やよい「インターネットの闇?」 (30)

765プロ 事務所

ガラッ
春香「ただいま、かえりましたー」

P「ただいま。なんだ、やよいと小鳥さんだけか」

やよい「うっうー。おかえりなさい」カチッ カチッ

小鳥「……」カタカタ

P「…小鳥さんがパソコンに集中して周りの状況に気づかないのは珍しくもなんともないが、やよいがパソコンを使っているのは初めて見るな…」

やよい「うっうー。最近、ぱそこんにハマちゃいました」カチッ カチッ

春香「パソコン楽しいよね。で、何やってるのソリティア?マインスイーパー?」

P「おいおい。パソコンはゲームをするためだけにあるんじゃないぞ」

春香「え?そうなんですか」

P「あのパソコンはもともと、アイドルが自分でブログとかを更新できるよう、仕事用として買ったものだからな」

春香「そんなの、全然知りませんでした」


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P「今はほとんどのアイドルがスマホを使って、自分でブログを更新してるからな」

春香「ですね。私もブログはスマホから更新しちゃいます」

P「でもやよいみたいに携帯電話を持っていないアイドルもいるから、そういう人用に買ったのがあのパソコンだ」

春香「へー。てっきり私たちの暇つぶしのためにあるんだと思ってました」

P「まあ、おかしな使い方をせん限りどう使ってもらっても構わんが…」

ガチャッ
伊織「ただいま。」

春香「伊織。おかえり」

やよい「…」カチッ カチッ

伊織「ん?やよいがパソコンを使っているなんて珍しいわね」

春香「そう!さっきからプロデューサーさんとその話をしてたんだよ」

P「伊織はあのパソコン使ったことあるか?」

伊織「私?ないわね。スマホがあればインターネットはできるし、それに、あのパソコン中古のやつでしょ」

P「たしかにそうだが」

伊織「型落ちとか低スペックのパソコンだと動作が遅すぎてイライラしちゃうのよね」

春香「そ、そうなんだ」(うわぁ。やっぱりお金持ちは言うことが違うなー)

伊織「当然よ、当然。あんなパソコンじゃインターネットもろくに見れないんじゃないの?」

P「さすがにそこまで酷くはないさ」

伊織「そうなの?」

P「オンラインゲームをプレイするのはさすがに難しいかもしれないが、YouTubeやニコニコ動画くらいならサクサク見られるさ」

伊織「ふーん。あ、でもそれはそれで心配よね」

P「どういう意味だ?」

伊織「だってそうじゃない。もしかしたら違法な動画サイトにアクセスしちゃう可能性だってあるわけだし」

P「その心配をする必要はない。なぜならあのパソコンにはフィルタリングソフトが入っているからな」

伊織「フィルタリングソフト?」

P「そうだ。有害サイトアクセス制限サービスともいうな」

春香「そのソフトが入っているとどうなるんですか」

P「簡単に言えば、アダルトサイトや出会い系サイト、暴力的なサイトへアクセスできなくなるんだ」

春香「へー、凄いソフトなんですね」(あんまりよく分からないや)

P「まぁ、やよいなら心配する必要はないが、他の中学生組が使う可能性もあるからな」

伊織「真美や亜美なら危険なサイトを閲覧する可能性は十分あるものね」

P「うあうあー。亜美ちょっと来てー。何もしてないのに、えっちぃサイトに飛ばされちゃったYO、みたいな?」

春香「ぶふっ、ちょっとプロデューサーさん、急に真美のマネするの、やめてくださーい!」

伊織「真美ならありえるわね」

P「そうなんだよ。だから真美と亜美がパソコンを使っているときは、俺はずっと見張ってるんだ」

春香「そうだったんですね。私てっきりプロデューサーさんがロリコンなのかって思ってました」

P「おいっ」

伊織「あんた、まさか…」

P「伊織まで乗るんじゃない!」

春香「ふふっ」

P「とにかく、俺が言いたいのは、あのパソコンは違法なサイトには接続できないようになっているから、やよいを必要以上に心配しなくてもいい、ってことだよ」

伊織「…は?どうして心配ないって言い切れるのよ」

P「どうしたんだよ伊織、急に」

伊織「いいから、答えて」

P「さっきから言ってるだろ。フィルタリングソフトが入ってるから違法なサイトにはアクセスできないって…」

伊織「だ・か・ら、その違法かどうかってのは一体どこの誰が判断してるっていうのよ?」

P「それはだな…。専門家だとか国だとか、権威のある機関がだな…」アセアセ

伊織「権威のある機関なら間違わないってわけ?」

春香「ちょっとふたりとも、もうやめようよ」

伊織「春香は黙ってて。どんなソフトでも間違いはあるし、危険を完全には排除できないわよね」

P「それはそうかもしれないが…」

伊織「それじゃあ完全に安全なんてことは言えないじゃない」

P「……そうかもな」

伊織「私は別にあんたが憎くて言ってるわけじゃないのよ」

P「…」

伊織「やよいに万が一のことがあったら、あんたも私も後悔するだけじゃすまないじゃない」

春香(伊織ちゃん、愛が重すぎるよ…。やよい、すぐ近くにいるのに)

P「それはそうだな。俺が悪かった。今度からはちゃんと自分の目でチェックするようにするよ」

伊織「こっちこそ悪かったわ。ムキになったりして。仲直りの握手しましょ」

P「そうだな」ギュッ

春香(うわぁ、勝手に怒り出して、勝手にふたりで解決しちゃった。めんどくさい人たちだなぁ)

伊織「にひひっ、これからはふたりでやよいのことを見守りましょ」

P「そうだな。じゃあいっしょにやよいがパソコンで何やってるのか聞いてみようか」

伊織「そうね。ねぇ、やよい、今パソコンで何やってるの?」

やよい「…」カチッ カチッ

P「おーい、やよい」

やよい「…」カチッ カチッ

P「パソコンに夢中になって気づいてないみたいだな」

伊織「しょうがないわね」

やよい「…」カチッ カチッ

伊織「すぅーー、やーよーいー!」

やよい「ふわぁ」ビクッ

伊織「驚かせちゃった?そんなに夢中になってたの?」

やよい「あっ、伊織ちゃん、来てたんだ」

伊織「やよい。そんなにパソコンばっかやってたら目が悪くなるわよ」

やよい「うー…」

伊織「パソコンでなにしてたの?」

やよい「ねっとふぃんふぃん、してたんだよ、伊織ちゃん」

伊織「ねっとふぃんふぃん?あー、もしかしてネットサーフィンのこと?」

やよい「ネットサーフィンって言うんだ。おもしろそうなほーむぺーじを読むのがクセになっちゃった」

伊織「そうだったの」

やよい「うん。世の中には私の知らないことがいっぱいあるんだなーって」

P「そうか。じゃあ、もし良かったら聞かせてくれないか。やよいがどんなことを面白いと思ったか」

やよい「うーん、そうですね。最近はいろんな人たちがいるんだなーって」

P「例えば?」

やよい「なんか『ザイニチ』っていう人たちがいるらしいんです」

伊織・P「…っ!!」

やよい「う?どうかしたんですか」

P「いや何でもない。続けてくれ」

やよい「その『ザイニチ』の人たちは、働かなくても国から簡単にお金がもらえるらしいんですね」

P「……そうなのか」

やよい「私の家は家族がいっぱいで、そんなにお金持ちでもないから、そういう話を聞くと、なんていうか…」

伊織「…」

やよい「羨ましいかなーって」

伊織「…」

P「そうか。ところでやよい。その話は一体、どこから見つけてきたんだ?」

やよい「えーと確か私が見たのは『保○速報』っていうタイトルのサイトだったと思います」

P「…っ!!そうか。どうやらフィルタリングソフトだけでどうにかなると思っていた俺が馬鹿だったようだ」

やよい「何の話ですか?」

P「やよい、これから言うことをよーく聞いてくれ」

やよい「?」

P「インターネットのなかの情報は玉石混淆だ。つまり良いものもあれば、悪いものもある」

伊織「実際は、圧倒的に悪い情報、不正確な情報の方が多いけどね」

P「その悪い情報を発信するサイトの親玉みたいなものが『まとめブログ』だ」

やよい「まとめブログ?」

P「まとめブログは主に2ちゃんねるっていう匿名掲示板の内容を編集したものだ」

伊織「やよいがさっき言ってた『保○速報』もまとめブログのひとつね」

P「2ちゃんねるの雑然としたレスを整理して、分かりやすく読者に伝えているからすごく人気があるんだ」

やよい「うっうー♪そうでーす。一度読んだら辞められないんでーす」

P「だけど問題点もある」

やよい「はうっ!?」

伊織「例えばまとめサイトのソースである2ちゃんねるに掲載されている情報の中には、不確かなものもたくさんあるのよ」

P「転載元が『週刊○○』っていう週刊誌だったり、『J-C○STニュース』なら、一度ちゃんとした情報かどうか疑ってみることが必要だな」

伊織「週刊誌はまるで芸能人の不仲説をまるで本当のことのように報道してるわね」

P「J-C○STニュースの記事の中には明らかに炎上を狙っているようなものもあるな」

伊織「2ちゃんねるに書き込んでいる人たちの中には、そういった真偽のわからない記事を信じて書きこんでる人たちもいる」

P「だから情報のソースが信じるに値するかどうか見極めることが大切なんだ」

やよい「…」

P「そしてまとめブログの最大の問題点は、運営者によって、もともとあった主張の多様性が切り捨てられてしまうことなんだ」

伊織「つまりまとめ主の都合の良いように、スレを改変することが可能ってことね」

P「そうだ。その気になれば都合の悪い意見を全て切り捨てて、まるで書きこんでいる人々が同じような意見を持っているように錯覚させることもできるんだ」

やよい「うー…。でも何のためにそんなことをするんですか?」

P「まとめ主が記事を改変したり、捏造したりする理由は、いろいろあるだろうが、一番考えられるのは、お金を稼ぐため、ってことだな」

やよい「お金……ですか」

P「まとめブログにはたいてい、広告が張ってあることは知ってるな?」

やよい「はい。でも私、お金を払ったり、物を買ったりしたことなんてないですよ」

P「そうだな。amazonの広告であれば、実際に物を買ったりしなければまとめ主側に報酬は発生しない」

伊織「でも中にはクリックしただけで報酬が発生する広告もあるのよ」

P「まとめ主たちの目的は、刺激的な記事を、時には捏造してまで作り上げて、アクセスを稼ぎ、自分のブログの広告をクリックさせたり、紹介されている商品を購入させることにあるんだ」

やよい「そうだったんですか。私、全然知らなかった」

P「俺は別に俺は嫌儲じゃないから、金を稼ぐことは否定しない。ただ自分がお金を稼ぐために、まったく関係のない人たちを巻き込むのはどうかと思う」

伊織「さっきやよいが言ってた『保○速報』も、いろんなところから苦情が寄せられたり、訴えられたりしてるのよ」

P「やよいの言う『ザイニチ』が優遇されているかどうかについては専門家の間にもいろんな意見が存在するんだ。それなのに一方の立場の意見だけが正しいように印象付けるような記事ばかりたくさん書くのはおかしいだろ」

やよい「おかしいです」

伊織「それに実際にその記事を見て傷ついたり、迷惑を被る人たちがいることも忘れてはいけないと思うわ」

やよい「うぅ…、私間違ってたみたいです」

P「まとめブログを見て楽しむこと自体はなんの問題もないと思うぞ。俺も暇なときはしょっちゅうアイドルの情報が載ったまとめブログをチェックしてるしな」

伊織「大切なのは、そこに載っている情報が事実ではないかもしれないっていう疑いをもつことよ。それに誰かを傷つけるような嘘の情報に加担したりしないことね」

春香(うわぁ、なんだかすごい大変なことになっちゃった。私がハードまとめチェッカーで、そこで仕入れたネタをみんなに話しまくってるなんて、絶対に言えないよ)

伊織「春香も分かってるわね」

ギクッ
春香「や、やだなー、伊織ちゃん、それぐらい当り前だよ。あはははははは……」

伊織「なら良いんだけど…」

春香「は、ははは。今の時代、必要なのはネットリテラシーですよ。プロデューサーさん。ネットリテラシー」

P「その通りだ!春香」ビシッ

ビクッ
春香「うわぁ、何ですか、急に大声出して」

P「春香の言う通り。重要なのはネットリテラシーを持つことなんだ」

やよい「ねっとり、てらしぃ、ですか?」

P「やよい、変なところで区切るんじゃない。ネットリテラシーだ」

伊織「ネットリテラシーっていうのは、インターネット上にある情報を適切に扱える能力のことよ」

春香「私知ってますよ。『うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい』ってことですよね」

P「その言い回しはどうかと思うが、まあそういうことだ」

伊織「ネット上の情報は嘘が多い。だから少しでも疑わしいと思ったら、その情報がどこから最初に発信されたものなのかを特定することが大事ってことね」

春香「千早ちゃん。私のセリフを奪わないで」

伊織「やよい。まとめブログを見て楽しむのもいいけど、同時に情報を見極める能力も養うようにしなさい」

やよい「うっうー♪ 伊織ちゃん、ありがとう。私やってみる」

伊織「その意気よ。インターネットはうまく使えば、便利なことがいっぱいあるんだから」

やよい「は―い」

P「ところでやよい『保○速報』なんて一体どこで知ったんだ」

やよい「うー?えーと、確かこの『お気に入り』ってところをクリックしたら、リンクがあったんですよ」

P「『お気に入り』に『保○速報』へのリンクが?」

伊織「一体誰なのかしら、そんなことしたの。見つけたらタダじゃおかないんだから」

小鳥「…」カタカタ カタカタ スッ

P「ん?どうしたんですか、小鳥さん」

小鳥「プロデューサーさん私急用を思い出したので帰りますね」ササッ

P「あ、おつかれさまでした」ガチャン

伊織「小鳥、急にどうしたのかしら?」

P「さあ?それより誰がリンクを追加したかだが…」

伊織「心当たりでもあるの?」

P「俺の間では、やっぱり真美が怪しいと思う」

伊織「そうね。真美もネットリテラシーが無さそうだからね」

P「明日来たら、さりげなく聞いてみようかな」

伊織「私は直接問いただした方がてっとり早いと思うけど」

やよい「伊織ちゃん。もし、真美が犯人でも優しくしてあげてね」

P「…」

伊織「…」

春香「…」

やよい「う?」




P・伊織・春香「やよいはかわいいなぁ」

おわり



タッタッタッ
小鳥「ピヨーッ!私は悪くないピヨーッ」

このSSはフィクションです。
実在する人物、団体とは関係ありません。
キャラ崩壊などはご了承ください。では。

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