【THE・WORLDは止められない】 (360)

【最期のけじめ】

悪の化身、DIOを倒してから三週間。
熾烈を極めたDIOとの死闘から早くも三週間が経とうとしていた。

承太郎「ここか…。」

承太郎は受けた傷が癒えるまでしばし休学と言う扱いとなっていた。
常人なら暫くは動けないものだが波紋と言うものは凄いもので完璧とは言えずとも普通に生活できる程度には動けるようになっているのだ。


まぁ休学しているのだから出歩いてはいけないのだがそんなことを黙って聞くほど不良のレッテルを貼られた承太郎ではない。
学校でもないのに学生服に学帽。だが制カバンではなく控えめな花束を持ち、ある墓地を訪れていた。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420304550

少しだけ爽やかな風が雑草を揺らした
承太郎は墓の間を縫うように歩き目的の場所を目指す

承太郎「探すのに手間がかかったぜ…。だが珍しい名字のおかげか割りとすんなりと見つけられたな」

そう言えばお前はここに越してきたばっかって言ってたっけか?
承太郎は目的であるある名前の刻まれた墓の前に立っていた

承太郎「遅くなっちまったな花京院…。葬式にも顔を出そうとしたんだがジジイに止められてな。コッソリ墓だけでも参りに来たって訳だ」

エジプトへの旅の仲間であった花京院典明。
卓越した技術を持つスタンド使いでありDIOに殺されてしまった男の墓参りこそ承太郎の目的である。

まだ真新しい墓は手入れが良く行き届いていた
慣れた手つきでジッポを付け線香を立てる。
花は少し萎れていたので変えておくことにした

承太郎「確か好物だったよな、チェリー」

供えるために用意してあった皿の上に幾つかパック入りのチェリーを置いてやる


いつだったか花京院がチェリーが好物だと言っていた
丁度その前に花京院の奴に化けたスタンド使いが同じチェリーの食べ方をしていたものでとてもじゃないが驚いた
まさか花京院があんな食べ方をする奴とは思いもしなかったからだ。一瞬敵がまた懲りずに化けているのかと身構えはしたが

「すいません……どなたですか?」

しゃがみこみ花京院の墓に静かに合唱し帰ろうとしたときに背後から誰かに声をかけられた
その声はどう考えても俺に向けられており、いぶかしむ気持ちがひしひしと感じられる
その声はこう続けた

「もしかして…典明のお友達?」

思わず俺は立ち上がった。その視線の先にいたのは少し前髪が特徴的なご婦人だった

直感でわかった。どう見たって…花京院の母親だ。顔立ちが良く似ている
俺は立ち尽くして何も言えなかった
呼吸一つすらマトモに出来ない錯覚に陥った

『良いか承太郎。お前は花京院の親御さんの所にも墓にも行っちゃならん』

エジプトから帰る飛行機の中でジョセフはそう告げた

『どういう意味だジジイアイツは俺の仲間だぜ?まさかボケちまったのか』

声は冷静だが怒りは込み上げていた
共に戦った仲間の死を弔えないと言うことに怒りを覚えない人はいるだろうか?

『花京院の件はワシ一人でケジメをつけると言っとるんじゃ』

ジジイは昔共に戦った仲間を死なせてしまった過去があると言っていた
だからこそ自分が助けられなかったものを背負って来た。それを自分以外、ましてや孫になどには背負わせるにはいかないと言ったのだ


勿論反抗した承太郎だったが葬式の日取りすら伝えられず結局自分で探すしかなかったのだ

恐らく花京院の親には俺に関して、いやDIOのこともスタンドのことも伝えられちゃいないのだろう。
ジジイが一人で背負い込んだ物をぶち壊すわけにはいかない

(と思ってコッソリ来たってのに鉢合わせちまうとはな、やれやれだぜ…)

俺自身の正体を明かすのは不味いことだろう。やるべきではないハズだ
ならただ一礼して帰るとするか。

「あなた、もしかして典明のお友達なの?」

悲痛な言葉が俺に刺さる
『友達』、その言葉が典明にとってどんな重みのある言葉か…。

花京院はスタンドが見えるのは周囲には全くいなかったと語っていた
生まれつきスタンドを持っていたが故に本当に心を許せる仲間と言うのを作れちゃいなかったのだ。無理もないだろう
他人に、ましてやスタンドを見えない人にスタンドを理解してもらうことは相当無理があるのだ

「…………そうだ」

俺自身、花京院は『友達』なんて生温いもんでは無いと思う
共に一つの目標に向けて戦った『仲間』、ほんの少しの期間だったが固く強い絆を育てた真の『友』だったのだ。

「花京院は……典明は俺の『友達』だ」

俺は一言呟いた

どんな言葉を投げ掛けるだろうか
花京院の死はどう伝えられてるかもわからない
だが今さら友達だと言うのが出てきてもにわかに信じられないのではないか

罵るのだろうか?けなすだろうか?
だがその次の一言は予想だにしないものだった

「………ありがとう」

罵声でも何でもない、ただ一言の礼だった。
重く深く、俺には不釣り合いでしかない礼だった

「典明の友達で……友達でいてくれてありがとう」

涙声で言い切ったあと、花京院の母親はぼろりと壊れた彫刻のように泣き崩れた


深く帽子を被り直し、俺は墓場を立ち去る
墓の間に生えた雑草はエメラルドグリーンの輝きを放っていた


END

リクエストにお答えしてシーザー行ってみるか。
取り敢えず少々お時間を下さい~

【受け継がれる志】
水の都ヴェネチア
美しい芸術の土地にある誇り高き血統と崇高な志を持つ青年がいた
どつやらトランク一つの荷物を片手に誰かを探しているようである

「さて……中々いいとこじゃあないかヴェネチアってのも」

下ろし立てのスーツをラフに着崩し、頭にはバンダナを巻いている青年、シーザー・アントニオ・ツェペリである
ある男の遺言に従って俺はこの地に来ていた

「私の死をヴェネチアにいるリサリサと言う女性に話してくれ」

それは久々に、やっと再会できた父親である男の最期の言葉だった
俺の父親がどこにいったかなど全くもって覚えちゃいなかった。突然の蒸発だったからだ
だが数年ぶりに父親を見つけた瞬間、人生が劇的に変わった

ノコノコと故郷ローマに出てきた父を追った先に見たものは、人智を越えた壁の中の存在
それに迂闊に触れてしまった俺を助けたのは他でもない、憎み続けた父親だった

やっと再会できた父は俺の成長した姿と気付くこと無く壁に取り込まれてしまった
俺は瞬時に理解した
父がいなくなったのはこの壁を知ったからのだと。自らを犠牲にして他人を救うような男がこの壁面を見て知らないフリ等出来るはずが無かったのだ
だからこそ、彼は家族を捨て、自ら一人で全てを背負ったのだ
家族を巻き込まないために。全ては不器用な優しさから来たものだったのだと知った

全てを知った俺は今ヴェネチアにいる
だがリサリサと言う女性は何処にいるのか見当がつかない
詳細は女と言うことしか知らないのだ
このヴェネチアで一人の女性を探すのにはヒントが足りなさすぎる
そう考えていた時、ある女性に目を奪われた

真っ赤な唇に美しい黒い髪、決め細かな白い陶器のような美しい肌。そして微かに感じる寂しそうな雰囲気
俺は次の瞬間にはこの女性の下へ歩いていった
寂しそうな雰囲気を持つ女性をほっておいては伊達男の名が廃ると言うものだ

「お一人ですか、素敵なお嬢さん?」

慣れた手つきで向かいの席に座ると優しげに警戒心を与えないように声をかける

「ナンパならば結構よ?生憎私は軽い女じゃなくてね?それにある人と待ち合わせていますの」

彼女は動じる様子もなくサングラスをかけたままツンと言い放った
どうやらナンパされなれているらしい
普通の男なら「ちぇっ、お高く止まりやがって!」とふて腐れるかもしれない
だが俺は違う

「まぁまぁ固いこと言わずに…ウェイター、この女性にあったワインを」

少しあっと驚く手品を見せてみようかな
そうすればそっぽ向いてしまった顔もこちらに向くだろう

運ばれてきたワインのコルクを抜こうとするウェイターを止める

「君との出会いに少し手品を…」

ワインのボトルを掴むと少し独特な呼吸を始める
バチバチィッ!っと電気がショートしたかのように火花が散り、コルクはスポンと抜けた
生まれつき俺には不思議な力があり、ワインボトルのコルクぐらいなら栓抜きなしで開けられるのだ

だが彼女は何の興味もないようにワインをグラスに注ぐとあろうことか指を突っ込んだ

「マンマミーア!手癖の悪いお嬢さんだ!」

思いがけない行動についこんなことを叫んでしまった
だが次の瞬間には言葉すら出せなかった


彼女がグラスから指を抜くとその指を拠点にワインがゼリーのように固まっているのだ
しかも一滴たりとて溢してはいない
完全にワインは空中で静止しているのだ

「近くでよーく見てみたらよろしいのでは?」

恐る恐るワインに近づいてみると微かに俺と同じような電気のようなものが見えた
だが次の瞬間!
いきなりワインが爆ぜ、顔やスーツにこれでもかとワインが飛び散った

「な…何で俺と同じことが出来るんだ…?何者なんだお嬢さん…」

俺と同じことが出来る人を見たのは始めてであり声が震えた
情けないことだがビックリしたのはこっちの方だったのだ

「待たせたなリサリサ、商談がやっとまとまってね」

驚く俺を尻目に顔に傷のある老人がここに来た
だが俺が驚いたのはそこじゃなかった

「リ、リサリサだってぇ~~ッ!?」

思わず大声で叫んでしまった
さっきまでナンパしていた人が探していた人だったのだ

「君は誰だい?」

そう言えばこの男は確か新聞で見たことがあるぞ……そうだ!あのSPW財団の社長じゃないか!

「ただのナンパ男よ」

リサリサと呼ばれた女性はサングラスを外し蔑むような目でそう言った

「ま、待ってくれ!あなたホントにリサリサなんですか?」

声が裏返って裏返って仕方無いのだ
恥ずかしいのと焦りとその他もろもろのせいである

「そうだけど…まだ何か?ナンパ男さん?私を口説くのだったらあと10年は…」

「マリオ・A・ツェペリを……父を知っていますか?」

父の名を出した瞬間、二人の顔色がサッと変わり、リサリサの眼はただのナンパ男を見る目じゃなくなっていた

「あなたの名前は?」

「シーザー・A・ツェペリ、マリオ・A・ツェペリの息子です。」

震えは止まらなかった
止めることも出来なさそうだ

「マリオは…どうなったの?彼はローマに帰っていたはずだけど」

リサリサは震える声でそう尋ねる
タバコをくわえようとする手は平静を保とうとしているが恐らく無理だろう

「父は…父を俺を…俺を庇って死にました…。あとリサリサさん…タバコ逆さまですよ」

自分の無知、無力さに嫌気がさしてたまらない。それ故に父さんを殺してしまったも同然なのだから
だが俺にはやるべきことがあることを知った

次の瞬間、俺は地面に頭を擦り付けるような姿になった、所謂土下座だ

「リサリサさん、いやリサリサ先生ッ!先程の無礼をお許し下さいッ!」

土下座した姿勢でリサリサ先生に謝罪する
土下座なんて普段なら屈辱過ぎてしないだろう。だが今は違う
土下座の姿勢のまま続ける

「そして俺に父のやっていたことを教えて欲しい!継がせて欲しいんです!父さんのやろうとしていたことを!父さんの志を!そのためならなんだってします!どれだけ辛いことでもやり遂げて見せます!御願いします!
さっきのような技を、俺のこの力の使い方を教えてください!!」

この地に俺を行かせたのは運命だったのかもしれない
俺がこの地に来たのは、崇高な志を継ぐためだったのだ

「そっくりね。あなたの父親と同じ。その真っ直ぐな瞳は父親譲りね」

タバコを直したリサリサ先生は寂しそうな笑みで俺を見た

「良いでしょう、マリオの意志を継ぐのならついてきなさい。でも修行は厳しいわよ?」

その一言を聞いた瞬間、笑みがこぼれた
俺は父の意志を、誇りを継げるのだ。

「よろしくお願いします!」

深々とリサリサ先生にお辞儀をした



そしてこの日俺は父さんのやって来たこと、ツェペリ家が追い続けてきた石仮面と言う存在について知ったのだ
その日から俺の血統は、ツェペリ家の魂は誇りとなった

(あぁ………今こんなことを思い出すなんてな…)

最期の波紋を絞りだしもう何も残すことのない
最早何の気力もなくなったこの瞬間に思い出したのはあの日のことだった


(リサリサ先生、ジョジョ。俺の魂は…そこにある。だから哀しむ必要なんてないんだ
こんなところで立ち止まらないでくれ。泣かないでくれ
俺の魂を受け取ってくれ、ジョジョ。



去らばだ、我が魂の『友』よ。)




END

少し長くなってすいません!
ジョジョキャラ限定でリクエストくれると嬉しいです

了解です
少々お待ちを……

【受け継がれる者。受け継ぐ者。】
オウガーストリートから複数の仲間を連れ、新天地アメリカへ旅立とうとしていたときにある凶報が俺に届いた

「ジョースターさんの船が大事故だとッ!?おい嘘だろッ!?」

ディオとの戦いのあと、新婚旅行に行ったジョースターさんの船が大事故を起こしたと言うのだ
しかし生存者は二名、しかも担ぎ込まれた病院は近いらしい

「こうしちゃいられねぇ!すまねぇ船の旦那、男スピードワゴン、恩人が危険な目に合っちまってるんだ!行かなきゃなんねぇ!」

船の旦那に告げたあと韋駄天のごとく走り病院へ向かう
無事でいてくれよ、ジョースターさん!!

だがしかし、病院で待ち受けていたのは非情な現実だった

「ジョースターさんが…死んだだと…!?」

二人の生存者、一人はエリナさん。だがもう一人は違ったのだ

「あの人はこの子と私を庇って…船と運命を共にしました。」

エリナさんの話ではまだゾンビが生き残っていたがジョースターさんが決死の覚悟で船を爆破させ偶然生き延びたこの赤ん坊と共に脱出させたらしい。

「この無関係な子を………ジョースターさん…あんたって人は、どんだけあまちゃんなんだよォ」

最期の最期までジョースターさんは他人のために生きたのだと言う
あの人らしい最期だが、自らを犠牲にしてしまうなんてあんまりじゃないか…

「けどジョースターさん……エリナさんを残していっちまうなんてよぉ、あんまりってもんだぜ」

しかも聞くところによればエリナさんはお腹に子供がいるらしい
幸せの絶頂だって言うのにそりゃあ無いぜ

「決めたぜエリナさん。俺はジョースターさんの代わりにあんたらを守る。あんたたち二人を 守って見せる」

どうせジョースターさんに会っていなければオウガーストリートで燻っていたんだ
ジョースターさんのために投げ出しても何の問題もないのだ
だがエリナさんの答えはNOだった
理由はこうだ

「きっとジョナサンは貴方が貴方の道を行くことを望みます。ですから私とこの子供の為なんかに人生を棒に振ってはなりませんよ」

あぁジョースターさん。貴方の選んだ女性は芯の通った強い女性だ
素晴らしい女性だぜ

「ホントにいいんですかい?スピードワゴンさん、恩人の葬式に出なくて」

「あぁ…ジョースターさんはそんなことを望んじゃあいないさ…。俺は胸を張れる男になって帰ってくる」

そうだろう?ジョースターさん
こんな未熟な俺でもあんたのそのお人好しのあまちゃん精神を受け継いでもいいよな?

「俺も自分の知らねぇ世界を探しに行くさ!先ずはアメリカって場所へな!おめぇらも達者でやれよ!」

スピードワゴンはクールに去るぜ…。
こうして俺は単身アメリカって場所へ旅を始めた
だが俺を待っていたのは想像を絶するモノだった

「あっちいなぁ………昔行ったジャングルとは違うからっとした暑さだぜ……」

何の因果かタンクトップ一枚で砂漠を放浪している
大体、何故こんなことになったのかと言うと、アメリカに着いて直ぐのことだった

「おいおいさっさと働きやがれッ!このクロンボ!また賃金減らされてぇのか!?」

年端もいかない黒人の子供が無理矢理働かされているのだ
ウィンドナイツ・ロッドで出会ったポコぐらいの歳である

アメリカは移民の国だが、黒人差別が未だに健在だったのだ
特に低賃金で働かされ続ける子供は負のスパイラルから抜け出せずにいた
それを見て見ぬふりなど出来るはず無かったのだ

「おいあんた、その子供は病気じゃねぇか。休ませてやんな」

あんたならこうするよな?ジョースターさん

「あぁ~ん?このクロンボはウチで雇ってんだ!このクロンボだけじゃあねぇんだよ!この国じゃクロンボにデケェ顔させねぇんだ!カネと白人がこの国のルールだからなァ!」

こんな外道がいやがるなんてな
ゲロの匂いがプンプンするような奴だぜ

「いくらだ」

「あぁ~?何だってイギリス野郎!聞こえねぇぞ!」

「ここにいる黒人の給料はいくらだって聞いてんだ。早く答えろ。カネと白人がこの国のルールなんだろ?」

肩の手の力が強くなっていき軋む音がギリギリと響く

「フヘヘヘヘェッ!物好きな野郎だなぁおい!良いだろう、一人当たり五百ドル!びた一文負けねぇぞ」

男は肩の手を振り払うと薄汚い笑みを浮かべそう言った

出来るならぜひ続けてくれ!

3部以降でも良いなら、花京院の話に似た追悼話の5部verで。無理なら別にいい。

「何一つ言えないのならそんなことをするな!お前のすべき事は何か…考えてみろ!」

スピードワゴンのじいさんの一喝のお陰で目が覚めた
自分の考えていること、していることの愚かさに

「ありがとうよ、スピードワゴンのじいさん」

スピードワゴンのじいさんと堅く握手をするとパーティー会場から逃げるように外へと出た
行く場所は勿論、アイツのいる我が家だった

「スージー、スージーQ!いねぇのかスージーQ!!」

家に入るなり大声でスージーQを探す
もしかしたら愛想をつかして何処かへ行ってしまったのかも……

「何々!?どうしたのジョセフ!?」

慌てて出てきた様子のスージーQを見た途端、駆け寄り強く抱き締めた

「えっ……ちょっと…ジョセフ!?どうしたの急に!」

戸惑うスージーQなど気にすること無くただ抱き締めていた

「すまねぇ…スージーQ…俺が間違ってた……ホントにすまねぇ…」

掠れた声で何度も何度も詫びを入れる
力を入れれば涙がこぼれそうだからだ
スージーQの顔をまじまじと見つめる
少し小皺が増えたかもしれない顔だが、昔の頃と変わらず、いやとても美しさに磨きがかかっていた
彼女の顔を見ていれば、老いることなんて何ともないように感じられた
老いることは恐れるのではなく楽しむべきものなのだと、いつも近くにその答えはあった。なのに俺は見逃していたのだ
こんなにも美しいモノを、俺は自ら見ないようにしていた


この日から、俺は波紋の呼吸をしなくなった
もう老いることに抵抗なんて無くなった
美しくなるスージーQのとなりで、俺も美しく老いて行こう………そう決めたのだ





この後彼は『ニューヨークの不動産王』ジョセフ・ジョースターとして更に世界に名を知らしめて行く
その彼が一人娘の嫁入りに戸惑う日は……また別のお話



END

何とか【ジョジョ・ウォールストリート】完結したけど、元ネタの影も形もない!
一応映画の方では奥さんと別れてしまったから、波紋の呼吸を止めた理由も兼ねて二人の絆を重点的に書いてみました…
とにもかくにも読んでくださった方、ありがとうございました!
>>50さんのリクエストである五部追悼編は明日から書き始めます。遅れて申し訳ありません…

【追悼の風】
「ここは……いい町だな」

爽やかな風が吹く町は、とても平和であり美しい
そこで僕はあるリストランテへ入った。この町一番のピッツァを出す店らしい

「いらっしゃいませ……ご注文は?」

店の奥から出てきた店主は人の良さそうな顔で注文を取りに来る

「このリストランテには、楢の薪で焼く熱々のマルゲリータが有名だと聞いて来てみたんだが、それにポルチーニ茸を乗せて貰えないだろうか?………出来る?グラッツェ…よろしくお願いします」

この僕の少し我が儘な頼みを快諾してくれた店主はピッツァを作りに公房へと入っていった

「やはりこの町はとてもいいな…とても」

リストランテの窓から見える子供の遊ぶ姿を遠い目で見ながらポツリと呟いた

「意外にでかいな……食べきれるだろうか?」

勿論味も香りもとても良いのだがいかんせん一人で食べきれるものか難しそうな大きさなのである
これならミスタの奴も連れてきておくべきだったなと半ば後悔しながら熱々のマルゲリータにかぶり付く
すると窓の外にある少年が通った
普通なら気にも止めること無い存在のはずが、ソイツは僕の目を釘付けにした


ソイツはアイツに似ていた。始めてあった残飯を漁っている頃のアイツと同じ目をしている
誰も彼も、信じらんねぇ…信じたくもねぇ…
そんなこの世の薄汚い情念が渦巻いているかのような、そんな目をしていたアイツに

気付いたら僕はそいつの手を引くとその青年に余っていたピッツァを差し出した

「食べなよ。僕はもうお腹いっぱいでね。これだけで足りないなら追加してもいい」

ソイツは驚いて何も言えず固まっていたが腹の音がなった瞬間にはガツガツと涙を流しながらピッツァにかぶり付いていた
僕は無言で彼の食事風景を見ていた


この町でこの少年に出会ったことは何かの縁なのだろうか?
アイツにそっくりなこの少年がこんなところにいるのは……運命なのだろうか?


ソイツはピッツァを食べ終えると僕にこう尋ねた

「あなたって…ギャングですよね?身のこなしも年のわりにも落ち着きがある。かといって身なりはきっちりとしている」

ここまではっきりと見抜ける辺りは、アイツとは違うところだな

「ギャングなんだろ?頼むよ、俺をギャングにしてくださいよぉ。もうどうなったっていいんだよ俺はよぉ……」

その少年の悲痛な目を見た瞬間、僕の返事は決まっていた
無言で力一杯の一撃を少年の腹へ見舞う
当然その少年は吹っ飛んでいく
腹を抱えて苦しむ少年にこう吐き捨てた

「ギャングになりたい?自分なんてどうでもいい?ふざけないでくださいよ、僕のいる世界はそんな生半可な覚悟で入ってチャラチャラしていられるような世界なんかじゃあないんですよ。
この世界から掃き捨てられてごみ溜めの中で這いずり回った奴等が最後に落ちる場所なんですから」

そして顔を持ち上げ、その少年の目を見据えた

「君の目には…覚悟も凄みの欠片もない……。だが君がホントに覚悟が出来たなら、僕達の元へ来てもいいですよ」

そう言った後、幾らか病院代を渡すとその場を後にした

次に僕がたどり着いた地は無縁墓地である
簡素な花束を手に僕はある人の墓参りに来ていた
ナランチャ・ギルガ。僕の組織のメンバーでありある戦いで死んでしまった少年のためだった

「……あのとき、君は船に乗った。自分の意思で覚悟をもって」

ド低脳と罵った事もある彼は本当は僕よりも重要なことに気付いていた
今更になって君の墓参りに来る資格も無いような恥知らずだけれど、僕なりに成長したつもりだ

「僕は君のその勇気ある意思と覚悟に敬意を表する」

花束を墓へ添えしばしの黙祷を終えると耳に付いていたイチゴのイヤリングが風にそよいだ

「そうだ、君の食べようと思っていたピッツァ、とても美味しかったよ……。それじゃあ、アリーヴェデルチ」

そう墓に礼をすると、僕の町へと帰ることにした
今度来るときはあそこのピッツァを持っていくことにしよう。そんなことを考えながら……





END

>>50さん、一日も跨いでしまってすいませんでした……
読んでいただきありがとうございます!

さてさて、ジョジョキャラ限定ですがまたリクエストをお受けしたいと思います!
なるべく早く書いていきたいのですが遅くなってしまうことは許していただけると助かります

>>81
ジョルノ編乙

それじゃあ・・・仗助達に出会う前の重ちーとか、書ける?

あえて吉良の親父さんをリクエストしてみる

>>84
しげちー編、全力で書かせていただきます
確か別のSSでもしげちーの過去編がございますので、なるべく被らないようやっていきたいと思います
>>85さんのは終わり次第書かせていただきます。少々お待ちください

【おらの親友】
ソイツはおらが小さい頃から一緒にいてくれたど
ソイツは小さくていつでも出てきて、特におらが寂しいと思ったときにいてくれたんだど

「ママ、おらの周りのこの小さいのなんだど?」

あるときホントに不思議になっておらはママに聞いてみたど
けどママは首をかしげて可笑しなしげちー。と笑っていたのを覚えてるど
パパにも言ってみたけど、やっぱり笑っていただけだったど


「わかったど、こいつって、おらにしか見えない妖精なんだ!」

周りのみんなに聞いても変なしげちー。と言うだけで教えてくれなかったから、きっとおらにしか見えてなかったんだとわかったど

「うーん、うーん、お前の名前は……うーん」

ソイツの名前を付けてやろうとしたけど、おら考えるの苦手だからパッと目に入ったお菓子の名前にしたど。おらの大好きなお菓子の名前にだど

「お前の名前は、『ハーヴェスト』だど!ヨロシクな、『ハーヴェスト』」

ソイツは気に入ったのか小躍りしてて、見てるおらもとても嬉しかったど

けど小学校にはいるとみんながおらをからかうようになったど

「やーいやーいのろまのしげちー!勉強出来ないマヌケやろー!」

おらはいっつも徒競走じゃあビリッケツだったし、計算も両手を使わないと良くわからなかったど
それに皆には見えなかった『ハーヴェスト』は嘘つきだって、言われたど
何度も何度もおらの前にいるんだって言ってもその度にゲラゲラと笑いながらこういうんだど

「また始まったぜ!嘘つきぼっちのしげちーのお友達自慢がよ!」

「その『ハーヴェスト』って奴をさっさと見せてみろよぉ?見せらんねぇのか?」

おらはだんだんと小学校には行きたくなくなったど
友達はだんだんといなくなっていってしまったど
けれど友達がいなくなる度に『ハーヴェスト』はどんどん増えていったから、寂しくは無かったど

『ハーヴェスト』はとっても良い奴等だったど
おらが欲しいと思ったモノを、持ってきてくれるど。エンピツでも、消ゴムでもお金だって持ってきてくれる、スゴい奴だど
それに、悪口は一切言わなかったど
小さいのに皆で力を合わせてとっても速くおらを遠くへ遠くへ運んだり出来たど


けどそんなある日ある事件が起こったど
いつも通り消しゴムを忘れたから『ハーヴェスト』に持ってきてもらって使っていたら僕を指差してクラスメイトが言ったんだど

「それ!僕の消ゴムじゃあないか!返せよッ!盗んでんじゃあねぇよのろまのしげちー!」

そのままおいらに近付くと消しゴムをひったくっておいらを突き飛ばしたど
おいらもこれにはかっとなって殴り返そうとしたら、『ハーヴェスト』がいきなりおらの代わりにソイツの鼻を抉ったど

ハーヴェストは小さいから精々ソイツは鼻の穴が少し大きくなっただけだったど
けれどソイツは大泣きしておらはそのまま職員室へ連れていかれたど

「おらじゃないど!『ハーヴェスト』がやったんだど!」

何度も何度もおらはやってない、『ハーヴェスト』がやったんだと言ったけど、誰一人としておらの事を信じてくれなかったんだど
果てには先生にまで嘘つきだと罵られたど

ママが学校に来て、何度もおらの代わりに謝ってたけれど、おらは謝りたくなかったど
だって『ハーヴェスト』がやったんだど
なのにおらが悪いなんて理解不能だど!

「どうやらしげちー君は頭がおかしいみたいですねぇ?とんだ嘘つきの問題児ですよ!」

先生がそう言った瞬間、ママの目付きが変わって、こう言ってくれたど

「しげちーはそんな子じゃありません!嘘つきなんかじゃあありません!」

凄みをもってはっきりと言ったど
ママは見えていなくたって、嘘をついていないと信じてくれたんだど

学校から帰ったあと、ママはこう言ったど

「しげちー…あなたにしか見えない友達はママとパパには見えないわ。だけれどね、ママとパパはあなたを嘘つきなんて思わないわ。世界中の誰もがあなたを嘘つきなんて言ったって、パパとママはあなたを信じ続ける。だから今日みたいに暴力を振るうのだけはダメ。もう振らないって約束して」

そう言ってママは優しく抱き締めてくれたど
おらは嬉しくて、暖かくて、止めどなく溢れる涙を止めること無く流しながら暴力を振るわないと約束したど



その日からおらは暴力なんて振るわなくなったど
『ハーヴェスト』にも人間を襲っちゃいけないときつく言い聞かせたど
謝ったけれどクラスの皆から無視されるようになってしまったど
でもおら寂しく無かったど
だって、寂しいと思う度に『ハーヴェスト』は増えていって、今では五百体はいるからだど

そして中学生になったど

相変わらず勉強はわからないし徒競走じゃあビリッケツだし友達はいないけれど、おらにはおらにしか見えない友達がたくさんいたど
『ハーヴェスト』達が迷子になら無いように杜王町からは出ちゃいけないって教えてやったど


けれどやっぱりおらは『ハーヴェスト』だけじゃ寂しいど……
もし、おらのこの友達を見ることができる友達が出来たら……
その時は…ホントの『友達』が出来るかもしれないど


「見ろっ!あの木の根もとに集まっていくぜ~!」

「気を付けろっ!近くに『本体』がいるぜッ!多分ッ!」






To be continued……………

以上で【おらの親友】完結です
To be continuedなのは本編に繋がるからENDより良いかと思いまして……
何はともあれ読んでくださった方ありがとうございます!

>>85さんのは遅くても明日から書かせていただこうと思います
待たせてしまいもうしわけありません

PS.【追悼の風】の主人公はフーゴです
分かりにくくて申し訳ありません!

シュトロハイム最後の戦場なんか見れたりするのか・・・

>>98
それは中々面白そうじゃあ無いですか!
>>85さんの次に書いてもよろしいですか?

6部のガソリンスタンドの続きを書いてくださいオナシャス!

【原子父心】

エジプト、とあるマーケット街

「仕事とはいえ……エジプトなんぞに派遣するとはあの部長め。ふざけおって」

淡々と仕事はこなすものの愚痴の一つも言いたくなる
何でこんな小汚ない異国なんぞに来なくちゃあならんのだ
しかも仕事の内容も一日二日で終わるようなものじゃあない。エジプト旅行のパンフレット用の写真だとォ?
こんなくそ暑い地に良いことなんぞ無いではないか
誰が好き好んでこんなところに来たがると言うのだ全く

「もしもし…旅のお方…」

半ばイライラしながら歩いていると小さなババアに話しかけられた
良く見ると両手ともが右手と言う何とも奇っ怪なババアである

「ええ~っと、私ですか?あの、押し売りとかだったらいらないんで」

良く日本人をカモにする奴を見かける
どうやらこのババアもカモにしようと言う魂胆らしい。そんなババアの者なぞ買ってやるか

「ふぇっふぇっふぇっ………そう蔑ろにすると後悔しますぞ?」

気味の悪い笑い声を上げながらババアはある館を指差した
どうやら面白いものはあの館にある…とのことらしい
まぁ良い。このババアの口車に乗ってやってもなんの問題もない。勿論何も買わないのだが

「良く来たね……入りたまえよ…暗がりですまない。個人的に太陽は苦手でね」

その館の中で、金色の頭髪をした白人が足を組ながら私を待っていた
その男の声は、安心感と不安感を一度に押し寄せさせるかのような声であり、その声を聞いた瞬間最早私は一縷の疑問もなくその館に入っていった

「君を待っていたんだ…。吉良吉廣……で良いかな?」

その男は私の名前を一瞬で言い当てて見せた
私が名乗ったわけでもなく何かを見せたわけでもない。暗記してきたテストの答えを書くかのように言い当てて見せた

「驚かなくて良い。別に私は君を取って食おうって訳じゃあない。恐れる必要は無いんだ。君の悩みを解決してあげよう」

「そうだな…まずは私と友達にならないか?」

その男の妖しい色気とゾッとするほど暖かい口調に私は何も言えなくなり、無言で頷いた

「そう強張る必要は無いんだ。君の悩みを解決してあげよう。その代わり私の悩みも一つ解決する、持ちつ持たれつと言う関係と言うわけだよ良いかな?」

こいつのさっきから言う私の悩み…まさか知っていると言うのか?知っているわけがない
これだけは誰にも言えないし言ったこともポロリと溢したこともないのだ
なのに何故だ?

「簡単な事だ……だが君にしか出来ない。もし断れば…分かるだろう?」

その言葉の中には別に死んでもらって構わない…そう感じられるものがあった
つまり断ることは死ぬと言うわけだ

「君には今からある試練を受けてもらう……なぁに…単純な試練さ」

その男が指を一つパチリと鳴らした
次の瞬間、あの小柄なババアが弓矢を構えると制止する暇もなく私を正確に射抜いたのだ
最も驚くべきことはその矢に射抜かれた私は痛みこそ感ずれど生きていたのだ

「ぐげっ……ゴゲェッ!!」

「おめでとう吉廣…君は『矢』に選ばれたのだな」

パチパチと控えめに拍手をしながら私へと近付いてくると男は妖艶な笑みを浮かべながら力任せにその矢を抜き去った

矢が引き抜かれた瞬間、何かが自身に宿るのを感じた
いや、自身の中に眠る蕾のようなものが開花したとでも言おうか?

「さて……これで君の『息子』に関する特殊な悩みを解決する方法が宿ったろう?」

やはりこの男、知っている。私の悩みを
打ち明けられるはずの無い悩みを
私の『息子』の持つある衝動の事を、その悩みを

「ところで私の悩みと言うのは……この『矢』に関してだが……日本へ持ち帰り君と同じ片鱗を持つ者を探し出して欲しい。射抜くべき者はこの『矢』が指し示すだろう…。勿論礼はする。私のために働いてくれるな?」

少し血の滴る左胸を抑えながら恐怖に震えながら頷いた
私悪魔に魅入られたのだ
最早抵抗することは不可能だった

仕事を終え、日本へ戻った私はガクガク震えるのみだった
自身に何が宿ったのか。分かったもんじゃあないのだ
今のところ何も見えはしないが……何もだ

「只今……帰ったぞ…」

疲れきった顔をしながら帰ると、妻が出迎えた
割りと出来た評判の妻、そして

「お帰りなさい父さん…エジプトまでなんて大変だったね」

良くできた近所でも評判になる息子、吉影である
せがれは私の誇りであり、様々な大会やコンクールで賞を貰うこともしばしば。成績も一番とは言わずとも優秀なものである
だがその優等生な男の裏の顔を知るのは私だけである

「あぁ…エジプトは大変だったよ…」

そう告げると一旦私の部屋へと戻った
せがれを救うための手立て……一体何なのか

そう言えばあの男はこんなことを言っていた
この『矢』で宿るモノはその者が心から望むものだ、と。
深層心理で望んでいるものがそこに出てくるのだと
だとしたら私の望んだものとは……
そう物思いに耽っていると、夢の中へと引き込まれていった

その夢は少し昔のボーイスカウトキャンプのことだった
私は写真を撮るためにそのボーイスカウトに参加していた。勿論吉影もである
そんなとき、吉影の写真を撮ろうとしたときに何処かへ行ってしまっていることに気付いた
私は吉影を探し回っていると、吉影を見つけた
だが私は話し掛けることが出来なかった



何故なら吉影がなんの表情もなく猫を殺していた真っ最中だったのだから

私は無言で立ち尽くしていた
木の枝をポキリポキリと折る子供の頃の吉影と何の差も無い表情だったのだ
まるで生き物を殺すことは自身の生活の、人生の一部であると言わんかのように何の表情もなく。無言で

しばらくして満足したのか吉影はその場を立ち去った。立ち去ったあと私はその猫の死骸を誰も見ることの出来ない場所へ捨て去った

私は知った。吉影には運命付けられたモノがあることを
他者を殺さねば気がすまない…いや他者を殺すことが自身の人生の一部の欲求なのだと
この秘密はバレてはならない
吉影のために
大切な息子のために


その日から私は吉影のために彼の殺戮を補助した
死体の隠蔽は勿論のこと凶器はコッソリと仕事へ出張した先へ持ち込み捨て去った

だが最も恐れていた事を知ってしまった
あるとき私は見てしまったのだ。吉影の殺人現場を。殺した人から手首を切り落とし持ち帰っていたのだ
乱雑に切り取られた手首、恐らく女性のものであるそれを
ついに吉影はやってしまったのだ
何かを壊す衝動は猫だけじゃあ飽きたらず人を[ピーーー]までに成長したのだ


当然私はその女性を処理しながら恐れ戦いた
恐らく吉影はこの先女性を殺し続けるだろう。だが私はそれを補助し続けることはできない…出来ないのだ
吉影よりも先に死ぬことは自明の理である


私はあの猫を処理した日から、私は暗い暗い光の当たらない道を歩み続ける事になったのだ
それは吉影の『植物のような平穏な生活』のためなのである
その悩みは消えること無く、私を苦しめ続けた。その矢先にあの男に出会ったのだ
『DIO』と

だが最も恐れていた事を知ってしまった
吉影は猫に飽きたらず人まで殺め始めたのだ
そしてあろうことか吉影は女性の右手を切り落とし、大事そうに持ち帰っていったのだ


私はその女性を処理しながら恐れ戦いた
もう私は逃げることはできない
何処までもこの秘密は私を追い続けるだろう
全ては吉影の『植物のような平穏な生活』の為だが、私には全てを処理し続けてやることは出来ない
恐らくと言うか確実に私が死ぬからだ
その時、あの摩訶不思議な男、『DIO』に出会い『矢』に射抜かれたのだ


私が目を覚まし朝居間へと行くとあることに気付いた
吉影の清々しそうな表情である
あの表情は『何事も上手く行っている』時にする独特な表情だったのだ
それと同時に吉影の側に立つ幽霊のような謎の存在を認識した

>>110はsaga忘れなんです…だから書き直した>>111>>109の続きなんです…紛らわしくて申し訳無いです

「ふむ………それは『スタンド』と言うものだ吉廣よ」

『DIO』はそう言っていた。吉影に宿ったものは精神の具現体なのだと
恐らく吉影の深層心理が反映された力を持っていると言うのだ
『矢』に射抜かれたのは私だが稀に血縁者にも発現することがあるらしい。それが吉影だったと言うわけだ

「吉廣、貴様の送ってきたスタンド使いは優秀だな…実に良く働いてくれる。貴様も自身のスタンドを早く発現させろ」

やはりこの男の前だと恐怖で足がすくみそうになってしまう
なおのこと恐ろしかったのだが私は日本へまた生きて帰ることが出来た


だが私はそれ以降エジプトへ行くことは無かった
何故なら日本に戻った三日後に末期ガンだと言うことが発覚したからだ。呆気ないことに即日入院。助かる見込みなど無いとの事だった

死ぬ間際、私は絶望していた
もう私には吉影を守ることは出来ない
吉影はスタンドの能力で死体をどうにか消し去っているようだが、同じスタンド使いにはバレる日が来るかもしれない

「せめて私のスタンドが………死して尚吉影を守れないだろうか?」

微かな願いが私の脳裏に過った
『矢』に選ばれたとき願ったことは…………『吉影を見守ること』だ。願わくば…我が息子の為に……



そして私のスタンド、アトムハートファーザーを発現させた
このスタンドで私は半ば幽霊となりこの世に取り憑くことが出来た。そして吉影の正体を探るものを抹殺することが出来るのだ
このスタンドは吉影を狙うものを…吉影を追うものを殺すため
吉影を調べようと部屋に忍び込んだモノは躊躇無く消し去っていった
私は永遠と吉影を見守っていく。『植物のような平穏な生活』を実現させるために……
例え何が起ころうと吉影の敵を殺し続けるだろう……





END

【原子父心】完結です
すこしグダグダでしたがお許しください
読んでくださった方、ありがとうございます!

次は>>98さんのを書かせていただこうと思います

>>100さんのリクエストの六部のガソリンスタンドはあの綺麗な終わり方には何を付けても蛇足にしかならないと思うのと僕では力不足が故に申し訳ありませんが出来ません!ホントにごめんなさい!



鈴美と露伴の最後の夜とか、ポルナレフがディアボロに負けてから矢の秘密を見つけるまでとか見てみたい

【ラストバタリオン~誇り高き戦場の華~】

1942年12月20日、世界は第二次世界対戦の渦中にあった!
この戦争の発端であったナチス・ドイツは同盟関係であるはずのソ連からの宣戦布告を受け、戦争を開始した

最初こそ押してはいたが、ソ連軍の市街地戦の前には電撃作戦も通じることがなく徐々にドイツ軍は疲弊していった
そしてロシアの猛烈な吹雪による戦車の使用不可能な状況、加えて圧倒的な物資不足
最早ナチス・ドイツはその戦線の維持すら難しくなっていた

「失礼します少佐!『雷鳴』作戦は燃料不足のため不可能!物資の補給にも時間がかかる模様です!」

テントへと駆け込んできた兵士からの報告を聞くと否が応でも苦虫を噛み潰したかのような顔になる
このままではここへソ連軍が襲ってくるのは自明の理。時間の問題である

「ええい!別の部隊へ連絡は取れんのか!まだ動ける部隊はこの地へ集結するよう回すのだ!」

無線部隊に怒鳴り散らす。これでは何の解決にもならないのは百も承知なのだ

総統閣下は死守命令、つまりソ連軍を決して祖国ドイツへ入れてはならないと命令を出した

「シュトロハイム少佐!ダメです!我々の部隊しか燃料に余裕は無いようです!何処も応援を要求しているぐらいです…我々の方から出向くしかないかと」

恐らくもう既にソ連軍は此方へと近付いているのだろう
我々の部隊の生き残りも数少ない
戦車は数台あるのだがマトモにこの吹雪の中を進めるのは精々二台だろう
燃料こそギリギリだが、戦車の弾はあることはあるのだ。一番近くの部隊の元へ集合し少しでも何としてもソ連軍の時間を稼がねばならない



最早ここで腹をくくるしかないようだ

「………我が部隊全員を集めろ。最後の作戦を通達する」

俺はそう告げると、全員をテント内に集めた


「たった…………これだけか」

来たのは最初の部隊の半分にも満たなかった
だがこの人数なら戦車は二台だって充分乗れるだろう

「シュトロハイム隊最後の作戦を告げる……貴様らは全員最も近くの部隊へ応援に行くことだ!尚口答えは許さない、上官命令だ!」

この命令に全員が驚いた顔をした
普通ならば手足が千切れようと玉砕してでも相手の足止めをするべきであろう
だが応援に行けという命令なのだ

「シュトロハイム少佐!少佐はどうされるのですか!?」

「貴様らが応援に行くことは邪魔させん。私がしんがりを勤める」

私が応援に行くには燃料は足りないだろう。足手まといになる気なんぞ無い
動けなくなって死ぬよりも、誇り高く戦場で散る方を私は選ばせてもらう

「早く行け。戦車は二台ある。誇り高きドイツ軍人が泣いてる暇があるか!そんなヘタレに育てたこと等無いわ!俺は戦場で泣いたところで何も変わらないことは教えたはずだぞ!」

どいつもこいつも入隊したときと何一つとして変わっちゃいないヘタレだ

「さぁ行け!貴様らなら出来る!誇り高きドイツ軍人の意地を見せてみろ!」

涙を止めた兵隊たちと敬礼を交わす
今まで見たどの敬礼よりも汚くてダサく、素晴らしい敬礼だった

奴等がここを去って行く姿を最後まで敬礼し、私は来るべき敵に備えた

「何故一人なのだ?ドイツ軍人」

ざっと五十人はいるような大部隊。戦車も多数ある。だが一人たりとてここから先に行かせてたまるか…

「一人だと………?私はラストバタリオンンンンンッ!たった一人、だが貴様らを倒すには充分だぁぁあッ!」

戦車を掴むと遠心力でぶん投げた
相当な重さがある戦車は投げることができれば充分な兵器となりうるのだ
無論そんなことを出来るのは世界で見ても私ぐらいだろうが

「化け物だッ!撃てぇ!ガンガン撃てぇッ!」

今更トンプソン機関銃など全く豆鉄砲程度にしか感じない

「馬ァァア鹿者がぁぁッ!ドイツの化学は世界一ィィィイ!!貴様らの豆鉄砲など食らうシュトロハイムでは無いわぁあ!!」

再び戦車をぶん投げると大爆発が巻き起こった

更に内蔵された機関銃やミサイル、更に腹部にある60ミリ重機関砲を展開し一斉掃射

「我ァがドイツの科学力は……世界一ィィィイ!」

強烈な弾幕により相手の戦車でも兵士でも破壊し尽くしていく

「バッ化け物だ!戦車すらアイツには敵わねぇぞ!」

「アイツだって弾切れはある!その瞬間に近付いて突破だ!」

だがソ連軍は弾幕の薄くなった瞬間に近寄っていく
完全な足留めにはなってはいない

「行かせるかァァ!紫外線照射装置、作動ッ!」

目眩ましのために掌から通常の十倍の紫外線を照射する
だがシュトロハイムも内心焦っていた
このままでは突破され、自身は恐らく科学技術の転用に捕まる可能性がある
一分一秒でも長く足止めせねばならないというのに!

撃たれたミサイルを掴み投げ返す
既に戦闘から二十分ほど経過しているだろうか?
敵兵は応援部隊も含めれば200は倒しているのかもしれない
建物は倒壊し何処からでも火の手は上がっているが敵の数は如何せん減ることはない

「死ねソ連兵!!」

右腕のロケット装置を起動し発射。腕の一本も我が祖国の最高知能の結晶、ソ連なんぞにはくれてやるものか

「この腕、爆弾が付いてるぞ!」

右腕の着弾地点が爆発し、私はそろそろ限界を感じていた
最後に腹部に備え付けられたダイナマイトに火を付け、手榴弾を取りだし、口でピンを引き抜いた
そして敵陣に向けて思いきり駆け出す

「我が祖国に………栄光あれェェえ!!!!」

その戦場を白い光が包み込み、瞬間巨大な爆風が巻き起こった

ルドル・フォン・シュトロハイム少佐
スターリングラード戦線にて、名誉の戦死
その勇敢なる行動は、決して表舞台では語り継がれる事はない
だが誇り高いラストバタリオンの勇姿は語り継がれていく………







END

【ラストバタリオン~誇り高き戦場の華~】完結です
シュトロハイム無双でしたね…予想以上に
お付きあい下さった方ありがとうございました!
>>116さんのポルナレフが矢の秘密を知るまでを明日から書こうと思います
お待たせして申し訳ありません…

【錆び付いた銀戦車が示すもの】

「ええ~っと、『1986年』……『1986年』」

この世には知らない方が良いことがある
ガールフレンドが別の男に夢中だったりとかじゃあない
深入りしては二度と戻ることはできない。そんなものがこの世には存在するのだ

「あれぇ~?おっかしいなぁ…『1986年』の新聞が所々スッ羽抜かれたように見当たらねぇ……」

俺はDIOとの因縁、そして妹の敵討ちを終えてから数年後、あるものを調べていた


スタンドを発現させる『矢』についてである

1990年に入ってから俺と空条承太郎は『矢』と言うものを追跡し始めた
更なる邪悪を産まないために

エンヤ婆と言う小柄な老人が持っていたその『矢』は全部で6本あると言う事を調べついていた。だが俺が気になったのは『1986年』に発掘されたと言うことだ
『1986年』にエジプトにて発掘されたそれは19才の青年によって発掘され、持ち出されたと言う
そしてその『矢』の内五本はエンヤ婆へと高値で売られた……五本の『矢』の内一つはスピードワゴン財団が保管、一つは吉良吉影…承太郎とその甥が倒したと言う日本人の父親が持っていたと言うがどさくさ紛れに破壊してしまったらしい
そしてエンヤ婆の持つ『矢』は既に破壊済み

残る二本の内、一本は俺が独自に回収に成功した。全くの偶然だった
骨董品店にてゴミのように売られていたところを偶然買ったのだ
後の一本は見当もつかない。全く手掛かりが無いに等しかったのだが、本当にきがかりなのは問題は発掘した青年の持つ一本のことだった

実はこの『1986年』と言う数字は俺の故郷にも関わっていた
急激に治安が悪化し、大変なことに犯罪指数も上がっていることを調べたときにピンと来たのだ。『矢』を発掘した青年はヨーロッパの何処かにいる……と
ソイツは既に『矢』に秘められた力について知っているのだと
だから『1986年』に何かしらの事件が起こっていてもおかしくないから図書館で新聞を幾度と無く調べてみていたのだがスッ羽抜かれているものがいくらかあるらしいのだ

「とは言ったものの……一人で『1986年』の新聞について調べるのも大変だ……やっぱ承太郎とその甥……あ、甥じゃあないのか。年下の叔父とやらに手伝ってもらうべきだろうか?」

さっきの考え事中にも甥と叔父を間違えた気がするが、年下の叔父なんぞ間違えても仕方ないんじゃあ無いんだろうか?それにあのジョースターさんの隠し子がいたことの方が驚きだっての
そんなことを考えている時に電話が鳴り響いた

「はい…あぁ例の『矢』の解析結果が出た?」

以前『矢』についてスピードワゴン財団に頼んでおいたが、どうやら判明したらしい
だが得られた情報はスタンドを発現させる事に関して、そして『矢』を構成しているのは隕石と同成分であるということだった

たいした進展も得られないで肩を落としながら図書館を出ると腹の虫が鳴り出した。作業に没頭するあまり腹が減っているのに気が付かなかったのだ
取り敢えずまずは腹ごなし…と言うわけでリストランテに入ったのだが少しばかりトラブルが起こっていた

「おいてめぇ~ッ!み!ここは『パッショーネ』のシマなんだよッ!みかじめ料が足りてねぇ上に俺の服を汚しやがって!どう落とし前つけんだ!?」

店員に対してチンピラ、いやギャングだろうか?どちらにせよ小者が粋がって店員を脅していたのだ
しかも店員は可愛い女の子であり、小物ギャングの見幕に完全に萎縮しきってしまっていた

「あのぉ~すいません…オーダーしたいんですが?そう君じゃあないといけないんだけど良いかな?君に俺の注文だけじゃあなくてハートもとって欲しくってね」

ここは女の子のためにいっちょカッチョいい正義の味方のポルナレフのご登場。と言うことで堂々とそのチンピラとその子の間に割って入った

「んだとこの電柱野郎!バカにしてんじゃあねぇぞ!表出ろや……ぶっころしてやんよ!」

この俺の髪型を電柱と言ったのは許せないが落ち着いて店の外に出る
不安そうに見ていた店員の女の子にはウインクをしてやっておいた
良い男はいつだって女の子への気遣いを忘れないんだぜ?


「うへへ……てめぇなんざアヒィッ!?」

ナイフを取り出したのでこちらも武器で応戦させてもらった
まぁ俺の武器は一般人何かじゃあ見ることは出来ないだろう。生まれもっての俺の武器『スタンド』
その名も『シルバー・チャリオッツ』。銀の甲冑に纏った俺の分身は瞬く間にそのレイピアでナイフを細切れにした

「ナイフの一本でガタガタ言うな!女の子脅すようなことしやがって…それでも紳士か」

胸ぐらを掴み焼きをいれてやると一瞬でチンピラはヘタレた
ホントに小者な野郎だぜ…

「てめぇ『パッショーネ』に手ぇ出して良いと思ってんのか!?」

尚もチンピラは『パッショーネ』と言う組織名を出す。ついでにその『パッショーネ』とやらも聞き出しておくか

「おい、さっきから言ってるその『パッショーネ』ってのは何なんだ?さっぱりわからねぇぞ」

もう一度尋ねるとソイツは日和ながら『パッショーネ』について教えてくれた
『パッショーネ』は最近になって頭角の表した組織であり、今ではヨーロッパの大半を支配しつつあるギャングらしい
このチンピラは『パッショーネ』に入るためのテストを受けていたがヘマをやらかした挙げ句に服を汚され店員に怒鳴り散らしていたらしい
団員ですらないのにそれを語る時点で変なやつである

「入団試験だと?誰かの暗殺とかブツを運ぶとかなのか?俺にもおせーてくれよその試験とやらをよ」

そのチンピラは胸ポケットから点火されてないライターを取り出した
このライターの火を消さずに一日過ごすことが入団条件らしいが風のせいで消してしまったらしい

「もっぺん着けてみろよ。ただのライターじゃあねぇか」

そう言うとソイツはライターを点火させた
呆気なく着いたライターに大喜びである

「再点火………したな…?」

突然、背後から声がして振り替えると陰の中に奇妙な姿の生き物がいた
大学の卒業式のような格好なのだが顔は無機質で人ではない
何者かの『スタンド』がいたのだ

「『スタンド』!?一体何処から!」

直ぐ様『シルバー・チャリオッツ』で迎え撃とうとするも片手で攻撃を止められてしまった
どうやら相当な力を持っているらしく、片手を振り払うことが出来ない

意図も容易く『チャリオッツ』を蹴飛ばされると吹き飛ばされてしまった
だが追撃してこない辺り、このスタンドの本体は別のどこかにいるようだ

「再点火したのはお前のようだな…?さぁ……試練を受けろ」

そのスタンドがチンピラを掴んだ瞬間、俺はあり得ない光景を見てしまった
口から現れ出たのは紛れもなくあのスタンドを発現させる『矢』だったのだから

「ぶぐふぅっ!」

そして『矢』はチンピラの喉を思いきり貫いた
チンピラはいきなり出てきた『矢』に何がなんだかわからないと辺りを探るようにしていたがやがてピクリとも動かなくなってしまった
そのチンピラにスタンドの素質は無かったと言うわけだ

「や、野郎ォ……何故『矢』を持ってやがるんだ?……ハッ!まさか奴の矢はエジプトで無くなっていたと言うあの『矢』か!?」

まさか発掘したと言う青年の持っていたとされる『矢』なのか!?
『チャリオッツ』がもう一度攻撃を加えようとしたもののそのスタンドは影の中に消え、壁を壊すだけに至った

「消えただと!?ちっ…さっきのライターもねぇってことは『遠隔操作型』か。ライターを再点火させたから現れたって事みたいだな」

承太郎曰く、本体がかなり離れている状態でも活動する『遠隔操作型』と言うのがいるらしい。
勿論精密な動作をしないものばかりらしいが

「おい貴様!動くな。警察だ」

気が付くと俺の周りには野次馬と警察が集まっていた
どうやら俺とチンピラが喧嘩し、チンピラを殺したと言う筋書きが出来てしまっているらしい
これはどうやらまずい事になってしまっているんじゃあないか?


「ホントなんだって…信じてくれよお巡りさん!俺を調べても何にも見つかってねぇだろ?ナイフ一本ありゃしないんだぜ?」

取調室で必死に無実を訴えるのだが中々信じて貰えない
まぁ血の付いた凶器一つ見つからない上に帰り血も無いから無実は当たり前なのだが

「ううむ…取り調べは終わりだ。とっとと帰れ!」

取っ捕まえてこの台詞である
シンガポールで警察に捕まったことがあったっけ。万国共通で警察ってのは面倒なもんだぜと思いながら警察署を後にした


彼の去った警察署で署長ははある場所へ恭しく電話を始めた

「はい……例の男の名前と住所と電話番号はわかりました…。ジャン・P・ポルナレフ、フランス人の男です。……各所へデータは送っておきます。分かりましたポルポさん。その代わり出世の件はよろしくお願いします……」

その男は吐き気を催す邪悪な笑みを浮かべながら電話を切った

「『パッショーネ』……。何か訳のありそうな組織だな。調べる必要がありそうだぜ」

家に戻った俺はファイリングしたバインダーを眺めながら呟いた
『1986年』から増え始めた犯罪や麻薬による事件。そして頭角を最近だが現し始めた『パッショーネ』という犯罪組織と『矢』
関連がないとは言い切れないようだな

「取り敢えずスピードワゴン財団と承太郎に連絡して協力を仰いでおくべきだな…」

俺は手紙を書き、承太郎とスピードワゴン財団に電話をかけるがどうにも繋がらないようだ
二つとも電話に出れない状態らしい

「おっかっしぃーな……留守電も入れられないなんて承太郎らしくねぇぜ」

少し違和感を覚えたが後日改めて電話しておくことにした
手紙にも『矢』と『パッショーネ』の関係を調べることを書いておいたが何とかなると良いのだが……

俺はタンスの上の自らが買った『矢』を見つめる
あの『矢』を持つ者を追い詰めることが出来れば『矢』について更に詳しく知ることが出来るかもしれない
そしてもしその者が二つ『矢』を持っていればエジプトからの因縁にもケリを着けることが出来るだろう……

「『1986年』………サルディニア島の小さな村における大火事?」

別の街の小さな図書館にてまだ見たことのない記事に俺は目を止めた
そこに死傷者リストの中には19才の青年が載っていたからだ。勿論他に何かある訳じゃあないのだが何故この小さな記事を今まで俺は見ることが出来なかったのだろうか?
原因不明の大火事であるのも何か引っ掛かるのだ

「もしかしたら何かサルディニア島にあるのかもしれない…『矢』と今俺の感じている違和感を結び付ける何かが……」

そう感じた俺はサルディニア島へ向かった
俺の感じている違和感は確信じみた物があるような気がしてならないのだ
それと同時に何か知ってはならないものを知ろうとするかのような違和感もなのだが

サルディニア島
美しい海と自然のある観光地だが俺は大火事の起こったと言う村へ来ていた

「『1986年』に生きていた人が誰一人としていないだとォ~ッ!?」

村で聞き込みを始めていたのだがおかしな事に誰一人として『1986年』の大火事を知っているかその事件に巻き込まれた人はいなくなっていると言うのだ

唯一わかったのは火事で死んだと言う19才の青年は『ディアボロ』と言う名前らしい
偶然残っていた卒業アルバムからわかったのだが、写真は顔立ちがハッキリわからない
どう考えたっておかしい
やはり『1986年』の大火事は何か重要な事があったと言うことだ



(もしも、もしもこの村にいた19才の青年が死んでなかったとして、死んだのは全くの偽造だったとして……!)

俺は全ての謎が繋がったのを感じた
『1986年』、自らを知る者を事故に見せかけすべて抹殺した『ディアボロ』はエジプトに迎った
そして運命は『ディアボロ』の手に『矢』を掴ませたのだ。それを持ってヨーロッパへと戻ってきた
スタンドを発現させる『矢』を持つ『ディアボロ』は間違いなくその力で『パッショーネ』を乗っ取るなり創り上げたのだ
そして自身の正体を知る者を消し続けた。恐らく永遠に自身の正体を知る者を無くし続ける為に。自身を脅かす存在を消し去る為にだ

「なら次に消されるのは間違いない…俺だ!恐らく俺は勘づかれている!奴の正体を調べていることに」

既にサルディニア島からは出てこれから日本へ行くために空港へ向かうことにしている
だが組織の者が既に俺を追っているハズなのだ。あの『遠隔操作型』のスタンドの本体が動いているに違いない
ここまで徹底的に過去を消し続けている『ディアボロ』が俺を見逃すわけがない
直ぐに伝えなくてはならないッ!承太郎に、スピードワゴン財団に!
俺一人で立ち向かうには『パッショーネ』は、『ディアボロ』は強大すぎる!

「その通りだジャン・ピエール・ポルナレフ。お前は知りすぎたのだ。私の過去を、秘密を、知らなくても良いことを全て!」

パスポートを取るための帰路にてソイツは現れた
至って普通のスーツであり何処にでもいそうなソイツは俺の前に現れた

俺は直感的に感じた
こいつが『ディアボロ』なのだと!
自身の繁栄のためなら誰だって犠牲にすると言う吐き気を催す邪悪な意思の持ち主だと!


「『パッショーネ』のボスが直々のお出迎えとは光栄だぜ…『ディアボロ』さんよぉ…?」

頬に冷や汗が流れるも毒づいた。あのDIOと対峙したときと同じプレッシャーを感じるが恐らく逃げることは出来ないだろう
ここでやるしか無かった
俺はやるしかないッ!

「うおぉぉ~~ッ!!『シルバー・チャリオッツ』ッ!!」

先手を打つべく現れた『シルバー・チャリオッツ』は恐るべきスピードで奴に接近すると目にも止まらぬ刺突を奴に食らわせた

だその刺突は全て虚空に舞っていたのだ
剣先が一切カスることなく全て避けられてしまっていた

いつの間にか背後にいた『ディアボロ』はスタンドを出していた
『ディアボロ』のスタンドは、血のような深紅な体に網目が入り、そして頭には何故か二つ顔が存在していた
その姿はまるで暴虐の深紅の王だと感じた

そのスタンドから放たれる容赦ないラッシュをギリギリ『チャリオッツ』を戻しバックステップで避けたのだが鎧を纏っていても掠めた部位から血が流れるのを感じる
血が一滴、二滴と地面に滴り落ちるのを見た
まさか避けたのは時を…『止めた』のかもしれない
だが時を『止めた』と言うのならタイム・ラグがあるハズッ!
その隙を突けるのは今だけだッ!

「『シルバー・チャリオッツ』ッ!!」

次の瞬間には血の滴が『増えていた』
まるで五、六秒流れた後のように。いつの間にか増えていた
その瞬間俺は『ディアボロ』のスタンドのの能力がわかった
だがそれと同時に『チャリオッツ』の右目を『ディアボロ』のスタンドの手刀が貫いていた

「『キング・クリムゾン』を見たものはその『時』……………」

『チャリオッツ』と同じ部位に俺の体はダメージを受け、右目が視界を失った

「『能力』は…!時を…!ディアボロ貴様!」

時を『止める』のではなく、ビデオの早送りの様に『吹っ飛ばした』のか!
だから血の滴が増えていたのだ、あの一瞬で

「もうこの世にはいない……!!」

『ディアボロ』はそう告げると『キング・クリムゾン』の腕からラッシュを繰り出し、俺の体をバラバラに吹っ飛ばした
腕や足が千切れ、痛みにのたうつ暇もない中、俺はスローに流れるように感じていた

「希望は…無いのか………」

『ディアボロ』の正体を知れなかったのは…奴一人の行動じゃあない
政治家やメディア、きっと俺の出した手紙も届くことは無いのだろう
奴の組織は、『パッショーネ』は既に深いところまで潜り込んでいたのだ

「承……太郎………すま…ない」

そう呟いた後、俺は崖から落ちた衝撃から意識を失なった

ドスン、と何かが落ちる音がした

「………夢か」

車椅子の上で俺は眠っていたらしい
あの時偶然通り掛かった船が俺を見つけ、助けてくれていなければあのまま死んでいただろう

といっても俺はかろうじて無事なのは左手だけであり両足は立ち上がることが出来ないこともない特殊な義足、腕は千切れたモノを何とか使えるようにしてくっつけただけであり動くものの戦闘者としては再起不能である


治療が済んだ後、スピードワゴン財団や承太郎に連絡をすべきかと思っていたが『ディアボロ』は俺の名を聞けば確実に殺しに来るであろう。自身の過去を知る者は自ら殺さねば安心できないような奴だから

「俺に残された出来ることは…『ディアボロ』を追うものが現れたときにその者達に『ディアボロ』の能力と過去について説明してやることだッ……!」

そのためネットワーク上に『ディアボロ』の人相や指紋などに反応するシステムを組んではいるのだが…まだ現れることはない
気長に待つ必要があるな…と考えているとタンスの裏の所に『矢』を落としていることに気がついた

『ディアボロ』に奪われることなく俺の家にあったので持ってきておいたので、どうにかしてでも取っておきたかった

「奥の方過ぎて今一取ることが出来ないな……。仕方無い。『チャリオッツ』」

私と同じような姿になってしまったチャリオッツに『矢』を取らせようとすると誤って指先を切ってしまったが取れた
すると『チャリオッツ』から光が溢れだした
突然の事に俺は焦っていた
窓の外を見ると牛や馬、農夫がバタリバタリと倒れていく、だが誰もが苦しむのではく眠るように倒れているようだ

「『矢』なのか…!?『矢』がスタンドを傷付けたから何か発現したのかッ!?」

だがこれは私の意思とは違う。全く制御出来ていない力を感じている
何か良からぬ事が起こりそうなのだ
急いで私は『チャリオッツ』から『矢』を奪った
するとどうだろうか…眠っていたらしい生き物達は何事もなかったかのように起きたのだ

「これだ……これを使えば…『ディアボロ』のスタンドの能力に打ち勝つ事が出来るかもしれないッ!」

俺に唯一見えた希望。それがこの『矢』の本当の使い道だった
スタンドを発現させる『矢』はスタンドの先へと導くのだ


満身創痍の私にはとてもじゃあないがこの力を抑えることは出来ないだろう
ならば『ディアボロ』を追うものに託さねばならない
『ディアボロ』と言う吐き気を催す邪悪な意思を打ち倒すジョースターのような『黄金の意思』を持つもの達に、託さねばならないのだッ!
星のような儚く消えてしまいそうな光を俺は手繰り寄せねばならない運命
錆び付いた銀戦車が最後に指すモノ、それは『ディアボロ』を打ち倒すための『矢』だ
俺は『矢』を守り抜かねばならない
錆び付いた銀戦車が繋ぐ最後の希望なのだから……










To be continued………

【錆び付いた銀戦車が示すもの】完結です
凄く雑な部分もありますがお許しを……
そして凄く完結までに時間をかけてしまって申し訳ありません!
こんな作品でも読んでくださった方ありがとうございます!


さて、ジョジョキャラ限定ですがやはりリクエストを募集したいと思います
あとそろそろ長続きしているのもあり酉もつけさせて貰います

ジョジョエジプト編のEDがめっちゃ泣けた……

希望内容は、スモーキーが大統領を目指す所で

原作に矛盾がなく補完しているのが素晴らしい
サンタナをメキシコに置いてくる辺り何があったのかは気になる

>>152
スモーキーって市長じゃなかったですか?
>>153
カーズ達の過去編ですか…
カーズ視点かワムウ視点か…お好きな方をお選び下さいませ……

こんな状況、流石に露伴先生でも倒れちゃうだろwwwww

>>270
訂正
こんな状況、流石に露伴先生でもいつか倒れちゃうだろwwwww

今回の話も面白かったwwww
>>1

ジョルノ「4でお願いします」

ミスタ「4………どういうこったよこいつはッ…………? 何で最後が『4』なんd

ジョルノ「無駄ァッ!!」ボゴォ

ミスタ「グボァッ!」

訂正
誤「うぅむ…花京院が7なら私は…10だな」

が自信なさげに置くとジジイはニヤッと笑いながらエースを出した

正「うぅん…花京院が7なら俺は…10辺りにしとこっかなァ~」

ポルナレフが自信なさげに置くとジジイはニヤッと笑いながらエースを出した

「パス」

俺とアヴドゥルがパスを続ける

(ここはアドバンテージを稼ぐか…?僕の手札には2は二枚揃っていることだし飛ばしても良さそうだ)

花京院は2をスッと出した
ジジイは小さく舌打ちをして悪態をついている

「なら俺は…うーん…やっぱやーめたっと」

ポルナレフの言葉に衝撃が走った
やっぱやーめた…つまりポルナレフはこの状況で出せるカードがある可能性が出てきたのだ
すなわちjokerの存在である

(やれやれ…揺さぶりとはたまげたものだなポルナレフ…これぞ大富豪の醍醐味だがな…)

全員がパスをしたことにより花京院のターンになる

「二枚出しとさせて貰いますよ」

花京院の出した二枚のカードの数字は3

「うっ…パスだぜ」

「ワシも…」

ジジイとポルナレフは嫌そうな顔をしてパスを宣言した

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年02月12日 (木) 14:57:44   ID: P1VNNCCY

途中飛んでませんか??

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