「安価傭兵団」 (80)


 汀の王国と呼ばれる国があった。

 王国には悪政が敷かれていた。搾取と弾圧は民の貧困を招き、貧困は鬱憤を生み、鬱憤が義憤と成るのに時間はかからなかった。

 幾度かの敗北と年月を経て、ついに革命軍は汀の王国に肉薄する。流刑島に監禁されていた初代革命軍司令官の救出と、その実子による陣頭指揮は、明日を求める戦士達を大いに鼓舞した。趨勢は彼等にあった。

 陥落寸前の王城。近衛騎士団の奮闘により、王家の人間は脱出に成功する。騎士団は包囲され、夜の闇が戦場と化した汀の王国を包み込む。王国軍残党は疲れ切っていた。


 その日の深夜、汀の王国は滅んだ。



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 目を覚ました

「…………」

 周囲を見回す。物凄い音がして起きたが、頭が痛くてうずくまった。手枷と足枷が、繋がってる鎖を鳴らした。

 今は城の地下の獄舎にいる。鉄格子が壊れていた。天井が崩落して潰れたらしい。

 声がする。隣の牢からだ。

【安価下】
主人公の名前

【安価二つ下】
隣の囚人の名前

※ずらす可能性有

ゴリト ラーダ

グルファム

>>5ラーダ】
>>6グルファム】



グルファムはどんな人?

【安価下】

脱走兵

>>9脱走兵】


グルファム「おいラーダ! 生きてるか」

 返事をした

グルファム「レジスタンスの連中、夜中に仕掛けてきやがった……」

グルファム「今の魔法で上は大童だろ。はっ、天才軍師親子コンビに貴族の将軍様が勝てる訳ゃねーんだ。バカ共が」

グルファム「お前、こないだの拷問で頭やってたろ。大丈夫かよ。くく、顔が綺麗ってばっかりに大変だな……」


グルファム「瓦礫に潰されないことを祈って、のんびり革命軍を待つとしようぜ。他の囚人共と同じくな」


 グルファムはこちらの牢が開いたことに気付いていない

【安価下】
1「出られるぞ」
2 一人で出る


グルファム「何?」

 鎖をじゃらじゃら言わせつつ、グルファムの牢の前まで移動した

 他の囚人共が食い入るようにこちらを見てくる

囚人1「お、おい! てめえ! 便器野郎!!」

囚人2「なあ、おい、俺を出してくれよ! 礼はするから」

 汚らしい囚人(自分もだ)がわめき立てる。浴場で欲情されたのは記憶に新しい

 そうじゃない輩も勿論いる。グルファムはその一人だ

グルファム「……ここにきて運が回って来たか、ラーダ」

グルファム「詰め所の場所分かるよな? 行けよ」

 牢獄の鍵と枷の枷を入手した。手足を自由にした

 どーよ

グルファム「見せびらかすな」

グルファム「どうした、行かないのか?」

 グルファムは脱走兵だ。城の地形はある程度頭に入っているだろう

 囚人共に目をやる。種々様々だが、大半は媚びるような顔をしている

グルファム「脱出する気か。忠告してやろうか?」

グルファム「やめとけ」

グルファム「穴熊決め込んでるからな。上にはわんさか兵士がいやがるぞ」

グルファム「数は減ってるだろうがね」



【安価下】
1「ありがとう。気をつける」ダッ
2「一緒に来てくれ。牢が開いてたら言い訳できないよな」ガチャ
3 2+見込みのある囚人も一緒に連れてく

【安価下】
コンマ一桁の数だけ囚人解放

【安価下六つまで】

名前と性別と人となり

ゼイン

自身の平穏の為なら手段を選ばない

トーウ・モイレ・デンヤ

兄と認めた人に依存する

ライト

紳士

ミーシャ・イワンコヴァ

孤児。拾った軍人にマーシャルアーツの技能を人通り叩き込まれているため、体術に優れる。但し基本的に温厚。

サーマル
身軽そうな小男

>>18ゼイン】
>>19トーウ・モイレ・デンヤ】
>>20ライト】
>>21ミーシャ・イワンコヴァ】
>>22サーマル】



 グルファムと三人を解放した

グルファム「おいおい……知らねーぞ」

ゼイン「もう脱獄したんだ。生き延びる術は突破しかなくなった」

ゼイン「腹を括れ。……ゼインだ。礼は言う」

 抜け目のなさそうな男だ

 危険かどうかは分からない

ライト「どうもありがとう……ラーダ君、だったね」

 自己紹介すると、手を出してきた

ライト「微力だが、手伝わせて貰うよ。これからよろしくね」

 誰かと握手するのは、記憶にある内ではこれが初めてだ

サーマル「よォ、俺が最後か? サーマルだ」

サーマル「ここ出るまでだが、ま、よろしくやろうや」

 軽業の心得がありそうな男だ

 身のこなしに加え、割り切っている分、グルファムの次に頼れそうではある。グルファムは、兵としての知識が頼れるという話だが

グルファム「揃ったな。それじゃ行くか、死出の旅路へ」

 心地好い囚人共の罵声を聞き流しつつ、軽やかに歩きだす

サーマル「いいスキップだけどよ、そっちは違うんじゃねぇのか?」

 頭数が居る

ライト「……成る程。いい考えだ」

ゼイン「どこが? 女なんか放っておけよ。愉しんでる時間はない」

ゼイン「こうしてる間にもレジスタンスの連中はここに向かって来てるんだぞ」

サーマル「なら連れてきゃいいだろ。逃げた先で順番こ」ケラケラ

グルファム「仲良く相談してる時間が一番もったいねーと俺は思うんだがな」

グルファム「ラーダ! 鶴の一声だ」



 女囚牢に向かう

1 まず一人で行く
2 全員で行く
3「先に行ってろ」

安価下ね しまった





 品定めするのに人数は要らない。鍵だけ持ち、グルファム達には入口で待っていて貰う

ゼイン「ふざけるなよ」

 止めはしないよ。待てなければ行けばいい。さあ

 こっちは人手がいりそうだから集めてくる

ゼイン「……二分だ」

 頷き、慎重に向かった





女囚1「……………………」

女囚2「…………あ……?」ジロ


 女囚牢は酷い有様だった。据えた臭いは男の方も同じだが、牢に近づくと、それ以上に生臭さが際立った

 顔立ちの良い女囚の殆どは、乾いた精液を拭われもせず牢の床に転がされている。地下の冷気に曝されてか、乱れた獄衣から覗く肌は青白い

 震えもせず、一見して死体と見紛うような女囚も居た。眼鏡に敵わなかったのだろう女囚など、目も当てられない有様だった

 暗がりの中で、生きている死体のような女囚が目を動かした。こっちを見た。自分はマシな方だったのだと知った

 咄嗟に動けなかったが、唇が動くのを見て近づく。鉄格子越しでは聞き取れない




 鍵は女囚牢も開けられそうだ

 鍵束を見せたが、女囚は身じろぎすらしない。……?



【安価下】
1 開ける
2 耳を澄ます
3 仲間を呼ぶ



女囚「……ぉ……ぅ……に……」


 歯を抜かれているらしい

 抵抗した証だ。自分はそこまでされなかった。彼女を尊敬し、身震いした。腕の怪我も酷く、骨が見えたままになっている……


女囚「…………ぃ…………ぅ……」


 "奥にいる"そう聞こえた

 聞こえると同時に、音は聞こえた


「はぁっ、はぁっ……はぁっ、はっ」

「……っ……っ……、ッ……っ……」


 荒い息遣い。肉の音。息を堪える気配。啜り泣く声も聞こえる。吐き気を堪えるのに苦労した

 一番奥……から、三つ目の牢だ。鉄格子は無造作に開け放たれ、牢の壁で明かりの蝋燭が燈されているのだろう、時々頼りなく像を揺らしつつ、薄くて細い影絵を床に投影していた

 さらに手前、四つ目の牢も開いている


「ぉ、ぇ……」


 歯の無い女囚が喋った。静かに牢を開いて近寄った自分に、女囚が体を突き出す。ボロ切れのようになった獄衣から、尖った白い棒が覗いていた

 研磨した腕の骨だった

「………………」

 女囚は目を閉じた。死んだ

 四つ目の牢に足音を立てずに近付くと、枯木のような体躯の女囚が殴り殺されていた。体はまだ暖かい。次は奥の二つだろう

「はぁっ、はぁっ、はっ、はっ、はっ」

「…………………………」

 隣室に立つと、行為の音量は一層上がる

 男の勢いが早くなってきた





【安価下】
1 殺す
・コンマ判定。30↑で殺害
2 奥の牢を開ける
3 終わるのを待つ




 靴が無いことを喜ぶ日が来るとは思わなかった

 女囚の尺骨を逆手に握り、牢に入る。脇に抱えられ脱力した二本の足、鍛えられた尻と背筋が目に入り、必死で腰を振る王国軍兵士に飛びかかった

 ぶづ、と鈍い手応えが返ってくる。獣になっていた兵士が我に返り、驚きと苛立ちと痛みが一緒くたになった怒号を上げた――しくじった!


兵士「ぐぉ、ッの……ってぇぇええええだろォがぁぁッッ!!」


 肘が鳩尾に食い込み、よろめいた痩身を、振り向きざまのストレートが吹き飛ばした。嵌まったままの手甲は、拳を鈍器にしていた

 顎を撃ち抜かれ、床に後頭部を打ち付ける。倒れているのに上と下が分からない。ぐにゃぐにゃした視界に、兵士の姿を捉えた。骨は首に刺さっていたらしく、出血は止まりそうにない

 じきに死ぬだろう


兵士「クソが……ふざけんなよ、ふざけんじゃねえぞゴミガキ」シャン


 ……自分の後に




【安価下】
コンマ判定
10↓でゴリト・ラーダ死亡



女囚「ぁ……ぁぁああああ゛ああああ゛あああ゛!!!!!!」ガバッ


 諦め、まどろみかけた僕の意識を、絹を裂くような悲鳴が覚醒させた。兵士の腰に、凌辱されていた女囚がしがみつく

 幽鬼の形相で渾身の力を振り絞る女囚。発狂した泣き女の如く響き渡る絶叫は、しかし唐突に途切れた。その大きく開いた口に剣を突き込まれ、光を失った目が裏返る

兵士「クズが…………ぉっ」

 それが兵士の最期の言葉になった

 今度こそ、頸動脈に深々と骨を突き立てる。太い腕がびくりと痙攣した。命の恩人に移されたかのような狂気に身を任せ、傷口を目茶苦茶に掻き回す。気管が絡み付き、首の骨に邪魔され、最早自分は獣を仕留める獣だった

 近付いてくる足音には気付かなかった

グルファム「おい、ラーダ。おい! そいつはもう死んでる。やめろ」

 顔をしかめたグルファムに引き剥がされ、仰向けに倒れた兵士から離れた。女囚に覆い被さるように死んでいた兵士を蹴って脇へ退かす

 息を整えようとして、吐いた

ライト「よく頑張ったね」

 ライトに背中をさすられる。膝に付いた自分の手を避け、するりと腰元から鍵束が抜き取られた。サーマルだった

サーマル「開けてやる」

 えずきながら呼び止めた

 奥の二人を調べて欲しい

サーマル「他にはいねぇってか?」

 入口の方から、刺々しい声が聞こえた

ゼイン「殆ど廃人だ。だから言っただろうが」

サーマル「奥の二人奥の二~人~……」

 気遣ってくれるライトを制し、サーマルに付いていく



 二人を解放した

トーウ「…………」

 じ、と見つめられている

 血塗れな上、手には骨。こちらは警戒されてもおかしくない出で立ちだが、険のある感じではない

 駄目だったか、と思いかけた矢先、その女囚がぽつりと言った

トーウ「……兄さん……」

 え? と聞き返す間もなく、魂を入れ直されたように女囚は立ち上がり、ハキハキと喋り始めた

トーウ「トーウ・モイレ・デンヤ。助けてくれてありがとう、ラーダ君」

 にこやかに笑って見せると、一団のリーダーと見たのか、トーウはグルファムに事の仔細を尋ねだした。グルファムは脱出を目指していると大筋を伝えたが、さも「その通りです中心人物は自分であります」とアピールしたような口ぶりだった

 なんだよ脱走兵

サーマル「おい、ちょっと来てくれよ」

 なんだよ

 最後の牢の前に立つ

ミーシャ「…………ZZZ」

 この極寒の地下室で、女囚は寝ていた

 起こそうとした

ミーシャ「……、……ッッッ!!」バッ

 手刀。自分の手が、女囚の肩に触れるか触れないかといった距離まで近付いた瞬間、弾かれたように女囚の体が床で翻り、繰り出されたチョップが肩の上、首のすぐ横で止まった

 遅れて、チョップに切り裂かれた風が首を撫でていく。汗が吹き出た。馬鹿になった心臓が、それで大人しくなったのは幸いだった

 死神の鎌のような手刀を首元に添えたまま、女囚が言った

ミーシャ「……誰、あんた」

 名前と目的と状況を早口で答えた。吐瀉の口臭が障ったか、女囚は離れてくれた

ミーシャ「そう。じゃ、連中、最後まであたしに触れなかったって訳ね。いい気味」

ミーシャ「ミーシャ・イワンコヴァ。早く行きましょ」

 サーマルの脇を抜け颯爽と牢を出ていく後ろ姿は、囚人とは思えない。サーマルと顔を見合わせ、ミーシャの牢を出る


グルファム「ん~ん、やっぱこの感じだな。しっくり来るぜ」チャキ

サーマル「お前だけ完全武装かよ?」

グルファム「俺より上手く扱えんなら譲ってやるよ」

 グルファムが殺した兵士の鎧と剣を奪った

ゼイン「何をしてる? 行くぞ」

ライト「手伝おうか」

 すぐに終わる、と断った

ゼイン「……ガキが」

 女囚二人の手を組ませ、牢を後にした


 1階に上がる

 革命軍との攻防は城の正面で重点的に行われているらしい

 "汀の王国"の名の通り、城内には海へ通じる水路が張り巡らされている

 防戦一方の王国軍は城内外側に戦力が集中している。戦闘に関わらない場所を移動する分には比較的安全だが、さっきのようなはぐれがいないとは限らない



【安価下】
1 戦線の隙を見付け脱出する
2 水路を使い脱出を目指す
3 城の中心部へ

※コンマぞろ目で兵士に発見される



ライト「何だって?」

ゼイン「俺達の目的は脱出だったよな」

ゼイン「さっきの女のアレで耳がイカれたのかな? "城の奥へ潜ろう"って聞こえたんだが」

 それで合ってる

トーウ「篭城してるんでしょう、手伝うって言ったって仲間に入れて貰えないわ」

ミーシャ「火をつけてみる? 混乱に乗じて逃げられるかも」

サーマル「蒸し焼きになるだけだ。脱出手段無しでやる手じゃねぇ」

グルファム「いや、案外イイ線いってるかも知れねーぞそれ」

トーウ「本当?」

グルファム「城はすっかり包囲されてる。ただでさえこういう地形だ、抜け穴は絶対にある」

グルファム「やんごとなきお方のためのな」

ミーシャ「それが逃げ出した理由」

グルファム「まあな。王家が逃げるまでの時間稼ぎって話だが、天上人のために命張れる人間なんざそう多かねえってことだ」

ライト「命あっての物種、だからね」

グルファム「そういうことだ……」

 提案しておいて何だが、どこに行こう

グルファム「そうだな」

グルファム「怪しいとこはいくつかあるが――」



【安価下】
1 地下礼拝堂
・コンマ判定、70↓でイベント
2 王妃の寝室
・コンマ判定、60↓でイベント
3 食堂
・コンマ判定、50↓でイベント

※城内移動中はぞろ目で発見
揃った数字の人数とエンカウント

1 礼拝堂
イベント発生



兵士A「……おい!」


 兵士の一団に見つかった

 人数は、八人。何れもフルプレートを着込み、剣と盾で武装した職業軍人。対してこちらは、不良兵士一人に骨を持った子供に拳法家、後は丸腰が四人。勝負にならない



 戦えば騒ぎになる。レジスタンスの浸透戦術と勘違いされでもすれば、たちまち囲まれて袋だたきにされるだろう

 戦闘は絶対に避けたい……



【安価下】
1 逃げる
2 戦う
3 グルファム「――脱走した囚人を牢に戻してるところだ」
┗コンマ判定。80↑でやり過ごす


 当然、退却を選ぶ

グルファム「こっちだ!」

 走り出したグルファムに付いていくが、もと来た方向じゃない?

グルファム「信じろ。来い!」



【安価下】
コンマ判定、20↑で逃走成功



 廊下を曲がり、階段を降り、グルファムを先導とした自分達囚人7人は、一途逃げながらも着々と城の中心部へ進む。鎧を付けていることを感じさせないグルファムの足取りに、全員ついて来れていた


ゼイン「また地下かよっ……!」

ライト「枷が無ければどこだって、牢よりはマシさ!」

 大きな扉が見えた。追い立ててくる兵士の一人の声が聞こえた

兵士A「礼拝堂に入るぞ!」

兵士B「大丈夫だ、鍵がかかってる!」

 礼拝堂前の扉に追い詰められた

 自分、グルファム、ミーシャが前に出る。追う中ではぐれたのか、はたまた報告をしに走ったか、臨戦態勢でこちらを睨む兵士の数は4人までに減っていた

 いけるか?

ゼイン「クソッ、開け! 開けよ、おらっ、この!!」ガスッ ガスッ ガスッ

トーウ「む、無理よ……裸足の蹴りなんかじゃびくともしない」

サーマル「鍵開け道具なんかねぇしな……どうするよ」





 地形は扉を背にした一本道。袋小路だ

 数の利はあるが、練度と武装の差は如何ともし難い

 礼拝堂の扉は古い両開きの物だ。トーウはああ言ったが、時間をかけて体当たりを続ければ、破れないことはないかも知れない



【安価下】
1 一か八か、全員で体当たり
┗コンマ判定、40↑で成功
2 戦える三人で食い止め、残りに破らせる
3 投降する



 グルファム、ミーシャ!


グルファム「ぶち破ろうってか?」

ミーシャ「――せぇのッ!」ダッ


 ミーシャの音頭で全員が体当たりをかました

 扉が派手に軋む。しかし呼吸が合わなかったのか、扉は神の御下へ囚人が侵入するのを防ぎきってみせた。蝶番のイカれる感触があったので、もう一息ではある

 だが兵士は眼前に迫っていた





 対峙する機を逸した

 4人が一斉に切り掛かる



《ラーダ→怨嗟の尺骨》
┗80↑で反撃成功
《グルファム→汀王国正式兵装》
┗30↑で反撃成功
《ミーシャ→マーシャルアーツ》
┗40↑で反撃成功

【安価下】
コンマ判定
70↑で凌ぎきる
69~21で数人負傷
20↓で一人死亡


《ゼイン→保身》
《サーマル→身軽》
《ライト→紳士道》



 兵士AとBが剣を振り下ろす。グルファムが鎧の装甲と盾で受け流し、Aの兜に頭突きをかます

 Aは兜と兜の衝突で痺れ、踏鞴を踏んで下がる。そちらを怯ませた隙にBへ剣を突き上げ、面頬を掬い上げるようにして奥の眼窩を裂き、脳を刔った

グルファム「どーだいッ……」グシッ ズッ


サーマル「うおっとッ」

 兵士Cと兵士Dがサーマルにかかるが、悉くをかわされる。速攻で下がったすばしっこい小男は、ひとまず後回しにされた

 狙われたゼインが動くのは早かった

ゼイン「……!!」ドンッ

トーウ「えっ――」フラッ


 迫る兵士Cへ、ゼインがトーウを突き飛ばした

 Cの目に揺らぎがあった。女性を切り殺すことへの躊躇ではなく、剣を振り下ろすか捕まえるかの下卑た逡巡からだった

 皮算用はトーウを救った


ライト「うおおおおッ!」


 ライトが吶喊した

 胴を捉えたタックルはCを押し倒したが、それを横目に捉えた兵士Dが、猪口才な子供と厄介な拳法家よりも、いけ好かない伊達男へのトドメを優先した

ミーシャ「馬鹿、やめろッ!」

 追い縋る。剣閃が走り、肩口を浅く斬られた

兵士C「放せこの野郎……ッ」

兵士D「動くな」

 両の手で逆さまにされた剣が、ライトの脇腹に深々と突き刺さった

ライト「ぐ、ぁッ――」

 剣が抜かれ、ライトの呻き声が悲鳴に変わる。それでもしがみついていたライトを跳ね飛ばし、立ち上がったCにミーシャが蹴りを見舞う。すんでのところで外し、D共々ミーシャに剣を向けた

 独特の構えからなる徒手空拳は隙を見せず、膠着はミーシャに吐き捨てる余裕を与えた

ミーシャ「あんた腐ってるね」

ゼイン「青臭いことを言うなよ」

 サーマルが苦笑した。その意図するところは分からなかったが、彼はトーウを背にしていた





>>40イベント判定成功》
【安価下】
コンマ判定
偶数で戦闘続行
奇数で礼拝堂が内側から開かれる



 残りの数は三人。うち一人はグルファムに食らわされた一発が効いたらしく、多少ふらついて見える

 ライトはこの戦闘では立てないだろう。自分も満足には戦えない

 グルファムとミーシャが頼りだ






《ラーダ攻撃不能》
《ライト重傷》
《グルファム》
┗30↑で攻撃成功、80↑で殲滅
《ミーシャ》
┗50↑で攻撃成功
《サーマル→撹乱》
┗コンマ数値に+5

【安価下】
コンマ判定
60↑で二人殺害
59~11で兵士側数人負傷
10↓で味方一人負傷
00で敵味方全員負傷

※堂々と下にずらしておきながら>>40さんのコンマ判定をミスってたことをお詫び申し上げます マジゴメン
おやつの鯛焼きは弟に譲ることにします



 一拍の沈黙を破ったのはグルファムの咆哮だった。盾を構え、最初に頭突いた兵士Aに突進する。CとDの注意が一瞬そちらへ逸れたのをミーシャは逃さなかった

 簡素な獄衣は洗練された身のこなしを阻害せず、ミーシャが袈裟切りをかい潜って一息でDに肉薄。Cの剣が来るより速く、装甲の無い肩の継ぎ目に掌底を撃ち離脱する

 手応えは軽い

ミーシャ「(鎖帷子――)」チッ

 兵士Aは、剣を繰り出しはした。グルファムは動揺に気色ばんだ剣を難無く弾いて柄頭を喉に叩き込み、そのまま自身の剣を掴んで背面に回る

 棒術のような動きでグルファムの剣がAの首に掛かり、引かれ、Aは血と泡を零しながら頽れた

グルファム「(あと二匹)」

 CとDに交互に剣を振るわれ、打つ手の無いミーシャ。壁際に追い込まれかけた瞬間、グルファムより早く二人と一人の間に割り込んできた者がいた


ゼイン「何っ――」ドサッ


 無論本人の意思ではない

 蹴り飛ばした足を下ろしもせず、転がったゼインを見るサーマルの口の端にはシニカルな笑みがあった。トーウと目が合い、逸らされる

 一幕を見ていた兵士すら歯牙にかけようともしなかったが、作られた隙は決定打になった

 脱走兵の剣が閃き、死体が四つになった




 戦闘に勝利した

 ゼインが真っ先に飛び付いたので警戒したが、手に取っただけだった

グルファム「ま、それよりはマシだろ。……振れるか?」

 自分、ゼイン、サーマル、トーウが剣と盾を手に入れた。甲冑を扱える人間はグルファム以外いない

 自分とトーウは筋力が足りないので剣だけ拾った

【安価下】
1「ライト!」→ライト
2「これでどうして捕まってたんだ?」→グルファム
3「ファインプレー」→ゼイン
4「もっと冷たい奴だと思ってた」→サーマル
5 礼拝堂へ侵入する

以後、城内移動中コンマ00で居合わせる人間が全員負傷

4




 ライトへ駆け寄りざま声をかけると、サーマルは皮肉げな薄笑いをやめずに返した

サーマル「あったかいだろ」

 暫くそのままでいて欲しい

サーマル「ライトか? 悪ぃが、それはちょっと厳しいかも」

ゼイン「……わかってるな」

 冷や汗を拭うゼインに悪びれた様子は無い。誰よりも早くライトについたトーウを一瞥し、ゼインとグルファムは礼拝堂の扉に向き直った

 彼がサーマルを罵ることはついぞ無かった

トーウ「ライトさん……!」

 肩に手をかけて揺さぶりかねない勢いだったトーウはミーシャに制され、泣き出しそうな顔で彼の名前を呼び続ける


 簡単な医術の心得があるのか、ミーシャが、即座に死に至る傷ではない、と告げ、それで幾分か落ち着けたのか、トーウは兵士の死体から衣服の裾を破り取って傷口に当てだした

トーウ「血が……、血が止まらない」

ミーシャ「貫通してないし、ヤバい内臓にも刺さってない。縫えないから、とりあえずは押さえて止血するしかないわね」

ミーシャ「大丈夫、そのうち止まるから。ゴリト!」

 どうすればいい

ミーシャ「服、脱ぎな」

 固まったのは自分だけでなく、トーウもミーシャの横顔を怪訝そうに見た。解説は、やり取りを見ていたサーマルがしてくれた

サーマル「そっちの死体のを使った方がいいんじゃねぇかな」

ミーシャ「トーウが破っちゃったでしょ。男物は脱がされたりしないから痛んでないの」

 ……

トーウ「……」

サーマル「上の袖に剣通して担架にしようってんだよ。ちょっと小せぇが、なに、あんだけのガッツがありゃそうそう死にはしないさ」

 なあ? と振られ、額を脂汗でいっぱいにしたライトは微かに口角を上げてみせた。ライトを自分とトーウの剣で作った即席の担架に乗せ、自分の肩は兵士から頂戴した布切れで縛った

 自分の服を使ったのは脱力した死体から鎧を脱がす手間を考えてのことだったのだろうが、やはり肌寒い。兵士の服を奪いにかかろうか考えた矢先、こちらの猶予を奪いにかかる足音が聞こえた

ライト「また、来たのか……」ハァハァ

 同時に、グルファムとゼインによる何度目かの体当たりがまた無駄に終わる


 ゼインは諦めない。扉への悪態はつきつつ、グルファムと共に助走をつける

ゼイン「どうすれば開く? ああ? そんなに絨毯を汚したくないか」

グルファム「無駄口叩くな」

ゼイン「開けばっ――」

 激突。まだ、まだ開かない

ゼイン「――黙る! クソッタレが」

グルファム「気持ちは分かるがよっ……」

 担架を無駄にしないでくれ

グルファム「手伝え。もうちょいだ!」

ゼイン「はッ……合言葉でも言えってか!?」

ゼイン「らりるれろッッ!」


 扉の向こうから音がした

 魔法の類ではなかったが、それは紛れも無く閂の動く音だった


ミーシャ「うそ、ていうか何今の」

 礼拝堂の扉が開く。ひょこっ、とヘッドドレスを付けた女性の顔が飛び出した


メイド「…………………」


 その様は巣穴から外を伺う兎のようだったが、順繰りにこちらを見回す目が脇に転がっている兵士四人の死体を見付けた時、意を決した風に大きく息を吸い、彼女は言った

メイド「入って下さい」

 小柄な体で扉を押してくれたが、途中からはグルファムが引き開けた

 剣で作った担架を握る



>>57エンカウント→4》



兵士1「あっ、おい!」

兵士2「礼拝堂が開いてるぞ! 中に入っていく!」

 六人が礼拝堂に入り、殿を務めたグルファムが、かつての同僚の声に舌打ちする

グルファム「閉めろ!」

 ライトを運ぶ自分とトーウを除き、グルファム、ゼイン、サーマル、ミーシャと、奥から出てきた甲冑姿の人物が扉を閉めにかかった。サーマルに二度見され、素早く答える

騎士「気にしないでいい!」

 張りのあるアルトが兜のスリットから飛んだ。グルファムの顔が引き攣った。開けるのに手こずった礼拝堂の扉は、今度はすぐに閉まった

 閂が差し通り、兵士の足音が扉の前で止まった





 行くぞ、合わせろ、と号令が走った

メイド「手伝って下さい!」グググ

メイド2「ぐ、ぐぅぅ……!」グググ

 自分達を招き入れたメイドの声に振り向くと、奥へ向かって並んでいる中で一番手近にあった礼拝堂の長椅子を、他にもいたメイドと共に引きずろうとしている

 手の空いている者が向かい、兵士が扉を揺らした



【安価下】
コンマ判定。奇数で扉破壊、偶数でバリケード構築成功



 二回目の体当たり。金属音がした

 右の扉の蝶番が弾け飛び、椅子を運びにかかる自分の足元で転がった音だった


サーマル「おいおいおいおいおいおいおいおォーい……」サッ

ゼイン「っ、椅子を放すな!」ガクン

ミーシャ「駄目ね。もう間に合わない」パッ

 トーウ、メイドさん、ライトを奥へ運んで欲しい

メイド2「こっ、壊した人達の言うことなんて」

メイド「……運ぶわよ!」

メイド2「メイド長!?」

トーウ「ライトさん、ライトさんしっかりして……!」

メイド2「く……、はい」

 三人と剣の担架が奥に見える小部屋へ消え、扉が破壊された


 兵士の数は再び四人。そのうち、槍を持っている一人がせせら笑うようにして騎士に言った

兵士1「これはこれは……瑕疵の騎士殿」

騎士「……」

 呼び名の由来は分からないが、正規兵が姿を見るなり敵対する理由と無関係ではないだろう

 騎士は黙したまま、背腰に交差させて佩いた長短二振りの双剣をゆっくりと抜いた

騎士「――その名で呼んだな」

兵士2「尻軽のお守りに俺達の相手が務まるかな?」シャキン

兵士3「務まらなきゃ務まるように仕込んでやるだけだろ。歯ァ抜いたりとかして」シャン

ミーシャ「この城の男共は分身の魔法でも使ってる訳? 脳の造りが紋切り型って珍しいわ」グ

グルファム「すーいませんね……」ガチャ

サーマル「余裕が出ればみんなそんなモンだって」シャン

ゼイン「…………」シャキン

 騎士とグルファムに続いて並び、ゼインと自分は最後尾にいる

 真っ先に動いたのは騎士だった



《騎士→先制攻撃》

【安価下】
コンマ50↑で三人殺害、49以下で二人殺害&騎士負傷で戦闘開始




 兵士1が槍を突き出す

 騎士がかい潜り、短剣を手首に刺し、長剣で槍の柄を撫で斬った

兵士1「なんっ――」

 刺した短剣で腕を極めて片側の二人への盾とし、後背に回した兵士2が切り掛かって来るのを、目もくれずに片手の剣で受け止める

 ぐりん、と腰を捻った騎士は半身で2に対峙し、凌いだ剣を払って突きを撃った

 真横に降った驟雨のような連続刺突で2を黙らせると、騎士は長剣を床に突き刺し、苦痛に呻く1越しに3と4へ笑いかけた。嗜虐的な笑い声だった

 一転して恐慌に陥った3が躍りかかる

 騎士の手が煙る。手首の鞘から抜かれた短剣が投擲され、3がよろめく。戒めを解かれた1の兜に両の手甲が巻き付き、首が回し折られると、糸の切れた人形のように二人が揃って崩れ落ちた

騎士「うん」

 床に刺しておいた剣が抜かれる。どうやら石畳の隙間などではなく、タイルそのものに刺したらしかった

 騎士がグルファムを見た。囚人勢の誰もが動けないでいたが、「よく見えないから」と上げっ放しにしていた面頬をそっと下げることで、グルファムは視線を絶った

騎士「そら来た。そういう顔をされるから、戦ってみせるのは嫌だったんだ」ハハハ

騎士「後は任せていいかな?」ツカツカ

兵士4「ひっ……」ズサッ

 悠々と3に歩み寄って短剣を回収した騎士に、戦意を喪失した4は後退ることしかできなかった

 すれ違いざまにグルファムの肩を肘で小突くと(結構ぐらついた)、自分はメイドの後を追って奥の部屋へ入って行った

 後には、破壊された扉と、三人の死体と、一人の兵士が残された



ミーシャ「……呆けててもしょうがないでしょ。どうするのよ、コイツ」

ゼイン「殺す以外に選択肢があるのか?」

サーマル「情報聞くとか」

グルファム「待て待て……。一週間とはいえ最前線で戦ってた兵士と……あー」

 歯切れが悪いな

グルファム「……第三王女付きの近衛騎士様がいるんだぜ? いらねーよ、雑兵の口利きなんざ」

ゼイン「お前も雑兵だろ」

グルファム「叩き上げのな」

グルファム「こいつらには負けねー」





 兵士4の恐慌は収まりつつある

 騎士の強さを見た手前、突然暴れ出すことはないだろうが……


【安価下】
1「時間が無い。とっとと死んで貰おう」
2「革命軍はどうしてる」
3「あんたしか知り得ない情報はないか」
┗コンマ90↓で空振り



 追いつめられた兵士が必死の形相を作る

 自分の記憶から有益な情報を濾し取ろうとするその様は、余裕が無いこちらの時間に鑢をかけているだけに思えた。ゼインが舌打ちし、囚人勢は初めて彼の考えに満場で一致した

 剣を構える囚人。兵士は、剣を捨てた

兵士「ま……待ってくれ」

 家族がいるとのことだった

 そういえば彼だけは戦う前に騎士を揶揄しようとしなかった

グルファム「……ラーダ、サーマル、外の死体からベルト掻っ払ってこい」

サーマル「俺も?」

 急ごう

 おい

兵士「……っ……」

 レジスタンスにやられたとでも言っておけ

ミーシャ「優しいね」

ゼイン「先に行ってる。……新手を連れてくるなよ」





 兵士を拘束した

サーマル「じゃ行くか」

兵士「……連れていってくれ」

サーマル「はあ?」

 すぐに調べてみたが、刃物の類を隠し持っている訳ではないようだ

サーマル「抜け目ないな」

兵士「て、抵抗したりなんてしない! 本当だ、誓うよ……」

兵士「俺は死ねないんだ」


サーマル「すぐにお仲間が来るんだろ」

兵士「……来るのが反乱軍だったら?」

 何?

兵士「王国軍は、負ける……。逆転はない」

兵士「指揮系統が混乱してるんだ。野戦任官で頭を継ぎ足してはいるが、士官が務まるような将軍や貴族クラスの人間はみんな逃げた後だ」

兵士「防衛線を張ってる人間が逃げないのは、持ち場を離れたらなだれ込まれて死ぬからってだけさ……ここにいたら遅かれ早かれ殺される」

 家族は

兵士「流刑島が落ちたって知らせがあった時に、故郷へ帰らせた」

 憂いは無い、と

サーマル「……おい、何考えてんの?」

サーマル「連れてく気かい? お涙頂戴に付き合って」




【安価二つ下】
1「ああ」
2「いや」



サーマル「……」

 珍獣を見る目だ

 押し殺した表情を僅かに和らがせ、兵士は名を名乗り、ありがとうと一言だけ礼を言って大人しくついて来た



【安価下】
妻子持ち宮仕え兵士の名前は?
【安価二つ下】
グルファム並みのりょ力を持つフルアーマー女騎士の名前は?
※フルネームでお願いします



 足だけ解放した兵士、シド・ルーカスを連れ、礼拝堂奥の小部屋へ入った

 手狭な部屋は、随所に生活感が見られる。ここを預かる----この城お抱えの----司祭が暮らしていたにしては質素に過ぎる様相だが、案外清貧を是とする人間だったのだろうか。何にせよ司祭はおらず、代わりに品の良い服を着た少女が見知った顔の中にいた

 メイド二人を両脇に控えさせた少女が件の第三王女で間違いなさそうだったが、その顔は抜け殻のような無表情で、まるで生気が感じられない

第三王女「……」

 入ってきたこちらを見ようともしない。反応は期待できないと見て、有り合わせの椅子や壁に腰掛け寄り掛かる一同に声をかけた

シド「……」

 何か言いたげな顔ばかりだった

サーマル「俺は反対したんだけどね。ラーダ少年がどうしてもってね」

 十二人じゃ流石に狭いな

ゼイン「そうだろう。少し広くしないか」

 第一声はあんただと思ったよ

グルファム「ラーダ」

 大丈夫だよ、この人は暴れたりしない

 第一初めに生かそうとしたのはあんただろ、と水を向けるとゼインはグルファムをしんねりと見遣った

 篭った声がくつくつと笑う


ミリー「心配要らない。触りだけだが、今話しただろ?」

 ?

ライト「…………魅力的な、話、だよ」

 !

トーウ「ライトさん! 気が付いたの?」

 寝具に寝かされたライトの足下辺りへ座っていたトーウが、ほっと顔を緩めた

 ライトは上体を起こそうとするが第三王女についてたいメイドに止められ、首と目だけを動かして、まずトーウを見た

ライト「トーウさん、無事だったのかい? ……ああ、名前で呼んでも?」

 トーウが頷く。ライトは柔和に笑うが、その顔は青い

ライト「……良かった……。で、だ……鎧の貴女、今の話、本当なのか……?」

見リー「最初から、意識があった、って訳じゃないんだな。丁度いい」

 君がラーダか、と前置き、騎士が立ち上がった

 甲冑を加味しても、グルファムの鉱夫のそれに近い体躯に引けを取らない立ち姿は、低く凛とした声と相まって、こちらの身を嫌が応でも引き締めさせた

ミリー「ミリー・ロマネンコだ。挨拶をしようというのに兜を脱がない非礼を許してくれ」


 鉄格子のような兜のスリットの奥に、一瞬だけ部屋の光が射した

 強い意志を秘めた瞳と目が合ったような気がしたが、その顔までは窺えなかった

 魅力的な話というのは?

ミリー「脱出できる。この面子なら」

 自分とサーマルが反応し、そしてシドが食いついた

シド「それは本当ですか!?」

ミリー「堅苦しいのはやめにしよう。名前は?」

シド「……シド・ルーカス。ここの兵士だった」

ゼイン「今は囚人の囚人だ」

グルファム「よせよ」カシュッ スパー

グルファム「騎士様。話進めてくれ」フー…

サーマル「おい、俺にもくれよ。……神父様の部屋に煙草あったの?」

 マッチと紙巻きで一服しだすグルファム。サーマルとゼインが欲しがり、漂ってくる紫煙を見たミーシャは露骨に嫌そうな顔をした

 剽軽に肩を竦め、ミリーは続けた

ミリー「そこに暖炉があるだろ?」

 火の焼べられていない暖炉が指される。使い込まれた年代物だ

 灰が盛大に手前の床へ掻き出されており、傍らにはスコップが転がっていた。……血が付いている

ミリー「底に隠し通路がある。そのまま行けば、城の裏手、断崖絶壁の下、城付きの港に」


 じゃあどうして行かないんだ

 と聞き返そうか迷ったが、ゼイン辺りが既に聞いているような気がしたので黙った

ミリー「ああ、顔で分かるよ……。一度、メイド長が一人で偵察したんだ」

ミリー「軍の兵がいてな。私一人ならどうってことないんだが、姫様とメイドの二人を守りながらでは些か辛い」

 さりげなくメイド長が戦力に数えられている

 また地鳴りがして、地上で城の何処かしらが崩れる音が響いた

ミリー「説明終わり。で、どうする」

ミリー「乗るか?」







【安価下】
1「先に制圧してからついて来させればいいだろう」
2「そもそもどうしてあんた達は王国と敵対してる? 信用できない」
3 二つ返事

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