にこ「サンタこわい」 (97)

雪が降りしきるホワイト・クリスマス・イヴ

少女は、自慢のツインテールを揺らしながら雪に足跡を刻んでいました

ーー財布を覗き込みながら




これは音ノ木坂学園スクールアイドルμ'sが結成される、少し前のお話




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にこ「ねえおねがーい!
にこもうちょっとだけ働きたいんだけどー!」

店長「駄目駄目!
労基法に反してるから!」

にこ「別ににこ訴えたりしないし...」

店長「俺が嫌なの。
そもそも今日はクリスマス・イヴだぞ?仕事が終わったら女子高生は一目散に街に繰り出すのが普通だろう」

にこ「にこはクリスマスに浮かれたりしません。スーパーアイドルだからこの格好じゃ街も歩けないし」

店長「はいはい、じゃあ早く帰ってくれスーパーアイドル」

にこ「えー、ねえお願い店長。
今日だけお金足りないのー!シフト延長してー」

店長「残念だがクリスマスに居場所を無くした男達のシフトが押してる。はい、さよならお疲れ様」



メイド喫茶に勤務する矢澤にこ、高校二年生は、財布を覗き込みながら雪を踏みしめる


にこ「くそー...
ちょっと今月バイト削りすぎたか...」

にこ「ツケが回ってきた...
これじゃケーキも買えないしプレゼントも...」

にこ「くぅ...チビ達はすごい楽しみにしてるしなあ...」

にこ「あー、どうしよ...」

矢澤にこがついたため息は、白い塊となって空へと登り消えていく

今日は自分がサンタにならなければいけないというのに、肝心の資金が底をついた

いっそ本物のサンタさんがプレゼント役を担ってくれれば、かなり楽になるのだが



にこ「...いや、バカな考えはよしなさい。空想にすがるくらいならば一刻も早く現実的な打開策を...」

矢澤にこがサンタさんのいないことを知ったのは実に小学4年生の頃である

ありがちな話だが、サンタの登場を待って夜中まで起きていたら、お母さんが忍び足でプレゼントを運んでくる光景を目撃してしまったためだ


別段ショックでも無かったが、せめて妹達には自分より長く夢を見ていて欲しいと思う


だが肝心のプレゼントが無いのではサンタがいるいないの問題ではないではないか!

にこ「どうすればいいのよクソッ!」

矢澤にこは怒りに任せて足元の雪をおむすびの如く握り固めた後に空高く放り投げた


矢澤にこの放った雪玉は綺麗な放射線を描き地面に落下して行く

落下する地点には、知らぬ人の家の煙突があり、そして...

にこ「あ」

間抜けな声をあげた時には遅かった

おにぎりのように握り固めた(ただし込めたのは優しさではなく怒りだ)雪玉は、煙突にしがみついていた赤い服を着た不審者の後頭部にクリティカルヒットしたのだった

不審者は、「いってー」と漫画のような声をあげて煙突から落ちて行った

にこ「やば」


にこ「下は雪だから死んではいないだろうけど...」

にこ「あ、いた。
だ、大丈夫ですかー...?」

不審者「...」

にこ「...気を失ってるだけだよね」

にこ「あのー、すいません。
ごめんなさい、狙ったわけじゃ無いんですけど...」

不審者「...」

にこ「...ちょっとー?」ペシペシ

不審者「...」

にこ「...」



にこ「おい!!!
起きなさいよちょっと!!!
大体あんた何なのよ煙突に登ったりして!!!はやく起きないと警察に突き出すわよ!!!」

不審者「うわわあああ、えっ、何、誰!?」


にこ「起きたみたいね」

不審者「え...あれ、なんで俺こんな...あ、いってぇ...」

にこ「足捻挫してる...
はあ...まあ悪いの私だし、手当くらいはしてあげ」

不審者「えっ、ウソ足捻挫してる!?あ、本当だ痛い!!えっやばいやばい、やばいよどうしてくれんの!!」

にこ「お、落ち着きなさいよ、捻挫くらいで」

不審者「捻挫くらいってなんだよ!!大問題だよ!!どうすんだよこれ!!」

にこ「し、知るか!!あんたが煙突にしがみついてたのだって原因のひとつでしょ!なんであんなことしてたのよ!!」

不審者「仕方ないだろサンタなんだから!!」


にこ「...は?」

不審者「あああどうしよう...
これじゃソリに乗れないし煙突にも登れない...」

にこ「...あのさ」

不審者「なんだよ!!」

にこ「帰っていい?」

不審者「え?」

にこ「さよなら」

不審者「いやちょっとちょっと!
待ってよ!え、正気!?本気で帰ろうとしたの今!?けが人残して!?」

にこ「けが人じゃなくてどう見ても不審者でしょうが!!不審者には近づくなって小さい頃から言われて育ったのよ!」

不審者「今でも小さいじゃないか」

にこ「どつくぞ!!」


不審者「えっ高校二年生!?」

にこ「そうよ」

不審者「へえ...驚いた。
高校二年生ともなると、サンタはもう見えないって人がほとんどなんだけどね」

にこ「あくまでもサンタ気取りなのね...」

不審者「気取りっつーかサンタだからね。ちょっとした下見してただけなのに雪玉ぶつけられたからね」

にこ「完全に不審者でした」

不審者「どこがよー!
見てよこれ赤い服ぅー!完全にサンタっしょー!」

にこ「悪いけど現実に研ぎ澄まされた目だとコスプレにしか見えないのよ。しかも相当程度の低いやつに」

不審者「コスプレ?
ああたまにコスプレ衣装をプレゼントに頼む子いるけど。高いよねあれ」

にこ「知らんけども」


にこ「あ、やばっ
そろそろ帰らないと...」

不審者「なにかクリスマス特有の破廉恥な用事でも?」

にこ「破...無いわよそんなの!!!妹達が待ってるだけよ、ていうか破廉恥な用事って何!」

不審者「あれ困るんだよねぇ。
俺が入ろうとしてるのに男女で乳繰り合ってさあ。入りにくいったらありゃしない」

にこ「夢のある話をしろよサンタ!」

にこ「とにかく、私帰るから...
捻挫の件は...本当にいいのよね」

不審者「気にしないでくれ...
だが一つ聞かせて」

不審者「君、ケーキは?
それに七面鳥もないしシャンパンも持って無いじゃないか」

にこ「う...」


不審者「クリスマス...正確にはイヴだが、お祝いをするにはちょっと持ち物少なくない?」

にこ「し...仕方ないでしょ...
お金ないのよ...」

不審者「...ほう」

にこ「...質問に答えたから帰る。
雪玉ぶつけて悪かったわね」

不審者「どうやら利害が一致したようだね」

にこ「え?」

不審者「矢澤にこ君。
君に折り入って頼みがある。図々しいが、君には聞く義務があると思う」

にこ「な、何よ...」

不審者「サンタクロースを...
代わりにやってくんね?」

にこ「ええ...」



にこ「色々と何言ってんの...
本当に通報するわよ...」

不審者「だってさぁ!
今夜俺ここらへんの子どもにおもちゃ配る予定だったのにさあ!足がこれじゃさぁ!」

にこ「だからってなんでにこが!
全然利害一致してない!」

不審者「サンタクロースってね、結構時給いいんだよ」

にこ「だから夢ーーー!!」

不審者「な?
頼むよ、ここらへん全然子ども少ないしさ!お金も稼げるし!」

にこ「嫌よ!めちゃくちゃすぎる!帰るから!!」

不審者「...」

不審者「子ども達が...悲しむだろうなぁ...」

にこ「」

不審者「君にも妹達がいるだろ...?
悲しい顔が、目に浮かぶ...」

にこ「」


ーーーーー
ーーー


こころ「えー!今日クリスマスやらないんですか!?」

ここあ「にこにーの嘘つきー」

にこ「いや、違う違う!
明日やることにしたのよ!今日はイヴって言ってね、本当のクリスマスでは無いから」

ここあ「そうなの?」

こころ「そう...なんですか」

にこ「明日は七面鳥とショートケーキとジュース買ってパーティやるからね!」

ここあ「ママは帰ってくる!?」

にこ「ママ...は忙しいらしいから帰ってこないかもだけど...でもサンタは来るわよー!」

こころ「あ、そっか!
ここあ、早く寝ないと!」

ここあ「そ、そうだね!
おやすみにこにー!」

にこ「はい、おやすみー」


サンタクロースの来訪を期待してか、いつもより一時間ほど早く寝付いた妹達を見て、思う

私は、今日本当のサンタになるのよと

こころ「うーん...」

ここあ「ん...」


にこ「...寝たわね」

にこ「...さて、行くか」


澄んだ空気の中で煌めく空の星を見上げながら、自称サンタに指定された公園へ向かう

ブランコに、足を包帯でぐるぐる巻きにした男が座っていた

サンタ「お、本当に来た」

にこ「...本当にいた」

サンタ「これがかの有名な空駆けるトナカイだよ。どうだ、信じたかい?」

にこ「悪いけどただのソリにしか見えん」

サンタ「あー、信じてない人には見えないからただのソリなんだよね。残念」

にこ「見ないと信じられないのに信じてないと見れんとは何事か!!」

サンタ「ま、ただのソリでもおもちゃを自分の手で運ぶより楽だしさ、持って行きなよ。あとこれは子ども達の住所と君の衣装ね」

にこ「以外と本格的ね...」


サンタ「個人情報は守っているからね、心配しなくていい」

にこ「家には、マジで煙突から入ったりするわけ?」

サンタ「んー、別に煙突でもいいけど、今日び煙突がついてる建物なんて銭湯くらいじゃね」

にこ「言われてみると確かに。
え、じゃあ正面突破ってこと!?」

サンタ「そうなる。
大丈夫だよ色々道具はあるし。いやバールのような物ではないよ?」

にこ「泥棒じゃない!
いや泥棒じゃないけど不法侵入!!」

サンタ「煙突から入ったって泥棒は泥棒だ。正面から入ったってサンタはサンタだよ。矢澤くん」

にこ「不安すぎる...」


サンタ「さ、衣装にも着替えたことだしあとは君一人で行くんだ。健闘を祈るよ」

にこ「真冬に公衆トイレで着替えることになるとは...でもこれあったかいわね」

サンタ「完全防寒だよ。トナカイの毛で編んで魔法をかけたからそれを着ている間は寒さを感じることは無いだろうね」

にこ「わけ分かんないって...
まあいいや。行って来るわ」

サンタ「頑張ってね。
分からない事があれば内ポケットのサンタ手帳で確認してくれ。それでもだめなら電話しろ」

にこ「番号知らないけど」

サンタ「呼んでくれればかかるよ」

にこ「意味わっかんねー行って来まーす!」



にこ「...なんだ、たったこれだけか。本当に楽そうね」

プレゼントを配る子ども達の名簿を眺めながら矢澤にこは呟く

大体把握できたので右ポケットに名簿をしまう
代わりに内ポケットからサンタ名簿を取り出し、開く

にこ「えーと、子どものいる家の鍵はズボンについている鍵で開けられる。ただしサンタを信じていない子、悪い子の場合はこの限りではない...か」

にこ「つまり、本気でサンタを信じている子はこれだけってことね...
まあ、私も信じてない子の一人だけどさ」

にこ「最初は、えーと...星空 凛...?」

にこ「何この苗字。ふざけてんのかしら」

にこ「まあいいわ。家は...ここね」



星空家は珍しい名字の割りに家は普通の一戸建てであった

ドアの前に立ち、矢澤にこは腕を組む

にこ「しかし入れるとはいえ、ふっつーにドアから入って行くのも罪悪感が...」

にこ「じゃあ窓から...って、余計泥棒っぽいか」

にこ「仕方ない...お邪魔しまーす」

にこ「うわ...この鍵本当に開くよ...
サンタこわー...」

にこ「普通の家ね、ターゲットは星空凛。一人娘...」

にこ「部屋は二階の階段登ってすぐのところ、行くわよ!」


凛「...」

にこ「寝てるわね...」

にこ「星空凛の欲しい物は...え、ワンピース?ボーイッシュな子なのに意外ね」

にこ「さて、配って終わり...」

にこ「...あれ」

星空凛は、ベッドの上で寝息を立てていた
プレゼントを置いても起きる気配はない

ただ、毛布に埋れていて気づかなかったが、星空凛の隣にもう一人、いる

にこ「あれ...星空凛って一人っ子よね...?」

女の子「...」

にこ「じゃ、じゃあこの子誰よ!!」


サンタ「はいはい、こちらサンタ」

にこ「うわっ、本当にかかった!
こわいなサンタ!」

サンタ「何故いきなり恐れられている」

にこ「き、緊急事態。
一人っ子の女の子にプレゼント届けたんだけど、隣にもう一人女の子が寝てる!」

サンタ「ええー?
家間違えたんじゃねー?」

にこ「間違えてないわよ!
珍しい名前だから間違えるはずない!」

サンタ「名前は?」

にこ「星空凛よ!」

サンタ「えーと...あー、はいはい。
なるほど、あれだろ、茶髪のボブヘアーの女の子だろ?隣に寝てるのは」


にこ「えっ...そ、そうみたいね」

サンタ「幼馴染だよ。
小泉花陽。彼女もサンタを信じてる子の一人だからプレゼントあげな」

にこ「本当だ、名簿にある...
なんで一緒に寝てるのよ...」

サンタ「仲がいいのさ。
今日はクリスマス会があってお泊りだそうだしな」

にこ「...にしてもあんた、知りすぎじゃない...?」

サンタ「個人情報は守っているからね」

にこ「サンタ怖いわー...」



星空凛にはワンピースを
隣に眠っている、彼女の幼馴染らしい小泉花陽にはアライズの限定版DVDを枕元に置いた

にこ「この子...何てものお願いしてるのよ...私が欲しいくらいだわ」

にこ「でも仕方ないわね...私は渡す側だし...」

にこ「にしても...
アライズの限定版DVDを入手するなんて...一体何物なのよサンタ...」

にこ「...サンタこわー」

知らない子ども達の寝顔を今一度眺めた後、矢澤にこは家を後にした

一軒目は完了だ


にこ「えーっと次は、高坂?」

名簿には高坂雪穂とあった
どうやら姉もいるようだ


にこ「なるほど、中学二年生の子がいるのね」

にこ「姉の方は高校生だしまさかお願いはしてないと思うけど...まあ一応持って行くか」


次にプレゼントを届けるのは高坂家
"穂むら"という看板を構えた立派な饅頭屋でもあるようだ

しかし、前までやって来ると少し気になることが生じた

にこ「灯りが...ついとる」


にこ「あれ...これ大丈夫?」

にこ「寝てないとプレゼント渡せないわよね?」

思わず店の前で立ちすくむ
これは予想外だ
ていうかこんな時間まで起きてるとか悪い子ではないのか

にこ「どうしよう...で、電話するか...?」

にこ「...いやでも、うーん」

にこ「...あ、電気消えた」

にこ「バレてるんじゃ...いや。
入りましょう!」

矢澤にこは穂むらの戸に手をかけ、開けた

鍵がかかっていないことには気付かなかった


にこ「お邪魔しまーす...」

にこ「高坂雪穂の部屋は二階に登ってすぐ右ね」

にこ「よしさっさと...」

穂乃果父「...」

にこ「...うわぁっ!!」

暗がりに佇む大男

板前のような姿をした男は、言葉は発しないがこちらをじっと見ていた

おそらくこの家の主人であろう

穂乃果父「...」

にこ「わああ違うんです!!」

にこ「(み、見られた!!
父親...!?これ、不法侵入で訴えられない...!?)」

にこ「(ていうか...サンタ的にこれ大丈夫なの...!?)」

穂乃果父「...」

にこ「...ッ」

穂乃果父「...」

にこ「(なんも喋らない!!親父こわー!!!)」


穂乃果母「あら、いらっしゃったの?」

にこ「え?」

店の電気がつき、奥から女性が出てくる
女性の持った盆にはお茶とお茶菓子が乗っている

穂乃果父「...」コクリ

穂乃果母「いつもの方とは違うんですね?電気を消した合図で入って来たからいつもの方かと思ってたのに」

にこ「えっえっ、ちょっ、これ...」

穂乃果母「なんだか可愛らしいサンタさんね」

穂乃果父「...」

にこ「(これいいの!?
全然ばれちゃってるけども!!)」


高坂夫妻は、サンタを見ても、あるいは不法侵入の娘が入って来てもまるで落ち着いていた

まるで待ち構えていたようである


穂乃果母「それでプレゼントの方は?」

にこ「あっ...えっとこれ...ですかね?」

穂乃果母「あらー!
雪穂ったらいいのもらって〜!」

にこ「あとこれも...」

穂乃果母「あら、穂乃果のまで。
いいんですか?」

にこ「入ってたので...
リストバンドですけど」

穂乃果母「そうですか。
きっと喜びます、あの子」

穂乃果父「...」コクリ



穂乃果母「では、しっかりあの子達の枕元に置いておきますからね!」

にこ「お、お母様が置くんですか?」

穂乃果母「はい。
サンタさんも最近忙しいでしょう?
ですからプレゼントだけ受け取って、私達が枕元に置くというシステムなんです」

穂乃果母「他の家も結構やってるって聞きますよ」

にこ「へ、へえ...」

穂乃果父「...」ドウゾ

穂乃果母「寒い中ご苦労様です。
お茶菓子をどうぞ」

にこ「あ、いただきます...」


にこ「うまっ...!」


お茶菓子を食べた後、矢澤にこは穂むらを後にした

高坂夫妻は「来年もよろしくね」と言ってくれた

不思議な人達である


サンタ「ああ、高坂さんか。
あの人達はすごいよ。大人なのにサンタが見えるんだ」

にこ「見られても平気なの?」

サンタ「逆になんでダメだと思った?」

にこ「いや...親にサンタがプレゼント渡して、それを親が枕元に置くのがアリなら...」

サンタ「なら?」

にこ「だったら...うちにもサンタが...」

サンタ「それは分からんね。
親が買って置いたのかも。だって君信じて無かったんだろ?サンタ」

にこ「...そっか」

そうだ
サンタを信じていない子の家にサンタは入れないんだった

こころとここあの元にサンタが来なかったのも、私がいたからかもしれない


にこ「次は...最後ね」


名簿の最後にあった名前は、西木野真姫

西木野総合病院の娘らしい
その事は家の前に立って痛いほど実感できた


にこ「で...っか」

にこ「ここに入れっつーの?
いやいや...完全にセコム入ってんでしょうよ...」

にこ「あ、でも...」

上を見上げると、あった
大きな大きな煙突だ

にこ「いよいよサンタらしくなってきたわね...!」

矢澤にこはソリに詰んだプレゼント袋を掴むと、鍵で門を開けて敷地に足を踏み入れた


サンタ「え?煙突があった?
しかももう登っちゃったの?」

にこ「ええ。ご丁寧にハシゴまでかけてあったからね」

サンタ「うーん。
まあ煙突から入りたいなら止めはしないけど、オススメはしないかな」

にこ「オススメとかいいから。
にこは煙突からどうやって入るかを聞くために電話したのよ」

サンタ「そりゃ普通に、煙突の内側の壁に足と手をついてだね、徐々に下って行くんだ。でも大体ずり落ちてススだらけに...」

にこ「あ」

サンタ「どしたの?」

にこ「煙突の内側に、ハシゴある...
しかも、中めっちゃ綺麗」

サンタ「なにそのイージーモード」


ハシゴをつたって煙突の中を下って行くと、部屋の中に出ることができ


どうやらリビングの暖炉らしい

にこ「おお...初めて見た。暖炉に繋がってるんだー。さすが金持ち」

にこ「ん?落書きしてある。
ようこそサンタさん?すごい歓迎ね...よいしょ」

暖炉から這い出ると、丁寧にスリッパが揃えてあった

隅には大きなクリスマスツリーが光っており、ミニテーブルの上には手紙とクッキー、そしてミルクが置かれている

にこ「欧米か...
これはサンタさん信じきっちゃってるわね...ここあくらいの小さい子なのかしら」

にこ「部屋は2回の一番奥。
うわー、広い...」

にこ「さっさと行きましょ。
小さい子相手なら楽だわ」


矢澤にこはクッキーを一枚いただき、手紙をポケットにしまうと階段を忍び足で登って行った



にこ「(でかいじゃない!!)」

部屋に入って早々、矢澤にこは大声を出しそうになった

このクリスマスの浮かれようは完全に小さな女の子だと思っていたが、ベッドに眠っているのは女子にしてはかなり背の高い部類に入る少女だった

にこ「プロフィールよく見てなかった...中学生だったのね...しかも三年」

にこ「ていうか髪赤っ!!不良じゃない!」

にこ「なるほどなるほど...
病院の娘でボンボンなのね...!」

にこ「手紙があったわよね。
何が欲しいのかしら...ボンボンだし、どうせ高価な物が...」

にこ「...え」


西木野真姫の用意した手紙の文面は、とても綺麗な文字で綴られていた

サンタさんへ
の言葉から始まり、寒い中来てくれてありがとうということ、自分は一年間いい子にしていたということ

その他もろもろが、不良とは思えない丁寧な言葉遣いで書かれていた

そして、欲しい物の欄には少し大きめに

"友達"と書いてあった


にこ「私には友達がいません、来年から音ノ木坂に入学し高校生になりますが、とっても不安です...」

にこ「サンタさん、どうか勇気をください。友達をつくれる力をください。私はいつも人の前では素直になれません。」

にこ「どうかよろしくお願いします...西木野真姫」

にこ「...」

手紙を読み終えた矢澤にこは、手紙を閉じると、今一度西木野真姫の顔を見つめてみた

気づかなかったが、とても整った顔立ちをしている
アイドルにでもなれば、自分に並ぶ存在にもなり得るかもしれない



にこ「友達って...そんなの、無理よ...」

にこ「でも...でもね」



矢澤にこは西木野真姫の頭を撫でた

知らない少女だが、自分に似ているように思えて仕方が無かったのだ

起きてさえいれば、私が友達になってやるとでも言ってやりたかった


しかし、彼女はサンタを信じている
想像しているのはこんなツインテールのサンタではないだろう
起こして姿を見せるわけにはいかない

にこ「...」

矢澤にこは、プレゼント袋の中からクマのぬいぐるみを取り出し、西木野真姫の枕元に置き、部屋を後にした


にこ「あと一年間待ってなさい」

にこ「...あんたが入学するのを、矢澤先輩が待っててあげるわ」



サンタ「終わったみたいだね、お疲れ」

西木野邸を出ると、すぐに携帯に連絡が来た
自称サンタである

にこ「そっちからもかけられるの?」

サンタ「うん」

にこ「こわ...」

サンタ「さて、仕事は完了したよ。
さっきの公園まで戻って来てくれるかな?」

にこ「あのさ、もう一軒行きたい所があるの。リストには無いんだけどさ」

サンタ「リストにない?
それは悪い子ってことかい?」

にこ「いや...信じてないんだと思う。でも、届けたくて」

サンタ「...ほう」

サンタ「なんかサンタらしくなって来たじゃない!さっきまで存在を否定すらしていたのに!」

にこ「うっさい!まだ信じてない!
トナカイも見えないし...」

サンタ「一応トナカイもいる物として扱ってるしね」


思いソリを引きずりながら、目的地へと急ぐ

こんなソリを引きずるくらいなら、袋だけ抱えていた方が楽だと思いつつ、自称サンタの話を聞く

サンタ「ま、リストに載ってなくともプレゼントを届けるのは可能だよ。でも注意点がある」

にこ「なによ?」

サンタ「サンタを信じてない子には見られちゃ駄目。通報されるかもしれないし」

にこ「サンタは信じてない人には見えないんじゃ?」

サンタ「君サンタじゃないじゃん(笑)」

にこ「そうだった...」

サンタ「鍵は左ポケットに入っている細い金属の棒があるだろう。それを使ってくれ」

にこ「どうやるのよ」

サンタ「猿でもピッキングできる魔法の棒さ」

にこ「こわいわーサンタ...」


矢澤にこが目指している家は東條希の家だった
東條希とは矢澤にこの数少ない...
いや、たった一人の友人である

彼女はこの齢にして一人暮らしだと、前に聞いたことがあった

リストに名前が載っていないということは、きっと幽霊は信じているくせにサンタは信じていないのだろう


では親もなく、サンタも来ない彼女に、一体誰がプレゼントを届けるのだろう?

彼女はずっと、プレゼントのないクリスマスを過ごしていたのではないか...

そう考えてるうちに、矢澤にこはいても立ってもいられなくなったのである


にこ「着いた...ピッキングを開始するわ」

にこ「とはいえ...
ピッキングって結構ガチャガチャ動かすのよね...私に出来るかしら」

矢澤にこは恐る恐る金属の棒を鍵穴に差し込む

瞬間、ガチャンと音がした

にこ「...え」

にこ「うわ、開いてる!
差し込んだだけなのに...なによこれ鍵と同じ...っていうか鍵より楽じゃない!」

にこ「はー、サンタこわいこわい...おじゃましまーす」

矢澤にこは、東條希の部屋に忍び込んだ



部屋の奥にはベッドがあり、東條希が寝ているようだ

部屋を見回すが、やはり希以外の人影は見当たらない


にこ「本当に一人暮らしか...
ま、これくらいはしてやってもいいよね」

矢澤にこはプレゼントの詰まった袋をかき回す

何か...何か希の喜びそうな物...

オカルトやスピリチュアルな物が好きな希の欲しがりそうな物はあるだろうか...

すると、袋の奥の方に、綺麗な柄のカードの束が見えた

にこ「おっ」

矢澤にこは手を伸ばして取り出してみる
タロットカードだった


にこ「あーこれいいかも。こいつ喜びそうだわ」

にこ「他に欲しがるような子もいないだろうし、これでいいや」

にこ「メリークリスマース」

矢澤にこはタロットカードを軽くラッピングすると、東條希の枕元に置いた

屈んだので希の顔がすぐ近くに来る

あ、こいつ意外とまつ毛長いな

と思った瞬間のことだった


東條希の、目が開いた


にこ「(やばっ...!)」

矢澤にこは思わず身を後ろに引く
視界から逃れようとしたのだ

心の中で祈る
頼む、叫び声はあげないでくれ...!

しかし、東條希は叫んだりしなかった
身を起こし、こちらを振り向こうとしている

にこ「(見られる...)」

見られてはいけない
通報されたり、恐怖を与えてしまうかもしれない

何より、自分の同級生が、自分の枕元にプレゼントを置いて行ったのを知れば、彼女はどう思うだろうか

「親のいない私を同情しているのか」と憤るだろうか、それとも不法侵入の件を咎めるだろうか


にこ「(...怒るに決まってんでしょ...!!ピッキングして忍び込んでるのよこっちは...!!)」


色々と考えを巡らせ、どうにかしなくてはいけないと、脳みそをフル回転させる

東條希に身元をバラさずに、かつ不審者とも思われずに、この場を去らなければ...!

真夜中に部屋に忍び込んでも怒られない人物...

そうだ、それはまさしくサンタくらいしかいない

そして今私は...サンタだ


にこ「待てい!振り向くなッ!」

矢澤にこは、出来る限りの低い声で言葉を放つ

東條希は身を震わせると、動きを止めた


にこ「は...はっはっは!
私はサンタだ!君にプレゼントを用意した!」

希「...なんで?」

東條希は、寝起きの声で反応した
どうやら、ぼんやりだが意識があるらしい

にこ「な、なぜなら、君が一人でかなしい顔をしていたからさ!」

にこ「人間は、いつでも笑顔でなくちゃならない!そこで私が、君に笑顔の魔法をかけてあげたわけだよ!」

希「笑顔の...魔法?」

にこ「そうだ、笑顔の魔法だ」

にこ「(何が笑顔の魔法だ...)」

自分で自分に呆れる
だが、ここまで来たらやり切らねばならない


にこ「君はいつも他人の事ばかりで自分の意思を尊重しない」

にこ「だから...タロットカードを用意した!君はこれを使うことで、いつでも自分の声が聞けるだろう!カードが君に告げるのだ!」

希「カードが...私に...?」

にこ「そうだ!
迷った時は使うがいい!!」

希「そっか...カードか...カード...」


東條希は再び眠りの世界に入って行たようだ

ぼすっという音とともに身を倒す

...どうにか凌いだ
見られずに済んだのだ

にこ「ふうー...焦った」


眠る東條希は、幸せそうに笑っていた


東條希の部屋を後にし、マンションの階段を下る

これでサンタのアルバイトは終わりだ
明日も無事パーティが出来る

自称サンタに電話しようと、携帯を取り出す

にこ「任務完了よ。終わったわ」

サンタ「そうかい。見られなかった?」

にこ「華麗に回避したわ」

サンタ「回避ってことは危なかったのかドジっ子め。雪で足を滑らせるなよ」

にこ「誰がドジっ子だ。こちとらサンタ...

言い終わらないうちに、自分の左足が大きく前に滑り、階段を踏み外す

にこ「あっ」

体が大きくバランスを崩す


勢い良く次の段に着地するも体の勢いを止められない

慌ててバランスを立て直そうと、腕を伸ばした時だった

階段の柵の外に、プレゼント袋が放り出される


「いけない」

反射的に腕が伸びた

プレゼント袋の中にはまだプレゼントがある
きっと誰かに渡されるプレゼントが

そのプレゼント袋の中身が、外に投げ出されるのが見える

矢澤にこは、もつれた足で勢いの向きを変え、柵の外に身を乗り出した

「受け止めなければ」


次の瞬間

両手は宙を掻き
足場は消えた


矢澤にこは、急速に迫り来る地面を見ながら、思った





あ、こころとここあのプレゼント...
渡してないや...




ーーーーー
ーーー


サンタは怪我をする
魔法の力で守られたりはしないのだ

現にあの男は煙突から落ちて足を捻挫していた

自分もそうだ
鼻が酷く痛む

目を開けると、星空がすぐそこに見えた

あ、そうか
私階段の柵乗り越えて
そのまま地面に落ちて死んだんだ

矢澤にこは、ひどい眠気の中でそう悟った

心なしかふわふわとした感覚がする
まるで空を飛んでいるようだ
天国にでも登っているのだろうか


「やあ、矢澤くん。やっと会えたな」

頭の方から声がする
天使だろうか

にこ「誰よ...」

「誰かって?僕の名前はジョージだよ」

最近の天使は随分アメリカンな名前を貰うのだな...と矢澤にこは思った


にこ「ねえ...私死んだの?」

「死んだ?
そうだなあ、死んでたかもなぁ」

にこ「あなたは今私を天国にでも運んでいるんでしょ...」

「悪いけどそんな所への行き方知らないよ」

にこ「じゃああんたなんなのよ!!ジョージじゃ分からんわ!!!」

矢澤にこは勢い良く起き上がる
ツッコミ所が多すぎた


にこ「あれ...体がある...!?
腕もあるし...鼻だけだ痛いの」

「本当に死んだと思ってたのかい?
大げさだな」

にこ「大げさって...だって私落ちて...」

「そう、でも僕が受け止めたんだよ。ソリでひゅーんとね!そうでなきゃ死んでた」

にこ「え?」

「鼻を打ち付けてたけどな。ソリの底に」

そこで初めて気づく

自分は今空飛ぶソリに乗っていて、喋りかけてきていたのはそれを引いているトナカイだと

にこ「はぁぁーーーー!?」

トナカイ「はっはっは。驚きすぎだろ」

にこ「いや驚くわ!!」



にこ「本当にいたんだ...トナカイ」

トナカイ「サンタをやっているうちに、僕を信じてくれたようだね。僕も君に会えて嬉しい」

にこ「一つ聞きたいんだけどなんで喋ってんの?」

トナカイ「空を飛ぶんだ。喋ったっておかしくないだろ?」

なるほどと言いたいが納得がいかない。だがあえて黙っておいた


トナカイ「ご主人は君を褒めてたよ。助かったってさ」

にこ「そりゃありがたいわね...
これどこに向かってるわけ?」

トナカイ「ご主人の所だよ」

そう...と呟くと、矢澤にこは欠伸をひとつした
ソリはリズムよく揺れていて、眠気が誘われる

にこ「悪いけどつくまで寝ててもいいかしら...ひどく眠いの」

トナカイ「僕のソリは寝心地がいいって評判なんだよ!ぐっすり眠るといい」

にこ「...わかった...着いたら...起こして...」

トナカイ「任せてくれよ!」

空飛ぶソリの上で、矢澤にこは深い眠りについた








「寝てしまっているよ。どうする?」

「仕方ないな。にしても、立派なサンタだ」

「うん。プレゼントを空中で受け止めてたんだ。すごいよ」

「約束は果たさないとな。
おい、俺たちもひと仕事やるぞ」

「足は大丈夫かい?」

「ああ、一軒だけなら楽勝だ」


「君は俺の代わりをやってくれた。
俺も君の代わりを果たすぜ」







ーーーーー
ーーー



にこにー!

起きてにこにー!

お姉様!起きてください!


いつもとは違う異常なテンションで声を張り上げる妹達

その声に瞼をこじ開けられる


にこ「ん....朝...?」

毛布を被ったまま身を起こす
朝の爽やかな冷気が身に刺さる

にこ「ふぁー...ん?鼻痛い...」

何故か痛む鼻をさすっていると、妹達が自分の部屋に向かってくる足音が聞こえた

瞬間、自分の血が引いて行くのを感じる

やばい
今日クリスマスだ

こころとここあのプレゼント買うの忘れてた


一体昨日の私は何をやっていたのか

色々悩んだ末寝落ちでもしたのか?

まずい、きっとサンタが来ない理由を問いただされるに決まっている

なんと言おう、なんと言おう....!!


こころ「お姉様ー!」

にこ「あー、違うのこころ、ここあ!サンタさんはあのー...!
そう!!捻挫してーーー....」

言いかけたところで目を疑う

こころとここあが、綺麗にラッピングされたプレゼントを抱えているではないか

にこ「....無かったみたいね」


こころ「ですよね!開けていいですか!!」

ここあ「開けていい!?開けていい!?」

にこ「ええ...開けなさい」


どういうことだ?
プレゼントを置いたのは誰?


こころ「わーすごい!
こころが欲しかったアイドルのCD!」

ここあ「私はDVDだよー!
にこにー一緒に見ようね!」

にこ「そ、そうね」


気付かないうちに私が買っていたのだろうか?いやそれはない

なんだ、何が起こっている
こんな都合のいい話があるのか

考え込んでいると、こころが私の後ろを指差して口を開く

こころ「お姉様にも来てますよ!
サンタさん!」

にこ「え...?」

振り向くと、あった
綺麗にラッピングされたプレゼントが、私の枕元に



にこ「う、うおぉおーーーー!!」

こころ「わあああ!!」

ここあ「すげーー!」

ラッピングを剥がすと出て来たのは、アイドルマニアの中でも幻と呼ばれた逸品

"伝説のアイドル伝説"であった


にこ「一体誰が...!!」

こころ「あ、もうこんな時間!私朝ごはん作りますね!」

ここあ「にこにー!
アイドル伝説見よ!ねえ見よ!」

にこ「だ、駄目よ!
最初に見るのは私なんだから!」

ここあ「えー!」


本当にサンタが届けたとでもいうのか?

いや、サンタなど、この世に存在するはずは....


ここあ「あっ!ママ!」

こころ「すごい料理!」

起きてリビングに行くと、ママが台所に立っていた

にこ「ママ!帰って来てたの!?」

ママ「ああ、にこおはよう。
昨日の夜に帰って来たのよ」

こころ「やったー!こころは嬉しいです!」

ここあ「ママー!今日一緒にパーティできる!?」

ママ「出来るわよー」


なるほど...
帰って来た時買って来たのであろう机の上に並べられたケーキにチキン、シャンパン

それを見て得心がいった


全部ママの仕業だったのだ


にこ「ママ。プレゼントありがとう。正直助かったわ。でも私にまでくれなくても」

ママ「あらー?ママじゃないわよプレゼントはー」

にこ「嘘ばっかり。
このご馳走もママが買って来てくれたんじゃないの」

ママ「違う違う。
サンタさんのおかげだから。これ重要よ」

にこ「はあ...じゃあそういうことでいいわ。ありがとう」


この年になって茶目っ気の抜けない母親だ
嘘がバレバレである

ふと、アイドル伝説を包んでいた包装紙に何か書いてあることに気付く

にこ「ん?何これ...」


仕事お疲れ

お給料は、払わせて貰ったよ



サンタとジョージより


ーーーーー
ーーー



穂乃果「あはははは!
おかしいよー!サンタさんはいないよー!」

真姫「何言ってんのよ!!
サンタさんはいるに決まってるでしょ!!無知ねぇ穂乃果は!」

穂乃果「いないもん!
だってウチは毎回お母さんがプレゼント持って来るもん!」

真姫「サンタさんから受け取った物をお母さんが渡してるのよ!」

穂乃果「お母さんもそう言うけど嘘だよー!」

海未「穂乃果...大人気ないですよ...」

穂乃果「だってー」


真姫「ううううーーー!凛!」

凛「なぁに?」

真姫「サンタさん、いるわよね...?」

凛「うん!いるよ!」

真姫「...!」パァァ


凛「うちにはね、小柄でツインテールのサンタさんが来たんだよ!」

真姫「...は?」



真姫「違う!それサンタじゃない!」

凛「サンタだよ!
ワンピース貰ったもん!凛見たもん!」

真姫「夢よそれは!
いい?サンタさんはね、白い髭を生やして、でっぷり太ったおじいさんなの!」

凛「黒髪ツインテールにゃ!」

真姫「だからそれサンタさんじゃないって!コスプレイヤーだって!ねえ花陽!」

花陽「うーん...花陽見たことないから...」

真姫「うううううー...!」

真姫「希!希はサンタさん信じてるわよね!」

希「ちょっとね」

真姫「!!!」パァァ


真姫「そうよね!
希は毎年サンタさん来るのよね!」

希「いやウチサンタさん来ないよ?」

真姫「え?そ、それはいい子にしてないからよ!」

希「それが去年だけ来たんよ」

真姫「いい子にしてたのね」

希「変わらないと思うけどなあ。
でも、サンタさんはいる思うようになったよ。去年で」

穂乃果「えー、本当はサンタさんいるのことりちゃん?」

ことり「ことりも分からないかなぁ」

希「どっちやろねえ...もしかしたら、本当にいるかもよ!カードに聞いてみよか!」

絵里「カードはいいわよ。
上手くフォローしたわね、希」

希「実話なんやけどね」


真姫「なによ"いるかも"とか"いない"とか!いるのよ!サンタさんはいるの!去年もクッキー1枚減ってたしクマさんも届いたの!」

凛「真姫ちゃんクマちゃん人形持ってるの?」

真姫「悪い?
とにかくサンタはいるの!ねっ!にこちゃん!」

にこ「...え?何の話?」

真姫「サンタよ!サンタ!
いるわよね!」

にこ「さぁ....いないんじゃない?」

真姫「...え」


希「うわ...にこっち...」

凛「最低にゃ」


にこ「いやだって考えてもみなさいよ!サンタがいるとしてどうやって家に入ると思う?」

穂乃果「知らないよ...」


にこ「ピッキングよピッキング!コソ泥と同じ!こわいったらありゃしない!」

真姫「え、煙突から入って来るのよ!」

にこ「煙突なんて今日び銭湯くらいしかついてないじゃない!入ったってススだらけよ!」

にこ「空飛ぶソリだって、簡単には乗れないからね?ほぼ徒歩よ!めっちゃ疲れるから!ああこわいこわい!」

にこ「おまけに個人情報知り尽くしてるのよ!欲しい物も年齢も名前も住所も!あーこわー!」

にこ「...」

にこ「....なによ」


希「いや...なんだか」

穂乃果「...まるで知ってるかのような口ぶりだよね」

凛「そういえば、にこちゃんは凛のみたサンタにどことなく似てるにゃ」

真姫「まさか...にこちゃん、サンタなの?」

にこ「...え?」


にこ「...」

真姫「...」


にこ「...んな訳ないでしょ。サンタは男よ」

真姫「そうよねー!
ほら見なさいにこちゃんもこう言ってる!」

凛「真姫ちゃんとにこちゃんは一番の友達だから怪しいにゃー示し合わせてるにゃー」

穂乃果「そうだよー!
やっぱりサンタはいない!うん!」

真姫「穂乃果...!
信じてないとサンタさん来なくなるわよ...!」

希「ほら真姫ちゃん怒らない!
よーし笑顔の魔法や!」

真姫「うわあ!わしわしじゃない!」



絵里「楽しそうねー」

ことり「話だけでこんなに楽しくなるんだから、サンタさんはやっぱり楽しい人だよね」

絵里「そうかもねぇ」

花陽「にこちゃん、サンタさんって、楽しい人なの?」

にこ「知らないわよ...なんでにこに振るのよ」

海未「なんか知ってそうでしたし」

にこ「何も知らないわよ!」



にこ「でもまあ、私から言わせれば...」


にこ「なかなか楽しい奴よ。こわいけど」






にこ「サンタこわい」
ーおしまいー


おわり

まとめ方強引とかクリスマス過ぎてるとかいう人こわいこわい


過去作には、酉をつけたものだと

・花陽「優しいみんな」
・雪穂「School idol diary?」

など
酉をつけていないものだと

・希「エリチカ日記」
・穂乃果「本日のラブライブ」
・???「愛と正義の使者、ラブアロー仮面です」

などがあります
では、読んでくださりありがとうございました

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