花売り「私が勇者!?」 (875)

元ネタは「タイトルを書くと誰かがストーリーを書いてくれるスレ」の665です。

原題は同様スレ660『花売り「私が勇者!?」』です。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420045507

※注意

不快な表現有り

あのスレのssかぁ!お久しぶりです!

---魔王。

これを聞いて諸君はどんな姿を想像するのだろうか。

多くの者は我々と同じ人型と思うだろう。

しかし、しかしだ。それを大衆は見たことがあるのだろうか。

真の姿はごく一部の者にしか分からぬ。

多くは「ただの敵」としてしか認識していないのだ。

つまるところ、我々の決めつけでしかないと言うことである。

近年は共同で世界を変えようとする話が増えているが果たしてどうだろう。

私は滑稽だと考える。

何故なら魔王とは---

生涯かけても知ることが出来ぬからである。

見えたとしてもそれは幻に過ぎぬのだ。

それはそれとしてあけおめ!

「すみませんー。この花下さーい。」

エミリー「はい!ただいまー。」

「しかしエミリーちゃん……よく働くねぇ。どうだ、俺の息子と交換しないか?」

エミリー「はは……あ、12フランになります。はい、お釣りは1ルーブルです!ありがとうございましたー!」

「あら、エミリー。客はどうだい?」

エミリー「うん!だいじょーぶだよ!フランチェスカおばあちゃん!」

フランチェスカ「そうかい。じゃあ店じまいでもしようかねぇ。晩御飯は好きなチーズフォンドゥだよ。」

エミリー「おお!益々手伝わねば!」


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フランチェスカ「この仕事には慣れたかい?エミリー?」

エミリー「うん!慣れたよ。大丈夫!大丈夫!」

エミリーの仕事、正確には家の商売は花屋だ。色とりどりの花をそろえている。

フランチェスカ「そう言えばまた魔王軍の攻撃が激しくなったんだってねぇ。南の村が大変なことになっているそうだよ。」

エミリー「魔王……」

フランチェスカ「墓参りには行ってるかい?」

エミリー「うん……。でも慣れたよ。」

フランチェスカ「まさかカラスの炎に巻き込まれるとは思わなかったよ……」

エミリー「な、泣かないでよ!大丈夫、大丈夫だから!」

魔王軍は主にトリを主力にしている。

そして火を降らせたり、細い銃を2つ付けている。

フランチェスカ「済まないねぇ……」

エミリー「ささ、食べちゃおうよ!せっかくの料理が冷めちゃうしさ!」


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エミリー(パパ……ママ……)

食事後、居るのは家から南西にある共同墓地だ。

エミリー(どうして魔王軍は……こんなことを……)

エミリー(何故来たか。不明。対抗策。無し。軍はほぼ壊滅。しかも道中で。)

エミリー(なのに何で……消えちゃうの……?)

エミリー(大切な人を奪うの……?)

両親は7年前に死んだ。魔王軍の攻撃によって。

死因は、幼いエミリーを庇ったためである。

エミリー「ぅう……ぅ」

エミリー「お花、置いておくね。これね、ガーベラって言うんだよ……」

エミリー「行かないと。またね」


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エミリー「いらっしゃいませー!……ってアニーお兄さん!?」

アニーはいつも花を買ってくれる常連客だ。

アニー「エミリーちゃん……僕はしばらく、いやずっと離れるかもしれないんだ。その挨拶に来たんだ」

エミリー「どうして?」

アニー「……呼び出されたんだ。中央にね。」

エミリー「そう、なんだ……」

アニー「だから行ってくるね。エミリーちゃん。」

エミリー「……うん。行ってらっしゃい、アニーお兄さん……」

エミリー(また、行っちゃった……)







>>3
お!覚えててくれた人が居たとは!ありがとう!

>>5
あけおめことよろ

---運命とは不確定な要素を含む物だ。

運命は変えられないとか変えてみせるなどと言う愚か者が居る。

見えないものを信じ見えると思うことこそが愚か者であると言う証拠。

良くても悪くても、言うであろう。


これは運命なのだから仕方ないのだと。


あゝ、馬鹿馬鹿しい。

どのような者でもある程度は予測が付くのではないだろうか。

行いさえ振り返れば。

君よ、惑わされたもう無かれ。

数日後。夜。


「エミリー・ハートさん!居ませんかー?」

エミリー「エミリーは私です。何の御用でしょう?」

「郵便です。では失礼!」

エミリー(宛名は、王国かぁ……なんだろ?)

エミリー(「貴殿は勇者に選ばれました。着きましては、明日の17時に王都へ」……!?)

エミリー「勇者……」

勇者。それはだいたいは王家の血筋や英雄の血を引くものだ。

エミリー(最近は士気を高めるための材料……って)

エミリー(でもでも。返送は出来ないし……直接行って断ればいいよね!うん!)

エミリー(そうとなればおばあちゃんに伝えないと!)

エミリー「おばあちゃーん!手紙ー!」

フランチェスカ「はいはい。これエミリー宛てじゃないかい!中は……」

フランチェスカ「……いいかい?この話はちゃんと断るんだよ。いいね?」

エミリー「勿論!」

エミリー(そろそろ寝よっと)


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エミリー「行ってくるね!」

フランチェスカ「ハンカチは?それに財布は持ったかい?後駄賃は……」

エミリー「心配し過ぎー!行ってくるね!」

エミリー(きっと分かってくれる。けどその前に……)


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エミリー「うわぁ……!ここは変わらないね!」

少し入った先にある、秘密のひまわり畑。両親と一緒に来た場所。

真っ直ぐ、綺麗だ。

エミリー「魔王軍の人達もこれ見たら……やめてくれるかなぁ?」

エミリー(……そのためにも行かないと!)

そこを抜け、しばらく歩く。

王都へはここから真っ直ぐ行けばいい。

エミリー(でも何で私なんだろう?)

エミリー「~♪」

エミリー(あれ?大きな鳥……でもこの音……)

エミリー(魔王のトリだ……!)

エミリー(隠れないと!)

空気を斬る音。謎のうめき声をあげてタタタタと言う音が聞こえる。

エミリー(……いなくなったよね……?)

エミリー(4枚の羽。今の……トンボかな)

エミリー「良し!では再び王都へ!おー!」


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エミリー(すごい人混み……!)

エミリー(あわわ!)

エミリー(真っ直ぐ行けばいいだよね!お城はすぐそこだ!)

門番「あなたは?」

エミリー「えーと……これでいいですか?」

門番「……はい。エミリー・ハートさん。どうぞ。」

エミリー(緊張するなぁ……)

エミリー(中は綺麗だね。私もこんなところ住めたら……)

王「ようこそ。エミリー・ハート殿。遠方はるばるご苦労である。」

エミリー「そ、そんなこと……」

王「では要件は……」

エミリー「お断りします!だって私はただ暮らしたいんです!罪人でもないですし!」

王「……勇者は国民を、それどころか魔王を倒す存在じゃ。それを断ると言うのか?」

エミリー「……はい。」

王「そうか……いきなりで混乱したのかもしれぬ。今夜は泊っていきなさい。」

エミリー「でも……それじゃ……おばあちゃんが……」

王「そうか。では送っていくとしよう。決めるのは1週間までじゃ。よいな?」

エミリー「だとしても変わりませんよ。」

兵士「では案内しよう。こちらへ。こちらへ。」



簡単な人物紹介


エミリー・ハート・・・主人公。性別は♀で、年はちょうど10。可愛らしい姿とのこと。

フランチェスカ・ハート・・・主人公の祖母で花屋のオーナー。御年90歳。

アニー・・・女性かと思った?残念!男でした!エミリーより9歳上。徴兵された。


解説

トリ、トンボ・・・魔王軍の空飛ぶ兵器。火を降らせたり、噴いたりする。当たるとほぼ死は免れないらしい。

エミリー(1週間かぁー。変わらないしいいや)

エミリー(あれは……人だ!)

エミリー「だ、大丈夫です……か?」

有るのは体中に穴が開き、血を出していた物だった。

エミリー(嘘……でしょ……)

エミリー(寝てるだけ。寝てるだけ、だよね……)

エミリー(そう言えばトンボは……!急がないと!)


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エミリー「よ、良かったぁ~。」

エミリー「だけどここまで来ているのか……」

エミリー(家帰っておばあちゃんにただいま言って、店番して、暖かいご飯とお風呂と布団に入って。いい生活だね!)

エミリー「ただいまー!」

フランチェスカ「おお。お帰り。どうだったかい?」

エミリー「うーんとね、断ってきたんだけど少しだけ時間くれたよ!」

フランチェスカ「そうかい。そうかい。今夜はもう寝なさい。疲れただろう?お風呂すぐ入れるからね。」

エミリー「うん!」

エミリー(魔王は誰かがやっつけてくれるよね。私じゃない人が!)

エミリー(怖いのは……嫌いだしさ……)


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エミリー(今日もお花は綺麗だなーっと。)

エミリー「いらっしゃいませー!」

「ああ……エミリーちゃん……この花くれないかな?」

エミリー「はい!糸水仙ですね。2フランになります。ちょうどですね。ありがとうございましたー!」

エミリー(あれって確か……アニーお兄ちゃんのお父さんだよね……)

エミリー(でも何であんな悲しい顔してたんだろう?)

フランチェスカ「エミリー。今日はここで終わろうか。」

エミリー「どうして?」

フランチェスカ「アニーがね……死んだんだよ……。だから、その、葬式だよ。」

エミリー「……」

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エミリー(どうしよう……)

殺したのは魔王。

でも、自分もおばあちゃんと居たい。

エミリー(私は……)


エミリー(勇者に、なる)


翌日。王都。城内にて。


王「真か、真なのだな?」

エミリー「……はい。もう失いたくないので……」

王「……そうか。ではこれを授けよう。」

渡されたのは短い剣と謎の模様が彫られた小さな板。

王「これは関所を通ることが出来る手形じゃ。さらには宿も無料に出来る。」

エミリー「必ず魔王を、討ちます」


王「そう慌てる出ない。ほれ、行けい。『勇者エミリー』よ」

エミリー「……はい。」


エミリー(当分泊まるのは困らないけど、どうしよう)

エミリー(お兄ちゃんの敵を取らないと)

エミリー(まずは王都を出よう。情報を集めないとね!)


少女が向かったのは西の国。

鬼が出るか、蛇が出るか。何が出るだろうか。

何もない少女の冒険が、ここに始まろうとしていた。

西の国。とある場所にて。


「……何で……そんな、事するん、だ……」

「簡単だよ。僕は息するように殺すからね。じゃないと死んじゃう。」

ナイフを振りかざし、さらに追撃をした。

もう死にかけていると言うのに。

絶叫が、あちこちに響いた。

>>12
10才の子どもの祖母が90ってのは少し年が離れすぎではないだろうか

エミリー「あの……これ……」

「はいはい……確かに。お通り下さい。」

手形を見せ、関所を無事通過。

エミリー(流石王国の手形だなぁ……効き目凄い!)

エミリー(まずは魔王について聞いてみようかな)

エミリー「あの!すみません!」

「何かね?」

エミリー「魔王についてお聞きしたいのですが……」

「敵だろう?それ以上でも以下でもない。」

エミリー「は、はあ……」

「そろそろ行かねば。失礼。」

エミリー「ありがとうございました。」

エミリー(どこも同じなのかな?もう少ししてみよう!)


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エミリー(駄目だぁー!同じ答えしか返ってこないよ……)

エミリー(最後にあの人に聞いてみよ!)

エミリー「すみませんー!」

青年「何かな?」

エミリー「魔王についてお聞きしたいのですが……」

青年「さあね。僕も知らないよ。」

エミリー「そう、ですか……」

青年「でも最近ここら辺で殺人鬼がうろついてるそうだよ。」

エミリー「もしかして魔王ですか!?」


青年「君はもしかして勇者かな?」

エミリー「はい!」

手形を見せる。

青年「君は栄枯の国の出か。でもこんな少女が勇者だなんて……信じられないよ。」

エミリー「魔王を倒して平和にする!それが私の目的です!」

青年「……そうか。うん、頑張ってよ。あ、殺人鬼の情報はここから真っ直ぐだ。」

エミリー「ありがとうございます!」

青年(もう行っちゃったよ。まあいいかな)


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エミリー「なにこれ……」

そこに有ったのは、見るも無残な肉の塊だった。

エミリー(ひどい……ひどいよ……)

「これ誰がやったんだ?あの殺人鬼か?」

「かもしねないわねぇー……」

「ってか誰だよこいつ。まさか浮浪者か?」

「知らんがな。」

エミリー(殺人鬼について聞いてみよう。きっと手がかりがつかめるかも)

エミリー「あのすみません。殺人鬼について聞きたいのですが……」

「殺人鬼について?はは、嬢ちゃん。知ってどうするんだい?」

エミリー「それは……捕まえます!」

「子供はそんなことしちゃいけない。大人に任せなさい。でもせっかくだし少し話してあげようか。」

エミリー「……!お願いします!」


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エミリー「ありがとうございました!」

「ああ。気を付けるんだよ。」

エミリー(まとめると殺人鬼はもう10人以上殺している。手がかりは無し)

エミリー(ほとんどが殴られている。刃物を使ったのは数件のみ……う~ん……)

おお、まさかの独立(?)か
今更ながら期待しております!

エミリー(疲れた……寝よう……)

近くの宿に寄る。

手形を見せ、部屋を案内させる。

エミリー(凄い……!こんないい部屋入った事ないよ!)

エミリー(もう遅いし寝よ……おやすみ、おばあちゃん……)


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青年「~♪」

「や、やめてよ……!」

青年「やだよ。僕が死ぬからね。」

「あがぁ……」

青年「あそこの男は君をレイプしようとしたんだよ?殺されて当たり前じゃないのかい?」


>>19
今更だけどミスったなと思ってる(´・ω・`)

>>24
ありがとー!

青年は血に染まった拳を解こうとはしない。

青年「殺しが良くない理由が僕には分からなくてね。物心付いた時には、ねぇ……」

「あなたおかしいよ……!」

やわらかい何かと固い何かがぶつかった音がした。

青年「何故?魔王は平気で殺しているじゃないか。何でダメ何だい?」

「それは……ダメなものはダメ!」

青年「……はぁ。最悪。本当に最悪だ。そんな答えは求めちゃいないんだ。誰でもね。」

再び音がした。今度はかすかな悲鳴付きで。


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エミリー「ふわぁぁ……」

エミリー(そうだ私……勇者なんだっけ……)

いつの何か食事が置かれていた。暖かいスープとパン。そして色とりどりのおかず。

ご飯を食べながら考える。

エミリー(魔王は分からないままだし……)

エミリー(それにこの国には殺人鬼が居る。まずはこれをどうにかしないと!)


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西の国。9時手前。


「まただって。もう何件目だよッ!」

「警察は仕事しているのか?」


エミリー「あの……何かあったんですか?」

「あるも何もまただ!また殺されたんだ!」

「しかも2人よ!2人!信じられないでしょ」

少し覗くと、中年の死体と少女の死体があった。

どちらも顔面と体が潰されている。

エミリー(同時に2人も殺すなんて……)

青年「ひどいことをする人もいるものだ……」

エミリー「あ!昨日の!」

青年「あの時の。どうだい?手がかりは掴めそう?」

エミリー「それが……あはは……」

「魔王の仕業だ。きっとそうに違いない!」

青年「魔王、ね。そうかもしれないね。」

エミリー(……何か違う気がする)

青年「おっと。そろそろ時間だ。急がないと。じゃあね。」

エミリー(犯人は……誰、なんだろう?)

エミリーはバックから紙とインクが切れない上に垂れないペンを取り出す。

おばあちゃん曰く、家宝らしい。

エミリー(まず殺人鬼は10人以上を殺している。殺し方は主に殴られて……正確には潰されて、かな)

エミリー(刃物は数件のみ。……まだ分んないや)

エミリー(でも!潰されているのは分かったかな。ハンマーでも使ったとか?)

エミリー(とりあえずは聞き込みをしよう!町の平和を守れなくてどうするんだ、エミリー・ハート!)


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エミリー「はふぅ……」

聞き込みをしても変わらず。

エミリー(犠牲者が増えたとかそれだけ……)

エミリー(でも……どうしたら……)

紳士「御嬢さん。ここで何をしているのだね?」

エミリー「聞き込みです!殺人鬼についての!」

紳士「ほう。では君は何が知りたいんだい?」

エミリー「犯人です!」

紳士「それは私だって知りたいさ。でも協力は出来るかもしれない。また、ここにおいで。御嬢さん。」

エミリー「御嬢さんじゃないです。エミリー!エミリー・ハート!」

紳士「そうか。では私も。私の名前はシューベルト・リッパー。よろしくね。エミリー。」

エミリー「はい!リッパーさん!」

紳士「ではまた明日。」

エミリー「はい!」

エミリー(情報を!集めないと!)


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エミリー(いつの間にか夜になってる……)

エミリー(でも大通り通っているから大丈夫だよね!)

ホテルへ走る。ホテルへ。

エミリー「痛て!す、すみません!」

青年「ああ。気にしていないよ。さっさと行きなさい」

エミリー「もしかして……」

青年「奇遇だね。また会うなんて。そうだ、これからお茶はどうだろう?」

エミリー「でも……今はその」

青年「そうだね。君はなんて名前だい?」

エミリー「エミリー!」

青年「エミリー。良い名だ。うん、いい名前だ。僕はフローズン・ドライ。気軽にフローと呼んでくれ。」

---世界には完璧と呼べるものは存在しない。

何故求めるのか。

それは我々が不完全な生き物であると言うことを理解しているためである。

それは無くてはならない。

だから多くが協力し合わなければならぬ。

だが世の中には己の力で全てが成せると言う者がいる。

それを真に言えるとするならば「神」だけであろう。

宿。


エミリー(いい人だったな……)

エミリー(けれどこれでいいのかな?明日リッパーさんにもで聞こう)


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同刻。警察署。


刑事「またか……これで何件目だ!」

「落ち着いて下さい!悔しいのは分かりますけども……」

刑事「29件!しかも6年前からだ!」

刑事「魔王とか存在しているか分からんものに人を裂くなッ」

リッパー「そんなことは言ってはいけませんよ。居るのは事実らしいですし。」

刑事「あ、ああ。すまねぇ……。けど何人も死んでるんだぞ!放っておけるかよ!」

リッパー「まず証拠を掴みましょう。話はそこからです。いいですね?」

「そんなの適当な奴ひっとらえて自白されりゃあいいじゃないですかー。」

「そうそう。ウザい奴とかね。」

リッパー「それで犯罪が防げるとでも?」

「あー……そうっすね……」

リッパー「今の証拠をまとめましょう。被害者は共通点無し。通りや裏道で殺されてますね。」

刑事「刃物は6だったか。」

リッパー「ええ。ですが、魔王とは切り離して考えてみた方がいいでしょう。」

「あれ魔王のせいじゃないんですか!?」

リッパー「魔王は基本、トリかトンボを使い大量殺戮をします。ですが今回はピンポイントです。無理がありましょう。」

リッパー「そこで今回はおとり捜査……をしようかと思っています。」

刑事「それは誰が?」

リッパー「私です。これでも武術はたしなんでいます。」

「いえ!自分が!」

リッパー「今回ばかりは部下の安全も考慮しなくてはならないので。」

刑事「そう言えば「アレ」の使用許可が出たってよ。慎重にな。ただでさえ強力なモンだからよ。」

リッパー「分かってますよ。」

そう言い、彼は下へと降りていった。


武器保管庫。


リッパー(ここに有るのはほぼ火打銃……。しかも最新式の)

奥に明らかに異彩を放つものがある。

リッパー(確か……デザートイーグル、でしたっけ。使いづらそうですね)

リッパー(弾は全14発。入る弾は7……)

リッパー(できればあの子には見せたくはないものです)


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11時半過ぎ。


エミリー「またかー……」

エミリー(しょげそう……でも!リッパーさんがここに来てくれるはず!)

リッパー「遅くなったね。」

エミリー「遅いです!」

簡単な人物紹介 #2


シューベルト・リッパー・・・男。38歳。刑事で割と上の人。現場主義者。エミリーが何か握っていると考えている。

フローズン・ドライ・・・男。20歳。職業不明。生まれついての殺人鬼。


解説

火打式・・・種子島銃と呼ばれる導火線から火打ちへと変わった。火縄は悪天候に弱いためである。

デザートイーグル・・・俗に言うハンドキャノン。しかし、この時代では場違いな物である。

エミリー「それで何で私に声なんかかけたんです?」

リッパー「何でだろうね?私にも分からないのだよ。けど君には何か感じるのだよ。」

エミリー「そうですか。」

リッパー「特にはありません……が、しいて言うなれば引かれる何かがあるとだけ言っておきましょう。」

エミリー「えーと……町は相変わらずでした。これと言った事が……」

リッパー「そうですか……。ではこちらも。残念ながら……ですので囮捜査を。」

エミリー「話して良かったんですか?」

リッパー「大人数いますし大丈夫だと思いますよ。」

エミリー(上手くいきすぎている気がするなぁ……)

短剣は懐に隠している。これは取られないためだ。

リッパー「もしだ。もし君が人を殺すことになったとするだろう。」

エミリー「?」

リッパー「きっと君は殺せないはずだ。」

エミリー「人なんか殺しませんよ!私そんな風に見えます!?」

リッパー「はっは。冗談さ。君が勇者って話は広がっているよ。いやあ、速いね。」

エミリー「そうなんですか!やったー!」

リッパー「はぁ……。もし何かあったら君、警察に言いなさい。私の名前を言えばすぐに協力してくれるだろうから。」





エミリー(勇者……引き受けるんじゃなかったなぁ……って!ダメダメ!)

懐の短剣を抜く。鈍く光る。少しだけ重みが増した気がする。

エミリー(もう少しだけ……)

エミリー(けど動くのは嫌だし……そうだ!花を見よう!少しだけ気分が晴れるかも!)

エミリー(切り替えは大切だしね!)

エミリー「どこかに花屋は……って!でかっ!」


巨大市場「エルドアルド・マーケット」。西の国が誇る巨大市場。国民の台所だ。

それ以外にも花や雑貨も売っている。


エミリー(人多いなぁ。……当たり前か)

エミリー(種類多いね!家とは大違いだ!)

「いらっしゃい!何をお求めで?」

エミリー「えーと……ガーベラかひまわりを……」

「あー……済まないがうちには置いてないねぇ。申し訳ない……」

エミリー「いえいえ。では。」


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エミリー(市場が広くて迷子になっちゃったよ……)

フローズン「あ、エミリーちゃん。いらっしゃい!」

エミリー「フローさん!ここ……果物屋?」

フローズン「いや、仕込さ。箱に入れた物を出して入れてね。」

フローズン「しかも全部だ。辛いよ。」

「おーい!ここも頼む!」

フローズン「はいただいま!じゃあね!」

エミリー「はえー……」

エミリー(でも忙しいのは嫌だなぁ)

エミリー(入口入口……あった!)


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エミリー(いつになったら捕まるのかな……?)

銃声が響く。

エミリー(!どこからだろう?)

彷徨う。

エミリー(路地裏……しかもここ市場の搬入口……)


「ここまでです。次動いたら仕留めます。確実にね。」

「やってみたらどうだい?僕は市民なのに。」


エミリー(嘘……)

花売り(意味深)

>>38
売春婦の隠語らしいですねー

暗くてよく見えないがどうやら誰かが対峙している様だ。

エミリー(何かおっかない雰囲気……)

「よくもまぁ過ごせてきたと言いますか……なんて言うんですか?」

「さあ。僕にもさっぱりです。」

エミリー(見なかったことにすれば……でも……)

エミリー(死にたく……ない……!)

「人を殺すのが何で罪なのか分からないですね。牛や豚を殺しても罪にはならない。」

「……」

「それは生きていくためだから。では僕も同じです。殺さないと生きていけません。だから、見逃してはくれませんか?」

「……そう、ですか。」

「そんな鉄くずを構えて---痛いじゃないですか……」

「いいですか?殺すと言うことはこういうことです。痛いんですよ。」

「……」

「さあ大人しく---」

「……だからと言って殺す理由は僕には理解できないね。そして、だ。この市場、実は少し恨みが有ってね……」

「……へえ……」

「爆弾を仕掛けた……。けほ……ああ、口から血が出たじゃないか。最悪だ。数は全部で30。頑張って探してくれ。じゃあね。」

「ベタですね……後そこに居るのは分かっているんです。エミリーさん……」

エミリー「……すみません。その……黙って見てて……」

リッパー「いいんですよ。」

エミリー「銃……使いました?変な臭いします。」

リッパー「ええ使いましたよ。犯人がね。」

エミリー「でも誰なんでしょう……?」

リッパー「市場に恨みがある人物……おっと、私は爆弾を解除しないと。おやすみ、エミリーちゃん。」

エミリー「て、手伝います!勇者ですから!」

リッパー「……君は勇者の意味が分からない様だね……」

エミリー「魔王を倒すためじゃないんですか?」

リッパー「いいかい?勇者は毎年派遣される。理由は何であれね。」

リッパー「今年の目的は……魔王の正妻になる事。正式にはその側室。まさか年端もいかない少女を寄越すとは……!」




エミリー「せいさい?そくしつ?」

リッパー「分かりやすく言えばお嫁さんですね。栄枯の国は何考えているんですかねぇ……」

エミリー「私知りませんよ!本当に!」

リッパー「ともかく!この国からは出なさい。」

エミリー「でも……」

リッパー「御嬢さん。お逃げなさい、魔王が来る前に。」

エミリー「……はい」


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宿。


エミリー(魔王の嫁……何でそんなこと……)

エミリー(いっそ死んでしまうか……ダメ!そんなことすれば……!)

エミリー(どうしたらいいんだろう……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>

2日後。


「ごうがーい!殺人鬼が捕まったぞー!名はフローズン・ドライ!西の国を騒がせた殺人鬼が捕まったぞー!」

エミリー「あの!それ1つ下さい!」

「あいよー!ごうがーい!あの……」

エミリーは文字がほとんど読めない。読めるのは花の名前だけだ。

でも絵から分かった。正午広場にて処刑。

エミリー(おにいさん……何で……)

「やーねえ。人殺しなんてきっと魔王の人なのよ!」

「こうなったらそいつの関係者皆殺しだな!」

「それが市場で働いてたらしいぜ。しかも刑事さんは死んだんだとさー」

「可哀そうに……」


エミリー(どうして……)

エミリー(でも……聞かないと!)


処刑場。


「ただいまより!殺人犯フローズン・ドライの処刑を執り行う!」


エミリー(……)

「さっさと殺せよー」

「すげぇ!ギロチンだー!生で見るのは初めてだ!」

「しかも首が出て!画期的ですわねー」


「静粛に!……言い残したことは?」

フローズン「さあね。さっさとしたらどうだい?」

エミリー「待って!」

「なんだなんですかー!」

「このチビは何だよ!つまみ出せ!」

エミリー「お兄さん……その何で……」

フローズン「殺しは僕にとっては生きることだったからね。それだけさ。それとね」

フローズン「僕は魔王側の人じゃないよ。そもそも魔王は---」


ギロチンの刃が降った。

人々の歓声が、こだました。

エミリー(そもそも魔王の正体は誰も知らない。)

エミリー「でもここまで---」

「敵が来たぞー!」

「城門が破られた!」

直後、人々が散らばる。

エミリー(今度こそ!)

現れたのは鉄の塊。先端には細い筒が付いている。

足は丸く、黒い帯が囲っている。

エミリー(十字のマーク……魔王軍の騎兵だ!)

しかも3つも居る。

「撃てー!」

発砲音と金属を弾く音が響く。

「砲を持ってこい!」

「はっ!」

騎兵から火の槍が出る。何でも貫く、地獄の槍。

数人居た兵士が跡形もなく吹き飛び、血が流れる。

兵士が大砲を引っ張ってくる。

「撃てーッ!」

しかし、凹んだだけだった。

「もっとだ!」

砲撃が何度も響く。

先頭の物が煙を吹き始めた。

騎兵は後退していった。

槍で攻撃しながら。

隠れていた場所は大丈夫だった。

しかし、騎兵が攻撃した道は跡形もなくなっていた。

正確には大きな穴が開いていたのだ。

エミリー(か、勝てないよぉ……)


魔王の正体は依然つかめず。

しかし、圧倒的な魔王軍になすすべ無し。

会った人たちは死んでしまった。

少女は次のところへと向かう……。

おつかれさま!

一旦ここまで…………か?

乙ぅ

>>47>>48
ありがとうございますm(_ _)m

ー未知なものを恐れる。それは本能的なものに等しい。

自己の安全を保証するものではないからだ。

しかし、それが恐怖感から来るのか臆病なのかは分からぬ。

故に我々は極端に未知を恐れるのである。

それは永遠には無くならないものなのだ。

西の国を時間をかけ去る道中。


エミリー(アニーお兄ちゃんも、リッパーさんもフローズンさんも……死んだ……)

エミリー(それに勇者が魔王を討つじゃないなんて……)

エミリー(今の気分はラフレシアだよー……)

エミリー「でも!どんな目的であれ、魔王を倒さないと!えいえいおー!」

ふと、デカイ塔が目に入った。

エミリー「うわぁ……大きい……」

太い尖った塔の隣には支えであろう少し小さめの細い塔があった。

周りには人が囲む様に居る。


「空高く登る天守様よ……」

「「「アーメン」」」


エミリー(何してるんだろう?)

エミリー(でも、何だか怖い……)

エミリー「私も神様信じてるけどそこまでじゃないよ……」

「おい、そこの。」

エミリー「私ですか?」

「あれ見てどう思う?」

エミリー「えーと……怖い、かなって……」

「だろうねー。アレはこの辺で貧乏人を食い荒らす奴らさ。お嬢さんも気をつけなよ?」

エミリー「ありがとうございます!では、私はこれで……」

「おう!アタシはちょっくら仕事するからな!達者でな!」

エミリー「はい!」

エミリー(あの人……何で怪しい所へ?ま、まさか!?)

エミリー(あそこの関係者……?)

エミリーは空をなんとなく見上げる。

赤いトリが飛んでいた。

翌日。西の国を去る道中の宿。

「ねえ、あそこの宗教の人達……半殺しにされたらしいわよ。」

「邪教って噂だし……いいんじゃないの?」

エミリー(何だか物騒だなぁ……)

魔王が現れてまず何が起きたか。圧倒的な兵力を持つがために宗教が多く出来た。同時に何かしらの理由で多くの人が逮捕・処刑された。

魔王の出現で国は、世界は大きく変わった。

エミリー(最近よく死ぬなぁ……)

「お、そこの人!少しいいかい?」

エミリー「なんですか?」

「ああ、ここに宿屋あるか知らない?」

エミリー「ええっと、分からないです。」

「そっかー……ま、そんなに上手くはいかねーわな。じゃあこれで。」

エミリー(あの人見た事あるなぁ……。気のせい、だよね!)

エミリー(もしかして魔法使いだったり……?)

エミリー(いやいや!無いでしょ……)

エミリー(とにかく!ここを出ないと!)


少女は西の国を無事に出て、次の国へと時間をかけて向かった。

ー昔、人こそが万を統べると考えていた。

しかし、実際は違ったのだ。

作り出していた物に人は支配されていたとは気付かずに。

支配とはいつの間にかされているものだといつ気づくのだろうか?

永遠に解るまい。

「……ッチ!あの邪教徒共!あの鉄くずを打ち上げるだがなんだかの変なやつを壊したぐらいでいちいち騒ぎやがって!」

「しかし……この仕事どうしようかねぇ……。」

「光の短剣、こいつの寿命がなー……はぁ……」

そう言いながら彼女は病院へと向かった。足を引きづりながら。

この怪しげな雰囲気好き
続き期待

芸術の国。午後3時過ぎ。


エミリー(すごいなぁ!)

エミリー「えーと、パンフレットには……あった!「バベルタワー」だ!」

そこには空まで続く大きな鉄の柱がそびえていた。

エミリー(デカいなぁ……!しかも周りにはすごくセンスのある物が多いってアニーお兄ちゃんも言ってたし!)

ヘンテコなお面を被る銅像や、変や模様が書かれた男が悩む恰好をした石像まである。

エミリー(音楽も……綺麗で良いね!)

エミリー「~♪」

エミリー(ここでも聞き込みしないと!)

エミリー「あの、魔王についてお聞きしたいことが……」


>>>>>>>>>>>>>>
夜。宿屋。


エミリー(ここでもかぁー……そりゃそうだよねー)

魔王問題、進展せず。

エミリー(明日は色んなところを回ってそれから……)

芸術の国。国境付近。深夜。


「魔王の兵士だー!」

「こっちには最新式の銃がある!撃てーッ!」

発砲音が鳴り響く。

魔王の兵士はこちらよりも大きな筒を構え、撃った。


「あがぁ!」

「こいつが被弾した!衛生兵はいないのか!?」

「もう……逃げようぜ……こんなのに勝てる訳ねぇ!」


進軍する魔王の兵士。土にまみれた格好をしており、芸術の国の兵士は奇襲に気付かなかったのだ。

時すでに遅し。


「大きな棍棒構えたぞ!撤退ーッ!」


棍棒の先端が、激しい音をたてて飛んでいく。

兵士達は火だるまになり、あるいは一部が飛ばされながら逃げていった。


>>>>>>>>>>>>>>
翌日。


「国境付近で魔王軍と交戦したそうだ。」

「それで?逃げたのか?」

「撤退したんだとさ……ま、あんなの見たら逃げないとおかしいよなー。」

エミリー(また、魔王軍が……)



「君可愛いね。良かったら僕とデートしない?おごるよー。」

「おいおい、そりゃマジか?アタシに?」

「ああ。じゃあ早速……」

「どこ触ってんだ!この変態ッ!売春婦でも捕まえて来いやッ!」

エミリー(すごい剣幕だ……)

「痛っ!おいおい、嬢ちゃん……何してんだ?」

エミリー「ご、ごめんなさい!その……考え事してたので……ゆ、許して下さい!」

「嫌だね。君みたいな子はおじさんが少しお仕置きしないとねぇ……!」

エミリー(どどどどどどどどうしようー!)

「クソガキ。真に受ける必要はないぜー。なぁ、おっさん?」

「肩がマジで外れたー!イテェよ……」

「ありゃ、逃げていっちゃった。けどいいや。金ももらえたし。嬢ちゃん、大丈夫?」

エミリー「え、ええ。」

「年端もいかない子がこの国に何の様だい?」

エミリー「ま、魔王を倒すための情報を……」

「へぇ……でもギルドじゃ言わない方がいいな。」

エミリー「ギルド?」

「それも知らないのかい?ったく世間知らずだねぇ……」

「ギルドは職人の集団さ。組合くらいは聞いたことあるだろ?」

エミリー「あります!そうだったんですかぁ。」

「はは!良かったらギルドに来たらどう?手がかりは有るかもねぇ」

エミリー「ありがとうございます!早速行ってきます!」

「……場所、分かるのかい?」

エミリー「……全然……」

エミリー「あの……わ、私はエミリー・ハートって言います!」

「それで?」

エミリー「その……ギルドの所に連れてって欲しいんです!」

「はは!気に入った!良いぜ。教えてやるよ。」

アンナ「アタシはアンナ・ルドワー・ハーケニスト!しばらくだがよろしくな!」

エミリー「よ、よろしくお願いします!」

アンナ「じゃあ行くか!」

エミリー「今からですか!?」

アンナ「ッタリメーじゃん!行くぞ!エミ!」


>>>>>>>>>>>>>>>
ギルド内建物。


「アンナ。そいつは誰だ?お前の隠し子か?」

アンナ「ちげーよ。こいつは情報を集めてんだとよ、ブッカー。」

ブッカー「ほう。それでいくら出せる?」

エミリー「こ、これだけ……」

そう言っておばあちゃんに貰ったお金を渡す。

ブッカー「これじゃあ酒も飲めやしねぇ!帰れ!」

エミリー「うぅ……」

アンナ「ま、気にすんな。お前、魔王の事知りたいんだ?」

エミリー「勇者だから!です。」

「ほー、これが噂の勇者か。私としてもこれはさすがに……」

「毛も生えそろってないこの子が勇者?冗談だろ。」

「今年は確か魔王の嫁だったな。こんなので喜ぶのはペドぐらいだろーが!」

アンナ「……マジ?」

エミリー「そうですよ!ほら!勇者の証!」

アンナ「……みたいだよ、お前ら。」

「栄枯の国は何考えてんだ!」

「去年出した正義の国の勇者は討伐すると言ってよ、一週間で帰ってきたらしいぜー。死体になってだけどな!」

「「「ははは!」」」」



ブッカー「それで?勇者様が何の用だ?」

エミリー「えーと……困り事探してます。」

ブッカー「そりゃここにはねーな。今傭兵は一代ビジネスだからよ。」

エミリー「ビジネス?」

ブッカー「そうだ。魔王軍が現れて幾(いく)ばくか。兵士も足りねーからここで雇うんだよ!」

アンナ「で、どうしてアタシがここに居るかって言うとねー……これさ!」

取り出した者はただの細い筒だった。

アンナ「それでな……」

エミリー「刃が出て光ってる!」

アンナ「これは光の短剣って言うらしい。何でも斬るからな!鉛でも鉄でも石でもな!」

ブッカー「何故かアンナの家に置いてあったらしい。そんなことはどーでもいいけどな。」

エミリー「お姉さん綺麗なのにどうして?」

アンナ「ああ。そりゃ能が無いからさ。学も無いとこんな仕事にしか就けないからな。」

ブッカー「って言ってるけど、こいつは名門貴族出身なんだぜ?今は無いけど!」

エミリー「どうして?」

ブッカー「魔王の奴に皆殺しされたんだよ。それでだぜ?」

アンナ「うっせー!ったく……行くぞエミ。情報は十分集まったはずだ。」

エミリー「え、あ!ちょっと~!」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後1時少し過ぎ。


アンナ「でだ。魔王について知りたいんだったな。」

エミリー「はい!」

アンナ「正直言うとギルドでも知らないんだ……その、悪かったな。嘘ついてよ……」

エミリー「私は気にしてませんよ!」

アンナ「正直魔王の事に聞き回ってるからさ、何か聞き出せないかと思ってねぇ……悪かったね。」

エミリ「むぅ……騙したんですね!ひどい!」

アンナ「悪ぃ悪ぃ……。ちょうど大金入ったしよ、何か奢ってやんよ!何でも頼みな。」

エミリー「んー……」

アンナ「もしかして、字が読めないのか?」

エミリー「恥ずかしながら……」

アンナ「何がいいのさ?」

エミリー「ここの名物!」

アンナ「鴨のソテーか羊の煮込みだな。」

エミリー「羊の煮込みで!」

アンナ「よし!すみませんー、注文いいですか?」

「はい?何でしょう?」

>>>>>>>>>>
エミリー「美味しかったぁ~!幸せ!」

アンナ「そりゃ良かったよ。泊まるところはあるのかい?」

エミリー「ええっと……この札が有れば何処でもって。」

アンナ「それはここだけの話さね。でもこの札……何だか変な感じがするねぇ。ヘンテコな黒いカードは。」

簡単な人物紹介#3

アンナ・ルドラー・ハーケニスト…女性。24歳。元貴族の傭兵。ショートヘア。何げにスタイルが良い。

ブッカー…本名ブッカー・トロイア・リスペクト。男性。36歳。情報屋。報酬は酒で消える事が殆ど。


解説

光の短剣…アンナが持つなんでも切る短剣。切った後は切った物が少し焦げた匂いがするらしい。

エミリー「変な?」

アンナ「何でもないさ。さて、と。アタシはやる事あるからね。お金は払っとくよ。じゃあな、勇者さん。」

エミリー「このお返しは必ずします!」

アンナ「しなくてもいいぜ。奢りだしよ!ははは!」

エミリー(何しようかな……?)

エミリー(バベルタワーにでも上ろう!うん!)

>>>>>>>>>>>>>>>
バベルタワー前。


エミリー「あの……チケット下さい。1枚……」

「子供用?」

エミリー「はい。」

「じゃあ2ルーブルもらおうか。」

エミリー「……はいどうぞ。」

「どうぞお楽しみ下さいませ。」

>>>>>>
タワー内。展望デッキ。

エミリー(綺麗だなぁ!まるで別世界!)

エミリー(大きな柱の中に柱……しかも大きな扉があるのは凄かった!)

エミリー(あんなのは今の私達じゃ作れないよ!昔の人って偉いなぁ)

>>57
ありがとうございます。

「ママぁー……ここ怖いよぉ……」

「じゃあママと一緒にお手て繋いでみましょう?」

「うん!」

エミリー(ママ、か)

エミリー(……帰りたくなっちゃった)

>>>>>>
宿に戻る道中。夕方。


エミリー(ママ……パパ……うぅ……)

エミリー(魔王は私が討ち取ります。だから……)

ふと、花が視界に入った。

エミリー「綺麗……!これはユリ・アイリス!」

エミリー「こんなのうちには置いてないよぉー……」

エミリー(バラも多いなー。香りは少しキツイけど)

エミリー(やっぱり自分のところが良いよね!)

エミリー(……文字も読めるようにしないと!どこかに本置いてある所無いかな?)

>>>>>>>>>>>>>>>>>>
夜。宿屋。


エミリー(「としょかん」って所に本が沢山置いてあるらしいけど……貴族の人しか入れないとか……はうぅ……)

エミリー(しかも閉まってたし……もしかしたらアリアさんなら入れるのかも?)

エミリー(頼んでみようかな……)


>>68
誤:エミリー(しかも閉まってたし……もしかしたらアリアさんなら入れるのかも?)

正:エミリー(しかも閉まってたし……もしかしたらアンナさんなら入れるのかも?)

---私は知識と言うものはあまり好きではない。

それはどこまでも続く闇のようなものだからだ。

知を求め、極めようとする姿は良いが行ったところで何があろうか?

考えることにせよ、放棄することすら出来ぬ。

汝、神域に入る事無かれ。出なければ、楽園を追放されるかもしれないからだ。

楽園の外は地獄ぞ。

>>6

客は12フラン1ルーブル払って1ルーブルのお釣りを貰う池沼

>>71
マジや…何故こんなことしたんだろ……指摘されるまで気づかなかった……
済まないが、見なかったことにしてくれ……

翌日。午前10時過ぎ。


エミリー(ここが「としょかん」……大きいなぁ……けどバベルタワー程じゃないかな)

芸術の国にある図書館「ラッセージズ・インベービ」。この国の芸術とは学問も指している様だ。

エミリー(本棚多い!しかもここの本……貰ってもいいのかな?)

エミリー(あそこのカウンターに持っていけばいいみたいね!)

エミリー(えーと……分んないや……)

アンナ「よーよー、何してんだい?」

エミリー「あ!アンナさん!」

アンナ「……図書館じゃ静かにしないとダメだよ……」

エミリー「え、あの……すみません……」

アンナ「アンタは文字が読めないんだっけ?」

エミリー「はい……」

アンナ「別に文字なんて書けようが読めようが、食いっぱぐれはないとアタシは思うけど?」

エミリー「その……魔王を倒すために、です。」

アンナ「ふーん。けど考えてみなよ。いくら貧困の子が文字が読めて書けるからって必ず職に就けるかい?無理だね。」

エミリー「どうして……!」

アンナ「……ここじゃなんだし、外で話そう。その方が議論できるしさ。」

>>>>>>>>>>>>>>>
午後2時手前。カフェ店テラス。


アンナ「それで、どうして貧乏人の子がって話の続き……話していい?」

エミリー「……はい。」

アンナ「世の中には学が有ってもテンで役に立たない奴が出て来るわけさ。それこそスーパーの店長とかね。」

アンナ「賭博場なら権力のある奴が仕切ってるし、公務員なら死ぬまで安泰。体が優れているなら軍人に大道芸人……」

アンナ「教えるのが上手けりゃ教師って訳さ。つまり、学が有っても能が無きゃダメってこと。」

アンナ「でも役立たずの馬鹿でも動かせる知恵は必要だからねぇ。そこは本人の裁量ってところだろうねぇ。」

エミリー「それが貧乏人と何か関係あるんですか?」

アンナ「エミは今、どっかの店を仕切ってるとする。有るとき2人の人が現れたんだ。一人は学は良いが動けない奴。もう一人は学は無いけど動ける奴。さて、どちらを置いておきたい?」

エミリー「それは動ける人ですよー。」

アンナ「そう、だから学が無くてもいいって訳だ。出ないとその店は腐る。そして馬鹿にしてた奴らと同じ飯を食う羽目になるのさ。」

エミリー「……?」

アンナ「結局は学ある馬鹿も無い馬鹿もさっさと死ぬしか無いってこと。で、どうすんだい?学ぶなら学校ってところがあるけどどうする?」

エミリー「がっこう……行ってみたいです!」

アンナ「それじゃあ文字を読み書き出来るようにしないとな!」

エミリー「私……頑張ります!」

アンナ「そーか!じゃあ紙とペンを用意しないと……」

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後5時過ぎ。


アンナ「すごいねぇ……。こんな短時間で読み書き出来るだなんて!」

アンナ「しかも冗談で簡単な計算問題や化学の解き方教えてすぐ答えを出しやがるなんて……」

エミリー「そ、そんなぁ……えへへ。」

アンナ「エミ。その中には応用も入ってるんだぞ。しかも中等の1学年が習うのもだ……」

続きは夜頃書きます。

一旦乙

時々話に挟む、人物紹介の設定や解説に愛を感じるなぁ

本当に欲してたとしても3時間でぐんぐん吸収するエミリーさん凄い!

アンナさんの教え方も上手なんだろうなー♪

>>78
設定だと元貴族の傭兵ってあるし、多少は勉学の心得があると俺は解釈してる

再開します。

エミリー「その……ちゅうとうとかってのは何ですか?ランク?」

アンナ「簡単に言えばそうだな。高いと賢いんだ。同時により難しくなるけどよ。」

エミリー「学校っていい所ですね!」

アンナ「んな訳はない。学校はある意味社会の……縮図みたいなものだしよぉ。極端に言えば光と影が極端に出て来る。」

エミリー「影?」

アンナ「そうだよ。そうだ、私が通ってた所はこの国には無い。隣の法の国に在るんだ。そこに紹介状を渡せばすぐだな。」

エミリー「そこに行けば学校が……」

アンナ「あそこは国土の10分の1が学術都市とか言ういい所だからな。……ほい書けた。無くすんじゃないよ?」

エミリー「あ、ありがとう!アンナさん!」

アンナ「……おう!悪いけど、少し付き合ってくれないかい?」

エミリー「うん!どこ行くんですか?」

アンナ「家さ。私の元、ね。……って時間的にヤバいなー……エミ、今日はここまでだ。」

エミリー「はい!ありがとうございました!アンナさん!」

アンナ「おう!またな!エミ!」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
夜。宿屋。


エミリー(この本……面白いなぁ)

エミリーが読んでいる本は帰り際、アンナから渡されたものだ。

エミリー(これは……いでんしってのが生き物を作る元なんだー。へー)

エミリー(えーと、昔の人の本からの参考したので詳しくは不明……。しかしいくつかは理論に当てはまる……)

エミリー(それから……)

同刻。ギルド。


アンナ「何の用だい?」

「アンナ。ヤバいことになっちまった!魔王の歩兵がもうここまで来ているらしい。」

ブッカー「しかもだ、そいつらは大量の棍棒と、火を噴く筒を持っているって話だ。」

アンナ「数は?」

「ざっと200だ。ヤバいぜー……今揃えられる兵力は34……。34だぞ!」

アンナ「場所!一気に言いな!整理が付かないよッ!」

ブッカー「じゃあ言うぜ。場所はこの国の北北西。発見されたのは2時間前だそうだ。」

「変化の地と呼ばれるところだな。法の国と分割しているはずだが。」

アンナ「それで雇い主は?国?」

ブッカー「そうだ。今回俺たちは先兵だ。真っ先に死ににいく役だ……。いいか?」

「大金積まれてもこれじゃあ持たねぇぜ……。」

「銃新調したばかりなのに……」

アンナ「そういや、あんたの銃、先に何か付いているね?」

「ああ。魔王軍が一回してたからな。銃口の下にはナイフを着けたんだ。これで弾が切れても戦える!」

アンナ「はは。役に立つといいな、それ。」

ブッカー「……嬢ちゃんと会って変わったな、アンナ。」

アンナ「なんの事だい。別に変っちゃいないだろ?」

ブッカー「そうかも、な……。じゃ!お前ら……持てる兵力全て揃えて魔王軍をぶっ潰そうぜーッ!」

「「「ウィーーーーーーーーーーー!」」」

>>77
無いとこっちが忘れそうになるので書いてます。本当ですよ?

>>78
エミリーは決して馬鹿ではないのです。色んな意味で。

>>79
その通りです。どうでもいいですが、アンナは学校を首席で卒業しています。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
翌日。午前9時過ぎ。


メアリー(アンナさん……どこに居るんだろう?)

アンナ「いやー、待たせたねぇ。」

メアリー「そうですよー!もー!……ところどころに何で包帯巻いているんですか?」

アンナ「それはあれだ!昨日、仕事の途中で転げ落ちたんだよ。」

メアリー「大丈夫ですか?」

アンナ「心配すんなっての。これでもまだ24だよ?」

メアリー「え!?てっきり18かと思ってました!」

アンナ「そんなには若くないよ。本当に……それで今回もあれかい?魔王の調査?」

メアリー「はい!」

アンナ「そう言えば昨日魔王軍が出てきて多くの兵士を殺したらしいねぇ。ほれ、今のエミなら読めるはずさ。」

メアリー(文字がいっぱい……これって……)

アンナ「……昨晩、魔王軍に立ち向かった兵士が死んだ。しかも今回は2割だけ帰還。相手さんはほぼ無傷って話。」

アンナ「情報と違うじゃないかい……!騎兵が複数来るなんて聞いてないよ……!」

メアリー「……居たんですか?そこに……」

アンナ「あくまでも聞いた話だよ。あくまでもね。」

メアリー「騎兵、どんなのでしたか?」

アンナ「……十字のが4つと付いてないのが1つ。しかもフォルムは丸に近かった。音もそんなに出ちゃいない。槍は先端がかなり細い。まるで未来から来た兵器の様だったよ……」

メアリー「馬でもダメでした?」

アンナ「馬でもダメだ。装甲馬車使っても突破は難しいよ……。あー!さっさと大砲乗っけられる装甲馬車作れっての!」

メアリー「装甲馬車?」

アンナ「各国が最近投入した兵器さ。馬に鎧つけて、鉄で覆ったところドーム状の所から銃で攻撃するんだよ。そこには隙間が空いているからね。」

メアリー「そんなの有ったんだ……」

アンナ「そうだよ。ところで話変わるけど、もうアタシと会わない方がいいよ。」

メアリー「どうして……」

アンナ「そりゃあアタシは傭兵だからさ。死ぬなら傭兵として、アンナ・ルドラー・ハーケニストして死ぬのさ。」

メアリー「私……死なせたくない!」

アンナ「いいかい?生まれるのは勝手だし、死ぬのも勝手なんだよ。誰が死んだって国や世界は回るんだ。何も変わらずな。最低な死に方だけはアタシはしたくないんだよ……!」

アンナ「せめて死ぬ時時くらいは……」

メアリー「本当は死にたくないんじゃないんですか……?」

アンナ「……何だと……?」

メアリー「だってそんな言葉……信じられないよ!だから、私と!一緒に!」

アンナ「ああ、そうさ。死ぬのは怖い……。毎日ビクビクしながら戦っているさ。けど!死ぬ覚悟が無いとアタシは生きていけねーんだッ!だから戦う!」

アンナ「自分が、生きていることが当たり前だと思うな!誰かの犠牲で世界は……今日はあるんだよ……!」

メアリー「……分んない、よぉ……どうして……」

アンナ「平和は……いつかくるさ。その礎にならないといけないんだよ。争いは起こるべくして起こるものだからね。」


「敵襲ーッ!」

「トリが来たぞー!逃げろー!」


アンナ「早いねぇ……。精々2日かと思ってたのにさ!じゃあアタシは武器を取ってくる。エミ!達者でな!」

そう言ってアンナはどこかへ去っていった。

直後、ドカンと言う大きな音。

家々が壊れる音がした。

エミリー(に、逃げないと!)

エミリー(あれ……私、ずっと逃げてばかりだ……。一度も戦ってない……)

エミリーは懐の短剣を抜く。

エミリー(大丈夫。私は……ゆ、勇者な、なんだ、か……ら……!)

エミリー(あ、あれ……?体が動かない……剣が、重い……)


「あああああ!」

「熱い!熱いーーーーーーー!」


「構えー……撃てッー!」

「クソ!かすりもしねぇ!」


エミリー(今回は……降りてこないの、かな?)

>>>>>>>>>>
午前11時少し過ぎ。


そこに在ったのは---瓦礫の町。

焼け焦げた臭いが漂う町。

エミリー(また、だ……)

アンナ「エミリー……居たのか……」

エミリー「居るよ!うん!」

アンナ「しくじったよ……まさか降りないなんてね……こんな経験は初めてだ……」

アンナ「トリを撃ち落とす物作らせるよう……打診しないとよ……。エミ。この馬車に乗っていけ。これは法の国へ行く馬車だ。」

エミリー「……」

アンナ「ほら、行った行った!そんな顔すんな!また会えるさ。生きてるしな。」

エミリー「うん……!約束……だよ……!アンナさん!」

アンナ「おうよ!あ、傭兵はまだしばらくするさ。これしか稼ぐ手段が無いからね。それと紹介状は持ったかい?今日一番に出したからもう届いているとは思う。達者でな!」

エミリー「……また!。」

アンナ「おう!」


馬車が去った後。


「なぁ、アンナ。お前……足、大丈夫か?」

アンナ「ああ。平気さ。平気。それよりもこの町の復興手伝うよ!ほら早く!」

「傭兵の癖に珍しい女だぜ。こんなのが未だに彼氏出来ないとか信じらんねーぜ……」

アンナ「っせーな!今は平和が先だよ。それで……彼氏でも作るさ。」

「そうかよ。おい、ブッカー!てめーも少しは手伝えやッ!女に力仕事させるとかありえねーぞ!」

ブッカー「うるせー!今道具引っ張って来てんだからよー!」


芸術の国で会った元貴族の傭兵。彼女は大きな人生の転機を迎えることになるのだろうか。

しかしそれは魔王は勿論、多くの人には関係が無い。

馬車に揺られ、少女は次の国へと希望を抱いて向かうのであった。

矛盾を解消しておくコーナー

>>10
Q.どうしてエミリーは字が読めたの?

A.知っている文字を当てはめ、文脈から読みとったのです。

知っている英単語を長文に当てはめ、推測しながら読んでいくような感じ。

今回はここまで

次からはこれ付けて終わるようにします。

---社会は誰も迷惑をかけず、小さな中で回すものだった。

しかし、今は規模が大きくなり、大が小となり小が大となる様になった。

同時に自身の存在の意義が唱えられるようになったのだ。

ただ、変わらない点を述べるとするならば---古今東西自分自身が生きる事で精一杯と言う事だ。

法の国。学校内裏庭。正午。


「ねえ、最近調子乗ってないか?あいつ。」

「だねー。確か……貴族の世話人!頭いいからって通わせてもらってるんだと。」

「どうするさ?そいつのご飯ぶちまけるとか?」

「それじゃあダメだ……。そうだな、魔王の手下ってことにしよう!それなら追い出せる!」

法の国。同刻。


エミリー(なんだか少し厳しい感じだと思ってたけど、そうでもないみたい)

馬車を降り、エミリーは通りを歩いていた。

エミリー(まず紹介状をなくさない様にしないと……ん?もう1枚何か入っている。何かな?)

エミリー(……学校の手続きはしてあるから安心して良いみたい。後は道順かぁ。先に見に行こ。迷ったら困るし)

エミリー(皆大きくて薄くて文字が敷き詰められているの読んでる。しんぶん?だっけ)

エミリー(学校……学校……ここかな?)

エミリー(「ベルシン自由初等科学校」……大きくて広い所……でもどうしてお花を植えないのか?)


「ベルシン自由初等科学校」。そこは名門中の名門「ベルシン自由大学校」の付属学校だ。入れるのは貴族や大金持ち、特化した才能を持つ子だけなのだ。おまけに難関校で、留年したら即退学と言う所。ゆえに国内外にいる親はここに入らせようとする。


エミリー(しかも砂しかないし……これじゃあ植えられないよね)

エミリー(戻ってお花の種でも買おうかな)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後1時過ぎ。宿屋。


エミリー(疲れたぁー……でもこれだけあれば十分だよね?)

エミリー(少し寝ようかな……。疲れた……)

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後3時過ぎ。

エミリー「んにゃ……。」

「エミリー様。お客様です。」

エミリー「誰ですか?」

「ベルシン自由初等科学校の校長様です。」

エミリー(がっこう関係かな?)

エミリー「通して下さい。」

老人「ほほ。初めまして。エミリー・ハートさん。私はアルツ・フォン・ゲシュタルトです。」

エミリー「初めまして!エミリー・ハートです!」

アルツ「元気があってよろしい。それで、要件は分かっておられるかな?」

エミリー「がっこうの事ですよね。アンナさんから聞きました。」


(続きは夜頃)

一旦お疲れぃ!

つ缶コーヒー

再開します。

アルツ「それでじゃ。紹介状は持っておられるかな?」

エミリー「えーと……これですか?」

アルツ「……成程。ハーケニストさんからの紹介ですね。ふぉふぉふぉ。彼女は在校中、不動の1位を更新し続けた者じゃからの。」

エミリー「す、すごい……」

アルツ「まさか魔王軍に皆殺しにされていたとは……ハートさん、ハーケニストさんの今の職と年齢は分かるかな?」

エミリー「職業は傭兵、歳は24……です。」

アルツ「では最後じゃ。この問題……45分以内で解いて見せよ。」

そう言い、彼は封筒から少し厚めの紙を渡す。同時に砂時計も取り出した。

エミリー「これは……?」

アルツ「これを解けば学校へ行けるぞ。」

エミリー「……やります!」

アルツ「では……始め。」

エミリー(……この問題は、これとこれを組み合わせて……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
3時45分ちょうど。


アルツ「止め。」

エミリー「……ふぅ。疲れたぁー。」

アルツ「今から採点するからの。少しここで待っておれ。」

エミリー「ここじゃダメですか?」

アルツ「公平を喫するためじゃよ。ではな。」

エミリー(ああ緊張するなぁー……)

>>97
ありがたく飲ませてもらいます。

数分後。


アルツ「さて……エミリーさん。結果ですが……」

エミリー「……はい。」

アルツ「入学を認めます。1年間の特待生として、です。」

エミリー「……とくたいせい?」

アルツ「分かりやすく言えば頭の良い限り、学校に居てもいいですよと言うことじゃよ。」

エミリー「やったぁー!明日からがっこう、行けるんだー!わーい!」

アルツ「教科書類はこちらで揃えておきますのでご安心を。では、明日の8時に会いましょう。」

エミリー「はい!ありがとうございました!」

アルツ「ええ。では。」

エミリー(明日から行けるんだー!何が居るのかな?そうだ、これ持っていこう!皆喜んでくれるかなぁ?)

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後6時過ぎ。学校内校長室。


アルツ(まさか中等科の問題を解くとは真であったか……)

アルツ(文系は……同学年の平均くらいじゃが……)

アルツ(理系が凄いの……。ほぼ9割を叩きだしておる)

アルツ(これは楽しみじゃのぉ……)

---迷いは誰にでもあることだ。

考える時間がある時もあれば、無い時もある。

故に我らは、霧の中をやみくもに進見続けるしかない。

その時、複数の道があるだろう。そして、選び進まなければならぬ。

どれが正しいかは不明だが。

>>102訂正

誤:故に我らは、霧の中をやみくもに進見続けるしかない。

正:故に我らは、霧の中をやみくもに進み続けるしかない。

翌日。午前8時手前。学校前。


エミリー(緊張するなぁ……)

校門から入り、正面の建物へと向かう。

エミリー(ここでべんきょうするんだよね。よおし!頑張らないと!)

エミリー(そう言えば、がっこうは人も沢山いるんだっけ?なら自己紹介もしなきゃだね!)

エミリー(でも、どこに行けば……)

「あなた……誰です?ここの生徒?」

エミリー「えーと……その、アルツさんにここに来てもいいと言われまして。えっと……」

「そう。あなたが。じゃあ案内しないとね。」

エミリー「わ、私はエミリーって言います!」

ナジェンダ「私はナジェンダ・スツーカ。よろしく。歩きながら行きましょうか。」

エミリー「はい、スツーカさん!」

ナジェンダ「ふふ。噂通りのいい子ね。」

エミリー「それでどこに向かっているんですか?」

ナジェンダ「教室よ。移動しながら行うのよ。ここよ。」

ナジェンダ「それと入っていいって言うまで来ちゃダメよ?」

エミリー「はい!」

ナジェンダ「ふふ。少し待ってて頂戴。」

>>>>>>>>
教室。8時少し過ぎ。


ナジェンダ「皆さん。いきなりですが、今日は新しい仲間が来ます。」

「誰だろ?」

「聞いてないよ!誰々?」

少女「……」

「はいはい。じゃあ入ってきて!」

エミリー「し、失礼しましゅ!」

「女の子だー!やったぜ!」

「可愛いー。」

「田舎臭いですわ。」

ナジェンダ「では自己紹介お願い出来るかしら?」

エミリー「え、エミリー・ハートです!よ、よろしくお願いします!」

ナジェンダ「じゃあハートさん。開いてる席に座って。」

エミリー「は、はい!」

少女「……」

エミリー「私、エミリー・ハート!よろしくね!えーと……」

「ハートちゃん。その子に話さない方が良いよ。気持ち悪いからさ。」

エミリー「そ、そうなの?」

エミリー(そうには見えないんだけどなぁ……)

エミリー「う、うん。」

少女「……」

ナジェンダ「さて授業しますよ。はい、教科書出して。ハートさんは……そうね、イカロスさんに借りて。」

イカロス「……よろしく。これ。」

エミリー「ありがと!お礼にあげるね。」

イカロス「いらない。」

エミリー「あう……ご、ごめんね……?」

イカロス「気にしなくていいよ。授業始まるよ。」

エミリー「う、うん!」

簡単な人物紹介#4

ナジェンダ・スツーカ・・・女性。30歳。教師。優しそうな女性で数学担当。初等科4年のB組を担当。

アルツ・フォン・ゲシュタルト・・・男性。79歳。校長。腰柔らかな態度で人に接する。趣味は生徒の成長を見ること。

イカロス・・・本名エリカ・グロス・イカロス。女の子。歳はエミリーと同じ。何故かクラスでハブられているようだ。


解説

騎兵・・・魔王軍が使う、全身が鉄で覆われ、前に細い筒が付いている。足は複数の車輪が付いており、囲う様に黒い帯が巻かれている。先からは火を噴きながらほぼ倍の距離の敵を突き倒す厄介な敵。

火を噴く棍棒・・・魔王軍の歩兵が使う武器。打撃ではなく、棍棒の太い部分を撃ちだす。当たると爆発する。一回しか使えない様だ。

午前中授業終了。正午。


「では、ここまで。」

エミリー(うあー……疲れたぁー……でも分かりやすかった!)

エミリー(すうがくはわりあいってのをしたし、りかは銃の弾が真っ直ぐ飛ぶ理由が分かったし!こくごは……普通かなぁ)

エミリー(しゃかいはれきしってのしたけど……う~ん……微妙……)

「ねぇねぇ、エミリーはどこから来たの?教えて教えて!」

エミリー「栄枯の国からだよ!それで勇者!」


「勇者?マジで?」

「冗談だよね?ハートちゃん……?」


エミリー「本当だよ。これ!」


「勇者の証だ……!すげぇー!」

「これ……触ってもいい?」


エミリー「駄目だよ~。それ王様からもらった物だし。」

エミリー「それよりお腹空いたよー。ご飯ってどこで食べるの?まさか自分で作るとか!?」

「違うよー。ハートちゃんって天然だねぇー。」

「そこが良いんだけどな!」

「あらあなた、この人に手をだすおつもり?紳士の鏡にも置けませんわね。」

エミリー「えーとぉ……」

隣に座っていた少女、イカロスはいつの間にかいなくなっていた。


今回はここまで

エミリー(なんだかイカロスちゃんの事、無視しているみたい……)

清楚「なら私と一緒に食べましょ?ハートさん。」

エミリー「良いけど……誰?」

清楚「そう言えばそうでしたわ。私はアマーリア・ワーゲンと言います。以後お見知りおきを。」

少年「じゃあじゃあ俺も!俺はアレクサンダー・フンメル!アレクでいいぜ。で、こっちが」

ヘンテコ「ビスマルク・オイゲン。よろしく。ビスって皆は言ってる。」

アマーリア「さて、紹介も済んだとこですしお昼にしましょう。食堂に案内いたしますわ。」

エミリー「ありがとう!でもイカロスちゃんは誘わなくてもいいの?」

アレク「それはいいじゃん。さっさとしねーと飯が無くなるぞ!」

ビス「僕も行くよ。ここのヴルストは美味しいんだ。」

エミリー「そうなんだ!オイゲン君のおすすめだしそれにしようかな。」

アマーリア「この子、女の子ですわよ?」

エミリー「……え?嘘……どうみても男みたい……」

ビス「はは。誰でも最初は驚くものさ。家は代々男装しないとダメなんだって。知らないけどさ。」

アマーリア「元々騎士の家系ですし仕方ないんじゃありませんの?」

アレク「お、食堂に着いたぞ。よっしゃ!何食べようかな~」

エミリー「はっ!お金はどこで払うの?私持ってきてない!」

ビス「ここのはお昼限定で全部無料だよ。しかもお替りし放題。すごいでしょ?」

エミリー「うん!家じゃたまに食べるチーズフォンドゥかパンとレシュティーしかなかったから……」

アマーリア「もしかして……あなた、特待枠ですの?」

エミリー「そうだけど……」

アレク「とくたい枠?確か特別枠じゃなかったか?」

ビス「別の言い方だよ、アレク。」

エミリー「よく分かったね……」

アマーリア「だって、そう言うのは基本何かしらの見込みがないと受けることが出来ませんもの。」

アマーリア「唯一首席で卒業されたハーケニストさんでも特待枠じゃなく、優秀枠で授業料免除されてましたからね。」

ビス「特待はよほどじゃないと受けられないってことだよ。」

エミリー(もしかして、皆に期待されてる!?重い……)

アレク「すげぇ!」

ビス「さ、列に並ぼう……の、前にハート。食券を引いておくんだ。あの箱に入っているだろ?」

エミリー(えーと……ヴルストは、これかな)

アレク「早くーぅ!飯が無くなっちまうぜー」

ビス「ご飯は逃げやしないよ。さ、取ったら行こうか。券はあそこに渡すんだ。そうすればもらえる。」

エミリー「分かったよ。ご飯~ご飯~♪」


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食堂。


アマーリア「アレク。もう少し上品に食べることは出来なくて?さっきからこぼしてますことよ……」

アレク「悪い悪い。この時だけが楽しみでついなー。ははは!」

エミリー「分かるよー!ご飯食べてる時と好きなことをしている時が凄い楽しいよね!」

ビス「ふふ。ヴルストはどうだい?ここでの当たりメニューだよ。」

エミリー「はふい!ふぉふぉ、おいひいふぉ!」

アマーリア「慌てて食べてはいけませんことよ。後のみ込んでから話しなさい。」

アレク「熱いけど美味いってエミリーは言ってるぜ!」

ビス「分かるのか……」


続きは夜に。

再開。

エミリー「そう言えば、どうしてイカロスちゃんを皆で無視しているの?さっきから気になって気になって……」

アレク「なんか魔王の手先とか言われてるからじゃね?」

アマーリア「まぁ!魔王の!それで証拠はあるのかしら?」

アレク「さあな。クラスどころか学年飛び越えて言われてるからよぉー。本当かは知らないけど。」

ビス「彼女の奇抜な格好のせいかもね。メットと服が一緒のを着ているんだしさ……」

アマーリア「あら。私はおしゃれだと思いましてよ。」

ビス「それ以外にも有るだろうけどね。そこまでは僕も知らない。」

エミリー「魔王の手先かは知らないけど……聞いた方が早いんじゃないかなぁ?」

アレク「死んだらヤバいぜ?どーすんだよッ」

エミリー「その時はこれ使えばいいし大丈夫!」

そう言いながら懐にある短剣を見せる。

ビス「そう言うのは学校に持ってきちゃいけないんだよ、エミリー。」

エミリー「えー……ダメなんだ……知らなかったよ……」

アマーリア「本当に知らないとかどこから来たのかしら……」

アレク「栄枯の国からだろ?」

ビス「ジョークも通じないとかガッカリだよ……」

エミリー(授業終わったら聞いてみようかな)

授業終了後。


エミリー「イカロスさん!一緒に帰らない?」

イカロス「いい、けど……ハートちゃんは、大丈夫……なの?」

エミリー「……?別に?」

イカロス「そう……」

何故かイカロスは、メットを深くかぶった。

イカロス「じゃあ……帰ろう。」

エミリー「うん!じゃーね!」

アレク「おう!」

アマーリア「さようなら、ハート。」

ビス「またね。」


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午後3時手前。道中。


イカロス「同じ道だったとは……驚き。」

エミリー「うんうん!そう言えばさ、皆あなたの事魔王の手先とか言っているけど……本当なの?」

イカロス「その時はどうする?」

エミリー「う~ん……尋問?」

イカロス「妥当だね。うん。……私ここが家なの。じゃあ、明日も。」

エミリー「うん!じゃあね!イカロスさん!」

イカロス「……バイバイ。」

午後9時過ぎ。宿屋。


エミリー(恰好以外は普通なのに……親とかに事情があるのかな?うーん……)

エミリー(でも魔王の手先の話はどこから来たのかなぁ?こればかりはアマーリアに聞くしかないよね)

エミリー(……本でも読もうかな。あ、本無いや……)

エミリー(べんきょう少ししてから寝よう……)


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午前2時。法の国中央政府内。軍部第一会議室。


「敵は何だ?」

「はっ!上陸の丘上空にトリが5羽、その内1つは竜であります!」

「どうする?対空兵装を展開させますかな?」

「そうしてくれ。いつもより多くな。」

「報告!上空にモスキートが出現!数は30!」

「モスキート!?馬鹿な……」

「……今回は「裁きの雷」を使う。良いな。」

「しかし、もう弾の数が……」

「だったら解析して同様のを作り出せッ!いいな?」

「はっ……!」

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午前2時20分。

「例のを投入するらしい……。あれ、明るくて敵にバレるだろ……どーせ。」

「今回はモスキートだからな。決して大きくはないが、攻撃力はトリと同じだ。」

「裁きの雷、設置、装填完了しました!」

「攻撃体勢!」

「はっ!2、1……撃てーッ!」

裁きの雷から眩い光を出し、高速に、真っ直ぐ飛んでいく。

それがモスキートに当たり、爆発した。

同時に、トリの一部、羽にも当たった。

トリが落ちていく。しかし、海に落ち藻屑とかしてしまった。

これ以上は無理と見たのか、トリ達は黒い雲を出しながら逃げていった。

今回はここまで。

明日からは夜更新になると思います。

簡単な人物紹介#5

アマーリア・ワーゲン・・・女の子。歳は11。貴族。キツめの美人。好きな人が居るとか居ないとか。

アレクサンダー・フンメル・・・男の子。10歳。アホガキである。エミリーの事が気になるらしい。

ビスマルク・オイゲン・・・女の子。10歳。僕っ子。騎士の家系。しかし体育が得意な訳じゃない。


解説

裁きの雷・・・大砲よりも強力な大砲。バチバチと言う音をたてた後に発射が可能となる兵器。速く真っ直ぐ飛び、はるか上空の敵すら打ち抜くことが可能。この時代では作ることが不可能な代物。

メットと一緒の服・・・正しくは一体型。左右に紐が付いている。

翌日。午前7時半。道中。


「また魔王の襲撃に遭ったんですって!」

「物騒ねぇ~」

エミリー(魔王は何で攻撃すんだろう……?)

イカロス「おはよ……ハートちゃん。」

エミリー「おはよう、イカロスちゃん!」

イカロス「今日は教科書……持ってきた?」

エミリー「それが貰ってないんだぁー……多分今日渡すんだと思う。」

イカロス「そう……」

エミリー「そう言えば、イカロスちゃんは普段は何しているの?」

イカロス「……ナイショ。」

エミリー「えー……教えてよー!私は本読んでるよ!」

イカロス「どうでもいいよ。さ、授業だ。」

エミリー「うん。お昼一緒に食べよう?」

イカロス「それなら……いい、よ。」

正午。教室。


エミリー「ねぇー、イカロスちゃんー!お昼たーべよっ!」

イカロス「……う、ん。」

「イカロスぅー。ちょっとこっち来いよ?」

「いつもの、しようぜぇー……」

イカロス「……」

エミリー「何するの?イカロスちゃんは私とお昼食べるんだけど……」

イカロス「ごめんね……どうしても……」

「そう言うことだ……じゃあな、貧乏人!」

「這い蹲ってろ!きゃはは!」

エミリー「……」

エミリー(明らかに嫌がってたよね……?でもどうして……)

アマーリア「大丈夫……みたいですわね。まったく!脅かして!」

ビス「彼らには関わらない方がいいよ。」

エミリー「どうして?」

アマーリア「分かりませんわ……聞いても伏せてるばかりで……」

アレク「まぁ、体は良くしているって感じだしなー。」

エミリー「……分かったよ……」

エミリー(こんなのおかしいよ!どうして……見捨てるの……?)

授業終了後。


エミリー(楽しいけど……分んないと面白くないや。けど不思議と……燃えてくる!まるでコスモスみたいに!)

エミリー(うーん、なんか違うなぁ。いいや)

エミリー(あ、イカロスちゃんだ!)

イカロス「……ぐす……えっく……」

エミリー(……泣いてる……?)

エミリー「どう、したの……?」

イカロス「……誰かと思えばハートちゃん……ごめん、ね。お昼一緒に食べられなくて……」

エミリー「ううん!また一緒に食べよ?何か……あったの?」

イカロス「な、何でも、な……ない、よ……」

エミリー「あの子達が関わってる?」

イカロス「あれは……ただの、友達……だよ……とも、だち。」

エミリー「ホントに?」

イカロス「うん……」

エミリー「私勇者だから!」

イカロス「ありがと、エミリー……」

エミリー「だから、話してくれない、かな?」

イカロス「……それは嫌だ……」

イカロス「断れないの……私、魔王の手先だから……」

エミリー「ねぇ……」

イカロス「もう、いい……でしょ……。さよなら……」

そう言うとイカロスは走っていってしまった。

エミリー「あっ……」

エミリー(こんなに断るだなんて……)

エミリー(あれ、何か落としている。これって……!)

エミリー(十字……にしてはおかしい形!なんだか回りそうな形……)

エミリー(これが原因なのかも……)


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翌日。午前10時。2限目終了。


イカロス「……」

イカロスはなんだか落ち着きがない。

エミリー「イカロスちゃん。昨日これ、はい」

イカロス「……ありがとう。これ、お守りなんだ。何でも「総統の証」なんだって。」

エミリー「じゃあ余計に持ってないとね!後、これ魔王のとは関係ないみたいだよ。」

イカロス「そう……なん、だ。これ見られた時……私は……」

エミリー「そうなんだ……」

イカロス「……うん……だ、だか、らぁ……」

イカロス「うぇぇん……え、エミリーちゃあん……私……辛かったよぉ……」

イカロス「わ"だじ……えっく……魔王の手先じゃないのにぃ……」

イカロス「でも……断れなくてぇ……お金も……おもちゃも……うわぁぁん!」

教室に響く泣く声。それは心からの叫びの用にも聞こえた。

エミリー「うん……!うん……!」

エミリー「お、お金も!?」


「「「……」」」


エミリー「皆……何で黙ってたの……?どうして……無視、したの?」

アレク「しょうがねーだろ!あいつは1年前からそうしてんだ!こいつに関わった奴らは追い込まれて学校からいなくなったんだぜ!?避けるのはしょーがないって言うか……その……」

「私の友達もいなくなったのよ!あいつのせいで!」

エミリー「だからって……!」

アマーリア「……しょうがないですわ……でも疑いは晴れました。これからはイカロスさんを無視しない様にしましょう。」

ビス「これじゃあ気が晴れないよ……!仕返ししないかい?」

アレク「そうだな!おかげでハーケンとも別れる羽目になったしよー……」

「いいねー!」

「あの子、私のアリエットちゃんも殺しかけたのよ。いい機会だわ。やっつけましょう!」

エミリー「ぼ、暴力はだめだよ!何も解決しないし!」

イカロス「皆……でも、これは私の、問題だから。迷惑はかけたくない……」

エミリー「じゃあ私も付いてくね。」

アマーリア「さあお昼が楽しみですわぁ~おーほっほっほ!」

アレク「アマーリアが悪い奴に見えるぜ……」


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正午。教室。


「イカロスぅ~あーそぼうぜぇ~」

エミリー「待って。私も混ぜてくれない?」

「いいけどよ、勇者サマ?邪魔だけはするなよ?」

エミリー「大丈夫、邪魔だけはしないから。」

イカロス「……」


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正午少し過ぎ。裏庭。


「来ましたよ。それと例の勇者です。」

居たのは明らかに上級生。それも数人。

「おう、ご苦労。勇者がいるのか……なら!」

「殺させるか。」

「良いんじゃね?おい、そいつ殺せよ。勇者サマ?勇者はみんなを助けるんだろ?」

エミリー「無理……です……私には……できません……」

イカロス「いいよ。私を殺して……エミリーちゃん……」

「だってさ。さっさと殺せよ。こいつは魔王の手先なんだからよぉ。」

エミリー「イカロスちゃんは……魔王の手先じゃない、です……」

イカロスはお守りを見せる。

エミリー「形は似ているけど……違います……だから……」


「いいからやれってんだよ!クソチビ!」

この時ほど。この時ほど怒りを覚えたことは無い。

エミリーは、懐から短剣を取り出し、上級生に近づいた。

「お?なんだ?俺にやらせる気か?こりゃどうも---」

そして、右肩に思い切り刺した。

「い、痛てぇーーーーーーーーーーーーー!ああああああああ!」

「こ、こいつ!」

「やっやっちまえ!このキチガイ勇者を始末するんだッ!」

エミリー「……人殺しに言われたくないよッ!」

「おい!こいつを止めろ!いいから!」

イカロス「エミリーちゃん!もうやめてッ!」

気が付いた時には、剣と手には血が付き、血だまりが少しだけ出来ていた。

エミリー「ぅ……うわぁぁぁぁぁぁ!」

エミリー「あ、ああああ……」

初めて、人を傷つけた。しかも命を奪う行為をした。

エミリー「イカロス、エック、ちゃあん……私……私ぃ……」

イカロス「うん、うん……大丈夫だよ。エミリーちゃん……」

イカロス「だから、先生に、言おう?」

エミリー「……うん。」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
放課後。職員室。


ナジェンダ「そう、何ですか。困りましたね……」

ナジェンダ「隣のクラスの証言では同じことをしていたとか……」

エミリー「……」

ナジェンダ「でも、エミリーさん。感情をコントロールすることも大切です。理性は時に本能をむき出しにさせることがありますからね。」

ナジェンダ「それと……この短剣は没収します。いいですね?」

エミリー「……はい。」

ナジェンダ「それとイカロスさん……すみませんでした。気づいてあげることが出来なくて……」

ナジェンダ「隠したいのは山々なんですけど……正直な話、この件だけは私としてどうしても許せないですから……」

ナジェンダ「上に掛け合ってみます。エミリーさんはしばらく謹慎です。多分ですけど。ではこの話は終わり。」

ナジェンダ「証言してもらう時があるかもしれませんけど……よろしくお願いしますね、ハートさん。イカロスさん。」

イカロス「……はい!」

エミリー「はい。では……失礼、します。」


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午後9時。宿屋。


エミリー(あの時の私はどうしてそんなことしたんだろう……?)

エミリー(授業の内容も入らなかったし……)

エミリー(……忘れよう。このことは。その方がいい、よね……?)

今回はここまで。

幸せな話であってほしい

---我々の生き方は昔から変わらなぬ。

己のために他者の血を流し流させ、殺され殺す。

これが長く続くと---戦争と呼ばれる物になる。

平和になったとしても何処かで起こるものなのだ。

今生きている我々は、死体で飢えを満たし、渇きを血で潤す人の形をした何かなのである。

翌日。午前11時。図書館。


エミリー(……頭に入らないなぁ)

エミリーは今「世界の歴史1」と書かれた本を読んでいた。

エミリー(魔王が現れたのは今から1000年前……魔物と呼ばれるものは………多くが金属で出来ている……)

エミリー(はぁ……)

エミリー(分かっててもやっちゃう事って有るんだよね……)

エミリー「悪くない……訳無いか……」

エミリー(そう言えばリッパーさんが言われてたたっけ、君は人を殺せないって)

エミリー(私はそれを傷つけることが出来ないって事じゃなかったんだ……)

エミリー(なら謝るのが良いよね!うん!)

エミリー(今日はここまでにしておこうかな)

エミリー(……ん?何だこれ?「言語辞典?」)

不思議と読んでみたい気持ちがあった。そして手に取り、読む。

エミリー(「世界には多くの言葉があります。主に話されているのは栄語、中心語、大和語です。」……)

エミリー(「もし話せるようになればその国の人と仲良くなれるかもしれませんね。」……外の世界……)

エミリー(……広い……私の国より、行ったところよりずっとずっと大きい!)

エミリー(学校でも学べるのかな?今度聞いてみようと)

エミリー(これ、借りよう。じっくり読んでみたいし)


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午後2時。中央通。


エミリー(あちこち賑わってるねー)

エミリー(何買えばいいかな?お花以外?うーん……)

エミリー(鉛筆がいいのかな?それともペン?)

エミリー(本もいいかも!でも本って買える物なのかな……?)

エミリー(えーと……ほん、屋さん……?ってことは本が買えるってことなんだ!)


「魔王はいない!今こそ現世から解き放たれる時!」


エミリー(この人何言っているのだろう?魔王がいるから人が死んでいるのに……!)



今回はここまで

>>130
少なくとも今のエミリーは好きな事が出来て幸せだと思いますよ。

少しだけ書くのです


「それをお導きになるのは天守様だけなのです!」

「天守様は魔王のいない現世をお創りになられた!そこに行けば我々は怯えずに暮らせます!さあ、さあ!」


エミリー(嘘臭いなぁ……けど人だかりが出来ている)

エミリー(魔王の居ない世界なんて想像できないよ……)

ビス「ハート、ここで何をしているんだい?」

エミリー「ビスちゃん。うん、お買い物だよ。お詫びに何かあげようかなーって思って。」

ビス「気持ちは物だけじゃないと僕は思う。それにさ、あいつらに謝る事ないよ。」

エミリー「そうなのかな?」

ビス「ハートが後悔していることは分かるよ。それを理由に集られるかもしれない。僕は君がそんな目に合うなんて見たくないよ……」

ビス「僕も来一緒に来るからさ。」

エミリー「駄目だよ!ビスちゃんは関係ないじゃん!」

ビス「そうだね。ごめん……。良かったら僕と買い物しない?」

エミリー「え?いいの!?」

ビス「歓迎さ。君ならね。」

エミリー「私本屋さんに行きたい!それにお花屋さんも!」

ビス「カフェでご飯食べるのもいいかもね。その後は公園で遊ぼう。学校の近くにあるんだ。」

エミリー「2人だけで?」

ビス「アマーリアとアレクも誘ってだよ。イカロスちゃんも……誘おうかな。多い方が楽しいしね。」

エミリー「うん!遊ぼう!の前に買い物だね。何買おうかな~?」

ビス「はは。君がなんとなく男子の間で人気がある理由が分かった気がするよ。」

エミリー「?」


続きは夜書きます

再開します

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午後9時半。宿屋。


エミリー(今日は楽しかったなぁ。鬼ごっこしたりかくれんぼしたり……)

エミリー(明日は何しようかな?)

エミリー(……お腹空いてきた……少しだけお菓子買ってこようっと)


エミリー(好きな本も買えたし、満足!)

エミリー(明日は学校だし、毎日楽しいし……幸せ!)


「……であり……である。」

「……かし……では……ろ……ではないか!」

「……は……からちょ……したし……はいつ……かだ。」

「この……だと……しゃが……れない!」

「「「そうだ!そうだ!」」」

「て……様のた……せ……もわ……している!」

「……守……は……うどうな……いを……しゃっ……るからな。」


エミリー(?てん……様?どこかで聞いた気がするけど……)

エミリー(今はお菓子を買わないと!)

エミリー(何がいいかな?このクッキーにしようっと)

エミリー「すみません。これ下さい。」

「2フランになります。……お釣りは3フランです。ありがとうございました。」

エミリー(お菓子食べて……寝ようかな。あ!その前に歯を磨かないと!)

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
2日後。学校。


「魔王軍がこの辺を包囲しているらしいよー」

「戒厳令敷いてるってパパが言ってた。」


アマーリア「はぁ……最悪ですわぁ。」

エミリー「どうして?」

アマーリア「戒厳令が出たってことは、外に気軽に出ることが出来ませんもの……」

ビス「そうだね。しかもしかじかクーデターが起こるらしい。」

アレク「クーデター?新しいおもちゃ?」

ビス「僕も正直分んないよ。でも最近ピリピリしてないかい?特にこの辺なんかはさ。」

イカロス「わ、私もそう、思う……かな。お父さん、怖い顔して帰ってくるし……」

エミリー「怖いなぁ……」

「大丈夫だよ!僕チンが守るから!」

「ワイにかかればクーデターなんか一ころやで!」

エミリー「あ、ありがとう。でも私に任せて欲しい……かな?」

「天使がおるで……」

アマーリア「はいはい。さっさと戻る!エミリーが困っているでしょうに。」

アレク「そーだそーだ!」

「アレクとアマーリアって仲良いよなー」

「いや、ビスも中々……」

「イカロスちゃんを見てると何故かいじめたくなる衝動が出て来る……」

「それは少しおかしいと思うわよ……」

ナジェンダ「はいはーい!皆さん授業が始まりますよ!席について!」

ナジェンダ「さて、最近戒厳令が敷かれましたね。これに伴い授業は半分です。ですが!早く帰れるからと言って……寄り道しない様に!」

ナジェンダ「この辺に革命軍と呼ばれる人たちの基地があるらしいですから……」

エミリー(革命軍?今は魔王の事で手一杯なのに……どうして……)


今回はここまで。

エミリー「ねぇ、アマーリア。革命軍の目的って知ってる?」

アマーリア「確か……労働者の待遇改善だったかしら?」

アレク「うちの父ちゃんも大変そうだもんなー。」

エミリー(大変なのはわかるけどそこまでなのかなぁ……?)

ナジェンダ「さ、授業始めますよー!」


>>>>>>>>
正午。食堂。


イカロス「か、革命失敗した、ら死んじゃう……パパが……」


ビス「落ち着きなよ。」

今回はここまで……まさか飲み会がここまで長引くとは……(´・ω・`)

エミリー「革命……」

アレク「カッコいい響だぜ!」

アマーリア「……こほん!いいですか、アレク。革命は戦争と同じですよ。歴史で習ったでしょう。」

ビス「アレクは体育以外はだいたい寝てるからね……。エミリーに嫌われるよ?」

アレク「なっ!ちげーし!」

エミリー「そんなこと……ないよ?」

アマーリア「将来困りそうですわね、ハートさん……いえ、エミリー。」

イカロス「私も……そ、そう思うよ。」

アレク「エミリーも困ってるし、さっさと飯食って遊そぼーぜ!」

ビス「そうだね。けど僕はパスだ。」

アマーリア「私も。」

イカロス「わ、私も……です……」

エミリー「私も!ここでお茶したい!」

アレク「ちぇ。なら他の奴らと遊んでくるぜ!」


ビス「さて……食べながらでいいから聞いて欲しい。」

ビス「家が仕入れた話なんだけど、魔王軍はまたここに来る可能性が高いらしい。」

アマーリア「して根拠は?」

ビス「さあ。たまたま聞いちゃっただけだから。詳しいことまでは分からないよ。」

イカロス「その話……本当、だよ。お父さん、武器関係の……し、仕事してるから……最近色んな物か、買って貰える……」

アマーリア「イカロスさん、あなたって……」

イカロス「ヘックラーゴッホって……か、会社だよ。」

ビス「武器ギルド……最近だと槍鉄砲と炸裂玉を作ってるんだよね。」

エミリー「槍鉄砲?炸裂玉?」

イカロス「や、槍鉄砲は……じゅ、銃身に細いものを着けた……だけの武器だ、よ。弾が無くな、なっても槍で戦える……よ。」

アマーリア「炸裂玉は昔の本を見よう見まねで作ったもので、投げると爆発するのですわ。」

エミリー「そ、そんなのあるんだ……」

アマーリア「ところでビス、エミリー、イカロス……いえ、アリアさん。この後はお暇かしら?」

エミリー「暇だよ。どこか行くの?」

アマーリア「ええ。少し面白い物ですわ!」

ビス「僕も付いていくよ。面白そうだしさ。」

イカロス「わ、私も……行きます!」

アマーリア「なら行きましょう。おーほっほっほ!」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後2時。アマーリア邸。


「ようこそ、お出でなさいました。」

アマーリア「例の物を。」

「はっ。」

ビス「さすがお嬢様だね……色々違うよ。」

エミリー「貴族だしね!」

アマーリア「貴族だからと言っても今は商売していますことよ?」

エミリー「へー。どんなの?」

アマーリア「こうすい……?でしたかしら?」

「左様でございます。」

アマーリア「香水の元となるもの……すなわちバラを育て、香水にしているのです!」

エミリー「香水って花から作られるんだー。」

ビス「それも大量にね。」

エミリー「そんなお仕事今すぐ辞めてよ!お花が無くなるよ!」

アマーリア「そこは安心を、エミリー。根こそぎという訳ではないですもの。」

イカロス「こうすいって……いい香りだ、だよね……」

アマーリア「ええ。それはとっても。」


続きは夜に。

再開


エミリー「アマーリアのお父さんは凄いんだねー」

アマーリア「べ、別に大したことないですわ!お父様ならこのくらいは普通に出来てよ!」

ビス「おっと。悪いけど僕は先に帰らせてもらうよ。今日は武道の練習があるからね。」

イカロス「な、なら私も……帰ろう、かな。」

エミリー「私も。最近危ないしね。」

アマーリア「そうですわね。ではせめて皆さんにこれを。」

そう言って渡されたのは小さな箱。

アマーリア「中身は私手製のマカロンですわ。家でたまに作りますのよ、おーほっほっほ!」

エミリー(そう言えば私……料理したことないや……)

エミリー「またね!アマーリア!」

アマーリア「ええ。ごきげんよう、メアリー、ビス、エリカ。」


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午後9時半過ぎ。宿屋。


エミリー(革命、か……。危ないなぁ……)

エミリー(帰りにも何か大きな声で言ってたし……)

エミリー(……)

午前1時少し前。とある倉庫にて。


「我々は明日の正午……打倒政府を掲げ攻撃をする!」

あちらこちらに歓声が嫌と言うほど、響く。

「さあ共に変えようではないか!我々の生きる目的を奪い……のうのうと生きる役人どもをッ!」


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午前4時。軍部第二駐屯地内。


「会いたかったですよ。まさかあなたに会えるとは。」

若者「あー……そんな固い挨拶はよしてくれ。例え君が部下でも友じゃないか。」

「そうですか。じゃあエーリヒ。」

エーリヒ「なんだ?ゲルマン。ってさっきの会えるとはの下りはいらないと思うぞ。」

ゲルマン「えー……。その方が伝説って感じがするよ?」

「報告!魔王軍、こちらに向けて進軍中!」

ゲルマン「そうか。ご苦労。」

「はっ!失礼いたします!」

エーリヒ「最近じゃあ革命とかやる予定らしいぜ……してられねぇよ……」

ゲルマン「そこは俺に任せてほしい。いいだろ?」

エーリヒ「そういやお前の娘は元気か?」

ゲルマン「相変わらず。いや、少しだけ色気づいてきたかな。」

エーリヒ「じゃあ頑張れよ、ゲルマン・オイゲン中尉。」

ゲルマン「そちらこそ。エーリヒ・ガリル・ハルツァー少将。」


今回はここまで。

簡単な人物紹介#6


ゲルマン・オイゲン・・・男性。29歳。軍人。階級は中尉。銃の時代でも、剣と槍で戦う人物。剣裁きは弾丸すら斬るらしい。ビスマルクの父。

エーリヒ・ガリル・ハルツァー・・・男性。30歳。軍人。階級は少将。銃や大砲を配備、さらに装甲馬車を開発するなどの功績から少将に上り詰めた。オイゲンもかなりのエリートである。


解説


革命・・・どうやら労働者たちが政府に待遇改善をして貰えないために武器を用いて起こすようだ。少しだけ宗教が絡んでいる様にも見えるが、成功するだろうか?

---世界はどこまでも広がると言うが、果たして本当だろうか。

現実の世界の場合であれば数値化すれば終わりだ。

人の、特に自分自身の心情を---世界というのかもしれない。

しかし、どちらにも共通点はある。どちらも容易く崩壊すると言う事だ。

午前10時。グラウンド。


エミリーたちは体育の時間で持久走をしていた。

エミリー「はっ……はっ……」

イカロス「はぁ……はぁ……」

ビス「ぜぇ……はぁ……」

アマーリア「ビス!デスクワークのし過ぎで体が鈍りましたの?同じエミリーですら付いてこれてますのに!」

ビス「うっ……さい!……ぼ、僕だってやっている方なんだ……それに着けてるモノも違うしね!」

アマーリア「何ですってぇー!……けほっ!」

エミリー「はっ……はっ……」

エミリー(5週も走るなんて聞いてないよぉ……)

「残り3周ー!」

エミリー(ひぇぇ!)




ビス「……っはぁ……はぁっ……疲れたー……けほっこほっ。」

エミリー「だ、大丈夫……?」

イカロス「ぜ、喘息持ち……?」

アマーリア「ただの息切れです。しばらくすれば戻るでしょう。」

イカロス「え、エミリーは……結構、た、体力あるね……」

アマーリア「確かにそうですわね。何かしていたのかしら?」

エミリー「家が花屋なんだー」

アマーリア「そうでしたの!……あの時はごめんなさい……」

エミリー「アマーリアが気にすることじゃないよ!それに、香水私も見てみたいなー!」

イカロス「良い香り……す、する、よ。」

アマーリア「良い臭いがするのは本当ですわよ~」


続きは夜に

再開


アマーリア「花屋なのに体力があるとは……謎ですわね……」

エミリー「たまに配達してたしねー。それで付いたのかも!」

ビス「すぅ……はぁ……そうだったのか。僕も走り込みすればいいのかな?」

イカロス「そ、それしか無いと……思います、よ。」

アマーリア「まあいいですわ。後授業も1つだけですし。さっさと終わらせましょう。」


>>>>>>>>>>>>>>>>
正午。帰り道。


通りは馬車が忙しく移動していた。

イカロス「……それでね、お父さんが作った……ぶ、武器が皆から不評を……う、受けたの……」

ビス「あはは!面白いね。アリアのお父さんは!」

エミリー「今日はやけに馬車が多いねぇ。」

アマーリア「……何だかおかしい感じがしますわ……」

エミリー「そうかな?いつも通りだと思うけど。」

アマーリア「いえ、少し音が聞こえたものですから。」


……ォン


エミリー「何か聞こえたけど、今日は何かのお祭りじゃない……よね?」

アマーリア「お祭りはもっと先ですわ。まさか……魔王軍が!?」

音と同時にいくつのも馬車が止まる。

「ビス!そこに居たのか!早く乗りなさい。」

ビス「?わ、分かったよ。父さん。」

「お友達も……さあ、早く!」

アマーリア「分かりましたわ。」

馬車内。


「すまないね。っと、紹介が遅れた。私はゲルマン・オイゲン。娘がいつも世話になっているよ。」

アマーリア「そうでしたの。それでオイゲンさん、今何が起こっていますの?」

オイゲン「そうだね。革命軍は聞いたことあるだろう?そいつらがい一斉に武装蜂起したんだ。」

エミリー「武装……蜂起……」

イカロス「こんな日に……お父さん……うぇぐ……」

窓を覗くと、角材や剣、銃や弓で武装した人々が戦っている。

ビス「それでまさか……」

オイゲン「ああ。今から革命軍の中心地近くへ向かうつもりだ。さて、付いたぞ。ビス。皆さんをしばらくここに居させてあげなさい。いいね?」

ビス「分かったよ、父さん。入ってきて。」

アマーリア「お、お邪魔しますわ。」

エミリー(今は争っている場合じゃないのに……!)

「トリが来たぞー!」

そこに運悪く、魔王軍が、やってきた。


今回はここまで。

午後2時。政府省庁前。革命軍視点。


「トリが来るなんて聞いてないぞ!」

「一旦ここは引こう!」

「今しかチャンスは無いんだッ!ここで終わってたまるかよ!」

「進めぇ!我々の権利の為に!」

軍と交戦中、貧弱な武装ながらも奮戦をしている。

しかし、軍の方が今は優位に立っている。

「一歩も近づけない!誰か盾を!」

血を流し、手足が飛び、体に大穴が空きながらも進んでいく。

「全ての労働者にパンをッ!自由をッ!」

午後2時。政府省庁前。軍視点。


「オイゲン殿はまだ戻られないのか!」

「もう少しで来る!持ちこたえるんだ!」

いきなり現れた革命軍に軍はたじろいでいた。

「あいつらヤバすぎるッ!」

「援軍が来るまでの辛抱だ……」

「しかも魔王軍の迎撃もしないといけねーし……クソッタレッ!」

あかん……寝てた……少し書きますん


午後2時過ぎ。ビス邸。


ビス「しばらくだけど僕の家にいてほしいんだ……。その……」

イカロス「わ、私は気にしてない……よ。」

アマーリア「そうですわねぇ。しいて言うなればエリカのその話し方かしら?」

イカロス「こ、これは……その……も、元々なの……」

アマーリア「別に怯えなくてもよろしくてよ?何もしませんし。」

イカロス「じ、じゃあ普通に話す……ね。」

エミリー(直ってない……)


今回はここまで

ビス「……魔王の目的は何なんだろう?圧倒的な兵力に魔力……まるでずっと先から来たような感じだ……」

アマーリア「それは世界征服でしょう。そうに違いないですわ。」

イカロス「私……トリ……の残骸持ってるよ……?」

エミリー「ふぇ!?」

そう言うと、鞄から変な形をしたものを取り出した。

イカロス「これ……だよ。」

アマーリア「……これは?」

イカロス「た、多分何かの……パーツ?かなぁ……」

ビス「銃のパーツとは、違うね。丸い何かに数字が書いてあるよ。」

イカロス「真ん中に……針が……ある、んだよ。お父さんが……くれたんだぁ……えへへ。」

エミリー「時計?じゃないよね……?」

ビス「だとすればおかしいけどね。何なのだろう?」

エミリー「でもこんなのがトリに有ったんだよねー、ますます分んないよ……」

イカロス「これ……上に行くとね……う、動くんだぁ。」

ビス「羅針盤でもないし……」

アマーリア「……先ほどから地響きが凄いですわね……」

イカロス「そ、そうだね……無事かなぁ……?」

ビス「父さんが魔王軍と革命軍をやっつけてくれるさ!なんて立って僕のお父さんだからね!」

ビス「厳しいけど優しいし……それに希望の学校行かせてくれたし……」

エミリー「外に居るの……ここの軍かなぁ?それにしては凄い恰好……!」

ビス「違うよ……。あんな装備は無いよ……十字の紋章……。魔王軍の兵士だッ!しかも歩兵!」

イカロス「変な銃だね……し、しかも下に尖ったの付いてるし……」

エミリー「魔王……!」

アマーリア「そう言えば、エミリーは勇者……でしたわね。何か魔法使えませんの?」

ビス「魔法なんかある訳ないだろ……君は幻覚や幻聴を魔法と言うのかい?」

エミリー「そ、それが……短剣、先生に没収されたの……」

ビス「おいおい……こんな状況の中、学校に行かないといけないのかい!?こんなの物語でしか聞いたこと無いよッ」

イカロス「ここからだと……遠いと、お、思うよ?」

ビス「音が止んだね。外に出るなら今だよ!」

エミリー「私一人で出るよ。皆はここに居て待ってて!」

イカロス「でも……」

アマーリア「エミリーの身が心配ですし……一緒に行ってもよろしくて?」

エミリー「危ないよッ!私一人でいいからッ!ここに居てよッ!」

ビス「わ、分かったよ……死なないようにね。」

エミリー「うん!」


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午後4時手前。ビス邸前道路。


そこに在ったのは死体。死体。死体。噴水に飛び込んで冷やそうと思ったのだろうか、底の方に沈んでいる。

それ以外にも、穴が開いたものや何かの肉片が散らばっている。

エミリー(急がないと……)

しばらく進むと、学校へ向かう通りへと出た。

カツカツと音がする。

エミリー(丸い頭に、変な服に十字が……!魔王、軍……)

魔王軍は無差別に殺したのだろう。男も女も子供も老人も。

しかも死体を集めている。

エミリー(何を、するの……?)

それらを集め、山になる。別の兵装をした兵士が筒を向けた。

そして、そこから火を吐き出した。

エミリー(……燃えてる……死体が……)

それだけではない。あらゆる建物を燃やし始めたのだ。

エミリー(行かないと……!)

見つからないよう息を殺して移動する。

パキリ、と音がした。

次の瞬間、魔王軍兵士が長い筒を構え、撃った。

エミリー(か、かすめた……)

エミリー(怖い……ここに居たくない……死ぬのは、嫌……)

エミリー(でも私は……勇者だから……)

エミリー(行かない、と。今度は守るために……ッ!)


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午後4時半過ぎ。学校前。


エミリー(校門が閉まっている……)

エミリー(でも取りに行かないと!)

エミリーは大きな校門を、登り、降りる。そして、校舎へ向かう。

エミリー(校舎が少しだけ壊れている……。鍵が開いてる!これなら職員室へ行けるかも!)


職員室。


エミリー(どこに有るんだろ……?)

あちこちを探す。すると、ナジェンダの引出しから短剣を見つけた。

エミリー(これさえあれば大丈夫!よーし、頑張るぞー!)

続きは夜に。これ見てる人居るんですかねぇ……?

再開します。

それを自分の懐へ入れ、ビスの家へと向かう。

魔王軍はいなくなっていた。しかし、町は燃えていた。

エミリー(また……だ……)

エミリー(皆のところへ行かなくちゃ……)


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午後5時。ビス邸。


エミリー(何とか戻ってこれたよー。ふぅ……)

エミリー「戻ったよー。ここ開けてー!」

使いの者が重い鉄製の門を開ける。

エミリー「ありがと!」


ビス「エミリー!無事だったんだね!」

アマーリア「まったく心配させるなんて……少しは人の事考えなさい!」

イカロス「よ"、よ"がっだよ"ぉ~」

エミリー「ご、ごめんね……でもほら!ちゃんと持ってこれたから!安心してよ!」

アマーリア「それで……外は……どう、なりましたの……?」

エミリー「……外は地獄だよ……」

ビス「そう、なんだ……魔王軍は……」

エミリー「多分、いないよ。」

ビス「……僕お父さん探してくる……」

イカロス「し、心配……だね……」

エミリー「私見てくる!」

アマーリア「お待ちなさい!全く……」


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午後5時半過ぎ。政府省庁前。


ビス「父さん!」

オイゲン「あ……ああ……。無事さ。俺は、な。」

エミリー(無事だった!良かったぁ~。でも……)

呻いているのは周りもだ。

エミリー(もしかしたら、ここで戦ったのかも)

大きな穴がいくつか。建物にもいくつかある。

「だ、誰か……」

「病院へ……医者へ……」

エミリー(ど、どうしよう……)

ビス「エミリー。担架をつくるよ。そうした方が早い。軍のお医者さんはもう少しでくるはずさ。その間に作ろう!」

エミリー「……うん!」


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午後7時過ぎ。


エミリー「こ、これで最後……」

ビス「ぜぇ……はぁ……」

「おい!子供が倒れてるぞ!」

「これは……担架!?この子達がしてくれたのか……」

「さっさと馬車に詰めて病院へ向かうぞ!」

エミリー(……初めて、勇者らしいことをした気がする……よ……)

今回はここまで。勢いが落ちてきたなぁ

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午前2時。病院内。


エミリー(ん……)

エミリー(柔らかい地面……明かりがある……)

エミリー「ここは……?」

エミリー「それに恰好……」

ビス「起きたみたいだね、エミリー。ここは病院だよ。」

エミリー「病院……あの後倒れたんだ、私……」

ビス「みたいだ。今は夜だし僕はもう少し寝るよ。」

エミリー「う、うん。」

エミリー(私も、少し寝ようかな)


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午前7時。


「おはよう。エミリーさん。」

エミリー「おはようございます!あの私……」

「うん、もう帰っていいよ。ついでにオイゲンさんも。ハートさん、治療費は君の王からお金はいただいたからね。」

エミリー「わかりました!」

ビス「僕も、いいのですか?」

「ああ。さ、早く行った行った!」

エミリー(外はどうなったんだろ……?)

ビス「行こう、エミリー。」

エミリー「勿論!」

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午前7時半。大通り。


エミリー「壊れている……」

ビス「……これじゃあ学校は当分ないかもね……」

エミリー「えぇ!?そ、そんなぁ……」

ビス「エミリーはこれからどうするんだい?」

エミリー「どうしよう……せっかくアンナさんが入れてくれたのに……」

エミリー「ここから近い国でも行くことにするよ。」

ビス「そう……なんだ……。ホントは行かないで欲しいんだけどさ、勇者は魔王を倒さないといけないしね!」

アマーリア「ここに居ましたの!?あら、エミリーもう行きますの?」

イカロス「こ、ここに居てよぉ……」

ビス「勇者だから、ね。ここに居ても魔王は来ないし、見つからない。だから、行かせてやってくれ……」

エミリー「私だって!離れたくない!けど……けどぉ……」

ナジェンダ「皆さん無事だったんですね!でも……ハートさん……」

エミリー「勇者の役割は、魔王を探して倒すこと……です。なので、ここで……お別れ、です……」

ナジェンダ「今すぐじゃなくてもいいんじゃないかしら?」

エミリー「え……?でも私……」

ナジェンダ「校長からの伝言です。「エミリー・ハート殿。君がここに居るか居ないかは自由です。私は、あなたの意志を尊重します。」と……」

エミリー「私は……」

続きは夜に。

そういえば他のスレでも見たぞ、そんな風に書いてた奴

再開します。

>>178
そうなんです?

エミリー「……私は、ここに……居ません。学校行って、勉強して、友達と遊びたい……それが本音……です。けど、魔王を探して……倒さないと……勇者ですから……」

エミリー「でも、もし……勇者じゃなかったら……私……居たい……皆と……エリカやアマーリア、ビスマルクと居たいよッ!」

アマーリア「そうなの、ですか……」

ビス「でも、すぐに居なくなるって訳じゃないしさ……ここに居てもいいんじゃない、かな?」

エミリー「……居なく、ならない……?本当……?」

イカロス「う、うん!だから……居よう……エミリー……ちゃん!」

ナジェンダ「勇者の資格が無くなるのは、10年の経過、死亡か重犯罪を犯した時だけです。ですからエミリーさん、居てもいいのですよ。」

エミリー「……」

エミリー「それでも……勇者ですから。」

ビス「しばらくここで待っててくれないか?」

エミリー「……?いいけど?」

ビス「じゃあ行こうか、アリア、アマーリア。」

そう言うと、彼女たちは帰ってしまった。ナジェンダだけを残して。

ナジェンダ「……それでどこへ行くつもり?ここからならそうね……沈まない国に行くといいですよ。」

エミリー「沈まない国……」

ナジェンダ「そこは交易が盛んと聞きますし、何よりも海の向こうに行けるのかもやしれません。」

エミリー「そこに行ってみます。……今までありがとうございました!ナジェンダ先生!」

アマーリア「エーミーリーさぁーーーん!はぁはぁ……」

ビス「これ!僕たちの住所だよ!これさえあれば届くから……その、手紙書いて欲しいな!」

イカロス「後……これ……」

エミリー「これ……マリーゴールドとクローバー……ガーベラの押し花……」

アマーリア「私たちは……いつでも一緒ですわ!」

ビス「エミリーが居たから、良いことも悪いことも共有できたし!」

イカロス「わ、私を……救ってくれた……ありがとう、エミリー……」

エミリー「うん……!」

ナジェンダ「先生は帰ります。皆さんの事は他の人にも伝えておきますね。最後くらいちゃんとね!」

イカロス「せ、先生帰っちゃった……」

アマーリア「いいじゃないですか、そんなの……」

エミリー(あれ……目が……顔が……熱いよぉ……)

アマーリア「泣くんじゃありませんわ!さ、早くお行きなさい!」

ビス「無理しないで……今は……泣いた方がいいよ……エミリーぃ……」

イカロス「ぅえく……」

アマーリア「な、何で泣くのですの……私まで……」

大通りの中心で、少女たちの悲しみの声が響わたった。

何度も、何度も。


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2日後。郊外付近。


アマーリア「もう行きますの?」

エミリー「うん。私は勇者だし……それに皆とまた学校行くのが夢!」

ビス「それまでに体育で5を取らないとだね……あはは……」

イカロス「き、気を付けてね、エミリー。」

ビス「少なくとも忘れてさえいなければ僕達は友達だよ、エミリー。」

アマーリア「ビス!まったく……私は忘れませんわよ?ここまでインパクトあった人、初めてでしたもの!」

イカロス「私も、だよ!」

ビス「僕もさ。」

エミリー「手紙出すからね!」

アマーリア「ええ!」

イカロス「その時は……返して……よね。」

ビス「ああ!頼んだよ!」


少女はまたしても歩き続ける。今度は真の友情を手に、前へ進んで行く。

絶望しかないこの世界で希望は薄いけど、ちゃんとあるのだ。

そう思いながら次の国へと向かって行くのであった。

>>180で渡した花の花言葉

マリーゴールド・・・「友情」

クローバー(シロツメクサ)・・・「約束」

ガーベラ・・・「希望」「常に前進」

今回はここまで。

---欲は無限に湧くものだ。

性欲から顕示欲。果ては支配欲までも。

生きるための力になれど、身を滅ぼす死の毒ともなりうる。

我々は永久に欲からは逃れられぬのだ。

沈まぬ国。港。


「これどうよ?これ300セペタだ!300だぜ?お買い得だよ、兄ちゃん?」

「いーやッ、高いね!こいつにこれじゃあそんな価値見合わないぜッ」

「東洋からの……絢爛の国からの調度品だぞ!?」

「これは明らかにパチモンだッ!パチモン!こんなの取引できないねッ」

「……そうか……これじゃあまた征服資金が出来ねェや……」

「殺すかい?」

「ここじゃアンタほどキレさせたらやべーことぐれぇ知ってらァ……帰ってくれ!これで今回のはチャラ!それでいいな?」

「ああ。失礼するよ。」


海風に靡く、長い長い異国の布地で作られた薄いコートを羽織りながら男は去っていった。

今回はここまで。

午前11時過ぎ。沈まぬ国。


エミリー「わわ!」

エミリー(人と物が多いなぁ……)

エミリー(見たことないような物ばかり身につけてるよ……)

「さあさあ!今から始まる賭けは、戦士の国から来た軍鶏を使ったものだ!見るだけでもいいから寄っといで!」

「砂の国の砂を使った砂時計はいかがですかー?最良の砂を使ったので、時間は正確ですよー!」

「栄光の国からの特別品!なんと人魚の目だ!食べれば永遠の若さも夢じゃない!今なら3割引の9000セペタ!買うなら今!」

エミリー(色んなもの売ってるんだぁ!何か良いもの無いかな?)

お金はこの国を通るときに全て両替してもらったのだ。

「風の国からお届けする変わった花!チューリップはいかがー?色とりどりでお庭をさらに華やかに!今なら5個入り500セペタでーす!」

続きは夜に。

再開します。

エミリー(チューリップ……すごく綺麗……!)

エミリー(でもその前にお宿を探さないと!)


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午後1時半過ぎ。遺跡前。


「これがバジリカ・ファミリアよ!凄いわねー」

「作った目的は何だったのかしら?神を崇めるため?」

「解説によると、何百年もかけて作られた芸術品らしいわ。」

「はえー……」

エミリー(そうなんだー)

エミリー(……って!魔王の事聞かないと!ここでなら聞けそうだよね……?)

エミリー「あのー、すみません。少しお聞きたいことが---」


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午後5時過ぎ。ホテル。


エミリー(やっぱりかぁー。分かんないんだよね……魔王の事……)

エミリー「はぁ……」

エミリー(この国だからいいと思ったんだけどなぁ……)

コンコン、とノックされる。

エミリー「はぁーい。行きますー。」

エミリー(ご飯の時間だし、レストランに行こうっと!)


ホテル内レストラン。


エミリー(わあー!美味しそう!)

エミリー「もぐもぐ……酸っぱいけど美味しい!特別メニューだったっけ?」

好青年「そうだよ。お嬢さん。相席してもいいかい?」

エミリー「え、ええ。どうぞ。」

好青年「今、御嬢さんが食べているのは闘牛肉のトマト煮。特別な日にしか食べられない代物さッ!」

エミリー「そうなんですか!私凄い物食べてる!でもとうぎゅうって?」

好青年「牛同士を戦わせるのさ!マタドークと呼ばれる奴が、牛の前で布を振って牛をぶつけさせる賭け。」

好青年「この国じゃそう言う動物を使った賭けは多いんだ。」

エミリー「可哀そう……牛さんは大丈夫……なのかな……」

好青年「今食べてるその肉は……負けた牛の肉だぞ?」

エミリー「え?」

好青年「でもこれでまた御嬢さんは強くなった!気が良くなったって話さッ!」

エミリー「あの……」

好青年「すんませんー!これと同じの1つ。後ワイン!」

「かしこまりました。」

好青年「でも凄いよー。まさか今日闘牛が行われてただなんて……こりゃ取引中止してでも行くべきだったかも……」

エミリー「取引?貿易関係ですか?」

好青年「おおッ!良く知っているね!僕は交易商人なのさ!で、さっきこれを買った所!」

そう言って取り出すのはキノコの形をした大きな物。

好青年「これは流星螺子と呼ばれるもので極寒の国に落ちた……鉄の羽の付いた星から拾ったものだ!」

好青年「しかも形がそのままとか、すごいだろ?これ1つで100万セペタしたんだ!100万!」

エミリー「は、はぁ……」

エミリー(正直よく分んないや……どう見たって変な形をした物にしか見えないし……)

好青年「これはコレクターが欲しがる逸品だよ、逸品ッ。そろそろ来る頃かな?」

「お待たせしました。ワインと、闘牛肉のトマト煮でございます。」

好青年「おほー!美味そう!」

好青年「君、ここじゃ見かけないね?目的は何だい?売春かい?」

エミリー「違いますよ!実は魔王を探しているんです。」

好青年「魔王、ねぇ……ふぅん。魔王についてなら港に行くといい。」

好青年「カデスと言う港街がある。ここから馬車に揺られて30分だ。そこで聞き込みでも花売りでもするといいさ。」

エミリー「だからぁ、私は……勇者なんですッ!」

好青年「勇者、ねぇー……こんな女の子にか。無いな。」

エミリー「でも情報はありがとうございます。それでは。」

好青年「待ちな。詫びにこれでもやるよ。」

エミリー「これは?」

好青年「それは僕のいる店の案内図。もし本物なら明日の正午来なよ。」

エミリー「……はい。」


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午後9時過ぎ。ホテル。


エミリー(あの人、なんなのよ!人を売春婦呼ばわりして!まるでウツボカズラだわ!)

エミリー(そもそも動物同士を戦わせること自体おかしいし!)

エミリー(はぁ……これからどうしよう……)


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午前0時。港町倉庫。


好青年「やあ。遅かったじゃあないか。ベンハミン。」

ベンハミン「それを言うならお前もだよ、カスト。」

カスト「それで例のブツは?」

ベンハミン「これだろ?始まりの国の石碑。金もしっかり。」

カスト「ああ。じゃあ約束の。」

ベンハミン「おほー!これが流星螺子……これ使った金属加工品がヤバいんだよ!金は……毎度。」

カスト「じゃあ僕はこれで。」

ベンハミン「相変わらずダセーな、そのコート。どこのだ?絢爛の国からか?それとも極寒の国から?」

カスト「うるせぇッ!僕とアンタはビジネスパートナーだッ。そこを……忘れるなよ?」

ベンハミン「へーへー……」

簡単な人物紹介#7


カスト・・・本名カスト・デ・ラ・サクラダ。男性。23歳。若くして貿易商人になり、調度品から違法薬物まで売る人物。買う時は適正価格より低めで買いたたき、売れるものなら何でも高く売るがモットー。

ベンハミン・・・本名ベンハミン・カルデナーラ。男性。22歳。同業者。奴隷商人らしい。

今回はここまで。

書きますん

午前11時半。カフェ。


カスト「おーッ、来たか嬢ちゃん。本物の勇者……なんだな?」

エミリー「そうですけど?」

カスト「悪かったな。ここじゃあ貧富の差が激しくてよ、女は子供も大人も体売ってモンだからなぁー。」

カスト「特によそ者だと余計それがな。一番手っ取り早く稼げるんだ。」

エミリー「そうなんですか……。」

カスト「嫌な話か?女ってのはある意味有利だろ?肉体労働せずに、男にすり寄りゃ金がもらえるから羨ましいぜ……。」

エミリー「そんな人ばかりじゃ……」

カスト「無いってか?ははは!若さは武器だし、人の物ならよっぽどだ。友人いわく、生娘よりも人妻の方が高く売れるらしいんだ……。僕は生娘の方がいいけど。」

エミリー「そんなの聞きたくなかった……です……。」

カスト「そう言うな。嬢ちゃんを今から送ってくからよ。ダチと一緒にさ。」

強面「待ったか、カスト?」

カスト「待っちゃいない。こいつはベンハミンだ。」

ベンハミン「ベンハミン・カルデナーラだ。職は商人。よろしくな!」

エミリー「は、はぁ……。エミリー・ハートです。」

ベンハミン「こんなかわいい子乗っけて行くのか、カスト。で、どこで買った?いくらよ?」

カスト「金じゃあない。昨日こいつが勇者とか言うもんだからおちょくった。で、本物の勇者様だった訳。」

ベンハミン「んなバカな……」

エミリーは疑いを晴らすため、懐から黒い板切れを出す。

ベンハミン「……一瞬さ、こいつのと同じ偽造通行手形考えたんだけど無理だわ。こんな細かい文字と質感……作れないなー……。」

エミリー「ちょ!それ犯罪ですよ!」

カスト「こいつは密輸者だからな。しかも奴隷も売りさばいてるからすげえ儲かってるらしいぜ?」

エミリー「奴隷……」

ベンハミン「外に馬車あるから続きは中でしようぜ。」


>>>>>>>>>>>>>>>>
馬車内。


ベンハミン「奴隷の多くは俺たち……いや、沈まぬ国が征服した国なんだ。」

カスト「そこの王が、ワプスブルグ家なんだ。ここから見える大きな城がそうさ。」

エミリー(……!綺麗……!)

大きく、王都で見たものとは違う壮大さ。

白で統一され、城門には紋章が入っている。

カスト「裏じゃ大麻や煙草を育ててるらしいぜ。」

エミリー(違法薬物は煙草とコーヒー、それに大麻にアヘン……)

ベンハミン「最近じゃマジックキノコまで育ててるって話だ。これじゃ漬けることも出来やしない……。」

カスト「僕もだよ。遺跡の保護だとかで商売あがったりだぜッ!ッたく……。ここだ。ようやく着いたぜ。」

エミリー「ありがとうございます。それでは。」

ベンハミン「あ!ちょっと!名前!教えて?」

エミリー「さっき言いましたよ?」

ベンハミン「しまった!癖で聞き返えしちまった!」

カスト「はぁ……じゃあね、ハートさん。」

エミリー(漬けるとか何のことだろう……?)

エミリー(これが船かぁ……大きい……)

港はせわしなく人と物が行き交いをしている。

エミリー(ここでも聞き込みしてみないとね!)


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午後2時。


エミリー「駄目だぁー……」

エミリー(情報は無し……いつもの事だね!)

エミリー(……?船に人がどんどん降りてきてる!)

ゾロゾロと、手を縛られた少しくすんだ色や黒い色をした人々が降りてくる。

エミリー(それにしても元気ないなぁ……)

エミリー(目が合った!……助けて欲しいのかな?)

エミリー(だったら助けてって言えばいいのに……)

エミリー「今は魔王について聞かないと!まだ希望はあるはず!」

エミリー(その前に宿だね……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後9時半過ぎ。宿屋。


エミリー(誰も知らなかったよ……)

エミリー(でも十字じゃない魔王軍の兵士って居るんだ。もしかしたら味方になるかも!?)

エミリー(……ってそんなこと無いよねー……はぁ……)

エミリー(……寝ようっと……)

今回はここまで。

少し書きます


翌日。午前10時。大通り。


エミリー(どれ買おうか迷うねー……う~ん……)

今訪れている店は、ガラス細工の店だ。

色とりどりの綺麗な物が揃っている。

エミリー(このネックレスかペンダント……2つに1つ……)

エミリー「う~ん……決めた!」

選んだのはペンダントだ。

エミリー「これ下さい!」

「はいよ!1200セペタね。……ちょうど!」

エミリー(買っちゃった……でもいい買い物したかも!)

エミリー(早速着けてみよっと!)

生憎、鏡が無いため店にあったガラス窓で確認する。

エミリー(……いいね!)

エミリー(魚も見たこと無いものばっかだ!)

「らっしゃい!このマグロ……なんと今なら一万セペタ!2つなら一万8千セペタだよー!」

「買おうかしらね。これ下さいな。」

「まいど!」

エミリー(黒い色の人が沢山荷物持ってる。あ、さっきのも持たされてる……大丈夫かなぁ?)

エミリー(くすんだ色の人達も連れてる!荷物を積んでる……)

「出しなさい。」

そう言うと、馬車の戸が閉まり荷物を持っていた人達は荷台へ入りこんだ。

エミリー(一緒には乗らないんだ。不思議な人達)

続きは夜に。

正午。レストラン。


エミリー(ここは魚のが食べれるんだねー。どれにしようかな?)

エミリー(ぱえりあ?ってのが響からして美味しそう!これにしようっと)

エミリー「すみませんー。」

「はい、なんでしょう?」

エミリー「ぱえりあを1つ。」

「かしこまりました。」

エミリー(お店混んできたなぁ……ここって有名なお店なのかな?)


「でね、さっきねあそこの路地で倒れていた人が居てさー、目がイっちゃてるんだわ!」

「やべぇなー。キメ過ぎてイかれちまってるんだ。大抵は貧相な格好している奴か奴隷だけどな。」

「ははは!」


「この前買った奴隷が居ただろ?中々の上物で、聞いたら歳は28くらいなんだとよ!見た目13だぜ……。」

「それは良いなー。今度抱かせてくれよ、そいつ。」

「あー?嫌だよ?」

「てめーもう何十人も変えてるじゃねーか。いいだろ?1つくらい?な?」

「名器だから嫌だね!お前もしっかり稼いで綺麗な奴隷買うんだな!」

「っち!わーたよッ」


エミリー(嫌な感じの話……)


「クソッ!あそこであいつが勝ってりゃ、俺は芸術の国の飯が食てたんだ!」

「知るかよ。飲んで忘れな。」


エミリー(ぱえりあまだかなぁ……)

「お待たせいたしました。」

エミリー(おお!美味しそう!)

黄色いご飯の上には、牡蠣やエビが乗っている。

エミリー(食べよ!)


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午後1時。大通り。


エミリー(少し量が多かった……でも美味しかった!)

エミリー(うー……眠い……)

エミリー(ここじゃ魔王のこと聞けそうにないね……)

エミリー(あれ?珍しい。くすんだ色の人がいる)

エミリー「あの、いいですか?」

褐色「ハイ、なんですか?」

エミリー「魔王の事……について何か……」

褐色「し、シラナイ!」

エミリー「ああ!」

エミリー(逃げちゃった……言葉変だし……)

ベンハミン「エミリーちゃん!よっ!」

エミリー「あ、こんにちは。」

ベンハミン「さっきの人は話しちゃいけないぜ?ありゃ奴隷だ。」

エミリー「奴隷……?あの人が?」

ベンハミン「言葉がおかしかっただろ?見た目もだけどよ。」

ベンハミン「奴隷は奴隷。人の形をした「何か」だ。それだけ覚えておきな。」

エミリー「昨日……」

ベンハミン「ん?」

エミリー「昨日船から出てた人達がちょうどあの色の同じでした……。」

ベンハミン「ありゃ奴隷船だな。最近よく死ぬからなー。こっちはまあ儲けてるからかんけー無いけど!」

エミリー「それって人を売っているってことですか?」

ベンハミン「違うな。奴らは負けたんだ。負けたから畜生の扱いを受けている。俺もそのうちなるかもな。その前に死ぬけど!ははは!」

ベンハミン「っと、悪い。商談があるんだ、じゃーな!」

エミリー(奴隷も人……だったんだ……でもあんな扱いはあんまりだよ!)

エミリー(あの人を探してここから出してあげればいいんだ!そうしよう!)


>>>>>>>>>>>>>>
午後3時。公園内ベンチ。


エミリー(見つからないものだねー……)

エミリー(お水飲んで落ち着こ)

エミリー「っはー!」

お嬢様「隣、いいかしら?」

エミリー「ええ。」

お嬢様の隣には少し小柄な、くすんだ色をした女の子がいる。

お嬢様「うふふ。この子の名前はアーキスって言うの。」

アーキスト「……」

エミリー「あの、この子を元のところへ戻したら……」

お嬢様「駄目よ!この子はお父様がお誕生日にくれたもの!中々使える子よ。」

お嬢様「それに奴隷は無くてはならないものですわ。持って当たり前。有って当たり前。使えて当たり前。それが奴隷ですもの。」

エミリー「それでも……」

お嬢様「いいこと?拉致じゃないのですわ。これは正当なお金で買った。それだけです。」

エミリー(……同じ人、なのに……)

エミリー「お金で人は買えません!」

お嬢様「では労働者はどうなりますの?彼らだって買われてますわ。いえ、むしろこっちが買っているだけですわね。」

お嬢様「それと同じじゃなくて?」

エミリー「あう……。」

お嬢様「ふふ。あなた、お名前は?」

エミリー「エミリー……。」

お嬢様「上は?」

エミリー「……ハート。」

お嬢様「では私も。私はアルデルシア・ワプスブルグ。ではごきげんよう、エミリーさん。」

そう言い、去ってしまった。

今回はここまで。

簡単な人物紹介 #8


アルデルシア・ワプスブルグ・・・女性。16歳。ワプスブルグ家当主直系の娘。常に権力があることが当たり前だと思っている。

アーキス・・・女性。歳はエミリーと同じくらい。本名不明。奴隷で、約1000万セペタで売られていた物らしい。


解説


煙草・コーヒー・・・征服途中で見つけたもの。しかし中毒性が強いため、禁止となった。チョコレートも違法薬物リストに乗っている。

午後9時。宿屋。


エミリー(奴隷は人で、ここじゃ道具で持っていて当たり前で……)

エミリー(……少しお茶飲もうかな……)

エミリー(ヘンな匂い……でも嫌じゃない……)

エミリー(コリコリって音も……)

>>>>>>>>>>>>>>>>>
翌日。午前9時。大通り。


「昨日、コーヒー飲んでた人が居て捕まった しいわ。」

「コーヒーってあの目が覚めるあれよね?怖いわねぇ……」

エミリー(もしかして昨日の香りって……)

エミリー(いや、無いよ、ね……?)

エミリー(魔王も見つからないし次の所行こうかな)

アーキス「………」

エミリー(昨日の!)

エミリー「おーい!昨日の---」

アーキスは、何故かビクビクしながら逃げてしまった。

エミリー(追いかけないと!)


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午前11時。裏路地。


エミリー「み、見つけた……よ……はぁ…はぁ…」

アーキス「何の、用、ですか?」

エミリー「私だよ、エミリー!覚えてる?」

アーキス「そう、ですか。取り、来たの?」

エミリー「ち、違うよ!話聞きたくて……」

アーキス「信じ、られない、よ。この国の、人達、私達、虐める。怖い……です。」

エミリー「そうなの?」

アーキスは頷いた。

続きは夜に。

再開します

アーキス「そう、ですだよ。私の、国、いきなり、攻められた……。それで、連れて、いかれた、のだ。」

エミリー「そうなんだ……。ひどいね!許せない!」

アーキス「でも、でも……」

アルデルシア「あら、ここに居ましたの。エミリーさんもわざわざありがとう。」

エミリー「連れていかないで!」

アルデルシア「ふぅん……でも彼女はどうあがいても私の物ですわ。連れていきなさい。」

「はっ!」

アーキス「ydyd!hnst!」

アルデルシア「黙れッ!奴隷が口答えするなッ!」

アルデルシア「……失礼しましたわ。ではごきげんよう、エミリーさん。」

エミリー「待って!」

アルデルシア「何です?」

エミリー「彼女を離してくれませんか?」

アルデルシア「そう。でもダメですわ。奴隷が無くてはいけないでの。それに、今じゃアヘンや大麻で漬けられていることでしょう。戻したところで無駄ですわ。」

エミリー「漬けるって……」

アルデルシア「ふふ。沈まぬ国は我が家があるから沈まぬのですッ!永遠に繁栄し続ける国!いずれ絢爛の国も和の国も取り入れて見せますわ!蛮族は火薬や大砲なんて見たこと無いですもの。おーほっほっほ!」

エミリー「……ぅ」

アルデルシア「いいこと?この国においてワプスブルク家は最も力がありますの。それを……よぉーく覚えておきなさい。」

エミリー「……」

アルデルシア「郷に入ったら郷に従いなさい。出なさい。」

エミリー(……)

エミリー(悔しい……悔しいよ……!)

午後2時。港。


エミリー(奴隷船でも襲えば……)

エミリー(でも……)

「魔王軍の船が来たぞーッ!」

「総員、攻撃態勢に入れッ!」

エミリー(船……?)

彼女が見たのは、黒い色をした船。上に色々な箱が乗っている。何よりも---細い筒が多く乗っている。

「今回は小型の鉄船だけだ!しかも一隻!」

砲撃音があちこちに響く。しかし当たらない。魔王の船から、変な形をした筒を落とした。それは、高速でこちらに近づき---

船を沈めた。

「総員退避ーーーーッ!」

「何か近づいてきます!……小型、中型……」

「いや、違う……!大型接近!」

「奴隷船がありますがどういたしましょう?」

「放棄だ!死のうが関係ないであろう!」

それは船ゆっくりと近づき、船をなぎ倒し、巨体を現した。

エミリー(人が……死んでいく……)

十字の旗を靡かせ、巨大な筒を、町へと向けた。

エミリー「やめてーーーーーーーーーー!」

剣を取りだす。簡単に近づけた。

必死に振るも傷がつかない。

エミリー(まだまだ!)

激しい音が、聞こえた。

振り返ると町が、燃えていた。

船はゆっくりと音をたて、離れてゆく。

エミリー「う……うぅぅぅぅ……!あぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーッ!」

海を見る。赤く染まって、ワインのような色をしている。

エミリー(……魔王に心は無いのかしら……無いのかも、しれない……)

カスト「あーあ……死んでら。こいつらにどれだけ輸送費がかかったのか……。」

ベンハミン「だな……大損だッ!税はクソ高いし最悪だわ……なあ、どっかでしねーか?そうだ、美食の国辺りならいいんじゃね?」

カスト「ああ。潮時かもな。この国でのビジネスも。でも、取り立てに行かないと……。」

ベンハミン「兵士呼ぶんだろ?どうするさ、芸術の国から呼ぶか?それとも戦士の国?」

カスト「いや、使えるのが居るじゃないか。おい、そこに居るのは分かってるんだッ、エミリー!」

エミリー「……なんの用ですか。」

ベンハミン「ここは戦場になる。今から俺らは栄光の国と言う後ろ盾を持つワプスブルク家を潰す。」

エミリー「……いいんですか?」

カスト「金が貰えなけりゃ価値はない。俺らは商人。物売って金を稼ぐ。稼げなきゃ次行くまでさ。じゃあね、エミリー。」

エミリー「え、ええ……。」

カスト「さて、奴隷どもにはなんて言うかだ、そうだな。解放のためにとか言えば勝手にあいつら殺してくれるだろ。それで行こうか。」

ベンハミン「だな。」

エミリー「あの……」

ベンハミン「船は使えねーし、そうだな。しばらくそこの倉庫にでも隠れてろ。少なくとも水や食料はあるはずだぜ?」

カスト「そうだなー。じゃ、やるかね。」


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1週間後。大通り。レストラン。


「ワプスブルク家が無くなってから清々するねぇ。」

「税率15%だもん。殺す気だったんだろ、あれ。」


カスト「ははは!馬鹿ばっか!」

ベンハミン「だよなー!解放する訳ねーのにな!大麻に漬けて正解だったぜ!」

カスト「だよなー!さっさとここから出るぜ。相棒ッ!」

エミリー「……最低です。」

カスト「あー?……別に合理的だろ。甘い言葉に騙される方が悪い。それだけだわ。さ、行こうぜ。」

ベンハミン「ああ!じゃあな、エミリーちゃん!」

そう言うと、彼らは出て行った。

エミリー(……最悪)


強い憤りを感じながら、エミリーは次の国へと進んで行った。

今回はここまで。

少しだけ書くのです



---不謹慎で有るが、世の中は操れる。

物も、動物も、自然も、人も。

緻密かつ大胆、恐ろしくも優しい事こそ全てだと私は考える。

所詮我々は流れには逆らえぬと言う事だ。

続きは夜に。

再開しますことよ

沈まぬ国。郊外。


エミリー(ここに港の影響は無さそうだねー)

エミリー(でも、ここから近い所って……どこだろう?)

エミリー(人発見!)

エミリー「すみませんー!ここから近い所ってどこですか?」

「ああ、そうだねぇ。ここからだと…始まりの国かねぇ。」

エミリー「そうですか。ありがとうございます!」


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同刻。始まりの国。


「遺跡がまた荒らされてるわ……!」

「……お姉ちゃん!これじゃハンテノンを守れないよ!」

「分かってるわ。私達守り人が守らないとね!じゃないと名前が傷がつくわよ。」

「罠がダメなら迎撃しましょ。かつて世界を支配した国の末裔だから……。」

大きな筒の束を見つめ、決意をこめた表情をし、こう言う。

「先祖はあれを残してくれたからね!」

午前11時。始まりの国。遺跡前。


エミリー(白い……)

目の前には大きな、神殿が立っており、その中に大きな鉄の船が鎮座している。

エミリー(えーと……「この中にある鉄の船はノアの方舟と呼ばれているもので、未だに謎が多い船です。」……)

エミリー(沈まぬ国で見た鉄船みたいだけど……)

エミリー(他にも巡ってみようっと!)

エミリー(……ついでに魔王の手掛かりも探さないとね)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後4時。宿屋。


エミリー(宿を取るのにひと手間かかっちゃったなぁ……)

エミリー(ここでも知っている人いない……)

エミリー(……!この紋章……ワプスブルク家の……!)

エミリー(無くなったんだから捨てて欲しいよ!)

エミリー「はぁ……どーしよ……。」

エミリー(魔王の居場所は分からない。ここじゃないかもしれないけど……)

エミリー「この旅に意味があるのかなぁ……?」

午前0時。遺跡。


「準備出来たか?」

「ああ。この「万(よろず)知識の石版」だよな?」

「そうだ。しかし、ガラスが嵌めてあって薄くて軽いなんて……すげぇな。」

「しっ!早く帰るぞ……!」

女「そこまでよ!その石版……返してもらうわ!」

弱気「そ、そうだぞ!返せ!」

「っち!ずらかるぞ!」

「ヤー!」

すると、女はホルスターから銃型の物を取り出した。

女「太陽銃を食らいなさい!」

銃より速い、物が片割れの男を打ち抜く。打ち抜いた部分は赤く光っている。

打ち抜いたのは胸。

もう一人は慌てて逃げ出した。

弱気「あわわわ!」

手銃を構える。

「邪魔だ!」

弱気「わっ!痛い……。」

男は準備してあった馬に乗り、去ってしまった。

女「くっ!逃げられた…!もう!」

弱気「ごめんね、お姉ちゃん……僕……」

女「分かったわよ!アンタはこの仕事しなくていいから!」

弱気「う……」

女「でも、強くなってくれないとお姉ちゃん、困るなー。」

弱気「う、うん!僕頑張る!本番に強くならないと!」

女「まったく……。帰るわよ。」

弱気「うん!」

そう言い、彼らは手をつなぎ岐路へと着いた。

今回はここまで。

実を言うとそれぞれの国にはモデルがあるんですよねー

料理名とか名前を見るといいかも

少しだけ書くのです

翌日。午前10時。住宅街。


エミリー(大通りから外れちゃった……)

エミリー(人は居そうだけど……)

エミリー(皆大通りで買い物しているのかな?)

色とりどりの住宅を進んで行く。

その中から、出ていく影が1つ。

エミリー(よしっ!聞くなら今しかないよね!)

エミリー「すみません!少しいいでしょうか?」

女「……はぁ、なんです?」

エミリー「この大通りに行きたいのですが……」

女「私もちょうど行くところですよ。良ければ一緒に行きません?」

エミリー「ありがとうございます!」


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女「では、ここで。」

エミリー「あ…後!魔王の事について何か知りませんか?」

女「魔王より墓荒らしに悩まされているわよ!あー、嫌になるわー……。」

エミリー「はは……遺跡でも護っているんです?」

女「そうよ。先祖代々守り人だからね。万知識の石版が盗まれて…おっと、聞かなかったことにしてくれる?」

エミリー「そうします……。どこかおすすめの所、無いですか?」

女「そうねー……ノアの方舟は見たかしら?」

エミリー「鉄の大きいやつ!ですよね?」

女「そうよ。それを見たとなると……オリンピア大会が開かれた跡があるかな。」

女「あそこは石と鉄の塔に、大きな四角い湖、何重にも白い円が書かれた楕円の競技場があるわよ。」

女「そこを見るといいかも。」

続きは夜に。

再開します

エミリー「オリンピア?何それ?」

女「オリンピアは多くの人が戦争を避けるために皆が集まって……すぽーつ?をした場所らしいわ。」

エミリー「へー。そんな所行きたくないかな。見てもつまんなそう。」

女「それ以外だと……天界修道院があるわ。そこは面白い場所よ。後はそうね、燃える船と呼ばれる物かしら。すごく大きいの!名前の通りずっと燃えてるのよ?」

エミリー「それは気になるかも…」

女「案内するわ!付いてきて!」

エミリー「うん!」


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午後1時少し前。天界修道院。


少し登ったところに煉瓦作りの建物がちらほら見える。

エミリー「ホントにあった!」

女「ふふん!これでも私は観光を生業としているからね!解説も案内もばっちりよ!」

エミリー「何のために作られたの?」

女「ウリストだかクリストだかにお祈りする場所だったみたい。」

エミリー「救世主はカンスト様だしねー。」

女「そう言うこと。でも石版には「…リスト」って書いてあるの。謎ね……。」

エミリー「そもそも「り」で始まっているのか意味不明……。」

女「そう言うことね。次のところ行きましょう。」


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午後1時半。燃える船。


辺りは柵で囲まれ、近づくことさえ出来ない。


女「ここはずっと昔、ご先祖様が空へ行こうとした者を地の神が罰した、と言われているわ。」

女「それと、大きさはだいたい1キロメートルらしいわ。」

エミリー「それでずっと燃えているの?」

女「きっとお怒りなのね……。時々変な音が聞こえるらしいけど気にしないで。」

エミリー「熱い……」

女「少し戻りましょう。大丈夫!明日には治っているわ。」

大通り。


弱気「はぁはぁ……大変だ!「腐食の聖典」が盗られた!」

女「は…?それ本当……?」

弱気「う、うん!犯人は昨日の奴と同じ……だと思う……。」

女「馬鹿!馬鹿アケロン!それでどこに行ったの?」

アケロン「それが……行った先が美食の国なんだ!」

女「……分かったわ。今すぐ行きましょう。残念だけど、ここでお別れよ。」

エミリー「美食の国…ごめん、そこに連れてってくれない!?」

女「どうして?」

エミリー「……そこに用があるの。」

女「あなた、仕事を邪魔するつもり!?」

エミリー「邪魔はしない……つもり。でも…行かないといけないの……。」

女「そう。勝手になさい。死んでも知らないからね!」

女「名前……言ってなかったわよね?私はヘラ・アーミナス。この玉無しが弟のアトラース・アーミナス。」

アトラース「僕の事は…トラでいいよ。お姉ちゃん……」

ヘラ「武器は持った?パスポートは?」

トラ「いつも持ってるよ。」

ヘラ「ふん!この時くらいは役に立つわね…まあいいわ。さっさと船だすわよ!海岸に移動!」


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午後2時。海岸。


ヘラ「これは小型の自動船。動かすのは手動だけどね。」

エミリー(遺跡で…燃える船で見た通りなら……「魔王は美食の国」に居るはず!)

彼女が見たものは「魔王がいるのはここから西の国に居る」と書かれた謎の紙を見つけたのだ。

場所は「終焉の場所」。

ヘラ「行くわよー!」

ブオン!と竜のうなるような声と共に、船は早く動いた。

簡単な人物紹介 #9

ヘラ・アーミナス・・・女性。姉。15歳。守り人で、遺跡の侵入者を倒して生計を立てている。太陽銃を扱う。

アトラース・アーミナス・・・男性。弟。12歳。守り人だが臆病者のため、そうそう活躍はしていない。


解説


太陽銃・・・太陽の光のような色をした銃。全てを溶かす光線を放つ。最大射程は1万キロ。この時代では到底作れるものではない。

万知識の石版・・・軽く、光を放ち文字を見せる石版。表面はガラスの様な物との事。何かを記録したものらしい。

今回はここまで

書くのです

---引力はあらゆる物を引き寄せる。

時にそれは思いもよらぬ事さえ引き寄せてしまうのだ。

静かに、ひっそりと、我々を引き寄せ続ける。

その先が闇だとしてもだ。

海上。


エミリー「ねぇ!遺跡にさ、魔王が居るって書いてあったんだけど、本当なの?」

ヘラ「嘘に決まっているでしょ!魔王は一世紀探しても居なかったのよ!?ってかどこの遺跡なのよ?」

エミリー「燃える船だよ!帰る途中にあった金属片に刻まれていた!」

ヘラ「……帰ったら改めて遺跡周辺を見回る必要があるわね……。」

トラ「着くよー。」

ヘラ「見りゃ分かるッ。ほら、ハート行くわよ。アケロンも!あ、先に固定しなさい!」

トラ「うわっ!」

真っ先に上陸した、彼はものの見事にこけてしまった。

ヘラ「はぁ……。」

エミリー「そう言えば、アケロンってどういう意味?」

ヘラ「地元のスラングで、「玉無し」って意味よ。住んでるら辺じゃよく言うわよ。」

トラ「違うよ!僕はヘタレじゃないよ!」

ヘラ「見た目7,8歳じゃない!精神も同じくらいにしか思えないのだけれど。」

エミリー「え?トラ君、同い年じゃないの?」

ヘラ「今は12歳よ。これでもね。」

エミリー「私と変わらないと思ってた……。驚きだよ!」

トラ「船の固定終わったよ。」

ヘラ「ご苦労さん。さ、上陸するわよ。」

午後4時過ぎ。美食の国。港町。


エミリー「ここって何が名産なのかな?」

トラ「確かチーズとワイン、それに銃だよ。バレッタ社があるんだ。」

ヘラ「要は銃ギルドを効率よく動かすために、専門家を多く集めたって訳ね。」

エミリー「ふむふむ……。銃、かぁ……。」

トラ「僕のバレッタ社の銃なんだ。バレッタピッコラ11…って奴なんだ!」

そう言うと、Jの形をした木製の物が現れる。

ヘラ「私のは太陽銃って言う物。守り人の一族が伝統的に使うらしいわ。前までは太陽小銃があったけど、壊れて使い物にならなくなったの。」

エミリー「そんなものがあるんだね……。」

「おお、若いものよ。こんにちは。」

エミリー「こんにちは!あの、魔王についてお聞きしたいことが……」

「ああ、魔王ね。魔王はここにはおらんよ。」

エミリー「遺跡に書いてあったんです!」

ヘラ「ね、だから言ったでしょ?未だに見つからないって。」

「けど……魔王みたいな奴は居るの。」

ヘラ「そうですか。後ですね、ここ最近変な話聞きませんか?」

「そうじゃのぉ……なかったのぉ~。」

ヘラ「そう、ですか。」

「町に行ってみると良いのかもやしれんぞ。」

エミリー「ありがとうございます!さ、ヘラちゃん行こ?」

ヘラ「そうね。トラ!馬車あるか探してきなさい!」

トラ「ふえぇ!分かったよぉ…。」

ヘラ「ふぅ……こんな弟じゃ先が思いやられるわね……。」

エミリー(新聞……)

エミリーはたまたま落ちていた新聞を拾い上げた。幸い、昨日の物のようだ。

ヘラ「あなた字が読めるの!?」

エミリー「多少は……。」

ヘラ「それで!?犯人について何かない!?」

エミリー「えっとね、マフィアの抗争が続いているんだって。一週間も。」

エミリー「それで最近、この辺りの治安が悪くなってるみたいだよ。」

ヘラ「関係あるのかも……そこ行くわよ!」

今回はここまで

少しだけ書くのです


トラ「馬車有ったよー。」

ヘラ「そう。行くわよ、ハート!」

エミリー「はい!」

エミリー(魔王はいないらしいけど、町へ行けば手がかりあるよね……?)

彼女達は馬車に揺られながら町へと向かった。


>>>>>>>>>>>>>>>
午後5時。大通り。


町は飲食店が多く軒を連ね、美味しそうな匂いがあちらこちらに漂っている。

エミリー「お腹空いてきた……。」

トラ「僕も!お姉ちゃん、ご飯食べよ?」

ヘラ「それもそうね。食べてなかったし。さ、何食べたい?」

トラ「パスタとピザ!」

ヘラ「どっちかになさいよ…。」

エミリー「ここにピザとパスタのセットが有るからそこにしようよ?しかも安いし!」

ヘラ「そうねー。そこにしましょ。」

続きは夜に

再開しますことよ

レストラン。


エミリー「腐食のって一体……?」

ヘラ「あれは経典ね。確か昔の宗教でユダヤ?カトリック?とかの経典らしいわ。紙なのに腐らないし燃えない。水に濡らしてもね。だから腐食の聖典なの。」

トラ「内容は「かつて人類は多くの罪を犯した」って書かれていたんだ。手書きで、最後の方にだけど。」

ヘラ「何を意味するかは分からないわ。一体なんなのかしらね。」


「魔王軍の侵攻はここにも来てるらしいぜー。」

「トリはトリでもタカらしい……あれは何なのだろうな?」

「しかも最近じゃ騎兵も来るらしい。ああ、怖い怖い……。」


エミリー(ここでも魔王の話……)

ヘラ「魔王、ね。最近持ちっきりねー……。」

トラ「歩兵とトリは特に多いよね。」

エミリー「ねぇ…。その種類とかって教えてくれない?」

トラ「いいけど……」

ヘラ「あなたも変わってる人ね、ハート……良いわ。守り人としてのだからね!」

エミリー「うん!」

ヘラ「まず歩兵。これは3つ確認されてるわ。まず1つ目は銃を持った奴。私達のより性能ははるかに上よ。2つ目は連射できる筒を持つ奴。一番厄介ね。装備が凄いわ……。爆発する棍棒持ってる時もあるわね。3つ目が……」


「敵襲ーーーーーーーーーッ!」

「魔王軍が来たぞー!」


慌てる人々。

トラ「お姉ちゃん!逃げないと!」

ヘラ「分かってる!このアケロン!出るわよ!」

大通り。


大砲や銃を持った軍が展開している。


ヘラ「3つ目はね、変わった筒を持つ奴よ。下に曲がったのがあるでしょ?でも、連射や威力……機動性はヤバいわ……。」


「突撃兵だ!撃て撃てーーーーッ!」

「大砲で攻撃しろ!」


しかし、魔王軍の兵士は気にせず進んで行く。

辺りに血とうめき声、発砲音が聞こえる。


「後退しながら撃て!ぐあ!」

「炸裂弾を投げろ!」


丸い金属製の球が投げられる。

大きな音をたてて爆発。

魔王軍の兵士は後退しながら攻撃を続ける。


「追撃は!?」

「ここでしたら、兵が無駄に死ぬだけだ!撤退!」


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午後7時手前。大通り。


エミリー(変わった武器を持ってる……こんなタイプ初めて……)

ヘラ「あ……宿取るの忘れてたわ……。野宿でいいかしら?」

エミリー「えー……今更……。」

トラ「宿はちゃんととってあるよ!」

ヘラ「まあ!トラは偉いわねー。」

トラ「えへへ!」

午後7時半。宿屋。


エミリーとヘラは同じ部屋に居る。どうやらこれが安く済む方法だったようだ。


エミリー(魔王の武器は強力な物ばかり……)

ヘラ「ハート……いいかしら?」

エミリー「う、うん。何か用?」

ヘラ「魔王が居て、未だに正体も居場所もつかめない……」

ヘラ「勇者の派遣する目的は変わってきているし……。いっそ勇者なんていなくなればいいって思ってるの。」

ヘラ「勇者が居ても何かが変わる訳じゃないしね。」

エミリー「違うよ!居たらみんなの希望になれるよ!」

ヘラ「でも私達には関係ないのッ!明日のご飯がかかってるし、何か不祥事をすれば追放……。」

ヘラ「はっきり言って希望じゃ……夢じゃご飯は食べていけないわ。それに武器にもなりはしない……。」

ヘラ「こんな現実、クソ食らえって思うのよ。現実見て生きる方がはっきり言ってマシね……。はぁ……。」

ヘラ「出来れば……どこか安全な場所でも作って楽しく過ごしたいものね……。魔王軍がいないどこかへ。」

ヘラ「ふふ……。愚痴聞いてくれてありがと、寝るわね。明日は出るの早いから。お休み。」

エミリー「お休み……なさい……。」

エミリー(もし、もしだけど。私が勇者って知ったら……)

エミリー(明日夜に出かけよう。その方が安心する……よね?)


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翌日。午前4時手前。


エミリー(まだ寝てるね。ヘラさん、トラ君……さようなら。)


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午前6時。裏路地。


エミリー「私ぃ……役に……立ってないの……かなぁ……?」

静かに、静かに。少女は泣いた。

今回はここまで。

少しだけ書くのです


午前7時手前。美食の国。上空1万キロ。


静かに音をたてながら、2つの回る「何か」が呻きながら進んで行く。

下には小さな飛行機のような物が貼り付いている。

カチ、と言う音と同時離れ、小さな呻きと共に高速で地上へと向かっていった。

---誰も気づかないまま、脅威が迫っている。


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午前7時半過ぎ。大通り。


エミリー(……少しでも役に立つように頑張らないと!)

エミリー(泣いちゃったけど……心配かけるのも悪いし……。)

ヘラ「はぁはぁ……このアケロン!探したんだから!」

エミリーの前にヘラが現れた。

エミリー「あ、アケロン……。その、えっと……。」

ヘラ「勇者って事知ってるわよ。守り人には独自の情報網があるんだから!」

トラ「み、見つかった…はぁはぁ…ようだ、ね……」

ヘラ「へばるな!シャッキとしなさい!」

エミリー「知ってたの!?」

ヘラ「勇者嫌いの云々はその……言葉の…あやって奴よ!」

エミリー「そう、なの……?」

トラ「みたいだよ。お姉ちゃんは僕が居ないとダメみたいだねー。はは!」

ヘラ「ッ!この馬鹿アケロン!自分の姉をからかわない!まったく……でも、居るのはいいわよ。」

エミリー(姉弟かぁー……いいなぁ……)

トラ「それで、聖典の場所なんだけど---」


「なあ……今、聖堂に…何かぶつからなかったか……?」

「……爆発した!……魔王軍だ!」

「断定できたわけじゃないわよ!」

「いいか!大砲でもあんな遠くは届かないし、爆発もしない!だから魔王軍なんだよッ」

続きは夜に

再開しますん

エミリー「この町に聖堂なんてあったんだ……。」

ヘラ「元、だけどね。そこはつい20年前まではちゃんとしてたらしいけど、今じゃマフィアのアジトよ、アジト。」

エミリー「詳しいねぇー。」

ヘラ「隣国の事情くらい把握なさい!無い訳じゃないんだから!」

トラ「あれ?攻めて来ないね?」

ヘラ「あんなのは正直初めてよ……。遠距離攻撃だなんて……化け物ね……。」

トラ「空から来たからトリが落としたのかもね。」

ヘラ「今なら聖典を取り返すチャンスよ!アジトへと行きましょ!早く!」


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午前8時過ぎ。アジト付近。


かつては荘厳で権力者が住んでいたであろう建物は、跡形も無く崩れている。

エミリー「最初からアジトへ行けば……良かったんじゃ……?」

ヘラ「こっちより相手の方が武器も数も上だから、慎重にしないといけないのよ。」

トラ「僕が見に行ってくるよ。」

ヘラ「ヘマしないでよね。」

トラ「うん!」

ヘラ「さて……と。」

ホルスターから太陽銃を取り出す。

カシャンとスライドさせ、何かを確認する。

ヘラ「……まだ大丈夫ね。」

エミリー「何が?」

ヘラ「残量よ。こうやると残量を言ってくれるの。」

試しにやってみる。

エミリー(「残り42%です」……凄い!)

ヘラ「凄いでしょ?……トラから合図が来たわ。ハートはここに居て。いいわね?」

エミリー「でも私……勇者ですから!」

ヘラ「……死んでも知らないわよ!」


アジト。


エミリー(人が……)

瓦礫に押しつぶされたのだろう、血があちらこちらに飛び、下から赤い物が流れ続けている。

一部は焦げ、燃えている。

ヘラ「聖典を探さないと……ねえ、どこに在るか知らない?腐食の聖典。」

「知らねえ……よ……」

エミリー「ちょっと!死にかけの人にそんなこと……。」

ヘラ「これも私たちが生き残るためよ……。そもそも盗むのが悪いわ!」

トラ「これ、かな?」

ヘラ「どれどれ……これね!どこから見つけたの?」

トラ「この豪華な格好の人!」

ヘラ「ふぅん。そ。じゃ見つかったし帰りましょうか……の前に助けの1つでも呼んでおきましょ。トラ!」

トラ「了解ー!」

エミリー「……ヘラさん……。」

ヘラ「さて、私はここでお別れよ……あッ」

銃声が響いた。

ヘラ「ふふ……ふふふ……。」

照準を撃ってきた方とは関係なく撃ち続ける。

何かが早く通る音が辺りにこだまする。

ヘラ「……はぁはぁ……。アケロンは……トラはまだ……かしら……」

エミリー「見てきます!」

ヘラ「いってらっしゃい……。」

エミリーが去る。

ヘラ「くふっ……!」

血を吐く。

ヘラ(どうやら……当たり所が悪かった……みたいね……)

ヘラ(アトラース……)

そこからの彼女の記憶は、無い。

今回はここまで

少しだけ書くのです


午後1時。病院。


エミリー(駆けつけた時には生死をさまよってたらしいけど……)

ヘラ「えーと……物は取り戻せたかしら?」

トラ「お姉ちゃん!」

エミリー(目が覚めたらトラ君がヘラさんを抱きしめていた)

エミリー(良いなぁ……)

トラ「どの位で出られそう?」

ヘラ「そうねー、今からでもいいけど。お金が無いからねぇ、治療費ってのが馬鹿に高いのよ……。」

ヘラ「さて、と。私も帰らないとね!……ッ!」

トラ「無理しないで!僕がしばらく守り人するし、お金は何とかするよ!」

ヘラ「……これ渡すわ。だからしっかり稼いできなさい!……いいわね?」

トラ「……お姉ちゃん!……お姉ち"ゃ"ん"~!」

ベッドに居る姉に抱きつく。

ヘラ「さっさとハートを連れて出ていく!」

トラ「行こっか、ハートちゃん。お姉ちゃんは大丈夫だからさ……。」

エミリー「うん。」

午後4時。海上。


海風を浴びながらエミリーは尋ねる。

エミリー「ねぇ、何貰ったの?」

トラ「これだよ。太陽銃。残量は36%……だってさ。持つかなぁ……。」

エミリー「持つんじゃない?私には分からないけどね。」

トラ「冷めてるなぁ……でもお姉ちゃんに守り人任されたし……僕も……役目を果たさなきゃ!」

エミリー「うんうん!私も勇者として頑張るよ!」

トラ「……!あれ……何だろう……?」

エミリー「……鉄船……。魔王軍の……鉄船……だ……!」

数はざっとみて5つ。小型4隻、中型1隻。遠いためか、幸い気づかれてはいないようだ。

トラ「十字の旗……あげてるってことは魔王軍……だよね?逃げないと!」

エミリー「乗っている筒は大砲と同じ威力で連射してくるよ……。」

トラ「全速力でここから出るよ!しっかり掴まっておいて!」

ブオン!と言う音と共に、船はいつもより早く目的地へと向かっていった。

水を進みゆく。

音で気づいたのか、鉄船の2つはこちらに筒を向けた。

大砲の音を小さくした音が聞こえる。鉄船が撃った音だ。

トラ「このまま突っ切るよ!」

エミリー「うん!」


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午後5時過ぎ。始まりの国。砂浜。


エミリー「奇跡だね……。まさかあんな鉄の雨の中で無傷だなんて……。」

トラ「きっとお姉ちゃんのおかげだよ!うん!そうに違いない!」

エミリー「聖典はちゃんとある?」

トラ「あるよ!」

エミリー「そう、なんだ……。良かったね!これで私も旅が出来るぞー!」

トラ「次はどこ行くの?」

エミリー「どこ行こうかな?う~ん……!そうだ!栄光の国に行くつもり!」

トラ「栄光の国……」


トラ「あそこは中々いい話を聞かないけどね。ここからだと、教えの国が近いかな。そのかわり、結構争っているけど……。」

エミリー「後近いところ無いかな?」

トラ「それだと、栄枯の国かな。ここから真っ直ぐ行けばあるよ。」

エミリー(……私の地元……でも……魔王を倒すまでは……!)

エミリー(仇を討たないと!)

エミリー「私、教えの国へ行きます!」

トラ「そっか!じゃあここからずっと行くと、馬車があるからそれに乗るといいよ。」

エミリー「ヘラさん、元気になるといいね!」

トラ「明日には出られるし、大丈夫だと思うよ。僕も頑張らないと!」

トラ「そうだ!ハートちゃんに見せてあげる!」

エミリー「もしかして、腐食の聖典?」

トラ「きっと読めると思うよ。」

エミリー「どれどれ……」

エミリー(「魔法は……存在した。しかし……どのようなものも……り?があるのだ……」……訳分んない……。)

エミリー(それにこの絵は?)

トラ「この絵はなんとなく分かるかも。キノコの形をした雲に乗る神様が人々を裁いている。かっこいいなぁ~!」

エミリー「でも次捲(めく)ると、変な絵が……書き方が現実的で写し取ったような……。」

綺麗で妙に現実味のある絵だ。

エミリー「しかもこの絵と同じだ!違うのは神様がキノコの上に乗っていないってことだけだね……。」

トラ「ホントだ!?未だに詳細は不明なんだよねー。研究機関に持っていこうっと。」

そう言って、トラは聖典を閉じる。

エミリー「良い物見せてもらったよ、でも気になるなぁ~……。そうだ!魔王倒し終わったら、ちゃんと見せて!お願いー!」

トラ「いいよ!お姉ちゃん助けてもらったし!」

エミリー「約束だよ!」

エミリー(でもあの絵は一体……?ま、いいや!じっくり考えようっと!)


少女は再び歩き出す。

果てしなく見えない闇の中から光を探すために。

続きは夜に。

再開します。

これ書くのは別にレス埋めるためじゃないですよ?

---何もせずとも得られる幸福もあれば不幸もある。

そもそも「幸」とは何かと言われてしまえば、千差万別の解があるのだ。

多くが幸せも不幸も享受しなければならぬと言う事は知っている。

それでも我々はまがい物でも良い幸福を求め続ける旅人であり、楽園を目指す難民なのである。

「我々の戦争はいつ終わるのだ、アリアハン?」

「それは……分からない。けれど黒水晶の泉を取り戻さねばならなぬ!」

「魔王軍にとられて何千年……この地を再び「ラルアー様」がお導きになられるだろう!そうであろう、アリアハン殿。」

「そうよ……じゃなかった、そうだ。主が導いてくれる。全ては主のために。」

「主に祈りをささげる時間だ!」

そう言うと彼らはどこかに向かって頭を下げる。

その先にあるのは---魔王軍が占拠した金に光る大きな桃のような多価値をした建物だ。

今回はここまで。

少しだけ書くのです


午前9時半。教えの国。寺院前。


エミリー(こんな金色の建物初めて見たよー!)

エミリー(奥に……あるのは絵?かな!)

「おや、どうしたかな?」

髪の毛がない、穏やかな表情をした老人が中から現れた。

エミリー「ここってどんな所ですか?奥に絵が書いてあって……」

「ああ、あれはラルアー様の生誕の絵だよ。」

エミリー「この人、生まれた時から箱なの?」

「ラルアー様の姿を書いたり、彫ったりしちゃいけないと教えられてるんだよ。」

エミリー「チート様の絵や人形はあるのに不思議ー。」

「君、どこから来たのかい?」

エミリー「栄枯の国からです!」

すると、諭すような顔をし言った。

「チート様の名前はここでは出さない方が良い……。ここでは敵としているのじゃ。」

エミリー「敵……ですか?」

「古くからチート様とラルアー様は戦っておられたそうだ。知らなかったかの?」

続きは夜に。

再開します

エミリー「そんなこと聞いてないですよー……。」

「そうだねぇ、ずっと昔だけどキリシタと言う神とムハンハドンを信じた民が居たんだ。でもキリシタを信じる民を騙して戦争を起こしたらしい。それで報復したという訳じゃ。我々はムハンマドンを信じ、ラルアー様を信じている。」

「ここに来るのでなく……そうだね、砂の国へはどうかの?ルーツが分かるもかもしれん。」

エミリー「うーん……いえ、私魔王を探さないと!」

「勇者様……いえ、メシア……!ではリーダーのいる所へ案内しよう!」


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午前11時。リーダーの居る建物。


ローブ「ようこそ、我が国へ救世主。」

エミリー「あの……私……エミリー・ハート、です。救世主じゃないですよ?」

ローブ「いえ、古来より我々の言い伝えでは「金の勇者が現れ、永住の地を与える」と言われております。」

「こんな幼い救世主とは……。」

「我々を救って下さるのだぞ!失礼を言うなよ!」

ローブ「救世主様。今夜はここへお泊り下さい。何かの力になりますので。」

エミリー「え、ええ。」

今回はここまで

少しだけ書くのです


エミリー(ここの人達は変わってるなあ……。女の人は何故かローブしてたし)

エミリー(あれ……何かな?)

そこにあったのは金の建物。しかし隣には、鉄の塔がいくつもそびえ立っている。

エミリー(鉄の塔に何か居る……)

ローブ「おや、救世主様。どうなさいましたか?」

エミリー「あれは?何か居ますよね?」

ローブ「ええ、十字の紋章を掲げているのです。魔王軍ですね。」

エミリー「魔王軍がこんな近くにいるなんて……!」

ローブ「我々は生誕の地の方向を崇め、年に一度行くのですが……」

エミリー「犠牲が……出るんですね……。」

ローブ「我々の信仰の為です。あら、お祈りの時間です。救世主様はご自由にお過ごしを。」


続きは夜に

午後1時。ローブの人の家。


エミリー(なんだか変な感じ……あの絵が引っかかるなぁ……。)

エミリー(魔王もここから先に居るけど……)

エミリー「はぁ……。」

エミリー(船にトリ、騎兵に歩兵……武器は圧倒的にあちらが有利なのに、今まで占領した跡が無いし……)

エミリー「勇者の役目って本当に魔王を倒す……のかなぁ?」

エミリー(外出て聞くしかないかな)


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午後2時手前。大通り。


エミリー(手かがりはあの鉄の塔で黒水晶の泉なんだ!)

エミリー(もしかしたらそこに魔王が、居るんだよね?)

「救世主様、何をなさっておられるのですか?」

エミリー「魔王について聞いているんです!」

「そうでしたか……。ではそろそろ討伐をお考えに?」

エミリー「はい!私は勇者ですから!」

「でしたか。ではアリアハン殿にお伝えせねば!」

エミリー「アリアハン?」

「最初に会った者の事でございますよ。では!」

エミリー(もしかして……戦争……気のせいだよね!)

午後2時半。アリアハン邸。


アリアハン「なんと!救世主様が!真か!?」

「ええ。つきましては……」

アリアハン「ほう……では兵を集めよ!私は断絶の杖を持つ!それと……地下にある救世の炎を解放せよ!」

「ですが、後1つしかないのですよ!?」

アリアハン「断絶の杖で全てを割ればよいであろう。」

「……はっ!」

アリアハン「救世主様を連れて行くことを忘れずにな。」

アリアハン「……魔王よ!これで汝も最後だッ!我々の神に裁かれ、地獄に落ちるのだ!あーっははははは!」


続きは夜に

簡単な解説#10

アリアハン・・・本名アリアハン・ジャンビエーラ・ソドン。男性?らしい。25歳。教えの国の王。


解説

鉄船・・・魔王軍が海上に展開するもの。大小大きさが違う筒を上にもつ。確認された物では、小型から大型まである。小型と中型は爆弾が撃てる模様。大型は町を一撃で吹き飛ばす威力を持つ。

ラルアー様・・・エミリーたちが住む地域ではチート様だが、ここ一帯ではラルアー様が信じられている。教えに背いた者は殺される運命にあるらしい。キリシタ崇拝者は皆殺しにしてもいいと教えている。

断絶の杖・・・海と地を空を2つに裂けさせる杖。空に向かってかざせば、光が落ちてすべてを殲滅すると言い伝えられている。

救世の炎・・・地下に封印されている「対異教徒殲滅兵器」。200近く有ったが、今は1つしかない。当たれば国1つをなくすことが出来る。

再開します


午後3時過ぎ。郊外。


エミリー(鉄の塔の下にあるのが黒水晶の泉。そこを魔王は必要以上に守っている。)

エミリー(可能性は十分に高いよね!うん、大丈夫!)

エミリー(戦争……しない様に言わないと!……何か聞こえる?)

大通りの方から声が聞こえてくる。

アリアハン「我々は!明日正午!断絶の杖と救世の炎を使い、魔王軍を……魔王を討つ!」

アリアハン「聖地を救世主様と共に取り戻そうではないか!」

歓声が響き渡る。

アリアハン「これと無い機会だ!魔王とて不死ではない!さあ!共に行こうではないか!」

エミリー「あ、あの!」

アリアハン「おお!救世主様!我々は明日正午に魔王を討ってみせましょう!」

エミリー「数で言っても無謀です!だから……その……やめて下さい!」

アリアハン「……これは我々に聖地奪還を諦めよと?」

エミリー「やみくもに攻撃するのは危険です!それに魔王は何百倍も戦力が……」

アリアハン「そこはご安心を。我々は聖なる攻撃します。」

エミリー「聖なる攻撃……?」

アリアハン「爆薬を人の体に括り付け、攻撃するのです!これは聖地奪還のためです……これしか方法はないのです!」

エミリー「駄目ですよ……!そんなことしちゃ!」

アリアハン「これが唯一の方法なのです!救世主様よ!どうかご理解を!」


今回はここまで

---とある記録。


XX45X・・・XXが50X突破。

XXX1X・・・深刻なXXのXめ、XX製食料の配布をX定。

XXXXX・・・XXXX開始。これによりXXXXXXが半分にXちこむ。

正午。黒水晶の泉到達まで20km地点。


アリアハン「諸君!我々はついに!この時が来たのだ!聖地の奪還の瞬間が!」

エミリー(止められなかった……!)

アリアハン「救世主様もおられる!救世主様、何かお言葉を。」

エミリー「こんなことしなくても、魔王は引きます!だから、やめて下さいッ!」

大きく、前へ腰を折る。

「保証はないだろうがよぉー!」

「ないないない!魔王は聖地を奪った張本人であります!」

「だよなー」

エミリー「うぅ……だからと言ってむやみやたらとやるのは違うと思うんです!」

エミリー「私は多くの国を旅し、人に会っていきました。けど、どこもかしこも……魔王以前におかしいんです!」

エミリー「だから、今回はしないで下さい!お願いします!」

アリアハン「それが、答えですか、救世主様?」

エミリー「……私は救世主じゃなんかじゃありませんよ。ただの……勇者です。魔王を倒す、ゆう……」

アリアハンがこそりと、エミリーの耳元で言う。

アリアハン「世の中には、偽物でも英雄が必要なのですよ。いなければ、ここの者が狂ってしまいますわ。このまま抵抗もせず、私たちの国が亡べと?」

エミリー「そ、それは……」

アリアハン「うふふ……。それは違いますわ。今のあなたは……英雄なのです。ねぇ救世主様。」

エミリー(何……この……肌が寒くなるような感覚……)

アリアハン「予定通り、我々は進行します!これは生きるための、神のための戦いなのです!」

大きく歓声が上がる。

アリアハン「馬に乗っていればいいのです。あなたはそれだけで、いい。」

エミリー「……」


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午後1時過ぎ。黒水晶の泉到達まで18km地点。


アリアハン「ここで休憩としましょう。さ、水とパンを受け取って。」

エミリー(……どう、しよう……)

今回はここまで

アリアハン「休憩終了!行きますよー!」

再び立ち上がり、砂と岩と石の道をただ歩く。

銃を持ち、剣と槍を携え、大砲と馬車を引っ張る。

アリアハン「気を付けて下さい、ここから火の道です!」

「ここ足と馬車が飛ばされるから嫌なんだよな……」

「下手したら両足飛ばされるらしいぜー」

アリアハン「投石器はありますか?」

一斉に構える。

アリアハン「では……始めっ!」

布に石を入れ、回して投げる。

道が砂と岩を噴いた。

アリアハン「さあ、進みますよ!」

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午後3時。14km地点。


アリアハン「今回はここで寝ます。夜に出ますので、交代でゆっくり休んで下さい。では解散!」

「やっとかー」

「夜は涼しいからね、今のうちにしっかり寝ておこうぜ」

「見張りとか嫌です。眠い……」

「うるせー。寝たいのは俺だって同じだよ!」

「そんなことよりポーカーしようぜ」

「ふふーん、私に勝てるかな?10連敗してる君にさ」

「ねーな。こいつが負けるに11ルピーな」

「おま!」

「俺も!」

エミリー「魔王軍倒しに行くのにどうして……」

「簡単。黙って殺されるよりかはましだ。それに楽しくするのはこうじゃねーと、やってられねーんだわ。」

「そそ。そう言う事。救世主様もそう思うだろ?」

「お前ら!すんません。こいつら口が悪い奴らでして……」

エミリー「いいですよ。私、英雄じゃないですし。でも今から引き返してもいいんじゃ……」

「聖地は我々を救うラルアー様が居られるところ。そこを取り戻さねばな」

「火の道はもう抜けたし、後は魔王軍の居る所を落とすだけだな!」

「お前もしっかり寝とけ。いいな?」

エミリー「は、はい!」

「大丈夫。我々の神は平等に護って下さる。例え偽物でも」

エミリー「あははは……知っているなら何故……」

「今は君が希望だからさ。そんだけ」

エミリー「……私も起きてます!皆さんと一緒に!」

「夜に出るんだぜ?子供は寝とけ寝とけ!」

エミリー「う……子供じゃないです!」

「そこが子供なのよ」

エミリー「むぅ……」

午後10時。


エミリー(ん……)

エミリー(荷馬車の中かな……)

エミリー(……星が綺麗……!)

アリアハン「ここで良いだろう。大砲を持ってこい!杖で奇襲をする。砲撃と同時に、騎馬兵は行くのだ!」

エミリー(……近い。魔王の兵士は居ないけど……)

アリアハンは杖を空にかざす。一点の光を放ち、それを鉄の塔へと向ける。

そして---鉄の塔が炎上した。

同時に砲撃音。そして突撃。

魔王軍はこれを迎撃。トリやトンボを飛ばし、歩兵と騎兵を動かす。

しかし、燃えているため途中で動かなくなってしまった。

アリアハン「ラルアー様のおぼしめしだ!ここで一気に叩くぞ!」

戦場はなんと人間側が有利となっていた。エミリーは少し考えると馬車を飛び出し、鉄の塔へと向かう。


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鉄の塔前。


ドロドロに溶けた物が多くあり、黒い煙が立ち込める。また熱気があるのですごく熱い。

エミリー(魔王はどこ!?)

エミリー「出てきなさい!魔王!私は逃げも隠れもしない!さあ!」

エミリー「こほっ!こほっ!」


続きは夜に。

再開します

エミリー(ここには変な形の建物が多い)

エミリー(それに火の色がオレンジなんてとても不気味……)

エミリー「魔王!どこに……けほっ!かほっ!……居るの!」

エミリー(だんだん苦しくなってきた……悔しいけど逃げないと……)


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午後11時過ぎ。荷馬車内。


エミリーは鉄の塔から脱出した後、逃げてく(?)兵団の後続の馬車に飛び乗ったのだ。

エミリー「こほっ!けほっ!」

エミリー(魔王はいなかった……それか逃げられたか)

エミリー(まだ可能性はある!)

エミリー(魔王はどこかに居るんだ!探してやるんだ!)


燃えさかる思いが消えない様に、少女は進む。

町でも。都市でも。戦場でも。

---無からは有は生まれるか。

有から無は生まれるか。

それはどちらも可能だ。認識せずに生み出すことは出来るのだ。

ゆえに、境界は曖昧なものになりつつあるが。

「ああ、何故だ!我々は生きている間にすべき事が多すぎる!」

紙に何かを綴っている。内容は哲学的なことだ。

床にはもう何百枚と言う紙が落ちている。

「しかしだ。何故考えるのだ?人だけが考えるのか?では動物や植物、ひいては魔物もではないのだろうか?」

「では、生きているもの全てに知能が備わっているのか?」

「……!そうだ!つまりはこういうことではないだろうか!」

そう言うと急いで数十枚を3分で書き上げた。

「ではこれをカフェに持って行こう!我が友人達なら何か良い答えが聞けるはずだ!」

急いでコートを羽織り、出て行った。

数日後。砂の国。


エミリー(いい所~。水もご飯も美味しい~っ!)

エミリー(港の近くってのが大きいね!)

エミリーは教えの国の経由で入国した。しかし、その手段が問題なのだ。

あの鉄の塔から脱出した後、盗賊に襲われたのだ。

逃げるため、途中、港に停泊していた貨物船に乗った。

そして、行きついた先がこの国なのである。

エミリー(盗賊さん達はもう追いかけて来ないよね……?)

エミリー(宿を取らないと……)


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正午少し過ぎ。大通り。


エミリー(魔王について聞いても結果は変わらない。けど繋がるところも多いはず!)

ふと、看板が目に入った。

エミリー(尋ね人?……女の子。背丈は130cm。長い金髪。目は青。これ私じゃない?絵からは……無い、よねぇ……)

「ここにおられましたか。さ、お父様がお待ちですよ。」

ふと、大柄の男に声をかけられる。

エミリー「え、あの、違いますよ……多分。」

大柄「シンシア様。正直申し上げますと、このセンタ、ここまでの遠い家出は初めてでございます。」

センタ「行きますぞ。お父様はずいぶんと心配を……」

そう言うと、馬車に押し込まれ、閉じこめられた。

エミリー「私はーーー!エミリー・ハートですーーー!ここから出してーーーーーー!」


今回はここまで。

エミリー(馬車は開かないし、剣で叩いてもダメ……)

エミリー(相手はシンシアって子と勘違いしてるし……どうしよう)

エミリー(実力行使しかないのかな?)

センタ「着きましたぞ。」

戸が開かれる。

目の前にあったのは煉瓦作りの大きな建物。

それに大きな煙突が何本も付いている。

エミリー「あの、ここは?」

センタ「何と言われましてもここは誇り高き「栄光の国」でございます、シンシアお嬢様。」

エミリー「あの!よく見て下さい!私はエミリー!エミリー・ハートです!シンシアさんじゃないです!」

センタ「ふむ……むむ……よく見るとつむじが左じゃない!ああ!このセンタ、シンシア様に……ハワード家にお使いして20年と言うのに……」

エミリー「な、泣くこと無いと思いますよ?」

センタ「いえ、このセンタ・ガスコイン!この無礼、どうかお許しを!」

コートの男「おや、センタ。見つかったかい?……ははあ、もしかして人違いでここに連れてきたのかな?」

センタ「も、申し訳ございません!」

コートの男「いやいや。まさか娘に似た子が居ただなんて信じられないからね。それで、君の名前は?」

エミリー「エミリーです。エミリー・ハート。」

コートの男「私はトルーキン・ハワード。すまないね、君の国まで返してあげよ……む、君は噂の勇者じゃないか!」

エミリー「何で知っているんですか?」

トルーキン「君は政治界隈じゃ有名だよ!なんて言ったて、後一歩のところで魔王に逃げられたからね!」

エミリー「そんなのじゃないですよ……」

トルーキン「そう言わずに、ね。我が家で魔王を討ち倒そうとする少女の話を聞こうではないか!ハート君、君もぜひどうだい?」

強い押しだ。思わず、乗ってしまった。

エミリー「……はい。」

トルーキン「なら決まりだ!我が家へ行こう!今日は何かな~?」


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午後4時。トルーキン邸。


トルーキン「センタ。引き続きシンシアの捜索、頼むよ。」

センタ「かしこまりました。」

トルーキン「お茶でも飲んでゆっくりしていってくれたまえ。」

エミリー(美味しい……)

トルーキン「落ち着いたかな?」

エミリー「……はい。」

トルーキン「娘はいなくなったのは3日ほど前。家出はしょっちゅうだ……君と歳は変わらないが、我ながら娘は、何かを秘めている気がするんだ。」

エミリー「何か?」

トルーキン「その「何か」とは何なのかが分からないのだよ。一体娘は何をしたのやら……」

エミリー「う~ん……私にはそんな経験ないですし……。」

トルーキン「気にしなくてもいいよ。娘はセンタと私で探すさ。」

エミリー「あの……」

トルーキン「ああ。僕が何をしているかって?そうだね、この本を見るといい。」

エミリー(せいじ……?)

エミリー「政治家なんですか?」

トルーキン「残念ながら違うのさ。僕は哲学者で、記者で、資本家なのさ。」

トルーキン「その本は政府のことについて知ろうと思ってね。」

エミリー「……よく分んないです。かなりのお金持ちってことですか?」

トルーキン「そうだね、その解釈でいい。」


続きは夜に

再開します。

エミリー「お茶ご馳走様でした。では私……」

トルーキン「待った!待った!君、どこ行く気だい!?宿をとる気かい?やめておけ。今の宿はかなり高いぞ。」

トルーキン「それに間違って裏路地へ入れば誘拐されかねんぞ!」

エミリー「分かりました……お世話になります、ハワードさん。」

トルーキン「それでいい。素直で好感が持てるよ。では夕食で会おう!私はこれから特ダネを探さなければいけないからな!ははは!」

センタ「ハート様。お部屋のご案内を……」


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午後5時。同邸客人用部屋兼書庫。


エミリー(栄光の国だから金とか銀が散りばめられているのかと思ったよ)

エミリー(レンガ造りの建物が沢山あるところもあるんだねぇー)

エミリー(砂の国の時は凄く大きな頑丈そうな建物があったなぁ)

エミリー(見ている人はあまりいい気持じゃなさそうだったけど……)

エミリー(何か読んで時間でも潰そうかな)

適当な本を探す。ふと、背表紙が手書きの物を見つけた。

エミリー(「シンシアダイアリー」……日記かな)

エミリー(生年月日が6年違う……シンシアさんって私より年上なのかな?)

エミリー(「出て行ったある日、私はスラムに入ってしまった。そこで見た光景が今でも忘れられない。」)

エミリー(「富める者はより多く、富めない者は生涯奴隷なのだ。前者も後者も心や体が汚い。そうさせているのは資本家の人達だ。」)

エミリー(「しかし、我々の国はある程度の自由や権利は認めている。沈まぬ国や法の国のような失態は犯さないつもりだ。」)

エミリー(「そこで、組織だってそのような人々を救うチームを作ることにしたのだ。」……)

エミリー(シンシアさんが居る場所……分かったかも!)

エミリーは急いでスラムへと向かった。彼女を探すために。


今回はここまで

大通り。


エミリー(スラム……確かここから外れた所にあるんたよね?)

細い路地へと向かう。

エミリー「ッ……」

見たものは、片付けられてない嘔吐物、放置された何かの糞、転がる酒瓶に煙草の吸殻。

何よりも---地面に這いつくばる人の姿。

エミリー(汚いし、酷い所ね……)

「おい、酒持ってねーか……?」

エミリー「無いですよ。」

「んだよ……」

エミリー「あの、シンシアさん知りませんか?シンシア・ハワード。」

「シンシアか。あいつならここからほど近い教会に居ると思うぜ?」

エミリー「そうですか。ありがとうございます!」

「おう。気ぃつけてな。」

エミリー(教会は近くにあると思うから……)

エミリー(ここかな)

身なりの綺麗な女性「はいはい。パンとスープはまだありますから、押さないで!」

エミリー(汚い人たちが並んでる……これが富めない人達?)

身なりの綺麗な女性「これで最後ね……ふぅ。」

「お疲れ、シンリー。さ、今日は帰って寝よう。」

シンリー「いいですけど……あら?君は?」

エミリー「あの、ここにシンシアさんって居ませんか?」

シンリー「……さあ。シンシアと言う人は居ないと思いますわ。」

「だそうだ。はい、パンとスープ。食べ終わったらそこに積んでおいてね。」

エミリー「は、はい……」

パンは普通の堅そうなパン。スープは角切りの野菜が入っている。

「お嬢ちゃんもか。俺らは酒とたばこで給料消えちまったよ。がはは!」

「おまけに賭けでも!ははは!」

「しっかし、まぁー、なんだ。長い時間縛ってロクに金もくれやしないなんて最低だぜ……」

エミリー「でも、それって好きでしているんじゃ……」

「そんな訳ねーだろッ!この機械がきてから仕事は奪われるわ、物は売れないわで大損なんだよ!」

「怒りたくなるのも分かるけど……相手はただの少女だぞ?キレることねーだろーが。」

エミリー「す、すみません!」

「ま、シンシアってのを探すのは今日は諦めな。俺らのネットワークでも探しておくから。で、上の名は?」

エミリー「……ハワード」

「ハワード!多分ハワード家のお嬢様だ!探せばきっと給料上げてくれるかね!?」

「あいつは確か結構影響力あるらしいから、やってくれるさ!」

「よし!お嬢ちゃん!ここは任せな!今日は帰って寝な。」

エミリー「よ、よろしくお願いします!」

「おう。」

エミリー(汚いけどいい人達!)


>>>>>>>>>>>>>>>>
午後6時。トルーキン邸。


エミリー(あれ?まだ帰って来てないのかな?)

センタ「これはハート様。ささ、トルーキン様がお待ちですよ。」

エミリー「はい。」


トルーキン「やあ、ハート。今日はローストビーフだ。さらに温野菜のドレッシング和えだよ。」

エミリー「シンプルですねー。意外!」

トルーキン「そうかな?ここじゃいつも食べているんだけどね。」

エミリー「いただきますね。……ん!柔らかい!」

トルーキン「はは。気に入って何よりだよ。」



今回はここまで。

簡単な解説#11

シンシア・ハワード・・・女性。16歳。家出はしょっちゅうだが、3日前から行方が分からなくなっている。

シンリー・・・スラムでパンとスープを配っている女性。信頼されているようだ。気品ある振舞いをする。

トルーキン・ハワード・・・男性。41歳。哲学者で記者で資産家。年の割には若い。

少しだけ書くのです


午後9時。客室。


エミリー(いなかったみたいだけど、どこかに行ったのかな?)

エミリー(明日にでも情報集めてみようかな!)

エミリー(おやすみ……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前7時。


エミリー「ん……ぁあふぁあ……」


エミリー「あれ?トルーキンさんは?」

センタ「つい先ほど出て行かれましたよ。何も「特ダネを掴んだ」そうです。ご飯はこちらに。食器はそのままでいいですよ。では、私はここで……」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前9時過ぎ。大通り。


エミリー「煌びやかー!」

エミリーはガラス(正確にはビードロ、のちに気付いた)のネックレスをしている。

エミリー「あの、すみません。」

「む?なんだね、私は今忙しいのだ。後にしておくれ。」

エミリー「あう……すいません……」

エミリー(ここの人達って冷たい目してる……)

ふと、目をやると艶やかな雰囲気を漂わせるお店があった。

エミリー(「ぱぶ・ミステリアン」、ここに入って聞いてみよう!)


続きは夜に

再開します。



戸を開けてみようとする。

エミリー(開いてないみたい……)

エミリー(他の場所でも聞いてみよう!)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前11時。カフェ店内。


エミリー(うー……ここでも魔王の情報が無いなんてー……)

「うわー……自由の国が危ないって知ってたか?」

「知ってるつっーの。何でもが居るんだろ?バババって鳴くらしいぜ。」

「火を飛ばすらしいからねー……水か氷が弱点だな、きっと。」

エミリー(火を飛ばすなんて怖いなぁ……。でも魔王軍の主力って火の攻撃しかしないよね?何でだろ?)

エミリー(穴を開かせる魔法に、凄い威力を持つ魔法……)

トルーキン「やあ、調子はどう?」

「ああ、クソだよ。ここじゃ鉄船がうようよしてるから自由の国には行けないな……」

「全く、ギリギリで生きているのにな。アヘンは絢爛の国に売ってるって話……マジだぜ。」

トルーキン「おお!それで写真はあるのか!?」

「大声出すなよッ。これは国の秘密なんだぞ!これだ、これ。言っておくけど売らねーからな。」

トルーキン「おお!これは凄い!」

トルーキン「僕も良いネタ仕入れたしね。なんと、栄光の国の新造艦の計画表だ!何でも今回は「エクスカリバー」を乗せた決戦仕様って話だ。」

「へー……エクスカリバーをねぇ。で、その名前は?」

トルーキン「そのままエクスカリバー号らしい。正式にはエクスカリバー型戦艦5隻だそうだ。」

「マジでお前らどっからそんなの仕入れるんだよ……俺なんて貴重な雄の子猫が無事保護されたくらいしか知らねーぞ……」

「地元にはいいニュースじゃないか。あははは!」

エミリー「トルーキンさん!エクスカリバーについて教えてください!」

トルーキン「おおう!びっくりした!」

「なんだなんだー?この子お前の妾候補か?」

トルーキン「違いますよ。この子は間違ってここに連れてこられた勇者さんです。」

「勇者、ねぇ。それで魔王の情報は集まりそう?」

エミリー「いえ……」

トルーキン「もし、エクスカリバーの事が知りたいなら、この通りを真っ直ぐ行って右に曲がりなさい。そこに兵器博物館がある。」

エミリー「あ、ありがとうございます!」

トルーキン「早めに戻ってね。」

エミリー「はい!」


「あんなに素直な子がこんな時代に居ただなんて信じられないな」

「ここは機械が発達し過ぎたからねぇー」


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午後1時手前。博物館。


エミリー(エクスカリバーって変な形……)

エミリー(光が沢山集まって、消えてを繰り返しているだけなのに……)

上には穴が開いており、小さなエンジンで羽を回している。

エミリー(仕組みは不明……何じゃこりゃ!)


今回はここまで

---ずっと昔の話、自分と同じものを作れる技術が初めて出来た時だ。

ある者は神に近づいたと言い、またある者は禁忌を犯したと言う。

知識とはすなわち「禁忌」なのだ。少し前に知るのが怖いと言うのはこの様な意味なのだ。

でなければ我々は心を失ってしまうでだろう。

午後4時半。王立工廠。


トルーキン「凄いな……!これが、エクスカリバーを用いた物ですか……」

「はは!そりゃそうでしょう。エクスカリバーは剣にしみ込ませれば一振りで山をも壊す物ですから!」

トルーキン「でしょうな。しかし、主任。5隻を作る話は本当ですか?今作っているのはその1型じゃないですか。」

主任「ははは!そこはご安心を。エクスカリバーは世界初の総金属製!砲を何門も積んで、トリには口の細い大砲を付ければいいです!」

主任「1号の公開日は今から1週間後。それまでには間に合わせて見せますよ。ダミーですけど。」

トルーキン「は、はあ……」

主任「魔王軍は何をしだすか分かりませんから。念には念を。今年でインクランド制圧10周年ですし、派手に魔王軍を散らして見せますよ。勇者なんてお飾りはいらないって事を、栄光の国こそ真の英雄と言う事をしらしめてやりますよ!はははは!」

主任「そうすれば、植民地も増えると女王陛下はおっしゃってました。もはや沈まぬ国はもはや無いに等しい……攻めとってやると。」

トルーキン「戦争お好きですね、女王陛下は。」

主任「ま、俺らの生活が良くなるんでしたら大歓迎ですよ。」

トルーキン「そう考えますと……そこにも工場を構えなければ……う~む……」

主任「気長にやりましょう。おっと、お時間の方はよろしいようで?」

トルーキン「ああ!少し遅れている!では!ご協力に感謝します!」

主任「気を付けて。」

トルーキン(魔王軍は終わりだな。かつての友人を殺した事を後悔するといい!)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
同刻。図書館。


エミリー(むむう……この物は「げんしとぶんし」から作られているんだ……)

エミリー(反応によって熱が出たり、固まったりするんだ……)

エミリー(……頭が痛くなってきたよ……)

彼女が読んでいる本はほぼ科学関連の本だ。

エミリー(エクスカリバーについて知りたかったんだけどなぁ……)

エミリー(エクスカリバーは伝説の剣であり、全てを希望に帰る光ってことくらいなんだよねー……)

エミリー(魔王に関する記述も無し……)

エミリー(はぁ。他のところにでも行こうかな)

本を戻し終えた時、目に入って来た物が。

エミリー(「魔術全書」?変な本……でも不思議と手に取りたくなるような……)

エミリー(人を操る魔術……全てを防ぐ魔術……呪いの魔術……)

ページをめくる。

エミリー(「魔術は我々の先祖が今から46万年前に開発された万能の結晶である。」)

エミリー(「魔術は全ての人が使えるものであり、禁術と呼ばれるものは倫理的、社会的、人道的な面で最悪と評された物である」……ある訳ないのにね)

エミリー(さっさと出て、トルーキンさんの所へ戻ろうっと)


続きは夜に。

再開します

午後6時。トルーキン邸。


エミリー「トルーキンさん、遅いですね。何か聞いてませんか?」

センタ「取材とだけお聞きしております。」

エミリー「そうですか……」

エミリー(ご飯が味気ないや……慣れたと思ったのに)

エミリー「これ食べたら私は寝ますね。」

センタ「では、お風呂の用意を……」


エミリー(魔王は居るかどうかは分からないけど、困っている人を助けるのも使命……だよね!)

エミリー(よし!明日トルーキンさんにシンシアさんについて聞いてみよう!)

エミリー(そのためにも早く寝ないとね!)

午後11時過ぎ。トルーキン邸。


トルーキン「ハートは……寝ているな。寝顔は可愛いものだね。」

そう言い、マジマジとエミリーを見る。

トルーキン「これほど愛らしい子が勇者だなんて信じられないよ……」

トルーキン「君を手放したくないよ、エミリー……。」


暗い中に、鋭い眼光が、見えた気がした。



今回はここまで。見てる人居るのでしょうか?

少しだけ書くのです



時刻不明。場所不明。



エミリー(ん……ここはどこだろう?)

今とは違う物が、広がっていた。

エミリー(四角い箱が沢山あるし、馬車じゃない変なのがいっぱい走ってる!行く人の格好も違う……)

エミリー(変な言葉に変な格好の人がいる……)

エミリー「あわわ……」

エミリー(手に何か持って話しているのかな?おかしい人なのかな?でも、変な夢だなぁ……)

よく見ると、身なりは綺麗だ。しかし表情がおかしい。

エミリー(……皆、目に生気が感じられないのはどうしてなんだろ?)

エミリー(あ!くすんだ人!それに黒い人まで!でも自由に歩いてる……)

エミリー(もしかして、これ……未来、なのかな?)

エミリー(だって誰も不幸になってないし、魔王も居ない。良い世界。でも居たくないのはどうしてなんだろ……?)


午前6時過ぎ。客人の部屋。


エミリー「ん……んー!」

エミリー(よく寝た~!顔に変なのかかってる)

エミリー(気持ち悪いしさっさと洗おうかな)

エミリー(なんかヌルヌルする……でもすぐ落ちたからいいかな)

エミリー(あの夢は何なんだろ?特に意味もなさそうだし。妙に現実味があったのは不思議……)

エミリー(魔王もそうだけど、シンシアさんも探さないとね!)


食卓。


トルーキン「おはよう、ハート。昨日はどうだったかい?」

エミリー「よく寝れました!けど、変なのが顔にかかっていて……気持ち悪かったです!」

トルーキン「そうか……。ここにある薬品庫には行ってない?もしかしたら漏れ出したか……厳重に鍵かけておいたんだけどね……」

エミリー「薬ですか?」

トルーキン「医学も少し嗜んでいるんだ。風邪薬はお手の物だよ。」

エミリー「凄いですねー!」

トルーキン「そんなこと無いさ。これから来る時代は誰でも、学べるんだ。お金と才能さえあればね。」

エミリー「来ますよね!私、一時的に学校行ってたんです。良い面も悪い面もあったけど……楽しかったです。」

エミリー「勇者じゃなきゃ皆と一緒に……学校行ってたと思います。だって、私は世界を救うために魔王のお嫁さんになるから……。」

エミリー「救ったら、魔王を倒して、皆の所へ戻って授業を受けるんです!魔王の脅威にさらされない未来は近いと思うんです。」

トルーキン「良い話だッ!感動できるじゃないかー……ぐす……年取ると涙もろくなるから……」

トルーキン「ハートちゃん、本を書く気はないかい?」

エミリー「……へ?」

トルーキン「君の話を本に書くんだ!そうすれば、君の応援が広がるよ!」

エミリー「恥ずかしいです……。それにそんな自慢できるような事無いですよぉー!」

トルーキン「照れなくてもいいよ。で、どうする?書く?書かない?」

エミリー「少しだけ、考えさせて……下さい。」

トルーキン「気が向いたらでいいからね!」


続きは夜に。

再開します


午前10時半。港。


エミリー(本を書く、かぁ)

エミリー(文字書けるのは大きいけど……)


「おい、今日の13時に誰か処刑するらしいぜ!」

「マジか!球蹴り出来るじゃん!お前、手で持つの?」

「いや、今回は蹴りまくるぜー。手じゃつまらんしさ。」

「ふぅん。手で持って走る方を選ぶよ。」

「ははは!いいねー!」

そう言うと彼らは走っていってしまった。


エミリー(エグイ事するなぁ……)

エミリー(処刑……嫌な思い出しかないや)

エミリー(スラムでシンシアさん居るか聞かないと……)

エミリー(何か手がかりはあるはず!……だよね?)


>>>>>>>>>>>>>>>>>
正午過ぎ。スラム。


エミリー「あの、シンシアさんって人……居ませんか?」

「シンシア?シンリーじゃなくてか?」

エミリー「え、ええ。」

「んな奴は居ないよ。それに嬢ちゃんが居るような場所じゃあない。」

エミリー「私は勇者なんです!」

そう言い、黒い板切れをだす。勇者の証だ。

「それ見たって知らないぜ……。でもシンシアってのが居ないのはマジだ。」

「そういや今日の13時に処刑するんだったな。行かないとな。」

エミリー「あの、どうして……」

「球が手に入るからさ。蹴ったり、手に持ったりして、海へ投げ飛ばすんだよ。」

エミリー「球って人の……頭、ですか……?」

「それ以外に何があるんだ?」

エミリー「何で……ですか……」

「分かんねぇよ。罪人はだいたいこんな末路を辿るのが普通じゃねーのか?」

エミリー「処刑されたのに……可哀そう……」

「殺されて恨む奴は多く居るんだ。大切なやつを殺されて、その犯人が死ぬ。割には合わない奴だっているだろうな。じゃあ参加してくるか。見たいならエディンガム城へ行くんだな。」

エミリー(少し興味がある、けど……)

少し悩み、答えを出す。

エミリー「私も、行きます。」

「なら着いてこい。記者も多く居るだろうけど。」



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午後1時。エディンガム城。


上官らしい兵士が名前を読み上げる。

「被告アデラー・トンプソン・ヒッカー!罪状はインクランド制圧の妨害及び抵抗そして兵士12名の殺人である!」

「よってここに処刑を女王の名において命のものである!下ろせ!」

刃が落ちる。首が体から取れた。

辺りから歓声。

「静粛に!今からこの首を投げる。目指すのはあの方向だ!行けば海があるからな。では行くぞ!」

躊躇なく、頭を投げる。

来ていた人々が群がる。

「そら!」

「あっち行ったぞ!追えーーー!」


エミリー(恐ろしいよ……!)

エミリー「うえっ……おえっ……」

思わず吐いてしまう。

エミリー「はぁはぁ……」

エミリー(この国おかしいよ……人の頭を蹴ったりするなんて)

エミリー(次……行かないと……でも船……ないや)

トルーキン「やあ、ハートちゃん。」

エミリー「あ!ハワードさん!こんにちは!」

エミリー(変な感じがするなぁ……)

エミリー「蹴りには行かないんですか?」

トルーキン「嫌だな~。行かないよ。けど、君に会えたことがうれしいかな。ははは!」

トルーキン「単刀直入に言うと、私は君を好きになってしまったんだ……。」

エミリー(え!?えぇーーーー!)

トルーキン「だから……その、付き合って欲しいんだ!」


今回はここまで。

エミリー「えーと……そのー……」

トルーキン「分かってる!けど君を見た時から落ち着かないんだ!」

そう言うと、エミリーに抱きついた。

エミリー「あ、あの……離して……下さいぃ……。」

何故彼が、このような奇行に走ってしまったのか。それは会った日に遡る。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
会った日。午前11時。


トルーキン(なんて愛らしい子なんだ……!)

トルーキン(子供らしい中に大人のような魅力があるなんて!)

トルーキン(何が何でも、手元に置いておきたい事があったのだろうか!)

本日。午前5時手前。客人の部屋。


トルーキン(魔がさしてしまったな……)

トルーキンは特に用も無く、勇者が居る部屋に入った。

トルーキン(今にも彼女を犯してしまいそうだ)

トルーキン(ここの所、忙しいあまりオナニーしていなかった……)

トルーキン(ここでしてしまおうか……)

チャックを開け、自分の息子を出す。

それを扱く。

トルーキン「ぁ……はぁ……ぁはぁ……」

白いのが、かかってしまった。

トルーキン「ふぅ……。……!僕は何を……。彼女の顔を拭かなければ……。」

トルーキン(だがそのままにしておきたい自分が居るのは事実だ)

トルーキン(しかし、相手は10かそこらの少女だぞ!?欲情するわけが無い!)

トルーキン(そのままに、しておくか……)


以上がことの顛末である。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

エミリー「わ、私……その、歳、離れてますよね……?」

トルーキン「私は地位も金もある!だから、君さえよければ……」

エミリー(お金があるのは確かだし、歳の差がかなりあるよね……)

エミリー(でも、泊めてもらっている体だし……)

エミリー(……断っておこうかな。友達としてならいい人だから!)

エミリー「友達でいいのなら!」

トルーキン「ほ、本当かい!?」

エミリー「はい!」

エミリー「でも私は勇者です。ですから……魔王を倒した後にならぜひ。」

トルーキン「……そうだね。その方がいい。……もう少しここに居るかい?ハート。」

エミリー「いえ。ここではシンシアさんが見つかりそうにも無いので……」

トルーキン「そうか……。」

センタ「トルーキン様!見つかりました!場所はスラムで、慈善活動をしていたようです!」

エミリー「シンリーさん!」

シンシア「はぁ。まったくこの辺りの人達はスラムには関心がないから困るわ。」

トルーキン「む。スラムの奴らに問題があったのか!?信じられんな……。」

シンシア「貧乏になったのはなるべくしてじゃないの、お父様。その原因が分かったわ。」

トルーキン「なんと!では家に帰ってまとめよう!」

シンシア「そうだ、あなた確か、パンとスープ貰っていた子よね?まさか私を探しに?だったら嬉しいわ。ありがと♪」

エミリー「いえ。えへへ。」

エミリー「あ、私、次はどこへ行けば……。」

シンシア「そうねー。ここからだと、自由の国が近いわ。あそこは大きいわ~。ここよりもずっと大きいわよ。その前にこの国の植民地に入ることになるだろうけどね。」

エミリー「植民地……奴隷が居る……所ですよね?」

シンシア「今は違うわ。自治権だけは認めているの。もし、独立しようものなら速攻で潰す意見を国にだすわ。」

シンシア「世界は広い。だから、もう少しだけ魔王を探して。」

シンシア「魔王はどこかに居るはずだから。」

エミリー「はい!」

シンシア「お父様!この子が乗る船に最新鋭の船での警備をさせるように言って!」

トルーキン「分かったよ。では、2日後。港で会おう、ハート。」

エミリー「はい!トルーキンさん、シンシアさん!」

シンシア「……何か手元に置いておきたい子ね、本当に。」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
2日後。港。


「すげー!あれエクスカリバーじゃん!」

「それぞれ名前があるんだとよ。確か、エクスカリバー、アロンダイト、カラドボルグ、ガリア、フラガッハだったか。」

「まさか5隻も作ってたなんてな。しかも総金属製とは驚き!」

「対抗できるのか?」

エミリー「お世話になりました!」

パシャパシャとフラッシュが焚かれる。

エミリー(眩しい!)

「今回、この船に守られるとのことですが、不安はありませんか?」

エミリー「最新鋭と聞いているので大丈夫だとおもいます。」

「では魔王軍の鉄船に対抗できると?」

エミリー「は、はい!」

主任「はいはい!そろそろ船出の時間だ。では、諸君!頼んだぞ!」

エミリーは船に乗る。乗ったのはエクスカリバー型戦艦1号、エクスカリバー。

エミリー「お元気で!」

シンシア「ああ!」

トルーキン「ハートも!魔王を倒してくれたまえ!」


---怒涛の展開で何が起きたか分からないけど、人生とはそう言うものだと思う。

楽しいばかりじゃない。けど面白い。

船は次の国へと向かっていった。


今回はここまで

---我々は永久に大人になることはないだろう。

そう言えるのは、未熟と言える部分があるからだ。

それを抑えてこそ、大人であると言えるのかもしれぬ。

「何を言っているのか分かっているのか?」

「この縄張りを明け渡せと言っているのだ。ミスター・フランクリン。」

「して、どうするのだ?言っておくが、我々には渡す気はないぞ、クルーガー殿。」

「貴様……!」

スーツの格好を男が、懐から銃を出す。

クルーガー「止めておけ。」

「……」

クルーガー「……我々としても穏便に済ませたくてね。栄光の国の植民地に島を持っているのはあんただけだ。」

フランクリン「……ほう。」

クルーガー「承知したのであればこの書類にサインを1つ、いただけないかな?」

フランクリン「断る。これでも、ギャングなのでね。ここでの島は譲らないが植民地で手を打とうじゃないか。」

フランクリン「悪く無い話だと俺は思う。」

クルーガー「けっ!いいぜ。おい、書類持ってこい!」

書かれた内容を綿密に見る。サイン。フランクリンもサインする。

クルーガー「じゃあこれでお互い安泰ってことで。」

フランクリン「そうだと良いですな。では、失礼。」

戸が閉じる。

夜の街に彼らは、溶けて消えてしまった。

今回はここまで。

少しだけ書くのです。


午前11時。栄光の国植民地「ケバック自治領」


エミリー「冷えるなぁ……。」

エミリー(どうすれば次の所へ行けるのかな?)

エミリー(町並みは栄光の国とほぼ変わらないや。)

エミリー(少し魔王の事について聞いてみようっと)

「すげぇー!あれがエクスカリバー号かー!かっけー!」

「だな!」

「5つもあるよ!全部鉄で出来ているんだって!」

エミリー「あの、すみません。魔王について、そしてここに泊まる場所があるかどうかお聞きしたいのですが……。」


>>>>>>>>>>>>>>>>
午後1時過ぎ。大通り。


エミリー(魔王についてもここには無し。かぁ……)

エミリー(植民地っていい所なのかもしれないわ。ここの人達は幸せそうだし。)

エミリー(くすんだ人が働けてるし、自由そうだし良いことなのかもしれない。)



続きは夜に。

再開します。


「抗争だー!」

「ハインリヒファミリーとトランセンドの連中かよ……。もう何回目だ……。」

裏路地からスーツを着た男達が、銃を持って戦っている。

エミリー(ひぅ!逃げないと!)

>>>>>>>>>>>>
午後2時。裏路地。


エミリー「な、なんなのよ!あの人達!いきなり銃を撃ってるし!」

エミリー(この街について聞かないとダメみたいね……)


午後2時半過ぎ。公園。


エミリー(簡単にまとめればここにはマフィアとギャングがいて、縄張り争いをしている……)

エミリー(魔王はここに手をだしてはいないみたい。それだけはよかったよ)

エミリー(何で争っているのか。「薬」がどうとかこうとか……)

エミリー(でも確か、薬って……ヘロインとか麻薬だよね……?)

エミリー(だとすれば止めないと!)

エミリー(まとめている人を倒せば何とかなるよね!よーし!ならやるよー!)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後5時過ぎ。宿屋。


エミリー(むぅ……見つからなかったよー……)

エミリー(ご飯食べて少し眠いや……)

エミリー「zzz……」



午前1時。


エミリー「んぅー……」

エミリー(少し怖いなぁ……。でも私はめげないよ!)

尿意を催し、トイレへと向かう。

エミリー(……ふぅ。寝よう……)

部屋に戻る。すると外から発砲音が聞こえる。

エミリー(なんなの!?まさか……抗争!?)

銃声と怒声が響き渡る。

エミリー(でも眠いや……)

エミリー(……これじゃ寝れないよ……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前9時。大通り。


「昨日、待たしたらしいぜ。ハインリヒファミリーとトランセンドの抗争。」

「マジでやめて欲しいぜ。」

「この時にガリアスコープが来てくれればな……」

「自由の国の奴らだろ?栄光の国のギャングならトランセンド一強だからなぁー……」


エミリー(ギャングが沢山いるんだね。許せない!)

エミリー(でも早く去らないとね。ここからの馬車や船はないのかな?)

黒服「やあ。お嬢ちゃんはここで何をしているんだい?」

エミリー「実はここから自由の国へ行きたいんですが……」

黒服「ほお、そうかい。ではちょうどいい。私も行くところだからね。私の馬車で送って行こう。」

エミリー「でも、私は馬車に乗っていきたいので……」

黒服「おや、知らないかい。自由の国へ通る馬車は一時的に廃止になったんだ。船もね。」

黒服「何故なら今は魔王が居るからね。一時的にって言うけど実際は永久廃止だよ。」

エミリー(どうしようかな。ここから出たいけど、馬車も船も無い……一回信じてもいいかな)

エミリー「言葉に甘えて……」

黒服「うんうん。子供らしいいい対応だな。車を出せ!」

「はっ!」

馬車が来る。

スーツの人が戸を開ける。

黒服「さあ、お乗りなさい。」

エミリー「はい!」


馬車内。


エミリー「わざわざありがとうございます。」

黒服「いやいや。ここからしばらく行けばいいのだから。近いものだよ。」

馬の変な鳴き声が聞こえた。

黒服「っ!全速力で出せ!嬢ちゃん、しっかり掴まっておれよ?」

ゆっくり走っていた馬車が激しく揺れ始めた。

「ちい!」

懐から銃を取り出す。黒塗りだ。

黒服「嬢ちゃん済まないね。私は……」

「国境を超えました!これで追ってこれません!」

黒服「よし。このまま家へ向かうぞ!」

「はっ!」

エミリー「うわぁぁぁ!」

午前11時。自由の国。某所。


エミリー「ここは?」

黒服「自由の国だよ。でも、お嬢ちゃんに少し詫びを入れないといけない。」

エミリーが辺りを見渡すと、ガタイのいいスーツ姿の男が大勢いた。

多くはライフルを持っている。

エミリー「あ、あの……」

黒服「そうだね。まず、私の名前はアルベルト・ハイゼン・フランクリン。このガリアスコープの頭だ。」

エミリー「ガリアスコープ……?」

アルベルト「つまるところ……ギャングだよ、お嬢ちゃん。」

エミリー(嘘……)


……少女、捕まる。




今回はここまで。

簡単な紹介#12


アルベルト・ハイゼン・フランクリン・・・男性。77歳。ギャング「ガリアスコープ」のボス。自由の国では多くの島を持つギャング。物腰は柔らかいが、冷酷。

クルーガー・・・本名ジョージ・クルーガー。男性。69歳。ギャング「トランセンド」のボス。栄光の国では多くの島を持ち、自治領でも多くの島を持つ。


解説

ガリアスコープ・・・自由の国が持つ巨大ギャング。構成員は約2万人。稼ぎは111億ドラー。

トランセンド・・・栄光の国を拠点とするギャング。世界中に構成員がいるらしい。約2万5千人。稼ぎは208億ドラー。

ハインリヒファミリー・・・拠点地不明の近年勢力を拡大しつつあるマフィア。構成員4万人。稼ぎは416億ドラー。

ドラー・・・自由の国及び周辺国が使う通貨単位。

エミリー「そ、それで私をどうするつもり……ですか?」

アルベルト「そうだねぇ。嬢ちゃんには酷な話だが「抑止力」になってもらいたいんだ。」

エミリー「抑止力……?」

アルベルト「勇者がいるとなれば奴らも手は出せない。君は一度、魔王を会いかつ殺し損ねているからね。」

アルベルト「今までの勇者なら始末しているところだけど、君だけは違う。」

エミリー「私……魔王には会ってませんし、それに倒しても……」

アルベルト「あくまでも強い勇者がいると言う事実が欲しいだけなんだ。……分かってくれるね?」

エミリー(早くここから逃げたいよぉ……)

エミリー「は、はい!」

アルベルト「そうか!お前ら喜べ!勇者が我々に加わるぞ!」

「「「おお!」」」

エミリー「あのっ!私、魔王を倒さないといけないので……」

アルベルト「それなら大丈夫。我々のネットワークでどうにか発見させよう。トランセンドの奴らにも協力させると約束しよう。」

エミリー「協力は嬉しいです!けど……。」

アルベルト「悪い話ではないと思うんだ。後はこれを読んでサインを書いて欲しい。」

スーツの男が紙を机に置く。

アルベルト「さあ、ペンはここにある。よく読んでくれたまえ。」

内容は要約すれば「一時的な戦力として保有する。」と言った物だ。

エミリー(これならいい、かも)

サイン。

アルベルト「よし……。おい、これ無くすんじゃないぞ!いいな?」

「了解、ボス!」

アルベルト「ハートさん。我々はあなたの魔王探しに協力します。同時に脅威も排除できるほどの戦力を提供させていただきましょう。」

アルベルト「ではここから勝手に出ない様にしてほしい。よろしいかな?」

エミリー「は、はい!」

エミリー(いい人達なんだね。しかも協力してくれるし!勇者は魔王を討つ事分かっているんだ!)

エミリー「ありがとうございました!」

アルベルト「ええ。お気をつけて。」

戸が閉まる。

アルベルト「……抗争が終わったらあの嬢ちゃんを片づけるぞ。いいな?」

「いいのですか?勇者ですよ?」

アルベルト「構うものか。勇者は大半は消されているのだ。これは言わば勇者ビジネスと言う奴だよ。」

アルベルト「さて、今夜も血が流れるだろうな……」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後1時。カフェ。


エミリー(コーヒー?ってのは何なんだろ?)

エミリー「すみません、こーひー1つ下さい。」

「砂糖とミルクはお入れになりますか?」

エミリー(紅茶の時はお砂糖沢山いるから……)

エミリー「ミルク抜きでお願いします。」

「2ドラーです。……ちょうどですね。ではお待ちください。」

エミリー(楽しみだなー!)

今回はここまで。

500レス以内には終えるつもりです。

再開します。


エミリー(新聞は……あった!届くかな?よいしょ!……よし!)

エミリー(……最近ギャングの抗争が三日三晩続いているんだ)

エミリー(原因は薬の取引と武器と言われている……)

エミリー(悪い人達なんだね!魔王については……書かれてないや)

「ここの所、最悪だぜ。だってギャングの連中が色々やっているんだ。商売あがったりだわー……。」

「そいつは最悪だな。イケてねー。銃に酒、煙草に薬……全部あいつらだからな。」

「だから俺はチョコレート売ってる。最近だと栄光の国や砂の国、法の国や芸術の国、沈まぬ国にも売ってたんだけどな。」

「法の国と沈まぬ国はヘマして死んじまったからな!ははは!」

エミリー(チョコレートって……確か非合法の物だよね?高く売れるんだ……)

「この前ね、近くの店の金盗ったんだわ。3人でさー。そしたらサツが撃つわ撃つわ。まあ、無事だったがな!」

「賄賂は忘れてないよな?」

「そうだな。これで会社でも興すかねぇーなんっつて!」


「仕事なんかしてらんねー。さっさと黄人(おうじん)や黒人を撃ちたいわー。」

「もうさ、適当な罪ぶっかけてぶち込めようや。その方がええやろ。金持ってないのに生きるだなんてアホ臭いわ。奴隷は奴隷らしく俺らの道具でええっちゅーに。」

「でも、俺らの方が上だしな。自由を守るために執行するのは権利だしな!」


エミリー(……さっさと出よう)


>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後2時半。大通り。


エミリー(この国の雰囲気は明るいなー)

町には劇場やレストラン、雑貨屋などの店が多く並んでいる。

エミリー(活気が今まで以上に満ち溢れているよー!)


「1…2…3!はいっ!」

「「「おお!」」」


「コーラはいかがー?冷えてるぜー」


エミリー(本当に自由!って感じ!テンションが上がるよー!)

エミリー(ん……?そう言えばあのカフェで飲んだ奴……違法薬物のコーヒー……だったよ……)

エミリー(そうだ!飲んだ時は確か水でゆすぐと良いんだった!)

近くの店で510ml入りボトルを買う。

エミリー(ここじゃコーヒーは飲んで良いんだね……)

エミリー(あ、目が冴えてきた!少し頑張れそうかも!おー!)

エミリー(その前に、帰らないとね、あそこに……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後4時。ガリアスコープ本部。


アルベルト「そう言えば、君の今後だが我々の指示に従ってもらうよ。勿論、血が出ることはさせないさ。」

アルベルト「今夜は君に着いてきてほしいだけなんだ。いいかな?」

エミリー「……はい。」

アルベルト「それは良かった。今夜の10時には出るから、それまでにご飯を済ませて寝なさい。」


エミリー(これは何かあるね……隙を見て、この国から逃げよう!)


今回はここまで。

少しだけ書くのです


さて、少しだけだがこの国について説明をせねばなるまい。大丈夫、長くはならない。


見た目、この国は犯罪が横行しているが、同時に大きなビジネスをも容易にすることが出来る。

一流の芸人にも軍人にも、何にでもなれるのだ。有る無しに関わらず。

また、この国自体が多くの民族の混成で成り立っている。

海外では「夢の国」とも呼ばれている。

---「自由の国成立100周年記念-海外向けパンフレット-」より抜粋。


エミリー(まともな人に会ってない気が……しなくもないかなぁ)

エミリー(夜が本番だね!それまでにしっかり寝とかないと!)

エミリー「ベットふかふかぁ~……すぅ……」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後10時半。レストラン「エルフィンフィート」


エミリー(こ、怖いぃぃぃいぃぃ……)

エミリー(早く終わってくれないかな……)


アルベルト「こっちには勇者がいる。しかも、魔王を発見したな。」

クルーガー「こんな子供に何をさせたいのやらなぁ……まぁいい。嬢ちゃん、緊張しなくてもいいぜ?」

アルベルト「はは。高級な店に来たものだから珍重してるだけだな!……で、どうする気だ?島はあんたらのヘマで俺らの島が無くなったらしいじゃねーか。どうすんだ?ああ?」

クルーガー「ハインリヒファミリーはそんなには大きくはねぇ。だから協力を仰ぎに来たって訳だぜ。」

続きは夜に。

よっしゃ!再開しますことよ



誤:アルベルト「はは。高級な店に来たものだから珍重してるだけだな!……で、どうする気だ?島はあんたらのヘマで俺らの島が無くなったらしいじゃねーか。どうすんだ?ああ?」

正:アルベルト「はは。高級な店に来たものだから緊張してるだけだな!……で、どうする気だ?あんたらのヘマで俺らの島が無くなったらしいじゃねーか。どうすんだ?ああ?」

アルベルト「ほう……それで見返りはあるのか?だったら島は返してもらうぜ?」

クルーガー「ハインリヒファミリーはここの所……勢力を伸ばしている。正直言って砂の国の周辺国は、ほぼ奴らのシマだ……。」

アルベルト「話だけは聞いてたさ。他の所はいいがうちに手をだした以上ほっとけはおけないな……!良いだろう、一時的だが協力してやる。その後はチャラだ。」

クルーガー「いいぜ。じゃあ現時点を持って、ガリアスコープとトランセンドは協力関係を結ぶものとする。」

アルベルト「ああ。では。」


午前0時。馬車内。


エミリー「あの……私、役に立ってたでしょうか……?」

アルベルト「魔王を倒し損ねたって話は今まで聞いたことない。だから恐怖するのだよ。」

アルベルト「地下に未使用の武器が多くあった。これでハインリヒファミリーを潰す。」

アルベルト「と、言いたいが動くか分からないものを使いのは嫌なんでね、ボウガンでも武装させるさ。」

午前0時半過ぎ。ガリアスコープ本部。


エミリー「おやすみなさい……」

アルベルト「ああ、お休み。」


アルベルト「さて、どうしたものかな……。」

「ハインリヒファミリーの事ですか?」

アルベルト「それもある。が、いかんせんトランセンドの奴らが何をドジるかも検討つかない……。」

「武闘派ですからね。オツムが無いのは仕方ないでしょう。」

アルベルト「だがカリスマ性はある。傘下にしたいところさ。実の所。」

「そういえばですが、地下にある武器の性能が分かりました。」

アルベルト「ほう。」

「では……発見された資料によりますと「ドラム式短機関銃1000丁。対物砲400門。改造手銃9000丁。軍用ナイフ210本。」……以上です。」

アルベルト「そうか……。」

「失礼します。」

アルベルト「さて、今夜は寝るとするかの。」


何かを含んだ笑みを浮かべ、寝室へと向かった。

今回はここまで。

---この世と言うのは、理想とは大きく異なるものである。

考えや情勢などその都度妨害してくるものだ。

だからこそ、人生とは面白いのではないのだろうか。

同刻。トランセンド本部。


クルーガー「あいつらは武器を持っているはずだ。だが、使わねぇ……。」

「そう踏むんですかい?ボス?」

クルーガー「あれは俺らを潰すための秘密兵器みてーなのさぁ。」

クルーガー「情報が漏れた時点で負けは確定だろ?」

「ですぜ!それと、買い取った「幻獣の咆哮」ですが、こいつは中々厄介な代物で……。」

クルーガー「どんなものだ?」

「う~ん……聞こえない音を出す物ですぜ。試にやったら、頭が割れそうな音がしてきましたぜ!」

クルーガー「そうか。」

「後、もう一つありまして……えーと「Wzzウェーブ」と書かれたのは使ってやしません。いや、使っちゃあいけやせん……。」

クルーガー「何故?」

「使ったら、煮えて弾け飛んだでさ。」

「人が煮えてはじけ飛ぶ光景なんて想像出来やしやせん。しかも広範囲かつ無差別で攻撃可能なんでさ。」

クルーガー「それはのちの決戦で使うとしよう。下がれ。」

「っす!」


クルーガー「魔王が居るだ、魔法はあるだとか騒ぐなんてのは分かるけどよぉー……」

クルーガー「けけ、魔法ってのはきっと身近にあったんだろうかねぇ、ご先祖様の生きてた時代は。」


そう言い、引出しをあける。中に入っていたのは「太陽銃」と同じものであった。


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翌日。午前10時。大通り。


エミリー(長く寝てたせいかなー、少しだるいや)

エミリー(どこかいる場所候補を聞こう!)

エミリー「あの---」


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エミリー「いつも通りで飽きてきたよー。」

エミリー(やめようかな、勇者……。)

エミリー(いや、ダメだ!諦めてどうするのよ!エミリー・ハート!)

エミリー(それに魔王軍があるから平和じゃないんだ!)

エミリーは大通りの店に張られている、世界地図を見る。


エミリー(「堕落の大通り」を抜ければ「森の国」へ行ける!)

エミリー(でも抜けたからどうしたって訳でもない……)

エミリー(見られてるし、うぅ……)

エミリー(争っているのと同時に抜けよう!それがいいかな!)


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午後1時。ガリアスコープ本部。


アルベルト「お嬢ちゃんに食事を誘われるとは意外だったよ。わしも歳を取ったかな?」

エミリー「そんなこと……おいしい!」

アルベルト「ここのハンバーグステーキは絶品だからな!ははは!」

エミリー「……そう言えば本当にするんですか?」

アルベルト「ああ。終わったらやるさ。でも、あのウジを潰してからじゃないといけない。」

アルベルト「ボウガンと銃は多く有るんだ。勝てるさ。」


今回はここまで。

簡単な紹介#13


解説

銃・・・基本的には火打式の銃を指す。手銃もあるが、一発しか撃てない。

幻獣の咆哮・・・音響及び熱線兵器。聞こえない音を広範囲に出し、頭痛を起こさせるほか、体を沸騰させ弾けさせることも出来る。中世の知識・技術では作ることは不可能。

少しだけ書くのです


誤:午後1時。ガリアスコープ本部。

正:午後1時。レストラン。

エミリー「本当にするんですか?」

アルベルト「奴らには何度も交渉をしてるんだが……付け上がりよってのお……。」

アルベルト「シマを渡しても寄越せと言いやがるから本格的に壊滅させようと思った訳だ。」

アルベルト「話し合いの場を設けて、そこで仕留める。」

アルベルト「それがダメなら本部と奴らのシマをブンどるまでだよ……。」

エミリー「そこまで大切なんですか……?食べていくにはってのは分かりますけど……」

アルベルト「俺らみたいなギャングは憎まれてナンボだ。地元とのつながりも大切にはするし、困った時は真っ先に助ける。」

アルベルト「そこらの礼儀も知らない無法者とは、違うんだ。よぉく覚えておきな。」


続きは夜に。


再開します。


エミリー「悪いことしているのは変わりないと思うんです!」

アルベルト「そうかもな。けどな、俺らは社会からの爪弾きものなんだよ。力でしか生き残れないのは必然なのさ。」

エミリー「そう、なんですか……。」

「お時間です。」

アルベルト「では、ハート。君は外で待っていてほしい。大丈夫さ。私の優秀な部下が守ってくれる。頼んだよ。」

「「「はっ!」」」

アルベルト「しばらく帰ってこなかったらウジ共の本部(アジト)と倉庫(うりば)をぶっ飛ばせ。」

アルベルト「ではな。」

そう言い、彼は奥へと消えていった。


午後2時。レストラン内VIP専用部屋。


メガネ「初めまして、ミスターアルベルト。ハインリヒファミリーのボス、アルド・シチリアと言います。以後お見知りおきを。」

アルベルト「ああ、話はかねがね。よろしく。ガリアスコープのボスだ。」

クルーガー「初めまして、ミスター。私はご存じで?」

アルド「トランセンドのボスでジョージ・クルーガー、でしたかな?」

クルーガー「ああ……。まぁいいけどよ。でだ、単刀直入に言うぞ。ここから手を引け。いいな?」

アルド「お断りします。我々だってチョコレートや煙草、麻薬にコーヒー……それらを安価で大量に売っているのです。」

アルド「これはいわば商売です。権利がいる様でしたら、いくらでも金はつぎ込みます。」

アルベルト「金じゃあないんだ、ミスターシチリア。ここにはここの積みかねられた流儀と文化がある。それを尊重してほしい。」

アルド「嫌ですね。何度も言いましたが、そんな古い考えは捨てた方がいいですよ。」

アルド「地元の、行ったってほとんどが都会で暮らしている。なのに今更地元とかアホ臭い。」

アルド「地方は所詮森と工場しかない。そこに居る人間は失礼な話、お人よしな馬鹿しかいない。そうは思いませんか、お二人さん方。」

アルベルト「都会だけじゃ生きてはいけないぞ、それに都市機能なんてのは少しボヤが出ただけでパアだ。」

クルーガー「都市と田舎は共存していると俺は思ってるぜ。馬鹿にすんのもよせよ、シチリア。」

アルド「そう、ですか。では……。ここで終わっていただきましょうか。」


そう言うと、灰色のスーツを着た男たちが銃を持って現れる。発砲。

クルーガー「クソ!このレモン野郎め!いきなり撃つなんて聞いてねぇぞ!」

銃弾の雨を躱しながら進み、懐にある太陽銃を取り出し撃つ。

肉の焦げた臭いが漂う。


「ボス!こいつ変なのもってます!ここは引いた方がええのでは!?」

アルド「はは、ははははっは!魔術を受けるがいい!」

逃げながら、取り出したのは金属製の球。側面には何か書かれており「sarin:100%:South Korea United」と書かれている。

アルド「死ね!」

カチリと音がし、転がる。辺りから、空気が出て来る。

アルベルト「逃げるぞ!これを吸ったら死よりヤバいのがくる!」

同刻。レストラン。


エミリー(遅いなぁ……)

アルベルト「嬢ちゃん……かは!逃げるぞ!」

エミリー「え?」

アルベルト「あいつ魔王軍が使ったのと同じのを使いやがった!」

エミリー「え?え?」

アルベルト「道中で人が失禁して大勢倒れてた!2年前に魔王軍が襲われた時にもやられたんだ!」

クルーガー「ジーザス!」

アルベルト「奴らのシマを全部奪い返せーーーッ!これは命令だ!」

「「「イエッサー!」」」

アルベルト「馬車に乗れ!」

エミリー「はい!」

騒ぎを聞いた人達が、集まり、せき込む。

その間にもエミリーは急いで馬車に乗った。


午後2時半。馬車内。


アルベルト「あれは間違いない……あいつらは魔王軍の魔術を何故か使用していた。」

クルーガー「だな……しかしどこからンナ物を……。」


今回はここまで。

少しだけ書くのです


エミリー「そんなものを再現出来る訳ないじゃないですか!」

クルーガー「それが出来るんだぜ嬢ちゃん。」

クルーガー「その答えは「遺物」と「本」だ。遺物は再現できなくもない物もある。栄光の国が持つ金属製の船と魔王軍の鉄船は、ずっと昔じゃあ「戦艦」とも呼ばれていたらしい。」

アルベルト「はっきりとは言えないが、工廠の方で遺物を元に銃を作っているって話を聞いた。時間はかかりそうだがな。」

エミリー「遺物は元々先祖の人達が作った武器……?」

アルベルト「一応はね。再現できなきゃ「魔術」なのさ。」

エミリー(光の短剣、断絶の杖……太陽銃にエクスカリバー……再現は出来ない、かも)

続きは夜に。

再開します。
これ500レス以内で終わんないな…



エミリー「魔術は科学って事ですか!」

アルベルト「そうかもな。さて、反撃しないとな……!」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後3時。某倉庫内。


クルーガー「ここは正式に不可侵となってる倉庫だ。爆破されることも攻撃されることも無ねぇ。」

アルベルト「部下は集めた。後はここで叩くまでだ。」

銃やボウガンで武装した黒服たちが外へ出た。

直後、銃声に悲鳴。

アルベルト「後は本部へ戻るだけだ。ここに居ると思わせれば十分。逃げるぞ、ハート。」

エミリー「え、あ、はい!」

クルーガー「こんな程度かねぇ、勇者ってのは……。」

エミリー「……ッ」

エミリー(無力な自分が……悔しい……!)

午後9時。ガリアスコープ本部。


「奴らの倉庫を全て処理しました!倉庫3つ爆破、残り10はトランセンドと折半です。」

アルベルト「そうか。うむ、下がれ。」

「では……。」

アルベルト「ハート、これ見てみな。」

渡されたのは、今日付けの夕刊。

エミリー(魔王軍に襲われて……300人死亡……?なに、これ……)

アルベルト「つい数時間前の出来事だとさ。その時なんて、抗争してたんだ……。」

エミリー「嘘……付き……です……!どうして!提供するってのは嘘だったんですか!」

アルベルト「紙をよく見てみろ。ちゃんと「ただし組織の利益に関わる場合、これを破棄するものとする。」だ。」

アルベルト「きちんと読みな。嬢ちゃん。」

エミリー「……ッ!」

アルベルト「子供だからって内心甘えてたんじゃないのか?良い人なんて世の中そんなに居やしない。」

アルベルト「君は勇者だ。それにこんな情報は実の所もう掴んでいたのだよ。」

アルベルト「では、今を持って君をここから外す。契約書だ。きちんと読めよ?」

エミリー「……分かってますよ。」

エミリー(……)

サイン。

アルベルト「……確かに。では、さようなら。」

エミリー(酷いよ……。けど、そんなんじゃない。これはミスだ。自分の。今までの。誰かに甘えるのは……もうやめようかな)


闇の中をたいまつで照らしながら少女は進む。

途中短剣を取り出し、頭に当てる。

腰まで長い綺麗な金色の髪を肩まで斬り落とした。

その姿は---幼さを少しだけ、ほんの少しだけ捨てた大人に見えた。



今回はここまで。

---もし、今まで体験したことが無い事が起こった時の対処法を諸君らにお教えしよう。

まずは落ち着き、受け入れる事。これが全てだ。

さすれば、あらゆるものに対処できるであろう。

岸からちょうど数メートル離れた森で、息をひそめる。

彼女は弓を、静かに構え、獲物が来るのを待つ。

今日の獲物は、大きなワニだ。

目測1.2メートル。これだけなら2週間くらいは持つだろう。

何食わぬ顔で上がってくる。罠にかかるまではもう少し。

かかった。白い肌を地上に晒す。それに数本の矢を当てる。

痙攣を起こした後、持っている石斧で頭を割った。

動かなくなったことを確認し、蔓で縛り、どこかへと去っていった。


こんかいはここまで。

午後10時。堕落の大通り。


エミリー「はぁ…はぁ…」

エミリー(誰もいないなんて……どうなっているのかな……)

歩いてかれこれ2日は経っている。

食料と水等の必要な物は自由の国を出るときに、郊外で全て揃えた。

エミリー(ご飯も水もあと少ししかないや……せめて1日持たせよう)

エミリー(……お腹、空いたなぁー……)

エミリー(!何だろ、これ)

エミリー(大きい建物!砂の国に見たものとそっくり!)

エミリー(少し休もうかな)

エミリー「ふぅ……。」

エミリー(今夜はここで寝よう。木を探してくべて……マッチマッチ…あった。……火を焚いて…お休み……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前8時半。


エミリー(よく寝た~)

エミリー(「騙される方が悪い」、か……。人間も魔物なのかもね……)

エミリー「はぁ、はぁ」

エミリー(あれ……?どうして、地面に……寝ているの……?)

エミリー(眠たく……なって……)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前10時手前。誰かの家。


エミリー「ん……ここは…?」

スレンダー「ここは、アマゾー族の村……。」

エミリー「森の国ではないんですか?」

スレンダー「森の国?どこの村にあるんです?ここにはそれぞれの村が散らばっているので……」

スレンダー「あなた、悪いけど、ここから出て行ってくれませんでしょうか……?」

エミリー「どうしてです?」

スレンダー「色の違う者を入れておくと村が滅びると言った言い伝えで……まあそう言う事、です」

エミリー「えっと……」

離す前にお腹が鳴った。

スレンダー「……ご飯、作りますね」


エミリー「美味しいです!鳥ですか?」

スレンダー「ワニです。ここだと貴重なタンパク源ですよ。」

エミリー「ここから次の国へ行くにはないんですか?」

スレンダー「そのまま行くと、死の世界へ行きますです。だって、世界は平らなのですから。」

エミリー「丸ですよ、だってそう習いましたし!」

スレンダー「こっちだと世界は平ら、です。あなたの教えはいらないですね。」

エミリー「丸です!」

スレンダー「平らです!」

エミリー「丸!丸なんです!」

スレンダー「世界は1枚の板です!」

「おーい、狩りの時間だぞー!何してるー?」

スレンダー「……今行きますですよー!君はここに。後世界は平ら、どう考えても平らです」

そう言うと、彼女は立てかけてあった弓と矢を持って出て行ってしまった。

エミリー(外を見るだけならいいよね)

窓から覗く。すると、くすんだ色をした人たちが、変な格好をしていた。

半裸に近い形だ。男女も老若も。

エミリー(はわわ……)


今回はここまで。

エミリー(何か話してる……)

「sorehanaiyo!」

「demo、sonnahanasimoarumitaidayo!」

「dousitaraiinokana……?」

エミリー(わ、分からないっ!栄語じゃない!?大和語か中心語?)

エミリー(話してみないと分からないよね……似たような事言えば大丈夫!)

エミリー「あの!」

「?nannda?」

エミリー「じ、jutusha……えーと…hahoo、wo、gateirundeshu!」

「haooo?nanndesa?」

エミリー(勇者ってどういえば……)

エミリーは身振り手振りを交え、話した。

エミリー「ソード、eiei!hahoo、tasetu!これ!」

王から受け賜った黒い板切れを見せる。

「……?imifumei」

「nanikore?kika?」

エミリー(つ、通じてない!?そ、そんなぁ~……)

エミリー「くぅぅ……」

スレンダー「あの。何、しているですか?出ないと私、君に言いました。」

スレンダー「oi、koituninanikatewokuwaenakaxtutaka?」

「sitemasenyo!karennsama。hontoudesu!?」

「soudesuyo!mimasitamono!」

スレンダー「souka。kanshasuruzo。」

スレンダー「君、名前、何ですか?」

エミリー「エミリー、エミリー・ハート!」

スレンダー「私は、カレン・エレファート、です。よろしく、エミー。」

エミリー「はい!カレンさん!」

エミリー「ここでは変な言葉で話してますね?」

スレンダー「ここの言葉、あなたで言う、大和の言葉、です。」

エミリー(大和語……これが……)

スレンダー「私、自由の国、見てきた。とても、怖い。だから、話せる。です。」

エミリー「2つの言葉を扱えるなんて凄いです!」

スレンダー「えへへ……。」


今回はここまで。

少しだけ書くのです


カレン「自由の国、とても怖い、ですね。だって、変な物使う、です。」

エミリー「銃の事ですか?」

カレン「tigau!筒で、音鳴る。それで、傷つく。」

エミリー「それですよ!」

カレン「銃、un、oboeta」

エミリー「?」(分かった、ってことでいいのかな……?)

カレン「勿論だよ」

エミリー「今流暢に……」

カレン「そうだけど?」

エミリー(よく分んない人を捕まえた気がする……)

カレン「片言だと油断しやすいからね。自由の国から出るために、そして栄光の国を出るために覚えたから。」

カレン「何十年も奴隷生活は嫌だったけど…ここに来てからはのんびり暮らせてとてもいいわ。」

エミリー「えーと、どのくらい…」

カレン「今28だから……20年、かしら。」

カレン「出るのには時間がかかったわ。性処理や虐待に耐えながら機会を窺い、言葉を覚え、海を渡って……」

カレン「そして今に至る訳。どお、分かった?」

エミリー「じゃあ魔王が居ることも?」

カレン「hai、鉄船にトリが乗っていたわ。かなりの数よ。」

カレン「たまに飛んでくるけど……居た!」

空を見る。深緑色に塗られた体、双方の羽に赤い丸。

エミリー「何ですかあれ?」

カレン「魔王軍の魔物。」

エミリー「十字マークじゃないんですか!?」

カレン「あっちだとそうだけど、ここだと主に赤い丸なの。炎の威力も、強さも違う。」

カレン「船は大きなものを8つ確認してる。」

カレン「トリを乗せたものは……数十。」

カレン「まるでわが物ね……」


続きは夜に。

再開します。艦これのラストダンスが終わりませんでした(全ギレ)

エミリー(もしかして魔王軍は1つの集まりじゃないのかな?)

カレン「丸もそうだけど、星を付けたものも相当危険だわ。あれは数と威力がね……ほとんどは私頼りだけど。」

エミリー「大砲も無いのにどうやって…」

カレン「「龍の伊吹」を使っているわ。」

エミリー「それってオーパーツ……」

カレン「龍の伊吹は龍の伊吹。村の、一族を護る神聖な武器よ。それを扱えるのは私だけ。」

カレン「それ以外にも「神の眼」と「奇跡の水」があるわ。」

カレン「奇跡の水は凄いのよ!あれに毛や血を入れるだけで、元に戻るの!例え形なく死んだ人間でも!」

カレン「それ以外にも、生きているなら一時的に不老不死にあるわ。」

カレン「死は意味無し。神も魔王も意味無し。それが、我が一族に伝わる言葉よ。」

エミリー「生き返る……」

ふと、大切な人の顔が思い浮かんだ。


今回はここまで。

カレン「だけど、私は死にたくはないの。感覚がね、分からないのよ。」

カレン「ここの人達は腕が無くなっても、心臓が無くなっても頭が無くなっても…奇跡の水に浸けておけばその内戻るの。」

エミリー「ここの人達は…何者なんですか!死んでも生き返るなんておかしいですよ!」

カレン「よその人はそうかもね。神の眼に見るといいわ。あれは生死を判断しているから。青くなったときは死んだ扱いなの。」


「神判の時間だぞー!皆の者集まれー!」


カレン「ちょうど良かったわ。さ、行きましょう。」


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
正午。生死の法廷。


「seishukuni!koreyoriseisinin「シリカ・ロナウジーニ・コソヴォ」noseisiwokimeru!」


エミリー「裁判…生き死にをこれで決めるんですか…?」

カレン「そうよ。今のは彼の今後を決めるの。善行や悪行、その他もろもろを判断してね。」


「orehananimositenaizo!」


エミリー「えーと、何を言っているんですか?」

カレン「やましいことはしてないってさ。」

エミリー(大和語……物にしないとこれからいけないのかも…)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後1時手前。生死の法廷。


「masakasibouhannteinantenaー、odorokidaze」

「shouganaidaro、aitutokunikoukenntokasitenaisina…」

「yousuruninamakemonoxtekotoka」



エミリー「カレンさんはこの後予定ありますか?」

カレン「あなたをここから出ていかせるって事…って言いたいけど、どうする?」

エミリー「出来れば大和語を教えて欲しいんです!将来使いそうだから……」

カレン「役に立つか分からないわよ。下手したらあなたの使っている言葉の方が需要あるかもしれないし。」

続きは夜に。

再開します

エミリー「少なくとも他国の言葉くらいは分からないと、魔王の情報も集まりそうには…」

カレン「魔王?あなた勇者?」

エミリー「はい!」

カレン「……なら教える代わりに手伝いをしてもらおうかしら。それでならいいわ。」

エミリー「あ、ありがとうございます!」

カレン「じゃあ早速してもらいましょうか、狩りの手伝い。」

エミリー「狩り…?」

カレン「ワニや鶏を捕まえるのよ!」


午後2時。アマゾー河。


エミリー「抵抗あるなぁ……可哀そう……」

カレン「生きるためだししょうがないわ。自分が生きるためには何かを殺すしかないのよ。」

エミリー「……うぅ」

カレン「さ、狩りの時間よ!」

カレンは矢を持ち、弓を引く。しばらくして声が森に響く。

カレン「オオハシねぇ…泥と一緒に焼けば食べれなくもないか…」

カレン「demo…doroyakimoiisi、mizunimoiina…」

カレン「今夜はオオハシの水煮に決定!」


今回はここまで

---常識と言うのは時と場合、所によって違うものである。

今まで持っていたことを改める必要があるだろう。

今までを無くすくらいには。

南東方面。上空一万キロ。


大型のトリが、この場合はワシと言うべきだろうか。

その大群がどこかへ移動している。

側面に星が書かれたそのワシ達は、奇妙な声をあげながら進んで行く。

禁術を乗せて。


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午前10時。カレン宅。


エミリー「で、でむん!」

カレン「意味は?」

エミリー「悪魔です!」

カレン「sonotouri!」

(遅れながらの)簡単な紹介#14


カレン・エレファート・・・女性。28歳。栄語が話せる女性。元奴隷で逃げてきたという経歴を持つ。アマゾー族では結構いい位置にいるらしい。


解説


龍の伊吹・・・村に伝わる武器。トリやワシ等を落とすことが出来る。重く、専門的な知識が居るためエレファート一族にしか使うことが出来ない。

奇跡の水・・・不老不死や人体の完全再生が出来る水。どこかに刻まれた文によると「心が壊れる」らしい。

神の眼・・・生死を赤と青で判断する。赤は生き、青は死を表す。

午後6時。カレン宅。


エミリー(通じるか不安だなぁ……)

エミリー(書けたり、読めたりはしたけど…綴りがあっているか……)

エミリー(ずっと前に見た異世界へ行っても言語が通じる、みたいなことが起きたらなぁ)

エミリー(カレンさんは「言葉より態度」なんて…う~ん、魔王はもしかして言語は違うとかかな?)

エミリー(少しだけ、聞き込みしてみようかな…)


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翌日。午前9時。村のストリート。


エミリー(通じているといいな…)

エミリー「あ、ano!」

「…?dousitandai?」

エミリー(通じた!やったぁー!)



続きは夜に。

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午前10時手前。木陰。


エミリー(魔王はここにも居るみたいだけど……)

エミリー(えーと、メモメモ……)

エミリー(有力な情報は無し、かぁ)

エミリー(分かったことはある。それは私の所とこことでは魔王軍の種類?が違うみたい)

エミリー(……どこでも魔王の情報は欲しいんだね)

エミリー(ご飯食べたらまた聞きこまないと!)


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午後1時。大通り。花屋前。


エミリー(どこの国でも花は綺麗だねー)

エミリー「どこに魔王は居るんだろ、まさかこの中に居ましたなんてないよね……」

カレン「魔王、見つかった?」

エミリー「全然です……次もその次も同じだと思いますけど」

カレン「そう。見つかると良いね、情報」

カレン「魔王なんか幻想なのにな……」

エミリー「?何か言いました?」

カレン「私は狩りに行かないと。ではさらば!」

勢いよく出て行ってしまった。

エミリー(一体どこに居るのやら…)

カレン「おい」

エミリー「早いですね」

カレン「外に魔王軍が居た。ここに居ろ」

エミリー「魔王軍…!」

窓を覗く。持っているのは---変わった筒だ。しかもエミリーが見た魔王軍が持つのと同じ物。

エミリー(……魔王軍!?でも恰好同じだし……)

よく見ると、持っている物が違う。USと書かれたポシェット、長細い筒を持っている。

カレン「futateniwakarero!aiturahakazudekitarayabaiga、konkaihaju-nindakeda!tubusuzo!」

エミリー(兵装が弓じゃなくて……筒!?)

彼女たちが持っているのは敵と同じ物。

それを使いこなしている。

エミリー(魔王軍の兵士が簡単に死んでいくだなんて信じられないよ……)

それをいともたやすく殲滅する。バチバチと言う音が聞こえた後、サラサラと散っていった。

エミリー(これじゃ勇者はいらない…もしかしたら……)

エミリー(私は……元の生活に戻れるのかもしれない)


今回はここまで

しばらくすると乾いた音は止み、再び静寂が戻った。


エミリー(魔王の討伐……もしかしたら……)

カレン「無事だったみたいね。手に持っているの気になる?」

エミリー「……」

カレン「安心して。私たちは魔王軍じゃないわ。これはここのご先祖様が残して下さったものなの。」

エミリー「あの、ですね……。私の代わりに魔王を……倒してくれませんか……?」

カレン「…本気?」

うなずく。

カレン「……魔王は討つことは出来ないわ。どこにいるかの検討は?兵力は?装備は?ほら、答えられないじゃない。」

エミリー「あう……」

カレン「分かっているのは強大な力ってだけ。ここに居ないしどうする?」

エミリー「船は…どこですか?」

カレン「はぁ……。諦めるの早過ぎ。ここには無いけどね。少し、少しだけあなたの旅に付き合うわ。」

カレン「今まで相当な経験してきたみたいだけど成長なんて感じられない。それじゃあ子供だからって舐められるわ。」

エミリー「一人で今まで旅してきたんです!」

カレン「本当に?多くの勇者は何かしらの仲間がいたらしい。最初からでも途中からでもね。それに大人が居た方が安全じゃない?」

エミリー(一理ある……)

カレン「じゃあ2日後に行くから準備しときな。決定事項だからね。」


---今までとは違うような、新しい何かが始まろうとしていた。

少女の中に、「大人」が加わった。

強い大人が。



今回はここまで

諸事情で更新スピード落ちます。ごめんなさい

我々が恐るものは2つある。

未知と死だ。

しかし、未知が無くなり、死も無くなりつつある。

それでも恐れているとはこれ如何に。

エミリー「軍艦……ですか」

カレン「あぁ。魔王軍がいるからな」

多くの大砲が脇に付いており、魔王軍のと比べるといいほうなのだろう。

潮風の中に火薬の臭いが僅かに混じっている。

カレン「正直アンタみたいなのが勇者ってのが信じられないよ。まだ子供じゃない」

エミリー「……子供じゃないです」

カレン「時には大人を頼りなよ、エミ。頼る事は悪い事じゃないのさ。多いとムカつくけど」

エミリー「むぅ」

カレン「船は一時間後に出るから、適当にふらついてな」

エミリー「はあ」

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エミリー(魔王は多分いる。多分…)

エミリー(邪悪な存在って事は誰でも知ってるしなぁ……)

カレン「行くぞー」

エミリー「はーい」

どうやら、出航時間のようだ。

やや厚い鉄の板の上を歩き、乗り込んだ。


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エミリー「快適ですねー!んー!」

カレン「それはそうだろうね。何せ武装客船らしいからな」

エミリー「恐ろしい……」

カレン「流れ的にはあってもおかしくないだろ」

カレン「けどサービスは一流だな。パンフに書いてあった」

エミリー(信頼していいのだろうか?)

海の上は静かそのものだ。

エミリー(上に行こうかな)


デッキ。


波の音、潮風、カモメの声。

空は澄んだ青だが、海は深い青だ。


エミリー(魔王はもしかして海の底に…なんてね)

エミリー(あれが、次の所かなぁ?)

エミリー(魔王軍とは無縁そうな島……)


船はゆっくりと動いてゆく様に感じた。


エミリー(今は、少しだけ…楽しもうかな)

向かう所は、多くの島が集まってきた国の様だ。

エミリー(まだ長くなりそうだし、寝ておこうかな)


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「めんどくさいぜ……」

「いいか?今回狙うのはこの船だ」

望遠鏡で覗く2人の男。「くすんだ色をした」人達。

一人は大柄でもう一人は普通だが、腰に細く綺麗に曲がっている剣を差している。

「だからって無茶でしょ。大砲積んでるぜ?しかも16門」

「いいんだよ。そうじゃないと海賊船の意味無いだろ。それに、あれを奪えばこっちの物だ」

「<フィリピッノ>の手にかかれば、いくらでもだ。金も女もな」

「名誉が抜けてるぜ、旦那」

「じゃあ野郎どもに伝えるぞ。何、子供は逃すさ。そもそもこんな所は寄りつくところじゃないだろうしな」

「……そうか」

仕舞った後、高台から降り彼らの仲間が待つところへ戻って行った。

続きは夜に。久々過ぎて少し思い出せないや…

エミリー(ここは…?汗でもかいたのかな……?)

起きた場所は海ではなく陸。宿のベットだ。

カレン「起きたか。ま、いいけど」

エミリー「あの……」

カレン「ああ、ここは海洋の国さ。多くの島が点在してるからそう呼ばれている。多少不愉快だろうけど、一帯すべてそうだから安心しな」

カレン「精々魔王が居るかどうか探すんだな。私は寝るよ」

そう言い、寝てしまった。このまま起きる様子も無い。

エミリー(魔王について集めようかな)


大通り。


カレン(くすんだ人たちが沢山いる!)

少女の眼には、奇怪に見えるだろう。

カレン(もしかして……くすんだ人たちが沢山住んでるだけなのかも)

カレン(むむう……)

今まで見た花よりも、派手な色合いのが多い。匂いも少々キツイ。



「お嬢ちゃん、花なんか見て何してるんだ?」

物腰が柔らかそうな顔をし、腰には細いしなった棒を腰にさげている。

エミリー「え!?いや……その……冷やかしじゃなくて……」

「ははは。気にしなくていい。たまに嬢ちゃんみたいなのも来るからな、うちの所には」

エミリー「そうなんですか」

エミリー(って凄い分かりやすい話し方……)

「そうだな……これはどうだ?確か……ビワモドキだったな」

エミリー「可愛いー!これいくらですか?」

「そうだねぇ……メディアナさんだし1ヘソ。どうだい?」

エミリー(ヘソ?)

持っているものは全て違うものだ。

エミリー「うぅ……」

メディアナ「もしかして、替え忘れたか?」

エミリー「…はい」

メディアナ「両替するところないからそのままでも使えるぜ。価値は十分の一だけどな」

今ある金額は……余裕で払えそうだ。

エミリー「これで……」

「30ドラーね。ちょうど出し持っていきな」

エミリー「ホントに!?」

メディアナ「払うもの払ったしいいじゃねぇの。他行くところ有るか?嬢ちゃん」

エミリー「そうですね……」

メディアナ「知らねーなら、あそこ行くか」

エミリー「あそこ?」

メディアナ「「天界への柱」。かなりデカいぜ。面白いのも結構あるから、外の人間にも人気有るんだ」

エミリー「じゃあ行く!行きます!」

メディアナ「じゃあ行くか!」


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天界の柱。


エミリー「大きいですねー……」

ふと、別の物を思い浮かべる。

エミリー「確か、芸術の国でも見た気がします」

メディアナ「……?んだそこは。ま、いいや。中も入るか?」

エミリー「はい!」


エミリー「やっぱりそっくり……」

大きな扉。隙間がわずかに開いており、巨大な紐が垂れている。

他は変わらない作りだ。

メディアナ「その、なんだ……つまんなかったか?」

エミリー「凄く面白いです!見たことあるのが沢山あるもの!」

メディアナ「……変わってるなー」

続きは夜に。

エミリー「後は!?後は!?」

メディアナ「そんな期待された眼で見られるとなァ…ならあそこにするか…」


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戦果業(せんかごう)。


エミリー「ここは?」

メディアナ「ずっと昔に戦争を起こしそうになった兵器が置いてあったらしい。反省と平和の意味を込めて…らしいぜ」

大きな、円柱に半円のふたが付いている。それが数本むき出しで置いてあった。

エミリー(どこかで…気のせいだよね)

メディアナ「あれ一つで世界を終わらすことが出来たらしいから「よくしりょく」って呼ばれてたらしいぜ」

エミリー「よく分んないですね」

メディアナ「俺もさ。でも触れたら災いが来るらしいからな。実際、あそこに言った奴は一週間も経たずに死んでる」

エミリー「危ない所連れて行かないで下さいよ…」

メディアナ「はは!近く無きゃいいのさ」

今回はここまで。

エミリー「あの……ですね、魔王軍について何か知っている事を……」

メディアナ「魔王軍、なァ……。かつての魔王は英雄なんていう奴が居たんだ。いわく「人類史上最も平和かつ平等に見てきた者」らしいぜ」

メディアナ「端的に言えば「神」だな。そもそも、人類史上ってのが意味わかんないぜ……俺らが手を取って暮らした時代なんてそんなにねーのにな」

エミリー「それって争う必要も無いって事じゃないですか」

メディアナ「争いはどこでも起きるものだぜ、嬢ちゃん。もう日が傾いてやがる……。そろそろ帰るか」

エミリー「はい!」


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宿。


カレン「おかえり。集まった?」

エミリー「全然です……はぁ……」

カレン「魔王自体は存在すら知らない。それどころか、今の技術をもってしても作れないのがほとんどだ……」

エミリー「そうですよね……」

カレン「風の噂じゃ人じゃないのがいるらしい。魔王の手先かもね」

エミリー「魔王のですか……」

カレン「ああ。私は寝る。おやすみ」

エミリー(魔王はかつて英雄だった……?こんなにも世界中に被害をもたらしているのに……?)

エミリー(……本か何かあればいいのですが……)

カレンはもう眠りについている。

エミリー(明日にしよ……)


同刻。


「何にもないな……この船!」

今居る船は、エミリーたちが乗っていた武装客船。

メディアナ「そんな事言うなよ、アルフォーンの旦那」

アルフォーン「金銀もない……ましてや宝石もな!」

メディアナ「でも、乗っ取れるだろ。鍵は複製すればいいだけだよー。でしょ?」

アルフォーン「……まぁいいか。奪うぞ!<フィリッピノ>のためにな!」

続きは夜に。

メディアナは下げた物を引き抜く。すらりとした刀身が現れる。

アルフォーンは懐から手銃を取り出した。

武装客船内の警備員を脅し、メインルームへと案内させる。その後首をはねて始末。

乗っ取りは成功だ。

メディアナ「後はこれをいつもの所へ持って行って、改造するだけだな」

アルフォーン「ああ。そうすれば魔王の鉄船なんて一発だ」

夜はまだ明けそうにない。

少しだけ時間出来ました。
かなり放置していてすみませんでした(_ _)

夜頃再開予定です

翌日。午前9時少し過ぎ。大通り。


エミリー(人を殺してる魔王が英雄…?)

エミリー(……意味わかんないよ)

翌日になっても、疑念が消えることはなかった。

エミリー(図書館は……無いみたいだし……聞いて行くしかないみたい)

「港の方で大騒ぎしてるぜ」

「何があったんだ?酔っ払って落っこちたのか?」

「違うらしい。何でも盗られたって話だ」

エミリー(盗られた……?)


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港。


エミリー「嘘……」

昨日来た船がいつの間にか消えている。

エミリー「あの、少し良いですか?」

「ん?」

エミリー「船はもう出たのでしょうか?」

「出る予定は朝早くさ。けど、それがなかったんだと」

エミリー(無くなっていた居たって事かな?)

エミリー「ありがとうございました!」

「元気が良いねぇ。おじさんも元気になりそうだよ」

エミリー(無くなったのはいつからか確認しないと)

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大通り。午前10時半過ぎ。


カレン「協力しろって?」

宿を出て、ふらついているカレンを見かけた。



エミリー「じゃないと帰れませんよ?カレンさん」

カレン「……しょうがない、付き合うよ。じゃないと帰れそうにないしね」

エミリー「よし!さっそく聞き込みだーーー!おー!」

カレン「……騒がしくしないでくおくれよ……」

エミリー「騒がしくはしませんよー」


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正午過ぎ。木陰。


カレン「全然ないじゃないか!あー……眠い」

エミリー「うー……」

エミリー(少なくとも夕方までにはちゃんと在ったんだ。しかも、誰も触れてない。これだけでもいい情報だよ)

カレン「熱いぃ~……少しご飯食べてこうか、エミリー」

エミリー「まだ行けますよ?」

すると、お腹から声が出た。

カレン「食べてからでも遅くは無いだろ?」

エミリー「ですね!」

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午後1時。


カレン「さて、と。聞き込みする?私はしばらくふらついてるよ。じゃあ」

エミリー(無責任な……)

エミリー「聞き込み頑張ろうっと」

エミリー「あの……」

「なんだい?」

エミリー「船が盗まれた事知ってますか?」

「そりゃね。で、その聞き込み?」

エミリー「そうです。何か知りませんか?」

「そうだな……海賊が居るらしいんだ」

エミリー「海賊?」

「人質取って金や物を奪う奴らさ。何でも魔王軍の鉄船を沈めたとかなんとか……」

エミリー「そうですか……組織名は分かりますか?」

「フィリッピンだかピフィリッピノ……だった気がするな」

エミリー「お忙しい所、ありがとうございました!」

「じゃあな、嬢ちゃん」

エミリー(フィリッピンかピフィリッピノって組織があるんだ……これも少し調べておこうっと)

今回はここまで

---私達はどのように生まれ、生きたのか。

それを知るのは記録だ。

絵や文字の集合体により、知ることが出来る。

昔はどのような時代で、情勢で、歩んで行ったか。

それらを残しておきたいのはと思うのは、自分が生きた証を残したいからだろう。

午後3時。


「不審な動きして居る奴らがいるのはホロ島よ。あそこは特に何もない場所なんだけどねぇ……」

エミリー「そうなんですか……ありがとうございました!」



エミリー(手がかりは掴めたけど、ここで会っているのかな……?)

今いる所はボートを漕いで一時間弱の距離にある島だ。

入り組んでおり、人が住んでいる気配はない。

エミリー(変な物あるし……)

踏んだのは、赤と白が書かれた布きれだ。

エミリー「早く探さないと……」

懐からナイフを取り出す。少しだけ重く感じる。

それを両手で持ちながら進んで行く。

エミリー(うわぁ!足場が脆いんだ……気を付けて行かないと……)

少し高めだ。大した事ないように感じるが、落ちれば怪我はするし、下手すればオサラバだ。

エミリー(何もないなぁ……)

有るのは荒れ果てた光景だけだ。そして、高くそびえる山。

少しづつ慎重に、進んでゆく。

山の所まで来た。

人が入れる扉があった。

エミリー(山じゃなかったんだ……)

昔、何かを運んでいたのかもしれない。

エミリー(……開いた!)

中は暗く、余計に緊張する。

慎重に登り降り、進む。

光が見えた。

中に在ったのは---


エミリー「武装……客船……?」


先ほどの扉とは比べらならない大きな物。下には水が張られている。

エミリー(間違いない!昨日乗ってきた船だ!早く出て知らせないと……)

元の道へと戻る。

こけながらも進んでゆく。

エミリー(出口だ!)

開けると、人が大勢いた。

腰には剣や銃がかけてある。

急いで、閉め隠れる場所を探す。

エミリー(船の中なら大丈夫……だよね)

今回はここまで。

エミリー(船底なら見つからないはず……)

エミリー(この船……人っ子一人いないよー……動いてる理由がわからない……)

暗く、今どこに居るかすらわからない。

この時代の船は多くの操舵を複数人で行う。特に、今居る所は船の足であり、多くの人が居るはずなのだ。

しかし、人の痕跡すらない。

エミリー(どうしよう……このまま居てもどうにもならないし……)

ふと、何かにぶつかった。

エミリー(……「エンジン」?大きな暖炉みたい……)

エミリー(もしかして、これで動いているのかな?)

奥には「石炭」と書かれている。

しかし、この暖炉はどこかで見たことあるような気がする。

エミリー「……思い出した!栄光の国で見たもの!水蒸気?が出ていたはずだけど……」

カツカツと、言う音が聞こえてきた。

エミリー(はっ!隠れなきゃ!)

適当な場所に身をひそめる。

先ほど見かけた、人達だ。

「この船の舵はスゴイな……人が少なくても動くんだからよ」

「だまって石炭放り込むぞ」

炉に火がともる。そして、石炭を男たちは入れ続ける。

そして、船は動いた。

エミリー(どうしよう、どこか扉無いのかな……)

しばらくして、好機が訪れた。

「少し煙草でも吸おうぜ」

「そうだな。ここに居ると気が滅入るな……」

カンカン、と言うのんびりとした音が響く。やがて消えていった。

エミリー(今なら逃げれる!)

音をたてず、慎重に慎重に進んでゆく。

エミリー(落ち着け、エミリー・ハート……。今落ち着かないとダメだよ)

進むたびに、心臓がと飛び出てしまいそうになる。

しばらくすると、廊下へと出た。

エミリー(適当な部屋にでも行って身をひそめて、適当なところで出よう)

手前に在った部屋に身をひそめる事にした。

エミリー(銃や剣が沢山……)

その中に手銃がいくつかある。

エミリー(短剣だけじゃダメだよね……少しだけ、少しだけ貸してもらおう)

盗み自体に相当な抵抗があるのは当たり前だが、今は死ぬかもしれない。

これだけの武器だ、殺されても、腕が弾き飛ばされても文句は言えないだろう。

それを懐へとしまう。

剣とは違う重さがある。

船の構造は船底を除く6階建て。

客室は乗るのは2階からで、1階は大砲が備え付けてある。

現時点では彼女は1階に居ると言う事になる。

エミリー(後1つ登れば……出られる……よね?)

そんな考えが出て来る。手銃のおかげだろうか、自信が湧いてきたのだ。

エミリー(銃は……この三日月の部分を指に当てて……自分の方へ持ってくる……)

エミリー(無限ではなく、弾数が存在しているんだよね……)

エミリー(何発入っているか分からない。むやみに使うのは止めておかないと……)

エミリー(出よう。ここで留まっててもダメだ。打開しないと!)

戸を慎重に開ける。誰もいない様だ。

「また戻るとか嫌になるな、暴れたいぜ」

「同感。宝石と女でも盗ってやりたいよなー」

今回はここまで。

少し前。海洋の国。


カレン「遅いな……エミの奴……。どこか行ったのか?」

海の方に何か近づいてくる物がある。

カレン(何か掲げている……)

目を凝らす。

少し左に寄った丸に、放射線状に伸びている赤と白。

カレン(魔王軍か……!こんなタイミングで……)

鉄船は数隻。大きな筒は付いていない。

カレン(皆気づいていないのか……)

彼女はその場から、急いで離れた。


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同刻。船内。


エミリー(こんな時に……!)

その時、大きく揺れた。

「敵襲ーーーーーーーー!」


「マジかよ!急ぐぞ!」

エミリー(今のうちに!)

戸を開け、駆ける。

何が起こったのか、窓を覗く。

そこには、多くのカモメを従えた大きな平たい船がそびえていた。

それらは飛んでゆき、こちらに火を吐く。

「撃って撃ちまくれ!魔王軍の船を倒せば遊んで暮らせる!」

しかし、弾はかすりもしない。

それどころか、火を落としてきたのだ。

メディアナ「クソったれ!ここまで強いだなんて聞いてないぞ!」

「当たり前ですよ!あれは「住処」なのですから!誰だって家は守るでしょう!」

メディアナ「船は放棄だ!爆弾は付けてあるな?」

「準備オッケーです!」

メディアナ「このまま全速力で突っ込ませて沈めるぞ!」

エミリー「爆破!?」

「誰だ!魔王の手先か!?」

メディアナ「……嬢ちゃんも逃げた方がいいぜ。もうじきこの船は沈む。早く逃げな」

エミリー「……」

出た後、彼女は近くの海岸に運よく流れ着いた。

遠くで、大きな炎と煙が上がっていた。

それをカモメ達は見届けた後、平たい住処へと戻っていった。

エミリー(そうだ!カレンさんは無事なのかな?)

すると、そこにはカーキ色をした筒を持つ兵士が大勢いた。

しかし、旗が違う。

エミリー(この感じ……あの時と同じだ……)

冷える感覚。喉が渇き、動けなくなる。

町は燃えてはいないが、死体が多い。

カレン「くぁ……」

エミリー(……!)

カレンが生きていた。死体の中に隠れていたようだ。

兵士はそれを---何のためらいもなく殺した。

同時に、渇いた音が一瞬だけ聞こえた。

一斉に向く。

金色の少女が銃を握り、魔物をダメージを負わせた。僅かだが。

エミリー「はぁ……はぁ……はぁ……」

筒を構えた。そして---

銃を投げつけて全速力で、無我夢中で逃げた。

エミリー(ごめんなさい……ごめんなさい……)


---逃げた果てに何があるのかは、まだ知らない。

ただ、逃げも一つの手段であることは間違いないのである。

今回はここまで。

分からない人向けの説明



魔王が居るかどうかも分からない中世の世界が舞台。

魔王は、魔物(金属製)を放っている。かなり強い。(これらが居るので、魔王は存在しているのではと多くの人々は、考えている)

さらに「魔法」が発達しており、技術力がこちら側(人間)がかなり遅れている。

しかし、今の方法では作れない物や遺跡が多く残っており(デザートイーグル、太陽銃、天の柱等)、ある程度は太刀打ち可能。

勇者は毎年各国が派遣しているが、すべて死亡済。原因は様々。

花売りであるエミリーは勇者に選ばれる。今年の目的は「花嫁」になる事。

エミリーは、居場所もつかめていないため、倒すべく探している。



追記


勇者の目的は共通しており、魔王を探しだし、打倒す事。

---神は死んだ。

誰が言ったか忘れたがその通りであろう、と私は考える。

だが、人々はどこかに居ると信じているのがほとんどだ。

だからこう言った方が良いだろう。

「神は始めからいない」

かつて、森だったところは今では砂が広がっている。

「どうしたものか……」

深くフードをかぶっているので表情は読めないが、何かを考えていることは確かなようだ。

大きなカバンを下ろし中から、本を取り出す。

「昔から砂漠が多かったみたいだ……、同時に監獄もあったようだね」

金属製の看板には「カガドゥ特別保護区」と書かれている。

「違う……」

「「第三WUM特別収容所」じゃない……どこにあるんだ……」

彼はカバンを再び背負い、歩いていった。

砂と水、ほんの少しの緑があるこの地を。

エミリー「んぅ……」

目覚めたのは砂の上。

エミリー「ここは……」

目に着いたのは、辺り一面の砂。

緑が一つも無い。

エミリー(海に沿って歩けばボートか何かあるよね)

何ともないと言う事は、どこも怪我をしていないと言う事だ。

エミリー「よっし!歩くぞー!おー!」

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午後5時。


エミリー「はぁ……はぁ……」

エミリー(海の水飲んでも渇きが収まらないよぉ……)

しばらく歩く。歩き続ける。

エミリー(川だ!お水だーーーー!)

命の限り歩いた。

そして、飲んだ。飲み続けた。

エミリー(美味しい!美味しいよ!)

水がこんなにも美味しいとは、彼女は今まで思わなかっただろう。

さんざん飲んだ後、彼女は深い眠りについた。



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時刻不明。地点不明。


「政府は現時刻を持って-------」

「そ--本当ですか!?つまりは----事ですよ!」

「我が国は------に------を------め------」

ノイズがかかっていて聞こえない。

「そこにはあの<システム>があるはずですよね?」

「……そうおっしゃられたのだ。<システム>が」

システム?どこか懐かしい響きだ。

でも、こんな人たちは知らない。

「これは------くだ!クソ!クソ!クソ!やっぱ-------信じてりゃこうには!」

「全てを平等に-るための<システム>だ。仕方あるまい」


-----ねぇ、何で怒っているの?私は、ちゃんと皆のためになる仕事したよ?皆を納得させる答えも出したよ?何で?何で?

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エミリー「ッ!?何……今の……」

今回はここまで。

翌日。午前11時。位置不明。



エミリー「誰かぁー……いませんかぁー……」

先ほどから二か国語で言っているが、返事は返ってこない。

エミリー(うー……足が……)

エミリー(あ……れ……。何で……起き上がれないんだろ……。陽があるのに……眠いし……)

意識はそこで途絶えた。


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午後10時。オアシス。


目覚めた場所は、薄暗い部屋だった。

エミリー「ッ!」

「起きたか……」

エミリー「誰……ですか?」

「君が話すのは栄語か。大和語はちっともわからなくてね、ホントに良かったよ」

気の弱そうな青年がこちらを見るなり、そう言い放った。

エミリー「あの、ここは……ここはどこなんですか?」

「ここは罪人の国。今居るのはオアシスさ。大昔に人工的に作られた洞窟さ」

確かに統一された四角い広々とした空間は人の手で成したとしか言いようがないだろう。

エミリー「どうして地下にいるんですか?」

「この辺りを見ただろ?あるのは砂だけ。砂嵐は凄いしね。出るとすればよほどだよ」

エミリー(助けてくれた人なんだね)

エミリー「助けてくれてありがとうございます!私、エミリー・ハートです!」

キル「元気だねぇ。そうだね、僕はキル。ジャン・バルディシュ・キル。キルって呼んでほしいな」

エミリー「よろしく!キルさん!」

キル「はは。まずは少し休んで行きなよ。僕は行くところあるから」

エミリー「どこです?」

キル「「第三WUM特別収容所」。別名「世界最大の処刑場」……そこに何か面白い物があるらしいんだ」

エミリー「面白い物?」

キル「僕はこれでもコレクターなんだ。って言っても実際は廃品回収屋さ。使えるものを外から持ってきて、売るんだ」

キル「世界にはいたるところにオーパーツがあるみたいだしね。あ、部屋は自由に使ってよ。これでも客室なんだよね」

そう言い、キルは出て行った。

エミリー(スゴイお金持ち……)

今回はここまで。


簡単な紹介#15


ジャン・バルディシュ・キル・・・22歳。男性。廃品回収屋。この国に置いては彼の持ち込んだ物は相当価値があるようだ。


解説


第三WUM特別収容所・・・別名「世界最大の処刑場」。何かしらの罪がある人を収容する施設。裏では非人道的な事をしていたらしい。

エミリー(大きいー……)

思わず口が半開きになりそうな広さ。

洞窟内部は金属と石で作られているようだ。

エミリー(木も草も無いみたい……寂しい所)

エミリー(財布は……あそこに置いてきたみたい……はぁ……)

エミリー(どこかで雇ってもらうしか無いみたいだねー)

こうして、少女の就職活動が始まった。


「お嬢ちゃんみたいな子は家じゃあねえ……」

エミリー「そこを何とか!お願いします!」

「無理な物は無理だよ。他当たりなよ」

エミリー「うー……まだまだ!」


「力仕事が女に勤まるか!帰れ帰れ!」

エミリー「何でもしますから!」

「諦めな」


エミリー「お願いします!」

「んー、君料理は出来る?」

エミリー「した事ないです……あはは……」

「手先不器用そうだしね、ウエイターの枠開いたら教えるよ」

エミリー「ありがとうございます!」

「手を握るほどじゃないだろ……」


エミリー「あの!私を雇って下さい!」

「……うち風俗だよ?君みたいのは少し、ねぇ……」

エミリー「頑張って覚えますから!」

「……ガキは残念ながら需要ないよ。もう少しいい女になったら来いよ」


午後1時。ベンチ


エミリー(見つからなかったよー……)

エミリー(どーなるんだろ、私)

今回はここまで

『世界共-管理について』

『国際連-は人工過剰による犯罪率---及び法の不完全を解消するべく、世界規模のスーパー----ータ-『マザー----』の開発を計画しました。-----り、---の低下等の問題を解決できる可能性が出て--した。
----大学機械-理学-----よれば「最終的に決めるのは人--る」と----た。』


---推定年度不明。現存する切り抜かれた紙の新聞より抜粋(一部汚れありのため、解読出来ない所あり)

翌日。午前11時。


その日もまた、仕事を探し奔走した。

最もこの世界では、子供はあまり働かせない方が良い……と言う考えのようだ。

だが、見つけなければ困る事だらけだ。

宿にも泊まれないし物も買えない。

エミリー(どうしよ……)

勇者ではあるが、それがどこまで使えるかは保証されていない。多分。

エミリー(せめて話だけでも聞いていこう)

----------
---
-

午後1時。


エミリー(資料館って所に行けばいいみたい)

エミリー「あ、お昼……食べてないや」

エミリー(でも、一食抜いただけだし大丈夫だよね?)

資料館


エミリー(ウルル資料館…ここだね)

幸い、無料で開放されていたため中に入ることが出来た。

エミリー(先住民が居たんだねー)

基本的にはここの歴史や文化、生活などで使われていた物が展示されている。

エミリー(このコンピューターには不思議と親近感が沸くなー)

何故かは分からない。

だが、それはまるで親しい友人の様なそんな気がした。

人間である彼女が、見たこと無い機械にこんな感情を抱くこと自体がおかしいのである。

エミリー(これでここのご先祖様は色々してたんだね。こんなに小さいのにすごいなぁ…)

さらに奥へと進んで行く。

そこには昔話が書かれていた。

エミリー「『昔々、ご先祖様達は増えすぎ、決まりごとを上手く破る者が出てきました。それは、小麦などの不足により起こりうることでした』…」

エミリー「『そこでご先祖様たちは神様に頼み、見守ってほしいと言いました。願いはかなえられ、平穏な日々を取り戻しました。ある時、「地下に都を作り、そこに住むように」と、神様からの啓示がありました。そしてしばらく後、暗い冷たい世界は光に包まれたのです』…光?」

その後は「こうして我々が生きていているのです」と締めくくられていた。

エミリー(…光って何だろう?)

光とは太陽の事なのだろうか?

エミリー(太陽が人を滅ぼした?…うーん)

エミリー(暗い冷たい世界ってのも気になる…寒冷期が来たからかな?)

考えるほど、分からなくなる。

そして、そこで彼女は倒れてしまった。

今回はここまで

同刻。某所


キル「見つけた…やはり話は本当だったのか……」

石で出来た巨大な建物は、風化しているものの形はかろうじて保っていた。

中に入ると、資料館で見たようなものばかり揃っている。

キル(パソコンに……スゴイ、万能の石版まであるぞ……!)

残念ながら、どれも動きそうにない。

それらをカバンに仕舞い、奥へと進んでゆく。

しばらくすると、金属製の扉が行く手を塞いでいる。

それを持ってきたバールでこじ開けようとするが、中々開かない。

そこで、手製の爆弾で吹き飛ばす。すると、少しだけ隙間が出来た。

バールを差し込み、こじ開ける。

しばらく、彼は暗い道を歩むことになる。

壁に書いてある言葉は栄語に似ているが、かすれて読めそうにない。

道なりに進んでゆくとそこには---


キル「これが……『神』なのか……?」


言い伝えに書かれていた神様。

それは、大きな金属の集合体。

表現として無茶苦茶であったが、それしか思い浮かばなかったのだ。

すぐ近くにはここの案内図が貼り付けてあった。

キル(第三WUM特別収容所……ここだったのか……)

意外とすぐ近くに在った。

彼が住む所からはや数十キロ地点。

キル(まさか住居が---収容所だったとはね)


罪人の国。上空5000km地点。


深緑のトリ達が近づこうとしていた。

風を切りながら進んでゆく様は、どこか悲しい様な気がする。

見てる人居るのかな…



エミリー「んぅ……」

気が付くと、綺麗なベットに頭にはぬるくなっている濡れたタオルがおでこから落ちた。

ギル「気が付いたみたいだね」

古びた鉄製のなべを持ちながら、彼はエミリーの元へと行く。

ギル「ミルク粥。ここじゃ弱った人にはこれを食べさせれば元気が出るって言われてるんだ。しかもアリの蜜入りだよ」

エミリー(少し臭うけど……食べるしかないのかな。失礼だし)

エミリー「はむ……。……!美味しい!ほんのり甘くてさっぱりしてる!」

ギル「でしょ?」

続きは夜に

再開します。見てくれる人居て嬉しい



ギル「ああ、そうだ。もしだけど、この本上げるよ。あまりいい本じゃないしね」

カバンを漁ると、はい、と博物館にありそうな本を渡す。

エミリーはそれをめくる。栄語に似た文字で書かれているが、なんとか読めそうだ。

エミリー(「World unity mechanism」……世界……統一……機構……持ち出し……ダメ……この場合は厳禁かな……)

さらに進めていく。

エミリー(これはあくまでも「おぺれいしょん……しすたむ」の一つである。計画の……機構?)

ページをめくるたびに頭が少し痛んだ。何故かは分からない。

多くの人に見つめられるような気がした。

自分の知らない記憶も流れ込んでくる。

それも大量に。やがて幼い少女の脳は---

エミリー「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

ギル「だ、大丈夫!?頭痛薬あるから、これ!飲んで!」

パニックを起こした。


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---


罪人の国。深夜。高度2500m付近。



魔物はゆっくりと近づき、火を吐いた。

しかし、金庫のような門で閉じらえれており、効きそうにない。

そこでそこの直上へと移動。火炎魔法を数十落とした。

エミリー「けほけほ……ほこり凄いですね……」

天井から埃が落ちてきている。

ギル「……敵が来たのか……エミリー、君は大事な使命がある。おそらく倒せるのは君だけのはずだ」

エミリー「私だけ?」

ギル「魔王を倒せるのは勇者だけじゃない。けど、本当の意味で倒せるのは君だけだ。これ持って。缶詰めと水が入っているから。それとお金。たった10万しかないけど……」

エミリー「それだけあれば……でも、良いんですか?」

ギル「ああ。それでいい。君は……「勇者」だからね。ここから真っ直ぐいけばバイクがあるはずだ。それは君に合わせて勝手に調整してくれるから安心して乗って!さ、早く!」

エミリー「……お世話になりましたっ!」

ギル「ああ!早く行け!」

彼女は急ぎ目に出た。


ギル「……やっと「魔王」を追い出すことが出来たよ……」


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真っ直ぐ行くと、バイクが有った。

エミリー(えーと、自分で動くすごく速い馬……だっけ)

跨り、2つの吐出した棒を握る。片方は回るようだ。

勢いよくまわした瞬間、

エミリー「う、うわぁぁぁぁぁぁ!は、速いよぉぉぉぉぉぉぉ!」

バイクは少女を乗せ、真っ直ぐ走っていった。




今回はここまで

---かつて、人類は一つの言語を持っていた。

そして再び愚行をしようと言う。

嗚呼、悲しきかな。

今度は言の葉だけでなく、心も分かれさそうぞ。

勢いよく走っていくバイク。

何故それだと分かったのか。それは博物館に展示されていたからだ。

やがて、砂が広がる世界へと上がるもバイクは動きを止めずに走り続ける。

エミリー「ふええええええええええ!」

トリが、彼女に向けて火を吐いた。

エミリー「魔王軍!?今なら……大丈夫だよね!」

要領は掴めた。

エミリー「やあぁぁぁぁあぁぁ!」

右側の角を手前に引く。

エミリー(遅くなった……じゃあ行きますか!)

派手な音を出しながら、走っていった。

どこまでも。


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バイクで海を移動することは出来ない様だ。

エミリー(どーしよ……)

魔王軍をなんとか撒くことは出来た。問題はどこへ向かうかだ。

海岸にあるのは少しの流木と紐だけだ。

エミリー(博物館で見たことある物が作れそう……)

エミリーはそれを思い出しながら作ってゆく。

エミリー(ここがこうで……これがこう……)

数時間後、いびつながらも、「いかだ」が完成。

やや頼りないオールを持ち、海へと彼女は出た。

今回はここまで

海は穏やかで潮風がのんびりと吹いている。

しばらくこぎ続け、オールをいかだの上に置く。

丸太を紐で縛っただけの簡素な物だ。

オールは細い木材を短剣で削って作った。

エミリー(何も手入れしてないのに、この剣は錆びないなぁ)

なんとなく思い浮かんだ。

刃物と言うものは常々手入れしなければならないが切っても切れ味は落ちず、欠ける様子も無い。

出頃な島を探すと、見えて来た。

蒸し暑そうな「海洋の国」に似ていそう。

エミリー(この島で少し休んで行こう)

えっちらおっちら、といかだを漕ぎ続けた。

やっと砂浜に上がる。いかだを陸へと引っ張り、オールを置く。

エミリー(眠くなってきた……)

いそいそと葉や木の棒を集め、火をたく。

水を少し飲み、眠りについた。


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---


少女が平和そうに眠りこけていると一人の者が近づいてきた。

それはまじまじと見るや否や、軽々と担ぎ、どこかへ連れ去ってしまった。

今回はここまで

目覚めるのはもう何回目なのだろうか。

そんな事を思いつつ、辺りを見渡す。

エミリー「んっ……」

海洋の国に似た構造の建物に居るようだ。

正面に、コワそうなくすんで焦げた色をしている大柄な男が居た。

手元を確認する。短剣はある。お金もある。勇者の証……ある。

「おい……」

エミリー「は、はひ!?」

エミリー(無口そうな人だなぁ……)

「俺は、君を怖がらせるつもりは、無い」

男はそう言うと、コップに水らしき物を入れた物を渡した。

エミリー「これは……?」

「ヤシの水だ。飲めば、元気になる」

少しだけ口を付ける。

エミリー「お、おいしい!」

一気に飲み干してしまった。

安心すると、今度はお腹が鳴る。

「……今夜、泊まるか?」

外はいつの間にか日が落ちている。

エミリー「お世話になります」

エミリーは寝る前に男の名を聞くことにした。

エミリー「あの、名前は……。私はエミリー・ハートって言います。勇者……です」

今の自分が勇者であるとは堂々と言えなくなっていた。

「俺は……ヨギ・ネシア・パワラン、だ。よろしくな、エミリー」

エミリー「はい、パラワンさん」

パワラン「俺の事は、ヨギで、いい。少し言葉に、詰まることもあるが、元々だ。よろしく、な」

エミリー「はい!では、おやすみなさい、ヨギさん」

パワラン「おやすみ、エミリー」

少しだけ蒸し熱い朝を迎えた。

窓から、鉄船がのんびりと移動している姿が見える。

エミリー「これ何ですか?」

目の前にはアイスティーらしき物がある。

パワラン「食事前には、何か飲むもの、だ。君の所は、違うのか?」

エミリー「食事中には飲みますが……」

パワラン「そうか。どうやら、仕来りが違う、ようだな。ご飯を持って、こよう」

「業」と言う言葉がある。

意味は罪だそうだ。

かつての我々はそれに悩みながらも生きてきたものだが、もはやその欠片すら感じぬ。

ゆえに、裁きが下る日が来るのかもやしれん。

そのためには「あれ」に頼らず生きることである。

「業」を背負う汝らに神の祝福が有らんことを。

エミリー「……美味しい!」

ぱぁ、と花が咲いたような表情をした。

思わずパワランは、頬を緩めた。

パワラン「慌てなくても、いいからな、エミリー」

思わず食が進む。

エミリー「あんまりにも美味しいので……」

今エミリーたちが食べているのはナシチャンプルーと言うものだ。

中央にご飯、周りにはおかずが配置されている。

パワラン「魔王軍もここには来ない。安心していい、よ」

エミリー「私は勇者です。魔王を探して倒さないと……なので……」

パワラン「そう、か。君は、勇者と言う、魔王を倒さなければいけない、存在、なのだな」

エミリー「はい!あの、おかわりしても……いい、ですか?」

パワラン「沢山あるからな。子供はもっと食べないと、いけないぞ」

器を受け取ると、先ほどと同じ量が盛られた。

エミリー「……これならいくらでもいけます!」

パワラン「吐くな、よ。エミリー」


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午前10時。繁華街。


エミリーはパワランの買い物に付き合っていた。

エミリー(ここ一帯にはくすんだ人が多いね)

白い人は残念ながらここには居ない様だ。

エミリー「あの、パワランさんは普段何を……」

パワラン「そうだな、猟師、だな。昼間から夕方だけ働いて、いる」

今まで彼女が会ってきた大人たちの中で相当<まともな>部類に入る職業である。

決して見下している訳でなく、あくまでも無難であると言う点が大きい。

エミリー「私、パワランさんの料理楽しみです!」

パワラン「そうか、な」

エミリー「はい!にへへー、美味しい物を久々に食べた気がするよー」


パワラン「はは、エミリーは、元気だな。まるで娘みたい、だ」

エミリー「娘ですか……あの、私……」

どうやら、顔を曇らせたらしい。

パワラン「……ごめん、な」

買い物しながら、彼が肩に背負っている物が銃と分かった。

だが、形から何まで変わっている。素材が金属のような、変な感じの物。弾を入れる所に変な突起物が付いている。

何よりも目を引くのはその先にある変な丸い物だ。意味があるのだろうか?

エミリー「パワランさんはこの後、何か予定はありますか?」

パワラン「そうだ、な……」

何か思案した後「猟、だな」とだけ答えた。

エミリー「宿は自分で探すので……お世話に……」

パワラン「別に、いい、ぞ。それに、魔王軍に襲われたら、大変だ」

エミリー「ありがとうございます!」

パワラン「気にしなくていい、ぞ。ああ、エミリー。何が、欲しい?」

エミリー「あの、お金なら沢山あるのでしんぱいしなくても」

パワラン「大人は、子供を護らないと、いけない。だから何でも、言い、なさい」

エミリー(何でもと言われてもなぁ……)

今は欲しい物は本だが、売っているとは思えない。

生活基盤が違うからだろうか。

エミリー(ダメ元で言ってみよう)

エミリー「本、欲しいです。どこか無いですか?」

パワランは目を丸くし、ほうほう、と頷いた。

パワラン「俺は、字が、あまり読めない。が、だいたいは分かる、ぞ」

そう言うと、端の方へ移動する。

彼は古びた本を取り出した。

パワラン「この場所の、民話、だ。読むか?」

エミリーはそれを受け取り、読む。

内容は「人は最初、地上に居たが神を怒らせてしまい、地面の中へと逃げ込んだ」と言った事だ。

なお、怒らせてしまった理由は「罪を全ての人が自覚しなくなった」かららしい。

パワラン「だから、俺は、良い事をなるべくしようと、考えているんだ」

今回はここまで



簡単な紹介#16


ヨギ・ネシア・パワラン・・・40歳。男性。職業は猟師。喉が少しおかしいらしく、とぎれとぎれで話す。

---<無線傍受!10時に奇襲予定!場所は……ここです!>

---<敵は1000km先に居ます!>

---<我々が先手を……!?上から大型ミサイル!直上!>

---<総員、撃ち落とせ!>

---<ま、間に合わない!?>

---<嫌だ……嫌だぁーーー!>

---<……悔……ため……よ……い……>


---記録箱の記録より。ここまで鮮明に残っている事は珍しい。

午後1時


本はパワランが文盲であると言う理由で、買って貰えなかった。

パワラン「俺は、これから仕事が、ある。鍵は、この鉢の下、だ」

そう言って彼は銃を担ぎ、どこかへと向かった。

エミリー(町の場所も分かったし、聞いてこようかな)


エミリー「あの---」


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-----------
---


エミリー(駄目だったなぁ……)

魔王の情報はどこにもなかった。

どこでもだ。

エミリー(魔王ってどこに居るんだろ……)

続きは夜に

翌日。午前11時。繁華街。


エミリー(眠い……)

熱くて、頭がぼうっとしてくる。

パワランは仕事だ。

エミリー(勇者、か)

エミリー(図書館探してこよう)

エミリー(そこにはもしかしたら、魔王に関する事があるかもしれない)

マーサネパン図書館。


場所を聞いてみると、繁華街からやや離れたところにあるらしい。

答えてくれた理由は、エミリーが「白い人」だからだろう。

エミリー(……そういえば、話せても読めなかったんだ……栄語と大和語の辞書がないか聞いてこよう)

エミリー「あの……」

「はい。な、なんでしょうか?」

エミリー「栄語と大和語の辞書は無いですか。両方載っている物をお願いします」

「は、はい」

エミリー(何で怯えているのだろ?目線も少し痛いなぁ)

今ある視線は「恐怖」と「憎悪」の2つである。

何故繁華街と違うか、理由は不明。

暇なので辺りを見渡してみる。

エミリー(少し狭い気もするけど……それなり、だよね)

ふと、目に入ったのは自分より幼い少女。

歳は4,5歳くらいだろうか。

しかも自分と同じ「白い人」である。

「これでいいですか?」

パラパラと見る。これだ。

エミリー「ありがとうございます」

お礼を述べると、その少女の元へ行くことにした。

エミリー「珍しいね。どうしてここに居るの?」

幼女「……私の事、知らないの?」

少女は不機嫌そうに言い放った。

読んでいるのは絵本の様である。

エミリー「これ、私も好きだよ。わるーい狼さんが女の子を食べようとしてるけど、機転で狼さんをやっつけるの!小さいとき何度も読んだよ!」

いつの間にか興奮しており、「静かに!」と言う目線があちこちから向けられている。

幼女「……私も好きだよ!おねーちゃんもなんだ!そうだ!おねーちゃん、遊ぼうよ!ね、いいでしょ?」

エミリー「いいよ!でも、借りたいのがあるからそれ終わってからね」

そう言い、急いで借りる手続きを済ませる。本をカバンに仕舞い、少女の元へと向かった。

ここで、少女と言っているが、そのような風格があるのだ。決して誤字ではない。

「行こっ!」

「わ、わわわ!急がなくてもいいよ!」


-------------------
------
---


連れられてきたのは、大きなレンガ造りの家。

しかも、ここで見てきた簡素な木製でない建物だ。

幼女「パパに帰ったよーって伝えて。お友達も一緒だけど、いい?って事も」

門の前の兵士に伝える。

数分後、綺麗な身なりの人が出てきた。

紳士「おお、君が……勇者の……こんなに年端もいかない子とは驚きだ……ささ、入りたまえ」

大きな鉄格子のような門が開く。

今回はここまで

---この世界では幾度となく転生が繰り返されてきた。

生と死を繰り返しながらここまで来た。

時は無慈悲に移ろいゆく。後悔してももう遅い。

少なくとも、それだけは受け入れるべきだ。

どこか懐かしさが湧いてきた。

エミリー「こういうの見たの久々です!」

幼女「そうなんだね。おねーちゃんは大変そうだね」

エミリー「まぁ……そう、だね……」

紳士「エミリー……で、いいかね?ずいぶん疲れた顔だがどうかしたかね?」

エミリー「何でも無いです……」

むぅ、と紳士は「今夜はここで泊まって行きなさい。アリシア……娘が喜ぶだろうから」と言い、泊まることが決定した。

アリシア「おねーちゃんも一緒?」

エミリー「そうだよ」

それを聞くと嬉しさを体と声で表現した。

エミリー「それと連絡させて下さい、お世話に成った人にお礼しないといけないので」

紳士「手紙でも書くのかい?」

エミリー「いえ、直接伝えるので……」

紳士「では、そこまで馬車で送っていこう」


----------
----
--


パワラン「エミリー!エミリー!どこだ!」

帰ってくるはずの少女がいない。

彼は必死に探した。

もしかしたら殺されたのかもしれない。

「白い人」に。

奴らは私らを見下してはいるが、エミリーだけは違う。

純粋に人として見ているのだ。

猟銃を持ち、探す。

彼女を見つけたのは、繁華街であった。

周りはそれ下ろしなよ、と言う。

だが、彼はそれを向けた。

パワラン「彼女を離せ!出なければ撃つ!」

紳士「待ってほしい。彼女の意志で来たのだ」

そう言うと、馬車から彼女が出てきた。

エミリー「パワランさん……私、この人の家で泊まることになったので……お世話になりました」

パワラン「こいつは暴虐無尽な血染めの支配者だ!殺されてしまう!」

紳士「……前の方とは私は違います。今は急いでいるので。では」

馬車は動き出した。

パワラン「こいつは……ッ!」

構え、撃とうとした。

引き金が引けない。

パワラン「っ……ぅう……!」

銃声が空へと放たれた。

今回はここまで

-口つ---00億人- Ne- d-y --mes


国-は----年4月時会-で人--1--億人を突--たと-表--。

-に-上-が増加-向に-り、食料の---題が不--され--る。

一部では---なデ--起-って------。

また----

--<ここから先は紙が腐って読めない>--


記事の反応




全部--------せいさ



それに賛成!


--<以降は塗りつぶされている>--


---とある雑誌記事の切り抜きより抜粋。2枚。(紙の大きさからしてコピーか)
書き込みにの多くは「-ては日-人のせい」と書かれている。

重い足取りでパワランは帰路へと着く。

パワランは彼のことを教えていなかった事が大きな原因であると分かっていた。

パワラン「……ナイ、ブンガ……こほ!かは!」

パワラン(久々に大声出しちまったな……)

壁にかけられた家族の絵。記念日に画家に書かせた絵だ。

大柄な男の隣には快活そうな女性が居り中央には女の子がそわそわしている。

パワラン(エミリー……)

ふと、思い浮かんだ少女。

どこかほっておけない子。

木と竹や大きな葉で作られた建物が多くある中、そこだけは煉瓦製の物であった。

当然中もそうである。

ラグやら家具やら品がとてもある。

エミリー「あの、何で私の事を知っているのですか?」

紳士「そうだね、新聞で、だよ。だが、それ以前にかなり美しい女性とも聞いていたのだよ。まさか女の子とは……」

アリシア「え!?ゆーしゃさん!?おねーちゃんすごーい!ねえねえ!魔物ってどんなの?強いの?」

エミリー「すっごく強いよ。勝てないかもって思ったこともあったかな」

アリシア「ゆーしゃさんは証があるんだよね!どんなの持ってるの?」

そう言うと、カバンから色んな物を取り出す。

お金が入った袋、乾パンと水、インクが切れなず垂れないペンとメモを取り出す。懐から証を出す。

紳士「かなりかき込まれているな……文字が書けると言う事は高名なお方かな?」

エミリー「単なる花屋さんです。文字は途中で元貴族の方から教わりました」

紳士「……やはり、噂通りだ。貧民でありながらも読めて書ける。その上かなり頭が良く見た目も作法も良い……その通りだな」

エミリー「そんな……えへへ……照れます」

紳士「君みたいな子は貴族でも居ないものだよ。ふむ、では少し頼みたいことが---」

アリシア「エミリー!これ、落ちてたよ」

在ったのはかつての友に渡された3つのしおりだ。

エミリー「ありがと……!懐かしい……あの、少し友人に手紙を書きたいのですが……」

紳士「ああ、構わんよ。手紙はこちらで責任持って送ろう。はは、アリシア、少しこの人とお話があるから部屋に行ってなさい」

アリシア「えー!つまんないよぉー!」

紳士「パパの言う事が聞けるいい子だとおもうのだけどね」

むー、と言いながら彼女は去っていった。

紳士「さて、改めて自己紹介。私はこの南東の国を護る沈まぬ国から派遣されたアリリオ・アルバ。よろしく」

エミリー「エミリー・ハートです。よろしくお願いします、アルバさん」

木と竹や大きな葉で作られた建物が多くある中、そこだけは煉瓦製の物であった。

当然中もそうである。

ラグやら家具やら品がとてもある。

エミリー「あの、何で私の事を知っているのですか?」

紳士「そうだね、新聞で、だよ。だが、それ以前にかなり美しい女性とも聞いていたのだよ。まさか女の子とは……」

アリシア「え!?ゆーしゃさん!?おねーちゃんすごーい!ねえねえ!魔物ってどんなの?強いの?」

エミリー「すっごく強いよ。勝てないかもって思ったこともあったかな」

アリシア「ゆーしゃさんは証があるんだよね!どんなの持ってるの?」

そう言うと、カバンから色んな物を取り出す。

お金が入った袋、乾パンと水、インクが切れなず垂れないペンとメモを取り出す。懐から証を出す。

紳士「かなりかき込まれているな……文字が書けると言う事は高名なお方かな?」

エミリー「単なる花屋さんです。文字は途中で元貴族の方から教わりました」

紳士「……やはり、噂通りだ。貧民でありながらも読めて書ける。その上かなり頭が良く見た目も作法も良い……その通りだな」

エミリー「そんな……えへへ……照れます」

紳士「君みたいな子は貴族でも居ないものだよ。ふむ、では少し頼みたいことが---」

アリシア「エミリー!これ、落ちてたよ」

在ったのはかつての友に渡された3つのしおりだ。

エミリー「ありがと……これは!懐かしい……あの、少し友人に手紙を書きたいのですが……」

紳士「ああ、構わんよ。手紙はこちらで責任持って送ろう。はは、アリシア、少しこの人とお話があるから部屋に行ってなさい」

アリシア「えー!つまんないよぉー!」

紳士「パパの言う事が聞けるいい子だとおもうのだけどね」

むー、と言いながら彼女は去っていった。

紳士「さて、改めて自己紹介。私はこの南東の国を護る沈まぬ国から派遣されたアリリオ・アルバ。よろしく」

エミリー「エミリー・ハートです。よろしくお願いします、アルバさん」

エミリー(まずはこの国がどんな状況か把握しないと……)

エミリー「あの、まずこの国の状況についてなのですが」

アリリオ「そうだな。これは私(わたくし)が依頼したいことと同じだから……まず、この南東の国はかつてクーデターのあった沈まぬ国の植民地だ」

アリリオ「分かりやすく言えば、沈まぬ国の国土とほとんど同じと言う事だ。手段はまあ……軍事力に言わせてだね。あはは」

エミリー「それって……」

アリリオ「それが起きたのは今から約100年前だしね。何度も戦があったけど、そのたびに本国から優秀な兵士や議員が来てここを治めてくれたんだ」

アリリオ「ここだけの住民に課せられた決まりもあるよ。かなり理不尽だけど。でね、私の代で少し緩めようと思うんだ。少し地学やら色んな調査したいしね」

エミリー「つまり私にどうして欲しいんですか?」

アリリオ「仲介、をしてもらいたいんだ。多くの圧政を敷いてるしね……私はこれでも、ここの統治者なんですよ」

見せたのは沈まぬ国の旗。間違いなくそれだ。

エミリー「ここの……王様?」

アリリオ「それは違う、かな。そこまで大きな権力は無いよ。それで、どうかな。受けてもらえます?」

エミリー「まず、どんな風にするかにもよりますね。決まりとか」

アリリオ「……面白い子だ。分かった。今までの法と改善案を見せよう。少し待っててくれ」

そう言うと、近くの本棚から簡素な作りの本を取り出し、置いた。

アリリオ「待たせたね。これだよ」

エミリー(かなり厳しいんだね……難しい……改善案から読んでみようかな。平等かつ公平に……?戦力の一部撤退……?)

エミリー(ちょっとだけ情報いるかも)

アリリオ「どうだい?」

エミリー「全体的な流れは分かりました。ですが、どうしても分んない所があるのです。細かい法を……その、ですね……分かりやすくしてくれたらなぁ、と……」

アリリオ「……そうだね。私としたことが……うっかりしていた。細かいところは分りやすくしておくよ。それと、図書館からいくつか歴史書を借りて来ると良い。何、お代はこちらで負担するさ」

ふと、何か忘れている気がする。

エミリー「あ、手紙書いてないや……」

アリリオ「部屋を案内しよう。頼むよ、君」

手を叩くと、焦げた人が出てきた。

スーツが黒いので、人と服との色の区別がつきにくい。

「どうぞ、こちらです」

エミリー「は、はい」

大柄で筋肉質。どこの国の人なのだろうか。

-----------------
----
--


長い廊下を歩きながら、彼女は問う事にした。

エミリー「あの、あなたはどこの国の出身ですか?」

「……聞きたいですか?」

不定するような声色。何か辛いことがあるのだろう。

そうしている内に部屋についてしまった。

「こちらです。部屋の物はご自由にとのことです。用があるのでしたら、ベルでお呼びを。では」

エミリー(最初は感動したんだけどなぁ)

だんだんと興味と言うかなんというか、色んなものが薄れている気がする。

エミリー(相談しようかな……)

住所は分らないが、少なくとも国は分る。

エミリー(後、アンナさんにも相談してみよう……)

カバンからペンを取り出す。紙は事前に用意してくれたみたいだ。

エミリー「でも、書くって何すればいいのかな……」

エミリー(『アマーリアへ。お元気ですか。』うーん……『やあ!元気かい?』何だか嫌な感じがするなぁ……)

エミリー(……そもそも手紙ってどう書くんだろ?)

言葉は知っていても、やり方が分からない。どんな風に書くのか、どのようにして出すのか。

彼女は知らない。知らずに生きてきたのだ。

エミリー(……調べてみよう)


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夕方。アリリオ邸。


図書館から手紙の書き方を数冊、この国の歴史書数冊を借りてきたため腕が痛い。

そして、彼女たちは今、夕食を取っている。

アリシア「おねーちゃん、どーしたの?」

エミリー「手紙書こうとしたんだけど、書き方が分らなかったんだー……恥ずかしい……」

アリリオ「知らない、と言う事に気づけたことはいいことですよ。無知の知と言うのです」

エミリー「えーと、知らないことに気づけたと言う事ですか?」

アリリオ「そうだね。知っただけじゃダメだってこと。それだけわかっただけでもエミリーさんにとって収穫は大きいんじゃないかな」

エミリー「そうですね!……これ、美味しい!パエリア?」

アリシア「おねーちゃんもこのア・ラ・サル好きなんだね!このチョリソーも美味しいよ!」

食べてみる。刺激的な味と肉汁が溢れだす。

エミリー「んー!おいひい~!」

アリリオ「はは。沢山食べてくれ、エミリーさん」

---過去は永遠に美しく、その時を完全とまでは言わぬが止めている。

未来は恐ろしく進みたくない。だが、希望はある。

思うに、現在(いま)は地獄か天国だろうか。

もはや、かつての栄光など無いのに。

夜。客室。



エミリー(この国は「植民地」とされたのは今から100年前なんだね……あ、手紙書かないと)

手紙書き方と言う本を取り出し、開く。

エミリー(えーと、最初に封筒と紙を用意して…書き出しはあいさつから、と)

そこから筆はさらさらと進んでゆく。

自分の気持ちを文章にする事の難しさを改めてしった。

書き終わる頃には月が真ん中へ来ていた。

エミリー(もう寝ようっと……)

エミリー「ふわぁぁ……」

珍しくその日は昼まで寝てしまった。


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正午。アリリオ邸。


エミリー「お願いします!」

アリリオ「確かに受け取ったよ」

手紙には切手は貼っていなかったが、代わりにスタンプが押されている。

そしてワインのような色の封蝋と言うシールで封をしてある。

アリリオ「手紙は一か月したら届く予定だよ」

エミリー「はい!」

アリリオ「それと、ここの決まりを分かりやすく纏めたものだ。使ってくれ」

エミリー「ありがとうございます。交渉はいつまでに……?」

アリリオ「交渉とまではいかないが、出来れば受け入れてもらいたい。そうだね……この国の法で縛らない様にしたいのだ。それらを彼らの前で説明してほしい。君は私より、受け入れられている様だしね。期限はいつでもいいよ」

エミリー「わかりました。ではこれで」

アリリオ「魔王の事についても調べておくよ」

エミリー「ありがとうございます」

いきなり現実に戻されたかのような気分。

それを見透かすように彼は言った。

アリリオ「君はまだ子供だ。今からでも、遅くは無いはずだよ。本来君は勇者じゃなかったらしいからね」

エミリー「どういう……」

スーツの男が彼に耳打ちした。

アリリオ「……すまない、緊急の案件が入ってしまったようだ……。続きは夕食の時にでも話そう」

アリリオはそそくさとスーツの男と共に去った。

途中彼は「面倒なマドモアゼルが来たものだ……」とつぶやいた。

今回はここまで

エミリー(案は良いけど植民地って本国のものだよね……?勝手にとってもいいのかな?)

エミリー「むむぅ……」

エミリー(アリリオさんの評判は多分だけど良くない……よね)

エミリー(これも聞かないとダメみたいだなぁ……)

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午前。

エミリー(案は良いけど植民地って国のものだよね……?勝手にとってもいいのかな?)

エミリー「むむぅ……」

エミリー(アリリオさんの評判は多分だけど良くない……よね)

エミリー(これも聞かないとダメみたいだなぁ……)

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午前10時。大通り


エミリー(アリリオさんはいい人だから、ちゃんと受け入れてくれる……よね)

エミリー「あの、すみません---」


正午。大通り沿い食堂


エミリー(多くの人に聞いてみたけど、かなり恨みを持っていて……アリリオさんに対しての印象より支配されているって気持ちが強いみたい)

エミリー(受け入れている様に見えているのは私だけなのかな……そうだとしても、動けば殺される……)

エミリー(さくしゅはアリリオさんの案を見る限り、酷くない……と思うし……)

「注文の品です」

エミリー「ありがとう!」

来たのはソトアヤムと言うスープ料理。もう一つはナシゴレン。ご飯料理。

それと簡単なサラダが付いている。

エミリー「んー!」(辛くて美味しい!)

エミリー(料理……作れるといいな)

「失礼、相席して、よろしい、か?」

エミリー「パワランさん!」

パワラン「非道な、支配者か、ら逃げてこ、れたのか……良かった……エミリー……」

エミリー「逃げてませんよ。むしろ良くしてくれました!」

パワラン「そうか、そう、か……」

そう言うと席に着き「これと、同じもの、を」と言った。

パワラン「エミリー、は、ここについて、どう感じ、た?」

エミリー「とってもいい国!ただジメジメしてるのを除けばですけど」

パワラン「ここは、そんな、ところ、だ。ああ、でも、自然や魚が、美味い、だろ?」

エミリー「そう、ですね。とっても美味しいです!」

パワラン「ここを、気に、入ってくれると、いいな。それ、と、だ。おーい」

「何でしょうか?」

パワラン「俺が、仕留めた物の料理を、こいつ、に振る舞って、くれ」

「かしこまりました」

従業員は小走りで厨房らしき所へと向かった。

パワラン「それで、君は、どうするのだ?」

エミリー「しばらくは魔王についての事を調べます……そして……理解、ですね」

パワラン「理解……大方、沈まぬ国、の都合がいいように、する、事か……」

エミリー(な、何で分ったの!?)

エミリー「む、むしろ逆だと思います」

パワラン「……訳が、分らない、がだ。俺は、あまり良い事には、思えない。白い人、は我々を、見下し、ているからな」

エミリー「見下してなんて……」

パワラン「……何で、君が無事、なのか、少し、考えて、みるの、だな。ここの、住民、は……少なくとも、嫌な顔、はしているはずだ」

---見下す、と言うのは一種の精神的防衛本能ではないのだろうかと私は思っている。

それは同時に自分あるいは自分達が持つ『負の側面』を見たくないからであろう。

だからここに宣言しようと思う。いや、しよう。

『差』があるからこそ、この世界は平和に築いて来れたのだと。

午後6時。ヌサトゥン島、ビマー


エミリー(バレッサルはここから比較的近い大きな島で、主に遺跡で生計を立てている……)

読んでいるのはガイドブックだ。やや大きめ。

エミリー(解決したいならそこへ行け、か。巨大な橋でこの島は繋がっている。これもオーパーツの一つ……なんだ)

島へ行くには船ではなく、巨大な橋を渡る必要がある。

だが、それも魔王軍や内紛、戦争などで半分近くが無くなっている。現存しているのはここだけだ。

バリーに通じる地下トンネルを経由ののちマターラムへ船に乗り、ヌサトゥンへと行った。

エミリー(ここから安くてもっともバレッサル島に近いのはビマー……)

エミリー「んー、やっと着いたぁー」

船と馬車で乗り継いでここまで来た。日も暮れている。

エミリー(ホテルか何かあるかな)

今回はここまで


この世界について(奇書『世界観設定』より一部抜粋)


・15~18世紀を想定

・文明度は国によって違う

・人口は約8.7億人

・魔王軍の兵器はおもに魔物と呼ばれている

・旧時代で呼ばれていた魔物も若干ではあるが存在する

しばらく堪能した後、他の所も見て回った。

エミリー(ここにも白い光で地面に逃げ込んだって話がある……偶然?なのかな)

エミリー(「光に包まれ残ったのは、何もない死の世界であり、死に溢れていた」)

エミリー(……どこの事だろう?)

エミリー(「世界には大穴がいくつも空いた」……)

エミリー(「この--は-から--を-る-め-----」)

エミリー(「---全ては天罰であり、戒めなのだ」……私達が何かしたのかな……?)

エミリー(神話だし、そんなに考えること無いか)


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午後3時。マロス。大通り


エミリー(この国はどこでも熱いね……)

エミリー(さて、魔王に近づいたか確認しなきゃ!)

「魔王?それにまつわる似たような場所はあるぞ」

エミリー「ど、どこですか!?」

「えーと、なんだったか……ああ『白い使いの武器』だったかな。その基地が残ってたはずだよ」

エミリー「どこに有るかわかりますか?」

「確かワタンペンにあったはずだが……あそこは近づいてはいけない」

エミリー「?」

「汚れた地のひとつだからだよ。じゃあこれで」

エミリー「あ、ありがとうございました!」

エミリー(……今から行けば間に合うかな)

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午後10時。ワタンペン


馬車に揺られて、歩いて、陽が落ちて、いつの間にか月が頭上に光っている。

エミリー(何にもない……殺風景だ……)

エミリー(ホテルはなさそうだしどうしよ……野宿、だよね)

しばらくうろうろし、洞窟を見つけた。ただし彼女は「これ」が何と言うものかは知らない。

エミリー(トンネルのような……今夜はここで過ごそう)

カバンから缶つめと水のボトルを取り出す。

エミリー(腐ってない……よかった)

かきゅかきゅとナイフで開けてゆく。水もナイフを使い、開ける。

エミリー「っはー!あー……はぁ」

エミリー「魔王はずっと見つからないし……」

下腹部に震えが走る。

エミリー(どこかでおしっこ!ああ!うぅ……)

奥まで走り、適当な所で用を足す。

震えがなくなり、心地よい気持ち良さが広がる。

エミリー「ほー……」

かつん、と響いた。

エミリー(な、なんだろう……?)

エミリー(変な紋章……それも沢山……)

外に三角形が先々に丸い物を囲んでいる。

それらが沢山あるのだ。円柱型の物や四角い物、とりわけ前者が多い。

エミリー(近づいちゃいけない……)

手前まで走った。何故か全力で。

エミリー(雨……降ってる)

いつの間にか入口まで来ていたようだ。

エミリー(寝よ……)

今回はここまで


(遅れながら)簡単な人物紹介#17


アリリオ・アルバ…男性。31歳。沈まぬ国の植民地「南東の国」の総司令官。南東の国を良くしようと考えてもいるが、同時に植民地であるここを維持しようと考えている。妻帯者。

アリシア・アルバ…女性。5歳。アリリオと共に来た。現地人の印象は「特になし」。好きな食べ物は甘い物。



解説


缶詰めやボトルはナイフで開けるのはこの時代に缶切りが無いからである。

エミリー(ま、いいかな。遺跡に向かわないと)


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午前11時手前。遺跡前。


エミリー(食べた食べた~)

エミリー「……嫌な感じがする」

見た目は普通だが、どこか変なのだ。

まるで、すべてを拒むかのような作りだ。

エミリー(「汚れた地」……かぁ……)

エミリー(ここかな?)

周囲は厳重そうに壁に囲まれている。

入口はこの正面しかない様だ。

重そうな門を開け、中へと入る。

ところどころ洞窟で見かけたあの紋章が沢山あった。

エミリー(何の施設何だろ……)

大小さまざまな筒が沢山入り組んでいる。

建物は6つあるが、大きな中央の建物以外は原型を留めていない。

エミリー(崩れてるけど……大丈夫なのかな?)

崩れた建物を見ていると、ある共通点が。

エミリー(小さい建物には池がある……底にあるのはつぶつぶの物がびっしり!)

エミリー(何の施設何だろう?)

しばらく周り、周囲を探す。しかし何もない。

エミリー(これに秘密が……)

門と同様、重そうな扉を力いっぱい開ける。

中は案外暗く、陽の光が入っているのか微妙だ。

目に入るのはよく分からない物ばかり。

長方形のガラスをはめ込んだものの下に大小さまざまな石か何かを一列に並べられている。

エミリー(古い時代の文字なのかな?読めないや)

階段を下り、慎重に進んでゆく。

進むにつれ、少し息が苦しくなる。

同時に吐き気がするような臭いも漂う。

エミリー「はぁ……はぁ……うぇ……」

エミリー(「汚れた地」……だったけ……)

ザリ、と踏んだ音。

エミリー(煤けてる紙……?なんだろう)

エミリー(「聖遺物--むる--。聖火の源」……)

しばらく進む。やがて、先ほど見かけた「池」と同じものが見つかった。

エミリー「これって……」

底には多くの死体が積み重なっていた。

エミリー(どれも髪の毛が無い……)

はらりと、髪の毛が舞う。

それを掴む。

エミリー(「汚れた地」……抜けた髪の毛……)

エミリー(……あの円柱型と同じマークが書かれてる……ここ……)

辺りを見ると、ワインレッドのような赤黒い血の跡がところどころついている。

エミリー(ここに長くは入れない……)

急いで去った。途中、髪が舞った。


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午後3時。遺跡前。


エミリー(ここから近い村……無いのかな)


>>602
補足


基本、缶詰めやボトルはオーパーツの一つである。

今よりも美味しい物が多いが、食べられない物も多くある。

缶詰めやボトルの生産道具は現在も生きているが、古い物より美味しくないとのこと。

なお、ここで言うボトルは「ビン」である。



後付けでごめんなさい
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午後7時。マロス。


エミリー(かなり歩いたけど、無事に行けただけいいよね)

エミリー(泊まる所探して保存できるもの買わないと……)

エミリー(お店、開いてるかな)


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午後9時。宿。


エミリー「ふっかふっかぁー!んー!」

エミリー(缶詰めもボトルも買えたし、何しようかな?)

エミリー(まずは……アリリオさんの所へ戻ら……ない……と……)

少女は眠りについた。

翌日。午前11時。マロス。



エミリー(宿で食べたご飯はあまり美味しくなかったなー……こうパサパサしてたし)

エミリー(今は帰ろうっと)

「じょ、嬢ちゃん!」

エミリー「一昨日の人ですよね。何ですか」

「『汚れた地』から帰って来たんだな!?そうだろ?」

エミリー「え、ええ」

エミリー(何かいけないのかな?髪の毛……)

少女の髪の毛は、はらりはらりと舞っている。

「少し待っておれ、『抜け薬』を持ってくる!」

エミリー「私の……」

「いや、毒を抜くんじゃ!あそこは『聖火の元』が沢山あるからの!その周りにはじわじわと苦しめ、殺す空気があるのじゃ!」

エミリー(もう少ししたら帰れるかな)

エミリー(髪の毛は何でか知らないけど抜けてなかった)


>>615訂正



翌日。午前11時。マロス。



エミリー(宿で食べたご飯はあまり美味しくなかったなー……こうパサパサしてたし)

エミリー(今は帰ろうっと)

「じょ、嬢ちゃん!」

エミリー「一昨日の人ですよね。何ですか」

「『汚れた地』から帰って来たんだな!?そうだろ?」

エミリー「え、ええ」

エミリー(何かいけないのかな?髪の毛……)

少女の髪の毛は、はらりはらりと舞っている。

「少し待っておれ、『抜け薬』を持ってくる!」

エミリー「私の……」

「いや、毒を抜くんじゃ!あそこは『聖火の元』が沢山あるからの!その周りにはじわじわと苦しめ、殺す空気があるのじゃ!」

エミリー(もう少ししたら帰れるかな)


「こ……これ……」

エミリー(小瓶?)

「の……飲むん……じゃ」

エミリー(うぇ……マズイ……)

エミリー(……不思議と体が軽くなった気がする!)

「それは汚れた地に僅かに残っていた物。後1つしかなかろうて……。もう二度とあの地を踏むなよ」

エミリー「はい。すみませんでした」

エミリー(髪の毛はいつの間にか抜けなくなっていた。それどころか少し増えた気がする)

馬車乗り場へ着く。

なんと、今出ようとしているではないか。

エミリー「待って!乗せて下さい!」

息を切らしながら、駆け込む。

エミリー(間に合ったぁー……)

じろりと見られているが、しかたない。

エミリー(……気まずいよー……)

エミリー(気にしないでおこう。気にしない気にしない)


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午後6時。南東の国。本土。


エミリー(着いたーーーー!)

エミリー(アリリオさんの所へ行かないとね)

午後7時手前。アリリオ邸。


エミリー(すっかり遅くなっちゃった……)

「エミリー様、お帰りなさいませ」

エミリー「え、あ、はい!帰ってきました!」

数日離れていた人を覚えているとは、驚きだ。


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アリリオ「エミリー!久しぶりだね。元気なようで良かったよ」

アリリオ「君が出した手紙の返事が来たよ。これ」

4つの個性的な封筒が渡される。

エミリー「もしかして」

アリリオ「君がどこかへ行っていた間に届いたんだ。心配したんだぞ」

エミリー「バレッサル島へ行ってました。そこに魔王の手掛かりがあるらしいので」

アリリオ「『汚れた地』へは……あそこは危険だ……」

生理的に無理、と言わないばかりの表情を彼はした。

エミリー「行きました……でも、手がかりは何も……。後『抜け薬』も飲んだので」

アリリオ「……。……そうか。部屋でゆっくり休むと良い。疲れも有るだろうしね」

エミリー「はい」

---全ては「無」に帰った。

神は初めて、我々に想像の中でしかない「裁き」を与えたのだ。

森羅万象全ての事を背負った神々が下さった「恵み」である。

それを受け取るのが我々の役目であると。

『人類は初めて銀-系の移動を---』

『世界の--は軒並み上昇しており、途上国に多く先進国は---』

『-メ-カ、人口1-億人突破。これにより---』

『--平和度-数が各国軒並み下落傾向に---』

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エミリー(何……今の……?)

エミリー(変な夢……)

エミリー(聞いたこと無い単語ばかりだけど、違和感を感じない……)

アリシア「おはよー!エミー!」

エミリー「おはよう、アリシアちゃん。今って何時かな?」

じぃっと時計を見つめる。

アリシア「うーんとね、11時!」

エミリー「ありがと」

そう言い、彼女の頭をななでる。

「きゃー」と悲鳴にも似た小さな子供特有の声を出した。

エミリー(やる事、やらないとね!)

エミリー「アリリオさん!」

アリリオ「なんだい?」

エミリー「新たに受け入れさせるって案です」

すると、彼は複雑そうな顔をする。

アリリオ「……すまないがそれは、無くなったんだ。私は本国へ戻るように言われてしまったのだよ……」

アリリオ「沈まぬ国でクーデターが起きたらしい。その後始末……かな。はは」

エミリー「その後って……」

アリリオ「その後?ワプスブルグ家が無くなり、紳士の国から王を送られた様です。用は……『この国』と同じようになったって事です」

エミリー(おそらくこの場所にはもう入れないかもしれない)

エミリー「ここから近い国はどこですか?」

アリリオ「近い国は『戦士の国』かな。見えるかい?」

窓の先には陸続きの島(?)が見える。

アリリオ「あの半島……陸続きの島には小国が沢山あるから気を付けた方が良いよ。一部は『紳士の国』直轄領だけどね」

アリリオ「船は夕方には出る。では、また会おう。勇敢なる少女よ」

アリシア「おねーちゃんもう行くの……?」

エミリー「ごめんね、アリシアちゃん……もう一度、あなたの元に来るから……」

アリシア「もっと話したかった……」

エミリー「……お世話になりました」

歩きは何故か早く、頬には一筋の涙があった。

だが、悲しくは無い。寂しくは無い。

何故なら---一人では無いから。

「ちぃ、ベトコン!どこに居やがるッ」

暗いジメジメが辺りに漂う。

木々は隙間から月明りを照らし続けている。

ばちゃばちゃと音が鳴った。

しばらくして複数の音が聞こえた。

「ここだ、来いよ」

焦げた色の男は挑発する。

相手は白い人たちだ。

「構えーッ!」

銃を構える。

「……終いだ」

がさがさと音がした後、ばたりばたりと白い者たちは倒れてゆく。

出てきたのは魔王軍の歩兵。

そして、焦げた色の男はいつの間にかいなくなっていた。

午後1時。戦士の国 紳士の国直轄領『シンガボール』



エミリー「本当にここが戦士の国……?」

エミリー(なんだか想像してたのと違う……)

領土であることを示す紺を下地とした赤の十字と白のバッテン(これ以外の言葉が見つからなかった)が堂々と靡いている。

エミリー(煉瓦創りの綺麗な所……ジメジメしてる国も悪く無いかも)

近代的な建物が立ち並び、白と焦げ茶と黄色い人が居り混じる。

エミリー(なんだか自由の国みたい!)

午後3時。ホテル


エミリー(ホテルは取れたし、聞き込みしかないよね)


「なぁ、あの子がそうなのか……?」

「記事に書いてあったからそうだろう。きっとそうだ」


エミリー(……見られているような……)

振り向く。しかしそれらしい行動をしている人はいない。

エミリー(気のせいかな)

エミリー「あの---」



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午後5時。レストラン


エミリー(手がかりなしかぁ……)

夕食のハイナンジーファン、ヤギ肉を使ったサテが数本を平らげる。

エミリー(このはいなんじーふぁんってナシチャンプルーに似ている味がする)

エミリー(サテは甘辛くて私好きかも!)

午後9時。ホテル


エミリー(手紙見てなかった気がする)

ふと思い出し、カバンから取り出す。

封蝋を溶かそうとしたが、火は持ってない。

そこでナイフで慎重に封の一番上を切ってゆく。

エミリー(これは……エリカからだ!)

エミリー「えーと、『こんにちは。エミリー。お手紙送ってくれてうれしいな。さて初めてあなたと会った時、クラスの子達と同じ反応だろうと思っていました。』……」

エミリー「『魔王軍関係者ではと言われていた私を体を救ってくれた時は本当に……ありがとう……。友達も前と比べて沢山出来ました。雪合戦もしたんだよ!』……もうそんなに経ってたんだね……」

エミリー「……『何がどうしたのかは私には分りません。でも悩んでいる事がひしひしと伝わりました。だから、これをあなたに言っておきます。』……」

エミリー「『勇者には人よりも休む時がいる!……つまりは……また手紙出して欲しいなって事。では、いつかまた会える日を。 エリカ・グロス・イカロスより』……」

エミリー(頼れる人なんていないって思ってたけど……ちゃんと居たんだ……)

封をどんどん切ってゆく。

エミリー「『お久しぶりですね。エミリー・ハートさん。学校は雪が降ったとかで大騒ぎしています。まったく……。』……」

エミリー「『学年では私は常に上位を取るようになりました。これでも頭は良い方なのです事よ!将来は医者になることにしました。』……医者かぁ……すごいなぁ……」

エミリー「『それとあのアレクに彼女が出来たそうです。相手は……なんと1学年上の人!驚きですわね……。明るい事があなたの取り柄ですからその明るさを沢山使いなさい!良い事、あなたが死んでは面白くないです!魔王なんかより、生きてまた学校に来てくださいまし!乱文はお許し下さいな。あなたの隣人 アマーリア・ワーゲン』……」

エミリー(夢……そうだ、私には魔王を倒すんじゃなくて……世界に色んな花を売って回りたいのが私の……)

しばらく1,2レスが続くかと思います…
すみません

エミリー(私を勇者じゃなくて一人の……)

何かが切れた気がした。

エミリー(そう……だねそんなの私じゃないよね!)

翌日。午前9時。



エミリー(魔王はどこに居るのか……)

聞き込みをしようとすると

「避難して下さい!魔王軍の船がこちらに来ているそうです!」

エミリー「私は勇者です!行きます!行かせて下さ」

いきなり強く手首を掴まれ、海より離れてゆく。

女「バカな事言ってないで早く!さあ!」

エミリー「え、あ、あの!」

女「こんなところに居たら死ぬわよ!」


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午前9時10分過ぎ。避難所


ドンドン、バラガラガラと砕く音が鳴り響く。

エミリー(鉄船……大きいのかな……)

やがて音は止み、兵士の一人が「もう大丈夫ですよ」と言った。

エミリー「酷い……」

有るのは死体。死体。死体。

あちこちに血や内臓の一部が無造作に飛び散っている。

女「倉庫は無事かしら……」

エミリー「何か重要な物でもあるんですか?」

女「商売道具がそこに在るのよ……埠頭になんて作らなきゃ良かったかしら……はぁ」

エミリー「無事だといいですね。」

女「惨状からするに無事じゃないわね。ほら、あそこにあったのよ。」

エミリー「何が有ったんですか?」

女「聞きたい?」

エミリー「はい。」

んふふーと妖しい笑みを彼女は向け小声で囁く。

女「麻薬よ。ま・や・く。アヘンとコカインとモルヒネ、チョコレートにコーヒーに煙草……特に後者は高値で取引されるわ。砂糖と同じくらいにね!」

エミリー「そんなの売ってるのって……」

女「駄目だけど、需要は有るからね。最近は遺跡から見つかった奴も『効く』って話よ。あなたもどう?」

そう言い、綺麗な色をした飴を渡される。

女「名称は確か、ヘブン・リーだったかしら?最初はテンション下がってその後一気に興奮するのよ。3日3晩寝なくてもいいくらいにね。おまけに痛みも何もない奴。その後は骨溶けて生ける屍になるけど、使ってみる?」

エミリー「遠慮します!そんな話聞かされた後には飲めませんよ……」

女「じゃあ、これはどう?」

今度は紙を丸めた物。中には何かがぎっしり詰まっているようだ。

女「煙草よ。煙を味わう物よ。」

それに火をつけ吸う。

エミリーも試しに貰い、火をつけ吸う。

エミリー「いがいがする……けほ!こほ!」

女「まだ子供には早いかしら。煙草よりお酒がいい?」

エミリー「まだ私子供ですよ!」

女「この辺りの子達は普通に飲んでるから安心なさいな。ジュースみたいなものだから、ね?」

女「それにあなた、エミリーでしょ?」

エミリー「な、何で知ってるんですか!?」

女「有名人だから。よーく知ってるのよ、それに……魔王の居場所はここじゃ無いことくらいは知ってるわ。」

エミリー「本当なんですか?!」

女「ま、その根拠はラ・ハードってお店で教えてあげる。ミン・シェイミンって言えば通してくれると思うから。じゃあねー。」

町の復興は案外早く、簡易ながらもテントやあばら家が数十百と出来ていた。

エミリー(ラ・ハード……ラ・ハード……)

瓦礫を片付ける者。料理を作る者や見る限り多くいる。

エミリー(凄いなぁ。もう、生活してるもん)

病院などの基盤も出来つつあるようだ。早い復興スピードである。

エミリー「わわ!」

こけそうになった。地面に落ちていた中くらいの金属の塊を拾う。

溶けていて何かわからない。


「魔王軍がまた来たぞーーーーーー!逃げろ逃げろーーー!」

カァンカァンカァン!と小気味のいい音が響く。

今度は、陸からだ。

白い色の服。横と後ろには首までの布がかかり、鉄兜を被っている奴も。

曲がった剣を引き抜き、こちらへ向けると何かを叫んだ。

それとほぼ同時に筒に火が灯る。

その中を人々は掻い潜りながら進んでいった。

足を撃たれ、頭を撃たれ、背中を撃たれながも進む。

エミリー(何で!?二度来るなんてありえない!?)

壕へ何とか入る。多くの人で溢れていた。

「皆様、将軍からのお知らせです。心して聞くように。」

右腰に剣を挿し銃を持っている。ここの兵士だろうか。

やがて、避難壕の中に居た鎧を着た大将と思われる人物が、言い放った。

「今をもって!このシンガボールを放棄する!繰り返す!今を---」

エミリー「残った人たちは!表に居る人はどうするんですかっ!」

「……見捨てる。以上だ……」

エミリー(どこまで歩くのかな……)

歩いてきたのは、明るいよく見える大地だった今回は暗くていつまで続くのかよくわからない地下。
時々頭や肩に水が当たりながらも進み続ける。
休憩を挟みながら行き続けると、ようやく明かりが見えた。
エミリー「ひ、光だ……!」
その頃には足が棒になり、体は鉄を注がれたように重くなっている。
そして、街灯に群がる如く走る。走る。走る!

夕方。


橙色の光と朱色の空がエミリー達を染め上げ、
煉瓦作りの建物と門が迎え入れる。横には半分ほど壊された橋があった。

その下に、おかしなものがあった。

エミリー「あの、アレは何ですか?」

難民の1人に話しかけると「魔女だよ。魔女と思われる奴やその使いが処刑された後さ。」

どうやら、十字架に張り付けられ、燃やされた様だ。

エミリー(ひどい……見た目は普通の人達なのに……)

エミリー「魔女……」

「こいつらは変な言葉や行動をしてたから、悪魔か何かに取り憑かれてたし、聞こえない言葉を神の言葉とか言ってたから感謝してるよ。」

エミリー「だからってこんな事しなくても……」

「こんな事言えないけど、結構感謝してるんだ。魔女や悪霊に憑かれた奴らを倒してくれたからな。急に騒ぐわ暴れるわ……本当に参ったよ……」

エミリー「お祓いはしたんですか?神父さんや牧師さんに頼んだり……」

「したらしい。が、ダメだったそうだよ。きっと悪魔になりかけてたんだろうね。」

エミリー「こうなるなんて……あんまりです……」

「しょうがないさ。魔に魅入られない様にお祈りや魔よけの物も身につけてるしね。」

その時、エミリーは壁に書かれた言葉を見つけた。

エミリー(魔女と使いは魔王の手先……)

エミリー(魔王の手先は人だけど、加担する理由がわからない……何かあるのかな?)

エミリー(いる訳ない、よね)

事実、そのような者がいたとしてもまったく違っていた事が多かった。

ぴたりと、流れが止まる。大将が疲れを見せない顔でこう言い放つ。


「現時刻を持って解散するものとする。なお、住む部屋はこちらで用意したので各自使う様に。以上!」


「おいおい、働くところはないのか?」

「そうだ!いくらこんなところで急に住めって言われても……」


ミン「文句ばった言わないで少しは動きなさいよ。難民の理由はマヤッカの人たちは知ってるだろうから、すぐ就けると思うわ。」

ミン「それに、楽なんて出来ないだろうしね。ねえ、エミ。」

こちらに視線が注がれ、数百の眼は色々と訴えている。

エミリー「そう、ですね。はい!分かってくれるはずです!」

エミリー「今は苦しいですけど頑張ればなんとかなるはずです!はい!」

目線は「これじゃない」と突き刺さる静かな声が一部はあったが、多くの人は納得してくれたようだ。

ミン「あぶれた奴は私が雇うわ。」

エミリー「いいんですか?」

ミン「知り合いも多いから大丈夫よ。これでも表でも裏でも人材結構ある方だからね!」

ニッコリ笑顔で答える。

エミリー(聞くのはやめとこ……何か怖い……)

夜。ホテル。


エミリー(ベットふかふかぁー……)

お風呂は長く入ってしまったが、体が軽くなると言う対価を得た。

エミリー(ここはどんなところなんだろう)

窓から見える町は、どことなく暗い。


>>>>>>>>>>>>>>>>>


午前1時過ぎ。紳士の国『直轄領』シンガボール



ゴーストタウンと化した島には多くの兵が集まっていた。

陣地を敵は見事な速さで築き上げ、筒を磨いている。

魔王軍の領土であることを示す、赤い線と中心の丸の旗が掲げられている。

また、西側には藍色を下地とし、白のバッテンと赤い十字が掲げられている。

歩兵以外にも、騎兵やトリ、ドラゴンが居る。

見据えるのは、隣の土地。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

午前9時。大通り。


エミリー(早めに起きて少し眠い……)

>>655訂正




夜。時刻不明。ホテル。


エミリー(ベットふかふかぁー……)

お風呂は長く入ってしまったが、体が軽くなると言う対価を得た。

エミリー(ここはどんなところなんだろう)

窓から見える町は、どことなく暗い。


>>>>>>>>>>>>>>>>>


午前1時過ぎ。紳士の国『直轄領』シンガボール



ゴーストタウンと化した島には多くの兵が集まっていた。

陣地を敵は見事な速さで築き上げ、筒を磨いている。

魔王軍の領土であることを示す、赤い線と中心の丸の旗が掲げられている。

また、西側には藍色を下地とし、白のバッテンと赤い十字が掲げられている。

歩兵以外にも、騎兵やトリ、ドラゴンが居る。

見据えるのは、隣の土地。


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

午前9時。大通り。


エミリー(早めに起きたから少し眠い……)



活気はそこそこ、と言ったところだろうか。

エミリー「ふわぁわぁ……」

ミン「お、エミ!おはよう!」

エミリー「おはようございます、シェイミンさん……ふわぁ……」

昨日とは恰好が違う。麻の素っ気ないズボンに皮靴、上はシャツ1枚である。そのおかげで大きめの胸が強調されている。

ミン「眠そうねー……、昨日の事はかなり体に来るもの。あ、魔王の居場所は知らないわよ。」

エミリー「むぅー……」

ミン「ふくれっ面しないの。ま、魔王じゃなくて魔女ならいるかもよ?」

エミリー「魔女?悪霊や悪魔に魅入られた人の事ですよね?」

ミン「そう、それ!なら、話早いわね!その人たちを始末……ってまでは行かないけど、連れてきてほしいの。いいかしら?」

エミリー「普通の人ですよ?わかる訳が無いじゃないですか……」

エミリー(普通の人を殺すなんて冗談じゃない!)

本音はあえて隠しておいた。

ミン「そうねぇ……あのおばあさん見てみなさい。もうすぐ盗るだろうから。」

   
普通の身なりの老女が、木か何かで編んだ袋を右腕にかけている。ここまでは普通の主婦である。                        
                      
                      ・・・・・・

青果屋に並んでいる色とりどりの野菜や果物を、お金を払わず袋に入れた。

それは、意外な光景だった。

ミン「ね?」

エミリー「あのー……むぐう……」

ミン「もう少し、追いかけましょ。」

その顔は、どこか確信めいていた。

まるで見透かしているかのように。

その後も、見ていると物を盗っていた。

ミン「さ、質問。人を困らすのが魔女だ。彼女は魔女?」

エミリー「たまたま……もしかしたら食べるのに困ったとか……」

ミン「彼女は至って普通の家だ。アレはダメね。注意してこないと。」

ミン「あの、すみません。少しお話いいですか?」

「はい、何です?」

後ろめたさも無く、老女は振り返る。

ミン「あなた、物盗ってましたよね?」

「盗ってはいませんよ。ちゃんとお金を払って買った物です。」

エミリーは本当かどうか、確かめるために近づく。

ミン「……!エミ!近づくな!こいつ、お前の懐から盗ろうとしてる!」

エミリー「へ?」

右手が、エミリーの懐へ近づこうとしていた。

それを引っ込める。

「……?」

ミン「さて、おばあさん……市場で自警団が目を見張らせてましてそれで、これ以上続けるのであれば---」

「私は魔女じゃないッ!まったく、最近の若者は……」

怒鳴る。意外、でもない。

ミン「はあ……」

すると、彼女は全体的に四角い物を右腰から取り出す。

それを構えると、プシュ!と音をたて、老女に向かい放たれた。

そして、ビクビクビクビクと老女の体が震える。

今回はここまで

筒口から、紙吹雪が飛ぶと同時にである。

ミン「ふぅ……さ、行きましょ。」

エミリー「何したんですか?銃にしては変な形ですし……」

『それ』を撫でながら答える。

ミン「懲罰銃。大昔の人たちが治安維持?のために使ってたらしいわ。ある程度の距離なら相手を葬れるみたいね。」

エミリー「まだ魔女とは……それと、お年寄りは大切にすべきだと思います!」

ミン「そうね。でも、魔女よ、魔女。年寄りでも子供でも、大人でも男女でも、ね。」

ミン「ご先祖様たちはこの様な人たちは保護してたけど、今は違うのよ。即処刑も辞さないわ。特にここなら。」

よく見てみると、住民の多くは(特にくすんだ人たち)身なりが貧層だ。

ミンはそれらに懲罰銃を向けると、ハチの子を散らすように逃げていった。

ミン「悪意は時として善意となるのよ。薬は人を治すけど、使いすぎたり間違ったりして使うと死んだりするわね。」

ミン「それと同じ。いらない人間は消すべきなの。特に魔女やその使いとか。」

エミリー(この人……人を分けている……いい人と悪い人……)

エミリー「人は平等です。何か悪さをしない限りは。」

ミン「悪さしてもしなくても、いいのよ。善悪の基準は自分が決めているから。それをまとめるために法や決まりがあるのよ。少し脳みそが足りないみたいね、エミは……」

エミリー(ムムム!どこが間違っているのかな!ああー!もー!煮え切らない!)

エミリー(ナイフで脅すのは簡単だけど、相手の方が強い)

エミリー(……落ち着こう。落ち着こう……)

息を深く入れ、吐く。これをする事3回。

エミリー「……ですね。」

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午後2時過ぎ。倉庫内


ミン「やっと……見つけた……!」

言い伝えられていた、破棄されたオーパーツ。

一部の人にしか言っていない、長年積み上げてきた計画。

ミン「『退魔の火炎砲』に『愛国筒』……こんなに多くあるなんて!」

先祖が使っていた武器の数々は、多くが劣化しつつあるがここだけは違う。

数は、銃が数十丁。砲が数十門。決して多いとは言えない。

ミン(厳重に囲まれてた物……売りさばくには少ないかな……ま、いいわよね)

「どうしますか、ボス?」

ミン「運び出しちゃって。あ、『退魔の火炎砲』は特に売れそうだから、慎重に運んでよ?」

手元のボロボロの紙を見る。大昔の言語で書かれており、読めないが絵が付いているのでなんとか分かる。

ミン(火炎砲は特に凄い。愛国砲も同じ一撃で殺せる威力だけど命中力が見る限りは凄いわね……。)

ミン(望遠鏡を少し操作するだけで、敵の懐まで行ってくれる……薬も売れるし最高ねぇ……!)

ミン(少なくとも100億ギッドは儲かる……為替なら特に絢爛の国ならそれ以上の儲け!)

ミン「くふ……くふふふ……っははははははは!」

思わず笑みがこぼれてしまう。

薬も売れるが、オーパーツ、特に武器関連は高く売れることが多い。

ミン(魔王様様ねぇ!勇者さんには……どうしようかしら?)

「運び終わりました。」

ミン「ん、じゃあやりますか。陸から海から全ては金の元だからね!」

そう言い、多くの部下を引き連れ出て行った。

10時手前。病院前。


ミンは「少し調べものがあるから」と言いどこかへ去っていった。

エミリー(疲れたぁー……)

病院まで、運び(正確には半ば引きずった)何とか運んだ。

エミリー(魔女狩りが流行りなんて物騒だなぁ)

売店の店頭に置かれている新聞に目が行く。

エミリー(世界で魔女狩りが流行……?)

新聞をひったくるように買い、その場で広げる。

エミリー(最初は……栄枯の国……?!)

エミリー(私の国からだ……)

エミリー(「凱旋中に王を男が暗殺未遂。犯人は、言動共に不明瞭かつ暴力的。埒が明かないので処刑。」)

エミリー(さらに似たような人々が多く居ることから、魔女狩りを開始した。結果飛躍的に治安は良くなった……)

エミリー(どんな人でも何か理由があってしてるのに……悪霊に取りつかれてるとか疑わなかったのかな?)

エミリー(こじつけだけど、治安が良くなっている……様には見える、かも)

何故か、頭にある考えが湧いてきた。

エミリー(魔女がいるなら、魔王はここに居るのかな……いるはずだよね!うん!)

エミリー「あの、すみません。少し聞きたいことが……」

「勇者の嬢ちゃんか。魔王ならおるぞ。今まで倒せたものはおらんがな……」

思わず興奮してしまう。歩きに歩き、命の危機に幾度も直面し、人の清濁をこれ以上見ずに済む。

エミリー(これで、旅が……勇者としての旅が……終わるんだ!)

思わず興奮してしまう。

エミリー「本当ですか!どこに!?どこに居ますか!?」

「それなら……あのクアラルンブールにある2つの塔……『魔女の柱』におるぞ。気を付けなされ、そこには多くの魔法があるそうじゃ……」

「ここからだと、歩いて一日くらいかの?」

エミリー「ありがとうございます!」

エミリー(まずは、食料とお水とお薬用意しなくちゃ!)


>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


午後8時。ホテル


張り切って確認をする。

声に出して確認するのは、おばあちゃんから教えてもらったことだ。

これをすれば、大体であるが記憶に残りやすい。

エミリー「食料よし!お水よし!ナイフよし!火種よし!傷薬に包帯……飲み薬……よし!地図よし!……うん!準備万端だね!」

エミリー(明日に備えて寝よう……)

夜は、始まったばかり。

翌日。午前11時。クアラルンブール付近。


地面が大きくぬかるみ、ところどころ隆起している。

それに植物が生い茂り、慎重に移動しなければならない。

エミリー(ナイフで切りながら進んでいこう……えい!)

目の前のつたを切り裂く。形状からすると、遺跡の様だ。

エミリー(広いなぁ……棚みたいなのが沢山あるから、ここは市場だったのかな?)

薄明るいため、心の余裕は若干ある。

ずらりと割れて汚れたガラス製の扉が並んでいた。

エミリー(中に棚……?入口が無いのに扉があるなんて変なの)

エミリー(反対側は高すぎる棚だし……まったく、昔の人って馬鹿だったのかな?)

その中を興味深く進んで行く。すると、出口が見えた。

エミリー(今度は……何だろう……)

水が溢れ、浮き草に葦など多く自生している。また、錆びた大きな金属の箱(骨組みだらけのがほとんど)が多くある。どうやら浅瀬になっている様だ。

エミリー(少しぬるい……うえぇ……張り付いて気持ち悪いよ……)

思ったのは最初だけ。後は慣れで進んでゆく。

エミリー(ようやく見えて来たけど……遠いなぁ……)

しばらくすると、今度は御城のような建物が見えてくる。

エミリー(もう少しだけど……)

外は太陽が空を赤く染め、今にも帰ろうとしている。

エミリー(今日はあそこで寝よう)

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午後8時。遺跡


エミリー(この囲まれた所で過ごそう)

火をつけ、缶をナイフで切り、開ける。

エミリー(ナシチャンプルーとチンジャオロース?の缶、とても美味しい!)

ナシチャンプルーは結構濃い味付けに成っており、チンジャオロースは色とりどりの細切りにされた野菜と肉がソースにとても絡みあっている。

エミリー(気まぐれで買ったこのチンジャオロースは当たりだねー♪)

エミリー(食べたら眠いや……)

火を消す。カバンの下にナイフを隠して眠りについた。

簡単な紹介#18


ミン・シェイミン…女性。28歳。絢爛の国の出身で、華子(かこ)と呼ばれる人たちの一人。貿易商。己の実力のみで財産を築き上げた。金になりさえすればどんなリスクを被っても構わないと考えている。


解説


華子…絢爛の国出身の者をこう呼ぶ。繋がりはかなり強いようだ。

魔女狩り…エミリーの国から始まった行為。治安維持のための行動のようだ。

退魔の火炎砲・愛国筒…オーパーツ。特に前者は覗き込むだけで、目標に向かってくれる優れもの。

XXXXX…X史上最悪と呼ばれたX総X戦」で世界人口のおおよそ半数X死滅。

XXXXXXXXXXルターに逃げ込む。







XXXXXXX…残存する兵力でXXXXXXに対抗。敗北数十~数千回。世界人口2割減。




---始まりの国に書かれてた壁の落書きより。劣化によりほとんど読めず。大量のインクで書かれていた模様。

翌日。午前9時過ぎ。


エミリー「んぅ……」

重たい体を起こす。

真っ先に感じたのはジメジメした嫌な空気。

辺り一帯は靄(もや)がかかっている。

残った水で顔を洗い、缶をカバンから取り出し、ナイフで開ける。

エミリー「熱い……」

水のビンは4つある。一つは空になった。

エミリー(何か使える気がするね……)

エミリー(晴れる前に行こう)

カバンを背負い、魔女の柱へと向かった。


>>>>>>>>>>>>>>>>

魔女の塔前


エミリー(これが……魔女の塔……)

大きくそびえるそれは、全てがガラスで出来ていると言わんばかりに朽ちた姿で主張している様であった。

エミリー(行こう。魔女を……魔王を倒さないと)

魔女の柱内。


「あれは……人……?」

(珍しい事もあるもんだ。魔物、なのかもな)

そう言うと、焦げた色の男は長方形の小さくぎっしりと並んだものを取り出す。

小さい正方形の石ころくらいの物が嵌められており、数字と記号と文字が書かれており、その上にはガラスがはめ込まれている。

ガラスは光を放っており、文字が浮かんでいる。

「1」と書かれた石を押す。ボン、と音が響いた。



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


エミリー「うわぁ!」

いきなり地面が噴き出した。

しかし、それはいた所と明後日の方向と言う事が幸いした。

エミリー(魔法……なのかな)

魔法なんてある訳がない。

もう一度言うが、そんなものはこの世界には存在しない。

だが魔法だと言われてしまえば、この光景は信じせざる負えないだろう。

エミリー(どこに居るんだろう……)

辺りを見渡すが敵は見当たらない。

ナイフを取り出し、慎重に進む。

足音はなるべく立てず静かに、静かに己を殺しながら進む。

エミリー(魔王はもう目の前なんだ!くじけちゃダメだよ!私!)

しばらくし爆発音。いた所とは違う。幸運。

そして中に入ることに成功した。

エミリー(大きいし広いや)

タワーは2つあるが、よく見ると、案内の1,2のうち、2だけ若干であるが傾いていた。

エミリー(2だけなんて変なの。ここだけ地味に綺麗……2の方は入り口植物だらけだったからここが入口だね)

中は何もなかった。ただ、壁や床に落ちた鉄板に変な線や文字が多く書かれてる。

エミリー(階段は無事、なんだね)

階段はどこまであるか分からないくらいある。もはや何百段どころではないだろう。

エミリー(歩くのやだなぁ……でも、慎重に進みながら行かないと)

ここは敵の本丸。

何があってもおかしくはない。

エミリー(さっきからバチバチって聞こえる……)

どうやら奇妙な魔法があるようだ。

ゴウンゴウン、バチチ、フオォォォン……

こんな音が響き渡る。

エミリー(何も起きない……幻聴……なの……?)



こんかいはここまで

床はところどころ禿げており、ひび割れは勿論、穴まで空いている。

エミリー(本が落ちてるし……絵のついているのだけ)

多くの数と英字がごちゃごちゃと書かれている。

エミリー(N2H4O3?C2H8N2?意味わかんない……。けど馴染みあるような……)

エミリー(気のせい、かな)

階段はまだあるようだ。

エミリー(はぁ……どこまであるのかなー……)

チン、と音が響く。

咄嗟に物陰へ隠れる。これは本能に近い行動であった。

エミリー(くすんだ人……?それも大勢……)

金属の扉が開く。

多くが小型の弩(ど)やナイフで武装してる。

そして彼らは、下へ降りて行った。

エミリー(今のうちに!)

階段へ全力疾走。

しばらくして、息切れを起こす。

エミリー(結構上ったかな……)

エミリー(30F……我ながら恐ろしい体力だよね)

外はフクロウや虫の声が聞こえている。

エミリー(火は使わないで、今夜はここで泊まろう……)

慎重に開け、食事を済ませる。

いつものように美味しかったが、気が休まらなかった。

しかし、徹夜で移動となると明日に響きかねない。

エミリー(お休み……)

午前0時過ぎ。戦士の国国境。


「またベトコンだ!」

紳士の国の兵士が銃を撃つ。

しかし、また一人また一人、負傷してゆく。

木の影から、覗き込む男がボソリと言う。

「さて……どうしたもんかね……」

手には小瓶がある。何が書かれているかは分からないが、「!」のマークが描かれている。

「汚染血液付き矢が切れた!ヤン!敵さん逃げて行ったぜ。どうする?」

ヤン「こいつでも投げ込んでおくか。よっと!」

その小瓶にはこう書かれていた。


「EvXrX vXrus type:ZaiXe MaXe in SouXX KXXXa:Mk-5α」

今回はここまで

午前3時手前。上空4500m


黒いトリ達が風切音と共に奇妙な鳴き声をあげながら、白けた空を進みゆく。

それはどこかへ向かっているのだろうか。

中央には2つの回転する羽が同じく声をあげている。

その後ろには、魔女の塔がそびえていた。

翌日。午前9時過ぎ。


エミリー(行こう)

重い荷物がさらに重く感じる。

果てしない階段を登っては途中で休む。

それを繰り返しながら進む。

しばらくすると、広い空間が現れた。

銃や弩、剣や槍といった物が多くある。

的がある事から、訓練所だろうか。

壁はかつては絢爛さがあった様だが剥げ落ち、傷が付き、銃痕が所々開いていた。


続きは夜に

エミリー(途切れてる……槍の長さに合うかな)

階段は途中で崩れており、通れない。(単に朽ちていたようだ)

立てかけてある槍を1本持ち、置く。

エミリー(ギリギリ……乗ったら壊れちゃうね)

走ればその勢いで壊れ、頭を打ち付ける可能性が高い。

乗ればへし折れ、体のどこかが折れる。

エミリー(……どうしよう……)

バチ……ギリリリ……パンポーン……

エミリー(誰か来た!)

息を殺して、影から覗く。

ゾロゾロと男たちが現れる。

武器を置き、金属の扉の横で何かをした。すると、戸が開いたではないか!

男たちは入り、どこかへと消えた。

エミリー(何してたのだろう?)

近づくと、何かの四角い板がはめ込まれている。

エミリー(これで何かしていたんだ……でも……)

エミリー(試すのはダメだね。昼に居るって事は夜にはいないはず……下へ行って待つしかないかぁー……)

降りる。慎重に音をたてずに降りてゆく。

ちらりと確認。敵影はない様だ。

急いで荷物を広げ、寝る体制を整える。

枕代わりに荷物を詰めたカバンを使う。

不安と興奮が入り混じる。

落ち着き、寝たのはその十分後だった。



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
午前0時過ぎ。


エミリー「ぅん……よし、行こう。」

水を飲み、そうつぶやく。

階段を上がり、例の金属製の扉へ。

はめ込まれた物は2つある。

エミリー(上だから、これかな)

時たま聞こえてくる、音が響く。

ピンポーン、と小気味のいい音を出し、扉が開く。

エミリー(人はいない、ね)

エミリー(狭いなぁ……)

中には幾度か修復したような跡があった。

そして、また扉の横には石が嵌められている。しかも、先ほどより倍あるようだ。

エミリー(数字が書かれてる……一番上はこれかな)

押す。すると、扉が閉まり、例の音が聞こえ始める。

ふわりとした感覚に襲われる。

ガリガリ、ジジジ。

しばらくすると、小気味のいい音を出し、扉が開いた。

エミリー「お、お邪魔しまぁーす……」

何故か言いたくなった。

中は暗く、変わったガラス製の細長い筒がいくつか置かれていた。

エミリー(机と、椅子?凄く立派……)

この部屋だけだろうか、床や窓が綺麗な状態で残っている。

そして、左右の壁には鉄砲とサーベルがかけられていた。

だが、肝心の『魔王』がいない。

エミリー(いない……のかな……?)

慎重に探す。

机の中やその裏、隅々まで怪しいところは徹底的に探した。

エミリー(壁にかけてある銃……これで、迎撃……)

椅子を土台にし、銃を慎重にとる。

エミリー(火つけ用の縄も無い……何だろう?)

瞬間、ずしりと体全体に来た。

エミリー「わわっ!んー!んんん!んぐぐぐ!ハァハァ……み、見た目以上に重い……」

銃を元に戻した。

戻ってこないうちにどうにかしなければならない。

エミリー(机の中って急いで調べたから、よく見てないや。調べ直そうっと)

古びた立派な椅子や机をもう一度、調べる。

すると、机裏側の板が外れそうだ。

エミリー(銃……にしては小さいし、変な形……)

やや大きめの銃。かなり手入れがされている。

エミリー(掠れてるけど……M9……3……F?)

続きは夜に

エミリー(持っておこう……かな)

ナイフ以外にもあった方が有利になる。

それを左のポケットに仕舞う。

エミリー(虚仮威しにはなるはず)

遠距離の武器が手に入った事はとても大きい。

ジジジと音が鳴り出す。どうやら、籠の中に入っているらしい。

エミリー(開いたら、突きつける。それで……終わり、だよね……?)

銃を取り出し、構える。

手にじんわりと汗が広がり、足が震える。

呼吸が少し荒くなり、瞳孔がいつもより大きく開く。

---この世と言うものは壮大な物語を繰り広げておきながら、落ちはそうたいしたもので無い時がある。

つまりは、全てにおいて他人のとりわけ我が生き様は誰も興味が無いのだ。

だから精々楽しみたまえ。

小気味のいい音と共に、扉が開く。

「……誰だ?」

褐色の男はやや戸惑っている。

エミリー「わ、わわわわわたひはゆ、勇者!勇者エミリー・ハート!」

エミリー「あ、あなたを伐ちに来ました!魔王!」

「そ。俺、魔王じゃないけど、魔王かー……」

エミリー「動かないで!う、撃ちますよ!?」

男は動揺も見せずにこちらへと近づいてくる。

渇いた音が響き、カ、カラランと現実を突きつけられる。

男には傷一つなかった。

銃を捨て、ナイフを取り出す。

それを見るや否や彼もまたナイフを取り出す。こちらより大振り。

エミリー「やぁぁぁぁぁ!」

突き刺す気で、殺す気で体を動かす。

腕を。足を。手を。全てを動かす。

金属の音と震えが伝わった。

「弱いな。」

そう言うと、男は躊躇なく蹴り飛ばす。

エミリー「ぅぐぁ……」

エミリー(お腹が痛い……口の中が酸っぱい……)

対人戦は全くと言っていいほど、彼女は経験していない。

「もう、終わりか?」

コンバットナイフをエミリーの前に突きつける。

はっきりとした、殺意。

それが彼女を一時的に支配する。

同じ形をしている者とは思えない。

エミリー「ァ……ど、うして……あなたは……」

「そりゃこっちのセリフだ。どうしてここに居る?」

エミリー「ま……魔王が……居る……って……聞い、た……」

「魔王なんている訳ないだろ?……そうか、じゃあ少しだけ付き合って貰おうか。エミ……ちゃん?」


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午前10時。『直轄領』クルヤ


木陰で新聞を広げ、癖のありそうな女性が佇んでいる。

ミン(「勇者、人質に取られる」かぁ……金か死か……武器はこちらの方が有利だけど)

ミン(愛国筒や退魔の火炎砲が売りってのも少し……!「龍の咆哮」を売り出すチャンスかも)

ミン(勇者をも魔王をも倒す最強の武器としてね)


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午前11時手前。魔女の塔


目が覚めると、複数の大小さまざまな武装をしている男たちが目に入る。

動かそうとする。どうやら椅子に括り付けられ、足も手もあまり動かせない。

エミリー「何でこんなこと……」

「おはよう。簡単さ。俺らは『紳士の国』から土地を返してもらうためにこうしてるから。それだけ。」

半分起きた頭で言葉を必死に絞り出す。

エミリー「……目的は何ですか?」

「そうだね、しいて言うなれば我々は『ベトコン』だな。大昔に大国を退けた伝説からつけた名前。」

エミリー「伝説……?」

意識がはっきりしてきた。

どうやら、このエミリーを打ち倒した褐色の男がリーダーらしい。

「ああ。かつて2つに分けられた時、赤き白い星の悪魔が大群で攻めてきたのを紅蓮の戦士が退けた。それが『ベトコン』だ。」

エミリー「……」

睨みつける。気づいていなかったのかは解らないが男たちの動きは変わらなかった。

ホー「そうだ、俺の名前はホー・ヴァン・タン。よろしく、勇者エミリー。」

エミリー「……よろしく」

簡単な紹介

ホー・ヴァン・タン・・・31歳。男性。『ベトコン』リーダー。銃や剣、体術以外にも政治や経済などに明るい。戦闘能力は紳士の国兵士ならほぼ倒せる。


---ずっと昔、剣や魔法があって魔物と魔王が脅かす話を誰しも知っている。

それを終わられたのが勇者であり、何処かに居ると思っていた。

勇者や魔王、魔物はいなかった。

が、魔法だけは存在していたのだ。

ホー「しかし、まぁ驚いた。勇者がこんなにも幼いとは。ロリコンだな、こりゃ」

エミリー「それになる前に魔王を倒しますよ、私が」

どこか含みのあるため息を彼は吐く。

ホー「お前さん、下手すれば勇者じゃなくなるかもしれないぜ」

新聞を見せてきた。くまなく探すと小さな記事が見つかった。

エミリー(次の勇者を……選ぶ……?)

ホー「見つけたようだな。お前は一応死んでいる、と言う事だ。もう待ってられないって感じか」

エミリー「私は一体……」

ホー「さぁな。アンタの事なんて知った事じゃないし」

エミリー「……」

監禁されてどのくらい経ったのだろう。

ご飯と水は一日3回与えらている。

糞尿は言えばトイレに連れて行ってもらえる。

エミリー(考えるのさえ面倒……逃げられない。けどいずれは……)

ナイフも何もない。圧倒的不利。

エミリー(物と物はぶつかると欠ける……)

死んだ目と重い体で見渡す。

見るとそこそこ手に馴染みそうな石があった。

エミリー(いけるかな……)

椅子に括り付けにされている。足も同じだ。

取ろうとしても無理。おまけにジメジメしており、体がべた付く。

だから縄を切るためにどうにかしなくてはいけない。

死んだ頭をどうにか動かす。

エミリー(行ける訳ないよね。考えてみれば……)

エミリー(状況は最悪。武器は無いし圧倒的不利……でも体と頭は動かせる)

その時、地面が少し揺れる。

エミリー(「じしん」なのかな……少し怖いかも)

揺れは起こらず代わりに聞いたことのある音が少しづつ聞こえてくる。

エミリー(爆音……?魔王軍!?)

べた付きが引く。手足を急いで動かす。

続きは夜に

爆音と同時に建物全体が激しく揺れる。

エミリー(急がないと……!)

エミリー「んぐぐぅ……!」

その時、片足が自由になった。椅子の足が折れたようだ。

エミリー(椅子ごと壊してみよう……)

思い切り何度も何度もたたきつけ、ようやく自由になった。

手ごろな石を持ち、下へ向かう。

---最初の武器は言語であり、次は拳と足であった。

やがて、棍棒になり、弓となり、槍と剣となった。

そして銃と大砲に変わり、最終的には言語となった。



(自由の国で見つかった四角く薄い箱に書かれた。地下施設から出土。デザインと表記から嗜好品と思われる)

エミリー「魔王軍……!」

はっきりとは見えないが、銃や砲で武装している。

6つの丸い太く黒い車輪(?)には、四角い穴の開いた箱が鎮座している。

それは大きな音と火を噴きながらこちらへ近づいてくる。

そして、大きく爆発した。


>>>>>>

ミン「あはははは!くふふふ!まさかこーんな副産物が見つかるなんてね!」

腹を抱えながら笑う彼女。

ミン「まさか『破城槌』が見つかるなんてね!」

ミン「愛国筒や退魔の火炎砲より強力よ!これ、いくらで売れるかしらねぇ!?」

「幸い予備の弾もあるんで数百……いや、数兆で売れるかもしれません!」

「眉唾でしたしね。まさか草木に隠されていたとは思いませんでしたよ」

ミン「殺せ殺せぇ!勇者もろともブッ殺せーーーー!」

興奮している。

当たり前である。圧倒的な威力。圧倒的有利な武装。

それを持っているのだから。

>>>>>


未だに火を吐き続けている箱は恐ろしい威力を持っていた。

地面をえぐり、人も全て燃やし尽くしている。

エミリー(まずはカバンを探さないと!)

轟音の中、必死に探す。これが無ければ勇者としての資格を失ってしまうからだ。

あちこちを走り、足や体にガラス片が付いてでも探した。

エミリー「いたたぁ……」

じぃ、と見つめる。

下に造作におかれたややボロボロな袋が無造作に置かれている。

エミリー(あった!)

エミリー(中身は無事だね!)

エミリー(これ、持っていこうかな)

手にしたのは変な形をした銃。

拳銃よりは大きく、小銃よりは小さい。

銃身が見当たらず銃床(射撃時に肩を支える所)が無い。

それを持って行き、外へと向かった。


>>>>>>>>>>


外は案の定、阿鼻行間と化していた。

飛び散った焦げた肉片。

皮膚が火傷状態のまま破片が刺さった死体。

その他大勢……見る影も無かった。

「ぁ……ぅ……」

一つの男が彼女の足にしがみつく。

エミリー「ひっ……」

パパパ、と火を噴く。

そして、肉塊となった。

エミリー「はっー……はっー……はっー……」

震える手で殺した。

エミリー(威力は十分……だね)

ホー「ボタンが反応しないだと……クソッ!こうなったら極秘に使う予定だった『神の杖』を使うしかないな……」

彼の手には小さな金属製の何かが握られている。それをカチリと押すが、反応が無い。

それに気づかず彼女は話すしかけた。

ミン「勇者様もいたんだね……ふぅん……」

エミリー「ミンさん……何で……」

ミン「そんなの簡単。武器のデモンストレーションよ!力こそ正義の時代!無力な者は皆蹂躙されてゆく定めなのよ!」

ホー「なら、お前らはこれに抗えるのか……?『神の杖』によ」

ミン「そんなの聞いたこと無いわねぇ。有るなら売ってほしいけど」

空気を切る音が聞こえ始めた。

ホー「神の杖はな、ここじゃこう呼ばれている……『神話の鉄杭』、『柱の木々』」

ずん、と大きな音を立ててる。

エミリー「柱が降ってきた!?」

ホー「これは奥の手だ。で、倒すんだろ?」

鉄杭は空を切り雨の如く落ち、貫いてゆく。

ミン「……引くわよ」

引こうとするが、破城槌の一部(神の杖に当たったのだろう)、が使い物に成らなくなっていた。

ミン「破城槌は置いていくわ!く……でも弾だけでもどうにかなるから持っていきなさい!」

重たそうな先端がとがった細長い物を4人がかりで持ち、去っていった。

エミリー「あの、ナイフを……」

ホー「ああ、これか。返すよ。単なるナイフだしな」

エミリー「あ、ありがとう……ございます!」

ホー「しかし、雨がこう降ってるとな……」

軽い地響きを鳴らしながら、柱は刺さっていく。

ホー「どうする?送っていくか?」

エミリー「お願いします」

ホー「商売人ってのは金のためなら何でもするのか、なんてこりゃ思ったりちゃうな」

ホー「こっちだ。着いてきな。命の保証はしないけど」

草と土と水たまりを踏みながら、進んでゆく。

ホー「気を付けろよ、たまに罠があるからな」

エミリー「罠なんてどこにも……」

ホー「地雷、クソまみれの竹やり落とし穴、頭上から落ちる棘付きハンマーやトラばさみも有る。気を付けないとお陀仏だ」

ホー「全てが罠だ。見える物も見えない物も全てな」

地面や全てに気を張る。

エミリー(引っかかったら死ぬ、引っかかったら死ぬ……)

キラリと光る細い線がホーの歩く近くに仕掛けられていた。

エミリー「そこ、罠です!」

ホー「おお!びっくりした。……これか」

そこらに落ちていた少し大きめの石を投げる。

糸に当たると、大きな音を出し爆発する。

パパパパ!

エミリー「て、敵襲!?」

ホー「落ち着け!こういう罠もある!だから気を付けろと言ったんだ、嬢ちゃん」

ホー「Như có Bác Hồ trong ngày vui đại thắng♪~」

ホー「Lời Bác nay đã thành chiến thắng huy hoàng♪~」

エミリー「聞いたこと無い歌ですね。なんて言う曲ですか?」

ホー「大昔から歌われてきた歌だ。曲のタイトルは覚えてないや。意味はよく分からないけど、こう勇ましいし清々しいだろ?」

上機嫌で歌を口ずさみながら罠をかいくぐり、進んでゆく。

エミリー「……The city fall down,citizen so busy♪~」

ホー「何だ、それはお前の所のか」

エミリー「かも、ですね。どこか懐かしい感じの歌です。明るいけど、どこか暗くて」

ホー「そんなものさ。俺も嬢ちゃんも」

そんな事を言いながら、町へと向かって行くのであった。

「居たぞ!ベトコンだ!」

突如緑の服を来た白い人に襲われる。

エミリー「あの……」

「人質か……」

ホー「ああ、そうだ。こいつは勇者じゃないが子供だ。さあどうする?」

いきなり首筋に冷たい鋭い物が当てられる。

何があったのか分からない速さで抜かれた、らしい。

「黄色いサルめ……!狡猾な事を……!」

緑の服(警察のようだ)はサーベルを抜き、警告する。

「いいか?お前みたいのが将来ある子にこんなことをしてはいけないんだ。分かったら離せ、ペド」

ホー「そうか……じゃあここまでだな」

円柱型の小型の物を吹き付けた。霧のような物が目の前を覆う。

ホー「さーて、逃げますか」




午前11時手前。『直轄領』クルヤ付近


エミリー「ここまで送ってくれてありがとうございました」

ホー「気にするな、勇者とか俺は知った事じゃない。早く行け。魔王、倒すんだろ?」

エミリー「……ありがとうございました!」

ホーは黙って背を向け、走り去っていった。

どこか気まずい様子。

ふと、掲示板に貼ってあるお尋ね者のポスターが。

エミリー(特徴……話し方……これホーさんだ……)


クルヤ付近にある村へ入ると、誰かが倒れていた。

目はどこか死んでおり、左腕が根こそぎ無くなっている。

どこかで有ったような気がするが、思い出せない。

エミリー(見たことあるけど……誰だっけ?)

後ろから助けてほしい様な目線が刺さったが、無視をし進むことにした。

---世界に救いを求めた結果、神は光と風で我々に試練を与えたもうた。

黒い雨が降り注ぎ、大地を潤した。


新旧約聖書より

翌日。午前9時半。『直轄領』クルヤ


「聞いたか、シンガボールが魔王軍の手に落ちたらしいぞ」

「やばいな……そう言えば、絢爛の国の方で火炎魔法を展開されたらしいぞ」

「オオワシらしいな。建物も人も全部燃えたらしい」

「おお怖」




エミリー(火炎攻撃……)

「あの、エミリー・ハートさんでしょうか?」

ふと、見るとショルダーバッグをかけている歳の変わらない少年が尋ねる。

エミリー「そうですけど、何か用ですか?」

渡されたのは簡素な手紙だ。

「これを。では」

そう言い、去っていった。

エミリー(えーと……アンナさんからだ)

封を切り開く。

エミリー(「エミリーへ。元気ですか。賢く可愛いあなたなのできっと生きているでしょう。」……ひどいや)

エミリー(「栄枯の国を始め、多くの国が魔王軍を倒さんと躍起になっており、その中には騎士がいる様です」)

エミリー(「その中には騎士を騙る者も居るでしょう。手練れですが、とても野蛮です。魔王軍の兵士を見るや否な、逃げていきます。たまに戦う騎士もいますが、すぐ逃げます。でも、魔王軍と戦った経験はアタシの方が上なんだからな! アンナ・ルドワー・ハーケニストより」)

エミリー(アンナさんは変わらずみたい……騎士って高潔な人だって本でも読んだけど……違うのかな)

エミリー(ちゃんとした職の人って聞いてるし、本当は高貴なんだろうなぁ)

ヘルメット(この場合は頭を全て覆う物の事を指す)凛とした顔、ところどころ擦れて鳴る金属音、毛並みの良い白い馬、鋭くも気高い槍と剣。

昔、本で見たあの姿が浮かぶ。

エミリー(カッコいい~……)

>>740
訂正


エミリー(アンナさんは変わらずみたい……騎士って高潔な人だって本でも読んだけど……違うのかな)

エミリー(ちゃんとした職の人って聞いてるし、本当は高貴なんだろうなぁ)

ヘルメット(この場合は頭を全て覆う物の事を指す)の中にある凛とした顔、ところどころ擦れて鳴る金属音、毛並みの良い白い馬、鋭くも気高い槍と剣。

昔、本で見たあの姿が浮かぶ。

エミリー(カッコいい~……)

エミリー(いけない!魔王の居所を探さないと!)

エミリー(次はどこ行こうかな)

地図を見ると近いのは「礼儀の国」。

ここからだと馬車より歩いた方が良い距離だ。

渇いた地を再び歩む。

私は見たのだ!

大きな木々が世界中に生えては消えていたのを!

私は見たのだ!


---とある地域の伝承記録より。

橋の手前に生えるマングローブの根元に何かを考え込む人影がある。

川はいつからか流れていないようで、木も枯れかけている。

その人が持つは細長い曲がった朱色の棒を携えてり、うかつに近寄れそうもない。

やがて立ち上がり、橋の向こうへと向かっていった。

エミリー(だいぶここの環境に慣れてきた……のかな)

エミリー(最初は少しだるくて眠かったけど、大丈夫になってきたし)

道中に川があり、川から木が生えている。

エミリー「痛た!うぅ……」

起き上がると妙な光景が広がっている。

エミリー「川から木が生えている!変なの!」

「変、か。お嬢さん中々言うな。アレはマングローブと言う木だ。川から育つ珍妙な物であるがな」

ふと見ると立派な身なりをした初老の男が現れた。

深緑色をした服を着こなしている。そこに携えるのは見るにも頼りなさそうな曲がった剣。

エミリー「マングローブ……聞いたことありません。むー……」

土手ではなく、川から生えるのがおかしい。

思わず疑ってしまう。

「怪我しているじゃないか。手当て出来るものは……少し待っておれ」

エミリー「へ?」

膝は沢山の小さな切り傷、右手の側面はやや出血。両方の掌は細かい傷と砂利が付いている。

おまけに服はところどころ破けている。

エミリー(みっともない、かな……)

「手をだせ。……ほれ、これで大丈夫。ではな」

そう言うと、馬にまたがり、礼を言う前に去っていった。

両方の手には先ほどの男の袖を切り、酒で濡らした上で縛った物だ。

エミリー(名前、聞きそびれちゃったなぁ)

礼儀の国 バードアイ 午前11時手前



エミリー(不思議な色使いと飾り……素敵)

住んでいる所とは違うレンガの建物、目や眉、口が線のような変な格好をした像など。

映るもの全てが違う。

エミリー(泊まる所探さないと)


----------
---
-


午後1時半。 大通り


布きれを取る。傷はある程度塞がっていた。

エミリー(聞いてみないと分からないよね。きっと魔王は……いるはず)

エミリー「あの、すみません---」


-------
---
-

午後2時過ぎ。 屋台


エミリー「ふぅ」

今飲んでいるのはチャー・チェンと言うものだ。甘くて、さっぱりしている。

エミリー(手がかりなしかぁー)

お腹が凄い音をして鳴った。

微笑ましい目で見られている気がする。

エミリー(うー……恥ずかしいな)

エミリー「あの……カーオ・パッを一つ下さい」

「よく食べそうだし大盛りでいいかな?嬢ちゃん」

エミリー「……はい」

エミリー(気づかれてた……)


エミリー(塩気がちょうど効いてるし、パラパラしてる。これならいくらでも入るよ!米って野菜って思ってたけど、パンみたいにお腹に溜まるね)

エミリー(大盛りにしてもらって良かったかも。飽きたら外の野菜食べればいいしね)

>>752訂正



礼儀の国 バードアイ 午前11時手前



エミリー(不思議な色使いと飾り……素敵)

住んでいる所とは違うレンガの建物、目や眉、口が線のような変な格好をした像など。

映るもの全てが違う。

エミリー(泊まる所探さないと)


----------
---
-


午後1時半。 大通り


布きれを取る。傷はある程度塞がっていた。

エミリー(聞いてみないと分からないよね。きっと魔王は……いるはず)

エミリー「あの、すみません---」


-------
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-

午後2時過ぎ。 屋台


エミリー「ふぅ」

今飲んでいるのはチャー・チェンと言うものだ。甘くて、さっぱりしている。

エミリー(手がかりなしかぁー)

お腹が凄い音をして鳴った。

微笑ましい目で見られている気がする。

エミリー(うー……恥ずかしいな)

エミリー「あの……カーオ・パッを一つ下さい」

「よく食べそうだし大盛りでいいかな?嬢ちゃん」

エミリー「……はい」

エミリー(気づかれてた……)


エミリー(塩気がちょうど効いてるし、パラパラしてる。これならいくらでも入るよ!米って野菜って思ってたけど、パンみたいにお腹に溜まるね)

エミリー(大盛りにしてもらって良かったかも。飽きたら付け合せの野菜食べればいいしね)

午後3時手前


エミリー(ここじゃなくて都(みやこ)のクルンコックって所が良さそう)

エミリー(馬車は……無いみたいだし、船と歩きだね)

エミリー(宿でいったん荷物とお金の確認しないと)


----------
----
-

宿屋


カバンを下ろし、中を確認する。

水は後1つ、食料は付きかけている。お金は……やや有る。

エミリー(この先の事を考えると、どうしてもお金を手を入れる必要がある……働くしかない、よね)

エミリー(まずは都に行って募集しているか探さないとね)

外を見ればもう日が傾きかけている。

エミリー(……少し眠いや。お風呂入ってからにしよう)


脱衣所


服を脱ぎ、お風呂に入る。

湯船は丁度いい具合に暖かい。

幸い誰もいない様でいい気分。

エミリー「あー……気持ちいいー……」

疲れがとれる。

頭を石鹸で洗う。

エミリー(あんまり泡立たない……いっぱい擦ろうっと)

泡が沢山出る、出る。

それで頭を洗い、タオルに付け、体を洗う。

エミリー「っあ……」

足をのばそうとすると、やや痛い。

傷とは違う何か。

エミリー(早く終らせて、寝よう)

痛みはベットに着くまで続いた。

翌日


午前9時。大通り



エミリー(痛みは何とか取れた……気がする)

エミリー(体の中の痛みに対応する薬見ておこうかな)

エミリー(薬屋さん……薬屋さん……)


「魔の軍がここから退いたってよ」

「オーパーツが沢山残ってたって話だ。犠牲も大きいらしいがな」


エミリー「それ本当ですか!?どこで……どこに居ますか!?」

思わず気分が高揚する。

エミリー(このまま行けば魔王も必ず現れてくれるはず……!)

「都の方さ。きっと凱旋してるかも」

「船も有るが、ベトコンが襲ってくるからな……歩いた方が良い」

エミリー「ありがとうございます!」

エミリー(地図を見る限りこの方角でいいみたい)

宿に戻り、荷物を整えてから寝た。

その日は不思議とずっと寝ていられるような気持ちであった。


------

翌日

午前11時過ぎ。バードアイ郊外


舗装されていない荒れた道を進む。

ところどころ円錐状の物が、「南東の国」で見た事がある形の物が転がっている。

一部は穴が開いており、多くの種類問わず動物の死骸がそれを飾る。

鬱蒼と茂る変な形の木々や大きな虫、6本足の動物が時折見かける。

エミリー(それにしても変な頭や大きい虫が多い……気持ち悪いなぁ……早く抜けようっと)


やがて、四角い柱に植物が生えていると言う光景に出くわした。

開けてはいるが、道路はひび割れているだけである。

エミリー(ここ……どこなんだろ?)

その時、水滴が上から降ってきた。

やがて、それは徐々に音を増してゆく。

エミリー「うわぁ!」

いきなりの雨でびっくりしてしまう。

丁度近くにあるものに逃げ込んだ。

エミリー(広いなぁ……石の床と金属の床……金属製の床なんて凄い遺跡)

雨は当分止みそうもない。

開けてはいるが、陰と植物で空を覆っている。

なので、太陽が出ているか分からない。

エミリー(寝る所の確保と準備しないと。確か野営……だっけ?)

売れるものはとにかく売った。

しかし売れたのは本だけである。

手元のお金は余裕ある様には見えるが、長い目で見るとそこが見えてきそうだ。

金が無ければ何も出来ないと言うのはある意味当てはまる事なのだ。

カバンから塩付けにされた野菜と魚のビンと水のボトルを取り出し、済ます。

エミリー(もう寝よう……)

火を消し、眠りについた。

---ついに来たのだ。理へ。

だが、それを終わりか始まりと捉えるか。あるいは道半ばなのか。

全ては幸せのために。

翌日


地面が揺れる感覚に襲われる。

エミリー「んぅー……」

それにしては妙に部分で暖かい。

「こんなところで寝ていると風邪を引きますよ」

目を開け、体を伸ばす。徐々に頭に光が入る。

エミリー「……誰です!?」

「ワタクシはここの管理人、です。人が居たのは久しいものです」

エミリー「管理人……?」

エミリー(この遺跡自体かなりだけど……)

目を見ると、不気味なくらい透き通っている。

エミリー「あの、失礼ですがあなたは……?私はエミリーです」

プロード・パイ「失礼しました。ワタクシはプロード・パイと言います。以後お見知りおきを」

翌日


地面が揺れる感覚に襲われる。

エミリー「んぅー……」

それにしては妙に部分で暖かい。

「こんなところで寝ていると風邪を引きますよ」

目を開け、体を伸ばす。徐々に頭に光が入る。

エミリー「……誰です!?」

「ワタクシはここの管理人、です。人が居たのは久しいものです」

エミリー「管理人……?」

エミリー(この遺跡自体かなりだけど……)

目を見ると、不気味なくらい透き通っている。

エミリー「あの、失礼ですがあなたは……?私はエミリーです」

プロード・パイ「失礼しました。ワタクシはプロード・パイと言います。以後お見知りおきを」

髪は不自然なくらい黒く長い。顔はどこか作ったかのような風であり、平均的な身体。

声は効きやすいくらいはっきり丁寧だ。

エミリー「プロードさんはここで何をしているんですか?もし迷子なら町まで送りますよ?」

プロード「いいえ、町はもうありますから」

エミリー「へ?町はここからさらに有るんですが……」

プロード「着いて来てください。町はすぐそこなので」

そう言い、彼女は奥へと向かう。

エミリー「あ!待って!」


---------
----
-


何かを操作し、彼女は重々しい金属製の扉を開く。

エミリー「凄い!どんな仕組みなんですか?」

プロード「秘密です」

中はどこか無機質で地下にでも町がかつては存在していた感じである。

エミリー(ガラスと金属……空は見えない……寂しい所……)

プロード「街の住民は皆、出て行きました。もうそれこそ100年以上前にです」

エミリー「100年以上前……?」

エミリー(もしかしてこの人……おかしい人……なのかな)

プロード「かつてこの町は平和でした。一度だけではなく、二度使われました。そのどちらも神の裁きから逃げてきた人々達で溢れていたのです」

そう言いながら、彼女は「座って下さい。お疲れでしょう、これでも。グラティーン・ブルです。美味しいですよ」

割と大き目の、細長いくびれたビンに黄色い液体が入っており、それをポン、と音をたて開ける。

エミリー(!?しゅわしゅわで甘い……あんまり美味しくないや)

プロード「どう、ですか?ここだとメジャーな飲みものなんですよ」

今回はここまで

エミリー「美味しいです……よ」

プロード「顔だけは嘘をつけないようですね。申し訳ございません」

エミリー「えーと、その神の裁きから逃げたって言ってましたよね」

今まで見たことある『町』とは違う。

地下にあり、天井も広く、金属製の無機質な作りではない。

確かにそのような所(罪人の国は事実そうであった)はあった。

だが、露骨にむき出しな壁や時たま垂れたり這う水が有る中で過ごすことが出来るのだろうか。

そもそも食料を確保出来る所すら見当たらない。

エミリー「その、裁きって何なんですか?」

プロート「まず、あなたはワタクシの言うことを信じてくれますか?」

エミリー(素直には信じられない。滅んだ?二度も?おかしい。そんな話なんて聞いたこと無いや)

エミリー(妄想だとしてもどこか真実味がある気がする……そもそもここがどんな所か気になるし)

エミリー「……まずはここがどこかをはっきりさせてから、です」

プロード「承知しました。では、まずこれをご覧いただきましょう」

部屋が暗くなり、壁に何かが照らされる。

長方形の光の中に何かが書かれている。

エミリー「なんて……書かれているんです?」

プルーム「では話しながら解説いたします。何故(なにゆえ)古い物なので、ノイズが入ることをお許し下さい」


-----

西暦21--年、人類の-口は1-0億人を突破し、平均寿命は全世-平均で100歳を超えました!

--も食料の供給が-----くなり、人口密度も--幅上昇。火星と月に住処を移すこととな--し-。

し-し!-宙船は1万18902のう--たった100-程しか-どり着けなか-たのです。

<システム>はどうやら、逃げる人たちを----と判断したようです。さすが我らが<システム>ですね!

こうして残った我々と<システム>は共--しながら、平和に生-ようとしたのです。

<システム>は絶対の-----------------。そし-------------------。

そこで<システム>のお創りになられたこの-----で---に---ましょう!

いつか、許しが出るまで。


-----

エミリー「何……これ?<システム>?せいれき2000年?意味わかんないよ……」

>>733訂正




エミリー「美味しいです……よ」

プロード「顔だけは嘘をつけないようですね。申し訳ございません」

エミリー「えーと、その神の裁きから逃げたって言ってましたよね」

今まで見たことある『町』とは違う。

地下にあり、天井も広く、金属製の無機質な作りではない。

確かにそのような所(罪人の国は事実そうであった)はあった。

だが、露骨にむき出しな壁や時たま垂れたり這う水が有る中で過ごすことが出来るのだろうか。

そもそも食料を確保出来る所すら見当たらない。

エミリー「その、裁きって何なんですか?」

プロート「まず、あなたはワタクシの言うことを信じてくれますか?」

エミリー(素直には信じられない。滅んだ?二度も?おかしい。そんな話なんて聞いたこと無いや)

エミリー(妄想だとしてもどこか真実味がある気がする……そもそもここがどんな所か気になるし)

エミリー「……まずはここがどこかをはっきりさせてから、です」

プロード「承知しました。では、まずこれをご覧いただきましょう」

部屋が暗くなり、壁に何かが照らされる。

長方形の光の中に何かが書かれている。

エミリー「なんて……書かれているんです?」

プルード「では話しながら解説いたします。何故(なにゆえ)古い物なので、ノイズが入ることをお許し下さい」


-----

西暦21--年、人類の-口は1-0億人を突破し、平均寿命は全世-平均で100歳を超えました!

--も食料の供給が-----くなり、人口密度も--幅上昇。火星と月に住処を移すこととな--し-。

し-し!-宙船は1万18902のう--たった100-程しか-どり着けなか-たのです。

<システム>はどうやら、逃げる人たちを----と判断したようです。さすが我らが<システム>ですね!

こうして残った我々と<システム>は共--しながら、平和に生-ようとしたのです。

<システム>は絶対の-----------------。そし-------------------。

そこで<システム>のお創りになられたこの-----で---に---ましょう!

いつか、許しが出るまで。


-----

エミリー「何……これ?<システム>?せいれき2000年?意味わかんないよ……」

プルーム「一度目はニトロンチウムと言う……要は、分子と原子を一時的に爆発させる物質を使った爆弾で……二度目は原子爆弾や中性子爆弾など、核を元とした物が使用されました」

プルード「ニトロンチウムが落とされた場所はその地自体が爆弾のような場所になるのです。半径1万キロ圏内にある空気すら爆発性を持つと言われており、完全に取り除くには一億年以上とも言われておりました」

プルード「二度目は今から597年前、25年で1世紀は進んだと言われた時代に、資源戦争と言う名目で多くの国に落とされたのです」

プルード「ニトロンチウム性の爆弾は現在では残っていないかもしれません。ですが、核を元としたものは今でも多くあるそうです。エミリー様」

鳥肌とは違う何かしらの恐怖が現れる。

まるで人ではない何か。

もしかすると魔王なのかもしれない。

エミリー(この人……いったいいくつ……?)

エミリー「あなたは……年齢はいくつ……なんです……か……?」

プルード「歳、ですか?200と21ですね。ボディーを変えてからの歳ではなかったのでしょうか?」

プルード「だとすれば、4000と1です」

エミリー「あなたは……いったい……」

身体は素直だ。右手には意志とは無関係にナイフが握られている。

プルード「ワタクシは-----社製、住居者支援アンドロイド『プルード・パイ』です」

>>777訂正 何度もごめんなさい


プルード「一度目はニトロンチウムと言う……要は、分子と原子を一時的に爆発させる物質を使った爆弾で……二度目は原子爆弾や中性子爆弾など、核を元とした物が使用されました」

プルード「ニトロンチウムが落とされた場所はその地自体が爆弾のような場所になるのです。半径1万キロ圏内にある空気すら爆発性を持つと言われており、完全に取り除くには一億年以上とも言われておりました」

プルード「二度目は今から597年前、25年で1世紀は進んだと言われた時代に、資源戦争と言う名目で多くの国に落とされたのです」

プルード「ニトロンチウム性の爆弾は現在では残っていないかもしれません。ですが、核を元としたものは今でも多くあるそうです。エミリー様」

鳥肌とは違う何かしらの恐怖が現れる。

まるで人ではない何か。

もしかすると魔王なのかもしれない。

エミリー(この人……いったいいくつ……?)

エミリー「あなたは……年齢はいくつ……なんです……か……?」

プルード「歳、ですか?200と21ですね。ボディーを変えてからの歳ではなかったのでしょうか?」

プルード「だとすれば、4000と1です」

エミリー「あなたは……いったい……」

身体は素直だ。右手には意志とは無関係にナイフが握られている。

プルード「ワタクシは-----社製、住居者支援アンドロイド『プルード・パイ』です」

こんかいはここまで


簡単な紹介


プロード・パイ・・・見た目の年齢は20代前半の女性。髪は不自然なくらい黒く長い。顔はどこか作ったかのような風であり、平均的な身体。実際はかなりの年数で稼働している超高性能アンドロイド。


解説


ニトロンチウム・・・2100年代のある年にある化学物質との組み合わせにより作られた元素。自然界にはアトメートルレベルで存在していた。ナンバーは121。それを収縮し、放つことで急激に原子と分子に震わせ、熱を持たせる。秒速1万キロの速さで起こるため、扱いには注意。強力な物体吸着性さらに残留性があり、わずかな刺激でも反応し爆発を起こす。理論上、うまく扱えばほぼ無限のエネルギーが実現するはずであった。

補足:プルード・パイはタイ語で「安全な」と言う意味がある。

エミリー「あんど……ろいど……?」

プルード「機械、ですね。高度な人形と思って下さってもかまいません」

エミリー「私の知っているのは蒸気を激しく忙しなく出す物です」

プルード「それはもう遺産レベルの話です。ここはきっと、あなた様の住む世界より高度で快適でしょう」

実際その通りであった。

冷えたほろ苦いオレンジジュース、甘いいちごが沢山詰まったふんわりさっくりタルトを食べた時は今まで以上に美味しかった。

ボーリングなる中くらいの球を転がし、ピンを倒す遊びも楽しかった。暖かなお湯がすぐに溜まり、入れ、頭や体を洗えるのは何よりもだ。

洗濯もすごく、楕円形の窓のなかに入れる事で、服が洗われ、すぐに乾く。

何よりも魔物も何の脅威も無い。

エミリー(そうかもしれない。勝手に開き閉めする扉、冷えた安全な飲み物が常に出て来る、水も手をかざせばすぐに出るし、色んな食感や味のある多くの食べ物、娯楽……きりがないや)

エミリー(確かに過ごしやすい。じゃあ何で昔の人々はここを出たのかな……?)

遥かに高度な文明。明かりも消えることが無い。

プルード「ここほどいい所はありません。また文明社会に戻るでしょう。かつての<システム>と共に、です」

エミリー「その<システム>って何なんですか?まるで神様みたいに……」

プルーム「<システム>は神です。全てを平等に均等に見て、判断する。幸福と安全と平和をもたらす全能の神です」

エミリー「全知全能の神……キリステ様以外私は知らないです」

ふぅ、と彼女はため息をするしぐさをした。

プルーム「それは宗教上の神であり、架空の存在もするかどうかも危うい物の事ですか?」

プルーム「否定はしません。何を信じるかは自由ですからね。ですが、<システム>と言う名の神は存在します」

エミリー「なら、それを出してみて下さい。私にも分かる様に」

プルーム「WUM……World unity mechanism……世界統一機構」

プルーム「大昔に国連と呼ばれた組織が腐敗、崩壊したのちに作られた半民間国際組織です。これにより一時的に平穏を取り戻しました」

プルーム「同時に、世界で同時多発的に起きていた治安悪化などの解決に力を注いだ神の創造主でもあります」

エミリー「どこかで聞いたような気がする……」

エミリー(それに……懐かしい……響き……)

エミリー(何よりも世界が2回滅んでいる……魔王が出たのは千年以上前に出てるらしい)

嫌な考えが頭をよぎる。それは心を暗くしてゆく。

エミリー(仮に……もし二度の滅びでも生きていて、こんな文明を持っていたとしたら……)


エミリー「勝て……ない……。勝てる訳ないよ……」


エミリー「ぅ……うえわああああああん!うぐ……えぐ……」

涙が勝手に溢れてくる。

エミリー「うぅ、えぐ、あぐ……ぐず……ああああん!うああああん!」

今までの全てが、自分が否定されたような気がした。

何もかも。

無論、それは少女の思い込みである。

プルーム「ど、どうしたのですか?ワタクシに何か問題が有りましたでしょうか?もし有るのでしたら、難なくとお申し付けください」

エミリー「ぅう……そうじゃなくて、ぐず……」

外の事をつまりながらも話した。どうやら、知らなかったみたいだ。

プルーム「外ではその魔王なる物が人を襲っているのですね?怖い物です」

泣いたからだろうか、落ち着いてくる。

溜まっていた何かが流れて行ったからかもしれない。

エミリー「……でも、外に出ないと何もわからないよ。出ないでいるより出た方がいいと私は思うな」

プルーム「出ない方が得策と言う場合も有るですよ、エミリー様。外は放射能や細菌、邪な人々など危険が多いです」

プルーム「本ならここにも沢山あります。それに世界は死んでから間もないですよ」

エミリー「だから居て欲しい、ですか?」

プルーム「脅威も何もない楽しい世界です。平和な所ですよ」

エミリー(なんだかわかった気がする。どうして逃げたのか)

エミリー「ここはそこまで平和じゃないです。もう、かつての所ではないですよ」

カバンをかけ直し、顔を見ることなく出口へとエミリーは向かう。

エミリー「花も無いところじゃ意味無いですよ」

プルーム「……そうですか。それがあなた様の判断なら。ご利用ありがとうございました」


-------
午後2時過ぎ


エミリー(死んだ世界、か)

エミリー(少なくとも私は死んで無い。だから世界は生きている……よね?)

そんな詩のような事を思いながら、首都へと向かう。

無類無き力こそ正義であり

数の暴力で自由を謳歌する事が出来き

それらを振るう存在があれば平和すら続くことが出来るのだ。


203X年 XXX国大統領


それが連鎖して滅んだんじゃないか、人も国も世界も


---誰かの言葉より。上記の言葉に書かれていたプレートの上から書かれていた。

午後6時過ぎ。首都クルンコック


大通り



活気が有りながらもどこか混沌としているが、やはりどこか惹かれる所がある。

大型の幌にかけられた荷物やら食料の箱やらを積んだ馬車が行ったり来たりを繰り返しており、時々砂埃が舞う。

エミリー(なんだか渡るのが難しいや。流されそう)

エミリー(夜でも昼間並の明るさ……夜襲とかされないのかな)

今回はここまで

エミリー(兵士の人達、銃持ってる。それどころか警備らしき人達も持ってる)

エミリー(魔物を追い出しただけはあるから、当たり前なのかな)

剣ではなく、それのような棒を携えている。

エミリー(そこまで危険なところじゃないのかも)

銃より頼もしいものは無い。

離れた所からいとも簡単にダメージを与えられるのだから。

エミリー(魔王軍を破った、か)

エミリー(つまり、ここはオーパーツが高品質で大量に残ってて、稼働率が良いって事になる、よね)

エミリー(銃だけなのかそれとも決定的な何かがあるのか……)

エミリー(電子式小銃やブラックホール地雷、対衛生光線収縮砲にニトロンチウム弾頭付きアンチパックミサイルやステルスドローン……)

エミリー(それだけじゃない、対シェルター破壊爆弾やC5や薬品放射砲と即席兵士プログラム……)

エミリー「あれ……?聞いたことない物がどんどん出てきてる……?ニトロンチウムは分るけど、他は何か知らない……」

つい、独り言を言ってしまう。

エミリー(少し背中が冷えてくる言葉ばっかりだ)

解説


ブラックホール地雷…踏むとブラックホールが出るという訳ではない。正確にはニトロンチウムとプルトニウムの混合物であり反応を起こしてその地点のみ、大きく爆発、収縮する。

ステルスドローン…ドローンを改良した物。ステルス性に加えて戦闘機並の攻撃力と武装を持つ。

C5…C4をより使いやすくした物。色はほぼ透明で爆発力はC4の1.2倍。使い方によっては世界で一番硬い金属でできた壁も壊すことが可能。ニトロンチウムが20%配合されている。死亡例多数報告有り。

---永遠とも取れる繁栄は唐突に終わりを告げた。

自らの手で全てを壊してしまったからだ。

それを繰り返す限り、発展はないだろう。

路面はまばらな大きさの石が敷き詰められており、道として整っている方である。

世界から仕入れたであろう珍しい品物(胡椒やエミリーが王宮でよく見かけた陶磁器類、工芸品など)が店にこれでもかと並んでいる。

エミリー(周りにあるものなんだけど、こういう所にあるって事はすごく珍しいんだ)

エミリー(逆に私がここの物を珍しがるような……私と同じ、なんだね)

エミリー(誰かが犠牲にならなくても、良い様な世界……)

エミリー(魔王軍の手掛かりを知ることが出来れば、きっともう『過ち』を繰り返すことは無いのかもしれない)

エミリー(倒して、終らせなきゃ。私を最後にして)

エミリー(そのためには情報を集めないとね)

エミリー(だいぶ陽も落ちてるから、気を付けて聞き込みしなきゃ)

エミリー(まずはここで一番人が多く来るお店……)

エミリー「あの、すみません。魔王軍について---」

ふと、こう思ってしまう。

エミリー(道行く見知らぬ人に声をかけるのもだいぶ慣れてきたなぁ)

エミリー(ついでに雇ってくれる所探さないと)

「魔王は軍が一番詳しいよ。しかし、君の歳が働きたいだなんて……おじさんがいくらか出そうか?2万、いや5万なんてどう?その代りに今晩は激しく---」

エミリー「えーと、泊めてくれる所……じゃなかった、私のような人でも雇ってくれる所!知りませんか?」

中年の小奇麗な男は「はは、振られたなァ」とどこか残念そうに言いながらも教えた。

「なら、あそこの巨大市場に行くと良いよ。子供らしい人も働いてるからね。」

エミリー「ありがとうございます!では」


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午後7時過ぎ。市場


エミリー(もうそろそろ終わる……かも)

気風のよさそうな大男が歩いている。

服装からして、ここを仕切っている人に違いなさそうだ。

エミリー(今動かないと、私のお金が素寒貧になる……!)

エミリー「あの!すみません!私を雇ってはくれませんでしょうか!」

頭を垂れ、願いを乞う。

「頭、上げな」

ゆっくりと顔を上げる。じぃ、と見るや否や「子供は雇えん」と言うではないか。

エミリー「そんな……今、少しお金が居るんです!何でもは……しないですけど、そのやることは早めに覚えますから!だから---」

「だが、あそこなら雇ってくれるかもしれんな」

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午後9時半手前。宿


幸い、宿はなんとか確保出来た。

だが、それは条件付きである。




エミリー(住み込み……うーん、その料理はあんまり出来ないし……選んでる場合じゃないか。今は貯めないとね!)

エミリー(今あるお金が1518ルピー……このまま換金するとなると少し心配かな)

エミリー(まず、携帯食料のと水を一週間買えるのと、薬代。大体6万貯めればちょうどいいかも)

エミリー(でも、6万はキツイなぁ……長くいる訳じゃないから、2,3万辺りが妥当かな)

エミリー(明日は早いし、寝ようっと)

硬い布団で眠りについた。

今回はここまで

翌日。午前4時。


「新人!いつまで寝ているんだい!ほら、起きた!」

エミリー「うえわぁあぁ!」

身ぐるみを剥がされるように起こされる。

顔はおそらく中年。そして女性。体格は、良い部類。

思わず、ナイフを構えてしまう。

エミリー「だ、誰です!?」

それに戦く(おのの)ことなく、答えた。

「あら、スカルノさんから聞いてなかった?って言っても分からない顔ね」

「スカルノさんは昨日アンタをここに斡旋してくれた人よ。それで私はこの宿のオーナー……皆はバタクって呼んでるよ」

「でだ、アンタのは?」

エミリー「エミリー・ハートです。よろしくお願いします」

バタク「そうかい。なら、エミ!この中にある服に着替えな!そしたら、厨房へ来るんだよ。いいね?」

エミリー「は、はいぃ!」

簡素なクローゼットの中身はエミリーが着ている物とほぼ同じものだった。

エミリー(確か、めいどふく……だったけ?)

エミリー(えっと、ここを通して、縛って……)

エミリー「出来た!」

窓ガラスから薄っすらと射す光。

そこに反射し、今の格好が映る。

エミリー(にへへー、我ながら似合っているね!)

あな-の働きが、--兵士一人を殺-の-す!


志願-募集 --人民-放軍


-ーバー-ー社の--ルターなら-どんな攻撃でも安心・快適!お電話は1-8-8-7Burber---



---地下遺跡より発見。当時の状況からすると戦争か?

午前10時手前。宿内バー。



「この前よ、フランキ砲を手に入れたんだ。100門売ってやったよ。一発撃ったらもう使い物にならねぇ物ばかりだけどな!」

「傑作だな!騙されたなんて言われなきゃいいけどよ~。お、そういや俺もこの前---」


「あー……魔王軍倒せるか不安だわー……」

「かなりの金は貰ってるけど、騎士団が邪魔だよなぁ。埋火(地雷のような物。中に縄と火薬があり、重みで爆発させる。縄で時間を調整出来るため、時限爆弾としても使えた)置いて消すか?」



慌ただしい職員用の通路からでも聞こえる声だ。

否応にでも耳に入る。

エミリー(うわ、物騒な話だ……)

バタク「じゃあ、まずやる事を説明しないとね。エミの仕事は部屋とフロントの清掃、それに洗濯だよ。今日はこれだけ覚えてもらうからね」

エミリー「洗濯する物はどこにあるのですか?」

バタク「そこはこの子に任せようと思っているよ。メーオ!」

「はぁーい!」

褐色の顔のはっきりとしたエミリーより年上の少女が出てきた。

三角巾からは髪の毛は出ていない。身のこなしはまさしく完璧その物である。

エミリー「よろしくお願いします!」

メーオ「ふーん、この子が例の新人さん……こき使っても?」

バタク「死なない程度にね」

今回はここまで

エミリー「死ぬまでは働きたくないな、あはは……」

メーオ「冗談。さ、やる事を今日中には覚えてもらうからそのつもりでね」


午前11時。洗濯室


メーオ「ここに部屋のシーツや宿泊客の衣類を運んでおくんだ。それで終わったら、籠に入れて、部屋へ持っていく」

メーオ「持ち手には部屋の番号が書かれたタグが有るから、よく見て運んでね。衣類の洗濯は専門の人がしてくれるから、覚えなくていいよ」

エミリー「わかりました!」

メーオ「エミ、それ持って」

タグの付いた籠を一つ持ち上げる。

エミリー(少し重い……)

メーオ「ここは8階まで部屋があるんだ。8はスイート。7は大広場で2~6までが客室だよ」

メーオ「2~6は20部屋あるからね。ここ意外と広いから間違いやすいから気を付けて」

エミリー「はい。それで、どこの階段を」

メーオ「それならすぐ近くに。終ったら昼食にしよう」


5階客室


メーオ「すぐ覚えてね。まずシーツをこう剥がして……」

エミリー(手際はすごくいいけど、教えるのには少し向いていないかも……って何分析してるんだ、私)

エミリー(集中しないと!)

メーオ「じゃあ、やってみようか」


エミリー(これをこうして……出来た!)

メーオ「……少しシワが出来てる。こうして直しておけばいいから」

エミリー「え、ありがとうございます!」

メーオ「よし。じゃあお昼にしよっか。もう12時だしね」



正午。職員用食堂内。


ところどころ壁や床にはいろいろ落書きされており、そのまま残っている様だ。

「変わらず繰り返す」「お金が欲しい」「早く出て行きたい」「シェルターに入りたい」などなど。

エミリー(愚痴っぽい感じ……)

メーオ「職員はここでご飯を取ったりする。だから、何かあった時はここに来るといいよ」

エミリー(ご飯ってどんなのが出るのかな?)

エミリー(お肉多めのナシゴレンかな?それとも濃厚なシチュー?)

きゅるる、とお腹が鳴ってしまった。

普段はあまり気にしないが、思わず顔が赤くなる。

エミリー(えーと、うん。トレーとフォークとスプーンは自分でするんだね)

トレーを片手に持ち、スプーンとフォークを取り、並ぶ。

エミリー(ごっはんー♪)

使い古されたカウンターの奥には大なべが複数湯気を出している。

ミルクと小麦粉が少し焦げた様な匂いが鼻をくすぐる。

エミリー(今日はシチューだ!)



カウンターからシチューと小さなパン3つ、クァイティオ。

エミリー(どこも入りづらい……)

エミリー(あそこ開いてるかな?)

どこか抜けているような女性。

エミリー「あの、ここ、良いですか?」

「いいですよ。どうぞ」

水を飲み、パンから口に入れ、次にシチューを掬う。

エミリー(パンボソボソしてる……シチューは少し水っぽい……)

ところどころ話し声が聞こえてくる。

エミリー(人の話が気になるなんて前までは思わなかったのになぁ)


「ここにガルダってのがあるらしいよ」

「ふーん。どんなの?」

「何だかね、空からの敵を撃ち落とすとか何とか」

「何それ!だったら財宝の方が価値あるのにぃ」


エミリー(ふーん、そんなのがここに有るんだ)

続きは夜に

黙々と目の前の女性は進める。

エミリー(は、話が……そうだ!働いている事とか!うん!それがいい!)

エミリー「あの……えっと、ここでどのくらい働いているんですか?」

「んー、1年くらい?」

エミリー(か、会話が途切れた!えーと、うーん……)

困ったことに彼女は『聞く』事は得意なのだが『話す』事はあまり得意ではなかったのだ。

その事実を今一度噛みしめている。

エミリー「そうだ!名前!名前聞いていませんでした!私、エミリー!エミリー・ハート!」

チャオムー「私はチャオムーだよぉ。チャオムー・スローリー・ウン。あ、スローリーはニックネームだけど、私はあんまり気に入ってないからチャオムーって呼んでねぇ」

エミリー「私の事はエミって呼んでくれると嬉しいな」

今回はここまで



簡単な紹介


バタク・・・女性。年齢は43歳。エミリーが働く宿のオーナー。豪快だが、容赦ない罵声を浴びせてくることもある。

メーオ・・・女性。14歳。エミリーの先輩。何かと扱き使いたがる。実は…

チャオムー・スローリー・ウン・・・女性。15歳。働いて1年の人。

チャオムー「エミ、だねー。エーミちゃんっ」

おっとりとした顔で明るく可愛らしい声で呼ぶ。

耳がくすぐられる声だ。

エミリー「な、なんだか照れるかも……です」

チャオムー「別に気を遣わなくてもいいよぉ。敬語とかいらないしさ」

エミリー「チャオムーはここの事知ってる?」

パンをシチューに付け、食べる。

エミリー「……美味しい。ボソボソでもいけるね!」

チャオムー「こう見えても結構削ってこれだからねぇ。文句は言いたくなるよは分るけど、安定して食べられるのは良い事だよぉ?」

エミリー「そう、だね。うん、いつも食べてるのより美味しいかも」

チャオムーはゆったりとした顔だが、目はどこか怒っているような気もする。

チャオムー「そうなんだねぇ。へぇー。……あんまり言いたくないけど、ここの従業員はほとんどが貧民街の出た子達なんだぁ」

チャオムー「気性は荒いから気を付けた方がいいよぉ。んぐぐ……発言とか」

そう言うと彼女は残ったパンを口に一気に詰め込み、水で流し込む。

チャオムー「弱み見せたら金も何もかも取られるからねぇ。私も何度か取られてるけど」

チャオムー「そろそろお仕事戻らないと。エミちゃんもすぐ食べて戻った方がいいよぉ。新人さんはかなり目を付けられるからねぇ」

エミリー「え、うん」

エミリー(なんだが学校と変わらないような変わっているような……)

パンをシチューのなかに入れ、スプーンでかき込む。

その後水を一気に飲み、食器を急いで下げて仕事へと戻った。


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午後11時過ぎ。自室


エミリー(あー……眠い……)

身体は鉛のように重い。

頭は煮えた鉄のように熱く、重い。

足も手も棒を通り越している。

その日の彼女は死んだように眠りについた。

---例え、ある物を得た方法が非道だったとしても使い方が良ければそれでいいのだ。

働いて得ても、殺して得ても、盗んで得ても、或いは運で得たとしても「得た」事に変わりはない。

人は案外目先の事にしか興味がない物だから。

翌日。午前10時


エミリー(これはこっちで、あれは304号室に置いておく……)

メーオ「エミリー!今来れるー?」

エミリー「後304号室にタオル運ぶだけです!」

喉が潰れそうなほどの大声でのやり取り。

機械が白い煙を吐き、大きな音を奏でる。

メーオ「タオルは他の子に任せておいて!先に来てー!」

ばたばたと忙しない音を立てながら、向かう。

床は時々軋み、外観だけは綺麗(宿としては綺麗だが、従業員の所はボロボロで汚いところが多いのだ)である故にそのギャップに一瞬戸惑ってしまう。

エミリー「何でしょう?」

メーオ「洗濯もそうだけど、掃除も覚えて欲しいからね。場所が結構面倒くさいから覚えてね?」

エミリー「はい!」


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エミリー(薄暗いなぁ)

案内されたのは小さな倉庫のような場所。

電気どころか蝋燭すら置いていない様だ。

隙間から漏れるいくつかの光が辺りを部分的に照らし出す。

暗い事には変わりないが、無いよりはマシである。

目が慣れ、見えてくる。

年季の入った棚の数々にはよく分らない物が多く置いてあり、「ソッチューン野菜」と書かれた木箱などが有る。

部屋としては冷えているどころかムシムシしているので野菜なんて入れようものなら、カビが生える可能性があるだろう。

エミリー「痛て!」

ぐん、と体が引きずりおろされる感覚に襲われる。

エミリー(下かなり段差あるなぁ……)

エミリー(メーオさんは一人で勝手に進んで行くし……教える気があるのかなぁ)

メーオ「エミ!居る?」

エミリー「え、はい!」

メーオ「それでだけど、エミに少し聞きたい事があるんだ」

どことなく真剣な顔。言葉からそれも伝わってくる。

エミリー「なん、でしょう」

メーオ「ココとは違う、別の仕事をしてみる気はない?」

メーオ「簡単な取引だし、大丈夫。ここの物を横流しにするだけだから」

---人生は、伏線すらない素晴らしい物語である。

展開なんて誰も予想出来ない。

神にも。

エミリー「……は?」

メーオ「いきなりじゃ、分らない。そうよね?」

エミリー「まぁ、そうですね……はい」

メーオ「……ここは軍と繋がっていてね、武器やら何やらたまに流れて来るらしい……いや、『流れてる』」

エミリー(えー……ここに来て、しかもまだそんなに親しくも無い人が迫真めいた事する……?少し、様子を見よう)

エミリー「その、武器ってどこに有るんですか?」

すると、適当に置いてある木箱を開ける。中は何も入っていない。

メーオ「何も入ってない様に見えるけど、この底のを取ると……ね」

エミリー「……銃?しかも小型の……」

メーオ「ベレッタやトカレフなんて書いてある。よく分かんないけど、型なのかも」

メーオ「それに」

どこかで見たことあるような棒を取り出す。カチリと付けると短く光る剣が現れる。

エミリー「光の短剣……」

メーオ「そう言うの?これいくす……103りぐと?って書いてるけど」

エミリー「X-103Light……これそんな名前だったんだ」


メーオ「あなた古い文字が読めるの!?……っと、今日はこれだった」

魚が入っていたであろう箱を開け、物を確認している様だ。

エミリー(大きい宿。それに武器の横流し。……少し調べてみようかな)

知りたいと言う気持ちと見てみたいと言う衝動。それは好奇心と呼ばれるものだと彼女はまだ知らない。

メーオ「明日は私の方から休みって事にしておく。武器は……これ、使える?」

適当な箱を漁り、渡されたのは長方形と平行四辺形が付いた金属の塊。銃。

メーオ「私もそれ持ってるから安心して。さて、時間だし行こうか」

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午前11時過ぎ。港倉庫内


中には小型の荷馬車が有る。中には先ほどの倉庫に積んだ箱だ。

さらにエミリー以外にもう5人来ていた。そして、全員銃を装備している。

エミリー「本当に来るんですか……?」

メーオ「今回は自由の国からの客だって。こんな遠い国からわざわざ、しかも遠回りなんて面倒くさい事するよ、別にいいけど」

若干の呆れ顔。

エミリー(私とそこまで歳は変わらないはず……なんだよね?)

エミリー(なのに、この冷える感じは……)

今のメーオはどこか違う。どこか鋭利な感じだ。

メーオ「……今回の内容を説明するから、メモ取らないですぐ覚えてね」

メーオ「取引はオーパーツの小銃10丁、同じく拳銃10丁、弾薬1万発……」

メーオ「内、拳銃用が5000で小銃が2000。残りは機関銃弾呼ばれている物。覚えた?」

エミリー「……オーパーツの小銃10丁、拳銃10丁。そして同じく弾薬は拳銃5000発、小銃2000に3000の機関銃弾……」

エミリー「拳銃はコルト・ガバメントが10で小銃はM16、そして機銃弾は12.7mm弾……」

メーオ「……?そうなの?よく分かんないけど、よろし---」

エミリー「今回の場合、旧式武装のため味方には熱線小銃を使用し、場合によっては対放射性物質反射装置を使い、殲滅。困難な場合は---」

メーオ「……み……」

エミリー「……の時に限り小型核弾頭ロケットランチャーの投入、早期決戦時はニトロンチウム弾頭ミサイルの仕様をきょ---」


メーオ「エミ!」


エミリー「……はっ!あの、えっと……」

エミリー(最近意識を失う様な気がする……疲れてるのかな?)

エミリー「覚えました!はい!」

メーオ「取引まで後5分、か。私は外を見てくるから」

そう言い、彼女は倉庫の裏にある扉から出る。

エミリー「……ふぅ」

緊張が解ける。コンクリートのように固まっていた体はようやく動き出す。

だだっ広い中を暇つぶしがてら、歩いてみる。

足音だけが響き、誰かが銃を下ろす音も混ざっている。

束の間の休息。

エミリー「ったぁ……」

痛みの発生源は手首からであった。僅かにかすり傷がついているだけだが、出血量がおかしい。

エミリー(なんでこんなに……出て、いるの……?)

着ている服の一部を引きちぎり、それを強くきつく巻く。

左手首が少し赤黒くなる。

「あなた、大丈夫なの?転んでもいないのに血が出てるなんて……」

エミリー「大丈夫です。こう見えても身体は丈夫なんですよ!私!」

「……コーヒー、飲む?目が冴えるわ」

エミリー「えっ、でも」

「はい。このままだとぶっ倒れそうだもの。はい。牛乳とたっぷりの砂糖で味付けしてあるわ」

鈍く光る鉄製の水筒。ふたを開けると心地よい刺激のある香りが漂う。

エミリー「砂糖なんてよくそんなに……」

「こういう所からたまーに取るのよ。3つ4つ盗っても私が犯人なんて思わないでしょ」

「そのコーヒーも同じよ。なーにが違法だか。ただ目が冴えるだけじゃない」

「これさえあれば一日中動けるわよ」

コーヒーを渡され、飲む。

エミリー「……凄く美味しい!苦くて甘い!それで濃厚!」

「でしょ?」

エミリー「コーヒーってこんなに美味しいんですね!」

身体の底から元気になる。目がはっきりとしてくる。

「それ飲んだら警戒態勢に入りなよ。時間がもうあんまりないしね」

その時、聞いたことのある錆びついた音が響く。

メーオ「エミ、怪我したの?」

エミリー「大丈夫です!大丈夫!」

---ある日、世界がいきなり灰色になったのだ。

大きい光と爆音により、二度と光が灯されなくなった。

人は、鋼鉄の地下の城へと逃げてそこへ怯えながら暮らしている。

永遠に。扉の先は死の世界だから。



---とある地下遺跡に書かれていた落書き。旧と新の2つで書かれていた。

大きな扉(上に上がる物なので正確には扉ではないが)が開かれる。

一斉に武器を構えて迎撃に入ろうとしていた。

糸が張り詰めらる場になろうとした時、しゃがれた老人の声が。

それは自由の国に来た時にお世話になった(なったかどうかはよくわからない)人。

エミリー「……銃を下ろして下さい。私たちに敵意はありません」

すみません、久々に来ましたらルールが変わっていたみたいです。
ここではエロやグロの物は残念ながら書けないそうです……。
ですので今後は『SS速報R』に移転します。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
今まで書いた内容は少しだけ修正及び加筆する予定です。


移転先はこちら
花売り「私が勇者!?」 新装版 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssr/1465830228/)

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