P「いつかあなたが目指した世界は」 (74)


黒井「残念だったな」


黒井「大賞を獲ったのはフェアリーではなく竜宮小町」


黒井「結局あのプロデューサーは無能だったんじゃないか?」


黒井「まぁ、961プロを裏切った当然の報いだ」


響「黙れ……お前に何が分かる……」


響「プロデューサーは言ってくれたんだ…!」


響「新時代を創るトップアイドルを一緒に目指そうって!!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420727375


黒井「例えどんなプロセスがあろうと……」


黒井「勝たねば何の意味もない」


黒井「お前たちの信頼とやらも相応しくないということだろう」


黒井「今なら分かるだろう、我々のやり方が正しかった、と」


響「違うッ!」


響「あんな汚い勝ち方をしてた自分たちのステージを」


響「プロデューサーは綺麗だって言ってくれたんだぁっ!!」


―――――――――

―――――

―――



アイドルアカデミー大賞 竜宮小町


律子「本当に……私がハリウッドに行っていいんでしょうか」


P「未来ある若者が行くのは当然だろう」


律子「でも、あなたの方が私より……」


P「勝ったのは律子だ。日本一優秀なプロデューサーはお前だよ」


律子「……分かりました。留守の間、みんなをよろしくお願いします」


―――――――――

―――――

―――



律子が研修へ旅立って、一ヶ月後


765プロ



小鳥「最近のフェアリー、いろんな雑誌でとり上げられていますね」


P「ええ、底力を見せてきました」


伊織「勢いは大したものだわ」


P「追いつかれないか不安か?」


伊織「近づいてきたら叩き潰すだけよ」フンッ


小鳥「竜宮小町は唯一無二のトップアイドルだもんね、伊織ちゃん」ニコ


小鳥「もはや私には想像できない世界よ…」ピヨヨ


伊織「ま、そんなに変わったことはないんだけど」


P「3人はかなり順調だよなぁ」


伊織「まあね。それなりに余裕があるから、もっと忙しくしてもいいぐらいだわ」


P「んじゃあもう少しオファー増やしてみるか」


小鳥「でもプロデューサーさん、無理だけはしないように、ですよ?」


P「いえいえ、俺は大丈夫ですよ」


P「竜宮はセルフマネジメントに秀でてますから、嘘のように負担は少ないんです」


伊織「そうよ。だからあんたはもっとフェアリーに注意した方がいいわ」


P「気を抜いているつもりはないぞ」


伊織「そ。ならいいけど、もっとやり方は変えるべきかもね」


伊織「美希たち、この頃退屈そうにしてるから」


――――――――

―――――

―――



三日後


とあるうどん屋



P「おっ、本当に旨いな」ズルズル


静香「言ったじゃないですか」ズルズル


翼「さっすが静香、利きうどんだね♪」ズルズル



志保「プロデューサー、ここでのんびりしていていいんですか?」
   

可奈「あっ、今日は先輩のオーディションって言ってましたよね?」ズルズル


P「うん。もう一人でなんでもできるからな。あいつらは」


P「今はお前たちが危なっかしくて目を離せん」


翼「そうそう未来ってば、この前も機材に突っ込んだもんねー」


未来「ちょっ、それはもう蒸し返さないって言ったじゃん!」


携帯<テッテッテー♪


P「お、ちょっと悪い」



P『音無さん、どうかしましたか?』


小鳥『プロデューサーさん、それが……』


――――――――

―――――

――


小鳥「――それで、相当ショックだったみたいで……」


P「そうでしたか……まさか響がダンスオーディションで負けるとは」


P「相手が876プロだったとはいえ、響のヤツ、凹んでるだろう……」


小鳥「今、奥のソファにいます」


P「響、どうして選ばれなかったと思う?」


響「うぅ、分かんない…全力でいったのに……」ズーン


P「そうか……こんな時に近くにいてやれなくてごめんな」


響「負けるの、久しぶりだったから……辛いなぁ」ズーン


P「終わったもんはしょーがない。次のために作戦を練り直そう」ナデ


響「IA大賞の日にね…」ポツリ


P「なに?」


響「グランプリの時、黒井社長に声をかけられたんだ」


響「……“勝たなきゃ、信頼関係もなんの意味もない”って」


P「……」


P「響は、そう思うのか?」


P「今回の敗北で、961時代から積み上げてきたものも」


P「765プロに来てフェアリーで築いたモノも、全部意味なかったと思った?」


響「ううん、ゼンゼン」


響「でもね……」


響「でも、もし自分たちを見てる人達が」


響「ライブバトルなんかで負けちゃった時に、そんな風に思ったとしたら」


響「それはすごい怖いことで、嫌だなって、思っちゃたんだ」


P「……そうだな」


響「だからプロデューサー、自分たちの関係がそんなヤワなもんじゃないって」


響「みんなに分かってもらうためにも、これからもよろしく、だぞ」


P「ああ、任せろ。俺がお前たちをもっと強くする」


P「もう二度と、負けないように」


――――――――

―――――

――



数日後


765プロ



美希「ミキ、お仕事もうちょっとだけ、がんばりたいのになぁ~」グデー


伊織「あんたがやる気出してるなんて珍しいわね」


美希「最初はもっと楽に~って思ってたけどね」


美希「竜宮小町に負けっぱなしは、やなの」


伊織「へぇ」


美希「でも最近は特に頑張るようなことがないの……」


美希「才能を腐らせる……」ボソッ


伊織「何言ってんの?」


美希「このままじゃ、でこちゃん達に差をつけられちゃうの」


伊織「そんなことないわよ。あとでこちゃんやめなさい」


美希「いおりん」


伊織「それもダメ!」


伊織「まぁ、好きなようにやってみればいいんじゃない?」


伊織「あんたがちゃんとプロデューサーに言えば、きっとどうにかしてくれるはずよ」


伊織「アレはアレで、結構優秀なんだから」


美希「……今ね、ホントはよく分かんないんだ」


美希「ミキはただ、そのとき自分がしたいって思ったことを今までしてきただけで…」


美希「だから……」


伊織「じゃあOKじゃない」


美希「へっ?」


美希「どういうこと…?」


伊織「美希はね、まだ最初のペンギンってことよ」


伊織「この業界のルールとか、後のこと考えて身動きとれないなんて、らしくないもの」


伊織「したいことをする。それでいいじゃない、美希なんだから」


美希「伊織……ありがとう」


伊織「この場合、あんたのためじゃないんだからね!……とか言った方がキャラ的にはいいのかしら」


美希「でこちゃんがツンデレって割と後付けだと思うの」


伊織「知ってるわよ……なんでこうなっちゃったのかしら」ハァ…


――――――――

―――――

――



翌日


送迎中



美希「ね、プロデューサー」


P「なんだ?」


美希「ミキね、なんか飽きてきちゃったかも」


P「ちゃんと話してごらん?」


美希「最近ずーっと同じ景色ばっかりなの。キラキラしてて、楽しいんだけどね……」


美希「でもこのままじゃ、いつまでたっても竜宮小町に追いつけないの」


P「……」


美希「よーするに」


美希「ミキ的には、もーっとキラキラしたいって感じかな!」


P「……そうだな。たしかにその通りだ」


――――――――

―――――

――



数日後


765プロ・社長室



P「以上が提案するツアーの概要になります」


高木「……うむ、非常に良い」


高木「だが、これだけの規模となると、関わってくる団体の数も尋常じゃない」


高木「君はそれを統率していく覚悟はあるのかね?」


P「今回のツアーには、当然、俺の進退をかけます」


P「何が何でも、フェアリーが日本一だってことを、見せてやりたいんです」


高木「……分かった」


高木「シアターのマネージャーも、何人かプロジェクトのサポートに回そう」


P「感謝します、社長」


高木「ははは、予感はしているよ。君なら絶対に成功させられる、と」


――――――――

―――――

――



二日後


765プロ



高木「プロデューサー君は一ヶ月ほど別の場所で仕事をすることになった」
  

P「すまない、大事な打ち合わせとかは、ちゃんと出るからな」


貴音「もしや身になにかあったのですか?」


P「そういうことじゃないんだけど、ちょっと忙しくなりそうでな」


高木「何かあったらいつでも連絡をいれて構わないとのことだ」


あずさ「珍しいことですね……」


小鳥「送迎や付き添いが必要な時は、シアターのマネージャーさんが行くから安心してね」


響「何するつもりなんだろうな」


美希「んー分からないけど、ちょっとワクワクするの」


亜美「兄ちゃんのことだから、きっとよからぬ事に違いない……」ンフフ


伊織「ま、いいけど、不在は事務所に支障がでない程度にね」

(1です。読んで下さった方々ありがとうございました。明日また続きますzzz)

一旦乙です

>>12
最上静香(14)
http://i.imgur.com/XcP2c9j.jpg
http://i.imgur.com/wQzz8Tv.jpg

伊吹翼(14)
http://i.imgur.com/1Flgaic.jpg
http://i.imgur.com/lhZlUUE.jpg

北沢志保(14)
http://i.imgur.com/iinWIGe.jpg
http://i.imgur.com/NFQGnfV.jpg

矢吹可奈(14)
http://i.imgur.com/O7x2SOO.jpg
http://i.imgur.com/cSfghlm.jpg

春日未来(14)
http://i.imgur.com/4Tgk3JW.jpg
http://i.imgur.com/tb7mq8u.jpg



それから一ヶ月が経って


765プロ



P「ツアーの下準備、大筋は出来ました」


高木「御苦労さま。君の信頼の厚さが成しえる技だね」


P「いえ、今回は高木社長のおかげと言うべきかと」


P「予定に無いことにも関わらず、“高木さんの765プロならば”、と多くの企業様が協力してくださりました」


高木「……役に立てたようで嬉しいよ」


高木「しかしこのツアー……彼女たちにとっては試練となりそうだね」


小鳥「プロデューサーさん、今回ちょっと、フェアリーの負担が大きすぎるんじゃないかって」


小鳥「私は思うんですけど……」


P「承知の上です。これはフェアリーにプレッシャーをかけて、彼女たちの才能を磨きあげるためのもの」


P「美希たちはアイドルとしては一流ですが、竜宮やジュピターの域にはまだ届きませんから」


高木「99パーセントの努力のための、1パーセントの閃きを与える……ということだな」


高木「君が行こうとしているのは修羅の道だ。そうと分かった上での決断だね?」


P「彼女たちが輝くためなら、鬼でも悪魔にでもなります」


高木「そうか……ならば私は見守るのみ」


小鳥「私は、やっぱり心配かな…」


――――――――

―――――

――


フェアリーの未来をかけて


765プロ史上最大のツアーが始まることになった


変わらなく流れていた日常が


少しずつ変わり始めている


少女たちの想いをのせて……


765プロ



美希「フェアリー・パワーレインボー?」


P「それが企画名だ。全7公演、フェアリーが日本中でライブをする」


貴音「虹の色数と同じですね」


美希「これを考えてたからずっといなかったんだね、プロデューサー」ワクワク


P「そうだ。計画の概要は目を通してもらった通り」


P「ツアーに先駆けて、全7曲のニューアルバムを売り出す」


P「その新曲を各公演で一曲ずつ披露する」


響「いっきに新曲7曲かー。大変そうだな!」


貴音「そのぐらいであれば、やってやれない、ということはないでしょう」


P「それから、言っておきたいのはな」


P「このツアーはただライブして回るだけじゃない」


P「フェアリーが日本最高のアイドル、そしてステージメーカーだと知らしめる大局になっている」


P「実績のあるトレーナーを呼んで、レッスンを大幅に強化したりもする」


P「かなり強引に新しい地平を切り開こうとしているんだが、ついて来れるか?」


貴音「……私はプロデューサーについていくと決めております」


響「自分も!」


美希「それぐらいが丁度イイって思うな」


P「ありがとう。お前たちならきっとやり遂げられるはずだ」


P「それで、今から話すのがこのツアーのカナメなんだけど……」


P「とりあえずこれを見てくれ」



1st 仙台 ノーゲスト

2nd 十勝 亜美

3rd 名古屋 ディアリースターズ

4th 広島 あずささん

5th 福岡 伊織

6th 大阪 ニュージェネレーション

7th 東京 765プロシアターメンバー より


美希「……どういうこと?」


響「ひょっとして、それぞれの回のゲストか?」


P「そう、このツアーは複数のアイドル達をゲストに呼ぶ」


貴音「7回全て同じものはない、ということですね」


P「ああ。どれだけ厳しいツアーになるか分かったな?」


響「露骨なライバル潰しに見えるんじゃないか、これ」


P「たしかに、765のメンバー以外はIA大賞に近いアイドル達を選んだ」


P(本当はもっと多くの事務所に声をかけたんだが、断られた)


P「実力差を見せつけにきてると思われても仕方ない部分もある」


P「でも、乗って来たのは向こうだからな」


響「んー、向こうも覚悟の上でってこと?」


貴音「自信がある、ということですね」


P「ま、きな臭い話は置いといて、一緒に盛り上げようぜってのが本当の気持ちさ」


貴音「プロデューサー、ツアーに向けての活動はいつから?」


P「おう、来週は早速ツアーのテーマ曲“IDOL POWER RAINBOW”の収録だ」


美希「どーんと来いなの!」


響「決まったからには全力で行くぞー!」ウオオ


――――――――

―――――

――


P(イベントやテレビの仕事を減らして、ツアーのレッスンが本格的に始まった)


P(レッスンは2パターン。ゲストステージを意識したものと、フェアリー単独ステージのもの)


P(後者は、明らかに今までと質が変わった)


レッスンスタジオ



P「ツアーの期間、フェアリーを指導してくださる青木麗さんだ」


P「ちなみにマスタートレーナーの資格を持っている」


麗「うむ、よろしく」


美希「ますたーとれーなー?」


麗「肩書など気にする必要はないよ」ハハ…


響(あの人、前に雑誌で見たことがあるなぁ)


貴音(私もです……世界中飛び回っておられる方だとか)


P「後は、よろしくお願いします」


麗「ああ。任せてくれ」



麗「まずは君たちの自信のある一曲を披露してくれないか」


美希「ならオーバーマスターなの!」


響「準備体操ばっちり、全力でいけるぞ」



~♪


―――グッドラックトゥユー! ~~♪ ビシッ



美希「どうかな?」チラッ


麗「君たちはアイドル離れしているな……大変よかったよ」パチパチ


美希「ミキ、変じゃなかった?」


麗「はは、変なところなど見つからん」


麗「だがここまで完成しているからこそ、次に進むのが難しくなる」


響「どういうこと?」


麗「ダンスも歌も上手いパフォーマーは掃いて捨てるほどいるさ」


麗「その中では君たちはかなり飛びぬけているが、まぁそれはいい」


麗「世界のトップレベルに共通しているのは、簡単にいうと高い表現力だ」


麗「今日からはそのスキルを磨いていくことにしよう」


ジャアネナンテイワナイデー♪


響「これは、キツい……」ゼェゼェ


貴音「……申し訳ございません、歌詞がとんでしまいました」ハァハァ


麗「意識が持ってかれている証拠だ」


美希「...~♪」


麗「星井、そこはニュアンス的にこう歌った方がいいな」


麗「~~―――♪」


美希「~~...―♪」


麗「練習しておけ」


美希「そんな難しいことできないのー!」ウワアア


麗「やってから言うんだ」


レッスン後



美希「……」グッタリ


響「……」グッタリ


貴音「お腹がすきました…」ブツブツ


麗「まあ、初めてにしてはよく着いてきたな。お疲れ様」


P「どうでしたか、最初のレッスンは」


麗「みな優秀だ」


麗「そして、君が私を呼んだ理由が分かった」


P「お察しの通り、今のままでは技術止まりなんです。俺はどうしてもその先へ連れて行きたい」


麗「彼女たちにとっては厳しい日々になるな」


麗「実力の底上げとキツい日程のツアーを同時にやるなんて、君は鬼だ」


麗「世間一般がアイドルに期待するレベルを遥かに越えようとしているぞ」フフフ


P「……俺は彼女たちを信頼しています。きっと乗り越えてくれる」


――――――――

―――――

――



マスタートレーナーのレッスンが始まって数日が経った


765プロ



P「明日は3人で収録だが、経路の確認とか大丈夫か?」


美希「うん……」


響「大丈夫、だと思う」


貴音「……」


P「どうした?」


美希「レッスンいっぱいで、疲れたの」アフゥ


響「昨日も遅くまで歌詞の確認してたし……」


貴音「演出も多いので、身につけるのが少し……」


P「珍しいな。デビュー前みたいだ」


響「その比じゃないぞ」


P「そうか。とりあえず、今日はこれで解散にする。ゆっくり休め」


美希「うん、また明日なの」ノビー



P(フェアリーをここまで削ってしまって……俺の選択は本当に正しかったのだろうか)


亜美「あるぇー?」


亜美「にーちゃーんどったの?元気ないっぽいよー?」


P「ん、ちょっとな」ハハ…


亜美「亜美のアタマなでるぅ?元気出るかもよ?」ヨイショッ


P「しょうがねえな」


亜美「んふふ~♪」


P「……なあ亜美、竜宮小町の人気の秘密を教えてくれよ」ナデナデ


亜美「えぇ~?そりゃーみんなプリチーだからに決まってるっしょ」


P「やっぱそうだよなー」


亜美「変な兄ちゃん!」


P「じゃあ、律子はどうやって竜宮小町を人気にしたんだ?」


亜美「律っちゃんが、じゃなくて、亜美たちみーんなで竜宮を人気にしたんだよ?」


亜美「そんで、上に向かってったらいつのまにか人気になってたって感じ!」


亜美「上に向かいすぎて律っちゃんはハリウッド行っちゃったけどNE!」HAHAHA


P「そうか…」


P(俺が迷ってたらいかんな。美希たちを、必ずトップアイドルにするって決めたんだ)

(1です。お腹すいたのでちょっと待っててなの)

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