平沢「扶桑皇国のヒラサワです」【平沢進×ストライクウィッチーズ】 (196)

1944年春 ブリタニア

ミーナ「お疲れさま、サーニャさん」

サーニャ「……」

エイラ「寝ぼけてて聞こえてないみたいだナ」

ミーナ「そうみたいね」

エイラ「隊長、このところ毎晩サーニャを哨戒に出してるじゃないカ。いくらサーニャが夜間戦闘のエキスパートだからっテ、かわいそうダ」

ミーナ「……分かっているわ。実はそのことで話があったんだけど」

エイラ「話?」

ミーナ「これから上層部にかけあって、ナイトウィッチを増員してもらえるようお願いしてみるわ。だから、あと少しだけ頑張ってって」

エイラ「ほんとカ!? 増員ってブリタニアから来るんだロ? じゃあすぐだナ」

ミーナ「それはどうかしらね。私たちの上にいるのがマロニー将軍でしょ。彼は自国のウィッチをここに提供したくないようだから」

エイラ「……そうだったナ。だからリーネなんてお荷物をよこしテ――」

ミーナ「エイラさん」

エイラ「……ごめんなさイ」

ミーナ「ともかく、そういうことなの。即戦力になりそうなナイトウィッチを見繕ってもらえるといいんだけど」

エイラ「分かっタ。サーニャにも伝えておくゾ」

ミーナ「よろしくね、エイラさん」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419521836

????年

501統合航空戦闘団に欠員ありとのこと。
魔女が不足しているようですが、あいにくGazioではそういったものは取り扱ってございません。
嵐の海にあるといいます。

しかしながらこのまま黙っていては、怪異のパレードを許すことになる。
地球ネコが空から消えるのはよろしくない。
あ、ポチもいた。

おや、もうこんな時代。

ようやくアップデート完了。
これで彼女らが困り果てることはないでしょう。
私はクワズイモの世話があるから行けない。クワズイモに面倒を見てもらうから行けない。
故にキミを遣わす。ヒラサワの指示がなくとも、数多の時を渡り歩いたキミなら何を成すべきかは分かるはず。

世界は相変わらずの喧騒続きだが、
キミの進化の度合い、二歩と半分。
今回はもっと賢く、戦っていただく。

「はい」

じゃな。

1944年夏 ブリタニア

坂本「お ま た せ」

ミーナ「ずいぶん長いこと戦列を離れてくれたわね」

坂本「すまんすまん。だが収穫はあったぞ」

ミーナ「……その子が美緒イチオシの?」

坂本「そうだ。宮藤、彼女が我々ストライクウィッチーズを取りまとめるミーナだ」

芳佳「始めまして、宮藤芳佳といいます。 ウィッチなんていきなりのことでよく分からないことばかりですけど、皆さんについていけるように精一杯頑張ります!」

ミーナ「宮藤? それって」

坂本「ああ、宮藤博士の娘だ」

ミーナ「そう……宮藤さん、お父さんのことは……」

芳佳「……ここに来る前、お墓に手を合わせてきました」

芳佳「でも私、父はどこかで生きてると思うんです。欧州に来たのも、父から手紙が届いたからで……」

ミーナ「手紙ですって? そんなこと……」

坂本「私もこの話を聞いたときは耳を疑った。しかし、宮藤の元に届いたのは紛れもなく博士の字で書かれた手紙だ」

ミーナ「……何か事情がありそうね。まあ、それはそれとして、宮藤さん。あなたの参加を歓迎するわ、ようこそストライクウィッチーズへ!」

芳佳「よろしくお願いします!」

ミーナ「ところで美緒、もう一人は?」

坂本「ん? なんのことだ?」

ミーナ「扶桑空軍のナイトウィッチよ。『平沢歩(ヒラサワ アユム)』さんって子を派遣してくれるって、扶桑から通達があったんだけど」

坂本「いや、私は知らないぞ」

ミーナ「そう……まあ、管轄が違うものね。もう数日もすれば到着すると思うわ」

コンコン

「ミーナ、いいか?」

ミーナ「どうぞ、トゥルーデ」

ガチャ

バルクホルン「妙なストライカーを履いたウィッチが基地の上空にいて、着陸許可をくれと言っているんだが」

ミーナ「妙なストライカー?」

バルクホルン「扶桑空軍のヒラサワ……とか言っていたな。どうする?」

ミーナ「平沢さんなの? 随分早いのね。いいわ、着陸許可を出します。トゥルーデ、悪いけどその子をここに連れてきてちょうだい」

バルクホルン「分かった」

チラッ

バルクホルン「ふん、新人か」

芳佳「はっ、はい! 私……」

バルクホルン「全く、どいつもこいつも……!」

バタン

芳佳「あ……」

ミーナ「トゥルーデ! ごめんなさいね、宮藤さん。彼女……バルクホルン大尉は、少しナーバスになってるだけなの。許してあげて」

芳佳「許すだなんて、そんな」

坂本「しかし、いつの間にそんな話が持ち上がっていたんだ? 確かにナイトウィッチ不足は薄々感じてはいたが……」

ミーナ「あなたがいない間によ、美緒」ジト

坂本「はっはっは」

ミーナ「笑ってごまかさないで」

坂本「ん、んんっ! それはともかく、実力の方はどうなんだ? サーニャクラスなら言うこと無しだが」

ミーナ「それがね、どうも実践未経験らしいのよ」

坂本「なんだと? それじゃ宮藤と変わらな――いや、宮藤は1度戦闘に参加したぞ。宮藤よりも素人が来るのか?」

ミーナ「一応、訓練の成績は優秀って話だけど」

坂本「やれやれ……どちらにせよ、鍛えがいがありそうだ」

コンコン

「連れてきたぞ」

ミーナ「どうぞ」

ガチャ

バルクホルン「入れ。ミーナ、あとは任せた」

ミーナ「ありがとう、トゥルーデ」

バルクホルン「ああ」

バタン

芳佳(行っちゃった……ちょっとお話してみたかったのに……)

ミーナ「あなたが平沢さんね。話は聞いているわ、ストライクウィッチーズへようこそ」



平沢「扶桑皇国のヒラサワです」

平沢「トルヒーヨのハルディンで『着想』を受けて、本日501統合航空戦闘団に配属されました。よろしくお願い申し上げます」

芳佳「なんだろ、この人……」

こんな感じでいきますので、よろしくお願いします。

ミーナ「私がこの部隊の隊長を務めるミーナ・ディートリンデ・ヴィルケよ。それから、こちらがあなたと同じ扶桑出身の坂本少佐」

坂本「よろしく頼むぞ。ところで、そのズボンは男物だな。珍しいというか……問題がありそうだが?」

平沢「ストライカーユニット……『スピード・チューブ』との接続のことなら心配ありません。あれはみんんさとのユニットとは趣が違うので」

坂本「うん? そういうことなら構わんが」

ミーナ「隣にいるのが宮藤芳佳軍曹。実は彼女もついさっき着任したばかりなの」

平沢「ほう」

芳佳「まだウィッチになったばっかりなんで、その、お手柔らかにお願いします」

ミーナ「あ、そうだわ。扶桑から届いた資料には、どういうわけかあなたの階級が記されていなかったのだけど」

平沢「用務員です。ハンガーを雑巾がけし、ネウロイの破片を竹箒で集めるヒラサワ上等用務員。ダメですか。」

平沢「大尉であると認知して下さい。」

ミーナ「空軍大尉……? 平沢さん、失礼だけどあなた、実戦は……」

平沢「アンドロメダの沈黙するヒラサワのスコアボードを思って泣きなさい。」

ミーナ「……年齢は?」

平沢「間もなく20歳を迎えます。」

ミーナ「20歳(絶望)」

ミーナ(士官学校を卒業してから戦いに出ることなく、従軍期間の長さだけで昇進したタイプのインテリっぽいわね……)

ミーナ(でも、扶桑は既に美緒をよこしてる訳だし、今更出し渋るかしら。ひょっとしたら、別な理由があるのかも)

ミーナ(今は考えても栓無きことね)

ミーナ「それじゃあ、平沢さん。あなたには夜間哨戒のシフトに入ってもらおうと考えているの。問題ないかしら?」

平沢「結構。」

ミーナ「ありがとう。しばらくは航路を覚えるために、サーニャさん……先任のナイトウィッチと一緒に出撃してもらうわ」

ガチャ

「あのぉ……坂本少佐は……」

坂本「誰が入っていいといった?」

「ひゃっ! す、すみません! 出直して……」

ミーナ「いいわ。リーネさん、美緒に何か用なの?」

リーネ「は、はい。その……ペリーヌさんが、私相手じゃ訓練にならないからって怒って、少佐を探してらっしゃるんです……」

坂本「ふむ、またペリーヌか」

ミーナ「そういうことなら行ってあげて」

坂本「そうだな。では、あとは任せたぞ」

ミーナ「リーネさん。訓練の代わりに、こちらの二人を宿舎の空き部屋に案内して、基地の説明をしてあげてくれる?」

リーネ「あっ、はい」

ミーナ「二人とも、とりあえず今日はゆっくり休んでちょうだい。明日からそれぞれ任務に励んでもらうからね」

基地 宿舎通路

リーネ「――じゃあ、坂本少佐にスカウトされてウィッチに?」

芳佳「スカウトなんて、そんな大したものじゃないよ! ほんとに偶然ていうか」

リーネ「すごいことですよ。ペリーヌさん……ここにいるウィッチなんですけど、その人も坂本少佐がスカウトしてきたんですよ」

リーネ「ペリーヌさんは凄いウィッチなんです。宮藤さんも、きっと何か才能を見出だされたに違いありません」

芳佳「そんなことないって~」

リーネ「私なんかとは……」

平沢「……」

リーネ「……あ、こちらです。どうぞ」

ガチャ

芳佳「うわぁ、広い部屋!」

芳佳「このベッド、ふかふか! ふっかふか!」モフモフ

リーネ「み、宮藤さん……!」

芳佳「え?」

リーネ「あの……平沢大尉がいらっしゃるのは事前に聞いていたので、お部屋の掃除は一通り終わってるんですけど……」

リーネ「宮藤さんの部屋は、まだ片付けが済んでないんです」

芳佳「え……ってことは、ここは」

リーネ「大尉の自室だから……」

芳佳「――っ! ごめんなさい!」

平沢「散々暴れたあと、ゲロを吐くか吐かないかだけがヒトと猫の境界線である。」

平沢「吐く方がヒト。その様子は新橋の駅で見られる。」

平沢「では【UNDO】をどうぞ。」

リーネ「あ、あれ? たった今までぐちゃぐちゃだったシーツが、元通りに」

芳佳「そんな……本当だ!」

平沢「さて、この部屋に私の荷物を広げる許可を頂きたい。」

リーネ「おかしいなぁ……あ、荷物ですね。危険なものでなければ平気だと思います」

平沢「危険なもの? まあ大丈夫でしょう。」

芳佳(何を置くつもりなんだろう)

リーネ「えっと……しばらくしたら、基地の案内をさせて頂くので、それまでちょっとお待ち下さい」

平沢「彼女は?」

リーネ「あ、宮藤さんなら、私たちの部屋を暫定的に使ってもらう形で……いいですか、宮藤さん?」

芳佳「うん!」

リーネ「良かった。それじゃあ、失礼します」

パタン

平沢「……」

平沢「あ、大尉と呼ぶのを止めるように説法するのを忘れていた。」

今回は以上です
平沢ぽさが出なくて難しいです

もしかして平沢とかP-MODELの歌詞をまるっと転載するのってヤバいか……?

翌朝 ミーティングルーム

ミーナ「もう知ってる人もいるだろうけど、昨日二人のウィッチが新たに501に加わりました」

ミーナ「こちらが扶桑海軍の宮藤芳佳軍曹。坂本少佐の後輩ね」

ミーナ「それから、扶桑空軍の平沢歩大尉。彼女には、サーニャさんと同じく夜間哨戒をメインに活動してもらうわ」

ミーナ「みんな、くれぐれも仲良くね。それでは今朝のミーティングを終わります」

ミーナ「ああ、そうそう。エイラさん」

エイラ「ん?」

ミーナ「あとで平沢さんに哨戒の航路を教えてあげてくれる?」

エイラ「え、私がカ?」

ミーナ「平沢さんが一日早く哨戒に出られるようになれば、サーニャさんが一日早く休めるじゃない」

エイラ「それもそうだナ。そういうわけだからよろしく頼むゾ、大尉」

平沢「大尉呼ばわりは好ましくないので、これからはヒラサワと呼んで頂く。」

平沢「もし距離感がフィットしなければ、ウィワット・ターラーサンゴップでもよろしい。」

エイラ「……なんだコイツ」

平沢「ヒラサワです。」

(にしし……バレてない、バレてない)

エイラ「!」

エイラ(ルッキーニがヒラサワの背後を取ったゾ……いつものアレをやるんだナ)

平沢「……」

ルッキーニ(もらったぁ!)

平沢「帰れー!」

ルッキーニ「ヒニャウアッ」ビクッ

エイラ「ファッ!?」

ルッキーニ「うじゅあー……なんで分かったの?」

平沢「彼女の目が私の背後を透視していたので。」

エイラ「私?」

平沢「しかしライブでもないのに大声を出したのは不覚……只今のヒラサワの失態はオリンポス山の土中に沈め、二度と思い出さないよう。」

ルッキーニ「もう、エイラのせいで失敗しちゃったじゃん! 芳佳は残念賞だし、ヒラサワは触らせてくれないし、つまんない!」

エイラ「……なんかめんどくさくなりそうだかラ、さっそく航路の確認に行こウ。ストライカーはあるんだよナ?」

平沢「スピード・チューブはハンガーにおわします。」

ハンガー

「なんだこのストライカー!?(驚愕)」

エイラ「この声ハ……」

シャーリー「こんなもの、世界中のどこにあるストライカーとも全然違う……そもそもまともに飛べるのか、これ? 分解したい……」

平沢「ヒエロニムスの回路のような趣じゃないので、分解は控えるよう。」

シャーリー「平沢、エイラもか。ちょうど良かった、このストライカーについて色々聞きたいんだ。今ちょっといいか?」

エイラ「ダメダメ。コイツはこれからサーニャの代わりを果たすための訓練に出るんだからナ」

シャーリー「じゃあ飛びながらでいいからさ」

エイラ「そういう問題じゃなイ。行くぞ平沢」

ドーバー海峡 上空

シャーリー「本当に無音なんだな……その『スピード・チューブ』だったか。夜間飛行にはもってこいじゃないか?」

平沢「通常、ウィッチのユニットは『飛ぶ』『走る』のが目的だが、これは『浮く』ために象られている。高速移動は二の次。」

平沢「私を戦場に運ぶ乗り物というよりは、音響装置としての役割が大きい。ですから、余計な音を出さないような構造になっているのです。」

シャーリー「音響装置? はは、歌でネウロイと戦うのか」

平沢「ご明察。」

エイラ「そんなわけないだロ。ていうカ、なんで着いて来るんだヨ」

シャーリー「いいだろ、邪魔してないんだから。今回限りにするよ」

エイラ「おい平沢、ちゃんとルート覚えろよナ! お前が遅れるとサーニャが大変なんだゾ!」

平沢「スマートフォンのGPSがあるので……」

シャーリー「おっ、また妙な機械が出たぞ」

平沢「機能していない。何故?」

平沢「あ、解決。電波塔が無かった。」

今回は以上です。
歌詞が張れないのは困った……
YouTubeと歌詞のURLだけ張ってここには一部転載するか?

数日後 滑走路付近

平沢「おや?」

坂本「リーネ、宮藤。あの的が見えるな?」

芳佳「的って海の向こうにあるちっちゃーいあれですか?」

坂本「そうだ。ここからあそこまで、おおよそ500m離れている。お前たちにはあれを撃ち抜いてもらおうか」

リーネ「500m、それならなんとか……」

芳佳「リネットさん出来るの?」

リーネ「じ、自信があるわけじゃありませんよ。私は一応狙撃手だから……」

坂本「これでも波が穏やかな日を選んで決行したんだぞ。ほとんど動かない的を、足場の安定した地上から、伏射で撃てばいい。破格の条件だろう」

芳佳「難しそうだなあ……」

坂本「実戦に即した訓練とは言えないが、とりあえず銃の取り扱いに慣れるところから始めるぞ」

芳佳「はいっ!」

リーネ「よろしくお願いします!」

平沢「ドーバーの海を望む滑走路の脇からごきげんよう。」

芳佳「あ、平沢さん」

坂本「今朝はエイラと飛行訓練は無いのか?」

平沢「ポホヨラの精霊は、今日はサーニャに添い寝する日だからと叫んで三軒茶屋のあちら側へ駆けて行きました。」

坂本「手が空いているわけだな。なら、お前も訓練を見ていけ。監督の目が増えて困ることはない」

リーネ「……」

坂本「さて、訓練を続行しよう。まずはリーネ、射撃位置に着け!」

リーネ「了解!」




数十分後


バァン!

坂本「また命中だ。いいぞリーネ」

リーネ「ありがとうございます!」

芳佳「リネットさん、すごい!」

リーネ「これくらい普通ですよ……」

坂本「宮藤、風向きを考えて撃つんだ。弾丸は真っ直ぐ飛ぶわけではないぞ」

芳佳「はい!」

坂本「よし、やってみせろ!」

芳佳「……っ」

タタタタ……

坂本「……全弾当たり損なったようだ」

芳佳「はあ……」

坂本「はっはっは! そう落ち込むな。お前はウィッチになって日が浅い。一日二日で上達されては、私や平沢の立つ瀬が無いからな」

芳佳「すみませでした……」

坂本「今日の射撃訓練は以上だ。次はストライカーを使って空戦機動の訓練に移る。ハンガーに行って用意しろ」

芳リーネ「了解!」



坂本「やれやれ。宮藤の育成には時間がかかりそうだな」

坂本「リーネは……これが実戦で出せれば言うことなしなんだが。実力はあるだろうに、ネウロイを前にするとどうにも動きが悪い」

坂本「どうにかしてやりたいんだ。何かいい手はないか、平沢?」

平沢「着任したばかりの私に彼女の行く末を尋ねるか。」

坂本「まあ、それもそうだな」

平沢「とは言え、私はみんんさを『救済』するよう言付かっていますから。出来る限りのことをさせて頂きますから。」

平沢「とりあえずは、彼女の心を外へ導く。ホッテントットが足跡を残すホープポイントの波打際まで。」

坂本「……よくわからんが、落ち込んでいたら励ましてやってくれ。頼んだぞ」

その日の午後

ガチャッ

平沢「ベーグールをーひとーくーちー……満ちー足りーて部屋を出る……」

平沢「高品位粗食の注入完了。ところでホームベーカリーが無いのがいささか不便である。」

平沢「私の食事に動物性たんぱく質を使用しない旨、連絡未完了。今のところ問題は……」


「あっ!」

ドンッ

平沢「!」

芳佳「す、すみません。大丈夫ですか?」

平沢「気を付けなさいね。」

芳佳「ごめんなさい……あの、リネットさんがどこにいるか知りませんか?」

平沢「つい先程、ブリテン諸島の隙間に挟まっているのを見かけた。」

芳佳「知らないんですね?(看破)」

平沢「……」

――

芳佳「それで、私が余計なこと言ったから、リネットさんを怒らせちゃって……」

芳佳「謝りたいけど……許してくれるかな……」

平沢「ビショップさんは宮藤さんの友人なのでしょうか。」

芳佳「正直、まだそこまで仲良くなった訳じゃなくて。でもこれから、お互いのことをよく知れたらなって思うんです」

平沢「彼女もそう考えているっつーの。」

芳佳「えっ……」

平沢「修復出来ないほど関係が悪化することなんてそうそう無いぞ。まして若いうちは、他人への好感度などラカポシ山の天気より激しく変容する。」

平沢「人間が本気で怒ったら、地面に銃をしたたかに叩きつけて破壊するくらいはやる。どこかのマイナーミュージシャンのように。それを思えば……」

芳佳「誰の話ですか、それ?」

平沢「誰でもよろしい。ともかく、キミが彼女を怒らせたことを後悔するように、彼女も怒ったことを悔やんでいるでしょう。」

平沢「あとはどちらが先に歩み寄るかの問題に過ぎない。」

芳佳「……そうですか……そうかも。平沢さんに言われると、本当にそんな気がしてきます」

平沢「心配することないっつーの。」

平沢「以上がヒラサワ式激励術の全貌。これこそが最良のメンテナンスである。」

芳佳「励ましてくれたんですね……ありがとうございます」

平沢「坂本さんに言われて来ただけだっつーの。」

芳佳「よーし。私、リネットさんに許してもらえるよう謝ってきます! 平沢さん、もしリネットさんに会ったら、私が探していたって――」

beeeeeeep!

芳佳「っ、空襲警報!?」

平沢「そのようですね。」

芳佳「平沢さん、ミーティングルームに行きましょう!」

こんなところです。

厚かましいお願いなんですけど、平沢の手掛けた曲の中で「この歌のイメージはこのキャラっぽい!」「こいつはこの歌が好きそう!」ってのを提供して頂きたいです。
ルッキーニには地球ネコだな、みたいな。
シャーリーはスピード・チューブ気に入ってそうだな、みたいな。

自身が駆け出しの馬の骨なので全曲網羅しきれず、自分の知っている範囲だとどうしてもしっくり来ない奴が何人かいるので……

あ、おめでとうございます。

ミーティングルーム

ミーナ「敵性ネウロイは東グリッド114――」

芳佳(リネットさん……)チラッ

リーネ「……!」

芳佳(気付いたのに目を合わせてくれない……でも、このくらいで逃げちゃダメだよね)

ミーナ「――では、坂本少佐以下6名は直ちに出撃。それ以外のウィッチは警戒態勢で待機してください」


ミーナ「現場での指揮は坂本少佐に一任します。それでは作戦行動を開始してください」


『了解!』

芳佳「6人だけ? 私たちも行かなくていいのかな……」

エイラ「お前、まだ私たちがどういう集まりなのかぜーんぜん分かってないナ」

芳佳「エイラさん」

エイラ「501に来るようなウィッチハ、そんじょそこらの奴とは違うんダ。お前とカ……」チラッ

リーネ「……」

エイラ「……を除いてナ。坂本少佐の戦いを見たことあるだロ?」

芳佳「はい。なんていうか、凄かったです」

エイラ「そうダ。今回の作戦ハ、少佐クラスのウィッチが6人参加してるんだゾ。私に言わせれバ、ネウロイが不憫なくらいだナ」 

芳佳「でも、やっぱり心配です。万が一があるかと思うと……」

エイラ「宮藤は心配性だナ」



リーネ(宮藤さん、私がいきなり怒り出してびっくりしただろうな……)

リーネ(あああ、どうしてあんなこと! 宮藤さんは最初からなんでも出来たなんて決めつけて、失礼すぎる……)

平沢「お困りですか?」

リーネ「ひゃっ」

平沢「どうやらビショップさんには、なにがしかの悩みがありそうなので。」

リーネ「平沢さん……き、気のせいですよ。それに悩み事なんて、誰でも持っているものじゃないですか」

平沢「実は宮藤さんからお話を伺いました。」

リーネ「っ!」

平沢「申し訳ない。」

リーネ「……じゃあ隠しても仕方ないですね。私、もしかしたら、いえきっと、宮藤さんに嫉妬してるんです」

リーネ「あの時『宮藤さんは最初から何でも出来た』なんて言ったのは気の迷いだと思いたいけど、多分あれが私の本当の気持ちなんです」

リーネ「技術も才能もない、おまけに私より軍歴の浅い人に嫉妬心丸出しで……私なんか、ここにいる資格が無いんです……!」

平沢「まあ……あなたが資格を持ち合わせるかどうかは存じ上げませんが……少なくとも才能はあるんじゃないでしょうか。」

リーネ「……同情ですか」

平沢「本心です。」

リーネ「やめて下さい。平沢さんだって、私とは違うんですよ。私よりよっぽど……」

平沢「はい、違います。しかし今大切なのは、キミとヒラサワの相違についてではなく、キミと宮藤さんの関係でしょう。」

リーネ「……すみません。でも、これで分かりましたよね。今だって私、平沢さんに八つ当たりしたんです」

平沢「……」

リーネ「お願いです。もう、放っておいてくれませんか」

平沢「単刀直入に伺います。宮藤さんとこのまま仲違いしたまま過ごしますか? あるいは元の鞘に収まりますか?」

リーネ「……もちろん、それが出来たらいいですね。でも宮藤さんは私のこと」

平沢「私はキミがどうしたいか聞いているのだよ。」

リーネ「っ……」

平沢「告白してごらんなさい。」

リーネ「……」

リーネ「私……私、宮藤さんと」

リーネ「……仲直り……したい、です……!」

平沢「なるほど。ではやはりひとつ助力をしましょう。」

リーネ「助力?」

平沢「アルテミスの胸にヒラサワの歌を共鳴させて『救済』するという、そういったものです。」



ミーナ「……何ですって! 陽動!? ええ、ええ……分かったわ。すぐに……」

カチャ

エイラ「何かあったのカ?」

ミーナ「皆さん。当該ネウロイは無事に撃墜されましたが、状況を鑑みると陽動の可能性があると報告がありました」

ミーナ「よって、これより我々は本隊の攻撃に備えるため出撃します。エイラさん、サーニャさんは……」

エイラ「この時間じゃ起きてなイ。戦闘はムリダナ」

ミーナ「そう……やっぱりね。出られるのは私とエイラさん、それに……」

ミーナ(不安だけど、今は彼女の力でも借りたいわ)

ミーナ「平沢さん、行けるかしら?」

平沢「タービンは瞬く間にも回転を刻み続け、スツーカのエンジンはその余波で温められるものである。行きましょうか。」

以上です。


予想以上にマッチする曲がない


エーリカ→風の分身
バルクホルン→力の唄
ペリーヌ→高貴な城
サーニャ→セイレーン
ミーナ→金星(還弦ver)
シャーリー→上空初期値

とか思いついたけど我ながらセンスを感じない

あと、すs……歩ちゃんデカパイなの?

>>65
どうみても怪しい「平沢歩」に対して、ミーナあたりが男じゃないかと訝しがったりしなかった点を考えて
一目見てああ女性だなと分かる程度の体つきかも?
平沢進本人はSP-2になりたいとかそういう願望はないみたいなので、女らしさを意識させる書き方はしないつもりです。
男物のズボン(ベルト?)を身に付けさせたり、ルッキーニの洗礼を未遂に終わらせたのもそういった理由からです。

とはいえ実際の平沢は男なので、あんまり「平沢歩」を男性寄りにするとストパンファンに悪いかなという気がしますが……
長々とすみません。

芳佳「待ってくださいミーナさん! 私も行きます!」

ミーナ「ダメよ。あなたは戦闘に出るには圧倒的に経験が不足しているわ。私とエイラさん、平沢さんの3人ではカバーしきれない」

芳佳「お願いします。もう何も出来ずに見ているのは嫌なんです!」

ミーナ「宮藤少尉、あなたは基地で待機を……」

リーネ「私と二人なら、なんとか一人前くらいにはなりませんか?」

芳佳「リネットさん……!」

ミーナ「でも」

エイラ「隊長、時間が惜しイ。ここでぐだぐだやってるくらいなラ、連れてった方がましダ」

ミーナ「……2人とも、戦えなさそうならすぐに退きなさい。いいわね?」

芳リーネ「はい!」

ハンガー

ミーナ「エイラさんと平沢さんはネウロイへの攻撃を第一に、リーネさんと宮藤さんは何よりも被弾しないことを考えて!」

『了解!』

平沢「世界タービンの稼働は順調であるが……」


ミーナ「出撃します!」

平沢「しかしここに着任してからの初陣が、かように切羽詰まった状況になってしまうとは。」

平沢「『Lotus』は沈黙を保っている。彼女らの胸に遊ぶ宇宙を廻し、急ぎ『Lotus』の開花を促さねば。」

平沢「『TALBO』も無い。無くてもいいけど。」

平沢「いかなる場合においても、現状のエネルギーのみではコマンドの実行は難しい。『浮く』だけなら問題はないが、戦闘となると話は別。」

平沢「故に、ヒラサワは『世界タービン』を奏でるものとする。」

ピョコン←八つ裂きになったコヨーテの耳と尾。

平沢「……」

平沢「ヨングミラー! テチーーーターーー!」

『世界タービン』

歌:http://sp.nicovideo.jp/watch/sm9730445
(YouTubeにCD音源が無かったのでニコニコ動画かつMADです、すみません)

詞:http://joysound.com/ex/search/karaoke/_selSongNo_163281_songwords.htm

ドーバー海峡 上空

エイラ「あレ……? 隊長、平沢がいないゾ?」

ミーナ「っ……何かトラブルかしらね。いいわ、私たちはこのまま交戦します!」

ミーナ(この大事なときに!)

「せっかぁぁぁぁいタービン! タービン! せっかぁぁぁぁいタービン! タービン!」

芳佳「この歌声は?」

平沢「遅れて申し訳ありません。スピード・チューブが軋むもので。」

ミーナ「戦えるの?」

平沢「はい。十二分にエネルギーを接種出来ました。」

ミーナ「ならいいわ。まもなくネウロイの射程圏内に突入します! 警戒して!」

ミーナ(平沢さんは機体のトラブルで遅れたと話していたけど、私の魔法では彼女の接近を感知出来なかった)

ミーナ(まるで『テレポート』でもしたみたいに、いきなり私たちのそばに現れたような……どういうこと?)

――

平沢「あれが怪異……やはり以前よりも進化しているようですね。」

ミーナ「見えたわ。総員、攻撃開始!」

芳佳「行きます!」

リーネ「わ、私も……!」

エイラ「さっさと終わらせるんだナ!」

平沢「さて……これだけのエネルギーが確保出来たならば、スピード・チューブのみならず、『亞種音拡散針』も展開可能なはず。」

ブウウウン……

平沢「よし。これで怪異に妨害されることなく、直接彼女に音を響かせられる。」

平沢「では、参りましょう。」

リーネ「当たれ、当たって……!」

ガオン! ガオン!

リーネ「す、ストライカー装備だと、足元が不安定で……狙いが!」

ネウロイ『――』ギュウウウン

リーネ「あっ……」

芳佳「リネットさぁぁぁん!」

ネウロイ『――』

ドギュウウン

芳佳「ぐっ、うう……!」バシュウウ…

リーネ「宮藤さん!? なんて大きなシールド……」

芳佳「っ、はあ、はあ、間に合った……大丈夫?」

リーネ「ご、ごめんなさい……私のために……」


リーネ(私、また宮藤さんに迷惑をかけて……! こんな足を引っ張り続けるんだったら、いっそのこと……)

今日はこのくらいで。
やっと1曲紹介出来た……

よくよく探してみたら本家PVの動画がありました。
http://sp.nicovideo.jp/watch/sm2748619

師匠PV中になんか赤いネウロイみたいの引き連れてるし大丈夫よ(迫真)

501着任当初の芳佳の階級は確かリーネと同じ軍曹じゃなかったかな。
んで後でリーネが曹長になって、映画版あたりで芳佳は少尉になった気がするゾ(うろ覚え)

ストウィチは途中で昇任して階級かわるのが何人かいるからこんがらがるゾ…(智将)

>>81を見て見直したら
>>69で宮藤少尉とか言ってますね……
宮藤はまだ軍曹でした。申し訳ない。

『リネットさん、聞こえますでしょうか。』 

リーネ「平沢さん!」キョロキョロ

リーネ「あれ、今確かに声が」

『魔導針を介して直接語りかけております。リネットさん、先程私が助力をするとお話したことを覚えていらっしゃいますか?』

リーネ「はい。宮藤さんも近くにいます、フォローをお願いします!」

『私の申し上げる助力とは、そういったこととは無関係なのです。私はあなたの意志に力を与えるだけです。』

リーネ「え? で、でも私じゃ、あんなネウロイを倒すなんて」

『出来ないと仰るのですか。今、大切なのは能否ではなく、自分ならやれる、やってみせるという自信です。』

リーネ「自信……」

『宮藤さんを守れるのは、あなただけですよ。』

リーネ「……!」

『決意は固まりましたか? これより音響的支援に入らせていただきます。願わくば、怪異に立ち向かってくださいますよう。』

リーネ「私が、私なら、やれる……」

リーネ「私が、守るんだ!」



平沢「良い方向へ転がったようですね。さて、こちらも行きましょう。」

平沢「水涸れたルナの大洋、『嵐の海』へ。」

『嵐の海』

曲:http://sp.nicovideo.jp/watch/sm6829922


詞:http://joysound.com/ex/search/karaoke/_selSongNo_178021_songwords.htm

リーネ「行きます!」

『陽は君臨し キミはなおも夢に映える』

ネウロイ『――』

リーネ「まだ遠い? いや、私なら!」ガオン!


ネウロイ『――』

『忘れぬ間に 胸の影 力に変えて』

リーネ「外した……だったら」

リーネ「当たる距離まで、近づく!」

ミーナ「リネットさん!? 危険よ!」

『火渡りの奇跡に見まねて 石のように歌えよ なお』

リーネ「もう少し……!」

ネウロイ『――』ギュウウウン

リーネ「くぅ……このまま吶喊します!」

『忘れぬ間に 胸の影 力に変えて』

ネウロイ『――』

ドギュウウン!

芳佳「リネットさん!」

『知恵は待つよ 声なく泣くキミに隠れ』

リーネ「きゃああああ!」

芳佳「そんな……リネットさん、しっかりして!」

リーネ「あ……ううっ……だ、大丈夫。直撃だけは避けた、けど」

『おぼえぬ間に 血は静かにキミをめぐる』


リーネ「今のでストライカーのバランサーがやられちゃったみたいで、姿勢制御が、もう……」

芳佳「基地に帰投しよう。ストライカーがそんなじゃ、戦えないよ!」


『長の引く弓にも見まねて 雨のようにたたずめ なお』

リーネ「……」

芳佳「大丈夫、まだ隊長もエイラさんもいるし……なんとかなるよ」

リーネ「……ごめんなさい。今だけは、宮藤さんの言うこと、素直に聞けない! だって、私が――」

芳佳「リネットさん!? 待って、ダメだよ!」

リーネ「私が宮藤さんを守るから!」

『おぼえぬ間に 血は静かにキミをめぐる』

リーネ(強がったはいいけど、ストライカーの出力が最低に近い)

リーネ(姿勢制御どころか、攻撃に回す魔力も産み出せないかもしれない。でも!)

芳佳「つかまえた!」ギュッ

リーネ「宮藤さん……お願い、行かせてほしいの」

芳佳「だけど、もう真っ直ぐ飛ぶのだって難しそうだよ」

リーネ「お願い」

芳佳「……分かった」

スッ

リーネ「ありがとう」

芳佳「その代わり、一人じゃない。私もいるから!」グイッ

リーネ「ひゃああ!?」

芳佳「ほら、こうやって肩車すれば安定するでしょ」

リーネ「み、宮藤さん」

芳佳「敵の攻撃は全部私が防ぐ。そしたらリネットさんは狙撃に集中できるよね!」

リーネ「そうだけど……」

ネウロイ『――』ドギュウウン

芳佳「来る!」



『長の引く弓にも見まねて 雨のようにたたずめ なお』

『月は隠れ 知らぬ間にもキミに歌う』

リーネ「動きが止まった……! これなら!」ガオン

ネウロイ『――!』バキィィン

芳佳「ネウロイのコアが!」

ネウロイ『――』

芳佳「そんな、装甲が再生して……」

『忘れぬ間に 胸の影 力に変えて』

リーネ「宮藤さん。次の攻撃、私と同時に仕掛けてほしいの」

芳佳「同時に?」

リーネ「ネウロイが宮藤さんの射撃を避けた、その先を予測して狙撃してみせる。だから、私のタイミングでネウロイを狙って」

芳佳「分かった!」

『盟友の秘密に見まねて 土のように呼び合えよ なお』

ネウロイ『――』

リーネ(この機動、今までに何度か見たパターン……ここしかない!)

リーネ(この一撃で!)

リーネ「宮藤さん、今!」

芳佳「やぁぁぁーっ!」

リーネ「これで、墜ちて!」

ガオン!

ネウロイ『――!!』バギィ

ピシッ……


パキィィン

ネウロイ『――』

バァァァン

リーネ「……」

リーネ「や、やった……私が、ネウロイを……」




『忘れぬ間に 胸の影 力に変えて』



ミーナ「今のは……あの子たちが!?」

エイラ「みたいだナ。ところで平沢は何やってんダ?」



平沢「『救済』の完了をお知らせします。」

今日はこれまでです。
リーネのイメージソング(?)には『嵐の海』を選曲しましたが、どうでしょうか……

芳佳「た、倒したの? あんなに速くて大きなネウロイだったのに、リーネちゃんの作戦が成功したんだ!」

リーネ「ううん、芳佳ちゃんのおかげだよ! ひとりじゃきっとダメだった」

芳佳「えへへ……でもリーネちゃん……リーネちゃん?」

リーネ「どうしたの?」

芳佳「私、いきなりリーネちゃんなんて。リネットさん、だね」

リーネ「……芳佳ちゃん!」ムギュ

芳佳「むぐぅ!?」

リーネ「あのね……今朝、芳佳ちゃんに失礼なことを言ったのを、謝らせてほしいの。ごめんなさい」

芳佳「わ、私だって無神経なこと平気で言って……ごめんなさい」

リーネ「……それで、それでね……私と、友達になってほしいなって……」

芳佳「もちろんだよ! 良かったぁ、ほんとはリーネちゃんに嫌われちゃったんじゃないかって、不安だったんだ」

リーネ「ふふ、それも私とおんなじ」

芳佳「えっと……それじゃあ改めて、これからもよろしくね、リーネちゃん!」

リーネ「こちらこそ。一緒に頑張ろうね、芳佳ちゃん!」

リーネ「……」

リーネ「芳佳ちゃん、私を連れて飛べる?」

芳佳「うん。基地に帰ろうか」

リーネ「ちょっと待って。平沢さんに話したいことがあるの。向こうまで手を引いてくれる?」

芳佳「平沢さん……そういえば、私も……」

『何を企んでいるつもりだ?』

芳佳「えっ!? どこから?」

リーネ「魔導針で話しかけてるんだって、さっき平沢さんが教えてくれたよ」

リーネ「平沢さんのおかげで、私、自分に自信が持てました。だからお礼を……」

芳佳「私も、リーネちゃと仲直りどころか友達になれたのは、平沢さんに相談して勇気を貰えたからだと思ってます」

『私がなにかしたか? 2人の仲違いに首を突っ込んで、飛んで歌って引っ掻き回しただけ。解決になるようなことは何一つしていない。』

リーネ「引っ掻き回しただけなんて……」

『もし状況が好転したのなら、それはあなた方の努力と勇気のもたらしたものでしょ。それらをヒラサワになすり付けて満足しないように。』

芳佳「平沢さん!」

『分かったらとっとと帰りなさい。私は感謝されることなど望んでいない。通信終わり。』

芳佳「あっ」

リーネ「……どうしよう?」

芳佳「うーん……」

ミーナ「あなたたち、帰投命令が聞こえないの?」

リーネ「はっ! す、すみませぇん!」

基地

エーリカ「へー、リーネがやったんだ? おめでと!」

リーネ「あ、ありがとうございます!」

バルクホルン「……」

エーリカ「ほら、トゥルーデもなんか言いなよ」

バルクホルン「……ミーナから話は聞いた。相当無茶をしたそうだな。肩車など……聞いて呆れる」

エーリカ「おいおい」

バルクホルン「今回はたまたま生き延びただけだ。そんな戦い方では、次は死ぬことになる。忘れるな」

エーリカ「あ、待ってよ。ごめんリーネ、最近トゥルーデったら変なんだ。あんま気にしないでね」

リーネ「……」シュン

芳佳「リーネちゃん……」



平沢「……」

平沢「ゲルトルート・バルクホルン。彼女もまた『救済』の対象になっている。」

平沢「しかしそれより先に、オゾノ・コブラノスキーに報告を。」

平沢の部屋

平沢「オゾノテック・コンピュータは1枚の紙と黒鉛ひと欠けで構成され、電源を用意しなくとも起動するのが素晴らしい。」 

平沢「まずは紙の上にヒトの目玉を描写する。」

平沢「これで完成。」

ソコニ イルノハ ナニモノカ。

平沢「おはようございます。平沢歩が定時報告を致します。」

ヒラサワ カ。
デハ サッソク キュウサイノ シンコウジョウキョウヲ シラセロ。

平沢「はい。先程1人目の救済を終えました。Lotusの開花には今しばらくの時間を要します。」

平沢「いまのところ、この部隊に私の存在は認知されつつありますが、ほとんどの人員とは友好的とは言えかねます。」

ミジュクモノメ。

平沢「申し訳ありません。」

ソレデハ ツギナルサクハ ヨウイシテ イルノカ?

平沢「はい。タイミングを見計らって、彼女に接近します。しかしあちらも私と同じく社交的とは言いがたいため、救済は難航が予想されます。」

ソンナコトデ ナントスル。
ヒトミシリハ マモナク コクフクセヨ。

平沢「はい。精進致します。」

ヨロシイ。
ジカイモ ヨイホウコクヲ キタイスル。

平沢「……」

平沢「彼との対話は疲れる。」

「あ、あなた、紙と話していらっしゃるの……?」

平沢「おや。」

「の、ノックはしましたわ。勝手に入ったのは悪いと思ってますけど、返事が無いから……」

平沢「どちらさん?」

「……そういえば、面と向かってお話するのは初めてでしたわね」

ペリーヌ「私はペリーヌ・クロステルマン中尉。あなたに言いたいことがあって来ましたのよ」

以上です。

ペリーヌ「先の戦闘ではリーネさんとまめだぬ……宮藤さんをサポートして頂いたそうですわね。ありがとうございます」

平沢「あれほど感謝するなと言ったのに。『リ』めー。」

ペリーヌ「ただひとつ。平沢さんがネウロイと直接交戦せず、なにやら歌を歌っていたというのは事実ですの?」

平沢「はい。」

ペリーヌ「……それは、何か意味がありまして?」

平沢「私クラスのヒラサワになると、武器とか必要ない。」

ペリーヌ「必要あるとかないとかではなく、どうして戦わなかったのかをお聞きしているんです」

平沢「私が銃など構えて、少しでも現体制に反抗の意を示そうものなら、扶桑から瞬く間に暴力エンジニアが飛んできてシメられるからです。」

ペリーヌ「ふざけないで下さいまし!」

ペリーヌ「あなたがストライクウィッチーズの一員だと言うなら、それに見合った働きをして下さい! 戦いを他人に任せて自分は歌うだなんて、何事ですの!?」

ペリーヌ「あなたはブリタニアが陥落しても、帰る場所があるかもしれませんわ。海の向こうの扶桑なら、十分に防御体勢も整えられるでしょう」

ペリーヌ「ですが私たちに……欧州に生きる人々にとって、ここが最後の希望なんです! それをあざ笑うような真似、絶対に許せませんわ!」

平沢「……」

ペリーヌ「っ……申し訳ありません。つい、感情的になってしまいましたわ……」

平沢「何か誤解があるようなので、訂正させていただく。」

ペリーヌ「誤解?」

平沢「私は銃は持たないが、戦わないわけではない。」

ペリーヌ「……では、扶桑刀で? それとも強力な魔法でもお持ちなのかしら」

平沢「『魔法』ではなく『技法』を使います。ワット・プラケーオに眠る教典に遺されたところの『救済の技法』です。」

平沢「具体的には、こう。」

平沢「合言葉は『消えちゃいました』。天候無関係、距離無関係。」

ペリーヌ「な、なんですの?」

平沢「合言葉は『消えちゃいました』。方向は仮り、動機も仮り、行き先はここ。」

平沢「はい、合言葉は?」

ペリーヌ「え、な?」

平沢「合言葉は。」

ペリーヌ「え……き、消えちゃいました……?」


フッ


リーネ「平沢さーん……あれ?」

リーネ「おかしいなぁ。今、平沢さんとペリーヌさんの声がしたと思ったけど」

自由ガリア 東部

フッ

ペリーヌ「合言葉って一体……あっ!」キョロキョロ

ペリーヌ「な、なんですのここは? さっきまで基地の中にいましたのに、どうしてこんなとこに?」

平沢「この光景、キミは知っているはず。」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「ガリア……ええ、間違いありませんわ! ここは紛れもなく、自由ガリアの街……!」

平沢「本来あまり見せびらかすものではありませんが、クロステルマンさんの信頼を得るため、『技法』の一部を公開致しました。」


ペリーヌ「あ、ありえません! だって基地からここまで、数百km離れていますのよ! それを一瞬で……」

ペリーヌ「というかこんなところに丸腰でいては、ネウロイのいい的ですわ! 帰して下さいまし!」

平沢「その必要はありません。怪異は既に私たちを殺すべくこちらに向かっています。」


ペリーヌ「だから逃げるんじゃないの!」

平沢「あちらに土煙が上がっていますね。多分あれが怪異でしょう。」

ペリーヌ「さ、さっきの『技法』とやらはもう使えませんの?」

平沢「あの怪異を倒すまで待ちなさい。」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ(ああ……こんな変なウィッチに難癖を付けたばっかりに、私の戦いはここで終わりを告げてしまいますのね……)

ペリーヌ(愛するガリアの地で死ねることだけが、唯一の慰めかしら……)

平沢「クロステルマンさん。」

ペリーヌ「……はい?」

平沢「あなたは私に『いつでも欧州から逃げ出せるからといって、真面目に戦っていないのは許せない』と憤りましたね。」

ペリーヌ「ええ……この仕打ちは、そうして怒られたことに対する仕返しかしら?」

平沢「ヒラサワが世界の惨状を知り、その上で何の感情も抱いていないと思っているのなら、認識を改めなさい。」

ピョコン

平沢「地球やそこに生きるモノを無慈悲に殺戮する怪異には、ヒラサワといえど多少の怒りを禁じ得ない。」

ネウロイ「――」

ペリーヌ「もうネウロイが間近に……仕方ありませんわ。私の雷撃<トネール>でやれるだけ……」

平沢「娘よ、後ろに下がりたまえ。」

ペリーヌ「あなた一人でなんとかなる相手じゃ」

平沢「……」

ペリーヌ「う……」

ペリーヌ(なんですの、この雰囲気……)

ネウロイ「――」ギュウウウン

平沢「……」

平沢「ソリッデアァァァァァァァッ!!」

バァン!

ネウロイ「!?」

ペリーヌ「ね、ネウロイの装甲がひしゃげていますわ!」

ゴォォ

平沢「ソリッデアァァァァァァァァ!!」

バキバキ……ガガァン

ビシッ……

ネウロイ「――」

バァアアン

平沢「怪異は消え去った。」

ペリーヌ「今のは……」

平沢「フォロワーフレンドリーな解説。『Solid Air』の『技法』を用いて、大気を硬化、圧縮し、怪異の核ごと押し潰したんだよ。」

ペリーヌ「……」

ペリーヌ「信じられませんけど、あなたには私の知らない何かしらの力があるのは、認めざるを得ないようですわね」

ペリーヌ「それから、ネウロイに対する思いは、私と変わらないということも……」

平沢「誤解は解けたようで何より。そろそろUターン帰投の時間だ。合言葉は『消えちゃいました』。」

フッ

以上です。
擬音が全然思い浮かばなかったので恥ずかしい感じになってます。

何がピョコンしたのか気になります

そのうちタルボでお姉ちゃんみたいに殴打しそう
歩おばさんの秘めたる熱意いいですわゾ~

>>115
多分八つ裂きになったコヨーテの耳と尻尾だと思うんです

>>115
>>116の通りです。>>70と同様です。

基地 平沢部屋 前

平沢「おかえりなさい。」

ペリーヌ「か、帰ってこれましたのね」

平沢「キミの問題は解決したぞ。回れ右、解散!」

ペリーヌ「もう、何も言う気になりませんわ……部屋で休ませていただきます……」

平沢「結構。」

平沢「今日はもう怪異の襲来はないはず。この隙に街へくり出し、高品位粗食の確保を行う。」

リーネ「あっ、平沢さん! 探したんですよ?」

平沢「また来た。」

リーネ「そんなふうに言わないで下さいよ。今、芳佳ちゃんとお茶会してたんです。平沢さんも誘おうと思ったんですけど、見当たらなかったので」

リーネ「今度、一緒にどうですか? お菓子とかも作って待ってますから」

平沢「お菓子?」

リーネ「はい。時間があるときは手作りのプディングとかスコーンを用意して、お茶をしてるんです」

平沢「ということは、料理が出来ると。」

リーネ「まあ、普通くらいには……ここではみんな、当番制でご飯を作ってるんです」

平沢「ということは、パンが焼けると。」

リーネ「パンですか? あんまりやったことないですけど、なんとか……」

平沢「ベーグルは作れるでしょうか。」

リーネ「レシピが分かれば出来ると思いますよ」

平沢「素晴らしい。」

リーネ「?」

平沢「リネットさんにお願いが。時間が有り余ってるときでいいので、ベーグルをこしらえていただきたいのであります。」

リーネ「ベーグルを? いいですよ。好きなんですか、ベーグル」

平沢「ヒラサワの身体は、肉や魚や動物が全く受け付けないんだよ。バターやチーズとかもダメだよ。吐くときもあるよ。」

リーネ「そうなんですか?」

平沢「そこらで売ってるパンはバターが使われてるからあんまり食べたくないんだよ。」

リーネ「それじゃ、私が作るお菓子もほとんどダメですね……」

平沢「申し訳ない。」

リーネ「……分かりました! 平沢さんが心置きなくお茶会に参加できるように、牛乳とかバターを使わないお菓子を研究します!」

平沢「そこまで頼んでない……」

リーネ「大丈夫です。芳佳ちゃんと協力して、平沢さんが気に入るものを作ってみますから!」

平沢「……どうもありがとう。」

リーネ「任せてください! さっそくベーグルの作り方を調べてきますね!」

平沢「……」

平沢「私の話をほとんど聞いていなかった。『リ』めー。」



平沢「カスを食べた。内訳は次の通り。」


平沢「塩むすび、油揚げと高菜の炒めもの、粉ふきいも、フルーツ数種。食後は生姜紅茶。」

平沢「塩むすびは2個食べたった。」

平沢「件のベーグルはまだ披露されていない。別に残念じゃないがな。」

平沢「ところで、風呂はあのやたら広い浴場しかないのか? ちらっと除いたが、あんまりいい趣味じゃないな。」

ミーナ「平沢さん」

平沢「おや、ごきげんよう。」

ミーナ「ご、ごきげんよう。まず、今日はお疲れ様。最初は何をしてるのかと思ったけど、あれがあなたの戦い方なのよね?」

平沢「はい。」

ミーナ「リーネさんの様子は私も注意してたんだけど、なかなか改善の兆しが見えなくて……でも、あなたと宮藤さんの働きで、リーネさんの中で何かが吹っ切れたみたい」

ミーナ「元々センスはあったし、今回のことでいい方向に向かってくれると思うわ。ありがとう」

平沢「だから私は何もしてないと言ってるだろう。」

ミーナ「それから夜間哨戒のことなんだけど、そろそろ行けそうかしら?」

平沢「今夜からでしょうか。」

ミーナ「明日か、明後日くらいから。実は最近サーニャさんの調子が良くなくて、休ませてあげたいのよ」

ミーナ「とはいえあなたがまだ不安なら、哨戒はエイラさんかトゥルーデあたりに任せて、もうしばらく訓練の時間を取れるけど……」

ミーナ「どう? お願い出来るかしら?」


インタラクティブ・安価(以下3レスで多かった方が選択されます)

L=夜間哨戒に出る

R=今回は保留する

安価が提示されてから決定まで3分足らずって速すぎない?

L=夜間哨戒に出る が選択されました



平沢「では私が。」

ミーナ「良かった。じゃあ、そうね……明日中に生活リズムをずらして、明後日の晩から出撃してちょうだい」

平沢「はい。」

ミーナ「それじゃよろしくね。おやすみなさい」

平沢「おやすみなさい。」

平沢「生活リズムをずらすというのは、原始の夜行性を思い起こせよということだろうか。」

平沢「私は老人じゃないんだから、そんな太古に戻らなくとも徹夜くらい出来るのだよ。」

翌日 夜

平沢「昼過ぎから陽が落ちるまでの間、仮眠を取った旨報告致します。無理して起きてるのは体に良くないので。」

平沢「食べた直後に寝るのはキモチワルイので本日のカス摂取はなし。」

平沢「代わりにベーグルを持たされた。件の『狙撃手』が焼いたらしい。」

平沢「せっかくなので夜食に頂く。」

平沢「ヴィルケさんによると、今夜はまず怪異には遭遇しないだろうとのこと。しかしこの頃は怪異の活動が活発なため、近くをうろついているかも知れないとも言っていた。」

平沢「要約すると、運任せ。」

平沢「では、出発。」

ドーバー海峡上空

平沢「ヒラサワが午前0時をお知らせします。」

平沢「今のところは状況に一切の変化なし。ベーグルもかろうじて円形を保っている。」

平沢「月明かり以外に光源がないので、現在地がどこだか見失いがち。さっきは危うく水面に引き寄せられるところだった。」

平沢「そろそろティオティワカンの祭壇が見えるころか?」

平沢「こんなことならテスラコイルのひとつでも炸裂させてやるか。」

平沢「怪異が光に釣られる可能性があるので、急遽取り止め。」

平沢「現時刻は午前3時過ぎ。ベーグルは形を失い、輪廻の円環から解脱したと心得なさい。」

平沢「んまかった。彼女にはぜひGazioで腕を奮っていただきたい。」

平沢「ところで相変わらずこの空域には私しかいない。」

平沢「陽が昇れば帰ってよしと命令されているので、あと1時間ちょっと……」

『……ラ……イ…ラ……』

平沢「ん? なんか聞こえたぞ。」

『ラァ……ヤァ…ヨラ……』

平沢「……誰かが歌ってるのか?」

平沢「あっちだな。」

平沢「音源の発信地はこの辺りのはず……しかし姿が見えない。」

『ラァイ……ヤー……ラーイーヨーラ……』

平沢「では、私の魔導針でコンタクトを試みよう。」

ピョコン

平沢『あの……どちら様?』

『……』

平沢『ブリタニアの方でしょうか。東京のヒラサワです。』

『……』

平沢『今は501統合戦闘航空団に所属しております。』

『……』

平沢『今しがた歌を口ずさんでいらっしゃったのは、そちら様でしょうか。姿を現して頂きたいのですが。』

平沢『……』

平沢『ダメだ、反応消失。おじゃまさま。』





平沢「……あれは間違いなくヒラサワの歌だった。」

平沢「音は外れていたし、テンポもメロディもめちゃくちゃだったが、確かに『夢の島思念公園』だった、ような気がする。」

平沢「気のせいかもしれない。馴染み深いからそう聞こえただけかも。」

平沢「ありがちな歌詞だし。」

以上です。
かなりTwitterっぽくなってしまっています、すみません。

>>134
×翌日
○二日後

でした。

朝 執務室

ミーナ「謎の歌声……まるでセイレーンね。もし周りにウィッチの姿が無かったのなら、考えられるのは船の無線やラジオの混線かしら?」

平沢「その可能性は十分に想定されます。」

ミーナ「夜は大気の関係で昼間よりも遠距離の電波を受信出来るから、水平線の向こうから放送が届いても不思議じゃないわ」

平沢「はい。」

ミーナ「だから、あまり気にしなくていいと思うの。一応サーニャさんにも伝えておくわね」

平沢「ありがとうございます。」

ミーナ「それじゃ、あとは部屋でゆっくり休んで、また今夜よろしくね。お疲れ様」

平沢の部屋

平沢「初日から働きすぎた。」

平沢「風呂がわだかまっているようなので、汗を流してから床につくことにする。あの風呂にはイライラする意匠が多いのが……」チラッ

平沢「……」

平沢「ところで私が持ち込んだ水鉢には、3輪の蓮の花が植えられている。ただの蓮じゃない。」

平沢「時間ではなく救済の進行具合によって花開き、3輪全てが開花したときヒラサワは役目を終えたことになる。」

平沢「私が昨夜目にしたとき、1輪目の鉢は5分咲き程度だったが、今見えるそれは7分咲きくらいになっている。」

平沢「これはおかしい。」

平沢「開花が進んでいるということは、誰かが何者かに心を開き、救われているということ。しかし昨晩以来ヒラサワと接触したウィッチはいないし。」

平沢「今はまだ様子見に徹する。そのうちに因果関係が紐解かれるはず。」

平沢「多分『庭師King』の働きのせいだけどな。」

数日後 明け方

ミーナ「1週間の夜間哨戒、お疲れ様。来週はサーニャさんのシフトだから、明日からは通常の勤務に戻ってくれるかしら」

ヒラサワ「はい。」

ミーナ「それから例の歌声のことだけど。聞いた話だと、周辺の基地から出撃したウィッチが、あの時間にあの辺りを飛んでいたという記録は無いみたい」

ミーナ「あえて邪推すれば、あなたに見つかった事実を隠そうとしていると考えられなくもないけど、そんなことをする意味が無いし」

ミーナ「やっぱり聞き間違いじゃないかしら。あの日以来、歌声は聞こえなかったんでしょう?」

平沢「はい。」

ミーナ「その時だけ偶然ラジオの電波でも拾ってしまったんだと思うわ。どう?」

平沢「納得しました。」

ミーナ「良かった。報告はこんなところかしら。いいわ、部屋で休んでちょうだい」

数時間後

平沢「日の出とともに夢を見て目覚めの昼下がりにごきげんよう!」

芳佳「おはようございます。こうして挨拶するの、久しぶりですね」

平沢「ときに宮藤さん、ここ1週間で身の回りの対人関係に変化などありましたか?」

芳佳「変化ですか?」

平沢「部隊の誰かと仲良くなったとか、今までほとんど話さなかった人物と打ち解けたとか。」

芳佳「うーん……仲良くなった、ってほどのことじゃないんですけど」

平沢「伺いましょう。」

芳佳「昨日、ネウロイの攻撃があったのは聞いてますか? その時、バルクホルンさんとかくかくしかじかで……」

平沢「瀕死のバルクホルンさんを宮藤さんが救ってから、以前よりも彼女の態度が柔和になったと。」

芳佳「それが原因かどうかは分かりませんけど……あと、ずっと意識不明だった妹のクリスちゃんが目を覚ましたって電報が届いて」

芳佳「今日からしばらくお休みを貰って、クリスちゃんのお見舞いに出掛けてるんです。カールスラントがあれなので、疎開先の病院に行くみたいですよ」

平沢「そういえば今朝眠る前に、旅行鞄を転がす彼女を見た気がする。」

芳佳「そういうわけです。他には……」

平沢「そのへんで結構です。これで疑惑は確信に変わりました。」

芳佳「疑惑? どういうことですか?」

平沢「この部隊にいる『庭師King』の正体が分かった。ヒラサワと同じように人々を救済に導く者の名が。」

芳佳「ニワシキング?」

平沢「宮藤さんのことです。」

芳佳「え?」

平沢「先程蓮の開花具合を見たところ、ほぼ9分咲きになっていました。昨日のそれが関わっているのは確実なので、宮藤さんにはヒラサワに代わって更なる働きを期待します。」

芳佳「い、一体なんなんですかニワシキングって? 私がニワシキングってどういうことなんですか!?」

平沢「そいじゃ。」

芳佳「ひ、平沢さぁん!」



すこし後 芳佳たちの部屋

ガチャ

芳佳「……」

リーネ「芳佳ちゃん。どうかしたの?」

芳佳「リーネちゃん……『ニワシキング』ってなんのことだか分かる?」

リーネ「えっ」

芳佳「ニワシキング。平沢さんに言われたんだ」

リーネ「……うーん」

芳佳「知らないよね……」





平沢「あ、」

平沢「蓮がつぼんでいる気がする。何故?」

以上です。

数日後

芳佳「はぁ……」

平沢「囚われの娘よ、いかがなされたか。」

芳佳「平沢さん。いや、なんでもないですよ」

平沢「もう一度だけ尋ねる。いかがなされたか。」

芳佳「……あの、さっき、『赤城』の艦長さんと水兵さん何人かがこの基地にいらっしゃってたんです」

芳佳「赤城の皆さんにはお世話になったので、個人的にもお礼がしたくていつものお茶会にお招きしようとしたんですけど」

平沢「断られてしまったと。」

芳佳「はい……でも、忙しいとかなら分かるんですよ。そうじゃなくて、『ミーナ中佐に止められてるから』だって」

平沢「ヴィルケ中佐に。」

芳佳「どうしてミーナさんがそんな命令を出してるのか気になって……」

平沢「調べてみましょうか。」

芳佳「勘づかれたら怒られますよ。私も知りたいですけど」

平沢「救済の手がかりになるかも知れない。やる価値は十二分にあります。」

芳佳「うーん……私はそこまでは……」

平沢「ヒラサワを一人にしていいのか? 人目が無ければどこにだって忍び込むぞ。引き出しの中とか。植木鉢の下とか。」

芳佳「そんな風に言われたら、着いてくしかないじゃないですか……」

平沢「では、手始めに隊長に伺いに参りましょう。」

芳佳「いきなり本丸ですか!? 多分教えてくれませんよ。水兵さんも言葉を濁してた感じでしたし」

平沢「ダメならそれでよし。」

数十分後

平沢「危うく門前払い食らうとこだった。」

芳佳「だから言ったじゃないですか。一応理由は教えてもらえましたけどね」

平沢「話を聞く限りでは、納得いくかどうかはさておき理解は出来るものでした。」

芳佳「ミーナさんは『男性をウィッチに近づけたくない』って言ってたけど、近付くのも禁止するほど厳しくすることないと思います」

平沢「仕方ありません。みんんさのような若いウィッチの構造的に、男性こそが最も危険な存在なので。」

芳佳「でも」

平沢「ヴィルケ中佐の考えも汲んで差し上げましょう。宮藤さんがこれから戦闘で結果を示せば、彼女も多少の交流は黙認してくれるはず。」

芳佳「……分かりました。すみませんでした、変なことに巻き込んでしまって」

平沢「こちらこそ力及ばず申し訳ない。」

芳佳「じゃあ、これで終わりってことで」

平沢「はい、解散です。」



平沢「……」



平沢「さて、一人になったところで調査を続行する。」

シャーリー「中佐の男嫌い?」

平沢「ヴィルケ中佐が男性を強烈に忌避する訳の一端を知りたい。」

シャーリー「うーん……」

平沢「イェーガー中尉にもそういった経験がございますか。」

シャーリー「ある。この基地にいる、バイクが趣味の男たちと長い時間話したりしてると」

シャーリー「後で隊長に呼び止められて、『もうちょっと節度を持って接してね』ってたしなめられたりするぞ」

平沢「なるほど。」

シャーリー「ルッキーニはどうだ?」

ルッキーニ「んー、知らない男の人に着いてっちゃダメって言われるけど、そのほかにはなんにも注意されないよ。男の子と遊んでても平気だし」

シャーリー「村の子供はまだ小さいからな……」

平沢「ということは、私や宮藤さんがここに来る遥か昔から、501は男子禁制だったと。」

シャーリー「遥か昔って……まあそういうことだろ。あたし自身は不便だと思ったことはないけどな」

平沢「おや。」

シャーリー「この部隊は、隊長とか坂本少佐がきつめに締めるくらいで丁度いいんじゃないかと思う。ほら、あたしらって割と規則に緩いからさ」

平沢「私もヴィルケ中佐の方針が誤りだとは思いません。」

シャーリー「そうだろ?」

ルッキーニ「隊長、怒ると怖いけど、普段はマーマみたいに優しいんだよ。私も隊長がダメって言ったことは絶対やらないもん!」

平沢「彼女が信頼されているようでなによりです。」

シャーリー「当然。あの人以外にここの隊長は務まらないって断言出来るよ」

平沢「そうですね。では、そろそろ次のターゲットを追いに行きます。ありがとうございました。」

ペリーヌ「リーネさんが成長したのは喜ばしいことだけど、あの豆狸にはそろそろ釘を刺しておかないといけませんわね……」ブツブツ

平沢「クロステルマンさん。」

ペリーヌ「ひっ!」

平沢「おはようございます。ヒラサワです。」

ペリーヌ「ここ、今度はなんの用ですの!?」

平沢「そう身構えずともよろしい。」

ペリーヌ「あんなことをされたら誰だって警戒するに決まってるでしょう!」

平沢「話を伺ったらすぐに退散します。ヴィルケ中佐について聞いて回っているのです。」

ペリーヌ「中佐について?」

~~

ペリーヌ「そういうことでしたの」

平沢「クロステルマンさんならなにかご存じかと。」

ペリーヌ「……悪いですけど、お答えできかねます」

ペリーヌ「私たちは軍人ですのよ。部下は上司に絶対服従。上官が白と言えば黒も白に変わるように、上官の命令は全て正しいのですわ」

ペリーヌ「中佐がそのように定めたのなら、私やあなたが規則について疑問を感じたり、口を挟む必要なんてこれっぽっちもありませんの。それが統率というものでしょう?」

ペリーヌ「それに、隊長の身辺をこそこそ嗅ぎ回るような真似も、誉められたものではないですわね。というか、仮にも空軍大尉であるあなたの立場を鑑みれば、まず宮藤さんを諭すべきだったのでは?」

ペリーヌ「以上のことから、私があなたに教えてあげられることはありませんわ。よろしいかしら」

平沢「はい。地球の端から零れ落ちる瀑布に打たれて反省致します。」

ペリーヌ「…さ……」

平沢「さ?」

ペリーヌ「い、いえ、なんでもありません」

平沢「今なにか言いかけただろ。」

ペリーヌ「何も言ってませんわ」

平沢「『さ』ってなんだ。え、おい。」

ペリーヌ「あなたの聞き間違いです!」

平沢「……」

ペリーヌ「全く……私はこれで失礼致しますわ!」

平沢「あ。」

ペリーヌ「っ……まだなにか……」

平沢「今言われて思い出したが、私は空軍大尉だった。」

ペリーヌ「……はっ!」

平沢「そしてクロステルマンさんは中尉。すなわちヒラサワの部下であると言える。」

平沢「そいで、クロステルマンさんのお話では、部下は上司に絶対服従だとか。」

ペリーヌ「あ、あ」

平沢「では、クロステルマン中尉。」

平沢「知っていること全て、教えて頂く。」

ペリーヌ「はぁ、仕方ないですわね……」

ペリーヌ「坂本少佐なら、きっと中佐の命令の理由をご存じのはずですわ。さっきはそう言いかけましたの」

ペリーヌ「坂本少佐とミーナ中佐は、501の設立以前から面識があったとか無かったとか……どちらにせよ、部隊運営に際してミーナ中佐が最も頼りにしてるのは、坂本少佐に違いありません」

ペリーヌ「最も、あの方がそう簡単に教えてくれるとは思いませんけど。なにせ中佐がこんなにも隠したがっている秘密ですわ、本人の許可もなく話したりするはずないに決まってます」

ペリーヌ「こんなところかしら。あとはもう何も知りませんわよ」

平沢「ありがとうございます。」

ペリーヌ「……平沢さん?」

平沢「はい。」

ペリーヌ「あの、少佐には、私がばらしたって秘密にして頂けると……」

平沢「そのつもりです。波風立てるのが目的ではないので、その辺は心得ております。」

ペリーヌ「そ、そうですの。それなら構いませんわ」

平沢「では。またなにかあれば尋ねに参ります。」

ペリーヌ「も、もう許してくださいまし!」

以上です。
間隔が開いて申し訳ないです。



このスレにいるのって
『馬の骨かつSWを知っている』層と
『馬の骨ではないけどSWを知っている』層が多いもんだと思ってて、今まで省けるところは省いてきちゃったけど(バルクホルンのくだりとか)
もしSWを知らない馬の骨や、まさかのどっちも知らない層がある程度いるなら、もうちょっと丁寧に書こうと思います。どうでしょうか?

馬骨少年はヒラサワのことしか考えないのか(偏見)

SWについてキャラしか知らない馬の骨が多いということは、これから先の分岐でどんなシナリオになっても違和感なく受け入れてもらえるということだな。

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