真「結婚しようよ」 (37)



真「ねぇ、結婚しましょうよ」


真「…そんな、鳩が豆鉄砲食らったような顔しなくたっていいじゃないですか」


真「私はプロデューサーのこと、ずっと好きでしたよ?」


真「プロデューサーはどうなんですか?」


真「へへ…。その答えが聞きたかったんです」

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真「初めて会ったときから、もう何年経ったんですかね」


真「…あ、もうそんなに、ですか。時の流れってはやいものですよ、ほんと」




真「ねぇ、私がまだ駆け出しのときのこと、覚えてますか?」


真「そうです。ライブ会場で、トラブル起こしちゃったときのこと」


真「そういえば、あのときもこんな風に曇ってたっけ」


真「ちょっと寒いですね…」


真「え? いいんですか?」


真「…あったかいです」




真「それで、私、てっきりもう忘れられちゃってたかと思ってました」


真「あの時のプロデューサー、かっこよかったなぁ」


真「あ、もちろん今も、ですよ! 誤解しないでくださいね!」


真「あのときは、本気でもうアイドルとして活動することができなくなっちゃうんじゃないかって、不安で…」


真「もう、からかわないでください! そのぐらい怖かったんです!」




真「…でも、そんなときに、プロデューサーが必死で、私のことを守ってくれたから」


真「たぶん、そのときからですね」


真「ボク、プロデューサーを好きになっちゃったんです」




真「え? 今『ボク』って?」


真「…そりゃ恥ずかしいですよ! プロデューサーの前では『私』って決めてたのに!」


真「そっ、それじゃあ、あのときのことも覚えてますよね!?」


真「うん。私がプロデューサーに、告白したときのこと」


真「あのときは、完全に振られたって思いました」


真「あはは。だって『残念だけど、俺と真は…』なんて言われたら、後はもう」


真「はいはい、その後なにも聞かずに飛び出してった私も悪かったですよー!」




真「…でも、家に帰って、あのメールを見たときはもう」


真「ほんとにうれしかったなぁ…」


真「まだ保護してるんですよ。見てみましょう」


真「ほーらー! 嫌がらなくてもいいんですってば! とりあえず見てみましょうって!」


真「…『もし真が、トップアイドルになることができたら、そのときに改めて返事をする』」




真「…」


真「さっきのが、返事でいいんですか?」


真「ふふ。長かったですね、ここまで」




真「『私』に矯正するのにも、時間かかりましたね」


真「うまく踊れなくなったこともあったし」


真「そのときはもう、トップアイドルにはなれないんじゃないかって思いましたよ…」


真「ほんと、いろんなことがあったなぁ」


真「つらいことも、悲しいこともたくさん」


真「でも、私が変わらず頑張り続けられたのは、プロデューサーのおかげです!」


真「ふふ、そうですね。こんなこと、なかなか言えませんし」




真「…それにしてもプロデューサーの髪、ほんとによく伸びましたね」


真「もう、いくら忙しいとはいえ多少の清潔感には気を配ってください!」


真「まあその忙しさも、私のせいではあるんですけど…」



真「私も、髪けっこう伸びたなぁ…。こんなに長いのは初めてかも」


真「はい、ずっと父さんに妨害されてきましたからね」


真「あ、そうだ。ところで、式はどこで挙げましょう?」


真「やっぱり、あそこの教会がいいと思うんですよ。白いチャペルの」


真「事務所のみんなを呼んで、ブーケトスをして」


真「それで、プロデューサーがこう、ギターの弾き語りなんかを私にプレゼントなんかしちゃったりして」


真「気が早い、ですか? どうなんでしょう?」




真「…もうすぐ冬も終わりですね。そしたら、ここもキレイな花でいっぱいになります」


真「私、プロデューサーと毎日ここを散歩したいです」


真「もちろん、さっき買ったおそろいのTシャツを着て」


真「…やっぱり『そんな先のはなし』、ですか」




真「昨日、父さんと話したんです」


真「好きな人がいる、結婚したいって」


真「…いえ、そんなことは全然」


真「ただひとこと、『きれいになったな』って…。それだけなんですけど…」


真「へへ、さすがに親子揃って泣いちゃいました…」


真「プロデューサーが挨拶に行ったら、一体どうなっちゃうんでしょうね?」



真「それは私にも分からないです、もしかしたら一発ボカンとすごいのが飛んでくるかもしれませんよ?」


真「そうなったら、こう、私はあたたかい目でプロデューサーを見守ってですね…」


真「冗談ですよ! いくら父さんでも、そんないきなり人を殴ったりは」




真「でも、父さんに殴られてるプロデューサーも見てみたいような…」


真「これも冗談…。半分、本気半分かな」


真「ほんとのところは、行ってみるまでのお楽しみってことですよ!」


真「ま、まぁプロデューサーにとっては楽しくないかもしれないですけど…!」




真「…」


真「…あの」


真「…私、もう引退しようと思います」


真「うん。もう、やりたいことはやりきったし」


真「そりゃ寂しくない、とはいいませんけど」


真「でも、もう決めたんです」


真「見つけたから。私の王子様を」



真「…こんな私がそんなこと言っても、バカにしないんですね」


真「そりゃあもちろん、出会った頃と比べたらずっと女の子らしくなりましたけど…!」


真「でも…」


真「…私、こんな風に自分の趣味を誰かにちゃんと言えたの、初めてでした」


真「そういえば、最初に会ったとき、私少女マンガ読んでたっけ」


真「てっきり私、バカにされるかと思ったんです」


真「こんな男っぽい私が、少女マンガなんて読んでるって」


真「でも、あなたは違った」



真「…なんだ、そうだったんだ。一目惚れ、ですか」


真「ほんと私って鈍感ですね。はい、今の今まで全然気が付きませんでした」


真「でも、物語はもうすぐハッピーエンドになります」


真「笑わないで、聞いていてくださいね?」



真「…ねぇプロデューサー、今のボク、綺麗ですか?」


真「ずっと、ボクは誰かの王子様でした。けど」


真「これからは、あなただけのお姫様になりたいんです」



真「あ、や、やっぱり笑った…! もう、本気なんですからね!」


真「え? 違う? 泣いて…?」


真「そ、そんな、ボクは泣いてなんかいないです! 泣いてるのはプロデューサーのほうじゃないですか!」


真「いいえ違います、これは汗です汗! ちょうどほら、晴れてきましたし!」


真「…とにかく! プロデューサーが先に泣くからいけないんですよーだ!」



真「…ケンカしたことも、笑い合ったことも、ステージで成功させてくれたことも、今は全部思い出です」


真「でも、きっと今まで以上に楽しい日々が、これから待ってるはずですから!」


真「さっきはハッピーエンドになるって言いましたけど」


真「これからあなたと、ずっとその先まで…」



真「…ボクの髪は、もうすぐ肩まで伸びて、プロデューサーと同じくらいになります」


真「そしたらボクと、えへへ…」


真「結婚、しましょう?」



https://www.youtube.com/watch?v=ryutpbPwrz4




おしまい。


去年の9月くらいからこういうものを書いており、MA3発売ということで「発表するならこのタイミングかな」と思ったため、発売記念アンド販売促進のために投下させていただきました。以下、9月当時の私の言葉です。

真にカバーしてほしかったから書いた。
真に「ボクの髪が肩まで伸びたら、結婚しようよ」って言わせたかったんです。
みんなは真に、どんな曲をカバーしてほしい?


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