ジン「シェリー。何を見ている?」シェリー「工藤新一特集」(44)

ジン「工藤新一?」

シェリー「知らないの? 今世間を騒がせてる高校生探偵よ」

ジン「高校生……探偵? そういう設定のタレントか何かか」

シェリー「いいえ、どうやら本当に迷宮入りしかけた事件を解決したりして手柄を立ててるらしいわ」

ジン「にわかには信じがてぇ話だ」

シェリー「あら、成人もしてないのに薬品の開発なんかしてる、私って例もいるわよ?」

ジン「フン……確かに」

シェリー「暇ならあなたも見る? 彼の特集記事の切り抜きとか、ワイドショーも録ってあるけど」

ジン「そんな暇はねえ。しかし意外だな、お前のような女がこんな腑抜けた面のガキに興味を持つとは」

シェリー「そうね、自分でも意外だけれど……どこか共感する部分があるからかしら」

ジン「そいつは気の迷いか何かだぜシェリー。このガキと違ってお前はこのどす黒い世界で生きているんだからな」

シェリー「そうねー」カキカキ

ジン「……何を書いている?」

シェリー「工藤新一にファンレター」

ジン「ファン……レター……?」ブルブル

シェリー「心配しなくても本名で送ってないわよ」

ジン「てめえ、自分の仕事はどうした」

シェリー「ちゃんと進めてるわよ。いいじゃない、息抜きぐらいしたって」

ジン「それは構わねえが、そんなふざけた休憩の仕方があるか」

シェリー「人それぞれでしょ。食堂で突然詩を口ずさむあなたに言われたくないわ」

ジン「……」シュン

その夜――。

ジン「始めるぞシェリー……」

シェリー「……」

ジン「こいつは組織の掟だからな……逃れられねえことだ」

ジン「組織に所属しているという精神的な繋がりとは別に、肉体的な繋がりを持つ……」

ジン「これによって組織を裏切ろうと考えたとしても、男女の繋がりによって繋ぎとめることができる……」

シェリー「ええ……わかってるわ」

ジン「さあ来いシェリー……そのシーツに包んだ、てめえの白い果実を見せてみろ……」

シェリー「……」ススッ

ジン(あと少し……)

シェリー「あっ、そういえば」モドシッ

ジン「!?」

シェリー「今日はNEWS ZEROで工藤新一特集がある日だわ」

ジン「そんなもんは録画しておけっっ!!」

シェリー「嫌よ。リアルタイムで見たいの」

ジン「どこまでその探偵に入れ込んでやがる……」

シェリー「いいでしょ、こっそり沖野ヨーコのCD買い込んでるあなたに言われたくないわ」

ジン「……」

ニュース『本日は高校生探偵・工藤新一特集を――』

シェリー「~♪」

ジン「……」

ジン「こんなガキのどこが良いんだ……」

シェリー「別にどこがってわけじゃないけど」

ジン「この世間を舐め腐った生意気な表情……苛立つな」

シェリー「あら、イタズラ好きの少年みたいでかわいいじゃない?」

ジン「インタビューの受け答えはしっかりしているが……どうも気障だな。気に入らねえ」

シェリー「あなたに言われたくないと思うけど」

ジン「……」

シェリー「今日は学校での様子までやるのね。楽しみだわ」

ジン(早く終われ……ニュース番組のくせに特集に割く尺が長すぎるぞ)

テレビ『学校では専ら休み時間に推理小説を読んだり――』

シェリー「私も読んでみようかしら」

ジン「このガキのために時間を割くよりはためになるだろうな……ん?」

テレビ『なーにが推理小説よ、あんた授業中は昼寝ばっかしてるじゃない。そういうことも話しなさいよ』

テレビ『なっ、蘭お前、出てくんなっつっただろ!?』

テレビ『あんだけカッコつけて盛って話してたら口突っ込みたくもなるわよ!』

テレビ『んだと~!』

テレビ『あの、新一君彼女は……』

テレビ『え、あ、いや、こいつはただの幼馴染の――』

テレビ『工藤と毛利は夫婦なんですよー』

テレビ『ちょっ、中道お前なに言って――』

ジン「ほォ」

シェリー「……」

ジン「ガキのくせにお盛んなこった……結局持て囃される人間には必ず女の影が――」

シェリー「……」

ジン「……シェリー? どうした」

シェリー「……もう寝るわ」

ジン「寝る? 待て、組織の慣わしがまだ――」

シェリー「寝かせて。お願い」イライラ

ジン「……そ、そうか。仕方ねえな。明日は必ずだぞ」

シェリー「ええ、おやすみ。出てって」イライラ

ジン「……」

翌朝

ウォッカ「え? シェリーが組織の慣わしに背いた?」

ジン「ああ……どうやらお気に入りの高校生探偵に女が居たことが気に食わなかったらしい」

ウォッカ「高校生探偵……服部平次ですかい?」

ジン「工藤新一とか言うやつだ。というか、そんなのがもう一人居るのか?」

ウォッカ「へぇ、西の服部、東の工藤って並び一称されとりやす。有名どこはこの二人です」

ジン「ほう。それはともかくシェリーのことだが」

ウォッカ「へい。どうしやす? バラすにはちと惜しい人材ですが……」

ジン「そういう話じゃねえんだ」

ウォッカ「じゃあどんな話で」

ジン「実はな……まだ昨日のことを引きずってるようで、塞ぎ込んで部屋から出てこねえんだ」

ウォッカ「はあ。女心ってなあ複雑ですねえ。無理矢理研究室に連れ出しやすか?」

ジン「あんな精神状態でやらせたら研究に支障が出る。まずは気分を高めさせてやる必要があるな」

ウォッカ「というと?」

ジン「……午後に米花シティホールで工藤新一のサイン会がある。そいつをシェリーにくれてやるんだ」

ウォッカ「なるほど、さすが兄貴! それで機嫌を取るってわけですね?」

ジン「ああ……それで今晩慣わしを実行する」

ウォッカ「羨ましいですぜ、兄貴。あんな若い上玉の女と慣わしができるなんて」

ジン「俺はあの方のご指示に従ってるだけだ。あいつの体に特別興味はねえ」

ウォッカ(兄貴、ニヤけてますぜ。お気に入りなんスね)

夕方

ジン「……と、いうわけで工藤新一のサインを確保した」

ウォッカ「さすが兄貴! 見事な変装でしたぜ! 兄貴のオーラがあそこまで隠せるとは思いませんでした!」

ジン「フン……さすがに身長まではどうにもならねえから、ぎょっとされたがな……」

ジン「ともあれ目的のブツは手に入った……シェリーの寝室に行ってくる」

ウォッカ「ご武運を! 兄貴!」

ジン「任せておけ……」

ジン「シェリー、入るぞ」ガチャ

ジン(ベッドの上に毛布の塊……シェリーのやつ、今日一日ああしてやがったな……)

ジン「おいシェリー、その滑稽な姿をとっととやめて出てこい。……プレゼントを持ってきた」

シェリー「……?」ムクッ

ジン「まさかとは思うが、裸のままじゃねえだろうな……」

シェリー「……下着はつけてるわよ。一応ね」

ジン「よし。そら、こいつを受け取れ」

シェリー「……? ……! これ! 工藤くんのサインじゃない!」ガバッ

ジン「その通りだ(思った通り良い体じゃねえかシェリー……)」

シェリー「どこでこれを?」

ジン「米花シティホールで工藤新一のサイン会が催されていてな……塞ぎ込んでるお前にちょうど良いと思って行ってきた」

シェリー「ジン……あなた……」

ジン「フン……礼はいい…それよりも――」

シェリー「なんで私を連れて行ってくれなかったのよ!」

ジン「!?」

シェリー「私だって工藤くんに会いたかったのに! そもそもどうしてあなたが私よりも工藤くんのイベントに詳しいのよ!?」

ジン「……いや、お前が寝た後も奴の特集を見ていたら、最後に……」

シェリー「どうして教えてくれなかったの……?」プルプル

ジン「……いや、お前が出て行けっていうから続きは食堂で蕎麦食いながら見てて……」

シェリー「朝だって教える機会あったでしょ……」

ジン「お前の研究室の仲間からお前が塞ぎ込んでると聞いたから案がまとまるまでそっとしておこうと……」

シェリー「……」

ジン「……」

シェリー「……わかったわ。ありがとうジン、これ、宝物にするわね」

ジン「……ああ。それでシェリー。今晩こそ慣わしを……」

シェリー「……ええ」

ジン「……体調が悪いようならまた見直すが……」

シェリー「……そうしてくれると助かるわ」

ジン「……わかった。安静にな」

食堂

ウォッカ「ふぃー、やっぱり一仕事終えた後のコーヒーは染みるぜ」

ジン「……」スタスタ

ウォッカ「あれ、兄貴? シェリーとよろしくやってるんじゃ……」

ジン「ああ……どうやら俺にはまだ、女心とやらはわからんようだ」チャリチャリ ピッ ガコッ

ウォッカ「え? サインは渡したんでしょう? 喜んでもらえなかったんですかい?」

ジン「渡せたし、喜んでいるようには見えたが……どうやらサイン会の方に行きたかったようだ……」

ウォッカ「ああー…、まあ確かに直接会える方が良いっスよね……すいやせん、俺も頭が回りませんでした」

ジン「お前が気に病むことはねえ。案を考えたのも俺だからな」

ジン「最善策は、朝シェリーにイベントのことを伝えて共にサイン会に行くことだったようだ」

ウォッカ「はあ……」

ジン「……」カシュッ グッグッグッ

ウォッカ「兄貴」

ジン「なんだ」

ウォッカ「とりあえず、夕飯にしましょう。腹が減ってるとネガティブ思考になりやすいですぜ」

ジン「そうだな……今日は奮発しておろしハンバーグ定食にでもするか」

ウォッカ「いいっすねえ! ここの食堂のおろしハンバーグはボリュームもあって味も絶品だそうですし!」

ウォッカ「きっと元気出ますぜ!」

ジン「そうなのか、よし。決定だ」

ウォッカ「じゃあ俺はトンカツ定食にしやす」

キャンティ「あれー? ジン、今日はシェリーと慣わしの日じゃなかったっけぇ?」

ウォッカ(あ、馬鹿!)

ジン「……変更になった。シェリーの体調が悪いんでな」

コルン「シェリー、美人。俺、やりたい」

ウォッカ「馬鹿いうんじゃねえよコルン。シェリーは兄貴クラスにならなきゃ相手させてもらえねえ上玉だぜ?」

ウォッカ「お前はキャンティとよろしくやってな」

キャンティ「ウォッカ。それどういう意味だい?」

コルン「……キャンティ、ビッチ。シェリー、処女。差、歴然」

キャンティ「あんたも何言ってんだよ!」ボカッ

ジン「よせ。ここは食堂だぞ。食事をする時は静かに穏やかに、だ」

ジン「それとコルン。処女厨の末路は儚いぞ。とっとと現実を見ることだな」

コルン「……」

ジン「いただきます」

ウォッカ「いただきやす」

キャンティ「いただきまーす」

コルン「いただきます」

ジン「――と、いうことのようだ」

キャンティ「へえー、シェリーも随分めんどくさい女だねえ」

コルン「俺、平気。俺、シェリー、欲しい」

ウォッカ「だーからお前はもう諦めろっての!」ガハハ

ジン「まああの様子なら作業自体は進められるだろう。少しすれば慣わしの方も何とかなる……」

キャンティ「時間が解決してくれるって寸法かい。ジン、あんたシェリーにはとことん甘々だねえ」

ジン「あの秘薬を完成させられるのはやつだけだ。あの方もその分贔屓目に見ている……俺はそれに従ってるだけだ」

キャンティ「どうだかねえ……」

ウォッカ「ともかく、シェリーに関しては今日のところは不問と、それでいいんですね、兄貴?」

ジン「ああ……」

コルン「……」

シェリーの寝室

シェリー「工藤くん……本当にあの幼馴染とデキてるのかしら……」

シェリー「仲は良さそうだったけど……」

シェリー「……ま、考えても仕方ないわね……どうせ彼と私じゃ接点なんてないし……」

シェリー「……行きたかったわ、サイン会」

シェリー「工藤くん……」

シェリー「……」

シェリー「……」ヌギッ

シェリー「ふふっ、滑稽ね私……自分が特別扱いされてることを良いことに、組織の慣わしを破って自慰ばかりしているんだから……」クチュ

シェリー「でもこの瞬間が一番幸せ……この時だけはあらゆるプレッシャーから解放される……」クチュクチュ

シェリー「工藤君……工藤君……」クチュクチュ

コルン(……)

シェリー「ああっ、駄目よ、そんなの、幼馴染の彼女に怒られるわよ?」クチュクチュ

シェリー「あん、もう、こら、工藤君ってばぁ……」クチュクチュ

コルン(シェリー、自慰……体調、良さそう……)

シェリー「ふふっ、本当に工藤君ったら甘えん坊さんなんだk」クチュクチュ

コルン「シェリー」

シェリー「ッ!?」ガバッ

コルン「シェリー、自慰。体調、良さそう」

シェリー「いつから居たのよ!? えっと、確かスナイパーの……」

コルン「俺、コルン。俺、シェリー、好き」

シェリー「質問に答えなさい!」

コルン「シェリー、自慰。始めた、時から」

シェリー「……変態ね。今出て行ったら誰にも言わないでおいてあげるから、さっさと出て行きなさい」

コルン「シェリーの罵倒、嬉しい。俺、興奮した」

シェリー(なにこいつ……話が通じてないのかしら……)

コルン「シェリー、見る。俺の、ライフル」ボロン

シェリー「ちょっ」

コルン「シェリー、慣わし、する。組織の、掟。男女の、繋がり」ガバッ

シェリー「はあっ!? うそっ、やめっ」

コルン「俺、慣わし、慣れてる。痛くない、平気」

シェリー「そういう問題じゃないでしょ!? やめなさい!」

コルン「慣わし、組織の、決まり。ジンじゃなくても、平気。繋がりさえ、できれば」

シェリー「嫌っ…誰か助け……」

コルン「まずは、接吻……」グイッ

シェリー「冗談じゃないわ……!」グググッ

コルン「俺、男。シェリーより力、強い」グググッ

シェリー「い、嫌……」グググッ

コルン「シェリー、安心。俺、優しくする」グイグイ

シェリー「嫌なものは嫌だって言ってるのよ……っ!」グイグイ

コルン「あと、3㎝……」ググイグイ

シェリー「嫌ぁあああああああああああああ!!」

ジン「そこまでだ、コルン」

コルン「え……うぐっ」ドガシャア

シェリー「ジン……!」

ジン「すまねえなシェリー……どうやらこいつも相当溜まっていたらしい」

ジン(いい背中じゃねえかシェリー……)

コルン「ジン、ずるい。ジン、シェリー、好きじゃない。俺、シェリー、好き。俺、適任」

ジン「わかってないようだなコルン。肉体的な繋がりを持つ場合、ある程度精神的に距離が空いている必要がある」

ジン「カルバドスが良い例だな……やつはベルモットに惚れこんだ上で関係も持ち……すっかりあの女の言いなりだ」

ジン「組織の指揮系統を無視して情で動いちまうような関係は相応しくねえのさ……」

コルン「……」

シェリー「……あの、ジン」

ジン「なんだ」

シェリー「ありがとう。助けてくれて」

ジン「勘違いしているようだがなシェリー。俺はお前を助けたわけじゃねえ」

ジン「暴走した仲間を止めただけだ」

シェリー「そう。でも感謝はするわ。目的のついでだったとしても」

ジン「…勝手にしろ。行くぞコルン。てめえには反省の印としてキャンティのフルコースを味わってもらう」

コルン「ジン、すまない。本当に、すまない。だから、勘弁、それだけは」

シェリー「ジンもああ見えて素直じゃないのよね……そこだけは嫌いじゃないけど」

シェリー「さてと……」

シェリー「工藤君工藤君」クチュクチュ


***



灰原「……?」

灰原(夢、か……)

灰原(もうこんな時間……ドタドタ音がしてる……工藤君たちが遊びに来てるのね……)

灰原(それにしても組織時代の夢だなんて、案外私、気に入ってたところもあったのかしら……あんな組織でも)

灰原(敵に回したら恐ろしいけど、味方にしたら割とゆったりしてるのよね……あそこ)テクテク

灰原「……おはよう」

阿笠「おお哀君、おはよう! 見てくれ、光彦君が砂になるスイッチじゃ!」

コナン「お前も試そうぜ! 何なら一緒にスイッチ押すか?」

灰原「……そうね、そうさせてもらおうかしら」

灰原(接点がないと思っていた工藤君は、今こんなに近くに居る)

灰原(これを幸せと言わずなんと言うのかしら)

コナン「よーし、押すぜ灰原!」

灰原「ええ」

カチッ

灰原(こんな幸せな日々が、ずっとずっと続いたらいいのに……)サラサラ

END

くぅ疲これ完です。見てくれてた方々ありがとうございました!

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