「さて、飯にするか」【艦これss】 (24)


提督と、作者がその日の気分で選んだ艦娘が、その日の気分で選んだものを外食するだけのSSです

地の分か会話分にするかはまだ決めかねているので、最初の子は地の文で書きたいと思います。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420601026


「ふぅ・・・これでひとまずは終わりか」

そう呟いたのは、日付を跨いだ深夜の0時30分を過ぎたところだった

いつも通りの時間だ。あとは、床に就き朝を迎え、毎日の執務をこなす、それだけだ。

しかし今日に限って違った。俺は、腹が減っていたのだ。


「腹が、減ったな」


この時間に腹が減るということは、滅多に無い

しっかりと、朝昼晩と飯を摂っていればの話だが。

今日摂ったものといえば、昼に食べた白米の塩握りに沢庵くらいだ。朝は艦娘に付きっ切りで、そして今、晩飯にありつこうとしている。

こんな時間だ、すっかり皆も寝静まり、当然食堂は開いていないだろう。

作り置きがあるかもしれない、と考えたがあの艦娘達が残り物をするとは考えにくい。


「仕方が無い・・・外食するか・・・」


外食することにした。

しかし、いつも行き当たりばったりで外食をしているが、流石にこの時間だ。何が食べられるかを考える必要がある。

まず、食堂の類の店は閉まっているだろう。次点に、麺類も恐らく同様。

他にも色々食べるものはあるのだろうが、この時間に開いていて飯にありつける場所といえば、やはり


「居酒屋・・・しかないか・・・」


居酒屋なら、おかずになるものは無限とまではいかないが潤沢だ

しかし、居酒屋で飯か。そう考えるともう少し候補を出しておくかとも思ったが、腹の音が急かしてくる。

急かされた俺は、制服をさっさと脱ぎ捨て外食に相応しい格好をしていた。空き腹には勝てなかった、致し方無し。


「さて、飯にするか」


いざ、居酒屋へ

そう力勇み執務室のドアノブを回したときであった。


「提督、まだお仕事中かい・・・?」


二回ほどのノック音の後、ドアノブを回すが、こちら側からも回しているからか、回らない。

「あ、あれ?おかしいな・・・」

声の主は、回らないとわかるや否や、ドアノブから一旦手を離したのだろう、回った。


「あ、提督。このドアノブ壊れてるよ?」

「俺も向こうから回してたから回んなかったんだろうな」

「そうなんだ・・・。あっ、そうだ。こんばんわ、提督」

「こんばんわ、時雨」


こんな時間に来客とは珍しくはないのだが、その主が時雨だったとは。

大体、この時間に来るのは、出来上がった陽気な隼よ・・・やつや、腹を空かせた一航せ・・・やつなどだ。


「こんな夜中に、どうしたんだ?」

いつもの奴らになら、こんな言葉は投げかけないのだが

それだけに時雨という子がこの時間に、執務室を訪れたというのがやはり驚きだった。


「う・・・うん・・・。ちょっとね・・・」

言葉を濁す時雨、これはちょっと珍しい

心なしか、少し頬が紅潮しているが、酔いの雰囲気はない。

言葉を濁すということは、自分からじゃ言い出しづらいことなのだろうか。それとも単純に顔を見に来ただけだろうか。

十中八九、後者はないだろう。

どちらにしても、きっかけを与えてやらねば、恐らくこの会話は終わらない。俺の空腹にも、限度はあるのだ。


「もしかして、俺の顔を見に来たとか?」

「?」

やはり違ったか


「えっと・・・その・・・」

挨拶をした時とは違い、すっかり顔を伏せてしまった。

このままでは埒が明かないが、急かすわけにもいかない。俺の腹の音は急かしてくるのだが。


「て、提督・・・お腹の音がすごいね・・・」

お恥ずかしい話である。

「んん、まぁ晩飯食べてなかったからなぁ・・・」

頬を一掻きすると、ようやく時雨から切り出してくれた


「も、もしよかったら・・・その・・・一緒にご飯・・・食べてもいい?」


上目遣いには弱いのだ、それに断る理由も特にない。


あっさり首を縦に振った俺に、時雨の顔が明るくなった

きっかけが腹の音とは、何とも言えないがこれでようやく執務室から出ることが出来る。


「じゃ、じゃあ僕も着替えてくるねっ」


足早に時雨が、廊下の闇に消えていく。

そういえば、集合場所を伝えていなかった

執務室からは、まだ出られそうにない。


「それじゃあ、行こうか」

準備を終え、ようやく執務室から出ることができた俺と

首にマフラーと厚手のコートを羽織った時雨が夜の街に行く

何やら怪しい雰囲気だが、俺たちはこれから飯を食おうという連中なのだ


「ねぇ、提督?」

「なんだ?」


不意に横から疑問の声が上がるが、質問の検討はついている。


「これから何を食べにいくんだい?」

思った通りの質問だ

こんな時間に飯が食える場所など時雨は知らないだろうからな。


「居酒屋で、って考えてるんだが」


酒飲む場所で飯かよ

そんな顔されると思ったが時雨の反応は思った通りの反応ではなかった


「へぇー!いいね!僕、居酒屋なんて初めてだよっ!」

日本に初めて来た外人を、すし屋に連れて行ったときの反応と同じだった。


「時雨はいいのか?居酒屋飯だぞ?」

こちらとしても、ご飯を食べようと思って来た子を居酒屋に連れて行くのは心苦しいものが多少ある。


「ううん、全然平気だよ?なんだったら、カップラーメンでも良かったくらいだったから・・・」


夜中にカップラーメンか・・・と言おうとしたが俺も昔、カップラーメンと冷や飯inスープセットを食べていたので

言葉を飲み込んだ。


しばらく歩くと商店街に出る。夜中の商店街、大通り沿いの店は当然閉まっている。

「昼間と違って静かだね、やっぱり」

「そうだな」

昼間の賑やかな喧騒はすっかり消え、今居る自分たちの声ばかりが響き渡る

夜中の、商店街。


大通りから枝木のように分かれている、小道に入ると暖簾がかかった一軒の居酒屋が見えてきた


「お、やっていたか・・・よかった、よかった。」


思わず声が出る。正直、行きつけの店でもないので営業時間は知らなかった。

やっていなければ、他所の店にしていたが

ここの居酒屋はメニューが潤沢で、時雨にも俺にも好きなものが食べられると思ったから開いていて良かった。


「提督、ここかい?」


看板を見上げながら、ふと俺に問いかける


「そうだ。寒いし、さっさと入ろうか・・・」

「うんっ」


暖簾をくぐると、外と中の気温の差に思わず身震いする

「うーっ・・・寒い寒い・・・」

なぜだか、外に居るときはあまり感じなかった寒さが身に染みる

謎の現象である。


「いらっしゃいませー!」


奥から女性の店員さんが顔を見せる。深夜だっていうのに、元気な声だ


「えっと、二人なんですけど」

「二名様ですねーっ!こちらのお席へどうぞ!」


そう言って通された席は、畳の敷かれた三、四人ほどが入れる広さの席だった。

二人だから、てっきりカウンターか何かの席に合席かと思っていただけにありがたい。


「提督、コート預かるよ」

「ありがとう」


コート掛けが時雨側にあったためか、時雨がコートを預かってくれた。

なんだか、新婚さんみたいで照れる。向こうはそんな気無しなんだろうが。


「お手拭どうぞ!」

「ありがとうございます」


湯気が少し出ているお手拭が即座に出てくる

ポケットに突っ込んでいるだけで、耐寒装備なしの冷えた手が温まる。


「メニューはこちらからになりますが、こちらのメニューにないメニューも向こうに張ってありますので、よろしければ!」

「あ、はい。わかりました。」


メニューに無いメニュー、なんだか不思議な響だ。

一度来たことがあるから、張ってあるメニューは大体見て覚えている。

だが、時雨もいることだし確認の意味も込めてもう一度見に行くか


「時雨、向こうのメニューも見にいこうか」

「あっ、うん!ちょっと待ってて!」


時雨は、お手拭に手を包んでぬくっていた



「へー・・・なんだか、なんでもあるような気がする量のメニューだねぇ・・・」

「だな。これだけ合って冷蔵庫足りるのかって思うわ・・・」

飯テロしてやろうと思ったのに、すっかりおやつ時じゃないか

昼飯を食べてないからちょっと飯休みとさせていただきたい。


続きは夕飯前くらいにまた書き出します(ゲス顔)

お見舞いするぞー!(飯テロ)

続き書きます


潤沢とはいったものの、本当に決めかねる量のメニューが壁一面にビッシリと張りつけてある。

この中から好きなものを、といってもメニューを決めるだけで時間がかかってしまう


「ご飯とおかずになりそうな物を何品か頼んで・・・あと汁物も欲しいな・・・」

「うーん・・・うーん・・・」

流石に一瞥しただけでは決まらないようで、隣で時雨がウンウン唸っている

かく言う俺も、方向性は決まったものの詳細なメニューまでは決められていないが


「とりあえず、軽く摘めるものを頼んでおけばいいんじゃないか?」

「うーん・・・そうだね、そうしようかなー・・・」


困ったときの定石、とりあえず頼んでおく戦法である


「すいません、注文いいですか」

「はーい!少々お待ちくださーい!」


二階から先ほどの女性の店員が駆け足気味に降りてきた

上の階では宴会でもやっているのか、笑い声が聞こえてくる。


「お待たせしましたー!ご注文ですねっ!」

「はい。えーっと、ししゃもの唐揚げにエビの生春巻き、豚バラのアスパラ巻きに漬物盛り合わせ、それとご飯と豚汁をください。・・・時雨は?」

「僕は、ねぎまとつくねの串焼きを1本づつと、温奴を下さい!」

「かしこまりました!」


注文を終えると、先に出されていたお茶にようやく手がつけられた

メニューに悩むことを見据えていたのか、少し熱めに淹れてあったようで調度良い温度になっていた


「お待たせしましたー!エビの生春巻きとトマトサラダから失礼します!」


お茶を飲んで一息ついていたところに、頼んだメニューが運ばれてきた

思ったより早かったので、多少ワタワタする。

「こちら、取り皿ですのでよろしければお使いください!」


「トマトサラダ、提督食べる?」

「ん、貰おうかな」


時雨が慣れた手つきでサラダを取り分ける

きっと夕立達とご飯食べにいく時にも率先して取り分け役に回ってるに違いない

「はい、どーぞ!」

「ありがとう、時雨もエビの生春巻き食べていいぞ」

「そうかい?じゃあ遠慮なく・・・」


綺麗に取り分けられたサラダと、俺が取りわけた中身が少し飛び出た生春巻きが見合う

圧倒的にサラダの勝ち、女子力負けである。・・・まぁ、俺は女子ではないのだが。


「いただきます」

「いただきまーす」


まずは一口


トマト特有の酸味と甘みが、果汁と共に口に広がる。

ドレッシングは甘めのオニオンソースで、柔らかいきざみ玉ネギが一緒に混ぜ込んであって

これもまたトマトサラダと合っていて、とても美味しい。


「んーっ、おいしいね!」

「そうだな。・・・どれ、生春巻きはどうだろう」


シャクッという音を立てて、口に入る量だけ噛み切って頬張る

エビのプリッとした食感に、中に挟みこんである野菜のシャキシャキ感がマッチしている。


「生春巻きって初めて食べたんだけど、この皮ってなんていうの?」

「ライスペーパーっていって、まぁ名前のまんまだが、米を薄く伸ばしたやつだ」

「へぇーお米なんだ!」


「失礼します!豚バラのアスパラ巻きとししゃもの唐揚げ、ご飯と串焼き2種です!豚汁と漬物盛り合わせもすぐ持ってきますね!」

「はい。・・・あ、サラダの器下げてもらっていいですか?」

これだけの量をテーブルにのせるにはサラダボウルは邪魔になるので店員に手渡す

「はーい!・・・すいません、恐れ入りますー!」


並べ終えると、すっかり定食のような様相になっていた

ご飯におかず3品、汁物に漬物。完全に定食だ。


「わぁ・・・すごい量だね・・・」

「・・・そうだな」


とはいえ、頼んでしまったものは仕方なし。さっさと胃に納めてしまうに限る。

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