西住みほ「サンタクロースが戦車に乗ってやってきます」 (42)

大洗女子学園 格納庫

沙織「もうすぐイヴだね。はぁー、今年も素敵な聖夜を過ごすんだぁ」

優花里「おぉ! 武部殿、ついに特定の男性が!?」

麻子「あり得ない」

華「去年はわたくしと一緒に大きなケーキを食べましたね、沙織さん」

みほ「そっか。もうクリスマスかぁ」

麻子「今年はみんなでクリスマスパーティーをすると会長が言っていたな」

みほ「え? そうなの?」

優花里「はい! とても張り切っていましたよ!」

みほ「そうなんだ。楽しみ」

華「どのような料理が並ぶのか考えるだけで胸が躍りますわ」

桃「西住!! いるか!!」

みほ「あ、はい」

桃「話がある。生徒会室まで来てくれ」

みほ「分かりました」

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生徒会室

桃「会長、連れてきました」

みほ「お待たせしました」

杏「急に呼びつけて悪いね。どうしても西住ちゃんに聞いておきたいことがあってさ」

みほ「なんでしょうか?」

柚子「西住さん、あの、サンタクロースの存在って信じてる?」

みほ「えぇ?」

桃「どうなんだ?」

みほ「あ……う……えーと……」

杏「正直に言ってくれていいよ」

みほ「い、いればいいなぁとは思いますけど、私のところにはきたことがなくて……」

杏「つまり信じてないってわけだ」

みほ「た、端的に言えば……」

桃「なるほど」

みほ「あ、でも、完全に信じてないわけじゃないくて……いるかもしれないし……」オロオロ

杏「あははは。ごめんごめん、そんな気を遣わなくていいから。河嶋も去年やっとサンタはいないって分かってくれたし、あたしたちはサンタを信仰してないよ」

桃「去年ではありません!」

柚子「今年の2月ぐらいまでは信じようとしてたもんね、桃ちゃん」

桃「中学3年までだ!!」

みほ「それで……?」

杏「ああ、ごめんよ。西住ちゃんがサンタクロースを信じてたら頼めないことなんだよねぇ」

みほ「どういうことですか?」

杏「クリスマスパーティーの話を聞いた?」

みほ「はい。会長が企画しているとか。でも、学園行事の一つではないんですか?」

杏「学園では毎年やってることとは別だ。戦車道メンバーだけでパーティーしようって思ってさ」

みほ「私たちだけで……」

杏「まぁ、ここまで言えば察しの良い西住ちゃんならわかるだろうけど、あたしたちがサンタクロースになってみーんなにプレゼントを配ろっかなってね」

柚子「勿論、みんなには内緒で」

桃「協力してくれるか?」

みほ「はいっ。私でよければよろこんで」

杏「よぉーし。西住ちゃんがいるなら百人力、戦車に翼だ」

みほ「具体的にどう配るのか決まっているんですか?」

桃「作戦についてはこれから練るつもりだが、基本的には夜中にそれぞれの寮へ忍び込み枕元にプレゼントを置いていくことになるだろう」

みほ「えっと、忍び込むって……どうやって……」

杏「合鍵ならここにあるよ」ジャラ

みほ「あ、合鍵!?」

杏「寮についてはうちらの管轄でもあるから」

みほ「は、はぁ……」

柚子「べ、別に、ほら、悪いことをするつもりはないし、ね?」

みほ「勝手に忍び込むのって……あまりいいことじゃないような……」

桃「では、何か、全員でどこかに泊まり、雑魚寝させるのか」

みほ「それは企画した段階で私たちの意図がバレちゃいます」

桃「だろう。それに、クリスマスイヴは住居侵入が許される日でもある」

みほ「許されないような……」

杏「まぁまぁ、夢を守るためだ。大目にみてよ」

>>5
桃「だろう。それに、クリスマスイヴは住居侵入が許される日でもある」

桃「だろう。それに、クリスマスは住居侵入が許される日でもある」

みほ「夢を守るためって……もしかして……」

杏「そう。我が大洗戦車道の受講者にはサンタを信仰している者が数名いるんだよねぇ」

みほ「そ、それは誰か分かっているんですか……?」

杏「かわしまぁ」

桃「はっ。西住、このホワイトボードを見てくれ」

みほ「はい」

桃「我々で調査した結果、ここに名前のあるものがサンタクロースの存在を信じていることが分かった」

柚子「あれぇ? 桃ちゃんの名前がないよぉ?」

桃「私はもう違うと言っている!!!」

みほ「こ、こんなにぃ!?」

杏「そう。あんこうチームからは秋山ちゃん、アヒルさんチームは全員、カバさんチームからはカエサルちゃん、ウサギさんチームからは阪口ちゃん」

桃「それからそど子とホシノ。計9人だ」

柚子「ただ、これは今分かっているだけだからこれから増える可能性もあるの」

みほ「こんなにいたら隠すのが大変なような気も……。それに誰かが口を滑らしたら……大事に……」

杏「西住ちゃんはさっき私たちに気を遣ってくれた。多分さ、信じてるなんていったら周りは全員その純粋な夢を壊さないようにしてくれると思うんだよね」

みほ「……」

柚子「みんな優しいし、きっと大丈夫」

みほ「河嶋さん」

桃「なんだ?」

みほ「今はサンタクロースの存在を信じていないと言っていましたけど、どうしてですか?」

桃「どうしてもなにも、サンタクロースなどいない」

みほ「でも、いる可能性もあります」

桃「な、なに……?」

みほ「小さい頃、枕元にプレゼントが置かれていたことがあったんですね?」

桃「あ、ああ。あれも両親が……」

みほ「サンタクロースではないという確証はあるんですか?」

桃「え……」

みほ「そのプレゼントをご両親が置くところを直に見たことがあるんですか?」

桃「な、ないが……」

みほ「だったら、サンタクロースだったかもしれませんよ?」

桃「サ、サンタさんはいるのぉ、柚子ちゃん?」

柚子「どうなんだろうね」

杏「そういうことか。口で信じていないと言っていても心では信じている子もいる」

みほ「はい。周囲の意見に合わせている場合も考えないと大惨事になると思います」

杏「そこまでは考えてなかったなぁ。危ない危ない」

みほ「みんなには内緒にするとはいえ、実行する場合は細心の注意が必要になることが想定されます」

杏「そうだなぁ。とはいえ冷泉ちゃんや澤ちゃんが信じているとは思えないけど」

みほ「それは分かりません。麻子さんだって信仰していることも……」

杏「うん。気は絶対に抜けないね。信じてないからってぞんざいにすることは許されないな」

みほ「プレゼントはどうするんですか?」

杏「悲しいけど予算には限りがあるからね。こっちで勝手に用意させてもらうよ」

みほ「一応、みんなに欲しいものを聞きませんか? 聞けばサンタの存在を信じているかどうか分かるかも知れません」

杏「おぉ。いいねぇ。欲しいものが現実的なほど信じてない可能性が高いしな。上手くいけば協力者を増やせるね」

桃「サンタさんは……いる……いない……いる……」

柚子「桃ちゃん、花占いでサンタの存在を決めちゃいけないよ」

格納庫

杏「というわけで、今からサンタさんに欲しいものを各々書いてくれー」

カエサル「いきなりだな」

梓「急にどうしたんですか?」

ナカジマ「書けばサンタさんに届けてくれるんですか?」

杏「うん。50円切手貼り付けて送っとくよ」

ホシノ「バカな。200円分の切手じゃないと届かないはず」

桂利奈「あれ? 切手なんていらないんじゃなかった?」

あや「しらない。そうなの?」

桂利奈「いつもお母さんに渡すけど、そんなのなくても届くって言ってた」

優希「桂利奈ちゃん、かわいぃ」

あゆみ「ちょっと、そういうこと言わない」

優花里「あの!! 私は既にサンタクロース殿宛に手紙を出してしまったのですが!! どうしたらいいでしょうか!!」

典子「欲しいものは決まっている!! せーの!!」

あけび・忍・妙子「「バレーボール1年分!!」」

みほ「(想像以上に本気なんですね)」

柚子「(ね? 秋山さんやホシノさんは分かりやすいでしょ?)」

華「サンタクロースですか……困りましたわ……」

みほ「あ、あれ? 華さん、どうしたの?」

華「わたくし、お母様からサンタクロースは存在しな――」

みほ「うわぁぁー」ガバッ

華「むぐっ!?」

沙織「なになに、どうしたの?」

麻子「珍しいな、西住さんが奇声をあげるなんて」

みほ「あはは、な、なんでもない、よ」

沙織「そう? なら、いいけど。麻子、なんて書く?」

麻子「サンタか。私は信じていないからな」

沙織「えー? そうなんだ」

麻子「本当にいるなら、とっくに両親をいきかえ――」

沙織「ま、まこ!! 帰りにアイスでも食べてかえろう!! うん!! 寒いときに食べるアイスも美味しいから!! よーし、決定!!」

麻子「ああ、すまん。そんなつもりで言ったんじゃない。ただのサンタに対する愚痴だ」

沙織「いやいや、今日は晩御飯も一緒に食べよう。そうしよう」

麻子「気にすることないのに」

華「みほさん、一体なんですか?」

みほ「しーっ。迂闊にサンタクロースはいないとか言っちゃダメ」

華「あ……。そうですね。楽しみにされている方も多いようですし。申し訳ありません。配慮が足りませんでしたわ」

みほ「……ところで、華さんはサンタクロースのこと信じてないの?」

華「はい。あれは5歳か6歳のときだったと思います。周りのお友達がサンタクロースにプレゼントを貰ったと言っているのがとても不思議でした」

みほ「どうして?」

華「わたくしにはそういう貰い物がなかったので」

みほ「あぁ……」

華「そこでお母様に訊ねたのです。サンタクロースとは何者ですか、と。するとお母様は言いましたわ。架空の存在です、と」

みほ「そ、そうなんだ……」

華「お母様もすぐにそう教えられたようですわ。五十鈴家はそういう家柄だったのでしょう」

みほ「華さん……」

杏「かわしまぁ」

桃「はい。――五十鈴、こっちにこい」

華「なんでしょう?」

桃「話がある」

華「わかりました」

みほ「華さんは少しも信じてなさそうですね」

杏「どちらかというと信じることすらできなかったって感じだねぇ」

みほ「それはそれでなんだか寂しいというか……」

杏「まぁ、人それぞれだから。って、そういう西住ちゃんはどうなの?」

みほ「え? 何がですか?」

杏「家柄は五十鈴ちゃんと似てるところもあるし、どうなのかなって」

みほ「わ、私のところは普通です。普通」

杏「普通なんだ」

みほ「はい。別に何が特別とかないです。私は自然とサンタはいないんだなって思うようになりました」

杏「ふぅん。ま、そういうもんだよね」

優花里「カエサルどのぉ!! どうしたらいいでしょうか!! 私、二度も手紙を書いてしまったらサンタクロース殿に嫌われてしまうでしょうか!?」

カエサル「いや。むしろ熱意が伝わっていいかもしれない」

優花里「なるほど!! そういう考え方もできますね!! では、書きます!!」

左衛門佐「なに書いてるの?」

エルヴィン「み、みるな!!」

左衛門佐「どうして? みせてーみせてー」

エルヴィン「やめろぉ!!」

おりょう「書いたぜよ」

左衛門佐「なんて書いたんだ?」

おりょう「龍馬が愛用していたS&Wモデル2アーミー33口径ぜよ」

左衛門佐「そうか! そういうのでいいのか!!」

エルヴィン「何を書くか分からなかったのか」

杏「はいはーい、あと10分で集めるから早いところ書いてくれー。相手はサンタなんだから遠慮するなー」

典子「遠慮なしでいいのか、ならバレー部の部室も頼んでみる?」

妙子「その前に戦車道全国大会二連覇っていうのはどうでしょうか、キャプテン」

典子「バカを言うな!! 優勝はサンタさんの力を借りて手に入るものじゃない!!! 優勝は私たちの力で手に入れるものだ!!!」

妙子「はっ!?」

典子「近藤!! 次にそんなことを言ってみろ!! サンタさんはもうプレゼントを届けてくれないぞ!!」

妙子「そんなの嫌ですぅ!!」

典子「サンタさんに謝れ!!」

妙子「サンタさん!! ごめんなさい!!」

みどり子「アヒルさんチームは書けたの?」

忍「もう少し待ってください!!」

あけび「もうちょっとだけ悩ませてください!!」

みどり子「時間はないから早めにね」

ホシノ「うーん、やっぱりさ、サンタさんも大変だろうから軽いものがいいと思う」

ツチヤ「例えば?」

ホシノ「衣服が無難かな」

スズキ「いいかも」

ナカジマ「それじゃあ、季節も季節だし手袋とかマフラーにしようか」

杏「んじゃ、かいしゅー。あつめてー」

みほ「猫田さん、もういいかな?」

ねこにゃー「あ、う、うん。どうぞ」

みほ「ありがとう」

ねこにゃー「あ、あの、西住さん……その……」モジモジ

みほ「なに?」

ねこにゃー「み、みないでね……はずかしいから……」

みほ「う……うん……」

ねこにゃー「ありがとう」

みほ(ごめんなさい、猫田さん。私は見ないけど、会長は見ちゃうの……)

ももがー「ドキドキするなり!」

ぴよたん「うん。本当にもらえるとうれしいなぁ」

ねこにゃー「きっとサンタさんがかなえてくれるはず」

ももがー「うん!」

みほ(アリクイさんチームはみんな信じてるのかな……?)

生徒会室

柚子「五十鈴さん、ごめんね。サンタ役をやる以上、慎重にならざるを得なくて」

華「いえ。こういうことは初めてで楽しいです。小山先輩、どういう風に仕分けしたらいいのでしょうか」

柚子「えっとね。お願い事が現実的なのと非現実的なのに分けてくれるかな?」

華「このティーガーの履帯10枚はどちらになるのでしょうか?」

柚子「非現実で」

華「はいっ」

杏「河嶋はなんて書いたの?」

桃「書いてません」

杏「西住ちゃんは?」

みほ「あ、えっと……ボコのぬいぐるみを……」

杏「おぉ。そうなんだ」

華「あのぉ、鎧兜一式というのは?」

柚子「非現実でいいよ。というか悩むようなものじゃないと思うけど」

華「そうですか? これぐらいなら家にいくつもあるので」

杏「結果発表ー。発表してみて」

柚子「分かりました。それでは現実的な願いを書いた人から」

みほ「あの、ちょっとお手洗いに……」

桃「ああ、分かった」

みほ「すみません」

柚子「冷泉さん、さつまいもアイス。澤さん、ベストセラー小説。宇津木さん、くまのファンシーグッズ一式。山郷さん、骨盤ホームシェイパー」

華「レオポンさんチームの皆さんは手袋とマフラーと書いています」

杏「……他には?」

柚子「終わりです。あとは非現実的なお願いが多くて」

桃「おかしい。ホシノは信じているはずだ」

柚子「信じているからこそこういうお願いにしたのかも」

杏「見込みが甘かったか。お願い事で分かるもんじゃないってことか」

華「あの、非現実的なお願いのほうなのですが違いが見えてきました」

桃「違い?」

華「はい。今から読み上げます」

華「優花里さん、ティーガーの履帯10枚。磯辺さん、近藤さん、佐々木さんはバレーボール1年分とバレー部の部室。カエサルさん、西洋の甲冑。左衛門佐さん、鎧兜一式」

桃「どれも金がかかるな」

華「次です。沙織さん、素敵な恋人。エルヴィンさん、車長としての才能。おりょうさん、坂本龍馬が愛用していた銃(本物)。大野さん、絶対に割れない眼鏡。河西さん、恵まれたバスト」

杏「もしかして……」

華「カモさんチームは世界の人へ向けて風紀を乱さない心。アリクイさんチームは戦車の実力。以上です」

柚子「ええと、お金で買えないものばかりだね」

桃「これの意味するところはなんだ?」

みほ「すみません」

杏「おかえり。うーん、そうだなぁ。お金で買える物をお願いしている子たちはもしかしたらサンタクロースはいないと考えているかもしれないねぇ」

柚子「ありえるでしょうか。秋山さんが信じていないとなったら、あれは演技ということになりますけど」

みほ「優花里さんがそんなことをするとは思えませんけど」

杏「こう考えることもできるな。自分にいてくれと言い聞かせている」

華「信じたいけれど信じることができないということですね」

杏「もう存在を認めないと一蹴しちゃうよりはクリスマスを楽しんでるともいえるね」

みほ「……」

格納庫

優希「ねえねえ、やっぱりさっきのって会長がプレゼントを用意す――」

梓「ちょっと!!」グイッ

あゆみ「こらこらこら!!」グイッ

優希「ふむぅ!?」

桂利奈「どうしたのー?」

あや「なにしてるの?」

梓「ううん。なんでもない。桂利奈ちゃんとあやはそのまま整備続けて」

桂利奈「うん!」

あや「はぁい」

梓「優希ちゃん、そういう話は二人がいないところでしないと」

あゆみ「二人の夢を潰すつもり?」

優希「えぇ? 桂利奈ちゃんもあやも信じてるの?」

梓「見ればわかるでしょう」

優希「ごめぇん」

>>10
>>20

表記ミス

優希→優季

あゆみ「桂利奈ちゃんの願い事知らないの?」

優季「うん。なんて書いてあったの?」

梓「確か今年はお母さんにプレゼントを渡してあげてくださいとか」

優季「わぁ……」

あゆみ「大人がもらえないのは不公平だからとか言ってたよね」

梓「うん。すごいよ」

優季「桂利奈ちゃんのこと守らないとぉ」

あゆみ「でしょ? だから、軽はずみなことは言っちゃダメ」

優季「はぁーい」

紗希「……」

優季「そういえば紗希ちゃんはどうなのかなぁ?」

あゆみ「あー、聞かないなぁ」

梓「信じてそうでもあるけど」

あゆみ「意外とそういうのには興味なかったりするかも」

紗希「……」

生徒会室

杏「とりあえず、冷泉ちゃんや澤ちゃんは協力者として引き入れても問題はなさそうだねぇ」

桃「説明をしてきますか」

杏「そうだな。頼むよ」

桃「分かりました」

柚子「7人いればなんとかなりそうですね」

華「……」

みほ「華さん、何を見てるの?」

華「これを」ペラッ

みほ「これ、阪口さんと丸山さんの?」

華「はい。欲しい物ではなくてお願いごとなので仕分けの際に外しました」

みほ「阪口さん、いいこと書いてる……」

華「丸山さんもです。これは責任重大ですわ」

みほ「……か、河嶋さん!! 待ってください!!」

桃「なんだ?」

みほ「これ以上の協力者は不要です。私たちだけでやりましょう」

桃「しかしな、人数は多いほうがいいだろう」

柚子「そうそう。できるだけ時間を合わせて大勢に渡さないと」

杏「そうすることで私たちのアリバイも作れちゃうしな」

みほ「多少厳しくなってもやりましょう。私がどう配ればいいか考えます」

華「わたくしもみほさんに賛同します」

桃「だが……」

みほ「お願いします」

杏「まぁ、西住ちゃんがそこまで言ってくれるなら、それでいいとおもうよ」

みほ「ありがとうございます」

柚子「だけど、急にどうして?」

みほ「そうしたほうがよりサンタクロースらしいと思っただけです」

杏「そっか。分かった。んじゃ、西住ちゃんをサンタ隊の隊長に任命する。よろしくね」

みほ「はい!! サンタやります!!」

杏「よぉーし。サンタのコスチュームとか取り寄せないとねぇ」

通学路

沙織「これからアイスクリームを食べにいこー!!」

麻子「おー」

優花里「私もお供します!!」

沙織「みぽりんと華も行くでしょ?」

みほ「え? あ、えっと、ごめん。今日は少しやることがあって」

華「わたくしも遠慮しておきます」

優花里「そ、そうですかぁ。残念ですぅ」

みほ「ごめんね。この埋め合わせは必ずするから」

華「期待していてください」

みほ「は、華さんっ」

沙織「よくわかんないけど、用事なら仕方ないかぁ。それじゃ、また明日ね」

みほ「本当にごめんね。それじゃ、さよなら」

華「さようなら」

麻子「ああ、気をつけてな」

沙織「用事ってなんだろう? この時期に用事ってことは、男?」

優花里「西住殿は有名人ですからね。あり得ないこともないかと」

沙織「えー!? やだーもー!! みぽりんに先を越されちゃうなんてー!!」

麻子「沙織より可能性は高いだろう」

沙織「なによ!! 麻子まで!! こうなったらクリスマスまでに世界が羨むような彼氏をゲットしちゃうんだからぁ!!」

優花里「一週間もないですが、間に合うのですか?」

沙織「間に合わすのよ」

優花里「がんばってください。応援してます」

沙織「ありがと、ゆかりん!! 出来たら真っ先に紹介するからね!!」

麻子「……」

沙織「麻子ー、はやくいこー。アイス、食べるんでしょ?」

麻子「ああ」

優花里「何か考え事ですか?」

麻子「この時期の用事は他になにがあるのかを考えていただけだ。……だが、沙織の言ったとおりかもしれないな」

沙織「マジ!? 本当だったらショックなんだけど!!」

西住宅

華「これが大洗学園艦の地図になります」ペラッ

みほ「みんなの寮はここと……ここ……それからここ……」

華「これを最短の線で結ぶと……」カキカキ

みほ「やっぱりかなり蛇行しちゃう。配り終わるまでの時間はどう甘く見積もっても2時間は掛かりそう」

華「……やはり協力者は必要なのではありませんか? 麻子さんは既に感づいていると思います」

みほ「ううん。絶対に私たちだけで成功させなきゃ」

華「みほさんの気概は素直に尊敬いたします。しかし、現実問題として時間の制約があります。もし顔は見られずとも姿を見られてしまった場合、言い訳ができなくなります」

みほ「分かってる。会長も言っていたけど同時刻に違う場所で姿を見られたほうがサンタっぽいし、私だってそうできればいいとは思うけど」

華「プレゼントを皆さんに聞いた本当の理由は、生徒会の作戦に気づく人がどれだけいるか確かめるためだったのでは?」

みほ「そうだけど……」

華「でしたら協力者を得ましょう。確かに丸山さんの願いを私たちは見てしまいました。ですが、そこに拘るあまり失敗してしまっては本末転倒といえます」

みほ「華さん。ごめんなさい。でも、私はどうしてもやってみたいの」

華「みほさん……」

みほ「私もね、丸山さんと同じ気持ちだから」

華「分かりましたわ。みほさんのために、できる限りのことはさせてください」

みほ「ありがとう、華さん」

華「しかし、問題は山積していますね。走って配るにしても限界がありますし、わたくしは運動が苦手で……」

みほ「あ、そういえば華さんって体育が苦手なんだよね」

華「はい。じっとしているのは得意なのですが」

みほ「……そうだ!」

華「どうされました?」

みほ「ここからスタートして……こういって……カエサルさんたちにプレゼントと置いて……」カキカキ

華「そこからですか?」

みほ「よし!! これなら1時間も掛からない!!」

華「みほさん、このルートはまさか……」

みほ「うん。戦車を使う」

華「危険では。戦車の振動でみなさんが目を覚ましてしまうかもしれませんし」

みほ「でも、これしかないと思う。華さん、力を貸して」

華「……はい。わたくしはみほさんを信じます」

武部宅

沙織「メールぐらいならきっとみぽりんも華も困ったりしないよね? ね?」

麻子「さぁ、困るんじゃないか」

沙織「あー! やっぱり困っちゃうかー!! 親友を困らせたくないし!! でも、確認をしておきたいし……!!」

優花里「武部殿は何をそんなに躊躇しているのですか?」

沙織「ゆかりん。いい? もし、もしもだよ。みぽりんが……部屋で……」

優花里「はい?」

沙織「ダメ!! なんか想像しちゃうから!! ナシ!!」

優花里「1人だけ楽しそうですぅ」

麻子「そうだな。そろそろ帰るか」

優花里「では、私も」

沙織「あれ? もう帰っちゃうの」

優花里「親が心配しますから。武部殿、ごちそうさまでした。本日の夕食も絶品でした」

沙織「いえいえ、お粗末さま」

麻子「おやすみ、沙織。ゆっくり悩め」

優花里「やはり武部殿の料理の腕はすごいですね。どうしてあれで恋人ができないのか不思議です」

麻子「沙織の場合、己を磨くことに専念しすぎて、出会う努力をしてないからだろうな」

優花里「な、なるほど。流石、冷泉殿。的確な状況判断です」

麻子「それは西住さんと五十鈴さんも同じだな」

優花里「確かにそうですね」

麻子「相手からアプローチがあれば別だが、女子高では求めていかないと出会いも少ない」

優花里「というと?」

麻子「沙織が言ってた予想は外れている。西住さんと五十鈴さんは他の用事だったんだろう」

優花里「おぉ。少し安心しましたぁ。では、用事とは実家のことでしょうか。年末ですし、家元となると色々大変そうですよね」

麻子「……秋山さんはサンタクロースを信じているか?」

優花里「はい!! 勿論ですぅ!! 毎年、クリスマスの朝には枕元にプレゼントが置かれていますからぁ!!」

麻子「本当に?」

優花里「本当です」

麻子「私は一度も信じたことがない。居る訳がないと考えている」

優花里「れ、冷泉殿……?」

麻子「秋山さんだって本当は分かっているんじゃないか」

優花里「な、なにがですか」

麻子「サンタクロースの正体についてだ」

優花里「それは赤い服をきたおじいさんが」

麻子「好奇心旺盛な秋山さんがサンタの正体を知ろうとしていないわけがない」

優花里「うっ……」

麻子「調べたいことができればコンビニの制服まで手に入れ、コンビニの定期便に忍び込むほどの行動力がある。それなのにサンタクロースの正体を調べていないのは不自然だ」

優花里「……」

麻子「信じているからこそ、プレゼントが置かれる瞬間を見てみたいと思うはず。違うか」

優花里「ど、どうしてそんなことをいうのですか……」

麻子「やはりサンタの存在を信じているわけではないんだな」

優花里「はい……。でも、こうしていると両親も喜んでくれますし、それにサンタクロースが本当にいないとは誰も証明ができないはずです!!」

麻子「よかった」

優花里「な、なにがですか?」

麻子「私の推測が間違っていたら、どうしようかずっと考えていた。当たっていてよかった……」

優花里「どういうことですか?」

麻子「危うく友達を失いかけた……」

優花里「冷泉殿、説明してください。そこまで考えていたのなら訊かないと言う選択肢もあったはずですが」

麻子「恐らくだが、西住さんと五十鈴さんが困っている」

優花里「え?」

麻子「誰にも相談できないことをやろうとしているはずだ」

優花里「それは……」

麻子「今日、唐突にサンタから欲しいものを書かされただろう」

優花里「やはり、あれはプレゼントをリサーチしていたわけですか」

麻子「いや。それは無理だろう。秋山さんはなんて書いたんだ?」

優花里「私はティーガーの履帯10枚と書きました。もらえないのは分かっていたので。冷泉殿は?」

麻子「私は書いていない。信じていないからな」

優花里「そんな。それだとかえって西住殿たちが困るのでは?」

麻子「私は気づいているから協力してもいいというサインのつもりだった。直接協力すると書くのは沙織が見ていたからできなかったんだ」

優花里「では、西住殿は冷泉殿のメッセージに気づいていないということでしょうか」

>>34
麻子「いや。それは無理だろう。秋山さんはなんて書いたんだ?」

麻子「いや。それは違うだろう。秋山さんはなんて書いたんだ?」

>>34
優花里「私はティーガーの履帯10枚と書きました。もらえないのは分かっていたので。冷泉殿は?」

優花里「私はティーガーの履帯10枚と書きました。もらえないことは分かっていましたがなんらかの指標になればと思って。冷泉殿は?」

麻子「それもないはずだ。西住さんたちが知りたかったのは、欲しいプレゼントの傾向だけでなく、サンタの存在を信じてるか否かというのもあったはず」

優花里「何故そうなるのですか」

麻子「会長が言っていただろう。書いたものはサンタに送りつけると。そこでの反応も見ていたに違いない。秋山さんやホシノさんのような人を」

優花里「そういう意図があったんですか!? では西住殿や生徒会のみなさんはもしかして……

麻子「この時期に用事。つまりはサンタクロースの準備に他ならない」

優花里「だったらどうして冷泉殿に声がかからなかったのでしょうか。我々にプレゼントを配るなら協力者は多いほうがいいはずです」

麻子「最低限の人数でやろうとしているのだろうとは考えたが、それだと失敗するリスクが高くなるし、何も書かなかった私に対してあえて声をかけないのもおかしい」

優花里「わかりました!! きっとあれですよぉ!! 西住殿たちはもう一度サンタクロースの存在を信じさせたいがために私たちには秘密にしているのですぅ!!」

麻子「そうか。……では、私が秋山さんにこうして話してしまったのは完全に失策だな」

優花里「あ……」

麻子「……すまない」

優花里「あ、いえ!! しかし!! 知ってしまった以上はじっとしていられません!! 西住殿のところへ行きましょう!!」

麻子「ごめんなさい」

優花里「気にしてませんから!! 冷泉殿!! さぁ、パンツァー・フォー!!」

麻子「私はただ秋山さんと一緒に西住さんのお手伝いに行こうと誘いたかっただけで……夢を壊すつもりなんて……」

ありえないミスをしてしまっていたので訂正
冷泉の願いごと書いてた
忘れてくれ


>>18
柚子「冷泉さん、さつまいもアイス。澤さん、ベストセラー小説。宇津木さん、くまのファンシーグッズ一式。山郷さん、骨盤ホームシェイパー」

柚子「澤さん、ベストセラー小説。宇津木さん、くまのファンシーグッズ一式。山郷さん、骨盤ホームシェイパー」

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