提督「黒い人」 (58)



※黒い人注意



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提督「よし、あともう少しだ」カキカキ

長門「提督、そろそろ昼食を取らないか?」

提督「あぁ、もうそんな時間か・・・俺はもう少し書類を片付けてから行くよ」

長門「そうか。では、私は先に行くよ」ガタ

提督「おぅ」

提督「ふぅ・・・こんなもんか」

提督「(昼飯はすぐ食える物にしよう。長門を待たせるわけにもいかないし)」

提督「よいしょ」ガタ

提督「(オムライスにしようかな・・・)」

提督「(いや、海鮮あんかけチャーハンも捨てがたい・・・)」スタスタ

提督「今日は冷えるな・・・特にこの廊下が」

提督「(今度廊下にもだるまストーブを設置するか)」

提督「ん?」チラ




黒い人「」




提督「!?」ビク

提督「(びっくりした! なんだあれは!?)」

提督「(侵入者か!? それとも深海棲艦!?)」

提督「(と、とにかく人を呼ばないと!)」

提督「誰か来てくれ! 侵入者だ!!」

提督「(ヤベ! 拳銃引き出しに仕舞っていたんだった・・・)」

提督「おい! そこを動くなよ!」




黒い人「」




提督「(だ、誰か早く来てくれ・・・!)」

鈴谷「ど、どうしたの提督?」ヒョコ

提督「鈴谷!」

提督「不審者がそこにいるんだ! 取り押さえて本部に連絡するぞ!」

鈴谷「え? 不審者? どこにいるの?」

提督「は? お前何言って・・・」チラ




シーン…




提督「あれ? いない・・・」

提督「(おかしい・・・確かにそこにいたのに・・・)」

鈴谷「ちょっと提督ぅ、昼間っから大丈夫? 幻覚が見えているんじゃない?」

提督「た、確かに今そこに・・・」

鈴谷「だーかーら! 何もいないって言ってんじゃん!」

鈴谷「疲れているんじゃない? 少し顔色悪いよ?」

提督「・・・・・・」

鈴谷「ちょっと休んだ方が良いって。じゃあね」スタスタ




提督「(・・・本当に俺の見間違えだったのだろうか?)」

長門「鈴谷から話を聞いたぞ。何やら幻覚を見たそうだが・・・」

提督「あ、あぁ。まぁ、こんなときもあるって」

長門「鈴谷の言う通り、少し疲労が蓄積しているのではないか?」

長門「最近は、夜通し作戦を立てていることも少なくない」

長門「少し仮眠を取ってみてはどうだろう?」

提督「心配するな、長門。たまたま、何かと見間違えただけかもしれない」

提督「俺は大丈夫だ」

長門「そうか・・・」

提督「ん・・・少しトイレに行ってくる」ガタ

長門「わかった」



― 男子トイレ ―

提督「はぁ・・・」ジョボボボ

提督「(最近、尿の出が悪いな・・・)」

提督「(おまけにこの残尿感)」

提督「(また前立腺晴れちゃったかな?)」ジィー

提督「・・・・・・?」チラ




黒い人「」




提督「うわあぁぁぁっ!?」ビク

提督「(こいつ、いつの間に!?)」

提督「だ、誰か助けてくれ!」ダッ



― 執務室 ―

提督「長門! 侵入者だ!」バン

長門「ファッ!? び、びっくりするではないか!///」

提督「1階の男子トイレにいたんだ! 早く来てくれ!」グイ

長門「ま、待ってくれ! スカートを履いt」ズルズル


― 男子トイレ ―

長門「誰もいないではないか・・・」カチャカチャ

提督「そ、そんな・・・」

長門「提督、本当に様子がおかしいぞ? 大丈夫か?」

提督「お、俺は見間違えてなんかいない! 確かにあいつはここにいたんだ!」

長門「だが、もういないぞ?」

提督「警備の奴らは一体何をしているんだ!?」

提督「とにかく、俺は本部に連絡してこの鎮守府内を捜索する!」

長門「お、落ち着け提督・・・」

提督「怒られた・・・」

長門「当たり前だ。目撃証言、それも1人のみで、さらには侵入者の確保も無し」

長門「警備兵に建物内の捜索をさせたものの、特に異常は無し」

長門「提督、頼むからもう休んでくれ。相当疲れているに違いない」

提督「・・・・・・」

長門「頼む・・・」

提督「・・・・・・」

提督「わかった。少し休むよ」

提督「なんか俺だけおかしいみたいだし・・・これ以上、みんなに迷惑はかけられない」

提督「長門、すまんな」

長門「気にするな。残りの書類はあとわずかだ。私が片付けよう」

提督「すまん・・・」




提督「ところで長門」

長門「な、なんだ?」ビク

提督「俺がお前に助けを求めたとき、なんでスカートを半分脱いでいたんだ?」

長門「そ、それは・・・きょ、今日は昼食を少々取り過ぎてしまってだな!」アセ

長門「それで少しベルトの調整をしていたんだ!」アセアセ

提督「ふーん・・・」

提督「部屋に入ったとき、なんかニオイがしたんだけど」

長門「き、気のせいじゃないか?」ビク

提督「ふーん・・・」

提督「後で執務室に戻ってきたとき、長門が座っていたところが濡れていたんだけど」

長門「しょ、しょれは! あ、暑かったから汗をかいたんだ!」ダラ

提督「今日、すごい寒いんだけど」

提督「汗をかくほど、激しい運動でもしていたのか? 執務室で」

長門「ま、まさか! わ、私は汗っかきだからな! は、はは・・・///」ダラダラ

提督「ふーん・・・」




提督「じゃあ、なんで俺の膝掛けをお前が持っているんだ? しかも、染みが・・・」

長門「あ」


― 大浴場 ―

提督「長門・・・お前は俺がトイレに行っている間、何をしていたんだ・・・」チャプ

提督「(でもまぁ・・・ふふ、少し気が楽になった)」

提督「(長門は優しいな・・・おっと、鈴谷も俺のことを気にかけてくれたんだった)」

提督「(もうあいつらに迷惑はかけられないな。きっと、俺は疲れているんだ)」

提督「(ゆっくり休めば、元に戻るだろう)」

提督「(ここは少し、お言葉に甘えよう・・・)」

提督「・・・・・・?」




黒い人「」




提督「わあっ!?」ビク

提督「(またあいつ・・・! で、でもこれは俺の幻覚・・・)」

提督「(・・・よし、一か八かだ。少し様子を見よう)」

提督「・・・・・・」

黒い人「」

提督「・・・・・・」

黒い人「」

提督「・・・・・・?」

黒い人「」

提督「(何もしてこない・・・?)」

提督「(こいつは一体・・・?)」


― 寝室 ―

提督「・・・・・・」

黒い人「」

提督「(奴は、俺の部屋の隅っこにいる)」

提督「(特に危害を加えてくることはなく、俺を凝視している)」

提督「(未だに、ただの幻覚と結論付けたくない自分がいる)」

提督「(あまりにも生々しい感じがしてならない)」

提督「(そして、こんな奴が一緒にいるんじゃ、寝られない)」

提督「・・・今日は執務室のソファーで寝よう」

長門「提督、何故こんなところで寝ているのだ?」

提督「ん・・・おはよう、長門」

長門「おはよう、提督」

提督「ちょっとした気分転換だよ。一回ソファーで熟睡してみたかったんだ」

長門「私としては、自室のベッドでしっかり休んでもらいたいものだが」

提督「それはそうと、昨日は色々ありがとうな、長門。書類も任せてしまったし」

長門「あのくらい、秘書官として当たり前のことだ。提督こそ大丈夫か?」

提督「あぁ・・・大丈夫だ」チラ




黒い人「」




提督「・・・・・・」

提督「(朝起きてから早々にご対面か・・・気味が悪いな)」

提督「(だが、今回は状況が少し違っている)」

提督「(今までは、俺単独が奴と遭遇していたが)」

提督「(今は長門が一緒にいる。長門には、あいつが見えていないのだろうか・・・?)」

提督「(奴は今、カーテンの近くにいる)」

長門「提督、カーテンを開けるぞ」シャッ

提督「(・・・どうやら、見えていないようだ)」

提督「(しっかり休んだはずなのに・・・どうなっているんだ?)」

提督「(俺はおかしくなってしまったのだろうか?)」

提督「(そして、あいつは一体何者なのだろうか?)」

長門「提督? 朝食を取りに行こう」

提督「あぁ・・・」




黒い人「」




提督「・・・・・・」

提督「(俺が奴を見たときから、3カ月半が過ぎた)」

提督「(奴を注意深く観察してわかったことは、あまり多くない)」

提督「(昼夜関係なく、特に人気のない場所に多く出現する)」

提督「(俺だけにしか見えない)」

提督「(特に危害を加えてくることはなく、俺を凝視している)」

提督「(恰好はシスター・・・いや、魔女のような恰好をしている)」

提督「(六尺を優に超える長身、ギラギラとした目、鋭い大きな爪・・・)」

提督「(明らかに人間ではない存在だ)」

提督「(そして最近奴に、ある変化が現れるようになった)」




提督「(日に日に、俺にどんどん近づいてきている気がする)」

提督「(初めて奴と遭遇したときよりも、明らかに接近してきている)」チラ




黒い人「」

提督「(見た目からもそうだが、絶対に近づいてはいけない気がする)」

提督「(もし近づいてしまったら・・・と、考えるだけで尋常ではない胸騒ぎがする)」

提督「(みんなには隠れて、精神安定剤を飲んでいるが、全く効果はない)」

提督「(最近は、あまりにも胸騒ぎが酷いため、睡眠も満足に取れていない)」

提督「(その所為か、体重は減り、食欲も落ちて体調を崩すことが多くなった)」

提督「(また、長門達に心配をかけてしまっている・・・俺、提督失格だな)」

提督「(あいつは悪魔なのだろうか・・・俺に憑りついているのか?)」

提督「(とにかく、このままでは俺は死ぬ気がする。凄く嫌な予感がする)」

提督「(そろそろ、覚悟を決めるか・・・)」ゴト

提督「・・・・・・」カチ  カチ  カチ

提督「・・・・・・」カチ  カチ  カチ

提督「・・・・・・」カチ  カチ  カチ

提督「・・・・・・」カチャ  チャキン

提督「・・・よし」パチ

提督「いざとなったら、これで・・・」

提督「こうなったら・・・殺られる前に殺るしか・・・」




黒い人「」

鈴谷「提督、今日も無理しないでね?」

夕立「事務仕事は、夕立達も手伝うっぽい!」

春雨「司令官、どうぞ紅茶です。金剛さんから、紅茶にはリラックス効果があると聞きましたので」

提督「すまん、みんな・・・」

鈴谷「気にしないで! ほら、提督はさっさと体調を元に戻す!」

長門「みんな、本当にすまないな・・・秘書艦は私なのに・・・」

長門「ところで春雨。昼食は是非、春雨スープが良いな」ニタァ

春雨「え? い、良いですけど・・・」

鈴谷「また始まった・・・」

夕立「春雨に向かって変態発言は慎むっぽい!」ゴリ

長門「あぁっ!!///」ビクビク

提督「ははは・・・」

提督「(・・・?)」キョロキョロ




提督「(今日はあいつ、いないな・・・)」


― 2週間後 ―

提督「(明日で、奴と会ってから4カ月目になる)」

提督「(覚悟を決め、拳銃を所持していたが・・・)」

提督「(この2週間、奴は忽然と俺の前から姿を消してしまった)」

提督「(もう助かったのか?)」

提督「(いや、そんなはずがない。奴がいなくなったことで、安心をするどころか)」

提督「(今までにない程の胸騒ぎ、そして切迫した恐怖を感じる)」

提督「(今夜、絶対に何かが起きる・・・!)」

提督「(やっぱり、こいつで・・・!)」

提督「よし、あともう少しで終わるぞ!」

長門「提督、本当にもう大丈夫なのか?」

提督「いつまでも、お前達に助けられてばかりではいられないからな」

提督「それに、体調管理は自己責任だ。自分の管理もできていないようじゃ、艦娘の管理なんてできないよ」

提督「どうやら、甘ったれていたようだ。本当にすまない、気を引き締めなおすよ」

長門「提督・・・私達はそんな・・・」

提督「これは俺のケジメでもあるんだ。それはそうと、もう23時50分だ」

提督「長門はもう寝なさい。最近、俺の代わりに色々やっていて、疲れているだろう」

長門「しかし、提督は・・・」

提督「なに、俺も1時くらいには寝るさ。俺に任せてくれ」

長門「・・・わかった。でも、無理だけはしないでくれ」

提督「わかっているって。おやすみ、長門」ニコ

長門「あぁ、おやすみ・・・」

夕飯の時間でござる

提督「・・・・・・」カキカキ




ゴーン…ゴーン…




提督「(0時か・・・)」

提督「・・・・・・」カキカキ

提督「・・・・・・」カキカキ

提督「・・・よし、終わった」

提督「(やはりあいつは現れない・・・やはり、もう危険は去ったのか?)」

提督「(はは・・・長門には1時に寝ると言っておいて、もう朝の4時30分だ)」

提督「(さすがに眠いな・・・少しの間だけでも睡眠を取ろう)」ガタ

提督「その前に、トイレにでも行くか」


― 男子トイレ ―

提督「はぁ・・・」ジョボボボ

提督「(相変わらずこっちの調子は悪いな)」

提督「(今度病院に行こう)」ジィー

提督「(鏡には・・・映っているわけないよな)」ジャバジャバ

提督「」キュ

提督「もしかしたら川内の奴、帰っていたりして・・・」ガチャ




黒い人「」




提督「わあぁぁぁ!?」ビク

黒い人「」ザン…ザン…

提督「く、来るなぁ!!」チャキ

提督「(こいつ・・・今まで自分から移動したことなんてなかったのに!)」

提督「(今から大声を出しても、間に合わない・・・くっ!)」

黒い人「」ザン…ザン…




提督「死ねぇっ!!」ダン!




黒い人「」スー…

提督「・・・え? 消えた?」キョロキョロ

提督「(い、いない・・・俺は、助かったのか?)」

提督「は、はは・・・様ぁ見ろ化物! 散々俺を馬鹿にしやがって!」

提督「こっちには銃があるんだよ! 思い知ったか!」

提督「(なんだ・・・最初からこうすれば良かったんじゃないか・・・)」

提督「遂に奴を倒したぞ! 俺は勝ったんだ!」

提督「はぁ・・・はぁ・・・」

提督「・・・・・・」

提督「・・・・・・」




提督「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」クル






















黒い人「<●> <●>」






















提督「」





長門「(提督が謎の失踪をしてから、早くも1月が経とうとしている)」

長門「(この事件は、目撃証言が皆無、証拠不十分、そして何より謎が多い)」

長門「(何者かが提督を誘拐した、深海棲艦が海へ引きづり込んだ、提督自らが姿を消した・・・)」

長門「(様々な予測がされているが、事件の解決は程遠い)」

長門「(あの1カ月前の夜間に、提督の身に何かがあったのだろう)」

長門「(1階の男子トイレに、提督の帽子と弾丸が8発入った拳銃、そして空薬莢が1つ見つかった)」

長門「(発砲した形跡があるにも関わらず、誰1人として銃声を聞いていないのだ)」

長門「(そして・・・提督が約5カ月前から、"何か" に怯えていたこと)」

長門「(最初、疲れからくる幻覚だと思っていたが)」

長門「(以降も、提督は無理して平気を装っていた)」

長門「(しかし、私もさすがにわかってしまった。提督は確かに、"何か" を目で追っていた)」

長門「(あの夜、私が提督の傍についていれば・・・すまない・・・)」

鈴谷「・・・・・・」

鬼怒「・・・・・・」

夕立「・・・っぽい」

時雨「・・・・・・」

響「командир, я одинок... (司令官、寂しいよ・・・)」

榛名「・・・榛名は大丈夫です」ハイライトオフ




長門「クッ・・・!」

長門「(提督、本当にどこに行ったんだ?)」

長門「(みんなボロボロだ・・・私も正直もう限界だ・・・)」

長門「(早く戻ってきてくれ・・・)」

陸奥「姉さん・・・悲しいけど、新しい提督が来るまでの間は、私達がしっかりしなきゃ」

陸奥「幸い、ある程度の作戦の立て方は提督に学んだわ。私も手伝うから、頑張りましょう?」

長門「陸奥・・・すまない・・・!」ポロポロ

陸奥「もう・・・な、泣かないの」

長門「(私は、本当に良い妹を持った・・・!)」




長門「・・・・・・・・・・・・?」




黒い人「」




――― 終 ―――

黒い人の元ネタを教えて欲しい

>>52

 最近やった「Wachtraum (ヴァハトラオム) : 白日夢 / 白昼夢」というフリーホラーゲームに
出てくる謎の化物です

 正体は不明ですが、独特の効果音とともにいきなり出てくるので、とてもびっくりします



※一番びっくりしたシーン(ネタバレ注意)

・森の中の小屋の、浴室の風呂桶の中にある土人形に、固い果実を食べさせた後(出られない・・・)

・風車小屋の窓から、化物を銃で狙撃した後(・・・・・・)

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