やよい「ある日の夕食風景」 (43)

【765プロ 事務所】

P「ただいま戻りました」

小鳥「おかえりなさい」

律子「おかえりなさい。やよいもお疲れ様」

やよい「小鳥さん、律子さん、お疲れ様です!」

律子「予定より早く終わったんですね」

P「あぁ。思いのほか収録がスムーズに進んだからな。NGなしの1発OKで」

小鳥「あら、すごいじゃないやよいちゃん」

やよい「えへへ、ありがとうございます」

P「やよい、ソファーで待っててくれ」

やよい「はい、分かりましたぁ!」


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律子「あれ、やよいはこの後も予定あるんですか?」

P「あぁ、今後の方向性とか、2人でちょっと打ち合わせをな。短時間で終わらせるつもりだけど」

やよい「今日はお母さんが晩御飯作ってくれるし、明日は午後からのお仕事だけですから、大丈夫でーっす!」

小鳥「そっか、それじゃ、みんなで一息入れましょう?」

P「そうですね。やよいも疲れただろうし」

やよい「私はまだ大丈夫ですよ?」

小鳥「まぁまぁ。おつきあいも大切よ?」

やよい「それじゃ、私もおつきあいしますー!」

小鳥「ふふっ、ありがとう、やよいちゃん。律子さんは?」

律子「そうですね。私もちょうど区切りが良い所なんで、おつきあいしましょう」

小鳥「分かりました。それじゃお茶淹れてきますね」

P「すみません、お願いします」

小鳥「お待たせー。はい、プロデューサーさん」

P「ありがとうございます。……お、ほうじ茶ですね」

小鳥「えぇ。カフェインも少ないから、やよいちゃんがこの時間に飲んでも大丈夫よ。はい、どうぞ」

やよい「ありがとうございますー!」

律子「あぁ、いい匂い。ありがとうございます」

P「あぁ、美味い。この香ばしさ、なんだかほっとしますね」

やよい「普通の緑茶よりも飲みやすいです」

小鳥「焙煎することでタンニンが壊れるから、渋みや苦味が抑えられるの」

やよい「へぇ〜、知りませんでしたぁ! 小鳥さん、お茶に詳しいんですね」

P「……」

律子「……」

小鳥「……って雪歩ちゃんから聞いたの」

P「さすがにやよいには正直ですね」

律子「ま、言わなきゃ私がばらしますけど」

小鳥「え、えっと、今日はどんな撮影でしたっけ?」

律子「ごまかした」

P「強引だなぁ」

小鳥「し、CMですよね?」

律子「確か住宅メーカーのCMでしたよね。あの内容でよく1発OKになりましたね」

小鳥「あの内容?」

P「30代の4人家族をターゲットにした住宅のCMなんですけど、夫婦役は一般公募で選ばれた方で」

小鳥「なるほど、一般の……」

P「やよいの弟役が子役になって間もない幼稚園児の男の子で、さらにペットの犬もいるという設定で」

小鳥「上手くいきそうにない要素が満載ですね」

やよい「そうなんですか?」

律子「演技慣れしていない一般の方や経験の少ない子役、動物って、どうしてもNGが増えちゃうのよ」

やよい「なるほどぉ」

P「ペット役の犬も静かで助かったよ」

律子「普段おとなしくても、現場の雰囲気にのまれて落ち着きなくなったりしますからね、動物は」

やよい「と〜ってもお利口さんだったんですよ」

小鳥「よかったわね、やよいちゃん」

P「それに、本番前にやよいが子役の男の子や夫婦役の方達とおしゃべりして緊張を解してくれて」

律子「へぇ。中々やるわね、やよい」

やよい「そんな。私はただご挨拶しておこうかなーって思っただけで」

P「謙遜することはないぞ。スタッフさん達もやよいの事褒めてたじゃないか」

小鳥「やよいちゃん、だいぶ現場でのお仕事にも慣れてきたみたいね」

律子「そういう自然な気配りって、中々出来る事じゃないのよ」

やよい「でも、亜美と真美もやってましたよ?」

P「あいつらの場合はなぁ」

律子「話に花を咲かせすぎて本番にまで影響及ぼしたりしますからね」

小鳥「やよいちゃん、明日はお料理さしすせその収録よね?」

やよい「はい、そうですよ〜」

律子「だいぶ人気が出てきてるみたいじゃない、あの番組」

やよい「やっぱり、そうなんだ……」

P「ん? どうした? 嬉しそうじゃないな」

やよい「う〜ん……嬉しくない訳じゃないんですけど、ちょっと気になる事があって」

小鳥「気になること?」

やよい「はい、でも……」

律子「私と小鳥さん、席外しましょうか?」

小鳥「そうですね、込み入ったお話になりそうなら……」

やよい「いえ、そういう訳じゃないんです! 気になってる事が、私の我がままかなーって」

P「話してみてくれ。どんな事が気になってるんだ?」

やよい「えっと、最近お料理の内容が難しすぎるんじゃないかなーって」

小鳥「確かに、最近は凝ったお料理が増えてきましたわね」

律子「作ったり説明したりが難しいとか?」

やよい「それは大丈夫ですっ! 私、普段からお料理作ってますから」

P「それじゃ、どこが気になってるんだ?」

やよい「あの番組って、お料理苦手な人とか、初めてお料理する人の為の番組でしたよね」

P「そうだな」

やよい「でも、最近は難しいお料理が多くて、えっと、なんて言ったらいいのか……」

P「番組の方向性に違和感を感じてる、っていう事か」

やよい「はい。でも、私が決められる事じゃないし、変に思うのも我がままかなーって」

P「そう感じる事自体は我がままじゃないさ。周りを無視してそれを押し通そうとしなければな」

やよい「押し通すだなんてそんな! 私は——」

P「分かってるって。そう感じつつ、番組関係者にいきなり食って掛かったりしなかったじゃないか。えらいぞ」

律子「なんだか耳が痛いですね」

小鳥「あれ、律子さんもしかしてアイドルの時……」

律子「さ、さすがにディレクターに食って掛かったりはしなかったですよ?」

小鳥(それに近い事はやったのね)

P(担当プロデューサーに文句でも言ったか?)

律子「やよいがそう感じてるって事は、番組見てる視聴者も同じこと感じてそうな気がしますけど」

小鳥「実際私も見てて、最近番組の方向性変わったなーって思いました」

やよい「でも、最近人気があるんですよね。それなら、このままの方がいいんでしょうか?」

P「実はな、今日やる今後の方向性についての打ち合わせが、まさにこれなんだ」

律子「番組の方向性ですか? それこそ、やよいが言った通り、こっちで決められる事じゃないですよ」

P「昨日TV局で番組ディレクターに会った時に相談されてな」

律子「相談?」

P「あぁ。最近あの番組、当初ターゲットにしていなかった層にも人気が出てきたみたいでな」

小鳥「当初ターゲットにしていなかった層……主婦層とか」

P「当たりです。料理の経験のある層にも受けるように、という事で、最近内容を難しめにしているらしいんです」

律子「なんだか、どっちつかずになりそうな気がしますけど。上の人達はどう考えてるんですか?」

P「番組プロデューサーや局の上の方も、このまま行くか、原点回帰かで割れてるらしい」

小鳥「それでやよいちゃんに意見を?」

P「はい。やよいの意見を即反映、って訳ではないですけど、やよい本人がどう感じてるのかも知りたいと」

やよい「はわわ……わ、私なんかの意見が役に立つんですか?」

律子「やよいの名前がついてる番組ですもの。役に立たない訳ないじゃない」

やよい「な、なんだか大事になっちゃいました」

P「やよいは、今後番組がどうなればいいと思う?」

やよい「う〜……えっと……やっぱり、お料理が得意じゃない人にも見てもらえたらなーって」

P「難しい料理じゃなくて、もっと基本的な料理を紹介したいか?」

やよい「難しいお料理でも、ちゃんと分かるように見せてあげれば、分かってもらえると思うんですっ!」

P「なるほどな。やるなら説明を省かずに、って事か」

やよい「はいっ! 私も、最初はお母さんと一緒に作りながら教えてもらいましたから」

小鳥「『できたものがこちらに』が多くなってましたからね、最近」

律子「時間的にしょうがないのかもしれませんけどね」

P「逆に、あの時間で十分な説明が出来ない位難しい料理って事になるな」

やよい「せっかくゲストの人が来てくれても、あんまりおしゃべりできなかったり……」

P「なるほどな。そういう部分も気になってた訳か。律子はどう思う?」

律子「料理の基本の基本から、っていうスタンスで他と差を付けてる訳ですし、当初の方向性の方がいいと思いますね」

P「なるほど、それはあるな。音無さんは?」

小鳥「そうですね。いきなり難しくされると、切り捨てられたような気がしてちょっと……」

P「最初から番組を見てくれた人だと、そう感じるかもしれませんね。参考になりました」

律子「プロデューサーはどう思うんですか?」

P「今の番組名でやるなら、当初の方向性に戻った方がいいのかなと思う」

小鳥「なんだか含みを持たせた言い方ですね」

P「今の内容で、説明をもっと丁寧にした新番組って言うのもアリかなと」

やよい「それって、今と同じ感じって事ですか?」

P「料理の内容はな。でも説明をもっと丁寧にやる」

律子「政治経済や国際情勢について分かりやすく丁寧に説明する番組は人気ありますからね」

P「平たく言えばそれの料理版って事になるな」

小鳥「そういう方向性もアリですね」

やよい「それ、面白そうかもっ!」

P「やよいも賛成してくれたし、やよいの意見とは別にディレクターに話してみるよ。ありがとう、やよい」

やよい「お役に立てて良かったですー!」

やよい「あの、打ち合わせってもしかしてもう終わりですか?」

P「あぁ、そうだけど、どうした?」

やよい「予定より早く終わったから、家に帰って夕食の準備を手伝えるかなーって」

P「あれ、でも今日はお母さんが作ってくれるんだろ?」

やよい「はい。でも他にしたい事もないし」

P「そうか……それじゃ、やよい。今日は夕食一緒にどうだ?」

やよい「えっ?! 本当ですかーっ?!」

P「あぁ。やよいが頑張ってくれたし、たまにはこういうのもいいだろ」

律子「たまには、って……ご飯おごってあげたりしないんですか?」

P「い、いや、そういう訳じゃなくて。最近はロケ弁も多かったし、夕食はやよいの家の都合でどうしても、さ」

やよい「あの、本当にいいんですか?!」

P「遠慮することないぞ。今日は俺も帰ろうと思ってたし。そうだ。音無さんと律子も、よかったら一緒に」

小鳥「あ、それじゃ私も行っちゃおうかな。どこにします? いつものたるき亭ですか?」

P「いや、飲飲む客の多い店は避けようかなと。ファミレスで、と思ってました」

小鳥「近くにありましたっけ?」

P「この辺にはないですね。音無さんに教えてもらったインテリアショップの近くに1軒あるんで、そこにしようと思います」

律子「……」

小鳥「あー、あそこですね。ちょっと遠くないですか?」

P「車で行って、帰りそれぞれ送って行こうかなと」

小鳥「なるほど。律子さんは行けそうですか?」

律子「……私は、止めておきます」

P「そう……か」

やよい「残念ですぅ……」

律子「もー、二人してそんな顔しないで下さいよ」

小鳥「……もしかしてお仕事が?」

律子「えぇ、まぁ」

小鳥「手伝いましょうか? 私、もうちょっとでお仕事片付きそうですし」

P「俺も入れそうだし、3人いればすぐ終わるんじゃないか?」

律子「竜宮小町の今後の方向性とか、新しい企画とか、私の頭の中にしかない事の整理ですから」

P「そうか……」

小鳥「あの、それじゃ私も今日は残って……」

律子「なんでそうなるんですか! せっかく早く帰れるんですから、早く帰ってゆっくり休んでくださいよ」

やよい「あの、律子さん……無理しないで下さいねっ」

律子「ありがとう、やよい。ほら、二人がそんな顔するから、やよいに気を使わせちゃったじゃないですか」

P「そうだな。すまん、律子。また今度行こう」

小鳥「律子さんが好きそうなお店見つけておきますから」

律子「分かりました。楽しみにしてますからね。さ、そうと決まればさっさと仕事終わらせて帰った帰った!」

P「よし。すまんやよい、もうちょっと待っててくれ。メールチェックだけするから」

やよい「分かりました! そうだ、待ってる間に湯呑みとか洗っておきますね!」

小鳥「ありがとう、お願いね、やよいちゃん。私もお仕事終わらせちゃうから」

P「やよい、待たせたな。そろそろ行こうか」

やよい「はい、律子さん、お疲れ様でしたー!」

P「すまん律子、今日はお先に」

小鳥「お先します、律子さん。最後の戸締り、お願いしますね」

律子「了解です。3人とも、お疲れ様でした」

P「あ、やよい。ちゃんと変装しておくんだぞ」

やよい「はーい、分かってまーっす!」

————
——


律子「帰っちゃった、か」

律子「素直についていけばいいのに」

律子「今日やらなきゃいけない仕事でもないのに」

律子「ほんと、馬鹿だなぁ……私って」

【ファミレス 店内】

P「ふぅ、結構待たされたな」

小鳥「一番混む時間ですから、仕方ないですよ」

やよい「入口で名前書かなきゃいけないんですね。私、知りませんでした」

P「あれ、やよいはファミレスに来たことないのか?」

やよい「はい。家族そろって外食べるなんてやった事ないです。お金がもったいなくて」

P「そうか……」

小鳥「今日は心配しなくてもいいのよ? プロデューサーさんが泣いて謝るまで食べていいんだから」

P「いや、さすがにそこまでは……。でも、遠慮しなくてもいいからな?」

やよい「はいっ! う〜、どれにしようかなぁ」

P「そういえば俺もファミレスで夕食なんて久しぶりだなぁ。いつ以来だろう」

小鳥「私も。一人だとまず来ませんからね」

P「えぇ。あ、でも俺は仕事関係では来たりしますね。たいていコーヒーですけど」

小鳥「お仕事で、か。でも、打ち合わせでがっつりごはん食べたりはしませんからね」

P「えぇ。やよい、何にするか決まったか?」

やよい「えっと、どれもお値段が……」

小鳥「やよいちゃん、値段見るの禁止ー」

P「そうだな。見ちゃダメだ」

やよい「えー!? な、なんでですか?」

小鳥「だって、ちょっとでも安いの注文しようとしてるでしょ?」

やよい「だって、おかずだけでもこんなに高いのに、ごはんは別なんですよ?」

P「まぁまぁ、そういうもんなんだ。それに、やよいはいつも頑張ってるんだしそれ位いいだろ」

小鳥「何が食べたいの?」

やよい「えっと、それじゃ……スパゲッティが食べたいですっ!」

小鳥「スパゲッティね。どれどれ……あら、おいしそうじゃない」

P「どれがいい? お、このモッツァレラチーズのミートソーススパゲッティなんてどうだ?」

やよい「そっちもおいしそうですけど……あ、これがいいです!」

小鳥「海老のトマトソーススパゲッティね。セットはどうする?」

やよい「セット?」

小鳥「サラダとスープか、パンとスープが選べるみたいね」

やよい「パンだと食べきれなさそうなんで、サラダがいいですっ」

小鳥「はーい、やよいちゃんは決まりっと。プロデューサーさんは?」

P「若鶏のスパイスグリルが美味そうだな……」

小鳥「鳥、いいですよね」

P「メニューにある内容について話しましょうか、音無さん。よし、これにしよう。ライスとスープのセットで」

小鳥「私は……海老とたっぷり野菜のちゃんぽんにしよう」

やよい「えへへ、同じ海老ですね」

小鳥「やよいちゃんの真似しちゃった」

P「唐揚にビールかと思ってました」

小鳥「プロデューサーさんは私をなんだと思ってるんですか」

P「えっと、店員呼ぶボタンはこれか」

小鳥「無視?! ちょっとひどいですよ?!」

やよい「小鳥さん、あんまり無理しなくても……」

小鳥「待ってやよいちゃん。無理してないの。普段から酒とつまみの女って訳じゃないのよ?」

P「ま、冗談は置いておいて。店員呼ぶけど、後何か頼みます?」

小鳥「ドリンクバー全員分頼みません?」

P「そうですね」

やよい「ドリンクバー? あの、私お酒は……」

P「ははは、バーって言っても酒じゃないぞ。ソフトドリンクがお代わり自由になるんだ」

やよい「それって、いくら飲んでも良いって事ですか?!」

小鳥「そうよ。でも、あんまり飲みすぎるとお腹壊しちゃうから、ほどほどにね?」

やよい「そんな贅沢、私だけいいのかなぁ……」

P「……お土産、買っていくか?」

やよい「えっ?」

P「家族の事が気になってるんだろ? ほら、テイクアウトメニューもあるぞ」

小鳥「そっか。値段気にしてたのは、そういう理由もあったのね」

やよい「はい。私だけ家族よりも美味しいもの食べちゃって、なんだか悪いなーって」

P「よし。それじゃお家の人達にはケーキでも買うか。7個でよかったよな?」

やよい「あの、私そんなつもりじゃ!」

小鳥「まぁまぁ。それじゃ、ケーキの分は私が出すわ。その代り、自分の分も買っちゃおうっと」

P「ケーキは別腹、と」

小鳥「うっ……あ、明日……明日食べるんです! 代わりにご飯少なめにして……」

P「まぁそういう訳だから、音無さんに付き合ってやってくれ」

やよい「うぅ、すみません、小鳥さん」

小鳥「いーえ。おかげでケーキ頼む口実が出来たわ」

P「それじゃ、店員呼ぶか」

店員「お待たせしました。ご注文をどうぞ」

P「それじゃやよいから」

やよい「はいっ! えっと、海老のトマトソーススパゲッティを、サラダとスープのセットでお願いしますっ!」

P「若鶏のスパイスグリルをライスとスープのセットで」

小鳥「海老とたっぷり野菜のちゃんぽんを一つ」

P「それと、ドリンクバーを3人分。あとは、テイクアウトメニューの、レアチーズケーキを10人分」

小鳥「あら」

P「やよいの分も追加でお願いします。増えたもう一つは俺が出します」

小鳥「はーい」

やよい「あの、私の分までありがとうございます〜」

P「えっと、以上でお願いします」

店員「かしこまりました。テイクアウトのケーキは、食後にお持ちいたしますが、よろしいでしょうか?」

P「はい。お願いします」

店員「かしこまりました。では少々お待ち下さいませ」

店員「失礼します。ドリンクバーとコップとスープセットのカップをお持ちしました」

小鳥「ありがとうございます」

店員「右手奥側にドリンクコーナーがございますので、ご自由にご利用下さい」

小鳥「それじゃ、やよいちゃん、行きましょうか」

やよい「飲み物って何を選んでもいいんですか?」

小鳥「何種類かの中から、だけどね。プロデューサーさんはどうします?」

P「先に行ってきて下さい。俺はバッグとか見てますから」

小鳥「プロデューサーさんの分も一緒に持ってきますよ。何がいいですか?」

P「すみません。それじゃウーロン茶お願いします」

小鳥「分かりました。それじゃ、いってきますね」

やよい「いってきまーっす!」

やよい「コーラにファンタにオレンジジュースにウーロン茶に……どれにしようか迷っちゃいますねっ!」

小鳥「うふふっ。あわてなくても、お代わり出来るわよ?」

やよい「それじゃ、オレンジジュースにしようかな」

小鳥「コップをここに置いて……そう、それで、このボタンを押すの」

やよい「はわわ、すごい勢いで出て来ちゃいました」

小鳥「ちょうどいい所でストップしてね」

やよい「ありがとうございますー!」

小鳥「どうしたしまして。私は……私もオレンジジュースにしようっと」

やよい「えへへ、また真似っこですね!」

小鳥「やよいちゃんに真似したら、やよいちゃんみたいに可愛くなれるかなと思って」

やよい「そんな、小鳥さんすっごい綺麗じゃないですか!」

小鳥「うふふ、ありがとう、やよいちゃん」

やよい「そういえば、プロデューサーさん、ケーキを1つ多く頼んでましたねっ」

小鳥「そうね」

やよい「メニュー見て食べたくなっちゃったのかなぁ」

小鳥「……美味しそうだったし、そうかもしれないわね」

やよい「そうですねっ! おいしそうでしたもんねっ!」

小鳥「家で一人ケーキを食べるプロデューサーさん……ふふっ」

やよい「あの、小鳥さん? 何かおかしかったんですか?」

小鳥「え? いやいや、何でもないの。ちょっと変な想像しちゃっただけ」

やよい「想像?」

小鳥「どんな表情で食べるんだろうな〜って」

やよい「一人暮らしだと、一緒に食べる人がいないですもんね。ちょっとかわいそうかも……」

小鳥「そっか、やよいちゃんだとそういう発想なのね……」

やよい「あの、私何か変でしたか?」

小鳥「ううん、違うの。むしろ変なのは私の方なの……」

小鳥「という事で2人そろってオレンジジュースです」

やよい「お揃いでーっす!」

P「そうか、よかったなやよい。それはそうと音無さん」

小鳥「はい?」

P「ツッコミがいない所でボケちゃ駄目ですよ」

小鳥「はい、自分でもちょっとどうかなと思いました……」

やよい「プロデューサーさんの分のウーロン茶もありますよ」

P「あぁ、ありがとう。注文してたのは全員分来てるから、スープも持って来よう」

やよい「うわぁ、おいしそうです!」

小鳥「今度は私が残ってますから、行ってらっしゃい」

やよい「はーい、それじゃまた行ってきまーっす」

P「やよいと音無さんでよかったよ」

やよい「どういう事ですか?」

P「亜美や真美と来ると、ドリンクバーで絶対変なの混ぜて持ってくるんだよ」

やよい「もー、二人ともしょうがないいたずらっ子だなぁ」

P「コーヒーとコーラとか、ウーロン茶とジンジャーエールとか」

やよい「うわー……」

P「紅茶とコーヒーで『紅ーヒー』ってのもあったな」

やよい「味はどうでした?」

P「聞かないでくれ……」

やよい「わ、分かりました」

P「やよい以外とも結構一緒に夕食食べたりはしてるんだ。むしろやよいだけ機会が少なくて。ごめんな」

やよい「そんな、謝らないで下さい!」

P「不公平だって思わないか?」

やよい「私、ごはんは出来るだけ家族と食べたいなーって思いますし、不公平だなんて思わないですよ?」

P「そうか。逆にやよいの時間を奪っちゃったか」

やよい「あ、でも、プロデューサーや小鳥さんとごはん食べるのも嬉しいかなーって」

P「そう言ってもらえると嬉しいな」

やよい「だから、その、ありがとうございます!」

P「はは、こちらこそ。普段は一人で食べる事が多いから、こうやってみんなと食べる機会が出来て俺も嬉しいよ」

やよい「一人暮らしだとごはんも一人なんですよね……」

P「ま、その方が気楽でいい面もあるけどな。やよいはスープどれにする?」

やよい「う〜ん……それじゃコーンスープにします」

P「そうか。この小っちゃい蓋を開けてお玉ですくって入れるんだぞ」

やよい「はーい」

P「俺はコンソメスープにしよう……あ、カップの淵にこぼしてしまったか」

やよい「大丈夫ですか?」

P「あぁ。やよいは上手だな」

やよい「はい、こういうのは普段からやってますから!」

P「なるほど、経験の違いか」

やよい「スープをお玉ですくった後、お玉の底を一度スープの表面に付けると、汁がたれ難くなるんですよー!」

P「ほぅ! それは初めて聞いた。次はそれ試してみよう」

やよい「はい! お勧めのテクニックです!」

P「という事をやよいから聞きまして」

やよい「小鳥さんは知ってましたか?」

小鳥「えぇ。お母さんから教えてもらったなぁ」

やよい「えへへ、私もですっ」

P「あれ? もしかしてこれって常識……?」

小鳥「まぁ、結構知られたテクニックではありますよね」

やよい「大丈夫ですよー! 誰だって最初は知らないんですからっ!」

P「うん、ありがとう。励まされたって事は常識だったんだな……」

小鳥「さ。凹んでる人は放っておいて、頂ましょう」

やよい「はいっ! いただきまーっす!」

小鳥「いただきます」

P「さ、俺も食うか」

やよい「あー! ちゃんと頂きますしないとめっ! ですよっ!」

P「そうだったな、ごめん。頂きます」

やよい「はい、召し上がれ」

小鳥「どっちが年下か分からないですね」

P「大人になってから言わなくなったんですよね。急いで食べなきゃいけない場面も多くて。一人だと特に……」

やよい「言い訳はもっとめっ! ですよっ!」

P「はい」

小鳥「いや、『はい』じゃなくて……」

P「やよい、美味いか?」

やよい「はい、とっても美味しいですっ!」

P「よかったな。そんなに焦らなくてもいいからな。ゆっくり食べるんだぞ」

小鳥「やよいちゃん、顔こっちに向けて」

やよい「え、な、なんですか? ……こう?」

小鳥「……はい、これでよし。トマトソースが顔についてたわよ?」

やよい「えへへ、ごめんなさい〜」

P「ふふっ」

小鳥「何ニヤニヤしてるんですか」

P「いや、微笑ましいなぁって」

やよい「小鳥さん、なんだかお母さんみたいですね。えへへ」

小鳥「お母さん、ね。ありがとう。ちょっと複雑だけど嬉しいわ」

P「やよいみたいな子供がいればもっと仕事頑張れるんだろうなぁ」

やよい「プロデューサー達の子供も、きっととってもいい子だと思いますよ!」

P「そうか、ありがとうな、やよい。……ん?」

小鳥「えっ?」

やよい「あれ、ごめんなさいっ!! 私、変な事言っちゃいましたっ!」

P「もし俺に子供が出来たら、って事だよな? うん」

やよい「はい、そうです。なんとなくそう思って」

小鳥「そうね。プロデューサーさんなら、とってもいい子に育ててくれそうよね」

やよい「子供は、やっぱりアイドルにしたいですか?」

P「う〜ん、その質問難しいな……。プロデューサーという立場ではもちろんアイドルにしたい」

小鳥「父親としては?」

P「したいような、したくないような……子供の意見は尊重したい、かな」

やよい「う〜ん? よく分かんないです……」

P「ま、複雑な気持ちって事さ」

【車内】

やよい「はぁ〜、おなかいっぱいですー。今日はありがとうございましたー!」

P「どういたしまして。たまにだったら外食もいいもんだろ」

やよい「はいっ! 気分転換にもなりましたし、それに……」

小鳥「それに?」

やよい「恥ずかしいんですけど、家にいる時は弟や妹の世話しなきゃいけないんで、その」

小鳥「アイドルとしても長女としても頑張り屋さんだから、たまには甘えたいんでしょう?」

やよい「あぅ、正解ですぅ。プロデューサーさんも小鳥さんもお兄ちゃん、お姉ちゃんみたいに感じちゃって」

小鳥「『お姉ちゃん』に修正してくれたところにやよいちゃんの優しさを感じたわ」

P「ご両親もお忙しいみたいだし、そう感じるのは何も恥ずかしい事じゃないさ」

やよい「あの、それじゃこれからも、大変だなーって思った時は甘えちゃってもいいですか?」

P「もちろん! 大変だって思わなくても甘えてくれていいんだぞ。やよいは限度をわきまえてるしな」

小鳥「頼りになるお姉さんもいっぱいいるんだから、大変だな、辛いなって思ったら遠慮せず相談すること。いい?」

やよい「はーいっ! ありがとうございますー!」

小鳥「うん、素直でよろしい」

P「音無さん、着きましたよ」

小鳥「はい、ありがとうございます。そうだ、プロデューサーさん、ちょっと耳を」

P「え? なんですか?」

小鳥「事務所に寄るんですよね。律子さんの事、よろしくお願いしますね。私もちょっと気になったんで」

P「な、何の事だかさっぱり」

小鳥「ケーキ」

P「お見通しでしたか」

小鳥「うふふっ。それじゃ、おやすみなさい。やよいちゃん、お疲れ様」

やよい「はーいっ! おやすみなさーい!」

P「お疲れ様でした!」

やよい「さっき小鳥さん、何て言ってたんですか? ケーキがどうとか」

P「あぁ。……夜食もほどほどに、って言われたんだよ」

やよい「お持ち帰りのケーキ、1つ増えてましたもんねっ。私も気が付いてたんですよ!」

P「ははは、バレたか」

やよい「小鳥さんの言う通りですよっ。もしお腹出て来ちゃったら、一緒にダンスレッスンしましょうねっ!」

P「あれを俺がやるのか……はは、そうならないように気を付けるよ」

やよい「でも、疲れてると甘いものが欲しくなりますよね。プロデューサー、最近お仕事大変そうだし……」

P「大丈夫、律子や音無さん、社長だっているし、いざとなったらアイドルのみんなにも協力してもらうさ」

やよい「そうですよー。みんな言ってますよ、プロデューサーさんは頑張りすぎだって」

P「みんな心配してくれてるんだな。ありがとうな」

やよい「えへへ。でも、私だけじゃなくてみんなにも言ってあげて下さいねっ」

P「あぁ、分かったよ」

P「やよい、家に着いたぞ」

やよい「はい、ありがとうございますっ」

P「ケーキ、今日食べないなら冷蔵庫に入れておけよ……って、やよいなら分かってるか」

やよい「大丈夫ですっ!」

P「ははは、それじゃ、やよい。お疲れ様。ゆっくり休むんだぞ」

やよい「はいっ。えっと……」

P「ん? どうした?」

やよい「おやすみなさい、お兄ちゃんっ!」

P「なっ……!」

やよい「えへへ……それじゃ、お疲れ様でしたっ!」

                                               終わり

以上で終了です

春香「ある日の残業風景」
あずさ「ある日のたるき亭の風景」
千早「ある日の始業前風景」
小鳥「ある休日の風景」

以上4つと同じシリーズとして書いています
良かったら他のも読んでみて下さい
それぞれ知らなくても問題ないようにはしています

やよいは天使、はっきりわかんだね

このシリーズのやよいを読みに来たら、やよいが天使だった

おつ


このシリーズ好きだ

りっちゃん編はよ。

雪歩編が見たい


律子とケーキは…?

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