オーキド「わざマシンか……」 (114)

オーキド「懐かしいのう……ウツギ君らと研究に明け暮れた日々が思い出されるようじゃ」

オーキド「だがワシはこのわざマシンの開発段階で、死んでも償いきれぬ過ちを犯してしまった」


彼はオーキド博士。言わずと知れたポケモン博士であり、数々のテレビ番組にもレギュラーとして出演している。


彼の功績は主に2つ。「ポケモン図鑑」の開発と、「わざマシン」の実用化である。

だが、そんな彼にも失敗があった。


オーキド「わざマシン00か……」

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オーキド「わざマシン00:しねしねこうせん…」

オーキド「最初は、ほんの好奇心から始まったことじゃった」


―――――――――――
――――――
――――


ウツギ『オーキド博士、何ですか話って』

オーキド『いやなに、そろそろ実用化の可能性が見えてきた、わざマシンについてじゃがな』

オーキド『あたらしく「わざ」のアイデアが出来たので、君に話しとこうと思ってな』

ウツギ『そうだったんですか。して、そのアイデアとは?』

オーキド『ポケモンに「人間の感情」を植え付けたら、どうなるのか……』

ウツギ『……人間の?ですが、ポケモンは「人間の言葉のニュアンス」を理解できますし、我々と同様に、泣き、笑い、怒りますよ』

オーキド『やはり気づいておらんかったか……』

オーキド『人間だけにあり、ポケモンからは決して生まれぬ感情……それは』



―――――――――――
――――――
――――

トントン!


オーキド「……誰か来たのか」


そこまで思い出したところで、誰かが研究所のドアをノックした。

ガチャっ


オーキド「おや、どうしたのじゃ?」


ドアを開けると、そこにいたのは可愛らしい少女と、

エネコ「ケホッ、ケホッ……」

風邪を引いたらしく、顔を赤くしたエネコであった。


オーキド「おお、いま流行りの風邪じゃな。待っとれよ、薬を用意するからな……」

少女「エネコ、くるしそうだけど……ちゃんと治る?」

オーキド「ああ治るとも。ちと時間はかかるがな」


この殺人鬼のようなワシを、まだ頼ってくれる者がおるとはな――――


オーキドは、自嘲気味に小さく笑った。

研究用の薬瓶がずらりと並んだ戸棚から、目的の風邪薬を取る。


オーキド「ほら、この飲み薬じゃ。一日2回、食事の後にコップ一杯ほど飲ませれば、4、5日で治るわい」

少女「ありがとう!オーキド博士!」

エネコ「にゃ……」

ばたん!


少女が去っていった後には、妙な静けさだけが残った。

オーキド「…………」

しばらく、オーキドは扉の前から立ち去れずにいた。

オーキド「ワシには、感謝される筋合いなど……」

そしてオーキドは、もう一度、あの忌まわしい日のことを思い出すのだった。


――――――――――
――――――
―――


ウツギ『……で、何です?その感情ってのは。もったいぶらないで、教えてくださいよ』

オーキド『別にもったいぶっとる積もりはないんじゃがのお。まあよい。その感情とは……』

ウツギ『……ごくっ』



オーキド『「死にたい」という感情じゃ。言うなれば、「自殺願望」じゃな』

ウツギ『じ、「自殺願望」……ですか?ですがっ』

オーキド『まあワシの話を最後まで聞かんか。よいか、あらゆる生物の根底には「種族の繁栄」という目的がある!』

ウツギ『ええ、そうしないと、種が続いていきませんからね。』

オーキド『じゃがのお、人間だけは違う。ポケモンより高度な意志疎通能力と学習能力を持ち、どんどん科学を発展させていった――――』

オーキド『そして生まれたのが「死にたい」の感情。つまり、大前提であった「種族の繁栄」の条件を、根底から覆す感情じゃ』


ウツギ『……まさか』


ウツギは生唾を飲み込む。

オーキド『そうじゃ。そうしてできた感情をポケモンに植え付ければ、一体彼らはどうなってしまうのか――――――』

オーキド『考えただけでも、わくわくが止まらんわい』


ウツギ『…………』


ウツギは、目の前にいる大博士を、尊敬する人物として見ればいいのか、ポケモンを冒涜する狂科学者と見ればよいのか、分からなくなってしまった――――――






そして、ウツギはオーキドのポケモン研究所を離れた。

ポケモンに対する愛の深さというより、すっかり変わってしまった彼の大博士が、怖かったからかも知れない。


そしてオーキドは、ウツギが去った後も、一人残って研究を続けた。

別に彼は、ウツギを止めはしなかった。そんなことより、溢れ出るポケモンへの好奇心を満足させることで、頭が一杯だったから。


大量のコラッタを使った、投薬ポケモン実験もやった。


ポッポの遺伝子組み換えも、数え切れないくらい。


コラッタ、ポッポ、ポチエナ、ホーホー、ケムッソ―――――――


オーキドの後ろには、いつしか大量のポケモンの死骸が積み上がっていた。


オーキド『ふむ、もう少しで完成か』


だが、かの老人は死骸となったポケモンには目もくれない。

彼の頭は、切って開いて取り出して植え付けることで、いっぱいだったから。

オーキド『……よし。完成じゃ』


こうして彼は、うずたかく積み上がるポケモンの中、憎むべき悪魔を自ら生み出してしまった。



『わざマシン00:しねしねこうせん』



物語は、オーキドによって作り出されたこの悪魔から、始まっていくのである――

サトシ「いやー、腹減ったなー!タケシ、ご飯にしようぜ!!」

タケシ「そうだな。あの木の辺がいいんじゃないか?」

カスミ「さんせーいっ!トゲピー、お昼ご飯だって!」

トゲピー「ちょきちょきぷるぃい!」



オーキドが自らの罪に苛まれていた頃、こちらの3人は元気に旅をしていた。




タケシ「ほぅーら、できたぞー!」

サトシ「イエーイ!いっただっきまーす!」

ピカチュウ「ピッカ!」



オーキドの苦悩などこれっぽっちも知らない3人は、仲良く食事を始めた。

サトシ「うんっめぇえ!やっぱりタケシのポケモンカレーは、最高だぜ!」

ピカチュウ「ピッピカチュ!」

タケシ「そうかそうか。ま、今日はレトルトなんだけどな」

カスミ「どーお、トゲピー、おいしい?」

トゲピー「ちょっきっぷるぃい!」



そんな彼らを物陰からうかがう連中も、いつも通りである。


ムサシ「あ゛ー、おながずいたわあー」

コジロウ「我慢しろぉムサシ!俺だって、昨日からなーんも食べてないんだから!」

ニャース「ニャーも腹減ったのニャ……うみゃそうなカレーだにゃあ……」


「「「……はあ……」」」

コジロウ「ん、電話だな」

《大切なのはっ、明日のためのっ、ごぉーはんで》ピッ

コジロウ「はい、もしもし……ボス?!どうも、ご無沙汰しております!……はい、はい……」

ムサシ「何の話かしらね」

ニャース「ニャーには見当つかないのニャ」


コジロウ「試作品ですね……はい、分かりました。では」ピッ

ムサシ「どうしたのよ?」

コジロウ「ムサシ、ニャース、今すぐシオンに行くぞ。準備しろ」

ニャース「焦りすぎだニャ、コジロウ。一体何があったのニャ?」



コジロウ「……わざマシン00の残骸が、シオンで見つかったそうだ」

「「?!」」

二人の間に、一気に緊張が走る。

コジロウ「二人とも分かってるな?あの悪魔の遺産……いや、神の恵みと呼ぶべきか。わざマシン00……「しねしねこうせん」だ」

ニャース「口に出すのも恐ろしいマシンニャ」

ムサシ「もうオーキド博士が全部ぶっこわしたものと思っていたけど……」


コジロウ「俺だって、連絡受けてもまだ半信半疑だよぉ」

ニャース「すっかりお伽話になってたからニャ。ロケット団の中でも、実際に存在したことすら知らない団員がほとんどニャ」


ムサシ「とにかく二人とも、一刻も早く、シオンに行くわよ!」


ニャース「おう!!」


ムサシ「……なによコジロウ、ビビッてんの?」

コジロウ「お、おう!!」

支援ありがとうございます。
続きやります

タケシ「ところでサトシ、次はどこ行くんだ?」

サトシ「どこでもいいぜ、タケシが決めてくれ!俺たちは、ポケモンバトルができたらそれでいーんだ。なっ、ピカチュウ?」

ピカチュウ「ペペカチュ」

カスミ「ところであたし達、今どこにいんの?」

タケシ「えーっとだな……」

タケシはマップを広げた。

タケシ「さっきタマムシを通り抜けたからな……だいたい、この辺だ」

カスミ「うーん、ここからだと、シオンが近いわね」

タケシ「ポケモンの魂が奉られてる町だな。姓名判断などの事業も行っている場所だ。行ってみる価値はあるかも知れないぞ」


サトシ「よーし、行き先はシオンに決定!いくぜピカチュウ!!」

ピカチュウ「ペカ!!」

ババッ!


タケシ「……おーい、そっちはタマムシの方だぞー」

一方そのころ、オーキド博士のポケモン研究所では――――


オーキド「いいぞっ!ママさんのパルシェン、まるでゴクリンのマルノームじゃ!!」

ママ「博士こそっ!オーキド博士のドダイトスっ!まるでブースターのシャワーズだわっ!!」


オーキド博士が、サトシのママとポケモンプレイに勤しんでいた。


オーキド「おお、そろそろワシのブーバーがかえんほうしゃしそうじゃ!」


博士は、わざマシンの苦悩など、どこかに置きさってしまったのだろうか。

いや――――――


オーキド「っ?!」

ガタン!

ママ「……博士?」

オーキド「……うううっ、うううううっっ……!」ポロポロ


突然、オーキドの目から溢れ出る涙。


ママ「え?!博士!……一体どうしたんです?!」


博士は、わざマシンの事を忘れてはいなかった。いや、忘れられるはずがなかった。



彼の頭の中で響く声が、決して忘れることを許さないのだ。


オーキド「……あっ、たまがっ……われるっ……」

ママ「頭?!……とにかく、救急車を!」

オーキド「いや、やめろママさん!」

ママ「っ!でも!」

オーキド「いいから!……最近偏頭痛があってな。じきに、良くなるのじゃ」

オーキド博士は、声の正体を知っていた。


それはポケモンの声。自分が今まで殺めてきた、数え切れないほどのそれだ。


チューギャーチューガオーワンワンバウガオーバウギャーチューガオーチュークルッポーゴォオガオーワンワンバウバウゴォオニャーニャーチューチューガオーワンチューチューワンバウバウゴォオニャー


オーキド「……すまん、ママさん。今日は、もう帰ってくれんか」

ママ「…………」


そしてママは服を見につけると、オーキドの方を振り返り振り返り、研究所を出ていった。


オーキド「……うっ…」


酒も女も消し去れなかった声が、今も頭の中に響く。

チューギャーチューガオーワンワンバウガオーバウギャーチューガオーチュークルッポーゴォオガオーワンワンバウバウゴォオニャーニャーチューチューガオーワンチューチューワンバウバウゴォオニャーチューギャーチューガオーワンワンバウガオーバウギャーチューガオーチュークルッポーゴォオガオーワンワンバウバウゴォオニャーニャーチューチューガオーワンチューチューワンバウバウゴォオニャー………


オーキド「うおおおおっ…………」


オーキドの苦悩は、止まない。



――シオンタウン――


サトシ「はぁー、やっと着いたな!」

ピカチュウ「ペカ……」

タケシ「ははは、二人とも疲れたなら、今日はポケモンセンターで休もうか?」

カスミ「あたしも疲れちゃったー!三時間くらいだったけど、歩き続けると長いわね!」

サトシ「よし、じゃあ今日はもう休んで、明日から町の探検しようぜ!」

ピカチュウ「ピッピカチュ」






ムサシ「……あっちに見えんの、ジャリボーイたちじゃない?」

コジロウ「あれ、ホントだ!こんな何もない町に、何しに来たんだ?」

ニャース「それより早くボスのとこ行くのニャ!」


コジロウ「ああ、そうだったな」

ムサシ「遅れたら恐いわよぉ」


三人は、ボスの指定した待ち合わせ場所まで急いだ。



……待ち合わせ場所は、ポケモンの魂が奉られた塔の裏。

町からは、ちょうど死角になっている。


ボス「やっと着いたか。久しぶりだな」

ムサシ「も、申し訳ありましぇんボス……」ゼェゼェ

ボス「ふん、まあいい。お前たちが日々重ねる借金も、今回は大目にみてやることにしよう。」

コジロウ「え?!でもボス、俺達、ざっと一年分くらいの給料を前借りして――――」

ボス「もういいと言っているだろう。それより、大事なのは今回の件だ」

コジロウ「わざマシン……00……」

ムサシ「しねしねこうせん……ですね」

ボス「ああそうだ、オーキド博士の研究の成果。わざマシンが手に入れば、我々の目的を成し遂げる上で、大きな前進となるだろう」

ニャース「それで、ボスは何でニャー達を呼んだのニャ?」

ボス「ああ、実は――――――――










お前達を、「しねしねこうせん」のわざマシンの、制作責任者にしようと思ってな」


「「「ええええっ?!」」」

コジロウ「えぇ、ボス?!それはちょっと――――」

ボス「何故だ?給料は、たっぷりと払うぞ」

ムサシ「いや、私達にはちょっと荷が重いというかー、アハハ」

ニャース「そうニャ!ボスは、ニャー達の日頃のはたらきを見てないのかニャ?」

ボス「くっくっく……日々の働きなど、この際どうでもいい……。私は、お前達の技術力を買ってるのだよ」

ムサシ「技術力って……」

コジロウ「あんのかな、俺達……?」

ボス「ほとんどはあのピカチュウに壊されはしたものの、お前達の作った数々のマシンは、とても他の団員には作れそうもないものだ。」

コジロウ「いやあ……それほどでも」

ボス「第一、そんな理由でもなければ、お前達みたいな金食い虫をいつまでも団員にしておく訳がないだろう」

―――シオンタウン:ポケモンセンター―――


―PM9:45―


ジョーイ「はい、ピカチュウ、これでおしまい!すっかり元気になったわ!」

ピカチュウ「ピッカ!!」ダダダダッ

サトシ「良かったなピカチュウ!」


ジョーイさんの献身的な治療が済むと、ピカチュウは元気に床を駆け回った。


タケシ「ああ……さすがジョーイさんだ!疲れていたピカチュウの体を癒すだけでなく、心のケアまで!」

タケシ「ジョーイさん、どうか自分の心のケアも――――」

カスミ「はいはい、ジョーイさんは忙しいからあっちいきましょうねー」

タケシ「あたたたたたっ?!」


カスミがタケシの耳を引っ張って、どこかへ連れていく。

時々叫び声が聞こえてくる以外は、タケシがあのあとどうなるのか、サトシは知らなかった。


サトシ「よし、ピカチュウ、もう10時近いし、明日に備えて早く寝ようぜ!」

ピカチュウ「ピカ!」


そして二人は、ポケモンセンター備え付けの二段ベッド、その同じ布団に、一緒にもぐり込んだ。


サトシ「おやすみ、また明日な、ピカチュウ」

ピカチュウ「ピカ……」





どこか遠くの方で、タケシの叫びが聞こえた。

―――どこか遠くの氷河―――


ザザァン…

ザザァン…


波に揺られながら移動する氷山のある場所から、一匹のポケモンが顔を出した。



ヤドキング「……困ったなー……」


ヤドキングだ。


どうやら、氷山にできた洞穴を住居としているらしい。


ヤドキング「んー?……」


洞穴から出てきたヤドキングが何かを拾い上げる。

それは円盤のようであり、鈍い虹色の光りを放っていた。


ヤドキング「困ったなー……」




ヤドキングは わざマシンを きどうした!


わざマシンには 「しねしねこうせん」 が きろく されていた!


「しねしねこうせん」を ポケモンに おぼえさせますか?


はい←
いいえ








物語は、すでに世界中で動き出していた。


ウィィイイイイイ……


油の臭いに満ちた部屋に、機械の音が響く。



ここは某ゲームセンターの地下。

ロケット団の、事実上のアジトである。


ムサシ「あー、いつもコキ使われてた奴らに指図すんのは、気持ちーわねぇ」

コジロウ「まぁったくだ!黒服のやつらめ、白服だからって、俺達をいっつも仲間外れにしやがって!」

ニャース「長年の苦労が、ここで報われたのニャー…」

ウィィイイイイイ……


機械音を出していたのは、ニャースの持つドリルのような道具であった。

何やら小さい金属の固まりを相手に、火花を散らしている。


ムサシ「……しっかし、あのオーキドのジジイはホントに化け物ね」

コジロウ「どうしたムサシ?何か分かったのか?」

ムサシ「いや、分かったとかじゃないんだけどさあ……」


ムサシは一度言葉を切る。

ムサシが今行っているのは、わざマシンの欠けらの、「その部分だけの」復元作業だ。

わざマシンの残骸は、ぎざぎざな断面でかなり汚れてはいたが、全体の1/8ほどが、ほぼ完全に近い状態で発見されていたのだ。

ムサシ「……うーん、これで一応、起動はできるかね」


ムサシは汚れを丁寧に拭き取り、鈍い輝きを取り戻したわざマシンを見て呟いた。


コジロウ「なあムサシ、さっき何かに気づいたんだろ?教えてくれよ」


ムサシの呟きを聞いてコジロウも作業の手を止め、彼女の方へ向き直った。

ちなみにコジロウが行っているのは、わざマシンの復元に必要な試薬の研究。

彼の前には、色鮮やかな薬瓶がところ狭しと並んでいる。


ムサシ「だから、別に今に始まったことじゃないんだってば。1つ復元すんのにこんな時間のかかるわざマシンを、あのジジイは50個近くも作ってんのよ?」

コジロウ「そう考えたら確かにすごいな」


ニャース「どうしたのニャ?ムサシ、コジロウ?」


いつの間にかニャースも作業を中断し、こちらに来ていたようだ。


ムサシ「あ、コジロウとの話は別に何でもないことなのよぉ。それより、今とりあえず欠けらだけ復元したんだけど、再生してみようか?」

ニャース「? 是非お願いするのニャ」

ムサシ「じゃ、やりまーす!」

ムサシはコホン、と一つ咳ばらいをし、わざマシンを起動させた。



―――ちなみに、わざマシンの使用方法は至って単純だ。

まず、わざマシンの持ち主が手で持った状態で「使用したい」と思う。

するとわざマシンへその命令を持った電気信号が伝わり、わざマシンが空中でくるくると回転を始める。

ちょうど、CDを再生するときの様子に近い。


そしてわざマシンから、脳内に直接送りこまれる電気信号の指示に従って、ポケモンにわざを覚えさせると言うわけだ。

わざマシンからポケモンの脳内へ「わざの情報」が送られれば、それで完成である。



ムサシの起動したわざマシンも、上記の説明の通り、くるくると回転を始めた。

もちろん1/8の状態のままだが。

ムサシは ※ざ※※※を きど※※※!

なか※※ 「しね※ね※※※ん」 が※※く※※てい※!

「しね※ね※※※ん」を ポケモンに おぼ※※※※※※?



ムサシ「やっぱ全然だめね……」

コジロウ「指示は分かるのか?」

ムサシ「いやあ、これっぽっちの欠けらじゃ何言ってんのか全然わかんないわよぉ。ま、ないよりはマシだけどさ」

ニャース「ニャーはわざマシンきどうできないからわかんないのニャ」



ムサシが愚痴る横で、ニャースがそう呟く。


通常、ポケモンがわざマシンを起動することはできない。

指紋認証のような形で、わざマシンが、起動した者が人間でないことを読み取ってしまうからだ。


従って、ヤドキングのような、人知を超えたポケモンでない限りは、わざマシンを起動できないのである。

ちなみにヤドキングは、「ねんりき」を使って少しだけわざマシンの情報を書き換えることで、起動に成功していた。



ムサシ「まー、こいつもまだまだ完成からは遠いわけだね。ほら、作業に戻った戻った」


コジロウ「うー、また薬品の山との格闘か」

ニャース「頑張るのニャ」


ムサシは二人を作業に戻すと、再びわざマシンと向き直った。

ムサシは一人で少し考えたかったのだ。

あのオーキドという人物について。


ムサシ(コジロウ……アタシが言った「化け物」ってのは、実はわざマシンの数なんかじゃないのよ)


ムサシ(あのオーキドって博士……一体どうやってわざマシンを作ったのよ?)

ムサシ(わざマシンを作る為に必要な「ほぼすべてのポケモンの統計資料」は、どこから手に入れたの?)



ムサシは頭が良かった。そして周囲の人間が考えている以上に、ポケモンを愛していた。


故に気づいてしまった。「わざマシンの作成」は、ロケット団では到底不可能なのだと。


――――ロケット団の目的は、「サカキの統治する、ポケモンと人間が共に暮らせる社会」である。


ポケモンの密売などと行き過ぎる側面もあるが、サカキは資金調達以外の目的でポケモンを過度に傷つけることを固く禁じていた。

それ故ポケモンに開発段階の薬を投与したり解剖実験を行ったりすることは、サカキが指示した場合を除いて、必要最低限に留められている。

故に、「ほぼすべてのポケモンの統計資料」など、手に入れられるはずがなかった。


「あるわざ」に対する「あるポケモン」の耐性や相性、致命傷となりうるのか……それらを詳細に記した「統計資料」。

それを手に入れる為の実験がどれほど酷いものになるかは、もはや言うまでもないことだ。


ただのわざマシンでさえそうなのだ。「しねしねこうせん」の統計となると……


そこまで考えて、ムサシは身震いした。

あの老人は底が見えない。どこまでが本当のオーキドで、どこからが嘘なのだろうか。


ムサシも他のたくさんの人がそうだったように、ブラウン管の中のオーキドを見て育ってきた。

テレビに映るオーキドは、ポケモンと仲良く遊び、共に笑っていた。


――みんなもポケモン、ゲットじゃぞお!!――


オーキドの決めゼリフが、頭の中に響く。


ムサシはこれ以上研究を続けることで、自分の持つ優しいオーキドの像が崩れていくのが怖かった。

――ポケモンセンターの前――


ジョーイ「またのご利用をお待ちしてます!」

サトシ「ありがとうジョーイさん!」

ピカチュウ「ペカチュ!」

タケシ「ああジョーイさん……自分はっ、自分はジョーイさんを裏切っ――――」

カスミ「はいはい、さっさといきましょうねー」


カスミがタケシの耳をつまみ、またズルズルと引きずっていく。


タケシが今にも泣きそうな顔なのに対し、カスミはいい笑顔をしていた。

肌がツヤツヤと光って見えるのは、気のせいだろうか。


サトシ「よし、タケシ!まずはどこに行こうか?」

タケシ「……ぽ、ぽけもんのたましーがまつってあるとうに、いきたいでしゅ」

カスミ「ほぉーら、シャキッとする!さっさと行くわよ!」

トゲピー「Take it Pleeeeeeeaaaase!!」

――ポケモンタワー――

タケシ「近くで見ると、やっぱりおっきいなあ……」

カスミ「タマムシデパートより高いかもね」

サトシ「よーし、さっそく中に入ってポケモンバトルだぜ!!」

ピカチュウ「ピッ!!」

バチバチッ


ピカチュウが頬の電気ぶくろからバチバチと放電する。

タケシ「ははは、サトシは相変わらず、頭がバトルでいっぱいのようだな」

カスミ「ポケモンの魂が奉られてるなら、静かにしなきゃいけないんじゃない?」

タケシ「いや、そうでもないみたいだぞ。上の階は、主にエスパー、ゴーストタイプのポケモントレーナーがゴロゴロいるみたいだ。昔から、ここは「霊穴」といって、霊気の集まる場所として知られてたみたいだな」

サトシ「なるほど!これっぽっちも分かんねぇや!」

カスミ「サトシは、トレーナーがいたらそれで満足よねー」


カスミはそういってクスクスと笑う。


サトシ「行くぜピカチュウ!俺達が一番乗りだ!」

ピカチュウ「ピカピ!」

ダダッ!

タケシ「おーい、つまずかないようになー」

カスミ「あのポケモンバカには、聞こえてないみたいだけどねー」


そして残された二人も、サトシとピカチュウを追いかけるようにして、中に入っていった。

サトシ「中は何だか寒いな……」

ピカチュウ「ペカ……」

ピカチュウがぶるぶるっ、と体を振る。

タケシ「おーい、二人とも待っ……おお、何だかひんやりしてるな」

カスミ「アタシ半袖だし、めちゃくちゃ寒いな……」

トゲピー「ちょき……」


トゲピーも、だいぶ寒いようだ。いつもの元気はどこへやら、卵の殻の中に頭を引っ込めている。


サトシ「うぅっ、さっっみぃいい!ピカチュウは大丈夫か?」

ピカチュウ「ピッカチュ!」

サトシを心配させまいと、ピカチュウは努めて元気に振る舞おうとした。


タケシ「しかし、この寒さはすこし異常だな……入口のパンフレットには、外より少し寒いくらいだと……っぷし!!」

カスミ「ねー、サトシー、もう出ましょうよ。このままじゃ風邪………っくし!」

サトシ「そーだなぁ、こんな寒いと、ポケモンバトルどころじゃ――――」











――――オーキド博士は、どこ?――――






サトシ「え?」

ピカチュウ「?……ピカピ?」

ねぇーこいつオーキド博士のにおいがするーだめじゃんこんなところに入っちゃあれーきこえないのかなーはやくかえったほうがいいよーぼくらみたいにころされちゃうからさーころされみたいにねーまだうごかないのーはやくーころされちゃうよいたいいたいいたいよはやくおうち帰りたいママ心配してるかなーぼくんちみんなころされたからなーおなかいたいなーくすりくるしいよーたすけていたいいたいよたすけてはやくみたいにまだいたいオーキド博士たすけていたいいたいいたいいたいいたいころされちゃうからさーだめじゃんこんなところにいたいたすけてママ心配してるかなーぼくんちみたいにまだうごかないのーはやくーころされちゃうよいたいいたいいたい…………




サトシ「うわああああああああああああああああ!!!」

ピカチュウ「ピカピ!」


タケシ「おい、しっかりしろ!サトシ!おい!!」

カスミ「サトシ!」

タケシ「くそっ、一旦外に出るぞ!」

タケシがサトシをおぶる。サトシにはもはや意識があるかすら分からず、ただ顔を青くして苦しそうな呼吸を繰り返す。


カスミ「うん!ピカチュウ、おいで!」

ピカチュウ「ピッカチュ!」

カスミはピカチュウとトゲピーを、タケシはサトシをそれぞれ抱えると、一目散に来た道を戻っていった。







タケシ「ゼェ……おい……ゼェ、サトシ!大丈夫か!」

シオンタワーの外に出てサトシを地面に寝かせたタケシは、懸命にサトシの体を揺さぶる。

タケシ「サトシ!サトシ!……頼む、起きてくれ!」

カスミ「ねぇタケシ!そんなに揺さぶったら――――」


カスミがそう言いかけた時、


ピカチュウ「ピカピ!!」


サトシ「……………うっ……」


サトシがうっすらと目を開けた。

「「「サトシ(ピカピ)!!」」」

サトシが目を開けたことで、全員に安堵が広がる。


サトシ「あ、れ……タケシ?……ここ……どこだ?」

タケシ「シオンタワーの外だ。お前が急に倒れたから、とりあえず塔から出てきたんだよ」

サトシ「あぁ、そうだったのか……サンキュー、タケシ、カスミ」



カスミ「ねぇ……サトシ、何があったの?」

ピカチュウ「ピカピ……」

カスミの言葉で、みんなの表情が再び暗くなる。

シオンタワーは「魂の奉られてる場所」だ。何か霊的な現象が起こっても、何の不思議もない。




サトシ「……ポケモンの、声が聞こえた」

タケシ「ポケモンの?」

サトシ「ああ……なんでかは分からないけど、皆オーキド博士を恨んでいた」

タケシ「オーキド博士?……でも、あの人はポケモンの恨みを買うどころか、ポケモンには親しまれてるはずだろ?」

サトシ「俺もそう思ってた……でも、ポケモン達が口々に言うんだ――――」


――――ころされる

――いたい

――――たすけて


サトシ「一度聞いたら、忘れられそうにない、恨みのこもった声だった」

タケシ「――――そうか」

タケシ「で、今は体は大丈夫なのか?」

サトシ「ああ、今は何ともない……ごめんなピカチュウ、心配かけて」

ピカチュウ「ピカピ!」

サトシが頭を撫でてやると、ピカチュウは嬉しそうにほお擦りをする。


カスミ「とりあえず、ポケモンセンターに戻ろっか。こんなことがあった後じゃ、すぐには動けないだろうし」


タケシ「ああ、そうしようか」

タケシ(オーキド博士には、事情を聞いてみる必要がありそうだな……)


そして三人と二匹は、サトシに手を貸しながらゆっくりとポケモンセンターへと歩いていった。





――ロケット団アジト:サカキの部屋――


サカキ「む?」


サカキは、誰かが部屋の戸を叩くのを聞いた。


サカキ「入りたまえ」

ムサシ「……失礼しまーす……」


ドアから、ムサシが不安そうな顔つきで入ってきた。

サカキ「ムサシか……どうだ?研究ははかどっているか?」

ムサシ「その件で、少しお話が……」


サカキ「……言ってみろ」

ムサシの表情を見て、サカキはペルシアンを撫でるのを止め、椅子に深く座り直した。




ムサシ「ボス……ポケモンに、投薬実験を行うことを、許可していただけませんか」

サカキ「……また何故だ?お前も、ロケット団の約束事くらいは知っているだろう?」

ムサシ「もちろんです。ですが、研究した結果、わざマシンの作成には、特殊な金属や部品の他に、「ほぼすべてのポケモンの統計資料」が必要だと分かったのです」

サカキ「……それで?」


ムサシ「わざマシンの一番核たるものは、わざのアイデアでもなく、電気信号の伝達装置でもなく―――――そのタイプのポケモンほぼすべてに使えるという、普遍性です。ですから、わざマシン作成には、開発の段階で、あらゆるポケモンのデータを手に入れなければならないのです」


サカキ「ということは、あの老人が、ポケモンに残酷な投薬実験を繰り返しながら、データを採取したと?にわかには信じがたいな」

ムサシ「ええ、私も最初はそう思っていましたが、ある決定的な証拠がありました」


サカキ「…………何だ?」









ムサシ「ポケモン図鑑に、あらかじめ全てのポケモンのデータが保存されていたと言うことです」

サカキ「……あの図鑑は、捕まえたり見つけたりしたポケモンのデータが登録されるという……」

ムサシ「はい、私もこの目で図鑑を使用しているところを何度も見ていますから、間違いないかと」

サカキ「なるほどな。あの老人の言うことを、皆が鵜呑みにしてしまったというわけか……」


サカキは、この賢明な部下が言ったことに驚きを隠しきれなかった。

しかし真実であれば、すべての矛盾に説明がつく。


そもそもおかしいとは思っていたのだ。


「ポケモン図鑑」が、それを向けたポケモンを音声つきで説明できる機能。


捕まえただけのポケモンが、詳しく記録される機能。


今さらながら、おかしいことだらけではないか。



サカキ「…………くっくっ」

ムサシ「ボス?」

サカキ「フハハハハハハハハハ!!なるほど!そうかそうか!!あの賢しい老いぼれめ!!優しげな笑顔の下で、こんなことをやっていたとは!!アハハハハハ!ハハハハハ!!」



――ならば話は早い。


ロケット団が使う、いつもの手。


――奪えばいいのだ。あの老人の、研究の成果を。





サカキ「アハハハハハ!ハァーッハッハッハッ!!」






サカキの笑い声は、いつまでも止むことはなかった。

―オーキド博士のポケモン研究所―


オーキド「よし、これでオーケーじゃ。しばらく動かさぬようにな」


短パン小僧「ありがとう、オーキドのじいちゃん!」

オーキド「なに、何のことはない。この町はポケモンセンターがないからな。いつでも来てくれ!」

短パン小僧「うん!じゃあ、またね!」

オーキド「うむ、君もポケモン、ゲットじゃぞお!」


そして短パン小僧は、殻の一部に包帯を巻いたトランセルと共に、家へと帰っていった。


オーキド「――ふぅ……」


一体いつまで、こうした何もない日々を送れるのだろうか。

オーキドは、そんなことを考えながら扉を閉めた。


しかし、扉はすぐに誰かの手によって開かれる。


オーキド「何じゃ?短パン小僧か?忘れも――」



サカキ「残念ながら、私はさっきの男の子ではない。オーキド博士――いや、犯罪者、オーキド・ユキナリと言うべきか。」


オーキド「……何じゃ、お前さんは。人をいきなり犯罪者呼ばわり――」

サカキ「とぼけなくてもいいぞ、オーキド博士。貴様がポケモン実験を繰り返し、わざマシンの統計をとったのは分かっているのだ」

オーキド「何と……」


サカキ「さあオーキド。さっさと「統計資料」をよこせ!!」


サカキはオーキドにつかみ掛かった。


オーキド「くぅっ……!」


オーキドは胸元を絞められながらも、後ろ手で机に置いてあるモンスターボールをとった。

中央のボタンを押すと、ボールが手の中で大きくなるのが分かった。


オーキド「行けっ、トドゼルガ!!」


――パァッ――

サカキ「っ! そんな大型のポケモンを……研究所を壊すつもりか?!」

オーキド「いずれはこうなると思っておったわい!!あの忌まわしい「統計資料」を誰かに渡すくらいなら、ワシはあれと一緒に地獄に堕ちる!!」

サカキ「……狂ったかオーキド!?」

オーキド「ワシは正常じゃ!狂っておるのはお前さんの方じゃわい!何故あの忌まわしい研究に手を出す?何故ポケモンの魂を、静かに眠らせておこうとは思わんのじゃ!」

サカキ「フン! そのポケモンの魂を引きずり出したのはどこのどいつだ?!」

オーキド「っ……!」


博士がが一瞬怯んだその隙を、ロケット団のリーダーが見逃すはずはなかった。


サカキ「ゆけっ、サワムラー!オーキド博士を、外へ蹴り出せ!」


――パァッ――


サワムラー「サワムラァ!ティティティティ!!」

オーキド「ぬぉっ?!」


サワムラーは、オーキドと机の間に一瞬で入り込むと、オーキドをドアの方へ蹴り飛ばした。

その速さはかの沢村忠を凌ぐ程で、とてもトドゼルガに反応できるものではなかった。


オーキド「くぅっ! トドゼルガ!」

トドゼルガ「ゴォオ!!」


蹴り飛ばされたオーキドはなす術なく地面を転がった。

トドゼルガは扉を破壊しながらオーキドの元へ駆けつけ、サカキ・サワムラーに対し臨戦態勢を取る。


蹴られた腹部はずきずきと痛むが、悠長に構えている暇はない。

オーキドは痛みを堪えて立ち上がる。


一方でトドゼルガは主人を蹴り飛ばされたことで怒り、その激情は冷気となって辺りを凍らせ始めた。


サカキ「場を変化させるとくせいなど持たないポケモンのはずだが……。よく育てられている、本当に」

オーキド「褒めても何も出んぞ」


そして一人と一匹同士が向かい合った。


サカキ「さあ博士、お得意のポケモンバトルだ」

オーキド「バトル?そんな生易しいものではないじゃろ」


――ここでポケモンバトルについて説明しておこう。


ポケモンバトルのやり方は主に二つ。

一つは、サトシ達が行うようなごく普通のポケモンバトル。観客を集めることもあり、形式的には格闘技の試合に近い。


もう一つは、今から行われるようなバトルだ。


形式はストリートファイト。ルール一切なし、勝てば官軍、負ければ打ち首の――






――『ガチンコバトル』。


オーキド「トドゼルガ、れいとうビーム!」

サカキ「サワムラー、ブレイズキック!」


わざを繰り出したのは二匹同時だった。

――ガォオオオン!!


炎と氷がぶつかり合い、辺りが蒸発した氷による煙で白く染まる。

条件は相手も同じ。


二人とも、視界が失われた程度で戸惑うようなトレーナーではない。


オーキド「トドゼルガ、アイスボールを作って待機!」

トドゼルガ「ゴオオオオ……」


トドゼルガが口を開くと冷気が収束し、氷の塊を作ってゆく。

もちろんルール一切無視のバトルである。アイスボールの大きさは最初から極大だ。


オーキド「さて、サワムラーはどこに……っ?!」


突然オーキドの前の煙が吹き飛び、そこからサワムラーが飛び掛かってきた。


オーキド「近づかれておったか! トドゼルガ!アイスボール!!」

トドゼルガ「ガォオッ!」


小さな家ほどの大きさの氷が、サワムラーを襲う。


が。


サカキ「サワムラー、メガトンキック!」

サワムラー「ティティティ!」


ボゴォアアアアン!!


氷は一撃で粉砕され、辺りに小さなかけらを残して崩れていく。


オーキド「よく鍛えられておるの」

サカキ「そっちこそな。トドゼルガがこの地方で見れるとは予想していなかったよ」

二人と二匹が戦いを繰り広げていた頃。


―どこかの森―


木の穴から、一匹のポケモンが出てきて、空中を妖精のように舞う。


セレビィだ。

セレビィはすぐそばの湖まで飛んでゆくと、水面を少し触る。

すると手を浸けた場所から光の波が水面を広がってゆき、水を浄化していった。


セレビィ「ビィイイッ!」


そんな水面の様子が面白いのか、飛んでは触り、触りは飛んでを繰り返す。


ふとセレビィは、何か視界の端に黒いものが映ったのを感じた。


セレビィ「?」


辺りを見回すと、黒いものの正体はすぐに分かった。


古代文字に似た『シンボルポケモン』。

夥しい数のアンノーンが、木の陰から、湖の中から、草むらから集まってくる。


そして彼らは寄り添い、連結し、ある文章を作っていく。


アンノーン自体に、思考はほとんど存在しない。

ただ文字としての役目を果たすためだけに生まれたポケモンだ。


セレビィ「……」


そして今回も、アンノーンは役目を果たした。


セレビィに、世界の危機を――いや、


かつての友、ユキナリの危機を知らせる役目を。

―シオンタウン:ポケモンセンター―


ジョーイ「さあ、サトシくんももう大丈夫。すっかり良くなったわ!」

サトシ「すみませんジョーイさん。まさか二日連続でお世話になっちゃうなんて」

ジョーイ「いいのよそんなこと。何だったら明日もいる?」


ジョーイさんはそう言って、いたずらっぽく笑った。


ポケモンタワー前で倒れたサトシはすぐにポケモンセンターへと運び込まれていた。

幸いにも気を失ったこと以外は目立った症状もなく、覚醒した後はいつも通り元気だった。


タケシ「ああジョーイさん、自分をいつまでもあなたのおそばに――」

カスミ「はいはい、もう十分お世話になりましたー」

タケシ「あだだだだだだ」


それでも無理は出来ないので、一同は大事をとってもう一晩、ポケモンセンターでゆっくりしたようだ。

二日の休養が効いたのか、全員がぴんぴんしている。


タケシ「さて、サトシ。昨日のこと、いろいろ考えたんだけどな……やっぱり、オーキド博士に事情を聞いてみるべきだと思うんだ」

サトシ「ああ、賛成だぜ。どう考えても、ほっとける問題じゃないからな」

タケシ「というわけで、次の目的地はマサラタウンにしようと思う。みんなもいいか?」


一同は頷く。


タケシ「よし、決まった。サトシ、ピジョットの「そらをとぶ」を頼む」

サトシ「よし! いけっ、ピジョット!きみにきめた!」


――パァッ――


ピジョット「ピジョッットォォォォォォ!!」

サトシ「ピジョット!全員乗せて「そらをとぶ」だ!行き先はマサラタウン!」

ピジョット「ットォォォォォォ!!」


――バサッ!


ポッポから進化したとは思えないくらいの大きな翼を、空いっぱいに広げる。

その背中に、サトシとピカチュウが颯爽と飛び乗った。


サトシ「よし、みんなも乗ってくれ!」

タケシ「分かった」

カスミ「行くわよトゲピー」

トゲピー「チョッキップリィ!」


そして一同はマサラタウンに向かって、猛スピードで飛び立っていくのであった。

―オーキド博士のポケモン研究所―

オーキド「……やりよるな」

サカキ「トドゼルガはやはりHPが高いな。なかなかしぶとい」

サワムラー「ハッ……ハッ……」

トドゼルガ「ゼッ……ゼッ……」



二人が戦っていた場所は、すっかり変わり果てていた。

燃えている木や氷漬けになった岩が辺りに散乱し、地面には所々にクレーターが出来ていた。


かれこれ一時間近く戦い続けのサワムラーとトドゼルガは肩で息をしている。


サカキ「そろそろ……終わりにしようか、オーキドよ」

オーキド(……来るか?!)

サカキ「サワムラー!――――!」

サワムラー「サワムラァ!」


指示を聞いたサワムラーが、こちら側へ猛然と向かってくる。


オーキド(くそ、指示が聞こえなかった!)

オーキド「トドゼルガ!なみのりじゃ!」

トドゼルガ「ゴオオオオッ!!」


トドゼルガも、負けじと大波を繰り出す。


オーキド「とらえたか!」

大波は、確かにサワムラーを飲み込んでいった。

だが。


サカキ「残念だったなオーキド。貴様の負けだ」

オーキド「なんじゃと?!」

サワムラーはいつの間にか、オーキドとトドゼルガのすぐそばに立っていた。


サカキ「「フェイント」だ。まさかあなたほどの人物が、こんな簡単なわざに引っ掛かるなんてね」

オーキド(フェイントか……!ぬかったわ!)

サカキ「さあ博士。今まで殺してきたポケモンと共に、おやすみなさい」





――サワムラー、とびひざげりだ!




鋭く鍛えられた足がオーキドにめり込む。

肺から空気が押し出されるのを感じ、強い衝撃と共に、記憶はそこで途絶えた。

ピジョット「ピジョッットォォォォォォ!!」

サトシ「あ、マサラタウンが見えてきたぜ!」

カスミ「小さな町ね。オーキド博士の研究所が一番おっきな建物じゃない」

タケシ「しかし、研究所の前の地形がおかしいぞ。クレーターみたいなのがちらほら……」


ピカチュウ「ペカ?」


その時、ピカチュウが何かを見つけた。


ピカチュウ「ピカ!ピカピ!!」

サトシ「ん?何だピカチュウ?」

ピカチュウ「ピカピ!ピカチュ!」

サトシ「研究所の前に?……オーキド博士?!急いでくれピジョット!博士に何かあったんだ!」

ピジョット「ピジョットォォォォォォ!!」


ピジョットは急旋回、急降下し、博士の傍に降り立った。


サトシ「博士!しっかりしてください、博士!」


地上に下りた一行は、ピジョットを戻すのも忘れて博士に駆け寄った。


カスミ「……待ってサトシ!博士が何か……」

オーキド「う……サ…トシか?」

サトシ「博士!」


オーキド「サトシ……「統計資料」が奪われた……け、研究所の一番奥、金庫の……中に、最後の……ひで……」


「「「博士?!」」」


オーキドはそこまで言うと、再び意識を手放した。

腕をだらりと下げたオーキド博士は、安らかな顔をしていた。

まるでサトシに、自分の研究の全てを託すように。


サトシ「博士!博士!!」

タケシ「サトシ、とにかく今は救急車だ!」


カスミがふと顔を上げると、向こう側に大きなポケモンが倒れているのが見えた。


カスミ「タケシ、あっちにトドゼルガが!」

タケシ「……!そうか、ポケモンバトルがあったのか!カスミ、トドゼルガの分も救急車を呼んでくれ!」


言われてカスミはすぐに、ポケナビで110番をする。


タケシ「俺はトドゼルガの様子を見てくる!サトシはオーキド博士を頼むぞ!」

サトシ「あ、ああ、分かった!」



だが、サトシは半ば上の空で、みんなの声を聞いていた。




――――「統計資料」

――一番奥
――――――金庫




博士は一体何を、俺に託したのだろうか。


サトシはぼんやりと考えながら、救急車を待った。

五分も経たずに、トキワシティから救急車がやって来た。

遠くからサイレンが近づいて来る。


博士とトドゼルガの容態に変化はないが、双方とも意識不明の重態だと言うことに変わりはない。

救急車の姿が確認できたところで、タケシが声をはり上げた。


タケシ「おーい!!こっちでーす!!」


救急車もこちらに気づいたようだ。近くに停車し、救急隊員が降りてくる。


タケシ「サトシ、俺とカスミはオーキド博士に付き添って病院に行く。お前はここに残って、博士の言ったことを確かめてくれ」

カスミ「こっちは大丈夫だから、しっかり調べてよね」

サトシ「……ああ、分かったよ!」


サトシは頷く。二人が何故自分だけ残したかは、何となく分かっていた。


ジョーイくん「怪我人は、老人とトドゼルガで全部だね?」

タケシ「はい、僕らが付き添いますので、早く病院へ!」

ジョーイくん「了解だ。では二人は救急車へ!」


救急車に乗り込むタケシとカスミ。

そして救急隊員が扉を閉めようとしたところで、タケシが最後の一言を告げた。

タケシ「サトシ、あのオーキド博士の言葉は間違いなくお前宛てのものだ。博士が何を言いたかったのかは分からないが、このままだと、何かまずいことが起こりそうな気がする」

タケシ「必ず、博士の言葉の意味を突き止めてくれ」


シオンタウンでサトシが聞いた声。

戻ってみれば、倒れていたオーキド博士。


タケシもカスミも不安ながらに、サトシとピカチュウを信じて託した。


カスミ「お願い……サトシ、ピカチュウ」


ブォンッ――――



救急車が見えなくなってから、サトシはぽつりと呟いた。


サトシ「……いくか、ピカチュウ」

ピカチュウ「……ピカ!」


その時の二人の表情は、今までのどの冒険の時より大人びたものであった。


――――
――

―ロケット団アジト―


ムサシ「どーよコジロウ?うまくいったー?」

コジロウ「あー、とりあえず電気信号を伝える試薬はできたけど」

ニャース「ニャーも部品は揃ったのニャ」

ムサシ「アタシもわざマシンの外形は出来たわー。あとは………」


「「「統計資料か……」」」


ニャース「あれがないとさすがに無理なのニャ」

ムサシ「ボスは笑いながらどっか行っちゃったしぃ」

コジロウ「やっぱ無理なのかなー……「しねしねこうせん」」

コンコン!

誰かが研究室の扉をたたく。


ムサシ「あーいどうぞー」

サカキ「邪魔するぞ」

コジロウ「えぇっ!ボスゥ?!」


ムサシの気のない返事とほぼ同時に入ってきたのは、額に汗を浮かべたボスだった。


ニャース「こんなむさ苦しいところで、申し訳ないのニャ!」

サカキ「歓迎の挨拶はいい。それより喜べ、「統計資料」が手に入った」


「「「えぇえっ?!」」」


ムサシ「ボス……まさか」

サカキ「目的の為なら手段は選ばない。それが我々「ロケット団」だ」

ムサシ「……はい」

コジロウ「とにかくこれで……」

ニャース「わざマシンが作れるのニャ!」

サカキ「ふん……完成を楽しみにしてるぞ」


そう言って、サカキは去っていった。


コジロウ「うわあ……すげぇや。どのポケモンのページも、びっしり埋まってやがる」


コジロウはパラパラと「統計資料」をめくる。


ニャース「伝説のポケモンの観察日記もあるのニャ」

ムサシ「さすがにゲットは無理だったみたいねー……」


しばらく「統計資料」を眺めていた三人だったが、わざマシンを完成させたい思いが強まったのか、誰からともなく作業に戻る。


コジロウ「幹部昇進!」

ニャース「支部長就任!」

ムサシ「いい感じー!」


いや、彼らを動かしているのは、出世欲かも知れない。

―オーキド博士のポケモン研究所―


サトシ「研究所の入口、めちゃめちゃだな」

ピカチュウ「ペペカチュ」


二人は現在、研究所を探索中である。


オーキド博士の研究所は、基本的にはあまりw私物は置かれていない。

あるとすれば研究に必要な資料か、ポケモンに関する本くらいのものだ。


今二人は、壊れた入口を乗り越え、研究資料でぎっしりの本棚を通過しているところだ。


サトシ「一番奥の金庫か……」


この時のサトシは、オーキド博士の言葉で頭がいっぱいであった。

だからこそ、奥以外の場所には注意が向いていなかった。


アンノーンG「――……」


本棚に張り付いていたアンノーンにも気づかず、サトシは一心に奥を目指した。


ピカチュウ「ピカ!ピピカチュ!」

サトシ「お、金庫ってそれか。良くやったぞピカチュウ!」


金庫はすぐに見つかった。

一番奥の左、観葉植物の裏。古ぼけたダイヤル式の金庫が、そこに無造作に置かれていた。

サトシはしばらく金庫を見つめていたが、その視界はいきなり現れたポケモンによって遮られた。


セレビィ「ビィッ!」

サトシ「うわっ?!」

ピカチュウ「ピカッ?」



突然、セレビィがサトシの目の前に現れたのだ。

どうやら、研究所の外からテレポートしてきたらしい。

セレビィは驚く二人を指さして可笑しそうに笑うと、金庫の上にちょこんと座った。


そして――


アンノーン「――――!」

サトシ「うわああっ!?」


ぞわぞわと這い寄る様に、アンノーンの大群が本棚の陰から飛び出してきた。


セレビィ「……」


セレビィの目が青白く輝き始める。

するとその輝きに導かれるように、アンノーンが並び替わり、連結し、空中に文字を刻んでいく。


サトシ「これは……」

ピカチュウ「ペカ」




『ようこそ、ユキナリの友よ』


整然と並んだアンノーン達は、セレビィからのメッセージであった。

サトシ「セレビィ……これは?」


そう尋ねるが、セレビィは金庫から離れ、アンノーンの周りを跳び回るだけで、何も言わない。

サトシはこのまま、アンノーンの示す文字を追っていくことにした。



『ようこそ、ユキナリの友よ。

私はセレビィ。

かつてのユキナリの友であり、彼の理解者の一人だ。

まずあなたには、彼が作った悪魔の兵器、「わざマシン00:しねしねこうせん」について話さなくてはならない。』


サトシが読み終わるタイミングで、次々と並び替わるアンノーン。

懸命に目で追っていく。


『「しねしねこうせん」は、ポケモンに「自殺願望」を植え付けるわざだ。

当たったポケモンはどうにかして死のうと暴れ出し、「悪あがき」に近い状態になる。

自傷行為を繰り返すうちに死に至るという、恐ろしい効果だ。


しかしこのわざマシンは彼のほんの好奇心から生まれたものだ。

わざマシン00を作るために数多のポケモンを犠牲にした彼だが、彼はその効果を意図し、悪意を持って作ったのではない。


せめてあなただけでも、そのことを知っていて欲しい。』

セレビィは続ける。


『そしてわざマシン00を完成させた彼は、自らの作った悪魔の効果に愕然とした。

そして、自らの罪の重さを知った。

狂った彼を正気に立ち返らせたのは、自分が殺してきたポケモンの声だった』


サトシは、もう文字を読むのが嫌になった。

自分にピカチュウをくれたオーキドの優しい笑顔が、ガラスみたいに崩れていくようだった。


だが、アンノーンは並び替わるのを止めない。

セレビィは、話すのを止めない。


『そして絶望の淵で、彼はこう考えた。

このままではいけない。
このままでは、悪魔に負けてしまう。

ポケモンたちを殺してまで作った、悪魔に』


ピカチュウ「ピカピ……?」

サトシ「ああピカチュウ……大丈夫……だいじょうぶだから……」


サトシは、今にも泣きそうな自分の声を聞いた。


『彼は苦悩し続けながらも、最後の大仕事を成し遂げた。

自らの産んだ悪魔を、自らの手で屠るためのわざマシン。


それが今、そこの金庫に入っている。


オーキドユキナリ博士が、自分の研究の全てを注ぎ込んだわざマシン。






「ひでんマシン00:イノセント」』

『「イノセント」の効果は、ポケモンのわざを一つだけ初期化できる、というものだ。

もちろんこの力は強力だ。

悪用しようと思えば、その使い道はいくらでもあるだろう。

だからユキナリはこのわざマシンを「ひでん」とし、誰にも教えないまま、ずっとしまっていたのだ』



不意に、セレビィが金庫へと飛んでゆき、軽くそれに触れた。


サトシ「わっ……!」


セレビィを中心に、光景が変わる。

破壊されていた入口は元通りになり、本棚の本も少し位置がずれる。


サトシ「これは……過去?」


『そうだ。今からあなたに、「イノセント」がここに仕舞われた過去を見せようと思う。』


セレビィの伝説たる所以は、この能力「ときわたり」にある。

セレビィはサトシに、何を伝えると言うのだろうか。


『これは「過去の映像」ではない。

我々は今、実際に過去に来ているのだ。

ユキナリがそろそろやってくるから、本棚の陰に隠れてくれ』


サトシ「分かった。ピカチュウ!」

ピカチュウ「ピカ!」


サトシとピカチュウ、そしてセレビィは本棚の隅に身を潜める。


アンノーン達も、ザザザッという音と共に、どこかへと消えた。

ばん!


扉が開くと、汗と機械油にまみれたオーキドが、こちらに歩いていた。

何かを両手で、大事そうに抱えている。


オーキド『やっと……やっと完成じゃ……。ワシの最後の研究、「ひでんマシン00:イノセント」……』


老人は、絞り出すようにそう呟いた。

そして彼は、サトシたちのいる本棚を通り過ぎ、金庫の前に座る。


オーキド『思えば、研究づくしの半生じゃった……。
ポケモンに出会い、研究を始め、いろんなポケモン、いろんな者に会った……。
ウツギ、オダマキ、カツラ……、彼らは今、どうしておるかのう……』


オーキドは続ける。


オーキド『ワシの研究が認められたのは、「ポケモンのタイプ別の分類」からじゃったか……。それからはとんとん拍子。人々に認められていくうち、いつしか本当にポケモンを愛する気持ちを、忘れてしまったのかも知れないの……』



――あんなものを生み出してしまうなんてな。


オーキドはそう呟き、小さく笑みを浮かべた。

オーキド『だが、だからこそ。ワシはこれを完成させた。少しでも、ポケモンへの罪を償うために!


…………いや、ホントは、そんな大層な理由じゃない。

ワシはただ、もう一度ポケモンに愛されたかったのじゃ』


オーキドは拳を握りしめる。

掌には少し血が滲んでいた。


オーキド『まあ、この際理由など何でもよい。「あのわざマシン」を、「しねしねこうせん」を、止められるのなら』


オーキド『「ひでんマシン00:イノセント」……。

"無垢"か。我ながら、大層な名前をつけたもんじゃ』


オーキドは、くっくっと笑う。


オーキド『サトシ、そしてピカチュウ。

ぼうけんに出たばかりの君達に。

このひでんマシンは、君達だけに伝えよう。



いつまでも無垢で。



いつまでも純潔で。



いつまでも、ポケモンを愛する気持ちを忘れないように。







この老いぼれの、最後の願いじゃ。



「わざマシン00:しねしねこうせん」の全てを――





――――壊してくれ』

少しずつ、オーキドの姿が薄れていく。


サトシ「………は、かぜぇ……」ポロポロ

ピカチュウ「ピカピ……」


サトシは泣いていた。

今までのオーキド博士の姿からは、想像もできない過去。

10歳の少年が知るにはあまりに残酷な内容に、サトシはただ涙していた。


でも――


サトシは、オーキド博士が、自分とピカチュウに全てを託してくれた事を、素直に嬉しく思った。

オーキド博士に出会い、ピカチュウに出会い、そして――


たくさんの思い出が、サトシの中を駆け巡る。

オーキド博士は、サトシのポケモンの原点であった。いや、"人生"の原点であった。



――幼い少年と一匹は決意する。


ならば自分達が、博士の終着点になろうと。

自分達の手で、博士の生み出した悪魔に幕を下ろそうと。






『ワシのかわいいポケモン達に、未来を――』

―――――
――


視界が一瞬完全に白く染まり、すぐに現実に引き戻される。

セレビィ、サトシ、ピカチュウが本棚の陰から出ると、またアンノーンが文章を作っていた。



『さあ、サトシ、ピカチュウ。

ユキナリは君達に全てを託した。

金庫の番号は、君達にちなんだ番号。ピカチュウなら、確実に知っているはずだ』


ピカチュウ「ピカ?」

サトシ「ピカチュウなら?……もしかして」


サトシは金庫に歩みより、震える指でダイヤルを回す。



0……2……5……




金庫の奥で、カチッと音がした。


『そうだ。金庫の番号はピカチュウのポケモンナンバー。彼が最も好んで使用した数字の一つだ』


『サトシ、そのひでんマシンを受け取れば、もう戻れない。ピカチュウもだ。

覚悟は、できているか?』


サトシは答えない。

答えはしないが、その決意は明らかだった。



サトシは 「ひでんマシン00」を きどうした!


「ひでんマシン00」には 「イノセント」が きろくされていた!


「イノセント」を ポケモンに おぼえさせますか?


はい←
いいえ

―ロケット団アジト:サカキの部屋―


サカキ「ふぅむ…………」


椅子にもたれる彼の膝には、ペルシアンがいた。


サカキ「……素晴らしい…………」


片手でペルシアンの顎を撫でてやりながら、もう片方の手で何かをいじっている。

部屋は夕闇に染まり、サカキの表情をより一層、残忍なものに見せていた。



サカキ「……あの老いぼれには、感謝せんとな。クククッ……ハァーッハッハッハッハッハッハッ!!!」


サカキの手にあったものが、一瞬、鈍い虹色の光を放つ。




サカキは 「わざマシン00」を きどうした!


「わざマシン00」には 「しねしねこうせん」が きろくされていた!


「しねしねこうせん」を ポケモンに おぼえさせますか?


はい←
いいえ

―タマムシ総合病院前―


タケシ「おいサトシ!カスミはどこ行ったんだ?!」

サトシ「俺も分からない!今さっきまでここにいたのに」

タケシ「……サトシ、悪いけど、俺やらなきゃいけないことがあるんだ。先にピカチュウと一緒にカスミを探しといてくれ!」

サトシ「やらなきゃいけないことって?」

タケシ「すまないが話してる暇はない。俺もあとで必ず合流するから!」


そういうとタケシは、既に火の海と化してしまった町の中に一人で走っていった。


サトシ「仕方ない!ピカチュウ、カスミを探しに行こう!」

ピカチュウ「ピカピ!」


そして二人も街の中、タケシとは反対の方へと駆けていく。


サトシ(でも、俺達が話していたのなんて、ほんの少しの時間のはずだ……)

サトシ(カスミが何も言わずにどっかに行くなんて考えにくいし……)


サトシ「くそっ、考えててもしょうがねえ!ピカチュウ、あっちの広場を探してみよう!」

ピカチュウ「ピカチュ!」


二人は、町の中央の広場へと急いだ。

町の中では、ジュンサーさんがメガホンを片手に懸命に指示を出していた。


ジュンサーさん「暴れてるポケモンの状況は?!」

ジュンサーくん「ほぼ全てのポケモンを各地のポケモンセンターに搬送いたしました!現在は、ポケモンセンターに人手が若干足りないようでしたので、工事現場のカイリキーなどを手配し、暴れるポケモンの鎮静化に努めている状態です!」

ジュンサーさん「了解!引き続き、暴れ出したポケモンのトレーナーに事情聴取を続けて!」

ジュンサーくん「分かりました、では!」


そういって、ジュンサーくんは走り去っていく。


ジュンサーさん(どうして急にこんなことが全国規模で起こっているの……?)

ジュンサーさん(各地の警察の臨機応変な対応で何とかもってはいるけど……。更に広がれば――)


ジュンサーがそこまで考えたとき、近くの家から、女の子の啜り泣く声が聞こえた。


女の子「うあああんっ、……エネコぉ………ひくっ、……ぐずっ……」


ジュンサーは女の子の側に行くと、片膝をついて優しく話しかけた。

ジュンサーさん「どうしたの?お姉さんに、何があったのかお話ししてごらん?」


女の子は時々涙を手で拭きながらも、ジュンサーに言葉を伝えようとする。


女の子「あのね、……ぐずっ……おっきなポケモンがねっ、……黒い光を……っ、出してね、……それが……あたしのエネコに当たったの…………」


そこまで言うと、女の子は堪えきれずに大声で泣き出した。


女の子「う゛わあああああああああん!!!」

ジュンサーさん「大丈夫……大丈夫だからね……」


ジュンサーは女の子をそっと抱きしめる。


ジュンサーさん(黒い光……?ポケモンのわざで、ここまでひどい状況が作り出せるの……?)


何も知らない彼女は、女の子の言葉に、ただ頭を悩ませるだけであった。









―ロケット団アジト:サカキの部屋―


サカキ「くくく……そろそろ頃合いか……」


彼の膝の上で、ペルシアンが静かに首をもたげる。

その頭を優しく撫でてやると、ペルシアンは満足そうに喉を鳴らした。


サカキ「よし、…………行くぞ、ガルーラ」

ガルーラ「ゴォオ…………」


その部屋で、静かに闇が動き出した。

―タマムシシティ:中央広場―


サトシ「カスミ――――っ!!」

ピカチュウ「ピカピ――――っ!!」


中央広場では、二人がカスミを探していた。

辺りの地形はすっかり変わっており、家は焼けて地面は所々がえぐれている。

もう避難が済んだのか、二人以外には人やポケモンはほとんど見当たらなかった。


サトシ「カスミ――――っ!!返事してくれ――――っ!!」

ピカチュウ「ピカピ―――――っ!!」


それでも二人は懸命にカスミを探す。

自分達の声がむなしく響く度、もし彼女に何かあればという思いが、一層募っていく。


サトシ「カスミ―――――」


サトシが再び叫ぼうとした時、辺りに一陣の風が吹いた。







サカキ「君達が探しているのは、この少女かね?」

サトシ「?!」

ピカチュウ「ピカ?!」




振り返った先には、不敵な笑みを浮かべたサカキと、その足元に倒れた、カスミとトゲピー。


ガルーラ「ガアァ……」


そして、既に臨戦体勢をとったガルーラがいた。

サトシ「カスミ!」

ピカチュウ「ピカピ!」

サカキ「安心したまえ。彼女たちは「ねむりごな」で眠っているだけだ。こいつらはあくまで――君を釣るためのエサなのでね」

サトシ「俺を釣るエサ?お前は一体誰なんだ!」

サカキ「私か?……私は、ロケット団のリーダー、サカキだ。「わざマシン00:しねしねこうせん」の唯一の使用者でもあるがね」


「しねしねこうせん」の名を聞いて、サトシの顔色が変わる。


サカキ「しかし、まさかオーキド博士の研究がそこまでのものだったとは、甚だ予想外だったよ。「イノセント」…………か。私の理想とする世界には、邪魔な存在だな」

ピカチュウ「ピカチュ!!」


ジジジジジジ……!


サカキの言葉を聞いたピカチュウが、両頬から威嚇するように放電する。


サカキ「ふん、そう急くな。話はまだ終わっていない」


サカキは一度言葉を切ると、サトシに問いかけた。

サカキ「少年、なぜオーキド博士に味方する?彼が、この残虐なわざ……「しねしねこうせん」を作ったことは、知っているのだろう?」

サトシ「…………」


その問いを聞き、サトシは思い出す。

セレビィの言葉――――


―――『彼はその効果を意図して作ったのではない。せめてあなただけでも、そのことを知っていて欲しい』―――


―――『ユキナリを救ってくれ。彼は最後まで、我々ポケモンを愛してくれた』―――




――――そして、最後に見た、セレビィの涙を。



何故オーキド博士に味方するのか……?



そんなの決まってる。



分かりきったことじゃないか。



サトシ「オーキド博士が、ポケモンを愛しているからだ!!」


サトシは、迷いのない声で、そう言い切った。



サカキ「…………。そうか、彼がポケモンを愛している……か」

彼は小さく呟く。


サカキ「なら、君にはもう、何も言うまい……。今はただ――――」



―――ポケモンバトルだ―――



サカキ「ガルーラ、しねしねこうせん!!」


サトシ「ピカチュウ、イノセント!!」





両者の中間で、白と黒の光がぶつかり合った。

両者のわざは、芸術と言えるほどに対称的だった。


ガルーラの口から出ているこうせんは、黒い光――――いや、それは光と呼ぶには、あまりに禍禍しいものだった。


「闇」という形容が相応しいような漆黒を纏い、「しねしねこうせん」はサトシとピカチュウに食らいつこうとする。


対するピカチュウのわざ、「イノセント」は、例えるならば「天使の光」。

神々しい、真っ白な輝きを放つそれは、触れたもの全てを浄化していく。


わざは、しばらく均衡を保っていた。


が――――――



ピカチュウ「ピ、カヂュ……!」



――――ガガガガガガッ!!!



時間が経つにつれ、少しずつ、黒が白を飲み込んでいく。


サカキ「はははははっ!!どうした少年!オーキドの最後の切り札は、そんなものか!!」

サトシ「くそっ、ピカチュウ、頑張れ……!」

ピカチュウ「ピカヂュッ……」


ピカチュウは歯を食いしばって踏ん張ろうとするが、もう限界が近いようだ。


わざを出し始めた位置からは、既に5mほど後退していた。

――――ガガガガガガッ!!!

「イノセント」が、更に押されていく。


ピカチュウ「ゼッ……ゼッ……」

ピカチュウは、もはや息をするのも苦しい状態だ。


サトシ「頑張ってくれ、ピカチュウ!」


サトシはピカチュウの体を支えるが、「しねしねこうせん」の勢いは止まらない。


――――ガガガガガガッ!!!


こうせんが拮抗している場所は、もうサトシとピカチュウの目の前に迫っていた。



サトシ「く、そ…………」



――――ごめん、セレビィ。約束、守れそうにないや――――














































「イワーク、イノセントだ!!!」

サカキ「っ?!」

白の光が、闇を押し戻す。

黒と白は、再び最初の拮抗状態に戻った。


タケシ「ふう、間に合ってよかった。悪いな、遅くなって」

サトシ「タケシ、来てくれたのか……!それより、何でお前のイワークがイノセントを――――」

タケシ「うん、俺はお前との電話でこの「ひでんマシン00」の、本当の利用法を思いついたんだ」

タケシ「博士が遺したのは『わざマシン』じゃなくて『ひでんマシン』なんだ。そこを考えたら、簡単に答えが出たよ」


タケシ「この「ひでんマシン00」は、オーキド博士が最後に残した砦だ。絶対に「しねしねこうせん」なんかには、負けることはないのさ。…………ほら」


タケシが後ろを指さす。

サトシが振り返ると、そこにはたくさんのポケモン達がいた。




――――オーキド博士の愛した、ポケモン達が。


「バグフーン、イノセント!!」

「オオダイル、イノセントだ!!」

「ケッキング、イノセント!!」

「ポッチャマ、イノセントよ!!」

「オコリザル、イノセントじゃ!!」




集まった白光は、あっという間に均衡を崩し、黒い光を突き抜けていった。

ガルーラ「ガアアアッ!!」

――――ガガガガガガガガガガガッ!!!


ガルーラは懸命に踏ん張るが、後から後から集まる「イノセント」は、とても一匹のポケモンに止められるものではなかった。




一つになった極大の白い光は、禍禍しい闇を完全に消し去っていく。




サカキ「馬鹿なっ――――――」



―――――カッ!―――――








―――――一瞬、世界中が、白い輝きに包まれた。


























サトシ「……あれ?」

ピカチュウ「ピカ?」


ふと気づけば、サトシとピカチュウは、白い光の中にいた。

サトシ「ここは……?」

ピカチュウ「ペカ?」



二人はあたりを見回すが、そこには「白」が広がっているだけ。

ここがどこなのかを知る手がかりは、何もなかった。


サトシ「ピカチュウ、体は何ともないのか?」

ピカチュウ「ピカチュ!」


ピカチュウは、元気さを表すように、サトシの周りをくるくると回る。

サトシ「そっか……。よかった」

ピカチュウ「ペカチュ!」



そして二人は、上下左右も分からない白い光を、ゆっくりと歩き始めた。

何かに導かれるように。まるで、そうしなければならないかのように。


ピカチュウ「……ピカ?」


ピカチュウが、光の道の先に、何かを見つける。

サトシ「どうした、ピカチュウ?」

ピカチュウ「ピカ!ピカピ!」

ピカチュウがサトシに、一生懸命何かを伝える。



サトシ「……え?」

ピカチュウの視線の先にいたのは。






優しげな笑顔を浮かべた、オーキド博士だった。

サトシ「博士!」

二人はオーキドに駆け寄る。


だが、オーキドは何も答えない。ただにこやかな顔で、やってくる二人を見つめているだけだ。


そして、彼の前に立ったサトシは、矢継ぎ早に喋り出した。


サトシ「オーキド博士、俺達、やりましたよ!「しねしねこうせん」を――――」


サトシが、そう言いかけた時。


オーキドの大きな手が、サトシの帽子を取り、くしゃくしゃと頭を撫でた。


オーキドは、その間も相変わらず笑顔だ。


だがその笑顔は――――

サトシ「…………」

――――サトシの目には、とても寂しそうに見えた。

オーキド「……」


オーキドは、サトシの帽子を戻すと、今度はピカチュウの前に座った。

ピカチュウ「ピカピ?」


そして、その小さなポケモンを、愛しそうに撫でた。

ピカチュウ「ピカ……」


ピカチュウは、気持ち良さそうに目を細める。


丁寧に、丁寧に。

オーキドはゆっくりと時間をかけて、ピカチュウの身体を撫でていった。

オーキドは、ピカチュウを撫で終えると、ゆっくりと立ち上がった。


――――さて、もう行かねばな。


サトシは、オーキドがそう言っているように思った。


サトシ「!」

ピカチュウ「ピカ!」



いつの間にか、オーキドの周りには、たくさんのポケモンがいた。

ポケモン達は、皆オーキドに寄り添うように、彼の周りを飛び、跳ね回り、じゃれ合っていた。








サトシ「博士!!」


サトシは何だか胸の奥が苦しくなって、そう叫んだ。

だが、オーキドは答えない。彼の周りのポケモンも、何も言わなかった。






そしてオーキドは、もう一度二人に笑顔を向けると、白衣を翻(ヒルガエ)し、ポケモン達と共に、光の中へと歩いていく。


サトシ「博士!!」


サトシは再び叫んだ。











オーキドは、片手を上げてそれに応えると、光へ、溶ける様に消えていった。















――――タマムシ大学博士号、オーキドユキナリ。

この日、誰よりもポケモンを愛し、ポケモンに愛された人物が、静かに旅立っていった。

――――――――――
―――――――
――――






サトシのママ「じゃあ、行ってらっしゃい!」

サトシ「ああ、行ってきます!」

ピカチュウ「ピッカチュ!」

ダダダッ!

二人は元気に、家を飛び出していく。





あれから、五年の月日が流れた。


ロケット団は、ガルーラと共に気絶していたサカキがあえなく御用となり、事実上崩壊した。

彼等が違法に捕まえたポケモンは、それぞれの場所へと帰されたそうだ。


サトシ「今日もいい天気だな!ピカチュウ?」

ピカチュウ「ピッカ!」





あの事件からしばらく後は、オーキド博士の研究所に、花を置く人々の列が続いていた。

時々、野生のポケモンが木の実を拾ってきて、そっと置いていくこともあった。


サトシ「さあ、家でゆっくりしたし、まずはポケモンバトルかな」

ピカチュウ「ピカピカ」



しばらくして、サトシ、タケシ、カスミの三人は、別々の道を歩くことを決めた。

タケシとカスミは、ジムリーダーとして。

サトシはポケモンリーグの頂点を目指すポケモントレーナーとして。


三人は、各々の目標を達成すべく、日々ポケモンを鍛えている。

サトシ「そういえば、あれから随分経ったな……。二人にもしばらく会ってないけど、元気してるかな」

ピカチュウ「ピッカチュ!」

サトシ「はははっ、そうだな。あいつらなら、きっと元気でやってるよな!」



「イノセント」の光を浴びたガルーラは、「しねしねこうせん」をすっかり忘れていた。


だが不思議なことに、「イノセント」を覚えていたポケモン達も、そのわざを忘れてしまっていた。


「イノセント」の光が世界中に広がったためなのか、オーキド博士が、自身の研究の全てを持っていこうとしたためなのか――――



真実は、誰にも分からない。


サトシ「…………」

サトシは、リュックから古びた円盤を取り出した。

サトシ「オーキド博士……」

「ひでんマシン00:イノセント」。

オーキド博士からサトシへの、最後の贈り物だ。

サトシ「…………」


サトシはしばらくそれを無言で見つめていたが、やがて、丁寧にリュックに戻した。

サトシ「……よーしピカチュウ、次の町まで競争しようぜ!」

ピカチュウ「ピカピ!」


二人は今日も、元気に駆けていく。







そんな二人の上を、ホウオウが静かに飛んでいった。

ザザァン…

ザザァン…



ここはふたご島付近の氷河。

波に運ばれる氷山の洞窟から、何かが出てきた。


ヤドキング「困ったなぁ……」




言わずと知れた、ヤドキングである。


ヤドキング「困ったなぁ……」

ヤドキングは、手の上で円盤をくるくると回す。

しばらくその動きを、「ねんりき」によって止めたり早めたりして遊んでいる。

しかし、それにももう、飽きてしまったようだ。

ヤドキング「ふあぁ……」


ヤドキングは、大口を開けて欠伸をすると、円盤を海へと放り込む。


バシャッ、と音を立てて、「わざマシン00:しねしねこうせん」は、ゆっくりと沈んでいった。


ヤドキング「困ったなぁ…………」



そしてヤドキングは、沈んでいくわざマシンには目もくれず、のそのそと、洞窟の中へ戻っていくのだった。









―最終部 完―

これでおしまいです。見てくれた人ありがとうございました。

長い間放置していて本当にごめんなさい。

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年03月02日 (月) 14:29:23   ID: YlP66H5B

面白かったけどシリアスに振り切ったほうが良かったかも
あとは文章力かな

2 :  SS好きの774さん   2015年07月13日 (月) 23:11:48   ID: PCDYnVx8

シリアスな展開だけにサカキがしねしねこうせんって連呼してんのは正直ワロタw

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