ミッキー「エリア88~砂の薔薇(デザート・ローズ)~」翠星石「3スレ目ですぅ。」 (116)

エリア88×ローゼンメイデンのクロスオーバーSSです。

‐CAUTION!‐
1.このスレでの時系列は1980年代です。
2.薔薇乙女達はまともにアリスゲームやってません。
3.ドールも戦闘機に乗ってドッグファイトやらかしてます。
4.架空機も登場します。
5.作者はヘタレなのであんまり面白くないかもしれません。

以上の事を容認できる方のみの回覧をお勧めいたします。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419343874

あ、これ前スレっす。

1スレ目:シン「巻きますか、巻きませんか。」真「巻きますか、巻きませんか。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1396333621/)

2スレ目:シン「エリア88~空駆ける薔薇乙女たち~」真紅「2スレ目なのだわ。」シン「エリア88~空駆ける薔薇乙女たち~」真紅「2スレ目なのだわ。」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1404830912/)

皆さん、お待たせしました。これより投下を開始します。


~日本・新東京国際空港(現成田国際空港)~

アナウンス『到着便のお知らせです。パリ発15:00着エアフランス15便は…』

ここに、1人の男と1体の少女が降り立った。

アナウンス『ニューヨーク発15:20の日本航空821便はただ今…』

男は中東で悪魔となって人殺しの日々を送り…

アナウンス『東京方面行きリムジンバスご利用のお客様は…』

少女と出会い共に空を駆け抜けた…

???「日本の空気だ…。」

そして彼は今、遠く離れていた故郷の大地をしっかりと踏みしめた。



シン(ああ…とうとう帰ってきた…日本へ…我が祖国へ…!)



MISSION88 00(ゼロ)からの再出発

レンタカーのポルシェ911カレラの中では…

ブォォォォォォ…

シン「いいぞ、真紅。」

ガチャ

真紅「ふぅ…14時間も鞄の中にいたのでは疲れるのだわ。」

シン「すまんな、お前の存在はまだ知られちゃならないんでね。」

真紅「ここが…日本?」

シン「そうだ…俺の母国だ。」

真紅の目には高くそびえ立つビル群が見えた。

真紅「随分と風情の欠片も無い国ね。もっと花がほしいところなのだわ。」

シン「言うと思った。」

シンは鼻で笑いながら運転する。

真紅「…空港で会ったあの老人…少し気になるわね…。」

シン「ああ…。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

遡る事1時間前、新東京国際空港国際線玄関

シン(何度諦めかけたことか…死線を潜るたび、どれ程腸をねじ切られる思いで帰りたいと願ったことか…)

感極まったシンの頬を1粒の滴が伝った。

シン(長かった…悪夢に魘されながら明日は消えてしまう肉体ならば、せめて魂だけでもと思い焦がれた…日本…)

???「初めての海外が相当長かったようじゃね。」

シン「え?」

気が付くと、シンの横には1人の老人が立っていた。

老人「ははは…失礼。私にも身に覚えがありますからな。オーストラリアで油田開発をやった時に…初めて日本を出たよ…5年間もなぁ。」

シンと鞄の中に入っている真紅は静かに老人の話を聞いた。

老人「もう毎日毎日カレンダーに印を付けて…事故やらなんやらで死ぬかと思ったことも度々で…もう半分日本には生きて帰れないかもとも思ったんじゃ。」

シン「私もそうでした。」

老人「そして5年経ってここに帰って…当時は羽田じゃったがもう涙が出て…大の大人が泣くまいと思ってもダメでな…。」

シン「お恥ずかしい所を見られてしまいました。」

老人「いや…それでいいんじゃよ。日本人はもっともっと海外に出なけりゃならん…観光旅行やレジャーではなく生活手段としてな…。」
老人「そうすりゃ自分の国の良いとこも悪いとこも見えるようになる。そんで…帰ってきて泣けてくりゃ一人前じゃ。あんたも出た時より一回り大きくなったはずじゃて…」

???「ご隠居様、ここでしたか。」

老人の後ろからスーツを着た2人の男が歩いてくる。

老人「迎えが来たようじゃ。それじゃな…じじいに泣き顔見られたのも何かの縁じゃ。落ち着いたら訪ねて下され。」スッ

老人は名刺をシンに差しだす。

シン「海音寺…八兵衛…私は風間真と申します。」

老人「うむ…じゃあな。久し振りに帰ったからといって食い過ぎて腹壊さんようにな。」

???「ご隠居…」

老人は男達に連れられてどこかへ去っていく。

シン「…………。」

真紅「誰かに似ていると思ったら…マッコイに似ていたわね。」

鞄の中から真紅が声を上げる。

シン「しっ!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

同じ頃、とある海では…

キキィィィィィ…

F-14が1隻の空母の甲板に降りる。

ミッキー「ずえーっ!エンタープライズに着艦なんて何年ぶりかね…!」

翠星石「たまげたですねこりゃ…。」

グレッグ「艦載機80機…兵員400名…原子力空母1隻まるごとか…。」

蒼星石「マッコイさんもよくやりますね…。」

ウォーレン「ああ…。」

金糸雀「スポンサーは誰かしら?」

ブリッジではサキと金糸雀がマッコイと話し合っていた。

金糸雀「私達が与える資金…いくらやりくりしてもこんな馬鹿げた買い物は出来ないはず…。」

マッコイ「たしかにスポンサーはいる…名前を出すことは出来んが決して黒い商人ではないよ…乗組員も全て米海軍の退役軍人…あるいは空母乗組員経験者ばかり…。」

サキ「失業問題で深刻なアメリカをプッシュしたのは上出来だが…エンプラ級を引っ張ってくるなんざ話がデカすぎる。」

マッコイは面倒くさくなってこう言った。

マッコイ「いーじゃねぇか、ぐちぐち考えねぇで!好きに使えとのご好意だ!」

マッコイ「急ごしらえの基地もボカチン食らって手も足も出ないってんだ。渡りに船たぁこのこった。それとも突っ返すかい?」

サキは2秒の間をおいて声を発した。

サキ「………いや。ゲリラにしちゃ持ち物がデカすぎてな…今までのささやかな作戦展開ではスケールに見合わんと思ってな…何処のどいつか知らんが礼を言わせてもらう。」

艦長「艦の名前はどうします?こいつはまだ名無しでさぁ。」

サキ「名前か…。」

サキは静かに金糸雀の方を向いた。

サキ「カナリア。」

金糸雀「何かしら?」

サキ「君が名前を付けるとしたら…この空母を何と呼ぶ?」

金糸雀「ん~そうね~………。」チラ

今度はカナリアはラウンデルの方を向いた。

金糸雀「ラウンデル。」

ラウンデル「何でしょうかカナリア殿。」

金糸雀「あのね、ヒソヒソヒソ…」

ラウンデル「………私も考えていた所存であります。」

金糸雀「だから、ボソボソ…」

ラウンデル「……ふむ…なかなか良いと思いますが…。」

サキ「?」

その場にいた一同は首を傾ける。

金糸雀「サキ、決まったかしら。」

サキ「さて、どんな名前かな?」

金糸雀「えへん…艦番は00…」



金糸雀「名前はエリア00(ゼロゼロ)!0からの再出発かしら!」



一同「「「…………。」」」

サキ「………ふん…君にしてはなかなか洒落た付け方だな。」

マッコイ「00ね…所属不明艦…ってわけかい。」

艦長「00ですか…なかなかいい響ですな。」

ラウンデル「お決まりのようですな。では…」パチッ

ラウンデルは艦内放送のスイッチを入れる。

ラウンデル『空母の乗船員全員に告げる!現時刻10:43を以ってこの艦の艦番は00!艦の名称はエリア00となる!賛同する者は拍手をせよ!』

金糸雀『はい!拍手!』

シーン…

サキ「………滑ったか。」

マッコイ「………滑ったな。」

金糸雀「…………」グスッ

パチパチパチ…

サキ「!」

マッコイ「!」

水銀燈「…………」パチパチパチ…

拍手をしたのは水銀燈であった。

艦長「…………」パチパチパチ…

次に艦長が拍手する。

パチパチパチ…パチパチパチ…

その後も次々に拍手の数は増えていき…

パチパチパチパチパチパチ…

エリア00は拍手喝采であふれた。

ミッキー「00だってよ…なかなか面白いじゃねぇか。」パチパチパチ…

翠星石「サキのことだからてっきりまた88って言うのかと思ったですぅ。」パチパチパチ…

蒼星石「いや、金糸雀が考えたらしいよ。」パチパチパチ…

グエン「へぇ…あのデコっぱちも上手いこと言うじゃねぇか。」パチパチパチ…

金糸雀『今デコっぱちって言ったのグエンかしら!?(怒)』

グエン「おお~怖ぇ怖ぇ!」

キャンベル「ははは…お前顔の割にやることががきんちょなんだよな。」ペシペシペシ…

グエン「うるせー。」

ルロイ「にしても誰がこの空母買ったんだろ?」パチパチパチ…

ライリー「さぁ?」

狼達の新しい居城、エリア00は海を行く…

はい、今日はここまで。
ここで現在のローゼンメイデンと契約者を少しずつ上げていこうと思います。

風間真
原作「エリア88」における主人公。通称「シン」。真紅の契約者。
大和航空実習生としてフランスにいたが、親友である神崎の策略によってアスラン王国空軍外人部隊エリア88で傭兵として戦うことになってしまう。
入隊して3か月後に真紅と契約。以後、作戦の大半を真紅と共に遂行していき、エリア88の撃墜王に成長する。
パーソナルマークは炎のたてがみのユニコーン。
搭乗機体:F-8→F-5E→クフィル→J35ドラケン→F/A-18(砂漠空母の艦載機)→F-4→A-4→F-5→F-20

真紅
原作「Rozen Maiden」におけるヒロイン。「ローゼンメイデン」シリーズの第5ドール。
女王様気質でプライドが高く、マナーに厳しいが、契約者との絆を尊重する他、仲間への思いやりもあり、エリア88に集う姉妹のリーダー的存在となっている。契約者のシンを下僕としてこき使いながらも、彼と共に戦闘に参加し彼をサポートしていく。
砂漠基地の頃はシンの膝の上に座って任務を共にしていたが、山岳基地になってから自らの専用機を持つことになる。
搭乗機体:F5D

お待たせしました。これより投下いたします。

ブォォォォォォ…キッ

シンの乗ったタクシーがホテルに着いた時、ちょうど1台のリムジンも止まっていた。

???「おっ。」

???「どうなさったの、おじい様?」

老人の後に続いて1人の女性がリムジンから出る。

???「やあ若いの…また会ったね。」

シン「え?」


MISSION89 想いは黄昏とともに

???「風間君と言ったね。」

シン「ああ、貴方でしたか。たしか…海音寺さん。」

八兵衛「覚えててくれたかい。宿はここかね?」

シン「はい。今日は正装ですね…何か?」

八兵衛「ひゃははは…つまらん会合でな。爺同士が顔付き合わせて世間話さ。」

シンは八兵衛の後ろにいる女性に気が付いた。

八兵衛「紹介しておこう。孫の美鈴じゃ。」

美鈴「初めまして、海音寺美鈴と申します。どうぞよろしくお願いします。」

シン「風間真と申します。」

海音寺「どうじゃい、一緒に来んか?どーせ飯食って風呂入って寝るだけじゃろ?」

美鈴「おじい様!失礼ですわ!」

シン「お恥ずかしいことにまったく…その通りですが…。」

八兵衛「じゃ、行こ行こ。美鈴をエスコートしてやってくれ。爺相手じゃ早く老ける。」

美鈴「もう!おじい様ったら!」

シン「分かりました。」

シンはそのままパーティ会場へ入っていった。

同じ頃、とある海を進む空母「エリア00」では…

ドギャァァァァァァ…

カタパルトからF-14が射出される。

ゴォォォォォォォ…

ラウンデル『フライトデッキよりミッキー!お前を除いて空母乗りは初めての連中ばっかしだ!1人で喜んで飛んでないでちゃんとめんどー見るんだぞ!』

ミッキー「わーってますよ、ラウンデル少佐!」

嫌そうに返事をしながら空母の周りを飛び回るF-14。

ラウンデル「ったく…。」

サキ「ラウンデル。フライトデッキは私が代わろう。艦載機乗りはミッキーとお前しか経験が無い。」

ラウンデル「はぁ…しかし…。」

サキ「生き残り組の88メンバーは山の基地で離発着をしていたからミッキーがコツを教えればすぐ空母に慣れる。問題はブラシアの新メンバーだ。」

金糸雀「砂漠の陸上基地で作戦していた連中よ。海の上では初歩からやり直しのようなもんかしら。アスラン外人部隊教育隊教官の腕をじっくり見させてもらうかしら、ラウンデル。」

サキ「ユニオンジャックの下アークロイヤルから海賊(バッカニア)共を引き連れて『銀狐』の名をほしいままにしたお前さんだ。1日も早くブラシアのメンバーを88レベルに引き上げてくれ。」

金糸雀「貴方のバッカニアは整備を終えてもう甲板に並んでいるかしら。」

ラウンデル「はっ!で…ではとり急ぎ装備を…」♪~

鼻歌を吹きながらフライトデッキを出ていくラウンデル。

艦長「嬉しそうでんなぁ、ラウンデルはん。」

サキ「元々現場の人間だからな。」

金糸雀「こんな囲いの中からあれを見てたんじゃ腕もムズムズするかしら。」

発艦するF-4を見ながら金糸雀が言う。

艦長「しかし…以前の山の基地でも着陸にストッパーワイヤー、離陸にはカタパルトと空母と実質上は変わらんでしょう…いや、着陸に関しては空母以上に難しい。」

サキ「ははは…そういう問題じゃない。艦載機乗りというやつは船乗りと飛行家を一緒くたにしたようなものだからな…。」

金糸雀「空と海と…上下にロマンを抱え込んでいるかしら…。」

作業員A「レディ!」

作業員B「滑走シャトル装着確認!」

作業員A「OK!バリアーを!」

バッカニアの後ろに防火壁が出る。

作業員A「発艦要員はピットへ!」

作業員C「第1カタパルト圧力上昇!70…80…90。グリーンゾーン!」

作業員A「少佐!打ち出し用意終了!」

ラウンデル『やってくれ。』

作業員A「Good Luck!GO!!」サッ

ドギャアアアァァァァァ!

カタパルトからバッカニアが打ち出される。

ゴォォォォォォ…

その後も次々に艦載機が発進する。

サキ「さすがに手際がいいな…。」

艦長「エンタープライズ、アメリカ、カールビンソン…そんな所で働いていた連中ばかりです。因果なもんすよ。一度は退いた連中ですが…やはり忘れられなくて。」

金糸雀「つくづく思うかしら。」

艦長「は?」

金糸雀「この光景が戦争ではなく…ただ単に道楽ならばどんなにいいことだろうって…。」

艦長「同感です…ただ道楽にするにはちと生々しすぎますな。空母というやつは…。」

サキ「進路を南にとって訓練を続行させろ。ブラシアの連中を1週間以内に実動できるようにするんだ。」

艦長「はっ!」ピッ

サキ「行くぞ、カナリア。」コツコツ…

金糸雀「はいかしら~。」テクテク…

シンはパーティで美鈴と1曲ダンスを踊った。

美鈴「お上手ですのね、まるで泳ぐよう。」

シン「ダンスは久し振りです。申し込んだものの上手く踊れるか心配でした。」

美鈴「そんな…まるで雲の上を飛ぶような気持ちでしたわ。」

シン「そう言っていただけると安心です。」

そこに八兵衛がやってくる。

八兵衛「若いの…なかなかやるじゃないか。」

美鈴「おじい様、そんな呼び方は失礼ですわ。いくら親しいとおっしゃっても…」

シン「いいんですよ、お気になさらなくても。」

八兵衛「親しくは…ないな、風間君。」

八兵衛はどことなく不気味な笑みで話し始める。

八兵衛「君と本当に親しくなるには生死の境を共にしなければならんかもな…。」ニヤリ

シン「…………。」

八兵衛「来週、箱根にあるわしの別荘で園遊会をやる。どうかね?」シャ…

八兵衛は杖に仕込まれた鋭く輝くものを見せる。

シン「断るわけにはいかないみたいですね…。」

八兵衛「そうじゃ…。」

シン「伺わせていただきましょう。」

八兵衛「うむ…当日このホテルに美鈴を迎えにこさせる。」パチッ

シン「…………。」

八兵衛「帰るぞ、美鈴。」

美鈴「当日を楽しみにしております。失礼いたします。」

そのまま会場を出ようとした2人だったが…

八兵衛「あ、そうそう。」

美鈴「どうなさったのですか、おじい様?」

八兵衛「いや、1つ言い忘れていたことがあってな。」

シン「?」



八兵衛「君の小さな友人にも来てもらおうかな。美しい薔薇乙女(ローゼンメイデン)にも。」



シン「!」



平然を装っていたシンもさすがにこの時だけはわずかながら動揺を見せた。

八兵衛「なあに、それなりの配慮はするさ。紅茶も用意しよう、最高のアッサムをな。」

シン「…分かりました。一緒にお連れします。」

八兵衛「じゃ、また後で…。」コツコツ…

シン「…………。」

シンはそのまま自分の宿泊する部屋へ向かった。

ガチャ

シン「帰ったぞ。」

真紅「お帰りなさい。」

シンはタキシードを脱ぎ、外出する服装に着替える。

真紅「あの八兵衛とかいう老人…ただ者ではないわね。」

シン「ああ…何故お前のことを知っているのか…。」

真紅「何にせよ、真紅も行かなくてはならないようね。」

シン「そうだ、すまんが来週は嫌でも外に出てもらうぞ。」

真紅「私は平気だけれど人間達はどう見るのかしら。」

シン「一応、隠密にしてもらえるようだけど…。」ゴソゴソ…

真紅「これからお出かけ?」

シン「ああ…プロジェクト4の調査を頼んだ探偵が資料を調書をまとめたから来てほしいと。」

真紅「そう…いってらっしゃい。」

シン「じゃ。」バタン

というわけでMISSION89完成です。これが年内最後の投下となります。
来年2015年はOVA「エリア88」発売から丁度30年になりますね。
願わくばエリア88をリメイクして最後までアニメ化していただきたいと思っています。
え?TVアニメはもう出てるって?何のことかさっぱりですねぇ。
では皆さん、よいお年を~。ノシ

これより投下を開始します。

シン「すごい量だな。」

シンはとあるネオン街のバーで1人の男から渡された資料の束を手につぶやいた。

???「欠落している情報も多数あります。これ以上の調査は専門以上を使用しないと…。」

シン「専門以上…とは?」

???「CIAやMI6みたいな国家情報機関のようなものでないと。民間の我々ではここが限界です。」

シン「分かった、これが約束の報酬だ。」

シンは札束の入った封筒を渡す。

???「どうも。引き続き調査を続行されますか?」

シン「いや…もう何も出てくるまい。」


MISSION90 さまよえる心の庭


~箱根・海音寺別荘~

八兵衛「ふむ…うん…風間は東洋エージェンシーを使って何かを調査しているというわけだな…うむ…引き続き彼自身の調査も並行して進めてくれ。」

ガチャン

八兵衛「ふーむ…商社でもない、報道でもない。遊び人には見えんし…犯罪者でもなさそうだ。」
八兵衛「あとは軍人か…情報機関の人間かな?いや…それにしては司令系統がはっきりしない。」

八兵衛は窓の外を見ながら考えた。
八兵衛「風間真…か。現在の若者からはとても匂わんあの臭い…火薬の臭いがする。」
八兵衛「そして…ローゼンメイデンという存在…あの動揺ぶりから見ても満更おとぎ話でもなさそうだな…。」

一方、別の場所にある別荘では…

ジョゼ「あ、涼子。今変な男の人がこれを持って。

雛苺のリボンを結んでいる涼子の所にジョゼがやってくる。

雛苺「変な男の人?」

ジョゼ「あんまし人相良くなかったわ。」

涼子はジョゼから手紙を受け取る。

涼子「海音寺八兵衛…なんだ、八兵衛おじ様からのお使いの人ね。」

ジョゼ「知ってる人なの?」

涼子「父の昔からの知り合いよ。日本に来てることは言わなかったんだけど…安田さんが知らせたのかもね。」

ジョゼ「ふうん…。」

涼子「来週…箱根の別荘で園遊会を開くからってご招待よ。」

ジョゼ「行くの?」

涼子「日本にいることがバレちゃってんだからご挨拶しておかないと失礼だわね…でもヒナを1人にはできないし…う~ん…。」

そして園遊会当日。

キッ

美鈴「着きましたわ。さあ、どうぞ。」

シン「すごい招待客の数ですね。」

高級車の中からシンと美鈴が降りてくる。

美鈴「おじい様。」

八兵衛「おう、美鈴。遅かったじゃないか。」

シン「お招きに預かりまして、ありがとうございます。」

八兵衛「おう…若いのも来たね。美鈴、いろいろお客様が来ておる。ご挨拶してきなさい。」

美鈴「はい。」

そう言うと、美鈴は人混みの中へ入っていった。

八兵衛「ま、座りたまえ。」

2人きりになった途端、八兵衛の顔つきが鋭くなる。

八兵衛「単刀直入に言うが、君は何者で何故大和航空を買収したのかね?何が目的だ?」

シン「これはまたいきなり…しかし私の調査はもう大体お済みのようで…。」

八兵衛「大体な…だが謎が多すぎる。年のわりにはな…。」

シン「ま…貴方もただの年寄りではないと思ってましたが…。」

3人の周りを静寂が走った。

八兵衛「それに…君もただの人形ではなさそうだしな。」

真紅「…………。」

シン「先にこれだけははっきりさせておきましょう。私は貴方の敵ではありません。」

八兵衛「わしも…そう願いたい。」

シン「私の事をどれくらい調査なされたかは知りませんが…数年前まで大和航空のパイロット見習生…海外実習教育で渡仏後行方不明。以後は調査不能…そんなところでしょう。」

八兵衛「図星だね…実に鮮やかな姿の晦ませ方だな。プロのスパイでもこうはいかんよ。」

シン「行方不明になったのは自分の意志ではありません。」

八兵衛「ほう…。」

シン「中東に…アスランという王国があります。元アスラン空軍外人部隊、エリア88所属飛行戦闘第1集団第2中隊指揮官…。」

真紅「最終階級は大尉、除隊になるまでの総撃墜数92機、対地目標物撃破約230車両、指定目標攻撃率86%、出撃率95%、自己損失12%。」

シン「…………。」

真紅「親友に裏切られ、外人部隊に入隊させられ、日本を思い、恋人を思い、カレンダーに印を付け、来る日も来る日も死線を彷徨い戦い続け…。」
真紅「そうした3年間の殺人と破壊の数字が、砂漠とは無縁のこの薔薇乙女が見た風間真という人間の全てなのだわ。」

八兵衛「…………。」

シン「調査書の最終項目にこう書き願えれば幸いです。」



シン「この男はもうこの世におらず人には非ず…悪魔にその魂を売り渡し業火の中にて灰になりし…と。」


パチン

八兵衛が指を鳴らすと茂みから2人の男が出てきた。

八兵衛「傭兵だったとはな…君達の勘が当たったよ。」

???「恐れ入ります。」

八兵衛「いい機会だ、紹介しておこう。陸幕2部の司一佐と、内調の藤堂君だ。」

司「司です。」

藤堂「藤堂です。よろしく。」

シン「陸幕2部に内調…いずれも情報活動のプロですね。」

八兵衛「そうだな…ま、政界を離れたとはいえ今でもいろいろと協力してもらっておる。しかし中東のアスランとはな…そこまで情報活動が行き届かなかったと見えるな。」

司「面目ありません。」

八兵衛「さてと…こちらの手の内を見せてしまったんだ。腹を割って話してくれんか?風間君。」

シン「?」

八兵衛「君が東洋エージェンシーを使って調査していた「プロジェクト4」という団体…それに絡んでいると見られる神崎悟という男と…大和航空の一件…。」

シン「…………。」

八兵衛「君もずっと鞄の中では気が滅入るだろう。わし達以外に人はいないから出てきてもいいぞ。」

ガチャ

鞄の中からゆっくりと真紅が出てくる。

真紅「初めまして…私は誇り高きローゼンメイデンの第5ドール、名は真紅。」

八兵衛「これはご丁寧にどうも。わしは海音寺八兵衛、胡散臭い老人と思ってくれて構わんよ。」

真紅「ところで八兵衛、紅茶が飲みたいのだわ。」

八兵衛「分かっておる。最高の紅茶を用意しよう。どんな茶葉でも揃っておるぞ。」

シン「…………。」

爺と人形が談笑しながら歩く図。



シン(…何だこの光景…)


今日はここまで、でわまた。

大変長らくお待たせしました。
これより投下します。

美鈴「あら?おじい様…。」

美鈴は涼子、ジョゼと共に八兵衛を探していた。

美鈴「変ね…何処へいらっしゃったのかしら…さっきまでここで風間さんと一緒に…」

涼子「!」

その言葉に涼子は反応した。

涼子「美鈴さん…あの…今、風間さん…っておっしゃいました?」

美鈴「ええ…風間真さんとおっしゃる方で…ちょっと雰囲気に影があって素敵な…」

涼子「…………!」


MISSION91 再開(Wiederaufnahme)

美鈴「涼子…さん?」

美鈴が振り向くまでの間に、涼子の顔は蒼白となった。

涼子(真がここに…嘘よ…そんなバカな…いいえ…もしかして…真…)

美鈴「どうなさったの!?真っ青よ!」

涼子(しっかりして涼子…同名の別人かもしれないじゃない…それに…どうして八兵衛おじさんと真が繋がるの…!?)

ジョゼ「リョーコ!大丈夫!?」

涼子は駆け寄ってきたジョゼの肩に手を掛けるが…

ギュ…

ジョゼ「痛っ!」

涼子はまるで何かに怯えるように震えていた。

雛苺(リョーコ…どうしたの…?何がそんなに怖いの?)

ジョゼの腕に抱かれて人形の振りをしている雛苺も彼女の異変に気付いた。

ジョゼ「さ、ここに座って…。」

美鈴「お医者様を。」

女性「は、はい!」

涼子「あ、いいの!大丈夫よ美鈴さん!あまりお天気が良いので日当たりしたみたい。デスクワークで身体が鈍っている証拠だわ。ごめんなさい。」

美鈴「そんな…でも本当に大丈夫?」

その頃、別荘の一室では…

八兵衛「ふむ…その話が本当だとすればあの大和航空事件からのことが全部繋がることになる…。」

真紅「大和を買い取ったことにより外資系の人間共の動きが活発になったのは確かなのだわ。」

シン「ただ…揺さぶりをかけてみたものの「プロジェクト4」はそう簡単に姿を現しません。東洋エージェンシーでは民間レベルなので無理でしょう。」

藤堂「私共の方で調査してみましょう。政治と経済情報ならば内調の方がデータが揃っております。」

司「では中東に関しては私共陸幕2部で。」

八兵衛「公安の桂君にも連絡を取ってくれ。神崎という男、大和航空事件の時にしょっぴかれているはずだ。」

藤堂「1週間もすれば報告書は提出できると思います。」

八兵衛「頼む。」

同じ頃、とある海で…

ザバァァァァァァン…

低気圧の影響を受け船体に波が打ちつけていたがエンタープライズ級空母であるエリア00にとってどうということは無かった。

サキ「さすがにこの嵐でもビクともせんな…。」

金糸雀「そうかしら。」

ピコーン…ピコーン…

サキ「現在地は?」

ラウンデル「喜望峰の南300海里です。」

サキ「よし、180度転換して進路を北へ。ジブラルタルへ向かえ。」

金糸雀「いよいよ地中海作戦かしら?」

サキ「うむ。以前の海岸基地をもう一度立て直す。クフィルやタイガー、TSR-2は基本的には陸上機だ。艦載機ではない。」

サキ「プロジェクト4のスエズ侵攻作戦を食い止めるならあの基地で戦うしかない。」

ラウンデル「はい…。」

金糸雀「私達もそれは考えていたかしら。それで…折り入って相談が…。」

サキ「相談?何を改まって…。」

ラウンデル「この地図を見て下さい。」

3人は地図を囲んで話を始めた。

同じ頃、格納庫では…

ウィィィィィィン…カンカン…

翠星石「よう、やってるですね。」

機体の点検が行われていた。

ウォーレン「ああ、やっとまともな整備が出来る。」

ミッキー「今までが散々だったからな。」

翠星石「アッサンとかブラシアの連中は?」

ウォーレン「あれですよ、あれ。」

ウォーレンが指差す方向では…

アッサン「うっぷ…!」

バタン!

トイレに駆け込んだ次の瞬間。

アッサン「げーーーーーーーっ!!」

ミッキー「船酔いかよ。殆ど揺れねえぜ。」

翠星石「今まで地面に足付けて生活してたですからね連中。」

ミッキー「海軍の初歩訓練やり直さなきゃならんなこいつぁ…。」

再びブリッジ。

サキ「そんなことができるのか?理想ではあるが…しかし…。」

金糸雀「やってみるだけの価値はあると思うかしら。」

サキ「ふ…さすがは88の頭脳派コンビ。ぶっとんだことを思いつく…。」

ザザアアアアァァァァァァ…

大嵐の中を00は行く…。

そして再び日本…。

八兵衛「さてと…主人が何時までも姿を晦ませていては場が持たん。戻るとするか。」

3人は部屋を出る。

八兵衛「美鈴がおかんむりじゃろう…はははは!」

突然、立ち止まる八兵衛。

八兵衛「あれは…大そう君が気に入っておる。」

シン「…!」

真紅「…………。」

八兵衛「わしもな…。」

シン「お言葉の意味は分からなくもありませんが…」




シン「いずれ死地に赴くこの身なれば…。」



八兵衛「…分かった…何も言うまい。ただ美鈴は目に入れても痛うない可愛い孫娘。あの娘の涙を見るのは身を切られるより辛い。」

シン「お察し致します。早々に退散して以後、二度とお会いすることはありますまい。」

八兵衛「こちらの庭を抜ければ駐車場に出られる。車はもう回してある。」

シン「ありがとうございます。」

真紅「では…報告書を待っているのだわ。」バタン

八兵衛「うむ…。」

シンは真紅の入った鞄を手に木の間に隠れる。その近くでは…

涼子「何か…変な所に迷い込んじゃったみたい…やっぱり美鈴さんに案内してもらった方が…。」

一方の美鈴たちは…

美鈴「へぇ~、お友達からの預かりものなんだ。」

ジョゼ「そうなの!ヒナイチゴって言うの!」

美鈴「可愛いお人形さんね。本当に精巧で…綺麗で…。」

ジョゼ「お人形さんじゃないもん。私のお友達だもん。」

美鈴「大事にしているのね、お友達を。」

ジョゼ「もし傷ついたりしたら可哀想だから。」

涼子(真の名前を聞いただけであんなに狼狽えてしまって…ああ…でも聞くのが怖い…!)
涼子(別人だったら…やはり失望してしまう…いいえ…ホッとするのか…)
その時、涼子はパリで真紅が旅立つ直前に言った言葉を思い出した。



真紅(大丈夫、真はこの真紅が連れ戻す。だから貴方は…諦めないで)

真紅(今度は私が真を守る番…貴方はここで彼の心を守ってあげて)



涼子(そう…あの時…真紅ちゃんは私にそう言った…諦めないでって…)
涼子(その私が諦めたら元も子もないわ…あの子を…あの人を信じてあげなくちゃ…)
涼子(きっと真も…あの子と一緒にここへ…)

その時、

ガサッ

涼子「きゃっ!」



シン「!」



涼子「!」


風間真
原作「エリア88」における主人公。通称「シン」。
真紅の契約者。大和航空実習生としてフランスにいたが、親友である神崎の策略によってアスラン王国空軍外人部隊エリア88で傭兵として戦うことになってしまう。
入隊して3か月後に真紅と契約。以後、作戦の大半を真紅と共に遂行していき、エリア88の撃墜王に成長する。
パーソナルマークは炎のたてがみのユニコーン。
搭乗機体:F-8→F-5E→クフィル→J35ドラケン→F/A-18(砂漠空母の艦載機)→F-4→A-4→F-5→F-20

F-20タイガーシャーク
シンの専用機。
ノースロップ社のベストセラー機、F-5の改良型として製造するはずだったが、アメリカの武器輸出禁止政策によって輸出が出来なくなり、型式名もF-5GからF-20となった。
F-5にはエンジン2基であったが、F-20ではF-18にも搭載されているF404が1基となり、出力が倍増した。
マッコイがギリシャの訓練所に運んできたものを購入。除隊時にキムに譲渡する。

追記
ついでに現在までの搭乗機体についても紹介。

真紅
原作「Rozen Maiden」におけるヒロイン。「ローゼンメイデン」シリーズの第5ドール。
女王様気質でプライドが高く、マナーに厳しいが、契約者との絆を尊重する他、仲間への思いやりもあり、エリア88に集う姉妹のリーダー的存在となっている。
契約者のシンを下僕としてこき使いながらも、彼と共に戦闘に参加し彼をサポートしていく。
砂漠基地の頃はシンの膝の上に座って任務を共にしていたが、山岳基地になってから自らの専用機を持つことになる。
搭乗機体:F5D

F5Dスカイランサー
真紅の専用機。
アメリカで最初にデルタ翼機研究を行ったダグラス・エアクラフトが開発した艦上戦闘機F4Dの改良型。機体は大型化され、各所が改良されている。
エンジンはF4D-1と同じくP&W J57-P-8ターボジェットエンジンを搭載したが、劇中ではより強力なGE J79エンジンに換装された。
バンバラでの戦闘時にヘリからの銃撃でエンジンを被弾。高度を維持できずにそのまま放棄された。

ミッキー・サイモン
翠星石の契約者。腕はシンとサキに並び、撃墜数ではシンに次ぎ自称エリア88のナンバー2。
ベトナム戦争からの帰還兵で、実家は大企業の社長一家で婚約者もいたが、復員後平和に馴染めず外人部隊に入隊した。
翠星石とは衝突も度々あったが、戦いの中で互いに背中を任せられるほどの深い信頼関係を築く。
パーソナルマークはプレイボーイのラビットヘッド。
搭乗機体:F-100→A-4→クフィル→F-14→F/A-18(砂漠空母の艦載機)→F-100→A-4→F-14

F-14Aトムキャット
ミッキーの専用機。
アメリカ海軍の保有・運用するF-4 ファントム IIの後継機として、グラマン社の開発した可変翼と長射程のAIM-54フェニックスの運用能力を特徴とした、第4世代ジェット戦闘機に分類される艦上戦闘機。
劇中では2機登場しており、最初の機体はイランへ引き渡されなかった分の機体で、砂漠空母の攻撃により撃墜されて失われた。
その後マッコイがどこからか再度入手し、交換部品の入手難や整備性・燃費の悪さに泣かされながらも使用し続けている。
後席は翠星石が搭乗できるように座席を高くしたり、計器やスイッチをせり出させたりしているが、普通の人間も乗れるようにユニット化されており取り外しが可能。

翠星石
「ローゼンメイデン」シリーズの第3ドール。蒼星石の双子の姉。
所謂ツンデレな性格で、清楚で淑やかな容姿に合わずかなりの毒舌家。
だが実は臆病かつ泣き虫で人見知りな為、すぐ誰かの後ろに隠れてしまう。
最初は迷惑者扱いするミッキーを嫌っていたが、身体を張って仲間を守ろうとする姿に次第に惹かれていく。
搭乗機体:TSR-2→JA37

JA37ビゲン
翠星石の専用機
サーブ 35 ドラケンの後継として、スウェーデンのサーブによって生産されたサーブ37ビゲンの戦闘任務主体型。
短距離離着陸性能や軽快な運動性を確保するため複合三角翼という設計を採用。
また着陸滑走距離を短縮するため、戦闘機では極めて異例なスラストリバーサー(逆噴射装置)を追加し、およそ500mでの急制動を実現している。
一旦はセイレーンと共にフランスへ飛んだ翠星石が再びアスランへ戻る際にマッコイから購入(もちろん支払いはミッキー宛)。

グレッグ・ゲイツ
雛苺の契約者。デンマークでバクシーと共に「逃がし屋」をやっていたが、ある事件がきっかけで外人部隊に入隊。
敵の作戦参謀が乗った輸送機と相撃ちになり墜落したところで契約を促す書類を発見し、面白半分で巻きますに丸を付けたことで雛苺と契約する。
雛苺を自分の娘のように可愛がっている。
パーソナルマークはナイフを咥え蝋燭が立てられた髑髏。
搭乗機体:A-4→クフィル→A-4→A-10

A-10サンダーボルトⅡ
グレッグの専用機。
フェアチャイルド・リパブリック社の開発した単座、双発、直線翼を持つアメリカ空軍初の近接航空支援(CAS)専用機。
砂漠空母の頑丈さに業を煮やしたグレッグがマッコイに手持ちの全額を渡して入手を依頼し、NATO軍に配備される予定だったものを手に入れた。
砂漠空母戦には間に合わなかったが対プロジェクト4戦では地上攻撃に大活躍した。
なお、グレッグのA-10は40mmバルカン(実在しない)に換装されている。
山岳基地ではケンの操縦でもう一機登場しているが所在は定かではない。

雛苺
「ローゼンメイデン」シリーズの第6ドール。
泣き虫で甘えん坊かつ我侭で、姉妹の中でも特に幼稚な為、翠星石から「チビ苺」等と呼ばれてからかわれているが、グレッグや他の傭兵達、姉妹への思いやりは強く優しい。孤独が嫌い。
苺わだち(苺の実がついたツル)を操る能力を持ち、契約者であるグレッグの血の気の多さに相まって一時的に相手を束縛したり、戦闘機を縛り付けることが出来る程の強度を持つ。
山岳基地脱出後はジョゼの預かりものとして涼子らと共に日本へ渡る。
搭乗機体:MiG-31

MiG-31ファイヤーフォックス
雛苺の専用機。
当時のソビエト連邦が極秘に開発した高性能ステルス戦闘機の3号機。マッハ5という最高速度をはじめ、東西陣営の軍事バランスを大きく損なうスペックを持つ。
完璧なステルス性、パイロットが思考するだけで各種ミサイルや航空機関砲などの火器管制が行える思考誘導装置を有しており、スイッチや操縦桿やボタンを使用するよりも迅速かつ的確に戦闘を行う事が可能。
雛苺が放棄された基地で発見し、言語設定をフランス語にしてしまったことから愛機として乗ることになる。その後、セイレーンの手によりアメリカへ渡り研究が行われている。

キャンベル
右手と左足が義手と義足のパイロット。通称「鉄腕キャンベル」。
シンやグレッグらと共にエリア85に派遣されたパイロットの1人。その際に蒼星石を同乗させたことから彼女と契約する。
山岳基地脱出時の空戦で指輪をはめた左手の薬指を切断し契約が破棄されてしまい、その後はマスターの役をキムに譲った。
搭乗機体:クフィル→A-4

A-4スカイホーク
安価で信頼性・整備性に優れ、本来は攻撃機ながら戦闘機としても使用できるほど運動性能も高く、多数の国で採用された傑作機。
エリア88でも初期のグレッグなどにより数多く使用され、主力機と言える。
垂直尾翼先端の違いで海外輸出系の角ばった形状のもの、アメリカ海軍・海兵隊かイスラエル空軍で使用された丸みを帯びた形状のもの(主にE/F型)、とそれぞれ存在するが、劇中では混在しており、マッコイが世界中のA-4を集めてきたと考えられる。

キム・アバ
南アフリカの小国ルンガの第3王子。ギリシャ再編時にシンの中隊に加わる。
エリア88メンバーでは数少ない黒人。ルンガの王族は元服の際に自己鍛錬として従軍する慣わしがあるため志願。
上官のシンに「生き延びる意志の大切さ」を教えられ、以後彼を慕うようになる。
パーソナルマークは剣と蛇。
人工精霊に選ばれた人間ではなかったため力は小さいが、シンからもらった「戦士の魂」が力を増大させ、山岳基地脱出時の戦闘でキャンベルが指を負傷したことで外れてしまった指輪をはめ自ら契約者となる。
搭乗機体:A-4→AV-8A→F-20→AV-8A

AV-8Aハリアー
キムの専用機。
イギリスのホーカー・シドレー社が開発した世界初の実用垂直離着陸機(V/STOL機)。
最初は砂漠空母の別働隊の無人機として登場。後にキムの乗機、また反政府軍の燃料集積所の防空部隊としてタイトロープ作戦を行ったシンたちを待ち伏せて迎撃している。VTOLである事を利用して活躍した。
キムが最初に使用した機体は米海兵隊から引っ張ってきたAV-8Aだったが、キムが山岳基地を脱出する時はF-20を使用したため放棄されたと思われる。
後にまた乗るようになったハリアーGR.1(もしくはAV-8A)はマッコイが調達してきた別物と思われる。

蒼星石
「ローゼンメイデン」シリーズの第4ドール。性格は生真面目で寡黙。
「心の樹」の成長を妨げる雑草を取り除く「庭師の鋏」を持つ。
契約者への忠誠心が高く、キムだけでなく前契約者のキャンベルに対しても非常に忠実である。
エリア85で他の兵士に可愛がられていたが、88から来たシン達との出会いで戦場に向かう兵士達の気持ちを知るためにキャンベルのA-4に乗り込み、以後キャンベルと契約する。
キャンベルとの契約が破棄された直後、キムの力を戦士の魂が増幅することによって力を得られるようになり、事実上キムと契約することになる。
搭乗機体:TSR-2→F-15

F-15Cイーグル
蒼星石の専用機。
マクダネル・ダグラス社(現ボーイング社)の開発した制空戦闘機。
山岳基地でキャンベルの計らいで乗機として与えられる。
また、プロジェクト4制圧後のブラシアでアッサン等が標的として参加した演習でもプロジェクト4側に1機存在している。

サキ・ヴァシュタール
金糸雀の契約者。エリア88の司令官で空軍中佐。
アスラン国王ザクの甥で反政府軍の首領アブダエルの長男。
本来正規軍を指揮するべき立場だが、父親との決着を付けるために外人部隊を率いて最前線に立つ。
空輸ルートの交渉でパリに行った際に金糸雀と契約。以後、彼女をエリア88の副官として迎え入れ強く信頼する。
搭乗機体:クフィル→B-1→クフィル

クフィル
アスランの友好国であるイスラエル製戦闘機で、おそらくアスラン空軍の主力戦闘機と思われ、後のプロジェクト4配下でも相当数が引き続き使用されていたと見られる。
第1話から登場しサキも使用している(彼の機体の垂直尾翼にはアスラン王家の紋章が描かれている事が多い)。
ウルフパックの攻撃でエリア88所属機体の大半が失われた際、10機が緊急配備されサキの他9人の精鋭に与えられた。
ウォーレン、ケンなど、他の88メンバーも多数使用。超音速機だけに整備も難しいとされ、エリア85では整備不良で一機が失われている。

金糸雀
「ローゼンメイデン」シリーズの第2ドール。
自信家で、自称「ローゼンメイデン一の頭脳派(又は策士、才女、知能犯)」。モットーは「楽してズルしていただきかしら!」。
妹達と比べて幼い容姿だが、次女らしいしっかりした一面もあり、最も長い時間を共に過ごしたことから、他の姉妹とは距離を置く水銀燈の扱いにも慣れている。普段から携帯している日傘は戦闘時にはバイオリンに変化する。
バイオリンを使った音波攻撃や風の様なものを発生させて戦う(演奏する曲によって効果が違う)。他の姉妹に比べ技が多彩で、戦闘に関しては遠近問わず戦闘機を撃墜させるほど強力。
戦略家としての腕は相当なもので、サキやラウンデルからも一目置かれている。
搭乗機体:TSR-2

TSR-2
金糸雀の専用機。
1957年5月に出された英軍の統合作戦要求第339号により開発着手された超音速長距離攻撃機兼偵察機。
先進的な慣性航法装置や地形追従レーダー、低高度での超音速飛行、高々度ではマッハ2を超える超高速を発揮し、不整地滑走路から離着陸できる能力を持つ。
スクラップを免れた1機をB-1に次ぐ2機目の爆撃機として導入。以後、対地攻撃作戦において活躍する。
ミッキーのF-14と同様、座席は前席、後席共に人間、ローゼンメイデンが乗れるようユニット化されている。

セイレーン・バルナック
水銀燈の契約者。エリア88の紅一点で、潜入工作や部隊指揮もこなす女傑。
最初は父がリーダーを務める飛行隊のパイロットとしてプロジェクト4についていた。
サキたちが88基地を放棄したためそこに乗り込んできた仲間のマックと合流するが、父が死んだ彼女にとってプロジェクト4で戦う理由はもはやなかった。
マックの計らいもありプロジェクト4を除隊後、彼らのやり方が気に食わないという理由でエリア88に加わる。
水銀燈を「天使」と呼び信頼する。
搭乗機体:MiG-21→MiG-31→F-104G

F-104Gスターファイター
セイレーンの専用機。
F-100 スーパーセイバーに始まるセンチュリーシリーズの一員とされ、また、第2世代ジェット戦闘機に分類される、アメリカ合衆国初のマッハ2級のジェット戦闘機。
セラがフランスからアスランに戻るのに西ドイツ空軍機を使用。
プロジェクト4を脱走して仮設基地に向かう際にも使用され、不時着したが修復し、乗機として使用した。

水銀燈
「ローゼンメイデン」シリーズの第1ドール。
普段の口調は相手を小馬鹿にするような猫撫で声だが、本気になると感情的になる。
冷酷非情で好戦的な性格。アリスへの執着心が非常に強く、ローザミスティカを集める為なら手段を選ばない。
その性格から他の姉妹とは折り合いが悪いが、金糸雀にだけはペースを乱されてしまう。
ドール同士の絆もドールとマスターの絆も否定していたが、契約者となったセイレーンに対しては気遣いを見せる。
搭乗機体:F-106

F-106デルタダート
アメリカ合衆国のコンベア社がF-102の性能向上型として開発した戦闘機。
機首部にはMA-1AWCSを搭載しており、半自動地上管制迎撃システム (SAGE) と完全にデータリンクし、F-106の自動操縦システムと組み合わせて追跡コースまたは見越し衝突コースでの自動迎撃が可能となっている。
セイレーンがフランスから戻った際に水銀燈の乗機として配備され、エリア88移籍後も専用機として使用される。

チャーリー
薔薇水晶の契約者。通称「不死鳥チャーリー」。
エリア88から生きて除隊した数少ない男。シンやミッキーとも旧知で腕は彼らと互角以上。
神崎からジュゼッペ・ファリーナ経由でシンの暗殺を依頼され、再びエリア88舞い戻る。
戦闘中にシンを暗殺しようとするが、不意打ちをしなかったため、手傷を負わすものの返り討ちに遭う。その後シンに助けられたことから任務を放棄し、彼と共に戦い続けることを決める。
基地脱出後、ロンドンで仕事をしている最中に薔薇水晶を発見し「契約」、その後マークⅢの任務で再びシンと顔を合わせる。
搭乗機体:F-4

F-4ファントムⅡ
砂漠空母探索やセラ・キムのブラシア組救出作戦など要所要所で活躍した。
不死鳥チャーリーの乗機で本来二人乗りのところを彼はひとりで乗っていた。
西側諸国の多くで大量採用された戦闘機であり、基本的にエリア88等政府側の機体となったが、主要登場人物が常時搭乗した機体ではなくモブキャラが使用するなどの脇役としての登場に終わった。

薔薇水晶
ローゼンメイデンシリーズとは別のドールであるが他のドールを「お姉様」と呼び慕っている。
正体は槐が師匠・ローゼンを超えるべく作った贋作。ローザミスティカを持たず、「主人」であるチャーリーへの想いで動いていた。
戦闘法は、主に地面から水晶の柱を出現させるもの、水晶の剣を召喚して攻撃する方法がある。前者はシン達のバンバラ脱出時に大統領の子供達を守るために使用された。
更に水晶の礫を飛ばす、相手を結晶内に封じ込める、他にも回避行動の際のテレポート、遠距離から衝撃波を放つことも出来る。
搭乗機体:F-15C

F-15Aイーグル
薔薇水晶がバンバラに入国する際に使用。
残弾、ミサイル共に0であったため、ヘリとの空戦で脱出したところをケニーのヘリに狙われた真紅を守るためにヘリに体当たりする。

今日はここまで。

大変長らくお待たせしました。
これより投下します。

シン「!」

2人は出会い…

涼子「!」

突然別れさせられ…

シン「りょ…涼子…か…?」

すれ違いを繰り返し…

涼子「真…ね…。」

そして今再び出会った。


MISSION92 愛、再び

ジョゼ「ったく…すぐ1人でチョロチョロ…。」

ジョゼと美鈴は涼子を探していた。

美鈴「あ!」

雛苺(!)

真(…………)

涼子を見た瞬間、シンの中で彼女との思い出が走馬灯のようによみがえる。

ジョゼ「あら…あの男の人…」

雛苺「シン!」

美鈴「しっ!」

ジョゼ「しっ!」

美鈴「…………え?」

ジョゼ「え…あっ、うん。黙ってる…。」

シン(忘れたはずの夢…決別したはずの俺の希望…)

2人は互いに向かって走り出した。

シン(…涼子…)

およそ3年ぶりに抱き合う2人。

涼子「真…ああ…貴方真なのね…これは夢じゃないのね!」

茂みの陰からは…

ジョゼ「思い出したわ…あの人がシンよ!リョーコの捜してた!」

美鈴「!」

美鈴は一瞬考えると…

ジョゼ「あれ?ヒナは何処に…」

美鈴「行きましょう、ジョゼちゃん。愛し合う恋人たちの世界を覗くのはルール違反よ。」

ジョゼ「うん、でももうちょっと…」

2人は去り際にこう思った。

美鈴(つかの間の恋だった…夢を見たのはあたし…)

ジョゼ(リョーコ…よかったね…)

そして木の陰からは…

真紅「…………。」

雛苺「リョーコ…嬉しそう…。」


シン(ああ…華奢な肩も甘い香りも何一つ変わっていない…涼子…俺の天使…)



千を越える眠れぬ夜…何度…己の運命に呪いの言葉を投げつけたことか…
取り戻すことなぞ叶わなかった見果てぬ夢を繰り返し叫んで闇に消えていった俺の想い…



涼子(真…ああ…真…生きて…生きていてくれた…貴方の鼓動が聞こえる…)



もう…離さないで…もう二度と…貴方を愛しているの…


所変わって、ここはアフリカ南部の海上。

ザザァ…ン…ザバァ…

狼達が休息を取る中、エリア00は北西へ進んでいた。

金糸雀「暴風海域は脱したようかしら。」

ラウンデル「あの程度の小型暴風にはビクともしませんな。」

サキ「そうでなきゃ困る。こいつのこれからの役目を考えるとな…。」

金糸雀「艦長!ジブラルタルを抜けて地中海に入る前に何処か入れる港はあるかしら?」

艦長「そうですな…水や食糧をある程度補給しませんと。地中海に入ってからではプロジェクト4の連中の目も光ってますからな。」

艦長は海図を広げた。

艦長「アフリカ沿岸でこいつが入れそうな港は…ルンガがありますな。」

サキ「よし…そこに連絡を取ってくれ。乗組員も上陸させてやれ。2日程停泊するか…。」

金糸雀「後はアスランの海岸基地でしばらくは地中海と砂漠の毎日ですものね…。」

同じ頃、右舷のデッキでは…

キム「…………。」

双眼鏡越しに一点を見つめるキム。

セイレーン「キム…何見てんの?」

セイレーンはビーチソファで日焼け中。

キム「え?ああ…何でもないです…。」

セイレーン「変な子ねぇ…。」

乗組員たち「「「ミセロ…ミセレバ…ミセルトキ…」」」ざわ…ざわ…

蒼星石「みなさん!あんまり見ちゃだめですよっ!」

蒼星石は甲板からセイレーンを見ているクルーを注意する。

セイレーン「海もいいけど位置が掴みにくくて困るわね。今、一体どの辺りなのかしら?」

キム「そうですね…ルンガの西…200海里ぐらいですかね。」

セイレーン「ルンガ…へぇ、聞いたこともないねその国。」

蒼星石「独立して間もないんですよ。」

キム「文化の発達は中程度ですが、農産業や工業なんかにも力を入れてます。若いけれど活気はある国ですよ。」

セイレーン「ふ~ん、詳しいのね。」

キム「へへへ…。」

キムは海を向いてこう言った。

キム「…僕の…母国です。」

セイレーン「………通り過ぎるなんてつらいね…それでさっきから…。」

キム「父様や母様…元気かな?」

蒼星石「…………。」

一方、ブリッジでは…

通信士「ルンガから返信です。寄港を許可するとのことです。」

ラウンデル「よし、物資の調達を円滑にするためにも政府関係者に先に会っておいた方が良いな。ヘリの用意をしろ!」

ミッキー「ヘリのパイロットは誰にします?」

翠星石「うちの連中でヘリを動かすことが出来るのはキムだけですよ。」

金糸雀「ああ…あの子はハリアー乗りだから…。」

ルンガまでのヘリのパイロットがキムに決まった旨を彼に伝えた途端…

キム「えーっ!本当ですか!?ルンガに入港!?」

蒼星石曰く、今まで見た中で一番の笑顔だったという。

ブォォォォォォォン…

キムの操縦するヘリコプター、SH-3シーキングはルンガの領土に入った。

ミッキー「おい、本当に地理が分かっているんだろうな?」

ヘリにはキム、ミッキー、ラウンデルと数人の関係者が乗っていた。

キム「大丈夫ですよ。政府関係者の所に行けばいいんでしょ?」

そう言うとヘリは大きめの宮殿に向かって降下し始めた。

ブォォォォォォ…

ミッキー「おい、キム!ちょっと待てこらっ!こりゃ、ルンガの王宮じゃないのか!?おい!」

キムは構わず宮殿の広場に着陸しようとする。

ババババババババ…

国王「何事だ!?」

宮殿の中からは国王とその夫人が出てくる。

兵士A「国王!お下がりください!危険です!」

夫人「あなた!」

国王「無礼者め!ここを何処と心得る!」

ヘリからキム達が出てくる。

兵士B「出てきたぞ!憲兵隊、前へ!」

キム「下がれっ!第3王子、キム・アバであるぞっ!」

国王「キム!」

夫人「!」

ミッキー「ホントかよ…え~おい?」

ラウンデル「…………。」

キム「父上!母上!ただいま帰りました!」

その後、話し合いによってエリア00への補給作業は何の問題も無く行われた。

そして日本、箱根の八兵衛の別荘では…

八兵衛「そうか…風間君は涼子さんを…な…。」

美鈴「ええ…二人、まるで吸い寄せられるように…。」

八兵衛「ふむ…運命というものは何時だって皮肉なものよの…。」

美鈴「え?」

八兵衛「いや…こっちのことじゃ…。」



恋をして恋を失ったほうが、一度も恋をしなかったよりもましである。
            -アルフレッド・テニソン(イギリスの詩人)-

今日はここまで。
そろそろ学年末考査なのでまた投降が遅くなるかもしれません。
その時は申し訳ありません。

これより投下します。

アスラン空軍東部方面航空第5大隊攻撃第1戦隊所属のゲイリー・マックバーンは1人、アメリカ某所にいた。

ゲイリー「総司令、ここは…。」

神崎「グルーム・レイク空軍基地。世界にはエリア51の名で知られているが、君達元アメリカ軍兵士には…「ドリームランド」なら聞き覚えがあるだろう。」

ゲイリー「ドリームランド!私が何故ここに?」

神崎「ここに来るなら理由は1つしかない。分かっているだろう?」

ゲイリー「まさか…アスランに実験機を投入するんですか?」

神崎「まあ実験機と言えば実験機だ。」

神崎の後ろに続いて格納庫に入るゲイリー。



神崎「君に紹介しよう。「オールド・ドッグ」だ。」



MISSION オールド・ドッグ

ゲイリー「オールド・ドッグ?」

すると、格納庫内の照明が一斉に点灯した。

ゲイリー「!!!」

ゲイリーは驚きを隠せなかった。何故なら全ての照明が点灯しているにも関わらず中心に不気味な黒い影が横たわっていたからだ。

ゲイリー「そ…総司令…これは…!」

神崎「驚いたかね?無理もないさ。」

ゲイリーは7秒かかってようやくその巨大な影が航空機であることを認識した。

神崎「ベトナムで君がたくさん見た機体だと思うがね…。」

ゲイリー「ベトナムで…?」

両翼端から地面に突き出たアウトリガー、機体下部に複列タンデムに並んだ4つの主脚、主翼下に吊り下げられた8基のP&W社製TF33-P-3ターボファンエンジン。

ゲイリー(まさか…B-52!?)

神崎「正式にはB-52I型。B-52H型に改良を加えているだけのものだ。その内アメリカ軍の命名法改正によってEB-52と改名されるだろう。」

その巨大なB-52は全体が闇のように黒く、その奇妙で不気味な黒は光を吸い込んでしまうようで、周りの何百という投光照明の降下を完全に打ち消していた。

神崎「ステルス型のテクノロジー、空対空兵器、兵器テスト、コンピューター・ハードウェア、ありとあらゆるものの試験台として使われていた。」

ゲイリー「ステルス…この黒い塗装もその為ですか?」

神崎「そうだ。お望みなら今すぐにでもこれを飛ばすことができる。ここの連中はこいつを「ストラトフォートレス」から「メガフォートレス」と変えて呼んでいる。」

ゲイリー「メガフォートレス…。」

神崎「理由はすぐに分かる。まずは周りを見物しようか。」

ゲイリー「は、はぁ…。」

ゲイリーは神崎の後に付いてその外観で最も目立った変更部分を見た。それは長く釘のように尖った機首と急角度のついたコクピット窓だ。

ゲイリー「SST型の機首ですね。すこしやりすぎでは…?」

神崎「こいつは性能を上げるために徹底的に調べ上げられた。長く尖った機首、先の尖った燃料タンク、黒く磨き上げられた表面。それがこの鈍足で古びた遺物の速度向上にどれだけ貢献しているか。」
神崎「本来のB-52Hの最高速度はせいぜいマッハ0.85ぐらいだったが、これは外部搭載物無しでマッハ1.07まで出せる。そして低高度でも成層圏にいる時と同じくらい快適だぞ。」

ゲイリー(マッハ1…!音速を超えるB-52…!?)ツー…

ゲイリーは表面に指先を走らせながら驚いた。

ゲイリー「これはアルミニウムではありませんね。ファイバーグラスですか?」

神崎「レーダー吸収型ファイバースチール。ファイバーグラスとカーボンスチールの合成でアルミよりも強力だが、プラスチックと同じくらいレーダーを透過させる。」

ゲイリー「しかしまったく目に見えないわけではないでしょう?」

神崎「そんなことは些細な問題だ。目標物に発見されずに4、50km接近することができれば骨折りがいあるというわけだよ。」
神崎「もし敵がミサイルをロックオンするまでにさらに10kmか20km接近できればそれだけ先に相手を撃って生き延びるチャンスが増える。」

ゲイリー(チャンスね…)

神崎「夜はこの対サーチライト塗料が千金の価値を発揮する。こいつは夜になったら実際肉眼では視認出来ん。たとえ戦闘機がメガフォートレスと並んで飛んでいても見ることは出来ない。」

2人でなめらかな機首を回りながら神崎は微笑んだ。

神崎「それにこの黒い塗料と鼻先はぞっとするほど気味が悪いとは思わないかね?」ニヤリ

微笑みは一瞬にして邪気を発する悪魔の笑いへ変わった。実際、ゲイリーもこれほど格納庫の中にいることが気持ち悪いと思ったことはなかった。

ゲイリー「ちょっと待ってください…これは…。」

ゲイリーはふと両翼の胴体と内側エンジンナセルの間に装備された長いパイロンに目をやった。それぞれのパイロンは6基の細長いミサイルを抱えている。

神崎「どうかな?」

神崎が言った。

神崎「次期中距離AAMミサイルだ。赤外線と妨害電波追尾末端装置を持ったレーダー誘導型。」
神崎「射程は25マイル。高性能近接信管弾頭。メガフォートレスでは攻撃用主レーダーをこの「スコーピオン」の誘導用レーダーとして作動するよう変更されている。」

ゲイリー「スコーピオン!アスランはおろかアメリカ空軍の第一線部隊でさえ搭載されていないというのにですか!?」

神崎「さらに両翼にはこれまで1500ガロンのタンクを1基ずつ付けるのが通例だったがこれでは3000ガロンを2基ずつ付けた。これらの装備は全て射出投棄出来る。」

2人は次に機体左側から胴体の爆弾層を注目した。

神崎「爆弾層扉も分割してはるかに軽量化させ、レーダー透過性が増している。何故分割したのか、その理由は君にも分かるはずだ。」

ゲイリー「…本来のB-52は爆弾層扉を開けるとレーダー有効反射面積が通常の2倍になります。分割型にすればそのような心配は無くなりましょう。」

神崎「そうだ。B-52の半分の反射面積しか持たないB-1にこの素材を応用すれば事実上、視認不可能にだってできる。」

話しながら歩いて行く内に2人は奇妙な、今まで目にしたことがないような機体の尾部の方へ来た。

ゲイリー「V字翼ですか。」

神崎「尾部の警報受信装置と後部ジャマーアンテナは尾部内に埋め込んだ。後部からの空対空ミサイルの発射を探知するよう装備された赤外線捜索警戒システムも中に取り込んである。」

ゲイリー「尾砲は無いのですか?」

神崎「そんなものは時代遅れさ。たとえレーダー照準型のガトリング砲であっても我々の相手になる88の戦闘機の性能と比較するとあまり役には立たん。」
神崎「連中の中には12.7mmの弾丸なんか気にせずに避けられるやつもいるからな。」

ゲイリー「…?これは…?」

ゲイリーは尾部を仔細に観察した。

ゲイリー「あそこには何か取り付けたようですね。大型の火器管制レーダーは分かります。他のものは何ですか?」

神崎「地雷さ。正確には空中投下機雷だがね。」

神崎が説明を始める。

神崎「尾部からはまた12インチの対空散弾ロケットを発射する。メガフォートレスの尾部火器管制レーダーはロケットと敵戦闘機の両方を追尾し、操縦信号をロケットに送る。」
神崎「戦闘機と散弾ロケットの間の距離が180mくらいに狭まると火器管制コンピューターがロケットを爆発させる。」
神崎「爆発によって金属片が2、300mの範囲に飛び散って、12.7mmの弾丸数千発が一度に発射された時と同じ状態になる。戦闘機を直撃する必要が無いわけだ。」
神崎「この火器管制レーダーの探知距離は更に伸びて50kmになっている。」

神崎はゲイリーが頭を振るのを見ながら続けた。

神崎「ロケットの射程はおよそ5kmで最高度の赤外線誘導ミサイルの射程のほぼ等しくなっている。」

ゲイリー「総司令…。」

ゲイリーが言った。

ゲイリー「出来すぎですよ…欲張り過ぎだ。信じられません。」

神崎「マック。」

神崎が言葉を挟んだ。

神崎「これはまだ序の口さ。」

神崎は左翼端の近くに立っている歩哨に手を振ってみせた。歩哨はウォーキートーキーで短い会話を交わし、返事を確認してからゲイリーに手を振って合図を返してきた。

神崎とゲイリーは漆黒の胴体下部にかがみこんで後部爆弾層の中に入った。

ゲイリー「!」ピタッ

中に入った途端、ゲイリーは足を停めた。

ゲイリー「これは…。」

約20mの長さのある爆弾層の後部に大きなドラムのような形をした回転発射筒があった。そこに装填されているのは14基の細長いミサイルだった。」

神崎「我々の最後の切り札だよ。」

神崎が言った。

神崎「10基は最新のAIM-120スコーピオンAMRAAMミサイル。これは火器管制レーダーでも爆撃レーダーでも誘導できる。」
神崎「また敵の戦闘機レーダーや戦闘機の電波妨害発信源を自動追尾して命中させることもできる。後ろを向いてはいるがどの方向の敵にも攻撃を仕掛けられる。」
神崎「レーダーのどれかが戦闘機を発見あるいは敵警戒受信機が発見したら、ミサイルでそいつを撃ち落せるというわけだ。この回転発射筒からは2秒に1本の割合でミサイルを発射できる。」

ゲイリー「すごい…他のミサイルは何なのですか?」

神崎「ああ失礼、残りの4基はAGM-88B・HARMミサイル。このミサイルはレーダー自体を自動追尾するか、もしくは途中でレーダーが切られた場合には最後の計算された軌跡で目標物に命中する。」

ゲイリー(HARM…!?一体どうなっているんだ…!?)

ゲイリーは改めてオールド・ドッグの全体を見た。30年も前から飛んでいるこの巨大な死の翼に現在の最新技術がこれでもかと盛り込まれていることに違和感を通り越して恐怖を感じた。

神崎「22基のAMRAAM、4基のHARM、それに合計50基の空中投下機雷ロケット、これらの全てがこのオールド・ドッグの自衛のために用意されている。」

神崎が数え立てながら言った。

神崎「機上に通例備えられているチャフやフレアー、それに特殊な電子対策セットをこれに加えればこのメガフォートレスが目標に到達できるチャンスは大幅に高められたと言えるだろう。」

ゲイリー「…………。」

ゲイリーはふとランチャーの前方に目を向けた。

ゲイリー「ここは何ですか?」

神崎「通常兵器のために残されたスペースだ。こいつには更に6800kgの兵器を搭載できる。核弾頭、通常爆弾、ミサイル、機雷、何でもいけるぞ。」
神崎「余計に燃料を積んでもいいし防御用のミサイル、囮、あるいは兵士でもいい。何なら側部銃撃手なんてのもどうかな?それもオールド・ドッグで試した。」

ゲイリー「…………!」

ゲイリーはただ絶句するだけだった。

今日はここまで。
>>103失礼、ミッションナンバー振ってませんでした。

MISSION93 オールドドッグ

いよいよこのSSで最大最強のラスボスの登場です。
次回はこのラスボスの内部を紹介します。

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