【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開2回目】 (1000)

このスレは安価で結城友奈は勇者である。を遊ぶゲーム形式なスレです


目的
全バーテックスの殲滅
生き残る

安価
コンマと自由安価を含む選択肢制

日数
一ヶ月=2週間で進めていきます
【平日5日、休日2日の週7日】×2


能力
HP MP SP 防御 素早 射撃 格闘 回避 命中 
この9個の能力でステータスを設定

HP:体力。0になると死亡。1/10以下で瀕死状態になり、全ステータスが1/3減少
MP:満開するために必要なポイント。HP以外のステータスが倍になる
SP:特殊な攻撃をするために必要なポイント 満開とはまた別
防御:防御力。攻撃を受けた際の被ダメージ計算に用いる
素早:素早さ。行動優先順位に用いる
射撃:射撃技量。射撃技のダメージ底上げ
格闘:格闘技量。格闘技のダメージ底上げ
回避:回避力。回避力計算に用いる
命中:命中率。技の命中精度に用いる


戦闘の計算
格闘ダメージ:格闘技量+技威力+コンマ-相手の防御力
射撃ダメージ:射撃技量+技威力+コンマ-相手の防御力
回避率:自分の回避-相手の命中。相手の命中率を回避が超えていれば回避率75%
命中率:自分の命中-相手の回避。相手の回避率を命中が超えていれば命中率100%



wiki→【http://www46.atwiki.jp/anka_yuyuyu/

前スレ

【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開0回目】
【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開0回目】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419254842/)
【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開1回目】
【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開1回目】 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420369048/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1421235603



では再開していこうと思います


天乃「じゃぁ……任せた」

風「!」

天乃に、任された

勝手にしろとか、好きにすればとか

ぶっきらぼうな言い方ではなく

任せたと。言われた

当人はバーテックスの攻撃による負傷のせいで

何の気なしに言った。あるいはなし崩し的にそういっただけなのかもしれない

けれど、風にとっては凄く

嬉しい言葉だった

天乃「何ジーっとみてるのよ」

風「……ううん。何でもない」

天乃「なんでもなく――」

風「行ってくる」

風は大剣を構え、大きく跳躍

風「樹!」

自分の妹との連携

それを、天秤座のバーテックスに打ち込むつもりのようだ



樹 命中判定  ↓1 01~79 で命中
風 命中判定  ↓2 01~60 で命中   いずれも ぞろ目でCRI

↓1 で風+ダメージ

↓2 で樹+ダメージ

459+544=1003ダメージ


http://i.imgur.com/W0a0z93.png



風「そりゃぁぁぁぁっ!」

封印できていない

つまり、御霊は出てきていない

だから、どうした

風は雄たけびをあげながら、勢いよく大剣を振りかぶる

風「アタシを―――ッ」

攻撃を受けるのは痛い

攻撃されるのは怖い

天乃は仲間だとは思っていないのかもしれない

でも、自分にとって、天乃は仲間だから

だから、怖くても、痛くても

風「見ろッ!」

声を張り上げ

バーテックスの体を切り裂く

風「敵は―――ここだッ!」

任されたからこそ

天秤座の注意が、

天秤座の攻撃が

たった一撃、たったひと欠片でも

天乃ではなく、無傷である自分に向けられるように


その意思を汲んだように、合わせた樹の一撃

その連携はバーテックスの体を大きく損傷させる

天乃「……無茶するわね、勇者部」

それが自分のためだと天乃は良く判っていた

風の雄叫びが聞こえた

でも、そうじゃない

勇者部がそういうとんでもないお節介の塊だと

身に染みて分かっていたからだ

天乃「……でも」

無駄だったとは言いたくない

攻撃は回復されるし

体の正面は天乃へと向いたままで

きっとあのまま攻撃を仕掛けてくるのだろう

逃げれば追い、背骨が砕けてしまうほどの重い鐘をぶつけてくるだろう

天乃「………………」



1、移動(場所指定)
2、第一式格闘術
3、第二式格闘術
4、集中 (SP15消費で 回避・命中+15%)
5、待機



↓2


http://i.imgur.com/W0a0z93.png


天秤座の攻撃

あと一度は平気だと言ったけれど

攻撃は今のところ1回転か2回転かの違いしかない分銅での攻撃

それ以外の攻撃がないとは思えない

そして、それ以外の攻撃をも耐えきれるという確証は、ない

天乃「……ふぅ」

その瀬戸際の中でも

天乃は大きな呼吸を用いて心を落ち着ける

早鐘のようになっていた鼓動を抑え

熱くなっていた体を冷やす

天乃「さっきのダメージもだいぶ引いてきた」

視界も良好、足もふらついたりしない

天乃「……よし」


1、移動
2、待機


↓2

http://i.imgur.com/W0a0z93.png



天乃「……お兄ちゃん」

天乃の力はすべて、兄によるもの

その兄は言った

きっと守ってくれると

兄自身はいなくても、その力が、守ってくれるはずだ。と

天乃「……信じるよ。その言葉」

3体いたバーテックスの最後の1体

天乃は再生し続けるその体を睨み、駆けだす

この攻撃で倒せるとは限らない

でも、何もしないと言う手はない

天乃「再生しきる前に、貴方の体を削り取らせてもらう!」

眼の前にまで近づいた天乃は

そのまま止まることなく、肉迫

天乃「これを私の最期にできなければ――貴方の負けよ」


命中判定  ↓1  134%   ぞろ目でCRI


↓1  ダメージ+


703ダメージ


天乃「っ!」

手始めの下から突き上げるような掌底は

天秤座の皮膚の抵抗をものともせずに貫通

しかし、そこでは止まらず傷口は上へと押し広げられ、樹のつけた傷跡と接触

血の代わりの粒子が飛び散り、大きく削げる

しかしそれでも傷は浅い

まだまだ足りない

天乃「置き土産!」

軽く飛び上がった天乃は

大きく1回転すると、

先ほどの仕返しのような回転蹴りをバーテックスに叩き込む

ダメ押しの一撃は響いたのか

天秤座のバーテックスは大きくよろける

――が、しかし。

天秤座はそれすらも利用しての反撃を試みてきた



命中判定  ↓1  01~57  命中


135ダメージ



勢いのついたその分銅の速度は

着地した瞬間の天乃の回避可能速度を裕に超えていた

天乃「っ」

友奈「!」

駆けだした足は、その速度には到底及ばない

友奈「久遠せん――」

とっさに出した声は

その攻撃に遥かに劣り、最後まで行く前に

非情な炸裂音が響き渡る

軽々しく打ち上げられた天乃の体は宙へと舞い――

風「やめ――」

巨大な分銅は仕返しの仕返しのように

容赦なく、その身を樹海の根にたたきつけ、押し潰した

http://i.imgur.com/GGRTcvR.png


天乃「っ……く……」

粉々になった樹海の根が

パラパラと体のあちこちから落ちていくように感じる

生きてるのか、死んでるのか

解らなくなりそうなほど、瞼が重い

いや、重いのだから生きているのだろう

死神「……クオンサン」

天乃「っ……私、立って……あれ?」

死神の奥に空が見え、天乃は気付く

自分の体が横になったままで

根の粉は落ちたのではなく、落ちてきたのだと

天乃「……拙いわね。これは」

いくら精霊の守りがあるとはいえ

2度にわたる重い攻撃は、天乃の体にかなりの負荷をかけたのだ

天乃「死ぬ……かもしれない」


体の節々に痛みが走る

精霊の守りがあって、そこまでダメージが来ているのだ

無かったらおそらく、一撃で死んでいたかもしれない

死神「……サンカスル?」

天乃「?」

死神「クオンサン、サンカ、スル?」

天乃「意味わからないこと言ってないで……手を貸して。立てないわ」

死神「………………」

天乃「冗談よ」

黙り込んだ死神に笑みを向け、手を伸ばす

少しひんやりとした空気を触っているような感覚

天乃「昨日、貴方は温かった」

死神「クオンサン」

天乃「……私が死ぬから、冷たいの?」

死神「……コロサナイ」

天乃「ふふっ、会話、成り立ってないわよ」


天乃「……私、まだ。生きてるのよね?」

死神「………」

死神が頷いたのを見て

天乃は思わず笑う

死を告げるはずの死神が生を告げた

いや、そもそも

死神に生きてるかと問うこと自体が

もう、自分が限界に来ているのだと悟らせ

笑うしかなかった

天乃「……まだ生きてるなら。もう少し、頑張らないと。よね」

死神「クオンサン」

天乃「貴方が真似してる子が、あんなこと言ったせいだって……気に病んじゃうかもしれない」

死神「……………」

天乃「風にあの子のことはお願いしたけど、でも。何事もない方が、良いものね」

天乃は軋む骨を強引に動かし、ふらつきながらも立ち上がる

天乃「……さぁ、行きましょう。結果はまだ、決まってない」


1、第三式格闘術  750 CRI+5%
2、風に先を譲る


底力発動中(命中・CRI+50 回避+30)


↓2


http://i.imgur.com/GGRTcvR.png


風「久遠、無茶は――」

天乃「せやぁッ!」

気合を込めて声を張り上げ、

勢いよく飛び上がってバーテックスの皮膚を蹴り飛ばす

体の限界が来ているからか

あちこち痛むし、舌は鉄を味わっているような気がする

天乃「だけどッ!」

着地した瞬間にそれを軸足として1回転

右足を鞭のように撓らせ、同じ個所を抉る

相手にダメージを与えながらも

自分に響いて来る反動によって自らにもダメージが伝う

天乃「これでッ!」

それでも天乃は止まらず続ける

首を蹴り、腹を蹴り、そして、胸を打つ必殺技

天乃「終わり!」


↓1  CRI判定  01~65でCRI

↓2 追加ダメージ+


946ダメージ
バーテックス3体の撃破に成功しました

経験値

天:240
風:240
樹:190
友:240
東:190

YPは


天:200
風:200
樹:150
友:200
東:150

入手


天乃「はぁっ……はぁ……っ」

体に限界が来たのか

大きく揺れた体は後ろへと仰け反っていき

風「……お疲れ様」

風がその体を抱き留めた

天乃「……風」

風「言伝、忘れるわよ?」

天乃「……保険。なんだから。覚えておいて」

天乃は乾いた笑い声を上げると

風の頬に触れる

天乃「ちょっと、疲れた」

風「! ま、待って! 久遠、アタシ、まだいろいろ」

天乃「何言ってるのよ……別に、死ぬわけじゃない。ただ、少し、休みたいだけ」

友奈「久遠先輩!」

天乃「そう……やっぱり……ごめんねって、伝えておいて。お昼、一緒は……できそうにないから」

天乃はか細く笑みを浮かべる

そして、次の瞬間には

頬に触れていた手は力なく……下へと滑り落ちた


被害判定

樹海損傷率、17%


01: 02: 03: 04: 05: 06: 07: 08:母 09: 10:祖母
11: 12: 13:沙織 14: 15:施設 16: 17: 18: 19: 20:

21: 22: 23: 24: 25: 26: 27: 28:父 29: 30: 
31: 32: 33: 34:兄 35: 36: 37: 38: 39:庭園 40: 
41: 42:沙織 43: 44:母 45: 46: 47: 48: 49: 50: 
51: 52: 53: 54: 55: 56: 57: 58:母 59: 60: 
61: 62: 63: 64: 65:姉 66: 67: 68: 69: 70:沙織弟 
71: 72: 73: 74: 75: 76: 77: 78:姉 79: 80: 
81: 82:祖父 83: 84: 85:兄 86: 87: 88:沙織弟 89: 90: 
91: 92: 93: 94: 95: 96: 97: 98: 99:父 00: 


対象判定↓1  けがレベルは次に判定  空白の場合は赤の他人


被害レベルは17%=脅威レベル17%


01~05 意識不明

45~45 死亡

71~75 全治1週間

80~80 死亡

82~84 全治2週間

96~97 意識不明


その他、軽傷 


通常通り ↓1です

もしもすでに出ていた場合、それを採用します


この場合は>>103になります
加えて、天乃は病院での精密検査(監視)です


あと、少し前に言われた通り、
確かにゆゆゆ開始の日付から見て現在5月でした

日付だけ訂正で、普通に夕方からスタートします


√5月1日目 夕方



天乃「……ねぇ、入院。しないといけないの?」

「そうよ……気を失うほどに酷い負荷を負ったんだから」

天乃「でも……」

「良い子だからちゃんと従ってね? 大丈夫、きっとすぐに退院できるから」

看護師はニコニコと笑いながら

天乃の頭をよしよしと撫でる

だが、天乃は全く嬉しくないようで

看護師を鋭く睨みつける

天乃「……私、中学3年生なのだけど」

「あっ……そ、そうだけど、ほら。子供にはこうやって接するべきだから」

取り繕う看護師を天乃は見つめ

不意にため息をついて窓へと視線を逸らす

天乃「採血とかも済んだのならもういいでしょう? 一人にして」

「……解ったわ。何かあったらすぐ、そこのボタンを押して呼ぶのよ?」

看護師は極めて優しくそういったが

天乃からの返事はなく、肩を落として病室を出ていった


天乃「……端末、取られちゃったな」

前の端末はメンテナンスと言うことで大赦側に回収されてしまっており

天乃の手元には誰に対しての連絡手段もない

しばらくしたら大体の端末を用意するという話なのだが

ここ1日、2日は手元には来ないだろう

天乃「風……ちゃんと話しておいてくれたかしら」

それすらも、確かめる方法がない

自由とは違う意味での孤独

不自由でありながら、孤独

その寂しさを肌に感じ、天乃は布団をかぶる

天乃「……何も、ないんだ」

今の天乃の手元には何もない

患者が着る服だけはあるが

それ以外には何もない。あるのは着ていた制服だけ

天乃「……寝ようかな」



コンマ判定表

01~10 風
11~20 友奈
21~30 東郷
31~40 樹
41~50 夏凜
51~60 
61~70 沙織

71~80 
81~90 
91~00 沙織


↓1のコンマ   空白はなにもなし


ドアをノックする音がして目を覚ますと

失礼します。と

オドオドしい声が入り込む

天乃「……その声、樹?」

樹「は、はい」

天乃「……どうしたの?」

樹「全員で押しかけるのも迷惑だろうって、東郷先輩が。だから、私が代表です」

天乃「そう」

樹は天乃の鞄と自分の鞄を肩から下ろし、

天乃の方だけをクローゼットにしまい込む

樹「あの……体の方は」

天乃「全然平気よ。休んだから」

樹「良かったです」

天乃「…………………」

樹「…………………」


樹はもちろんの事

以前ならともかく、今の天乃もあまり多く話すようなタイプではない

そのせいかすぐに病室は静けさに包まれ

夕日が鮮やかながら、寂しい空気をはらむ

樹「……その、久遠先輩」

天乃「なに?」

樹「お姉ちゃんから言伝があります」

天乃「なんて?」

樹「伊集院さんには伝えたけど、凄く悲しそうだった。連絡してあげなさい。と」

天乃「……無理ね」

天乃の返答に驚いたのか、樹がガタッと椅子を鳴らす

樹「どうして、ですか?」

天乃「端末がないの。大赦に没収されたわ」

樹「……そんな」



1、だから無理
2、だから……私は大丈夫。心配しないでと伝えておいてくれるかしら?
3、だから……そうね。ちゃんと前に居てあげるから。貴女はちゃんと追って、追い越しなさいと伝えてくれる?
4、ところで樹、今回の被害の方は?
5、貴女、この後はもう帰るのよね?


↓1


天乃「だから無理」

樹「……………」

天乃「下手に言伝頼んでも、どうして自分で言えないのかって、心配させちゃうだろうし」

樹「……あの、久遠先輩ってもしかして」

樹の伺うような視線に耐えかねて

天乃は樹とは正反対の方に顔を向ける

天乃「べ、別にそういうんじゃないわ。心配されてるっていう状況が嫌なだけで……」

樹「そうなんですね」

天乃「っ……風達に余計なこと、言わないで頂戴」

樹「解ってます」

天乃「………………」

樹の笑顔に信憑性を損ない、

伺うように樹を一瞥する

天乃「絶対よ?」

樹「は、はいっ」

樹は天乃が他人にも厳しく、怖い人だと思っていた

けれど、それはただの勘違いだった。と

天乃にはばれないように微笑みながら、改める

友達思いの優しい先輩――と

とりあえずはここまでにします
↓2に変更した件、すっかり忘れていました。すみません

1~3はどれ選んでも樹の絆値UP  4、5だけ何もなしだったので
もしよければこのまま進めます
↓2の3で進行させたいという方が多数いましたら>>147取り消してそちらで進めます

失礼しました

安価は直下だと本文読まずに安価部分だけ見てレスする人が出るから下2との経緯
つまり本文なくて安価部分のみレスとかなら直下でも問題ないっぽい



安価に関してはそうですね、>>166のようなやり方で進める予定です
では今日も再開していきます

√ 5月1日目の夜


コンマ判定表

01~10 
11~20 風

21~30 
31~40 
41~50 夏凜

51~60 
61~70 
71~80 沙織

81~90 
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし

√ 5月1日目の夜


樹が帰った後、残された天乃

一人の病室の時間は過ぎるのが遅く

まだ、夜だった

天乃「……………」

端末があればメールも電話もできる

でも、手元にはない

頼みの綱のカバンの中身は

つまらない学校の教材しか入っていない

天乃「……はぁ」

独りであることが段々とつまらなく感じていた

そんな時に、沙織たちと付き合って

誰かといるという楽しさを感じてきている中での、孤独

天乃「こういう時こそ風がいるべきだと思うなんて、末期だわ」


下らない考えを振り払って目を瞑る

病院の外

どこかで走る車の音がする

それが消えて、静かになったはずなのに

シーン……という音が聞こえてくる

天乃「っ、なんなのよ……」

悪態をついた天乃は頭まで被った布団を剥いで顔を出し、

寝たいのに寝れない

その苦しい現状に大きくため息をつく

天乃「……暇」



1、寝る
2、死神を呼んでみる
3、変態かm……お兄ちゃんを呼んでみる
4、病院を抜け出す



↓2


天乃「……よし、病院を抜け出そう」

気を失っていたため

ここまでの病院内の構造は知らないけれど

まぁ、たぶん、何とかなるだろう

そんな適当な感覚で準備を進めていく

自分の鞄を布団で覆い、

着ていた患者用の服を整え、頭のように見せかける

天乃「……見回りくらいは誤魔化せるはず」

見回りさえ誤魔化せれば

あとは見つからなければ朝まで問題はない

天乃「………………」

いきなりドアを開けるのではなく、

ドアに耳を当て、音を聞く

足音はしない

見回りが来るのはまだ先なのだろうか

極力音を殺し、

ゆっくりとスライドドアを開いていく

天乃「バイバイ、退屈な病室」

天乃、逃走中


自分の病室を確認

3―――と書かれていることから、3階であることは間違いない

エレベーターは内部にカメラがある可能性もある

いや、おそらくあるだろう

そして、それは当然通路にもあり、

階段側にもある

天乃「……1つ、2つ……」

全範囲を撮影できるであろう、監視カメラ

現代では犯罪を起こすような人間は全くいないと言っても過言ではないため

防犯でも監視でもなく

保護カメラと言った方が確実だろうか

病室を出た患者が、どこかで倒れたとしてもすぐ救出できるように

しかし、今の天乃にとってはすべて監視カメラでしかない

天乃「カメラの下を抜けられないと……ダメね。一か八か……」



1、隠密を使う
2、突っ込む


↓2  突っ込んだ場合。コンマ判定有


天乃「死神、力貸して」

言いながらすぐ横に手をやると

何にも触れず、空気を裂く

天乃「……そっか」

端末がなければ勇者にはなれないし

精霊も呼び出せない

だから、力も借りることは出来ない

それは、解っていたはずなのに

天乃「………いつも勝手に出てくるんだから、今も出てきてくれればいいのに」

無茶な話だ

無理な話だ

今、端末は病院内にはない

大赦に回収され、メンテナンス中

そう、諦めようとした時だった

死神「ヒツヨウ?」

天乃「ッ!」

不意を突いた声と出現に

悲鳴を上げかけて口を押えた


天乃「……貴方、どうやって」

死神「クオンサン、アイタカッタ」

天乃「だからどうやって」

死神「クオンサン、アイタカッタ」

天乃「…………………」

まともに答えることなく

死神は天乃の周囲をクルクルと周る

ふざけているというよりは嬉しそうにも見える行動

怒るにも怒れず、優しく捕まえる

天乃「端末は?」

死神「タンマツ?」

天乃「私がいっつも使ってた機械」

死神「コレ?」

死神が真黒な自分の体の中から取り出したのは

まぎれもなく、天乃の端末だった


まさか本当に持っているとは思わなかった天乃は

差し出されたそれを見て一旦目を閉じ

深呼吸をして目を向ける

もちろん、持っているものに変化はない

天乃「……持ってきてくれたのね」

どこにあるかを聞いたつもりだったのに

差し出された端末を

困惑しながらも受け取る

天乃「……メンテナンスは?」

死神「メンテナンス?」

天乃「何かしてる途中だったんでしょう?」

死神「……………」

死神は首を傾げた


1、とにかく、ありがとう。病院を出るわよ
2、ありがとう、病室に戻りましょ
3、とにかく……脱出するわ
4、まぁ、端末が戻ったならいいわ。病室に戻りましょ



↓2


天乃「とにかく……脱出するわ」

死神「~」

お手柄な死神の頭を2、3回撫でて

先の廊下を睨む

普通に行くなら不可能

けれど、死神の力を使えばそれが一転して確実になる

天乃「出来る?」

死神「デキル?」

天乃「戦うときに使ってる隠れるやつ」

死神「ガンバル」

天乃「ええ、頑張って」

息を殺し、足音を消して進んでいく

自分の目線では姿が消えていたりするわけではないため

死神が役目を果たしていると信じるしかない


天乃「………大丈夫、だったのかしら?」

天乃の降りた階にはナースステーションがあるのだが

こんな時間に部屋を出ているのがわかればすぐにでも動き出しているはず

しかし、慌てている様子はない

それどころか、静かすぎる

天乃「……大丈夫みたいね」

死神「クオンサン、イク?」

天乃「ええ、このままいきましょ」

死神を引き連れて病院を進む

不吉すぎるその行い

天乃は誰にも止められることなく

それを出口までやり遂げることに成功した――が

「こんな時間に病人が抜け出したら、ダメだと思うけど」

天乃「……貴女」

「大人しく戻るなら見逃してあげてもいいけど……戻らなくても良いわよ?」

待っていたと言わんばかりに壁に寄りかかり、

二本の木刀を手にする少女は天乃に向かって含み笑いを浮かべる

「そのかわり、入院期間延長になるけどね」

天乃「大赦の人間ね?」


「まぁ、嘘ついてもしょうがないし、名乗ってあげる」

天乃「別に名前を聞くつもりは――」

「良いから聞きなさいよ」

天乃「……………」

「……あたしは三好夏凜! 言った通り、大赦からあんたの監視を命じられた勇者の一人よ」

天乃「そう」

まったくと言っていいほど興味のない天乃は

適当にそう答えて手を振る

天乃「お疲れ様」

夏凜「え、ぁ、お疲れ様」

天乃「じゃぁ、私は行くから」

夏凜「そう……――じゃ、ない!」

平然と立ち去ろうとした天乃の肩を慌てて掴み

強引に振り返らせる

夏凜「戻るべきは病室」

天乃「いやよ、つまらない」


夏凜「戻って貰わないとあたしが困るのよ」

天乃「貴方が病室に入って天乃だって名乗れば?」

夏凜「ふざけてるでしょ」

天乃「あら、冷静」

夏凜「っ」

天乃のからかうような言動に苛々とする心を

落ち着け、落ち着けと鎮める

大赦からはあまり刺激しないように。という指示が下っている

だからといって、病院から抜け出すことを許していいとも言われていない

人間相手だからちょろい任務だと思った

物凄く簡単で、なんで自分なんかがやらないといけないのかと憤りさえ感じた

だけど、今は

夏凜「っ、く………くっ」

今すぐにでも怒鳴りたいくらい、苛々していた

こんなの自分の役目なんかでは絶対にない! と


夏凜「とにかく、戻って」

天乃「どうしても?」

夏凜「何度言わせるつもりよ」

天乃「……子供を病室に軟禁するなんて、大赦って悪い会社だわ」

夏凜「精密検査で入院するだけでしょーが! 入院が軟禁ならこの病院は何? 監獄!?」

天乃「違うわ。地獄よ。暇に殺される」

夏凜「知るか!」

木刀で勢いよく地面を叩き

夏凜は大声でどなる

流石に我慢の限界だったのだ

夏凜「戻らないなら実力行使……そういったわよ?」

天乃「……大赦から私はどんな人間か聞いてるの?」

夏凜「かなり運動神経の良い勇者ってことは聞いてるわ」

天乃「そう」

夏凜「でも、鍛えてるあたしには、遠く及ばないわ!」



回避判定↓1  01~26で命中   15~20でカウンター


判定は01~57でした
夏凜の命中90-天乃の回避108=18
75-18=57  なので

結局はずれかつ、天乃の命中率は夏凜相手でも100%なので判定省きます


言い放った夏凜は空けていた右手を後ろへと引き、

天乃の脇腹に向けて勢いよく拳を振る

しかし、それは天乃に接触する直前

瞬時に現れた右足に手首を強打し、弾かれる

夏凜「なっ」

最初からではなく、あえてギリギリで出すことで

回避をさせないトラップ

ただ運動神経が良いなんて嘘も良いところだ

確実に対人戦の訓練を積んでいる

そう気づいたときにはもう、天乃は振り返っていた

天乃「貴女が先に手を出したのよ?」

夏凜「くっ」

後ろに弾かれた右手

肩を掴んでいたことで引っ張られる左手と体

天乃「壁には当たらないように、引っ張っておいてあげるわ」

ドンッと鈍い衝撃が体に響く

夏凜「っ……ぁ」

体がわずかに浮いて、吐き気がのど元まで引きあがり、下がっていく

それと同時に、夏凜の体が崩れ落ちた


夏凜「あ、あんた……なにを」

天乃「痴漢撃退術よ。痴漢撃退術を痴漢から教わっただけ」

夏凜「……痴漢?」

夏凜にとっては意味不明で

ただ、ふざけるなと思った

ひたすら訓練を積んできた自分が

ただの一般人に負けるなんて許せない、ありえないと

しかし、天乃が言ったことは半分ほど正しい

習ったのは痴漢撃退術ではなく、太極拳

しかも夏凜と同じく、子供のころからだ

天乃「貴女の動き、お尻を触る動きと同じだった」

夏凜「お尻……何言ってんの?」

天乃「………冗談よ」

つい口が滑ったと気づき

天乃はにこやかに笑って夏凜の頭を撫でる


1、私の勝ち。だから帰らせてもらうわね?
2、お疲れ様。バイバイ
3、良い運動になったわ。ありがとう。じゃぁ、私部屋で寝るわね
4、慢心は禁物よ。貴女の敗因はそこにある



↓2



天乃「良い運動になったわ。ありがとう。じゃぁ、私部屋で寝るわね」

夏凜「あんた……名前、天乃。だったわよね?」

天乃「ええ」

夏凜「また今度、リベンジさせてもらうから!」

天乃「………………」

夏凜の強い意志の込められた瞳

それを見た天乃はくすっと笑って立ち上がり

スカートを軽く叩いて夏凜を見下ろす

天乃「嫌よ」

夏凜「そこは受けなさいよ!」

溜めた末のお断りに

思わず夏凜が怒鳴る

夏凜「今のは普通、待ってる。とか、楽しみにしてる。とか!」

天乃「大赦から聞いてない?」

夏凜「な、なにをよ?」

天乃「私、人に縛られるのは嫌いだから、そういう永続的な約束とかしないタイプだって」

バイバイと手を振って院内に戻っていく天乃を見つめる夏凜は

彼女が見えなくなってから、項垂れる


夏凜「完敗だった……肩をつかまされたんだ。あたしは」

そのせいで攻撃できるのは必然的に右手になる

なぜか

足での攻撃の場合、相手にはダメージを与えすぎる

監視と言う立場である以上、初手かつ先制での過剰な手出しは普通しない

いや、出来ない

夏凜のように、真面目なタイプの人間は確実に

だから、攻撃できる箇所を限定され、結果対処された

夏凜「しかも、あの場面……あたしのガードを完全に取り払ってた」

弾かれた右手はもちろん、

天乃が身を翻すことで巻き込まれた左手も防御には回せず

体を浮かされたせいで足を引き上げる速度も格段に遅くされた

夏凜「久遠天乃……ただものじゃないわね」

とはいうが

肩を掴まれたのは偶然だし、左手を巻き込んだのも夏凜が驚いていたせいで即座に離さなかった失敗

天乃が計画的に行ったのは足でのガードのみで

あとは全部自分の行動が招いた結果だと

夏凜はこのとき、知る由もなかった


夏凜の初期好感度 ↓1コンマ一桁  ぞろ目なら2倍

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流有(戦闘、お願い)
・  犬吠埼樹:交流有(戦闘、優しい先輩)
・  結城友奈:交流有(戦闘)
・  東郷美森:交流有(戦闘)
・  三好夏凜:交流有(戦闘、勝利、病室戻り)
・伊集院沙織:交流有(会話)

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(クオンサン元気)


5月の1日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 9(普通)
  犬吠埼樹との絆 7(ちょっと低い)
  結城友奈との絆 13(普通)
  東郷三森との絆 4(まだまだ低い)
  三好夏凜との絆 10(普通)
伊集院沙織との絆 45(高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 11(普通)


キリも良いので今回はここまでにします

ウィキですが
2スレ目の安価纏め、あらすじと、天乃・沙織の2スレ目での軽いあらすじ。対沙織の2スレ目安価纏め
ステータス(夏凜以外)を更新しました

何か不具合等ありましたらご報告お願いいたします

夏凜の登場は本来6月らしいのですが
そこはバーテックス同様、色々変化しているということで


私情で長くは出来ませんが、今日も始めていこうと思います

√ 5月2日目の朝


コンマ判定表

01~10 
11~20 風
21~30 
31~40 夏凜
41~50 
51~60 死神
61~70 
71~80 大赦の人

81~90 
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月2日目の朝 病院


天乃「……そっか、病院だっけ。ここ」

目を覚ました天乃は

何度か瞬きをしてゆっくりと頭を起こしていく

精密検査のための入院

すぐに退院できるだろうと看護師は言っていたが

天乃はそれを信じてはいなかった

天乃「……一生閉じ込められそうだわ」

ただの精密検査なら

監視がつく理由なんてないはず

まさか、元気な患者さんが勝手に抜け出さないように

しっかりと24時間見守り隊を配備していますなんていうこともないだろう。と

天乃は思ったからだ

天乃「……バーテックスに狙われ、大赦に睨まれ。私、何かしたかしら」

身に覚えは――ちょっとだけある


とはいえ

隔離されているであろう園子と接触してしまったとか

新樹様に対する信仰心は零抜けてマイナスに達している。ということくらいだ

天乃「……うん、睨まれるね。それは」

なるほどと頷き、

天乃は小さく欠伸をして、体を伸ばす

本来は学校に行く準備をする時間

しかし、それは止められてしまうだろう

天乃「夏凜でもからかって遊ぼうかしら」

ちらっと窓の外を見て

あの子が一人訓練しているのを確認する

天乃「……入院なんて大っ嫌い」

注射が怖いわけでも

夜の病院が怖いわけでもない

ただ。天乃は暇と言うものが……嫌いなのだ



1、電話:風、友奈、樹、東郷、沙織、兄、姉
2、メール:風、友奈、樹、東郷、沙織、兄、姉
3、夏凜の所へ
4、死神召喚
5、二度寝


↓2


天乃「まぁ、夏凜は昨日の夜からかっちゃったし、止めておいてあげようかな」

病院を抜け出して、軽くじゃれ合って

少々可哀想なことしたかな。という思いもある天乃は、

覗くのを止め、振り返る

天乃「出ておいで、死神」

死神「クオンサン!」

パッと現れた死神は、呼ばれたことが嬉しいのか

現れるや否や天乃の名を呼び、すり寄っていく

死神「クオンサン、ゲンキ?」

天乃「ええ、元気よ。大丈夫」

死神「クオンサン、ガッコウ?」

天乃「学校はちょっと、いけないかな」

死神「クオンサン、イッショ、イテモ、イイ?」

天乃「呼んだのは私なのだけど」

死神「ネル?」

天乃「考え中よ」


次々と質問を投げかけてくる忙しなさ

普段は突っぱねたくもなるものだが

何もない現状、天乃にとっては少し嬉しかった

天乃「貴方、ずいぶんと喋れるようになったのね」

死神「クオンサン、シャベル、ワ、タシ? オボエタ!」

精霊にも学習すると言うものがあるのか

それとも、死神が特別なのか

天乃は少し考えて、思考を投げ捨てた

どちらにせよ、特別だからである

死神「ドウスル?」

天乃「私は一応、入院してるからお出かけは出来ないのよね」

抜け出すと言うのならその限りではないのだが

そうした場合、病院と夏凜はては家族や勇者部に多大な迷惑をかけることになる


1、ねぇ、貴方。何か特別なの?
2、昨日、私と別れている間の事、教えてくれない?
3、ねぇ、私の事。好き?
4、抱きしめる
5、二度寝


↓2


昨日の戦闘中

死神が冷たくなっていたことを思い出した天乃は

おもむろに死神のことを抱きしめる

死神「クオンサン?」

天乃「……………」

死神は温かかった

昨日の冷たさが嘘のように

やっぱり、あれは自分が死に近づけば近づくほど

冷たくなる。と言うものだったのだろうか

天乃「ねぇ、死神」

死神「ナァニ?」

天乃「貴方、私の魂……とかじゃないわよね?」

死神「……………」

黙り込み、首を傾げた死神は天乃を見つめる

死神「ワタシ、クオンサン?」

天乃「……解りっこないか」


我ながらおかしなこと言うものだと

天乃はため息をつく

神様かどうかはともかく

神樹様と似たような不可解な存在であるバーテックス

それの再生を阻害できる死神

仮にそれが風の言う通り神殺しの力だとするのならば

天乃が求めて止まない力に他ならず

そして、自分が死に近づくと冷たくなっていくと言うのは

死と連動しているようなもの

だからもしかしたら。と、思ったのだ

天乃「ごめんね、忘れて」

死神「クオンサン、ノ、タマシイ、ワカル」

天乃「ん?」

死神は不意に呟いて、より体を密着させる

その瞳は天乃の奥

まさに魂を覗いているようにも見える


死神「クオンサン、シ、チカカッタ」

天乃「……あれだけのダメージ負ったわけだしね」

死神「……ゴメン、ナサイ」

天乃「どうして謝るの?」

死神「クオンサン、マモレ……ナカッタ」

本来、死神とは守るためには存在していない

むしろ、命を奪う。奪われる前の兆しとして現れるのがふつうである

なのに、守れなかった。御免なさいと

死神が言うのを見て

天乃は思わず言葉を失ってしまった

天乃「…………」



1、心臓の音。聞こえるでしょう? これは貴方が、守ってくれたのよ?
2、馬鹿にしないで。私が未熟な面もあった。なのに……全部自分が悪いなんて。格好でもつけたいの?
3、撫でる
4、なら次はがんばりましょう? 私も、貴方も


↓2


天乃「そうね……」

死神「クオンサン?」

大きく見てもサッカーボールくらいの大きさしかない死神

天乃はそれを抱えるようにではなく

人を抱きしめるように、強く抱く

天乃「……貴方、男の子かしらね」

死神「?」

天乃「……………」

落ち度があったと言っている相手に

そんなことはなかった。十分頑張った

なんていうのはただの慰めでしかない

そして、そういうのを男の子は嫌う傾向にある

だから天乃はあえて慰めることも、お礼を言うこともなかった

天乃「なら次はがんばりましょう? 私も、貴方も」

死神「……ガンバル」

天乃「ええ、頑張る」

死神に対して天乃は笑みを浮かべ

死神もまた、

固定された骨の奥で、笑みを浮かべていた

√ 5月2日目の昼


コンマ判定表

01~10 沙織
11~20 
21~30 大赦の人

31~40 
41~50 
51~60 夏凜

61~70 
71~80 風
81~90 
91~00 友奈

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月2日目の昼 病院



「しばらくしたら下げに来るからね~?」

天乃「解ってます」

明らかに子供相手

しかも大体小学生あたりに対しての言い方に

天乃はあからさまに不機嫌に答える

外の名前の横に年齢が書いてあるわけではないため

身長的に小学生に見られてもおかしくはないが

それはいささか失礼が過ぎると言うものではないのだろうか

思う天乃は癖となったため息をつく

天乃「……給食。あの子、友達と食べてるわよね?」

死神「クオンサン、イッショニタベル?」

天乃「貴方の分、ないわよ?」

死神「!」

天乃「なに驚いてるのよ……貴方今まで食べたことないでしょう。なにも」


死神「……チャーハン、オイシイヨ?」

天乃「それあの子が言った言葉でしょう」

死神「コッチモ、オイシイヨ?」

天乃「恥ずかしくなるから止めて……」

数日前の沙織とのやり取りを思い出し、

顔を赤くした天乃は死神の頭を鷲掴む

思い出したくないこともあるのだ

もっとも、それが忘れたいことだとは限らないが

天乃「……そもそも。貴方どこで食べるのよ」

死神「ココ?」

天乃「骨の内側……?」

死神「……………」

天乃「そんなに食べたいの?」



1、餌付け
2、上げるふりして食べた後、上げる
3、上げない



↓2


スプーンでごはんを掬い、おかずを乗せ

天乃はそれを、死神の方に差し出す

天乃「じゃぁ、はい」

死神「イイノ?」

天乃「要らないなら食べるわよ? 病院食、見て分かる通り多くはないんだから」

栄養満点ではあるが

その代償と言うべきなのだろうか

病院食にはボリューム感はあまりない

それは健康体である天乃に対しても同様だった

死神「アリガト」

天乃「……どういたしまして」

ほんの一瞬、

スプーンを握る手に重みが加わる

そして次の瞬間には、スプーンの上には何もなかった


天乃「……美味しかった?」

死神「オイシカッタ」

天乃「そう」

天乃にとっては少し物足りない味付けなのだが

おそらく初めての食事だった死神にとっては

美味しいものらしい

死神は嬉しそうに笑っていた

天乃「貴方、やっぱり特別なのかもしれないわね」

死神「?」

もしも自分の精霊が牛鬼や犬神など

戦闘中に見る勇者部の精霊のように喋れないものだったとしたら

そう思ってつい口走り、首を振る

天乃「……こっちの話」


死神「クオンサン」

天乃「?」

死神「クオンサン」

天乃「…………あら」

寄って来る死神を天乃は抵抗することなく受け入れて

優しく頭を撫でる

死神は戦う上で重要なパートナーだ

一般人でもなければ勇者でもなく

そもそも人間ではない精霊だ

天乃「犬みたいね。貴方」

死神「イヌ?」

天乃「小さいペット」

天乃の言葉をうまく理解できていないのか

死神は首をかしげる

けれど、天乃の楽しげな表情に満足したのだろう

死神は尻尾みたく伸びている尾鰭のようなものをユラユラと揺らす

天乃「ふふっ……ダメ、それ。本当に犬に見える」

死神「イーヌ?」

天乃の反応を見て喜んでもらえると解り

死神はもう一度、繰り返した


では今回はここまでとさせていただきます

死神との絆値が上昇してますね
そろそろ、卍解か虚化を習得できるんじゃないでしょうか。あればの話ですが

夕方は夏凜か風、大赦の人のいずれかが必ずお見えする判定の予定です
言わずもがな端末の件です


では、今日も始めていこうかと思います


√ 5月2日目の夕方


コンマ判定表

01~10 夏凜
11~20 風
21~30 大赦の人
31~40 夏凜
41~50 風
51~60 大赦の人
61~70 夏凜
71~80 風
81~90 大赦の人
91~00 今にも泣きだしそうな新人っぽい大赦の人であろう女性

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月2日目の夕方


「し、失礼しますっ!」

天乃「ちょっと……」

軽いノックをした瞬間

返事も待たずに大声でその女性は入ってきた

涙をこれでもかと言うほどに溜めているが

それでもすでに泣いたのだろう、目元は赤い

天乃「なんなの?」

「わ、私は。その、大赦の方で備品管理。と言いますか、端末の点検などを任されているところの者です!」

天乃「それで?」

「じ、実はですね? 久遠様の~……その」

天乃「なに?」

「っ……えっと」

蛇に睨まれた蛙

それを擬人化させたような状態の女性は、ぽろっと涙をこぼす

返事を待たずにはいってきたことが不愉快な天乃には、あまり意味はないのかもしれないが


「く、久遠様の端末を紛失しました!」

天乃「……端末を?」

「はい……厳重に管理していたはずなのですが、気づいたら忽然と」

天乃「私の個人情報がもろもろ入ってるのに?」

「すみませんっ!」

端末は今、目の前で

天乃が扱っているにもかかわらず

勢いよく頭を下げ、女性は謝罪する

「なんの申し開きもありません……初めて一人での仕事で。その、浮かれていたんだと思います」

天乃「………………」

「弁償すれば済むと言うことではないと言うことは解っています。でも……っ、すみませんでした!」

二度目の謝罪

昨日の今日ですぐに言いに来るあたり、

隠蔽しようと企てるつもりはない。と言う、証明のつもりなのかもしれない

もっとも、端末はちゃんと手元にあるため

謝られるのではなく、謝るべきなのかもしれない



1、端末を隠して、どうしてくれるのかと責める
2、端末で写真を撮る
3、おっと、こんなところに私の端末が!
4、端末ならあるわよ。私の精霊が持ち出したの



↓2


天乃「……………」

謝罪する女性を黙って見つめていた天乃は、

おもむろにカメラを起動し、写真を撮る

「っ!」

しっかりと、はっきりと、音が鳴った

それが端末によるものか、カメラによるものなのか

定かではなかったが、

女性は顔を上げ、目を見開いた

「あーっ!」

天乃「五月蠅い」

「す、すみませ……ではなくっ!」

天乃「なによ」

「どうして久遠様がそれをお持ちになられているんですかっ!」

天乃「それはそうでしょう。私の物だもの」

「そういうことを聞いているのではなくてですね……」


さっきまで下手に出ていた女性は

一転して天乃を指さし、端末を奪おうと手を伸ばす

けれど、そう簡単に奪えるわけもなく

「返してください! 点検がまだ済んでいないんです!」

天乃「私のなのに何で貴女に返すのよ。嫌よ。暇になる」

「私が怒られるんです!」

天乃「私は怒られないし」

「久遠様!」

天乃「病院からも怒られたいのね」

「っ……久遠様ぁ」

一度は引いた涙を溢れさせ、

女性は懇願するような瞳で天乃を見つめる

天乃「私にメンテナンスは要らないから返せって言われたとでも言えば良いじゃない」

「それで済む話ではないんです」

天乃「なぜ?」

「なんででもです……久遠様。どうかお預けください」


天乃「……………」

所有者が必要ないと言っても

どうしても点検しなければいけないと言うのは少しひっかかる部分もあるが

納得がいかないわけでもない

その整備不良でいざと言うときに端末が使えなくなったり

機能に不具合が生じて大変なことになったり

絶対にない。とは言い切れないからである

そこらへんをなくすための点検と言うのはあり難いことだとは天乃も思っていた

でも、ただの精密検査での入院に監視をつける

それがどうしようもなく、疑いを誘ってくるのだ



1、私に監視がついてる理由は?
2、解ったわ。壊さないようにして
3、嫌よ
4、じゃぁ、貴女の端末と交換。それならいいわ


↓2


天乃「嫌よ」

「なぜ……ですか?」

天乃「入院に監視つけるような相手に、個人情報の入れ物を渡せるわけないでしょう」

「そこをなんとか!」

天乃「答えは変わらないわ」

「そう……ですか……」

女性は大きく肩を落とし、俯く

怒られると言っていたが

失くしたわけではなく、所有者に取り返され

交渉ののちに断られたと言うだけの話だ

そこまで問題があるともいえないはずなのだが

「久遠様。どうしてもですか?」

天乃「何度も言わせないで」

「……三好様に実力行使でとりかえ」

天乃「昨日、夏凜とは実力行使で勝ったわよ?」

「えっ」


天乃「ちょっと散歩に出かけようとしたら、ダメダーって言うから」

「……み、三好様はこの2年間ずっと訓練を」

天乃「2年であれなら大したものなんじゃない? 天才ではなくても、秀才ではあるわね」

「く、久遠様は……」

天乃「私は小さいころからずっと。それでこう。失神する程度の実力……まぁ、私凡人だから」

軽くため息をついた天乃は、

外から聞こえる夏凜の気合の入った掛け声に、微笑む

きっと。すぐにでも抜かれてしまうだろう

いや、慢心さえしていなければ

今のままでも負けてるかもしれない

そう思った天乃は女性に振り向く

天乃「で、夏凜になに?」

「い、いえ……どうしてもとおっしゃるのであれば、素直に怒られます」

天乃「素直に怒られます。なんて……私が悪いみたいね」

「どう考えても久遠様のせいですっ!」


八つ当たりみたく怒鳴った女性は

一度大きく息をついて天乃を見つめる

「久遠様といるとため息ばかりです」

天乃「良い感じに幸せが逃げてるってことね。よかったじゃない」

「何もよくありません!」

天乃「そうかな……まぁ、そういうならそうなんでしょうね」

「……久遠様?」

しめじめとした空気の中で

女性はただならないものを感じて様子をうかがう

それに気づいた天乃はため息とともに目を逸らし、

手をパッパッと振る

天乃「もう帰って頂戴。そろそろお夕飯の時間なの」

「……失礼しました」

女性は出口の傍で一礼し

そのまま何も言い残すことなく、出ていった


√ 5月2日目の夜


コンマ判定表

01~10 夏凜

11~20 
21~30 
31~40 大赦の人

41~50 
51~60 
61~70 風

71~80 
81~90 沙織(メール)
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月2日目の夜



天乃「夜よ」

死神「ヨルヨ」

天乃「暇ね」

死神「ネル」

天乃「眠くないのよ。あんまり」

死神「トリアエズ、ヌケダス」

天乃「それも視野に入れましょう」

精霊との他愛のない会話を繰り広げ、

天乃は暗くなった外と室内を遮断するカーテンを見つめる

家にはどんな風に伝わっているのだろうか?

こういう場合、大赦のお役目という

なんとも受け入れがたいものになってしまっていそうだ。と

天乃は思い、首を振る

天乃「世間的には、大赦のお役目なんて光栄だわ。とか……言ってるんでしょうね」


死神「クオンサン、タイシャ、キライ?」

天乃「ん?」

死神「キライ?」

天乃「……そう見える?」

天乃は少し考えて、あえて問う

聞くまでもないことなのだが

死神にはどう見えているのか

少し、気になったのだ

死神「クオンサン、タノシソウ、ジャ、ナイ」

天乃「そうね」

死神「ダカラ、キライ?」

天乃「楽しくないから嫌い。と言うわけでもないわよ? そこまで単純な思考でもないし」

でもよく頑張った。と天乃が頭を撫でてあげると、

死神は嬉しそうに尻尾を振った


1、ねぇ、私の事。喜ばせてみてくれない?
2、窓を開けて、ベッドの下に隠れる
3、メール:風、樹、友奈、兄、姉、沙織、東郷
4、死神のほっぺにキス


↓2


天乃「ちょっとこっちおいで」

死神「?」

天乃「良いから良いから」

小首を傾げる死神に手招きをすると

死神はゆらりと天乃に近づく

警戒する様子はない

天乃は心の中でくすっと笑う

ペットのような精霊

男の子か、女の子か

ちょっと試してみよう

そう思った天乃は死神を両手で捕え、

その頬に、キスをした


死神「!」

天乃「……ふふっ、一応、初めての頬キスよ?」

死神「ク、クオンサンッ!」

天乃「あらら……」

死神は体を動かそうと震えるが

天乃の手から逃れられないと察したのか

骨の奥の真っ赤な瞳が動揺に揺れる

死神「コウフン、シスギチャッタネ」

天乃「してるのは貴方でしょう?」

死神「ワ、タシ。コウフンシスギチャッタ?」

天乃「ええ」

死神「……クオンサン、モウイチド」

天乃「え?」

死神「ホホ……キ、ス? モウイチド」


天乃「えっと……」

死神「クオンサン……ダメ?」

天乃「そういわれても」

やり過ぎた

そう思うには遅く、そう思うには早かった

涙をためているような瞳を向けられ、

天乃は思わず自分の頬を掻く

天乃「そんなにして欲しいの?」

死神「ウレシカッタ」

天乃「……………」

その気にさせたのは自分

最初に手を出したのも自分

だが、求められてするというのは

なんだか気恥かしかった



1、してあげる
2、か、勘違いしないで。なんとなくしただけなんだから!
3、そう何回もするものじゃないのよ
4、死神のくせに、生意気よ
5、私からしたんだし……貴方もしてくれたっていいんじゃない?


↓2


死神「クオンサ」

天乃「わ、わかった! 解ったからもう、ちょっと黙って」

死神「…………」

相手は人間ではなく精霊

しかも死神だ

とはいえ、催促されてのキス

図らずも鼓動は早くなる

悪戯好きで、ちょっとひねくれてて、自由人ではあっても

天乃もまだ中学3年生の女の子なのだから

天乃「……動かないでね?」

死神「ワカッタ」

天乃「…………」

死神の体が静止したのを感じ、

天乃は静かに深く呼吸する


天乃「じゃぁ……」

死神の白い骨

その頬に当たる部分に

そっと顔を近づけて

天乃「ん……」

唇を、触れさせた

骨なのに、精霊なのに

冷たくない

まるで、人肌のような。温かさ

それがより天乃の羞恥心を刺激し、

数秒も経たずに離れた天乃は死神を手放して、顔を覆う

その顔は、真っ赤だった

天乃「……そう。何回もするものじゃ、ないんだからね」

死神「…………」

天乃の前でクルクルと周る死神は

天乃に対して笑みを浮かべる

死神「アリガト!」

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流無()
・伊集院沙織:交流無()

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(ガンバロウ、アーン、キス、キス)


5月の2日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 9(普通)
  犬吠埼樹との絆 7(ちょっと低い)
  結城友奈との絆 13(普通)
  東郷三森との絆 4(まだまだ低い)
  三好夏凜との絆 10(普通)
伊集院沙織との絆 45(高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 19(中々良い)


このまま続行します

√ 5月3日目の朝


コンマ判定表

01~10 
11~20 大赦の人
21~30 
31~40 夏凜
41~50 
51~60 風
61~70 
71~80 沙織(メール)
81~90 
91~00 死神

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月3日目の朝



天乃「……ねぇ、今日で2日目なのだけど」

「そうですね。もう少しかかると思いますよ」

天乃「あと何年くらい?」

「流石に年はかからないと思いますよ」

天乃「月はかかる。と?」

天乃の問いに

看護師は答えられない

「そこまでも、かからないと思うけどね」

だから苦笑して答えたのだが

見つめてくる天乃の視線の厳しさに

つい、目を逸らしてしまった

天乃「じゃぁ、どれくらい?」

「久遠さん次第かしらね。病は気からって、いうでしょ?」


まさかそんな冗談を言われるとは思わなかった天乃は

しばらく黙り込んで、鼻で笑う

天乃「私の体のどこに問題があるの? 病って何? なんなのよ」

「久遠さん」

天乃「私が怪しい? 信用できない? 大赦にとって邪魔な存在?」

「それは知りませんが……」

天乃「でしょうね……ただの八つ当たりよ」

「………………」

天乃「遠回しすぎるならはっきり言うわ。部屋から出て行って。2人でいる方がまだ楽しいから」

早口気味な言葉に圧倒され

返すこともままならなかった看護師は

天乃のことを黙って見つめると

いつものように、「何かあったら呼んでくださいね」と

言い残して部屋を出ていった


死神「クオンサン、ツマラナイ?」

天乃「……窮屈なのよ」

死神「キュウクツ?」

天乃「どこに行くのも、何をするのも。全部……見られてるように思えて苛々してくるの」

ほんの少し院内を散歩しようとしただけで

あっちはダメ、こっちはダメ

挙句の果てにはチラチラと視界の端に夏凜が映っており

一体、どこまで手の込んだ悪戯をするつもりなのかと

天乃は非常に気が立っていた

死神「クオンサン、ワタシ、ツカエバヘイキ」

天乃「……逃がしてくれるの?」

死神「クオンサント、オデカケシタイ」

天乃「……欲張りさんめ」

コツンッと死神の頭を叩きながら、天乃はちょっとだけ嬉しそうに微笑んだ



1、メール:風、樹、友奈、兄、姉、沙織、東郷
2、夏凜を呼ぶ
3、死神とデかける
4、二度寝
5、貴方、私のことどう思ってるの?



↓2


1、風
2、樹
3、友奈
4、兄
5、姉
6、沙織
7、東郷



相手選択↓2



1、会いたい
2、ペットにキスを求められたらどうするべきだと思う?
3、調子はどう? 怪我もなく良好?
4、久遠天乃の命を預かった。フハハハ
5、もうしばらく会えないかもしれないけれど、大丈夫よね?




内容↓2


出来れば、電話の際は横の一覧から相手を選択してください


天乃「……どうしよう、血迷った」

死神「?」

天乃「……あの忙しなさが恋しくなるとは、やっぱり病気なのかもしれない」

死神「ビョウキ?」

天乃「……言うのもあれだからこれでも見て」

そういった天乃は端末を死神に向ける

送信BOX

宛名、伊集院沙織

本文:会いたい

流れるように見た死神は

何がダメなのかと首をかしげる

天乃「あの子に会いたいだなんて思う自分がよ」

死神「アイタクナイ?」

天乃「……会いたいと思ってしまったあげく、それを文章として送ってしまったことが問題なのよ」

死神「アイタクナイノ?」

天乃「……会いたいからメールしたんでしょ。言わせないでよ。意地悪」


死神「ナノニ、ダメ?」

天乃「……貴方、私の事苛めてるの?」

死神「?」

天乃「キ、キス……してあげたからって調子に乗らないでよ」

死神「スル?」

天乃「しないわよ!」

大声で言った天乃は、

とっさに枕を手に取り振り上げる

自業自得だとしても

頬にだったとしても

人間にではないとしても

思い出したくないくらいに恥ずかしかった

段々と紅潮していく自分に嫌気がさし、天乃が首を振ると

ベッドの上の端末が震えた


死神「タンマ」

天乃「うるさいっ」

死神に枕を投げつけ、

空いた手で端末を手に取りメールを開く

天乃「……………」

死神「クオンサン、ダイジョウブ?」

天乃「平気よ。うん」

メールは着た

返ってきたのではなく

来たのだ

そう。全く無関係な企業からのメールが

天乃「別に……期待したわけではないし」

死神「クオンサン」

天乃「……良いから。貴方、昨日の興奮抜けてないでしょ。しばらく消えてなさい」


死神が静かに消えたのを確認して

天乃は布団に潜り込む

本当、何を期待していたんだろう

さっきの業者のメールを開いたまま、ため息をつく

天乃「なんでこういう時にメールを――」

意味のない文句を言おうとして

端末の画面が受信中のものへと変わって

それが、沙織からのものだと解って

天乃はプレゼントをもらってすぐ包みを破く子供のように

メールを開いた

久遠さん、大事な大赦からのお役目の最中なんだよね?終わったら、またイネスにでも行こう

だから、不満を漏らさず頑張ってーファイトー

メールはそれだけの短いものだった

でも、よくよく考えれば授業中

メールを打ってくれただけありがたいものだった

天乃「……大赦からのお役目なのね。やっぱり」

沙織からのメールに目を通し

天乃は少し口元をほころばせて、目を瞑る

天乃「すぐ終わるわよ……きっと」


天乃からしてみれば

自分の体には一切の異常はない

病気云々と言うことであれば即日退院も可能なはず

だけど、出来ない

園子に出会ってしまったからか

それとも、神樹への信仰心がマイナスだからか

もしくは

大赦を味方と信じるのであれば

封印なしにバーテックスを倒せる自分の力を

解析して誰でも扱えるようにしたいか。だろう。と

天乃は思い至る

あれだけ端末を求めたのも、

メンテナンス含め、能力の解析がしたかったのだとすれば合点がいく

天乃「所持者が拒否してもどうしても回収したい理由はそれかな……」

もっとも

大赦と言う組織が天乃のことを危険視しており、

目と手の届くところに置いておきたいために、

勇者の力を奪える端末回収をしようとしたと言うことも考えられなくはない


天乃「……とにかく、下手なことはしない方が良いでしょうね」

警戒されていなくても

余計なことをしたせいで警戒される可能性はあるし

警戒されているのなら

絶対に面倒なことになってしまう

天乃「大人しく……そうね」

簡単な話だと天乃は思った

とにかく寝ればいい

ずっと、ずっと

暇な時間は常に寝る

寝て過ごす

寝れなくなったら夏凜か死神とじゃれて

また寝ればいい。と

だが

天乃「それが出来たら苦労しないのよね」

退院までは……まだ、かかるのだろうか


ここまでにさせて頂きます

元からですが、親しむにつれて
死神はよりクオンサンが可愛らしい反応あるいは嬉しそうな反応をすることをしたがります
実に生意気ですね



端末に関してですが、詳しくは言えませんが
必ず渡さなければいけないと言う強制はありません
YP振りの場は別に用意していますが
投下開始前、開始後にさらっとでもいいかなとは思っています


では今日も再開していこうと思います


√ 5月3日目の昼


コンマ判定表

01~10 大赦の人
11~20 
21~30 夏凜

31~40 
41~50 
51~60 沙織(電話)

61~70 
71~80 死神

81~90 
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月3日目の昼

天乃「頂きます」

なんだかんだ言っても

天乃にとって一人での昼食は初めてだった

サボっていた時期は母親か兄がいたし

学校に通い始めてからは一度は友奈・東郷ペアとだったが

それ以外は沙織と一緒だったからである

とはいえ

死神「……………」

独り。と言うわけではない

じーっと見つめてくる視線に目を向けた天乃は

心なしか明るく微笑む

天乃「なによ」

死神「タベナイノ?」

天乃「貴方が食べたいんでしょうに」


食べないなら欲しい

おそらくそういうつもりだった死神は

先をつぶされて狼狽える

キョロキョロと泳ぐ瞳が何とも言えない

愛嬌を振り撒く

天乃「まぁ、良いわよ。今は気分が良いから一口分けてあげる」

死神「アリガト!」

天乃「どういたしまして」

一口分を差出し、

死神がイリュージョンで食べたのを確認してから

天乃は次を自分の口に運ぶ

天乃「……お昼。どうしようかしら」


1、死神の大冒険
2、メール:風、樹、友奈、東郷、兄、沙織、姉
3、電話:風、樹、友奈、東郷、兄、沙織、姉
4、ねぇ、貴方は神樹から生み出された精霊なの?
5、貴方は私の事、好き?
6、夏凜を呼ぶ


↓2


天乃「……今よ! 窓から逃げられる!」

隣の壁に向かい、天乃が大声で叫ぶ

その瞬間、隣の部屋からは慌ただしい音が響き

足音が飛び出して部屋のドアが開く

夏凜「まてぇっ!」

血相を変えて入ってきたのは夏凜だった

窓を睨んでいた瞳はその正面

天乃のことを確認

眉がどんどんしわを寄せ、

勢いよく、ドアが閉められ夏凜が近づく

夏凜「なんでいるのよ!」

天乃「居なくていいの?」

夏凜「いや、居ないと不味いけど……逃げるって」

天乃「こうじゃないと夏凜が来てくれないと思ったのよ。悪く思わないで」

夏凜「悪い以外で考えられるとでも……思 っ て る の か し ら ? 」


天乃「じゃぁ、どうすれば来てくれたのよ」

夏凜「極力呼ばないで。あたしだって暇じゃないの」

天乃「私の暇と合わせて2で割りましょう」

夏凜「出来るかッ!」

バンっと備え付けの小さなテーブルを叩いた夏凜は

ため息をつきながらも来客用のいすを引っ張り出す

夏凜「……要件なら手短に頼むわ」

天乃「帰りたい」

夏凜「却下」

天乃「……………」

瞬間的に却下した夏凜

ちょっとだけ罪悪感がわき、ちらっと見ると

天乃はしょんぼりとしていた

夏凜「だ、第一、あたしの一存で決められることでも……」

天乃「ふふっ、貴女ってそこまで意地悪でもないのね」

夏凜「……担当替え申請したくなってきた」


暇と足してと言った

そこを考えれば、天乃が暇だから呼んだのだと解るのだが

天乃のからかう姿勢と対峙しながら考えろと言うのは

少々酷なのかもしれない

天乃「……まぁ、暇なのよ」

夏凜「だから付き合えって?」

天乃「端的に言えば、そうね」

いつまでも進まない

だからと直接告げ、暇を持て余す少女は瞳を向ける

夏凜「…………」

何かを求めているようで

何かを諦めているようで

何かを手に入れようとしているような瞳

夏凜は思わず、喉を鳴らした


1、貴女の忙しいことって何? 出来ることなら手伝ってあげるわよ?
2、ねぇ、屋上くらい。行っても良いわよね?
3、昨日の夜は楽しかったの……もう一度くらいどう?
4、ねぇ、こっそり出かけましょう?



↓2


天乃「ねぇ、屋上くらい。行っても良いわよね?」

夏凜「あたしも一緒なら……そのくらいは」

天乃「屋上でもあなたが必要なの?」

夏凜「勇者なんだから。屋上から屋上に飛び移るとか余裕でしょ」

天乃「………そうね」

物憂げにそう答えた天乃を見て

夏凜は自分の頭を掻いてため息をつく

天乃の傍ではため息が移る

というのは噂ではないようだ

夏凜「少し付き合うくらいの余裕はあるわよ」

天乃「良いの?」

夏凜「問答してる時間だけ、早く戻ることになるんだけど?」

天乃「解った」

さっと動く夏凜を追って

天乃も一緒に屋上へと向かった


眩い日差しが空から降り、

昼時の空はとても明るかった

なのに

いや、だからこそ。なのかもしれない

夏凜の表情には暗く影が差していた

夏凜「ここも結局、何もないわよ?」

天乃「病室よりは、動きがあるわ」

夏凜「……あんた、結構参ってるのね」

天乃「そんなことはないわよ」

夏凜「あんたが自由奔放な人間だってことくらい、聞いてんのよこっちは」

表情の見えない夏凜の言葉

そっと見上げる天乃に、夏凜は続ける

夏凜「だからって脱走しようとしたり、ああいう呼び方されても困るのよ」

天乃「そうね」

夏凜「……普通に暇だから付き合えって、言いなさいよ」


見上げる天乃は沈黙を保ち

夏凜もまた、黙り込んで

どこかの車のクラクションが、響く

そして、見上げるだけだった少女が、言う

天乃「付き合ってくれるの?」

謀のない問い

彼女は自由奔放な人間で、悪戯好きで

扱いにくい人間だと言うのは事実

だけれども、相手に得のないことをいつまでも続けるような人でもない

夏凜「……………」

夏凜はそこまでの情報は、得ていない

得ていても、大赦まで、夏凜まで

それは伝わってはいない

でも

夏凜「付き合ってあげるわよ。少しくらいなら」

夏凜は答えた


天乃「夏凜……」

夏凜「た、大赦から刺激はするなとは……言われてるわけで」

天乃「うん?」

夏凜「だからその……つまり」

気持ちは素直

頭の中も素直

なのに、それを言葉にすることが苦手で

だから、言い放つ

夏凜「あ、あんたに付き合ってあげるのがお役目ってことよ!」

天乃「………………」

夏凜「私情よりお役目優先するだけだから、勘違いしないでよね!」

言い終えて顔をそむける夏凜

優しい空気を壊さないためか

周りの喧騒は、いつの間にか止んでいた



1、そういうことに、しておいてあげるわね
2、あら。今ので傷ついちゃったかも……反乱を起こそうかな
3、ふふっ、ありがとね
4、ありがと、夏凜     といいながら抱き付く
5、あ、それなら付き合って貰わなくても良いわ


↓2


天乃「あら。今ので傷ついちゃったかも……反乱を起こそうかな」

夏凜「勝手にしたら?」

天乃「え?」

夏凜「昨日今日であんたの扱いは心得た。もう騙されないわ」

どうよどうよと言いたげな表情の夏凜を

天乃はじっと見つめる

何も言わず

瞬きもせず

ただただ、夏凜の瞳を見つめる

瞳が乾くのを止めようと水分を湧き出させ、涙が零れる

夏凜「あーッ! もうッ! 子供かッ!」

そして我慢しきれず夏凜が吼えた

天乃「……付き合ってくれるって、言ったのに」

夏凜「意味が違うって言ってんのよ!」

天乃「喉痛めちゃうわよ?」

夏凜「あんたが言うな!」


夏凜「人の好意を、あんたはっ、なんだと思って……」

天乃「好意?」

夏凜「っ……言葉の綾よ」

咳払い一つ

心と呼吸を整えて

夏凜は天乃を見つめた

夏凜「昨日は否定したけど、軟禁って言うのは認める。あたしもそうだとは思った」

天乃「……でしょうね」

夏凜「あんた一体。なにしたのよ」

天乃「知らずに監視してるの?」

夏凜「知らないわよ。でも不審な動きをしたら実力……というか武力行使可」

夏凜は少し嫌そうに言うと

そのまま続ける

夏凜「その時点であんた、相当な大罪を犯してるとしか思えない」


天乃「…………………」

夏凜「心当たりは?」

天乃「……ないわよ」

大赦関連で相当な大罪

思い当たる点は一つしかない

答えを得て、天乃は微笑を浮かべて首を振る

天乃「まぁ、自由人だから勇者の力で悪いことするかもーってやつなんじゃない?」

夏凜「悪いこと?」

天乃「たとえば、大赦をつぶすとか、あの壁に穴をあけるとか」

夏凜「いくらあんたでもそこまではしないでしょ」

天乃「……………」

交流の少ない夏凜の信頼

それを受け、思わず戸惑った天乃は目を逸らす

天乃「そうね」

夏凜「ちょっと待って今の間は怖い」

天乃「昨日と今日の教訓を思い出しなさい」

夏凜「原因が言うか!?」

天乃にとっては楽しい昼

夏凜にとっては疲れる昼になった

√ 5月3日目の昼


コンマ判定表

01~10 
11~20 大赦の人

21~30 
31~40 
41~50 風

51~60 
61~70 友奈
71~80 
81~90 夏凜
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月3日目の夕方


昨日よりも少し遅い夕方の到着

ようやくかと息をつく天乃は

ベッドに横になっている

病室には天乃一人

死神もいるにはいるが、今はいない

天乃「……夕方ね」

天乃にとっては暇な一日の夕方の訪れだが

学生にとっては待ちに待った放課後

だが、天乃の元に来られるのは勇者部くらいしかいない


1、電話:風、友奈、東郷、樹、沙織、兄、姉
2、メール:風、友奈、東郷、樹、沙織、兄、姉
3、二度寝
4、夏凜を呼ぶ
5、死神を呼ぶ


↓2


天乃「……ど、どうせあんなメール送っちゃったんだし」

電話をしても別に問題はないはず。と

電話帳から沙織を選択

躊躇うことなく通話ボタンをタップする

天乃「………」

長い呼び出し音

一回プツッっと繋がったような音がしたものの

そのまま呼び出し音は流れて、彼女は出た

沙織『もしもし?』

天乃「……遅い」

沙織『ごめんね。長くても出られるように留守電を切っちゃってて』

天乃「相手が待ってくれなかったら切られるわよ? それ」

沙織『あたしが時間かけても出たいのは、久遠さんの電話だけだし』

天乃「……そう」


眼の前にも、周りにも

誰も居ない病室の中で天乃は照れくさそうに前髪を弄る

時間をかけてでも出たい

それは、かけてくる相手が待ってくれると信じてるからこその言葉

そして、天乃は実際に待ってしまっていた

出てくれたことに、少し。喜びさえもした

それが恥ずかしくて、俯く

天乃「次は、待たないから」

沙織『じゃぁ、次は待たせないよ』

天乃「本当ね?」

沙織『むしろかけちゃう』

天乃「割とお手隙だから、いつでも歓迎するわよ?」

少女の声は監視している少女をからかっている時よりも嬉しそうで、楽しそうで

それを感じ取る相手の声も、合わせて高まる

沙織『じゃぁ、あたしからの電話に怯えてお手洗いにも行けなくしちゃおうかな』

天乃「留守番電話と言う便利なサービスがあるのよね」

沙織『あはは、冗談だよ』

天乃「私も冗談よ」


電話越しでありながら

まるで隣にいるかのように

そこに彼女の手が置かれているかのように

布団を握る

感じるぬくもりが一人分の物だと解っている

でも、一人分しか感じられないことが

ほんの少し、寂しかった

天乃「……ねぇ」

沙織『うん』

天乃「貴女は平気? 一人でも。というか、私が学校に行ってなくても」

沙織『必ず帰ってくるって言う前提での空席は平気だよ』

沙織はごく普通に、答える

けれどすぐに「でもね」と、少しばかり声のトーンを落とす

沙織『大丈夫かなー大丈夫かなーって、不安はあるんだよね……久遠さん。優しすぎるから無茶しそうで』


天乃「たとえば?」

沙織『お役目で無茶して怪我して入院中。だから暇だけど電話とメールしかできないんじゃないのかなーとか』

勘ぐってみたり

と、沙織は冗談っぽく笑いながら言う

天乃「……………」

事実だった

多少の違いはあれ

行き着いた結論は真実と結びついてる

沙織『久遠さん?』

天乃「……貴女、私のことお人よしか何かだと」

沙織『見捨てると言っても見捨てられない程度には、そうだと思ってる』

天乃「…………………」

沙織のはっきりとした物言いに

天乃はすぐに答えることは出来なかった


1、それは貴女限定よ
2、……もしも、私が入院していたらどうする?
3、馬鹿ね。一応、貴女の前にいようと努力してるのよ? 抜かれたくないし
4、ねぇ、大赦と私の言葉。貴女だったらどっちを信じる?



↓2


天乃は少し考えて

天乃「……それは貴女限定よ」

小さく告げる

正直な気持ち

正直な言葉

心配ばかりの親友に、言ってあげたい言葉

でも、それはあまりにも小さな声で

沙織『え、き、聞こえなかったかも! もう一度!』

天乃「二度と言ってあげないわ」

聞こえなかったのだと安堵しながら

聞こえなかったのかと落ち込んで

沙織『だ、だよね、うん……ありがとう』

彼女の嬉しそうな声が聞こえて、天乃は端末を布団の上に落した

電話の声が遠くなって

小さな小さな照れ笑いの声が漏れる

でも

天乃「~~~~~っ」

天乃には、聞こえなかった

聞こえてた

聞こえてしまっていた

真っ赤な顔を必死に振り、胸に手を当て深呼吸

天乃「っ……ばかぁっ」

その熱も、動悸も

留まる事を知らずに、より熱く、より早くなっていった


沙織『でも……久遠さん』

天乃「………?」

沙織『久遠さんはきっと、あたし以外のことも見捨てられない』

沙織の声が聞こえ

天乃は今一度端末を耳に当てる

沙織『だよね? 久遠さん』

天乃「………………」

沙織のことを見捨てることが出来ない

それが、沙織限定であるというのは、確かに嘘だ

でも、それは正しくもある

天乃の周りには勇者がいて、

天乃は見捨てて貰う側だからだ

天乃「……まぁ、そうかもしれないわね」

それでも、今もこうして生きているのは

沙織の願いと、思いを守りたかったからで

沙織限定と言うのは真実であり正直な気持ちだった

けれども沙織はそこまで理解することは出来なかったらしい

戦いを知らないのだから、当然と言えば当然なのだが


では今回はここまでにさせて頂きます


久遠さんは天然で無自覚ではありませんので
相手に対して伝えるときは凄く動揺しながらになります


誰も見捨てられない天乃ですが
見捨てられるべき側の現状、沙織限定と言うのは嘘ではないです

リハビリと称して寄り道しながらぶらり散歩旅は可能だろうか?

街を練り歩きながら大赦の経費でうどんと辛い物を食べよう、毎日だ(ゲス顔)


では今日も再開していきます

√ 5月3日目の夜


コンマ判定表

01~10 沙織(電話)
11~20 
21~30 夏凜

31~40 
41~50 
51~60 大赦の人

61~70 
71~80 夏凜
81~90 
91~00 大赦の人

↓1のコンマ   空白はなにもなし

素晴らしき回避力


√ 5月3日目の夜


天乃が暇を持て余し

今一度夏凜を呼ぼうかとも考え始めた時だった

携帯が震える

電話の長さではなく、メールの長さ

天乃「あの子かしら」

沙織からのものかと思い、メールを開く

けれど、それは沙織からのものでも

一般的な業者からの広告メールでもなく

天乃「……勝手に抜いたわね」

大赦からの通知だった

内容は以下の通り

貴方の身体については異常なしと断定できると思われます

しかし、戦闘情報には問題があり

今後、その影響が出る可能性があります

至急、端末の提出を願います

架空請求かな?(すっとぼけ)


天乃「問題ってなによ……」

そもそも

勝手にメールアドレスを取得してることの方が

問題でしょう

天乃は大きくため息をつき

返信を選択

文章を打とうとして、手放す

天乃には応える理由がない

むしろ、メールしてきたことで余計に対応したくなくなった

天乃「……………」

アドレスを抜いた

じゃぁ、次は何を抜く

家族の情報? 友人の情報?

それとも、精霊についての情報?

考えられる点はいくつもあり

けれど、精霊の事だろう。と

天乃はほとんど確定させていた


戦闘における問題点

天乃の考えられる限りでは

1、必要以上に狙われる

2、バーテックスの再生能力を阻害できる

3、封印作業なしにバーテックスが倒せる

くらいしかなく

それを調べるには精霊が一番重要な情報だからである

死神「クオンサン?」

天乃「どうしたの?」

死神「クオンサン、ドウシタノ?」

天乃「……また勝手に出てきちゃって」

どうするべきか

受けて提出した場合

死神はしばらく手元にはこれなくなるだろう

端末も、色々と弄られてしまうだろう

……断っても、問題はないはずだ



1、応じる
2、断る


↓2

2


天乃「ちょっと連絡が来てね。貴方は気にしなくて良いわ」

死神「アタシ?」

天乃「いや、貴方じゃなくて」

死神「……アノコ?」

天乃「えっと……あぁ、違うわ。あの子じゃない別のところ」

死神が何を言いたいのか気づいた天乃は

苦笑しながら死神の頭を撫でて

天乃はお断りのメールを大赦に返す

少なくとも

勝手にアドレスを抜き、メールをしてくる

そんな相手に個人情報の塊は渡せない

死神「クオンサン、タノシイ?」

天乃「楽しいも何もないわ。今のところはね」


大赦より以下のメールが届きました


推奨は出来かねますが、意思を尊重し受理します

しかし、何らかの影響または変化が起きた場合の即時対応の為

すでにあなたも存じている通り、三好夏凜を傍につけます

これに関しての拒否は認められません

ですが、彼女に何らかの問題があり

あなたが生活していくうえでの障害となる場合は

同じく大赦より派遣されている犬吠埼風との変更申請は検討します


天乃「どちらにしても監視付……か」

死神「ワタシガンバル」

天乃「見えなくなるって便利よね」

張り切る死神に微笑みながら

天乃はため息をつく

生活していくうえでの障害

それはどこから障害としていいのだろう?

天乃はすでに知られている通り

自由奔放な人間である

ゆえに監視がつくと言うのはそれだけで障害だと言える

けれど、それの拒否は受理されない

天乃「風か夏凜……あの子が大赦の人だったら……いや、ないかな」



1、電話:風、友奈、樹、東郷、沙織、兄、姉
2、メール:風、友奈、樹、東郷、沙織、兄、姉
3、夏凜ちゃんの部屋に遊びに行く
4、死神に話しかける/何かする
5、寝る


↓2


天乃「死神、いったん戻ってくれる?」

死神「クオンサンガ、シタイナラ」

天乃「何をよ」

ぱっと消えた死神を確認し、

天乃はそっとドアを開けた


ピピピピピピッ


天乃「?」

隣の部屋

つまり夏凜の部屋から音が聞こえ

足音が駆けて夏凜が飛び出す

夏凜「残念だったわね天乃! あんたが今日も夜に抜け出すことは想定済みよ!」

天乃「………………」

夏凜「たとえカメラに映らないで出口に行く力があっても、出る段階で警報が鳴れば無意味!」

天乃「………………」

夏凜「……何とか言いなさいよ」

天乃「えっと……うん。お疲れ様」


監視対象の沈んだ声

哀愁漂う姿に、夏凜は逃げ出そうとした際に言おうと用意していた言葉を

すべて零し、頭の中が真っ白になっていた

この装置は夏凜が用意したわけではない

だが、夏凜が抜け出したことを大赦に報告したことで

この装置の設置が早急に行われた

しかも、天乃を夏凜が連れ出している間に。だ

もちろん、夏凜に対してそれは事後報告だったため

夏凜に非はないだろう

夏凜「……逃げ出そうと、したのよね?」

天乃「そう見える?」

夏凜「外出は極力禁じられてるのに、出ようとしたわけだし」

天乃「……私の隣の部屋に行こうと思っただけなのに」

夏凜「っ……」

天乃「解雇申請してやるんだからっ!」

夏凜「あたしが悪かったからそれは止めて!」


天乃「部屋すら自由に出れないなんて監禁だわ」

夏凜「あんたが抜け出したのが原因なんだけど?」

天乃「大赦が私を退院させる気なさそうなのが原因なんだけど?」

夏凜「……あんたが危険人物なのが原因、なんだけど?」

天乃「どこかの何かが私を勇者にしたのが原因なんだけど?」

夏凜「ゆ、勇者適正があったのが原因なんだけど?」

天乃「……………」

夏凜「……………」

夏凜をじっと見つめる

無言で、じーっと、静かに

自分の言葉が理不尽だと解っていた夏凜は

ばつが悪そうに目を背けると

夏凜「ごめん、さすがに理不尽だわ。それは」

と、呟く

天乃「解ればいいのよ」

夏凜「なんで喜んでいるのか解るけど解りたくない」


夏凜「まぁいいわ。来たかったんなら来て良いわ」

天乃「良いの?」

夏凜「ダメって言ったら乗り込んでくるくせに何を言ってんだか」

諦めた表情の夏凜に続き

彼女の部屋へと行くと

天乃の部屋にもある机には

讃州中学への転入手続き書類や

試験用の参考書が広がっていた

夏凜「ここの勇者部も勇者だからあたしも合流しないといけないのよ」

天乃「勇者部に?」

夏凜「本当はあたし一人でも十分……に、なる予定なんだけど」

天乃「予定?」

夏凜「端末のアップデート中。たぶん、あんたの端末と同期しようとしたんじゃないの?」


天乃「私のと同期する意味は?」

夏凜「あんたの精霊の力を流用しようとしたんじゃない?」

天乃「……なるほど」

たしかに

再生阻害の能力が使える勇者が増えれば

それだけ戦闘も楽になるし

倒すこともできるようになるだろう

だけど、果たしてそれが引き継げるのかどうか

とはいえ

端末を渡すのは断ったために

真意も解らなければ同期も出来ないのだが

夏凜「……で」

天乃「?」

夏凜「いや、首かしげるの可笑しいでしょ。何の用があってあたしのところに来ようとしたのよ」



1、一緒に寝ようと思って
2、寂しかった……じゃ、だめ?
3、暇つぶしよ
4、貴女が何をしているのか気になって
5、ふふっ……用事なんて後付しようと思ってたから考えてないわ


↓2


天乃「ふふっ……用事なんて後付しようと思ってたから考えてないわ」

夏凜「帰れ。今すぐに」

天乃「解ったわ。家に帰る」

夏凜「病室に決まってんでしょーが!」

天乃「病室は病気や怪我をしているから必要なの。私には、必要ないわ」

夏凜「テント用意するから屋上で寝てもいいんだけど?」

天乃「寝相が悪くて飛び降りたあげく、徒歩で久遠家に向かう可能性もあるけどそれでいいなら」

夏凜「それ夢遊病」

天乃「どっちもどっちね」

夏凜「寝相でフェンス飛び越えられてたまるか!」

早くも疲れ切った表情の夏凜に対し

幸せそうな笑みを浮かべる天乃は周囲を見渡し、

テーブルの隅の小袋を手に取った

天乃「怒りすぎね。はい、にぼシウム」

夏凜「カルシウムかにぼしか区別しなさいよ!」

天乃「新しい原子の可能性」

夏凜「あるか!」

漫才だ(確信)


夏凜「あんたといると疲れる……」

天乃「ストレス発散できているようで何より」

夏凜「あたしの何を見た。何を聞いた! どう考えてもストレス漏れてるでしょうが」

天乃「漏れるほどため込んでいるのね……私頑張るわ」

夏凜「お願いだから黙って」

大きなため息をついた夏凜は

流れるように天乃の手にある煮干しを咥え、粉々に噛み潰す

馴染んだ食感

乾燥したものにも関わらず

沁み渡るほのかな甘み

夏凜は自身の体にそれらが広がっていくのを感じ

思わず笑みを浮かべる

天乃「………はい、ミヨちゃん。追加の煮干しよー」

夏凜「………………っ!」

次に差し出された煮干しを咥えようとして、留まり

夏凜は天乃を睨む

夏凜「あんたの能力は洗脳のようね」

天乃「ダメよ夏凜、そっちは私のテリトリーよ」


夏凜「ったく、返せ!」

天乃「あらっ」

煮干しの袋を奪われた天乃は

少しぼーっとしていたが

自分の手に残った一つを口に入れた

天乃「疲れてるなら早めに寝た方が良いわ」

夏凜「真面目な顔してるけど、原因あんただから」

天乃「そんなだと、学校で苦労するわよ?」

夏凜「はいはい。どーせ冗談でしょ」

天乃「……そう思うのなら、それでいいけど」

夏凜「?」

天乃「私、忠告はしたからね?」

天乃は重々しい雰囲気を纏い

あたかもこれから悲劇が起こるであろう表情で呟き、身を翻す

天乃「強く生きるのよ?」

夏凜「不安になるから止めてッ!」


夏凜「……ねぇ、天乃」

天乃「ん?」

さっきまでの明るい空気を一新し

夏凜はそっと、天乃へと目を向ける

人工の明かりによってできた影が彼女たちを繋ぎ

視線が交錯する

夏凜「一応、これからはパートナーとして活動していくわけでしょ?」

天乃「そうね」

夏凜「……………」

大赦によって指示されたこと

自分の意思はそこにはない

ただ、命令だからと従っているだけ

出来るなら、可能なら

こんな疲れる相手とは、組みたくない

そんな思いを胸に

けれど飲み込んで、首を振る

夏凜「足だけは、引っ張らないでよね」

天乃「……私より弱いのに」

夏凜「た、対人戦とバーテックス戦は違うのよ! あれはあれ、これはこれ!」


夏凜にとって、疲れるだけの一日だった

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流無()
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(屋上、冗談、訪問、悪戯)
・伊集院沙織:交流有(会いたい、連絡、貴女だけを)

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流無()


5月の3日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 9(普通)
  犬吠埼樹との絆 7(ちょっと低い)
  結城友奈との絆 13(普通)
  東郷三森との絆 4(まだまだ低い)
  三好夏凜との絆 13(普通)
伊集院沙織との絆 49(高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 19(中々良い)


今回はキリも良いのでここまでとさせていただきます

そろそろ久遠さん退院の日です
明日は所用で投下できないかもしれませんが

出来ればYPを使ったステータス補助だけでもやりたいと思います


夏凜との特訓ですが、コンマ次第での能力上昇も考えてはいます


日付変更までには来ようと思ったのですが、無理でした
多数決制にしたいので、3~5人ほどいましたらやります

居なければ精神・特殊技能は設定後回しで話を少し進めます

多数決とは重要な事柄決めるんだろか


>>608
特殊技能と精神コマンドをYP消費で習得するだけです
ただ、単体だとどうでも良いのを……ということもないとは言い切れないので、念のための措置です


では、まずは精神コマンドを先にするか、特殊技能を選択するか


1、精神コマンド
2、特殊技能


↓1~3


現在は450あるのでその分選択していただくことは可能です
しかし、選択されたものすべて習得ではなく

安価範囲内で過半数が選択したスキルのみを習得する。と言う形にします

これは精神コマンド・特殊技能 共通です


1、集中力(SP消費80%)          100
2、命中力(L1で命中+10 L2で+20)   Lx20
3、回避力(L1で回避+10 L2で+20)   Lx20
4、精神力(L1ごとにSP+5)         Lx30
5、クリティカル(CRI+20%)          50
6、援護攻撃(隣接するキャラに援護攻撃) Lx40
7、援護防御(隣接するキャラに援護防御) Lx40
8、カウンター(Lにつき5%で反撃) Lx20
9、インファイト(L1で格闘+15)   Lx25
10、ガンファイト(L1で射撃+15)  Lx25
11、ATKコンボ(隣接する敵にも攻撃) 150
12、撃ち落とし(Lにつき5%で攻撃弾く) Lx30
13、切り払い(Lにつき5%で攻撃弾く) Lx30
14、気力+(命中回避被弾で気力+2) 80
19、迅速(機動+1)              Lx50
20、体力(HP+80)              Lx40


↓1~5


複数選択可ですが、19のみでよろしいですか?

これは聞き方が悪い気がする
一人一票、一番多いのが確定で次に再募集の形式と思った


>>628
それだと時期餡とレスがかなり消費+これ以上要らないのに選択しなければならない
みたいなことになるので

>現在は450あるのでその分選択していただくことは可能です
>安価範囲内で過半数が選択したスキルのみを習得する。と言う形にします

=YP450消費分だけ選択可能ですが、それ全てでなく範囲内で過半数が選択したスキルのみ習得する

とさせていただいたのですが、解りにくかったみたいですね
失礼しました

では改めてもう一度やり直します。>>619-627は忘れてください


安価の仕様↓

現在所持しているYP450分だけ複数選択可能ですが
範囲内のレスが選択したスキルをすべて習得するのではなく
範囲内で選択されたものを集計し、過半数以上が選択したもののみを習得します

精神コマンドの方も控えていますので、ここで使いすぎると精神コマンドは習得できなくなる場合があります
予めご了承ください

3とかはL2とか選べるの?


例:

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

19  20

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

19

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

18 19 20

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

20

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O




この場合、19が3回  20が3回選択され、18と1は1回の為、

19と20を習得し、18と1は習得しません

19、20


>>632

例:

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

1  2  19 19

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

19 20  20

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

1919  2020

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

3 3 19 20

631 名前: ◆QhFDI08WfRWv 投稿日:2015/01/21(水) 00:54:20.86 ID:YiRcnmB1O

3 19 19 20

この場合

19(L1)が4回 19(L2)が3回 
20(L1)が4回 20(L2)が2回
 3(L1)が2回  3(L2)が1回
 1(L1)が1回  2(L1)が1回

このため、 19(L1)、19(L2)、20(L1)のみを習得する。と言う形になります

レベル仕様のものの選択に関してはこのような形になります

他になければ始めたいと思います


>>634-638
すみません、現在説明補足中です


12分になり次第、安価を出します


1、集中力(SP消費80%)          100
2、命中力(L1で命中+10 L2で+20)   Lx20
3、回避力(L1で回避+10 L2で+20)   Lx20
4、精神力(L1ごとにSP+5)         Lx30
5、クリティカル(CRI+20%)          50
6、援護攻撃(隣接するキャラに援護攻撃) Lx40
7、援護防御(隣接するキャラに援護防御) Lx40
8、カウンター(Lにつき5%で反撃) Lx20

9、インファイト(L1で格闘+15)   Lx25
10、ガンファイト(L1で射撃+15)  Lx25
11、ATKコンボ(隣接する敵にも攻撃) 150

12、撃ち落とし(Lにつき5%で攻撃弾く) Lx30
13、切り払い(Lにつき5%で攻撃弾く) Lx30
14、気力+(命中回避被弾で気力+2) 80
19、迅速(機動+1)              Lx50
20、体力(HP+80)              Lx40


↓1~5

3 3 11 12 12 13 13 19 19 20
1,5
19
1919 2020
3 19 2020

この場合、 19 と20のL1のみ

消費は90です


YPのこり 360です


精神コマンドもこれと同じ仕様です


1、友情(味方のHP全回復)              150
2、  絆(全員のHP50%回復)             200
3、信念(特殊効果を無効化)               50
4、熱血(ダメージ2倍)                  100
5、魂(ダメージ2.5倍)                   200
6、闘志(ダメージ1.5倍)                  50
7、分析(相手のステータス把握+命中・回避-10%) 80
8、集中(命中・回避+15%)               50
9、必中(絶対命中)                    100
10、閃き(絶対回避 )                   100
11、直感(必中・ひらめきがかかる)           150
12、不屈(ダメージを10に)                  80
13、予測(相手の命中・回避を半減)            100
14、覚醒(二回行動)                     200
15、気合(気力+10)                     60
16、気迫(気力+30)                     100
17、愛情(気力150 HP全快)                  150
18、勇気(熱血、必中、不屈、加速、直撃、気合がかかる) 200


↓1~5

精神はいらない


一応、10のみ取得ですが
念のため

精神取得は別に選択したくなかった。と言う人いますか?
>>652さんはすでにカウント済みです

閃きなら音とかステータス異常っぽい攻撃も防げるかなと思った
今更だけど消費SPも書いてた方が親切あったかも


とりあえず、閃きは習得します


特殊技能もそうですが
習得可能限界に達し、さらに新しい物を習得したいとなった場合は
レベルアップで覚える物には上書きできませんが
YPで習得したものには上書きできるようになっています

その際、上書きされ、消滅する精神・技能を習得する際に使用したYPは返還します


>>661
そうですね、次回からは戦闘時安価のように
画像表を張り付けてそこから。というスタイルの方がよさそうです
じゃないと、効果の文字数がバラバラなので、消費SP 必要YPがめちゃくちゃになりかねないので

安価は下じゃなくて時間指定の方がいいかも
過半数必要だし多少の意思疎通はしたい


http://i.imgur.com/pxCJzB5.png

こちらが一応、変更後になります
時間も時間なので投下はしませんが
明日(1/21)はBD2巻が配達未定状態なので
朝から昼にかけて投下を軽く行うかもしれません


>>666
了解しました
次回以降はそうします


では今日は話の方を軽く進めたいと思います


√ 5月4日目の朝


コンマ判定表

01~10 大赦の人
11~20 
21~30 友奈
31~40 
41~50 夏凜
51~60 
61~70 東郷
71~80 
81~90 風
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月4日目の朝


東郷「調子の方は如何ですか?」

天乃「貴女が来るなんて珍しいこともあるじゃない。友奈にでも誘われた?」

東郷「いえ、今日は私一人です」

天乃「……………」

東郷「納得がいかない。と言った表情ですね」

天乃「それはまぁ……ね」

天乃が納得いかず、煮え切らないのも仕方がないことだった

なにせ、東郷と天乃の関係はお世辞にも良いとは言えないからである

最悪ではないが、普通でもなく

悪いかと言えば、悪くもない

微妙……たとえるなら友達の友達程度の関係でしかないのだ

東郷「先輩が全てを引き受けてくれなかったら苦戦していたかもしれません」

天乃「……そうかしら」

東郷「はい。今回のバーテックスの御霊は学習をしていたと言っても過言ではありませんから」


唐突に切り出した東郷は

少し、落ち込んだような表情で首を振る

東郷「にも関わらず、お見舞いにもこれず……申し訳ありません」

天乃「気にしなくていいわよ。貴女達、学生なんだから」

東郷「ですが、放課後に立ち寄るくらいの時間は作れたかもしれません」

天乃「入った依頼を片付けてただけでしょう?」

東郷「……はい」

それでも、お見舞いに来る時間は作るべきだった

東郷はそう思い

天乃はその思いを察して顔を顰める

たしかにお見舞いに来てくれないせいで暇だったが

その分は夏凜がしっかりと補ってくれているため

別に学業優先でも全く問題はなかったのである



1、じゃぁこうしましょう。お見舞いは許してあげるから、リハビリと称して学校サボりなさい
2、ねぇ東郷。私と入れ替わってみる気はない?
3、そこまで気にされる方が、私的には嫌なのだけど?
4、ところで、お詫びのぼた餅はないのかしら?


↓2


天乃「……ところで、お詫びのぼた餅はないのかしら?」

東郷「はい?」

天乃「こういう場合、そう。こういう場合、必ずお詫びの品があるべきだと思うのよ」

東郷「それなら……一応は」

まさか求められるなんて

そう戸惑いながら、東郷はきれいに包んでいた布を外し

重箱の一段目のようなものの蓋を外す

天乃「味気ない病院食に飽き飽きしてたところなのよ」

東郷「そうなんですか?」

天乃「貴女もその状態なら、病院食は経験したことあるんじゃない?」

東郷「……その時は色々あって意識したりしてなくて」

天乃「そう。まぁ、ともかく……飽きてたところだから。頂くわ」

東郷「はい、どうぞ」


東郷の差し出したぼた餅を箸で掴み

一口齧って病院食の乗っていた器で休める

じんわりと広がる甘さ、程よい弾力

むにゅっと潰れていく餅米の食感は食べておいしく、噛んで楽しい

それを楽しみながら、天乃はふと思い出したように

東郷へと目を向けた

天乃「……思ったのだけど」

東郷「?」

天乃「……貴女、親戚に似てる人とかいた?」

東郷「似てる人?」

天乃「そう。瓜二つ。まるでドッペルゲンガーな同い年」

東郷「……………いない。と、思いますが。それがなにか?」

天乃「ちょっと気になっただけ」

東郷の開けた不自然な間を気にしつつ

天乃はそこをつくことなく、食べ進める

居たとしても死んだ人間の話

掘り返されたくもないだろうと思ったからだ


自分に似ている親戚

記憶にはない

だが、記憶もない

ぽっかりと抜けた一部分、もしかしたら

その部分での出来事のきっかけになるかもしれない

そう思いながら、留まる

もしもそうなら、天乃が自分を見た時に

その誰かの名前を呼ぶ、あるいは自分に聞いてきていてもおかしくないはずだからだ

天乃「なに?」

東郷「ぁ、いえ……美味しいですか?」

天乃「食べるのを止めない程度にはね」

そう答える天乃を見て

東郷はほっと胸をなでおろす

いつの間にか先輩をじっと見ちゃっていたみたいね

……もし、私の記憶がなくて。頼りはこのリボンのみだと話したら

先輩は、私の失われた記憶への懸け橋になってくれるのかしら?


彼女への信頼は薄く

自分の抱えている問題あるいは悩み

それを相談する気にはどうにもなれず

東郷は、結局それを口にすることはなかった

東郷「早く退院できると良いですね」

天乃「……そうね。それでこのままバーテックスの襲撃も無くなってくれると良いんだけど」

東郷「それには全面的に同意します」

決して良くない間柄の2人

けれど、敵対の意思も、理由もない2人の空気は

依然とは比べ物にならないほど穏やかだった

東郷「……久遠先輩」

天乃「なに?」

東郷「次もまた、今回のようなことが起こる可能性もないとは言えません」

天乃「ええ」

東郷「気を付けてください。バーテックスから狙われる理由が、先輩にはあるみたいですから」




1、じゃぁ、守ってね。みもりん
2、じゃぁ、守ってね。東郷
3、大丈夫よ。一応、勇者部もいるんだから
4、大丈夫よ。私には煮干しの国からやってきた精霊がついてるから


↓2


天乃「大丈夫よ。私には煮干しの国からやってきた精霊がついてるから」

東郷「……………」

天乃「大丈夫よ。私には煮干しの国からやってきた精」

東郷「聞き返していません」

天乃「そう……」

聞き間違えなのかもしれない

もう一度聞きなおそう

そう思った気持ちがどこかへと飛んでいく

静まり返った病室で

東郷はそういえば自分にも精霊がいて

他よりも2体も多かったことを思い出す

東郷「先輩の精霊は2体になったんですね」

天乃「……まぁね」

東郷「もしかしたら生存率を上げるために、神樹様が新しく精霊を派遣してくださったのかもしれませんね」

天乃「……かもしれないわね」

神樹様を祀る大赦からの派遣で精霊……ではなく夏凜は来ているため

あながち間違いではなかった


天乃「見たければ呼ぶけど……」

東郷「……………」

煮干しの精霊とはいったい……

いや、煮干しではなく二星

きっとそう、それに違いない

東郷の頭の中では、小魚に手足の生えた怪物が流星群に吹き飛ばされ

二つの星がくっついた形の精霊がくるくると浮かぶ

東郷「きっと、その子は綺麗ですね」

天乃「……え、ええ。まぁ」

精霊と言うのは嘘でただの冗談だった

とも言えそうもなく

困り顔の天乃は軽く頬を掻き、思い出したように声を上げる

天乃「東郷、貴女学校でしょう」

東郷「ぁ……はい。そうでした。ぼた餅はまだありますから、ゆっくり食べてくださいね。失礼しました」

にこやかな笑みとともに、東郷が去っていく

天乃「……夏凜みたいな反応は、求めすぎだったかな」

そう呟き、天乃は次のぼた餅へと箸を伸ばした


時間も時間ですのでここまでとさせていただきます
明日は今までと同じ時間から開始できるかと思います

ただ、2月以降はペースが落ちるかもしれません


では、今日もやっていきたいと思います


√ 5月4日目の昼


コンマ判定表

01~10 大赦の人
11~20 
21~30 沙織(電話)
31~40 
41~50 大赦の人
51~60 夏凜

61~70 
71~80 
81~90 夏凜

91~00 兄

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月4日目の昼


天乃「ぼた餅、美味しかったわね」

死神「オイシカッタ」

天乃「東郷においしかったなんて言わないでね? 上げたって知られたら何言われるか」

死神「モットクレル」

天乃「どうかしらね」

入院して3日目

病室の静けさにも

部屋の眩いばかりの白さも

天乃は慣れていた

けれど、

独りぼっちと言う寂しさは

少し、天乃を責める

天乃「……園子はずっと、こんな感じなのかしらね」


教科書を用いて未出席分の授業を自分に施しながら

天乃はふっと息を吐く

家ではずっとこんな感じだった

でも、学校では、シャーペンの芯を出す音、折る音

入れ替えるために予備の箱を振る音

消しゴムで消す音、力を入れすぎて紙を破く音

雑音が入り乱れている

どちらかと悩むまでもなく

前者の方が集中できる、飲み込める

けれど、なぜだろう

天乃「……無ければ無いで、物足りない」

死神「デハ、クオンサン!」

天乃「?」

死神「キョウカショハチジュッページ、サンバンノモンダイトイテミテクレル?」

天乃「……私が最後に受けた授業のよね。それ」

死神「ジュギョウ、スル?」

天乃「結構よ。自分でできる」


天乃「学校でどの程度進んでるのか知らないけど……この程度かしらね」

区切りのいいところでノートまとめを中断し、体を伸ばす

軟禁以上の監禁に近い状態の今

やれることと言えば勉強くらいしかない

しかし、それだけと言うのも……味気ない

天乃「……………」

ふと、天乃が窓を開ける

入り込んでくる風は程よいと言うには冷たくて

でも、何もないよりは心地よくて

閉じ込められた少女の口元が綻ぶ

天乃「……気持ちいい」

窓を開けることさえ許されなかったら

窓に鉄格子がつけられていたら

きっと、そんな気分にはなれなかっただろう



1、電話:風、友奈、樹、沙織、東郷、兄、姉
2、メール:風、友奈、樹、沙織、東郷、兄、姉
3、夏凜のところへ
4、壁を叩く
5、死神と話す


↓2


天乃が静かにドアを開ける

警報は聞こえない

どうやら、警報は取り払ってくれたらしい

扉上部にはまだその装置の名残があり

夏凜の部屋に直結した機械の電源を切っておいてくれているだけなのかもしれないが

天乃「……夏凜」

少し熱の籠った声で、名前を呼ぶ

頼んだわけではない、願ったわけではない

ましてや、自分の雇主である大赦からの命で設置されたもの

それを自分のためにカットしてくれているというのは

束縛する縄の一つを綻ばせてくれたようなもの

天乃「……優しいのね」

自由気ままな少女にとって

それは、素直に嬉しいことだった


軽くノックをすると

夏凜の勝手にどうぞーという声が返ってくる

現状、ただの夏凜の私室と化している病室に

勝手にどうぞと言うのは如何なものか

天乃はほくそ笑みながら、静かにドアをスライドさせる

夏凜「……なんだ。あんたか」

天乃「私以外に誰か来るの?」

夏凜「……来ないわね。言われてみれば」

天乃「何してるの?」

夏凜「見て分かりなさいよ。勉強よ、勉強」

少しピリピリとした言い方をする少女は

ちらりとも天乃のことは見ない

広がった勉強道具のそばで

にぼしが打ち上げられた魚のように散乱しているのを一瞥し

天乃は軽く息をつく

天乃「貴女、勉強できないの?」

夏凜「そんなわけないでしょ。ただ……学校とか、全然縁がなかったから遅れてるだけ」


天乃「……貴女、もしかして」

夏凜「べ、別に苦手とか、嫌いとかじゃないのよ? ただ、あたしは」

天乃「実は小学校飛び級だったり」

夏凜「してないわよ!」

実は小学校飛び級

それが大赦のおかげで成立したら困る

そう思った天乃にとって、その否定はちょっと嬉しかった

天乃「知ってる」

夏凜「邪魔しに来たのなら帰って」

天乃「そ」

夏凜「も、ち、ろ、ん! 病室に」

天乃「まだ何も言ってないのに」

夏凜「日ごろの行いを考えれば当然よ」

言い捨て、夏凜はさっさと問題集を解いていく

けれど、天乃が軽く覗いた限りでも

その成績は芳しくはなかった


1、勉強、教えてあげるわよ?
2、息抜きしましょう
3、貴女、学校は通ってなかったの?
4、かーりーんーちゃーんーあーそーぼーぉーよー
5、ただただ見つめる


↓2


天乃「……………」

勉強にいそしむ少女

それをただ見守るだけの少女――ではなかった

天乃「かーりーんーちゃーんーあーそーぼーぉーよー」

夏凜「…………」

天乃「ね~え~っ」

明らかに、わざと

教科書を見るたびに視界に映るように

わざわざ身を屈めて

苛立ちを加速させるような子供みたいな甘えた声で

自由人は夏凜ではなく、机を揺らす

天乃「ねぇっ、おねぇちゃーん」

夏凜「っ…………」

ノートがずれて、文字が下に伸びる

天乃「かーりーんちゃーん」

ポキッとシャーペンの芯が折れて

夏凜「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

勉強に集中しようと言う気高き心が――折れた


天乃「急にどうしたの?」

夏凜「あんたのせいよ、あんたの!」

眉を吊り上げ、鬼気迫る少女の表情に

天乃は軽く後退りする

天乃「夏凜ちゃん怖い」

夏凜「それ以上その甘ったるい声だすなぁっ!」

天乃「……実はこれが私の地声なの」

夏凜「んなわけあるか!」

シャーペンを握りしめ、すごい剣幕の夏凜

一方で、ちょっとやりすぎたかと思う天乃は息をつく

天乃「そんな怒らなくたっていいじゃない」

夏凜「これが怒らずにいられるとでも?」

天乃「カルシウムが足りてないわよ。煮干しの国の精霊さん」

夏凜「誰がよ!」

強く机をたたき、夏凜が怒鳴り

天乃「貴女以外に誰がいるのよ!」

天乃もまた、強く机をたたいて応戦する

夏凜「……なんであんたが怒鳴るのよ」

天乃「その場の勢いって言うものがあるのよ」


天乃「それにほら、波紋に波紋をぶつけると衝突して止まるじゃない?」

夏凜「だから?」

天乃「夏凜の怒りも収まったでしょ?」

夏凜「怒らせた人のセリフとは思えないんだけど」

天乃「貴女があまりにも根を詰めてるから……」

夏凜「……………」

そう言って、天乃は照れくさそうに頬を掻いて、俯く

もしかしたら無理しすぎないように

根を詰めすぎて、空回りしないように

気遣ってくれたのかもしれない

正直じゃないそんな態度は受け入れがたいものだが

気持ちはありがたいそう思い、天乃から目を逸らす

夏凜「あま――」

天乃「邪魔したくて」

名前を言うよりも早く、口を開いた段階で

天乃は清々しいまでの笑みを浮かべ、気持ちを告げる

夏凜「ふざけんな」

夏凜は真顔でそう言った


夏凜「あたしは試験があるのよ」

天乃「試験……ね、どうしようもないなら手を貸してあげるけど」

夏凜「ならとりあえず出てって。ほんと、邪魔」

夏凜は深くため息をついて、また勉強に舞い戻る

外は曇天で薄暗い病室

さっきまでの言い争いが嘘のように静まり返る

暫く黙って夏凜を見守っていた天乃は

不意に思い出したように笑みを浮かべる

天乃「……私的には、監視が邪魔」

夏凜「あきらめなさい」

間をあけず、夏凜は答える

それが自分をも閉じ込める

あるいは諦めさせる言葉だと気付かずに

天乃「………つまりそういうことよ。、夏凜」

夏凜「なにがよ」

天乃「貴女は私の監視、監視は外せない。つまり、私は貴女のそばに居続ける」

夏凜「………………」

恐る恐る、顔を上げると

悪魔か、魔王か、それ以上の何かは笑みを浮かべていて、

それは夏凜の肩をぽんっと叩く

天乃「諦めて、ね?」

夏凜「……屋上とか連れていくから、ほんと。邪魔だけは止めて」


天乃「そんなに学校行きたいの?」

夏凜「行かないとダメなのよ。あんたの監視だから」

天乃「……じゃぁ、貴女が転入失敗したら」

夏凜「それは無関係。あんたは学校いくわ」

天乃「なんだ……不合格にしようと思ったのに」

夏凜「さらっと何言ってるのよ」

つまらない。と呟き

天乃は夏凜の横に座り

そのままベッドの上で四肢を投げ出す

開かれていない窓

充満する煮干しの匂いに、天乃は少し、顔を顰めた

夏凜「ちょっと、あんた何してんのよ」

天乃「……………」


1、ねぇ、夏凜は大切な人。いる?
2、ねぇ、勇者は死んだらみんなにどう伝わるの?
3、寝る
4、ねぇ、疲れたわ。寝ましょう?
5、窓を開ける


↓2


天乃「ねぇ、勇者は死んだらみんなにどう伝わるの?」

夏凜「……何よ急に」

天乃「私、死にかけたからちょっと気になったのよ」

真横で横たわる少女の瞳は

ちょっと気になっただけにしては深い色をしていて

そして、はるか遠くを見ているようで

夏凜は思わず息をのみ、目を逸らす

夏凜「……たぶんだけど、お役目でってなると思うわ」

天乃「お役目……?」

夏凜「あんたの欠席理由もお役目だし。それに……」

天乃「それに?」

夏凜「…………………」


言って良いのかどうか

躊躇う夏凜は口を閉じ、唇を噛み締める

以前、勇者が死んだ

死にかけた相手にとはいえ

そんな追い打ちをかけるようなことを……

夏凜「実際、お役目の最中じゃない。勇者って」

天乃「……そうね」

さっきまでの子供みたいな甘ったるい声でも

普段の落ち着いてるのか落ち着いていないのか

解らない声でもなく

沈みきって、浸りきって

今にも破れてしまいそうな紙のように儚い声で、少女は応える

夏凜「………………」

天乃「………………」

部屋が静まって

その空気はあまりにも重々しくて

夏凜は隣を見ることなく、言う

夏凜「あたしが来ればあんた達が戦う必要なんてなくなる……それまでの辛抱よ。天乃」

それが夏凜の

精一杯の励ましの言葉だった


√ 5月4日目の夕


コンマ判定表

01~10 兄
11~20 
21~30 大赦の人

31~40 
41~50 
51~60 兄

61~70 
71~80 大赦の人
81~90 
91~00 夏凜

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月4日目の夕


暫く夏凜と過ごし

そろそろ夕食だからと病室に戻ると

個室のはずなのに別の人が視界に入った

天乃「……あれ?」

「ん?」

天乃「ここ、私の病室……」

「お隣じゃないですか? ここの通路似てますし、間違えたんですよきっと」

帽子を深くかぶり、

好青年風を装う青年の言葉に

天乃は首を傾げながらも

廊下の名前が入ったプレートを確認する

どう見ても久遠天乃と書かれていた

天乃「……やっぱり、ここ」

「ぁ」

天乃「え?」

「こ、これ、俺の着替えなんで」

天乃「どう考えても私のだよッ!」

下着泥棒に躊躇なく蹴りを入れ、天乃は大声で怒鳴った


天乃「どうやってここ来たの?」

「匂いを追ってきた」

天乃「お兄ちゃん?」

「冗談に決まってるだろ。。あの子だよ。ぼた餅さん」

天乃「東郷の事?」

「そうそう。東郷さん」

ポケットから妹の下着を戻しながら

兄は続ける

「あの子が来て、お前がここにいる―っていうのを教えてくれたんだ」

天乃「でも、面会謝絶じゃなかった?」

「いや、窓が面会どうぞって開いてるだろ。そこから来たら受け入れてくれたんだよ」

天乃「……そのための山登り装備なのね」

真面目に言うのも面倒くさくなって

天乃は大きくため息をつく

天乃「で、なんで来たの?」


「一番はお前に会いたかったからだ」

天乃「……信じないよ?」

「いや、それは嘘じゃない。ただ、ほら。誰も居なかったら箪笥とか開けたくなるだろ?」

天乃「その理論で行くと私の部屋……」

「……先日強盗が」

天乃「土下座する時間くらいは上げるから。ほら、早く」

「……本気にするなよ」

睨まれながらも平然とする兄は

久しぶりの妹を前にして満面の笑みを浮かべ、頭を撫でる

「無事で何よりだ。お役目だからって何の連絡もないし、心配したんだぞ」

天乃「……ごめん」

「まぁ、元気でやってるならいいんだ」

天乃「みんなは?」

「……ちっぱ妹も、母さん達も元気でやってるよ。お前が返ってこないせいで、妹の方はちょっと、気が気じゃないみたいだったけどな」


天乃「……そっか」

「じゃぁ、今度は俺からの質問だ」

天乃「?」

「なんで病院にいる。なんで患者衣を着てる。なんで面会謝絶なんだ。答えろ」

天乃「ちょっ、肩……」

「答えろ。答えちゃいけないっていうならそう答えてくれ。お役目だとかぬかす大赦のこと殴ってやるから」

天乃「落ち着いてよ。肩痛いから」

普段は絶対に見せない兄の表情に困惑しつつ

痛みを訴えて、手を離させて息をつく

天乃「……私の状況、だっけ?」

「そう」

天乃「それは……」


1、実はお役目でちょっと怪我しちゃって。それが秘密事項だから面会も出来なかったの
2、私、勇者として化け物と戦ってるんだよね……なんて
3、……教えられない。巻き込みたくないから
4、教えられないよ
5、実は……その。怒らないでほしいんだけど……妊娠してて


↓2


天乃「……教えられない。巻き込みたくないから」

「……他人が巻き込まれるようなお役目ってことだな?」

天乃「ちがっ」

「否定すんな……妹の嘘が見抜けないほど、俺がお前を見てないと思ってるのか?」

天乃「……………」

優しく頭を叩くだけだった手は

ゆっくりと撫でるような動きに変わり

天乃の頭の後ろで止まると、

少しだけ力が加わり、天乃の体は兄のもとへと倒れこむ

「証拠が見たいなら見せてやっても良い。生まれてから今までの写真は全部あるしな」

天乃「……全部捨てるから、覚悟しておいてね」

「……やっぱり今のなしで」

ぼそっと呟いた兄は

天乃のすぐ横、耳元に顔を近づけて、言う

「旧世紀時代にはこんないい言葉がある。赤信号、みんなで渡れば怖くない。ってな」

天乃「……それ」

「お前一人で背負おうとするな。お前は一人じゃない、勇者部のみんながいる。みんなと頑張って、ちゃんと。帰ってこい」


「まぁ、出来ればそんな危ないお役目なんて投げ出して欲しいんだけどな……」

天乃「ねぇ、お兄ちゃ……」

「どうせ無理なんだろ? そのお役目は大事で、代えも利かないようなものでさ」

天乃「……………」

兄はあえて妹の言葉を遮る

妹がやらされているお役目

その重さ、大切さ、辛さ、苦しさ

全てをわかるとは言えない

けれど、少しは解っているから

だから、ただ……黙って妹の温かい体を抱きしめる

それが温かいのだと

決して冷たくはなく、生きており、今ここに、存在しているのだと

しっかりと、体に染み渡らせるように


コンマ判定表

01~10 
11~20 夏凜

21~30 
31~40 
41~50 夏凜

51~60 
61~70 
71~80 夏凜

81~90 
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


夏凜「天乃ーちょっと入るわよ」

天乃「えっ、ぁ、ちょっとま」

天乃の体は兄に包まれていて

当然、声はくぐもっていて響くことはなく

夏凜の入室を阻むものは何一つ……なかった

夏凜「あのさ、たぃ、しゃ……」

天乃「えっと」

夏凜「……何この状況」

天乃一人しかいないはずの病室で

彼女が見知らぬ男に抱かれている

夏凜が呆然とするのは無理もない話だった

「……人の逢瀬を邪魔しないでくれよ」

夏凜「だ、誰よあんた!」

「俺か? 俺は別にそうは思ってないんだが、周りはそう……俺をシスコンと呼ぶ」

夏凜「そんなの聞いてないわよ!」


「なんだよ、ただの冗談じゃないか」

夏凜「さては天乃の兄貴ね……そうよ。そうに違いない」

「正解。良く判ったな」

夏凜「当然よ!」

だってこの面倒臭さ

天乃の関係者以外ありえない

とは言わずに、夏凜は抱かれていた天乃へと目を移す

夏凜「どうやって入ってきたのかは知らないけど、接触禁止よ」

「家族でも?」

夏凜「当たり前でしょ。面会謝絶なんだから」

「そいつは厳しいな」

反抗の意思を見せながらも

天乃を手放した不審者もとい天乃の兄を睨む

「……なるほど、表情豊かな子だな。キミは」

夏凜「……何?」

「いや、気にしないでくれ。なんでもない」


天乃「そ、それで夏凜。何の用事なの?」

夏凜「あんたの兄貴がいたら言えないわよ」

天乃「だって」

「解った。帰ればいいんだろ」

はいはい。と

あからさまに納得のいっていないそぶりを見せながら

兄は窓際に何かをひっかけると

窓の縁に立ち、

室内の方へと体の正面を向ける

「天乃に遭えたし、もう一つ。収穫もあったから今日はおとなしく帰るよ」

天乃「収穫? 収穫って……ちょ、ちょっと待」

「じゃぁな」

夏凜「馬鹿ッ! なにして――」

兄はためらうことなく、背中を外へと投げ出し、階下に落ちていく

唖然としていた夏凜は

窓の縁でガチガチと音を鳴らすアンカーが外れ

下に落ちていくのを見て、大きく項垂れ、息を吸う

夏凜「なんなのよ……なんなのよ久遠家の人間はーッ!」


天乃「……良かった。盗られてない」

夏凜「なんであんたは下着の枚数確認してるのよ。あれ、兄貴なんでしょ?」

天乃「お兄ちゃんだからこそ確認してるのよ。むしろ他人だったら安心してるわ」

夏凜「ごめん、意味解んない」

疲れ切った夏凜は首を振り

ポケットからサプリの入ったケースを取り出し

数個ほど口の中に放り込む

天乃「なにそれ」

夏凜「元気になる薬」

天乃「……苦労してるのね。若いのに」

夏凜「原因を考えて、ほんと。お願い、切実なお願い」

天乃「……それより、要件は?」

夏凜「はぁ……そうね。明後日退院よ。おめでとう」

天乃「なんでまた突然?」

夏凜「あたしの転入試験が明後日だから」

天乃「つまり貴女のせいだった。と」

夏凜「ちょっと待って、あたしじゃない。あたしじゃないからッ!」


夏凜「あんたのことこれ以上拘束しておけないしってことで、あたしの転入試験が早まったのよ」

天乃「なるほどね……」

夏凜「解ったらそれ以上笑顔で近づいてこないで」

天乃「……そんなに私が嫌い?」

夏凜「好き嫌い以前の問題よ」

完全に癖が移ったのか

夏凜はまたため息をつく

別に天乃のことが嫌いなわけではない

だが、苦手なのだ

五月蠅いからとかではなく、扱い辛過ぎて

夏凜「つまりそういうことだから、良かったわね」

天乃「良かったわねって……夏凜はどうするのよ。監視」

夏凜「追って通知するって連絡にはあるわ。たぶん、近くのマンションにでも部屋を借りると思うわ」

天乃「私の家に居候とか、大赦なら無茶言いそうだけど」

夏凜「まさか……あ、ありえないってば、そんなこと」


そんなことになったら正気を保っていられる自信がない

朝から晩まで久遠家の常識からかけ離れた交流に付き合わされ

最悪精神崩壊して勇者になる前に廃人になるかもしれない

そこまで考えて、それはないと首を振る

夏凜「マンションにって申請しておくわ」

天乃「……検討中。しかし久遠家への住み込みに問題は無く、住み込みで決定になると思われます」

夏凜「不吉なこと言うな!」

天乃「迎える準備、しておいてあげるわね」

夏凜「しないで。むしろあんたの親に頼み込んで嫌ですって言って貰って!」

天乃「……それは、たぶん無理」

嫌だと言ってと頼んだりしたら

それこそ確実に住み込みを即断で許可する

それが天乃の母親だからだ

夏凜「…………………」

天乃「日ごろの行いにかかってるわね、夏凜」

夏凜「あ、あたしは神樹様の勇者になるために努力してきた……だから」

天乃「勇者になる代償として、私の家に来るのね」

夏凜「……そんな気がしてくるから、ほんと。止めて」

√ 5月4日目の夜


コンマ判定表

01~10 沙織(電話)
11~20 
21~30 友奈(電話)
31~40 
41~50 東郷(電話)
51~60 
61~70 風(電話)
71~80 
81~90 樹(電話)
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし

√ 5月4日目の夜


樹『あ、あの……こんばんは』

天乃「珍しいわね、どうかしたの?」

樹『いえ、その……どうかしたなんてことはないんです』

天乃「……じゃぁ、どうしてまた」

樹『久遠先輩のお見舞い……行っても良いですか?』

天乃「私の?」

勝手にしていい。そう返そうと思った天乃だったが

対面していない樹はそれに気づかずに、続ける

樹『あ、朝に』

天乃「別に放課後でも――」

樹『放課後じゃダメなんです』

天乃「どうして?」

樹『わ、私一人でもできることがあるって……思いたいからです』

天乃「………………」



1、別に良いわよ
2、じゃぁ、来なかったら罰ゲームね
3、無理しなくたっていいんじゃない?
4、貴女、朝はおきられるの?



↓2


天乃「無理しなくたっていいんじゃない?」

樹『で、でも……』

天乃「何かをしようとするのはいいけど、初めから無理したって何にもならないわよ」

樹『…………』

樹の沈黙

天乃はそれで察したように、声にはせず、笑みを浮かべる

何か目的があって

それを成し遂げたい

樹はそう思っているのだろう

それはいい心がけなのかもしれないけれど

天乃「まずはいつも起きている時間より1分~5分前に起きる努力を試みなさい」

樹『そんな少しでいいんですか……?』

天乃「いきなり30分前、一時間前。そういわれても起きれないでしょう?」

樹『それは……』

天乃「ここに来るにはすくなくとも、6時には起きてないとダメよ。7時ではダメ」


天乃「それに、1分~5分は目覚ましではセット出来ないから自力で起きようとするはず」

樹『…………確かにそうです』

携帯電話のアラーム機能を使えば

分単位での目覚ましを鳴らすことが出来るのだが

それを使っても意味がない

目覚ましで起きていては、結局体に無理強いしているからだ

天乃「自分で起きて、風のためにパンでも焼いてみなさい」

樹『でも、お姉ちゃんはもっと早く起きてて……』

天乃「一人でもできることがあると思うだけでいいの? 貴女は」

天乃の問いに樹は少し考える

いつもいつも姉の風に起こされていて

何から何まで、全部任せっきり、甘えっきりで

一人でもできることがあると思いたいのは

そんな姉の隣に並びたいからで……

樹『私……みんなに』

天乃「だったら、私よりも、勇者部よりも。まずは一番身近な人に、見せてあげなさいよ」


天乃にも姉がいるし、兄もいる

普段は頼りないどころか

迷惑ばかりかけてくる不甲斐ない兄でさえ

自分にはないものを持っていて

そして、それを教えてくれる師匠として存在してて

いつか超えたいと思っていない。わけでもない

だからなんとなく、樹の気持ちは解るのだ

天乃「お見舞いしたいって言うのは気持ちだけ。貰っておいてあげるわ」

樹『……あの』

天乃「なに?」

樹『また電話しても……良いですか?』

天乃「………………」

樹『め、迷惑なら……』

天乃「今日は私にアポイントメントをとったうえでの電話だったのかしら? そして、私がどう対応したのかを考えなさい」

樹『……それって』

天乃「……頑張りなさい、樹。大丈夫よ。そうしたいと言う気持ちがあるのなら、貴女自身が応えてくれる」

天乃は上半身部分を高くしたベッドに横になり、軽く微笑む

天乃「まずは今すぐ電話を切って寝る。できることすらやらないのは、頂けないわ」

樹『は、はいっ、ありがとうございました。おやすみなさい!』

電話が切れたのを確認し、天乃は息をつく

天乃「……良い妹じゃない、風」


今回はここまでとさせていただきます



5月5日目が入院最終日です
その夕方に夏凜の運命が決まります


では、今回もやっていきたいと思います


√ 5月4日目の夜


天乃「私も寝ようかしらね……」

明後日が転入試験だと言う夏凜

その邪魔をするのは流石の自由人でも乗り気ではない

かといって何かすることがあるのかと思えば

そんなことは全くと言っていいほどにない

あるとすれば、明後日でまた会えるようになる。と

沙織に報告することくらいだろうか

天乃「……バーテックスが攻めてこないのが少し気になるけど」

それはそれで良いこと……よね?

底知れない不安

連戦からの静けさは嵐の後の静けさで

でも同時に、前の静けさのような、不快なものを感じる

天乃は自分の端末を見つめ、首を振る

天乃「変なことばかり考えてたら……ダメよね」



1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織、兄、姉
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織、兄、姉
3、夏凜の所へ
4、死神を呼ぶ
5、大人しく寝る


↓2


天乃「ねぇ、ちょっと」

自分の付き人……いや

諸語例と言うのが一番正しいであろう死神

それに対し、天乃は声をかける

返事はない、姿も見せない

いつもならすぐに、そして勝手に姿を現すのに

それが少し不安にさせ、天乃は首を振って振り払う

天乃「居るのは解ってるんだから、出てきなさい」

死神「ヨンダ?」

天乃「殴るわよ。貴方」

死神「ゲドーメ!」

拳を振りかざす天乃に対し

死神は赤い瞳をぎゅっと瞑って身構える

けれど、痛みはなく、衝突もなく

天乃「……呼ばれたらすぐに出てきなさい。馬鹿」

頭を優しく撫でるだけの、接触だけがあった

>>824訂正


天乃「ねぇ、ちょっと」

自分の付き人……いや

守護霊と言うのが一番正しいであろう死神

それに対し、天乃は声をかける

返事はない、姿も見せない

いつもならすぐに、そして勝手に姿を現すのに

それが少し不安にさせ、天乃は首を振って振り払う

天乃「居るのは解ってるんだから、出てきなさい」

死神「ヨンダ?」

天乃「殴るわよ。貴方」

死神「ゲドーメ!」

拳を振りかざす天乃に対し

死神は赤い瞳をぎゅっと瞑って身構える

けれど、痛みはなく、衝突もなく

天乃「……呼ばれたらすぐに出てきなさい。馬鹿」

頭を優しく撫でるだけの、接触だけがあった


死神「クオンサン?」

天乃「で、も!」

死神「クオンサンッ!?」

頭を鷲掴みながら

天乃はあからさまに不機嫌な表情を死神に向ける

天乃「外道ってどういうことよ、外道って」

死神「クオンサン、ナグル、ヨバレタ、ワタシ。ダカラゲドウ」

天乃「貴方がすぐに出てこないのが悪いんじゃない」

死神「ネテタ」

天乃「嘘つくと罪は重くなる一方よ」

厳しい言葉を投げかけながらも掴む手の力は緩める

寝ていたのは100%嘘で

8割以上は自分の反応を見ようと思ったのだろう

それを解っているからこそ、叩くように

掴んでいた手を思いっきり横に振った

死神「ゴメンナサー……」

鈍い音こそしなかったものの、死神は壁に当たって跳ね返ってきた


死神「クオンサン」

天乃「なに?」

死神「クオンサン、ゲンキニナッタ?」

天乃「……もともと元気よ」

怪我もない、病気もない

なんで精密検査の必要があるのか

理解に苦しむほどの健康体

死神「チガウ」

天乃「なにが?」

死神「バーテックス、コナイ……クオンサンハ、フアン」

天乃「……盗み聞きしたわね。貴方」

死神「ゲンキニナッタ?」

死神な小首をかしげるように傾けながら訊ねる

不安に思っていると口にはしていない

でも、表情には出ていて、言葉には滲み出ていたのだろう

死神は心配そうに、天乃を見つめていた



1、平気よ
2、……だから貴方を呼んだのに、貴方は私をからかった
3、元気づけたいと思ってるのなら、一緒に寝ましょう
4、ええ、イライラで不安が吹き飛んだわ
5、方法はともかく……気持ちは嬉しかったわ



↓2


天乃「元気づけたいと思ってるのなら、一緒に寝ましょう?」

死神「フトントベッド、ベツベツ?」

天乃「布団がどこにあるのよ……良いから早く、入ってきて」

死神「ワーイ」

布団どころか胸に飛び込んできた死神を捕まえて

布団の中に放り込むと、

死神は足元でもぞもぞと動き、段々と這い上がって、

布団の端からひょっこりと顔を出す

天乃「……やっぱり、ペットね。貴方は」

死神「?」

天乃「何でもない」

一人で寝るのが寂しいということはないし

暗い部屋が怖いわけでもない

でも、募る不安があって

それが一人でいると膨れ上がっていってしまいそうで

天乃「……抱いてていい?」

死神「クオンサンガ、シタイナラ」

たとえ人間ではなくても

たとえ死神であっても

寄り添ってくれる存在は……ありがたかった


死神「……………」

天乃「……………」

消灯時間も過ぎて

外も月の明かりだけとなっている深夜

寝息でなく、吐息が微かに聞こえる

天乃「…………………」

死神「……クオンサン」

天乃「………………」

死神「クオンサン」

天乃の腕の中でぐるっと回った死神は

赤い瞳を天乃へと向ける

天乃「……なによ」

その視界に映る少女の瞳は暗く影っていて

死神は言うべき言葉を失って、身体に身体を寄せる

死神「イッショ……ワタシト、クオンサン。イッショニイル」

天乃「…………………」

死神「クオンサンノコト、ワタシガマモル。クオンサンハ、コロサセナイ」

小さな小さな死を告げる神の名を持つ精霊は、主に対し、微笑みを向けた

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流有(電話、相談)
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流有(ぼた餅、二星(煮干)の精霊)
・  三好夏凜:交流有(遊びに行く、悪戯、死んだら)
・伊集院沙織:交流無()

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流有(添い寝)


5月の4日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 9(普通)
  犬吠埼樹との絆 10(普通)
  結城友奈との絆 13(普通)
  東郷三森との絆 6(ちょっと低い)
  三好夏凜との絆 16(中々良い)
伊集院沙織との絆 49(高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 21(中々良い)


このまま続行します


√ 5月5日目の朝


コンマ判定表

01~10 樹
11~20 
21~30 友奈
31~40 
41~50 風
51~60 大赦の人
61~70 東郷
71~80 
81~90 夏凜
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月5日目の朝


天乃の入院最終日

今日を過ごせば明日の朝、退院が出来る

終わりが見えたからか

目覚めは良く

いつの間にか枕になっていた死神の頭を撫でる

天乃「おはよう、今日で終わりよ」

死神「オワリ?」

天乃「この窮屈な状態から解放されるのよ」

嬉しそうな天乃の姿に引っ張られて

死神も喜びを表してか尻尾のようなものを振る

死神「オメデト」

天乃「ありがとう」


1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織、兄、姉
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織、兄、姉
3、夏凜の所へ
4、一緒に寝てくれてありがとね
5、屋上にでも行きましょうか


↓2


天乃「かり」

夏凜「右周れ、右。そして帰って! ほんと、お願いだから」

天乃「……冷たいのね。朝だから?」

夏凜「貧血じゃないわよ」

天乃「お金がない?」

夏凜「金欠でもない」

天乃「成績は後ろから数えた方が……」

夏凜「ビリッ欠……じゃ、なくて!」

バンッとテーブルを叩き、

夏凜は眠そうな瞳で天乃を睨む

夏凜「明日テストだって言ってんでしょうが。邪魔しないで」

天乃「そんなギリギリまで追い詰めなくても……」

夏凜「本来は一か月後だったのよ。それがこんな早くなって……」


サプリをかみ砕き

煮干しを口へと放り込みながら

夏凜は天乃から視線を落とし、また勉強へと勤しむ

しかしそれは勤しんでいると言うには身体に優しくなく

見ているだけだった天乃は思わず顔を顰める

夏凜「あんたに構ってる暇はない。帰って」

天乃「……夏凜」

夏凜「落ちるわけにはいかないのよ。大赦のおかげで入学なんて、したくないのよッ」

天乃「…………………」

夏凜「お願いだから邪魔しないで」

やるなら悪い成績はとりたくない

ましてや不合格なんて言うことにはなりたくない

そんな気持ちがひしひしと感じられる夏凜を、天乃はじっと見つめた



1、貴方が苦手な分野は何なの?
2、参考書を取り上げる
3、大人しく引き返す


↓2


天乃「貴女が苦手な分野は何なの?」

夏凜「邪魔し――」

天乃「流石に私も、本気でやってる子の邪魔はしないわよ」

言いながら歩み寄り

天乃はそっと夏凜の進行状況を見つめる

内容的に小学生時代のものだけでなく

中学生になってから習うものもあるらしい

小学校の所は大体問題はない

天乃「貴女、学校行ってたの?」

夏凜「…………」

天乃「……なるほど」

夏凜「何も言ってないでしょ」

天乃「言うまでもないってことよ」


天乃「良いわ。屋上のお礼に付き合ってあげる」

夏凜「何言って」

天乃「一応、私は貴女の先輩よ? 二年生」

夏凜「……だからって、私は別に」

天乃「当日、過労で倒れても知らないわよ?」

夏凜「………………」

天乃「解ったらちゃんと聞きなさい。効率的かつしっかりと教えてあげるから」

天乃はしてもいないメガネをクイっと上げて

夏凜に微笑む

信用は……したくない

自分でバーストすれば十分突破は可能なはずだ

今まで一人でやってきた

訓練も、勉強も、何もかも

だから、誰かに何かをしてもらうとき

なんて言えば良いのかわからなくて、夏凜は黙り込む

天乃「……………」

天乃はそんな夏凜の態度を注意したりすることなく

ただ、優しく肩を叩く

天乃「ほら、ただでさえ時間はないんだから。まずは国語からね」


√ 5月5日目の昼


コンマ判定表

01~10 
11~20 大赦の人
21~30 
31~40 夏凜(継続)
41~50 
51~60 沙織
61~70 
71~80 風
81~90 
91~00 樹

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月5日目の昼


夏凜への家庭教師を終え

天乃が部屋へと戻ると、丁度端末が鳴った

天乃「?」

来たのは電話

発信者は犬吠埼樹

昨日の今日で何があったのかと

天乃は考え得るものを想像しながら通話ボタンを押す

天乃「もしもし?」

樹『く、久遠先輩。こんにちは……電話、しちゃいました』

天乃「……どうかした?」

樹『その、ごめんなさい』

天乃「なにが?」

樹『起きること……できませんでした』


天乃「………………」

樹『ごめんなさい』

何があったのかと思えば

起きられなかったという報告

樹には悪いけれど

元々、一回目から起きられるなんて期待はしていなかった

最初から起きようと思っておきられるのなら

そもそも、悩みにまでなっていないはずだからだ

樹『……頑張ったんですけど』

天乃「……………」



1、それで? もう諦める?
2、そう……まぁ、期待はしてなかったし
3、わざわざ報告しなくてもいいのに
4、次頑張ったらいいんじゃない?


↓2


天乃「わざわざ報告しなくてもいいのに」

樹『で、でも……』

天乃「でも? 相談に乗って貰ったから?」

樹『…………』

電話の奥で樹が頷く光景

なんでわかるのかと驚いている光景

天乃はそこにはない景色を見ながらくすっと笑う

天乃「起きれたって嘘をついても良かったじゃない」

樹『それは………』

せっかく相談に乗って貰った

なのに起きれなかった

そんな報告は出来ない、したくない

だから見え張って、嘘ついて

起きれましたと言っても良い……はずなのに

樹『嘘は……つきたくありませんでした』

天乃「貴女、真面目な子なのね」


一人でできることがある。と

頑張ろうとしたり

いくらでも嘘がつくことが出来ることを嘘つくことなく報告したり

本当、真面目でいい子だと

天乃は他人の事なのに」、少し嬉しくて笑みを零す

努力をする子は嫌いではなく

そもそも、天乃自身が努力の上で成り立っているからだ

天乃「だったらまた明日頑張ることね」

樹『明日……ですか?』

天乃「気が緩んじゃう休みの日こそ、頑張って起きなきゃね」

樹『が、頑張ります』



1、失敗はしても良い。でも、次こそはと頑張る気持ちだけは、ちゃんと持っていなさい
2、明日は私の退院の日だしね
3、良い返事ね、それが実を結ぶことを期待してるわ
4、貴女、私の妹になる権利を上げるわよ



↓2


天乃「明日は私の退院の日だしね」

樹『そうだったんですか!? お姉ちゃん、何も……』

天乃「知らないんじゃない? 決まったのは昨日、急にだったみたいだし」

夏凜と言う監視がある今

風に報告する理由もないと思ったのだろう

中々に冷たい組織だ

そう思いながら天乃は軽く目を瞑る

天乃「貴女には、まぁ。頑張る目標と言うことで」

樹『み、みんなに伝えても?』

天乃「良いわよ。別に。あの子たちが休みをつぶしてまで来るかどうか、解らないけど」

樹『行きます!』

天乃「…………………」

樹『みんな、久遠先輩の事……仲間だって、思っていますから』

天乃「……そう」

樹の言葉を信じなかったわけではなく

天乃「好きにしなさい」

信じられてしまう理由があるから、素っ気なく答えた

√ 5月5日目の夕


コンマ判定表

01~10 風
11~20 
21~30 友奈
31~40 夏凜
41~50 東郷
51~60 
61~70 勇者部
71~80 大赦の人
81~90 沙織
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


01:久遠家 02: 03:久遠家 04: 05:久遠家 06: 07:久遠家 08: 09:久遠家 10:久遠家
11: 12:久遠家 13: 14:久遠家 15:久遠家 16:久遠家 17: 18:久遠家 19:久遠家 20:久遠家
21:久遠家 22:久遠家 23:久遠家 24: 25:久遠家 26:久遠家 27:久遠家 28: 29:久遠家 30:

31: 32:久遠家 33: 34:久遠家 35: 36:久遠家 37:久遠家 38:久遠家 39: 40:久遠家 
41:久遠家 42: 43:久遠家 44: 45:久遠家 46: 47:久遠家 48: 49:久遠家 50:久遠家 
51: 52:久遠家 53: 54:久遠家 55:久遠家 56:久遠家 57:久遠家 58:久遠家 59: 60:久遠家 
61:久遠家 62:久遠家 63:久遠家 64: 65:久遠家 66:久遠家 67:久遠家 68: 69:久遠家 70: 
71: 72:久遠家 73: 74:久遠家 75: 76:久遠家 77: 78:久遠家 79: 80:久遠家 
81:久遠家 82: 83:久遠家 84: 85:久遠家 86: 87:久遠家 88:久遠家 89:久遠家 90:久遠家 
91: 92:久遠家 93: 94: 久遠家95: 96:久遠家 97: 98:久遠家 99: 00:久遠家 


↓1のコンマ  空白はアパート


√ 5月5日目の夕


今日ももう少しで終わり

明日になれば退院だと上機嫌な天乃

その一方で、隣の部屋からは物騒な音が響き

ありえないでしょ! と、夏凜の悲鳴が轟いた

天乃「……何なのよ一体」

夏凜の叫び声は一度だけで

それ以降は壁に耳を当てても何も聞こえてこない

難しい問題にでも直面したのだろうか

天乃「………………」

屋上に連れ出してもらったお礼は済ませたし

解らないことがあれば聞きに来ても良い。と許可も出した

でも部屋に来ることもなく、静まり返った隣の部屋

何があったのだろうか




1、電話:風、樹、東郷、友奈、沙織、兄、姉
2、メール:風、樹、東郷、友奈、沙織、兄、姉
3、夏凜の所へ
4、死神を呼ぶ
5、壁に耳を当てて待機


↓2


天乃「仕方がない……」

何があったにせよ

あんな悲鳴を上げて置いて気にするなと言う方が無理な話

そう思い立ってすぐ行動に移した天乃は

ノックをしても返事のない夏凜の部屋へと入り

天乃「……か、夏凜?」

言葉を失った

飛び散った筆記用具

床に落ち、ページの折れた参考書

シャーペンの代わりに端末を握る夏凜はテーブルに突っ伏していて

眼の前にまで行かなければサプリ中毒で死んでいるのかと思いかねない様子だった

天乃「だからサプリはあれほど抑えなさいって……」

夏凜「………………」

天乃「夏凜、しっかりしなさい。どうしたのよ」

夏凜「…………」

天乃「煮干しが切れたの?」

夏凜「違うわよ……あんたの家だって送られてきたのよ」

天乃「何が?」

夏凜「……生活場所」


夏凜「もうだめ、終わった……私はきっと寝ることさえ出来なくなるわ」

天乃「そんなことないわ。変に制限したりするわけじゃないし……」

夏凜「むしろ制限しなさいよ。あんたのその自由人っぷりとか!」

とたんに元気を取り戻したように夏凜は机をたたき、

天乃を睨んで指をさす

夏凜「あんた、あたしたちがこの周りの患者なり、看護師なりになんて思われてるか知ってる!?」

天乃「全然出してもらえない私が知ってるとでも?」

夏凜「期待の若手漫才コンビ! あんたがいっ――――――つも下らないこと言うから!」

天乃「……コンビ名はにぼシウム?」

夏凜「違うわよ!」

天乃「かりんとう?」

夏凜「あんたはどこ行った!」

天乃「じゃぁ、にぼのシウム」

夏凜「意味わかんない!」

天乃「にぼしの中のカルシウムの略称。ちなみに天乃の『の』が真ん中よ」

夏凜「聞いてないッ!」


天乃「貴女がせめてにぼしかカルシウムか分けろっていうから……」

夏凜「今の話のどこに関係があんのよ……」

勢い任せに怒鳴り

息を荒くする夏凜は大きくため息をついて、額に手を当てる

ダメだ。無理だ

話す前から解ってた

だから大赦に夏凜はメールを送った

なのに


久遠家からの承諾はすでに得ており、

監視するうえでは最も最適だと思われます

適応しなさい


夏凜「適応って何よ! 適応しないといけないような場所だって諦めてんじゃないッ!」

天乃「まぁ、すぐ慣れると思うわ」

夏凜「諦めるの間違いでしょ……絶対」

天乃「……否定はしない」

夏凜「しなさいよ!」

天乃「大丈夫、お兄ちゃんからだけは守るから」

夏凜「あんたの兄貴はなんなのよ一体!」


天乃「……兄が帰った後、妹が自分の下着の枚数をチェックしないといけない人?」

夏凜「隔離しろッ!」

天乃「隔離されている人の所に来れる行動力舐めちゃだめよ」

夏凜「無駄な信頼してるのね……はぁ……」

天乃「ため息つくと幸せ逃げるわよ?」

夏凜「……逃げた幸せが目の前で潰されてる」

天乃「夏凜、貴女疲れてるのよ」

夏凜「誰のせいだと思ってんのよ……はぁ」

大きく肩を落とす夏凜は

散らばっていた筆記用具をかき集め、参考書を拾うと

トボトボと歩き、ベッドにうつぶせに倒れこむ

天乃「……夏凜」

夏凜「……寝るわ。勉強なんて気分じゃない」



1、ゆっくり休みなさい。明日は試験なんだから
2、そう……わかったわ
3、じゃぁ、今だけは一緒に寝てあげるわ
4、貴女、私の真似をしてるつもりね? 似てないわ


↓2


天乃「じゃぁ、今だけは一緒に寝てあげるわ」

夏凜「あんたは」

天乃「?」

夏凜「あんたは鬼かッ!」

目を見開き

鬼気迫る表情の夏凜に対し

天乃は小首を傾げて瞬きする

天乃「どちらかと言うと、鬼は夏凜よ?」

夏凜「そういう冗談はいいからもう出てけ!」

天乃「ッ!」

夏凜の両手が天乃の胸部に触れ、

力一杯突き返す

夏凜「あたしの生涯最後の安らかな眠りを邪魔しないで」

天乃「そんなつもりはないわよ……」

夏凜「だったら出て行って。あたしは寝るわ」


天乃「私はただ……」

寝るなら一緒に寝ようかと思っただけで

そこに悪戯的な意味がなければ

夏凜を苦しめるような意味もなかった

ただ純粋に……

天乃「……………………」

夏凜「なに俯いてんのよ」

天乃「……別に」

夏凜「……そう。じゃぁ、戻りなさいよ。こんな狭いベッドどうせ2人じゃ無理なんだから」

天乃「そうね」

天乃は小さく呟くと

夏凜に向けて清々しい笑みを浮かべる

天乃「これからよろしく、夏凜」

夏凜「ほどほどにして。本当に」

天乃「………検討しておくわね」

身を翻し、天乃は出口へと向かってドアを開け、一旦止まる

しかし何も言うことなく

首だけを少し動かして、夏凜を視界の端に捉える

天乃「……おやすみ」

それに対する夏凜からの返事は、なかった


後は夜だけですが、今回はここまでとさせていただきます
明日はお昼ごろには再開できる見込みです


70%で外れるイベント
63%で当たる久遠家

夏凜の救いになるのは……たぶん姉



>>919最初の
>天乃「私はただ……」
から
>天乃「……………………」
の時の天乃を想像したら凄く可愛かった

天乃って本当は誰よりも人との関係を大事にしてて
大切に見てて、物凄く敏感なんじゃ無いかな
親友を失ったわけだし、蔑ろにはしたくない
でも自分や相手が死んだときに苦しませたくなくてあえて突き放してるって感じだし


では予定通り時間も作れましたので再開したいと思います


√ 5月5日目の夜


コンマ判定表

01~10 
11~20 風
21~30 
31~40 樹
41~50 大赦の人
51~60 友奈
61~70 
71~80 東郷
81~90 大赦の人
91~00 沙織

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月5日目の夜


夏凜に拒絶され

一人寂しく自室のベッドに横たわっていた天乃

そのすぐそばで、端末が震える

けれど無視しようとする主に向かって

死神は端末を眼の前に掲げる

天乃「……なによ」

死神「クオンサン、アタシカラ」

天乃「貴方はあの子じゃないでしょ」

死神「クオンサン、ナマエヨバナイ。ダカラ、アタシ」

天乃「……なるほどね」

死神から端末を受け取り

天乃が通話を選択する

沙織「待たせたね。久遠さん」

天乃「……貴女よりは待たせてないからセーフ」


そんな些細で短い居合の間に

沙織は何かに気づいたように、あっと声を漏らす

沙織『もしかして、寝てた?』

天乃「……どうして?」

沙織『声に元気がないから、寝起きなのかなって』

天乃「まぁ、そんなところかしら」

実際は嘘だ

寝てなんかいない

寝ようともしてない

ただ茫然と、していただけだ

天乃「……それで? どうしたの?」

沙織『ただ声を聴きたかった。だけ……なんて言ったら怒る?』

天乃「……………」



1、ううん、結構いいタイミングだった
2、ちょっと、不機嫌になるかも
3、なんだかそれ、ちょっと照れくさいわ
4、実は私もよ……なんてね


↓2


天乃「実は私もよ」

沙織『だ、騙されないよ?』

天乃「あら……ふふっ」

沙織『久遠さんはそうやっていっつもからかおうとするんだもん』

バレバレなんだからっ

そう元気よく響いてくる端末を耳から離し

天乃はクスクスと小さく、儚げな笑みを浮かべる

もちろん、冗談とするつもりだった

それが潰されたからではなく

自分の言動が偽りであるという認識が

相手にとって当然であると言うことになっていることへの

嬉しさと、悲しさ

だから笑みを浮かべながらも、それは見ている人を悲しくさせる

だが、そこに沙織はいない

天乃「良く判ってるわね、えらいわ」

沙織『そんなことで褒められてもうれしくない』


ちょっとむくれているような彼女の声

内心で笑う天乃は、小さく息を吐く

天乃「せっかく褒めてあげたのに?」

沙織『中学校で足し算が出来て偉いって褒められてうれしいと思う?』

天乃「……それは、確かに微妙ね」

沙織『久遠さん……まるで自分は嘘つきだって、思って欲しいみたい』

天乃「………………」

端末が伝えてくる声は

電波のせいか、沙織自身のせいか

微妙にぶれて聞こえた

沙織『なんかね、そんな感じがするんだ』

天乃「……気にしすぎじゃない? 私が悪戯好きなだけかもしれないのに」

沙織『……そうだね』


沙織の返事は

本当にそう思っているという声には聞こえなかった

でも、天乃はそこには触れずに苦笑する

沙織『久遠さん?』

天乃「嘘つき少年……少女な私は狼に食べられちゃうのかなと思って」

沙織『……あたしはちゃんと信じるよ』

天乃「うん?」

沙織『久遠さんが言ったこと。ちゃんと信じて、助けに行く』

天乃「嘘だとしても?」

沙織『会う口実になるし。嘘ついたなーって悪戯し返せるし』

嬉々として嘘だった場合のことを語る沙織

傍にいるわけではないのに

身振り手振りをしてるんだろうなぁ。と

天乃はなんとなく想像して……嬉しそうに微笑んだ


沙織『でも、だからって嘘つくのはダメだよ』

天乃「なによ、急に」

沙織『本当に大事なこと、伝えられなくなっちゃうよ?』

天乃「………………」

静まり返った部屋

真っ暗な中で、薄明かりに照らされる天乃は俯く

そんなことは解っていて

そんなことは承知の上

でも、それでいいと思っているから

そうじゃなければ、真実として伝えてはいけないものまで

真実だと、本心だと思われてしまう

だから、天乃はからかおうとする

天乃「………………」


1、それでも貴女なら、私の本心に気づいてくれるでしょ?
2、ふふっ、私は嘘つきだから
3、ほどほどに、気を付けるわ
4、良いのよ。それで



↓2


天乃「ふふっ、私は嘘つきだから」

沙織『もうっ……電話じゃなくて会いたいッ』

天乃「っ……」

沙織『そういう悪い冗談言う久遠さんのほっぺ抓りたいっ』

むむむっと

心底悔しそうに唸る沙織の声

それが冗談ではないが、本気の本気でもない。と

天乃にはなんとなく伝わってきて小さく笑う

天乃「抓られるのは嫌なんだけど……まぁ、もうすぐ会えるわよ」

沙織『本当?』

天乃「ふふっ、嘘かも」

沙織『もーっ!』

天乃「ふふっ、やっぱり……」

沙織『なに?』

天乃「やっぱり……貴女の声が聴きたかったのは。冗談じゃないかな」


くすくすと笑いながら

天乃は俯き気味な自分の目元を拭う

夏凜に拒絶された

あれは全部自分が悪い

そもそも、そうなることを解っていながら

天乃はあの態度をとり続けた

だけど、明確な拒絶はやっぱり、くるものがあって

天乃「………………」

沙織『久遠さん?』

天乃「……なーんて、ね」

電話してきてくれたことが嬉しかった

相談とか、何かある話ではなく

ただ、声を聴きたいなんて理由だったのが嬉しかった

でも同時に、大した理由もなく連絡するような間柄にまでなってしまっていることが、不安だった

天乃「もう寝ましょう。おやすみ」

沙織『う、うん……おやすみ』

天乃は結局、冗談のままに留めた

1日のまとめ

・  犬吠埼風:交流無()
・  犬吠埼樹:交流有(電話、相談)
・  結城友奈:交流無()
・  東郷美森:交流無()
・  三好夏凜:交流有(教師、久遠家、一緒に)
・伊集院沙織:交流有(声を、嘘つき)

・  乃木園子:交流無()
・   三ノ輪銀:交流無()
・      死神:交流無()


5月の5日目終了後の結果

  犬吠埼風との絆 9(普通)
  犬吠埼樹との絆 12(普通)
  結城友奈との絆 13(普通)
  東郷三森との絆 6(ちょっと低い)
  三好夏凜との絆 19(中々良い)
伊集院沙織との絆 51(かなり高い)

  乃木園子との絆 15(中々良い)
  三ノ輪銀 との絆 45(高い)
      死神との絆 21(中々良い)


続行します


√ 5月6日目の朝


コンマ判定表

01~10 樹海化
11~20 
21~30 大赦の人

31~40 
41~50 
51~60 大赦の人

61~70 
71~80 
81~90 夏凜

91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


√ 5月6日目の朝


退院だ、自由だ

飛び跳ねそうなほどの喜びを内蔵する天乃は

もう必要のなくなった患者衣を投げ捨てて……呆然と目を見開いた

退院を祝いに来てくれたらしい

端末が五月蠅く鳴り響き、患者衣はいつまでたっても宙に浮いたまま、動かない

入院させるような事態を招いた事を

謝罪に来てくれたのかもしれない

でもお願い

そんなのいいから今すぐ出て行って

そんな思いは通じることなく

夏凜「天乃!」

夏凜が病室に駆け込んでくると同時に、世界は樹海へと入れ替わっていった


http://i.imgur.com/ywmo3ZQ.png


天乃「……夏凜、バーテックスはどこ?」

苛々としながらも落ち着いた声で問う

けれど、夏凜からの返事はなく

遠くに飛ばされたのかとマップを開いて、思わず開閉を繰り返した

天乃「……どういうことよ」

バーテックスの表示がない

それどころか、勇者部メンバーも

すぐそばにいた夏凜でさえも、表示がない

あるのは、神樹様だけだった

天乃「……何の用なの?」

問いかけても

神樹様は聳え立っているだけで何も言わない

たった一人、バーテックスがいるわけでもなく呼ばれた天乃は

どうしようもなく、かぶりを振った


天乃「死神ッ」

死神「オヨバレ?」

天乃「貴方、今どういう状況か解らないの?」

死神「ワタシタチヲ、コロスノカ?」

天乃「………?」

死神の唐突な発言

天乃は理解できずに首をかしげる

相変わらずだんまりの神樹

良く判らないことを言い出す死神

募る苛立ちを握り拳に変え、天乃は死神を睨む

天乃「私達って、誰の事よ」

死神「ワタシタチハ、ワタシタチ。デモ、ワタシ?」

天乃「………意味解らないってば」


1、神樹に近づく
2、その私は誰なのよ
3、バーテックスもいないなら戻して
4、いい加減にしないと壊す。と、神樹に言い放つ


↓2


天乃「その私は誰なのよ」

死神「ワタシハ……アレ?」

天乃「あれって……神樹?」

天乃にアレと言いながら死神が小さな鎌を向けたのは

見間違えることなどあり得ない、神樹様だった

死神「ワタシヲ、コロスノカ?」

天乃「………………」

親切にもう一度繰り返す死神から視線を下げて、小さく唸る

つまり

神樹が自分を殺すのか? と聞いてると言うことよね?

それを聞くために

わざわざ、天乃だけを呼んだのだとしたら

相当、急を要する質問だと言うことなのだろうか


天乃「私が神樹に害のある存在かどうか、と言うことよね?」

死神「クオンサント、、ワタシ?」

天乃「貴方、一応精霊なんでしょう?」

死神「クオンサンノ、セイレイ」

はっきりと死神は告げて

天乃の周りをクルクルと回る

天乃「……現状、どう思っているかを、ね」

どうせ嘘をついたところで

神様のスーパーパワーとやらで筒抜けになるのだろう

天乃「私の心でも覗けばいいじゃない」

死神「デキナイ」

天乃「……そう」



1、大嫌いよ
2、破壊してもおかしくはないわね
3、味方だと、過信はしないで置いた方が良いわ
4、私はいつまでも許すつもりはないわよ。あの子たちの事は
5、半々ってところかしらね


↓2


天乃「私はいつまでも許すつもりはないわよ。あの子たちの事は」

明確な殺意と敵意、怒りをぶつけながら

天乃は神樹のことは見ずに言う

見たくなかった

正直なことを言うとき

その怒り、憎しみ、恨みをぶつけるとき

それが視界に映っていたら

僅かにでも、手を出してしまいそうだったから

天乃「絶対、一生。たとえ、私がこの樹海で死んだとしても……許さない」

死神「クオンサンハ、シナナイ」

天乃「死んだら、よ」

死神「シナナイ」

天乃「……そうね」


死神の自信に満ち満ちた言葉に笑うそぶりもなく

天乃は小さく答える

当然、死ぬつもりはない

だけど、もしかしたら死ぬかもしれない

たとえそれが100%の中の0.1%でも

可能性には他ならないから

天乃「三ノ輪銀は死んだ。乃木園子は五体不満足になった。鷲尾須美は、どこにいるッ」

死神「ワシオスミ?」

天乃「あの子だけ、私は最期を知らない」

大赦はすでに亡くなったと言うようなことを仄めかすし

鷲尾邸に行っても

鷲尾須美と言う存在の名残はあれど、存在自体はなかった

天乃「生きているのか、死んでいるのか。それくらい教えなさい」

死神「……………」

天乃「……どうなのよ。言えないっていうことは、死んでるってことなの?」


神樹と天乃の仲介をする死神は

クルクルと周るのを止めて

神樹の方をじっと見つめる

答えを聞いているのか

答えを待っているのか

微動だにしなかった死神は

不意に、天乃の方へと振り向く

死神「クオンサンハ、シッテル」

天乃「なにを」

死神「ワシオ、スミ……ガ、ドウナッタカ」

天乃「………嘘でしょう?」

死神「アレハ、ウソ、ツイテナイ?」

小首をかしげるように体を傾け

死神はその場でクルッと回る

死神「ワシオスミハ……イキテル!」


天乃「……生きてて、知ってる。なんて」

嘘だと思いたかった

でも、嘘ではないのだとしたら……そうなんだろう

鷲尾須美の消息は言った通り知らない

だけれど

鷲尾須美のような人間のことは、知っている

でも、彼女は自分を知らなかった

あれだけ自由なことをしでかし迷惑をかけた天乃を

天乃にとっての今の夏凜のような立ち位置にいた鷲尾須美が忘れるはずがない

死んだと言われたり、もういない、もう亡くなった

そういわれ、生きていると思うのを諦めていた天乃とは違うはずなのに

天乃「………………」

死神「クオンサンハ、テキタイイシキ、アリ。ケイカイレベル、ジョウショウ?」

天乃「っ……」

神樹様が聞きたいことを聞き終えたからか

樹海の景色は大きく揺らいで、消えていった


√ 5月6日目の朝


コンマ判定表

01~10 自宅
11~20 
21~30 病院
31~40 
41~50 お墓
51~60 
61~70 病院
71~80 
81~90 園子
91~00 

↓1のコンマ   空白はなにもなし


続きは次スレにしますこっちは埋めてくださいお願いします


【安価で進行】結城友奈は勇者である【満開3回目】
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