女神「もぅ……ちょっとは働いたらどうですか?」(178)

勇者「だるい」

女神「またそんな事を言って……、いったいこうしてあなたがだらけ始めて何日目か分かります?」

勇者「知らねー」

女神「……」

勇者「だいたい、誰も俺を必要となんてしてねーよ。普通の人間よりちょっと体が丈夫なだけの俺なんて」

女神「そんな事はありません。魔物退治とか、あなたにできる仕事がいろいろあるじゃないですか」

勇者「面倒くさい……」

女神「……」

勇者「じゃ、寝るから」

女神「…………」

勇者「…………」

女神「……勇者さん?」

勇者(? いつもと声色が違うな――)クルッ

勇者「いっ」

女神「今日という今日は言わせてもらいます……、あなたは勇者のなんたるかをまったく理解していません!」

女神「そこに正座なさい!!」

――

勇者「 」ヘト…

女神「―という事です。分かりましたか?」

勇者(久々に女神を怒らしちまったな……、はぁ、長かった)

勇者「あ、足が……」

女神「勇者さん、聞いてます?」

勇者「えっ? 何がだよ? ……それより女神、足がしびれて動けないから、代わりにお茶を持ってきてくれないか?」

女神「 」プツッ

女神「いい加減にしなさーい!!」

どんがらがっしゃん!

――

勇者「ひぃひぃ…」

勇者(力ずくで家から追い出されちまった……。女神そうとう怒ってたな)

勇者(てっきりいつも通り説教だけで終わるかと思ってたけど、甘かった…)

勇者「……こりゃあちょっとは"仕事"しないと帰れそうにないなぁ」

―ギルド

勇者「なーんか手頃なクエストはねぇかなぁ……」

勇者(……やっぱ、どれも"魔法使い限定"とか、"戦士限定"とかかいてあるな)

勇者(何かしら強力な特殊能力を持っている方が、そういったものを求める依頼には向いてるんだよなぁ)

勇者(つまり俺の様な器用貧乏は必要ないってわけか。身体能力だって人よりちょっといいだけだし……)

勇者「あー……、やっぱ魔物討伐系も戦士系限定募集かよ。……クッソ」

勇者(でも何かしらやんねぇと女神のやつ家にあげてくれねぇだろうしなぁ……)

勇者(……仕事した証拠でも偽装するか?)

?「あれ? そこにいるのは勇者じゃないか?」

勇者「……戦士」

戦士「ははは。そんな所につったっていったいどうした? 君が受けられる依頼なんてないと思うが…」

勇者(ぐっ……相変わらず嫌なやつ……)

戦士「いやぁ、それにしても昔と比べて随分差がついたものだねぇ」

勇者「……」

戦士「正直、君が勇者化の宝玉を得た時は焦ったけど。まさか勇者の能力がただ体が丈夫になるだけなんてねぇ……」

勇者(…女神がいるけどな)
戦士「それに比べて僕は戦士になった事で君にも体力では劣らないよ。しかも炎を剣で操れる特殊能力付きだ」

勇者「自慢しに来たのかよ?」

戦士「おっと、これは失敬。君とあうとつい口が滑ってしまうよ、はっはっは」

勇者「……」

戦士「お詫びにいい事を教えてあげよう、君にも回せてもらえそうな仕事があるんだ」

戦士「クエストボードの右端を見てごらん」

勇者「……?」

勇者(魔物討伐依頼……? 珍しく募集人数が多いな。普通はパーティーひとつか個人受理なのに)

戦士「なんでも強力なモンスターがでたとかで、討伐隊を組むらしいよ」

勇者「……」

戦士「受けるも受けないのも君次第だが、まぁ頑張ってくれたまえ」スタスタ…

勇者(強力なモンスターか……場所は、隣町か)

―隣町

男「えー……、本日は集まっていただき、感謝する」

勇者(近くだったからそのまま来ちまったけど大丈夫だよな、まぁいちいち戻るのも面倒臭いし……)

勇者(それにしてもあっさり仕事をくれたなぁ。いつもは勇者だってだけで渋られるのに)

勇者(……それにしても)

甲冑の騎士「……」

老魔法使い「……」

勇者(結構腕の立つ人もいるみたいだ)

男「――以上。諸君等の検討を祈る」

勇者(要約すると、町外れの森に正体不明のモンスターが出たからなんとかしてくれって事か)

勇者(でもそれだけでこんな人数がいるか? 20人くらいいるが、説明じゃ特別な事は言って無かったな…)

勇者(……なんだかきな臭いぜ)

――町外れの森

盗賊「なぁ」

勇者「スるなよ」

盗賊「すらねぇよ! ……なんかきな臭くねぇか? この依頼……」

勇者「そうだな。多分皆そう思ってるだろ」

盗賊「だよなぁ……俺みたいなのでも即決だったしよぉ。普通は依頼達成の見込みがあるかどうか、もう少し見られると思うんだけどよ」

勇者「……そうだな」

盗賊「ところであんた、職種はなんだ? 俺は言わなくても分かると思うが盗賊だ」

勇者「……勇者だ」

盗賊「へっ? ……そんじゃあお前があのやくたたずで有名な勇者?」

勇者「……」

盗賊「こりゃあいよいよ本格的に臭うぜ……。おりゃぁよ、戦闘中は隠れて戦利品だけ貰ってこうと思ってたんだが、帰ったほうがいいかな?」

勇者「好きにしろ…」

―森の奥

老魔法使い「……モンスターがでるという場所は、ここじゃろ?」

甲冑の騎士「ああ、間違いない」

若い剣士「生き物がいる気配すらねぇぜ?」

魔使・騎士「…………」

勇者(違う……その気配が無いって事が問題なんだ)

勇者(ここにくるまでまったく何の気配も無かった。新しい獣道すら見かけなかった。……)

盗賊「な、なんだよ? みんなして黙って……」

勇者(!)バッ

甲冑の騎士「上だぁっ!」

ガサガサッ! ズドッ!

若い剣士「へっ……?」ベシャ

盗賊「ひっ…! ま、真っ二つに…」

黒い化け物「……」

老魔法使い「みんな下がるんじゃあ!」キィィ

老魔法使い『爆風塵!!』ブワァッ

老魔法使い「かぁぁっ!」ガチンッ

カッ

盗賊「うわぁぁぁぁ!!」

勇者(爆発しやすい粉塵をまいたのか……! 滅茶苦茶なじいさんだなくそっ!)

老魔法使い「どうじゃ! 今のは効いたろ!」

モクモクモク…

甲冑の騎士「いない!」

老魔法使い「かっ……」ズドッ

黒い化け物「……」

甲冑の騎士「セェェェェェ!!」ザンッ!

ガッ

甲冑の騎士「!? き、斬れない……?!」ギギ…

黒い化け物「…」ブンッ

甲冑の騎士「――ッ!」ブツンッ

盗賊「ひ、ひぃぇぇぇぇ!」ダダダダッ

勇者(一瞬で仲間が……!)

黒い化け物「……」

勇者(目が二つ……腰が曲がったような人型の化け物。こんな奴の情報、聞いたことも見た事もないぞ!)

太った戦士「う、うわああ!」

勇者(……新種の魔物か。俺たちはその力量をはかるための当て馬にされたって事か)

勇者「ふざけんなよ……」

――

勇者「残りは俺だけか……」

黒い化け物「……」

勇者(勇者の能力……使うしかないのか……)

黒い化け物「――」バッ

勇者(死ぬよか増しか!)

ゴッ

勇者「いつつ……だが、なんとか受けられたぜ……?」ズズズ…

黒い化け物「!」

勇者(皮膚の上を黒い"液体"が覆っていく……。液体は固まり、覆われた部分は石みたいに硬くなるし、身体能力も更に上がる。…けど)

勇者(使う度にどんどん寿命が減ってる気がするんだよな……。確証は無いし、勇者になった時なんでかそう感じただけだが)

黒い化け物「グガァァァ!」

勇者「早めに終わらせる!」

――

勇者(素早い…)

黒い化け物はつばぜり合いを解くと、一目散に木の陰へと姿を眩ました。

勇者(俺の死角からの不意討ちを狙う腹積りか。こいつ、なかなか知能も高そうだ)

ガサガサと木の葉がなであう音だけが続く……。

勇者「……」

ガサガサッ…

勇者「! はぁッ!」バシッ

黒い化け物「!」

勇者「追えなくなる早さじゃねぇな」ズ…

勇者(目がピリピリするぜ……)

勇者(力を右腕に!)ザッ…

勇者「せいッ!」ドゴッ

黒い化け物「……! ……!?」

勇者(貫くつもりでやったんだが……、堅い)

シャッ!

勇者「……!」スカッ

勇者(腕には鋭い刃みてぇなのがついてやがる……。こいつであいつらを裂いたのか)

勇者「蹴りっ!」ドカッ

黒い化け物「――!」ズシャッ

勇者(まずいな……、決定打を持ってねぇ)

――

勇者「……」ドロッ

勇者(くそ……そろそろあの腕も躱せなくなってくるな……)ポタポタ

黒い化け物「……」

勇者「……」ス―

カツン

勇者(? ……これは、女神が一応って持たせてくれた小刀か。はは…すっかり忘れてた)

勇者「なんせしばらくぶりだからなっ!」チャキッ

黒い化け物「……」ガサッ

ザザザザザッ!

勇者(……あっちも次の合いで勝負を決めるつもりか。さて、どっからでてくる?)

ザザザザ

勇者「…………」

ザザザザ

勇者「……」

ザ―

黒い化け物「ギシャアッ!」ザバッ!

勇者「―!」

勇者「……」

黒い化け物「……」ピクピク

勇者(……何とか捉えられたか)ズッ

ズドッ!

勇者「はぁ……はぁ……死んだよな……?」

黒い化け物「 」

勇者「……」

黒い化け物「 」

勇者「ふ、ふぅ……死ぬかと思ったぜ……」

勇者「……」キンッ

勇者(帰ったら女神に例を言おう。……死体は、依頼主がなんとかしてくれるだろ)

勇者(あの途中で逃げた盗賊が増援を呼んでてくれりゃあありがたいが、なさそうだよな……)

勇者「…帰るか」スタ…

ガサッ

勇者「!?」

黒い化け物「……」

勇者「……嘘だろ?」

ズザッ

黒い化け物「……」

勇者「…二匹」

勇者「……まじぃな。仕方ねぇ」

勇者(能力全開で行くぜ……!)

――

女神(勇者さん、遅いですね……。もうすっかり日が沈んでいるのに)

コン…コン

女神「!」トテテテ

ガチャッ

女神「勇者さん、ちゃんと仕事はしてきま――」

女神「!? ど、どうしたんですか?! その怪我…」

勇者「……」ドクドク

女神「出血してます! は、早く中へ……」

女神「……」キュッ

勇者「――という事があったんだ」

女神「黒い化け物ですか……」

勇者「何か分からないか?」

女神「いえ、残念ながら……」

勇者「そっか……」

女神「……」

女神(年々女神としての力が弱くなってきてます……。まさかそれほど異質な存在も感知できなくなっているなんて……)

女神(黒い化け物……恐らくそれは魔物ではありません。……とにかく、調べてみないと……)

勇者「……何か食いもんある? 落ち着いたら腹減ってきた」

女神「あっ、ありますよ! いま暖め直してきますね!」

勇者「悪いな…」

トテトテ

勇者(……女神、何か知ってるな。…顔にですぎなんだよ)

―翌朝

勇者「……」パチッ

勇者(目が覚めちまった)

勇者(……初めて女神と会った時の夢か。勇者化の宝玉と一緒に封印されてたんだよな)

勇者(そいつを偶然俺が見つけて、その後あいつが女神は勇者の側にいるものだとか言って、ここまでついてきたんだっけ)

勇者(鮮明な夢を見る程衝撃的だったなぁ……)

勇者(この勇者の能力。女神のあいつでも知らない……、いったい何なんだ?)

勇者(呪いかと思ったけど、女神といられるなら悪くないな)

勇者(……だからできるだけ使いたくない。……けどまたあの黒い化け物が現れたらそうもいかないよな…)

勇者「はぁ……」

女神「勇者さん? 起きてますか? ――あら珍しい」

勇者「……」

女神「どうしたんですか? なんだかブルーですよ?」

勇者「俺だってお年頃なんだよ」

女神「まぁ、そうですね。まだ成人していませんもの」

勇者「はぁぁ……きっと女神がキスでもしてくれたら気分が晴れるな」

女神「……へ? えぇぇぇ!? 何言ってるんですか!」

勇者「…冗談だよ」

女神「……もぅ、驚かさないでください。じゃあ早く着替えて来てくださいね?」

勇者「……」

勇者(難しい事は……いいや。頭が破裂する)

勇者(今はとりあえず女神の事だけ考えよう。俺にとってはあいつが全てなんだし)

勇者(……それにしても、金髪クセっ毛ツインテ少女は、女神に見えないよなぁ……。おまわりさんが来たら妹という事にするか)

一旦〆ますm( _ )m



>>37-40

ありがとう(*´∇`)

トタトタ

女神「もう着替えて来たんですか? あともう少しだから待っててくださいね」

勇者「……」カタッ

勇者(いつの間にか女神が飯を作るのが当たり前になったな……)

女神「~♪」

勇者(はぁ、今日は久々に心置きなく食えるな。……働いてない時は女神の視線が痛かったから……)

女神「はい、できましたよ」

勇者「何か豪華だな」

女神「昨日は久しぶりに勇者さんがお仕事に行ってくれましたから♪ 勇者さんの好きな物を作ったんですよ」

勇者「……(汗」

勇者「いただきます」

女神「はい、召し上がれ」ニコ

勇者「……―」

――

勇者(結局昨日も女神に勇者の能力の事は明かさなかった……)

勇者(言ったら余計な気遣いをさせちまうだろうし。……これからも、言わない方がいいんだろうな)

勇者「―ごちそうさま」

女神「はい。おさまつさまです。やっぱり男の人は食べるの早いですね」

勇者「女神の料理がおいしかったからな」

女神「……えへへ、そう言ってもらえると作った甲斐があります」

…コンコン

女神「あら。こんな朝早くからだれでしょう」

勇者「確かに妙だな」

女神「出てきますね」ガタッ

勇者「……」



「勇者さんのご自宅で間違いないでしょうか」

女神「はい、間違いありませんよ。…ところであなたは?」

ギルドの役員「失礼。私ギルドの役員をしている者です」

女神「まぁ。……もしかして何か不備でも?」

ギルドの役員「えぇ……昨日の依頼について、依頼人が早急に報告が欲しいと……」

ギルドの役員「本来なら翌日までになんらかの報告を済ませていただければよいのですが、そういう訳でして……」

女神「そうですか……。では少し待っていてください、今勇者さんを呼んできますから――」

勇者「……」

女神「わっ。勇者さんいらしてたんですか」

ギルドの役員「あぁ、勇者さんですか? ……ご無事のようで安心いたしました」

勇者「あぁ…、すまなかったな。昨日は瀕死で帰ってきたから……」

ギルドの役員「えぇ…。事情は存じております。……それでは単刀直入に申し上げますが、"目標"の強さがどれほどのものであったか、教えていただけますか?」

勇者「……」

――

ギルドの役員「それでは私の方で報告はさせていただきますので。報酬の方はこちらからのちほど送金させていただきます」

女神「お疲れ様でした」

―バタン

勇者(……黒い化け物には負け、逃げかえって来た事にして報告を済ませた)

女神「……どうして嘘の報告をしたんですか?」

勇者「……倒し方が分かった訳じゃない。あの時は偶然、女神の小刀がうまく当たっただけだ」

勇者「実際、普通の剣じゃ斬れない事と、凄まじい素早さを持っている事しか分かってないし、なにより……」

勇者「あいつとはもう戦いたくない……」

女神「……そうですね。てだれの戦士を全滅させた魔物をあなたが単独で倒したと知られれば、間違いなくまたあの魔物が現れた時にあなたが呼ばれます」

女神「無理をする事はありません。事実あなたは昨日、大怪我をしてきたんですから」

勇者「……」ジッ

女神「…勇者さん? どうしました?」

勇者(……精鋭があの化け物と対峙したところで、勝てるとは思えない)

勇者(…すまない。……俺には女神といる時間の方が大切なんだ)

勇者(あの森にいた化け物は全て倒した。……後はもうあの化け物が出てこない事を願うしかない……)

――

黒い化け物を倒そうとすれば、嫌でも能力を使う事になる。その度着実に勇者の命は削れるのだ。

勇者の予想は正しく、勇者の能力とは寿命と引き換えに力を引き出すものだった。

……勇者の願いとは反して、黒い化け物の出現報告は増加していく。

――

勇者「……じゃあ、行ってくるよ」

女神「はい。気をつけて、後…これも持って行ってください。いつもより強力に私の加護をかけておきましたから」スッ

勇者「あぁ。…ありがとう」

女神「無茶はしないでください。危なくなったら逃げるんですよ?」

勇者「…………」コク

ギッ… バタン

勇者(北の町で新種の黒い化け物か……)

勇者(自分の世界が荒らされて、日に日に女神の顔から笑顔は消えていった)

勇者(……もう隠れている事はできない。奴らを放っておけばこの場所まで破壊しにくるかもしれない)

勇者「……っ」グッ

勇者(……まだ保つか? 黒い化け物と戦った晩以来、心臓が締め付けられるように痛む事がある)

勇者(…まだ死ぬ訳にはいかない)

―北の町

戦士「退けッ! 一旦退くんだ!」

ウワァァァァア!

戦士(なんだこの化け物達は! 剣や弓を弾く。通るのは一部の能力による一撃だけ……)

魔法使い「戦士! 煙幕をはったわ!」

戦士「よし! 防衛線まで後退だ!」

―防衛線

戦士「くそっ! まだ援軍はこないのか?!」

戦士(新種に続いて既存種が現れ、もうこっちの戦力はほぼ無くなった……)

魔法使い「戦士! 西から既存種がもう一体現れたわ!」

戦士「なんだって!?」

戦士(このままじゃ全滅だ!)

「やったぞ! 化け物が一匹倒れた!!」

戦士「!?」

魔法使い「誰が!?」

勇者「……」

戦士(同士討ち……!? いや、小さい方は黒い装備を着ているだけか?)

戦士「皆彼に続けッ! 化け物は倒せない相手じゃないぞ!」

ウォォォ!

勇者(……何とか一体仕留めたか)

勇者(どうやらのどが弱点らしい。最初の奴もそうだったが、女神の小刀でのどをひとつきしてやれば倒せるみたいだな)

勇者「……」ズキッ ズキッ

勇者(後、雑魚が二匹。まだ見てない新種が一匹か…)

――

勇者(雑魚は片付いたか……)ドテッ

勇者「はぁ…はぁ…」

戦士「君っ! 助かったよ、君のお陰で全滅は免れた!」

戦士「それで、援軍はどこだい? 新種を相手にするにも君一人じゃきつ――」

勇者「……」

戦士「ゆ、勇者……? まさか、君だったのか……?」

勇者「増援は……ないぞ。俺は噂を聞いて、一人で来ただけだ…」

戦士「そ、そんな……」

勇者「……」

魔法使い「嘘でしょ!? 勇者あんた、能力は持ってないんじゃなかったの!?」

勇者「…これにもいろいろ制限があるんだ。使う度に――」

「敵襲だぁぁぁ!」

「新種が来たぞッ!」

勇者「…………」スクッ

勇者(新種……。ここにはギルドの中でも最高クラスの"宝玉持ち"が集まっているはずだ)

勇者(戦士や魔法使いのような戦闘系の力を得る宝玉を持った者達が束になってもかなわない相手か)

勇者(……更に力を使う事になるけど、これしかない)…ズズ

勇者(……変な感触だ。肉体を内側から強化するってのは)

戦士「み、みんな怯むな! 相手は一体だけだ!」

魔法使い「陣形を整えるのよ!」

新種「……」

勇者(……狼人間みたいな奴だ。だが、前より人の形に近いな)

バシュッ

戦士「き、消えた……っ!?」

魔法使い「うそ! そんなに素早さは無かった筈よ!?」

勇者「……ッ」

「ぎゃああああ!」

「陣形の中心だ!」

戦士「いつの間にッ!」

魔法使い『火矢!』

新種「――」シュ

魔法使い「魔法が追い付かない……!」

勇者(速い……!)

罠師「……!」ジリジリ


勇者(! 確かあの人は、魔法の罠を仕掛けられる特殊魔法系だったか?)

戦士「速さに翻弄されるな! 各自数人で固まれッ!」

魔法使い「魔法系は単発の素早いものを使って!」

戦士(だめだ……! 速すぎて捉えられない!)

勇者「すいません!」

罠師「な、なんだ!?」

勇者「罠師で間違いありませんよね!? 罠の場所はッ? 俺が奴をそこに引き込みます!」

罠師「―、あのバリケードの前だ!」

勇者「分かった!」

新種「――」バババババッ

勇者「ふ……ん!」ズ

戦士(勇者!? 砂袋をどうするつもりだ?)

勇者(こいつを当てられれば……!)

勇者「――セッ!」バシュッ!

ヒュィィィィ… バシャァッ!

新種「―――!?」

勇者(動きが止まった! このまま罠の場所まで押し飛ばす!)ダダッ

勇者「うおおおおっ!」ガシッ!

勇者(お……めぇ!)ググッ…

ズシャッ!

罠師「離れろ勇者! 罠を発動するッ!」

勇者「!」バッ

罠師『束縛陣!』

新種「……!?」バリッ

戦士「動きが止まった! みんな一斉に斬り込めぇぇぇ!!」

「「「オオオオオオッ!」」」

ガガガガガガッ!

新種「……」

勇者(効いて無い――!?)

新種「グガァァァ!」ギュルルルルルルルルッ

戦士「なっ……!」

罠師「俺の能力が……?」

ブワッ

勇者(ぐっ……攻撃で突風が起こったのか……?! 一瞬で戦士系達が!)

新種「…」ズイッ

罠師「!?」

新種「――ッ」バシッ

勇者(……あの新種の爪。鎧すらも簡単に斬り裂くのか……)

魔法使い「きゃぁぁぁあっ!」

勇者(……迷ってる場合じゃない!)

「に、逃げろ!」

「勝てるわけがない!」

新種「……」ジリッ

グサッ

新種「――ガッ!?」

勇者「……」グリッ…

ブ―

勇者「くっ!」ガッ!

新種「……!」

勇者(よし、爪を貰わなければ……こいつの腕力なら防げる!)

勇者「お前の相手は俺だ」

新種「――!」

新種の化け物による容赦ない連撃が勇者に向かって打たれる。

勇者「……」パパパパッ

新種「ガァァァ!」ズドドドッ!

勇者(腕がふっとんでいきそうだ……!)

新種「……!」バッ

勇者(引いた……?)

新種「グゥゥゥ……」

勇者(離れて何をするつもりだ……?)

新種「――!」シュ―

―パッ!

勇者「……!」ブシッ

新種「――」ザザザッ

シュッ

勇者「ぐぅ!」ガッ!

勇者(離れた所から一瞬で距離を詰め、一撃与えて離脱していく……)

バババババババッ!

勇者(このまま少しずつ俺を削っていくつもりか……!)

勇者「……っ!」スパッ

勇者(能力で作った鎧を軽々と裂いていく……! 体力が尽きる前になんとかしないと!)

勇者「……」ザクッ

勇者「……」ガッ

勇者「……」ザシュッ

ポタッ …ポタッ

勇者「…………」ガクッ

勇者(腕の動きだけなら何とか凌げたが……、足の動きには速すぎてついていけない……)

チカッチカッ

勇者「!?」

勇者(光の反射……?)

罠師「…………」チカッ

勇者(ガラスの破片で光を送っていたのか? …どういう意図だ?)

チカッ

罠師「……」スッ…

勇者(足元……? …そうか!)

新種「グゥゥ…」

勇者「……」グググ

勇者「……全然効いてねーぞ」

新種「……」―シュッ

ガガガガ

勇者(防御だ……)

ガガガガガガ

勇者(…キツいな)

ガガガガガガガガ

勇者(…………)

勇者「…………」ドロッ

勇者(血が流れすぎだ……目眩がしてきたぜ)ポタポタ

新種「……」ググッ

新種「ガアアアア!」バシュッ!

勇者「……」キッ

罠師『束縛陣!』

新種「!?」ガクッ

罠師(一瞬しか止められないが……)ガクッ

ガシッ

勇者「……耐えたぜ~~ッ!」

新種「……?!」

勇者「…腕さえつかめりゃこっちのもんだ。こっからは殴り合い……耐久勝負と行こうじゃねぇか」

新種「!」バシッ

勇者「……ベッ」ベシャッ

ドゴッ

新種「……!?」カクッ

勇者「……」バキッバキッ!

新種「ガ……」

勇者「…効いたかよ? 女神の加護入りの拳は!」

ズドッ!

新種「…………!」

勇者「打たれることにはなれてないらしいな。……これからテメェに殴られた分纏めてお返ししてやるぜ」

ガッガッガッ

勇者「……」

勇者(能力を拳に集中……!)

ズン…!

新種「……!」ガクッ

勇者「腹が痛いか?」

勇者(もう拘束は必要ないな)パッ

勇者「たっぷり味わえ!」

――

新種「 」グラッ

ズズン…

勇者「はあっ…はあっ…!」

戦士「や、やったな勇者! 君のお陰でなんとか無事だったよ」

勇者「…ゼヒ……ハァ…ゼッ」

戦士「ゆ、勇者……?」

勇者(胸が……苦し……ッ)ガクッ

勇者「コヒュー…コヒュー……」

勇者(息が……出来な)

勇者(………………)バタッ

戦士「お、おいっ! 勇者!? 動けるものは手伝ってくれ! 早く勇者を運ぶんだ――」

勇者(…………)

――

勇者「…………!」

勇者「はっ!」ズキッ

勇者「うぐ……」

勇者(……どこだ? ここ)

勇者(……心臓が痛ぇ。もう気のせいじゃないな、これは……)

勇者(……?)

勇者(なんだ……? 俺の体からでる、この黒い"モヤ"は……?)

勇者「……」ゴシゴシ

勇者(? …消えた)

勇者(……気のせいか)

勇者「…………」

勇者(はぁ、女神に会いたい)

一旦区切りますm(__)m

――

勇者「…………」

女神「あら。起きてたんですか? 最近はあなたを起こす手間がはぶけて楽ですね」

勇者「なんでか目が覚めちまったな」

女神「いつもそうだといいんですけど……。では、着替えてきてくださいね」

勇者「ああ」

トテトテ…

勇者(行ったか……)

勇者(……)ギュッ

勇者(この体の痛み……。突然痛むのはやめて欲しいよ。おかげで寝不足だ……)

勇者が北の町での依頼を終え自宅に帰ってきた後、数週間が経過していた。

あれから黒い化け物が現れたという噂は聞かない。

勇者(……あの新種が黒い化け物を生み出していた親玉だったとか?)

勇者(そうだったらいいんだけど)

勇者「……」ゴシ

勇者(視力が落ちてるな……。もうあの力は使いたくないもんだ)

勇者「女神ー」

女神「勇者さん。もうちょっと待っていてください、後少しでできますから」

勇者「……」

ギュッ

女神「きゃっ!? ……料理中に抱きつかないでください、あ…危ないですから」

勇者「ごめん……なんとなくそんな気分になったからさ」

女神「どんな気分ですか……。もぅ、おとなしく座っていてください」

勇者(……)

――

勇者「ごちそうさま。うまかったよ」

女神「ありがとうございます」ニコ

女神「この後はどうするんですか?」

勇者「うーん。……家でごろごろしようかな」

女神「……今日もですか?」ジトッ

勇者「いいじゃないか。この前の依頼でお金は余るくらいにあるし」

女神「たまには運動しないと太っちゃいますよ?」

勇者「大丈夫。太らない体質だからさ」

女神「勇者さんは……。もぅ、食器かたしてきますね?」

勇者(……)

勇者(平和だ……今は)

勇者(だけで長く続く気はしない。……女神が怒るまでは家にいよう)

―昼過ぎ・庭

勇者「……」ジー

女神「…」セッセッ

勇者(選択物ほしてるとこ見るだけでも飽きないな)

勇者「……」ジー

女神「……あの、勇者さん? じっと見られるとやりずらいんですけど…」

勇者「…ごめん」ジー

女神「~~。暇なら手伝ってください!」

勇者「分かった」

勇者「……」ノロノロ

女神「…」テキパキ

勇者(洗濯物ほすなんていつぶりだ……? 基本着るものが無くなったら洗うスタイルでいたら、女神がやってくれるようになったんだよな)

勇者「次のは…」ヒョイ

勇者「…ん?」

勇者(この白いヒラヒラした布は……)

勇者「……」ジィィ

女神「……? 勇者さん、どうかしましたか――」

女神「!??」

勇者「……」ジー

女神「な、な、な、なにしてるんですかぁっ!」バッ!

勇者「い、いや……邪なものはいっさいない好奇心でな……」

女神「残りは私がやりますから勇者さんはあっちに言っててください!」

勇者「は、はい!」

勇者(追いやられてしまった……)

勇者(それにしても自主的に洗濯をするとあぁいう良い事があるのか……。気が向いたら女神と代わってみようかな)

勇者「……」ジー

女神「…」バサッ

女神(……集中できないです)

女神(まったく、勇者さんってば意外にそういう事もするんですね)

女神(…いえ、魔がさしただけでしょう……。うん)

――

勇者(日が暮れてきたな……)

勇者(女神は……夕飯作ってる最中か)

勇者(……そういや俺が勇者になった時も、こんな感じの夕焼けだったっけ)

勇者(…………)

――

(腹……減ったなぁ)

あの時まで俺は……孤児だったな。確か、そんな事を考えながら食い物を探して彷徨ってたんだ。

その日は全く食い物が見つからなくて……数日は何も口にしてなかったな。

(……なんだ? あれ)

林の中に入った時、何故か地面が赤く光ってみえたんだ。

そして、俺は操られていたようにそこを掘り返した。

(……見たことない木の実だな)

土の下からでてきたのは赤い宝玉だったけど、なんでか俺はそう思った。

(…………)ゴクン

(!?)ビキッ

勇者化の宝玉を飲み込むと、体に激痛が走った。

――後から知ったが、宝玉は手に入れた持ち主に力を宿した後、石ころになって消えるらしい。

じゃあ俺が飲み込んだ宝玉はどこに行ったのか……?

――

勇者(多分、俺の心臓の中にある……)ズキッ

勇者(この痛みはそういう事なんだろう)

勇者(……その後は、激痛に気を失った後目を覚ますと、いつの間にか女神が傍にいたんだっけな)

勇者(あれから後にも先にも、俺を対等の"人間"として扱ってくれたのは女神だけだ)

勇者(……)

―数日後

勇者「……」ボーッ

女神「……」

コンコン

女神「あら……誰でしょうか」

勇者「……居留守でいいよ」

女神「だめですよっ、またギルドの方がいらしたのかも知れませんし」

勇者(……そうだったら最悪だな)

コンコン

女神「はーい、今出ます!」

勇者「……」スタスタ

ガチャッ

戦士「えーと、勇者の家はここであって――、勇者」

女神「勇者さん。お知り合いですか?」

勇者「あぁ、一応」

戦士「手厳しいね……。今日は今までの非礼を詫びに来たんだ。…これは気持ちさ」

女神「わ。すごい果物の数」

勇者「ありがとう。にしても突然だな」

戦士「そうかい? 傷がなおってから来たから、そんな感じかもね。勇者の方はもう大丈夫なのかい? 僕より随分酷い怪我だったけど」

勇者「……!」

女神「勇者さんはもう元気ですよ。昔から丈夫な人ですから」

戦士「おや。……随分可愛らしい子と住んでいるじゃないか、勇者とはそういう関係かい?」

女神「えぇっ!?」

勇者(……)

勇者(そうだ……。戦士はあの時北の町で他の戦士系の人達と一緒に新種の回転攻撃に巻き込まれ、腹にいくつもの裂傷を負った)

勇者(そして俺は、罠師が罠を完成させるまでの間攻撃を受け続け……身体中を削られ大怪我を負った)

勇者(…その怪我が治ったのは"いつ"だ……? 戦士は俺より随分増しな怪我でも治癒まで数週間かかった、そして俺は……?)

戦士「……勇者?」

勇者「…! ……悪い、なんだって?」

戦士「聞いてなかったのかい? 君とこの子はどういう関係か聞いたのさ」

女神「あ、あの……」

勇者「あ……」

勇者(…どう答えよう)

戦士「僕は妹さんかな、と思ったんだけど、君は黒髪だろ? …まぁ髪が少しはねているところは似ているけど」

戦士「だから婚約者かなと思ったんだ。そうしたらいい趣味してるね勇者、同士と呼ばせて貰っていいかい?」

勇者「は?」

女神「ち、違います! 誤解です!」

勇者「そ、そうそう…親戚の子だ。何もやましい事はないぞ?」

女神「そうです!」

戦士「はは。冗談だよ、成人前に婚約できるわけないじゃないか」

勇者「……」

女神「な……」

戦士「謝るよ……だからそんなににらまないでくれ勇者」

勇者「……目付きは生まれつきだ」

戦士「おおこわいこわい。それじゃあお詫びも言えたし僕は退散しようかな、ガールフレンドは大切にね、勇者」

勇者「…ああ。気をつけろよ」

戦士「君こそね。また同じ依頼を受けられたらいいね」

ガチャッ

戦士「……それと勇者、君……なんだか髪の色が薄くなってないかい? 前見た時は漆黒だったけど、今はグレーに見えるよ?」

勇者「……!?」

戦士「じゃ。また会おう」

―バタン

勇者「……」

女神「……ほんとですね。白髪が生えているわけじゃないんですけど、どうしたんでしょうか?」

勇者「光の加減でそう見えるだけじゃないか?」

女神「……だったらいいんですけど」

勇者「……」

勇者(……単純に考えて、半分"使っちまった"って事なのか……?)

女神「この果物どうしましょう。何か食べますか?」

勇者「……。そうだな、じゃあブドウでも貰おうかな」

――

今日はここまでで…

―数日後

勇者は魔物退治の依頼を受け、その現場に向かう道中にあった。

勇者(……めんどくせぇ)

勇者(だけどそろそろ仕事しないと女神の機嫌が悪くなりそうだったからな…)

勇者(犬型魔物の討伐か。仕事を選べるようになったのはいいけど、強力な魔物とは闘えないからな)

勇者「……?」

大男「……」

勇者(なんだ? こんな町外れの街道に……、冒険者の類か?)

勇者「……」スタスタ

大男とすれ違った直後

大男「……体の調子は、どうだね?」

勇者「――!?」

大男「実に良い、君は次の段階に進みつつある――」

勇者「どういうことだ!? ……?」

勇者(いない……? 馬鹿な、あれほどの大男が一瞬で姿を消せるのか?)

勇者(周りには何もない……)

勇者「……」

勇者(次の段階……?)

――

野犬「ガウガァァッ!」ダダダッ

勇者「……」

討伐対象の野犬が勇者に飛び掛かる。接触の刹那に勇者は野犬の首をとばした。

勇者(後ニ体か。簡単に済みそうだ)

――

―依頼現場の森

勇者(片付いたが、随分奥まできちまったな)

勇者「出口はどっちだ……」キョロキョロ

勇者「……ん?」

勇者(なんだあれ?)

勇者は森の奥に光る何かを見つける。

勇者「……」

果たしてそれは一振りの長剣だった。

勇者(珍しい形の剣だな……、木の実にトゲがついたような鍔だ。使いにくそうだな…)パシッ

勇者(……軽い)

勇者「……?」

勇者(鍔の中心にある……宝石か? 今、光ったような……)

勇者「……」ジー

勇者「…………気のせいか」



――

女神「おかえりなさい。……その剣どうしたんですか?」

勇者「依頼先の森で拾ったんだ」スラッ

勇者「めちゃくちゃ軽くてよさそうだったから貰ってきちった」

女神「……その剣、とても強力な力を感じます。魔具かもしれません」

勇者「魔具?」

女神「少し貸していただけますか?」

勇者「ああ…」スッ

女神「…―」ハシ

ズシッ…!

女神「重――?!」

勇者「えっ!?」

ベシベシベシ

勇者「床にめり込んじまった……」

女神「~はぁ、びっくりしました……。物凄く重いじゃないですか!」

勇者「……おかしいな」ヒョイ

勇者「軽いぞ……?」

女神「勇者さん、いつの間にそんなに力持ちになったんですか?」

勇者「いや、俺自身の力は変わってないはずだけど……」

勇者(能力も使ってないのに……、どうしてだ?)

女神「不思議な事もあるものですね……、剣が勇者さんを選んでいるんでしょうか」

勇者「剣が俺を?」

女神「…まぁ、なんにせよ中に入ってください。あ、剣は場所を考えて置いてくださいよ?」

勇者「…ああ」

勇者(……なんでもいいか)

――

新種の黒い化け物を倒してから数ヶ月が過ぎた。

人々は黒い化け物の恐怖を忘れはじめ、再び今までのような平穏が戻ってきたかのように思った。

しかし、人々は知る事になる。

前回の襲撃がほんの第一波にすぎなかったという事を……

――

―ギルド

役員「本日は呼び出しに応じていただき感謝します」

勇者「……ああ」

勇者(…分かっていた事だ。人前であの化け物を倒して見せたんだ、また同じ奴らが現れれば俺に白羽の矢がたつ事は)

役員「勇者さまには東方の街へ行っていただきたいのです。現在あちこちで既存種と"獣型"が確認されていますが――」

役員「――そこでは新たな新種が確認されたと」



―東方の街

勇者「……」

惨状だった。街のいたるところから火の手があがり、煙は城からものびている。

兵士「ゆ、勇者さまですか……」

勇者「! 大丈夫か――」ヌメッ

勇者(――致命傷だ…)

兵士「我が国の軍は壊滅状態……。あちこちで防衛線をはっていますが、壊滅は時間の問題……」

勇者「それほどまでに数が多いのか……?」

兵士「い、いえ……数はそれほどでは、ないのですが……」ゲホッ

兵士「化け物共は今までに無い統率を見せています……。恐らく、城にいる新型……。奴が……化け物共を……」

兵士「……」

勇者「…………」

勇者(つまり、単機敵の中を進み……城にいる"新型"とやらを撃破しろ、と)

勇者「……出し惜しみする余裕は無さそうだ」ズズ…

―城下の防衛線

騎士「な、なんだアレは!? 黒い煙が化け物共を蹴散らしながらくるぞ!!」

弓兵「射ったほうがいいんでしょうか……?」

騎士「間に合わないッ!」

黒い煙は防衛線の中心に飛び込むと、自ら爆発するように煙を晴らした。

勇者「ぐ……。城の防衛線はここか?」

弓兵「人間!?」

騎士「あなたは、勇者殿か!?」

弓兵「あ、ギルドからの援軍の!」

勇者「……」ズキズキ

勇者(これを使うと身体中が痛むな……、液体の次は影を纏うか。……)

騎士「だ、大丈夫ですか? 顔色がすぐれないようですが……」

勇者「――新型だ。あいつらの親玉がいる場所を教えてくれ」

弓兵「それなら城の中に――」

勇者「――!」バッ

騎士「待ってください! 城の中には化け物共が――!」

勇者(この影を纏ってさっさと片付けるしかない!)ドシュッ

――

兵隊長「生き残りはっ!?」

指揮官「もうここにいる者だけだ! …王も討たれた」

兵隊長「く……。化け物共めぇぇ!」ギリギリ

指揮官「! あの新型が来たぞ!」

新型「キュィィィィィ――」

兵隊長「また"アレ"が来るぞッ! 全員伏せろぉ!」

――そう叫んだ兵隊長の頭上を飛び越し、影を纏った勇者が長剣で新型を斬りつける。

勇者(堅ぇっ……!)ググッ

新型「……」

兵隊長「おい貴様ッ! 離れろッ!!」

勇者「――?」

新型「…―」カッ!

新型の化け物が光を発する、

ズ┠"┠"┠"┠"┠"┠"┠"┠"!!

勇者「がッ……!?」

勇者が斬りつけた方向に巨大な衝撃破が放たれる。

その波動に乗せられた勇者は宙に浮いたまま衝撃破と共に壁を突き破った。

ガラガラッ

勇者「…………」

勇者(とっさに影を全身に纏わなきゃ……今の攻撃で終わってたぜ……)

勇者「……」フラッ

指揮官「あれをくらって生きているのか……?」

兵隊長「おいッ! そいつは受けた衝撃を吸収して倍にして返してくる! 迂闊に攻撃するなッ!」

勇者「チ……。焦り過ぎたか」

勇者(攻撃を吸収……、だったら吸収して返してくるまでの間に決めてやる)

勇者は再び新型の化け物に突撃する。

その平べったい体に剣を叩き込む。

新型「キュィ――」

勇者「!」サッ

カッ!

衝撃破が放たれる――しかしそこに勇者の姿は無かった。

勇者(やはり、衝撃破は"攻撃を受けた方向"にしか返せないのか。さっき攻撃を受けた時、もうすこし奴の攻撃軸がぶれていたら直撃していた)

勇者(奴は俺に攻撃を直撃させられなかったんじゃない、当てられなかったんだ)

勇者は新型の背後に回り込み斬り込む――

新型「――」グルンッ

勇者(何――!?)

気がついた時には勇者の体は地面を転がっていた。

勇者(今……奴は上半身を回転させたのか……?)

そしてその勢いをつけた新型の平たい板のような腕に打たれた。

兵隊長「あの化け物、表裏が無いのか……?」

勇者「ぐっ……デタラメな奴め……!」

勇者(……だがこの作戦は効いている!)

再び斬り込んでくる勇者を、新型は反対になったままの胴体で受ける。

勇者(このまま衝撃破をかわし続けて攻撃を加え続ければいい)

新型「キュィィィ――」

勇者「!」

再び視界が閃光に包まれる――

勇者「――!」ドッ

勇者(射線からは外れたはず――!)

弱かったが衝撃破を受け、宙に飛び上がった勇者に、新型が落ちてきたところに追撃の殴りを放つ。

勇者「ぐぁ……っ」メシ…

新型「……」

バキッ!

勇者「!?」

新型は腕の先に吸収したエネルギーを集め、放った。

それは衝撃破のように遠くまで届かず、腕の先にだけ衝撃を与えるだけだったが、今新型の腕に殴られていた勇者には直撃した。

勇者「……っ」ドサッ

勇者(威力は弱ぇが……全方位に衝撃破はだせんのか……ッ)

勇者「ぐ……肋骨がバラバラだ……」

勇者「……」ズズ…

勇者(俺の能力……。液体を体内に送り、負傷した箇所を覆う事で"代わり"ができるみたいだな)

黒い液体が勇者の裂けた肌を覆う。その下で細胞分裂が促され、傷が塞がっていく。

勇者(こういう事か。超再生の代償に老化する……、皮膚に皺ができたりはしないみたいだが、確実に寿命は縮まるな……)

勇者(早めに片をつけるしかない……)

新型「……」ノソッ

勇者(あいつは受けた攻撃エネルギーを蓄え、分けて放出できるみたいだ)

勇者(だが、あいつももう蓄えたエネルギーは使い果たしたみたいだな。……やるなら今しかない……)

勇者(腕に……全能力を集中させる……)

勇者「……固くて斬れねぇってんなら」

ダッ!

新型「キュィィィ――」

勇者(まだ残ってやがったのか――!?)

勇者(今までで最大の衝撃破だ――)

ズドドドドドドドドドド!

衝撃破を突き抜け、液体でできた鎧を腕に、影で体をおおった勇者が飛び出す。

勇者【影】「オオオオオッ!!」ザンッ

新型「―…」グラッ

勇者【影】(斬れないか、ならっ!)

勇者【影】「ハアアアアッ!」

勇者は高速で剣を引き戻し、再び打ち付ける。

――それを何度も繰り返す。

新型「……!」ビキビキッ

勇者【影】「――ッ!」ガギッ

ついに新型の化け物の体に傷がつく時が来た。

影が勇者の腕のみに集中する。

新型「 」シュォォォ…

勇者「――漏れてるぜ、蓄えたエネルギーが」

新型「―キュィ」

勇者「くたばれぇっ!」ズガッ!

新型の化け物は肩口から二つに裂けた。

新型の化け物は傾き地面へ倒れ…

新型「――ミチヅレダ」

跳ね返ると同時に爆発した。

勇者「!」

――

真っ黒い煙が城内からふき出す。

兵隊長「い、生きてるかぁっ……」

指揮官「私はなんとか……」

兵隊長「アレ、どうなった?」

指揮官「分かりません……、化け物が爆発したところまでしか…」

兵隊長「煙が薄くなってきたな……」

指揮官「……あっ!」

勇者【影】「……」

兵隊長「おい、アレ…生きてるのか?」

指揮官「さ、さぁ……」

兵隊長と指揮官が瓦礫の影から様子をうかがうようにしていると、風に流されるように勇者が纏う影が消えた。

勇者「 」フラッ

兵隊長「おっ!? だ、誰か行ってあいつを助けて来い!」



兵隊長「こりゃ酷いな……このまま死なせてやった方が楽なんじゃないか?」

指揮官「……全身がボロボロに焼けていますね」

兵隊長「……」

指揮官「…どうするんですか?」

兵隊長「……一応、治療させよう。助かるかはわからんが」

指揮官「そうですね。…おい、この人を運ぶんだ。…丁寧にな」

――

休憩しますおォォ…

――

勇者(……)

熱い。

勇者(視界が何かに遮られてるな……。なんだこれ、布か?)

勇者(体が熱い……。ここはどこだ? あれからどうなったんだ……?)

――ミチヅレダ

勇者の頭に化け物の"言葉"がよみがえる。

勇者(……あれは本当に、世間の見解通り、魔物なのか……?)

勇者(俺にはもっと別の……何か恐ろしいものに思えてならない)

皮が炭となり、肉が焼け爛れた勇者の肉体はそのまま腐って死体置場に棄てられる予定だった。



兵隊長「まさか、全快するとは思わなかったぞ」

勇者「……そういう能力なんだ」

指揮官「さすが勇者さま。その力で是非他の国も救ってください!」

勇者「……」

兵隊長「俺達も片付けが済んだら応援にいくからよっ」

指揮官「それにしても勇者さま、髪は元々そのような色でしたっけ? もっと濃い灰色だったような……」

兵隊長「ばっかお前、そりゃ見間違えただけだろう。どうして勇者様の髪の色が変わるってんだ?」

勇者(……)

指揮官「そうでしたっけ……」

馬師「隊長! 馬車の用意ができましたぜ!」

兵隊長「そうか! では勇者様よ、健闘をいのりますぜ」

勇者「ああ。…俺を治療してくれた事、感謝する」



勇者を乗せた馬車は化け物が襲撃している他の国へ向かう。

勇者(……髪はほとんど白く、目は赤くなっちまったな。色素が抜けたみたいだ)

勇者(どうやらあの影を使えば、際限無く体を強化できるようだ。…確かに代償が無ければ最高の能力だな)

勇者(心臓の痛みがおさまらない…。帰るまでに無事でいられるといいが……)

――

――

黒き影を纏う勇者の話は瞬く間に国中に広がった。

黒い化け物の大規模襲撃。その苦戦地域を救った勇者を戦地は欲しがった。

やがて再び平穏が訪れる。黒い化け物は姿を消した。

――

―国王の城

国王「この度のそなたの働き、ほめて遣わすぞ勇者。その名にまごうことなき見事な働きであった」

勇者「……は」

国王「ところで、この国の兵士となる話……考えなおしたか?」

勇者「……申し訳ありません。私には、帰る場所があるので」

国王「そうか。気が変わったらいつでも訪ねるがよいぞ」

勇者「……」コクッ

勇者「……失礼します」

国王「……行ったか」

大臣「よろしかったのですか? 無理にでも召し抱えてしまえばよかったのでは」

国王「よい。大臣よ、奴を見たか? まるで半死人だ。まったく精気を感じなかった」

大臣「確かに……あの勇者の力。噂によると、とても酷い代償があるのだとか」

国王「あやつを呼び出したのは一応の形式の為だ。国を救った者に対して礼儀を示さねばならぬからな」

国王「――あれでは使い物になるまい」

――

勇者(……やっと帰ってこれたな。あれから二月も経ってしまった)

勇者「……」コンコン

勇者(女神……)

ガチャッ!

女神「勇者さん!? お帰りなさ――」

勇者「…ただいま」

女神「勇者さん……ですよね?」

勇者「ああ」

女神「…………」

勇者「……入っていいか? ……休みたい」

女神「は、はい! すぐに整えますね?」

勇者「いいよ。……すぐに寝たいんだ」

女神「勇者さ……」

勇者「……」フラフラ

女神「……」



勇者はその日から3日も眠り続けた。

起きるとすぐそばに女神がいた。

勇者「……」

女神「勇者さん。大丈夫ですか……?」

勇者「……腹へった」

女神「すぐに持ってきます!」



勇者「……」モグ…

女神「勇者さん。いったい何があったんですか? その髪だって、出発する前は黒かったのに……!」

勇者「…なんでもないよ」

女神「嘘です! 私には話せない事なんですか? 今の勇者さんは全然平気には見えません!」

勇者「……」

勇者(別に、話せないって事ではないよな……。何で女神には内緒にしてたんだっけ……?)

勇者(…………)



勇者が全ての事を話すと、女神はしばらく無言で震えた後。爆発するようにまくしたてた。

女神「なぜ黙ってたんですか! 力を使う度命を削るなんて! なんであなたはその力を使ったんですか!?」

女神「なんで……私に言ってくれなかったんですか……」

勇者「……」

女神「……」

勇者「……なんで、だっけ……?」

女神「! 勇者、さん……」

グスッ

女神「ヒック……うぅ……」

勇者(そうだ。……この事を言うと女神が悲しむから、言わない事にしてたんだ)

女神「勇者さん……」グスグス

勇者(……なんで女神は泣いてるんだ?)



――

それから女神は勇者のちょっとした変化に気がつく。

ちょっとした事をすぐに忘れるようになった。

たまに反応が返ってこなくなった。

睡眠時間が長くなった。

台所で会話をしている時だった。

女神「勇者さん? またボーッとしてますよ?」

勇者「ん? ああ……すまん」

勇者(なんだ……。最近頭にもやがかかる様な感覚をよく覚えるな)

女神「大丈夫ですか?」

勇者「ん……ちょっと眠いかも」ガタッ

女神「あっ、寝室に行くなら掴まってください」

勇者「なんだよ大袈裟だなぁ、おじいちゃんじゃないんだからさ」

女神「でも……」

勇者(まぁそういう建前で女神に触れるのはいいんだけど)

勇者「だいじょぶだいじょぶ――」ドタッ

勇者「――あれ?」

女神「ッ!」ビクッ

勇者「あ、あれ? どうしたんだ……? 足に力が入らない……」プルプル

女神「……」ポロポロ

勇者「女神!? な、何泣いてるんだよ。多分長く座ってたから足が痺れただけさ。……悪いけど肩を貸してくれ」

女神「勇者、ざん……ヒグッ」スッ

勇者「悪いな……。泣くなよ。疲れがたまってるだけだって」

そんなはずはなかった。

すでに勇者が家に帰ってから十数日経っていたからだ。



ベッドに寝かされて、勇者は一息つく。

勇者(……まぁ、能力の後遺症だろうな)

勇者(最近簡単な事でも忘れちまう。髪も完全に白髪だ。……自分じゃ覚えてないけどたまに能が停止してるみたいだし……)

勇者(体だけが劣化すんだと思ったら、脳までいかれちまったか)

勇者(……女神の顔も、最近良く見えない。老眼って奴か。まだ19だってのに)

勇者「……虚しいって言うのか? この感情は」

勇者「…………」

勇者(あんとき、化け物の事なんて無視して女神の事だけ考えてれば良かったかな)

勇者(……でも、あいつ関係無い奴が苦しんでも悲しそうな顔するんだよなぁ)

勇者(それはよくないな、うん。……過ぎた事を気にしててもしょうがないか)

勇者(……あとどれくらい生きてられるんだ)

――

ある日、勇者が外にでようとした時だった。

勇者「……」ガチャ

女神「!」

ダダダダダッ

女神「勇者さんっ!!」

勇者「うわっ!?」

女神「行っちゃだめです! 行かないで!」ガシッ

勇者「――」グラッ

ドタドタッ

勇者「いてて……なんだいきなり」

女神「もう能力は使わないでください! ――仕事には行かないで!」

勇者「……落ち着け。市場にくいもん買いに行こうとしただけだ」

女神「え……?」ギュゥゥゥ

勇者「女神。抱き締めてくれるのは嬉しいけどちょっときついかな……」

女神「!!」パッ

女神「ご、ごめんなさい……///」

勇者「いきなりどうしたんだよ?」

女神「……だって。また勇者さんがあれと闘ったら。能力を使う事になってしまいますから」

勇者「俺だってもう力は使うつもりはないよ。それにあの黒い化け物だってもういないじゃないか」

女神「……っ」

勇者(……)

勇者「さ、退いてくれ。一緒に買い物に行こう」

女神「……はい」

勇者「……」

勇者(……女神)



――

それからしばらく日が過ぎた。

黒い化け物はいなくなったが、再びの平穏に興じるほど人々は馬鹿ではなかった。

そして悟っていたのは彼らだけではない。

――

勇者(最近女神が日を増す毎に焦っている気がする)

勇者(……そろそろなんだな)

勇者(…………)

勇者(女神は台所かな)



勇者「女神」

女神「勇者さん。…どうしたんですか?」

勇者「聞きたい事があるんだ」

女神「……」

勇者「……話してくれるよな」

女神「……勇者、さん」

―居間

勇者「ここなら落ち着いて話せるな」

女神「……」

勇者「……単刀直入に言うぞ。あの化け物の正体は何なんだ? 知ってるんだろ、女神」

女神「……それは」

勇者「あいつらが普通の魔物じゃないって事くらい、俺だって気づいてるぞ。一番近い所で闘ってきたんだからな」

女神「……っ」

勇者「教えてくれ」

女神「……」

勇者「……」

女神「…………分かりました」

勇者「…」

女神「彼らは……、勇者さんの言うとおり。……魔物ではありません。簡単に言うと、別世界の存在なんです」

勇者「……別世界?」

女神「はい……。先代の女神はそれを"反存在"と呼んでいました」

勇者「どういう意味だ?」

女神「彼らは私達の世界に寄り添うように存在する平行世界の、私達の"悪意"から生まれた存在らしいです」

勇者「……」

女神「実はこの世界は一度彼らに攻め込まれているんです。その時は先代女神が自らの魂と引き替えに、反存在を生み出している彼らの王を封じる事で、一旦の解決を得ました」

勇者「……封印が解かれたのか?」

女神「そのようです。……そして反存在の王がまた侵攻してきているんだと思います」

女神「今まで退けてきた反存在達は第一波、第二波に過ぎません。彼らはこちらの世界では私の加護に遮られますから、少ししか活動できないんです」

勇者「また来るって事か」

女神「……そうなるでしょう」

勇者「……なんであいつらは攻撃してくるんだ?」

女神「分かりません。私には彼らに明確な目的など無く、破壊衝動に従ってるだけだと思えます」

勇者「……」

女神「私は……先代女神が死に、女神を受け継いだ時にはまだ生まれて間もない状態でした。ですから、どうすればいいか、……分からないんです」

勇者「また封印はできないのか?」

女神「……残念ながら。先代の女神が封印の際仕様したような強力な魔具は、恐らく反存在達の世界にあるはずですから」

勇者「……くそ」

女神「……情けないですね。女神なのに、私。肝心な時に何もできない……」

勇者「倒せないのか? 反存在の王とやらは」

女神「……できないでしょう。先の争いで封じた時も、まったく歯がたたなかったようですから」

――

――

それから数週間後。

前回とは比べものにならない程の反存在達が、世界中に現れる。

瞬く間に世界中が火の手に包まれる。

その噂は勇者と女神が暮らす小さな町まで届いていた。

――

気力が尽きた…

今日の所は一旦終わりという事で……すみません(´;ω;`)

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom