忍「お前様、ドーナッツ10個くれたらなんでもしてやるぞ?」(28)

暦「ん?」(ガタッ


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大竹しのぶ「ぁなたさまぁ、ドーナツ10個くれたらなんでもしますよぉ」

さんま「ホンマでっか?!」ファー

藤原忍「ドーナッツ10個くれ!」


司馬亮「OK!忍!」

仙水忍「ドーナッツ10個もらおうか」

樹「あぁ」


忍「言わずとも聞こえておろう?」

忍「ドーナツたった10個で、儂の全てはお前様の思いのままじゃ」

暦「!!」

忍「お前様にとっても、これほどの取り引きはそう巡り会えぬじゃろう?」ニヤリ

暦「……おい忍」

忍「何じゃ」

暦「お前、僕が健全かつ精力旺盛な高校男子であると知って言っているのか?」

忍「もちろんじゃとも。お前様のことはお前様よりよく知っておるわ」

忍「当然、儂に対してどんな望みを持っておるのかも……よぉくな?」

暦「……!」


忍「ほれほれ、早くせんか。急がぬと、儂の気がコロリと変わらんとも分からぬぞ?」

暦「……よぉし、いいだろう!」ガタッ

暦「今まで倹約生活に甘んじていた僕の貯金残高を、遂に知らしめる時が来たようだな!」

忍「ほう」

暦「覚悟しろよ忍!」

暦「10個どころか、100個でも200個でも食わせてやるからなぁ!!」

忍「それは頼もしい」ニヤニヤ

暦「さぁ付いて来い! 年貢の納め時という言葉の意味を、お前に骨の髄まで分からせてやる!」


~ミスド~


ピンポーン

駿河「いらっしゃいませ~!」

暦「はぁ!はぁ!はぁ!……」

駿河「おっと! 奇遇ですね、アラララギ先輩じゃないですか」

暦「一応目上の人間に向かって、どこぞのツインテールみたいな挨拶はやめてくれないか!」

駿河「そうは言っても、これぐらいしか先輩の名を口にするメリットは無いじゃないですか」

暦「人の名を呼ぶぐらいで価値無価値を論ずるんじゃない! 僕の名前はもっと一人の人間として尊重されるに値するはずだ!」


駿河「これは失敬。私としたことが、出会い頭に手痛い失敗をしてしまったようです」

駿河「先輩の名を呼ぶからには、私はもっと甘ったるく誘うような妖艶な声を出さなければなりませんでしたね」

駿河「ドーナツだけに!」ドヤァ

暦「今はお前の戯言に付き合って……そうだ! ドーナツだ!!」

駿河「んっ?」

暦「神原駿河! ここにあるドーナツを全部くれ!」ドン!

駿河「そ、そんな……先輩、いつになく大胆じゃありませんか」

暦「んっ??」


駿河「私の何もかもが欲しいだなんて……先輩には戦場ヶ原先輩っていう大事な人がいるっていうのに」

暦「そんな言葉は一片たりとも口にした覚えは無いぞ!」

暦「もし本当にそう聞えたのなら高名な医師にご相談ください!……いやそんなことよりドーナツなんだよ!!」

暦「僕は何が何でも、ドーナツを買い占めなければならないんだ!」

駿河「そこまでして……先輩がそんなにも私の穴を開けたがっていただなんて」

暦「んんっ??」

駿河「『ドーナツ』なんて隠語を使って私をここまで辱めるだなんて、きっと戦場ヶ原先輩に散々仕込まれたんですね」

駿河「そのような見事なセクハラを放つまでに一体何があったのか……さすがに嫉妬を禁じ得ませんね!」

暦「おいそこの学生アルバイトっ!! いいかげん店員の仕事をしたまえっっ!!」


ガチャガチャ チーン♪


暦「……随分安いじゃないか」

駿河「美味しいモノを出来る限りお手頃価格で提供するのが、私たちの流儀ですからね」

駿河「もちろん、先輩の言う『ドーナツ』に絡む対価はこの限りではありません」

暦「自分の悪意から出たものを、さも僕が考案したかのように押し付けることに罪の意識は感じていないのか!?」

駿河「もしどうしてもそれを求めると仰る場合には、金以外の大事な物を差し出す覚悟が必要となりますので、予めご了承下さい」ペコッ

暦「恐ろしいことを言うのはやめろ! 何でドーナツを買いに来ただけで愛憎の渦に巻き込まれなければならないんだ!」

駿河「では次のお客様どうぞ~!」

暦「おい……まぁいい、これで目当てのモノは手に入った!」


忍「……」

暦「忍、そこで見ているがいい! 今まさに勝利の……」ゴソゴソ

暦「……ん?」



駿河「どうしました? まるで商品ではなく、私そのものを欲すると言わんばかりの性獣のような目付きをして」

暦「どうもこうもない! まるで足りていないぞ!」

暦「どうも安すぎるからおかしいと思ったんだ! こんな程度じゃなく、もっとたくさん買わなきゃダメなんだよ!」


駿河「足りない足りないって、先輩が女体を底無しに求めるケダモノであることぐらい知ってますよ」

暦「僕が欲しいのはドーナツだっ! 何だこれは!少なすぎるじゃないか!」

駿河「ちゃんとありますよ。シナモン、ココナツ、バタークランチ……確かに8個あるじゃないですか」

暦「こんな程度では話にならないんだ! 僕が記憶する限りでは、店中のドーナツを全て買うと言ったはずだ!」

駿河「まとまったお金のほとんどをエログッズに費やす先輩を慮って、控えめな数にしておいたんですよ」

暦「それは僕の今まで生きてきた経験の中でも最も必要のない気遣いだ!」

暦「加えて特殊な購買欲を持っているかの如く話を進めるな! 僕は至ってノーマルだぞ!」

駿河「先輩……こんな公衆の面前で自分の性癖を晒すだなんて恐れ入りました」

駿河「きっと戦場ヶ原先輩の薫陶の賜物なのでしょうね。何だか、先輩が遠くに行ってしまった気がします……」


暦「話を逸らすな!」

暦「おい神原!今からでも遅くない! 僕にドーナツを売るんだ!」

駿河「……ちょっとお待ちください」チラッ


店員「ありがとうございました~!」


駿河「どうやら先輩の懐は浪費を免れたようですよ?」

暦「……は??」

駿河「たった今当店のドーナツは売り切れてしまったようです」

暦「な、何ぃ!?」


駿河「もう少し早めに言ってくれればいくらでもお売り出来たのに……先輩がドーナツそっちのけで卑猥なことばかり言うからですよ?」

暦「僕としてはドーナツ以外のことは言った覚えが無いはずだが、何がどうしてそういうことになるんだ!?」

駿河「ドーナツとはちょっと違うものとなってしまいますが、坦々麺なら準備万端ですよ?」

暦「要らん!! しかも全然違うわ!!」

駿河「どうしたんですか?先輩、そんな大声を出して。咄嗟に繰り出した私のダジャレがつまらなかったなら謝ります」

暦「ドーナツが手に入らないのであれば、もはやここには長居無用だ! 行くぞ忍!」

駿河「またの来店お待ちしておりま~す!」ペコッ

暦「ぐっ……この借りはいずれ返させてもらうぞ!神原!」

忍「おやおや」


ピンポーン


暦「くそぉ……こんなはずでは」

忍「……」

暦「だが既にドーナツは8個まで手に入っている。あとは残りの2個を獲得するだけだ」

暦「そうだ、焦る必要はないんだ」

暦「落ち着いて、冷静に、着実に事を進めよう」

忍「その前にお前様、本当にドーナツは8個あるのか?」

暦「は?何を言ってるんだ。今お前だって見てただろう」


暦「僕が買ったのは8個、これだけは紛れも無い事実だ」

忍「あるいは勘違いということもあろう。今一度確認してみてはどうじゃ?」

暦「そこまで言うなら証拠を……」ガサガサ

忍「……」

暦「えっ!? そ、そんな馬鹿な!」

忍「どうしたのじゃ?」

暦「ドーナツが! 6個しかないぞ!!」

忍「ふむ」

暦「どういうことだ! ぼ、僕は確かに神原から……」


忍「気にすることもなかろう。誰しも勘違いというものはあるのじゃよ」

暦「そんなはずはない! 確かに僕は8個買ってあったはずだ!」

忍「なるほど。今6個ということは、あと4個でお前様の願いは成就するというわけじゃな」

暦「な、何がどうなって……!」チラッ

暦「!?」

忍「一揃えのドーナツ、早く拝んでみたいものじゃのぉ」

暦「おい忍……お前の口元に付いてるものは何だ!?」

忍「おっと」ペロリ

暦「今!今何を舐め取った!? 正直に白状するんだ!!」グイグイ


忍「やめてたもれお前様ーこんないたいけな体を揺さぶってどうするつもりじゃぁー」ガクガク

暦「僕のドーナツに何てことをしてくれたんだ!!」

忍「そんなことを言われてものぅ。儂にはとんと身に覚えの無いこと故」

暦「僕が買ったドーナツは8個! そうだろう忍!お前だって見ていたはずだ!」

忍「ふぅむ、しかし実際には6個しかないではないか。それはとても8個には見えんぞ?」

暦「ぐっ!……いや、ここは落ち着こう。何も慌てることはないんだ」

暦「あと4個、あと4個獲得すれば良い! 今お前と言い争いをしてこの機会を逃すことこそ計り知れない損害なんだ……」

忍「そうそう。はよう儂にドーナツを献上してたもれ」ニヤニヤ


暦「ぐう……っ! だが忍よ!これ以上僕のドーナツに手出しはさせないぞ!」サッ

忍「おやおや」

暦「今度こそ、今度こそお前にアッと言わせてやるからな!!」

忍「それは楽しみじゃのぅ」



僕、阿良々木暦がめくるめく桃源郷に辿り着くまで……あとドーナツ4個ッ!



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