幼馴染「うっとうしいからあんまり近寄らないでよね」(110)

男「今日もつめてえな」

幼「つめたいとかじゃないし」

男「つうか近寄らないでって。台所せまいんだから仕方ねえだろ」

幼「じゃあご飯できるまで向こういっててよ」

男「お前一人につくらせんのも悪い」

幼「あんたなんかいても邪魔なだけだから」

男「……」

幼「ほら。はやくいって」

男「かわいくねえ奴」

幼「はあ? なにそれ、ちゃんと感謝してんの?」

男「してますよ」

幼「そもそもおばさんの頼みとはいえ、何で私がこんな奴の夕飯つくらなきゃいけないのよ……」ブツブツ

男「……」

幼「できた」コトッ

男「おー。うまそうだなー」

幼「あっそ」

男「いただきまーす!」

幼「……いただきます」

もぐもぐ

男「やっぱりお前の料理はうまいよ」

幼「味なんてわかんないくせに」

男「そ、そんなことねえって」

幼「ふん」モグモグ

男「……」

幼「……」モグモグ

男(いつからこんなに嫌われちゃったんだろうなあ)

男(昔は男くんと結婚するーとかって可愛かったのに)

幼「ごちそうさま」

男「ごちそーさま」

幼「じゃあ洗ってくる」

男「あ。洗いもんは俺がやっとくから」

幼「は?」

男「いや、だからお前はもう帰っていいよ」

幼「……なにそれ、ご飯つくらせたら私はもう用済みっていいたいわけ」

男「そ、そんなこといってねえだろ?」

幼「洗いものも私がやるから」カチャカチャ

男「……」

幼「……」カチャカチャ

男「なあ。いつもありがとな」

幼「べつに……すきでやってるわけじゃないし」

幼「じゃあもう帰る」

男「おう。今日はわざわざありがと」

幼「今日はじゃなくて今日もでしょ」

男「いや……あはは」

幼「まあ慣れたからいいけど」

男「なんだかんだで幼は優しいな」

幼「……きもい」

男「ほ、ほめたら気持ち悪がられるのか」

幼「ふん」

男「まあこれからは俺にご飯つくらなくてもよくなるからさ」

幼「はあ? 自分でつくる気?」

男「いや」

幼「料理なんてできないでしょ」

男「ちげえよ。引っ越すんだよ俺」

幼「……は?」

男「けっこう遠くに」

幼「なにそれ……つまんない冗談」

男「冗談じゃねえけど」

幼「え……?」

男「親の仕事の都合で」

幼「……」

男「だからこれからはお前も自由だな、あはは」

幼「……ほん」

男「ん?」

幼「ほんと……なの?」

男「こんなウソついてどうすんだ」

幼「だって……いき、なり、すぎ」

男「一応高校の友達には言ってるんだけどな」

幼「な……なんで、わ、私にはいわなかったわけ?」

男「いおうとはしてたけどお前いっつも機嫌悪そうだから言い出せなくて」

幼「……」

男「今まで世話んなった。これからお前の夕飯が食えなくなると思うとさびしいよ。なんつってな」

幼「……ぃ」

男「?」

幼「いつっ、いつ……ひっこすの」

男「引っ越すのは三日後」

幼「!?」

男「もう荷物とかは送ってるからな」

幼「っ……」

男「じゃあ明日も一応学校いくけどそれで最後だ。元気にやってくれよなー」

幼「あ、え……ぅ」

男「余計なお世話か。あはは。じゃあな」

幼「……」

ガチャ

幼母「あら幼。おかえり」

幼「……ただいま」

幼母「今日も男くんにご飯つくってあげてたのね。熱心だわー最後まで」

幼「おかあさん」

幼母「ん?」

幼「お、男……引っ越すって」

幼母「さびしくなるわよねえ」

幼「しってたの!?」

幼母「当然よ。あれ? 幼はしらなかったの?」

幼「っ……」

幼母「てっきり男くんがつたえてるものかと……」

幼「おっ、おかあさんのばかっ!!」

幼母「え!?」

――幼の部屋――


ガチャ

バタン

幼「……」

幼「っ……」

幼(ウソ……うそ……うそ)

幼(だって……こんな)

幼(こんないきなりっ……え、え?)

幼(そんなそぶりぜんぜんしてなかったのに!)

幼(男の家もいつもとかわらなかっ……)

幼(……いつもより何か片付いてた、きが、する)

幼(……)

幼(ど、どうしよう)オロオロ

幼(やだっ、やだっ)

幼(男もなんではやくいってくれないの)

幼(……)

幼(わ、わたしがいつも男の話きこうとしなかったからだぁ)

幼(だって、だって)

幼(まだたっぷり時間あるとおもってたんだもん)

幼(これからちょっとずつ素直になって、いつか男にほんとの気持ちを伝えられるようになろうって)

幼(引っ越すなんて……も、もう会えない?)

幼(いや……どうしよ、うぅ)モヤモヤ

幼(今日も授業中……男にたべてもらう明日の献立……かんがえてたのに)

幼(やだっ……な、なんかっ、涙でてきたっ)ジワッ

幼(わたしのばかっ、おおばか……うぇぇ)

幼「け、結婚するっで、ぐすっ、約束、しでだのにぃっ……うわあああん」ポロポロ

――翌日――

男「さてと」

男「忘れ物なし」

男「今日が最後の登校だからな」

男「ネクタイよし」キュッ

男「じゃあいってきます」

ガチャッ


幼「あっ」

男「おう。幼」

幼「えっ……と、おはよう」

男「偶然だな。お前もいま家でたとこか?」

幼「そ、そうよっ!」

男「な、なんで怒鳴るの?」

幼(早起きして30分前から男の家の前をいったりきたりしてたなんていえない)

幼(だって今日で男が学校くるの最後なんでしょ)

幼(ちょっとでも、い、一緒に)

男「どうした? はやく学校いかないと遅刻するって」スタスタ

幼「あ、わ、わかってるから!」

友「おっす男」

男「おうー」

女「今日であえるの最後なんだよね」

男「まあな。引っ越すのは二日後だけど」

幼(やっぱりみんなしってるんだ)

友「しかしやっと現実味がでてきたな。さびしいじゃねえか」

男「まあいくらでもメールとかすればいいし」

女「むこうでも元気にね」

男「うん」

友「たまに帰ってきたりすんの?」

男「それは……どうだろなー」

幼「っ……」

男がいる最後の学校という事があっても、授業は当然いつもどおり進み、幼が気づいた時には放課後になっていた。

幼(あああ……)

幼(どうしよう、どうしよう)

幼(ホームルームおわっちゃった)

幼(みんなカバンに教科書とかいれはじめてる)

幼(男……)チラッ

男「――」

友「――」

女「――」

クラスメート「――」

クラスメート「――」

幼(み、みんなおわかれ言ってる……)

幼(結局なにもはなせずおわっちゃったぁ)オロオロ

幼友「幼」

幼「っ……」ビクッ

幼友「いいの? 大丈夫?」

幼「な、なにが?」

幼友「男くん」

幼「……な、なんで」

幼友「すきなんでしょ?」

幼「っ!!」ガシャンッ

幼友「なに椅子から転げ落ちてるの」

幼「なっ、なな……し、しってた、の」

幼友「当たり前じゃん。みればわかるよ」

幼「……」

幼友「あんたって基本的に八方美人っていうか、誰にでも愛想いいくせに、男くんにはすごい冷たいし」

幼「……う」

幼友「いつ素直になるんだろうって遠巻きにみてたけど、まさか引っ越しちゃうなんてねー」

幼「うぅぅ……」

幼友「……」

幼「わ、わたしだって……まだよくわかんない」

幼友「……」

幼「男にはまだ、はずかしくて、いろいろ悪口いっちゃうけど」

幼「い、いつか、遊園地にさそって」

幼「いっぱいいっぱいアトラクションにのったりして」

幼「それでちょっと手をつないだりして、ふたりで写真とったりして」

幼「日が暮れてきたころに観覧車にのって」

幼「そこで告白するんだって、それで、夕暮れをばっくにはじめて、ちゅ、ちゅぅ……するんだって、きめてたのに」

幼友「そんな明確なプランがあったんだ……」

幼友「明日やればいいとか、いつか素直になればいいと思ってるうちは、いつまでたってもきっと遊園地にすら誘えなかったと思うよ」

幼「っ」グサッ

幼友「あれだけ男くんにひどい事いってた罰だよね」

幼「っっ」グサグサッ

幼友「きっと引っ越したあとも男くんにとっての幼の印象は、常日頃悪口をいってくるひどい女の子でしかないんだろうなあ」

幼「……」ジワッ

幼友「あ」

幼「やっ……ひぐっ、そんなのやらぁ……」ポロポロ

幼友「ま、まさか泣くとはっ、ごめんね」

幼「た、たずけでっ、幼友っ、ぐすっ、なんでもするからたすけてえっ!」ギュウッ

幼友「うーん……そうはいっても」

幼友「……」

幼「ぐす……」

幼友「男くんが引っ越すのってまだなんでしょ?」

幼「うん……ふつかご」

幼友「じゃあまだ時間あるじゃん」

幼「……?」

幼友「遊園地にさそうのも、手をつなぐのも、告白するのも、全部明日やればいいんだよ」

幼「っ……」

幼友「ね。大丈夫」ポン

幼「……」

幼友「それで気持ちをつたえて、もし付き合えたら、遠距離恋愛だけど幼の事を」

幼「……」

幼友「って……幼?」

幼「……できない」

幼友「はい?」

幼「できるわけないよ……だって昨日もいつもどおり……ひどいこといっぱいいったもん」

幼友「……」

幼「わ、わたしの中のプランではちょっとずつね、男に優しくできるようになって」

幼友「……」

幼「それで長い月日をかけてやっとゆうえん」

幼友「このおばかっ!」

幼「ひっ!」

幼友「だからその考えが駄目だってさっきいったじゃんかー!」

幼「だ、だってむり! むりなのっ!!」

幼友「無理じゃない! さそうだけでしょ! 最後なんだよ!?」

幼「はずかしいの! こわいの! できないのっ!!」

幼友「……」ハァハァ

幼「うう……」

幼友「……じゃあ仕方ない」

幼「……」

幼友「男くんは引っ越した先の街で」

幼友「口が悪くて意地悪でへたれな幼のことなんかさっぱり忘れて」

幼友「きっと」

幼友「すぅっっっごく素直で、かわいくて、やさしい、素敵な女の子と付き合うんだろうね」

幼「ーーっ」

幼友「あ、幼は幼馴染だから男くんとその子の結婚式でスピーチ任されるかも」

幼「……」

幼友「やったね幼ちゃん。花婿姿の男くんと会えるよ」

幼「……」

幼友「花嫁はあんたじゃないけど」


幼「……ごめんなさい」

幼友「うん?」

幼「……さそう」ボソッ

幼友「なんだって?」

幼「男……遊園地、さそうっ」

幼友「きこえにゃいなあ」

幼「おっ!」

幼「男を! 遊園地に!! さそうのっ!!!」ガタッ


男「ん? 遊園地?」

幼「――っっ!!??」

幼友「あはは。教室の隅でそんな大きい声だしたらきこえちゃうよね」

幼「あっ、ひゃっ、ああっ!」

男「俺と幼が?」

幼友「うん。いきたいんだってさ」

男「まじで?」

幼「っ……えぁ」

幼(どうしようどうしようどうしよう!)チラッ

幼友(そんな助けを求める視線むけないで。今が勝負だよ、がんばって)

幼「えっ……と」

男「……?」

幼「そ、そうよっ! 偶然ちょうど遊園地のチケットが二枚てにはいっちゃったから!」

幼「どうせ明日男ひまなんでしょ!?」

幼「だから誘ってあげようっていってんの! いやなの!?」

幼「そ、そうよね、いきなり遊園地とかそんなのいやにきまってるわ、わたしもいやだもん!」

幼「だからチケットは捨てっ」

男「いいよ」

幼「……え」

男「お前ともお別れだからな。長い付き合いだったけど、最後くらい昔みたいにあそぼうぜ」

幼「あ……そ、そう」

幼友「……」ホッ

男「でもお前からさそってくれるなんていつぶりだろうな」

幼「べつに……ほんと、偶然、だから」

男「だよな。じゃあまたメールしてくれよ」

幼「……」コクッ

男「今日は友とあそびにいくからまた明日ー!」

幼「……」

幼友「……」

幼「……」

幼友「チケットがんばって二人分手に入れなきゃね」

幼「……幼友」

幼友「……?」

幼「い、いえた……」

幼友(けっこうギリギリだったけどね)

幼「あ、ありがとうっ」

幼友「ううん。幼ががんばった成果だよ」

幼「っ」

幼友「明日めいっぱいおしゃれしていかないとね?」

幼「ぐすっ、幼友ーっ!」ギュッ

幼友「よしよし」ナデナデ

幼友(ただこのぶんじゃ明日二人きりで遊園地は……前途多難かなあ)

――その日の晩――


幼「……どうしよ」ドキドキ

幼「わたし、あんまりお洒落とか気をつけたことない、し」

幼「こういうふりふりなのはどうだろ」

幼「男きらいかな」

幼「て、ていうか……似合わないか」

幼「どうしようっ……うぅ」

幼「幼友家によんどけばよかった」

幼「男とあそぶのなんて何年ぶりだろ」

幼「……」

幼「遊園地……」

幼「……」ドキドキ

携帯「~♪」

幼「っ!」

幼「携帯……えと」

幼「男からっ」

幼「な、なによ」ピッ

男『おう。明日って何時くらいにでる?』

幼「あ……そ、そうね」

男『俺はいつからでもいいけど』

幼「じゃ、じゃあお昼たべてから」

男『わかった。十二時くらいか』

幼「うん。いっとくけど遅れたりしたら承知しないから」

男『あはは。こわいな、じゃあ明日』

幼「さっさと寝なさいよ」

プチッ

携帯『ツー…ツー…』

幼「……」

幼「っ……」ニコニコ

幼「明日……男と」

幼「遊園地……」

幼「それで……男に」

幼「こ、こく……はく」

幼「それで…………」

幼「……ちゅ」

幼「ちゅぅ……」

幼「……っ」カァァ

幼「明日の朝いっぱい歯磨きしなきゃ……」ドキドキ

男「……さて」

男「特に準備することないよな」

男「それにしてもあいつと遊園地か」

男「ちっさいころ仲良かったときもいったことなかったっけ」

男「……」

男「引っ越す前だからな」

男「こういう思い出もいいか」

男「もう寝よ……」

男「明日寝坊でもしたらあいつになんていわれるか」

男「……」

幼「寝れない」

幼「……」ゴロン

幼「……」

幼「……」ゴロン

幼「寝れないっ」

幼「だめ……どきどきするのと楽しみなのとで」

幼「ぜんぜん眠くならない」

幼「……男もいまこんな感じでねれなかったり、して」

幼「っ……」ドキドキ

幼「男……」ギュゥッ

幼が枕を抱きしめながら、悶々と眠れない夜を過ごしているそのころ、男は快眠していた。

――翌日――

男「もう十二時」

男「さて。財布もった、携帯もった」

男「ほかにいるものとかないよな」

男「今日は早く起きれてよかった」

男「さて」

男「いってきますっと」

ガチャ

幼「……」

男「おっ。幼おはよ。こんにちはか」

幼「んぅ……」

男「……大丈夫か?」

幼「なにが……」

男「いや、なんか元気なさそうだから」

幼「べつに……あんたが気にすることじゃないから」

男「そっか。じゃあいこうぜ」

幼「……」

幼(結局寝たの朝方だった)

幼(わたしのばか……でも)

幼(男とこれからあそびにいくんだって考えたら)

幼(ぜんぜんねむくないっ、ねむくないんだからっ)

すたすた

男「……」

幼「……」

男「ていうか今日の幼」

幼「え?」

男「なんかいつもと服ちがうな」

幼「あ……」

男「ピンクでふりふりしててさ、そんなかわいいのもってたんだ」

幼「うっ……うるさい」ドキッ

男「ほ、ほめてるんだけど」

幼「なんかタンスの奥の方にあったから、気まぐれでてきとうに着てみただけだからっ」

男「そうなのか? これからも着たらいいのに。もてるぞ」

幼(……男がいないなら着る意味ない)

男「さて。駅についたわけだけど」

幼「……」

男「どの駅までのを買えばいいんだ?」

幼「わからないの?」

男「俺昔から電車音痴なんだよ……」

幼「はあ。しかたないわね」

幼「すいません、○○駅まで二枚」

駅員「はいー」

男「……おぉ」

幼「はい切符。なくさないでよ」

男「さんきゅ!」

幼「これくらいもわからないとか馬鹿じゃないの」

男「馬鹿でわるかったな」

幼「もう高校生なのにね」

男「ぐっ」

幼「ほんと男は……わ、わたしがいないと駄目なんだから」

男「わ、わかったからもういこうぜ!」

幼「……うん」

ぷしゅー

「まもなく電車が発車します。危険ですので黄色い線の内側までおさがりください」

がたん ごとん

男「お、おもったよりけっこうこんでるな」

幼「でも座れてよかったわ」

男「そうだな。けっこうこの乗客って遊園地いくひと多かったりして」

幼「そうかもね」

男「あと何駅後くらい?」

幼「えと……いち、にぃ、さん……七駅」

男「そ、そんなに」

幼「田舎だし。ていうかそれくらい車内にはってある表みればわかるでしょ」

男「きくくらいいいだろー」

ぷしゅー

どたばた

男「おっ、けっこう人はいってきたぞ」

幼「そうね」

男「もうちょっとつめたほうがいいな」

幼「え?」

男「……」

ぎゅむっ

幼「っ……!」

男「ちょっとせまいけど、これでもう一人すわれる」

幼「み、み、密着……しすぎっ」

男「しかたねえだろ、満員なんだから座ってる側がつめなきゃよ」

幼「そ、そうだけどっ」ドキドキ

がたん ごとん

幼「っ……」

幼(男……ちかっ)

幼(肩とか腕とか足とか、だいたい、ひっついてる)

幼(えと……心音とか、きこえてない、よね)ドキドキ

幼(……)

幼「……」チラッ

男「?」

幼「なっ」

幼(顔がすぐまえにあるっ!)

男「どうした? なんかお前さっきから」

幼「う、うるさいっ……ち、ちかすぎっ! きもいから、こ、こっち、みるなっ」

男「……」

幼「……ぁ」

幼(あぁ……またいっちゃった)

男「お前なあ」

幼「っ……」

男「近いから仕方ねえっつったろうが、このやろ!」グイッ

幼「ひゃっぁ!」

幼(お、男に頭だきよせられっ……)

男「ふはは、お前なんかこうしてやる」グリグリ

幼「やぁ、やめなさいよっ、ばかっぁ……!」ドキドキ

幼(男の胸に頭くっついてる!)

幼(はずかしい、けど……しあわせ)

幼(ずっとこうしてたいっ……男ぉ)

男「あ……髪の毛いいにおいする」

幼「やめろっ、へんたいっばかっ、あほぉっ」

男「よし! とうとうついたぞ遊園地!」

幼「……」

男「長いこと電車にゆられましたが。ここが正門だよな」

幼「……」

男「……幼?」

幼「な……なに」

男「機嫌なおせよ、まだおこってんのか」

幼「あ、あたりまえ。ちょうしのりすぎ」

男「わるかったってば!」

幼「……」

幼(男の顔……みれない)

幼(でもやっとどきどきがおさまった)

幼(遊園地……きちゃったな)ニコー

男(あ、わらってる)

男「さてなにからのるか」

幼「ん……」

男「じゃああれとか」

キャァァァァァ

幼「じぇ、じぇっとこーすたー!?」

男「定番だとおもうんだけど」

幼「や、やだっ、むり、ころすきなの!?」

男「ええ……じゃああれは?」

ヒェェェェェ

幼「お化け屋敷もいやっ!」

男「お前なにしにきたんだよ……」

幼「う、うるさい。いやなものはいやなんだから仕方ないでしょ」

男「こわくねえから大丈夫だよ。俺がついてるし」

幼「たっ……たよりなさすぎだから」ドキ

すたすた

幼(結局お化け屋敷はいっちゃった)

幼(早速これなんて……やだよぉ)

男「……」

男(幼のやつびびってるなあ)

男(こういうの苦手なタイプだとはしらなかった)

男(そっか。俺)

男(長年幼馴染してるけどこいつのことまだぜんぜん知らないんだな)

お化け「ばぅあ!」

男「おお」

幼「ぴゃっ!」

男「……」

幼「っ……」フルフル

男「しゃがみこんでちゃ進めないだろ」

幼「か、かえる」

男「え?」

幼「入り口もどる! あ、悪趣味よ、こんなの! 男のばか!」

男「あはは。何いってんだか」

幼(こわい……やっぱりやだぁ)

男「……」

幼「……」フルフル

男「ほら」

幼「……?」

男「手にぎれよ」

幼「えっ……」

男「いや、つかまるとこがあったほうがちょっとはましになるかなって」

幼「な……に……それ」

幼「……」

幼「っ」

きゅっ

男「いくか」

幼「ん……」ドキドキ

幼(手……に、にぎっちゃった)

幼(男の手あったかいな)

幼(……やさしい)

幼「……」キュゥゥ

お化け「ばぅあ!」

男「おぉ」

幼(男と手つなぐのなんて何年ぶりだろ)ポー

お化け「ぎゃぅあ!」

男「わぁ」

幼(手おっきい……わたし、手汗とか大丈夫かな)

お化け「がぅあ!」

男「うぉ」

幼(も、もうちょっと腕ごと……ぎゅって、してもいいかな)

お化け「きゃおら!」

男「あぶねえ!」

幼(な、なんて、だめよね……はやまりすぎ、ばか)ドキドキ

男(ていうか幼はまったくお化けにリアクションしねえな)

幼「……」ポー

男「幼?」

幼「あ……え?」

男「お化け屋敷でたぞ」

幼「……ほんとだ」

男「お前完全に上の空だったもんな」

幼「あ、あんまりにも退屈だったから!」

男「たしかにあんまり怖くはなかったかもな」

幼「そうよ、だって所詮お化け屋敷なんだもん、ぜんぜんこわくなかったし、お、お金の無駄よ」

男「最初からチョイスミスったかー」

幼(まだ手つないだまま……おばけやしき入ってよかった)

男「次はどれのるかなーっと」

男「あ。手つないだままだったな、ごめん」パッ

幼「あっ……」

男「着替えもコートもないから水にぬれるやつはかんべんだなあ」

幼「……」ショボン

男「って幼、どうした」

幼「……なんでもない」

男「ひょっとしてあれか。もうちょっと手をつないでいたかったかー」

幼「っ、な、なわけないでしょ! 馬鹿じゃないのっ!」

男「冗談だってば……そんなにおこらなくても」

幼「……」

幼(うんって素直にいえばぁ)

幼(はあ……)

幼「……ん」

幼「……」ジー

幼(まわるマグカップ……あれいいな)

幼(カップルでのってるひととかいっぱいいる)

幼(たのしそう……)

男「じゃあ次こそジェットコースターいくか」

幼「いかない」

男「えー!」

幼「そ、それよりちょっと疲れたから休憩したいんだけど」

男「はやくないか」

幼「だからね、あれとか……ちょうどいいかなって」

男「マグカップ」

幼「ん……」

くるくる

男「……」

幼「えい……えい」クルクル

男「お前がこういうのすきとはしらなかった」

幼「な、なによ、わるいの」

男「いや別に」

幼「……」

男「でもこういうのもなんか落ち着いていいかもな」

幼「ふん……」クルクル

男「ふぁぁ……平和だ」

幼(あれ……なんかロマンチックなかんじにならない)

幼(何を間違えたんだろう……)

男「よし! マグカップものりおえたし次こそジェットコースターだ!」

幼「……あ」

男「ん?」

幼「……」ジー

キャッキャッ

男「メリーゴーランド……あれ乗りたいの?」

幼「のりたくない。何いってんの、子供じゃないんだから」

男「……」

幼「……」ジー

男「のりたいんだな」

幼「の、のりたくないってばっ! 男がのりたいなら、し、しかたないけど」

男「じゃあのろうぜ。せっかくだし」

幼「……うん」

幼(結局二回ものっちゃった)

男「おー幼。たのしかったかー」

幼「べ、べつに」

男「そっか。そこの店でアイス買ってきたんだけどどっちがいい?」

幼「あ……じゃあ、いちごのほう」

男「ほい」

幼「……ありがと」ペロ

男「チョコもうまいな」ペロペロ

幼(あまくておいしぃ……)

男「一口いちごのほうくれない?」

幼「え? ああ、仕方ないわね」

男「さんきゅ」ペロ

幼「……」

男「おぉ。こっちもうまいな」

幼「……」

男「次はなにのるかなー」ペロペロ

幼「……!?」

幼(間接きす……!)

幼(あっ……ちょ、どど、どうしよ)ドキドキ

幼(男がなめたとこ……)

幼(っ……)ペロッ

男「幼。つぎはむこうの」ポン

幼「ひゃわっ! な、なによもう! ばか!!」ドキドキドキドキ

男「え!?」

それから時間いっぱい遊び続けて、気がつけば閉園時間が近づいてきていた。


男(結局ジェットコースター乗れずじまいか……いや、最後こそ)

幼「……」

男「な、なあ……幼」

幼「……」ジー

男「じぇっと……」

幼「……」ジー

男「……?」チラッ

幼「……」

男「観覧車……」

幼「……」コクッ

男「……ま、いっか」

幼「……」

男「今日はたのしかったなあ」

幼「……」

男「幼はどうだった?」

幼「べつに……まあまあだった」

男「あはは。きびしいな」

幼「……」

幼(すごくたのしかった)

幼(ひょっとしたら人生でいちばん)

幼(でも……おわっちゃう)

幼(男が、ひっこすから、もう)

幼(……)

幼(そう考えるとかなしいきもちになる)

男「すげえ。遊園地がぜんぶ見渡せるぞ」

幼「……」

男「まだあがんのか」

幼「……ね、ねえ」

男「?」

幼「……」

幼(いわなきゃ)

幼(今いわなきゃ)

幼(中学校のころからずっと、夢見てたシチュエーションなんだから)

幼(今いわなきゃっ……)

幼「あ……あのさ」

男「……」

幼「ひ……ひっこすのっていやじゃない、の」

男「……あー」

幼「……」

男「そりゃずっとこの街で暮らしてきたからちょっとはさびしいよ」

幼「……」

男「でも仕方ないよな」

幼「しかたないって」

男「親の都合なんだから。うちの親父もお袋もいっつも帰りおそかったり、何日か帰ってこなかったりだろ」

幼「ん……だからわたしがご飯つくってたのよね」

男「でも向こうにいけばそんなこともなくなる」

幼「……」

男「幼にもいつも夕飯つくってもらって迷惑かけてばっかりだったからな」

幼「めっ、めいわく」

幼「迷惑……だったけど」

幼(迷惑なんかじゃ)

男「……だよな。でも今までほんと助かったよ」

幼(ちがうっ……ちがうの)

男「……」

幼(わたしこんな性格だから)

幼(男と学校でもぜんぜんしゃべれないし)

幼(二人きりではなすこともないし)

幼(夕飯つくるって、理由をつけて、男と一緒にいたかった、だけ)

幼(放課後男の家にいくのがいつも楽しみだったの)

幼(い、いいたい)

幼(いいたいっ……)

男「あ」

男「観覧車の頂上だ」

幼「……え」

男「夕日きれいだなー。みろよ」

幼「……」

男「なんかすげえ壮大な風景だ」

幼「……」

男「……」

幼「……っ」グッ

男「なあ幼」

幼「ひっ……ぇ?」

男「いままでごめん」

幼「な、なにあやまってんの?」

男「幼馴染ってだけでお前もいろいろ付き合わせたから」

男「彼氏とかできなかったのは俺のせいかもな」

幼「関係ないから」

男「あはは。そうかも」

幼「べつにわたしもてるとかでもないし」

男「けど俺と付き合ってるとかいう噂よくながされたろ」

幼「そ……そうね」

男「実際はぜんぜんちがうのにさ」

幼「……」

男「でもこれからはお前なりにいろいろ楽しんでくれよ」

幼「……なにそれ」

男「え?」

幼(他の彼氏なんかいらないのに)

幼(男だけいればそれでいいのに)

幼(なんでそんなこと、いうの)

幼(噂だっていやじゃなかった)

幼(男のことがいやなら遊園地なんかさそうわけないじゃん)

幼(わたしはっ)

幼「っ……」

幼「いままでは、わ、私が人生楽しんでなかったとでもおもってんの!」

男「じ、人生とまでは」

幼「同級生の男子なんかよってこなくてもいいし! うっとうしいだけだし!」

男「……」

幼「べつにアンタごときとの噂とか流されてもいたくもかゆくもなかったし」

幼「アンタとはただのっ……」

幼「……」

幼「幼馴染だし」

幼「恋愛対象じゃ……なかったし」

男「……」

幼「っ……」ジワ

男「え」

幼「ばか……っ」


幼「ひ、ひっこすとか、ば、ばかじゃないのっ?」

男「ばか……って」

幼「ぐすっ、ずっと隣のいえに、すんでたくせに」

幼「なんでっ……きゅうに」

幼「ゆ、ゆるさないからっ……そんなの!」

男「なんで泣いて」

幼「ひぐっ……」グシグシ

幼「あれだけ、ぐすっ……ずっど、となりにいだのにっ!」

幼「こんなのっ……やだぁ」

幼「けっこん、ずるって、いっだのにっ……!」

幼「とおくいっちゃやだぁあ……」

幼「あっ、ぅ……うぁぁぁっ」ポロ

幼「うあぁぁぁぁぁぁんっ!」ポロポロ

男「……えっと」

幼「っひぐ……ぅっ!」

男「ごめんな」

幼「う、うるさ……」

男「……幼」スッ

幼「あっ、さわっ、さわるなぁっ」

ぎゅぅっ

幼「ひぁっ」

男「ほんとに……お前のことわかってなかったんだな」ギュッ

幼「あっ、おと……ぁっ」

男「あはは。かわってねえよお前」

幼「っ……」グスッ

男「そういえば昔から、こわがりだし、へたれだし、泣き虫だし」

男「いつからか俺は嫌われたと思い込んでたけど」

男「かわってないんだな」

幼「わたしっ、おとっ」

男「ずっと俺の好きな幼のままだ」

幼「っ……」

男「何度目かわからないけど、今までありがとう」

幼「おれいなんかっ……しないでよっ」

男「……」ギュッ

幼「ひゃっ……わ、わたしも、ずっと……」

幼「男の、ことっ……」

幼「すき……だったん、だからぁっ!」ギュゥゥ

男「……幼」

幼「あっ……」

男「なきすぎ」フキ

幼「あうっ……う、うるさい」

男「……」

幼「おとっ……か、顔、ちかい」

男「……いやか」

幼「い、いやにっ……きまっ、て」

男「……」スッ

幼「こんな……ぁっ」ビクッ

男「……」

幼「ぅぁ……」キュッ

ちゅっ

男「……ぷは」

幼「っ……」

男「好き……です」

幼「ば、ばかっ……は、はじめて、だったのに」ドクンドクン

男「俺もだからいいだろ」

幼「なにがいいのよっ……ばかぁ」

幼「ばか、ばかっ、ば、ばか」ギュゥ

幼「もっ……もういっかい」

幼「もう一回……しなきゃ、ゆ、ゆるさない……から」

男「……」

幼「アンタなんかっ、だ、だいすきっ」グスッ

幼「大好き……なんだから、ね」

男「……うん」チュッ

幼「ちゅ……ぅあ」

――――――――
――――――
――――


「まもなく電車が発車します。危険ですので黄色い線の――」


ぷしゅー

がたん ごとん

男「……」

幼「すぅ……すぅ」

男「つかれて寝ちゃったか」

幼「……」

男「……」

幼「……男」

男「ん?」

幼「すき……ぃ」ムニャ

男「……寝言」

幼「すぅ……すぅ」

男「手」キュッ

幼「ん……」

男「……俺もすきだよ」

幼「……」ニコー

男「……」

幼「……」スヤスヤ

男「……」

がたん ごとん

すたすた


男「家ついちゃったな」

幼「……」

男「……」

幼「なんで黙るのよ」

男「お前がしゃべらないんだろ?」

幼「わ、私はアンタが何かいうのまってるの!」

男「えぇ……じゃあ」

幼「……」

男「これでしばらくお別れになるけど」

幼「……うん」

男「俺はその間もずっとお前のことが好きだから」

幼「……」

男「……」

幼「……」

男「なんか言えよ」

幼「う、うるさい!」

男「逆切れっ」

幼「はなれてる間もずっとすきとかそんなの確実じゃないし!」

男「それはわかんねえだろ」

幼「どうせ男のことだから、もっと、素直で、やさしくて、かわいい子と出会っちゃったらっ」

男「ようするに不安なんだな」

幼「ふあ、ふあん……ていうか」

男「……心配すんなって」ナデナデ

幼「ふあっ……やめなさいよおっ」


男「いつ帰れるかわからないけど、メールアドレスはしってるわけだし連絡はとれる」ナデナデ

幼「んぅ……」

男「たまにはこっちにくるよ」

幼「……ほんと?」

男「約束だ」

幼「……約束」

男「おう」

幼「破ったらただじゃすまさないから」

男「お、おう」

幼「……明日の昼にはもういない?」

男「朝はやく出るから」

幼「……そっか」

男「……」

男「わかれるときくらい笑ってくれよ」

幼「……むり」

男「お前わらうとめちゃくちゃ可愛いんだからさ」

幼「っ……な」ドキッ

男「いつも可愛いけど笑ったときの幼は最高の可愛さだな」

幼「なな、なにいってんのよっ」

男「見てるだけで癒される。幼かわいいよ幼」

幼「ちょっ、うるさい、こっちみるなぁ」カァァ

男「顔かくしてる幼ちゃんも可愛いよ」

幼「ばかっ……」ニヨニヨ

男「にやけてる。今度からお前にはほめ殺し作戦でいくか」

幼「に、にやけてない!」

男「じゃ。またな」

幼「……うん」

男「また絶対会えるから」

幼「当たり前よ」

男「だな」

幼「せいぜい……元気でね」

男「お前も」

幼「……」

男「じゃあそろそろ」

幼「男っ!」

男「?」

幼「す……すき」

男「俺もだいすきだ。ありがとな」ニコ

なんも展開とか考えてなかったんでなんか中途半端だけどおわりす

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年05月02日 (土) 10:20:47   ID: wtlGnDSm

イイハナシダナー

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