戦刃「わ、私が苗木くんの専属メイド?」 (72)

始めに言っておく


エロはない



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420969699

戦刃「ねえ盾子ちゃん、今日の夜空いてるかな。たまには姉妹水入らずで一緒にご飯でも食べようかなって思ってるんだけど」

江ノ島「パス」

戦刃「そ、そんなこと言わないでよ。私だって盾子ちゃんとゆっくりお話がしたいって」

江ノ島「パス」

戦刃「うう……。盾子ちゃんのために特別なレーションを用意したのに……」

江ノ島「パアアアァァァァスッ!だいたいなんだよオマエさっきから!アタシは嫌だっつってんだろうがよ!」

戦刃「で、でもレーションが……」

江ノ島「デモも抗議もあったもんじゃないっつーの!あーやだやだ、口を開けば戦争だ銃器だレーションだ。いつからこんな姉になったのかねーホント」

戦刃「そ、それは小学生くらいの頃から……」

江ノ島「そうじゃない!アタシが言いたいのはオマエがミリオタになった経緯じゃないんだよ。どうしてここまで残念になったかってことなんだよ!」

戦刃「ざ、残念って……。私、残念なんかじゃないよ……」

江ノ島「はっ、他人の役に立てない時点でオマエは戦うことしか脳のない産業廃棄物だってことが分かんないのかねー」

戦刃「わ、私だって誰かの役には立てるよ。現に盾子ちゃんの……」

江ノ島「どこで?ねえどこで役に立ってんの?オマエと一緒にいてもアタシ苦痛しか感じないんだけど〜?」

戦刃「じゅ、盾子ちゃんじゃなくても他の人が……」

江ノ島「証明できんの?」

戦刃「それは……」



江ノ島「ハイ、おしまーい!まあまあよくやったところね。65点くらいか」


戦刃「へ?な、何が?」

江ノ島「もちろんこの話題を引き出すのにかかった時間を点数化したらの話よ」

戦刃「え?え?」

江ノ島「本日はそんな誰かの役に立ちたいという残姉のために特別な企画を用意しましたー!」

江ノ島「題して……『専属メイドになってあなたを冥土までご奉仕します作戦!』ちなみにタイトルは今考えた」

戦刃「専属メイド……?」

江ノ島「ほら、やっぱ誰かの役に立つっていったらメイドじゃん?ご主人様の身の回りの世話しつつあんなことやこんなことしたくなるじゃん?」

戦刃「そ、そうなの?よく分からないけど……」

江ノ島「アンタの残念っぷりを治すには誰かの下について身の回りの世話をさせるしかないと踏んだわけよ」

江ノ島「いや、誰かとは言わねー。アンタには苗木の下についてもらおうか!」

戦刃「ええ!?なんでそこに苗木くんの名前が……」

江ノ島「そりゃアンタが一番やりやすそうだからに決まってんじゃん。ちなみに期間は今から72時間だから」

戦刃「今から!?」

江ノ島「正確にはアンタがメイド服を着て苗木の部屋に押しかけてからね。メイド服はあらかじめセレスの奴から借りといたから」

戦刃「そんな急に言われても心の準備が……」

江ノ島「あ、制服のスカートはミニとロングどっちがいい?」

戦刃「動きやすさを考慮してミニで……じゃなくて!わ、私はやらないよ。いくら盾子ちゃんでもこんなことはさすがに許容できないよ!」

江ノ島「ふーん。じゃあアンタはずっとこのままでいいんだ。ずーっとずーっとアタシから残念だって罵られる毎日でいいんだ」

江ノ島「正直アタシも予想できなかったわー。せっかくアンタの残念っぷりを治そうと思ったのにさー」

戦刃「盾子ちゃん……」

江ノ島「ねえ、分かんない?アタシの役に立ちたいって言うならやるべきでしょ?これを断ってる時点でアンタは本当の役立たずなのよ?」

戦刃「……そっか、そうだよね。ごめんなさい、私が間違ってたよ。私、盾子ちゃんのためにもメイドとして一生懸命頑張るよ!」

江ノ島「お姉ちゃん……。よし!それならさっそく着替えて苗木の部屋に向かおっか!」


江ノ島(やっぱチョロいわコイツ)



ピンポーン……


苗木「はーい。こんな時間に誰だろう」ガチャ

江ノ島「やっほー」

戦刃「こ、こんばんは……」

苗木「あ、江ノ島さん。それに……戦刃さん!?何その格好!?」

戦刃「へ、変かな……」

江ノ島「まあ、それについてちょっと話しに来たってわけよ。とりあえず中に入れてくんない?」

苗木「あ、うん」




江ノ島「さてと……。苗木、アンタはお姉ちゃんが超絶残念な人間だってことは知ってるよね?」

苗木「超絶残念って……ボクはそこまでひどくは思ってないよ」

江ノ島「でも、少なからず駄目だこいつって思う時だってあるわよね?」

苗木「え……っとそれは……。ひ、否定はできないかな……」

戦刃「苗木くんにまでそう思われてたなんて……」

江ノ島「正直でよろしい。でさ、そんなコイツの残念っぷりを治すためにアンタのとこで住み込みで世話させてやりたいわけよ」

苗木「でも、何でメイド?」

江ノ島「それはお姉ちゃんの口から説明を願おうか」

戦刃「えっと、私が残念じゃないことを証明するには誰かの役に立つ必要があって……それでメイド服を……」

苗木「それはボクである必要はあるの?こういうのはやっぱり江ノ島さんに見てもらった方がいいんじゃ」

江ノ島「コイツ直々の指名だから仕方ないでしょ」

戦刃「ちちち違っ……!盾子ちゃんが勝手に……」

江ノ島「ま、そんなことはどうでもいいわけよ。問題はさ、アンタがこれを引き受けてくれるかどうかってこと。アタシとしてはお姉ちゃんのためになるから引き受けてくれたほうが助かるんだけどねー」

戦刃「わ、私からも是非とも……。私が誰かの役に立てるって証明したいから……。お願い、苗木くん」

苗木「……分かったよ。二人にそこまで言われたらボクも引き受けない理由がないね」

江ノ島「サンキュー、苗木!じゃ、今から72時間きっちりよろしくね!」

苗木「え?1日じゃないの?」

江ノ島「あれ?言ってなかったっけ?期間は72時間だって」

苗木「初耳なんだけど……」

江ノ島「おっと、こいつは失礼した。でも、もう引き受けちゃったしなんとかなるっしょ。じゃあよろしく〜」

苗木「ちょっと江ノ島さん!」


苗木「はあ……参ったな」

戦刃「…………」

苗木「…………」

戦刃「……あの、そんなに見られると……恥ずかしい……」

苗木「あ、ごめん……」

戦刃「…………」

苗木「…………」

苗木(沈黙が長いな……。な、何か話題でも……)

戦刃「あの……」

苗木「! な、何かな」

戦刃「ふ、ふつつか者ですがよろしくお願いします……」

苗木「あ、ああ、こちらこそよろしく。戦刃さんはメイドをするって言ってたけど具体的には何ができるの?」

戦刃「えっと……えっと……ボ、ボディーガード、とか?」

苗木「それってメイドというよりSPだよね」

戦刃「う……。じゃあ……その……あの……」

戦刃「…………」

苗木「もしかして……何もできない?い、いやそんなこと無いよね!」

戦刃「ごめんなさい……」

苗木(この状態で3日か……かなり厳しいぞ……!)

苗木(いや、まだ希望はあるはずだ。戦刃さんがどれくらいできるのか、この目で確かめないと!)

苗木「あ、あーそうだ!考え事してたらお腹が減ってきちゃったよ!戦刃さん、悪いけど夕飯の支度をお願いできるかな?」

戦刃「う、うん。かしこまりました、ご主人タマ」

苗木「ご、ご主人タマ?」

戦刃「あ、こ、これは盾子ちゃんがそう言った方が苗木くんが喜んでくれるって……」

苗木「江ノ島さん、変な知識入れるのはやめてほしいな……」

戦刃「じゃあ待っててねご主人タマ。今用意してくるから」タッタッタッ



苗木「……せめてこの3日間、何も起こらなければいいんだけど」




戦刃「はい、どうぞ召し上がれ」

苗木「……戦刃さん。これは?」

戦刃「レーション、だけど……」

苗木「あ、うん、いや、どうしてこれを夕食に選んだのかなーって」

戦刃「私、レーション温めるくらいしかできないから……。あ、でもレーションも美味しいんだよ?栄養もあるし、長持ちだってするし……」

苗木「…………」

戦刃「ご主人タマ、食べないの?」

苗木「た、食べるよ!ただ、日常生活でレーションを食べる機会って無いからちょっと珍しいなーって思ってただけで……」

戦刃「戦場に行けばいくらでも食べれる……。あまり食べすぎても飽きちゃうけど」

苗木「そ、そうなんだ……」パクッ

苗木「あ、食べてみると意外と美味しいんだね」

戦刃「き、気に入ってくれた……?」

苗木「うん。ボク、こういう食べ物ってあまり美味しくないかもって勝手に思ってたから何か申し訳ないな……」

戦刃「戦場においては食事は数少ない娯楽だから……。味が美味しくないと兵士の士気が下がってその戦争は負けに繋がることもあるの。だからこういった保存食は誰が食べても美味しくなるように万人受けする味になっているの」

苗木「へえ」

戦刃「ご主人タマも缶詰めやカップラーメンは食べたことあるよね。レーションもそれらと同じようなものだと考えればいいかな。災害があったとき被災地に届けられたこともあったの」

苗木「なるほど、確かに保存食は万人受けする味だね。戦刃さんって物知りなんだね」

戦刃「……そんなこと、ない。ジャンルは偏ってるし、私ばっかり喋っちゃうし……」

苗木「いいんだよ。ボクも戦刃さんの話、もっと聞いてみたいな」

戦刃「それなら……私が戦争で中東に行った時にレーションに助けられた話でも……」



2時間後



戦刃「それでその時レーションの中のアーミーナイフが無かったら私は今頃ここにはいなかったかもしれない……」

苗木「そ、それは……大変だったね……」


苗木(聞かない方がよかったかな……)




戦刃「ごめんなさい……。私、あんな長々と一方的に……」

苗木「い、いいんだよ。戦刃さんが楽しそうにしてくれてるだけでボクは十分だよ」

戦刃「私、メイドらしいこと何も出来てない……」

苗木「ほら、まだ数時間しか経ってないから……。そうだ、気分転換になにか漫画でも読む?」

戦刃「あ、大丈夫……。私は自分で暇つぶし用の本を持ってきたから……」

苗木「戦刃さんはどんな本を読むの?」

戦刃「これ。『月刊 レーションの全て』」

苗木「本当にどんな本なんだ……。でも戦刃さん、好きそうだもんねそういう本」

戦刃「ふふ、今月はフランスの特集なんだ。よかったらご主人タマも読んでみる?」

苗木「え、遠慮しとくよ……」


ピンポーン……


苗木「あ、誰か来た」

戦刃「襲撃者かもしれない。私が出る」

苗木「えっ、襲撃者!?ここ学園の中だよ?」

戦刃「シッ、静かに。今扉の鍵を開けるから……」

苗木「いやいやいや!そこまで警戒する必要ないから!」


葉隠「よぉー苗木っち!悪いけど金貸してぐええ!?」

苗木「やめて戦刃さん!それ葉隠クンだから!早く放して!」

戦刃「あ、ごめんなさい……つい……」

葉隠「ゲホッゴホッ!何すんだべ戦刃っち!……ってあれ?何で戦刃っちがここに?つか何だその格好?」

戦刃「こ、これはご主人タマのもとでメイドとしてご奉仕を……」

葉隠「ご主人タマ……ご奉仕……。あーそういうことか、邪魔したな」

苗木「待って!確実に誤解してるよね!?」

葉隠「苗木っち、やりすぎは体によくねえぞ?あと、寝る前にはちゃんとシャワー浴びとけよ?じゃあなー!」

戦刃「葉隠くん、何の話?」

苗木「ちょっと葉隠クン!……はあ、明日どうしようか……」

戦刃「ご主人タマまで……」




苗木「……戦刃さん、明日はその格好で教室に行くの?」

戦刃「うん、盾子ちゃんに替えのメイド服と下着以外全部取られちゃって……」

苗木「徹底してるな……」

戦刃「で、でも私……頑張るから。ご主人タマのためにも……必ず役に立ってみせるから」

苗木「それはいいけどメイド服姿で教室に入ってきたらみんな驚くんじゃないの?」

戦刃「それは多分大丈夫……。盾子ちゃんが手を回してくれてると思うから……」

苗木「だといいんだけど。嫌な予感しかしないなあ……」

戦刃「ところでご主人タマ。なにかして欲しいことはある?」

苗木「どうしたの急に」

戦刃「メイドといえばご奉仕だって盾子ちゃんが……。私、ご主人タマのためなら何でもするから……」

苗木「……とは言っても特にして欲しいこととか無いしな」

戦刃「そんな……。ひ、膝枕しながら耳掃除とかでもいいんだよ?」

苗木「ごめん。耳掃除は昨日やったばかりで……」

戦刃「じゃあ肩もみを……」

苗木「い、戦刃さん力強すぎるから……」

戦刃「……もしかして、ご主人タマは私を必要としていない?」

苗木「そ、そんなことないよ!戦刃さんは、その……きっとそのうち役に立つ時が来る……はず、だと思うから……多分」

戦刃「そ、そうだよね……。大丈夫、大丈夫……」

苗木(どうにかして彼女に自信でもつけさせればいいんだけど……。難しいな……)

苗木「はあ……」




苗木「……ん、もうこんな時間か。ボク、ちょっとお風呂入ってくるよ」

戦刃「そ、それなら私に背中を流させてほしい……」

苗木「ええっ!?そ、それはさすがにできないって!」

戦刃「でも私はメイドとして……」

苗木「うーん……そうだ、戦刃さんもお風呂に入ってきたらいいんじゃないかな。ずっとボクに付いて自分のことをおろそかにするわけにもいかないでしょ?」

戦刃「でも、その間にご主人タマを護衛する人がいなくなっちゃう……」

苗木「大丈夫だよ。誰かが襲撃に来るわけでもないから」

戦刃「……そこまで言うなら。なにかあったら私を呼んでね。部屋の鍵は開けておくから」

苗木「うん。それじゃ」





苗木「ふう……。たった数時間でだいぶ疲れた気がする……」

苗木「そもそも何でメイドなんだろ。……いや、考えるだけ無駄か」

苗木「江ノ島さんのことだ、表ではああ言ってるけどどうせ面白いからの一言で決めたんだろうな」

苗木「引き受けるべきじゃなかったか……。でももう乗り掛かった船だ、最後まで付き合うか」

苗木「うん、前向きなのがボクの唯一の取り柄だしね」




苗木「ところで、戦刃さんはどこで寝るの?」

戦刃「私は部屋の中で怪しい人がこないかを確認するために立っているだけでいい……」

苗木「えっ、寝ないの?」

戦刃「大丈夫。フェンリルにいた頃は眠ろうにも眠れない日は何日も続いたからそういうのは慣れてる……」

苗木「でも、明日は普通に授業があるし……」

戦刃「私は1日寝ないだけで機能が停止するような柔な体じゃない……。だから、ご主人タマは安心して寝ていい……」

苗木「そ、それなら……。でも無理はしないでね。調子が悪いと感じたらいつでもベッドに戻っていいから」

戦刃「うん、そうする」

苗木「それじゃ、おやすみ」

戦刃「おやすみなさい……」


苗木「…………」

苗木(…………)

苗木(……ものすごく視線を感じる)

苗木「い、戦刃さん?」

戦刃「どうしたの……」

苗木「ずっとこっち見るのやめてもらえないかな……。なんていうか、気になって眠れないんだ」

戦刃「ごめんなさい……。次は気をつける」


苗木「…………」

苗木(…………)

苗木(……やっぱり見られてる)

苗木「…………」ガバッ

苗木「あれ?誰もいない……。戦刃さん、どこいっちゃったんだろう」

戦刃「今、ご主人タマの隣に……」

苗木「どわああああ!い、いつの間に!?」

戦刃「ちょっと気配を消せばこれくらいどうってことない……」

苗木(軍人恐るべし)

          中




                    Short Story
                    SUSPENDED



          断

期待してます
書きたくなってつい書いちゃった絵置いときますね
http://i.imgur.com/DGkvCyT.jpg

          再




                    Short Story
                    REOPEN



          開




苗木「う……もう朝か……?」

戦刃「おはよう、ご主人タマ。昨夜はよく眠れたみたいでよかった」

苗木「あ、あはは……。戦刃さんのおかげだよ……」

戦刃「褒められた……。私、メイドらしいこと出来てた?」

苗木「う、うん。その調子で頑張ればきっといい働きができるよ」

戦刃「よかった……。私、今日はめいっぱい頑張るよ。そして、ご主人タマの役に立ってみせる」

苗木(なんとか自信つけてくれたかな……)

苗木(まあ、ちょっとした失敗は目を瞑ってあげなきゃ。彼女はあまりこういうことは得意じゃないみたいだし)

苗木(ボクは少しでも彼女に自信をつけてもらえるように励まさなきゃ)

苗木(……メイドとして何か間違ってる気がするけど)

戦刃「それで、まだ授業まで時間があるけどどうする?」

苗木「やっぱりまずは朝食かな。さっそく食堂に行こうよ」


食堂


江ノ島「あ、苗木と駄メイドだ。おはー」

苗木「おはよう、江ノ島さん」

戦刃「盾子ちゃんもここで朝食?」

江ノ島「チッ、見りゃ分かんだろ。察しの悪いヤツだな」

戦刃「ご、ごめんなさい……」

苗木「あ、ここ座ってもいいかな?」

江ノ島「勝手にすればー……と、そんなことよりアンタたち、昨日はどこまで進んだの?」

苗木「え、進んだ……って?」

江ノ島「男と女が一つの部屋で一緒、しかも片やメイドだよ?ヤることといったら夜のご奉仕しかないっしょ」

苗木「残念だけど、キミの想像してるようなことはしてないよ」

江ノ島「ちぇー、つまんねーの。つか残姉、アンタもアンタで夜這いの一つくらいかけなさいよ!」

戦刃「そ、それはちょっと……。私には無理だよ……」

江ノ島「ま、アンタたちみたいな草食系の塊みたいなヤツらに期待しても無駄だってのは分かってたけどね。マジでつまんねー」

戦刃「ごめんなさい、ごめんなさい……」

苗木「戦刃さん、そこ謝るとこじゃないから。それより、ボクたちも何か食べようよ」

江ノ島「おい駄メイド、なんか3人分の料理もってこい。もちろん自腹でね。ちなみにレーションは禁止。分かったらさっさと行ってこい」

戦刃「え……。でも私、専属メイド……」

江ノ島「分かったらさっさと行ってこい」

戦刃「…………」コクン

苗木「ちょっ、いくら何でもそれは……あ、行っちゃった」

江ノ島「いい?今のが正しいメイドの使い方。あんなバカでもあれくらいの働きはできてもらわないとねー。セレスや十神に聞けばもっと詳しく教えてもらえるかもしんないわよ?」

苗木「その2人は……いろいろまずい気がするなあ……」




戦刃「お、お待たせしました……」

江ノ島「遅い!主人を待たせるとはいい度胸だな!」

戦刃「ごめんなさい……」

苗木「江ノ島さん、ちょっと言い過ぎじゃ……」

江ノ島「苗木は甘すぎ。雑用のコマなんざ使ってナンボ、捨ててナンボよ」

戦刃「いいのご主人タマ、私が悪いから……」

江ノ島「アンタご主人タマとかマジで言ってたんだ。あんなの適当にでっち上げた嘘に決まってんじゃん」

戦刃「えっ……。そ、そうなの?」

苗木「そりゃそうだ……。ボクがそんなことを江ノ島さんに話した覚えは一度もないよ」

江ノ島「でもその口ぶりだとご主人タマって呼ばれて嬉しいのは嘘じゃないみたいね」

苗木「あ、いや、それは……」

江ノ島「アッハハハ!良かったじゃんお姉ちゃん!これからもご主人タマって呼んでほしいってさ!」

戦刃「よ、よろしくね。ご主人タマ……」

苗木「うう……」

江ノ島「さてさて、腹も減ったし飯でも食べますか。で、アタシのどれよ」

戦刃「はい、どうぞ……」

江ノ島「お前はバカか!いやバカだ!誰が朝からカツ丼なんて食うんだよ!」

戦刃「え……でも何か持ってこいって」

江ノ島「何?アンタアタシを太らせたいの?アタシがこの体型維持すんのどんだけめんどくさいか分かってやってんの?ギャル舐めてんの?」

戦刃「え、えと……ごめんなさい……」

苗木「そこまでにしてあげなよ。どうせ何を選んでも文句言うつもりだったんでしょ」

江ノ島「あらっ、分かっちった?」

戦刃「えっ……。じゃあ盾子ちゃんは本気で怒ってた訳じゃなかったんだね。よかった……」

江ノ島「どうしてコイツはこの場面で喜べるんだろうね」

苗木「キミがもう少し優しくしたらこういう場面も減ると思うんだけど。戦刃さん、ボクが食べた分の代金は後で渡しておくよ」

戦刃「いいよ……。私がしようと思ってしたことだし……」

苗木「こんなことを毎日させてたら戦刃さんのサイフが持たないよ。江ノ島さんも、いいね?」

江ノ島「はいはい、わーったよ」




戦刃「さっきはごめんなさい……。ご主人タマに変な苦労かけちゃったね……」

戦刃「で、でも盾子ちゃんのことは悪く言わないであげて。あの子はああ言っても私のことをちゃんと考えてくれてるから……」

苗木「大丈夫、分かってるよ。戦刃さんは本当に江ノ島さんのことが好きなんだね」

戦刃「うん。大切な家族だから……。あの子を理解してあげれるのは私しかいないから……」


葉隠「ほら見ろ桑田っち!やっぱり俺の言ったことは本当じゃねえかよ!」

桑田「うわ、マジだ……。マジで苗木が戦刃をメイドにしてやがる!」

山田「これはこれは……。苗木誠殿にはそのような趣味がおありでしたか……」


苗木「ゲッ、葉隠クンに桑田クンに山田クン!」

桑田「苗木!なんだよコレ!どういうことなんだよ!」

山田「できれば手短かに三行で教えていただけますかな?」

葉隠「苗木っち、ちゃんとシャワーは浴びたかー?」

苗木「ま、待ってくれ!みんなにはちゃんと説明するから!あと葉隠クン、ボクはそんなことしてない!」

戦刃「盾子ちゃん、手回ししてくれなかった……」




苗木「……というわけで戦刃さんはボクのところでしばらく世話をさせることになったんだ」

石丸「待ちたまえ!男女が一緒の部屋で夜を過ごすだと……というか実際に過ごしただと!不健全ではないか!」

山田「しかもメイドコスプレイ……。苗木誠殿も好きですなあ……」

苗木「だからボクはそんなことしないって!」

セレス「それは分かりませんわよ?従者と体の関係を持つ主人もいないわけではありませんから」

腐川「な、苗木……アンタも大人しそうな顔して夜は獣ってわけ……?」

不二咲「みんな……苗木君はそんなことしないって言ってるんだよ?信じてあげようよぉ……」

舞園「何事も疑いすぎることはよくありませんよ。私も少し驚きましたけど……」

十神「俺にとってはどうでもいい話だな」

大和田「どうせ3日だしな。オレたちがガタガタ騒ぐほどでもねえか」

江ノ島「じゃ、かいさーん。石丸、そういうわけだし3日間ぐらいは目瞑ってくんない?」

石丸「それはできない相談だな。規律が乱れている状態を僕が見逃すわけにはいかない!」

桑田「別にいいんじゃねーの?これも戦刃のためなんだしよ」

葉隠「だべ。それに規律違反ならまずセレスっちの制服をどうにかするべきだべ!」

セレス「ちょっと。わたくしを面倒事に巻き込むのはやめてくださいません?」

石丸「君達がよいと言っても周りのみんなが規律の乱れに嘆いているのかもしれないのだぞ!」


霧切「どうでもいいわ」

朝日奈「メイド服姿の戦刃ちゃんもかわいいし、しばらくはこのままでもいいじゃん」

大神「我はどちらでも構わぬが……」


江ノ島「誰が嘆いてんだって?」

石丸「百歩譲ってその制服を認めたとしよう。だがそのスカート丈はどうにかならないのか!最近は風邪を引く生徒も増えているし体調面においても……」

セレス「申し訳ございません。替えのスカートを用意するには最低3日は待ってもらわないと困りますわ。でも、その頃にはもう戦刃さんはメイドを辞めていますがね」

石丸「……もう、好きにしてくれ」

苗木(石丸クンには悪いことしたかな……)




苗木「…………」カリカリ

苗木「…………」

苗木(……後ろから凄い視線を感じる。おそらく戦刃さんだろう)

苗木(さすが軍人というべきか、向こうの顔が見えてないのにも関わらずボクの本能がSOS信号を出している)

苗木(怖くて授業が頭に入らない……。誰か助けて……)

先生「それじゃ、この問題を……苗木、できるか」

苗木「え、す、すいません。聞いてませんでした」

先生「授業はちゃんと聞けよ。じゃあ戦刃、代わりに頼む」

戦刃「…………」ジー

先生「おーい、戦刃?」

戦刃「はっ。ご、ごめんなさい、ボーッとしてました」

先生「ったく……。じゃあ朝日奈は……寝てるし、葉隠、桑田、大和田に江ノ島も駄目か。十神はどう見ても話聞いてないし、腐川もボーッとしてるし……」


先生「このクラス、大丈夫か?」




苗木「次の授業は……体育か」

戦刃「確か、バレーボールをやるんだっけ?」

苗木「そっか、じゃあ早く着替えに行かなきゃ。戦刃さんは……まさか、そのままやるわけじゃないよね?」

戦刃「安心して。私は今日、見学する予定だから……。でも、なにかあった時は全力でご主人タマを守ってみせるよ」

苗木「それは……心強いね」


体育館


苗木「二人一組でペアか……誰と組もう」

葉隠「苗木っち、今日オメーと組むと面白い結果が出るって占いで出たべ。というわけで俺と組むべ!」

苗木「うん、よろしく葉隠クン」

苗木「さっそく作戦をたてるか……。ボクはあまり身長が大きい方じゃないから、飛んできたボールを拾うことに専念するよ」

葉隠「そんで俺がスパイクをコートの中心で打つってわけか。なるほどいい作戦だ、略して『スパ中』だべ!」

苗木「その呼び方はちょっと危ないんじゃ……」

葉隠「ん、じゃあ『中』は麻雀で『チュン』と読むから略して『スパチュ……」

苗木「それは言わせないよ!」

山田「ちなみにチュンの方は本当に麻雀のチュンが名前の由来ですぞ」

苗木「山田クンはどっから出てきたの……」

葉隠「とにかく、この戦法ならある程度は戦えそうだな。最初の対戦相手はどいつだ?」


朝日奈「よろしくねー!」

大神「お互い、全力を出せるとよいな」


葉隠「な、苗木っち……俺の占いによれば……」

苗木「占うまでも無いよね……。勝敗の行方なんて……」




大神「ぬぅん!」ズバア

葉隠「ひいい!お、音が完全にバレーじゃねえ……。苗木っち、どうにか拾えねえのかよ!?」

苗木「そんなの自殺行為だ!」

葉隠「な、なあ頼むから朝日奈っちがサーブをしてくんねえか?このままじゃ俺たち一点も取れずにオーガがサーブをするだけで終わっちまう」

苗木「ボ、ボクとしてもこのまま終わるのは嫌だし……」

大神「勝負の世界に手加減は許されぬ。だが、少しでもお主たちが全力を出せるのであれば、我はお主たちの言葉に従おう」

朝日奈「サーブが私に代わったからって一点も取らせるわけじゃないからね!いっくよー!」

葉隠「おっし、これくらいなら何とか取れるべ!ほらよ、苗木っち!」

苗木「よーし、今だっ!」


戦刃(あのご主人タマの姿勢……あのままジャンプしたらボールには届くけど空中でバランスを崩して着地を失敗しちゃう)

戦刃(そうしたらケガしちゃうかも……。いや、そんなこと私がさせない)

戦刃(私がご主人タマを守ってみせる!)ダッ


葉隠「よーし、ナイスシュー……」

苗木「うわっ!?」

大神「ぬ……?苗木!」


ズザーッ ドサッ


朝日奈「苗木!大丈夫!?」

戦刃「多分大丈夫……。私が体で受け止めたから……」

大神「素晴らしい反射神経とスピードだったな、戦刃よ」

葉隠「自分の体で受け止めるとか正気じゃないべ……」


苗木「う、うう……。あれ、痛……くない?それにこの柔らかくて平坦な物は……」

戦刃「…………」

苗木「あ、戦刃さん?じゃあボクが今触ってるのって……」

戦刃「い、いやあああああ!」ブンッ

苗木「ぐふっ!」ドサッ

朝日奈「あ、気絶しちゃった」

大神「戦刃の拳をまともに食らってしまったからな、無理もない」

葉隠「床にぶつかった方がマシだったんじゃねーか?」

戦刃「ああ……やっちゃった……。わ、私が責任を取って保健室まで運びにいきます……」

保健室


苗木「うう……いてて……」

戦刃「あ、良かった……。目を覚ましてくれたんだね……」

苗木「戦刃さん……。そうか、ボクはあの時……」

戦刃「ごめんなさい……。私のせいで……」

苗木「いや、あれはボクに非があったしキミが気にする必要はないよ。ところで、今何時かな。早く次の授業に行かなきゃ……」

戦刃「……ご」

苗木「えっ?」

戦刃「もう、放課後……」

苗木「えええっ!?そんなに長い間気絶してたの!?」

戦刃「ごめんなさい……。私が失敗したせいで……」

苗木「そんなに謝られても……あ、でも待てよ。ということは今日の授業は全部終わったんだよな……ということはもしかしてアレも?」

戦刃「どうしたの?」

苗木「よかった!ボクはついてるぞ!実は今日、数学の問題やるの忘れちゃって。確か今日はボクが板書する日だったから意図せず回避したことになるんだよ」

戦刃「え……そうなの?」

苗木「それに英語も小テストがあったはずだ。自信が無かったんだよ、今回のテスト。これも戦刃さんのおかげだよ!」

戦刃「ご主人タマ……前向き……」

苗木「前向きなのがボクの取り柄だから。戦刃さんも自分の失敗を責めなくていいんだよ」

戦刃「でも……私は」

苗木「キミが失敗だと思っていてもボクにとってはこういった形で成功に繋がるから。だから、元気出して」

戦刃「う、うん。ありがとう、ご主人タマ」

苗木「はは、元気になってくれてよかっ……クシュン!うう……そういえばずっと体操着のままだった……。早く着替えなきゃ」




苗木「それにしてもお腹が空いてきたな……。気絶してたからお昼食べてないんだっけ」

戦刃「ご主人タマ、私のかばんの中に缶詰めが入ってるからそれで小腹を満たすといい……」

苗木「ありがとう。でもどうして缶詰めなんか……」

戦刃「どこで食糧難の危機にあうか分からないから非常食は持ち歩くようにしてるの。持ち物検査の時に石丸くんにもそう言ったら納得してくれた」

苗木「学園内で食糧難の危機にあうってどういう状況なの……。というかそれで納得する石丸クンもどうなんだ……」

戦刃「えっと……閉じ込められた時?」

苗木「いや、疑問系で言われても……」

戦刃「! 危ない!」


ベチャ


苗木「い、戦刃さん……?」

桑田「わりーわりー!こっちに雑巾飛んでこなかったかー?」

戦刃「はい」

桑田「お、サンキュー」

苗木「桑田クン、どうしたのこんなところで」

桑田「いやー、実はイインチョから居残りで掃除するように言われちまってよー」

桑田「んで、真面目にやるのも面倒だし野球で遊んでたってわけよ。そしたらキャッチャーの葉隠がビビって避けちまったからこっちの方に飛んでっちゃって……」

戦刃「桑田くん、私がかばんで防いでなかったらご主人タマの制服は今頃汚れていた。今度からはちゃんと気をつけて」ギロッ

桑田「お、おう……すまねえな」タッタッタッ

戦刃「ふう……。ご主人タマ、大丈夫だった?」

苗木「あ……ボクは大丈夫だよ。ただ……」

戦刃「ただ?」

苗木「その防いだのって……ボクのかばんだよね……?」

戦刃「あ……!ご、ごめんなさい……私、自分のと間違えて……」

苗木「こ、これくらいの汚れならすぐ落ちるから大丈夫だよ。汚れが固まる前に早く洗濯しにいこうよ」

戦刃「それじゃあ私行ってくる……。今度こそいいとこ見せなきゃ」

苗木「あ、戦刃さん、そんな焦らなくても……」


ランドリー


苗木「戦刃さんは……いたいた」

戦刃「えっと……後はこのボタンを押せば……」

苗木「なんだかんだで行動はしてくれるんだよな。ちょっと空回りしてるとこもあるけど……ってあれ?そういえばボクのかばんの中身は……まさか!」

苗木「戦刃さん!ちょっと待ってくれえええぇぇぇっ!」

戦刃「え?」ポチッ



苗木(その後の悲劇は語るまでもないだろう……)




戦刃「私、どうしてこんなに駄目なんだろう……」

苗木「こ、これは戦刃さんが悪いわけじゃないんだよ……そ、そうだ、運だ!運が悪いだけなんだ!」

戦刃「運……?」

苗木「そうそう、ボクって周りから『超高校級の不運』なんてからかわれるくらいだから。だからいつものことなんだよ、気にしないで!」

戦刃「そんな……私を励ますために無理なんてしなくていい……」

苗木「無理なんてしてないよ。それにボクがしっかりしなきゃ戦刃さんも落ち込んだままになっちゃうし」

苗木「主人の落ち込んだ顔を見続けるなんて、メイドとしては嫌なことでしょ?」

戦刃「うん……。私は明るい顔の方が見ていたい」

苗木「よし、それじゃもう湿っぽい話は無しだ!夕食でも食べて気分でも落ち着かせよっか。今日は何食べる?戦刃さんが好きなレーションでもいいんだよ」

戦刃「あ……じゃあレーション、食べたい」

苗木「なら早速用意しよう。あ、ボクも自分でレーション温めてみたいな。こういう経験って滅多に出来ないし戦刃さんに教えて欲しいんだ」

戦刃「分かった……今持ってくるね……」

戦刃「あの……ご主人タマ?」

苗木「どうしたの?」

戦刃「ありがとう……」

苗木「どういたしまして」

          中




                    下書きが
                    尽きました



          断

>>19
ありがとうございます
もっと書きたくなってもいいんだよ?

          再




                    水・木くらいには
                     終わらせる予定



          開




苗木「ふわ~ぁ。残る日数も1日とあとちょっとか。さて今日も頑張るか……ん?」


戦刃「……zzz」


苗木「……うわああああ!な、なんでこんな……いてっ!」ドサッ

戦刃「ん……あれ、苗木くん?」

苗木「いたた……。なんでキミがボクのベッドに……」

戦刃「そ、それは……眠かったから、つい……」

苗木「ついって……。でも、よく考えたら2日連続で徹夜は厳しいもんな……」

戦刃「ごめんなさい……。勝手な行動とっちゃって……」

苗木「いや、気にしないで。ボクの配慮が足りなかっただけだから」

戦刃「あ、そうだ。今日はその……少し別行動を取らせてほしい」

苗木「別行動?でも授業が……」

戦刃「昨日、ご主人タマの教科書はいくつかダメになっちゃったでしょ。それで代わりに私の教科書を使って欲しいの。そうすれば私は授業に出る意味が無くなるから……」

苗木「でも、他の人から教科書を見せてもらえばいいんじゃ?」

戦刃「えっ……そ、それは、その、どうしても外せない用事だから……」

苗木「そうなんだ。じゃあ欠席に関してはボクからみんなに伝えておくよ」

戦刃「う、うん。ありがとう……。あ、それと鍵も貸してほしいんだけど……」

苗木「鍵?」

戦刃「誰かを中に入れるわけじゃないから……。お願い」

苗木「別に構わないよ、ハイ。それじゃ、朝食でも食べに……」

戦刃「あ、さ、早速用事が……。ご主人タマは先に行ってて」

苗木「え?今からなの?」

戦刃「ごめんなさい……」

苗木「一体何なんだろう……」




戦刃「……昨日考えに考えぬいて思いついたこと」

戦刃「それはメイドに詳しい人に話を聞くこと」

戦刃「私がメイドとしての技術を上げればきっとご主人タマの役に立つことができるはず」

戦刃「そして私のクラスメイトにはメイドに詳しい人がいる」

戦刃「その人に話を聞けば……」


ピンポーン……


山田「はいはい、こんな朝から誰ですかな……おや、戦刃むくろ殿」

戦刃「山田くん、ちょっと相談したいことが」

山田「ぼ、僕に……ですか?」




山田「なるほど……。戦刃むくろ殿はご主人である苗木誠殿に迷惑をかけてばかりいる、と」

戦刃「山田くんってメイドに詳しそうだから……アドバイスを頂けると嬉しい」

山田「あー……まあ確かに詳しいと言えば詳しいですが、そもそも二次元のメイドと三次元のメイドは似て非なるものですからねえ……」

戦刃「え……じゃあアドバイスは出来そうにない?」

山田「力になれずにすみません……。こういうのは従者の扱いが上手そうなセレス殿や実際にメイドを雇ってると思われる十神白夜殿の方がお詳しいでしょうな」

戦刃「でも、あの2人から話聞けるかな……」

山田「ふむ……。しかし二次元のメイドも三次元によって成り立っている面もありますからねえ……。戦刃むくろ殿が良ければ僕のメイドの知識を説明させていただきたいのですが」

戦刃「この際、何でも構わない……」

山田「では、メイドの仕事と言えば炊事洗濯掃除!これにつきますな」

戦刃「なんかお母さんみたい」

山田「雇われ人ですからな。家政婦と言えば分かりやすいでしょう」

戦刃「なるほど……。でも私、家事なんてまともに出来ないよ……」

山田「そこがまた魅力なのです!家事のプロフェッショナルであるメイドが家事ができない!真面目で仕事が出来そうな見た目だとなお良し!」

山田「他にも家事は出来るけど普通ではありえないようなミスをしまくるドジッ娘タイプもありますぞ」

戦刃「ご主人タマはどういうのが好みなんだろ……」

山田「やはり、苗木誠殿ならば誠実に尽くすタイプが好みかと」

戦刃「誠実に……?」

山田「ひた真面目に仕事に打ち込む姿……。それこそが彼の戦刃むくろ殿に望む姿かもしれませんぞ」

戦刃「そっか……私が仕事をする……それだけでいいんだね。難しいと思うけど、頑張ってみるよ」

山田「ご武運を祈っております。……そうだ、ずっと気になったことがあったんですよ」

戦刃「……何?」

山田「そのご主人タマという呼び方はアルたんが使っていたはずですが……何故数ある呼び方からそれを?」

戦刃「……苗木くんの好みらしい」

山田「ほほう、これは良いことを聞きました。やはり苗木誠殿も二次元に興味があると見ました」

戦刃「わ、私部屋に戻るね。ありがとう、山田くん」

食堂


苗木「ハクション!」


不二咲「わっ!苗木君、風邪引いたの?」

苗木「いや、誰かが噂してるんだろうな。よくない噂だと思うけど」

舞園「苗木君の噂ですから、きっと良いことだと思いますよ」

不二咲「うん。苗木君はみんなと仲良いからね」

苗木「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」

舞園「ところで、今日は戦刃さんの姿が見当たりませんけど……?」

苗木「何でも、用事があるから別行動を取らせてほしいって」

不二咲「戦刃さん、頑張ってるもんね。僕もああいう風になってみたいなぁ……」

苗木「確かに不二咲クンなら似合いそいだね」

舞園「不二咲君、かわいいですし」

不二咲「メイド服の話じゃないんだけどぉ……」

苗木「ごめんごめん。でも、本当に似合いそうだから」

不二咲「僕は男だってば……」

舞園「苗木君はメイド服に興味があるんですか?それなら私も着てみましょうか……」

苗木「えっ、舞園さんが!?」

舞園「あ、今想像しましたね?冗談ですよ」

苗木「だ、だよね……」

不二咲「でも、舞園さんなら似合いそうだよねえ」

舞園「苗木君は、このクラスの女子がメイド服を着たら、誰が一番似合うと思います?」

苗木「え、ええっと……それは……」

舞園「それは?」

苗木「それは……」

不二咲「それは?」

苗木「そ、それ……ぶあっくしょん!」

不二咲「うわっ!」

舞園「きゃっ!」

苗木「ま、また誰か噂してるのか……?嫌な予感がするぞ……」

苗木の部屋


戦刃「炊事……洗濯……掃除……どれがいいんだろう」

戦刃「料理は出来ないから……炊事は無し」

戦刃「洗濯は……ご主人タマが自分でやっちゃうし」

戦刃「となると……掃除すればいいのかな」

戦刃「よし、私、頑張る」


数時間後


戦刃「……あまり手応えがない」

戦刃「盾子ちゃんが男性の部屋には謎の縮れ毛やベッドの下に本があるって言ってたけど、それらしいものは見つからない」

戦刃「ご主人タマ、意外とマメに掃除するのかな」

戦刃「……!何かいる!」

戦刃「あれは……虫?換気してる間に入ってきたのかな」

戦刃「気にするほどでもないか」

戦刃「あ、でも虫は厄介な病原菌を運んでくることがあるってフェンリルで聞いたことがある……」

戦刃「もし、ご主人タマが寝ている間に刺されたりでもしたら……」

戦刃「……ならば排除するまでのこと」

戦刃「何か飛び道具は……この椅子で」

戦刃「狙いを定めて……投げる!」ブン


ガシャーン……


戦刃「あっ」

戦刃「ど、どうしよう……。虫は倒したけど椅子が壊れちゃった……」

戦刃「ご主人タマが戻ってくる前に修理を……はっ!」

戦刃「今、向こうの棚で何か動いた気が……」

戦刃「ならばひと蹴り入れて威嚇する!」ドゴッ

戦刃「なんだ埃か……。まだ掃除したりなかったかな」

戦刃「ってあれ?棚が……真っ二つに……」

戦刃「こ、これも修理すれば直る……よね?」


戦刃「あ!今度は観葉植物の近くで何かが!」バキッ


戦刃「ベッドの下で気配が……」グシャッ


戦刃「ミニテーブルが……」 ガスッ


戦刃「…………」

戦刃「ど、どうしよう……部屋が……」

戦刃「バレたらきっと怒られる……。何とかして片付けないと」

戦刃「あ、でもそろそろ放課後……ご主人タマが帰ってきちゃう……。そ、そうだ時間稼ぎをすれば……」

戦刃「うう……頑張れ、私」




苗木「あ、戦刃さん。用事は終わったの?」

戦刃「う、うん……一応。あ、えっと、ご主人タマはこの後の予定とかある……?」

苗木「実は、セレスさんとゲームする予定があって」

戦刃「そ、そう……?良かった……」

苗木「何が?」

戦刃「こ、こっちの話だから気にしないで……」

苗木「そういえばセレスさんが戦刃さんの働きっぷりを見たいって言ってたんだよ。一緒についてきてくれるかな?」

戦刃「え、ええ!?で、でも私、用事が……」

苗木「あれ?もう終わったんじゃないの?」

戦刃「あう……そういえば……。分かりました……行きます……」

苗木「どうしたんだろう、戦刃さん」

娯楽室


セレス「あら。逃げずに来てくれたんですね、嬉しいですわ」

苗木「逃げたら後が怖いからね」

セレス「そして……改めて近くで見ると似合ってますわよ、戦刃さん」

戦刃「あ、ありがとう……」

セレス「それで苗木君。メイドとして働かせている以上、ここ数日で彼女の働きは良いものになってるはずですわよね?」

苗木「えっと……まあ……それなりには」

セレス「でしたら戦刃さん、さっそくロイヤルミルクティーを淹れてもらえないでしょうか」

戦刃「え……。でも私、苗木くんの専属メイドだし……」

セレス「苗木君はわたくしのナイト候補です。そのナイト候補のメイドはわたくしのメイドと等しいことですわ」

苗木「自分で淹れるって選択肢は無いんだね」

セレス「戦刃さんが淹れてる間にわたくしたちは優雅にゲームを楽しむとしましょう」

苗木「一方的な搾取の間違いじゃ……あれ、セレスさんの後ろにパソコンがあるけど、あんなのあったっけ?」

セレス「ああ、あれですか。何でも学園が極少数の意見を取り入れて用意したゲームだとか。わたくしはギャンブル以外のゲームには興味ありませんから詳しいことは分かりませんわ」

苗木「どれどれ、ボクがやってみるか。……何だこれ、英語?アメリカのゲームかな」

戦刃「このタイトル……もしかしてFPS?」

セレス「戦刃さんはご存じですの?」

戦刃「うん。ファーストパーソンシューター、略してFPS。一人称視点で操作する3Dゲームで戦車や銃器の作りがとても」

セレス「もう結構ですわ。黙ってくれません?」

戦刃「やっと設置されたんだ……。何度も頼み込んだ甲斐があった」

苗木「極少数の意見って戦刃さんのことだったのか……」

セレス「それの正体が分かったところでわたくしには何の影響も及ぼしせんがね。というわけで早くロイヤルミルクティーを淹れてきてくださいません?」

苗木「戦刃さん、悪いけど……」

戦刃「う、うん……」チラッ

苗木「…………」

戦刃「…………」チラッ チラッ

苗木「やりたいの?」

戦刃「うん……」チラッ

苗木「はあ……。ボクが淹れてくるよ……」

戦刃「あ、いや、わ、私が……」

苗木「その状態だと仕事に支障を来すかもしれないから……」

戦刃「ご、ごめんなさい……」

セレス「こんな役立たずなメイド、初めて見ますわ」




苗木「持ってきたよ……」

セレス「まったく退屈でしたわ。戦刃さん、わたくしの声が聞こえてないみたいでしたから」

苗木「そんなにのめり込んでるのか……」

セレス「わたくし、苗木君が来るのをどれほど待ち望んでいたことか……」

苗木「セレスさん……」

セレス「ロイヤルミルクティーを飲まないと落ち着かないものですから」

苗木「そっちか……」

セレス「……?このロイヤルミルクティー、少し薄くありません?」

苗木「あれ、いつも通り淹れたはずなんだけどな……」

セレス「苗木君、あなたはCランクの人間なのですから常に最高のロイヤルミルクティーを用意できるようにしてもらわなくては。今すぐ、作り直してもらえません?」

苗木「…………」

セレス「苗木君?聞いてますか?」

苗木「あ、ああごめん、何だっけ」

セレス「はあ……。メイドがメイドなら主人も主人というわけですか」

セレス「分かりました。わたくしが少しギャンブルであなたの目を覚まさせてあげるとしましょう」

苗木「で、できれば手加減してもらえるとありがたいんだけど……」




戦刃(学園でFPSができるなんて……今日はついてるかも)

戦刃(あれ、でも他にやることがあった気が……何だっけ)

戦刃(ま、いいか。忘れるってことは大した用事じゃないはず)




苗木「だいぶ取られたな……。来週の食事代は厳しくなりそうだ」

戦刃「いざとなったら私が貸してあげる……」

苗木「ありがとう、助かるよ」ガチャ

苗木「ってうわああああ!?何だよこれ!部屋が……部屋が!」

戦刃「あ……忘れてた」

苗木「一体誰が……まさか本当に襲撃者が!?」

戦刃「あの……」

苗木「でも何かが盗られた形跡があるわけでもないな。ケータイとサイフは持ち歩いて正解だった……」

戦刃「あのー……」

苗木「でも待てよ。犯人はどうやって部屋に入ったんだ?ボクが授業を受けてた時、鍵は戦刃さんが持ってたはず……。セレスさんに会った時はボクが持ってたから……」

戦刃「あの!」

苗木「うわっ!ど、どうしたの急に。まさか犯人に心当たりが」

戦刃「ご、ごめんなさい!これやったの、私……」

苗木「え?戦刃さんが?」

戦刃「ご主人タマの部屋を掃除しようとしていつも以上に警戒していたんだけど、いつの間にかこんなことに……」

苗木「い、いつの間にか……」

戦刃「ごめんなさい。私、本当に……」

苗木「し、失敗は誰にでもあるよ!これぐらい気にすることじゃないって!」

戦刃「え……?」

苗木「元々、この家具も取り換え時だったし、その機会が訪れたと考えればね?」

戦刃「なんで……?」

戦刃「なんでこんなに私に優しくするの?私は……こんな駄目なのに……残念なのに……」

戦刃「人を傷つけることしか出来ないのに……」

苗木「それは違うよ、戦刃さん」

苗木「キミは誰かの役に立てる。キミはボクの知らないことを知ってるんだから。その知識が偏っていようと、ちっぽけなことだろうと、誰かの役に立つ日は必ずくるよ」

戦刃「苗木くん……」



戦刃「私は……」

深夜


戦刃(苗木くん……。苗木くんは本当に優しい人だ)


戦刃(こんな私でもそばに置いてくれるんだから)


戦刃(でも、その優しさが苦しい。私が苗木くんのそばにいる限り、私は彼に迷惑をかけることしか出来ない)


戦刃(せめて盾子ちゃんみたいにオマエなんか役立たずだと、メイドなんてやめてしまえと、そう言ってくれれば諦めもつくのに……)


戦刃(でも苗木くんはそんなことはしない。私もそんな彼に甘えてるところがあるのかもしれない)


戦刃(だから、私がこれ以上苗木くんに迷惑をかけないようにするためには……)





戦刃「ごめんなさい……。苗木くん」ガチャ





戦刃(苗木くんから離れること。それが私の唯一できること)

          中




                    また下書きが
                     尽きました



          断

          再




                    今日中には
                    終わるはず



          開




苗木「う、うう……」

苗木「朝か……?なんか、頭が痛いな……」

苗木「ここ数日いろいろあったからかな……。でも、それも今日で終わりか」

苗木「戦刃さん、今日も一緒に頑張ろっか……ってあれ、いない?」

苗木「どこ行っちゃったんだろう……」


食堂


苗木「ここにも来てないか……」

江ノ島「おーっす苗木ー。朝からしけた面してんねー」

苗木「江ノ島さん、ちょうどいい所に。戦刃さんを見なかった?」

江ノ島「んー。見てねーや」

苗木「まいったな……。本当にどこ行っちゃったんだ……?」

江ノ島「なになにー?お姉ちゃんに何か用事でもあんの?」

苗木「まあ、一緒にご飯を食べようと思ってね。それに、彼女はボクのボディーガードをするって張り切ってたのに」

江ノ島「あー、そういやアンタたちメイドごっこみたいなことやってたんだっけ?すっかり忘れてたわ」

苗木「キミが提案してきたんじゃないか……」

江ノ島「じゃあお姉ちゃんは仕事ほったらかしてどっか行っちゃったわけだ。アイツのことだし、自分の残念っぷりに絶望してんじゃないの?」

江ノ島「ま、あんな残念なヤツが周りをうろちょろしていたらウザくてしかたないもんね。せいせいしたんじゃない」

苗木「むしろ不安だよ。彼女になんかあったと思うと……」

江ノ島「アイツ軍人だし肉体的な問題はそうそう起こらないっしょ。先に教室行ってるかもしれないし、さっさと飯食って行きましょ」

苗木「大丈夫かな……」



江ノ島(でも、精神的な問題はホントどうしようもないからね、アイツ)

戦刃の部屋


戦刃「…………」

戦刃「もう……嫌だ……」

戦刃「これ以上、誰かに迷惑をかけたくない……」

戦刃「やっぱり無理だったんだ……私が誰かの役に立つなんて……」

戦刃「苗木くんの役に立てないのに盾子ちゃんの役に立つなんてもっと無理だよ……」

戦刃「こんなんじゃ……盾子ちゃんを理解するなんて到底出来ない……」

戦刃「……私の存在価値ってなんだろう」

戦刃「……やめよう。考えても答えが出てくるわけじゃないんだから……」




苗木「結局、教室にも戦刃さんはいなかったな……」

「苗木君」

苗木「江ノ島さんは心配いらないって言ってたけど、やっぱりボクは心配だよ……」

「苗木君、前を見て!」

苗木「えっ、前?……いてっ!」

霧切「何をやってるの、あなたは」

苗木「き、霧切さん……。ちょっと考え事をね……」

霧切「だからといって壁にぶつかるまでするのはどうかと思うわ。私の言葉も届いてなかったみたいだし」

苗木「あ、あはは……」

霧切「それに、あなたは近頃ボーッとすることが多いわ。今日の授業もまともに聞いてなかったでしょ」

苗木「よく見てるんだね……」

霧切「変なこと言わないで。その行動が目立つから目に留まっただけよ」

苗木「うぐ。そうか……。それよりもボクに用事があったんじゃ?」

霧切「ええ。あなたがこれ以上ボーッとしているのは見てられないから今日はもう帰った方がいいんじゃないかと言いに来たの」

苗木「そ、そんな……ボクは元気だよ!」

霧切「そうは言うけどみんな心配してるのよ?少なくとも保健室で休むくらいのことはした方がいいと思うわ」

苗木「でも……」

霧切「強がっていてもいずれ私たちに迷惑をかけるという可能性があるということは忘れないで」

苗木「分かったよ……今日は早退する。ありがとう、わざわざ言いに来てくれて」

霧切「……お大事に」




苗木「……確かに霧切さんの言う通りだったかな。今日は調子が悪いみたいだ」

苗木「戦刃さんも見つからないし、不安の種は広がるばかりだよ……。うう、頭痛までしてきた……」

苗木「今日はもう寝るか……」

苗木「あ、でもその前に食堂で水分補給でもしとこうっと」




戦刃「…………」

戦刃「あれ……私、寝てた?」

戦刃「結構時間経ってる……みんなどうしてるんだろ」

戦刃「いや、私が気にしても意味なんかないか」

戦刃「それにしても……お腹すいたな……」

戦刃「倉庫に食べ物があったはず……。取ってこよう」

戦刃「…………」

戦刃「でも、怖い……」

戦刃「今、誰にも会いたくない……誰かを傷つけたくない……」

戦刃「もう……嫌……」



戦刃「いつの間にか対人恐怖症の引きこもりになってた……」

戦刃「こんな姿をフェンリルのみんなに見せたらどんな反応するんだろうな……」

戦刃「……どうしよう」

戦刃「……ん、あそこにあるのって」

戦刃「レーションだ……。いつ部屋に閉じこめられてもいいように用意してたんだっけ……」

戦刃「そういえば、苗木くんも美味しいって言ってくれたなあ……」

戦刃「味を気に入って、自分で温めるって言って、二人で食べて……。苗木くん、喜んでた」

戦刃「もう一度、食べたい……」

戦刃「…………」

戦刃「なんだろう、今なら普通に外に出られる気がする」

戦刃「私、そこまでしてレーション食べたかったのかな……。それとも苗木くんを思い出して少し、前向きになれたからかな……」

戦刃「うん、今なら前に進める。そんな気がする……」




戦刃「やっぱり授業中だから誰もいないのかな……」

戦刃「いや……かすかに気配を感じる。食堂の方……」

戦刃「一体誰が……」



苗木「……ぅ……ぐ……」



戦刃「苗木くん!」

戦刃「大丈夫!?しっかりして!」

戦刃「ひどい熱……。へ、部屋に運ばなきゃ!」


戦刃の部屋


戦刃「えっと、えっと……まずは体温を計って……いや水分を……いや汗を……」

戦刃「うう……落ち着け……落ち着け……」

戦刃「そうだ、フェンリルでも熱で倒れた人は何人もいた。その人たちを看病したことを思い出せば……」

戦刃「待ってて苗木くん。必ず助けるから……」




苗木「う、うう……」

苗木「ここは……?」

石丸「みんな!苗木くんが目を覚ましたぞ!」

舞園「本当ですか!?」

十神「愚民め……。いつまで寝ているつもりだ」

山田「心配しましたぞ、苗木誠殿」

葉隠「俺の占いによれば後2ヶ月は目を覚まさないはずだったんだが……外しちまったか?」

苗木「みんな……どうしてここに?」

朝日奈「戦刃ちゃんが呼んできてくれたんだよ」

桑田「『苗木くんが死んじゃう!』なんて言ってきてよ。超焦ったぜ」

大神「実際はただの風邪だったがな……。授業中の乱入はいささか驚いたぞ」

大和田「その授業中断してまでここに来たんだけどな」

苗木「戦刃さん……」

戦刃「ごめんなさい苗木くん……私……」

苗木「謝る必要なんて無いよ、キミはボクを助けてくれたんだから。ありがとう」

戦刃「ご、ご主人タマを助けるのはメイドの仕事だから……」

セレス「戦刃さんも使えないメイドから使えなくはないメイドにランクアップしたんじゃないでしょうか」

腐川「戦刃、見せつけてくれるのね……あんたと苗木の主従関係を!あ、あたしと白夜様の方がもっと深い愛で結ばれてるわ!」

不二咲「戦刃さん、本当にすごいや……」

霧切「彼女、おととい見た時よりいきいきしてるわね」

戦刃「ねえ苗木くん。私、役に立てた?」

苗木「うん。言ったでしょ、キミは誰かの役に立てるって」

戦刃「ありがとう……。私、本当に嬉しい……」





江ノ島「苗木が助かった原因はお姉ちゃんが引きこもってたから……。お姉ちゃんが引きこもってたのは自分の残念っぷりに絶望したから……。つまり苗木はお姉ちゃんの残念っぷりに救われたってわけ?」

江ノ島「超絶望的だね。アタシなら自殺考えるわ」

数日後


江ノ島「うーっす、お邪魔するよー」

戦刃「お、お邪魔します……」

苗木「あ、江ノ島さんに戦刃さん」

江ノ島「すっかり風邪も治って元気そうだね」

苗木「これも戦刃さんのおかげだよ。あの時は本当に助かったよ」

戦刃「か、風邪くらいで大げさだよ……。それに私は大したことしてないし……」

江ノ島「せっかく褒められてんだから胸はって堂々としなさいよ。あ、はる胸がねーのか」

戦刃「もう、盾子ちゃん!」

苗木「あはは……。と、とにかく今日戦刃さんにお礼がしたくて」

戦刃「お、お礼なんて……。むしろ私がお礼をしなきゃいけないくらいなのに……」

江ノ島「でもアンタ結局残念なのは変わってないよね」

戦刃「ごめんなさい。せっかく盾子ちゃんが私のために考えてくれたのに……」

江ノ島「は?アンタのため?んなわけねーじゃん。面白そうだから適当に考えたに決まってんだろ」

戦刃「ええっ!?」

苗木「やっぱりか……」

江ノ島「こんなことにも気づかないなんてホント残念だわー。ま、賢いヤツを動かすよりバカなヤツを動かす方が100万倍楽だから、アンタにはそのままでいてもらわないとね」

江ノ島「結局どっちもアタシにとっては楽なことに変わりは無いんだけど!アハハハハ!」

戦刃「よかった。盾子ちゃんは今のままの私の方が好きなんだね……」

苗木「戦刃さんって江ノ島さんに関することだけは前向きになれるよね……」

江ノ島「で、苗木はコイツのために何ができんの?やっぱり体?」

苗木「やっぱりって……ボクをなんだと思ってるんだよ。一応、戦刃さんの望むことならできる限りのことはするよ」

戦刃「で、でも……」

江ノ島「消極的だねえ。こういう時はズバッと『彼氏になってください!』って言うもんでしょ」

戦刃「か、かれっ……!?無理だよ……」

江ノ島「じゃあ『彼女にしてください』で」

戦刃「ぜんぜん変わってない……」

苗木「江ノ島さん、あまり変なことを言われても困るんだけど」

江ノ島「でも、コイツだと残念なお願いしそうだからねー。どうせ『一緒にレーション食べてください』とでも言おうとしてたんでしょ」

戦刃「な、なんで分かったの……?」

江ノ島「はあ……。コイツの相手疲れるわ」

戦刃「えっと……うーんと……」

苗木「ゆっくり考えていいんだよ。なんならまた後日にでも」

戦刃「ううん、大丈夫。決まったから……」



戦刃「そ、その……膝枕、してください……」



苗木「ひ、膝枕?」

江ノ島「えー……そんなんでいいんだ」




苗木「この体勢でいいのかな?」

江ノ島「あーそうそう。そのままここに頭乗っけて……。それにしたって膝枕って。他にもいいのあったでしょ」

戦刃「私、あまり役に立てなかったから……。これくらいのことで十分かなって」

江ノ島「控えめなヤツ。そんなんじゃいつまで経っても彼氏できねーぞ」

戦刃「盾子ちゃんには関係ない……」

苗木「大丈夫だよ。戦刃さんにもいつか素敵な人が現れるよ」

戦刃「そんな未来は……多分来ない」

苗木「えっ、そんなことは無いって」

戦刃「だって私は今を見ていたいから……」

苗木「どういうこと?」

戦刃「……こっちの話」




苗木「それにしても足が痺れてきたな……。戦刃さん、そろそろ終わりにしてもらえると……」

戦刃「……zzz」

苗木「寝てる……」

江ノ島「こりゃいいや。落書きしちゃおーっと」


戦刃「……うう……苗木くん……ダメ……」


苗木「? 寝言かな?」


戦刃「そこはダメだよ……苗木くん……」


苗木「ええっ!?」

江ノ島「あれま。中々ピンクな内容の夢見てんじゃないの」


戦刃「そこは地雷があるから……近づいちゃダメ……」


苗木「ピンクどころか血で真っ赤に近い内容じゃないか」

江ノ島「夢ん中にまで戦争行くなんてホント残念なヤツだな」


戦刃「苗木くん……たってるよ……」


江ノ島「だとさ。なんかやましいこと考えてる?」

苗木「そ、そんなわけないだろ!」


戦刃「肩に銃弾……当たってる……」


苗木「あれ、ボク撃たれた?」


戦刃「ごめんなさい……私をかばって……」


江ノ島「コイツの夢ん中の苗木どんだけスペック高いんだよ」

苗木「戦刃さんらしいと言えばらしいけどね」

江ノ島「平和だね。コイツの頭の中は戦争という名の平和だよ」

苗木「平和なのはいいことだと思うけど?」

江ノ島「刺激が足りないんだよ刺激が。……あ、またなんか喋るぞコイツ」


戦刃「ごめんなさい……迷惑かけて……」

戦刃「ありがとう……苗木くん……」





戦刃「……大好き」





以上です
一部のキャラだけセリフが少なっちゃってごめんなさい
他のキャラのメイド服?そ、そのうち考えるよ、多分ね




そしてここまで読んでくださった読者の皆様に感謝を
ありがとうございます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年01月16日 (金) 00:33:19   ID: VA44nKrI

残姉ちゃん可愛すぎる

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