二宮飛鳥「エターナルスノウ」 (23)

ちひろ「Pさん、飛鳥ちゃん見ませんでしたか?」

モバP「いや、見てませんが……。何かありましたか?」

ちひろ「その、飛鳥ちゃんの学校の鞄がここに置いてあるのに、全然姿が見えないものですから。もうそろそろ日も暮れるのに……」

モバP「げっ、今日はこの後ライブの打ち合わせがあるっていうのに……。ちょっと探してきます」

ちひろ「あのっ、手袋とマフラーも持って行って下さい!これから雪が降るという予報が……」

ちひろ「って飛び出して行っちゃったし……」

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二宮飛鳥
http://i.imgur.com/58tJbdK.png

―――
モバP「……なんだ、こんなところにいたのか」

飛鳥「ああ、キミか。今日は早かったね」

モバP「まず高いところから飛鳥がいそうな場所を見ておこうと思ったんだが……そこにお前がいるとは思わなかったな」

飛鳥「フフッ、残念だよ。もう少しこの眺めを独り占め出来ると思ったのに」

モバP「その割にはあんまり残念そうじゃないな」

飛鳥「そうかな……まぁ、キミがそういうならそうなんだろうね」

モバP「それにしても、ここで何をしていたんだ?わざわざこんな日に……」

                                                                    ミ
飛鳥「何をしていたか、なんて……無粋じゃないか。ボクはただここに在っただけだよ。この移り変わるセカイを観測ながら、ね」

モバP「……もうずいぶん長い間ここにいるのか?屋上は寒いだろうに……」

飛鳥「寒さは問題じゃないさ。それに、ここでしか観測えないモノもあるからね。例えば、ほら、空を見上げてご覧よ」

モバP「……いい夕焼けだな」

         アカ
飛鳥「だろう?朱い夕焼けとそこから濃紺の闇へと渡っていく無限のグラディエント……。

                                 チイサ
    街の空なんてどこに行っても矩形に切り取られた矮小なものしかなかった。

    だけど、そんなものは仮初めの姿でしかなかったんだ」

飛鳥「空だけじゃない。ここから見える街や工場、空を往く鳥たちまでもがありのまま、真実の姿を晒している。

    その姿を前にして、どうして沈黙していられるだろうか」

モバP「えーと、この景色が美しくてつい長居をしてしまった、ということでいいのかな」

飛鳥「フフ、そんな感じかな……。冬はいいね。こういう“冬を聴く”楽しみが増えるからね」

モバP「冬を聴く、か……。いいな。それは」

飛鳥「よかったらキミもこっちに来たらどうだい。柵の近くのほうがもっと素晴らしいものが見えるからさ」

モバP「……そうだな。そうさせてもらおうか」

モバP「ここからだと、飛鳥たちが住んでる女子寮は見えないかな」

飛鳥「どうやら反対方向のようだね……。ここから見えるのは、ボクらが通っている学校ぐらいだ」

モバP「いや、確かあの工場の向こう側に、飛鳥が前にライブを行った会場があるはずだ。煙突から出る煙でよく見えないが……」

飛鳥「……意外と近いものだね。鳥のように空を飛べたのなら、この距離なんてあっという間に着いてしまうのに」

モバP「鳥のように、か。鳥だって空を翔ける自由を得る代わりに毎日寒空の下で眠る生活だ。

    ある意味それは今とはまた違った苦しみが待っているはずだぞ?」

飛鳥「それでも構わないさ。飛ぶことに疲れ、寒さが辛くなったらキミという巣箱に帰ってくるよ」

モバP「おいおい、プロデューサーを便利な止まり木扱いか」

                                                            カナリア
飛鳥「今でも同じようなものじゃないか。元よりボクらアイドルは人間の歌を奏でることを強いられた金糸雀さ。

    それを労ってくれるのはキミだけなのだから」

モバP「でも、本当に鳥になってしまうのは勘弁してほしいな。鳥と人間じゃ、こうして同じ景色を見ることが出来ないだろう」

飛鳥「ま、その通りさ。安心して欲しい。本当に鳥になんかなったりしないさ」

モバP「そう、鳥のように空を飛べたら、オーストラリアにも行けるな。ちょっと長い距離を飛ぶことになるが」

飛鳥「オーストラリアか……懐かしいね。南半球のあそこは季節が逆になるから……。ちょうど行った時と季節が同じになるのかな」

モバP「あの時は冬の終わりくらいだったか。少し寒かったが、みんなよくやってくれたよ。飛鳥もずいぶん成長したんじゃないか」

飛鳥「そうかな……。キミから見て、ボクはどんな風に成長出来たかな」

モバP「そうだな、まず笑顔が増えたかな。それまで硬い表情が多かったから、少し安心したよ。こんな表情が出来るんだって」

飛鳥「失礼だな、キミは。アイドルになる前だって普通に生活していたのだけど」

モバP「そうは言ってもすごい仏頂面だったしなあ。この前昔の宣材を見せたことがあったろ?」

飛鳥「あれは単純に顔が強張ってただけさ。

    キミという存在がどういうものか知らなかったし、初めてのことに挑戦するんだ。緊張するのは当たり前だろう?」

モバP「それに最初は飛鳥が言いたいことがよく分からなかったり……ああ、いや、これは過ぎたことだな。スマン」

        ワカ
飛鳥「今は、理解ってくれているのかい?」

モバP「ああ、今は飛鳥の言葉を理解できているつもりだ。

    飛鳥自身がちゃんと伝えようとしてくれているからかな。これも飛鳥の成長だ」

飛鳥「全く……。それで、キミはオーストラリアでボクに約束をしてくれたこと、覚えているかい?」

モバP「確か、新しい世界を見せてやる、だったかな」

.                                      トモ
飛鳥「そう……あのウルルより壮大で、刺激的なセカイをボクと倶に創り出していく約束を……忘れてはいないだろうね?」

モバP「抜かりはないさ。飛鳥にピッタリな舞台を用意してある。しっかり準備しておいてくれよ」

飛鳥「ああ……楽しみにしておくよ」

モバP「さあ、そのためにも中に戻ろうか。忘れてるかもしれないが……と、雪が降ってきたな……」

飛鳥「雪か……P、キミは雪が好きかい?」

モバP「いや……特に好きでも嫌いでもないな」

飛鳥「ボクは嫌いだった。寒いからじゃない。

    ロマンチックだなんだと持て囃されているが、元々大してきれいでもない空気中の水蒸気が固まっただけのものだ。

    さらに落ちてくる間に空気中のゴミを吸着して、地上に触れれば黒く汚れて道端に積み重なっている。

    とうてい美しいとは思えないシロモノだ」

        モノ
飛鳥「そんな雪をどうして好きになれるだろう?……ずっとそう思っていた」

モバP「……今は違うのか」

飛鳥「うん。今まで雪がこんなに美しいものだとは知らなかった……こんな気分は初めてさ。どうしてだろうね」

モバP「……それは」

飛鳥「いや、言わなくていい。わかってるんだ。キミと一緒だから、このセカイはこんなにも輝いて見えるんだ」

飛鳥「ボクの前からキミがいなくなれば、きっとこのセカイは色を失って元に戻ってしまうだろうね」

飛鳥「だから……P。ボクと一緒にいて欲しい。セカイが終わる、その時まで」

モバP「世界が終わるまで、か。どうかな……飛鳥の世界が終わる前に、俺の体は朽ちて亡くなっていそうな気もするが」

飛鳥「……」

モバP「ま、出来るだけついていくつもりで入るさ。この世界でお前がどれだけの輝きを見せるのか、特等席で見せてもらいたいからな」

飛鳥「フフッ、そうか。ああ、本当に面白いな、キミは」クスクス

モバP「なんだ、何か引っかかるところでもあったか?」

飛鳥「いいや、特に問題はなかったよ。いや、問題がないところがおかしいのかな?」

               リリック
飛鳥「キミはさっきボクの言葉を理解っていると言っていたけれど、まだまだかな。せいぜい半分といったところさ」

モバP「なんだ急に……ヘレンみたいなこと言い出して……」

飛鳥「でもキミは半分しか理解っていないはずなのに、ボクの気持ちを理解って一番良いところに導いてくれる。それが不思議で面白くて、ね」

モバP「それは……」

飛鳥「それはキミ自身がボクのことを理解しようとしてくれているからさ。ボクだけじゃなく、キミも成長しているということの証さ」

モバP「……かなわんね、どうも」

飛鳥「フフッ。さあ、戻ろうか。この舞い落ちる雪のように儚く消えてしまう前に、彼らの世界へ。

   ボクたちのセカイを輝かせてやろう。ボクたちの信頼の証を見せつけてあげようじゃないか」

モバP「そうだな。俺の体もそろそろ寒さで限界だ。そうしてくれるとありがたい」

                                                                ツマラナ
飛鳥「全く……キミはもう少し詩情というものを理解した方がいいね。無粋な言葉ばかり並べていたら心まで無粋い人間になってしまうよ」

モバP「努力するよ……。そういえば、言い忘れていたことがあったな」

飛鳥「?」

モバP「これからライブの打ち合わせがあるんだが……忘れてないよな?」

飛鳥「……何時からだったっけ?」

モバP「おい」

飛鳥「いや、勘違いは困るよ。これはただの確認さ。忘れていたわけじゃないよ?」

モバP「やれやれ……。ほら、いくぞ。もう夜になるし、何も見えなくなるぞ」

飛鳥「例え闇の中であっても楽しむ方法はあるのだけれど……。今はそんな我儘を言っている場合じゃないね。素直に従うよ」

―――
モバP「全く、手もこんなに冷たくして……本当は飛鳥も寒かったんじゃないか?」

飛鳥「いいや。ボクは寒くは感じなかったよ。キミがいてくれたおかげで、心はずっと暖かだったからね」

モバP「……そう言いながらどうして手を離さないんだ?」

飛鳥「キミがあんまりにも寒そうだからね。ボクの手で温めてあげようと思ってさ」

モバP「余計に冷えるだけなんだが……どうせならそのマフラー貸してくれよ。そっちのほうがまだ暖かそうだ」

飛鳥「これかい?これはボクのお気入りだから、おいそれと貸すわけにはいかないんだが……。でも、こうすればいいかな」

モバP「……マフラーを使わせてくれるのはありがたいんだが、どうして飛鳥も一緒に使ってるんだ?」

飛鳥「折衷案さ。キミもボクもこのマフラーを使いたい。なら、半分ずつ使うのが効率的さ」

モバP「……それに飛鳥がすごく近いような感じがするんだが」

飛鳥「このマフラーは短いんだ。2人でこれを使うためにはこうするしかないだろう?」

モバP「やれやれ……」

飛鳥「さあ、早く打ち合わせに行こう。遅れてしまったら、それこそ一大事だ」

飛鳥「……どうだい?暖かくなってきたかい?」

モバP「……ああ、暖かいよ。ありがとう、飛鳥」

飛鳥「どういたしまして」

終わり

ここまで読んでくださってありがとうございました。

>>2のSRを見てたら色々書きたいことが浮かんできたけど整理したらこれぐらいになりました。
またいつか飛鳥のSSを書きたいですね。

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