格闘家「やっぱり素手だと限界があるよなァ……」(18)

格闘家「オレたちってこうして体を鍛えてるけどさァ……」シュシュッ

友「うん」グッグッ…

格闘家「やっぱり素手だと限界があるよなァ……」シュシュシュッ

格闘家「──ってわけで、なにか武器を持ちたいんだけどさ」

格闘家「なにがいいと思う?」

友「う~ん……。ナイフなんかいいんじゃないかな?」

格闘家「ナイフか……。うん、いいかもしれねぇな!」



“格闘家”は“ナイフ使い”にレベルアップした!

ナイフ使い「ナイフってのは便利なもんだなァ!」

ナイフ使い「急所を刺すなり切るなりすれば、一発で敵を殺せる!」シュバッ

ナイフ使い「ガードされたって、そこを刺しちまえばいいんだしなァ!」

ナイフ使い「だけど、やっぱりリーチがなァ……」

友「リーチを気にするんなら、剣でも持ってみたらどう?」

ナイフ使い「そうだな。ナイフを剣に持ち替えてみるか!」



“ナイフ使い”は“剣士”にレベルアップした!

剣士「よっ、ほっ、はっ!」ヒュバババッ

剣士「どうだ、サマになってんだろ?」

友「さすがだね! 格闘技をやってたから、飲み込みが早いんだろうね、きっと」

剣士「だけど……ま~だ物足りねぇんだよなァ」

友「それなら、槍でも持ってみたら?」

友「槍なら、剣の間合いの外から一方的に突くことができるからね」

剣士「槍ねぇ……よし、チャレンジしてみるか!」



“剣士”は“槍使い”にレベルアップした!

槍使い「どりゃ!」ビュオッ

友「おおっ!」

槍使い「いい突きだろ?」

槍使い「こないだも、サーベル振り回してる奴を串刺しにしてやったぜ」

槍使い「だが、槍も決して最強とはいえねえ」

槍使い「ヤケクソで剣を投げつけてこられた時は、ちょっと危なかったしなァ」

友「遠距離攻撃といえば、やっぱり弓矢だけど……」

槍使い「弓矢! そういう手もあったか!」



“槍使い”は“射手”にレベルアップした!

射手「……」ギリリッ…

ストンッ!

友「ど真ん中! すごいじゃないか!」

射手「たしかにこいつなら、遠く離れた敵を安全に倒せる!」

射手「だがな、オレはこいつよりもっとすごい武器を持つことに決めた!」

射手「拳銃をなァ……」

友「け、拳銃……!?」



“射手”は“ガンマン”にレベルアップした!

ガンマン「こりゃいいやァ!」

ガンマン「頭か心臓ブチ抜けば、ほぼ確実にオダブツだしよ!」

ガンマン「こないだも矢を放とうとしてきた奴を、サクッと射殺してやったぜ」

ガンマン「拳銃に比べりゃあんなもんオモチャだな」

友「そりゃそうだよ……なんたって拳銃だもん」

ガンマン「だがよ、拳銃でもオレは満足できなくなったんだ」

ガンマン「つうわけで、マシンガンを購入したぜ! これっきゃねぇ!」ガガガガガッ

友「……」



“ガンマン”は“機関銃使い”にレベルアップした!

機関銃使い「マシンガンを乱射しまくった結果、分かったことだが」

機関銃使い「マシンガンもしょせんは戦車にはかなわねェ!」

機関銃使い「ってことで、戦車を購入したぜ!」

友「おおお……」

機関銃使い「こいつでどんな荒れ地にも乗り込んで、大砲でぶっ飛ばしてやる!」

友「が、がんばってね……」

機関銃使い「任せとけって!」



“機関銃使い”は“戦車運転手”にレベルアップした!

戦車運転手「戦車を運転してて、悟ったんだがよォ……」

戦車運転手「やっぱ空から来られちゃ、どうにもならねぇよなァ」

戦車運転手「つうわけで、戦車はやめにして、戦闘機を購入することにしたぜ!」

戦車運転手「レーダーに映らないタイプだから、どんな場所にでも飛んでいける!」

友「戦闘機を手に入れたら、どうするんだい?」

戦車運転手「決まってんだろ? いけ好かないヤツを片っ端から空襲してやる!」

戦車運転手「どこまでもどこまでもマッハで追いかけてなァ!」



“戦車運転手”は“パイロット”にレベルアップした!

友「やぁ、戦闘機の調子はどうだい?」

パイロット「戦闘機? あんなものは処分してしまったよ」

パイロット「もはや、オレが自ら手を下す必要はなくなってしまったからなァ」

パイロット「今のオレの武器は、この肉体でも手にした兵器でもなく──」

パイロット「オレに絶対服従の兵士どもだ! その数は50万以上、今も膨張してる!」

パイロット「今日からはオレのことを“司令官”と呼んでもらおうか」

パイロット「お前もそろそろ体鍛えるのなんかやめて、オレの兵士になったらどうだ?」

パイロット「とはいえ、兵士にしちまったら、こうして気軽に会話できなくなるし」

パイロット「このままでいいか!」

パイロット「ハッハッハッハッハ……!」

友「ハ、ハハハ……」



“パイロット”は“司令官”にレベルアップした!

司令官「親友よ、いかがかな? この帝王タワー最上階からの眺めは……」

友「すごい眺めだね……。世界中を見渡せるようだよ」

司令官「だろ? で、こうやってボタンを押すだけで……」ポチッ

司令官「オレに反抗する愚民どもはキノコ雲とともに吹っ飛ぶ……」

司令官「愚かな奴らだ……」

友「ついに、核兵器をも自在にできるポジションになったんだね」

司令官「そういうことだ」

司令官「念の為、もう二、三発撃ち込んでおこう」ポチッポチッポチッ

司令官「おっと、部下ごとふっ飛ばしちまったが、まァ大した問題ではない」



“司令官”は“独裁者”にレベルアップした!

独裁者「ついにオレは世界最強になった!」

独裁者「誰もオレに逆らえぬ! 誰もオレに歯向かえぬ!」

独裁者「頼みにする武器を変え続けることで、ついに頂点に立ったのだ!」

友「……」

独裁者「今やオレは世界の王……いや“神”を自称しても差し支えなかろう!」

独裁者「人々の心にいるとか、概念として存在するとか、そんな曖昧なものではない!」

独裁者「現実に! 今この場に! 実体として、“神”が誕生したのだ!」

独裁者「人類の歴史始まって以来の快挙だ! ハッハッハッハッハ……!」

友「そうか……。ついに君は神になってしまったんだね……」

独裁者「そして、この核スイッチは神が持つ裁きの杖というわけだな!」ポチッポチッポチッ



“独裁者”は“神”にレベルアップした!

友「君は本当に変わってしまった……」

友「君と格闘技で汗を流していたあの日々が、まるでウソのようだよ」

神「だろう? 変わったというより、進化したといって欲しいがね」

友「今の君は誰よりも偉く、誰よりも尊く、誰よりも強いが──」

神「そう褒めるなよ。照れるだろう」

友「誰よりも醜い……!」

友「だから、神話に登場する神殺しとかじゃない、本当の“神殺し”の汚名……」

友「ボクがかぶるッ!」

神「え?」

ドゴォッ!



“神”は素手で殴り殺されてしまった!

おわり

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