アイルー「今日からよろしくにゃ!」範馬勇次郎「フェッフェッフェッwww」 (24)

僕の新しいご主人様は、そんな風に笑っていた。
この人は、今日村に来たばかりの人だ。
……でも、とても変わってる。

村に来た理由についても、

「強き者を求めるがゆえよ」

とか言ってたし、村長が武器や防具の説明をしようとしたら、

「防具など軟弱者が着るもの!武器などこの拳以上に強きものなどないわ!!」

とか言ってたし。

いやいや、者じゃなくてモンスターだし。
それに、防具がないとあっという間にやられるし、そもそも武器がないとダメージすら与えられない。

僕は、既にため息を吐いていた。

「……それでご主人様。さっそく狩りに行きますか?」

「無論よ」

「だったら、最初はドスランポスくらいでいいですかにゃ?」

「まあ、よかろう」

……武器もないし、勝てるはずもないけど。
とりあえず僕らは、密林へと出掛けた。

密林の中を歩く。
生い茂る原生林は、視界を狭くしていた。
でもこの日の密林は、いつもと違っていた。
普段嫌というほど見かける虫や小型モンスターが、一切見当たらない。

これはどういうことだろうか。
もしかして、飛竜種でも来ているのか?
……だとしたら、ご主人様は相当運が悪い。

「――おい貴様」

「はい?」

「獲物はまだか?」

「ええと……もう少しで見付かるかと……あ、いた」

僕らの向かいから、青いそれが走ってきた。

「……」

ご主人様は、ドスランポスを見るなり固まってしまった。
まあ、おおかた武器を持ってこなかったことを後悔しているのかもしれない。

「……おい、あれがドスランポスとかいう者か?」

「まあ……そうですが……」

「小物ではないか!!!」

ご主人様の叫び声が、密林にこだました。

「ああご主人様。そんな大声出したら……」

案の定、ドスランポスは僕らを見つけたようだ。

「シャアアアア!!」

ドスランポスは鋭い牙と爪を見せ付けながら、僕らを威嚇する。
でもご主人は、全く構えようとしない。
ただ、立っているだけだった。

「ご主人様。もうすぐ飛びかかって来ますよ?」

「……」

「ちょっと。ご主人様?」

「……」

やっぱり、ご主人様は動こうとしなくかった。
そうこうしている間に、ドスランポスは僕らに向けて駆け出す。
そして強靱な足で地面を蹴り、飛びかかってきた――。

……それは、一瞬の出来事だった。
ドスランポスの爪がご主人様に触れようとした刹那、ご主人様の方から突風が吹き荒れた。
それと同時に鈍く重い音が響き、宙を跳んでいたドスランポスは後方にはじけ飛ぶ。
木々薙ぎ倒し倒れるドスランポス。
その首はへし折れ、口から赤い血を吹き出していた。

ご主人様が何をしたのか、僕は見ていなかった。
ただ一つ分かるのは、ご主人様は武器もなくドスランポスを一瞬で討伐したということ……。

でもご主人は、とてもつまらなさそうな顔をしていた。

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