【咲-Saki-】京太郎「カピが鹿になった」 (56)


京太郎「意味が全くわからねえ…」

鹿「カピカピ」

京太郎「おまえ、本当にカピか?」

鹿「カピー!」

京太郎「…お手!」

鹿「カピカピカピー!!!!」ダンス

京太郎「…お手と言って踊り出す習性…残念ながら、カピに間違いない。どうしよう、どうすればいい?」

京父「なんだ、カピが鹿になったのか?うーむ…そうだな、鹿と言えば奈良だ、奈良に行って飼い方を調べて来い」

京母「まあ、名案ですわあなた!」

京父「そうだろうそうだろう、わっはっは。というわけだ、カピを連れて奈良に行くんだ京太郎」

京太郎「…鹿になったことを気にするより鹿になったカピをどうするかの方が大事…それはわかる、それは分かるがあっさりしすぎだぜ親父い…」


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京太郎「ということで、奈良に行くことになった」

優希「まあ、そういうことなら仕方ないじぇ」

咲「いや、意味が分からないんだけど」

京太郎「俺だって分かんねえよ、でも実際鹿になったんだから仕方ねえだろ」

和「奈良ですか…知り合いがいるので、連絡をしておきますね。なにかあれば力になってくれると思います」

久「あ、阿知賀に連絡するなら、憧に『今度会いましょう』って伝えておいて」

和「嫌です、自分でやってください。そもそも部長には福路さんが居るでしょう」

久「別に浮気とかじゃないわよ、せっかくインハイで繋がった縁だもの、繋いでおきたいじゃない?」

京太郎「他意があるようにしか見えませんけど…まあ、とにかく行ってきますね」

まこ「気を付けての。土産はいらんけえ」


京太郎「さて、ここが奈良公園か…本当に鹿がいるんだな」

カピ「カピー!」

?「おい、そこのニワカ、鹿を連れ出すとは何事だ!」

京太郎「へ?」

紀子「…ここの鹿は天然記念物。返してきなさい」ギロッ

京太郎「い、いや、こいつは元々俺のペットで…」

やえ「問答無用だ!」

カピ「か、カピー!」

良子「待て、この鹿、鳴き声がおかしい!」

京太郎「そ、そうなんですよ!こいつもともとカピバラで…」

紀子「…改造手術…?」

由華「そんな…酷い…こんなに鳴き声が違ったら群れに溶け込めない…」

京太郎「ちょっと、おかしい!この展開はおかしい!」

やえ「き、貴様アアアア!許さん!くらえ!王者の右拳を!」バキッ

京太郎「へぶしっ!?」


やえ「…済まなかった、まさかそんな事情があったとは…」

紀子「…ごめんなさい」シュン

京太郎「丸瀬さん、目つき悪い割に素直ですね」

紀子「は?」ギロッ

良子「紀子、怖い、それ怖い」

紀子「…」ゴキ

良子「ギブ!ギブギブ!無言で間接極めるのやめて!ホントにやめて!」

由華「本当にすみませんでした…」

京太郎「いえ、分かってもらえればそれで…」

やえ「そうはいかん、無礼をしたまま償いもせずに帰したとあっては王者の恥。なにかさせてほしい」

京太郎「えっと…じゃあ、お言葉に甘えて…鹿の飼い方って分かります?」

やえ「…すまん、それは流石にわからん」


紀子「日菜ならあるいは…」

良子「つっても、日菜の奴は家族旅行だろ?三日は戻らねえぞ」

由華「でも、三日待って頂ければきっと木村先輩が何とかしてくれます」

京太郎「ん~…まあ、三日ぐらいなら滞在できなくはないですけど…」


やえ「そうか、なら決まりだな。私の家に泊まって三日後に帰る日菜を待とうじゃないか」


四人「「「「は?」」」」

やえ「ん?だって、さっき聞いた限りだと急な話のようだし、宿はとってないだろう?」

京太郎「は、はい、そうですね…」

やえ「うちに泊まれば宿代も浮くし、殴ってしまった分の償いも出来るからな。もちろん、嫌なら無理にとは…」

紀子「…やえに変な真似をしたら[ピーーー]。それだけ理解できているなら反対はしない」

良子「あー、まあ、やえだしな。別に大丈夫か」

京太郎「(まあ、いい人そうだし、大丈夫、かな?)じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます」

やえ「そう来なくてはな。では、我が家へ案内しよう」


*カピは鹿の群れに置いてきました


晩成高校女子寮


やえ「ようこそ、我が家へ」

京太郎「ちょっと待て」

やえ「ん?どうした」

京太郎「これ、女子寮ですよね?え?実家とかじゃないんですか?」

やえ「ああ、すまんな、狭い寮ではなく一軒家でのもてなしを期待していたか?」

京太郎「いや、そういう問題じゃなくて…」

やえ「ここの寮監は話が分かるから、お前が泊まることに問題はないぞ」

京太郎「その寮監に問題しかねえよ」

やえ「まあ、寮と言っても私の部屋はそこそこ豪勢な部屋だ、お前が想像しているよりはまともなもてなしが出来ると思うぞ」

京太郎「いや、まあ、別に物置で寝袋とかでも文句は言いませんけど、そこじゃなくて色々問題ありますよね?」

やえ「…考えつく限りではないな。じゃあ行くぞ」

京太郎「ああもうどうにでもなれ畜生!」


京太郎「おお、ホントに広い…」

やえ「くくく、なんでも昔、権力者の娘が寮に入った時に作らせた部屋らしくてな。以来、成績優秀者や学校に特別寄与したものに割り当てられている」

京太郎「…てことは、やえさんって実はすごい人なんですか?」

やえ「麻雀部のエースで部長、学業の成績は偏差値70の晩成高校で入学以来学年一位、ついでに言うと麻雀は奈良県個人戦一位だ」

京太郎「うおっ!?予想以上に凄かった」

やえ「ま、自慢話を聞きに来たわけではないだろう?食事の支度でもしようか」

京太郎「え?」

やえ「なんだその顔は?言っておくが、料理は少しばかり自信があるんだぞ?」

京太郎「いや、泊めていただく身ですから、料理ぐらい俺がやりますよ」

やえ「アホか、客に家事をさせたとあっては王者の名が廃る。いいから座ってろ。そこらにある本も適当に読んでいていいぞ。麻雀関連の本と参考書しかないがな」


やえ「出来たぞ、口に合うかどうかわからんが…」

京太郎「あ、いただきます」

やえ「ほう、読んでいたのはオカルト系の麻雀書か…」

京太郎「ええ、一応、俺も麻雀部でして」モグモグ

やえ「…麻雀部だと、普通はデジタル系の理論書を読みたがるのだがな…真剣に読んでいるということは、オカルトとしか思えないような打ち手が身近にいるということか?」

京太郎「凄いですね、読んでいた本だけでそこまで分かりますか。あ、これ美味しいです」

やえ「そうか、口に合って良かった。ちなみに、洞察力は王者の基本的な素養だ、褒めるほどのものでもない」

京太郎「いやいや、でも凄いですよ。麻雀でも相手の癖とか見抜いたり出来るんですか?」

やえ「まあ、な。松実玄相手に初見でプラス収支で終われるのは私と宮永ぐらいだと自負しているよ」

京太郎「松実さんってあれですよね、ドラを集める…」

やえ「おお、知っていたか。その阿知賀の先鋒だ」

京太郎「牌譜見て分かってると対応できますけど、初見だとムリゲーですよね。ドラ絡みの面子とか普通に打ってたら絶対残しますし」

やえ「そう、奴が相手ならドラ待ちカンチャンは死に面子、ドラ待ち両面はペンチャンと同じ、しかし、奴の能力が分からなければ残してしまう、必然、手は進まず、大敗する。それが分かっているとは、見た目ほどニワカじゃなさなそうだな」

京太郎「和が、初見なのに南場に入る頃にはほぼ完璧に対応した奈良県の一回戦の相手を褒めてましたよ。あ、和ってうちの副将で去年のインターミドルチャンプなんですけど、そいつが初見ではボロボロにされたって言ってました」

やえ「その一回戦の相手というのは私だ。そして、お前、清澄の部員だったのか」

京太郎「へ?」

やえ「そういうことなら、聞きたいことが山ほどあるぞ。特にあの中堅、何故あいつほどの打ち手が個人戦にも出ずに今年まで燻っていたんだ?」

京太郎「ああ、それはですね…」


……

…………

………………


やえ「おっと、話し込んでしまったな。疲れているだろう、風呂の用意をしよう」

京太郎「あ、すみません、何から何まで…」

やえ「ま、勘違いで殴ってしまった負い目もあるしな、気にするな」

京太郎「いえいえ、こんなに良くしてもらってお釣りが来るぐらいですよ。料理もおいしかったですし」

やえ「ふふ、世辞が上手いな。世渡り上手は嫌いじゃないぞ」


京太郎(で、先に入って、すでに上がったわけなんだが…)

京太郎(まあ、分かってもらえると思う。俺も男だ、そして、風呂場には無防備な美人…邪な考えを持つなという方が無理だ)

京太郎(もちろん、欲望に負けたりはしない。俺の理性はそれなりに強靭だ、間違いは起こさない)

京太郎(だが、葛藤ぐらいはするんだ。だって、あの人あれだぞ、俺の前で普通に服脱ぎはじめたんだぞ!)

京太郎(下着がバッチリ見えたよ!不意打ちにもほどがあるだろ!)

京太郎(成績優秀、麻雀を打たせれば県トップ、普通に可愛いし、料理も上手い、そんな美人が、無防備で、風呂に入ってるんだぞ!直前に下着見せられてるんだぞ!分かってくれ!)


やえ(バスタオル一枚)「上がったぞ、ん?どうした?」

京太郎「ふ、服!服着て下さいよ!なんでバスタオル一枚で出てきてるんですか!?」

やえ「変な奴だな、別に風呂上りにバスタオル一枚で歩き回るぐらい良くあることだろう?」

京太郎「いやいやいや!男が目の前に居る状況ではよくあることじゃないですよ!」

やえ「…そうか?まあ、お前がそういうなら服ぐらい着てやるか」パサッ

京太郎「なんでバスタオル外してるんですかあああああああ!?」

やえ「バスタオルを巻いたままでは服が着られんだろう、変な奴だな」

京太郎(耐えろ俺の理性、耐えろ、耐えろ、耐えろ…)


やえ(寝間着)「さて、寝るか。ベッドはお前が使え」

京太郎(…さっきはまともに見れなかったけど、髪下すとめっちゃかわいいな、このひと)

やえ「おい、聞いてるか?」

京太郎「やえさん、髪下すとホント可愛いな…」

やえ「なっ!?」///

京太郎「えっ?」

やえ「か、かかかかかか、可愛いとか!私をどんな目で見てるんだ貴様は!うつけ!バカ!アホ!」

京太郎「え?ええっ!?声に出てました!?」

やえ「ええい!き、貴様にベッドなど使わせてたまるか!布団は貸してやるから床で寝てろ!バカが!」

京太郎「い、いや、それは最初からそのつもりですけど…」

やえ「わ、私は寝るからな!変な気を起こすなよ!分かったな!?」///

バタン!

京太郎(いや、まあ、変な気は抑え込みますけどね…起こすなってのは無理ですよ…)


チュンチュン

京太郎「朝、か…」

やえ「…おはよう、よく眠れたか?」

京太郎「ええ、おかげさまで」

やえ「そうか。ところで、今日の予定はあるか?」

京太郎「あると思います?」

やえ「そうだろうな。で、お前は麻雀部だったな?」

京太郎「ええ、一応」

やえ「喜べ、我が晩成高校麻雀部の練習に参加させてやる」

京太郎「え、いいんですか?」

やえ「ああ、構わん」

京太郎「是非、お願います!」

やえ「向上心があるのはいいことだ、名門晩成から何かを得て帰るといい」

京太郎「あの…ところで…」

やえ「ん?」

京太郎「髪、セットして寝たんですか?下した方が可愛いですよ」

やえ「ば、馬鹿者!私をどんな目で見ているんだ貴様は!普段の髪型なら変な気も起さないだろうと朝からセットしたのにそれでもこれか!」

京太郎「え、あ、いや、そんなつもりでは!」

やえ「いいか!金輪際私を変な目で見るな!全く、油断も隙もない!」


【晩成高校】

京太郎「どうも、お世話になります」

由華「うちの麻雀は厳しいですよ?」

紀子「やえに妙な真似をしたら[ピーーー]と事前に言ったはずだけど、何もなかった?」

京太郎「誓って手は出してません!」

紀子「…ならいい」

良子「おいおい、お前ら、お客さんを脅すな」

やえ「全くだ。大体、間違いなどあるはずないだろう?」

(京太郎「やえさんって、髪おろすと可愛いですよね」)

やえ「…」ポンッ

良子「おい、顔真っ赤だぞ?大丈夫か?」

やえ「だ、だだだだだ、大丈夫だ…」

紀子「…京太郎君?」ギロッ

京太郎「いや!マジで何もしてませんって!」

良子「…とりあえず卓につこうか?」ニコッ

由華「お客さんがいる卓で無様は晒せないので全力でいきますよー」

京太郎(あ、これ死んだ)


【対局中】

やえ「ツモ、4100オール。まくって終了だ」

由華「やっぱり先輩は強いですねー。今回は勝てると思ったのになあ…」

やえ「ニワカを狙い撃ちするとか狡い真似をしているからだ。正々堂々と私に向かって来い」

由華「うう…真正面から行って勝てるならとっくにやってますよぉ…」

良子「ほらほら、シャキッとしろ、次期エース」

由華「うう…上田先輩は黙っててください」

やえ「そうだな、良子は黙ってろ」

良子「お前らあたしの扱い酷くないか?」


京太郎「…勝てねえ…」

紀子「…あんな打牌をされて負けたら晩成の恥」

京太郎「え?そんなにおかしかったですか?」

紀子「正解が1割もない」

京太郎「そこまで!?」

紀子「たとえば、東3局のこの手…何を切った?」


2345p244s233445m ツモ:赤5p



京太郎「4索です。これは誰だって4索切りませんか?」

紀子「河、見てた?三索は河に3枚出てた」

京太郎「あ…。いや、でも、三色狙いで残り一枚に賭けるのはそこまで変な手じゃ…」

紀子「残り一枚が他家の手牌に組み込まれている可能性が高いのに?」

京太郎「え?」

紀子「この時、すでに良子が123筒と123萬で鳴いている。所詮良子だからただのチャンタということはあり得るけど、一応チャンタ三色が本命。その場合、いくら馬鹿でも三色の最後の一つぐらいは鳴かずに作っているはず。河の三枚と他家の手牌の一枚。カラの見込みが強い」

京太郎「」

紀子「ここでは2索切りでシャボ待ちテンパイに取る、即リーでも構わないけど、場の状況を見る限りでは山に筒子が大量に残ってるから、私は筒子を良形に変化させてからリーチ。多分良子あたりから出る」

良子「おい、サラッと貶めるな。あたしは一応晩成のレギュラーだぞ」

紀子「もう少し、河に気を配った方がいい。せめて、自分の待ち牌の残りぐらいは数えないと話にならない」

京太郎「そっか…自分の手しか見てなかったんだな、俺」

紀子「…」

京太郎「ん?どうかしました?」

紀子「…随分素直に言うことを聞くと思って、驚いた」

良子「紀子は目つきだけじゃなく言い方もきついからな、初めて教わる奴には結構反発されるんだよ」

紀子「…余計なことは言わなくていい」ガシッ

ギリギリ

良子「ギブギブ!ギブ!!折れる折れる!」


【再び対局中】

京太郎「ツモ!1000、2000です!」

由華「むっ…」

紀子「上出来」

良子「うおっ…あぶねえ…裏乗ってたら三位まくられてた」

紀子「…ちっ」

良子「狙ってたのかよ!」

紀子「京太郎がもう少しまともに打てれば、客に負けた面汚しとしてレギュラーから追放できたのに…」

京太郎「あ、すみません…」

良子「謝んな!お前はあたしを二軍に落としたいのか!?」

やえ「まあ、和了れたのは運だが、運が味方すれば我々相手でも和了れる程度に腕が上がったということでもある。流石紀子だな」

京太郎「本当に勉強になりました、ありがとうございます」

紀子「あまりにヘボだから見てられなかっただけ、礼は必要ない」

由華「あ、丸瀬先輩、照れてますね」

紀子「由華…」ギロッ

由華「おっと、口は災いの元っと」


【夕刻】

やえ「さて、そろそろ切り上げるか」

京太郎「今日はありがとうございました」

由華「京太郎君、今日はどこに泊まるつもりかな?また先輩のところ?」

京太郎「え?」

やえ「あ…」ボッ

紀子「手を出してないというのを信じるとしても、この様子では今日もやえのところというわけにはいかない」

京太郎「…ええ、まあ、ぶっちゃけ、昨日と同じことされると三日耐える自信はありません」

紀子「…二人きりというのは問題。ここは、実家通いの私か由華、あるいは傷物にされても問題ない良子のところに泊めるのが良い」

良子「お前はいちいち私をディスらないとしゃべれないのか!?」

由華「あ、すみません、うちは今日両親とも帰りが遅いんですよ」

紀子「…となると…」チラッ

良子「あたしを見んな!いや、別に泊めるのはかまわないけどさ!」

紀子「この馬鹿のところに泊まって馬鹿が感染したら清澄に申し訳が立たない。今日は私がもてなす」

京太郎「えっと、良いんですか?」

紀子「他に選択肢がない。麻雀の指導のために後輩を泊めたりはよくしているから、あまり気にしなくてもいい」

由華「その節はお世話になりました」

紀子「…時期エースを育てるのはエースの務め。気にしなくていい」

やえ「エースは私だろうが」

紀子「やえに負けたつもりはない。エース区間でボコボコにされたやえの負けを取り返す真のエースが私」

やえ「こいつは…まったく」

京太郎「じゃあ、一晩お世話になります」

紀子「…ん」


【帰宅】

紀子「…」ゴゴゴゴゴ

京太郎「おい、カピ、なんでお前ここに…」

鹿「カピー!」

丸瀬父「いやな、なんか公園に行ったら群れに馴染めてない鹿が居てな…」

丸瀬母「かわいそうだから、連れて来たのよ」

鹿「カピカピ」

紀子「…まあ、この子に関しては本当は鹿じゃないからまだいいけど…犯罪だから今後はしないように」ギロッ

丸瀬父「…はい」シュン

京太郎「なんだ、鹿の群れに馴染めなかったのかカピ?」

鹿「カピー…」

京太郎「まあ、もともとカピバラなんだから当たり前か、悪かったなカピ」

鹿「カピー」

紀子「ところで、その子は本当にカピバラなの?カピバラはカピカピとは鳴かないはず…」

京太郎「えっ?」

紀子「えっ?」


【お食事】

京太郎「じゃ、泊めて頂く身ですし、夕食のお手伝いさせていただきます」

丸瀬母「あら、ありがとう」


……
………

紀子「…おいしい」

丸瀬父「凄いな、いくら娘が男を連れて来たからって頑張りすぎじゃないか?」

丸瀬母「いえ、それがね…ほとんど京太郎君につくってもらっちゃったの。手際も私よりいいし、美味しいし…」

丸瀬父「ほう、それは凄いな。料理人でも目指しているのかね?」

京太郎「いえ、縁あって凄腕の料理人から指導を受けたことがあるだけですよ。あとは、部活の雑用で少々」

紀子「…」

丸瀬母「京太郎君がお婿に来てくれれば毎日これが食べられるのね~。紀子、ちゃんと捕まえなさいよ?」

紀子「そのセリフは予想済み、答えはNO」

京太郎「そうですよ、おれなんかじゃ丸瀬さんには釣り合いませんって」

紀子「…そんなことはないけど」

丸瀬父「おや?普段の紀子なら『当たり前』と返すところだが…これはひょっとすると…」

紀子「」ギロッ

丸瀬父「ナンデモアリマセン」

紀子「…」

丸瀬母「でも本当においしいわねこれ」

京太郎「ありがとうございます」


【これからお風呂】

紀子「覗いたら、[ピーーー]」

京太郎「大丈夫ですって、親御さんもいますし」

紀子「胃袋を掴まれた連中はあてにならない」

丸瀬父「」グッ(親指立てる)

丸瀬母「」パチッ(ウインク)

京太郎「みたいですね」

紀子「確認のため、もう一度言う。覗いたら、[ピーーー]」


【これからお風呂】

紀子「覗いたら、殺す」

京太郎「大丈夫ですって、親御さんもいますし」

紀子「胃袋を掴まれた連中はあてにならない」

丸瀬父「」グッ(親指立てる)

丸瀬母「」パチッ(ウインク)

京太郎「みたいですね」

紀子「確認のため、もう一度言う。覗いたら、殺す」

saga忘れてた…やえさんのとこ泊まるあたりでも二、三回「殺す」入ってるんだけど…
ピーは多分わかるから大丈夫ですかね?

グッ(親指立てる)


【お風呂あがり】

紀子「上がった…何を読んでるの?」

京太郎「やえさんに貸してもらった麻雀の戦術書です」

紀子「…理解できるの?」

京太郎「…いえ、正直、なんでこれ切るのかわかんないのが多くて…」

紀子「当たり前。やえが普通に読むような本はあなたにはまだ早い」

京太郎「…ですよね」

紀子「…解説してあげる」

京太郎「へ?」

紀子「無駄だと言ってもどうせ読むだろうから、理解できないところを解説してあげる」

京太郎「いいんですか?」

紀子「明日も打つわけだから、変な麻雀を覚えられるよりまし」

京太郎「ありがとうございます!で、さっそくこれなんですけど…普通に聴牌目指すならノータイムで発か白ですよね?」

紀子「…これは、河に三元牌が出ていないのがポイント」

京太郎「え?あ、ほんとだ」

紀子「もちろん、ただ山に眠っているだけということもある。本譜はそれを期待する意味もあってここまで役牌を抱えている。けど、この問題の局面は10巡目で、まだ全部山に居るとは考えにくい。それに、10巡目ならすでに張っている人間が居てもいい頃…そこで自分は好形とは言えない2向聴の手」

京太郎「ああ、あと7巡で張れるかって考えたら、張れない可能性の方が高いですもんね」

紀子「そう。そして、対面の手が索子の染め手気配で、前巡に索子が出て来たところ。ここは対面を警戒して白や発には手をかけずに進める。ノーテンも辞さない」

京太郎「レベル高いですね…」

紀子「麻雀では、トビが無ければ最低八局、八回のチャンスが来る。自分の手が悪い時は、相手のチャンスを潰す打ち方が出来れば、潰した分はプラスになる」

京太郎「あー…咲とか毎度のように俺の勝負手潰してくるもんな…」

紀子「ついでに言うと、この牌譜は実戦譜。対面は白と発が対子で順子が赤入り三面張とドラ暗刻。後のツモから逆算すると、この場面で白か発を切ると即座に鳴かれて、次巡で対面に跳ね満を和了られる。実戦は対面が三面張を埋めて白と発のシャボで聴牌。他の二人も一枚ずつ掴まされてオリることになって、対面の一人聴牌で流局した」

京太郎「3000・6000が1000オールで済んだわけですか…なるほどね」

紀子「守りが固いというのは、ただ振り込まないことだけじゃない。押し引きの判断はあるにしても、そんなのはベタオリしてれば誰でも出来る。チャンスを作らせない、敵にチャンスを掴ませない、このプロはそういうのが上手い」

京太郎「へえ…ファンなんですか?」

紀子「…サインぐらいは持ってる」

京太郎「えっ?見せてくださいよ!」

紀子「ダメ。あれは家宝にする」

京太郎「えー」



紀子「…そこまで言うなら、少しだけ…」スクッ

紀子「…足がしびれてる…」ヨロヨロ

京太郎「あ、あぶな…」

紀子「あうっ」ポスン

京太郎「っと、大丈夫ですか?」

紀子「…うん」///

京太郎(風呂上りだからか、いい匂いがする…)

紀子「…もう大丈夫、サインを取ってくる」

京太郎「急がなくていいから、転ばないでくださいね」


【就寝前】

京太郎「ふう、紀子さんは常識があって助かりますね。今夜は悶々とせずに済みそうです」

紀子「…やえと何があったの?」

京太郎「いや、それがですね…あの人、俺の前で服脱ぐわ、バスタオル一枚で歩き回るわ、服着ろって言ったらその場でバスタオル外すわで…」

紀子「…は?」

京太郎「しかも、髪下してるやえさんってめっちゃ綺麗じゃないですか?それが目の前で裸になるとか拷問ですよ、理性が吹っ飛ぶとこでした」

紀子「…見たの?」ゴゴゴ

京太郎「へ?」

紀子「言ったはず、やえに手を出したら、殺すって」ゴキゴキ

京太郎「ちょっ、ギブ!折れる折れる折れる!痛いです!見てません!とっさに目を逸らしたから見てません!」

紀子「問答無用」

京太郎「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ー!!!!」


【翌朝、晩成高校】

由華「おはようございます!」

京太郎「…おはようございます」ズタボロ

紀子「おはよう」

やえ「おはよう」

良子「おー、由華来たか、じゃ、打つかー」

由華「はいっ!」


由華「おやおや、京太郎君、上手くなりましたね。毎局棒テン即リーかベタオリだったのが少しは河を見て考えるようになりましたか?」

京太郎「紀子さんの指導の賜物ですね」タン

紀子「ロン、9600は9900、京太郎、トビ」

京太郎「うげっ!?」

やえ「調子に乗るからだ。七対子に筋が安全だとでも思ったか?」

京太郎「七対に見えないっすよあんなん…」

紀子「ツモにも恵まれた。とは言ってもダマテンに対して無警戒過ぎる」

由華「あははは、多少良くなったけど、まだまだですねー」

京太郎「トホホ…」


【お昼】

紀子「今日はお弁当を作って来た」

由華「うわあ…すごくおいしそう…流石丸瀬先輩!料理こんなに上手かったんですね!」

やえ「…おかしいな、紀子の料理は…下手ではないが、もっと普通だったはずだ」

良子「まあ、美味けりゃなんでもいいだろ。いただきまー…」

紀子「良子には特別にパンの耳を用意してある。好きなだけ食べて良い」

良子「鬼かっ!!?」

紀子「美味しそうな料理を前にしてお預けを喰わせるために頑張った、遠慮せずパンの耳にむしゃぶりついてほしい」

良子「パンの耳だっておいしいんだからな!バカにすんなよ!」

由華「上田先輩、すでにパンの耳が既定路線になってますよ?」

良子「はっ!?しまった…」


やえ「で、これは京太郎の仕業か?なかなかの料理上手だな」

京太郎「あれ、バレました?」

やえ「そんな微妙な顔をしていたら気付くさ」

由華「えっ!?これ京太郎君が作ったんですか!?…うわあ…料理で男の子に負けた…」

紀子「これは男じゃなくてゴミ虫のカテゴリだから気にしなくていい」

良子「いや、それだとゴミ虫に負けたことになるんじゃ…」

紀子「」ガシッ

ゴリゴリ

良子「痛い痛い!肘はそっちに曲がらないって!ギブギブ!」

由華「…むー…これは自信が無くなりますね」

紀子「由華、誰にでも取り柄はある、京太郎はそれが料理だっただけ」

京太郎「そうですよ、それに、少し前までは料理の腕は並以下でしたし」

やえ「少し前まで並以下って、短期間でこうなるものか…よほど腕のいい師に恵まれたと見える」

京太郎「あ、分かります?ハギヨシさんって言うんですけど、大体なんでもこなす万能執事ですね」

由華「うーん…でも、これを作ったのは京太郎君なんですよね?」

良子「…パンの耳は紀子だな。いつものと同じだ」

紀子「あれ?ホントに耳しか食べてないの?」

良子「勝手に食べたらまた関節極めるだろお前」

紀子「食べなくても極めるから気にしなくてもいいのに…」

良子「今さらっと絶望をプレゼントされたんだが」

やえ「さて、京太郎の弁当の後に出すのは気が引けるが、今日は私も弁当を作って来た。ありがたく食えお前ら」

由華「うー…コンビニのパンしか持ってない自分が恨めしい…」


【夕刻】

やえ「今日はこんなもんか、お疲れ様」

紀子「明日には日菜が帰って来る、鹿の飼い方を教わるといい」

京太郎「ありがとうございます」

良子「で、今日も紀子の家か?」

紀子「カピもうちに居るし、問題はないけど…」

由華「京太郎君!」

京太郎「はいっ!?」ビクッ

由華「今日はうちに泊まりなさい!」

良子「いきなりどうした由華?」

由華「い、いえ、流れ的に先輩、丸瀬先輩と来たら私かな、と」

やえ「まあ、理由はともかく、一人に負担をかけるのも良くないしな」

紀子「…好きにするといい」

京太郎「あ、じゃあお世話になります」


京太郎「…なんでスーパーに?」

由華「黙って荷物を持って下さい、私一人で持つには重いんですから」

京太郎「まあ、泊めてもらう身ですから文句は言いませんけど…」


【帰宅】

由華「到着です!」

京太郎「お邪魔しまーす」

由華「あ、ちなみに両親は遅くなるので」

京太郎「あ、はい、わかりま…え?」

由華「とりあえず買った食材をキッチンに運んでください」

京太郎「聞き捨てならない台詞を聞いた気がするがなかったことにしよう、意識するとヤバイ」


由華「さて、お風呂の用意をしてお洗濯も始めましたし…目的を果たすとしましょうか」

京太郎「あの…ちなみに目的とは…?」

由華「親の居ない家ですることと言ったら決まってますよね?」

京太郎「いえ、あの…巽さんにフラグを立てた覚えはないんですが…」

由華「呼び捨てで構いません、由華と呼んで下さい」

京太郎(まじでどうしてこうなってるのかさっぱり分かんねえ…)

由華「では、京太郎君、いえ、京太郎さん」

京太郎「は、はい…」


由華「料理の手ほどきをお願いします!」


京太郎「…はい?」

由華「実は私、料理が苦手なんです…」

京太郎「えっと…まさか、そのためだけに?」

由華「はい」

京太郎「えっと、何故に俺なんですか?」

由華「凄い師匠に教わったんですよね?ぜひ、その秘伝を私にも伝えて頂けないかと思いまして!」

京太郎「さいですか…まあ、そうだよな…由華さんみたいな美人がいきなり好感度MAXとかそんな夢みたいな展開ないよなあ…」

由華「というわけで、お願いします師匠!」

京太郎「はい、俺に教えられる範囲でなら」


【両親、帰宅】

巽父「家に帰ったら娘が男と一緒に料理をしていた、何を言ってるのかわからねーと思うが俺もなにが起きたのk(ry」

由華「いや、ちゃんと言葉に出来てるじゃないですかお父さん。あ、師匠、紹介します、こちら、私の父です」

京太郎「あ、どうも、須賀京太郎と申します。諸事情ありまして、一晩宿をお借りすることになりました」

由華「あ、お母さんには話を通してありますから」

京太郎「由華さんの料理、大分上達しましたよ、食べてあげてください」

巽父「由華が…手塩にかけて育てた娘があんなチャラそうな男に…」

ガチャ

巽母「あら、あなた、先に戻ってたの?ごめんなさい、驚いたかしら?」

巽父「由華が…由華が…」

由華「じゃあ、師匠、デザート作りを…」

京太郎「え?お父さんほっといていいの!?」

巽父「お義父さんだとおおおおおおお!!!??」

由華「あー…ポンコツモードになるとお母さんしか治せないので、お母さん、お願いしますね」

巽母「はいはい、まかせなさい」


【食事中】

巽父「くうう…娘の手料理なのに、美味しいのに、どこの馬の骨とも知れん男に染められた味だと思うと喜べない!!!ぐおおおおおおお!!!」

巽母「あら、美味しい…私自身が料理下手だから娘に教えられなくて困ってたのよね。須賀君には感謝しないと」

由華「好評ですよ師匠!ありがとうございます!」

京太郎「お父さん、血の涙流してるけど好評なの?」

由華「父はほっといて下さい」


【食後】

由華「あ、お風呂先に入っていいですよ?」

京太郎「え?いや、最後で良いですよ」

由華「ほうほう…私の残り湯に浸かりたいと…変態さんでしたか」

京太郎「違う!断じて違う!」

由華「じゃあ、先に入っちゃってください。なんならお背中おながししますよ?」

京太郎「やめて!お父さん睨んでるからホントにやめて!」


【お風呂あがり】

由華「上がりましたよー」

京太郎「あ、はい…ええええええっ!?」

由華「どうしました?」

京太郎「やえさんといい由華さんといい!なんでバスタオル一枚で出て来るんですか!?」

由華「いや、お風呂あがりは汗かきますし、汗が引くまで服着たくないです」

京太郎「せめて服着てから俺のところに来てくれませんかねえええええ!!!?」

由華「えー?お話ししましょうよー、料理のコツとか、レシピとかー」

京太郎「あんたが服着てくれたらなあああ!」

由華「むー、けちー」

京太郎「ケチじゃねええええええ!自分のルックス自覚してくれ!」

由華「じゃあ、料理のお礼に麻雀教えますから、お話ししましょうよー」

京太郎「だからそういう問題じゃなくてですね!?」

由華「京太郎君、先輩の言うことは聞かないとだめですよ?」

京太郎(やえさんよりタチ悪いぞこのひと!?)


【翌日】

紀子「おはよう…目の下にクマが出来てるみたいだけど、何があったの?」

京太郎「…煩悩に打ち勝った名誉の負傷です」

やえ「おお、来たか、おはよう」

カピバラ「カピカピ」

京太郎「やえさん、おはようございます…それなんですか?」

紀子「朝起きたら偶然うちに居たカピバラ。鳴き声はカピカピ」

京太郎「つまり、うちのカピですよね!?」

紀子「もしかしたらそうかもしれない」

京太郎「お手!」

カピバラ「カピカピカピー!」ダンス

京太郎「どっからどう見てもうちのカピです、返してください」

紀子「…残念」

カピ「カピー」

由華「…あれ?ということは、鹿になったカピバラが元に戻ったということですか?」

やえ「そうなるな」

良子「…そうなると、京太郎がここに来た目的って…」

やえ「意味が無くなったな。どうする?後学のために鹿の飼い方でも聞いていくか?」

京太郎「遠慮します」

やえ「ははは、だろうな」

紀子「カピちゃん…」ナデナデ

カピ「カピー」


【帰還】

やえ「ま、なんだ、災難だったな」

京太郎「いえいえ、皆さんと知り合えましたし、麻雀も上達しましたし、良いことの方が多かったです」

由華「あはは、こっちも楽しかったよ。また来てね」

紀子「清澄相手なら練習試合もやぶさかではない」

良子「訳すと、近いうちに練習試合を申し込むから待ってろってことだな」

紀子「…そんなことは言っていない」

やえ「じゃあ、達者でな」

京太郎「はい、みなさんもお元気で」


こうして、奈良で過ごした三日間は終わりを告げた。

後で部長に石戸さんから連絡が来て、神代さんがなにかやらかして日本にいるカピバラの一部が鹿になった可能性があったとか言われたらしい。
日本のカピバラ限定でしかも一部って、どんだけピンポイントでうちのカピを狙ってくれてやがるんだ、あの姫様は。

ま、なんにせよ、一件落着。

結果だけ見れば、得難い友人が4人増えたという嬉しい事実が残った。

今度は、鹿になったカピの飼育方法を調べるためじゃなく、友人に会うために奈良に行こう。




カピが本当はカピバラではないなにかではなくて神代さんのせいになったのか

でもこのカピがクライヴでも何の問題もないな

カピと晩成メンバーのキャラ設定がほとんどオリジナルになりました。
お手で踊るとかカピカピ鳴くとかカピのキャラ崩壊が酷いです。

「またカピが鹿になった」という続編を書く予定で、カピの設定はそっちで使う予定なんですが…
まだプロットすら固まってませんので投下予定は今のところだいぶ先、もしくはお蔵入りコースです。

続きも書けたらいいな…ってことで依頼出してきます。

乙乙
次回も期待

乙ー
なんだこの俺が得するスレは

乙です
途中まで[sage]で書いてたけど、括弧内の様に[sage saga]で書けば両方適用されますよ
知ってたならゴメン
続きに期待

面白かった乙!
和(と久)の連絡は次回に繋がるのかな期待


あれ?友人4人って晩成メンバー確か5人いたような…


密かに由華好きだったから嬉しい

>>48
今回は日菜さんが戻って来てないうちに長野に帰ったので四人で合ってます。

>>45
存じております。最近は投下中は下げないことにしてるのでsagaへの変え忘れです。

>>41
何せ、カバー裏漫画でカピバラではない何かとして書かれてる生き物ですからね。

乙です

久ェ…


続きに期待


晩成好きにはたまらないな

オシトーーーーーーール
ヤックル……

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