池袋晶葉「できたぞ! 除夜の鐘1回ごとに好感度が上がるスイッチだ!」 (26)

※Pと晶葉のみ 短め

※池袋晶葉
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●01

P(俺が担当しているアイドル・池袋晶葉は、デビュー前は“天才ロボ少女”として名を馳せていた。
  それで、アイドルの仕事が軌道に乗った今でも、想像を絶するシロモノをときどき製作する。

P(そんな彼女が、芸能界のクッソ忙しい年末に……)



晶葉『どうしても大晦日の夜から元旦までは、私とプロデューサーの予定をあけて欲しいんだ!』



P(などと言い出した)

P(晶葉の予定は問題ない。年齢的に、どうせ22時以降は労働不可だ)

P(だが、俺の予定をあけるのは苦労した……アイドルの相手ばかりが仕事じゃないんだぞ……)



P「……で、その目的がコレか」

晶葉「見てくれ! 除夜の鐘一回ごとに好感度が上がるスイッチだ!」

●02

P「晶葉。凡人の俺には、晶葉がその発想に至った過程を理解できないんだが……」

晶葉「除夜の鐘の回数が、煩悩の数と対応している……という俗説にヒントを得てな。
   鐘の音響で何か精神的な作用を得られないか、と思って作ってみたんだ」

P(待ち合わせ場所が、魚物市場で有名な某駅だったから、
  てっきり『一緒に初詣に行きたいんだ』あたりの用件だと思ったのに……)

P(せっかく、面白いものをもらってきたのに……)



晶葉「フフフ……今はまだ、個人にしか効果がないが、ゆくゆくはライブ音源と組み合わせて」

P「お前けっこうエグい発想するな」

晶葉「冗談だ。機械だけで人を魅了できるなら、アイドルがいらなくなってしまうからな」

●03

晶葉「さて、スイッチの詳しい説明をしよう! 仕組みは至って単純だ」

晶葉「被験者がこのスイッチを押して、最初に除夜の鐘を聞いた瞬間に、
   被験者から特定の人物に対する好感度が設定さる。
   そのあと、鐘の音を聞くごとに好感度が上がっていくんだ」

P「“特定の人物”って、具体的には?」

晶葉「被験者と面識のある人物なら、任意で設定できる」



晶葉「今回は、被験者が私。好感度の対象はプロデューサーだ」

P「……はぁ!?」

晶葉「何を驚いている? これは私が作ったスイッチなのだから、まず私自身で試す」



晶葉「それとも、プロデューサーが被験者になってくれるというのか?」

P「現状のママにしてくれ」

晶葉「ハハハ! プロデューサーはそんなに私からの好感度が欲しいかー。では、ポチっといくぞ!」

P(何このアタマがハッピー☆ジーニアス)

●04

晶葉「さて、時間帯と人のざわめき具合からみて、そろそろ1回目の音が聞こえてくる頃合いだな」



梵鐘「1回目いきまーす」



P「あぁ……この音を聞くと、仕事収めもクソもない芸能界でやっと、世間並みの年末気分になれる」

晶葉「…………」

P(なんで晶葉はそっぽを向いてるんだ)




晶葉「“可愛い”……か。君は、アイドルのプロデューサーをやってると聞いたぞ」

晶葉「私は、そういう業界に疎いが……君は“可愛い”という形容詞を、今まで何人の女子にかけてきた?」

晶葉「答えられない? ははっ、そうか。私が今までに引いた図面の数と、どっちが多いのやら」



P「おい、好感度が初対面の頃に戻ってるじゃねぇか」

●05

梵鐘「11回目いきまーす」



晶葉「アイドルにならないか、なんて言われたのは、小さい頃の近所のおばあちゃん以来だよ」

晶葉「私はスポットライトを浴びるより、ニスの匂いに塗れるのがお似合いだ……そんな自分が、結構好きだしな」

晶葉「それに、人前に出るのは……好みじゃないんだよ、単純に」

●06

梵鐘「21回目いきまーす」



晶葉「また来たのか……君も、物好きなことだ」

晶葉「先に行っておくが、私は何を言われようとロボット作りを止めるつもりは無いからな!」

晶葉「何? “アイドルがロボット作ったっていいじゃないか”……簡単に言ってくれる」

●07

梵鐘「31回目いきまーす」



晶葉「君もしつこいな。アイドルなんて……他になりたがる子がいるだろう?」

晶葉「私は、遊びは好きだが無駄は好かないんだ。ほら、稼働実験の邪魔だ。帰った帰った」

晶葉「……顔色が悪そうに見える? ハハ、見た目に気を使えない女子で悪かったな!」


●08

梵鐘「41回目いきまーす」



晶葉「ここ最近、誰かさんが来るのを相手しなければならなくてなぁ。集中力が続かないんだよ」

晶葉「それを埋め合わせようと、つい夜更かしになってしまって……遠回しな言い方は良くないか」

晶葉「私の人生の設計図に、アイドルを書き入れる場所は無い。いい加減に、諦めることを勧める」



晶葉「……それに君は、私のスカウトにこだわって、笑い者になっていると聞いたぞ……?」

●09

梵鐘「51回目いきまーす」



晶葉「…………」

晶葉「…………なんだ、君か」

晶葉「ちょっと、体調が優れなくてな。何、寝てれば治る。だから、今は……」

晶葉「私が、起きるまで待ってたのか……?」

晶葉「三顧の礼……? 生憎と、古代史には疎いんだ……」

●10

梵鐘「61回目いきまーす」



晶葉「ロボットの語源を知っているか? あれはもともと“苦役”が語源らしい」

晶葉「人間がやりたくない“苦役”を肩代わりさせる装置が、ロボットの本質なんだ」

晶葉「……では“苦役”から解放された分の人生を、人はどうやって過ごすんだろうな」



晶葉「もしかして、アイドルとはそういう領域にある存在なのか?」

●11

梵鐘「71回目いきまーす」



晶葉「アイドルのこと……話半分だったが、家族や友達、知り合いにも話してみたよ」

晶葉「笑われてしまったり、呆れられたり、怒られたりもした」

晶葉「せっかくロボットの分野で期待されているのに、フイにするつもりか、と」



晶葉「私は……池袋晶葉は、ロボット作りをライフワークにすると決めている」

晶葉「しかし、私がそれしかできないと思われるのは、面白くない」



晶葉「君は、今でも“アイドルがロボット作ったっていいじゃないか”と言ってくれるか?」

晶葉「もしそうなら、私は――」


●12


P「――おい、大丈夫か晶葉。顔が真っ赤だぞ」

晶葉「ひゃっ……なっ、人の顔を勝手に見るな!」

P「晶葉がいきなりそっぽ向いたから、何事かと」

晶葉「……分かった。そっちを向くから、だから」

晶葉「君も目をそらさないでいてくれよ」

●13

梵鐘「81回目いきまーす」



晶葉「君の誘いに乗って、アイドルを目指すことになったが、最初はここまで打ち込むつもりはなかったよ」

晶葉「ロボット作りは湯水のごとくお金を使うからな。アイドルとして名を売って稼げればいいか、程度だ」

晶葉「あとは……プロデューサーが、私を色眼鏡で見ないで、ちゃんと女子として評価してくれていたのが……」

●14


梵鐘「91回目いきまーす」



晶葉「動機はいささか不純だったが……プロデューサーのチカラと、この私の才能によって、
   ついに私がアイドルとしてデビューしてしまった!」

晶葉「正直、不安だったよ。もう認めてしまうが、私には女子として見られたい、という願望があった」

晶葉「それを、プロデューサーと出会うまで燻らせていたのは……
   願望に見合った……女子らしくなろう、という努力をおろそかにしていたからだ」

晶葉「そんな私が、アイドルを全うできるのか?」



晶葉「ここまでやってこれたのは、プロデューサーがいたから。
   私より私のことを知る君が、一緒に歩いてくれたからだよ」

晶葉「君のおかげで、私の人生の設計図は大幅に書き直しだ!」


●15

梵鐘「101回目いきまーす」



晶葉「もう、ここから先は分かるだろう?」

晶葉「私はプロデューサーのことを信頼しているんだ。パートナーとして」

晶葉「私の自信は、プロデューサーの表情を礎としている!」

晶葉「私のパフォーマンスは、プロデューサーの発想から生まれる!」

晶葉「私の知性は、プロデューサーからの刺激で走り出す!」



晶葉「プロデューサーにとっての私も、そんな存在であれば……」

●16

梵鐘「107回目いきまーす」



晶葉「う、うう……まるで走馬灯だ……思い返すだけで、目まぐるしくて……
   プロデューサーを見ているだけで、どうにかなりそうだ……」

P「晶葉……ほら、手を。どこか座れるところで休もう」




梵鐘「108回目いきまーす」



晶葉「き、気にするな! 108回聞いた後の好意の基準は、作っていた時の私だ!
   他のアイドルがスイッチ押した時、今の私以上に君を好きになられたら困るからな!」

P「晶葉、それって」

晶葉「ここまでが、アイドルとプロデューサーとしての好意で――」



●17


梵鐘「109回目いきまーす」



晶葉「――私は、君のことをそれ以上に思っているんだ」

●18

P「晶葉、これは」

晶葉「このお寺はな……整理券をもらっていれば、参拝者でも除夜の鐘を撞けるんだ。
  詳しくは知らないが、どうやら300回は超えるそうだ」

P「……だから、わざわざここに」



晶葉「私は、こう見えて引っ込み思案なやつだ。一人でできることは、少ない」

晶葉「アイドルになる決心を固めるにも、君の支えが必要だった。
   君に自分の気持ちを伝えるにも、鐘の音の後押しが必要だった」

晶葉「こんな私だが、君と一緒なら、何でも実現してみせる。君がそう信じさせてくれた」

晶葉「どうか、私の気持ちを受け取って欲しい。君が好きだ」


●19


P「……晶葉。俺も、自分の気持を伝えるのに、除夜の鐘を借りてもいいか?」

晶葉「プロデューサー、このスイッチは――」

P「――いや、そっちじゃなくてな……」



P「実は、除夜の鐘を撞く整理券を1組分もらってきてるんだよ」

P「晶葉、一緒に撞かないか?」

●20

P(俺は晶葉と一緒に、除夜の鐘を撞かせてもらった。今までで一番心に残る年明けだった)

P(……晶葉のことだから、来年はもっとすごいことになるかも知れんが)



P(例のスイッチがその後どうなったかは分からない)

P(晶葉が処分したのか、それとも……)


(おわり)

※このSSは実在の社寺とはいっさい無関係です

 ただ“参拝者が除夜の鐘を撞ける”寺院は、晶葉の地元・東京を含めそこそこあります
 このSSのような真似をしたら、確実に本堂からつまみ出されますが

 コピペPの手法を参考にしましたが、なかなか本家のようには

 良いお年を

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