだこと。

「ですけど、楓さんは、プロデューサーさんが担当を外れること、教えて貰ってたんですよね?」

 それが、彼が楓さんを特別に意識している何よりの証拠では無いのだろうか。


「えっ?」

 心に痛みを覚えながら問い掛けた、まゆの言葉に対して。

 楓さんは、目をぱちくりさせた本当に驚いている表情。

「違うんですかぁ?」

「ええ、私もあの場で初めて知らされたけれど……」

「でも、楓さんだけ表情が変わって無くて」

 そう言った瞬間、楓さんがおかしそうにくすくすと笑った。


「ふふっ、やっぱりまゆちゃんは、変に私を意識しちゃってる」

「……どういうことでしょう?」

「それは、担当を外れちゃうって聞かされて、頭が真っ白になってた表情ね」

 ――場を和ませる駄洒落も、思い浮かばなかったくらい。

 そう言って、また楓さんが笑った。

 その笑顔は、到底嘘を吐いているようには見えなくて。

 ……つまりは、まゆの勘違いということなのか。

 ブラックコーヒーに続く、二度目の。

 それを、理解して。流石にまゆは恥ずかしくなった。


「それにね、私……思うんだけど」

 楓さんが再び口を開く。

「あのプロデューサーが誰かを意識するとしたら、それは一目惚れじゃないかな、って」

「一目惚れ、ですかぁ?」

「ええ。だって、ほら。プロデューサーが、私達と一緒に過ごしている中で、

だんだんこっちを意識するようになって――なんて、想像出来ないから。ふふっ」

 そう言って、楽しそうに笑う。

「それは……まあ、そうですけど。でも、一目惚れだと――」

 まゆも、楓さんももうチャンスがないのでは? ……そう訊ねるより早く。


「正確に言えば、笑顔に対する一目惚れね」

「……笑顔への、一目惚れ?」

「そう。まゆちゃんも、スカウトされた理由ってそれだったでしょう?」

「ええ、まあ……」

 プロデューサーさんがまゆを、そして楓さんをスカウトした理由。

 それが、笑顔だった。


「だから、思うの。それこそ、これまでプロデューサーが見たことないような、

最高の笑顔を見せれば、案外ころっと私達に恋しちゃうかも、なんて」

 そう言って笑う楓さんは、大人の女性のようでいて、悪戯が思い浮かんだ子供のようでもあった。

「まゆちゃんは、どう思う? そんな可能性」

 言われて、考える。

 どんなに好意を向けても、いつもの無表情でのらりくらりとかわされる。

 そんなプロデューサーさんが、まゆの最高の笑顔に心を奪われて……。


 ある日のこと。なんとなく、いつもと様子が違う気がして。

 まゆが上目遣いで「どうかしましたかぁ?」って訊ねてみれば。

 目を合わせないようにそっぽを向いて「いえ……」なんて言って自分の首筋を撫でたりする。

 まるで小学生みたいにバレバレな意識の仕方。

 それは普段のプロデューサーさんからは、想像が付かなかったけれど。

 でも、仮にまゆに対してそんな風になった彼を想像すると――。

「悪く、ないですねぇ……」

 それは、とても甘美な空想だった。


「素敵な笑顔を浮かべるには、まずは自分に自信を持つことが大切で」

 そう言って、優しく笑って。

「だから、自信を持って? 私には私の、まゆちゃんにはまゆちゃんの魅力があるんだから」

「あっ……」

 言われて、気付く。それは何時だったか、件の友達に伝えようとした気持ちで。

 まゆは苦笑した。

 今になって思えば、あの子に伝わらなかったのも当然だったのかもしれない、なんて。


 なにしろ、彼女に伝えようとした他でもない自分が、実は心の底からそう思えて居なかったのだ。

 でなければ、楓さんと自分を比べて悩んだりするはずなくて。

 誰かと比べて、何かを自分が持っていないから――。

 そんな理由で自身を全否定してしまうような、自分に自信が持てない女の子。

 それは彼女だけじゃなくて、まゆも同じだった。まるで鏡に映る自分のように。


「それに……私のことばかり気にしていると、思わぬところで足をすくわれちゃうかも」

 例を挙げるように、楓さんはシンデレラプロジェクトの名前を口にする。

「その中には、すごく素敵な女の子が居るかもしれない。

まゆちゃんが『ああ、これなら楓さんが相手の方が良かったな』なんて思っちゃう子が」

 ――そんな子、出てくるわけないと思いますけどぉ。

 そうやって否定してしまうのは簡単だった。

 でも、まだ見ぬ後輩達を担当するのは、まゆを、楓さんを、輝かせてくれたプロデューサーさんで。


 シンデレラプロジェクトで選ばれるのは、基本的にまゆと同じ年頃の女の子らしい。

 同世代の女の子の中から、この完璧なライバルより手強い相手が出てくるというのなら――。

「……寧ろ、望むところです」

 それはつまり。まゆも、この目の前の相手を超えていけるということで。

 誰かと自分を比べて、卑屈になるのは今日でおわり。

 ――だって、まゆにはまゆの魅力があるのだから。


「敵に塩を送ってしまったって、後悔させてみせます」

「ふふっ。私も、『えーん、えーん』って泣くことにならないように頑張らないと」

 両手で顔を隠して泣き真似をした後、指の隙間からちらりとこちらを窺う。

 きっと、駄洒落に対する反応を期待しているのだろう。

 そんな楓さんに、私は笑顔を浮かべてみせた。

 今のまゆが出来る、きっと最高の笑顔。

 決して駄洒落に笑った訳ではなくて、これはまゆなりの宣戦布告。


 ――ああ、今この瞬間。

 プロデューサーさんが現れて、まゆの笑顔を見てほしいって思う。

 そうしたら、案外さっきの空想は、すぐ現実に出来てしまうかもしれないから。

「ふふっ。私は、負けないわ。まゆちゃんにも、それ以外の子にも」

 おどけるのを止めた楓さんが、そう言ってとても綺麗な笑みを浮かべた。

 それはきっと、先程の宣戦布告に対する返事で。

「まゆも、負けませんから」

 楓さんにも、これから現れるかもしれないどんな女の子にも――。

 





「くしゅん……。そろそろ、コート羽織るだけじゃ肌寒くなってきたかな……。

  って、こらっ……もう、ハナコ、急に走り出さないでってば……!」





 

おわりです。
何とか3話前に投稿出来て良かったです。
それではお読み頂いた方はありがとうございました。

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