魔術師「勇者一行をクビになりました」 (153)

勇者「今回中ボス討伐に協力してくれた魔法使いが、正式に仲間に加わってくれることになった」

魔術師「はぃ」

勇者「こう言っちゃ申し訳ないけど、魔法使いの能力は君の上位互換なんだ」

魔術師「…はぃ」

勇者「君は皆と上手くやろうともしないしね」

魔術師「………」

勇者「俺たちはパーティーなんだ。君と一緒だと戦いにくいって声もあがっている」

魔術師「……はぃ」

勇者「だから悪いけど…」



今日、私は勇者様の一行をクビになった。

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魔術師「…」トボトボ

故郷への帰路を1人歩く。気持ち?とっても惨め。
帰ったら皆にバカにされる…。だからと言って、私を迎え入れてくれるパーティーがあるとは思えない。
昔から暗くていじめられっこで、私は集団の中ではよく浮く。

魔術師(頑張ってたもん)

ただ私に才能が無かっただけで。

魔術師(上手くやろうとしなかったわけじゃないもん…)

私なりに頑張った。

戦士『ねぇその目、何か不満でもあるの?』

魔術師『ぃ、いえっ』

雰囲気が暗くてよく誤解されていた。


僧侶『魔術師さん、魔法を繰り出すのはもう少しタイミングを見てくれません?』

魔術師『す、すみません…』

皆との連携がわからなかった。


勇者『全員分の装飾品装備買ってきたぞー』

戦士『やったー、ありがとう!』

魔術師(お礼言わなきゃ)『ぁ、あり…』

踊り子『ちょっと勇者ー、これセンスなーい』アハハ

勇者『何だよー笑わなくたっていいだろー』

僧侶『私は好きですよこういうの』

戦士『僧侶、勇者はお世辞間に受けるから正直に言いなー』

勇者『戦士までひどいなぁ~』


魔術師『…』ポツン


勇者さん、戦士さん、僧侶さん、踊り子さん…皆は仲良くやっていたけど、私はいつもその輪の外にいた。

魔術師(頑張ってたもん…)

魔術師「う、えうぅ」

泣けてくる。
私はいらないと宣告された。
私を否定するような勇者さんの発言が、頭の中で何度も繰り返し私を責める。

魔術師「もうやだぁ…」グスグス

こんな私、どこに行ってもいらないと言われる。
またいらないと言われるのは嫌だ。誰かと関わればまた傷つく。だけど1人じゃ生きられない。

この世界は、何て苦しいんだろう。

魔術師「うえぇ」


「たーすけてくれー」


魔術師「…え?」

遠くから声が聞こえたような気がした。

「助けてマジで!!ヘールプ!!」

今度ははっきり聞き取った。
もしかして、誰かのピンチ…!?

魔術師「ぃ、今行きますぅ!」

私は声のする方に駆けた。助けられるか自信はない。

魔術師(これは…?)

声を追って来ると、魔法陣の描かれた岩を見つけた。
周囲に人の気配はないが…。

「あーチキショウ、出せってんだよコラアアァァ!!」

魔術師「ひぃ」ビクッ

と、岩の中から声が聞こえた。

「あ、誰かいんの!?出して、だーしてー!!」

魔術師「ぇと…どうやって…?」ビクビク

「魔法職の奴を引っ張ってきて、この魔法陣の効果を打ち消すんだよ!」

魔術師「ぁ、私も魔法職…」

「マジで!?すみませんお願いしますマジでプリーズ!助けて助けてたーすけてー!!」

魔術師「ち、ちょっとだけお時間頂けますかぁ…?」ビクビク

「おう、1時間でも1週間でも1年間でも!ゆっくり焦らず落ち着いてー♪」ヘイヘイ

魔術師(落ち着いてできないよぅ…)ブルブル

とりあえず声に従って、魔法陣の効果を打ち消すことにした。
これは…難解だが、時間をかければ解除できそうな気がする。

>3時間後

魔術師「ぉ、お待たせしましたぁ…何とかなりそうです…」

「…」

魔術師「ぁのぅ…?」

「んー…ハッ!寝てた!何だってぇ~?」

魔術師「ぁ、いぇ…」

魔法陣解除の準備を終わらせた私は呪文を唱えた。

魔術師「…解除!」

「イヤッハー!!」

魔術師「!!」

物凄い魔力が岩から溢れ出す。この魔力は…人のものではない。
そう思いながら私は、とても重大なことに気がついた。

魔術師(誰が何で封印されてるのか聞くの忘れてたああぁぁ!!)

もしかして封印されていたのはとんでもない存在だったかもしれない。
しかし時既に遅し。封印されていたものは、その姿を現した。



悪魔「ありがとありがと、マジさんきゅー!」

黒い翼をはやした若い男が現れた。顔は整っているが派手なアクセサリーをジャラジャラつけて、とてもガラが悪い。

悪魔「お礼は何がいい?金?力?それともア・タ・シ?なーんつってイャハハハハ」

魔術師「」ブルブル

悪魔「あン?」

魔術師「怖いよぉ~」

腰が抜けて立てなくなった。

悪魔「こりゃまた可愛い魔術師さんだなー、食べちゃいたいくらい」

魔術師「ひっ」

悪魔「ウソウソ!俺様可愛い女の子は大好きだけど、こう見えて義理堅いから食ったりしねーから!」

魔術師「ほ、ほんとですか…?」

悪魔「う・そ♪」

魔術師「ひゃああああぁぁ」

悪魔「うそうそ、ほんとだから!あ、どっちが嘘でどっちが本当かこんがらがってきたなイャハハハハ」

魔術師(笑えない)ビクビク

悪魔「で、礼は何がいい?」

魔術師「えっ!?」

悪魔「助けてくれたんだからお礼してやるよ。何でも言ってくれ!」

魔術師「え、えと、えーと…」

悪魔「あ、もしかして思いつかない系?何でもいいよー、何でも」

魔術師「ぃ、いぃです、お礼なんて」アセアセ

悪魔「ところでさー、チミのような食べやすそうなお嬢ちゃんが、何でこんな森を1人で歩いていたの?」

魔術師(食べやすそう?)「帰る途中で…」

悪魔「へー里帰り。どっかのパーチーに入ってねェの?」

魔術師「ぁ、今日クビになりまして…」

悪魔「はアァん、そっかー。じゃクビにした上司が憎いだろ~。俺様が呪い殺してやんよォ」ウケケケケ

魔術師「いや、いいです、殺さなくていいです!」

悪魔「あそー。でも何でクビになったァ?男女関係のもつれ?」

魔術師「いえ…私の力量不足です」

悪魔「力量不足でクビになンのかよ、無慈悲な上司だなー」

魔術師「仕方ないんです…勇者さんは1日も早く魔王を倒さないといけないから」

悪魔「ンはっ!?勇者!?魔王オォ!?」

魔術師「」ビクッ

悪魔「…なぁ、今って何年?」

魔術師「今ですか…?暦上では645年ですが…」

悪魔「ヤベェ~ッ!!寝っすぎたァ~…」ズーン

魔術師「あのぅ…」

悪魔「ま、過ぎたことは気にしても仕方ねェな!前向きに生きまーす☆彡」キラリン

魔術師(元気だなぁ)

悪魔「ンで、勇者は魔王を倒しに旅をしていて、チミは勇者一行をクビになった。そしてチミは勇者を憎んでいる!間違いねェな!」

魔術師「いえいえ、憎んでいませんよ!」

悪魔「でも、悔しいだろ?」

魔術師「っ!」

悔しいかって?そりゃあ悔しいに決まっている。
頑張ったのに認められなくて、いらないって言われて。

魔術師「でも…」

悪魔「「でも」禁止ィ!!」

魔術師「」ビクッ

悪魔「むぅ」ジロジロ

魔術師「…?あ、あの?」

悪魔「アンタ…結構いいな」

魔術師「え?」

悪魔「よし決めた!俺様、チミの使い魔になっちゃるよ!」

魔術師「え…ええええぇぇ!?」

悪魔を連れて人のいる所に行ったらどんな目で見られるか…。
魔術師と悪魔…まるで自分が悪魔召喚の儀式を行ったかのような誤解を生む組み合わせだ。

魔術師「ぃ、いいです!ほんと!」

悪魔「世間体気にしてんなら大丈夫だよォ?翼をしまえばホラ…ハーイ、下賤な人間と変わりませーん」ジャーン

魔術師「ぁの、私の使い魔になってどうするんですか?」アセアセ

悪魔「復讐よ」ニヤリ

魔術師「…え?」

悪魔「一緒に魔王をブッ倒そうぜ!!そして勇者に恥をかかせて、俺様たちは愛の終着駅へ一直線って計画よオォォ!!」

魔術師「どこから突っ込めばいいんですか!?」

悪魔「ツッコミは不要だぜェ!心配すんなって、俺様がいれば何とでもなるってェ~!!」

魔術師「あうぅ」

悪魔さんは私の頬を両手でギュッと締めて大笑いしている。
何かもう、理解が追いつかない。

悪魔「そいじゃ早速契約しようゼエェ!!」

魔術師「け、契約…ですか?」

悪魔「おう!この紙にサインしろ!」バッ

魔術師(使い魔との契約ってそうやってやるの?)「えーと…」

>婚姻届

魔術師「…」

魔術師「ところで悪魔さん」

悪魔「ノオオォォ!!見事なスルー、こりゃ参ったねッ☆彡」

魔術師「魔王を倒すって…どうやってやるんですか?」

悪魔「あー、俺様の全盛期の力を出せりゃ何とかなると思うンだけど、何せ寝すぎて調子が悪ィ」

悪魔「そォこォでェ、チミの魔力を貸ちてくだちゃい♪」

魔術師「私のですか…?」

悪魔「よォし早速魔王城を攻めるぞオォ!」バサッ

魔術師「いきなりですか!?」

悪魔「俺様の背中に乗れ!出来れば俺の背中に胸を押し付けろ!」

魔術師「嫌です~…」

悪魔「嫌とか言ってらんねェンだよ!オラァ強制連行じゃい!!」ヒョイッ

魔術師「きゃあ!?」

悪魔「スピード出して行くぜえぇ、振り落とされたくなければ俺様をギュッと抱きしめなァ!胸押し付けてな!!イャハハハハハ!!」ビュウウゥゥン

魔術師「いやああああぁぁぁぁ」

こうして私は押し切られるまま、悪魔さんと魔王城へ飛び立っていったのだった。
…ていうか、本当にどうしてこうなったんだろう。

>魔王城付近

悪魔「おー見えてきたな~」

魔術師「あっという間ですね…」

悪魔「人間って不便だよなァ、翼がねェと魔物とエンカウントしまくりフィーバーじゃ~ん」

魔術師「そういうものですよ…」

悪魔「…っと、これ以上近づいたら危ねェな」

魔術師「?」

悪魔さんはそう言って着地する。
魔王城はまだ、遥か遠くに見えている。

魔術師「どうしたんですか?」

悪魔「相手さん、魔法で網を張ってやがる。そン中入ったら、魔王城に近づく者がいるって一発でバレちまう」

魔術師「へえぇ…そんな魔法があるんだ…」

悪魔「ま、でもお陰さんで相手さんの実力がわかった。この程度の範囲にしか張れないなんて、甘ちゃんだなコリャ」

魔術師「え、結構広い範囲じゃないですか?」

悪魔「そら、まー魔王を名乗る分には申し分ねーけど、オレ様の全盛期に比べりゃハナタレ小僧、余裕のよっちゃんよイャハハハハハ!!」

魔術師(物凄く胡散臭いよぉ…)

魔術師「でも、魔王城を攻めるんじゃないんですか?」

悪魔「ノリで言ったンだよォ~ん」

魔術師「ぇ、あ、そうですか」

悪魔「今日の所は敵情視察よ!俺様たちにはまだ目的があったろ?」

魔術師「えと…勇者さんに恥をかかせる?」

魔術師(俺様「たち」じゃないけど…)

悪魔「そーれーもーあーるーけーどおぉ?」

魔術師「?」

悪魔「やっぱラスボス倒すのはァ…チミが俺様に惚れてから?キャッ」

魔術師「…」

魔術師「敵情視察ってどうするんですか?」

悪魔「はいスルウウウゥゥゥ!!俺様恥ずかし損!!もう…傷ついちゃうゾッ♪」

魔術師(もうやだこの人)

悪魔「俺様が体のサイズと魔力を最小限に縮めて、潜入捜査してきてやんよ!」

魔術師「え、そんなことができるんですか」

悪魔「悪魔なめちゃいかんよチミ~。あ、それにはチミの協力が必要なンだけどな!」

魔術師「ぁはい、何をすれば…」

悪魔「俺を可愛がるンだ!」

魔術師「………はい?」

悪魔「ばぶばぶ~」ゴロン

魔術師「…」

悪魔「おぎゃー」

魔術師「………」

悪魔「この魔法は、か弱き頃の自分に意識を戻すのがコツなンだ!さぁ早く可愛がれ!」クワッ

魔術師「は、はい!」

悪魔「だぁだぁ」

魔術師「よしよし…」

悪魔「キャッキャ」

魔術師「いい子いい子…」

魔術師(大きな男の人相手に何やってるんだろう私)シクシク

悪魔「キタキタキタァ!!」ゴオオォォォ

魔術師「え!?」

「ちゅー」

魔術師「…ネズミ?」

ネズミさんは走り回って地面に字を書いた。
曰く「俺様だよ俺様、悪魔だよ」と。

魔術師「赤ちゃんゴッコと何の関係が…」

悪魔「ちゅう(訳:ノリだ)」

悪魔さんは地面に「ここで待ってろ」と書き、魔王城へと駆けて行った。
魔王城周辺なので、私も透明化魔法で姿を消して待つことにした。

魔術師(大丈夫かなぁ悪魔さん…)

悪魔さんのことは本っ当に苦手だけれど、何だか心配だった。

けれど心配は杞憂に終わり、1時間位して悪魔さんが戻ってきた。
私が透明化魔法を解除すると同時、悪魔さんも元の姿に戻る。

悪魔「いよっ、待ったァ?俺様のこと恋しくて仕方なかったァ~?」

魔術師「成果はありましたか?」

悪魔「はいまたスル~。情報ゲッチューしたぜェ、褒めて褒めてェ頭撫でてェん」

魔術師「ぁはい、凄いですねぇ…」ナデナデ

悪魔「えへへ、僕ちゃん頑張ったヨ♪」

魔術師「そ、それで情報っていうのは…」

悪魔「魔王軍幹部、暗黒騎士っつー奴のことだ!」

魔術師「暗黒騎士…どんな方ですか?」

悪魔「俺様以外の男に興味持つなよォ!」クワッ

魔術師「ええぇーっ!?」

悪魔「もう今日は寝る!!近くの街まで飛んでいくぞ!!」プンプン

魔術師「あうぅ、ごめんなさぁい…」

魔術師(つい謝っちゃったけど、何で怒ってるのこの人ォ…)シクシク

>宿

悪魔「一緒に寝てもいーい?」チラッチラッ

魔術師「ふた部屋お願いします」

悪魔「スルーやめてええぇぇ、せめて罵ってええぇぇ」

魔術師「おやすみなさい」パタン



魔術師(何か強引に押し切られちゃったけど、明日からどうしよう…)

魔術師(2人で魔王を倒すなんて、あの悪魔さん信じても大丈夫なのかなぁ)

魔術師(新しくパーティーに入った魔法使いさん、勇者さん達と上手くいってるかなぁ)

魔術師(…私よりは上手くやってるよね)

魔術師「ぐすん」

今日はここまで。
オチは考えてますがあとは勢いとノリで書き進めてます。早くも進行が不安であります。
悪魔まじウザ可愛い。

だって暗黒騎士中毒だ~か~ら~(´・ω・`)
暗黒騎士今回は脇役だけどイケメンすぎて悪魔のキャラを食わないか心配であります。

>翌日

悪魔「おはようございます悪魔です、今日は暗黒騎士を倒したいと思います」キリッ

魔術師「いきなり!?」

悪魔「暗黒騎士は今魔王城を離れて砦を守ってるそうだ!砦を攻めて、攻めて、突いて、あンッ、はァッ…」ビクンビクン

魔術師(ツッコめない…)「そ…その砦にはどれ位の魔物が…」

悪魔「知らん」

魔術師「知らないんですか!?」

悪魔「俺様が狙うのは暗黒騎士のみ!だからその他の情報とかどうでもいいンだ!」

魔術師「あのぅ暗黒騎士を討つ為に情報集めが必要なのでは…」

悪魔「いやだいやだいやだいやだアアァァ!!」ジタバタ

魔術師(そんなに嫌がらなくても…)「わかりましたよぅ、悪魔さんにお任せします…」

悪魔「魔術師ちゃんは従順ないい奥さんになるぜェ。そして俺様は亭主関・白ッ!!」

魔術師「それじゃあ行きましょうか」

悪魔「レエエェッツ、ゴートゥヘブウウゥゥン」

魔術師(ヘブン?悪魔なのに?てか死ぬの?)

>砦

悪魔「あれが砦かアァ…イャハハ、血がたぎるぜェ」

魔術師「大丈夫なんですか…?悪魔さん私の力の程度も知らないですよね…?」

悪魔「ハンッ、女の子の力をアテにするようなメンズはダサくてキモいだろォ!そんなに落ちぶれる位なら、アソコチョン切るね!!」

魔術師(勇者さんパーティー勇者さん以外女性なんですが)

悪魔「でもやっぱ本調子じゃないから、チミの魔力貸ちて♪」テヘペロ

魔術師「いきなり発言に矛盾が」

悪魔「わりッ、アソコチョン切るから許してチョ♪」

魔術師「いいですやめてくださいごめんなさいいぃぃ!!」ガタガタ


「騒がしいな…」


魔術師「あっ!?」

砦の門が開き、誰かが出てきた。
魔物達の先頭に立つ漆黒の鎧は威圧感を醸しだしている。彼こそがきっと――

悪魔「テメェが暗黒騎士だな?」

暗黒騎士「そうだ」

魔術師(ま…魔王軍幹部…)フルフル

暗黒騎士「お前、魔王軍の魔物ではないな?」

悪魔「おぅ…俺様はアァ!!」

悪魔さんは翼をばさっと広げ、空中に舞った。

悪魔「俺様こそが混沌と破滅を呼ぶ者! †悪魔†と呼ぶがいイャハハハハハ!!」

魔術師(仲間だと思われたくないよぅ)シクシク

暗黒騎士「で…混沌と破滅を呼ぶ者が何の用だ?」

悪魔「オマエを…ブッ!倒しに来たンだよおおおぉぉぉ!!」ビュウゥゥン

暗黒騎士「っ!!」

悪魔さんは暗黒騎士に向かい急降下する。


そして――



暗黒騎士「ふん」バキッ

悪魔「ゴハァ!!」

魔術師(あっさりやられたー!!)

悪魔「タイムタ~イム!」タッタッ

悪魔「魔術師ちゃん、たちけて~」」

魔術師「ぁのぅ、敵に思い切り背を見せてますが…」

暗黒騎士「無防備な敵を背中から切るような恥知らずな真似はしない」

魔術師(あれ。敵の方が真っ当)

悪魔「助けて下さい!お願いします!愛してますからっ!!」

魔術師「いや愛してなくても…助けるってどうやって?」

悪魔「魔力魔力!魔力貸して!」

魔術師「いぃですけど…」

悪魔「ンー」

魔術師「…?」

悪魔「魔力の譲渡方法だよ。ちゅーして、ちゅー」

魔術師「え…ええええぇぇ!?」

悪魔「早く早く!」

魔術師「でででできませんよそんなのぉ!」

悪魔「ちゅっちゅ、ちゅっちゅー!」

魔物達「何やってんだあいつら」「さぁ」「恥ずかしい奴らだ」

魔術師(冷ややか…笑われた方がマシだぁ)シクシク

悪魔「しゃーねぇ、じゃ手つなぎでいいぜ!」

魔術師「初めからそうして下さいよぉ!」

悪魔「で、でも」モジモジ

魔術師「?」

悪魔「初めての手つなぎってホラ…友達以上恋人未満みたいな、ようやく2人の関係が前進したみたいで…ドキドキしない?」チラッ

魔術師「」

暗黒騎士「おい、女を困らせるものではないぞ」

魔術師(やっぱり敵の方が真っ当)

悪魔「イャハハ、俺様がリードするぜェ…だって俺様、肉食系男子だからなあアァァ!!」ガシッ

魔術師「!!」

悪魔「キタキタキタアァ…」

魔術師(魔力が…悪魔さんに吸われていく…)

悪魔「ああぁいいよいいよ、女の子の魔力ウウゥゥ…!!もう興奮して俺様のアソコがビンビンに」

魔術師「離して下さい」ブンッ

悪魔「イヤン」

暗黒騎士「最低な男だな」

魔術師「本当です」シクシク

悪魔「魔力アーンド精力…注・入ッ!」

魔術師「いらないもの注入してる!?」

悪魔「イャハハハ性欲は男の力の源なンだゼェ、俺様が暗黒騎士を倒す姿を見て惚れちゃってくれィエイ♪」

魔術師(どうしよう…私は暗黒騎士を倒さなくても別にいいんだけど)

悪魔「まずは準備運動だ…さぁギンギンさせるぜェ!!」

悪魔さんの赤い爪が伸びていく。
その一本一本に、何か不思議な力が纏っている。

魔術師「その爪は魔力で…?」

悪魔「いや精力で爪を勃起させ」

魔術師「もう悪魔さんイヤ!!」

悪魔「イャハハハハ!!下ネタで赤面する女の子の姿は興奮すンねぇ!!ヨッシャ暗黒騎士…今度こそっ!!」ビュンッ

暗黒騎士「くっ」

悪魔さんの爪と暗黒騎士の剣がぶつかり、カキンという音が響く。

暗黒騎士(素早さが格段に上がった…!!)

悪魔「今のを反応できるたぁ流石魔王軍幹部ぅ♪」

暗黒騎士「この程度で調子に乗るな!」ブン

悪魔「お~~っと!!」

暗黒騎士の放った剣のひと振りを回避し、上空に飛び立つ。

悪魔「勘違いすンなよクソガキ」

暗黒騎士「何…!?」

悪魔「俺様が調子こいてンのは、この程度で終わンねぇからだよ…!!」ニヤッ

悪魔「邪神よォ、俺様の呼び出しに応えやがれェアアァァッ!」

暗黒騎士「…!!」

魔術師「な…」

悪魔さんの声に応えるように、空が黒雲で覆われていく。
まだ昼前だというのに周囲は夜のように暗くなった。

バリバリッ

魔術師「きゃっ!?」

悪魔「イャハハ、久々の呼び出しを喜んでいるような雷だぜェ…ヨッシャ、やる気に応えてド派手にやっちゃるよ!!」

雷が悪魔さんの姿を照らす。その姿は正に凶悪…間違いない、彼はお調子者だが、本物の悪魔だ。

悪魔「降り注ぎな…白銀の豪雨!!」

暗黒騎士「!!」

黒雲から何かが降ってくる、あれは雨――いや、槍だ。
無数の槍は暗黒騎士に狙いを定め、彼に向かって一直線に降り注いだ。

暗黒騎士「くっ…!!」

逃げられないと悟ったのか、暗黒騎士は槍に向かって剣を構える。
まさか全て弾き落とそうというのだろうか…!?

悪魔「おっ始めな、命懸けの千本ノックをよおォ!!」

暗黒騎士「…っ!!」

ガキンガキンという金属音が鳴り響く。
槍は暗黒騎士の周辺に散らばる。彼は剣を振るのは止まらない。
全て弾いている…?いや違う。
槍の内何本かは、暗黒騎士の鎧や兜に当たって弾かれているのだ。

魔術師(つまり当たればダメージになる分の槍だけ弾き落としているの…?)

現に暗黒騎士がダメージを受けている様子はない。
槍が次から次へと降り注ぐ中、何という判断力。

悪魔「優秀優秀♪」

そして最後の1本――

暗黒騎士「…っ」ガキィン

悪魔「うわっち!?」

暗黒騎士が弾いた最後の槍が、一直線に悪魔さんへと飛んでいく。
油断しきっていた様子の悪魔さんはそれを慌てて回避…するが、槍は頬をかすめた。

悪魔「ぬわあああぁぁ!?俺様の美しい顔があああぁぁ!?」

暗黒騎士「顔が大事ならしっかり守っておけ」

悪魔「だー、クソが許さねェ!!その兜ブッ壊して、テメェが必死こいて隠しているブサイク面をプギャーしてやっからなあぁ!!」

暗黒騎士「俺の兜の頑丈さは今見せた通りだが…見た目の通り頭が悪いようだな」

悪魔「ウルセェ、男は顔じゃい!!」

悪魔さんが手を掲げると、その手には雷が集まっていく。

悪魔「物理ダメージには強いようだが…これはどうかナアァ?」

バチバチイイィッ

暗黒騎士「…っ!」

悪魔「ほう…頑丈だねェ~」

雷は鎧に弾かれた。
それでも鎧の隙間に電気が流れる恐れがあるのか、暗黒騎士は防御姿勢を取っている。

悪魔「次から次へと行くぜ、イャハハハハ!!」

それでも悪魔さんは次から次へと雷を放つ。
暗黒騎士は防御姿勢を崩さない。

魔術師(凄く眩しい…!!)

暗黒騎士「くっ…だが無駄だ…!」

悪魔「わかってマース♪」

暗黒騎士「!!」

魔術師「あっ!?」

いつの間にか、悪魔さんは暗黒騎士の背後に回っていた。

悪魔「雷は目くらまし…どーよ、結構賢いだろォ?」

暗黒騎士「くっ…!!」ビュンッ

悪魔「おっとォ!」ガキィン

暗黒騎士の一撃を防ぎ、悪魔さんは――

悪魔「ごめんねダーリン♪」

暗黒騎士「!?」

暗黒騎士にしがみついた。

暗黒騎士「くっ離れろ!!」ビュンッ

暗黒騎士は一撃を放つが、腕ごとしがみつかれて勢いを鈍らせた一撃は軽くかわされる。
悪魔さんを引き剥がそうとしている様子は見受けられるが、悪魔さんはビクともしない。

悪魔「鎧を剥ぐのが1番いいンだけど、男脱がしてもつまンねェしなぁ…」

そう言って悪魔さんは、

暗黒騎士「!?」

悪魔「これでどうよ」ウケケケケ

暗黒騎士の鎧の隙間に手を入れた。

暗黒騎士「き、貴様…!!」

悪魔「安心しなァ~」

バリバリバリバリッ

暗黒騎士「!!!!」

悪魔さんは手を離す。
素肌に直接雷を浴びた暗黒騎士は、その場に崩れる。

悪魔「死なない程度に加減したつもり…あ、でも加減間違えてたらゴメンね~♪」

そう凶悪な笑みを浮かべた悪魔さんの顔は、目だけが笑っていなかった。

魔物達「あ、暗黒騎士様がやられた…!?」「まさか…」

悪魔「おい、ビビってんのかァ?」

魔物達は悪魔さんに睨まれて、びくりと体を強ばらせる。

悪魔「おいテメェら全員砦に引っ込みな…俺様はこいつと話がしてェ」

悪魔「引っ込まねぇ奴は耳の神経ひっこ抜くかンなァ!」

悪魔さんが無邪気な笑みで脅しをかけると、魔物達は砦へと駆けて行った。
やはり野性的本能に優れた魔物達。悪魔さんが只者でないのは、十分感じているのだろう。

暗黒騎士「く、くぅ…」

悪魔「おぉ~、うっすら意識あるのね~。まいいや、とりあえず…捕縛っ!」

暗黒騎士「!?」

悪魔さんの合図で、地面から黒い金属棒が生えてくる。
金属棒はそのまま暗黒騎士の体に巻き付き、彼を捕縛した。

暗黒騎士「く…っ」

悪魔「あー別に拷問する気はねェから。リラックス、リラックス♪」

暗黒騎士「貴様…何が目的だ?」

悪魔「その前に、これでも見て和めよ」

悪魔さんの手に鏡が召喚された。
あの鏡は…よく見たら、ここにはない映像を映し出している。

暗黒騎士「これは…?」

悪魔「俺様が昨日魔王城に忍び込んだ時に拾った映像だ。まぁ見れ」

暗黒騎士「…!?」

そして、鏡から流れる映像には…

>魔王城のサウナ

オークA「な、なぁ…こないだのさぁ」

オークB「あぁ…暗黒騎士様だろ?」

オークC「確かお前達、サウナで暗黒騎士様と鉢合わせたんだっけか…?」

オークA「あぁ…」

オークC「…どうだった?」ゴクリ

オークA「正直…興奮した」




暗黒騎士「」

悪魔「イャハハハハ!!こいつらの暗黒騎士視姦トークまじエグかったゼエェ!!ほらほら、耳糞かっぽじって聞け聞け聞けエェ!!」

暗黒騎士「やめろ聞きたくない!!」

オークA「あの胸筋、引き締まった尻…」

暗黒騎士「やめろーっ!!」

魔術師(ひどい拷問…)

悪魔「おい暗黒騎士ィ、テメェをこのままオークに差し出してもいいンだぜェ!?」

暗黒騎士「くっ、殺せ!!」

魔術師「やめてあげて下さいぃ~!」

悪魔「イャハハハ、俺様もオーク×暗黒騎士の陵辱なンて見たくねェよ!!ただし暗黒騎士ィ…てめぇ次第だけどな」ニッ

暗黒騎士「何が望みだ…!?」

悪魔「それはだなァ…」

悪魔さんは暗黒騎士に顔を近づける。

悪魔「お友達になろうぜェ…暗黒騎士ィ」

暗黒騎士「何だと…!?」

悪魔「その内勇者が魔王城に乗り込む…そン時、お前も魔王城に召集されるよなァ?」

暗黒騎士「あぁ…」

悪魔「そン時、俺様たちも同じタイミングで城に乗り込むからよォ。俺様たちのことは見逃してくれねェ?」

暗黒騎士「何だと…!?」

悪魔「そンでお前は勇者を足止めしてくれりゃいい…な、協力してくれよォ」

暗黒騎士「しかし…」

悪魔「考えるまでもねェだろ。俺様たちと勇者一行じゃ、勇者一行のが優先されるべき敵だろォ」

暗黒騎士「だが…侵入者を見逃すことはできん」

悪魔「オイオイ暗黒騎士ィ、魔王が泣くぜェ?お前が従っている魔王様が、俺様に負けると思ってんのォ?」

暗黒騎士「それは…ありえん」

悪魔「だろォ?お前は勇者一行を足止めする…俺様たちは魔王の元へたどり着き、魔王が俺様たちを迎え撃つ」

悪魔「なァんの問題も無いと思いますけどねェ~」

暗黒騎士「…」

悪魔「オーク」

暗黒騎士「わかった」

魔術師(オークは卑怯ですよ悪魔さん!)

悪魔「今、約束したな?よっしゃ、契約の儀式だ!」

悪魔さんはそう言うと暗黒騎士の額に指を当てる。
そして指から放たれた光が、暗黒騎士に吸い込まれていった。

暗黒騎士「今のは…!?」

悪魔「俺様とお前の契約だ。もしお前が約束を破れば…」ニヤリ

暗黒騎士「…!?」ゴクリ

悪魔「お前のケツにオークのこん棒が吸い込まれていく!!」

暗黒騎士「お、おおぉ…」

魔術師(お…恐ろしい)ガタガタ

悪魔「それとこっちのテレパシーがいつでもお前に聞こえるようにしといたゼ。じゃ、当日は協力頼んだぜェ暗黒騎士」

暗黒騎士「!」

悪魔がくるっと振り返ると同時、暗黒騎士の拘束は解かれた。

悪魔「じゃ帰ろうぜ魔術師ちゃん。ふぁ~…久々に戦ったから疲れたぜぇ…」

魔術師「は、はぃ…」(暗黒騎士の兜壊すって言ってなかったっけ…?)



暗黒騎士(本当に、それだけの為に…?)

暗黒騎士(あの男何を企んでいる…いや、それ以前に)

暗黒騎士(あの男…何者だ?)

>宿屋

悪魔「僕ちゃんおねむなのォ~!!」

魔術師「ね、寝てもいぃんですよ…?ベッドもあるし…」

悪魔「やだやだ、魔術師ちゃんのお膝枕じゃないとヤダー!!」ジタバタジタバタ

魔術師「嫌ですよぅ…」

悪魔「嫌い!?僕ちゃんのこと嫌い!?」

魔術師「そうじゃなくて、恥ずかしいですし…」(まぁ苦手だけど)

悪魔「じゃあ手ぇギュッとして」

魔術師「悪魔さん手つなぎていかがわしいこと想像するじゃないですか…」

悪魔「しーなーいー。しないから、ね、ね?」

魔術師「仕方ないですね…」ギュ

悪魔「ぐごおおぉぉぉ」

魔術師(寝るの早!?)



悪魔「ぐおーぐおー」

魔術師(普段の悪魔さんからは危険な感じはしないんだけど)

魔術師(でも、戦闘中の様子…何か、普通じゃなかった)

魔術師(悪魔さん…何者なんだろう)

今日はここまで。
暗黒騎士でくっ殺できる日が来るとは思いませんでした。

乙。
外伝でオーク×暗黒騎士を書いたっていいのよ

この暗黒騎士って♂…だよな?

>>47
大好きな暗黒騎士が汚らしいオークに汚される場面、想像するだけで泣けますな。何かに目覚めたら危険だ。

>>48
男です。オークがホモです。

乙です。
さしもの暗黒騎士も、自分の貞操がかかれば仕方ないか、しかも相手がホモオークじゃなぁ。


じゃあ大好きな暗黒騎士をかばって>>1が汚される展開はあり?

>>50
やはり騎士職にとってオークは天敵ですね、男女関係なく。

>>51
誰得www
流石に自分が汚されるくらいなら暗黒騎士を差し出します(ゲス顔

>夕方

悪魔「あーよく寝た」スッキリ

悪魔「…ん?」

シーン

悪魔「あれー魔術師ちゃんどこ行ったのかなー?」

悪魔「魔術師ちゃんの魔力を探知ー。うぃーんうぃーん」

悪魔「お…良かったぁ街にいるみてぇだ。よし今行くよマイハニー!」

悪魔「って俺ストーカーかっつーの!イャッハッハ!!」

>図書館

魔術師「むむぅ」


悪魔とは
・特定の宗教文化に根ざした悪しき超自然的存在や、悪を象徴する超越的存在
・神を誹謗中傷し、人間を誘惑する存在、神に敵対するもの


魔術師「わかんないなぁ…」

悪魔「何がわかんないのォ~?」

魔術師「うわぁ!?」

悪魔「しーっ、図書館では、お・し・ず・か・に♪」ウインク

魔術師「あ、悪魔さん…起きたんですか…」

悪魔「何読んでンの?」ヒョイ

魔術師「あっ」

>悪魔辞典(デビル・ウィキペディア)

悪魔「ほほーう、俺様のことが気になって気になって仕方ないワケェ」

魔術師「こ、これは」

悪魔「イイぜ…魔術師ちゃんになら俺様の丸裸の姿を見せたって」ポ

魔術師「人間を誘惑する存在…本当だ」

悪魔「んモウ、魔術師ちゃんだけ特別なのにィん」クネクネ

魔術師「悪魔って伝承で聞いたことはあるんですが、実物を見たのは初めてでして」

悪魔「レアだからなァ。ま、でも見ての通りイケメンな事以外は魔物とそんな変わらねェよ」

魔術師「そうみたいですね…魔物にも色々いますし」

悪魔「俺様のことは2人きりの密室でじっくり教えてあげっからさァ、それより魔王のこと調べた方が建設的だぜェ?」

魔術師「わ私まだ魔王を倒すと決めたわけじゃ…」

悪魔「ほぇ~?魔術師ちゃん、魔王倒す為に勇者と旅してたんでしょ~?」

魔術師「そ、それはそうですが…」

悪魔「勇者一行クビになったら魔王を倒すのもやめちゃうの?」

魔術師「…」

悪魔さんの言うことは正論だ。
だけど勇者さんからクビを言い渡されて、魔王を倒すという目標を私は失った。

悪魔「自信無くなっちゃった?」

魔術師「…かもしれませんね」

悪魔「なら心配すンなよ、俺様の力を貸してやる。全盛期の俺様は、勇者なんかより強いからな」

魔術師「ぁはい…」

自信…確かに自分の力に自信はない。けど、本当の理由はそうじゃない。
本当は――

悪魔「俺が、チミの居場所になってやるから」

―――え?

悪魔「それより図書館出ようぜェ~大声出せない場所ってチョー苦手ェ~」

魔術師「ぇ、あ、はい」

魔術師(私の、居場所…)

悪魔「そおオォォォ…だッッ!!」

魔術師「大声出しすぎですよ~…皆驚いてこっち見てます…」

悪魔「イャハハハハハわりわり、陰気臭ェ図書館出た開放感でぶひゃひゃひゃひゃ」

魔術師(壊れた!?)

悪魔「あー腹いてェ!!でさァ!勇者一行って今、どこにいんのオゥッハッハー!?」

魔術師「えぇと、私と悪魔さんが出会った森の近く辺りかと」

悪魔「マージーかーよッ!!ペース遅っせ、勇者ってもしかして短足ゥイャハハハハ!!」

魔術師「人間の足でなら順調なペースですよ…」

悪魔「イャハハハハ!!ぐひゃ、ぐひゃ、ゲァヒャヒャヒャヒャヒャ」

魔術師(どうしよう…元に戻らなくなった)グスン

悪魔「ハイ、じゃあ明日は勇者一行の様子を観察したいと思います」キリッ

魔術師「戻った!?」

悪魔「もう笑えませんわ…」ズーン

魔術師「ぇ、いや笑ってもいいんですよ」

悪魔「もう…私に笑う力は残されていません…先に宿に戻っていますね…」トボトボ

魔術師(笑う力って消耗するんだ…)

>翌日

悪魔「イャハハハハ!!」

魔術師「もう笑う力戻ってる!?」

悪魔「おう、宿屋で一晩寝たら全回復ゥみー↑たー↑いー↑なァー↑↑↑」

魔術師「ぁ、あぁ良かったです…それで今日は…その…」

悪魔「はい、魔術師ちゃんをクビにした、にっくき勇者の偵察でーす」

魔術師「憎くありませんって!勇者さん達の様子を見る必要があるんですか?」

悪魔「おう、情報は多いにこしたことはない」

魔術師「昨日は情報とかどうでもいいって…」

悪魔「覚えておきな!俺様の言うことは二転三転する!」

魔術師「開き直られると清々しいですね」

悪魔「でもぁたし、魔術師チャンに対してゎ一途だょ?」

魔術師「うぅー、勇者さん達と顔合わせるの気が重いなぁ」

悪魔「まー、ヤなら顔合わせなきゃいいじゃーん、遠くから視姦するだけでさァ!」

魔術師「そんな趣味はありませんけど…まぁ悪魔さんのお好きなように」

悪魔「じゃ醤油かけて食べるわ」

魔術師「駄目です」

>ドッカの街

魔術師「多分この街だと思いますねぇ…」

悪魔「ちょーっと聞き込みしてくる。すんまそーん、そこのお人ォ」

魔術師「あ…」

魔術師(凄いなぁ悪魔さん、知らない人に物怖じしないで声かけられて)

悪魔「サンキューベイベー。魔術師ちゃん、勇者一行は昨日近くの塔で魔物退治して、夜この街に来たんだってさァ」

魔術師「あぁ、やっぱり…じゃあこの街で一泊したんでしょうね」

悪魔「まずぁ飯食おう!移動だけで腹減った!」

魔術師「ぁハイ」

悪魔「肉、肉肉にくにくニクニクウウゥゥゥ!!!」

魔術師「わかりましたから…肉料理のお店ですね」

悪魔「おやっさん、生肉1人分!」

おやっさん「ハイヨ!」

魔術師「あるんだ、生肉…」

悪魔「魔術師ちゃんは?ハンバーグ?ステーキ?それともア・タ・シ?イャハハハハ!!」

魔術師「ぁ、ハンバーグを…。悪魔さんどうしていつもそんなに元気なんですかぁ…」

悪魔「そりゃメソメソしたりプンプンしてるよりゃー笑っていきたいジャン?」

魔術師「悪魔さんは限度を越えてると思いますが…」

悪魔「魔術師ちゃんは大人しいからそう思うんだよォ!!笑っていこうぜ笑って!」

魔術師「私に悪魔さんのようになれってことですか…」

悪魔「それはウザい」

魔術師「認めちゃった!?自分のことウザいって認めちゃった!?」

おやっさん「ハイヨ、生肉とハンバーグお待ちィ!!」

魔術師「早っ」

悪魔「ウッヒョオォ、生肉ウゥゥ!!いっただきまーす!!」ガツガツ

魔術師(野性的な食べ方だなぁ)モグモグ

悪魔「あー美味かっ…ウッ」

魔術師「どうしました…?」

悪魔「ちょ、ちょっとお花摘んできますぅ…」モジモジ

魔術師「ぁハイ…」(おトイレね…そこは恥ずかしいんだ)

魔術師(この店他にどんなメニューが…。あれ、生肉載ってないよ)モグモグ

ワヤワヤ

おやっさん「らっしゃい」

勇者「5人ね」

魔術師(この声…あっ、勇者さん!?)

戦士「あー肉のいい匂いがするわ~」

踊り子「昨日は戦いで大分カロリー消費したから、沢山摂取しないと」

魔法使い「聖職者ってお肉食べてもいいの…?」

僧侶「うちの宗派その辺は緩いので」

店の構造的に向こうの席から私は見えないみたいで、こちらには気づいていない。

戦士「あー筋肉痛がひでーや」

魔法使い「戦士さん最前線で頑張ったもんね」

踊り子「魔法使いちゃんのナイスアシストのおかげで助かったわよォ」

魔法使い「そ…そう?」

僧侶「えぇ、魔法使いさんが入って下さったおかげで、うちのパーティーの総合的な戦闘力が上がりましたよ」


魔術師(そっかぁ…上手くやっているんだな、魔法使いさん)


勇者「これで旅も順調にいきそうだ」

魔法使い「そんな、褒めすぎよ。今までだって順調にきてたんでしょ?」

踊り子「あー…何ていうか」

戦士「ちょっとなァ…」

僧侶「はい…」

魔法使い「?」

勇者「魔法使いと入れ違いで抜けた奴がさ…連携乱してたんだよね」


魔術師「っ!!」

僧侶「いやまぁ、能力が悪かったわけではないんですけど…」

戦士「ちょっと戦闘中は空気読めないっつーか、やってほしいこと言わないとわかってくれなかったよな」


皆との連携がわからなかった。


踊り子「まぁ自分から意見言わないから、言ったことは全部やってくれるんだけど」

僧侶「でも…快くやってくれている感じではなかったですけどね」


雰囲気が暗くてよく誤解されていた。


勇者「つーか俺、暗い奴苦手!」

魔術師「…っ」

勇者「そりゃ俺らの1番の目的は魔王を倒すことだけど、パーティーって仲良くやってないと旅が円滑にいかないじゃん?それに楽しくないと気が滅入るしさぁ」

踊り子「あの子問題は起こさなかったけどねー…でも確かにやりづらかったかなぁ」

戦士「あー、だから戦闘の連携も上手くいかなかったんじゃね?」

僧侶「彼女を仲間はずれにしているつもりはなかったんですけど、傍からはそう見えていそうで、気は使いましたね…」



勇者さん、戦士さん、僧侶さん、踊り子さん…皆は仲良くやっていたけど、私はいつもその輪の外にいた。


勇者「本当は魔法使い加えた時に外す必要まではなかったけどさー、ぶっちゃけもういいかなーって思ったんだよねー」

魔術師「…っ!!」

私は邪魔者。いらない存在。嫌われ者。
他の皆も同調はしていないけど、誰も私を留めるよう勇者さんに言わなかった。
私なんていない方が、皆楽しくやっていられるんだ。

魔術師「えうぅ…」グスッ

悪魔「…なぁ」

魔術師「え、あっ!?戻ってたんですか悪魔さん…」

悪魔「泣いてんの?」

魔術師「え、あ、これは…コショウが目に入っちゃって」グスッ

私は精一杯笑う。こんな惨めな私を、誰かに知られたくない。

悪魔「そっかコショウが」

悪魔さんは気付いていないのか、ニカッと笑いを浮かべ――

悪魔「魔術師ちゃんたらドジッ娘ォー!!マジ萌えるんですけどォ、もう結婚してクダサーイ!!」

魔術師「!?」(声が大きっ…)


踊り子「は!?」

戦士「え、魔術師?」

僧侶「あっ…」

勇者「…」

魔術師「…」


気付かれた。

僧侶「魔術師さん…」

魔術師「ぉ、お久しぶり…です…」

踊り子「いや久々って程じゃないけど…故郷に戻ったんじゃないの?」

魔術師「ぃえ、その…」

悪魔「あーあのね、俺様が魔術師ちゃんに一目惚れして、今一緒にパーチー組んでもらってるの!!ねー魔術師ちゅあぁ~ん」

魔術師「ひえぇ」

戦士「へ…へー…こんなド派手な男がなぁ…」

勇者「ふーん…」

悪魔「あっあっ、貴方様が人類の希望を背負いし勇者様でございましょうかァ!?ハハァ~」

勇者「あ、いやそんな頭下げなくても…」

悪魔「いやあァ、それにしても見ただけで只者じゃないのがわかりますねえぇ~、剣の申し子っていう評判はその通りだァ」

悪魔「俺様が勝ってるのは顔と背とスタイルくらいジャン?イャハハハハ!!」

勇者「」イラッ

魔術師「あわわ…も、もういいじゃないですかぁ」

勇者「魔術師…大人しすぎる君には、丁度いい男かもな」

悪魔「でしょでしょォ~?俺様たちお似合いだろォ?俺様ゼッテー魔術師ちゃん幸せにすっからァ」

悪魔「女を囲って、人の陰口叩くような男といるよりはそっちのがイイだろォ?」

勇者「…っ」イライラ

魔術師(ああぁ…さっきの聞いてたんだ)

悪魔「イャハハハハ、ヒー、ヒー…はりゃっ?俺様大注目されてるウゥー!!」

戦士「いや…オメーじゃなくてよ…」

悪魔「イャハハハハ、非モテが女囲ってリア充気分味わえば勘違いもするよなァーッハッハ!!」

勇者「おい喧嘩売ってるのか?」

魔法使い「や、やめてよ勇者」

魔術師「悪魔さんもやめて下さい~…」

悪魔「アラァ勇者様ったら沸点ひっくーい。まぁしゃーないねェ」

悪魔「自分がオトせそうにない子のクビをばっさり切っちゃうような、心の狭いお方ですからねェ~」

勇者「お前っ!」ガシッ

悪魔「何?やンの?」

魔術師(ああぁ…こんな所で喧嘩されたら…)

悪魔「殴れよ、抵抗しねェから。ホラホラホラァ?」

勇者「ぐ…」

悪魔「あれれ~?もしかして女の手前、かっこつけたくて凄んだだけですかァ?勇者様ってカッコ悪いんですねェ~」

勇者「うるせーっ!」バキィ

悪魔「ぶべっ」ガシャーン

魔術師「ぁあっ!」

戦士「おい勇者落ち着け!」

4人は勇者さんをなだめる。
私は殴り飛ばされた悪魔さんに駆け寄った。悪魔さんは口を切ったのか、血が出ている。

魔術師「ぁ、悪魔さん…」

悪魔「…」

悪魔さんの顔は一瞬、無表情だったけど――

悪魔「血ぃ美味エェ~♪」

魔術師「悪魔…さん?」

悪魔「いやぁ、流石勇者様~ナイスパンチっすわぁ、さっき便所行ってなかったら確実にもらしてたわ~」

勇者「喧嘩売ってきたかと思ったら、今度は怖気づいたのか?」

悪魔「イヤーン」

勇者「…まぁいい。無闇に人を挑発しない方がいいぞ」

悪魔「ハイッ!肝に銘じておきマッス!」

魔術師(悪魔さん…喧嘩、しないの?)

悪魔「あ、魔術師ちゃん食い終わってたんだァ~。それじゃ行こ行こ、この人達の食事の邪魔しちゃ悪いしィ」

魔術師「ぇ…ぁはい…」

勇者「ふん…」

悪魔さんは私の手を引いて店を出る。
その表情は、いつも通りで…。

魔術師「あの、悪魔さん…」

悪魔「ん、なーにィ?」

魔術師「怒らないんですか…?」

悪魔「ハァ?怒ってんよ?」

魔術師「え?」

悪魔さんは八重歯を剥き出しにして、凶悪な顔になる。

悪魔「魔術師ちゃんのことあァんな風に言われて、ムカつかねーわけねーだろがよォ!ファック!」

魔術師「ひええええぇぇ」ビクビク

悪魔「あ、わり」コロッ

魔術師「ぁ悪魔さん…ごめんなさい」

悪魔「え何が?」キョトーン

魔術師「私の為に…その、痛い思いして…」

悪魔「なーに言ってんの、あンなヘナチョコパンチ痛いわけねージャン!血もうめぇし何も問題ナッシ~ング♪」

魔術師「けど…悪魔さん、やられっ放しで」

悪魔「イャハハハ!言ったろォ、あいつに恥かかすってさァ!そん時プギャーしてやりゃいいだけの話ィ~」

魔術師「でも」

悪魔「「でも」禁止ィ!!」

魔術師「!」

悪魔「俺様魔術師ちゃんには笑っていてもらいたいナー♪ハイ、ニコーッとしてニコーッと!」

魔術師「…ぐすっ」

悪魔「うわわぁ、どしたのォ!?」

魔術師「悪魔さん…どうして私に優しくしてくれるんですかぁ?」グスグス

悪魔「んぇ?」

魔術師「確かに私は悪魔さんの封印を解きましたけど…」

魔術師「それでも悪魔さん…私のこと嫌わないでいてくれるじゃないですかぁ…」

悪魔「うん、だって好きだから」

魔術師「どうしてですか…?」

悪魔「どちてって?」

魔術師「私暗いし口下手だし何の魅力もないし…誰かに好かれない存在だって、自分が1番わかってます」

悪魔「ほー…?」

魔術師「なのにどうして、好きって言ってくれるんですかぁ…?」

とても恥ずかしい質問をしているとわかっている。それでも聞かないと気がすまない。
だってそうじゃないと、悪魔さんのことがいつまでもわからないような気がして。

悪魔「あーもうっ!!人間って物事を複雑に考えすぎィ!!」

魔術師「」ビクッ

悪魔「俺様が魔術師ちゃんを好きな理由?んなもん至ってシンプルだし!シンプルイズベストだしィ!!」

魔術師「シンプルな理由…?」

悪魔「顔と声」

魔術師「え」

悪魔「内面なんて気にシナーイ!!俺様、見た目で人を判断しまァす、イャハハハ!!」

魔術師「逆じゃあ…」

悪魔「どんなに性格が綺麗でもブスは嫌いです」キッパリ

魔術師「あ、そこまで言い切ると清々しいですね…」

悪魔「だからアァ、魔術師ちゃんは俺様の好みど真ん中なワケェ!!チミは俺様のお姫様なのッ!!」

魔術師「お姫…さま?」

悪魔「そうそうッ!!もう俺様チミにゾッコンだから!!愛してるよォン魔術師ちゃん♪」

魔術師「ぇ、あ、でも…」

悪魔「「でも」禁止だって。なになに、どしたー?」

魔術師「ぁ悪魔さん私の為に色々してくれるのに…私、ほとんど悪魔さんの役に立てないし…」

悪魔「役?」

魔術師「魔王討伐だって…私も魔力を貸すけど、戦うのは悪魔さんだし…」

悪魔「魔術師ちゃんに戦いなんて危ねぇことさせるわけねぇだろォ!」

魔術師「だけど」

悪魔「「だけど」も禁止!いーい、チミにかっこいい所見せたくて俺様は頑張ってンの!それが俺様の活力なの!」

悪魔「俺様に「好かれたい」って思わせておくことが、魔術師ちゃんができる1番のことなンだぜ!!」

魔術師「悪魔…さん…」

悪魔「それよりそれよりィ!今日もう暇じゃん、な、な!?」

魔術師「ぁはい…そうですね」

悪魔「デエェェ~ェトしようぜェ!!」

魔術師「デート…ですか?」

悪魔「魔術師ちゃんと思い出作りたいの~でぇとでぇと~」ジタバタジタバタ

魔術師「ちょっ道の真ん中で…皆見てますよ!?」

悪魔「ヘッ、見せつけてやってンだよッ!!」

魔術師「余計駄目ですよ!」

悪魔「いいから行こうぜ!そうすりゃ元気になれっかもよ!」ガシッ

魔術師「あっ…」

元気になれる…?

悪魔「魔術師ちゃんとので・え・と~♪」ルンルン

魔術師「…」

平気なふりしていたけど、やっぱりさっきの事が――
悪魔さんはそれに気がついてくれているのかな…?

悪魔「まずどこ行く!?俺様はね~、甘いもん食いたい!」

魔術師「…いいですね!」

勇者さん達にとって、いらない私でも



悪魔「ブルーベリー味超ウメェから食ってみ♪あ、回し食いは嫌いカイ?」

魔術師「ぁ、いえ!ありがとうございます」



悪魔さんは、私の事を見てくれている。



悪魔「どっちのピアスつけた方がイケメンに見えるゥ?」

魔術師「ぇと…悪魔さんこれ以上金属つけない方がいいと思います」



私の事を、好きでいてくれる。



悪魔「イヤッフゥ~、魔術師ちゃんに似合いそうな服みっけたー!!」

魔術師「えっ」(いやらしいやつとか!?)

悪魔「ホラこれ猫耳ローブ、にゃーんつって、にゃーんて」

魔術師「ぇ、あぁ…普通に可愛いですねぇ」

悪魔「コレ結構安いジャン、ペアルック用に2着買うかァ!」

魔術師「え!?悪魔さん着るんですか!?」

悪魔「着てみた。どおー?にゃーんにゃーん」チラッチラッ

魔術師「ふ、ふふふっ…」



それだけで、少し自信が持てた。



魔術師「悪魔さんたら、もぉ~…ふふふふ」

悪魔「イャハハハハハ!!」



私も悪魔さんに何かしてあげたい――そう思えた。

今日はここまで。
悪魔の台詞は一旦朗読して調整してます。楽しいです。傍から見ると異常者です。

今見返したら
>>66
悪魔「イャハハハハ、ヒー、ヒー…はりゃっ?俺様大注目されてるウゥー!!」

戦士「いや…オメーじゃなくてよ…」

の台詞は>>65の最初に入れる台詞でした~。コピペミスすみません(´・ω・`)

>魔王城

暗黒騎士「お呼びでしょうか魔王様」

魔王「うむ…ドッカ塔に配属していた猫男爵が勇者どもにやられた」

暗黒騎士「はい…最近ますます力をつけてきているようですね」

魔王「このまま幹部たちをばらけさせていても、各個撃破されるだけだろう」

暗黒騎士「はい…」

魔王「そこでだ…勇者の襲撃に備え、幹部達を魔王城に集めようと思う」

魔王「勇者の襲撃の際は、お前が幹部達を率いてくれ」

暗黒騎士「かしこまりました」

悪魔「イャハハハハ、そっかそっか、そりゃ都合がイイわあァ!!」

魔術師「悪魔さん、さっきから大きな独り言ですね…」

悪魔「あ?あぁ、暗黒騎士とテレパシー会話してンのよォ!」

魔術師「あぁ、そうだったんですか」

悪魔「ところでよォ、魔王からこんな(上での会話内容)って命令が出たそうだぜェ!!」

魔術師「ってことは…」

悪魔「そおォ!!勇者一行の行く手を阻むモノは魔王城に一挙集結、勇者どもの旅がスムーズになるっちゅーワケよ!!」

悪魔「俺様の見立てでは、あと一週間かかるかかかンねぇかってとこだな」

魔術師「ひええぇ、私全然心の準備がぁ」

悪魔「戦うのはオ・レ・サ・マ♪魔術師ちゃんは俺様を応援してくれてりゃいーのッ!!」

魔術師「悪魔さん修行とかしなくていいんですか…?」

悪魔「修行?ンなもんは能力のない奴がすることデース、俺様生まれた瞬間からレベルカンストしてっから!!」

魔術師「はぁ…そうですか」

悪魔「そだそだ、忘れてた!もしもーし暗黒騎士、勇者って今どの辺にいる?アッチの森らへん?あいわかったー、じゃあねー」

悪魔「ヨッシャアァ、ちょっくら行ってくるから肉じゃが作って待っててェ~ん」バサッ

魔術師「あ、悪魔さーん!…行っちゃった」

>アッチの森

勇者「ふっふっふ、今日は野宿だな!」

魔法使い「あ、私木の枝拾い集めてくるね」

僧侶「すみません、よろしくお願いします」




魔法使い「ふぅー」

魔法使い(やだなぁ。野宿の時、勇者寝袋近づけてくるんだもん)

悪魔「コンバンハ~♪」

魔法使い「わっ!?…あ、貴方は確か…」

悪魔「ねぇねぇ奥さん、いい魔法あるのよォ」

魔法使い(奥さん?)「えっと、いい魔法?」

悪魔「これこれ、アタシ特性の映像魔法!」

魔法使い「映像魔法…?」

悪魔「そうそう。まずはアタシと鏡に魔法をかけるでしょォ、それから鏡を見て!」

魔法使い「あれ…?鏡に映っているの私の顔だけど…私と目が合ってない?」

悪魔「そうなのよォ、その鏡はアタシが目で映しているものを映しているのよォ」

魔法使い「へぇ凄い!それは情報の伝達がスムーズになりますね」

悪魔「しかも消費MPはたったの2P!」

魔法使い「えぇー、すごーい!?」

悪魔「奥さん、この魔法…タダで教えてあげるワ」

魔法使い「えええぇぇ、タダーッ!?」

悪魔(こいつぁーノリがいいぜ)

魔法使い「でも…どうして?」

悪魔「あぁ、近々勇者一行魔王城に乗り込むジャン?」

魔法使い「そうですね」(口調が戻った…)

悪魔「この魔法があれば、勇者と魔王の戦いの様子を全世界の皆様にお届けできるっちゅーワケよ!」

魔法使い「あぁ確かに…皆、勇者の勇姿を見たいだろうし」

悪魔「だろォ?だーかーら、全世界の為にこの魔法を提供しようじゃあ~りませんかァ!」

魔法使い「うわぁありがとうございます。移動魔法で色んな街に行って、広めてきます!」

悪魔「ウンウン、あ、勇者には俺様からの提供だって言わないでくれよ?」

魔法使い「どうしてですか?」

悪魔「ホラ、こないだ俺様勇者と揉め事起こしてるし…俺様からの提供って知ったら勇者が嫌がるかもしれないジャン」

魔法使い「そうですね…でも仲直りのチャンスになるかも」

悪魔「いーからいーから!とにかく言わないで!な!」

魔法使い「あ、はい。ありがとうございました」

悪魔「おう。じゃあね~」



悪魔「プ…ククク…」

悪魔「イャーッハッハッハ!!うひゃ、うひゃ、げひゃひゃひゃひゃ」バンバン

悪魔「どヮハハハハハハ!!ぶゎっ、ぶひゃひゃひゃ、ヒィヒィ、うぇへへへへへへギシャシャシャ」ゴロゴロ

悪魔(笑う力使い果たした…)ズーン

悪魔「ただいまー…魔術師ちゃん」ズーン

魔術師「あ、お帰りなさい…元気ないですね」

悪魔「あぁウンちょっと…ん、いい匂い」クンクン

魔術師「ぁ…肉じゃが作ってって言われたので…」

悪魔「…あ。肉じゃがだ」

魔術師「は、初めて作ってみたんですけど…」

悪魔「…」モグモグ

魔術師「…」ドキドキ

悪魔「うめぇ」

魔術師「えっ」

悪魔「超うめぇよ…こんなおいしい肉じゃが初めてだ」

魔術師「ほ、褒めすぎですよ…」

悪魔「おかわり…もらっていい?」

魔術師「ぁはい!今すぐ」

悪魔「…うめぇ~」

魔術師(すっごく味わってくれてる…!!)

悪魔「魔術師ちゃん」

魔術師「ハ、ハイッ!」

悪魔「好きだわ」

魔術師「っ!」ドキッ

その後悪魔さんは肉じゃがを完食して、後片付けすると寝てしまった。

悪魔「ぐぅぐぅ」

魔術師「…」ドキドキ

魔術師(あぁもう…悪魔さん、あんな真面目な顔で好きって…)

魔術師(いつもの悪魔さんじゃないーッ)キャー

悪魔「むにゃむにゃ…魔術師ちゃぁん…」

魔術師「…」

魔術師(悪魔さんの目的はまだわからない事だらけだけど…)

魔術師(私は…悪魔さんのサポート頑張ろう)

魔術師(…新しい料理覚えよう、うん!)グッ

>そして

悪魔「勇者が魔王城に近付いているみたいだァね~」

魔術師「本当に1週間くらいでしたね」


暗黒騎士『魔王軍幹部が集結した。勇者との戦闘に集中するから、その間に魔王様の所へ行け』

悪魔「あぁ暗黒騎士ィ、俺様が合図したら…ごにょごにょ」

暗黒騎士『何だと!それは』

悪魔「オーク」

暗黒騎士『…わかった』


魔術師「な、何かまた恐ろしい会話してませんでした…?」

悪魔「何でもない、何でもイャハハハハ。それよりも勇者一行は…あ、来た来た、隠れろ」

魔術師「ぁはい」

勇者「遂に来たな…魔王城!」

戦士「あぁ…へへ、血が燃え滾ってるぜ」

僧侶「魔王を倒し、世界を平和に…!」

踊り子「うふふ、勇者と対立したこと、後悔させてあげるわよ」

魔法使い「…行きましょう!」


悪魔「ぷ…ぷぷ…」

魔術師「何で笑ってるんですか悪魔さん」ヒソヒソ

悪魔「い、いや…は、はらいて…」

悪魔(全国放送されてるから顔作ってやがんのォ~、ブサイクのくせにマジウケるぅ)ククク

魔術師「あ、勇者さん達魔王城に乗り込みましたよ」

悪魔「おうっ!俺様たちも突撃ィ!」

暗黒騎士「勇者一行…よくぞここまでたどり着いたな」

勇者「お前達に用はない!邪魔をするならお前達を倒して行くぞ!」

暗黒騎士「愚かな…お前は魔王様の元へ辿り着く前に、ここで死ぬのだ!!」

悪魔『わかってるよね?オーク』

暗黒騎士「わかっている…念を押すな」ズーン

勇者「何か言った?」

暗黒騎士「何でもない!行くぞ勇者!」



一方私と悪魔さんは魔法で透明化し、勇者さん達が戦闘している横を通り抜けて走る。
悪魔さんが事前に潜入調査したお陰で、魔王の場所までのルートはわかっている。

悪魔「敏感な奴なら透明化してても魔力や気配で察知できっからなァ。主力が全員戦闘に集中してくれてるお陰で楽チンにいけるぜェ」

魔術師「でも、魔王には察知されているんですよね?」

悪魔「あァ。ま、魔王も勇者じゃない侵入者は甘く見てンだろーよ」

魔術師「あううぅ、怖くなってきました~」ブルブル

悪魔「魔術師ちゃん、そこの壁の前に立って」

魔術師「ぇ、あハイ…」

悪魔「俺様が…守ってやんよ」壁ドンッ

魔術師「…くすっ」

魔術師「さぁ行きましょう!」

悪魔「緊張が解けたならオーケーイエェ」

>魔王の間

魔王「ククク…勇者一行の他にネズミが2匹紛れ込んでいるようだが、いいだろう…我が迎え撃ってやろう」

魔王「近くまで来ている…!!わかる…わかるぞ…!!」

魔王「さぁ、その姿を現すがいい!!」

バァン

魔王「来たか…!!」

悪魔「ハイ、どーもおぉ」パチパチ

魔王「!?」

悪魔「いやー遂に来ましたねぇ魔王戦!流石ですよこの空気、ピリピリっとしちゃって、ねぇ~」

魔術師「えぇ、緊張しますねぇ…」

悪魔「緊張!そう緊張して思わず失敗しちゃう、そんなシーンありませんか?」

魔術師「まぁありますけど…例えば?」

悪魔「敵に間違って「お母さん」って言っちゃったり」

魔術師「いやいや敵とお母さんは間違えないでしょう!」

悪魔「貴方は幸せな家庭に育ったんですね…」ズーン

魔術師「むしろそっちはどんな家庭で育ったんですか!?」

悪魔「あ、ほらあそこにお母さんが!」

魔王「…」

魔王「何だ貴様らは」


魔術師(そりゃそういう反応ですよねー!!だからやだったんですよー!!)

悪魔「お母さーん俺様俺様ー!」

魔王「ふざけているのか」

悪魔「ハァン?小物とのバトルなんて真面目にやってられっかよォ、ふざけねーとやってらんねェぜ」

魔王「ほう…我が小物と?」

悪魔「まァ~だ身の程がわかってねェみてェだ、しゃーねぇ、俺様がチョメチョメしてやンよォ」

魔王「ふっ…いいだろう、丁度退屈していた所だ、相手してやろう」

悪魔「ヘッ、一生忘れられない思い出にしてやンよ」

悪魔「魔術師ちゃん」スッ

魔術師「はい!」ギュ

手を握る。魔力が悪魔さんに吸い取られていく。
これが悪魔さんの力の源となる…応援を込めて、私は強く強く握った。

悪魔「イャハハハハハハ!!キタキタキタァ、射精しそうな程にギンギンだゼエェェ!!」

魔術師(やっぱり最低)シクシク

魔王「ほう…先ほどまでとは段違いだな」

悪魔「オゥ!!イクぜ魔王ォ!」

悪魔さんは翼を広げ、天井ギリギリまで飛び立った。

悪魔「まずは伝統芸能…白銀の豪雨!!」

魔王「!!」

天井を突き破り、無数の槍が魔王に向かう。暗黒騎士と戦った時と同じ技だ。

魔王「ふん!」

悪魔「ヒョォ~♪」

魔王は魔法で壁を作り、槍を全て溶かした。

魔王「脆弱だな」

悪魔「お前の防御手段を探る為の小手調べだよ、言わせンなよ恥ずかしい」

魔王「ほう…?では次はどうする気だ」

悪魔「こうだね!」

次は雷。これも暗黒騎士と戦った時の手段。

魔王「覇っ!」ブォン

魔王から魔力の塊が放たれ、雷とぶつかり相殺された。

悪魔「遊べるジャン魔王、こうでねェとつまンねぇな」

魔術師(悪魔さんにはまだ私の知らない技がある…どうするつもり?)

悪魔「ヨッシャ、爪勃起ィ!」ジャキーン

魔術師「その技名やめて下さい!!」

悪魔「遠距離じゃもどかしいから、近距離でイクぜエェェ!!」ビューン

魔王「…」

悪魔さんは魔王めがけて急降下。
魔王はそれでも動じず、一瞬で剣を召喚し…。

魔王「ふん!」ガキィン

悪魔「イャーハッハッハ!!」

爪と剣の激しい打ち合いに、カキンカキンと音が鳴り響く。
悪魔さんは大笑い、魔王は真剣無表情――どちらも押されている感じはなく、ほとんど互角だろうか。

魔術師(でも…)

2人の動きをじっくり見ると、悪魔さんが回避している回数が多いように見える。
やはり爪と剣では、長い分剣の方が有利なのか。

魔王「覇ぁ!」ビュッ

悪魔「おうっと」

首に放たれた魔王の一撃を、後方に飛んでかわす。
そのまま悪魔さんは空中へと逃げた。

魔王「逃げるつもりか?」

悪魔「ちっげぇし!作戦タイムだしィ!」

魔王「そうかそうか…だが、そんな暇はないぞ」

悪魔「あァん?」

魔術師「…あっ!?悪魔さん、周りの空気!」

悪魔「…うおぉ!?」

悪魔さんの周囲には、いつの間にか黒い霧がまとわりついていた。

悪魔「何じゃこりゃっ」

悪魔さんはその辺を飛び回るが、黒い霧は悪魔さんにまとわりついて離れない。

魔王「邪神よ…我に力を」

魔術師(え、邪神!?)

邪神の力といえば…

魔王「邪神の咆哮よ鳴り響け…審判の檻!!」

悪魔「うおぉ!?」

魔術師「!!」

悪魔さんにまとわりついていた黒い霧は球体となって、悪魔さんを中に閉じ込めた。
悪魔さんは中から球体を叩いたり攻撃しているが、球体はびくともしない。

魔王「審判の檻は、処刑場の役目を果たす」

悪魔「処刑場だァ…?」

と、その時。

悪魔「ひぎゃあああぁぁ!?」

魔術師「きゃっ!?」

球体の中で雷や炎が渦巻き、悪魔さんを焼いていた。

魔王「そこからは出られまい…そのまま死ね!」

魔術師「あ、悪魔さあぁぁん!!」

悪魔「ひぎぎィ…じゃ、邪神よ…!!白銀の豪雨アーンド鳴神ィ!」

悪魔さんが手を挙げる。
先ほど同様無数の槍と雷が、今度は悪魔さんの球体に向かっていった。
球体に当たった槍は弾かれる。それでも2本、3本と次々に球体を突いた。

そして…

悪魔「ぎゃほっ!!」

球体を突いていた槍と雷が少しずつひずみを与えたのか、球体は弾けた。

悪魔「ぜェ…ぜェ」

魔王「ほう…思ったよりは頑丈なのだな」

魔術師「あ、悪魔さぁん…!!」

悪魔「大丈夫だゼ魔術師ちゃん…褐色のイイ男になっちまっただけさァ…!!」

悪魔さんはニカッと笑ったが、肌はどう見ても大火傷を負っている。

魔王「だが次は…」

そして魔王が空に手を掲げたと同時――

悪魔「――っ」

次々と降ってきたものが悪魔さんの姿をかき消した。
降ってきたもの――それは、無数の槍。

悪魔さんと、同じ技だ。

魔術師「悪魔さああぁぁん!!」

先ほどまで悪魔さんがいた、無数の槍の刺さっている位置に向かい、私は叫んだ。

半端ですがここまで。
悪魔の容姿は話題になる前にイメージを落書きしたら、中途半端なV系のチャラ男になりました。
悪魔への好意的なコメントは、作者も嬉しいです~。

魔王「さて…」

魔術師「!」

魔王がこちらに振り返る。

魔術師「あ…ぅ…」ガタガタ

私は…情けないことに、魔王に睨まれただけで少しも動けない。
何とかしないと――だけど頭が真っ白だ。

魔王「魔王に逆らう愚か者共が…」

魔術師「う、うぅ…」


私は――

悪魔『一緒に魔王をブッ倒そうぜ!!そして勇者に恥をかかせて、俺様たちは愛の終着駅へ一直線って計画よオォォ!!』

魔術師『どこから突っ込めばいいんですか!?』


ここにいるのは、私の意志じゃない。


魔術師『わ私まだ魔王を倒すと決めたわけじゃ…』

悪魔『ほぇ~?魔術師ちゃん、魔王倒す為に勇者と旅してたんでしょ~?』


悪魔さんはお節介で私をここへ連れてきた。


悪魔『俺様の力を貸してやる。全盛期の俺様は、勇者なんかより強いからな』


それでも悪魔さんは、


悪魔『チミにかっこいい所見せたくて俺様は頑張ってンの!それが俺様の活力なの!』

悪魔『俺様に「好かれたい」って思わせておくことが、魔術師ちゃんができる1番のことなンだぜ!!』


いつも私の為を思ってくれていた。

魔術師「く…ぅ…」

私は立ち上がる。

魔王「覇ぁ!!」

魔術師「…っ!!」

とても怖いけれど――

魔術師「シールド…!!」バチバチッ

魔王「…ほう」

私も、立ち向かわなければならない。

魔術師「火炎魔法っ!!」

ゴオオォォッ

魔王「ふん!」ブンッ

魔術師「…です」

魔王「…ん?」

守られているだけの自分は、もう嫌だ。

魔術師「私が…相手ですっ!!」

魔術師「火炎魔法、樹氷魔法っ!!」

魔王「…」ブンッ

私の魔法は魔王の腕に容易に振り払われる。
それでも私は、攻撃の手を緩めなかった。

魔術師「諦めません…!!」


悪魔『俺が、チミの居場所になってやるから』


今の私には、居場所がある。

魔術師「だから私、絶対諦めない!!」





魔王「――ふっ」

魔術師「…っ!!」

一瞬だった。
一瞬で魔王は、私の背後に回り込んでいた。
その一瞬で私を殺せただろう。だけど、魔王はそれをしなかった。

魔王「雑魚が足掻く様は滑稽だな」

それが魔王の余裕。私と魔王の差。

魔術師「…っ」

魔王「すぐに奴の後を追わせてやる」

魔王が手を振り上げる。
私は――逃げられない。

魔術師(それでも…)

私は戦った。立ち向かうことができた。

魔術師(悪魔さん――私、)

強く、なれたかな――?

魔王「死ね…!!」





悪魔「それだけはさせらンねェなァ」

魔術師「っ!?」

魔王「貴様…!!」

悪魔さんが魔王の腕を掴む。

悪魔「言ったろ、俺様が戦うって…でもォ!!」

魔王「っ!?」

悪魔さんが魔王の腕をひねり上げたと同時、ベキィと嫌な音がした。
魔王の腕は、変な方向に曲がっている。

悪魔「よく頑張ったなァ、魔術師ちゃん」

魔術師「…悪魔さぁん」

涙。こんな時に。
それは悪魔さんが目の前にいる安心の為なのか、緊張が解けた為なのか――

だけど、それと同時だった。


魔王「貴様…っ!!」

悪魔「…ぅ!?」

魔術師「――っ!!」


魔王の腕が、悪魔さんの胸を貫いたのは。

悪魔「が…っ!!」

悪魔さんが口から血を大量に血を吐き、そこに倒れた。

悪魔「ハァ、ハァ…」

魔術師「悪魔さぁん!!」

悪魔さんの容態は――全身火傷に、槍に刺されたような傷、それに今の攻撃。
どれもダメージが大きく、回復させる手段もない。

魔王「ク…悪魔風情が、目障りな真似をしおって…」

魔術師「悪魔さん、悪魔さあぁぁん!!」

叫び声に反応はない。
悪魔さんから溢れ出る血は止まらず、その顔はどんどん血の気を失っていく。

魔術師(このままじゃ…)

悪魔『よし決めた!俺様、チミの使い魔になっちゃるよ!』

悪魔『あー、俺様の全盛期の力を出せりゃ何とかなると思うンだけど、何せ寝すぎて調子が悪ィ』

悪魔『そォこォでェ、チミの魔力を貸ちてくだちゃい♪』


何で?何で今、悪魔さんとの思い出が浮かぶの?走馬灯?冗談じゃない――!!
何とかしないと――


悪魔『魔力魔力!魔力貸して!』


魔力…そうだ魔力!!


悪魔『ンー』

魔術師『…?』



――――!!


そうだ、この方法がまだ――

魔王「お別れは済んだか…?」スゥ

魔術師「悪魔さん…」



悪魔『俺様魔術師ちゃんには笑っていてもらいたいナー♪ハイ、ニコーッとしてニコーッと!』

悪魔『もう俺様チミにゾッコンだから!!愛してるよォン魔術師ちゃん♪』

悪魔『魔術師ちゃん、好きだわ』



魔術師(貴方は私なんかを好きと言ってくれた)

魔術師(私も――)

魔王「…!?」



魔術師「んっ――」



悪魔『魔力の譲渡方法だよ。ちゅーして、ちゅー』

魔術師『でででできませんよそんなのぉ!』



今なら、貴方の為に――


悪魔「……キタキタぁ…」

悪魔「うしゃああアアアァァッ!!」

魔王「な…!?」

魔術師「悪魔さん…!!」

悪魔「完・全☆ふっっっかあぁつ!!」

魔王「お、お前…今まで喰らった傷は…!?」

悪魔「ハァ?おみゃーさん馬鹿かね、傷なんてェのは治るモンです」

魔王「馬鹿な!?一瞬で完治など」

悪魔「ハァー…雑魚の常識に当てはめてンじゃねェよ!!」ビュン

魔王「!?」



悪魔「魔術師ちゃんはここで見てなー♪」

魔術師「ぁはい…」

悪魔さんは私を、魔王から離れた位置に下ろす。

魔王「何だ…今のす早さは!?」

悪魔「無駄口叩いてンじゃねエエェェ!!」バキィ

魔王「…っ!?」

魔王は悪魔さんの一撃に吹っ飛ばされた。

悪魔「ホントはもっと色んな技あったが…完全体になったことだし、雑魚ごときお決まりの技でいいや」

魔王「何だと…!?」

悪魔「俺様お気に入りの、白銀の豪雨ゥ!」

先ほどと同様、天井を破る音が聞こえる――しかし

魔王「!?」

その槍1本1本が、先ほどのよりも大きくなっていた。

悪魔「しかも1本1本に纏っている魔力もケタ違いでェす…♪行けやアアァァ!!」

魔王「ぐ…っ!!」

槍は魔王へと襲いかかる。
魔王は壁を作るが――槍は、壁をぶち破る!

魔王「クッ」

防ぎきれないと判断したのか、魔王は槍を回避する。

悪魔「唸れ、鳴神イィィ!!」

魔王「が…っ!!」バチバチィ

悪魔「どったのォ~?雷気にする余裕無かったァ?」ケケケ

魔王「く…この程度では倒れん!」

悪魔「…ったりめーだろ、倒れねェように加減したンだからよ」

魔王「!!」

瞬時――悪魔さんは魔王の目の前に移動する。

悪魔「殺さねェが…死にかけろやアアァァァッ!!」

バリバリバリバリッ

魔王「が…っ!!」

そして悪魔さんは暗黒騎士を倒した時と同じ方法――だけどその時とは比べ物にならない威力の雷を、魔王に浴びせた。

魔王「が…」バタッ

悪魔「オイコラ、加減してやったンだから気絶すンなよ?仮にも魔王なら気張れや」ガッ

魔王「く…」

悪魔さんは倒れた魔王の頭を踏みつける。

魔王「貴様、何者だ…!?」

悪魔「あぁ?」

魔王「我と同じ邪神の力を使い…しかし我より上を行く…」

魔王「邪神の加護を受けし者は、魔王が最高位のはず…!!」

悪魔「あぁ~」

魔術師(それそれ…私も気になっていたの!!)

悪魔「…魔術師ちゃん、暦上じゃ今何年だっけ?」

魔術師「え…?645年ですが」

悪魔「そだそだ。それじゃエート…俺様は102年間眠ってたワケだな」

魔王「102年…!?」

魔術師(え、何…!?)

魔王「102年前といえば…歴代最強の…」

悪魔「その頃俺様はこう呼ばれていたなァ…」

悪魔「「悪魔王」と」

魔術師「え」




勇者「どうしたんだろうな、魔王軍幹部達いきなり引っ込んで」

僧侶「さぁ…?まぁ、何にせよ好都合じゃないですか」

戦士「よっしゃー!魔王まで一直線だぜ!!」

踊り子「魔法使いちゃん、バッチリ撮影できてる~?」

魔法使い「えぇ!バッチリよ!」

勇者「魔法使い、あまり正面から俺を見ないで…そうそう、その角度その角度」

魔法使い「あ、うん」

戦士「大して変わんねーって」ボソッ

僧侶「あ、あの扉じゃないですか!」

踊り子「よしっ…突入ねっ♪」

勇者「行くぞーッ!!」

一同「「オーッ」」



バァン

今宵、完結予定――
扉を開けた勇者一行の前に待ち受けているものとはッッッ!?

悪魔「じゃ、俺様に従うのね?いいのね?」

魔王「ハハァ!歴代最強の悪魔王様であれば何ら問題はございません!」

悪魔「じゃあ今日から魔物の支配者は?」

魔王「貴方様で御座います!!」


戦士「…えーと」

勇者「何…やってんのかな?」

魔術師「あ、勇者さん」

悪魔「いよォ、そのショボ面は勇者様かぁ!!」

勇者「だっ誰がショボ面だ!何でお前がここにいるんだ!?」

悪魔「あ、魔王は俺様が倒したから」

勇者「は」

悪魔「で、今日から俺様が魔王だから」

勇者「へ」

悪魔「そいで、人間と和平結ぶから」

勇者「な」

悪魔「じゃ、帰れ。チミ用済み」

勇者「」

勇者「ふ、ふふふふざけるなあああぁぁ!!」

戦士「えーと…アンタが従えてるそいつが魔王だよな?」

魔王「それは先ほどまでの話だ。我はこの方に負け、この方に従うことにした」

悪魔「そゆこと~♪」

勇者「ま、まままま待てえええぇ!!納得せんぞおぉぉ!?」

悪魔「どちてよー。平和になったンだし、いいジャン」プー

勇者「そ、そいつが人間達に攻撃を仕掛けてた元凶だろぅおぅ!?」

僧侶「そうですよね…元凶がお咎めなしってのは人間達から見れば納得はできないかも…」

悪魔「あ、そう」

悪魔「駄目でしょ!め!」ペシ

魔王「あだ」

悪魔「じゃ、帰れ。チミ用済み」

勇者「」

勇者「ふ、ふふふふざけるなよおおぉぉぉ…」

魔法使い(ああぁ…どうしよう、この映像流し続けて大丈夫なのかな…)

勇者「俺達は今まで魔王を倒す為に苦労して…」

悪魔「知らんよ」

勇者「激闘の末ここまでたどり着き…」

悪魔「知らんて」

勇者「全部!無駄だったってことかあああぁぁ!?」

悪魔「ま、そういうこともあるよ」

勇者「戦わせろ…」

悪魔「はい?」

勇者「そいつ!魔王と戦わせろおおぉぉ!!」

悪魔「まぁいいけど」

悪魔「行ってこい、元魔王」ポン

魔王「はい」

魔術師(あ。今魔王に魔力注入した)



勇者「覚悟!!魔王オオォォォ!!」

ドガッバキッベキッ

魔術師(魔王パワーアップしてる…)

戦士「見事なやられっぷりだなぁ…勇者」

踊り子「どうする?加勢する?」

僧侶「でももう戦う必要はありませんし…」

魔法使い「うん、いいや」

勇者「き、貴様…ぁ」ボロボロ

悪魔「プ…ククク…」

勇者「?」

悪魔「ダッセ、ダッセエエェェ!!「おれはいままでがんばったんだどー」つって魔王に挑んで、そいでボロ負けして!!かっこ悪ぃ、イャハハハハハハ!!アヒャ、アヒャ、げひゃひゃひゃ、ぶゎーっはっはっは!!」

勇者「」

勇者「お、お前…」プルプル

悪魔「あー?やンのォ?」

勇者「許さああぁん!!」バッ

悪魔「へっ」ヒュン

勇者「!?消え…」


ズルッ


勇者「」

魔術師「」

戦士「」

踊り子「」

僧侶「」

魔法使い「」

悪魔「チン丸出しィ~♪」

勇者「いぎゃあああああぁぁぁぁぁぁ!?」

悪魔「イャハハハハ、アソコのサイズも、ヒィヒィ、お粗末でグォッハッハッハッハ」

勇者「ぃやめてえええぇぇぇぇ!!!」

魔法使い(全国に映しちゃった…)

こうして世界は平和を取り戻し、

子供「あ、丸出しの兄ちゃんだ」

母親「シッ!」

勇者「」

人々は魔物に怯えることのない生活を送るようになった。


暗黒騎士「まさか貴方が歴代最強の魔王、悪魔王様でいらしたとは…」

悪魔「敬語やめろよ、友達だろォ?俺様はオメーらが人間を襲わなきゃそれでいいンだよ」

暗黒騎士「しかし…」

悪魔「オーク」

暗黒騎士「グッ…だが、何故102年もの間…」

悪魔「寝てたらいつの間にか封印されてた」

暗黒騎士「…それで最近になって目が覚めたと?」

悪魔「寝すぎた」テヘ

暗黒騎士「そして目覚めたお前は魔王の座を奪い返し、野望を…」

悪魔「あー、やめてくれ。歴代最強とか悪魔王とか色々言われてるけどよ」

悪魔「俺様は人間も平和も、大好きなンだよ」バサッ

悪魔さんが悪魔王として君臨してから、城には人間の働き手が出入りするようになった。

悪魔「魔術師ちゃ~ん♪」

魔術師「あ、悪魔さん。今お昼作ってる最中です」

私も住み込みで働いている。
悪魔さんの希望で、彼の食事を作っている。

悪魔「いーのいーの、お料理してる魔術師ちゃんを見に来たンだから、ゆっくりやってェン♪」

魔術師「いいんですかぁ、お仕事あるんじゃ」

悪魔「大体のことは魔王に任せておきゃいーの!俺様生粋の怠け者で、チミに心奪われた下賤な使い魔でーす☆彡」

魔術師「もぉ、私に使い魔は必要ありませんよ」

悪魔「ガガーン、魔術師ちゃんに見捨てられちったー」イジイジ

魔術師「そうじゃないですって~」

悪魔「わかってる」ニィ

悪魔王になっても、悪魔さんは悪魔さんだ。
相変わらず私を大切にしてくれるし、何も変わらない。

悪魔「魔術師ちゃん魔術師ちゃん」

魔術師「何ですかぁ?」

悪魔「ちゅっちゅして、ちゅっちゅー!」

魔術師「もぉ、甘えん坊ですねぇ悪魔王ともあろう方が」

悪魔「チミのちゅっちゅは、あくまおーの活力なのォ!ンー、ンー!!」

魔術師「もぉ~…」



魔術師「んっ――」

悪魔「――」

悪魔「イャハハハハ、俺様今日も元気いっぷあぁぁぁい!!魔術師ちゃん、飯食ったらデートしよ、デート!」

魔術師「えぇー、流石に魔王さんや暗黒騎士さんに怒られるんじゃ」

悪魔「俺様以外の男の名前を呼ぶなよォ!!」

魔術師「なーに言ってるんですかぁ」ツンッ

悪魔「あんっ」


平凡ではない彼。だけど手に入れたのは平凡な幸せ。


魔術師「私が思っているのは――わかっているでしょう?」

悪魔「オウッ!」ニカッ

魔術師「それじゃあ御飯作っちゃいますね。いい子だから待ってて下さいね?」ナデナデ

悪魔「ウン、待ってるゥ!!わんわん!!」

魔術師「うふふ」


私を傷つけることなく、満たしてくれる彼。彼のお陰で少しだけ強くなれた。


魔術師「お待たせしました、今日はビーフシチューですよ」

悪魔「うまそォ~!!ってかうめェ!!隠し味は愛情?愛情適量!?」


これから何があっても、彼となら歩いていける――


悪魔「ふえぇ、愛情飯全部食っちゃうの勿体無いよぅ」

魔術師「ふふ、そんな心配しないで下さい――」


彼が、今の私の居場所だから。


魔術師「私の愛情は、いくら食べても無くなりませんから」

悪魔「魔術師ちゃん」

魔術師「はい…?」




悪魔「俺様と魔術師ちゃんは、ずー…っと、一緒だかんな!」



Fin

読んで下さった皆様ありがとうございました。
今作の悪魔には作者が萌えていたので、好意的な意見頂けてテンション上がりました。
かませな暗黒騎士も好きです。

ハッピーエンドやったー!
おつかれさま!

後日談とかはないのかなぁ?(チラッチラッ


…オーク×暗黒騎士はまだですかね(ゲス顔)

>>139
即興で考えてみます、しばしお待ちを

>>141
即興で考えてみま…いやいやいやいやいや

即興ネタ~悪魔と魔術師のデート~


悪魔「ピィクニイイィィック、イヤッフォオオォォォ!!」

魔術師「いい景色ですねぇ」

悪魔「ホント、いい景色だぜ…あっ!」

魔術師「え?何かありました?」

悪魔「こォんな所に可愛いお嬢ちゃんが…って、魔術師ちゃんだったアアアァァ!!」

魔術師「も、もう悪魔さんたらぁ」テレテレ

悪魔「ウゥン、でもすっげーイイ空気だぜ、昼寝にゃ丁度いいな」チラッチラッ

魔術師「そうですねぇ…」ポカポカ

悪魔「魔術師ちゃん魔術師ちゃん、膝枕膝枕膝枕~!!」ジタバタジタバタ

魔術師「ええぇ、いきなりお昼寝ですかぁ!?」

悪魔「今日は誰も邪魔者もいねェし静かだし…お・ね・が・い♪」

魔術師「え、えぇと」テレテレ

ザザー

魔術師「あ、急な雨が」

悪魔「…」

悪魔「ちょっくらお天気の神様ブン殴ってくるわ」バッサバッサ

魔術師「え、えええぇぇ!?どこ行くんですか悪魔さああぁぁん!?」


悪魔王の交友関係は凄いなぁと思ったby魔術師

即興ネタ~暗黒騎士の風呂~

>魔王城大浴場

魔王「ふぅ、気持ちいいな」

暗黒騎士「…」ガラガラ

魔王「暗黒騎士!?」

暗黒騎士「あ、魔王様。…どうも」ペコリ

魔王「…」

暗黒騎士「…」

魔王「なぁ暗黒騎士」

暗黒騎士「何か」

魔王「何で…鎧脱がないの?」

暗黒騎士「…」

暗黒騎士(オークを気にしているなんて言えない…)

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月17日 (土) 11:30:26   ID: CQz-iRBX

乙!

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