【らぶらいぶ】花陽「自分にできること」 (81)



◆うみぱな
◇シリアス展開ありかもしれません
◆違和感はことりのおやつに
◇のんびり書いていくのでよければ最後までお付き合いください

※前作:穂乃果「忘れちゃうなんてひどいよ」
(【ラブライブ】穂乃果「忘れちゃうなんてひどいよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419431590/))の続編ですのでそちらを先に読んでいただけると嬉しいです



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419733580



リンク先間違ってましたすみません!

穂乃果「忘れちゃうなんてひどいよ」
【ラブライブ】穂乃果「忘れちゃうなんてひどいよ」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1419431590/)
になります



最初はね、ただ単に凄いなあってそう思ってたの。
あのキリッとした瞳に、強い意志。
弓道部とスクールアイドルを両立して成績も良くて、礼儀正しくて努力家で。


花陽じゃ到底追いつけないところに海未ちゃんはいて。
いつもみんなに指示して、引っ張ってそれ以上に何倍も自分には厳しくて。

憧れてた。
あんな風になれたらいいなあって。
鈍くさくて、誇れることはアイドルへの想いだけで秀でた特技もなくて。
平々凡々な花陽に映る海未ちゃんはいつだってキラキラ輝いていて。


いつからか海未ちゃんに認めてもらえるようにって努力するようになった。
もしかしたら、そのころから花陽は少しずつ海未ちゃんが別の意味で気になり始めてたかもしれない。


だけど、海未ちゃんの気持ちに気づかないほど花陽も鈍感じゃなくて。
きっと海未ちゃんは気づいてないんだろうけど、海未ちゃんの穂乃果ちゃんを見る目は他の誰を見る時の目より優しかったの。


それに気づいた時、何故か悲しい、っていう感情はなかった。
海未ちゃんには絶対に幸せになってほしいなって。ただただ花陽はそう願ってた。


だけど、花陽の意に反して穂乃果ちゃんは絵里ちゃんと付き合い始めた。

正直凄くお似合いだなあって思ったし、大好きな2人が本当に幸せそうで嬉しかった。
そんな中でも気になるのはやっぱり海未ちゃんのことで。

ふ、と視線を外して盗み見た海未ちゃんは例えるなら「嫁を送り出すお父さん」みたいな寂しそうな微笑みで2人に幸せになってくださいね、なんて言ってた。

海未ちゃんはこの先もきっと穂乃果ちゃんに想いを告げることはないんだろうな、って花陽でも分かっちゃった。
誰よりも穂乃果ちゃんを想っている海未ちゃんならきっとそうするかなって。


その日海未ちゃんは「ステップが不安なのでもう少し練習してから帰ります」と言って練習が終わった後屋上に残った。

だけどね、花陽は知ってたの。
海未ちゃんがステップ完璧なこと。
みんな、海未ちゃんがなんて珍しいねーなんて言ってぞろぞろと学校を出る。

でも、花陽はどうしても海未ちゃんが気になってみんなに嘘をついて屋上に戻った。
今海未ちゃんを1人には出来ない。
そう思って、屋上のドアを静かに開けたら、そこには声を押し殺して泣いている海未ちゃんがいて。






……こんな時ぐらい大声で泣いたらいいのに。
海未ちゃんはどうしてそんなに頑張っちゃうのかな。


なんでか花陽が泣きそうになっちゃって、こんなところを見たら何も知らないふりをして帰るわけにもいかなかった。


わざとらしくドアを開けたら海未ちゃんが真っ赤で潤んだ目を見開いて固まった。



「は、花陽!忘れ物ですか?」



そう言って、慌てて目を擦る海未ちゃん。
何も考えないまま、体が動くままに花陽は海未ちゃんを抱きしめた。


穂乃果ちゃんの代わりになろうなんて思わない。
海未ちゃんを励ましたり笑顔にできる力はきっと花陽じゃ役不足。
でも花陽にもそばにいることは出来るから。




「ひとりで、泣かないで……」




弱虫な花陽にはこう伝えるだけで精一杯だったけれど、海未ちゃんには伝わったみたい。
花陽の制服の上着を少しだけ握りしめてまた声を出さずに泣きだした。






…綺麗だと思った。
こんなに誰かを想って涙を流す海未ちゃんのことが。
そしてこの時思ったの。
海未ちゃんのそばにいたいって。
海未ちゃんを笑顔にしてあげたいって。


弱虫で誇れることがなかった花陽の2度目の決意。
1度目はμ′sに入れてくださいと穂乃果ちゃんにお願いした時。
そして2度目は穂乃果ちゃんに失恋した海未ちゃんの涙を見た時。


まだ誰にも言っていないけど、花陽がもっともっと頑張って海未ちゃんを支えたい。
そのために花陽は頑張ります。







帰り道、海未ちゃんと2人で歩きながらこれからのことを少し話した。
μ′sのこと、メンバーのこと、海未ちゃんが今まで抱えてきた想いのこと……



「穂乃果は昔から、元気で強引で明るくて。側にいると自然でいられるんです。
幼馴染みっていうのもあるんでしょうが、やっぱり私にとって穂乃果は特別でした。
辛い時も悲しいときも穂乃果も話していれば楽になりましたし、穂乃果を見ると私も頑張らなくてはと元気をもらえるのです。


……出来ればこれからずっと側にいて、お互い支えあいたいと思っていたのですが……絵里ならきっと穂乃果を幸せにしてくれるはずですし、もう思うことはありません」



そう言って笑う海未ちゃんを見たら胸がきゅーって切なくなって。
やっぱり花陽は海未ちゃんが好きだなあってそう思ったんだ。


なのに、「花陽は凛とどうなのですか?」なんて聞くからびっくりしちゃって。



「り、凛ちゃん!?どうして!?」
「どうして、って…花陽も凛もお互いのことを大切に思っているじゃないですか。」


もう付き合っているのですか?ってくすくす笑いながら花陽に問いかける。


……やっぱり花陽と凛ちゃんはそう見えるのかな。
確かにずーっとお友達で、花陽も凛ちゃんのことは大好き。
そばにいてくれると落ち着くし元気がもらえる。
だけど、花陽にとって凛ちゃんはお友達。
1番大切で大好きなお友達。



「凛ちゃんのことは確かに大好きだけど……花陽には好きな人がいるんだあ」


そう言って少し照れて海未ちゃんを見ると意外だ、というような目で花陽を見ていて。
うう…そんなに花陽たちはそんな風に見えるの?


「どなた、なんですか?」


そう呟いた海未ちゃんの声はいつもより低くて。
でもそんなの海未ちゃんに言えるわけないよね?
だって花陽の好きな人は海未ちゃんなんだもん。
だから、「えへへ……内緒ですっ」て唇に人差し指を当てて笑う。


そしたら海未ちゃんは少しきょとん、としてまた優しく「そうですか」と微笑んだ。

花陽は海未ちゃんのこの笑顔が大好き。
海未ちゃんの笑顔を見ると胸があったかくなる。
ずっと笑っててほしいなって、思ったんだ。



海未ちゃんに認めてもらうために、
少しでも海未ちゃんの力になるために。

それだけの思いで花陽は勉強も運動も部活も頑張った。



「花陽、最近頑張ってるじゃない」

ある日、真姫ちゃんが髪の毛をくるくるといじりながら褒めてくれた。


「ほ、ほんと?嬉しいなあ……!でももっと頑張らなきゃ」
「まったく……頑張りすぎはダメよ?」
「うん!真姫ちゃんは優しいね」
「べ!別に!ただ、花陽が頑張ってると思ったからよっ」


真姫ちゃんは素直じゃないけど、こうして人のことをよく見てくれている。
花陽は真姫ちゃんのそういうところがだいすき。

ふ、と横を見ると少し不機嫌…というか、寂しそうな、なにか不安そうな顔をした凛ちゃんがいた。


「……凛ちゃん?」
「かよちん、今日一緒に帰ろう?」
「うん、いいよ?」


最近走り込みする為に花陽だけ先に急いで帰っちゃっていたから凛ちゃんとは久しぶりに帰る。


「あ、じゃあ真姫ちゃんも一緒にーー」
「だ、だめっ!!」
「凛ちゃん……?」


真姫ちゃんと喧嘩でもしたのかな……?
考えてる暇もなく凛ちゃんは花陽の腕を引っ張る。


「り、凛ちゃん!?引っ張らないで……!」
「かよちんは今日凛と一緒に帰るの!」
「う、うんわかったから……!」


いつもと様子が違う凛ちゃんを見てたら花陽も不安になってきちゃって。
花陽は心の中で誰か助けてって叫んでいた。


………………




かよちんは、ずっとずっと前から凛の側にいた1番大切な友達。
……1番大切な、「友達」だと思ってた。



ついこの間。
穂乃果ちゃんと絵里ちゃんが付き合い始めて。
女の子同士で付き合うのって、凛にはなんだかピンとこなくて……っていっても男の子と付き合うのもいまいちピンと来ないんだけどね。


でも、付き合い始めた穂乃果ちゃんと絵里ちゃんはすーーっごく幸せそうで。
見ている凛もすーーっごく幸せになっちゃって。


ただ純粋に凛もかよちんとあんな風になりたいなあって思ったんだ。

かよちんの隣に凛がいて、凛の隣にかよちんがいて。
今までときっと変わらないんだろうけど、それでもいつまでも離れなくて。
ずっとかよちんが凛の隣で笑ってくれていたらいいなあ、なんて思ってたしこれからもずっとそうだと思ってた。




だけど、次の日からかよちんは変わった。
いつもより朝早く起きて走って、
いつもより早く学校に行って勉強して、
いつもに増して何倍も練習真剣にやって、
いつもより早く家に帰ってそこから走って
毎日予習復習かかさなくて。


いつの間にかかよちんは遠くに行ってた。

かよちんは、しっかりしてるけど引っ込み思案で声も小さくていつも凛が引っ張らないといけなくて……だけどそんなかよちんが大好きで。



なのに、今凛の目の前にいるかよちんはしっかり"しすぎ"てて。
凛の助けなんかもう要らないような強いかよちんで。

かよちんの口癖の「ダレカタスケテー」もめっきり聞かなくなった。


かよちんはどうしていきなり変わっちゃったのかな、何かあったのかな。
ならなんで凛に真っ先に話してくれないのかな……。

そう思ったらいてもたってもいられなくなっちゃって、かよちんの言葉を遮って強引に一緒に帰った。

帰ったっていうより走った、だけど……あはは。



息を必死に整えるかよちんに何があったのかと問い詰めると、その答えはいたってシンプルで。
だけど、絶対凛には考えもしないような言葉で。

かよちんはにっこりと笑って言ったんだ。





「好きな人ができたの」って。



頭を何かでガンって殴られたような衝撃だった。
一瞬目の前が真っ暗になって、言葉も出てこない。


「凛ちゃん……?」


かよちんの不安げな声で現実に引き戻される。
そこにはやっぱり不安そうな顔をして凛の顔を覗き込むかよちんがいた。



「かよちん……すきなひとって、だれ?」



きっと、かよちんの好きな人は凛じゃない。
もし凛が相手ならあんなに晴れ晴れした顔で笑うわけないもん。
あんなにしっかり、好きな人がいるなんて言うわけないもん。

かよちんのことこんなに知りすぎていなかったら少しは期待も持てたのかなあ。
……辛いな。


かよちんは、凛の目をしっかり見て照れたように笑って、

「花陽は海未ちゃんが好きなの」

って答えた。




……海未ちゃん。
凛なんかよりずっとずっと大人で、しっかりしてて、綺麗で女の子らしくて…頭も良くて……凛が勝てるところないぐらい完璧。
一緒のユニットに所属してる凛だから分かる。

かよちんが好きになるのも無理ない。
だってあんなに素敵な人なんだし……




「り、凛ちゃん……!?どうして泣いてるの!?」



かよちんに言われて凛が泣いてることに気づいた。
ほっぺを触ると確かにそこは濡れていて。
しかも相手がかよちんだから誤魔化しようもなくて。

だから、振り絞った声で凛はいったの。


「かよちんに想われる海未ちゃんは幸せにゃ」って。







……正直、花陽から話があるからと呼び出された時から何処か確信はしていました。


そんなことを言ってしまえば自意識過剰だと思われるかもしれませんが、花陽の行動は鈍感と言われている私にも分かりやすく、想いを寄せられていることは分かっていました。


私自身、花陽が側にいることは決して嫌なことでは無かったし、逆に心地いい気もしていました。



ですが、産まれてから今までずっと穂乃果のことを慕っていたのも事実です。

もちろん、絵里と穂乃果が付き合い始めたのは私にとって凄くショックなことでしたが…今思い返してみるとそこまで辛くなかったように思います。


それは、やっぱり……目の前にいる、この方のお陰で。



嫌なら聞き流してもいい、というくせに
一字一句きっちり、はっきり瞳を見て伝えてくる。

あんなに臆病で、声も小さくて、引っ込み思案だった彼女がこんなにも強い瞳で、自分の意思をはっきりと伝えてくる。



私が幸せになるまで、好きでいてもいいかといういじらしい彼女の愛情表現に心がきゅぅっと締め付けられた。



「花陽…」
「ご、ごめんなさいっ!じゃあ、花陽はこれでー……」


今から私がすることが、ズルいことなのはよく分かっています。
けれど、このまま花陽を帰すのは……私の心が許しませんでした。



気付けば、私は花陽を腕の中に閉じ込めていました。


「!?!?う、海未ちゃ」
「なら、もう花陽は私のこと好きではいてくれませんか?」



腕の中で、花陽が目を見開いてハッと息を飲むのを感じて、言葉を繋げる。



「……こんなにも心が満たされたのは初めてです。今私は幸せです、すごく。

花陽も知っている通り私は穂乃果のことを慕っていましたが、何分恋や愛など本当のところよく分かっていません。

ですが、確かにここにこうして、私の腕の中に花陽がいることは私にとって幸福なことだけは分かります。



もう少しだけ、待っていていただけないでしょうか。
心の整理が付いたら、今度は私から花陽に気持ちをお伝えします。」



微かに震えながら、涙を静かに流しながら、こくこくと何度も首を縦に振る。



「待ちます……っ、いつまででも、花陽は待ってます……!」



嗚咽まじりにいつまでも待っている、と泣く彼女に更に胸が締め付けられて、ようやく私は自分の気持ちを確信して。



「ほんの少しだけ、待っていてください。……今日は本当にありがとうございます。

もう遅いので帰ることにしましょう。送ります」

「え、えぇ!?いいよ、そんな!すぐそこだし……」
「花陽、あなたに何かあっては私の身が持ちません。送らせてください」


あたふたと拒否する花陽の顔にずいっと顔を近づけて少しだけ意地悪をすると、湯気が出そうなくらい顔を赤くして俯きがちに「はい……」と答える。


とても可愛らしい、その姿を見ただけで私の顔は綻んでしまう。





案の定、顔を赤くしたまま無言で少し後ろを歩く花陽を無事自宅に送り届け、私は穂むらへと向かった。







「海未ちゃん!そろそろ来る頃かなーって思ってたよ♪
さぁさぁあがって!」


どこか楽しそうな顔をした穂乃果に招かれ、穂乃果の自室へと足を踏み入れる。


いつもの場所に座ると、向かい合わせに穂乃果が正座をした。


「……なぜ正座なのですか?」
「んー?だって、海未ちゃん穂乃果に大事な話をしに来たんでしょ?

ならちゃんと聞く態度をとらないとねっ」




いつもそんな風に用意周到であれば良いのに、と心の中で悪態をつくけれどそんなのがない方がよっぽど穂乃果は素敵だという考えに至り口に出すのを止めた。


正座をしたまま背筋を伸ばし膝の上の拳を固く握る。
そして、目の前の穂乃果を見つめ



「穂乃果、

私は穂乃果のことが好きでした。」



かつての想い人へ気持ちを告白する。




「小さい頃からずっと穂乃果のことが好きでした。
いつも前向きな穂乃果には日々励まされ、自分も頑張らねばという気力をもらいました。

これからもずっと今まで通り穂乃果のそばにいたいと思っていました。


絵里と付き合い始めたのは、それはもうショックでしたが…それはもう過去のこと。


絵里ならばきっと穂乃果のことを幸せにしてくれるでしょう。」



「うん、穂乃果ね、絵里ちゃんと出逢ってからずっと幸せだよ。
一時はどうなるかと思ったけど……あれも試練だったのかな、って。今思えばいい昔話かな。



海未ちゃん、
海未ちゃんも大切な人を見つけたんだね」



「……えぇ。

不器用ですが、真っ直ぐで純粋な愛をくれる優しい人です。
私は私なりに、これから彼女を愛していこうと思います。


穂乃果、幸せになって下さい」


「海未ちゃんも。
花陽ちゃんと、ずーーっと幸せでいてね」



小さい頃からずっと好きだった穂乃果に想いを告げ、幸せを願い顔を合わせ笑いあう。

ああ、もう私は大丈夫だ。



幼馴染が ずっと一緒 じゃなくなる瞬間はほんの少し寂しいけれど。

それでも今度は愛しい人の手を握ってそれぞれ私達は歩き出すから。

また次にあったときに幸せだよってこうして顔を見合わせて笑えるように。








「じゃあ、またね海未ちゃん!」
「えぇ、また明日学校で」


「花陽ちゃんとの結果教えてね〜!」
「ほ、穂乃果!一言余計です!」

「もう!照れ屋なんだからー」



何気ない会話をして、穂乃果の家を出る。
心は今までにないくらいすっきりしていて、
なんとなく花陽の顔がぽん、と浮かぶ。



ぽん、ぽん、ぽん。
笑った顔、泣いた顔、照れた顔。

どれをとっても魅力的な彼女の表情を思い出すと、途端に花陽に会いたくなった。



時刻はもう夜遅く。
今から行ってもきっと花陽のご家族の迷惑になる。

心の葛藤を繰り広げていると、ポケットの中で携帯が震えた。



そこには、花陽から

『今日は本当にありがとう。
全然予想していなかった海未ちゃんのお返事に未だに心臓が鳴り止みません。

言った通り、花陽はずっと海未ちゃんのこと待っています。
後悔しない道を選んでね。


じゃあ、また明日学校で!』


という内容のメール。



全部目で追う前に、私は花陽の家に向かって走っていた。

初めてかもしれない。
人様の迷惑になるであろう行為と知っていても尚自分の意思を貫くのは。



そうだ、あの時。
穂乃果に失恋して屋上で声を殺して涙を流していた時も、花陽がいた。

温かい腕で私を包んでくれた。
あの時、私は誰かの腕の中にいることの安心感を知った。



思えばあれからいつだって、辛い時には花陽が側にいてくれて。
いつだって、あの柔らかい微笑みで支えてくれていた。


どうして気づかなかったのか。
私は、私はとっくに花陽のことをこんなにも好きになっていたのに。





息を切らして無我夢中で走り、やっと着いた花陽の家の前。


息を整えて、インターホンを押そうとしたその時。


「……海未ちゃん?」


聞き慣れた声が私の動きを制御した。



「凛…」
「海未ちゃん、なんでかよちんの家に……、……!まさか!」


ガッ、と肩を掴まれて目を見開いて詰め寄る凛の気迫に思わず肩がすくむ。


「海未ちゃん、かよちんのこと好きになったのかにゃ!?」
「!?!?」


身構えていた言葉とは180°も違う言葉に肩透かしを食らってしまい、素直に言葉が口をつく。


「そ、そうです……が…?」

「やっぱり……!わああ……凛、すっっごく嬉しい!明日はお祝いだにゃ!!」

「り、凛!そんなに大声を出しては迷惑になります!
それに…恥ずかしいです……!」



自分で再三、自分の気持ちを確認したものの、いざ他人に自分の気持ちを代弁されてしまうと比べ物にならないぐらい恥ずかしい。

私は顔を覆って凛から目線をずらす。



すると、凛がいきなり静かになった。
どうしたものか、と再び凛に視線を戻すと凛は先ほどから一歩後ろに下がったところに立っていて。


「り、凛……?」

「海未ちゃんっ、かよちんをよろしくお願いしますっ……!!」



私の顔をしっかりと見て、頭を下げる。
その行為にも、言葉にも私は驚愕して目を見開いた。


「り、凛!顔をあげて…」

「かよちんはっ!臆病で、引っ込み思案で、泣き虫で声も小さくて、はっきりしなくて……凛から見てもすっごく心配で引っ張ってあげなきゃって思うくらいだけどっ!


でも、誰より可愛くて優しくて、努力だってしてる!最近は海未ちゃんに恋して、すごく頑張ってるよ!

凛がそれを1番の友達として証明する!!
凛はそんなかよちんの笑顔が大好きなの……!

だから、海未ちゃんお願い!
かよちんを幸せにしてあげてくださいっ!!」



……開いた口がふさがらないとは、まさにこのことだと思った。

予想だにしていなかった凛の言葉の数々が、ぐるぐると頭の中をめぐる。

とっさに思い浮かんだことは唯一つ。



「意外……です。てっきり、凛からは花陽のことなど渡さない、と宣戦布告されるかと思っていました…」


そう、
誰から見ても凛は花陽のことが好きだった。
……それは幼馴染としてではなく、想い人として。

花陽は気づいていないらしかったが、同じ幼馴染を慕っていた立場から見れば痛いほどに凛の気持ちが分かっていたつもりだった。


…しかし、こうして凛は私に花陽を任せる、と頭を下げた。
自分の想いに蓋をして、花陽の幸せを願った。



「……凛も、ね。かよちんのこと、大好きだよ。
幼馴染として、とか友達としてとかじゃなく、海未ちゃんと同じ気持ちでかよちんのことが好きだった。


だから、かよちんが海未ちゃんのことを好きって知った時は、なんで凛じゃないの?って思ったし……凄くショックだったよ。


だけどね、凛気付いちゃったの。
凛、海未ちゃんに恋してるキラキラしたかよちんのことも大好きだってこと。


凛はね、かよちんが幸せで、笑顔でいてくれるならそれでいい。
凛は1番の友達としてかよちんの側にいることできるから、やっぱりずーーっと笑ってて欲しいんだ!」




初めて聞く、凛の胸の内に心が打たれる。
こんなにも熱い想いを秘めていたなんて。

綺麗だと、思った。
直向きに花陽のことを想う凛の心が。
幸せをひたすらに願うその心が。



こんな熱い想いを聞いて、頭まで下げられて。
そんな凛の為に、私が出来ることは……



「約束します。
花陽は必ず私が幸せにしてみせます」


……凛に、花陽の幸せを約束すること。

「うんっ!それならもう凛も安心だにゃ♪

あっ、かーよちんっ!!
海未ちゃん来てるよ〜!」



突然、花陽の名前を呼んで2階であろう場所に手を振る凛に心臓がバクンッと跳ねる。


「う、海未ちゃん!?」


花陽も予想していなかったであろう出来事にまた顔を赤くして慌てる。



「えへへっ、じゃあ凛はもう帰るにゃ〜!
かよちんっ、明日詳しく話きかせてね!」

「「も、もう凛(ちゃん)!!」」

「あははっ、二人とも照れちゃって仲良しさんにゃ〜!じゃあね、また明日!」




そう言うと凛は嵐のように去ってしまった。
…そうすると、実質その場には花陽と私の2人なわけで。



「う、海未ちゃんとりあえず上がって……!うち今日親いないから気遣わなくて大丈夫だからね!」



家の前で話し込んでしまったことと、
こんな夜遅くに家に上がることを気にしていた私にとってはかなり好都合な情報が伝えられた。


が、それも束の間。
親がいない環境ということは、今夜は2人きり。ということになる。

下がった頬の温度はまた著しく上がり始めた。




「ご、ごめんね何も無い家だけど…今お茶入れるねっ適当に座ってて!」

「い、いえ…おきになさらず…」

そう言って、花陽も顔を赤くしたままお茶を入れに部屋を出て行ってしまった。





ど、どうしよう。どうしよう。


家にあげたはいいけど、
今夜は家には誰もいないし、こんな時間だからきっと泊まりになるし…!



「ふ、2人きり……」


ぼんっ、と頭の中の熱気が爆発する。



……好きな人と2人きり。
そんなシチュエーションなんて夢にも思わなかった花陽にはいささか……ううん、だいぶハードルが高いラブハプニング……!


……って、思ったけれど。
告白したのはよりによって今日。

これは、とっっても気まずい……。



「お、お待たせしました〜……」
「ありがとう…ございます…」


パッ、と目が合っては
ポッ、と顔を赤くして
バッ、と顔を背ける。


海未ちゃんが家に上がってから、もう何回これセットでやったかな……


そもそも、海未ちゃんはなんで花陽の家に来たんだろう?


告白の御断りに来たのかな…?
んんん!それなら早く言ってほしいよ……!




「ご、ごめんっ……なさい…!」
「…花陽?」


「花陽の気持ち…迷惑だったんだよね…ごめんね、花陽迷惑ばっかりかけて…」
「そんなことありませんっ!!」


「う、海未…ちゃん…?」


「……そんなことありません。

花陽は、今までずっと私の為に頑張ってくれていました。
花陽が居たから乗り越えられたことだってたくさんあるんです。

その一つ一つの優しさが迷惑に感じたことなど一度もありません……!


正直、幼い頃からずっと穂乃果のことが好きでしたので恋愛というものはよく分かりません。
穂乃果が絵里と付き合うことになり、失恋した時はもう誰かを愛するのはやめよう、と思っていました。


けれど、いつからか花陽に支えられていた自分に気付き、側にいたい…花陽にそばにいてほしいと思うようになっていました。


……都合、いいですよね。
すみません、迷惑なら私はもう帰ーー」



「……ごめん、なさい」



迷惑なら帰る、と席を立った海未ちゃんの腕を引いて花陽の腕の中に閉じ込める。



「……一番になれなくても、いいって思ってた。

そばにいて笑わせてあげられれば、って。
少しでも、ほんの少しでも海未ちゃんの支えになれるなら花陽は自分が出来る精一杯のことをしようって決めたの。



だけど、花陽はワガママだね……っ?
海未ちゃんのそんな言葉を聞いたら、花陽の隣で笑っててほしいって思っちゃった…


海未ちゃん、
花陽は海未ちゃんのことが大好きです…
ずっとずっと海未ちゃんの隣で笑っていたいです…っ
ずっとずっと、海未ちゃんに隣で笑っていて欲しいです……っ!」



ぽつり、ぽつりと心の内を明かすともう止まらなくなって。

どんどん、どんどん欲が出て
これじゃあ海未ちゃんのことを困らせてしまうって解ってるのに、花陽の気持ちは止まらなかった。


そんな花陽を今度は海未ちゃんの温かい腕が優しく、強く抱きしめた。


その行為に驚いて、咄嗟に海未ちゃんの顔を見ると、そこには柔らかい微笑みを浮かべた海未ちゃんがいて、確かにこの耳に聞こえた言葉に花陽はとうとう涙が止まらなくなった。









ーー「私も好きです、花陽のことが。」




お互いが、お互いを強く抱きしめて。
遠回りした分、たくさん好きと伝え合って。


花陽の涙腺は壊れてしまったのではないかと思うほど、花陽は泣き続けていて心配になってしまう。


「は、花陽そろそろ泣き止んでください…目が腫れてしまいます…!」

「だ、だってっ、こんな奇跡みたいなこと信じられないよぉ…!夢だったらどうしよう…!」

「ゆ、夢なわけないじゃないですか!」



と、咄嗟に花陽の頬を両手で挟み顔を近づける。
お互いの顔の距離があと数センチしかない、と気づいた時お互いの顔がタコのように真っ赤に染まる。



「す、すみません…っ!」
「は、花陽こそごめんなさい…!」



「こ、こういう時は……き、き、…キ…ス、などするのでしょうか…」

「き、キスぅ!?そ、そんなことしたら花陽どうにかなっちゃうよぉ……!!」

「花陽!あまり大声で言わないでください!破廉恥です……!」

「ううう海未ちゃんが言ったんだよぉ!?」





「「………………、ぷっ……あはははっ」」






「まだ……私達には早いのかもしれませんね」

「そうだねぇ…、……今はこのままでいいんじゃないかな」



目線を下ろすと、
そこには固く握り合わせた私と花陽の手。



「これからずっと一緒にいるのですから、焦らなくていいんです」

「…海未ちゃんって本当、ストレートすぎて時々こっちが恥ずかしくなるよぉ……」

「ふふっ、花陽には負けますよ」




他愛もない会話をして、笑いあって。
今はこれくらいが私達にはちょうどいいのかもしれない。



だって、
私の隣には花陽が。
花陽の隣には私がいる。

それだけで、十分幸せなのだから。

……………………



「それでっ!?それでそれで!?」

「凛!声大きい!花陽の話が聞こえないじゃない!

花陽も!もっと大きく喋りなさい!ってなんで1年の教室に穂乃果がいるのよ〜っ!」

「まぁまぁっ、お気になさらず〜♪花陽ちゃん、続けてっ!!」





「そ、その……付き合うことに…なり、ました…」

「「おおおおおおっ!!!」」
「うるさい……(おおおおっ…!!)」




次の日。
背中を押してくれた凛ちゃん、真姫ちゃん、穂乃果ちゃんに報告会。

3人とも自分のことのように喜んでくれました。



「かよちん、おめでとうにゃ!!本当よかったよ〜!」

「花陽ちゃん、本当おめでとう〜っ!!今度4人で遊びに行こうねっ」

「よかったわね、花陽。
それはそうとあなたの恋人が教室の外でもじもじしてるわよ」



「えへへっ、凛ちゃん、穂乃果ちゃん、真姫ちゃん本当にありがとう……ってええ!?
海未ちゃんがいるのぉ!?

ちょっといってくるね!?」




「「「いってらっしゃーい」」」








「はーっ、本当にかよちん幸せそうだったね!」
「……凛、花陽のことはもういいの?」



「うんっ!!だって、凛の幸せはかよちんが幸せでずーーっと笑っていられることだから!!あんな幸せそうな顔も見れたし大満足にゃ!」

………………



「すみません、いきなり教室におしかけるようなことをしてしまって」

「ううん。大丈夫だよっ。穂乃果ちゃんも来てたし!
それで、用事っていうのは?」



「これを、花陽に渡したいと思いまして……」


そう言って少し照れて顔を赤くした海未ちゃんから手渡されたのは、キラキラ光るビーズのアクセサリー。



「き、綺麗……!これ、海未ちゃんが…?」

「ええ…、といっても絵里からのアドバイス付きですが……愛だけは沢山込めたつもりです!受け取ってもらえますか……?」


「あ、当たり前だよ……っ!一生大事にするね!?
本当に本当にありがとう……っ」

「ふふっ、そんな風に喜んでもらえると作ってよかったと思えますね」



大好きな、大好きな海未ちゃんからのプレゼントに感動しないわけがなかった。

うるうると潤む目を軽く擦って、気を取り直して花陽もバッグの中をあさる。



「花陽もね、海未ちゃんに渡したいものがあるの。

はい、これっ」



「これは……おやき……ですか?」


「うんっ、穂乃果ちゃんに教えてもらったんだあ。
花陽の大好きなお米と、海未ちゃんの好きな穂むらの餡子で作ったの!

よかったら食べてほしいな」


「食べるのが少々勿体無いですが…頂きます」



どきどき、どきどき。
穂乃果ちゃんのお墨付きだからきっとおいしいとは思うけれどやっぱり自分が作ったものを人に食べてもらうというのは緊張してしまう。



「……どう、かな?」
「これは……美味しすぎて、大好物になってしまいそうです…」


「本当に!?嬉しい……!」
「花陽も一口、どうぞ」

「えぇっ!?」


こ、これって間接キスだよね!?
海未ちゃんは気づいてないみたいだけど……
でも、食べないのも変だし…!

んんん!え〜いっ!!


「……ぱくっ!……!〜〜っ!!お、おいひぃ……っ!」
「また、作ってくれますか?今度は花陽の分も」

「うんっっ、穂乃果ちゃんにお願いしておくね!!」



ーー綺麗だと、思った。
誰にも屈せず、ただひたすらに想う人の背中を押す瞳が。



臆病者だった自分が、
彼女のために何かをしたいと立ち上がるほど。



いろんな困難に立ち向かう彼女を側で支えたいと思うほど。


彼女は私に、人を愛することの強さを教えてくれた。



想いはいつだって貪欲で。
求めれば求めるほどきりがなくて。
それでも彼女のそばに居たいと願った。




そして、これからも願う。
愛する彼女の隣で笑えることを。
愛する彼女が隣で笑うことを。




この気持ちに名前をつけるとしたらそれは。



それはきっと……












『海より深い愛』



ーー綺麗だと、思った。
真っ直ぐに瞳を見つめて想いを告げるその姿が。




頑固な自分が、
他人の腕の中で安心感を覚えて泣くほど。



長年想ってきた片恋を終わらせる勇気を出せるほど。



彼女は私に直向きに愛することの強さを教えてくれた。





想いはいつだって我が儘で。
自分勝手に相手を困らせてしまう。
それでも彼女のそばにいることを願った。







そして、これからも願う。
愛する彼女の隣で笑えることを。
愛する彼女が隣で笑うことを。




この気持ちに名前をつけるとしたらそれは。



それはきっと……













『花のように可憐な愛』




花陽「自分にできること」
カプ:うみぱな



これにて完結いたしました。
誤字、脱字、文章の違和感など多々読みづらい点があったと思いますが最後までお付き合いいただいてありがとうございました!


合わせて、前作のほのえりの話も読んでいただければと思います。



次作の参考にさせていただきたいので
読みたいカプ、シチュなど気軽にリクエストいただければと思います〜!
ありがとうございました!





加えて、タイトルの
ラブライブ、が平仮名なことに
今更気づきました……申し訳ありません。




【らぶらいぶ】花陽「自分にできること」



【ラブライブ】花陽「自分にできること」



です。

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