コスモス「私は、光の戦士を呼んだはずですが……」 (148)


若者「……」

若者「た……助かったのか?」

女性「ええ。お怪我は無いようですね。随分と高い所から落ちてきたようなので心配しましたが」

若者「あ、ああ……大丈夫だ。……ここはどこなんだ?」

女性「ここは迷宮最下層、第4階層です。そこまでは知っていますが……」

女性「私も、この迷宮から出られずにいるのです」

若者「ならば、一緒に道を探そう」

女性「この辺りは、多くの魔物が生息していますよ?」

若者「出来る限り、遭遇しないように進むしかないな。上に進めば、俺の仲間と出会えるだろう」

女性「そう……ですね」

若者「俺はフリオニール。あなたは?」

女性「私はコスモス。よろしくお願いしますね、フリオニール」



※これは「幻の戦」という題で秋頃に投稿した物語の一部を変更したものです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1420004801

若者(フリオニール)「これは看板? 何か書いてあるな」



【看板】

ニャー!



フリオニール「何なんだ、この書き出しは?」



【看板】

ここから北、モーグリの小屋があるクポ。
HP、MPの回復サービス! 寄るクポ。


少女「……」


フリオニール「何だ……この場所は? 辺り一面、血まみれじゃないか……」

女性(コスモス)「……ジェノム」


少女「誰? あなたは呼んでいないわ。彼の仲間? それとも……」


【???】


フリオニール「!?」


少女「……」


― 回 想 ― (その1)

王女「ミンウ、助かりますか?」

白魔道士「はい、じきに意識を取り戻すでしょう。力強い生命力を感じます」

王女「見つけた時、この子は大怪我をしていました。あなたなら助けられると思ったのです」

白魔道士「この魔法陣が傷を癒してくれます。今はそっとしておきましょう」


― 回 想 ― (その2)

「私には 君の運命が 見える……」

「君は あの戦士を 救うことになるかもしれない……」


― 迷宮第4層 ―


フリオニール「……ハッ? ここはどこだ?」

竜騎士「気がついたようだな。ふむ、治りが早い。血まみれだったのだが?」

フリオニール「あなたが助けてくれたのか?」

竜騎士「いや私ではない。手当をしたのは私だがね。お前をこの隠れ家に連れてきたのは、暗黒騎士だ」

フリオニール「暗黒騎士……?」

竜騎士「その騎士、血まみれのお前をここに運んできて……名前も言わずに消えてしまったよ」

フリオニール「礼を言わなければ……ありがとう。もう行かなくてはならない」

竜騎士「ほう、もう行くのか。いつまでも怪我で動けない私とは凄い違いだ」


フリオニール「怪我をしているのか?」

竜騎士「足が動かなくてな。傷は無いのだが歩けそうもない。お前なら、この迷宮から出られそうだな」

竜騎士「実は頼みがある。この私の……ペンダントを持って行ってほしい」

竜騎士「ディストに住んでいるエリナという女性に渡してくれ。ディストの場所は……フィンの衛兵が知っている」

竜騎士「そして伝えてほしい。必ず戻る、とな」

フリオニール「ああ。……俺と一緒に行かないか? 肩を貸す。何とか歩けるのでは?」

竜騎士「……お前の足手まといになるのは良くない。そのペンダントは頼んだ」

竜騎士「さあ、もう行け。もう一人の方は外で待っているぞ」

愛ってなんなんだ
正義ってなんなんだ


コスモス「……」

コスモス(彼は……ジェノム相手に手も足も出ませんでした。やはり護衛が人間では、この迷宮を脱出することは不可能……)

コスモス(私は光の戦士を呼んだのに、誤ってしまったようです)

コスモス(もう呼びかけることは出来ないでしょう。マティウスやカオスに気付かれる恐れがありますからね)





フリオニール「コスモス、もう大丈夫なのか? 怪我はしていないか?」

コスモス「ええ、私なら大丈夫ですよ。かすり傷で済みましたから」


コスモス(あら? この者の生命力が前よりも強くなっているような……?)

コスモス(それと、力も。この者に賭けてみるのも良いでしょう)


フリオニール「あんなに強い者がこの迷宮にいるとはな……。地上まで行けるかどうか怪しいものだな」

コスモス「この本を渡しておきます」

フリオニール「これは……」


フリオニール「ファイアの本にブリザドの本、これはサンダー。クラウダ、ヘイスト、それにレイズの本。もらってもいいのか?」

コスモス「ええ、受け取って下さい。あなたは攻撃魔法を持っていないようですし」

コスモス「何度も使って熟練度を上げれば、とても強力な魔法になりますよ」

フリオニール「ありがとう」

コスモス「さあ行きましょう、上へ。迷宮を脱出するのです」


背徳者「……まだ生き残りがいたのかい?」


フリオニール「……ジェノバなのか?」

コスモス「……【ジェノム】です」


背徳者「僕の手を煩わせないでよ……キミたちは皆、死ぬんだから」

フリオニール「そうはいかない!」


背徳者「【サンダー9】」



背徳者「……弱い犬ほど吠えると言うね」









暗黒騎士「またやられたのか? しっかりするんだ!」


フリオニール「……いつの間にこんな場所へ来たんだろう……?」


フリオニール「あれ、あの姿……もしや、スコット王子では?」


王子「だ、誰だ? 来るな!」

フリオニール「えっ?」

王子「お前はジェノムか?」

フリオニール「違います」

王子「魔物でもないのか?」

フリオニール「魔物ではありません。私の姿が魔物に見えるのですか?」

コスモス「彼は普通の人間ですよ。安心してください」


王子「……普通の、人間? やっと人に会えたのか。私は……ジェノムにやられて命からがら逃げてきたんだ……」

王子「もう駄目かと思った。さっきはすまない。私は……今、目が見えないんだ」

フリオニール「目が……! ジェノムにやられて?」

王子「いや……それより少し前だ。よく覚えていないんだ。気がついた時には失明していた……」


王子「? 君、何か大切なものを持っているね」

フリオニール「大切なもの? あ、あの騎士から預かったペンダント。よくわかりましたね」

王子「ああ。……目が見えないから、見えるようになったものもあるという感じだ。私にもよくわからない」


王子「それはリチャードのペンダントだ」

フリオニール「リチャード……あの騎士の名前か」


王子「リチャードもきっと迷宮脱出をあきらめたんだ。これは彼の形見となるだろう」

フリオニール「違う、形見などではない。スコット王子も諦めないで下さい」

王子「駄目なんだ……なぜか、わかるんだ……上に進んでも……生きては戻れない!」

コスモス「上へ向かって進めば、きっと帰れますよ」

コスモス(私たちは、ね)


王子「ただ一つ機会があるとすれば……暗黒騎士は知っているか?」

フリオニール「知っています。しかし、どこにも見当たらない……」

王子「北の方角から、闇の波動を感じるんだ。だけど、おかしいだろう? 北には壁があるだけなのに」

フリオニール「北……通路が見える。箱が置かれているだけです」

王子「そうなのか? 通路があるのか。この目では何も見えなかったか……」

フリオニール「……」

フリオニール「……俺、行ってみます。行って、暗黒騎士を探してきます」

フリオニール「そうしたら、きっとここから出られるはず。王子はここで待っていてください」


― 鏡の迷宮 ―


【一つ目の鏡】


フリオニール「これは鏡か? 暗黒騎士が映っている。……でも、ここにはいないな。鏡にだけ映っているみたいだ」

コスモス「映っているのではなくて、鏡の中にいるのですよ」

フリオニール「鏡の中に?」

コスモス「向こうから見れば、私たちが鏡の中にいるように見えるのでしょう。ですが……向こうには、こちらが見えていませんね」














暗黒騎士「……行こう」


【二つ目の鏡】


フリオニール「また鏡だ」



















暗黒騎士「……」

暗黒騎士「帰りたい……地上へ」

暗黒騎士「……無理なのか?」


【三つ目の鏡】


フリオニール「走っているな」



















暗黒騎士「……帰ろう! 皆が……待っている」

暗黒騎士「でも……」

暗黒騎士「行こう」


【四つ目の鏡】


フリオニール「!」




















暗黒騎士「どいてくれないか!」


暗黒騎士「【あんこく】」


【五つ目の鏡】


フリオニール「あの姿は……聖騎士?」



















暗黒騎士「……?」

暗黒騎士「……思い出した。僕は、ここで消えた」

暗黒騎士「そしてまた消える?」


【六つ目の鏡】


フリオニール「戦っているのか?」









聖騎士に攻撃を加える暗黒騎士。しかし、聖騎士は防御をしているだけ。

そのうち、暗黒騎士の姿は消えていく。









暗黒騎士「試練を乗り越えた彼は聖騎士となり、そして暗黒騎士の僕は消滅した……」


フリオニール「……暗黒騎士がいなくなった? あの聖騎士は……何者なんだ?」

フリオニール「?」

フリオニール「今度はこっちを見ているのか?」




聖騎士がこちらを見ている……




コスモス「フリオニール。今、鏡の中と繋がったみたいです!」

フリオニール「何だって!?」







VS 聖騎士


聖騎士は立ち去った……



フリオニール「鏡の中へ戻ったか」


暗黒騎士「!?」


フリオニール「暗黒騎士……!?」

暗黒騎士「外がドタバタしていると思ったら、彼が飛び出たショックで僕も出てしまったみたいだ」

フリオニール「あなたはいったい何者なんだ?」

暗黒騎士「僕はセシルだよ」

フリオニール「俺はフリオニールだ。ジェノムから俺たちを助けてくれていたのか?」

暗黒騎士(セシル)「うん。君は……今まで見た誰よりも違う……。まるで、生きている人間みたいだね」

フリオニール「……俺は……生きている人間なのだが……」

セシル「あ、ごめん。その……」


セシル「ここには、生きている人間なんて一人もいないから……」

フリオニール「……」

セシル「【生きている人間】の君なら、誰も出ることが出来ないこの迷宮から出られるかもしれない」

フリオニール「きっと出られる。帰ろう、一緒に行こう」

セシル「……僕は、現実から消えてしまった存在なんだ。鏡を見ただろう? あれは過去の光景。僕は消滅したんだ」

セシル「鏡の中は無限地獄。未来永劫、消えた時の状況を繰り返す。これにも飽きたかな……」

セシル「僕がこの地獄から解放されることは無いけど、君を助けることは出来そうだ。僕は幻影みたいなものだけどね」

フリオニール「幻影……」

フリオニール「……行こう。セシルがいれば、先に進むことが出来るはず」


― 迷宮第4層 ―


背徳者「……また来たの? しつこい連中だね」

セシル「そこを通してくれないか?」

背徳者「通さないよ。カオスに怒られるからね」

フリオニール「カオス?」

セシル「フリオニール、いずれカオスとも出会う。でも、今はあいつを倒さないと先へは進めなさそうだ」

背徳者「……僕に勝てるとでも?」













VS 背徳者


背徳者「……今は退いてあげるよ」





フリオニール「スコット王子!」

セシル「王子?」

フリオニール「ああ。セシル……いや、暗黒騎士を探し出すまで、ここで待っているように言ったのだが……」

コスモス「……先へ進んだのでしょう」

フリオニール「一人で?」

コスモス「まだ生き残っていた仲間が見つけてくれたのでしょう」

セシル「……何故そう言い切れる?」

コスモス「根拠はありません。しかし、ジェノムに見つかってやられたという証拠もありません」

フリオニール「証拠?」

コスモス「……血痕がありませんから」


コスモス「行きましょう。上へ進めば、また彼に会えますよ」

フリオニール「それなら、いいのだが……」


― アイスウォール ―


フリオニール「……寒い。ここは、通路のまわりが凍っているのか」





タコ?「こ こんな所まで侵入者が来た! ジェノムったら、役立たず!」

タコ?「カオスに言いつけてやらなきゃ! たっぷりお仕置きしてもらわんといかん!」


フリオニール「またカオス……?」


タコ?「このアイスウォールから先は通さないとおさない! 第3層には行かせないもんね!」

タコ?「不要無用無能戦闘不能のジェノムにかわって、このタコが倒してやるわい!!」







VS タコ?


タコ?「グェグェ……ガボガボガボ……」

タコ?「このタコを 苛めたな! いじめたな! 必ず、仕返ししてやる!」





フリオニール「何だろう、これ?」

セシル「ただのオーブではなさそうだね」



どこかで、声が聞こえた……



(……今は、手を貸そう。早く地上へ帰ってくるんだ)

(塔をめざせ。上へ登れる扉を見つけた……)


フリオニール「誰だ? 何か言ったか?」

セシル「ううん。誰も、何も言ってないよ」

フリオニール「声が聞こえたような気がしたが……」

コスモス「オーブが光っていますね。迷宮の寒さが和らいできたようです。何か変化があるかもしれません。行きましょう」

フリオニール(さっきの声……塔、扉と聞こえたような……)





フリオニール「塔と、扉……」

コスモス「あの扉から、上へ行けるようですよ」


背徳者「そう上手く、事を運んでもらっちゃ困るな……」

フリオニール「俺は地上を目指しているだけだ。なぜ邪魔をする?」

背徳者「邪魔をしているのはキミたちの方だろう? 死人の分際で」

セシル「……フリオニール。奴に質問は邪道だよ。刺激しない方がいい」

背徳者「さすがは一国の【元】騎士団長だ。物わかりが良いね。ただ……」

背徳者「君に光は似合わないよ。だからこそ闇に堕ちたんだろうけど」

セシル「……そこを退くんだ。どうしても退かないと言うのなら、全力で倒すのみだ」

背徳者「おお、怖い怖い……。でもね、今回はもう一人に来てもらったんだ」

背徳者「別にいいよね? キミたちだって一人増やしてきてるんだから」

背徳者「さ、出ておいで」


少女「……もう狩りは終わったんじゃないの?」

背徳者「しぶといネズミがいてね。ちょっと手伝いを頼まれてくれないかな?」

少女「ネズミなんていないわ。帰る」

背徳者「ネズミってのは言葉のあやだよ。表現上の技巧。文章や言葉の言いまわし」

背徳者「マティウス復活の為の生贄がそこにいるんだからこの手で捕らえないと」


フリオニール「今度はマティウス……?」

セシル「カオスは2000年前に存在した邪悪な者。マティウスは1000年前に存在した暴君」

セシル「クリスタルコアに封じ込めてある。何で、今頃目覚めたんだ……?」


コスモス「……壊れている」


少女「……」

コスモス「……立ち去りなさい」

背徳者「……退かない。僕らはクリスタルコアを守る者。今度は退かないよ」

コスモス「立ち去らぬのなら、それもいいでしょう。覚悟はよろしいですね?」


少女「……ここは大人しく、引き下がりましょう」

背徳者「第3層に入れるわけにはいかないんだよ?」

少女「あの者たちと戦っても、勝ち目は無いわ。今はね」

背徳者「……ああ、なるほどね。癪に障るけど仕方ないか」

少女「……さようなら」





フリオニール「……今回はすんなりと通してくれたな。何か隠しているのかも」

セシル「戦わないに越したことは無いよ。さ、先へ進もう」


背徳者「問題は例の少年だけど……彼は今どこにいるのかわかるの?」

少女「第3層よ」

背徳者「……」


背徳者「なおさら彼らを先に進めちゃ駄目だったじゃないか!」

少女「ごめんなさい。さっきまでこの階層にいたのに」

背徳者「君といい、少年といい……愛おしいほど愚かな者たちだね、まったく!」


― 迷宮第3層 ―


フリオニール「ここはどこだ? あっセシルがいない! どこに行ったんだ?」

コスモス「彼が第4層を出ることは出来ません。扉を通すのは私とあなたで精一杯ですね」

フリオニール「どういうことだ?」

コスモス「いずれわかりますよ。でも、今は……これらの熟練度を上げましょう」

フリオニール「!?」


シェル、プロテス、スリプル、サイレス、クラウダ、ヘイスト、エスナ、レイズ、ケアルの熟練度が上がった!


フリオニール「……魔法の力が跳ね上がった?」

コスモス「私の力も、少しだけ回復してきたようです」

コスモス「それよりも、ここに見覚えはありませんか? お城のようですね」

フリオニール「迷宮第3層……どこか見覚えがあるな」


王女?「見慣れない人ね。ここに何の用があるのかしら? いいわ。今日はとても大事な日。うふふ……」

兵士「これは王女様! スコット様がヒルダ様を探しておられました」

王女?「……スコット? ああ、彼が来てくれたのね! わかったわ。これから会いに行きます」


フリオニール「さ……さっきの王女様は……ここはフィン城? 俺は迷宮を出たのか?」

コスモス「ここは迷宮第3層です。勘違いなさらないで! そう簡単に出られるところではありません」

フリオニール「まだ迷宮の中か……頑張らねば。第4層を出られたのだから、第3層も出て次に行こう」

フリオニール「そうだ……さっきの王女。ヒルダ様がここにいるはずない……」

コスモス「……進みましょう」


王女?「スコット。もっとお城に来てくださいませんか? 私、貴方に会えない日が続くと夜も眠れませんわ」

王子「……ヒルダ? 気分を害していたというなら、謝る」

王女?「いえ、そんな、謝っていただかなくとも平気ですわ。私と……スコットの仲でしょう?」

王子「ヒルダ……」

王女?「……うふふ」


王女?「どんなことがあっても、私だけのナイトでいてくれる?」

王子「もちろんだよ。僕は君の婚約者じゃないか」

王女?「ありがとう……もしも私に何かあったら、必ず助けに来てね」


盗賊「この城、隠し扉があるって聞いたんだけど……大したものなかったな」

盗賊「めぼしい物はオリハルコンくらいか。ありがたく頂いておくぜ」


フリオニール「あ、泥棒!」


盗賊「何言ってやがる。ここは遺跡だぞ? お宝を頂戴して何が悪いんだ」

フリオニール「迷宮だったから良かったものの、本物の城で盗みを働いたら、然るべき場所に連れていくからな」

盗賊「簡単に捕まるようなオレじゃないね!」

フリオニール「お前が食い物になるなら、とっくにこいつをお見舞いしているんだがな」


【矢】←


盗賊「よしてくれ。それに……フリオニール。なんでこんな所に? お前は確か、地割れに落ちて、それから……」

フリオニール「迷宮の最下層まで落ちてしまったんだ。他の者は? 戦士やミンウはどうしたんだ?」

盗賊「皆とはぐれちまったんだ。ところで、ここがどこだかわかるか?」

フリオニール「フィン城か? 少し変だが」

盗賊「少しどころじゃない。考えてみてくれよ……」

盗賊「オレはここでスコット王子を見た。でも、彼は何週間も前に遺跡に向かったはずなんだ」

フリオニール「さっき、王子と出会ったな。ここにいるのか?」


コスモス(この者、ジェノムですね。それにしては、殺気を感じない……)


盗賊「!!」

盗賊(女と一緒だと!? フリオニールの奴、いつの間に仲良くなったんだ?)

盗賊「もしかしてお嬢さん、前にオレと何処かで出会わなかった?」

コスモス「出会っているかもしれませんね」

盗賊「だろ!? 絶対そうだって! でなきゃ、オレがこんな美人を見逃すわけがない!」

フリオニール「出会って早々口説きに走るんじゃない」

盗賊「水を差すなよ。あとオレに矢を向けるな! 危ねぇだろ!」

盗賊「これ、この剣やるよ。ここで見つけたお宝さ。これあげるから矢をしまってくれ」

フリオニール「泥棒の片棒を担ぐ気はない」

盗賊「違うって! 何が違うのかわからないけど。これ、この迷宮を脱出するのに役立ちそうな気がするんだ」

盗賊「持ってて損は無いと思うな!」


【ブラッドソード】を手に入れた


コスモス「……」

盗賊「あ、オレはジタン。よろしく。さっきの話の続きだけど、ここは数か月前のフィン城らしい。オレは日付を聞いてみたんだ」

フリオニール「……過去に来た、というわけか」

盗賊(ジタン)「ちょうど日付が、王女様がおかしくなった時期とかぶってんだ」

ジタン「もしかしたら、気がふれてしまった理由がわかるかもしれねーぞ?」

フリオニール「王女を探してみよう」


王女?「今、お時間よろしいかしら。ご相談したいことがあるの」

騎士「何事でしょうか?」

王女?「……ここでは話せませんわ。わたくしのお部屋に来てくださる?」

騎士「国王陛下……いえ、父君やスコット様にはご相談されましたか? 王子なら今、この城に見えておられますが」

王女?「……彼らには言えません。ぜひ、あなたに聞いてほしいことがあるの……」


(セーラの姿になる)


騎士「ヒルダ様……? い、いや、セーラ王女……?」


王女?「わたくしのお部屋に来ていただけますよね?」

騎士「し、しかし……」

王女?「お願い。話を聞いてくれるだけでいいから……」

騎士「……」



騎士「……畏まりました」


― 王女の部屋 ―


騎士「……相談したい事とは?」

王女?「……」

騎士「どうかなされましたか?」

王女?「……この人でいいのかしら?」

騎士「王女様?」



部屋に漂っていた混沌が、騎士に憑依……



混沌「未来のわしをよく見つけてくれた……。感謝するぞ、蛇女……」

王女?「蛇女ですって? 失礼な方ね。私がラミアの頂点に君臨する女王だということをお忘れ?」

王女?「今はフィン王国の王女、ヒルダだけど」

王女?「マティウスの望み、知っているんでしょう? 力を貸してくれるのよね?」


王女?「何ならこの王女様の姿でお願いしようかしら」


(セーラの姿になる)


混沌「その姿はやめろ」

王女?「あら、ごめんなさいね」


(ヒルダの姿に戻る)


王女?「ところで、未来の自分をどうするおつもりかしら?」

混沌「彼に憑依する」


混沌「わしは2000年前、光に選ばれたという戦士と戦った……そして勝ったはずだった」

混沌「だが、奴らの背後には女神がいた。女神はわしを地獄へ封印した」

混沌「力を奪われたわしは魂だけの存在だが、未来の自分という器に入ることによって、力を取り戻すことが出来る」

混沌「マティウス復活に、力を貸そう……」


王女?「そうだ、もう一つお願いがあるんだけど。このお姫様預かっていてくれない? マティウスが寄越せってうるさくって」

王女?「でも貢物って、力を貸してくれる人に渡すのが普通よね」

混沌「……本物の王女か。殺めなかったのか?」

王女?「貢物は大切に扱わないと。ね、そうでしょう?」

混沌「……王女は、預かっておく。力が完全に復活したら、そなたを連れて行こう。地獄へと繋がる遺跡へ」

混沌「もうしばらく、王女のふりをするがいい」


明けましておめでとうございます

そして おやすみなさい



寝る前に >>11

愛とは 何かを大切に思う暖かい感情

正義とは 人として行うべき正しい道義

辞書に載っていたままの答えですが……


― お城のどこかの廊下 ―


ジタン「フリオニール。過去のフィン城に来れたのはさ、オレたちの使命に関係してんのかな?」

フリオニール「そうかもしれないな」

コスモス「使命……?」

ジタン「オレたちは遺跡へ、王女の救出に来たんだ」

コスモス「詳しく話してもらえますか?」

ジタン「もちろん。えっと……オレたちは誘拐された王女様を救うため、この遺跡に潜入したんだ」

ジタン「順に話すと……2週間ほど前かな。ガーランドっていう騎士が王女様……ヒルダ王女をさらっていったんだ」

コスモス「ガーランド……に……ヒルダ?」

ジタン「王女をさらったガーランドは、フィンの北にある古代遺跡で姿を消した」

ジタン「フィン国王は騎士団を、王女救出のため遺跡に向かわせたんだけど……」

ジタン「……ほとんどの騎士は、迷宮内で魔物や罠にかかって死んでしまったか、命からがら戻ってきたかのどちらかだった」

ジタン「国王も衛兵も、みんな頭を悩ませていると、そこへ一人の戦士が現れたんだ」

コスモス「……戦士!」


ジタン「知っているのか?」

コスモス「いえ……続けて」

ジタン「国王は、もしかしたら彼が予言にあった【この世が暗黒に染まりかけた時、現れる光の戦士】だと思って」

ジタン「彼に王女救出を命じたんだ。そして彼を助けるため、国王補佐の白魔道士ミンウをお供につけた」

コスモス「あなた方二人はなぜ迷宮に?」

フリオニール「王女やミンウに助けられた恩を返すためだ」

ジタン「オレは女の子を救うためならどこでも向かうさ!」

コスモス「……勇敢ですね」

フリオニール(ただの女好きのような気がする……)

ジタン「ま、そんなことで、この遺跡へヒルダ王女の捜索と救出にやってきたのさ」

コスモス「そう……ですか。さらわれた王女様の救出。そのために遺跡へ?」

コスモス「王女様を助けて、筋書き通りにハッピーエンドになれば良いのですが」

ジタン「きっとハッピーエンドさ。橋を渡ったら素敵な音楽が出迎えてくれるよ」

フリオニール「それオープニング……」

ジタン「何かが終わるってことは、何かが始まるってことさ。行こうぜ! 王女様を救いに」


王女?「あれは何? 第3層に侵入者がいるわ」

騎士「あの姿は……」

王女?「この軟体生物でも放り込んでみようかしら」

騎士「……」

王女?「もう少しで復活できるわね、マティウス」


王女?「ほら、行ってきなさい。今度失敗したら……生かしてはおかないわ」





フリオニール「!!」

タコ?「また出たぞ! しつこい?」



王女?「お前だけでは無理ね。もう一匹、投げておきましょう」



タコ?「今度はつおーい味方がいるのだ! テュポーン先生、来てください~」


??「フンガー!」

タコ?「テュポーン先生は無口だけどものすごくつおいのだ!」



VS タコ? & テュポーン


タコ?「今回もダメだったか……」





王女?「役立たず! 二度も失敗? クリスタルコアに放り込んであげるわ!」

王女?「お前の魂でも、少しは復活の助けにはなる!」





タコ?「ク クリスタルコア! まって まって そこだけは!」


― 国王の間 ―


王子「私だけでしょうか? ヒルダが変わってしまったと思うのは……」

国王「そなただけではない。この城にいる誰もが、ヒルダの様子がおかしいと思っている」

国王「国外にも、【フィンの王女は気がふれた】という噂が飛び交っているらしい」



― どこかの廊下 ―


ジタン「この時からなんだよな。話しかけても笑うばっかりで会話にならないってさ」

フリオニール「王女は今、自分の部屋にいるみたいだ」

コスモス「様子を見に行きましょうか」


― 部屋の前 ―


ジタン「鍵穴から覗けないかな?」


鍵穴 ←


王女?「うふふ……」



そこには、上半身は人間の女、下半身は蛇の体をした魔物がいた


ジタン(うわっ!)

フリオニール(どうしたんだ?)

ジタン(蛇……王女の正体は魔物だ!)

フリオニール(何だって?)


鍵穴 ←




王女の姿が見える……


フリオニール(魔物なんて何処にもいないぞ?)

ジタン(え? おかしいな、オレが見た時は蛇の姿をしていたのに……)





王女?「……? 外に誰かいるみたいね」


王女?「あら? さっきの人たちね? 何か御用かしら?」


フリオニール「い……いえ、何も……」


王女?「お部屋に入る? お茶を入れてあげるわ」


BGM ♪ 白鳥の湖 ♪


王女?「どうしたの? そばにきて……」

ジタン(あやしいな、あやしい……オレは魔物の誘いには乗らないぞ!)

フリオニール「……」

コスモス「……フリオニール?」

王女?「はやくきて……じらさないで……」

フリオニール「……」


ジタン(まずいな、混乱しかかっているぞ!)

コスモス(このままでは、彼は魔物に捕らわれてしまう。何とかしなければいけませんね)


コスモス「扉です!」

コスモス「第2層へ続く扉ですよ! 行きましょう!」

フリオニール「……えっ? ああ、急ごう!」


王女?「なっ……!?」


ジタン「え!?」


セシル「伏せろ!」


セシル「【あんこく】」


ジタン「へ、蛇の魔物が、一瞬で消えた……? アンタ……何者なんだ?」

セシル「僕はセシルだ。それよりフリオニール、また先に行ってしまったのか! 追いついたと思ったのに!」

セシル「彼を止めないと! コスモスに騙されているんだ」

ジタン「騙している? あんな美人がどうして?」

セシル「フリオニールは、地上へ向かって進んでいると思っている。でも、コスモスは地上へ進んでいるように見せかけて、奥へ進んでいる」

セシル「一度入ったら二度と出られない迷宮中心核……第1層・クリスタルコアへ」
















セシル「フリオニールはここがどこなのか……わかっていない!」


― 迷宮第2層 ―


コスモス「ここはどこなのでしょう? 空……空を飛ぶ船……? これはどういう事でしょうか?」

コスモス「先程の第3層といい、第2層はこの有り様? ……今、この迷宮を操作しているのは、カオスでもマティウスでもなく……」

コスモス「彼らに管理を任されたあの魔物……そう、ヒルダという人物になりすましていたあの魔物ですね」

コスモス「あの者の思考が影響していると考えるのなら、もう少し早く気付くべきでした」

コスモス「先程の第3層……あれは、あの魔物の記憶でしょうか?」

コスモス「ガーランドが誘拐した……ということは、彼は新たなカオスになってしまうのでしょう」

コスモス「哀れな! セーラのいない世界だというのに、カオスになる輪廻からは逃れられないのですね」

コスモス「この第2層は……世界が壊されています」

コスモス「記憶……いえ、野望? 世界を滅亡させる目的が、この第2層で実現化したということですか」


コスモス「フリオニール……」

コスモス「彼は約に立ちました……信じられないぐらいに。でも、もう限界でしょう」

コスモス「扉を通った瞬間、気を失って倒れてしまいましたから。地上に戻してあげることは難しそうです」

コスモス「せめて、安らかな世界に行けるよう導きましょう。それまでは助けてもらわないと」


コスモス「……クリスタルコアへ同行してくださいね」





フリオニール「……? なぜ俺は寝ているんだ? 確か……お茶に誘われて……??」

フリオニール「何だか悪い夢を見ていたような気がする……」


フリオニール「……起きよう」


フリオニール「……! 痛い……!」

フリオニール「か……体中が……痛い! な……なぜ!?」


フリオニール「……っ」

フリオニール「……」

フリオニール「……治まったようだ。何の痛みだったのかな」


フリオニール「ジタンとコスモスを捜さないと」


コスモス「気がついたみたいですね」

フリオニール「コスモス!」

コスモス「ここは迷宮第2層……あと一歩です。ただ、厄介な事になっています」

フリオニール「厄介な事?」

コスモス「第2層……壊れています。第3層の時もそうでした。この迷宮を動かしているのは、王女に化けた魔物」

コスモス「魔物の目的は、古代の暴君マティウスを復活させること」

フリオニール「王女に化けた魔物に、マティウスの復活?」

コスモス「第3層でジェノ……いえ、ジタンが見たとおり、王女の正体は魔物です」

コスモス「この第2層では、魔物の野望……というより、暴君の野望が現実化しています」

コスモス「ここは、マティウスが地獄から蘇ってしまった未来なのです」


コスモス「壊されていく世界の上を、私たちは船のようなもので飛んでいるようです」

フリオニール「空を飛ぶ船か。噂に聞いた飛空艇か? シドという人物も乗っているかもしれないな」

コスモス「そうかもしれませんね」

フリオニール「……ところでジタンは? また置き去り……?」

コスモス「扉は二人までしか通せません。ですがご心配なく。追いかけてくることは出来ますよ」

コスモス「もう一度扉を開けるのに、少し時間がかかるだけのことです」

フリオニール「……それなら、大丈夫か?」


― 操舵室 ―


娘「……?」

娘「目を覚ましたのね! 良かった」

フリオニール「君は?」

娘「私、ティナ。あなたが船の中で倒れていたから、安全な所に寝かせておいたの。目覚めはどう?」

フリオニール「……あまり良くなかったな。この船は何処かへ向かっているのか?」

娘(ティナ)「……マティウス。偽物のヒルダ王女……ううん、蛇の女王が、地獄から暴君マティウスを蘇らせたの」

ティナ「世界は暗黒に包まれて破滅し、この有り様。彼を放っておくわけにはいかないわ」

ティナ「戦うの。この船はフィン城へ向かう。今、マティウスはその城にいるのよ」

フリオニール「俺も行こう」

ティナ「船の運転、あなたがやってみる? 私、あまり自信がないの」

フリオニール「やってみよう」

ティナ「お願いします。大丈夫、これ以上悪くはならないから……」


少女「こんな所まで来れたのね」

背徳者「あの蛇女が、第3層でヘマをしなければこんな仕事引き受けなくても済んだのに」

背徳者「この先は第1層・クリスタルコア。これ以上先に通すわけにはいかないよ」

少女「それで……どうするの?」

背徳者「こんな時のために、君が呼び寄せたんだよね? この少年を」

ジタン「オレに何をしろって言うんだ? さっさと用件を話しやがれ」

背徳者「ずいぶんとご機嫌ななめのようだね……。じゃ、用件を話すとしよう。なぁに、ちょっと僕たちに協力してくれれば良いだけの話さ」

ジタン「何を協力しろってんだ。勿体ぶってねえではっきり言えよ!」

背徳者「……口のきき方には気をつけろ」

背徳者「キミの仲間が、騙されて第1層へ連れ込まれそうになっているのを忘れたんじゃないだろうな?」

ジタン「くっ……」

背徳者「キミさえ協力してくれれば、第1層に入るのを防ぐことが出来るって言ってるんだ」

ジタン「どうやって防ぐんだ?」

背徳者「ここに結界をはる。それでもう誰も通ることは叶わない」

背徳者「心配しなくてもいいよ。キミが魔法を使えないバカだという事は知っているからね」

ジタン「それだけでバカ扱いされちゃたまったもんじゃねーなぁ……」


神官「まさか……王女様がずっと偽物だったなんて……」

神官「崩れる……炎の中でフィン城も世界も……」

神官「あなたたち……逃げなさい……。逃げるところがまだあるのなら……」


衛兵「騎士団の半数は、あの時の古代遺跡で失ってしまった……」

衛兵「今の数では敵を抑えられない……! あの時、大勢の優秀な騎士を失ってしまった……」

衛兵「王女様を救いに行ったスコット様も……ディストから来てくれた竜騎士リチャードも……」

衛兵「みんな遺跡から帰って来られなかった!」


ジタン「おい、あの怪しげな野郎は本当に信用できるのか?」

少女「……」

ジタン「……あのいやらしい格好をした奴は信用できるのか?」

少女「……いいえ」

ジタン「! くそっ、あの野郎騙しやがったな!」

少女「……こうでもしないと、あなたの仲間は第1層に入り込んでしまうわ。あの人に、あなたの仲間を助けるつもりなんてないけど……」

ジタン「じゃあ何のためにオレを協力させたんだ?」

少女「簡単なこと。女神の邪魔をしたいだけ。彼女の介入があれば、クリスタルコアからマティウスを復活させる事が出来なくなるから……」

ジタン「女神?」

少女「コスモスのこと。第3層で会ったでしょう? 私たちジェノムは本来なら、女神コスモスに従って動く存在だけど……」

少女「あの人は自分の意志で動いている。そう、あなたも……」

ジタン「何を言ってるんだ? オレがオレの意志で動いていたらおかしいのか? それにジェノムって何のことだ?」


少女「あなたは、何も知らない。自分が何のために生を受け、自分が何のために存在するのか……」

少女「それすらわからず、ただ生を、存在を主張するように声をあげるだけ……」

ジタン「オレにはお前が何を言っているのかわかんねーけどな……」

少女「あの人も、あなたも、そして私も……この地に生きるジェノムという種族」

少女「女神によって造られ、死んで魂となった者たちが帰る場所【クリスタルコア】を見守る役目を持つ」

ジタン「……そうかいそうかい。だからオレに協力を仰いだのか?」

少女「そうよ。理解してくれた?」

ジタン「理解したくもないけどな……」

ジタン「オレの故郷が……【いつか帰る場所】だと思っていた故郷が、【いつか魂が還る場所】だったとはな……」

少女「うれしくないの? 自分の産まれた地に帰ったのよ」

ジタン「うれしい……? お前にそんな感情がわかんのか? こんな陰気な場所のどこを喜べって言うんだ!?」

少女「仕方ないわ……ここはそういう場所だもの。それに、女神コスモスの意のままに従うことに感情はいらないわ」

ジタン「意のままに従えってか。よせやい、それじゃどこぞの光の勇者サマになっちまうじゃないか……」

ジタン「いや、勇者サマでも少しくらいなら自分の意志で行動しているかもな……」


ジタン「……マティウスってのは、復活させたらやばい奴なんだろ? この第2層を見るかぎり」

少女「そうよ」

ジタン「それを何で復活させようとしているのかね……? 女神への反抗? 何でまた……」

少女「それもあの人の意志よ。邪悪な魂を復活させて、世界を破壊しようとでも考えているのでしょう」

少女「それもまた、自分が自分の意志で動いているという証拠を残したいのかもしれないわ」

少女「自分は女神の意のままに動く人形じゃない、ってね……」

ジタン「そんな身勝手な奴が生まれたのが不思議だぜ。どうしてそうなるまでコスモスは放っておいたんだ?」

少女「あの人はもうすぐ死ぬから……」

ジタン「え?」

少女「産まれた時から、長くは生きられないって決まっていたの……」

少女「短い人生だから、放っておいて自由にさせたのか、あまりにも身勝手すぎる人生を送ることがわかっていたから」

少女「短い命を与えられたのか、それはわからないけど……」

ジタン「……わがままが過ぎるだろ。人生が短かろうが長かろうが、やっちゃいけないことはやっちゃいけないんだよ」

ジタン「……泥棒やってるオレが言うことじゃないけど」

少女「……あの人が呼んでいるわ。行ってあげて」


兵士A「世界のほとんどは死に絶えた……。この城が最後の砦になってしまった!」

兵士A「負けるわけには……いかない!」

兵士A「だが……倒してもきりがない魔物の群れ。勝てるのか……?」



兵士B「遥か古(いにしえ)に存在したという暴君が……蘇った!」

兵士B「そして、全世界に向けて大戦争を起こしたんだ!」

兵士B「もう駄目さ! 騎士は遺跡でほとんど死んでしまったし、どうしろって言うんだ!」


フリオニール「お前は、確か第4層にいたジェノム……! もしかしてお前がこの城を!?」

少女「いいえ……。これは、未来の話よ」

フリオニール「何?」


少女「蛇の女王が描いているマティウスの野望。世界を破壊し、新たに自分の世界を創る事」

少女「クリスタルコアは、それを制御する者の心に敏感に反応するの。特に第2層、第3層辺りはね」

フリオニール「マティウスについて何か知っているのか?」

少女「1000年前、魔界から魔物を呼び出し、世界征服に乗り出したのがマティウス」

少女「彼は反乱軍によって倒され、地獄に堕ちた。だけど、彼の魔力は衰えることはなかった」

少女「彼の邪悪なエナジーに影響され、目覚めてしまったのがカオスという邪(よこしま)な者」

少女「マティウスが地上の世界へ復活したがっていることを見抜いたカオスは」

少女「1000年後の未来にいる自分【ガーランド】を探し出すことが出来れば、手を貸そうと言ったの」

少女「そこでマティウスは、人の姿に化けることが出来て」

少女「ラミアの中で最も強い力を持つラミアクイーンを魔界から呼び出し、地上に送り込んだ」


少女「未来にいる、カオスになる人物をどうやってマティウスが見つけたのかは知らないわ」

少女「でも、その人物が【セーラ王女を愛する、高潔な騎士】だということだけは、どの時代、どこの世界にいても変わらないことだった」

コスモス(それだけは変わらなかったのですね……)

少女「【セーラ王女】を思い慕う【ガーランド】という騎士。あなたのいる世界で発見された。この時代だとフィン王国に仕えていたけどね」

少女「ラミアクイーンはこの国の王女ヒルダになりすまし、セーラの容姿も利用してガーランドを拐かしたに違いないわ」

フリオニール「ちょっと待ってくれ。何故わざわざ王女になりすます必要があるんだ?」

フリオニール「セーラという女性になりすまして、彼に近づくだけでいいような……」

少女「【王女】という身分が必要だったのよ。ガーランドは高潔な騎士だから」

少女「どのような【世界】の、どんな【時代】の、どの【王女】にも必ず忠誠を誓うわ。……それにね、マティウスの思惑もある」

コスモス「……マティウスが復活するためには、膨大な生命エナジーが必要です」

フリオニール「……コスモス?」

少女「王女様がさらわれたとなれば、王国の騎士や勇敢な若者が助けに来るでしょう? そう……あなたのような人も」

フリオニール「……」


少女「本来、私たちジェノムはクリスタルコアに戻った魂を見守る役目を持つだけ。女神コスモス、あなたと共にね」

フリオニール「女神!?」

少女「ごめんなさい。魂と力を持たない他のジェノムは皆、敵に操られてしまったわ」

少女「カオスの暴走によってクリスタルコアの制御を奪われた時に、ジェノムの管制も敵の手に落ちたの」

少女「12年前、1人のジェノムがいなくならなければ被害も最小限に食い止めることも出来たかもしれないけど……」

少女「あの人のしたことも、していることも正しいこととは言えないわ」

コスモス「今あなたが出来ることを行いなさい。事態は一刻を争います」

少女「私は本物の采配者である女神に従うわ。クリスタルコアへ向かうのね? 3人のジェノムが、3人がかりの結界をはっているの」

少女「3人それぞれ結界を解くか、倒すしかないわ」

コスモス「結界を解きなさい」

少女「もちろん……」


??(……私を裏切るつもりか?)


フリオニール「誰の声だ?」

少女「マティウスよ」


少女「私は裏切ってなんかいないわ。あるべき姿に戻るだけ。元々ジェノムは、あなたたちのような邪悪な魂を監視するため存在しているの」

少女「私は、邪悪な者の復活を阻止する。それを遂行するわ」


??(許さぬ!!)


【いんせき】


少女「女神! 行って! 私の分は結界を解いたわ! 残りの二人……正しくないことをしているあの人は必ず倒して!」

少女「あともう一人は、何も知らないの! ただ脅されて、従っていただけだから……」

コスモス「そうでしょうね。本当に、何も知らないのでしょう」

フリオニール「コスモス……?」


背徳者「一人、倒されてしまったみたいだね。まあ、彼女は造られて1年しか経っていないから仕方のないことかも」

ジタン「!」

背徳者「行っても間に合わないよ。彼女は助けられない。それより侵入者たちに気をつけることだね」

背徳者「彼らはクリスタルコアに入るために僕たちを倒しに来るはずだから。キミも奴らの敵になってしまったのさ……そして僕の仲間だ」

ジタン「勘違いするな。オレはお前に味方なんかしないし、仲間でもない」

背徳者「同じジェノムの仲間だろう? 僕たちは兄弟のようなものじゃないか」

ジタン「ふざけるな! オレは一度も兄弟だと思ったことなんかないぞ!」

背徳者「こんなにもよく似ているのに?」

ジタン「どこがだ! オレはお前とは違う!」

背徳者「そう、正にそれだよ」

背徳者「【自分は違う】と言っている所がそっくりなんだよ。ただひたすら己の生を主張し、自らの意志で動くことができる……」

ジタン「訳わかんねーことを……。人が1人1人違うのは当たり前だ。それをいちいち似ているだの似ていないだの言われても困る」

背徳者「基本的に、造られた人形は自分の意志で動くことは出来ない。でも、僕たちは自分の意志で自由自在に動ける……」

背徳者「それなのに……女神の眷属なんて嫌だろう?」


ジタン「女神の眷属だのジェノムだの、地上の世界で生きてきたオレには関係のねえことだ」

ジタン「ただ……お前がオレの身内だってんなら、身内の不始末は自分の手でケリをつける。それだけのことだ」

背徳者「僕を倒す? 止めはしないよ。でも、僕を倒したところで、マティウスの復活は誰にも止められない」

背徳者「女神の介入が起きれば、それも出来るかもしれないけど……その代わり、キミのお仲間……」

背徳者「光の戦士の代わりに、何も知らずに女神の護衛に就いてしまった何の力も持たないただの人間が」

背徳者「一度入ったら二度と出られぬ場所へ連れて行かれることを忘れぬように」

ジタン「マティウスは女神サマに何とかしてもらうさ。でも、オレはフリオニールを連れ戻す! そしてこの迷宮を脱出してやる!」

背徳者「そう。じゃ、頑張ってね」

ジタン「!?」










背徳者「……そう易々とね、事を運んでもらっちゃ困るんだよ」


セシル「フリオニール! 近くにいるはず。この城のどこかに……!」


ジタン「う、うう……」

ジタン「……助かったのか? ここは城の入り口?」

セシル「ジタン? ここにいたのか。駄目じゃないか! 知らない子についていったりしちゃ!」

セシル「気色の悪い変な人の仲間だよ、彼女は!」

ジタン「うん、まあ、その……オレが悪かった」

セシル「フリオニールには会えた?」

ジタン「まだだ。でも、奴らの口ぶりからすると、この城のどこかにいることは確かなんだ」

セシル「第1層にたどり着く前に見つけ出さなければ!」

ジタン「あっ、それは少し猶予があるかも。奴らが結界をはっていて、クリスタルコアに進めなくしてるから」

セシル「なぜ君が……と言いたいところだけど、君もジェノムだったんだね」

ジタン「知ってたのか?」

セシル「そうでなきゃ、かれらが君を誘拐するはずないもの」

ジタン「へ? 外見が似ているとか……じゃなくて?」

セシル「……よく見れば似ているかもね」


背徳者「おやおや。今度は飛べない小鳥を連れてきたか」


ティナ「何を言っているのかしら?」

フリオニール「さぁな。自分の言葉にでも酔っているんだろう」

フリオニール「酔いから醒めればいいがな」

コスモス(手厳しいですね)



背徳者「……よく吠える犬だね、まったく」

フリオニール「噛み付かれぬよう気をつけることだな」










VS 背徳者(トランスバージョン)


背徳者「認めないよ……僕が負けるなんて!」

背徳者「この僕が……ただの人間なんかに……負けるものか……」





― 大広間 ―


皇帝「私は地獄の底から舞い戻ったぞ……!」

皇帝「この世界も惨めな生き物たちも、すべてを叩き壊し新しい世界を創ってみせよう!」

皇帝「私を崇め讃える者たちだけの世界を! 私は絶対支配者になるのだ!」


フリオニール(この暴君を……俺たちは倒せるのか?)

ティナ(昔、皇帝を倒した時に使われた剣があれば、勝利はつかめる。そう、その剣よ!)

フリオニール(この剣が?)





皇帝「そこの虫ケラ……」


【フレアー】



皇帝「逃がさんぞ!」


【いんせき】


??(フリオニール! フリオニール! 聞こえるか?)

フリオニール「またあの声?」

??(やっと今、迷宮の全てがわかった!)

フリオニール「……その声は、ミンウ!?」

??(ミンウ)「そうだ。やっと気付いてくれたね。ずっとこの迷宮を見ていた」

ミンウ「さあ、脱出だ! 君が持っているその剣、ブラッドソードを使え!」

フリオニール「ブラッドソード?」

ミンウ「第3層、過去のフィン城でジタンが見つけた剣。それは血塗られた魔剣だ。それを使って幻像を打ち払え!」

フリオニール「やってみる!」










フリオニール「……暴君が消えた!?」


フリオニール「扉が!」


ミンウ「その扉は違う! 扉の先は、迷宮第1層・クリスタルコア! 入ったら二度と外の世界に戻れない!」

ミンウ「迷宮を出るのはこちらの扉! さあ、帰ってくるんだ!」

















ティナ「……そう」

ティナ「私は……迷宮を出ることが出来ない。あちらの世界にはもう戻れないのね」

ティナ「ちょっと期待してみたけど……」


セシル「フリオニール! クリスタルコアへは……行ってないか。でも、もう僕らが手助けできない世界へ行ってしまったか」

ジタン「地上へ戻れたのか? なら、無事に迷宮を抜け出せたんだな。オレたちも早くここから脱出しようぜ」

セシル「無理だよ」

ジタン「へっ? 無理ってどういう事だ?」


ティナ「あら……久しぶりね、セシル。ここで会うのは何か月ぶりかしら?」

セシル「ティナ!」

ジタン(可愛い女の子だ!)

ジタン「君ってティナって言うのか! 2人は知り合いなのか?」

セシル「お互い、現実から消えた存在だからね」

ティナ「そうね。人の心を持った【私】は生き残ったけど……魔力を持ったままの【私】は消えた」

ティナ「で、ここへ来て、セシルと知り合った」


ジタン「消えた!? 消えて……ここへ来たってどういう事? ここはただの迷宮だろ……?」

ジタン「迷宮最下層の奥深くに、クリスタルコアと呼ばれる、魂が眠る場所があるだけで……まるで墓場みたいだけど……」

ティナ「何も知らないのね……教えてあげる」




















ティナ「地獄へようこそ。全4層からなる巨大迷宮、それは地獄の世界」

ティナ「ここにいる全て……全てはもう死んでいる」


― 古代遺跡 ―


フリオニール「ミンウ。それに光の戦士も」

光の戦士「……」

ミンウ「……フリオニール」

フリオニール「やっと地上に出られたのか」

ミンウ「うん……」

フリオニール「偽物の王女は、この迷宮の何処かにいるはずだ。それを捜そう」

光の戦士「……」

ミンウ「……」

フリオニール「どうしたんだ? 黙り込んで。迷宮をずっと見てきたんだろう? 暴君の企みを阻止しないと」

ミンウ「君は地割れに落ちたね。覚えているかい?」

フリオニール「覚えているさ。遺跡の最下層まで落ちてしまったんだ。そこでコスモス……彼女に出会ったんだ」

ミンウ「そうだね。君が落ちた後、崩れてきた瓦礫で地割れは埋まってしまった」

ミンウ「……地震がおさまった後、すぐに瓦礫をどけて地割れを覗いてみたんだ。そこに君は……いた」

フリオニール「えっ? 俺はここにいるのに?」

ミンウ「……」

フリオニール「見間違えたんじゃないのか? もう一度、地割れを見に行ってみようか。そうしたらわかるはずだ」

ミンウ「うん……」



コスモス(戦士、彼は……)

光の戦士(わかっている)


フリオニール「これは何だ?」

ミンウ「君がいた迷宮が見えるオーブ。迷宮内の探索ができる。……迷宮の隅々まで見渡せるオーブもあるはず」

ミンウ(たぶん……そこに偽物の王女がいる)


ミンウ「フリオニール。この遺跡は、人を殺すために存在するようなもの。王女を助けるために入った騎士たちを、罠や魔物で殺してきた……」

フリオニール「王女を助けに……。偽物だと知らずに、な」

コスモス「……先程も述べた通り、マティウスを蘇らせるためには膨大な生命エナジーが必要です」

コスモス「簡単に言うと……殺してクリスタルコアに放り込む」

フリオニール「そんな……ひどい」


フリオニール「……スコット王子!?」

ミンウ「スコット王子だって?」

フリオニール「迷宮にいるはず……。カシュオーン国のスコット王子……」

フリオニール「……! 目に……矢が刺さっている。これで……死んだのか!?」


― 回 想 ―


王子「さっきはすまない。私は……今、目が見えないんだ」

フリオニール「目が……! ジェノムにやられたのですか?」

王子「いや……それより少し前だ。よく覚えていないんだ。気がついた時には失明していた……」


フリオニール「……っ!」

ミンウ「フリオニール! どうしたんだ?」

フリオニール「わからない……少し痛かっただけ……」

ミンウ「どのあたりが?」

フリオニール「体中全部。もう大丈夫……治まった」


ミンウ「……フリオニール、ジタンのことだけど……」

フリオニール「ジタン! 彼は今、第3層……いや、第2層にいるのか? さっきのオーブで探せば、どこにいるのかわかるはず……」

ミンウ「彼の正体はね、ジェノムだよ」

フリオニール「……! 魂を見守る役目を持つ?」

ミンウ「そうだ。ジタンは、【自分を呼ぶ声がする……】と言って、あの扉へ入ってしまったんだよ。……罠かもしれないあの扉に」

フリオニール「どうなったんだ?」

ミンウ「わからない。だけど彼は、あの迷宮こそが【いつか帰る場所】だったのかもしれない」

コスモス「……」

フリオニール「……あの迷宮がいつか帰る場所だって? 地獄そのものじゃないか……!」

コスモス「ええ。地獄そのものです」

フリオニール「コスモス……!」

ミンウ「……ふん」


フリオニール「…この騎士も死んでいるのか?」

コスモス「偽王女はガーランドにさらわれたと見せかけて、強い生命力を持つ騎士たちを集めたのでしょう」

コスモス「ヒルダ王女が誘拐された……という事にしてね。マティウスを蘇らせるためだけに、彼らの命は利用されたのです」


― 回 想 ―


フリオニール「ちょっと待ってくれ。何故わざわざ王女になりすます必要があるんだ?」

フリオニール「セーラという女性になりすまして、彼に近づくだけでいいような……」

少女「【王女】という身分が必要だったのよ。ガーランドは高潔な騎士だから」

少女「どのような【世界】の、どんな【時代】の、どの【王女】にも必ず忠誠を誓うわ。……それにね、マティウスの思惑もある」

コスモス「……マティウスが復活するためには、膨大な生命エナジーが必要です」

フリオニール「……コスモス?」

少女「王女様がさらわれたとなれば、王国の騎士や勇敢な若者が助けに来るでしょう? そう……あなたのような人も」


フリオニール「あ……リチャード!?」

ミンウ「知っているのか?」

フリオニール「迷宮で会ったんだ……俺を助けてくれた。ペンダントを持って帰ってくれって頼まれたんだ」

ミンウ「……この竜騎士、ペンダント握りしめているよ。余程このペンダントに思いが詰まっていたのだね……」


フリオニール「……みんな……みんな死んでいた……!?」

コスモス「この者、足が魔物に噛み千切られています」


― 回 想 ―


フリオニール「ありがとう。もう行かなくてはならない」

竜騎士「ほう、もう行くのか。いつまでも怪我で動けない私とは凄い違いだ」

フリオニール「怪我をしているのか?」

竜騎士「足が動かなくてな。傷は無いのだが歩けそうもない。お前なら、この迷宮から出られそうだな」

竜騎士「実は頼みがある。この私の……ペンダントを持って行ってほしい」

竜騎士「ディストに住んでいるエリナという女性に渡してくれ。ディストの場所は……フィンの衛兵が知っている」

竜騎士「そして伝えてほしい。必ず戻る、とな」


フリオニール「……俺が持っていたペンダント、消えてしまった……」

ミンウ「そうだね。私がこのペンダントを持ち帰ろう」

フリオニール「え? 俺が持って帰るよ。約束したんだ」

ミンウ「私が、持って帰る。いいね?」

フリオニール「……」


フリオニール「……痛い」

ミンウ「フリオニール!?」

フリオニール「……! 今度は収まりそうにもない……!」

>>95

× 収まりそうにもない

○ 治まりそうにもない

恥ずかしい間違いをしてしまった……


フリオニール「……地震があって、地割れが出来て、それに落ちて……」


フリオニール「リチャードは足が動かなかった……。スコットは目が見えなかった……」

フリオニール「……それなら俺は?」

ミンウ「……」
















フリオニール「地割れだ……」


フリオニール「……?」


フリオニール「何だろう? あの白い布は……」

ミンウ「私のマントだよ。無いことに気付かなかったかい?」

フリオニール「落としてしまったのか?」

ミンウ「落としてしまったわけじゃない……かけておいたんだよ」



















ミンウ「……君に」


フリオニール「……俺に?」


フリオニール「じゃあ、ここにいる俺は……?」


フリオニール「幽霊なのか? それとも……死ぬ前に夢でも見ていたのか?」


コスモス「……」



ミンウ「フリオニール!?」


フリオニール「ミンウ、助けてくれた恩……返せないみたいだ」

フリオニール「悪かった……」



……すまなかった……



ミンウ「フリオニール!」


王女?「……ようやく死んでいたことに気付いたようね」

騎士「……そうだな」

王女?「あなたは光の戦士を狙ったつもりだったけど、彼の代わりに死んだみたいよ」

騎士「……代わりに、か」

王女?「あの若者の生命力には目をつけていたわ! そうね、初めて会った時かしら? あの時すでに幽霊だったなんてね……」

騎士「……」

王女?「あの子の命もそろそろクリスタルコアかしら。命の数は少しでも多い方がいい」

王女?「マティウスの復活に必要なのは、人間の命なのだから」

騎士「……それほど世界が欲しいのか? マティウスは」

王女?「ええ。全ての支配者になるつもりよ」

王女?「自分の思い描く、理想の世界をつくるためにね……」


コスモス「……止めなければなりません。偽物の王女! 近くにいるはず」

ミンウ「待て」

コスモス「……何です?」

ミンウ「あの地震……誰が引き起こした?」

コスモス「ガーランドに憑依しているカオスの意識です」

コスモス「カオスは……魂だけでは何も出来ませんが、ガーランドという器があれば力を発揮できる……」

ミンウ「何故フリオニールは死ななければならなかった?」



光の戦士「……彼は私の代わりに死んだ」


光の戦士「私には、コスモスの呼ぶ声が聞こえた……その後すぐ地震が起きた」

光の戦士「私が遺跡に入ったことを、カオスに気付かれたのだ。あの地割れは、私を狙ったものだった」

コスモス「光の戦士ならば、罠をくぐり抜け迷宮最下層にいる私のもとに現れるはずでした。ですが……現れたのは……」

ミンウ「フリオニールだった、という事か」


ミンウ「……光の戦士、お前に付きまとっていた黒い影が」

ミンウ「王女救出に、フリオニールが同行すると決めた時から消えていたのが気になっていたけど」

ミンウ「あれはお前の身代わりに彼が死ぬことになるという前触れだったのか……!!」


― 回 想 ―


白魔道士(ミンウ)「私には 君の運命が 見える……。君は あの戦士を 救うことになるかもしれない……」


ミンウ「連れてくるべきではなかった……こんな所に!」

コスモス「……フリオニールには、黒い影は付きまとっていましたか?」

ミンウ「彼に影は見えなかった。死ぬことにはならないと思っていたのに……」


光の戦士「……」


ミンウ「……お前はいったい何者だ? カオスとはいったい何だ?」

コスモス「私は……世界の秩序を守る者……」

コスモス「カオスとは、セーラという王女に恋焦がれた、ガーランドという騎士の変わり果てた姿です」

コスモス「セーラ王女をさらったガーランドはこの光の戦士に倒され、倒された彼は邪悪な力によって過去へ飛び」

コスモス「そこでカオスという者になり、永遠の時を生きるために邪悪な力で、未来の自分を過去へ呼んでいるのです」

コスモス「これが繰り返されることによって、世界は暗黒に染まってしまうのです」


光の戦士「私はこの輪廻を断ち切るため、悪の根源がいるという2000年前の過去に旅立った」

コスモス「……光の戦士は、2000年前カオスと戦い、そして敗れました」

コスモス「戦士についていった私は全ての力を使い、カオスを地獄へ封じました。そして私も……地獄に堕ちました」

コスモス「地獄に堕ちる前に、この戦士を2000年後の世界へ戻し」

コスモス「カオスに利用される前のガーランドを、セーラ王女のいないこの世界へ逃がしました……」

コスモス「輪廻はこれで終わるはずでした。ですが1000年後……邪(よこしま)な魂が地獄に堕ちてきました。その名はマティウス」

コスモス「ジェノムの話は聞いていましたね?」

コスモス「力を失っていた私には、凄まじい魔力を持ったマティウスや再び目覚めたカオスを止める術はありませんでした」

ミンウ「だから戦士を呼んだ……いや、フリオニールの力を借りねば何も出来なかった?」

コスモス「地獄の中心・クリスタルコアまで行かなければ、この二人を倒すことが出来ません」

コスモス「一人では行けなかった。護衛が必要でした。ここまで来られたのも、彼のおかげです。本当に助かりました……」


ミンウ「……死んでいるとはいえ、地獄の中心へ連れ込むつもりだったのか?」

ミンウ「彼の魂は永遠に地獄を彷徨うことになるとわかっていながら?」

コスモス「……全てを終えたら、私は彼の魂を安らかなあの世へ導くつもりでした」

コスモス「しかし、予定が狂って地獄から出てしまったうえに、私のそばからいなくなってしまった……」

ミンウ「……」

コスモス「彼を救うためには、あの偽王女を直接止めるしか方法がありません」

コスモス「マティウス復活のエナジーに、彼の命が使われてしまう前に」

光の戦士「……ここで奴が復活してしまったら、フリオニールたちのしたことが全て無駄になってしまう」

コスモス「力を貸してください、ミンウ」


◆ クリスタルコアに 生命エナジー 侵入

◆ 解析中……

◆ 状態 良好



(何だ?)

(ここが第1層……クリスタルコア?)


【解析結果】

◆ 対象生命エナジー 1988.1217М

◆ マティウス復活に必要な生命エナジーは

◆ あと 1987.1218М です

◆ 現在侵入したエナジーで 復活できます

◆ 対象生命を 分解します


(死んでクリスタルコアに放り込まれたんだ)

(……俺は迷宮に逆戻りしたのか)


(ここにマティウスがいるのか?)

(奴を蘇らせるためには、人間の命が必要だった)

(俺の命を使うつもりか?)


◆ ゲート オープン

◆ 処理1 パス

◆ 魂の分解 開始

◆ 生命エナジーへ 変換します



フリオニール(……)

フリオニール(……魂を分解されるわけには、いかない)

フリオニール(俺に出来ることは……)


曲 ♪ 再会 ♪


◆ 異常エナジー 感知

◆ 警戒レベル1

◆ メインゲート 遮断

◆ ガードドラゴン 出撃準備


曲 ♪ 反乱軍のテーマ ♪


セシル「やっと追いついた!」

フリオニール「セシル!」

ティナ「助けに来たわ!」

フリオニール「ティナ!」

ジタン「フリオニール! 久しぶり!」

フリオニール「ジタン!」

フリオニール「皆……来てくれたのか!」


ティナ「一緒に行きましょう、マティウスを倒しに」

フリオニール「倒したら……俺はどうなるのだろう?」

ティナ「わからない。でも、これ以上悪くはならないって言ったでしょう?」

セシル「敵は、まだクリスタルコアにいる。ここからは動けない……」

ジタン「今が暴君を倒すチャンスだ!」












クポー……


モーグリ「モグもついて行くクポ!」

ティナ「まぁ! 可愛い。ふかふかしたいわ」

フリオニール「……ずっと気になっていた事があるのだけれど……」

モーグリ「なんだクポ?」

フリオニール「……【ニャー!】って、何だったんだ?」

モーグリ「【最終幻想Ⅲ】でモーグリが初登場した時の台詞クポ。でも、モグは猫じゃないクポ!」

フリオニール「ありがとう……俺の質問に答えてくれて」

モーグリ「いいんだクポ」

モーグリ(本当は、モーグリ初登場は【最終幻想Ⅱ】の予定だったのに、ジャイアントビーバーになってしまったクポ……)


フリオニール「……皆、協力してくれてありがとう!」

フリオニール「よし、行こう! 俺は、もう死んだ身だ。最後まで戦う!」

フリオニール「どうなるかわからないけど……マティウスを倒す!」



◆警戒レベル2

◆ガードドラゴン 出撃せよ


(ここに……来たのか……?)


フリオニール「誰だ? どこかで聞いたような……?」


王子「久しぶりだな……」

フリオニール「スコット王子! まさか、ここで出会えるとは……」

王子(スコット)「放り込まれたのさ。君たちと別れた後、ジェノムによって。第4層は……地獄の中継ポイントなんだ」

スコット「死んだらまず、第4層へ。そこでジェノムの死人狩り。死人から反撃能力を奪って……クリスタルコアへ」

スコット「死人に暴れられたら、クリスタルコアは生命エナジーを吸収出来ないと聞いた」

ティナ「随分詳しいのね。どなたから聞いたの?」

スコット「ジェノムだよ。彼らもここにいる。一人は君たちが倒したね……」


スコット「もう一人は復活を阻止しようとして、返り討ちにあったみたいだ」

ジタン「……」

フリオニール「スコット王子、一緒に行こう。マティウスを倒しに!」

スコット「……私は……もう、駄目だ……。全ての……命を、クリスタルコアに奪われてしまった」

フリオニール「そんな……」

スコット「もう……分解された。今の……この姿は抜け殻……最後にやっと君たちに会えた……」

スコット「会えて良かったよ……。本物のヒルダを救ってくれ……」

スコット「地上へ……連れて帰るんだ! 私の最後の力をあげるから……」



魔法の熟練度が上がった!



フリオニール「……スコット王子。俺は負けない。帰ってみせる、地上に!」


(お前達も来たか!)


フリオニール「その声は……!」


竜騎士(リチャード)「皆、死んでいたようだな。ここまで気がつかなかったか」

フリオニール「すまない……預かっていたペンダントが消えてしまった。持って帰れそうもない」

リチャード「消えた? 冗談はよせ! お前が首から掛けているものは何だ?」

フリオニール「……竜騎士のペンダント。もとに戻ってる?」

リチャード「持って帰れ! 地上にな」

リチャード「私の、残りの力もやろう。ほとんどクリスタルコアに分解されてしまったがな」

リチャード「最後の……一握りの力だ! フリオニール……必ず、あの暴君を倒すんだ!」



武器の熟練度が上がった!



フリオニール「リチャード……ありがとう。俺は、必ず奴を倒す!」


(来たな!)


フリオニール「誰だ?」


タコ?「オルトロス様だ! お前もクリスタルコア行き! ふん! いい気味!」

フリオニール「お前も死んだのか?」

タコ?(オルトロス)「ぜーんぶ、全部お前たちのせいだ! 仕返ししてやる! しかえししてやる!」

フリオニール「ちょ……ちょっと!」

オルトロス「えーい! これでもくらえー!」



ジタン「あれ? あいつどこ行ったんだ?」

オルトロス「悔しいから、タコの力をくれてやるゥ! MPを2倍にしてやったぞ! せいぜい戦って……お前たちなんか死んでしまえ!」



ティナ「……助けてくれたの?」



オルトロス(……かわいい 女の子。 わいの好みや……)


◆ 異常エナジー 内壁に侵入


◆ クリスタルコア 最終ゲートON


◆ 異常エナジーを 遮断します


少女「あなたたちも来たの? みんなクリスタルコア行きだったのね」

フリオニール「……気がついたら、クリスタルコアに来ていた。だけど、俺はここにいるマティウスを倒しに来たんだ」

少女「邪悪な……強大な力を見たでしょう? 勝てるわけがない……みんな滅びるだけ……」

フリオニール「邪悪な者の復活を阻止するのがお前の……いや、君の使命だろう?」

少女「そうよ、力と魂を与えられて……あの人たちの代わりになるように……」

ジタン「……」

少女「でも、もう無理……女神は来なかった……。この世界も、地上の世界も滅んでしまう……」

ジタン「……諦めんなよ。まだ奴が復活したワケじゃないんだ。オレたちに出来ること……そうだ!」

ジタン「さっき、ゲートが閉まったとか何とか聞こえたけど、あれ、開けることは出来るか?」

少女「閉まってしまったゲートは、私だけでは開けられないわ。……ジェノムが3人いれば開けることも可能よ」

少女「あの人が……ここに来ていればの話だけど。いえ、来ていたとしても、分解されていたら……」

ジタン「……」

少女「あの人は、自分より優秀に造られたあなたに嫉妬して、あなたを地上に放り出したの」

少女「今は……全ての欲望を叶えた今は、心が変わっているかもしれないわ」


背徳者「やはり、来たんだね……。また会えることが出来て嬉しいよ、ジタン……」


ジタン(こいつ、変わってないよな?)

フリオニール(死んだとしても酔いからは醒めないらしい)

ティナ(素直になれないだけじゃないかしら?)


背徳者「……僕に用があるんだろう? 例えば、そうだね……【ゲートを開けられるか】かな?」

ジタン「出来るのか?」

背徳者「愚問だね。3人揃えば可能だと彼女に言われたから、ここに来たんだろう?」

ジタン「まぁ、そうなんだけどさ……」


背徳者「ジェノムが3人揃えば……」

少女「揃えば……ね」

ジタン「3人で……ゲートを開く」



少女「揃っているみたいね」

ジタン「ああ」

背徳者「僕もいるからねぇ……」


ジタン「ゲートを開く!」

背徳者「開こう」


少女「……くっ!」



背徳者「頑丈すぎるんだよ、このゲート!」


ジタン「うおぉぉぉぉ!」



少女「ゲートは開いたわ! さあ、行って! マティウスを倒すのよ!」


◆ 緊急レベル……

◆ 緊急レベル……



王女?「な……何よ! いったい何があったの? まさか……魂の分解が失敗!?」

王女?「あの子、死んだっていうのに何てしつこいのかしら!?」

騎士「死なせるには惜しい人間だったな」

王女?「ちょっと! 何落ち着いているのよ! このままでは、マティウスが……復活出来ないじゃないの!」

王女?「カオス! あなた力を貸してくれるって言ったでしょ!? 手伝って!」


光の戦士「走れ! 光よ!!」


王女?「……な! 今度は何!?」


ミンウ「ホーリー!!」


王女?「きゃああぁ!」



コスモス「不意打ちはお得意ですか?」

ミンウ「いや、苦手だ」



王女?「く……この忙しい時に!」

騎士「とうとうここまで来たのか」


光の戦士「輪廻はここで終わらせよう」

コスモス「お待ちなさい。ガーランドを倒してはいけません。彼を倒すと……再び、過去に飛んでしまう」

コスモス「彼に憑依している、カオスの意識を取り除くのです」

ミンウ「……どうやって?」

コスモス「お静かに……。ガーランド、私の名前は……、私の本当の名前は、セーラ」

コスモス「コーネリアの王女セーラです。覚えているでしょう、ガーランド?」



騎士「……」

王女?「ええい、偽者風情が! ただの女神じゃないの!」

光の戦士「お前こそ、ただの魔物だ。偽者に偽者扱いなどされたくない」

コスモス「ガーランド。あなたを迎えに来ました。帰りましょう、私たちの国……コーネリアに」


◆ 異常エナジー 最終防衛ライン 突破

◆ 防御不可能…… 防御不可能……

◆ 緊急レベル……

◆ 緊急レベル……



王女?「こ……こんな時に! カオス! 時間がないの。私はクリスタルコアから復活させる」

王女?「不完全だけど、後から生命エナジーを注ぎ込めばいいわ! あなたは、この3人を片付けて!」



コスモス「ガーランド、一緒に帰りましょう。コーネリアに」


ミンウ「何を言っても無駄かもしれないな」

光の戦士「……女神を信じるしかない」


王女?「地獄の底から蘇りなさい、マティウス!!」


騎士「……これで最後だ」





















王女?「……ば……馬鹿な……」

王女?「復活の……手助けを……してくれるんじゃ……なかったの? お前が裏切るとはね……」


騎士「お前に忠誠など誓っておらん。私は、あくまでもセーラ王女を慕うただの騎士だ。本物の王女の言う事を聞いて何が悪い」

王女?「お前……カオスじゃ……なかったの? カオスは……どこにいった?」

騎士「知らぬ。地獄にでも戻ったのだろう」

コスモス「正気に戻ったのですね、ガーランド」

騎士「申し訳ありません、セーラ王女。第3層にいたあなたの姿を見つけるまで、私はカオスに操られていたようです」

騎士「……操られていたとはいえ、私は……一人の若者を殺してしまった……」


ミンウ「……」


ミンウ(八つ裂きにすべき相手はこの騎士ではない。あくまでもカオス。そう、カオスだ。落ち着け私)


騎士「本物のヒルダ王女は、この先の部屋にいる。安心しろ、怪我はない。早く連れて帰れ」


ミンウ(カオスを袋叩きにしたい……)


騎士「私はこの魔物を叩きのめす……!?」


蛇女「負けて……なるものか! 人間の……魂さえ分解できれば! クリスタルコアにある、残りの魂さえ分解できれば!」


蛇女「全ての魂を生命エナジーに変えて……復活、しなさい! マティウス! 国も、世界も……全ては……」



◆ クリスタルコアに残る 全ての魂を 強制分解します……


コスモス「……クリスタルコアが振動している……」

コスモス「いけない! マティウスがすぐにでも復活してしまいます! 第2層で見た悲劇が繰り返されてしまう!」

光の戦士「……来る!」




















皇帝「はっはっはっ……私は地獄から蘇ったぞ! もはや不覚など取らぬわ!」


光の戦士「私たちだけで……勝てる相手か?」

コスモス「……呪われた剣、ブラッドソードがあれば……勝利はつかめます」

ミンウ「ブラッドソード!?」

コスモス「ミンウ。ブラッドソード……フリオニールが持っていましたね? あの剣は今どこにありますか?」

ミンウ「……」


ミンウ「彼が持ったままだ」


コスモス「……」

光の戦士「……」



皇帝「呪われた剣に頼るしか能がないのか? 身の程知らずの蛆虫が! 死ね!!」


【いんせき】


ミンウ「く……フ、フリオニール!」

フリオニール「誰か俺を呼んだか?」

ジタン「ミンウの声、聞こえたぜ!」

フリオニール「ミンウ! ……あ……あちちっ! この剣熱くなってきた!」

ティナ「大丈夫? 手を見せて。大変! 火傷しているわ。すぐに手当てしないと」


セシル「よいしょっと……これで持てるかな?」

ティナ「血を吸いたがっている……まさか復活してしまったの?」





ジタン「地上へのゲート!」

フリオニール「地上……!」


セシル「フリオニール、行くんだ! マティウスを出すために、地獄のゲートが開いている!」

ティナ「すぐにまた閉まるわ! 今なら……帰れるかもしれない!」


【フレアー16】

【いんせき】


ミンウ「手強い! もう一度あの攻撃を受けたら……防ぎきれない!」







ミンウ「フリオニール!?」

フリオニール「帰ってこれた! みんな戦っているのか? 俺も加えてくれ!」



皇帝「何人来ても同じことだ。蛆虫などに私は倒せぬ! 次の一撃で終わらせてくれる!!」







ラストバトル

VS こうてい

















コスモス「フリオニール、こちらへ……。その剣で、最後の一撃を与えるのです」



皇帝「このわたしがやられるとは……信じられ……ん……」

皇帝「おまえは……いった……い、なに、もの……」











                          ウ  ボ  ァ  ー










ミンウ「……終わった。よく頑張ったよ……」

光の戦士「この旅も、これで終わり……」



騎士「セーラ王女……」

コスモス「……」



フリオニール「……セシルとティナは、こっちに来られなかったのか?」

コスモス「あの2人は過去の幻影ですよ。現実世界では、セシルは聖騎士として、ティナは普通の娘としてこの世界で生きています」

コスモス「暗黒騎士だった彼は、多くの人を苦しめ……」

コスモス「生まれながらに魔法を操る彼女も、意図的ではないにしろ多くの人を傷つけてしまった」

コスモス「ですが、それらは別のお話。彼らは暗黒の力や魔法の力を捨て、今を生きています」


フリオニール「……ジタンは? あいつも、こっちに戻れなかったのか?」



ジタン「オレはここにいるよ! やっと帰ってこれたのさ」

フリオニール「死んでいた、という訳ではないよな」

ジタン「オレは最初から生きているさ! 遺跡の奥へ奥へ、ずっと下に潜っていって、そして地獄に着いたんだ」

ジタン「彼女がオレを呼んでいたみたいなんだ。こっちに来いよ!」


少女「……」

フリオニール「お前……いや、君も地上に来られたのか」


― 数時間前 ―


ジタン「さあ、オレたちもこんな陰気臭いところから脱出しようぜ!」

少女「無理よ」

背徳者「無理だよ」

ジタン「……どうしてあの2人と同じ言い方するかね……?」

背徳者「……ここの仕組みを理解していないのかな? ここは死人が集まる場所。死んだ人間が地上に戻れるわけがないよ」

少女「そしてここは、一度入ったら二度と出られぬクリスタルコア……。死者の魂が集まる場所よ」

ジタン「お前たちも……もう、死んでいるのか……?」

背徳者「死んだからここにいるのに……。愚かさというものは死んでも治らないものなんだね」


少女「……待って この人は生きているわ……」


背徳者「……何だって? 君は何処から入った? あの2人について来たのか?」

ジタン「そうだよ!」


背徳者「ここへ来たら、二度と現世には戻れないということも知らずに? いや、理解していなかったの方が正しいかな?」

ジタン「……知ってたさ」

背徳者「どうして来たんだい……?」

ジタン「誰かを助けるのに理由がいるかい?」

背徳者「……僕には、キミの考えが理解できないよ……」

ジタン「とにかく、オレは一度こう思ったら、そう簡単には自分の考えを都合よく変えられない性分なんでね」

背徳者「……ジタン。今ならまだ間に合う……ここから出してあげよう。君もだよ」

少女「!?」

ジタン「出られるのか? それならお前も一緒に……」

背徳者「……僕に生きる資格はないよ……。もう、この世にはいらない存在なのさ」

ジタン「生きる資格とか、いらない存在とか、自分で決めるものじゃないさ……。外に出よう。な!」

背徳者「僕のことはいいから、彼女だけでも連れていっておくれよ……」

少女「どこへ行くというの? 私はこの世界のために生まれ、そしてこの世界のために存在するようなもの……」

少女「外の世界に出ても、私の存在理由はどこにもない……何のために私は生きるの?」

ジタン「……オレも思った事あるぜ、オレは何のために生きてるのかって……」

少女「わかったの?」

ジタン「わからねえな……。何のために生きてるのかなんて、そんなのわからない……」

ジタン「それを見つけるためにも生き続けるしかないのかもしれない……」

少女「……」

ジタン「お前、名前は? 名前はあるのか?」

少女「私の名前は……ミコト」

ジタン「いい名前だな。行こう、ミコト! 新たな地で見つければいい、お前が何のために生を受け、そして生きるのか……」


少女(ミコト)「ええ。……さようなら、クジャ」

背徳者「……」


ジタン「……オレとしてはティナちゃんも地上に連れてきたかったな……と思ったけどこの世界にいるのか!? また会えるかな」

ミコト(なんて軽い性格なのかしら。それと、セシルのことも忘れないで)

フリオニール(俺も、彼女にもう一度会いたいな……)


フリオニール「こっちに戻って来られたけど、俺は死んでいるからな……俺は今、幽霊なのか?」


コスモス「戦士、先に王女を救いに行きなさい。……フリオニール、ついていらっしゃい」


フリオニール「……地割れだ」

コスモス「覗いてごらんなさい」

フリオニール「……」





ミンウ「フリオニール!? 姿が……」

フリオニール「……また、さよならなのか?」

コスモス「……さよならではありませんよ。まだそれを言うには早すぎます……」











ミンウ「あの世へ連れて行ってしまったのか、女神……」


(……目を覚ましなさい。悪夢は終わりました……)





フリオニール「……俺は……いったい……? 確か、地震が起きて……足元が崩れて……」

フリオニール「それから……思い出せない。悪い夢を見ていた気がする……」


ミンウ「フリオニール!」

フリオニール「……ミンウ?」


ミンウ「生き返った……!?」


(彼に黒い影はつきまとっていなかった。意識不明で、瀕死の状態ではあったけど)


― 回 想 ―


コスモス「……フリオニールには、黒い影がつきまとっていましたか?」

ミンウ「彼に影は見えなかった。死ぬことにはならないと思っていたのに……」


ジタン「これでティナちゃんに会いに行けるな!」

フリオニール「……ティナって誰だ?」

ジタン「おいおい、忘れたのかよ!? あんなに会いに行きたそうな顔していたくせに。一緒に戦った仲間じゃないか!」

フリオニール「一緒に戦った……?」

ミコト「夢で見たものは、目が覚めてしまうと大抵忘れてしまうわ。あなた、私のことも覚えていないでしょう?」

フリオニール「……君は、誰なんだ?」

ジタン「オレの妹だよ」

ミコト「!? ふ、ふざけないで!」

フリオニール「なるほど。よく似ていると思った」

ミコト「納得しないで!」


ジタン「お、光の勇者サマが王女様を救いだしてきたみたいだぞ」

フリオニール「そうだ、ヒルダ王女!」



王女(ヒルダ)「まぁ、あなたは……あの時の少年? 5、6年前かしら……」



― 回 想 ―


ヒルダ「ミンウ、助かりますか?」

ミンウ「はい、じきに意識を取り戻すでしょう。力強い生命力を感じます」

ヒルダ「見つけた時、この子は大怪我をしていました。あなたなら助けられると思ったのです」

ミンウ「この魔法陣が傷を癒してくれます。そっとしておきましょう」


ヒルダ「狩りの途中、崖から落ちてしまったのね。あれから腕前は上達したの?」

フリオニール「ええ。義父や義兄に教え込まれましたから」

ヒルダ「助けに来てくれたのね。ありがとう」



フリオニール「戦士がガーランドを倒したのか?」

光の戦士「……そうだ」



フリオニール「俺、この遺跡に何しに来たんだろうな。地割れに落ちて、ずっと意識を失っていたみたいだし」

ミンウ(君は世界を救ったのさ……覚えていないだけで。何よりもそのペンダントが証拠……)

ミンウ(私が持っていたはずなのに、いつの間にか消えていた……。おそらくリチャードという竜騎士から再び渡されたのだろう)


光の戦士「帰ろう。国王に……報告せねばならない」

ヒルダ「……スコットは……私を助けようと遺跡に入り、命を落としたのですね。そして……多くの人が、私のせいで……」

フリオニール「……」



光の戦士「……行こう」


ヒルダ「……とても懐かしい匂い。草や木……風の匂い。もうすぐですね」





ジタン「地上だ!」

ミコト「……これが、外の世界……」





フリオニール(あれ? 誰かの声が聞こえる……)





(フリオニール……)

(ありがとう)

(そして……さようなら)



                                         END

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