夢子「背伸びたわね、涼」 (35)

涼「そうかな?」

夢子「実感無いの?私もまさか180まで伸びるとは思わなかったわ」

涼「成長期だったんだよ」

夢子「成長期ならしょうがないわね」

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涼「夢子ちゃん」

夢子「なに?」

涼「突然だけどさ、僕らが出会ってから何年位になる?」

夢子「本当に突然ね。……6年位経ったかしら」

涼「あの頃はさ、こうして正月に二人でこたつに入ってだらけるなんて想像出来なかったよね」

夢子「全くその通りだわ。
お互い年末年始の仕事は終わって、親戚連中への挨拶も済んで、じゃあ何するかってなったら」

涼「見事にこうなった訳だ」

夢子「涼」

涼「なに?」

夢子「あんた成人してんのよね?」

涼「成人式は去年だったよ」

夢子「その身の丈はともかく、顔は相変わらず女顔のままね。正直違和感がヤバいのよ」

涼「言わないでよ気にしてるんだから。
そういう夢子ちゃんだって、二十歳過ぎてもまだ可愛いままじゃないか」

夢子「当然の事だけど若干の気恥ずかしさを覚えるわ」

涼「もう少し謙遜も覚えようか」

涼「夢子ちゃん」

夢子「どうしたの?」

涼「こっち(こたつの反対側)来てよ」

夢子「寒いからやだ」

涼「こたつ伝いに来ればいいよ」

夢子「イヤよ面倒くさい。むしろあんたがこっち来なさいよ」

涼「おっと、いいのかな?そんな口効いて」

夢子「は?」

涼「そーれ足こちょこちょー」

夢子「にゃはははははは!ちょっ、涼!
何すんのよ止めなさい!」

涼「片足だけでも結構効くね。流石敏感肌」

夢子「うふふあはははははは!い、いい加減に……うひゃあっ!」

涼「君がッ来るまでくすぐるのをやめないッ!」

夢子「い、いい加減にしろっ」

涼「えっ僕の伸びきった脚に何を」

夢子「調子乗んなこの阿呆がァーーッ!」

涼「ごめんごめんアキレス腱はやめてって痛い痛い痛い痛い痛い!」

夢子「涼」

涼「はい……」

夢子「アイス取ってきなさい」

涼「最早命令形なんだね。なんだってこの寒い中こたつでアイスなんか……」

夢子「『風情』って奴よ!ほら早く。冷凍庫にカップのがスプーン付であるから!」

涼「あぁあれね……。他に欲しい物とかある?」

夢子「別に」

涼「わかった。ちょっと待ってて」

涼「お待たせ」

夢子「ご苦労様……っとちょっと待った」

涼「まだ何か?」

夢子「食べさせて」

涼「………はいっ?」

夢子「だから、そのスプーンを使って食べさせてって言ったのよっ」

涼「言った手前撤回出来なくて急に照れないでよ反応に困るから」

夢子「ほ、ほら、ハリーハリー!」

涼「はいはい体起こして。あーん……」

夢子「あーん………って涼。誰が半分も掬って寄越せって言ったのよ。
腹いせに私の顎でも外すつもり?」

涼「分かっていたけど結構スプーンからはみ出てるね。
あっごめん落ちそう」

夢子「待って待って直ちに戻しなさい。
それ結構したんだからね!」

涼「最後ね。はい、あーん」

夢子「あーん。うむ!大義であった!
ちと褒美をやろう。近うよれー!」

涼「褒美って……一体何さ?アイスはもう無いし」

夢子「んっ……………!」

涼「むぅっ!?ん……………!」

夢子「ん、む、ちゅっ………はぁっ…!」

涼「ん、う、っ………………ぷはっ……」

夢子「………どう……だった?」

涼「っ、甘かった、よ……」

夢子「ほ、他には?」

涼「えっと……不意打ちだった、から………びっくりした」

夢子「そ、それでそれで?」

涼「………夢子ちゃん、顔真っ赤」

夢子「……ばか。お互い様よ」

涼「ねぇ、夢子ちゃん」

夢子「……どうしたの」

涼「正直限界です」

夢子「まだ5時なんだけど?」

涼「いきなり焚き付けておいてさ、そりゃ無いよ夢子ちゃん。しっかり責任はとってよね」

夢子「責任ってそれ私の台詞じゃない?
おっと忘れてた。夕飯の準備しないと」

涼「問答無用!」

夢子「おわっ高い高い高い」

涼「寝転がってるからお姫様抱っこし易いや」

夢子「はーなーせー!」

涼「首に手回して言っても説得力無いよー」

夢子「あう」

涼「ごめん」

夢子「やりすぎよ」

涼「まさか5回も出来るとは自分でも思わなかったな」

夢子「あんたバカなの?どっちもバテたら誰がご飯作るのよ」

涼「次から気をつけます……。
でも、可愛かったよ?夢子ちゃん」

夢子「……………」

涼「……………ごめん、怒ってる?」

夢子「気持ち良かった。ありがと」

涼「………どういたしまして。
ちょっと夢子ちゃん布団で顔隠さないでよ」

夢子「待って今凄いにやけてるから!見ないで!布団剥がないで!」

涼「今何時?」

夢子「ん………7時半過ぎってとこね」

涼「そっか」

夢子「涼。あんた明日仕事は?」

涼「明後日からだね。ドラマの収録だ」

夢子「私は昼3時にラジオの公開録音あるわ」

涼「もう正月休みは終わりかぁ」

夢子「まーまー。それまでずっと一緒に居ましょうよ。ね?」

夢子「寒いわ、涼」

涼「服着ようよ夢子ちゃん」

夢子「ニブチンねー。もっと手っ取り早い方法があるでしょ?」

涼「えー?」

夢子「ほらほら、早くしないとベッドの端に逃げちゃうぞぉ?」

涼「逃げるのは良いけど掛け布団持ってかないでよ。僕も寒いんだから」

夢子「寒いなら、ほら!呼びなさいよほら!手伸ばして!」

涼「………結構恥ずかしいんだけどなぁ」

涼「………夢子ちゃん」

夢子「ん?」

涼「おいで?」

夢子「仕方ないわねー!」

涼「おうふっベッドの端から回転したまま突っ込まないで!」

夢子「んふふ……あったかー………」

涼「6年でここまで変わるかなぁ、本当……」

涼・夢子「「あのさ」」

涼・夢子「「あっ」」

涼「お先にどうぞ?」

夢子「ありがと。ねぇ涼、夕ご飯どうしようか?」

涼「そういえばもう夜だね。
………うん。一緒に作ろうか」

夢子「ふえっ?」

涼「一緒にいるって言ったのは夢子ちゃんでしょ?だったら、一緒にいようよ。
せめて、今日の日ぐらいはさ」

夢子「……あんたには、感謝してばっかりね」

涼「いいんだよ。僕が好きでやってるんだから」

夢子「それじゃ、台所まで行きますか!」

涼「うん。その前にまずは、さ」

夢子「はいはい。分かってるっての」

涼「とりあえず服着ようか」

夢子「ムードもへったくれも無いわね」

涼「腕枕?」

夢子「そ。出来る?」

涼「出来ないこともないけど………痛くない?」

夢子「耐えることもまた愛よ。
ほら、こっち来て寝転がって!」

涼「ん……………どう?」

夢子「悪くないわ。何より、あんたの顔がよく見える」

涼「お互い様だね」

夢子「涼?………まだ起きてる?」

涼「………うん」

夢子「少し、私の話に付き合ってくれる?」

涼「珍しいね。改まって話をするなんて」

夢子「あんた、今幸せ?」

涼「宗教勧誘ならお断りだよ」

夢子「真面目に聞きなさいっての。
私は今、幸せの絶頂にいると自負してるわ。
私をどん底から救い出してくれた人と、同じ部屋で、話し合って、喧嘩して、笑って、キスして、抱き合って、見つめ合ってる。
間違いなく幸せよ」

涼「……………」

夢子「でもね、ふとした瞬間、ほんの少しの時間で今ここにある物が壊れたら、私多分これから生きていけないわ」

涼「……………怖いの?」

夢子「情けない話、そうなるわ。
別にあんたを縛り付けるつもりは無いけど、もしもあんたと二度と出会えなくなったら、私はどうなるかわからない。
考えたくもないけど、あんたが私より先に死んでしまったなら、多分私も死ぬわ」

涼「………随分物騒だね」

夢子「自覚はあるわ。けど、時々そんなことを考えるの。目の前の前の涼が、いきなり消えて無くなったらって。可笑しいよね?幸せを求めてる筈なのに、釣り合うように不幸も一緒に求めるなんて」

涼「………僕は、消えないよ」

夢子「…………………」

涼「『一緒に死のう』なんて大それたことは言えないけど、少なくとも僕は、君の前で突然消えたりしない。夢子ちゃんと離れるつもりは無いし、離すつもりもない」

夢子「………そこは、嘘でも『一緒に死のう』ぐらい言いなさいよ……ばか………!」

涼「なるべく、努力はするよ。ほら泣かないで?大丈夫だから」

夢子「泣いてない!」

涼「涙目で言われてもなぁ」

涼「………今度は、僕の胸に顔うずめるの?」

夢子「もう少し、このままでいさせて」

涼「………好きなだけどうぞ」

夢子「心臓の音、すごく聞こえる」

涼「………生きてるからね」

夢子「ふふ。やっぱり、あったかい」

涼「………夢子ちゃんも、ね」

夢子「お休みなさい、涼」

涼「………お休みなさい、夢子ちゃん」

夢子「………おはよう」

涼「おはよう。よく眠れた?」

夢子「……夢を、ひとつ見たわ。
とても幸せな夢。いつものあんたと過ごす、何の変哲もない日常の夢よ。
そして、私の一番願う夢。この日常が、いつまでも続きますようにって」

涼「………そっか。いきなりで悪いけど今度は、僕の話に付き合ってくれる?」

夢子「手短かにね」

涼「手厳しいなぁ。
あのさ、僕の夢は「自分を変えたい」だったんだ。女装したりアイドルやったり、紆余曲折を経てそれは叶ったけど、言い換えれば僕はそこで夢を無くしたんだ」

夢子「………それで?」

涼「これはあるドラマの受け売りだけど、
「夢は無くても、夢を守ることはできる」
らしいんだ。だから」

涼「僕に、『夢』を守らせてください」

夢子「…………………」

涼「だ、駄目、かな………?」

夢子「そっ、そそそそそれは何?プププロポーズって解釈でいいのかしら!?」

涼「じ、自分なりに精一杯考えたんだけど……」

夢子「えっ…あの………その……う…あ……」

夢子「わ、私で良ければ喜んで!」

涼「………」

夢子「………」

涼「よ、良かったぁ………」

夢子「あ、あんたね涼!朝起きたらいきなりプロポーズってびっくりするにも程があるわよ!」

涼「怒ってる割には顔が嬉しそうだよ夢子ちゃん」

夢子「べ、別に顔に出る程!」

涼「へぇ………」

夢子「………う、嬉しかった、です」

涼「宜しい」

夢子「指輪や式は、もう少し先ね」

涼「早くあげられるように頑張るよ」

夢子「『一緒に頑張ろう』でしょ?
共同出資よ、共同出資!」

涼「それじゃあ、改めて」

夢子「ん?」

涼「これからもよろしく。夢子ちゃん」

夢子「こちらこそよろしく。涼!」

終わりです。

書き溜めたものに付け加えまくった結果、婚約という予想だにしない結末になってしまった。

りょうゆめもっと流行れ。お休みなさい。

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