連邦整備兵「安価でMSを改造する」 (859)

──宇宙世紀0096 某地球連邦軍用基地──

整備兵「暇だね…」

連邦兵A「暇ですね…」

連邦兵B「最近ジオンの残党共もすっかり見かけなくなったからな…あっAそれポンね」

連邦兵C「特にこんな何にも無い拠点なんて狙う必要無いしな…まぁ平和に越した事はないけど」

整備兵「Cそれロン」

連邦兵C「なッ!マジかよ!」

連邦兵A「しかしまぁ…いくら暇だからって格納庫で麻雀ってのはどうかと…」
連邦兵B「どうせ仕事なんて草刈りとか雑用が殆どだろ?
    どうしても暇な時間が出来るんだよ」

連邦兵C「でも噂じゃあ市民に給料泥棒って言われてるらしいぜ、俺達」

連邦兵A「そりゃ敷地内の草刈ってたり
    昼間っから麻雀に興じてる軍人なんて見たら誰でもそう思いますよ…」

連邦兵B「仕方ないじゃん。暇なんだもの」

整備兵「でもこのままじゃ俺達の…連邦軍のイメージダウンにも繋がるな…
    何か適当な仕事でもでっち上げないか?」

連邦兵B「適当な仕事って例えば?」

整備兵「そうだな…そこに突っ立ってる>>5(MS)を改造するとか」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1359804425

FAZZ

連邦兵B「FAZZ(ファッツ)か…あのハリボテMSを改造するのか?」

整備兵「元々ZZガンダムフルアーマー装備のスペック検証の為に試作されたMSだから、
   あの機体今じゃお役目御免なんだよ」

連邦兵A「でも勝手に弄るのはマズイですよね?」

整備兵「そりゃそうだろ。あんな骨董試作機を廃棄しないのにも何かしら事情があるだろうし…
   改造については明日上に掛け合ってみるわ。まぁ特別な事情が無い限り大丈夫だろ
上もやること無くて暇らしいし」

連邦兵B「じゃあそれで決まりだな」

連邦兵C「話が終わった所で、もう半チャンやるか」

連邦兵A「まだやるんですか!?」

連邦兵C「暇だからな」

──翌日

整備兵「今さっき上と話付けてきたわ」

連邦兵B「お偉いさんは何だって?」

整備兵「一応改造についてはOK出たわ。ただ条件として>>18機体として改造する様にだと」

安価
①近接格闘機
②中距離支援機
③遠距離戦闘機

サイコミュ搭載広範囲対艦砲・爆撃機

ナニソレ 怖い

整備兵「サイコミュ搭載広範囲対艦砲・爆撃機に改造する様にだと」

連邦兵B「」

連邦兵A「何ですかその無理難題…」

整備兵「いや、案外そうでもないぞ。広範囲対艦砲・爆撃機の点はFAZZの高火力性能で十分引き出せるし、
   サイコミュ搭載の点も過去に鹵獲したサイコミュ搭載機体の物を横流ししてくれるらしい。
   更に、結構な額の予算も出る!」

連邦兵A「えらく高待遇ですね…」

連邦兵C「何でまた…裏でもあるんじゃないの?」

整備兵「実はあのFAZZな、ウチの司令官が半ば趣味で手に入れたような機体なんだよ。
   あんなポンコツでも曲がりなりに『ガンダム』だからな。司令官もどうしても欲しかったらしい」

連邦兵A「どうしてもって…子供ですかここの基地の司令官は…」

整備兵『お前も分かるだろ!
   一度でいいから伝説の“ガンダムタイプ”に乗ってみたいって男のロマン!』

連邦兵A「!?」

整備兵「って司令官が熱弁してた。結局一度デモンストレーションで試乗したキリで、
   後は特に使われる事も無くあのまま放置されてるらしい」

連邦兵A「はぁ…」

コテハンテスト

?「新たなガンダムと聞いて」
?「私の回路がいると聞いて」
?「GP以来ガンダムを弄れると聞いて」

連邦兵B「だとしたら尚更分からんな。何でそんなに大切な機体なのに
    俺達が改造する事を司令官は承諾したんだ?」

整備兵「正直な話、司令官以外の上官達は皆FAZZの存在を煙たがってたんだよ。
   ロクに使わないのに格納庫のスペースは取るし、維持費だってタダじゃ無いしな。
   そもそもそんなMSを置いておくメリットなんて何処にも無いんだよ」

連邦兵B「成る程、だから司令官は言い訳が欲しかったんだな?
    FAZZが廃棄されない為の言い訳が」

整備兵「その通り。司令官もバカじゃないんだから、
   自分のワガママだけでFAZZをここに置いておけない事位分かってたんだ。
   結構悩んでたらしいぜ?苦労して手に入れたガンダムを今後どうするのか」

連邦兵A「そんなに大事にしてたなんて…」

整備兵「相当苦労して手に入れたらしいからなアレ。手放すのは実に惜しかったらしい。
   でも部下の目があるからいつまでも置いておく訳にはいかない。
   そう司令官が思い悩んでいた矢先、俺がFAZZ改造評価試験の話を持ち込んで来たって訳」

連邦兵C「FAZZを置いておく言い訳作りには改造評価試験はもってこいだったって訳か。
    でもそれって司令官の方の言い訳だろ?
    他のお偉いさん達には何て言って改造評価試験を承認してもらったんだ?」

整備兵「この前、トリントン基地が
   ジオンの残党に襲撃されるって事件があっただろ?」

連邦兵C「あー、あのエビラみたいな巨大MAが暴れたアレか」

整備兵「あの事件で活躍したのがバイアランの技術試験計画用の機体だったんだよ。
   MS単独での飛行を、現存の技術と有り合わせのパーツのみで何処まで可能かを試験した機体らしいんだが、
   この試作機、作ってみたら結構な性能のMSが出来上がって、方遅れな機体が殆どだが
最新鋭MSのゼーズールも配備されているジオン軍残党相手に無双的な活躍を見せたらしいんだよ。
   その件にウチのお偉いさん方も感化されちゃったみたいでね。
   俺が持ち込んだ計画もトントン拍子で話が進んだよ」

連邦兵A「上の人もやっぱり暇なんですね…」

連邦兵A「許可が降りた理由は分かりましたけど、何で
    “サイコミュ搭載広範囲対艦砲・爆撃機”なんて無茶苦茶な設定なんですか?」

整備兵「『やるからにはトリントン基地の連中よりもデカい事をやらんと!』って言う司令官のお言葉が原因だよ。
   それで会議で構想を膨らませるうちにトンデモない設定になったって訳」

連邦兵A「そんなトンデモMSなんて…作れるんですか?」

整備兵「まぁ結果的に未完成でも構わないよ。
   元々は市民への仕事してますよアピールの為に計画した様なもんだし」

連邦兵C「そういえばそうだったな」

連邦兵B「それはそうと、テストパイロットは誰が務めるんだ?」

連邦兵C「そりゃお前…」

連邦兵A「何で俺の方を見るんですか…」

連邦兵C「だって、この中じゃ階級一番低いし、一番年下だしな」

連邦兵A「いや理由になってませんよ!テストパイロットを務めるなら
    普通は経験豊富なベテランの方が適任ですよ!」

連邦兵B「どうなの整備兵?誰か決めてる?」

整備兵「いや、会議で決まったのは機体の方向性と
   今後の大まかなスケジュールだけだしな…俺は誰でもいいけど」

連邦兵C「何なのお前?ガンダム乗りたくないの?
    もう二度と乗れないかもしれないよ」

連邦兵A「格納庫で埃被ってるガンダムなんて乗れても嬉しくないですよ…
    それにこの機体、デモンストレーションの時以来動かしてないんですよね?
    もしテスト中に故障して事故でも起きたら…」

整備兵「その時は命に別状は無いとは言い切れないけど、
   一応機体の定期検査は毎回してるんだから問題無いよ。多分」

連邦兵C「何だ、Aは今さらビビってんのか?」

連邦兵A「─ッ!そんなんじゃないですよ!
    ただ俺達が命を賭けるのはあくまでも戦場です!
    こんなしょーもない実験に命を賭けたくないんです!!」

連邦兵C「仕事してますよアピールで死んだら世話ないわなッ!ガハハハッ!」

連邦兵A(うぜぇ…)

整備兵「じゃあどうする?Bやる?」

連邦兵B「いや俺は遠慮しとく。MSの操縦苦手だし」

連邦兵C「右に同じ」

整備兵「じゃあ俺の推薦でAって事でいい?」

連邦兵A「ええっ!何でですか!?」

整備兵「何だかんだでこの中じゃあ一番MSの扱い上手いし」

連邦兵B「確かにな」

連邦兵C「一理ある」

連邦兵A「そうやって俺を上手いこと誘導しようってんじゃないですか…」

連邦兵C「何、拒否しようもんなら上官命令で無理矢理にでも任命するから」

連邦兵A「そんな都合の良い時に上官ヅラして命令なんてしないで下さいよ!」

──翌日 MS演習場──

連邦兵A「結局俺が乗るんですか…」

連邦兵C「ボヤくなよ。適材適所だ」

連邦兵A「こうなった以上もう諦めますよ…」

連邦兵B「ところで初日の今日は何をするんだ?」

整備兵「簡単な慣らし運転だよ。問題点は全て洗い出す必要があるからな」

連邦兵A「ハイパー・メガ・カノンはどうします?装備するだけで随分と重量が変わりますよ」

整備兵「機体のバランスとか調べるだけだから、今日は外していいよ」

連邦兵B「それじゃあA、張りきって行ってこい」

連邦兵C「お前の骨は俺が拾ってやるよ」

連邦兵A「縁起でも無いこと言わないでくださいよ…」

コックピット内──

整備兵『どうだ、通信聞こえるか?』

連邦兵A「聞こえますよ。感度も良好。問題なく扱えます」

整備兵『操作方法はマニュアルに書いてあった通りだから、
   まぁ先ずは慣らし運転のつもりで軽く歩いてくれないか?』

連邦兵A「了解」

ガション ガション ガション ガション

連邦兵B「ところでこの機体、ビームサーベルは装備されてないよな?」

整備兵「そうだな。背部のビーム・カノン砲はZZガンダムと違って
   取り外してビームサーベルとして使う事が出来ないからな。
   まぁ白兵戦も配慮して>>40の機体のビームサーベルを流用するってのもアリかもしれないけど」

ドライセン

連邦兵B「ドライセンのビームランサーとビームトマホークか。
    中々いい趣味してるな」

整備兵「だろ?あのマッシブなFAZZには長い得物の方が見栄えがいいし、
   腰部にでもマウントしとけば場所も取らないだろ」

連邦兵C「でもドライセンってジオンの兵器だぜ?規格合うのかよ」

整備兵「まぁ細かい設定は後で変えておくさ。
   規格が合わないなら多少改良を加えてもいいし」

連邦兵C「…何だかんだで楽しんでないかお前?」

整備兵「俺だって整備兵の端くれだからな。
   機械を弄る時にはこう…たぎる思いってのがあるんだよ」

連邦兵A『整備兵さん、もう随分歩きましたけど…』

整備兵「おう、お疲れ様。じゃあ次は跳躍力の測定と機動力のテストな。
   それが終わったらフルアーマーをパージしてまた同じ事をするぞ」


──10時間後──

連邦兵B「簡単な試験だけの筈なのに、ほぼ1日潰れたな…」

整備兵「詳細なデータを取るにはこれ位の試験が必要なんだよ。
   まぁそのお陰で今後の改造計画に大いに役立つデータが取れたけどな」

連邦兵C「俺とBは殆どやること無くて暇だったな…
今度二人で出来るゲームでも持ってくるか?」

連邦兵A「少しは協力して下さいよ!やることなんて他にもあるでしょ!」


──改造試験 1日目終了──

──翌日 MS演習場──

整備兵「俺なりに昨日のデータを検証してみたんだが、色々と問題点が浮き彫りになったぞ」

連邦兵B「問題点?」

整備兵「まずはFAZZのフルアーマーだが、完全にデッドウエイトになってる。
   フルアーマーパージ時と比べると跳躍力、機動力は半分程度に低下している。
   宇宙空間ならまだ分からないが、地球上じゃあ重力に足を引っ張られるからな。」

連邦兵A「そのくせ起動中に装甲の強制解除が出来ない事も痛いですよね」

連邦兵C「昨日の取り外しには苦労したな…」

連邦兵A「あんたは殆どサボってただろ!」

整備兵「オマケに腹部のハイ・メガキャノンもダミーで射てないし、
   試作機故に装甲の素材もZZガンダムのガンダリウム合金の劣化版だ。」

連邦兵B「ハリボテMSと言われる由縁だな…」

連邦兵A「じゃあフルアーマーは破棄するつもりで?」

整備兵「まぁそうだな。あんな物取り付けてたら目的のMSを作るなんて到底無理だし。
   俺達で新しいフルアーマーを作った方が手っ取り早いな」

連邦兵B「新しいフルアーマー?まさか新しい規格で1から作るってのか!?」

整備兵「流石にそれは無理だな。
   新規格で作るには俺達だけじゃ限界があるし、
   いくら乗り気だからって上がアナハイム他軍事企業に掛け合ってくれるなんて思えないしな」

連邦兵A「じゃあやっぱり…基地にある機体から
    有り合わせで組み合わせて作るしか無いって事ですか?」

整備兵「そう悲観する事でも無いさ。ウチの基地は廃品処理という名の物資調達が頻繁だからな。
   方遅れが殆どだが、パーツに困る事はまずない。
   前もトリントン基地襲撃事件でジオン軍残党から押収した兵器が
   ウチに流されて来たばかりだしな」

連邦兵C「それって殆どジオン製の兵器じゃないの?」

整備兵「いや、一年戦争時の連邦の兵器から、ティターンズやエゥーゴ、ネオジオンの機体まで幅広く揃ってるぞ」

連邦兵A「物持ちいいですねウチの基地…」

連邦兵B「それで、めぼしいパーツってのは見つかったのか?」

整備兵「一応目をつけているパーツならあるぞ。
   サイコミュ搭載広範囲対艦砲・爆撃機なんて大層なMSに似合う、それ相応のパーツをな」

連邦兵C「そのパーツってのは?」

整備兵「まず胸部装甲には>>52のパーツを使う」

え……FAZZって そこまでハリボテ機体だったの 下

連邦兵A「サイコガンダムMk-Ⅲ?」

連邦兵B「Ⅱならまだ分かるが、
    Ⅲなんて聞いたことないぞ?」

整備兵「俺も詳しい事はよく知らん。
   昔ある戦場で猛威を振るったらしいんだが、今じゃ中破した機体が分解されて
   そのパーツが多少格納庫に置いてあるのみだ」

連邦兵B「そんなガラクタ同然のパーツなんて使えるのか?」

整備兵「一応残ってるのは壊れてない使用可能なパーツだけだから、何とか使えるだろ。
   俺の計画上は残存するサイコMk-Ⅲの装甲を加工、繋ぎあわせて追加装甲を作り、
   口径をサイズダウンさせた胸部メガ粒子砲を二門拝借して
   FAZZの腹部にジェネレーター直結で取り付けるつもりだ」

連邦兵A「サイコガンダムの後継機のメガ粒子砲…
    とんでもなく高火力ですね」

整備兵「ただ装甲を加工するのは面倒くさいけどね。
   まぁバラバラのパーツから組み立てるんだから
   そんなに時間は掛からないと思うけど」

連邦兵B「他の部位のパーツはどうするつもりだ?」

整備兵「腰部と脚部の追加装甲は>>65の物を、
脚部のスラスターは>>69の物を、
肩と腕部の追加装甲には>>73の物を、
更に肩には>>75のスラスターを取り付けるつもりだ」

Sガンダム

クインマンサ

リゲルグ

デンドロビウム

連邦兵A「Sガンダムの脚部装甲に
    クインマンサのスラスターに
    リゲルグの腕部装甲とショルダーアーマーに
    デンドロビウムのスラスターって…」

連邦兵C「デンドロビウムって何?」

整備兵「存在が抹消された悲しいガンダムだよ。
   基地の格納庫にデンドロの大型スラスターが2基だけあってね。
   ちょっと小型化して装甲付けて
   リゲルグのショルダーアーマーに取り付ける予定だ」
連邦兵A「Sガンダムの部品なんてよく残ってましたね…」

連邦兵C「α任務部隊にコネでもあるのかねウチの基地?」

整備兵「俺が見つけ出した頃には殆ど部品は無くなってたけどな。
   Sの肩ユニットをFAZZの腰部装甲に追加して
   腰サイドアーマーにはビームカノンを装備、
   脚の追加装甲にはEx-Sガンダムの脚部装甲と増加フロントアーマーを使用する。
   つまりリフレクターインコムが使えるって事だ」

連邦兵B「クィンマンサのスラスターなんてどっから調達して来たんだ?」

整備兵「中には出所不明のパーツもあるからな。
   どっかから滷獲して来たんだと思うけど、
   詳しい事は俺にも分からん」

連邦兵C「リゲルグの腕部装甲とショルダーアーマーはそのまま取り付けるのか?」

整備兵「腕部装甲はサイズが合わないから多少手を加えて
   FAZZの腕に合うように大型化するけど、基本的にはそのまま使うな。
   腕部グレネードランチャーもそのまま取り付ける。
   ガンダリウム合金で無いのは痛いけど、あのデカいショルダーアーマー内に
   プロペラントタンクを増設すれば、
   デンドロビウムの大型スラスターも扱えるようになると思ってな」

サイコガンダムだけだったよね?
とりあえず 完成させるだろうし名前も考えとく?

>>100-101
名前は最後に安価で決めますね

連邦兵A「それでも一発噴出しただけで推進剤空っぽになりそうですけど…」

整備兵「まぁプロペラントタンクの容量については追々考えるさ。
   足りなかったらまた外付けで増設すればいいし」

連邦兵A「随分と大雑把ですね…」

連邦兵B「と言うか根本的な問題として、
    大型MSのスラスターを4基も搭載したMSなんかて飛んで
    パイロットは肉体的に大丈夫なのか?」

整備兵「あーそこは考慮してなかったわ。
   まぁ耐G処理施したり機体にリミッター取り付けるなりで
   適当に対処しとくわ」

連邦兵B「かなり大雑把だな…重要なとこなのに…」

連邦兵A「…やっぱり俺やめていいですか?
    こんな大雑把な計画でこの先生き残れる自信が…」

連邦兵C「諦めろ。もうお前がテストパイロットって事で書類通したんだから」

連邦兵A「………」


──改造試験 2日目終了──

──1週間後 格納庫──

連邦兵B「1週間はパーツの到着待つだけだったから暇だったな」

整備兵「パーツの加工は下請けに任せてたからな。
   まぁ組み立てまでは流石にこっちで受け持ったが」

連邦兵C「じゃあ今日の仕事って?」

連邦兵A「パーツの組み立てと取り付けですよ。
    残念でしたねサボれなくて」

連邦兵C「俺だってやるときはやるわ!」

連邦兵B「それで、どんな感じに作業を進めるんだ?」

整備兵「まぁまずはこれを見てくれ」

連邦兵B「何だこれ、設計図か?」

整備兵「そんな大した代物じゃないよ。
   さっきメモ帳に描いた簡易的な完成図だよ」

連邦兵C「字ィ汚いな…」

整備兵「ほっとけ。それで今日は、まずバラしてある各パーツの組み立て、
   あわよくばFAZZへのパーツ取り付けも行う」

連邦兵A「1日じゃ終わりそうにないですね…」

整備兵「ここの格納庫なら重機や搬送機材が使えるけど、
   俺達4人だけのプロジェクトだからな。
   1日や2日じゃ流石に無理だろ」

連邦兵B「基地の他の連中は呼べなかったのか?皆暇そうだが」

整備兵「呼べば来ると思うけど、人員を増やすとなると上への手続きとかが面倒くさいからな…
   まぁ早急にやるべき作業ではないから別にこれ以上増やさなくてもいいだろ?」

連邦兵C「この気の知れた面子で作業進めた方がやり易いしな」

連邦兵A「俺は別に構わないですよ
    (取り付け作業が長引けばFAZZに乗る時期も先伸ばしになるだろうし…)」

整備兵「組み立てについての詳しい事はこのファイルを見てくれ」

連邦兵C「これがあるならさっきの汚い完成図は要らなかったような…」

整備兵「こういう組み立て作業はまず対象の全体像を理解する事が大事なんだよ。
   何となくでも完成後の機体の予想を立てる事が出来れば、
   作業の効率も上がる」

連邦兵C「そう言うモンなのか?」

整備兵「四の五の言わずに、早速作業に取りかかるぞ」

連邦兵A「あっ!そういえば、
    例のサイコミュ兵器の件ってどうなったんですか?
    滷獲したサイコミュ搭載機体をこっちに流してくれるって」

整備兵「ああ、それなら>>111のサイコミュ兵器を回してくれるらしい」

キュベレイ

連邦兵A「キュベレイのファンネルですか、
    でもそんな物何処に取り付けるんですか?」

整備兵「FAZZのバックパックに
   キュベレイのファンネル・ラックごと取り付ける事は可能なんだが、
   その前に一つ問題があってな…」

連邦兵A「問題…?」

整備兵「…お前ってNT適性ある?」

連邦兵A「えっ!」

連邦兵C「あー…」

連邦兵B「根本的な問題だったな」

連邦兵A「そんなの…あるわけ無いじゃないですか…」

整備兵「だろうなぁ…もしNTなんて逸材だったら
   こんなジオン軍残党にも忘れ去られた様な軍用基地で働いてる訳ないもんな」

連邦兵A「じゃあどうするんですか?
    NT適性のある人間なんてこの中の4人どころか、
    この基地の何処を探しても居ませんよ…」

整備兵「まぁその点については考えが無い訳ではない。
   ただ純正なサイコミュ兵器、ファンネルとしては使えなくなるけどな…」

連邦兵B「どういう事だ?」

整備兵「つまり、ファンネルを普通の人間にでも扱える準サイコミュ兵器、
   “インコム”に近い形に改造するんだよ。
   ファンネルに有線ケーブルを繋いでコンピューター制御用のOSを組み込めば恐らく可能だろう」

連邦兵B「でもそんなんで上の連中は納得するのか?」

整備兵「出来ない事は仕方無いだろ。
   そもそも上の連中の注文が無理難題過ぎるんだよ」

連邦兵C「確かに一理あるな…」

整備兵「まぁ言い出しっぺの俺が言えた義理じゃ無いけどな…
   話も終わった事だし、今度こそ作業を始めるか。割り当ては───」


──某所──

上官「MSの開発だと!?」

部下「はい。工作員の情報によりますと、午前10時からD-2格納庫にて
  MSの組み立て作業が行われていたと」

上官「まさか…あんな無価値な拠点で新型MSの開発か?」

部下「いえ、搬入されたパーツはどれも廃棄寸前のパーツ…ガラクタばかりです。
  情報によりますと廃棄処分になるパーツの再利用という名目で
  旧型MSの改造を行っていると…」

上官「仮初めの平和に甘んじて、地球連邦は腐敗していくばかりかと思っていたが、
  遂に軍用兵器であるMSを使って遊び始めたか…連邦の犬共め!
  一体何処まで堕落すれば気が済むんだ!」

「…良い事じゃないですか」
上官「大尉ッ!?」

「これ程自堕落な活動を送っていると言うことは、
  彼らは完璧に油断していると言う証拠…
  あの程度の軍用基地など今の我々の戦力だけでも簡単に落とせるでしょうね…」
上官「当たり前だ!あんな大義も覚悟も無い軍属共に、
  我々ネオ・ジオンが負けるはずがない!」

「でしょうね…しかし我々が行動を開始するのはまだ先の話です。
  作戦は変更無く、予定通りに進行しましょう。
  時の見方を誤れば、トリントンで没した同士達の二の舞ですよ」

上官「そんな事分かっているわ!
  強化人間風情に言われるまでも無い!」

「…そうですか、分かっているなら結構です。
  それに、この機体の改修も終わってませんしね」

(俺の…クィン・マンサ)

今週からちょっと忙しくなるので投稿スピードは遅くなります
あと改変ミスごめんなさい

↓の絵は>>105で整備兵が適当に描いた完成図のつもりです

http://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org3911581.jpg
予想ではこんな感じになると思います

──2時間後 格納庫──

整備兵「じゃあ次はその装甲板を──」

連邦兵B「おいA、ここ熔接しといてくれ──」

連邦兵A「整備兵さん、リゲルグのここって──」

連邦兵C「…そろそろ休憩しない?俺もう疲れたよ」

連邦兵A「30分前に休憩取ったばかりでしょ!」

連邦兵C「うるさい。慣れない作業は神経使うんだよ。
    いいだろ整備兵?」

整備兵「まぁ今日は初日だから、軽めの進行でもいいか。
   じゃあこの作業が終わったら休憩を──」

司令官「おお!やってるな
   私のガンダムの改造作業!」

連邦兵A「あっ!司令官!」

連邦兵C「中将殿!」

司令官「いいよ敬礼なんて。
   構わず作業を続けてくれ」

連邦兵B「何故司令官がここに?」

司令官「現状視察だよ。まぁ部下に黙って
   仕事切り上げて出て来たから実際はサボりだが」

整備兵「司令官、この度はFAZZ改造実験を承認して頂き、
   ありがとう御座います」

司令官「礼には及ばんよ。
   いやむしろ感謝しているのは私の方だ!
   廃棄処分になっても可笑しくないこのガンダムを、
   君たちが新たに蘇らせてくれるのだからな!」

連邦兵A「詮索するようで恐縮ですが、
    何故このガンダムにそんな思い入れを?」

司令官「…あまり大きい声では言えんが、
   私は旧型MSの配備に託つけて珍しいMSを収集する事が趣味でな。
   (あくまで軍用兵器だから私物化は出来ないが)」

連邦兵A(それって職権乱用じゃ…)

司令官「特にそのFAZZは色々とコネ使ったり書類をでっち上げたりして
   やっとの思いで手に入れた、唯一完璧な状態で手に入ったガンダムだから
   思い入れが強いのだよ」

連邦兵A(それって軍法会議ものじゃ…)

司令官「私の話はここまでとして、君達の作業の方はどうだ、順調か?」

整備兵「はい、パーツも殆ど完成した状態で搬入されて来たので、
   後は組み立ててFAZZに取り付けるだけです。
   OSの調節も考慮すると、最短であと5日程で完成します」

司令官「ほう」

整備兵「それと本機の追加武装ですが、
   キュベレイのファンネル10機とファンネル・ラック、
   そして高火力武装の>>140、爆撃兵器の>>145が2日後に搬入予定です」

じゃあ変更して
>>139 >>142

ボールの主砲

180mm低反動砲はつよいでー ガンタンクにも使われたし…実弾だし

デンドロビウムのコンテナミサイル

ミノフスキークラフトの小型化が必要
つかこんなの使いものにならねぇ!

司令官「ボールの180mm低反動砲に、デンドロビウムのコンテナミサイルか…」

整備兵「この武装は本機のコンセプトである
   “サイコミュ搭載広範囲対艦砲・爆撃機”の“広範囲対艦砲”と“爆撃”の武装にあたります。
   180mm低反動砲はバックパックの背面に左右2門ずつ、計4門装備します。
   各砲に通常榴弾、焼夷榴弾、徹甲弾、対艦砲弾、等のタイプの違う弾丸を装填し、
   弾種の切り替えの簡略化を図っています。
   そしてデンドロビウムのコンテナミサイルは
   本機のデンドロビウム製大型スラスターに装備する予定です。
   流石にオーキスごと本機に装備する事は重量的に不可能なので、
   オーキス内部に内蔵されているマイクロミサイル・コンテナを左右に1基ずつ計2基と、
   大型集束ミサイルを左右に3基ずつ計6基を外付けで装備します。」

司令官「MS単機にしては過剰なまでの火力だな…
   しかしそれ程の武装を追加装備したら機動力を著しく損なうのではないか?」

整備兵「その問題点は使用した武装をパージするという方法で解消しています。
   そして本機の主な戦法は、遠距離から高火力兵器による敵部隊勢力への面制圧を行い、
   敵部隊勢力を切り崩した後に大型スラスターの爆発的推進力で敵陣に突入、
   本機に内蔵されている高出力ビーム兵器で相手に壊滅的なダメージを与え、戦線を離脱するという
   ヒット&アウェイ戦法を取り入れる予定です。」

司令官「素晴らしい想像以上だ!
   一騎当千のMSとはまさに男のロマンじゃないか!」

整備兵「しかし問題点はまだ山積みです。
   それは試験を重ねて解消していきますが…」

司令官「足りない物があったら何時でも言ってくれ!
   私個人としてもこの改造実験は楽しみにしているのでな」

部下「司令官!こんな所にいたんですか!?」

司令官「部下が来たか…じゃあ私はこの辺で帰らせてもらう。
   完成、楽しみにしてるよ!」

タッタッタッタッタ…

連邦兵B「帰ったか…」

連邦兵A「嵐のような人でしたね…」

連邦兵C「って言うか整備兵、お前何気にトンデモない設計考えてたんだな…」

整備兵「これでも自重した方なんだけどな。
   まぁ実戦配備なんて考えて無いんだから、多少無茶苦茶なMSの方が面白いだろ?」

連邦兵C「お前結構マッドエンジニアなんだな…」

──改造試験(組み立て作業) 3日目終了──

──それから7日後──
連邦兵A「遂に完成した…」

整備兵「まだ細かいOSとかの設定が残ってるけど、まぁそれは俺の専門だな。
   組み立て作業は一応完了だ」

連邦兵C「何だか久しぶりに“仕事した”って感じだな」

連邦兵A「サボり魔がそれ言いますか…」

連邦兵B「そういえば、このMS“頭”はまだ弄ってなかったな。
    首から下は原型機の面影が無い程ゴテゴテしてるのに」

整備兵「頭部の改造も一応考えててあるぞ。それも複数種」

連邦兵A「複数種?」

整備兵「FAZZは頭部のハイメガも、腹部ハイメガと同じでハリボテだからな。
   『それならハイメガの部分を取り外して新しいパーツを取り付けた方がいい。』
   そう思って追加パーツを色々考えてたんだが、どれも捨てるには惜しくてな。
   それならと思って、戦局に応じて必要なパーツの交換が出来るように考えてたんだ」

連邦兵C「新しいパーツって、例えばどんな?」

整備兵「180mm低反動キャノン砲の砲撃を補助するスコープとか、
   戦闘支援用のOSとか、
   >>170とか」

隠し腕

連邦兵B「やっぱりお前は変態(マッドエンジニア)だな」

整備兵「いいじゃん。男のロマン満載で」

連邦兵A「隠し腕って何持たせるんです?」

整備兵「やっぱりビームサーベルだな。近接戦闘での補助武装として考えてたし」

連邦兵C「他には?」

整備兵「>>180とか>>182とかも出来たら取り付ける予定」

ゼロシステム

月光蝶

連邦兵B「ゼロシステムって?」

整備兵「どっかの研究所が作った試作システム」

連邦兵C「月光蝶って何?」

整備兵「どっかの研究所が作ったナノマシンの試作品。
   どっちも実験段階の代物だから、試験結果を報告する変わりにタダ同然で貰ったんだ」

連邦兵A「それって良いように利用されてるんじゃないんですか…」

整備兵「まぁ貰える物は貰っとかないと勿体ないだろ」

連邦兵A「こいつに乗るの俺なんですよ!
そんな得体の知れない物なんて取り付けないで下さいよ!」

連邦兵B「そういえば隠し腕もそのなんとかシステムもなんとか蝶も
    現物はここには無いよな?」

整備兵「頭部は精密機械の塊だから、
   他のパーツみたいに存外のパーツを取って付けるみたいな事が出来ないんだよ。
   だから新しい規格で作る必要があってね、それで時間が掛かってるんだよ。
   ゼロシステムと月光蝶に関しては研究所の都合で遅れてるらしい」

連邦兵C「パーツの取り付け作業はもう全部終わったんじゃなかったの?
    俺もう作業すんのやだよ」

整備兵「頭部パーツは取り付けるだけなら結構簡単に出来るから、
   作業なら俺一人で十分だ」

連邦兵A「じゃあ暫くは今の頭部パーツのままで改造試験をやるんですか?」

整備兵「まぁそうだな。頭部パーツの取り替えは
   別に歩行試験とか他の改造試験には差し支えないし」

連邦兵C「パーツの取り替えが無いって事は、今日は何するんだ?」

整備兵「簡単な歩行試験、それと…」

連邦兵A「それと?」

整備兵「あの大型スラスターのテストだ」

連邦兵A「oh…」

>>47で新規格じゃパーツが作れないって言ってたけど
頭部の新規格はパーツが少なかったから可能だったって事にしといて下さい…

──それから2時間後──

整備兵「機体の調整終わったよ」

連邦兵B「じゃあ早速始めるか…気合い入れてけよ、A」

連邦兵A「正直あんまり気乗りしませんが…」

──MS演習場──

連邦兵A「コックピット内部も結構様変わりしましたね」

整備兵『新しい装備に合わせて操縦系も色々弄ったからな。
   まぁ基本的な事はそんなに変わってないから、お前ならすぐに扱える様になるさ』

連邦兵A「あまり買い被らないで下さい…
    気を取り直して、ガンダム機動します」

ギュピン!

整備兵『A、今から歩行試験を開始する。』

連邦兵A「了解」

ガッシュイン… ガッシュイン… ガッシュイン…

連邦兵C「重そうだな…」

整備兵「装備を増しに増した機体だからな。
   そりゃあ重くもなるさ」

連邦兵B「しかしこれ程重いと機動力もクソも無いな…」

整備兵「足りない機動力は大型スラスターで補うつもりだ。
   ただその分推進材に頼ることになるから、
   活動可能時間は元のFAZZと比べて短縮されるな」

連邦兵B「やっぱり重要なのはあの大型スラスターか…」

──1時間後 歩行試験終了──

連邦兵C「いよいよお待ちかねの“飛行、跳躍力試験”だな」

連邦兵A「俺からしたら一番遠慮願いたい試験なんですけど…」

連邦兵B「そんなに嫌なのか?」

連邦兵A「大型スラスターの噴射の勢いで機体が空中分解しないか不安なんですよ…」

整備兵「その点は俺の設計を信じろ。
   それより問題なのは、加速による機体のGにAの身体が耐えられるかだな…」

連邦兵A「前にBさんが懸念していた点ですよね?
    多少のGなら耐えられる自信はありますけど、そんなにヤバいんですか?」

整備兵「元が大型MSのスラスターだからな…凄まじいのが予想されるぞ。
   まぁ万が一お前の意識が飛ぶような事があっても大丈夫なように
   さっきガンダムのバックパックに、緊急時にオートで展開するパラシュートパックを装備しておいた。
   これならお前が意識を失った後、推進材を切らした機体が高所から降下する事があっても地面に激突せずに済む」

連邦兵A「そんなに凄まじいGが予想されてたのに、
    何で耐G処理を施さなかったんですか!?」

整備兵「すまん。機体の改造の方に夢中になってて
   パイロットの耐G処理についてすっかり忘れてたわ」

連邦兵A「………」

──それから10分後──

整備兵『A、気分はどうだ?』

連邦兵A「内心穏やかじゃありませんよ…
    これから死ぬかもしれないんですから…」

整備兵『大袈裟な…大丈夫だよ。
   ガンダムはこの程度じゃ壊れないし、
   スラスターの出力は70%程度しか出さないから加重でAが死ぬ事も無いよ。
   Gはちょっとキツいかもしれないけど』

連邦兵C『A、最後に言い残す事は無いか?』

連邦兵A「話の流れぶった斬って縁起でも無いこと言わないで下さい!
    もう始めますよ!」

ブオォォォ…

連邦兵C「おお、エンジンに点火しただけなのに凄い迫力」

連邦兵B「肩部、脚部大型スラスター共に異常無し、
    整備兵、いつでも行けるぜ」

整備兵『よしA、飛ばしてみてくれ』

連邦兵A「了解──」


ド ワ オ ォ ォ ァ ァ ァ!!

連邦兵B「!!?」

連邦兵C「凄ぇ!もうあんな所まで飛んだぞ!」

連邦兵B「言ってる場合か!
    レーダーで追尾開始!」

整備兵「A!応答しろ!A!」

連邦兵A『う゛っ──う゛ぅぅっ!!──』

整備兵「スピードは落としてもいい、レバーを引け!」

連邦兵A『うっ…腕が動かない…』

連邦兵C「これは…マジでヤバくないか?」

連邦兵B「A!しっかりしろ!」

連邦兵A『なッ…内臓が…飛び出す…』

整備兵「…凄い!何て爆発的な推進力なんだ!
   このまま飛べば成層圏まで到達する勢いだ!
   70%でこれ程までの加速性能…
   流石0083のオーパーツと言われただけの事はある!」

連邦兵C「言ってる場合かこのマッドエンジニア!
    どうするんだよ、実験中止にするか!?」

整備兵「いや、今さら実験を中止にするなんて不可能だ。
   Aには悪いがもう少しGに耐えてもらうしかない」

連邦兵A『かっ…顔が…崩れてゆく…』

連邦兵B「整備兵、今モニターで確認したが、
    スラスターの推進材量がどんどん減少していってるぞ」

整備兵「何ぃ!?デンドロビウムの大型スラスターにはプロペラント・タンクを内蔵し、
   他のスラスターにも多少ながら改良を加えたというのに…
   それでもまだ足りないというのか!」

連邦兵C「お前さっきからキャラおかしくなってるぞ…」

連邦兵B「あっ」

連邦兵A『もう…限界…』

連邦兵B「推進材が、切れた…」

ヒュルルル~

連邦兵C「おい落ちてくるぞ!」

整備兵「心配無い」

ボフッ

整備兵「パラシュートは正常に作動したな。
   これで無事にAとガンダムが回収出来る」

連邦兵B「いや…これAが無事って保証は何処にも無いだろ?」

──A救出後──

連邦兵A「ブラックアウト寸前でしたよ…」

連邦兵B「お前が無事で何よりだ。衛生兵呼ぼうか?」

連邦兵A「いえ大丈夫ですよ…後で自力で医務室に行きますから。
    それにしても整備兵さん…」

整備兵「すまん。最初はちゃんとAの事心配してたんだけどな…
   途中から熱入っちゃったと言うか…」

連邦兵A「俺も覚悟の上でしたから恨んじゃいないですよ。
    ただし次回からはちゃんと耐G処理しといて下さい」

整備兵「司令官に掛け合ってみる…」

連邦兵B「俺的にはいつも不真面目なCが取り乱していた事に驚きだが」

連邦兵C「流石の俺も非常時の時までふざけてないわ」

整備兵「気を取り直して、さっきの飛行試験の検証結果を報告するぞ。
   やっぱり燃費がバカみたいに悪い。
   特にデンドロビウムの大型スラスターは推進力が驚異的な分
   推進材の消費が著しくて、2分もしないうちに空になった」

連邦兵B「だがその分スピードは驚異的だったな」

整備兵「その点は目を見張る所があるな。
   大気圏内であれ程の推進力が出せるという事は、ヒット&アウェイ戦法を取り入れる予定の本機にとって大きなアドバンテージとなる。
   そこで考えたんだが、デンドロビウムの大型スラスターは敵陣突破、離脱等の緊急時に限定して使用するようにしよう。
   ただ活動するだけなら他のスラスターで十分だから、通常機動時はそれで機動力を補えばいいしな」

連邦兵A「それじゃあプロペラント・タンクの増設はしないんですか?」

整備兵「必要ならばやるけど、今あの大飯食らいに取り付けた所で焼け石に水だろうし…
   暫くは今のままでテストするつもりだ」

連邦兵A「暫くって…あとどのくらい飛行試験するんですか?」

整備兵「こればっかりは重要な試験で手抜かり出来ないからな。
   有効なデータが取れるまで何週間でも、何ヵ月でも続けるぞ」

連邦兵A「………」

整備兵「…まぁ今度はちゃんと耐G処理しとくから」

連邦兵A「それならいいんですけど…」

連邦兵C「お前も大変だな…」

連邦兵A「同情するくらいならテストパイロット変わって下さいよ!」

連邦兵C「それはやだ」

連邦兵A「………」

── 一週間後 MS演習場──

ド ワ オ ォ ォ ァ ァ ァ!!

連邦兵A『う゛ぐぅッ!──』

連邦兵B「司令官のコネで手に入った耐Gスーツのお陰で、
    Aへの負担も随分と減ったな」

整備兵「飛行データの収集も良好だし、予定よりも早く飛行試験は終われそうだ」

連邦兵C「順調だな。もうMSとしては十分戦えるんじゃないの?」

整備兵「ボールのキャノン砲とデンドロビウムのミサイル系の火器試験とか、
   研究所から借りる兵器の試験とか他にも諸々あるけど、
   まぁMSとしては完成と言っても差し支えないかな」

司令官「そう言うことなら話が早い!」

連邦兵B「うぉ!司令官!」

連邦兵C「いつからここに!?」

司令官「今さっきからだよ。
   ところで、本当にこのガンダムはMSとしてはもう十分に戦えるのか?」

整備兵「まぁ備え付けの武装も、腹部メガ粒子砲2門、背部ビーム・キャノン2門、腰部ビーム・キャノン2門、
   腕部グレネード・ランチャー2門、改造ファンネル10基、リフレクター・インコム2基、
   ビームサーベル2基、ビームトマホークとビームランサーが1基ずつ、等と十分にありますし、
   機動試験も一通り終わったので戦闘は出来ない事もないですが…」

司令官「十分と言うより過剰だな…それなら問題無いな!
   実は改造中のガンダムでの模擬戦を計画したいと思ってな、
   こうして整備兵の所へ意見を聴きに来たのだ」

整備兵「模擬戦ですか…戦闘データの収集も
   いつかやる予定ではありましたが、
   しかし何故今のタイミングで?」

司令官「実は改造試験の進行具合を知りたいという部下からの意見を聞いてな、
   それなら数値化されたデータで見るよりも、実際に戦っているガンダムの姿を見た方が理解が早いと思って、
   私が模擬戦の計画を思い付いたと言うわけだ」

整備兵「なるほど…こちらとしても現段階でのガンダムのポテンシャルを測る為に、
   模擬戦は悪くない話ですね。」

司令官「そうか引き受けてくれるか!なら今から今後の予定を伝えておくぞ!」

連邦兵C(ガンダムの模擬戦はただ自分が見たいだけなんじゃあ…)

司令官「──と言うわけで、具体的な計画は明後日の会議で決める予定だ。
   整備兵、会議には君にも出てもらうからよろしく頼む!」

整備兵「了解。」

──それから3日後──

整備兵「昨日の会議で決まった模擬戦の予定について報告する。
   日時は2日後の13:00、場所はB区画の演習場、
   今回の模擬戦はガンダムと敵役のMSとの一対一で行う」

連邦兵C「模擬戦って基地の敷地内でやるのか?
    外のもっと広い演習場でやれば集団での模擬戦も出来るのに」

整備兵「集団での戦闘ではなく一対一の白兵戦の方が機体のデータ収集には向いてるから、
   狭い基地内の演習場で十分なんだよ」

連邦兵A「一対一って、対戦相手はもう決まったんですか?」

整備兵「あー、その対戦相手なんだが…
   上との会議の結果Bにやってもらう事に決定した」

連邦兵A「Bさんが対戦相手!」

連邦兵B「何で俺が?」

整備兵「ガンダムの改造実験に立ち会っていて、機体性能を熟知しているお前が対戦相手なら、
   敵の目線からガンダムの問題点や改良点を見つけ出すことが出来ると思ってな」

連邦兵B「命令って事なら引き受けるが、MSは何か用意されるのか?」

整備兵「Bには>>267が支給される予定だ」

ジ・OⅡ

連邦兵B「ジ・O IIか…随分前にジオン軍残党から滷獲した機体だな?
    しかし何だってあのデカブツを…」

整備兵「重量級MSVS重量級MSのエキシビション・マッチが見たいっていう
   司令官の要望があってね」

連邦兵A「またあの人か…」

整備兵「まぁ相手になる機体なんて何でもよかったから別にいいんだけど。
   それよりもB、ジ・O IIには乗ったことあるか?」

連邦兵B「前にちょっと弄った程度だが、大丈夫だ。
    俺に扱えない機体ではない」

整備兵「じゃあその点については問題無いな」

連邦兵C「武装についてはどうするんだ?
    まさか二人に“共食い”させるんじゃあないだろうな…」

整備兵「どこの吸血部隊だよ…そんなことしないから安心しろ。
   実弾装備にはペイント弾を装備し、ビーム兵器は低出力で破壊力皆無の特殊光が発射される仕様に変更する。
   ただ眩しいだけの光だが、相手の機体がその光に触れるとコンピューターがそれを読み取り、
   機体に擬似的なダメージが表示されるって仕組みだ。
   ビームサーベルも同じように演習用の物を使う。
   模擬戦の説明についてはこんなもんかな、もう質問はないか?」

連邦兵B「問題無い」

整備兵「質問がないなら、今度はガンダムの改造作業に取りかかるぞ」

連邦兵A「模擬戦まであと2日しかないのに、まだ何か取り付けるんですか?」

整備兵「先日完成した頭に装備する隠し腕の取り付け作業だ。
   ガンダムの性能自体には差し支えない装備だから、模擬戦の前に取り付けて置きたくてね」

連邦兵A「頭に隠し腕って、
    改めて考えてみると妙な所に付いてますね…」

整備兵「このガンダムのビームサーベルまで届くように設計されてるから、
   膝まで腕が伸びるぞ!」

連邦兵C「お前ってよくもまぁ妙な物考えるよな…」

次回から戦闘描写が加わりますが、
それに伴って多少地の文を追加する事がありますのでご了承下さい。

あと遅ればせながら、数多くの安価&レスありがとうございます!

──模擬戦当日──

司令官「遂にこの日がやってきた…
   改造ガンダムのお披露目も兼ねた模擬戦!
   ギャラリーも随分と集まって盛り上がっているな!」

部下「何しろ今回の模擬戦は基地内の兵士以外に、マスコミを初め一般市民にも公開していますからね。
  普段これと言った仕事のない我々への市民の風当たりは強いですから、
  今回の改造ガンダムの模擬戦はいいイメージアップになりますよ」

司令官「市民へのイメージアップにも繋がり、尚且つ我々も楽しめる…
   まったく整備兵の改造計画様々だよ!ハァーッハッハッ!」

部下(我々じゃなくてあんたが個人的に楽しみたいだけだろ…)

──格納庫──

整備兵「よし、機体調整は終わった。
   後は会場であるB区画のMS演習場にガンダムを搬送するぞ」

連邦兵A「キャノン砲とミサイルは装備しないんですか?」

整備兵「その武装はまだ火器試験が終わってないからな。
   今回は基本装備と、模擬戦用の手持ちライフルのみで行う予定だ」

連邦兵C「そう言えばBの奴の姿が見えないけど、
    先に向こうに行っちゃったか?」

連邦兵A「Bさんならジ・OⅡの整備点検があるとかで、
    今はF区画の方の格納庫にいますよ」

──F区画の格納庫──

モブ兵「ペイント弾の装填、推進材の補充完了、
   作業はこれで全て終了です」

連邦兵B「おう、お疲れ様。
    しかしこいつも相当なバケモノだな。
    火力は通常のMSの軽く5倍、
    更に重装甲な上にホバーによる高速移動も可能とは…恐れ入るよ」

モブ兵「こんな怪物MSが相手だと、
   いくら噂の改造ガンダムでも勝てないんじゃ…」

連邦兵B「身内を買い被る訳じゃないが、俺達が作ったガンダムも相当なバケモノMSだ。
    このジ・OⅡが相手でも、機体性能なら引けを取らないだろうな」

モブ兵「そんなに凄いMSなんですか!?」

連邦兵B「詳しい事は、模擬戦を見てからのお楽しみだ。
    ただ今回は改造ガンダムの戦闘データの収集が目的だから、
    どっちも本気で戦うことは無いがな」

モブ兵「そうですが…Bさんの操縦テクが見てみたかったから
   ちょっと残念です…」

連邦兵B「そういう話なら、俺なんかよりガンダムに乗るAの方が
    よっぽど良いパイロットなんだから、そっちを見てた方が面白いぞ?
    …って、もうこんな時間か
    雑談はここまでにしといて、早いとここいつの搬送作業に取りかかるぞ」

モブ兵「私、ガンダムよりもBさんの方を応援しますから…
   模擬戦、頑張って来てくださいね!」

連邦兵B「だから本気は出さないって…
    でもまぁ、模擬戦が盛り上がるよう努力はしてみるよ」

──B地区 MS演習場──

ワー! ワー!

連邦兵C「凄い事になってるな…」

連邦兵A「まさかここまで人が集まってるとは…」

整備兵「たかがMSの模擬戦なのに、お祭り騒ぎだな。
   これはちょっとでも手を抜いて戦ったらギャラリーから苦情が来るな」

連邦兵A「じゃあ本気で倒す勢いで戦えって言うんですか?」

整備兵「そんな肝っ玉据えて掛かんなくてもいいよ。
   ギャラリーが満足するように“見せる戦い”ってのをやればいいんだよ。
   プロレスみたいに」

連邦兵A「それはそれで、俺にとっては難しい注文ですね…」

整備兵「まぁそういうエンターテイメントな戦い方はBの方が上手くやってくれるから、
   あいつに任せれば何とかなる。
   お前は周りの事なんか考えずに、いつも通りやってればいいさ」

スタッフ「Aさん、そろそろMSへの搭乗の方よろしくお願いします」

連邦兵A「あっ、今行きます!」

整備兵「それじゃあA、頑張ってこいよ」

連邦兵C「負けたらお前晩飯おごりな」

連邦兵A「嫌ですよそんなの!」

──開会の言葉とルール説明──

司令官『只今より、改造ガンダムVSジ・OⅡの模擬戦を開始する!
   今回は一対一の時間無制限、B区画のMS演習場全ての面を擬似的な戦場として扱い行われる。
   向かい合う互いのMSの間には多数の障害物が設置されている。
   その障害物の大きさは30m級の大型MSが隠れられる程巨大なモノだ。
   それらを上手く駆使して戦ってくれ!
   ダメージ換算は着弾点からコンピューターが計算、擬似的なダメージとして機体に反映される仕組みだ。
   加算されたダメージが一定値に達する、もしくはコックピット等機体の急所に攻撃が直撃した場合、MSは機能停止に陥る。
   即ち敗北が決するという事だ!
   長々と説明してきたがルール説明は以上だ。
   それでは、二人のパイロットの健闘を祈る!』

ギュピーン!

連邦兵A「システム起動確認、いつでも行けます」

連邦兵B『それじゃあA、お手柔らかに頼むぞ』

連邦兵A「あくまでも模擬戦ですからね。
    そんなに本気は出しませんよ」

スタッフ『開始のタイミングは機体のモニターに表示されるので、
    それで確認して下さい。』

連邦兵B『了解』

─ready…─

連邦兵C「なぁ整備兵、MSでの勝負ならAとBどっちが勝つと思う?」

整備兵「MSの操縦に限った話なら、Aの方が技術もセンスも上だ。
   その点は多分、B自身もよく分かっているだろう」

連邦兵C「じゃあAの方が強いと?」

整備兵「…いや、BにもAより勝っている点が一つだけある。それは…」

GO!!


ガガガガガ!!


連邦兵A「!?」

整備兵「射撃がバカみたいに上手いって事だ」

Aは女か?

ジ・OⅡのマシンガンが放った弾丸は、障害物の間を縫って真っ直ぐガンダムの方に向かって行った。

連邦兵A「Bさんお手柔らかにって言ってたのに!!」

Aはガンダムの脚部スラスターを目一杯噴かし、真横にある障害物の陰まで移動した。
とっさに回避行動を取りコックピットへの直撃は免れたが、
2発のペイント弾が右ショルダーアーマーに被弾した。

『肩部に被弾 ダメージレベル20 損傷軽微』

モニターに被弾した部位のダメージレベルが表示される。
ダメージレベルが100に達すると、その部位は機能停止に陥るという仕組みだ。

連邦兵A「クソッ!一旦模擬戦が始まったらBさんとの通信が取れなくなる。
    これじゃあ文句言いたくても言えないな…
    たかが模擬戦で、何で不意打ちして来るんだよBさん!」


Aが悪態を付いているその頃、ギャラリーでは──

整備兵「あの距離から、しかも障害物の隔たりがあるにも関わらず相手に当てるとは…流石だな、B。
   Aの方も、よくあの不意打ちをとっさに避けられたもんだよ」

連邦兵C「…って言うかBの奴、何であんなマジになって射って来たんだ?
    さっきのどう見ても直撃コースだったろ」

整備兵「いや、Bの奴も本気で倒すつもりなんて無かったと思うぞ。
   あいつが本気なら、直ぐにでも追撃ミサイルなり撃ち込んで攻撃の手を緩めない筈だ。
   だが今のあいつはそれをしない、
   きっとAの腕なら避けられると判断して
   あいさつ代わりに射っただけだろ」

連邦兵C「…つまり、BはAの奴があの銃撃を回避する事を
    計算した上で攻撃したって事か?」

整備兵「真意の程は、Bにしか分からないけどな」

>>297
基本敬語なしゃべり方ですが男です。

この模擬戦に使われている障害物は、市街地戦を想定して配置されている。
故に障害物はビル群に見立てられ配置されており、同じようにMSが移動する空間は、
複雑に要り組んだ市街地の交通道路を模している。
その空間はエリアによって広さが違い、MS1機がやっと入れる程度の幅から、大型のMSが2機並んでも余裕な程広大な幅の場所まで様々である。
そしてその空間は“道”として全てが繋がっている。

AとBのスタート位置は、どちらもMSが1,2機程度しか入れない幅の空間しかない場所で、
大型MSでは満足に動く事すら出来ない程の幅しかない。

連邦兵A「そっちがその気なら!」

Aは障害物に隠れたまま、改造ファンネルをBの駆るジ・OⅡに向けて射出した。
障害物越し故に大体の位置しか分からなかったが、
狭い空間で広範囲に展開したファンネルから逃れる事は難しく、十分効果的な攻撃だった。

連邦兵B「流石にいきなり不意打ちってのは悪ふざけが過ぎたか?」

ジ・OⅡにガンダムの射出した改造ファンネルが迫って来る。
目視でそれを確認したBは、直ぐさま対策を考えた。

連邦兵B「ファンネルか…確かにこんな狭い場所で
    一斉に撃ち込まれたらひとたまりも無いな。
    だが…」

数秒間考えた後、Bはホバー移動でスタート地点である狭い小道を爆走した。

連邦兵B「このファンネルは、NT適性の無いAが扱えるように
    チューンダウンした劣化版ファンネルだ。それ故に動きが単調的でノロい。
ジ・OⅡのホバークラフトのスピードには到底追い付けないだろう。
    それにこの重装甲は2,3発程度のビームなら耐えられる計算だ。
    包囲されて一斉射撃ならまだしも、中,遠距離から発射されたビームなら多少喰らったとしても問題ない」

走り去るジ・OⅡの包囲に失敗したファンネルは、ジ・OⅡに向け追尾を開始した。
しかしその圧倒的なスピードにファンネルは付いて行けず、どんどん引き離されて行く。

連邦兵A「包囲は出来ないか…なら!」

包囲を諦めたAはビームを連射する。だが

連邦兵B「もう遅い」

既にファンネルは、ジ・OⅡのマシンガンの射線上に入っていた。
ファンネルは既に何発かビームを発射していたが、
機体の重装甲に阻まれ、致命的なダメージを与える事は出来なかった。

連邦兵B「射撃に関してはまだまだだな、A」

Bは多少の被弾には気にも止めず
空中に漂うファンネル目掛け、マシンガンを連射した。

連邦兵A「何ッ!」

Bの駆るジ・OⅡのマシンガンは、空中に浮遊するファンネルを確実に射抜いていった。
慌ててファンネルを散開、回避させようとしたAだったが既に遅く、
機械のように正確なBの射撃により10基のファンネル全てにペイント弾が着弾した。

『武装《ファンネル》全機被弾 ダメージレベル100 機能停止』

連邦兵A「ファンネルが…」
擬似的ダメージが掛かったファンネルは機能が停止、
浮力を失ったファンネルは地面に落下した。
その後もBの駆るジ・OⅡはスピードを止める事なく、その場から立ち去って行った。

連邦兵B「熱くなり過ぎだA。
    そんな小細工程度の攻撃なんて、面白くもなんともないぞ?」

Aは、ジ・OⅡの機影を完全に見失った。

連邦兵B「俺の見せ場はこれで十分。
    A、今度はお前の番だ。
    お前とそのガンダムで、このジ・OⅡを倒してみせろ!」

──Aがジ・OⅡを見失ってから2分後──

ジ・OⅡの機影を見失ったAだったが、その場から動こうとはしなかった。

連邦兵A「ちょっと、冷静になって考えてみよう。
    この入り組んだ道で、ただ闇雲に動いてBさんと鉢合わせにでもなったらどうなるか…
    恐らく、早打ちの腕前からして俺に勝ち目はないだろうな。
    だが、それは銃撃戦に限った話…
    Bさんの弱点、近接格闘戦に持ち込めば俺にも勝機はある!
    …だが今俺のいる場所は近接格闘には適してない狭い空間だ。
    出来ることなら、回避行動が十分可能な程広い空間にBさんを誘き寄せて、
    そこで戦闘に持ち込みたい。
    だがそれも難しいだろう…
    俺もBさんも、この模擬市街地の構造を全く把握していないからな
    お互いどこにどう道が繋がって、どれ程の空間が空いてるのかさえ分かっていない」

Aは更に思考を巡らせる。

「それなら、まず優先すべきは相手の索敵だ。
    この模擬戦はミノフスキー粒子散布下の戦場を想定している設定故に、
    レーダーの類いは役に立たない。
    だから、別の索敵方法を行う」

Aは外部集音機の感度を限界まで上げた。

連邦兵A「ジ・OⅡの移動方法はホバー移動だ。
    それ故に走行する度にホバー音が発生する。
    しかもその音は、ジ・OⅡの巨体を支える程強力なホバークラフトから発する音、
    相当な爆音だ。探知は容易い。
    つまりこの状況で最も適している方法は、集音機による探知だ」

ゴオオォォォ…

連邦兵A「聴こえる…ジ・OⅡのホバークラフトの音だ。
    これでBさんの位置は大体把握出来る。
    大体だからレーダーのように正確な位置までは分からないが、今はこれで十分だ」

Aの現在地である狭い道は、突き当たりの曲がり角まで横道の無い直線の道である。
ジ・OⅡが現れるなら、Aから見て左右どちらかの突き当たりの曲がり角の道からしかあり得ない。
何故なら、その巨体故に跳躍出来ないジ・OⅡは障害物を飛び越えての移動は出来ないため、
移動するには必ず道を渡る必要があるからだ。

連邦兵A「右と左、どっちからのルートで来る?
    ある程度近づいて来たらそれも把握出来るが…」

ゴオオォォォ…

連邦兵A「さっきまで遠ざかっていたホバー音がこっちに近づいて来る…
    Bさん、そろそろ仕掛けるつもりか?」

ゴオオォォ… ドゴンッ! ドゴンッ!

連邦兵A「何だこの音?ホバークラフトの音ではない…
    もっと大きな…まるで何かにぶつかる様な音──」

ド ゴ ァ ッ!!

その瞬間、爆音と共にAの目の前に建っていた障害物が粉砕し

連邦兵A「──なッ!?」

約30mの巨体が姿を表した。

連邦兵A「障害物をぶっ壊しながら直進して来た!?」

連邦兵A「ぐうっ!」

Aはとっさに身構えたが既に遅く、
真正面からジ・OⅡの重量級ボディに激突した。
しかし走行するジ・OⅡの勢いは止まる事を知らず、
ガンダムの背面に建つ障害物もろとも破壊しながら進んでも、全くスピードは落ちない。
ジ・OⅡはガンダムを押し付けながら、いくつもの障害物を破壊し突き進んだ。

司令官「左右どちらかのルートを警戒していた改造ガンダムの意表を突き、
   障害物を破壊し突撃して来るとは、素晴らしい攻め方だ!」

部下「感心してる場合ですか…
  このまま改造ガンダムがやられっぱなしだとマズくないですか?」

司令官「何、心配ないだろう。障害物はハリボテ同然の柔な物だ。
   改造ガンダムの装甲なら十分耐えきれるだろうし、
   耐Gスーツを着こんでいるパイロットもこの程度の衝撃なら耐えられるだろう」

部下「いやそうではなくて…
  こんな一方的な勝負だと改造ガンダムがジ・OⅡに負けることもありえるのでは?
  たかが模擬戦とはいえ、マスコミも市民も観ているこの状況で、
  もし改造ガンダムが負けるような事態にでもなったら、
  改造試験を推進していた我々の面子が立ちませんよ!
  最悪改造試験の打ち切りも考慮しなければなりません!」

司令官「その点はおそらく心配無いだろう。
   ジ・OⅡのパイロットはあの改造ガンダムの開発に関わりの深い人物だ。
   そんな奴が自分達の作ったガンダムに汚点を残す様な事をするとおもうかね?」

部下「しかし今の彼の戦い方を見ればそうとしか…」

司令官「…ならあれを見てみろ。
   ジ・OⅡの進行方向の先には何が見える?」

部下「何って…?」

部下の視線の先にあったのは、
この模擬市街地では最も広い空間の存在するエリアだった。

司令官「ジ・OⅡは先ほどまで行方を眩ましていただろう?
   あれは恐らく、この先にあるあの広いエリアを見つけ出すために
   市街地を探索していたのだよ」

部下「しかし、何のために?」

司令官「連邦兵B…あのジ・OⅡのパイロットは、
   射撃は得意だがインファイトは苦手らしい。
   それなのにあんな体当たり戦法を取ること自体おかしな事だが、
   あの進行方向にある広大なエリアを見て、私は確信した。
   あのジ・OⅡのパイロットは、ガンダムが格闘戦に踏み込めるように
   ワザとあの広いエリアへ向かっているのだ!
   もし、ジ・OⅡがあのエリアで停止する事があれば、私の考えに間違いはないだろう。
   彼は自分の不利な地形にガンダムをわざわざ運んでいるのだよ!」

部下「…自分自身を不利な状況に追い込んで、
  わざと改造ガンダムに負けるためにですか?」

司令官「そうだと思うが…
   まぁこれまで話した事は全て私の憶測であって、
   そうであるという確証は無いがね!」

部下「……」

ジ・OⅡが改造ガンダムを押し付けながら、いくつもの障害物を破壊し突き進んだその先には
司令官の言う広大なエリアが確かに存在した。

連邦兵B「ここだな…」

エリアに到着したBは、ジ・OⅡにブレーキを掛け
改造ガンダムをそのエリアへと突き飛ばした。


連邦兵B「ここならお前も思う存分戦えるだろ?」

連邦兵A「………」

だが突き進ばされた改造ガンダムはその場に倒れ込み、全く動きを見せなかった。

部下「どういう事ですか!?
  ガンダムは全く動きませんよ!」

司令官「あれ?おかしいな…
   パイロットの方が先にバテちゃったか?」

部下「“バテちゃったか?”じゃあ無いですよ!
  こんな事じゃあ市民への面子が立ちませんよ!」

司令官「待て…ガンダムが動き出したぞ!」

改造ガンダムは上半身だけをゆっくりと起こし始めた。


連邦兵A「何のつもりかは知らないですけど、Bさん…」


激しい衝撃に揺られ疲労した身体を起こし、
Aはモニター越しにBの駆るジ・OⅡを睨んだ。


連邦兵A「もう、本当に頭に来た…」

その瞬間、ガンダムは勢いを付けて半身を起き上がらせた。

連邦兵B「来るか!?」

それから間髪入れずに、ジ・OⅡは
胸部カノン砲をガンダム目掛け発射する。

連邦兵A「おらッ!」

Aはガンダムのスラスターを目一杯吹かし機体を急速に起き上がらせ弾丸を回避、
そして回避すると同時に機体の姿勢を整え腹部メガ粒子砲を発射した。
Bの眼前に巨体な閃光が迫る。

連邦兵B「派手な攻撃だが、
    腹部メガ粒子砲はチャージに時間がかかる。
    その間に回避行動さえ取っていれば、
    避けられない攻撃ではない!」

ビームを機体スレスレで避ける。だが…

『ホバーユニットに被弾 ダメージレベル45 中破』

連邦兵B「何ッ!」

被弾状況を確認すると、脚部のホバーユニットに
先程のメガ粒子砲とは別の、細長いビームが直撃していた。

連邦兵B「腰部ビームキャノンか!
    メガ粒子砲と発射のタイミングを擦らして射ったのか!?
    という事はさっきのメガ粒子砲は、俺の注意を引くためのフェイクか!?」

ジ・OⅡは脚部ホバークラフトにダメージを負い、
一時的ながら動きが止まった。

連邦兵A「隙が出来た!」

ビームが収まると同時に、ガンダムは腰部に手を差しのべ
ビームトマホークを取り出し、抜刀と同時にジ・OⅡに向けて投擲した。

連邦兵B「これは避けようが無いな…
    なら隠し腕のビームソードで!」

ジ・OⅡはビームソードを抜刀し、ビームトマホークを弾き飛ばす。

連邦兵B「なッ!」

しかし弾き飛ばしたビームトマホークの後ろから、
タイミングを逸らして投げられたビームランサーが飛んで来た。

連邦兵B「いつの間に!?」

ビームソードのガードも間に合わず、ビームランサーはジ・OⅡ右肩の関節、接合部に直撃した。

『肩部損傷 ダメージレベル100 右腕機能停止』

右腕が機能停止となると、右手で保持していたマシンガンはもう使えない。

連邦兵A「今だ!」

Aはその隙を逃さず、改造ガンダムの通常スラスターを全開で噴射し、
ジ・OⅡに急接近した。

連邦兵B「なんの!」

その直進して来る改造ガンダム目掛け、
Bはジ・OⅡの胸部カノン砲の狙いを定めた。

連邦兵A「うおぉらあッ!」

弾丸が発射されるまさにその瞬間、
Aは改造ガンダムに装備されているデンドロスラスターを全開で使用した。
直進していた機体は、爆発的な推進力に押し上げられ空中へと直上して行った。

連邦兵B「上か!?」

Bが見上げると、改造ガンダムはデンドロスラスターを吹かし
空中で静止していた。

連邦兵B「MSが単機で空中浮遊するとはな…
    だがそれも長くは持つまい。
    A、次はどう出る?」

その直後、Aは思い切った行動に出た。

連邦兵A「脚部を反転、後方に重心移動させ…機体を180°回転させる!」

連邦兵B「AMBACを利用して空中で姿勢を変えた!?」

真っ逆さまの状態になった改造ガンダムはデンドロスラスターを噴射し、
ジ・OⅡ目掛け一気に降下した。

連邦兵A「オオォォッ!」

加速によるGの加圧に耐えながら、
Aの駆る改造ガンダムは爆発的なスピードでジ・OⅡに向け急降下した。
下手をすれば地面に激突しかねないこの戦法は、
Bも予想し得なかった戦法だった。

連邦兵B「そう来るか!それなら!」

Bは空中のガンダム目掛け対空ミサイルを発射する。
損傷した右腕に保持しているマシンガンは使えないので、
空中への迎撃にはこの武装しか使えない。

連邦兵A「うぉらッ!」

しかしAは空中で機体をうねらせ、ミサイルを回避してみせた。
それはAの類い希な操縦技術が可能とする回避方法だった。

連邦兵B「よく避ける!」

Bはジ・OⅡのダメージを負ったホバークラフトで移動し、
出来るだけ改造ガンダムから距離を取りながら対空ミサイルを発射し続けた。
だがミサイルは尚も当たらず、改造ガンダムとの距離は縮まる一方だった。

連邦兵A「狙うはジ・OⅡの背面…!」

ある程度距離が縮まったところで、
改造ガンダムは脚部に収納されているビームサーベルを取り出した。

連邦兵A「ウオォォォォッ!!」

Aは機首を限界まで持ち上げ、
機体を地面に対して直角の姿勢から、平行な姿勢へと変えた。
そしてデンドロスラスターを全開に噴射し、更なる加速を機体に加えた。

連邦兵B「また加速しただと!?」

驚愕するB。機体を反転させ改造ガンダムの方を向こうとする。
だが既に遅かった…

連邦兵A「ラアァッ!」

横なぎに振られたビームサーベルは、ジ・OⅡの腰部を確実に捉え、
その重装甲の中を通過して行ったのだった。

Aは大型スラスターの向きを変え、逆噴射をかけ改造ガンダムを着地させた。

連邦兵A「…ッ!ガハッ…ゼェッ…ハアッ…」

『コックピット ダメージレベル100 全機能停止』

連邦兵B「これは…完敗だな」

司令官「素晴らしい!」

ワー! ワー!

「凄い!何だ今の!?」
「いくら何でも速過ぎないか?」
「あのジ・OⅡに勝つとは…」

観客の歓声は、Aの改造ガンダムがあのジ・OⅡに勝利した事を物語っていた。

連邦兵A「勝ったのか、俺…」

連邦兵B『流石だなA。こっちは機能停止だ』

模擬戦が終わったが故に、お互いの通信機能が回復した。

連邦兵A「Bさん…お手柔らかにやるんじゃ無かったんですか…」

連邦兵B『いやスマンな。
    中途半端な戦いなんて見せたらギャラリーに申し訳無いと思って、
    ちょっと強めに当たってみたんだよ』

連邦兵A「そういう事は始めから言ってくださいよ…」

連邦兵B『しかし終盤のお前の追い上げには俺も驚かされたよ。
    改造ガンダムの性能をあそこまで引き出せるとは、流石だ』

連邦兵A「正直な話、デンドロビウムの大型スラスターは
    身体に負担が掛かるから使いたくなかったんですけどね…」

スタッフ『御二人ともお疲れ様でした。
    MSを格納庫へ搬送後、機体の点検を行って下さい』

連邦兵A「あぁ、了解です」

──その頃、基地内某所──

連邦下士官「何だ君達は?報道陣なら表の方で…」

パシュッ

連邦下士官「グッ!?」

強化人間「ここだな…」

──管制塔──

工作員1「管制塔メインコンピューターへの侵入成功…」

強化人間「しかし、こうもあっさりと侵入出来るとはな。
    天下の地球連邦軍が聞いて呆れる」

工作員2「表でバカ騒ぎしていてくれたお陰だ。
    報道陣に扮して来れば、こんな片田舎の基地への侵入なんて
    そう難しい話では無い」

工作員1「管制塔へのダミー映像、アップロード開始します」

強化人間「本当にその管制塔へのダミー映像だけで十分なのか?」

工作員1「ここの軍事基地は元々、鉱石採掘の為に鉱山を切り開いて建造された基地で、
    それ故に周囲を山々に囲まれています。
    その山岳部には網の様に震音センサー、熱探知センサー等が張り巡らされており
    陸路での侵攻は困難です。
    しかしその一方で空への対策はお粗末なもので、
    ミノフスキー粒子散布下では全く役に立たない旧世紀のレーダーに、
    この無人探索カメラで対空索敵を行う管制塔くらいしか設置されていません。
    この程度の設備なら、ダミー映像を流すだけで
    索敵能力を削ぐには十分効果があります。
    流石に長期間に渡ってダミー映像を流し続ける事は不可能ですが、
    我々が侵攻作戦を決行する“明日まで”なら問題ないでしょう」

強化人間「この基地も随分と貧相な設備なんだな。
    連邦の軍備縮小の煽りなのか、
    はたまた元からこんな田舎臭い設備しかない所なのか…」

工作員1「ダミー映像のアップロード、完了しました」

工作員2「よし、作戦の第一段階を完了。
    そこで横になってるゴミを適当に処理した後に、この基地を脱出する。
    そして、第二段階である侵攻作戦は明日の明朝6:00に決行。
    この予定に変更は無い」

工作員1「了解」

強化人間(…遂に俺の優位性を示す時が来たな。
    最も、こんなカスみたいな基地を落とすなど、大した事では無いが…)

──格納庫──

連邦兵C「しかし今日のBは凄かったな。
    あのジ・OⅡなんて、前に少し弄った程度なのに
    完璧に使いこなしてたし」

整備兵「昔はティターンズだったとか、実はロンドベルの左遷組だったとか
   Bの奴はそんな噂が真しやかに囁かれてるくらいだからな」

連邦兵C「マジかよ…」

整備兵「あくまでも噂だけどね。
   あいつも昔の事はあまり話たがらないから
   真偽の程は定かじゃ無いし」

連邦兵A「そのBさんの姿が見えないんですけど、あの人は今どこに?」

整備兵「あいつならジ・OⅡの整備の手伝いに行ってるよ。
   だから、今からやる作業は俺達3人だけでやるしかないな」

連邦兵C「なあ整備兵、模擬戦をやった翌日にすぐに火器試験やるって
    ハードワーク過ぎやしないか?」

整備兵「模擬戦の準備とかで随分と時間食ったからな。
   この試験は早めに終わらせたいんだよ」

連邦兵C「さいですか…」

──それから2時間後──

連邦兵C「追加武装の取り付け完了っと」

整備兵「ご苦労様。あとは細かいOSとかの設定を施せはこの作業は終わりだ。
   そして、残りの火器試験と試作武装の試験さえ終われば、
   このガンダムは完成だ」

連邦兵A「長い道のりでしたね…」

連邦兵C「本当にな」

連邦兵A「最初の頃はハリボテとか何とか散々言ってましたけど…
    今ではこいつも、立派に戦えるガンダムなんですね」

整備兵「ああ、今日の模擬戦だって
   あのジ・OⅡ相手にしっかり戦えてたしな。
   まぁ実戦導入される事は無いだろうけど」

連邦兵C「そういえば、このガンダムってまだ名前が無かったよな」

整備兵「そういえばそうだったな。
   A、お前が名付け親になってやれ」

連邦兵A「俺がですか?」

整備兵「メインパイロットであるお前が名付ける名前なら、
   誰も文句は言わないよ」

連邦兵A「それじゃあ…>>340ガンダムなんてどうですか?」

>>338みたいな名前のガンダムあるわけないだろ

再安価>>346

>>341

連邦兵C「ジョーク・ジョーカー(以下略JJ)ガンダム?」

整備兵「まぁ確かにジョークで作ったようなガンダムだしな」

連邦兵A「それもありますけど、やっぱりこのガンダムにはこの基地の切り札(ジョーカー)
    として活躍して欲しいなと…俺の願望ですけどね」

連邦兵C「こんな忘れ去られたような軍事基地を
    攻める物好きな奴はいないだろうがな」

連邦兵A「だからあくまで願望ですって!」

整備兵「まぁ、いい機体名じゃないか。
   改造ガンダム改めJJガンダム、これからはそう呼ぼう」

機体スペックわざわざまとめて下さり、ありがとうございます。
遅くなりましたが、続き投稿します。

整備兵「ここからの作業は俺一人でも十分だから、二人とももう帰っていいぞ?」

連邦兵C「じゃあ俺はもう帰るわ。明日もあるし」

連邦兵A「俺は手伝いますよ。整備兵さんだけに任せるのも悪いですから」

整備兵「気持ちは有難いが、お前は今日の模擬戦で疲労困憊だろ?
   無理して手伝わなくても…」

連邦兵A「いえ、俺はまだ若いですから
    あの程度じゃ疲れなんで貯まりませんよ」

連邦兵C「まるで俺が若くないみたいな言い方だな…」

整備兵「そうか?じゃあ俺はここやるから、お前はこの部分を──」


──連邦基地──

この軍事基地は、大きく分けてA・B・C、D・E・Fと横3×縦2の六つの区画に分けられている。
ABC区画は主にMSの演習場、運営管理などを担い
基地にとっても重要な設備が隣接している。
その一方、DEF区画は利用価値の薄い設備が殆どである。
しかしE区画にはこの基地全体を統括する司令塔が存在し、その役割を担っている。

──翌日 AM 5:57──

ジオン兵「アルファ1より各機へ、我々は現時刻を持って、目標施設の勢力圏内に侵入した。
    これよりミノフスキー粒子を戦闘濃度で散布、
    作戦開始の合図が出るまで各自待機していろ」

基地の遥か上空では、SFSに乗った10機のMSが滞空していた。
その編隊の先頭に位置する、おそらく指揮官機であろう機体が指示を煽っている。

そして基地から更に数km.離れた地点には、ガウ攻撃空母が複数隻滞空していた。
──ガウ攻撃空母 ブリッジ内──

ジオン部下「SFS空爆部隊、配置完了しました」

ジオン上官「うむ、作戦開始前に声明を伝える。
     ミノフスキー粒子散布前に全機に通達出来るように、各機回線をオープンにするよう伝えろ」

ジオン部下「了解。各機、回線をこちらのガウに繋げ。繰り返す─」

ジオン上官「…諸君、我々ジオン残党軍地上侵攻部隊の勢力は今、衰退の一途を辿っている。
     皆も知っての通り、地上に残された侵攻部隊も戦力と呼べるモノは殆ど残っておらず、
     その総戦力を持ってしても、地球連邦軍に対し決定的な戦果を上げる事など期待出来ない。
     その程度まで我々は落ちぶれたのだ…

     だがそれでも我々は、地球連邦政府に戦いを挑み続けなければならない!
     何故なら、我々が掲げるスペースノイドの解放という意志は、決して絶やしてはならないからだ!!
     戦い続ける限りその意志は消えない!
     そしてその意志が消えない限り、我々があの地球連邦政府に屈する事など決してない!

     諸君、今一度我々の確固たる意志を、宇宙を縛り続ける奴らに思い知らせる時が来たのだ!」

強化人間「………」

ジオン上官「現時刻を持って、連邦軍用基地への侵攻作戦を開始する!」

ジオン兵「アルファ1より各機へ、これより目標ポイントへの空爆を開始する。    機体の高度を下げ指定のポイントに接近、各機空爆を開始しろ」

部隊『了解』

上官の司令を聞き、上空で待機していたSFS空爆部隊が
連邦軍用基地目掛け一斉に降下を始めた。

強化人間「我々の意志、か…」

ジオン上官「何処へ行く気だ大尉?」

強化人間「機体のチェックですよ。ブリッジに居ても暇なんで」

ジオン上官「まるで緊張感の無い奴だ…好きにしろ!」

強化人間(ジオンの意志…そんな下らない事はどうでもいい。
    俺は俺の目的の為に行動するまでだ…)

──軍用基地 B区画──

連邦兵士「何だ?こんな時間に演習か?」

早朝から外で作業をしていた兵士が見つけたのは、
遠方からこちらに向かって飛んで来るMSの軍団だった。
そのMSが近づくにつれ、ぼんやりとしていた機影が、はっきりと見えてきた。

飛んでいたのはSFSに乗った10機のMS。
乗っているMSはザク、ドム、グフ等々、どれもジオンのMSだった。

連邦兵士「えっ!?」

ドシュッ

兵士が機体を確認したその瞬間、SFSに乗ったドムのジャイアント・バズが火を吹いた。

ドガァンッ!

連邦兵士「な…何ッ!」

バズーカから放たれた弾丸は、MSを格納してある格納庫に命中、爆発した。
その攻撃に続き、他の機体も装備してある武装を用い
基地内部の施設を次々と爆撃していった。

ジオン兵「ブラボー1より各機へ、目標の爆撃に成功。
    これで連邦のクソッタレ共の主戦力はあらかた潰せる。
    後続機もこれに続き他のポイントを爆撃しろ」

ドゴァ!

連邦兵士「何がどう…グェッ─」

その突然の奇襲に混乱するのも束の間、
兵士は爆発に飲まれ、肉片となって飛び散った。

──JJガンダム格納庫──

ドガンッ!

連邦兵A「ん!?」

外から聞こえる爆音に驚かされ、格納庫内で寝ていたAは目が覚めた。

連邦兵A「いかん、作業中に寝落ちしてしまった…

整備兵「って何の音だ?外から聞こえたが…」

連邦兵A「ちょっと様子見に行ってきます。
    ったくこんな時間に何だ…」

そして外の様子を伺おうと、Aは格納庫のシャッターを開けた

連邦兵A「えっ?」

その光景を見て、Aは愕然とした。


「A区画からB区画はもう殆どダメだ!爆撃が激し過ぎる!」
「武器はどこから調達すればいいんだ!?」
「A区画からの負傷者だぞ!衛生兵は何処だ!?」
「おいしっかりしろ!」
「寝てる奴らは片っ端から叩き起こせ!ここまで奴らが進行して来る前に!早く!──」

眼前に広がった光景は、Aが見慣れた日常の風景では無かった。
そこは、戦場だった。
爆音と混乱する兵士達の叫び声が絶え間無く聞こえ、遠方で立ち込める炎と煙が見える。地獄の様な風景。
そして、その地獄の上空を飛び交い
今も絶え間無い爆撃を地上へ行っているのは、ジオン残党軍のMSだった。

──司令塔──

オペレーター1「02小隊、至急応援願います!02小隊!」

オペレーター2「ABC区画の爆撃によりMS格納庫に損害!
       ミノフスキー粒子が高濃度で散布されている為、各部隊との通信が取れません!」

部下「館内放送で命令を伝えろ!
  出せる機体なら何でもいい、今すぐに敵MSの迎撃に移れ!
  クソ…奴らいつの間に管制塔に偽の映像なぞ流した!?
  お陰でこうも奴らに接近を許してしまった…
  そもそもジオン残党は何故こんな戦略的に価値の無い軍用基地を狙うんだ!?」

司令官「敵の狙いは皆目検討が付かないな…
   だが、それでも我々のやる事に変わりはないさ」

オペレーター3「てっ…敵機、司令塔に急速接近!機影2!」

既にダミー映像が解除されたモニターには、SFSに乗ったグフとドムが映された。
両方ともジャイアント・バズを装備している。

司令官「対空砲台で敵機を牽制、敵をこの司令塔に1機たりとも近づけるな!
   各部隊には地下に収納されているMSを仕様させろ。
   それとまだ爆撃の被害が少ないDEF区画のMSも引っ張り出せ!
   旧式ばからだろうが、無いよりマシだ」

オペレーター1「司令官!B区画の直上に空母艦を確認、機影3!」

部下「空母艦だと!?」

モニターには、ガウ攻撃空母から多数のMSが投下される様子が映された。

部下「空爆により甚大な損害を負った区画にMSを投下し、そこを完全に制圧するつもりなのか!?
  マズイですよ司令官!まだ我々は、十分に部隊を展開出来ていません!
  このまま奴らに侵攻されてはひとたまりも…」

司令官「確かにな…各部隊への情報伝達を急がせろ。
   最悪ABC区画とDEF区画との境界線を前線とし、持久戦を行う事も考慮しなければならないが…
   ──!中央の空母艦の下部を拡大しろ。
   何かが空母艦から吊り下げられている…」

オペレーター1「りょ、了解!」

オペレーターは指示通りに、指摘された箇所を拡大した。

部下「これは!?」

司令官「こんな兵器まで隠し持っていたとは…
   これは、持久戦も厳しいかもしれないな…」

JJ(ダブルジェイ)ガンダムか、いい機体にはいい名前が付くものだな。

ゼロシステム積んで高火力って、ヘビーアームズとウイングゼロを足して2で割ったような機体だな。フルアーマーで翼が無いのが悔やまれる、2機目もやるよね?

こいつの肩は赤く塗らねえのか?

貴様・・・塗りたいのか!?

──JJガンダム格納庫──

整備兵「…夢では無いみたいだな」

連邦兵A「一体…何でこんな何もない基地を…」

整備兵「さぁな、ジオン残党共が考えている事なんて検討もつかん。
   俺達は今D区画にいるから、ABC区画の現状は良くは分からないが…A?」

連邦兵A「こんな事…早く止めなくては!」

整備兵「おいA、どうするつもりだ!?」

連邦兵A「整備兵さん、もう機体の整備作業は終わりましたか?」

整備兵「お前が寝てる間に終わらせたよ…ってお前、まさか!?」

連邦兵A「なら、俺がJJガンダムで出ます!
    実験機でも無いよりマシだし、それにあの機体なら実戦でも十分通用します!」

整備兵「ちょっとまて!
   JJガンダムはまだ追加装備も含めた武装の火器試験が終わっていない…
   ぶっつけ本番で使って、機体にトラブルでも起きたら対処出来ないぞ!」

連邦兵A「そんな悠長な事言ってる場合ですか!
    あの爆煙の方向から察するに、ABC区画が真っ先にやられています!
    あそこの格納庫に収容されているMSは殆ど破壊されているでしょう…
    ここまで来ないのは単に重要な施設のある区画では無いからです!
    それでも、ABC区画への攻撃が終わればいずれ奴らもこちらに攻めに来ます!?
    なら先手を撃ってこちらから攻撃を!」

整備兵「……A、落ち着いてよく考えてみろ。
   このD区画にだって、他にMSが無い訳ではない。
   無理して信頼性の低い実験機なんかに乗るより、
   他の正規のMSに乗る方が得策だ」

連邦兵A「しかし…」

整備兵「これはエンジニアとしての忠告だ。
   中身が未完成の機体に乗るって事は、お前の命…ひいては戦況の優劣に関わる事だ。
   このガンダムを見捨てる様だが仕方ない。
   今お前が戦場で命を賭けるべき機体は、こいつじゃない…」

連邦兵A「俺の…命を賭けるべき機体…」

連邦兵A(確かに整備兵さんの言う通りだ…
    いつ問題が発生するるか分からないような機体に乗ってまで、戦う必要なんて無い…
    冷静になって考えてみれば、俺にだって理解出来る当たり前の話だ…でも…)

Aは、格納庫の中で立ち尽くすガンダムを見上げ、考えた。

連邦兵A(でも…もし俺達がここを離れたら、こいつは…このガンダムはどうなる!?
    いずれはこの格納庫も、ジオンの奴らに空爆されるだろう。そんな事になったら…)

連邦兵A「それでも、俺はこいつに乗ります」

整備兵「A!」

連邦兵A(今ここで、こいつを見捨てる訳にはいかない!)

連邦兵A「こいつは俺達で作ったガンダムなんですよ!
    整備兵さんが設計して、BさんとCさんと協力して組み立てて、俺がテストパイロットを勤めたガンダム…
    ここまで皆で作り上げてきたガンダムなのに、
    今更こいつを見捨ててここから立ち去るなんて、俺には出来ません!」

整備兵「………」

それは、ただのワガママだった。
現状を把握し、合理化な判断を下せば、絶対に選ばないであろう選択肢。
軍人としてあるまじき行為だった。
整備兵にもその事は理解出来た。
今Aが言っている事は間違いで、バカげた話なのだと。

だが整備兵は、Aの表情が先程までの錯乱した様子とは明らかに違う事に気が付いた。
それは、覚悟を決めた顔だった。
整備兵には、自分が命を賭けるべき機体として、このJJガンダムを選んだAの覚悟が感じ取れたのだ。

そのAの覚悟を悟り、整備兵の考えもまた変わった。

整備兵「分かった、お前がそこまで言うなら俺は止めない」

連邦兵A「整備兵さん!」

整備兵「但し条件付きだ。
   機体に何か問題が発生したら、すぐにガンダムを棄てて離脱しろ。
   いいか、お前がこいつと心中する必要なんて無いんだからな…」

連邦兵A「俺も死ぬつもりなんてありませんよ。
    絶対に生きて帰ります。このJJガンダムと共に
    整備兵さん、その時は…」

整備兵「ん?」

連邦兵A「その時はまた、評価試験の続きをしましょう。
    そして今度こそ、整備兵さんが出撃を認めるくらい、完璧なMSに仕上げましょう!」

整備兵「……おう、必ずな。
   だからA、死ぬんじゃないぞ…
   ガンダムと一緒に、もう一度ここに戻って来い!」

連邦兵A「了解!」

──JJガンダム コックピット内──

ギュピーン!

連邦兵A「システム起動確認、オールグリーン。
いつでも行けます」

整備兵『いいかA、よく聞け。
   JJガンダムの武装は、今日やる予定だった火器試験に合わせた装備になっている。
   追加武装である180mm低反動砲4門は、右の砲から対艦砲弾、通常榴弾、焼夷榴弾、徹甲弾が装填されている。
   デンドロのミサイル類は、マイクロミサイルが2基と大型集束ミサイルが6基外付けで装備されていて、
   その影響で機体の重量は模擬戦の時と比べて随分と増している。
   必要と判断したら、追加武装をその場でパージする事も考慮してくれ』

連邦兵A「分かりました。どんな装備でも使いこなしてみせますよ。
    ──ッ!センサーに反応!機影5、こっちに向かって来ます!」

整備兵『奴ら、もうここまで来たか…
   俺は裏口から退避する。お前は気にせず暴れろ!』

連邦兵A「了解。…しかしこのまま正面からノコノコ出て行ったら、
    敵に狙い撃ちにされる。どうすれば…」

Aは周りを見渡すが、正面のMS搬入口の他に
格納庫にはMSの出入りが出来そうな空間など存在しなかった。

連邦兵A「早く離脱して下さい整備兵さん!」

整備兵『もうしてるよ!』

連邦兵A(出口が無いのなら、作るまでだ!)

AはJJガンダムの背部ビーム・キャノンを
格納庫の屋根目掛け、連続発射した。
ビームに溶解された屋根は次第にボロボロになっていく。

連邦兵A「これなら、行ける!メインスラスター点火!」

キイィィ…

連邦兵「JJ(ジョーク・ジョーカー)ガンダム、行きます!」

ドワォ!!

機体は爆音と共に上昇し、ビームの連続発射を受け脆くなった屋根を突き破った。
JJガンダムは格納庫から戦場へと、その姿を表したのだった。

描くの挑戦してみようかと思ったが素体となるFAZZの時点で自分にゃ無理
というか資料眺めてて思ったが脚部追加装甲Sガンダムって外見的にはFAZZのか太い気が……www

>>369
へっ……冗談だよ
※ここまでテンプレ

タイトルは機動戦士外伝JJガンダムか?
タイトルとしては宇宙世紀ものだと機動戦士のみになるし、単品の作品は大体崩してるから間をとったのだが。

多分ここらへんで乗ってたパイロットがヒロインか、仮面変態キャラだな。グラハム見ていないと困ることに気がついた。

──F区画 格納庫──

モブ兵「模擬戦で使ったジ・OⅡで戦闘に出る!?」

連邦兵B「ああ、出せる機体は何でもいいから出せって命令だからな。
    整備はもう終わってんだろ?」

モブ兵「確かに整備はしましたけど…装填されている弾丸はペイント弾のままですよ!?」

連邦兵B「なら実弾の装填を急いでくれ。
    部隊の展開がやっと完了したと言っても、戦況は今だにこっちが不利だし、
    何よりD区画の格納庫で泊まり込みで作業していたAと整備兵の様子が心配だ」

モブ兵「で、でもそんなすぐには…」

連邦兵B「つべこべ言わずに早くしろ!
    こうしている間にも事態は悪化しているんだぞ!」

モブ兵「は、はいぃ!」

連邦兵B(A、C、整備兵、無事でいてくれよ…)

JJのストーリーが終わったらまた最初からやりたい
>>1さえよければ

──JJガンダム格納庫前──

SFS部隊員「隊長、前方の倉庫からMSが!あれは…」

SFS部隊長「ガンダム!?」

隊長がそれを確認した次の瞬間、粒子状で薄黄色の光が
JJガンダムの腹部へ集まっている事に気付いた。

SFS部隊長「!?全機散開しろ!」

ゴアッ!

隊長が部下達に命令を下した次の瞬間
JJガンダムの腹部メガ粒子砲から、高出力のビームが発射された。

「なッ!?──」
「ぎゃッ!?──」

あまりにも唐突な攻撃。
反応が遅れた2機が強大なビームの中に飲み込まれた。

SFS部隊員2「アルファ4と5が!」

SFS部隊長「落ち着け!あんな騙し討ちは二度も通用しない。
     各機、前方のMSへの爆撃を開始しろ。
     あの重装備…動きは鈍く回避行動は取りにくい筈だ!」

SFS部隊員3「りょ…了解!」

SFS部隊長(残ったMSは、俺のドワッジ1機と他の隊員のズザ2機。
     残りの弾丸で一斉発射を行えば、いくらガンダムといえど耐えられまい!)

SFS部隊は搭乗しているSFS(ドダイ改)を反転させ、再び陣形を整える。
集中砲火をJJガンダムの全面に浴びせる為に、隊長の駈るドワッジは中央を、
隊員のズザ2機はJJガンダムを左右から取り囲むような陣形を取った。

SFS部隊長「今だ!全機攻撃開始!」

ドドドドドッ!

ミサイルはガンダムのほぼ全方向を取り囲む様に発射された。
空中で姿勢を維持していたJJガンダムにとっても、避けきれない程のミサイルの雨霰。

連邦兵A「来た!」

だがAは、この絶体絶命な状況に至っても冷静に打開策を考慮していた。

連邦兵A「行け、ファンネル!」

AはJJガンダムの周囲にファンネルとリフレクター・インコムを展開した。
ファンネルから発射されたビームはリフレクター・インコムに命中し干渉、
それによりガンダムの周りには編み目の様な形態のビームが展開され、
迫り来るミサイルを次々と撃墜したのだった。

SFS部隊長「何ッ!?」

SFS部隊員3「しまった!爆煙でガンダムが見えない!」

ミサイルの爆煙により、ガンダムを見失ったその一瞬の隙が
このジオン兵の命運を決めた。

ドワッ!

SFS部隊員3「わッ!」

爆煙の中から現れたのは、ミサイルから生じた爆風を物ともせず
爆発的なスピードで急接近して来たJJガンダムだった。
その手にはビームトマホークが握られている。

連邦兵A「もらったッ!」

ザンッ!

ズザはすれ違い様に胴体を両断された。

SFS部隊員2「ブラボー3が!」

連邦兵A「あと、2機!」

SFS部隊長「ちぃッ!」

Aはもう1機のズザ目掛けて、スラスターを再び吹かした。
ガンダムは重装備ではあるが、デンドロビウムの大型スラスターが生み出す驚異的な推進力に支えられ
MS単機としては異常とも言える程、滞空時間が長い。
この高性能のスラスターを生かす事が出来れば、この空戦一方の状況でも
SFSに搭乗した空中の敵MSへの迎撃が可能だった。

SFS部隊員2「ひいぃ!」

JJガンダムと、もう1機のズザまで距離はもうすぐそこまで近づいていた。
隊員2は迫り来るJJガンダムから距離を取るために、ドダイ改の向きを反転させ更に上空へと上昇した。

連邦兵A「逃がすか!」

とっさにAは、頭部に装備されている隠し腕を敵機まで伸ばした。
頭部から伸びた腕は、ドダイ改の右翼をガッチリと掴んだ。

SFS部隊員2「うわぁ!」

連邦兵A「このまま引っ張る!」

JJガンダムの元へと引っ張られたズザは、反撃する間もなく

ザンッ!

SFS部隊員2「がッ──」

ビームトマホークによって両断された。

SFS部隊長「たったの数分で我が部隊のうち4機のMSが…バカなッ!」

撃墜された部下の機体を尻目に、部隊長はJJガンダムの元から全速力で逃げ出した。

連邦兵A「あと1機ぃ!」

Aは撃墜したズザから部隊長の乗るドワッジへと
素早くターゲットを切り替え、それを追った。

SFS部隊長(バカな!あの機体はもう相当飛んでいる筈だ…
     なのに…一行に推進力が落ちないだと!)

部隊長は全速力で逃げているにも関わらず、両者の距離は縮まる一方だった。

SFS部隊長「モ、MSが、単機で…」

JJガンダムはビームトマホークとビームランサーを繋ぎ合わせた。
そしてAは渾身の一撃を刃先に込め…

SFS部隊長「ドダイに追い付くだとォッ!!」

ザンッ!

その渾身の一撃を横凪ぎに振り、ドワッジの胴体を両断したのだった。

連邦兵A「何とか…勝てたな」

時間としてはたったの数分だったが、MS単機の飛行としては
異常なまでに長い時間滞空していたJJガンダムを、Aは的確な操縦で地に着けた。

連邦兵A「これからどうするか…司令塔のあるE区画に行くか、それとも…」

『─ザザッ…そ…ガン……に乗っ……の、A…?ザッ─』

連邦兵A「─!この声は、Bさん!?」

後ろを振り向くと、昨日の模擬戦でJJガンダムと戦ったジ・OⅡがこちらに向かって来ていた。
ジ・OⅡはJJガンダムの傍までより、肩に手を掛けた。

連邦兵B『ミノフスキー粒子の影響が酷いから、接触回線じゃないとロクに通信出来ないな…』

連邦兵A「Bさん!無事だったんですね!でもどうしてここに?」

連邦兵B『お前達が心配だったからすっ飛んできたんだよ。
    そいつにお前が乗っているって事は、ここで起きた事態は大体察しがつく。
    整備兵はどこだ?』

連邦兵A「俺がガンダムで出るより先に、格納庫から退避しましたよ。
    Cさんの方は?」

連邦兵B『他の部隊と合流して、B区画とE区画の間に展開している敵主力部隊と交戦中だ。
    だが正直な話、戦況は今だにこっちが不利だ。
    やっぱり最初の空爆によって被った被害がかなり大きい。
    その影響で、MSの配備すら満足に出来ていないのが現状だ』

連邦兵A「そうですか…やっぱり俺達も、Cさん達が戦っている最前線に向かうべきですね」

連邦兵B『いや、俺はそっちの方に行くが、お前には別のポイントに行ってもらう』

連邦兵A「別のポイント?」

連邦兵B『こいつは俺の提案だがな。
    その場所なら、今ガンダムが装備している武装をフルに発揮する事が出来る筈だ』

一応今週投稿出来る分はここまでです。
次回はもっと早く投稿出来るようにします…

>>376
その点は整備兵脅威のメカニズムで、
足りない部分は更に装甲を足してカバーしているって事でお願いします

>>385
B、C専用機も安価で決める予定なので、もう少しこのSSは続きます。

>>368 >>369 >>377
「レッドショルダーの赤はもっと暗い血の色だ。それとマークは右肩だ」

このSSの連邦兵4人組は、ボトムズの最低野郎共
(クメン編の傭兵チーム、ザ・ラストレッドショルダーの面子、バーコフ分隊etc.)
をイメージして作っていたりしています。

──ガウ攻撃空母内──

ジオン上官「まだ司令塔を陥落出来ないのか!」

ジオン部下「はい…敵部隊の展開が予想以上に早く、主力部隊の侵攻具合に大幅な遅れが生じています。
     今のところ我々の優勢に変わりありませんが、これもいつまで持つか…」

ジオン上官「ならSFS空爆部隊に爆撃を要請すればいいだろうが!」

ジオン部下「それが…SFS空爆部隊の内アルファ部隊のMS全機がシグナル・ロスト、
     更にブラボー部隊が敵MSと交戦中との事で、手が出せない状況です」

ジオン上官「クソッ!よりにもよって空爆部隊が使えないとは!
     ……機体の整備に出ている大尉に通信を繋げろ!」

強化人間『話は聞きましたよ。戦況が芳しくない様で』

ジオン上官「いいか!主力部隊が交戦中の最前線にお前を投下する!
     お前とその機体なら、この戦況を一変する事も可能な筈だ!」

強化人間『俺は別に構いませんけど、いいんですか?
    俺の機体は下手なタイミングで投下すると、最悪部隊の侵攻の妨げになりますよ?』

ジオン上官「ッ!そんな事は分かっている!
     誰も今すぐ投下するとは言ってないだろうが!」

強化人間『はいはい…』

ジオン上官「これから10分間様子を見る。
     このまま戦況に変化が見られない、又は主力部隊が不利な状況に陥った場合、
     お前を最前線へ投下する。それでいいな!」

強化人間『了解…』

ジオン上官「部下!俺のギラ・ドーガを準備させろ!
     大尉に先行して俺が出撃する!」

ジオン部下「司令自らですか!?」

ジオン上官「作戦に大幅な遅れが生じてる今、悠長にしてはおれん!
     以降の指揮は副官である君に任せる!」

ジオン部下「りょ、了解しました!しかし司令を単独で出撃させる訳にはいきません。
     友軍の母艦から、MS一個小隊も共に出撃させます。いいですね司令?」

ジオン上官「構わん!」

──B区画とE区画の境界線上──

連邦兵C「うおぉりゃあ!」

その頃、Cは可変MAアッシマーを駆りSFS空爆部隊“ブラボー”と交戦中だった。

連邦兵C「そこだ!取ったッ!」

ブラボー部隊員「なッ──」

ドシュゥゥ!

Cは味方の援護射撃も借り、既に空爆部隊の5機のMSの内4機を撃墜していた。

連邦兵C「残りは一機、ここからは俺一人で十分だ。
    皆は敵主力部隊への攻撃に集中してくれ」

友軍『了解。貴君の活躍に感謝する』

空からの脅威は殆ど消え去り、連邦の主力部隊が
敵の航空支援により切り崩されるという危険性は解消された。
そして敵部隊が制空権という重要なアドバンテージを失った今、
敵主力部隊への反撃に移る絶好の機会であった。

連邦兵C「さてと、残りの一機は……んッ!?」

ドゴァ!

突然、アッシマーのコックピット内に強い衝撃が走った。
最初は砲撃の直撃を疑ったCだったが、モニター上では機体への被弾ダメージは計測されていない。

連邦兵C(とすると…)

Cは大型ビームライフルが保持してある筈のアッシマーの手元を確認した。

連邦兵C「やっぱり…」

そこに握られていたのは、銃身が真っ二つに両断された大型ビームライフルの残骸だった。
大型ビームライフルはアッシマーに装備されている唯一の武装である。
故に、破壊されるという事は重要な攻撃手段を失うという事を意味していた。

連邦兵C「俺がちょっと目を放した隙に狙って来るとは…」

完璧な死角からの攻撃。これ程正確、
かつ隠密に攻撃を与える事の出来る敵の技量の高さが、そこから伺い知れた。

連邦兵C「──!…どうやら、アイツからの攻撃だったらしいな」

その敵機はすぐに発見する事が出来た。
元々遮蔽物の存在しない上空である。
互いに有視界に入っているとするならば、隠れる事など出来はしない。
その事を理解しているのか、Cの目の前にいる敵MSは逃げ隠れせず堂々と真正面で滞空していた。
そのMSは他の空爆部隊のMSとは違い、ドダイ改では無く
更に旧式のドダイYSに搭乗しているグフだった。
銃器らしき武装は装備していない様で(恐らく弾切れになったバズーカを捨てたと思われる)
ヒートロッドが垂れ下がっている事から察するに、先程の奇襲は
ヒートロッドによる攻撃である事が推測出来た。

連邦兵C(奇襲で真っ先に大型ビームライフルを攻撃して来たのは、
    アッシマーの武装があの大型ビームライフルしか無いって事を知っていたからだろうな…)

Cの推測通り、グフのパイロットはアッシマーの機体性能を熟知していた。
勿論、大型ビームライフルを真っ先に破壊したのも、アッシマーの戦闘能力を確実に削ぐためである。

ブラボー部隊長「急場凌ぎの機体と部隊編成で
      我々の空爆部隊をここまで追い詰めるとは、大したものだ…」

Cには全く聞こえはしない独り言を言いながら、隊長のグフは
シールド内部に格納されているヒートサーベルを取り出し

ブラボー部隊長「だが貴様はもう丸腰 !反撃する事など出来まい!」

ドダイYSの進行方向をアッシマーに定め、全速力で突っ込んで行った。

友軍『まずい!Cに援護射撃を!』

連邦兵C「いや、俺に構わず奴らの本隊を叩いてくれ。
    まだ両手両足はくっ付いているんだ…戦い様はいくらでもある!」

そう言うとCはアッシマーをMA形態へと変形させ、
迫り来るグフ目掛けて真正面から突っ込んで行った。

ブラボー部隊長「捨て身の特攻で体当たりでもするつもりか?
      だが一直線に突っ込んで来ると分かれば、切り払う事など容易だ!」

互いの距離は瞬く間に縮まった。
隊長はアッシマーの進行方向を読み取り、
間違ってでも互いの機体が正面衝突しない様にタイミングと位置を計った。

ブラボー部隊長「今だ!もらったァ!」

切り払うには完璧なタイミング。
勝利を確信した隊長はアッシマーの真正面目掛けてヒートサーベルを降り下ろした。

連邦兵C「オラッ!」

だが、まさにその瞬間、
アッシマーは常識では考えられない異常な機動を見せた。

ブラボー部隊長「えっ!?」

それまでグフ目掛け直進していたアッシマーが、
急にうねりを上げグフの眼前から姿を消したのだ。

ブラボー部隊長「なッ!?」

Cはアッシマーの左腕のみを変形させ、急速な左腕の重心移動(AMBAC)を機体に加えていたのだ。
それにより勢いが加わった機体は大きく左横に逸れ、
一瞬にしてグフの眼前から姿を消し、グフの真横へと回り込んだのだった。
突然の回避行動に全く反応出来なかった隊長のグフから繰り出された剣撃は、
アッシマーにかすり傷すら与えられずに空を斬った。

連邦兵C「そして更に…」

Cはアッシマーに加わった勢いを回転に利用し、
MS形態に変形しながらグフの背後へと回り込んだ。

連邦兵C「羽交い締めにする!」

ガシッ

ブラボー部隊長「ぐッ!」

アッシマーはグフの両肩両腕をガッチリ拘束すると、
足場であるドダイYSを蹴り飛ばし、共に真っ逆さまになりながら地上へと落下した。

ブラボー部隊長「貴様ッ!放せ、放さんか!」

連邦兵C「そう焦るなよ。もう少ししたら放してやるから」

落下にはアッシマーが噴射したスラスターの勢いも加わり、
見る見るうちに高度が下がって行く。
いくら頑丈なMSといえど、この落下の高さと勢いでは
両足で確実に着地しなければ、間違いなくタダでは済まない。

連邦兵C(まだだ…もう少し)

アスファルトの地面が、両機のモニター画面一杯に映し出された。次の瞬間…

連邦兵C「今だッ!」

アッシマーはグフへの拘束を解除、落下の寸前でMAに変形しその場から離脱した。

ドゴアァァ!

ブラボー部隊長「グエッ──」

逆噴射も掛けられず、落下の勢いを殺せなかったグフは勢いよく頭部から落下した。
その衝撃は、コックピット内のパイロットが圧死する程の計り知れない衝撃だった。

連邦兵C「さてと、もう使える武装も残ってないし、これからどうするか……ん!?」

突然、敵機からのサーチを知らせる警報が機内に鳴り響いた。

連邦兵C「警報!?上からか!」

Cが機内のモニターから上空の様子を確認したその瞬間、
空から無数の砲撃が降り注いで来た。

ドドドドッ!

連邦兵C「うおッ!」

ギリギリその攻撃に反応出来たCは、
迫り来る砲撃をフルスロットルで回避した。

連邦兵C「新手のMS部隊か!?」

Cの読み通り、上空からはジオン上官を中心とするMS部隊が降下して来ていた。

ジオン上官「各機、敵部隊を撹乱し友軍の進路を開け!俺は前方の可変機を叩く!」

『了解』

地上へ降下したMS部隊は展開していた連邦部隊の直中に降下、
内部から切り崩す様に連邦部隊への攻撃を開始した。

連邦兵C「マズい!援護しようにもこっちには武器が…」

ジオン上官「貴様ぁッ!」

連邦兵C「何ッ!?」

1機のギラ・ドーガがCの駆るアッシマーの元へと向かって来ていた。

ジオン上官「空爆部隊が落とされた今、制空権を握るであろう
     可変機は排除しなければならない!」

そう言うと同時に、上官の駆るギラ・ドーガはアッシマーに向けてビームマシンガンを連射し始めた。

連邦兵C「クソッ…面倒な奴が!」

ギラ・ドーガのビームマシンガンから放たれた無数の光弾は、弾幕となってCに迫って来た。
Cはアッシマーをホバリング機動させ、紙一重の差でこれを回避する。

連邦兵C(正直な話、今すぐにでもこの場から逃げ出したい気分だ…
    だが、ここで背を向けたら確実に狙い射ちにされるだろうしな…)

Cのアッシマーは回避行動を取りつつ、先程仕留めたグフの残骸のある所まで移動し
そこに落ちていたヒートサーベルを拾った。

連邦兵C「だから、今は戦うしかない!」

赤熱する刃を構え、アッシマーはギラ・ドーガ目掛けて突っ込んで行った。

ジオン上官「そんな刀一本で何が出来る!」

ギラ・ドーガは再びアッシマーに照準を合わせ、ビームマシンガンを連射した。

連邦兵C「何の!」

Cはビームが発射される一歩前に、アッシマーのスラスターを全開で吹かし上昇、ビームを回避した。
そして上昇と同時に、ヒートサーベルを保持している右腕のみをそのままにし、空中でMA形態に変形した。

ジオン上官「こいつッ!」

アッシマーはギラ・ドーガの周りを旋回しながら接近した。
ギラ・ドーガはビームマシンガンを射ち続けるが、Cの駆るアッシマーの繰り出す
変則的な飛行に追い付く事が出来ず、全く歯が立たない。
両者の距離は瞬く間に狭まって行った。

ドドドドドッ!

ジオン上官「ええぃッ!猪口才な!」

連邦兵C(距離は十分詰めた。ここから一気に…)

Cのアッシマーはギラ・ドーガの左側に回り込むと、それまで閉じていた右脚を大きく展開した。
Cの最も得意とするAMBACを利用した機動方法である。

連邦兵C「決める!」

ギュオン!

ジオン上官「何ッ!?」

それまでギラ・ドーガの左側を旋回していたアッシマーは一気に軌道を変え、ギラ・ドーガの背面にまで回り込んだ。
その頃にはアッシマーは既にMS形態への変形を終えていた。

連邦兵C「そこだッ!」

アッシマーの振るうヒートサーベルが、ギラ・ドーガの背部目掛けて振り下ろされた。

ジオン上官「嘗めるなァッ!」

ガンッ!

だがCが勝利を確信したのも束の間、上官はヒートサーベルが機体に接触する正にその瞬間
ギラ・ドーガの上半身のみを90°回転させ、すんでの所でヒートサーベルをシールドでガードした。

連邦兵C「何ッ!」

ガードされたヒートサーベルはシールドを完全に溶断するには至らず、動きを止めた。

ジオン上官「惜しかったなぁッ!」

その隙を突き、ギラ・ドーガは再びビームマシンガンをアッシマーに構えた。

連邦兵C「まだだぁッ!!」

ビームが発射される正にその瞬間、アッシマーはヒートサーベルから手を放し、ギラ・ドーガの懐へと飛び込んだ。
発射されたビームはアッシマーの左肩アーマーに直撃したが尚も怯まず、
アッシマーの左手から放たれた裏拳はビームマシンガンを弾き飛ばした。

ジオン上官「チィッ!」

続いてアッシマーの右手から正拳突きが放たれたが、ギラ・ドーガはバックステップでこれを回避した。

連邦兵C「ハァ…ハァ…惜しい…」


そこでは両者一歩も譲らない、激しい攻防戦が繰り広げられていた。

連邦兵C(このギラ・ドーガ…頭に角が付いてる事から察するに
    隊長機だとは思っていたが、まさかこれ程まで腕の立つ奴だったとはな…)

ジオン上官「フン…連邦の軍人にしてはよくやる」

そう言うと上官はギラ・ドーガのシールドに食い込んでいる
ヒートサーベルを取り外し、アッシマーの足元に投げた。

連邦兵C「……?」

ジオン上官「そいつを使え、俺も武器はこいつしか使わん」

構えを取る上官のギラ・ドーガの手元には、ビーム・ソード・アックスが握られていた。

連邦兵C「…何のつもりだ?」

ジオン上官「久しぶりの好敵手だ。一対一、サシの勝負を挑む!」

連邦兵C「随分と買い被ってくれるな…」

相手の思惑通りに動いている様で気が進まないCだったが、四の五の言っている余裕など無い。
Cはギラ・ドーガの動きに警戒しつつ、アッシマーにヒートサーベルを拾わせた。

ジオン上官「さぁ…来い!連邦兵よ!」

連邦兵C「………ッ!でやあぁ!」

最初に踏み込んだのはCの方からだった。
最大出力でスラスターを吹かし一気に接近、
敵の脳天目掛け勢いよくヒートサーベルを振り下ろした。
一方、上官のギラ・ドーガは無闇に踏み込む様な真似はせず
構えを取り、ビームソードを発生させアッシマーの振るったヒートサーベルを受け止めた。

バチイィィ!

両者の刃は激しく競り合い、スパークを散らした。

連邦兵C「クソッ!お前達の目的は一体何なんだよ!
    こんな片田舎の基地なんて襲撃して、何の得があるって言うんだ!?」

ジオン上官「得か…確かにこの程度の軍用基地を陥落させた所で、
     連邦政府に一矢報いる事すら叶わないだろう…」

連邦兵C「じゃあ何故こんな無駄な戦いを!?」

ジオン上官「全ては、我々の誇りを取り戻す為だ!」

上官のギラ・ドーガは競り合っていた刃を振りほどくと、
今度は先程のお返しと言わんばかりにビームソードの連撃をアッシマーに振るう。
それに即座に反応したCは、繰り出された連続攻撃をヒートサーベルでことごとく受け流した。

連邦兵C「誇りだと?」

ジオン上官「我々ジオン地上侵攻部隊は長い間、貴様ら地球連邦に戦いを挑み、抗い続けて来た!
     遠い故郷を捨て、テロリストという烙印を押されても尚も!
     全てはジオンの為、スペースノイド解放の為に!」

上官の繰り出す斬撃は次第に激しさを増す。
この一撃一撃に重みのある連撃は、流石のCも受け流すだけで手一杯だった。

ジオン上官「だが、どれだけ戦闘行動を起こしても
     スペースノイドに課せられた連邦政府の柵が解ける事は無かった…
     そして、そんな未だに変わる事の無い現実を悲観し
     志を見失い、戦意を喪失する者達が我が軍に現れ始めたのだ…」

連邦兵C「いい機会じゃねえか。そんなに疲れてんなら、
    もうこんな不毛な戦いなんて止めちまえよ」

ジオン上官「──ッ!若造風情に何が分かる!
     我々が今までどれ程の犠牲を払って来たのか!!
     今更引き返す事など…出来る筈がないのだ!」

激昂する上官の斬撃は更に激しさを増した。

ジオン上官「この戦いは、我々の理想が成し遂げられるまで続く!
     故にこんな所で、内部崩壊などという形で…
     今更全てを終わらせる訳にはいかないのだ!
     それ故に必要なのだ…全ての兵士が士気を高め、
     再び志を取り戻す事が!ジオンの誇りをその魂に甦らせる事がな!」

連邦兵C「まさか…お前達がここを狙った理由ってのは!」

ジオン上官「貴様の推測通りだ!貴様らの軍用基地を我々の部隊のみで陥落させ、
     兵士達の士気を高める事が今作戦の目標なのだ!
     戦での勝利ほど、兵士の士気を高める物はない!
     故にこの作戦が成功すれば、我が地上侵攻部隊のみではない
     この地球上に点在する全てのジオン兵士の志が甦り、
     ジオンの誇りをその魂に呼び覚ます事が出来る筈なのだ!」

連邦兵C「それで一番攻め易そうなこの基地を狙ったって訳か。みみっちい奴だな…」

ジオン上官「今は何と罵倒されようと構わん!ジオンの意思を絶えさせぬ為に、
     我々の生け贄となってもらうぞ!連邦兵!」

上官はビーム・ソード・アックスのモードをソードからアックスへと切り替え、
下から振り上げる様に斬り上げた。
ビームアックスから放たれた斬撃はリーチが短い分、ビームの収縮率が高く
重みのある一撃を放つ事が可能だった。

連邦兵C「クッ!」

その強烈な一撃はヒートサーベルの刀身の根元に命中し、
パワー負けしたアッシマーはヒートサーベルを弾き飛ばされた。
上官はその隙を見逃さず、再びモードをビームソードに切り替えると
アッシマー目掛けそれを降り下ろした。

ジオン上官「捉えたぞ!死──」

ドグァシャ!

しかし、ギラ・ドーガの降り下ろしたビームソードがアッシマーに触れる事は無かった。
ギラ・ドーガの斬撃よりも一歩早く、懐へと飛び込んだアッシマーが放った拳が
ギラ・ドーガの顔面に炸裂したのだった。

連邦兵C「…ふざけるなよ」
攻撃を受け姿勢を崩したギラ・ドーガに、Cは容赦無い拳の連打を叩き込んだ。

連邦兵C「そんな無茶苦茶な事の為に、一体何人死んだと思ってんだッ!」

ジオン上官「ッ!何を…」

連邦兵C「それに“我々”なんて他人を含んだような言い方するんじゃねえよ!
    全部お前自身の都合じゃねえか!戦いたくない奴まで巻き込んで、
    何が志だ!何がジオンの誇りだぁッ!?」

ドゴォ!ドガァ!ドゴァ!

右手、左手、右手、左手…
左右から繰り出される拳はギラ・ドーガの頭部、胴体、腕部に
容赦無く叩き付けられた。

ジオン上官「ガッ!グァッ!……」

装甲がひしゃげ、関節が折れ曲がる程の打撃。
その衝撃はコックピット内部にも少なからず伝わり、
パイロットである上官の身体に激しい痛打を与えた。

ジオン上官(俺は…)

朦朧とし始める意識の中で、上官の脳裏には過去の記憶が走馬灯の様に巡っていた。
血生臭い戦闘の日々の記憶、ジオン、アクシズ、ネオ・ジオン…
そして、戦死した嘗ての部下の言葉が

『隊長…今まで俺達がやってきた事って、正しかったですよね?間違ってなんか、なかったですよね…?──』

ジオン上官(間違ってるものか!断じて間違ってなどいないッ!)

ジオン上官「うおらぁぁッ!」

連邦兵C「なッ!」

意識を取り戻した上官は、機体のスラスターを全開で吹かし突進、
アッシマーに強烈な頭突きを食らわせた。
そのギラ・ドーガのブレードアンテナがへし折れる程の勢いの頭突きに耐えきれず、
アッシマーは後方へと転倒した。

ジオン上官「──貴様に俺の…」

形勢は一気に逆転した。
倒れたアッシマーに、上官のギラ・ドーガはビームソードを構える。そして

ジオン上官「貴様に俺の何が分かると言うのだァ!!」

アッシマーのコックピット目掛け、ビームソードを降り下ろした。

連邦兵C(や…殺られる!?)

ドガンッ!

ジオン上官「ガッ───」

だが次の瞬間、Cの瞳に写った光景は迫り来るビームソードでは無く、
弾丸を食らい胴体が弾け飛んだギラ・ドーガの姿だった。

連邦兵C「──!?」

連邦兵B『ザザッ──C、 無事か?』

Cが機体の上半身を起こし後ろを振り向くと、
そこにはマシンガンを構えたジ・OⅡの姿があった。

連邦兵C「Bか?あぁ…何とか無事た。助かったよ」

連邦兵B『通信も大部回復して来たな。これからどうする?』

Bはマシンガンで敵MSを牽制しながら、Cとの通信を行っていた。

連邦兵C「そうだな…取り敢えずこんな事、早く終わらせないとな…」

連邦兵B『そうか、じゃあ一旦退くぞ』

連邦兵C「お前…俺の話聞いてたのか?そりゃあ今こいつには武装も何も無いけど…」

連邦兵B『いや、そうじゃなくてな
    ここに居ると巻き添えを食らう可能性があるからな…
    多分大丈夫だとは思うけど、念のためにな』

連邦兵C「巻き添え?って──」

ドゴアァァッ!

連邦兵C「何いッ!」

突然、Cの前方500M付近で巨大な爆発が起こった。

連邦兵B『お、来たか』

連邦兵C「何だ一体!?説明してくれよ!」

連邦兵B『あれはな…』

そしてBは、コックピット内でほくそ笑み言った。

連邦兵B『反撃の狼煙だよ』

ジオン隊長「何だ!何処からの砲撃だ!?」

突然の遠距離砲撃に驚きを隠せないジオン残党兵達。
直ぐ様着弾点から弾道、そしておおよその発射位置を割り出した。

ジオン兵士「3時の方向からの砲撃、山岳部からの遠距離砲撃だと思われます!」

ジオン隊長「山岳部からの砲撃だと!?奴らまだそんな兵器を隠し持って…!?グアッ!──」

ドグオォォッ!

その後も砲撃は止むこと無く、ジオン残党部隊へと降り注いだ。

──A,D地区側 山岳部──

連邦兵A「AP(徹甲)弾の着弾を確認、続いて焼夷榴弾を装填…っと」

その頃、AはA地区とD地区の境目に位置する山岳部にJJガンダムを固定し、砲撃を行っていた。
何故、山岳部という足場の悪い場所にJJガンダムを移動させたのか?
その理由を紐解くには、格納庫前でBとAが合流した時まで話はさかのぼる。

─数十分前─

連邦兵B「これからお前には、A,D地区方面の山岳部に移動してもらう。
    そこからの超遠距離砲撃で敵部隊を撹乱、可能な限り撃破するんだ」

連邦兵A「山岳部からの砲撃ですか…でもわざわざそんな遠方まで移動しなくても、
    俺とBさんの機体で前線に回った方が効率良くないですか?」

連邦兵B「いや、お前の機体の特性を生かすには遠距離砲撃が向いている。
    それに、山岳部なら敵に遭遇する確率も低くて
    砲撃の邪魔をされる心配も無いだろうしな」

連邦兵A「…と言うと?」

連邦兵B「奴らジオン残党軍は、わざわざMSを
    空中から投下するなんて方法でこの基地に侵攻して来た。
    これは恐らく、山岳部を渡る必要がある陸路からの侵攻は不可能だと判断したからだ。
    あそこには大量のセンサー類が設置されていて、
    基地に気付かれずに侵入して来る事なんてまず無理な話だからな。
    つまり、言ってみれば奴らは決してあの山からは攻めては来れず、
    居座る事も出来ないという事になる。
    そんな比較的安全な所なら、お前も安心して砲撃が出来るだろ?」

連邦兵A「成る程…そう言う事なら俺も賛成です」

連邦兵B「話が分かったなら直ぐにでも配置に付いてもらうぞ。
    狙撃ポイントは──」

──現在 最前線連邦部隊本部──

連邦部隊長「改造ガンダムによる山岳部からの砲撃?
     今さっき起きた爆発はそれか!?」

Bは最前線のMS部隊を指揮する部隊長の元へ、
これから行う予定の作戦についての説明を行っていた。

連邦兵B「ええ、改造ガンダム単機のみによる砲撃ではありますが、
    装備されているキャノン砲は十分な弾数と威力を持ち合わせています。
    この砲撃による効果を確実な物にする為にも、
    最前線のMS部隊による一斉射撃で敵部隊を牽制、釘付けにする必要があります。
    隊長、展開中のMS部隊にこの作戦の主旨を伝え、
    一刻も早く部隊の再編成を…」

連邦部隊長「…B中尉、そんな君が勝手に考案した作戦を
     俺が認めるとでも思ってるのか?」

連邦兵B「………」

連邦部隊長「第一、たった1機のMSに全てを委ねるなど、リスクが高すぎる。
     そんな無茶苦茶な作戦など納得いかん。俺は反対だ」

連邦兵B「……ッ!しかし!」

連邦部隊長「……とは言ったものの」

連邦兵B「…?」

連邦部隊長「他に良い作戦がある訳でも無いし、このまま膠着状態が続いた所で
     俺達が勝てる見込みなんて無いに等しいんだよな……
     よし分かった!お前のその提案した作戦、引き受けてやろう!
     司令部には俺から伝えておく」

連邦兵B「ありがとうございます!」

連邦部隊長「但しだ!その作戦、必ず成功させるのだぞ。
     君達の作ったガンダムに全てを掛ける事になるのだからな!」

連邦兵B「勿論です。あのガンダムなら…Aの奴ならきっとやり遂げてみせます」

中途半端ですがここまで。
残りは今日の午後か明日にまとめて投下します。

連邦兵C「俺も手伝うぜ、B」

Bが振り返ると、そこには至る所が煤こけ傷付いている
Cのアッシマーが立っていた。
右手には何処から調達して来たのか、ビームライフルが握られている。

連邦兵B「珍しい事もあるもんだな。お前から“手伝いたい”だなんて。
    今回はサボらなくてもいいのか?」

連邦兵C「ここら辺でそろそろ仕事しないと、
    またAの奴にどやされるからな」

連邦兵B「フフッ…成る程な」

いつもと変わらぬ調子のCとの会話を交わし、
それまで張り詰めていた緊張感が少し楽になった事をBは感じた。

連邦兵C「それじゃあ…そろそろ行きますか」

連邦兵B「なあ、C」

連邦兵C「ん?」

連邦兵B「…死ぬんじゃないぞ」

連邦兵C「…お互い無事でな」

そう互いに言い残し、彼らは自身のMSを
激戦地である最前線へと向かわせたのだった。

連邦兵A「焼夷榴弾、発射!」

ドワッ! ドグオォォ!

残党部隊長「ちぃッ!」

JJガンダムから放たれた砲撃は、ジオン残党部隊のMS群に多大なダメージを与えた。
砲撃による損害はキャノン砲自体の威力に依ることも大きかったが
何よりも、ジオン残党部隊が密集隊形を取っていた事が、彼らにとって仇となった。
たった1発の砲撃が周りにいる複数のMSまでをも巻き添えにし、
相乗的に損害が拡大したのだ。

ジオン兵士A「隊長ッ!」

残党部隊長「クソッ!遠距離砲撃が可能なMSは山岳部に砲撃を集中しろ!
     あの鬱陶しい砲撃を…何としてでも止めるんだッ!」

ジオン砲撃兵「りょ…了解!」

命令を聞いたザクキャノン等のMS砲撃部隊が、
発射位置から割り出したJJガンダムの居るポイントに照準を合わせた。

ジオン砲撃兵「これで…」

連邦部隊長「させるか!全機一斉射撃ッ!」

ドドドドッ!

だが、砲撃が開始されようとした正にその瞬間、
隊長の呼び掛けにより再編成された前線の連邦部隊が
ジオン残党部隊への一斉射撃を開始した。

残党部隊長「何だとッ!」

連邦部隊長「あの改造ガンダムは俺達にとって最後の切り札だ!
     各機、ジオンの野郎共には1発たりとも射たせるなッ!」

「「了解ッ!」」

並んでいるMSは、先程の戦闘でのダメージがまだ残っているのか
どの機体も満足に修理すら行われていない。

「もう給料泥棒なんて言わせねぇぞッ!」

「ここで終わりにしてやる!」

しかし、彼らはそれでも前線から退こうとはしなかった。

連邦部隊長(後は頼んだぞ、A少尉。
     全ては君と…君達のガンダムに賭かっているのだからな)

遠距離砲撃において、発射時の微少なズレは着弾位置の大きなズレに繋がる。

ジオン砲撃兵「チッ!これでは砲撃が…」

従ってこのタイミングでの連邦部隊による横槍は、
彼ら砲撃部隊にとって大きな妨げとなった。

残党部隊長「こちらも反撃だ!
     残骸や瓦礫をバリケードにし、砲撃部隊は援機の後方へ回れ!」

連邦部隊長「とにかく射ち続けるんだ!
     奴らに付け入る隙を与えるなッ!」

ドドドドッ! ドガァ!

ジオン残党部隊は、砲撃部隊援護の為に
前線の連邦部隊に弾幕を張り牽制を図った。
それに対し連邦部隊も、ようやく訪れた勝機を逃すまいと
必死の粘りを見せたのだった。

乙。

今日暇だったんで描いてみたが完璧思い付きだったんで、
ピクセル数とかいろいろ適当した結果、
スーファミ的になったが気にすんなww

ayarena
ttp://uproda.2ch-library.com/6656717tS/lib665671.jpg

>>507

キャラデとか勝手にやっていいなら俺も人絵描きたいんだけどな

ただ>>1のイメージとかあるだろうからちょい不安

連邦兵A「皆…」

JJガンダムのスコープ越しに映った光景、
それは被弾も省みずにジオン残党部隊に対し攻撃を行う戦友達の姿だった。
だが、その場で戦うどの機体も既に満身創痍、
ギリギリ踏み止まっている状況だった。

連邦兵A(このまま、無駄に戦闘を長引かせる訳にはいかない…)

Aはコックピット内に備え付けられている外付けのタッチパネルを操作し、
キャノン砲を4門同時に操作する連続発射仕様に切り替えた。

連邦兵A「一気に決めるッ!」

複数のキャノン砲を同時に操作する方法は、Aにとっても容易な事ではない。
だが、味方がジオン残党部隊を足止めしている今が絶好の機会であり
Aはこのチャンスを逃す訳にはいかなかった。

Aはスコープを食い入るように覗き、目標を念入りに確認した。
この場合、砲撃する目標は1ヶ所ではない。
Aは敵が点在する複数のポイントを正確に狙い射つ必要があったのだ。

連邦兵A「火器管制OS再起動、発射角度修正…」

それは高度な技術を要する方法でもあり、失敗する可能性も飛躍的に向上してしまう。
かと言って1発ずつ狙い射っている様ではラチが明かない。
そうこうしている内に、味方の損害が増える一方だという事は目に見えていた。
逆転のチャンスは、今しかない。

連邦兵A「………」

しかし、この緊迫した状況に置かれているにも関わらず
Aの心境は平静そのものだった。
今の彼は集中力が極限まで高められ、気持ちに邪念が入る余裕すらなかったのだ。

連邦兵A「システムオールクリア。これで…決めるッ!」

全ての準備は整った。
Aはトリガーに指を掛け…

連邦兵A「焼夷榴弾発射ッ!続いて通常榴弾、AP弾を発射ッ!行けぇッ!」

点在する敵MS群へ目掛け、キャノン砲を連射

ドワッ! ドワッ! ドワッ! ドワッ!

発射された数多くの砲弾は、ジオン残党部隊に容赦なく降り注いだ。

ドゴォン!ドグォォン!

ジオン兵士A「た、隊長ォ!助け──」

ドワンッ!

残党部隊長「ちいぃッ!」

連邦兵B「決まったか!」

連邦兵C「やったなAの奴!」

連邦部隊長「油断するのはまだ早いぞ!
     相当なダメージを負ったとは言え、奴らは未だに健在だ!
     各機、迎撃を怠るな!」

ガガガガガッ!

山岳部のJJガンダムと前方の連邦MS部隊、この2つの十字砲火に晒され
ジオン残党部隊は次第に押し切られ始めた。

残党部隊長「何をしている砲撃部隊!
     あの忌々しい砲撃を早く止めろォ!」

ジオン砲撃兵「し、しかし…」

残党軍の砲弾部隊は、既に何発もの砲弾をガンダムに目掛け発射していた。
しかし、連邦部隊からの射撃による横槍により発射位置が狂い、
一発たりともガンダムに当てる事が出来なかった。

ジオン砲撃兵「隊長!このままでは我が隊は全滅です!」

残党部隊長「クソッ…止むを得ん!全機、散開しろ!」

形成は一気に逆転した。
強力な集中砲火に見回れたジオン残党部隊は、
一時撤退を余儀なくされたのだった。

連邦兵A「逃がすかッ!」

だが、Aの駆るJJガンダムによるジオン残党部隊への追撃は尚も続いた。

連邦兵A「散開した敵にキャノン砲は不向きだ…ならッ!」

Aがキャノン砲に変わり新たに選択した武装、
それはJJガンダムにおける最も面制圧に適した武器、マイクロミサイルだった。
今までこの武装を使わなかったのは、その性質上、
広範囲に威力を発揮する武装であるが故に
友軍機にまで被害が及ぶ可能性があったからである。
しかし、ジオン残党部隊が散開し、最前線から引き下がっている今の状況なら
この武装を遺憾無く扱う事が出来る。

連邦兵A「これで終わらせる!マイクロミサイル2基、発射ァ!」

ドワァッ!

大型スラスターから放たれたミサイルコンテナは、弧を描く様にして
散開したジオン残党部隊の頭上へと舞い上がった。

そして、ミサイルコンテナから射出された大量のマイクロミサイルが
逃げ惑う残党兵の元へと降り注いだ。

ドドドドドガァッ!

「ぐあぁッ!──」

「がッ!──」

残党部隊長「こんな…バカなァーッ!」

ドワオンッ!

ミサイルコンテナから放たれた何十発ものミサイルは辺り一面に炸裂し、
ジオン残党部隊はその業火の中へ呑み込まれたのだった。

──ガウ攻撃空母艦内──

「第二中隊応答せよ!第二中隊!─」

「各機、随時被害報告を─」

ジオン部下「そんな…こうも呆気なく戦況が覆えされるなんて……
     そうだ!上官のギラ・ドーガはどうした!?」

オペレーター「数分前から交信不能です。恐らく撃墜されたものかと…」

ジオン部下「そんな…バカなッ!」

強化人間(まぁ、目の上のタンコブが居なくなって清々するけどな…)

強化人間『副官、もうこれ以上は待てません。俺を最前線に投下して下さい』

ジオン部下「し…しかし、上官の命令では暫く様子を見ると…」

強化人間『そんな悠長な事を言ってる場合ですか…
    上官が戦死された今、次期司令は自動的に貴方です。
    賢明な判断をお願いしますよ』

ジオン部下「……分かった。予定より少し早いが大尉、君を最前線に投下する!」

強化人間『了解』

ジオン部下「作戦を第二段階へ変更!
     艦隊内で待機しているMSは全て出せ!
     今後は少尉の大型MSを中心とした部隊編成で侵攻作戦を行う!
     恐らくこれは…我々にとって最後の攻撃となるであろうッ!」

「了解。各艦隊へ通達、作戦を第二段階へ変更。待機中のMSは全機発進準備を─」

オペレーター「少尉、発進のタイミングはこちらが取ります。よろしいですね?」

強化人間「…構わない。出せるなら早いとこ出してくれ」

オペレーター「牽引ワイヤーの切り離しまであと5、4、3…」

強化人間(これで俺は示せる。俺の力を、俺の存在意義を!)

オペレーター「2、1…切り離します!」

ガチッ

強化人間「クィン・マンサ、出る!」

私生活が忙しくなって来たので、今後は週1くらいのペースで
ぼちぼち投下していきたいと思います。

>>507
>>508
イラストありがとうございます!

キャラクターの個人的なイメージは
・A→二十歳くらいの若造
・B→三十代の渋いオッサン。でもそこまで老けてはない
・C→二十代前半。まだ垢抜けてない感じが残ってる
・整備兵→二十代後半。基本落ち着いた物腰だが希に壊れる事も

みたいな感じです。

最後の投稿から随分と間を開けてしまって、大変申し訳ない…
今日の内に一気に話が進む様に、気合い入れて投下して行きたいと思います。

連邦兵C「すげぇ…」

連邦兵B「………」

爆煙が引き、連邦兵達の眼前に広がった光景
それは爆撃により無残にも破壊された、MSの残骸の山だった。

跡形もなく爆散した機体もあれば、辛うじて動けてはいる機体もある。
しかし、その場にいるどのMSも重度のダメージを負っており、
既に戦える程の力すら残されてはいなかった。

連邦部隊長「…奴らに投降を呼び掛ける。
     各機、敵機の反撃に警戒しつつ、現状維持のまま待機していろ」

そう言うと隊長の駆るジムⅢは、ジオン残党部隊の元へと赴いて行った。

連邦部隊長『ジオン残党軍に告げる。貴様らにはもはや、
     戦力と呼べる程の力は残されてはいない。これは周知の事実だ。
     お前達に賢明な判断が下せると言うのなら、潔く投降しろ!
     そうすれば、少なくとも身柄の安全は保証しよう!』

ジオン残党部隊が壊滅的な損害を負ったこの状況下では、
連邦兵の誰もが自分達の勝利を確信していたであろう。
だが、その予想は誤りであったという事実を、
これから彼らは思い知らされるのであった。

強化人間(……投降だと?)

「なッ!上空より、高熱源体接近!?」

連邦部隊長「何ッ!?」

ドドドドドッ!

隊員からの通信が隊長の元へと入った正にその瞬間、
無数のビームの弾幕が隊長の駆るジムⅢ目掛けて降り注いで来たのだった。

強化人間「笑わせるな!本番はこれからだッ!」

待たせてすいません。久しぶりに再開します

連邦部隊長「くッ!」

隊長はシールドで頭上をガードしながら後方へと退避、
発見が早かった事が幸いし、何とかビームの直撃は免れた。

連邦兵C「今更新手かよ!?」

連邦兵B「その様だな。しかもあの火力から察するに、
    拠点防衛用クラスの大型機である可能性が高い…」

ゴオオォォォ…

巨大な物体が空を切り裂く轟音が、辺りに響き渡る。
それはBの読み通り、大量のビーム兵器を搭載した大型機が、
こちらに向かって降下して来ている事を示していた。

連邦部隊長「…ッ!来るぞ!各機、迎撃体勢に移れ!」

ドゴアァァンッ!

轟音と共に土煙を巻き上げ、その巨大な物体は連邦部隊の眼前へと着地。
巻き上がった粉塵は次第に薄まり、敵は遂にその姿を表したのだった。

連邦兵B「こいつは…ッ!」

眼前に現れた機体を見やり、その場にいる誰もが息を飲んだ。

現れたのは、NT専用大型MS“クィン・マンサ”だった。
第一次ネオ・ジオン抗争時にネオ・ジオンの象徴として作られた、
圧倒的な火力とサイコミュ兵器を兼ね備えるNT専用MSである。
そんな思いもよらぬ怪物の登場に、連邦部隊の誰もが驚きを隠せなかった。

連邦部隊長「…ッ!今更大型MSを1機投下したところで、奴らに何が出来る!?」

気圧されそうなプレッシャーを押しきるかの様に、隊長は声を荒げた。
次に隊長は目標を眼前の大型MSに定め、待機中の連邦MS部隊に命令を下した。

連邦部隊長「全機、攻撃開始ッ!」

「「了解!」」

ドドドドドッ!

連邦MS部隊は一斉に射撃を開始した。
ビームや実弾が入れ混じった弾幕が展開され、
強化人間の駆るクィン・マンサに集中砲火として浴びせられた。

通常なら避けようのない攻撃、
ましてやクィン・マンサは全長30mを越す大型MSである。
砲撃を行った誰もが、目標の撃墜を信じて疑わなかった。

強化人間「フン…」

しかし、弾丸が機体に着弾するであろうまさにその瞬間

ブオンッ!

強化人間は、展開された弾幕の僅かな縫い目へ機体を潜り混ませ、
弾丸を悉く回避してみせた。

連邦部隊長「なッ!?バカな!」

どうしても回避しきれず、被弾が免れない局面であっても
弾幕の薄い位置へ機体を滑り込ませ、
その弾丸を肩部バインダーを用いて的確にガードしてみせた。

そのあまりにも人間離れした回避行動の取り方は、見る者全てを驚愕させた。

随分と間を開けてしまいましたが…
久しぶりに投下します。

「た…隊長ッ!?」

連邦部隊長「うろたえるな!あんな芸当そう長くは持つまい!
     全機、弾幕を絶やすな!いくら高火力を誇る大型MSといえど、相手はたかが1機だ…
    この状況下なら、数で勝る我々にこそ勝機はあるッ!」

「りょ…了解!」

隊長の激が飛び、連邦部隊の攻撃は更に激しさを増した。
それらの攻撃も的確に回避してみせる強化人間ではあったが、
隊長の思惑通り、クィン・マンサへの被弾は徐々に増え始めた。
このまま防戦一方の状況が続けば、疲弊し敗れるのはクィン・マンサの方である事は明白である。
しかし、その様な危機的状況下であっても、
強化人間は反撃に転ずる様子も無く、回避行動を取り続けるのみであった。


連邦兵B「妙だな…」

連邦兵C「妙って何が!?」

クィン・マンサへの射撃を行いながら、Bは口を開いた。

連邦兵B「あの大型MS、1発たりともこちらに射ち返して来ないんだよ。
    牽制の為に1発くらい射っても可笑しくないと思うんだが」

連邦兵C「反撃する余裕すら無いって事なんじゃないの?」

連邦兵B「そうだとしても、あの動きはまるで…ん?」

Bは、回避行動を取るクィン・マンサの背部から何かが発射されている事に気が付いた。
他の兵士は弾幕を張ることに集中していて、誰もその事に気が付いてはいない。

連邦兵B「機雷か?…いや、違う!」

Bは索敵モニターを用いて、自分の周囲を確認した。
どのような微細な物体も感知出来るよう、感度を最大限まで引き出した。

連邦兵B(もしもアレが俺の予想通りの代物なら…ッ!?)

そしてBは発見した。自分達連邦部隊を囲む様に点在する、いくつもの浮遊物が存在している事を。
それこそがクィン・マンサの放っていた射出物の正体…“ファンネル”だった。

ファンネルとは、宇宙の様に空間に静止させ姿勢を維持する事が可能な
無重力空間での運用を想定した兵器である。
その為に、重力の存在する地上では全く異なる運用方法が必要とされた。

無重力下とは違い、ファンネルの様な大型の物体を
空中に静止させる事が出来ない有重力下の地上でファンネルを扱うには、
内臓するスラスターを用いてファンネルを空中で飛行させ続ける必要があった。
しかし、この運用方法は内部の推進材を大量に消費する事に繋がり、
ファンネルの滞空時間は極端に短縮されてしまう。
その為、地上においての長期的なファンネルの仕様は困難を極めた。

強化人間も又、そのファンネルを地上で使う上でのデメリットを熟知していた。
しかし数で劣る強化人間が連邦MS部隊を打破するには、
一騎当千も可能な程の力を秘めるファンネルの使用は必要不可欠なのであった。

強化人間は地上でファンネルを運用するにあたって、
真正面から攻撃を仕掛ける様な事はファンネルの長期的な使用に繋がってしまうと判断した。
一気に、そして確実に連邦MS部隊を撃退するには、
飛行するファンネルの無駄な動きを省き、尚且つ発砲を最小限に止める必要がある。
そう判断した強化人間は、連邦MS部隊の注目を自機へと引き付けさせ、
その隙に展開するMS部隊の内部へと、何十機ものファンネルを潜り込ませるという作戦を考案した。
これならファンネルの最小限の動きと発砲のみで、
コックピットや動力炉等のMSの急所である部位を至近距離で狙う事が可能となる。

既に無数のファンネルが連邦MS部隊の内部に潜り混んでおり、
後は仕掛けたファンネルが一斉にビームを発射すれば、
それだけで連邦MS部隊に甚大な被害がもたらされてしまう。

連邦兵B「マズい!奴の狙いは最初からこれだったのかッ!?」

その敵の思惑に感付いたBであったが、全てが遅かった。

連邦兵B「隊長ッ!」

隊長に敵の思惑を伝えようと回線を繋げた、正にその瞬間

ビシュン!ビシュン!ビシュン!ビシュン!

それまで静観を保っていたファンネルから、ビームが一斉に発射された。

連邦部隊長「何だとッ!?」

けたたましい程の発射音が辺り一面に鳴り響く。
予想外の方向から、次々と放たれるビームには
どの機体も対応する事が出来なっかた。

連邦兵C「うわッ!」

連邦兵B「くッ!!」

ファンネルは絶え間なく移動している為、狙撃する事は不可能に近い。
連邦MS部隊は反撃する手立てすら無く、
一方的にファンネルから放たれるビームに晒され続けた。

誤字
長期的なファンネルの“仕様”→“使用”

ファンネルによるオールレンジ攻撃は、
連邦MS部隊を壊滅にまで追い込む程の勢いの攻撃であった。

連邦兵A「Bさん!Cさん!皆ッ!…クッ!」

クィン・マンサの思いもよらぬ反撃により訪れた圧倒的劣勢。
この危機的状況を脱するべく、Aは直ぐ様超遠距離砲撃による援護を試みた。しかし

連邦兵A「クソッ!やっぱり廃熱が追い付いていない!」

JJガンダムのキャノン砲は先程の無理な連射が祟り、
廃熱が間に合わず砲身に多大な負荷が掛かっていたのだった。

それ故に今までAは、
砲身に掛かった負荷と、敵よりも連邦MS部隊の方が数で勝っており有利であるという点から考慮し、
弾幕が展開されている間は超遠距離砲撃による連邦MS部隊への援護を見送っていた。

しかし、クィン・マンサの予想だにしない反撃により戦局は一変、
今や連邦MS部隊が生き残るには、JJガンダムによる超遠距離からの援護攻撃が必要不可欠であった。

連邦兵A「キャノン砲が使えないのならミサイルで!」

Aは直ぐ様、キャノン砲による砲撃を諦め
大型ミサイルによる面制圧へと戦法を切り替えた。
そのミサイルの照準をクィン・マンサに合わせる為、再びスコープを覗き込むA、だが…

連邦兵A「なッ!?」

クィン・マンサを目視したその瞬間、Aは戦慄した。
先程まで連邦MS部隊の方向を向いていたクィン・マンサが、
真っ直ぐとこちらの方を向いていたのだ。

連邦兵A「何ッ!?」

そしてAが次に目撃したのは、
クィン・マンサの胸部へと集まる眩い光の渦だった。

ドワッ!

クィン・マンサの胸部から放たれた光の正体、
それは胸部メガ粒子砲から発射された大出力のビームであった。
これ程まで強大で出力の高いビームは、超遠距離という合間であっても大気中で減衰する事なく
一直線にJJガンダムの下へと放つ事が可能だった。

連邦兵A「マズいッ!」

AはJJガンダムのスラスターを全開で吹かし、緊急離脱を図った。

ドグァン!

連邦兵A「うわッ!」

急速にスラスターを吹かし上昇したJJガンダムの足元を、
クィン・マンサより放たれた高出力のビームが通過する。
ギリギリのタイミングで回避に成功したAだったが、
それまで足場にしていた山の壁面にその高出力ビームが直撃し、
地面は瞬く間に焼き払われてしまった。
足場である場所を失ったJJガンダムは、超遠距離砲撃という逆転の切り札を完全に奪われたのである。

連邦兵A「うおぉッ!!」

更に、地面へのビームの直撃により生じた爆風と衝撃波は
空中に滞空しているJJガンダムをも呑み込んだのだった。


強化人間「これであの鬱陶しいのも暫くは黙っているだろう。さて…」

強化人間は再び機体を連邦MS部隊の方へと向けた。

「うわああぁッ!──」

ビシュン!ビシュン!ビシュン!

絶えずファンネルから放たれる大量のビームは、連邦MS部隊のMSを次々と破壊していた。
中には反撃に転じようとファンネル目掛け銃弾を乱射する者もいたが、
変則的に飛行するファンネルを撃墜する事は誰一人として出来ず、
全ては無駄な抵抗に終わった。

強化人間「やはり…この程度か?」

ビシュン──

言うと同時にファンネルはビームの発射を止め、
その全てがクィン・マンサの下へと戻って行った。

それまで激しい銃声と悲鳴で埋め尽くされていた戦場は、
まるで先程までの惨劇が全て嘘だったかの様に静まりかえっていた。
辺りには物言わぬMSの残骸が残されているのみ。
その地に伏した残骸の数々は、
クィン・マンサを駆る強化人間の揺るがない勝利を物語っていた。

強化人間「こちら大尉、只今敵MS部隊の掃討に成功した。
    今後の作戦行動の為、本部からの指示を仰ぐ」

『了解。大尉はこれより目標地点にて投下されるMS一個小隊と合流。
一個小隊がそちらに到着するまで大尉は現状を維持、現場にて待機せよ。以上だ』

強化人間(全く…この程度の軍用基地の制圧など、今後も俺一人で十分だってのに。
    軍属の連中ってのは集団行動がお好きで…)

『どうした大尉?復唱しろ』

強化人間「了解。これより大尉は現状を維持、現場にて待機する」

強化人間(とは言ったものの、さて……)

──ガウ攻撃空母艦内──

『敵MS部隊の掃討を確認、我が軍のクィン・マンサは健在。繰り返す──』

ジオン兵「凄い……たった1機で戦局を覆すなんて!」

ジオン残党軍にとって想定外の戦力であるJJガンダムの活躍により
圧倒的劣勢に陥ったジオン残党部隊。
しかしその逆転劇も、ジオン残党部隊最後の切り札、クィン・マンサの登場により一変した。
クィン・マンサは展開する連邦MS部隊を一掃し、
圧倒的劣勢に陥っていたジオン残党部隊の立場を
再び優勢へと巻き返したのだった。

クィン・マンサが葬った連邦MS部隊は、残存戦力を掻き集め結成された
この基地において最後のMS部隊である。
即ちこの時点でこの連邦軍用基地がジオン残党部隊に対抗出来る戦力は、
全て失われたも同然であった。

そんなクィン・マンサの活躍を目の当たりにし、
それまで落胆と絶望に満ちていたガウ攻撃空母艦内は、一気に活気付いた。

ジオン兵「やりましたね副司令!連邦のMS部隊は今や総崩れ!
    この調子で基地の中枢である司令塔を落城させれば
    我々の悲願が達成されます!」

ジオン部下「………」

ジオン兵「…副司令?」

しかし、その活気付く艦内の中で唯一、
ジオン部下だけは依然として表情を崩さなかった。

ジオン部下(上手くいった、と考えるべきなのか…)

ジオン部下の抱える一抹の不安、
それは味方である筈の強化人間に対して向けられたものであった。

────

ジオン部下「大尉を先攻部隊から外す?どう言うことですか司令!?」

作戦概要を聞かされたジオン部下は、
上官の語ったその内容に驚きを隠せなかった。

ジオン上官「不服か?」

ジオン部下「いえ、それが命令とあらば、私は軍人としてそれに従います。
     しかし…私には分かりません」

ジオン上官「………」

ジオン部下「彼は我々の部隊の中で唯一、あのNT専用MSであるクィン・マンサを扱える逸材です。
     彼が我々の部隊に転属されたのはつい最近の事ですが、
     その彼の高い能力には部隊の誰もが一目置いており、
     今では皆、彼を同じ志を持つ同士として認めています。
     なのに、何故彼にこの様な命令を…?」

ジオン上官「逸材…か」

上官は深いため息の後に、吐き捨てる様に言った。

ジオン上官「違う…奴は失敗作だ」

ジオン部下「失敗作?それは一体どういう意味で…」

ジオン上官「これ以上の追及は許さん。説明は以上だ」

部下は、それ以上その言葉の意味を言及する事が出来なかった。


─────


ジオン部下(失敗作…上官が戦死した今となっては、あの言葉の真意を知る術はない。
     しかし上官は最後まで、頑なに大尉の力を借りようとはしなかった。
     その意味とは一体…)

──最前線──

それは、言うなれば地獄絵図だった。
ビームに被弾した機体が溶解した断面を晒け出し、炎上した部位が機体を焼いている。
ファンネルによるオールレンジ攻撃を受けた連邦MS部隊は、もはや物言わぬ屍の山と化していた。

だがその中で、一際目立つ存在でありながら
機体ダメージを最小限に留めたMSが存在した。

連邦兵B「クッ…」

Bの駆る大型MS、ジ・OⅡである。
ジ・OⅡは被弾したビームにより体表面の装甲が溶解し、
外見上は重度のダメージを負っているように見える。
しかし、実際に受けたダメージはジ・OⅡの重装甲によって最小限にまで止められており、
肝心の内部はほぼ無傷の状態であった。

連邦兵B(ジ・OⅡの機体性能に助けられたな。
    これ程の高性能機でなければ、あのオールレンジ攻撃には耐えられなかっただろう…)

勿論、ジ・OⅡの被弾が最小限で抑えられたのは、ジ・OⅡの機体性能だけの問題ではない。
展開されたファンネルの存在にいち早く気付き、素早く回避行動を行った
B自身の力量の高さにも起因する点は大いにある。

連邦兵B「だが、この状況は最悪だ…」

Bは未だ静観を保つクィン・マンサに注意を注ぎつつ、周辺の被害状況を確認した。

先ずBの目に映ったのは、変わり果てたMS部隊の姿であった。
連邦MS部隊は、先程のオールレンジ攻撃により壊滅的なダメージを負っていた。
ファンネルから放たれた無数のビームは、大胆に、しかし確実に
MSの急所であるコックピットや駆動系等の弱点を射抜き、
連邦MS部隊に多大なる損害を与えていたのだった。
そして、その損害を負った部隊の中で
隊長のジムⅢは左腕部が大破し、
被弾の衝撃で倒れたのかうつ伏せの状態で突っ伏していた。
CのアッシマーはMA形態での離脱を試みたのか、
MAに変形した状態で、脚部スラスターを射ち抜かれその場に墜落していた。

Bは今の連邦MS部隊に残存する戦力を再構成し、
再度クィン・マンサへの抵抗を試みるつもりでいたのだが、
その中のどの機体も先程のオールレンジ攻撃により重度の損傷を負っており、再起不能状態にある。
現在の連邦MS部隊には、とてもあのクィン・マンサに対抗出来る程の力は残されていなかった。

周りの現状を把握したBは、今度はジ・OⅡの受けた被害状況を確認する為に
機内のモニターに目を向けた。

連邦兵B「マズイな…」

機体状況を把握したBは、落胆の色を隠せなかった。
ジ・OⅡの主兵装である大型マシンガンが、中央からバッサリと溶断されていたのだった。

連邦兵B「クソッ!さっきのオールレンジ攻撃の時に被弾したのか…
    マズイな…残りの武装で使えそうなのは…」

今のジ・OⅡに残されている武装は、対空ミサイル、胸部2連装カノン砲、
そして隠し腕に内蔵されているビームソードのみである。
一見、クィン・マンサに対抗するには十分な武装に思えるが、
Bはこれらの武装のある問題点を見抜いていた。

連邦兵B(まずこの対空ミサイルだが、これは本来地上から空中の敵を狙い射つための武装だ。
    当然地上にいるクィン・マンサ相手には使い物にならない。
    そして胸部2連装カノン砲は砲身の稼働範囲に多少難があり、
    何より大型MSであるクィン・マンサに対しては威力が不十分で、致命傷を与える事が出来ない。
    唯一奴に決定打を与えられるとすれば…この大型ビームソードのみか?)

そのジ・OⅡに装備されているビームソードは、
小型MSの全長に匹敵する程の刀身を発生させる事の出来る
強力な接近戦闘用兵器である。

連邦兵B(この武装なら、あのクィン・マンサにも致命傷を与える事が出来るだろう…
    だがクィン・マンサは強力なビーム兵器を兼ね備えた高火力MSだ。
    こちらが近接戦を挑む前に、奴の強力な遠距離攻撃によって撃墜されてしまうのが関の山だ…)

連邦兵B「せめて一撃でも良い、奴にこのビームソードを喰らわせる事が出来れば…」

Bが考えあぐねいていた正にその時、
ジ・OⅡの回線に何者かからの通信が繋がった。

連邦兵B「接触回線?隊長から!」

連邦部隊長「無事だったか、B中尉?」

それは、オールレンジ攻撃を受け左腕を破壊された隊長のジムⅢからの通信だった。
隊長はクィン・マンサに気付かれぬように、ジ・OⅡの背後へと這いずり周り接触回線による通信を行っていた。
大型MSであるジ・OⅡの背後はクィン・マンサの方向からは完璧な死角となっており、
その結果隊長のジムⅢは、身を隠しながらBのジ・OⅡへの
接触回線による通信を行う事が可能だった。

連邦兵B「自分は無事です。
    機体の方は外装が酷くやられていますが、
    戦闘行動を起こすのに支障は無いレベルの損害です。しかし……」

Bは現在ジ・OⅡが置かれている状況を事細かに説明した。

連邦部隊長「成る程…今現在あのデカブツに対抗出来る機体は
     同じ大型MSであるお前のジ・OⅡを置いて他にいないと思っていたが、
     今奴に対抗するには接近戦に持ち込む必要があるのか…」

連邦兵B「それも恐らく厳しいでしょう。
    奴には高火力のメガ粒子砲とファンネル等のビーム兵器が多数内蔵されています。
    この機体を持ってしても接近する事は困難…
    いや、不可能と言っても過言ではありません。
    それに万が一奴に運良く接近出来たとしても、必ず仕留められるという保証はありません。
     何せ相手は我々の部隊を単機で壊滅させた化け物ですからね。
     奴の懐に入れたとしても、柔軟に対応されてカウンターを食らうのが関の山でしょう」

連邦部隊長「万事休す…か」

長い間を開けてしまいましたが…
今日からぼちぼち再開していきます

連邦兵B「今の我々では戦力不足です。
     本部が要請していた外部部隊からの増援は?」

『はっきり言って、それも見込めないな』

突然、何者かの通信が二人の会話に割って入って来た。
その声は、Bにとって聞き覚えのある人物の声だった。


連邦兵B「お前!Cか!?」

連邦兵C「俺も仲間に入れてもらうぜ」

通信の声の主はCであった。
彼も隊長と同じく、クィン・マンサの目を掻い潜りながらBのジ・OⅡの下へとやって来たのだった。
Cのアッシマーも例に漏れずボロボロである。

連邦部隊長「C中尉、部隊からの増援が見込めないとはどういう事だ?」

連邦兵C「クィン・マンサへの一斉攻撃が始まる少し前に緊急回線を使って本部に確認を取ったのですが、
     本部曰く外部部隊との通信が繋がったのはつい先程の事で、部隊がこちらに到着するにはまだ時間が掛かるとの事でした。
     まぁミノフスキー粒子の通信妨害もありましたし、何よりこの基地が都心部から離れた山中にあった事が災いしたようです。
     一応要請は受理されましたが、増援が到着するまでにこの基地が無事でいられるかどうか…」

連邦兵B「外からの助け船は望み薄、か…」

連邦部隊長「…そうだ!A少尉の改造ガンダムはどうだ?」

連邦兵C「JJ…改造ガンダムからの支援攻撃が来ない事から察するに、
     Aのやつもクィン・マンサの攻撃を受けている可能性があります。      あいつも今無事でいるかどうか…」

連邦部隊長「そうか…」

連邦兵B「あいつも、無事でいてくれれば良いんだがな…」

連邦兵C「ああ…」

Bはふと、先程までJJガンダムが支援攻撃を行っていた山部の方へ視線を向けた。
山の側面はクィン・マンサの放ったビームにより大きく抉れており、
又焼き尽くされた断面がその破壊力の凄まじさを物語っていた。

連邦兵B「A…」

その生存すら望めない絶望的な光景を目の当たりにし、
流石のBも胸騒ぎを禁じ得なかった。


連邦兵A「うっ……」

その頃、爆炎に呑まれ一時的に気を失っていた連邦兵Aが意識を取り戻した。

連邦兵A「俺は…無事なのか?」

自分の身体、そしてコックピットの周囲を確認するA。
あのメガ粒子の渦に呑み込まれそうになった時はとても生きた心地がしなかったが、
取り敢えず無事であった事を確認し胸を撫で下ろした。

連邦兵A「そうだ!部隊の皆は!?」

仲間の安否を心配したAは、スコープを最大望映にして部隊を確認した。

連邦兵A「そんな…」

Aの目に映ったのは、屍と化した夥しい程のMSの残骸の山だった。

仲間達の変わり果てた姿を目の当たりにし、息を詰まらせるA。
それでも、僅かな可能性に望みを託し、Aは必死になって生存者を探した。

連邦兵A「!?…あれはBさんのジ・OⅡ!それと、あのジ・OⅡに接触しているMSは…?」

Bの駆るジ・OⅡとその背後にいる2機のMSの存在に気付いたAは、彼らに焦点を合わせ直ぐ様その状況を確認した。


連邦兵A「あの2機のMSがBさんのジ・OⅡに触れているということは…接触回線で通信を行っているという事か?
     だとしたら少なくとも、Bさんとあの2機のMSのパイロットは無事という事になるな…」

それは、あくまでもAの憶測であった。
だがそれでも、少なくともBは生きているかもしれない。そんな微かな可能性を感じ取り、安堵の表情を浮かべるA。

しかしその微かな望みも、刹那に響き渡った轟音によって掻き消された。

ドワッ!

連邦兵A「何ッ!?爆発か!?」

突然、激しい爆発音が連邦MS部隊の内部から響き渡った。
Aは直ぐ様、その爆発音のあった方向へと視線を向けた。

連邦兵A「なッ!あれは!?」

そこに映し出されたのは、幾数ものビームを食らい次々と爆散する、
地に伏した連邦MS部隊のMS達であった。

ビームの軌跡を辿ったその先には、腕部、胸部、頭部と
身体のあらゆる部位から高出力のビームを連射するクィン・マンサの姿があった。

連邦兵A「奴ら!連邦部隊への攻撃を再開したのか!?」


ジオン部下『一体どういうつもりだ大尉!?お前には待機命令が出ている筈だぞ!』

クィン・マンサによる連邦MS部隊への発砲、
それは強化人間の独断により行われた事であり、ジオン残党部隊にとっても予期だにせぬ出来事であった。

強化人間「どうって、ちょっとゴミ掃除をしていただけですよ」

ジオン部下『ゴミ掃除だと?』

薄ら笑いを浮かべながら、強化人間は説明を続けた。

強化人間「あれだけの数を一気に相手するとなると、撃ち漏らしてしまう事が少なからずありますからね。
     一応どいつも動けない程度には痛み付けておきましたが、万が一にでもファンネルの直撃を逃れ、反撃が可能なまでに状態のいい機体がいるとしたら…
     今後の作戦展開に大きな支障を来してしまう可能性があります。
     だからこうして、奴らが二度と反撃なんて出来ないよう、しらみ潰しにして追い討ちを掛けているんですよ」


ジオン部下『……お前の言い分は分かった。しかし、お前の取った行動が命令違反である事に変わりはない』

強化人間「それは私も重々承知しています。後の処罰は免れないでしょう…」

ジオン部下『………』

それまで見せなかった強化人間の物腰の低い態度に、ジオン部下は困惑の色を隠せなかった。

強化人間「しかし、これだけは言わせて下さい」

そんなジオン部下の動揺を他所に、強化人間の弁明は尚も続いた。

強化人間「私が先のような行動に出てしまったのは、今のあなた方のやり方では手ぬるいと感じたからです」

ジオン部下『─ッ!何を!?』

強化人間「我々はあくまでも正規の軍人ではない、テロリストです。祖国の後ろ楯もなければ、物質の調達もままならない柔な集団です。
     そんな我々が、正規軍と同じような…セオリー通りの回りくどい作戦を行ったところで、成功する筈がありません。
     事実、私という規格外の存在が現れなければ、我々ジオン残党軍の敗北は確実でした」

ジオン部下『………』

ジオン部下は、何も言い返す事が出来なかった。
傲慢な態度も垣間見える強化人間の発言は、全て否定しようのない事実である。反論の余地は無い。

強化人間「私に言わせてもらえば、“増援が到着するまで待機する”という副司令の案は最良の選択とは言えません。
     確実に拠点を制圧したいという副司令の御考えも分かりますが、今の我々の微力な戦力を掻き集めたところで、所詮は烏合の衆…。
     そんな事に無駄な時間を割いたところで、敵に付け入る隙を与えてしまうだけです」

強化人間のジオン部下への態度は、段々と高圧的なものへと変わっていった。
上官と部下の立場の逆転。それは規律を重視する軍隊にとって、最もあってはならない事である。
しかし今の強化人間が、この戦場の局面を左右する重要な存在である事も又、確かな事実である。
それ故に、ジオン部下も強化人間に対してあまり態度の大きな事は言えなくなり、
逆にジオン部下に対する強化人間の発言権は、部下と上官という敷居を超えた、高いものになっていた。

それ程までに、強化人間がこの戦局に与えた影響は大きなものであった。

強化人間「そこで、私に提案があるのですが…」

ジオン部下「………」


強化人間は、これから自分が行う作戦行動への一切の干渉をしないようにと、上官であるジオン部下に言って聞かせた。
こうなってしまっては、もうどちらが上官か分からない。

ジオン部下『……了解した。大尉は引き続き、敵MS部隊の掃討を頼む』

強化人間「ありがとうございます。話の分かる人で良かった」

先程の高圧的な態度から一変、穏やかな雰囲気を漂わせ、強化人間はジオン部下との通信を切った。

強化人間「さてと…」

しかし、その穏やかな態度も通信を切った瞬間に一変、冷酷な表情へと豹変した。

再び眼前に群がるMSの軍団を睨む強化人間。

笑みを浮かべ、そのギラついた瞳で次の獲物を物色し始める。
そこには本来あるべき軍人の姿は無かった。

獲物と決めた相手をいたぶり、弄び、そして殺す事を至上の快楽とする、愉快犯の様な存在へと変貌したのだった。

強化人間「一気に派手なのをお見舞いして炙り出すか…」

言うなり強化人間は、慣れた手つきでコンソールパネルを操り、武装の切り替えを行った。
目標は眼前の連邦MS部隊。

強化人間「さぁ、這いずり廻れ!」

ドワッ!


クィン・マンサの胸部から、無数に拡散したメガ粒子が光となって放たれた。
煌めくビームの弾幕が、部隊を襲う。

次々と焼かれるMSの群。
もはや彼らは、反撃する事すら出来なかった。


連邦兵C「この状況は…流石にヤバくないか!?」

クィン・マンサの砲口から無数に放たれたビームの弾幕は、
既に殆どの機体が再起不能に陥っている連邦MS部隊の下へと、容赦なく降り注いだ。

連邦部隊長「もういいB中尉!これ以上…君が我々の盾になる必要はない!」

連邦兵B「しかし…」

連邦部隊長「奴らが我々への攻撃を再開してきた以上、何時までもこのエリアに留まっているのは危険だ!
      苦渋の決断だが…やむを得まいッ!我々だけでも一旦このエリアから離脱し、
   司令塔の防衛の為に残存戦力を結集。体制を建て直すのだッ!」

B「……そうですね。現状では、それが一番の得策でしょう…」

B(だが、しかし…)

ドワンッ!

瞬間、クィン・マンサの放ったビームの内の一発が、Bの駆るジ・OⅡの肩部に直撃した。

B「─クッ!!……大人しく逃がしてくれる気は無いそうですよ…!」

C「Bッ!大丈夫か!?」

B「あぁ…コイツの装甲なら、一発や二発受けたところで……まだ耐えられる」

B(だが…それも何時まで持つか…)


ジ・OⅡへのビームの着弾を皮切りに、クィン・マンサの砲撃は更に激しさを増した。

ドワンッ!ドワンッ!ドワンッ!

連邦兵B「うぐッ!!」

大量のビームが、Bの駆るジ・OⅡを襲う。

連邦部隊長「もういい!もう下がるんだB中尉!これ以上は危険だッ!
      いくら重装甲を誇るジ・OⅡと言えど…そう長くは持たないぞ!」

連邦兵C「俺も隊長の意見に賛成だ!もう良いから下がれ!Bッ!!」

連邦兵B「……いや、このままでいい」

連邦兵C「何ッ!?」

連邦兵B「……と言うよりも…これ以上、どうしようもないだろ…?」

予想だにしないBの発言に不意を突かれたCは、一瞬言葉を失った。

連邦兵C「……な…何弱気な事言ってんだよBッ!
     いいか!何が何でもこの場から離脱するんだッ!そうすればチャンスはきっと…」

連邦兵B「……チャンス、か…。
     今アテに出来るのは、本部が外部に送った救難信号くらいなもんか…。
     いつ救援が到着するかも分からない今の状況からしてみれば、正に神頼みだが…。それでも、一番現実味のある打開策だ」

連邦兵B「その救援が到着する間に…俺達が出来る事は何だ?
     残念ながら…何もない。今から基地に残っている残存戦力をかき集めたところで…戦力としてはたかが知れている。
     あの怪物を止める手立てなど、今の俺達には…無い」

連邦兵C「それは…」

Bの言葉に、Cは何も言い返す事が出来なかった。

連邦兵B「……なら、今の俺に出来る事は…」

連邦兵B(一人でも多くの仲間を守る為に、こうして盾になってやる事くらいなもんだ…)



ドゴァドゴァドゴァドゴァッ!


クィン・マンサから放たれた無数のビームの弾幕は、眼前に横たわるMSの屍の山を次々と破壊していった。

ドゴァー! ドゴァー!

連邦兵B「クッ…!」

それは、Bの駆るジ・OⅡの下にも例外なく降り注いだ。

連邦兵B(さて…あと何発耐えられるか…)

このままクィン・マンサのビームを受け続けていれば、機体は物の数分と持たない。

連邦兵B(……覚悟は出来ている…)

だが、Bは一向にその場所から動こうとはしなかった。

連邦兵B(そうだ…死ぬのは、俺だけでいい……)

ふとBは、今Aが居るであろう山間部の方へと目をやった。
激しく揺れる機内の映像は乱れに乱れ、モニター上にはほんの微かな映像しか映し出されていない。
しかし、今のBにとってはそれで十分だった。

連邦兵B(A…もしも無事なら、お前も早いとこ…この基地から逃げ出せ…
     ……いや、それだと敵前逃亡になるか…。なら…大人しくそこでじっとしていろ…
     お前は…もう十分過ぎる程働いたんだ…。今更戦いを放棄したって…お前の事を咎める奴なんか、誰もいやしないさ…)

連邦兵B「……はぁー…」

連邦兵(……色々、あったな…)

全てを覚悟したBの脳裏に浮かんだもの、それは自分の過去の記憶だった。
一年戦争、グリプス戦役、この基地へ左遷された日の事。
整備兵の思い付きで、半ば遊び半分でガンダムの改造を始めたあの日…
ガンダムの改造、運用試験に追われた日々…

記憶の廻廊が、まるで走馬灯のようにBの脳裏を巡った。




ドゴァーッ!


連邦兵B「─ッ!!がッ!」

過去の思い出に浸るのも束の間、
激しい機体の揺れにより、Bの意識は再び現実へと引き戻された。

連邦兵B「……酷い有り様だな…」

ジ・OⅡの受けた損傷は更に激しさを増していた。
ドロドロに熔解した装甲…機体の各所から発せられる黒煙は、ジ・OⅡの受けたダメージの壮絶さを物語っている。

連邦兵B(……あと一発が、限度ってところだな…)

Bはそう冷静に分析し、前方のクィン・マンサの方へと目を向けた。

連邦兵B「………」

クィン・マンサの砲口が、Bの下へと向けられていた。


連邦兵B「……これで…終わりか…」

連邦兵B(……A、C、整備兵…。お前達は…絶対生き残れよ…)

最後の瞬間を前に、Bは静かに瞳を閉じた。



連邦兵B(………)


ゴオオォォォ…


連邦兵B(……何だ?この音は…)

突然、ジ・OⅡの集音機が外部から奇妙な音を拾った。
まるで遠雷のように…微かだが、はっきりとした存在感を感じさせる、力強い音…


ゴオオォォォォ


微かにしか聴こえなかったそれは、次第にその大きさを増していき、やがて大気を揺るがす轟音へと変わっていった。


ゴアァァァアッ!!


豪々と鳴り響く轟音の発信源は、次第にBの駆るジ・OⅡの下へと迫って来ていた。

連邦兵B(……この音は……─ッ!!まさかッ!?)

その轟音の正体を悟り、Bは身震いを感じた。
何十、何百回と耳にした、あの音…忘れる筈がない。


バシューンッ!


時を同じくして、ジ・OⅡの下へ砲口を向けていたクィン・マンサの腕部メガ粒子砲から、一発のビームが放たれた。

連邦兵B「うッ!!」

Bの下に、光の渦が迫る。

ドワァーッ!!

ビームは瞬く間にその距離を縮め、Bの駆るジ・OⅡの下へと一直線に押し寄せて来た。


ゴワッ!!


しかし、ビームがジ・OⅡに着弾するであろう正にその瞬間、
轟音の発信源である人形の物体が、ジ・OⅡの眼前へと躍り出た。

連邦兵B(何ッ!?)



突如ジ・OⅡの眼前に割って入って来た物体の正体、それは一機のMSであった。
そのMSは、ジ・OⅡの盾となる形でビームの直撃を受けた。
単発で放たれたとはいえ、強力な威力を誇るクィン・マンサの腕部メガ粒子砲、
それに直撃すれば撃墜は免れないであろう。しかし…


パシュィィィ…


そのMSは、クィン・マンサの放ったビームを何かしらの方法で四散させ、無力化した。

連邦兵B「……なっ…!」

突然過ぎる出来事に唖然とするB。
あまりにも呆気ない形で、Bは一命を取り止めた。

連邦兵B「………」

Bは、眼前のMSに釘付けになっていた。
半壊したモニター越しでは機体の判別すら困難であったが、
それでも、その独特のシルエットが判断材料となり、BはこのMSの正体に確信を持つ事が出来た。


連邦兵B「……馬鹿野郎…お前……」

全てを悟ったBは、深く落胆した。

連邦兵B「……俺の覚悟を…無下にしやがって……」

それは、Bが最も恐れていた事…避けたかった事態であった。

連邦兵B「─ッ!何故だッ!?」

憤りを隠せなかったBは、眼前のMSに対し、唸りを上げた。


連邦兵B「何故此処へ来たッ!?Aッ!!」


ジ・OⅡを庇うように立ち尽くす、一機のMS。
見紛う事なき、JJガンダムの姿がそこにはあった。





連邦兵A「……大丈ザザッ……ですか!?ザザッ…Bザザッ…んッ!」


通信機からノイズ越しに聴こえるそれは、紛れもないAの声だった。


連邦兵B「ば……馬鹿野郎ッ!何で戻って来た!?
     万に一つの勝ち目もないのに……今更お前が出てきたところで、みすみす奴に殺されるだけだぞッ!」


連邦側が圧倒的不利な状況に陥っている今、強大な力を秘めた怪MS、クィン・マンサ相手にこちらから戦闘を仕掛ける事など決して得策ではない。
そんなBの考えは、JJガンダムがこの戦局に加わった今に至っても何ら変わらない。


連邦兵B「いいかAッ!?俺達の事なんか放っといて…今すぐこの場から離脱しろッ!
     お前のガンダム単機だけでは…決してあの大型MSには勝てやしないッ!
     一旦司令部へ帰投して、本部からの指示を仰げッ!いいな!?」


Bは、せめてAだけでもこの場から離脱するようにと、眼前のJJガンダムに向けて必死に呼び掛けた。


連邦兵A「Bさんッ!返事をして下さい!Bさんッ!」


しかし、運悪くジ・OⅡの通信機器は、先程機体に大量のビーム攻撃を受けた際に致命的な損傷を負ってしまい、無線通信を行う事が出来なくっなていた。
いくら声を荒げようが、外界から完全に遮断されたBの肉声は、Aの耳に届く事はなかった。


連邦兵A「どうしたんですかBさんッ!?無事なんですかッ!?返事を…返事をして下さいッ!」


そんな事とは露知らず、Bの下へと何度も通信を送るA。
しかし、この戦場の支配者は、そんな僅かな隙を見逃してくれる程、生優しい相手ではなかった。



バシューンッ!


連邦兵A「Bさんッ!Bさ─ッ!」


Bへの通信に気を取られていたAの下へ、容赦のない一撃が迫る。
先程と同様、腕部メガ粒子砲から放たれたビームである。


バシューンッ!


強力なビームが、JJガンダムの胸部目掛け一直線に迫り来る。
即座に回避行動を取らなければ、直撃は免れない。


連邦兵A「……ッ!」


しかし、Aはあえてその攻撃を避けようとはしなかった。
後方にいるBを庇うために、避けるに避けれないという理由も勿論あるのだが、
彼には、このビーム攻撃を退く秘策があった。


連邦兵A(リフレクター・インコム!頼むッ!)


シュイン! シュイン!


Aはクィン・マンサのビーム攻撃を予見し、予め機体前方にリフレクター・インコムを浮遊させていたのだ。
リフレクター・インコムは元々、自機の放ったビームを屈折させる事により、予測不能な射撃を可能とする攻撃の為の兵器である。
リフレクター・インコムの周囲には、限定的ながら強力なIフィールドが展開されており、
これに自機の放ったビームが干渉する事により、ビームの進行方向を自在に変える事が出来る。
Aはこの兵器の特性を、攻撃の為ではなく防御の為に利用したのだった。


連邦兵A(リフレクター・インコムの効果範囲は、インコム周囲のごく限られたエリアに限定されている。
     つまり、ビームを防ぐ事の出来る範囲は、限りなく小規模であるということ…
     だからこそ!リフレクター・インコムを配置するのは、コックピットを備えた胸部前面のみに限定するッ!
     それ以外の範囲は最悪犠牲にしても構わない!この配置なら…あの強力なビーム攻撃も、単発程度なら凌げる!
      急所以外に一撃受けたところで、このJJガンダムが落とされる事はまずないッ!)


パシュイー!


連邦兵A(リフレクター・インコムにビームが干渉したッ!
     思った通りピンポイントでコックピットを狙って来たなッ!)


パシュイーン…


連邦兵A「よしッ!」


Aの作戦は見事功を奏し、クィン・マンサの放ったビームはリフレクター・インコムに阻まれ湾曲、JJガンダムへの直撃を免れた。


強化人間「……成る程、な…」

JJガンダムが被弾寸前のビームを無力化する様子を目の当たりにした強化人間は、一瞬の内にそのからくりを看破してみせた。

強化人間(どうやら…あの機体の真ん前で浮遊している物体が、ビームを拡散させるリフレクターの役割をはたしているらしいな…)

リフレクター・インコムのからくりを理解すると同時に、強化人間はその弱点をも見破った。

強化人間(見たところによると、あのリフレクターの有効範囲は極端に狭いらしいな。
     防御するにしてもピンポイントでしかその効力を発揮する事が出来ない、あくまでも限定的なもの…と言ったところか)


状況を把握し、ほくそ笑む強化人間。


強化人間「フンッ……ならばッ!」

リフレクター・インコムによる防御壁の弱点を見破った強化人間は、すかさず次の攻撃態勢へと移る。

強化人間「そんなチンケなリフレクターでは捌き切れない程の大量のファンネルでッ!貴様を圧倒してやるッ!」グッ

JJガンダムを見やる強化人間の眼は、もはや獲物を睨む狩人のそれだった。


シュパパパパパパァー!


瞬間、クィン・マンサの後部から大量のファンネルが放たれた。
狙うは眼前の獲物、JJガンダムただ1機のみ。


トリミス



連邦兵A(─ッ!! 来たか!?)グッ


自分の下に目掛け押し寄せて来る大量のファンネルを目の当たりにし、すかさず身構えるA。
あの大量のファンネルに周囲を囲まれてしまったら最後、オールレンジ攻撃の餌食となるのは明白だった。
Aが頼りにしていたリフレクター・インコムによる防御も、全方位から繰り出されるオールレンジ攻撃が相手では何の用も成さない。


連邦兵A「…ッ!ならッ!」

連邦兵A(この無数のファンネルの群れを……JJガンダムの持ち前のスピードで振り切るしかないッ!)


Aは、限定的な範囲でしかその効力を発揮する事が出来ないリフレクター・インコムによる防御を諦め、
押し寄せる無数のファンネルの群集を、デンドロスラスターにより生み出される爆発的な加速を利用し振り切る算段に打って出た。


連邦兵A「─ッ! クソッ!」ピッ ピッ

連邦兵A(デンドロスラスターの推進材は残り僅か…
     長時間の使用は、流石に無理があるな…)


連邦兵A「……だがッ!」


今、JJガンダムの装甲を食い千切らんと、ハイエナの如く押し寄せて来る無数のファンネルの群れ。
そして、その群集の更に向こう側でこちらの様子を見遣るクィン・マンサ。
Aは、それら全ての存在を目一杯視界に入れ込み、睨み付けた。


連邦兵A(策は……あるッ!)


今、彼の目の内に恐れの色は存在しない。
そこにあるのはただ一つ、Aの身体の内側から、沸々と湧き上がるたった一つの感情…闘志のみであった。


連邦兵A(タイミングは一瞬……この機体がファンネルに囲まれるであろう、正にその寸前…
     そう、ガンダムの直ぐ側まで奴のファンネルが接近して来る、ギリギリの瞬間まで待つんだ!
     デンドロスラスターで離脱を図るのは、それまでの辛抱だ…)

Aの脳裏には、この危機的状況を打破する為の秘策が浮かんでいた。
それは、前日の模擬戦でBが見せたとある戦法を参考にしたものである。

連邦兵A(……今すぐにでもスラスターを吹かして、あのファンネルの群れから逃げ出したい気分だが…
     そんな事してしまえば俺が今実行しようとしているファンネルへの対抗策が…成り立たなくなってしまう!
     だから待つんだッ!あのファンネル達がこの機体に接近する…ギリギリのタイミングまでッ!)


失敗は決して許されない。ファンネルに囲まれてしまったら最後、待ち受けているのは己の“死”のみ。
Aの作戦を実行に移す為には、ファンネルの群れがある程度JJガンダムの下へと接近する、その瞬間まで待つ必要がある。
スラスターを吹かすタイミングをひと度誤ってしまえば、それはつまり作戦の失敗へと繋がってしまう。


連邦兵A(……勿論…囲まれる以前にファンネルからビームを射たれてしまう可能性だって、無い訳ではない…
     オールレンジ攻撃という形に拘らなければ、今直ぐにでもビームを射ち出す事は出来る筈…)


連邦兵A「……ッ!」ギュッ


操縦桿を握る手が、汗で湿る。
前方のファンネルの群れは依然として変わらず、Aの駆るJJガンダムの下へと迫って来てはいるが、発砲してくる気配はまだない。
しかし、Aの求めるギリギリのタイミングまで、押し寄せて来るファンネル達がいつ発砲してくるとも限らない。
発砲のタイミングが完璧に把握出来ない以上、Aにとってそれは正に、運に任せた状況であった。


連邦兵A(……だが、敵機を確実に落とす為に一番効率の良い戦法が、オールレンジ攻撃であるという事に何ら変わりはない…!
     痺れを切らした敵が、俺の周囲を囲む前にビームをファンネルから発砲してくるのか…
     それとも、このガンダムを確実に仕止める為にあくまでもオールレンジ攻撃に拘るのか…
     危険な賭けではあるが……やるしかないんだッ! 俺は…後者に賭けるぞッ!!)


ヒュンヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュンヒュン!


連邦兵A(やるか…やられるか……2つに一つだッ!)

迫り来るファンネルの群れ。もはや彼に退路は無い。
ここで大人しく群がるファンネルの餌食となるか…
若しくはAの考案した作戦により、この危機的状況を無事打破する事が出来るのか…
Aの命運は、正に神のみぞ知るといった状況であった。


連邦兵A(来る!……だが、まだだ…!まだ堪えるんだ…!)


しかし、不思議な事にそれ程までに緊迫した状況の中にあっても、Aの脳内は冷静そのものであった。


連邦兵A(まだだ…!まだ堪えろ…!)


静かに…だが確実に状況を見計らうA。
焦りはない。ただ一瞬のタイミングを見極め、その時が来るのを待つ。


ヒュンヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュンヒュン!


こうしてAが思考を巡らせている間にも、ファンネルの群衆はその距離をどんどんと縮めて来る。


ヒュンヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュンヒュン!


連邦兵A(もう少し…もう少しだ…!)


やがて放たれたファンネルとの距離も、JJガンダムが鎮座する位置の直ぐ側まで迫っていた。


ヒュンヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュンヒュン!


30M…20M…10M… ガンダムとファンネルとの距離は、もはや目と鼻の先である。そして…


ヒュンヒュンヒュンヒュン! ブワンッ!


Aが待ち望んでいた絶好のタイミングが今、訪れた。



連邦兵A(─ッ!! 今だッ!)ガチャ


迫り来た無数のファンネルが、JJガンダムの周りを取り囲もうとした正にその瞬間



ブオォォォ…



連邦兵A「飛べぇーッ! ガンダムーッ!!」キュイーン!



ド ワ オ ォ ォ ァ ァ ァ!!




Aは、JJガンダムに装備されたデンドロスラスターを全開にまで吹かし、上空へと離脱を図った。



強化人間(何ッ…!?)


あまりにも唐突な出来事に、一瞬言葉を失う強化人間。
JJガンダムに向けて放出したファンネル達はその急激な加速に反応しきれず、飛び立ったJJガンダムの真下を素通りしてしまう。
そのファンネルの中にはデンドロスラスターの推力に煽られ、吹き飛ばされる基も少なくはなかった。


強化人間(チッ…上空に逃げ込むつもりか? 全く無駄な事を…)


状況を直ぐ様理解した強化人間は、乱れたファンネルの隊列を再び立て直し、
今一度上空へと離脱したJJガンダムの後を追うべく、急速にファンネルを上昇させた。


ヒュンヒュンヒュンヒュン!ヒュンヒュンヒュンヒュン!


強化人間(今の加速は少し驚いたが…所詮は無駄な足掻きだッ!
     俺の操るファンネルの軍勢から、逃れる術はない…!)




連邦兵A「くッ!」ゴオォー!


デンドロスラスターの爆発的な推進力による多大なGが、Aの身体にのし掛かる。
激しいGに当てられ今にも意識を飛ばされそうな状況であったが、Aは自らの思考を巡らせる事を止めなかった。


連邦兵A(ファンネルは…ちゃんと俺の後を付いて来てるか…?)

Aの考案した作戦を成功させる為には、追ってくるファンネルを完全に振り切ってしまっては意味が無かった。

連邦兵A(……よし! 奴ら、ちゃんとこちらに付いて来ているな…)

JJガンダムとファンネルとの距離を確認したAは、件の作戦を実行へと移す事に決めた。

連邦兵A(……燃焼出来る推進材が僅かしか残されていない今の状況では、あのファンネルの群れから逃れられる距離なんて高が知れている…)

上昇するJJガンダム目掛け群がるファンネルの軍勢。
その中には痺れを切らした強化人間が何発かのビームを放った基もあったが、
加速中の今の状況ではまともに標準を定める事が出来ず、JJガンダムにそれが直撃する事はなかった。


連邦兵A(だから!ここは昨日の模擬戦でBさんがやったように…!)グルンッ

スラスターの向きの変更、そしてAMBACによる空中での姿勢転換、
それら全ての動作をAは卓越した技術を持ってフル活用し、すかさずJJガンダムをその場で急速回転させた。
それまで天へ目掛け真っ直ぐに飛行していたJJガンダムが、急速な方向転換により瞬く間に地上を睨む形となった。
Aが狙うは、JJガンダムの息の根を止めようと猛然と向かって来る、眼前の無数のファンネルの群れ。


強化人間「何…?」


連邦兵A(ガンダムの後方に付いて来たファンネルを…まとめて…)


Aの指が、操縦桿に備え付けてあるトリガーへと触れた。


連邦兵A「一網打尽にするッ!」カチッ


キュイー… ドワアァァァァァアアッ!!


瞬間、JJガンダムの腹部に位置するメガ粒子砲の砲口から、眩いばかりの光の渦が放たれた。


連邦兵A「攻撃こそ最大の防御だッ! 消えろォーッ!」ドワァー!


ドドドドドドドドッ!


飛翔するJJガンダムの後を追っていた無数のファンネルの群れは、回避行動も間に合わずJJガンダムから放たれた大出力のビームに呑まれ瞬く間に蒸発した。


強化人間「─ッ! 何だとッ!?」

強化人間(アイツ…! 最初から俺のファンネルをワザと空中へ誘き寄せて…それをまとめて潰す算段だったのか…!?)

虎の子のファンネルを跡形もなく消し飛ばされるという惨状を目の当たりにし、僅かな動揺を見せる強化人間。

強化人間「……野郎ォ…! 舐めやがって…!」

彼の持つ絶対的な自信が揺らぎ始めた瞬間であった。


連邦兵A(いや!まだ終わらないッ!このまま放ったビームを奴の方へ…ッ!)


連邦兵A「うおォォォォォォッ!!」グイーッ


そんな強化人間の動揺を他所に、Aの攻撃は尚も止まらなかった。
Aは直ぐ様次の目標を強化人間の駆るクィン・マンサへと切り替え、
大出力ビームの放出はそのままに、砲口の向きがクィン・マンサの方へ向くようにJJガンダムを旋回させた。


強化人間「何ッ!?」


ズドドドドドドッ!!


JJガンダムから放たれたビームはその威力を落とす事なく、アスファルトの大地を焼き切りながらクィン・マンサの方へと凪ぎ払われた。


ゴワアァァァッ!


強化人間「チッ!猪口才なッ…!」

迫り来る大出力のビームを目の前にし、強化人間はクィン・マンサの両肩に備え付けられた2基のバインダーを前面へ構えた。
クィン・マンサの肩部のバインダーには巨大なメガ粒子偏向器が搭載されており、ビーム兵器に対し高い耐性を誇る。
強化人間はすかさずこの両肩に備え付けられたバインダーを利用し、JJガンダムから放たれた大出力ビームを防御する事にした。


パシイィィィィイッ!


強化人間「クッ…!」


強化人間の視界が、白一色に染まる。
強化人間の思惑通りJJガンダムのビームは無力化されたが、その余りにも桁外れな量のビーム光に、強化人間の視界は完全に遮られてしまった。


強化人間「チッ! 野郎…ッ!」

思いも寄らないガンダムの反撃を受け、思わず舌打ちが出る強化人間。
次第に…だが確実に、彼の内側からはJJガンダムに対する怒りの感情が混み上がり始めていた。


強化人間(……だが、これだけの高出力ビーム…
     エネルギーロスがデカい分、長時間照射し続ける事は不可能な筈だッ! 奴にも…直ぐに限界が来るッ!)


強化人間は、JJガンダムより放たれたビームの洗礼が止むその瞬間を待った。


シュゥゥゥ…


強化人間の思惑通り、次第にJJガンダムより放たれた大出力ビームは減縮を見せ始めた。
やがてクィン・マンサのコックピットの周りを覆っていた激しいビームの光の嵐も弱まりを見せ、強化人間の視界は回復をはたした。


シュゥゥ…


そして、強化人間の待ち望んだ時が来た。
JJガンダムのビーム攻撃が止んだのだ。

強化人間(よォーし!形勢逆転だッ!
     待ってろよォー…ガンダムッ! 今から貴様を八つ裂きに…)グッ


ビームが止むと同時にJJガンダムへの反撃に転じようと、強化人間がクィン・マンサのバインダーの防御を解いた、正にその瞬間だった…




ド ワ オ ォ ォ ァ ァ ァ!!



連邦兵A「だあアァァァァァァァァァアアッ!!」ズイィーッ!


強化人間「…ッ!? なッ!?」


デンドロスラスターの持てる全ての推進材を使い、最後の加速を掛けたJJガンダムがクィン・マンサへと接近、そして…



連邦兵A「ラアァァァーッ!」ブンッ!



ズバァーッ!!


JJガンダムの放ったビームトマホークの縦凪ぎの一閃が、クィン・マンサの頭上目掛け振り下ろされた。

お待たせしました。久しぶりに再開します。


ザシュァーンッ!!


JJガンダムの振るったビームトマホークが、クィン・マンサの胸部装甲を焼き斬る。
熔解した装甲片が、まるで鮮血を散らしたかの様に辺り一面に飛び散った。


連邦兵A「ハァー…!ハァー…!ハァー…!」


全身全霊を込めて、渾身の一撃を喰らわせる事に成功したA。
彼自身も又、振り放ったその一撃に確かな手応えを感じていた。


連邦兵A(や…やったのか!?)チラッ


すかさずクィン・マンサの方を見やるA。目の前には真っ二つに両断されたMSの残骸が残るのみ…その筈だった。


連邦兵A「………」


しかし、そんなAの予想は無情にも裏切られる事となる。


連邦兵A(─ッ! いや!駄目だッ! 浅いッ!)


JJガンダムの振るった一撃は、確かにクィン・マンサのその重厚なボディに命中していた。
その証拠に、クィン・マンサの胸部には縦一線の傷跡が残っている。
しかし、その一撃は機体の表面を軽くなで斬りにした程度にしか過ぎず、両断には至っていない。
つまり、Aの放った渾身の一撃は、クィン・マンサに致命傷を与える事が出来なかったのだ。


連邦兵A(既の所で回避してみせたのか…? あの不意討ちまがいの攻撃を!?)


目の前の現実に、ただただ愕然とするA。
メガ粒子砲による目眩まし…デンドロスラスターによる爆発的な加速…
適切なタイミングのもと繰り出されたその攻撃は、どう考えても避けようのない完璧な一撃の筈であった。
それを眼前の敵は致命傷を負うことなく、かすり傷程度の軽い損傷に抑えるよう回避する事に成功してみせたのだ。


連邦兵A「そんな……馬鹿なッ!」


自分の持てる全ての力を振り絞り、繰り出した一撃…
眼前に聳える強大な敵は、そんなAの全力の攻撃ですらも去なしてみせたのだった。



連邦兵A「……ッ!」


反撃を警戒し、すかさず身構えるA。
クィン・マンサに負わせた傷は、決して深いものではない。
体勢を立て直したクィン・マンサが反撃に転ずるのも、もはや時間の問題であった。



強化人間「………」



しかし、当のクィン・マンサはAの予想に反し、反撃はおろか動く気配すら見せない。


連邦兵A(……な…何だ…?)


一瞬、機能不全を疑ったAだったが、頭部のツインアイが未だに光を灯している事から察するに、どうやらそうではないらしい。


連邦兵A(……どういう…つもりだ…?)


困惑するAを尻目に、沈黙を続けるクィン・マンサ。
それは、ともすれば隙だらけとも言える格好であった。
しかし、そのあまりにも巨大な機体から醸し出しされる威圧感と、隙を全く感じさせないクィン・マンサ自身のプレッシャーに呑まれ、
Aは、二度目の攻撃へ転ずる、その一歩が踏み出せずにいた。



不気味な程の静けさが、辺り一帯に漂う。
クィン・マンサのプレッシャーは尚もAを威圧し続け、彼の心身を掴んで放さなかった。


連邦兵A(……だが…やるなら、今しか…!)


Aは、そんな現状の打破を試みた。
己を鼓舞し、プレッシャーを跳ね除け、追撃に打って出ようと意気込む。


連邦兵A(一撃だ……一撃で終わらせるんだッ!)グッ…


しかし、Aがクィン・マンサの下へと踏み込もうとした、正にその時であった。





強化人間「……貴様…」




連邦兵A(……何ッ…!?)




強化人間「貴様ァ……貴様アアァァァァァァアアッ!!!」


ブォンッ!



瞬間、強化人間の激昂と共にJJガンダム目掛け大型ビームサーベルが振り下ろされた。



連邦兵A(─ッ! 来るッ!?)グッ


バチィーッ!!


Aは即座にビームトマホークを頭上に構え、繰り出された斬撃を受け止めた。


連邦兵A「クッ…!」


強化人間「貴様ァ…! 貴様ごときがよくも……よくもこの俺の機体に傷をォ!傷をオォォォォオオッ!!」グワッ!


ブォンッ! ブォンッ!



連邦兵A「くッ!」グッ


バチィーッ!バチィーッ!



連邦兵A(─ッ! 重い…!)グラッ



強化人間「この…たかが雑魚風情がァ…!調子に乗りやがってッ!!」ブォンッ!ブォンッ!ブォンッ!


次々と繰り出される大型ビームサーベルの応酬。


連邦兵A(コイツ…!)



バチィーッ!バチィーッ!
バチィーッ!バチィーッ!




その嵐のような連撃に、成す術もなく翻弄されるA。
反撃はおろか、その場から動く事すらままならない。



強化人間「ファンネルもまだ予備が何基か残ってるが、あえてソレは使わねぇ!テメェはなぶり殺しだァーッ!!」ブォンッ!


連邦兵A「ぐッ!!」バチィッ!



Aは、強化人間の駆るクィン・マンサに、ただただ圧倒されるばかりだった。

続きは今日中に投下予定

久しぶりに再開します


強化人間「俺は…俺はなぁ…!本来ならこんな……こんなチンケな所で燻ってるようなパイロットじゃないんだよォッ!!」ブンッ!ブォンッ!


連邦兵A「なッ!?」バチィッ!バチィーッ!


連邦兵A(コイツ…何を言って…!?)


強化人間「俺はァ…!もっと…もっと大局を左右するようなデカい戦場で力を奮う筈だったんだッ!」ブォンッ!


連邦兵A「──ッ!」バチィーッ!



攻撃を繰り出す最中、突然自分の身の上話を語り始めた強化人間。
その意味不明な言動に、Aは困惑の色を隠せない。



強化人間「第一次ネオ・ジオン抗争の直中、人為的な強化を施され強化人間として生まれ変わった俺は!その力で地球連邦の粛清に貢献し、公国の礎となる筈だったッ!」ブォンッ!ブォンッ!


次第に己の弁に熱が入る強化人間。
しかし、だからと言ってクィン・マンサの連撃の手が緩まる気配はない。



連邦兵A「ハァ…!ハァ…!─ッ!」バチィッ!バチィーッ!


一方、Aはクィン・マンサの攻撃を捌くので手一杯で、強化人間の話など殆ど耳に入ってはいなかった。




強化人間「それが…それがッ!」ギッ


強化人間「………俺を強化した科学者共が、俺の力を一体何と評価したか分かるか……?」




連邦兵A「ハァ…!ハァ…!」

連邦兵A(……何ッ…?)





強化人間「“失敗作”だと抜かしたんだァーッ!!」ブオォーンッ!!





瞬間、より一層勢いを増したクィン・マンサの一撃が、JJガンダムの脳天目掛け振り下ろされた。




バチィィィィイッ!!


連邦兵A「──ッ!! グッ…!」ググッ…!


ビームトマホークを頭上に構え、何とか攻撃を受け止めたA。
しかし、その一撃はあまりにも重く、ビームトマホークを構えるJJガンダムの腕部に只ならぬ負荷が掛かった。

関節が、鈍い悲鳴を上げる。




強化人間「結局俺はマトモに戦場へと駆り出される事もなく…己の力を腐らせるだけの日々を送ったッ!
     シャアの反乱で再びネオジオンが奮起した時でさえ!俺はアクシズの攻防に参加する事すら許されなかったッ!」


強力人間「失敗作だとッ!? ふざけるなッ!!
    だったら俺は……一体何の為にこの身を捧げたと言うんだァーッ!!」ブォン!ブオォーンッ!



連邦兵A「ゔッ!」バチィ!バチイィーンッ!



強化人間「お前に分かるか!? この俺の受けた屈辱がッ!自分の力を認められない者の怒りがッ!!」ブオォーンッ!!


連邦兵A(このッ…!)バチイィーンッ!!
     

強化人間「俺はなぁ…!示さなきゃならないんだよッ!
     この俺を切り捨てた連中に……俺の能力に“失敗作”の烙印を押した馬鹿共に!俺という存在を知らしめる為にッ!」


強化人間「そうッ!その為にも貴様ら連邦の雑魚共には…俺の糧になってもらうッ!
     俺の力を証明する為の…その糧になァーッ!!」ブォンッ!!







バチィ!バチィーッ!


クィン・マンサの連撃を悉くいなすA。
しかし、少しずつだが攻撃をいなすそのタイミングにズレが生じ始めている。


連邦兵A「ハァ…!ハァ…!」


度重なるクィン・マンサの攻撃は、それを受け止めるAの心身を確実に疲弊させていた。
Aの限界が近いことは、誰の目から見ても明らかだった。




────


連邦兵C「……Aの奴…ヤバイな。一方的に押されてやがる」


連邦兵B「………」


この二人の目からしても、Aの不利な状況は明確なものであった。





連邦兵C「このままだとジリ貧だな…Aのヤツ。何時殺られるか分かったモンじゃないぜ」

連邦兵B「……C、手伝ってくれ。Aを援護する」

連邦兵C「援護って……今あの中に飛び込んだら、返り討ちに遭うのが関の山じゃないか?
     Aのヤツを何とかしてやりたいってお前の気持ちは分かるけどな。満身創痍の今の俺達に出来ることなんて…」

連邦兵B「考えがある。上手くいけばあのデカブツを…何とか出来るかもしれない」

連邦兵C「なっ…マジかよ!?」

連邦兵B「……ただし、成功する確率は限りなく低い。
     それに…この作戦が上手く行ったとして、俺達が無事に生還出来るという保証は…」



連邦兵C「………」


連邦兵B「………」




連邦兵C「……はぁ~…どの道、Aが殺られた後は俺達の番が待ってんだ。
     A一人の為に命を懸ける、なんてつもりは毛頭ないが……あのデカブツに勝てる保証があるってんなら、やってもいいぜ?」

連邦兵B「……C…」


連邦兵C「………」


連邦兵B「……すまない。助かる」

遅くなって申し訳ない…今日はここまで
次回、一先ず今の戦いは決着予定


強化人間「らァッ!!」ブンッ!

バチィーッ!

連邦兵A「─ッ!」


度重なる疲弊、そして大型MSとの単純なパワー差。
覆すことの出来ないパイロットの技量差と機体の性能差を前に、Aの命運は徐々に、しかし確実に敗北へと向かっていた。


連邦兵A(クソ…!このままじゃ殺られる……ならッ!)


斬り合いが長引けば勝機はない。
そう確信したAは、成功すれば形勢の逆転が見込める、一撃必殺のある技に全てを賭けることに決めた。
それは、先日の模擬戦でBの駆るジ・OⅡに繰り出し、ダメージを与えることに成功したとある戦法である。


強化人間「ハァッ!」ブンッ!


連邦兵A(まずは…コイツから距離を取るッ!)グッ!


バチィーッ!


連邦兵A「ウォッ!」グンッ!


斬撃を受け止め、その反動を逆に利用し後方へとバック移動。
JJガンダムは、一気にクィン・マンサの間合いの外に出た。


連邦兵A(よしッ!続けて!)


Aは即座にビームトマホークとビームランサーの連結を解除。
解除と同時に、素早い動きで手元のビームトマホークをクィン・マンサの頭部目掛けて、投擲した。


ビュンッ!


強化人間「フン…!」ブンッ


バチィンッ!


その攻撃を難なくいなす強化人間。
しかし、そうなる事はAも予測済み。
一本目のビームトマホークは、あえてサーベルを振らせる為に投げた布石。


連邦兵A(隙が出来た!)


サーベルを振り上げた事により、クィン・マンサの胸部は無防備な状態を晒す事となった。


連邦兵A「今だッ!」ビュンッ!


Aは、この瞬間を待っていた。
ガラ空きとなったボディ目掛け、ビームランサーを投擲。
狙うはただ一点。先程JJガンダムが振るった加速からの一撃により、縦一線の傷を負った、胸部の損傷箇所である。
この傷口にビームランサーが突き刺されば、いくら強靭な装甲を有したクィン・マンサと言えど、致命傷を負う可能性は十分にある。



強化人間(……何ッ…!?)ピクッ


完璧なタイミングで放たれた二段構えの攻撃。回避するのは至難の技。


ビュォーンッ!


クィン・マンサの負った傷口目掛け、ビームランサーが迫る。
サーベルで振り払う時間は、もはや残されていない。



連邦兵A(よしッ!)

Aは、ビームランサーの直撃を確信した。



だが…


強化人間「さかしいわッ!」ブンッ!



ガキィーンッ!



強化人間の駆るクィン・マンサは体勢を崩すことなく、肩のバインダーを用いてビームランサーを叩き落とした。


連邦兵A「なッ!?」

強化人間「そんな小手先の技でこの俺をどうにか出来るとでも…嘗めるなッ!」


完璧なタイミングで放たれたAの技は、並のパイロットではまず対処することの出来ない攻撃であったのは確かである。
しかし、今Aの目の前に居るのは、そんな只の人間達からは一線を画する存在。
常人離れした反応速度を持つ、文字通り“強化された人間”だった。
Aにとっての渾身の一撃など、彼にとっては単なる雑兵の悪足掻きにしか過ぎなかったのである。


強化人間「ケァッ!」ダッ!


攻守一転。強化人間の駆るクィン・マンサが、AのJJガンダムの下へと躍り出る。


連邦兵A(しまった!武器がッ…!)


一発逆転を狙った攻撃は失敗に終わり、ビームトマホーク、ランサーという2つの武器を失ったA。
これではかえって状況を悪くしただけである。

JJガンダムが使える武器はまだ十分に残ってはいるが、その殆どがビーム兵器である。
ビームに強い耐性を持つクィン・マンサ相手には、決定打を与えるのは難しい。
唯一有効な手立てである近接格闘戦用の兵器も、ビームトマホークとビームランサーを失った今となっては、膝部に格納されている通常タイプのビームサーベルのみである。
大型のビームサーベルを用いるクィン・マンサ相手では、パワー負けすること必至だった。


連邦兵A(けど…!今は俺がやるしか…!)

しかし、Aは決して退こうとはしなかった。


連邦兵A(俺がやらなきゃならないんだ…俺がコイツをッ…!)


連邦兵A「ハアアァーッ!」グワッ!


自分にしか出来ない。自分しか戦えない。
何度も何度も自らにそう言い聞かせ、JJガンダムをクィン・マンサの下へと前進させるA。


連邦兵A(今は俺が戦うしかないんだッ!)


それは、負けると分かっている戦いに身を投じる自分を鼓舞し、自らの恐怖心を抑え込む為の暗示の意味でもあった。


強化人間(そうだ!向かって来いッ!今度こそ叩き潰してやるッ!)


それに答えるかのように、強化人間も又、クィン・マンサをJJガンダムの下へと向かわせる。

2機の決着の行方は、もはや火を見るより明らかだった。




キイィィィィィィィインッ!!


連邦兵C「ちょっと待てェーッ!!」




連邦兵A「えッ!?」ビクッ

強化人間「あっ!?」


2機のMSがぶつかり合おうとするまさにその瞬間、
爆音とも取れる風切り音と共に、Aと強化人間との決戦に待ったを掛けるCの声が頭上から響き渡った。


連邦兵A「 しッ!Cさん!?」

突然の、そして意外な乱入者の出現に戸惑うA。


連邦兵A「ど…どうしてCさんが前に出るんですかッ!? 無理ですよその機体じゃ!」

連邦兵C「ハッ!お前にばっか良いカッコさせるかってんだよッ!」


言うが早いか、Cの駆るアッシマーはクィン・マンサの下へと急速降下を始めた。



強化人間「あぁッ? まだ動ける奴が居たのか…?」

強化人間(大人しく死んだフリしてりゃ…少しは長生き出来たものをッ!)ガシャ


バシュンッ! バシュンッ! バシュンッ!


強化人間は、クィン・マンサの頭部メガ粒子砲を用い、Cの駆るアッシマーを迎え撃った。



連邦兵C「うォラッ!」ガシャン!


瞬間、MS形態へと変形したアッシマーは、変則的な機動を行い迫り来るビームを悉く回避。


強化人間「あぁッ!?」


連邦兵C「ウォらァッ!」ギュイーンッ!


目にも止まらぬスピードで降下し、クィン・マンサの背後を取った。


連邦兵C(生憎、今は武器の持ち合わせがないモンでなぁ!)ググッ

背後を取ったアッシマーはそのまま両腕で抱き付く形で、クィン・マンサの頭部を締め付けた。


連邦兵A(す…凄いッ!俺でさえ奴から隙を作ることなんて出来なかったのに…!)


強化人間「………」

ミシミシミシ…


連邦兵C(さぁて……このままコックピットごと押し潰すことが出来れば一番良いんだが…
     ……まさか、この密接した状態で使える武器なんてのが、今のコイツにあるとは思えんが…)


強化人間「……いつまでも…纏わり付くなよッ…!」ブォンッ!!

連邦兵C(うぇッ!?)


ドゴォーンッ!


瞬間、クィン・マンサは上半身を捻り、左肩のバインダーを背後のアッシマーに直撃させた。


連邦兵C「ぐォッ!?」ズザァーッ!

連邦兵A「Cさんッ!」

強化人間(馬鹿が…!空でウロチョロされるのが目障りだから、ワザと接近を許したんだよッ!)


連邦兵C(……やっぱり…そう上手くはいかないよなぁ…)


バインダーの重い一撃をマトモに喰らい、アッシマーは地に伏した。


強化人間「水を差しやがって!コイツッ!」ガシャ

連邦兵C(ヤベッ!)

強化人間「死ねッ!」

追い討ちを掛けるように、強化人間は腕部メガ粒子砲をアッシマーの下へと向けた。


連邦兵A(このままじゃ…!Cさんがッ!)

AはCを助ける為に、すかさず前へ出ようとする。


連邦兵B「待て、Aッ!!お前はその場から動くなッ!」

ちょっと寝ます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月27日 (木) 00:47:59   ID: Ml-yvK1O

滅茶苦茶面白い、更新まってます!

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