兎角「ふ、ふざけるなッ!!」 (24)


悪魔のリドルスレッドです。

概要としては、中身が入れ替わっちゃう系です。

また、恐らくちょいちょいR-18要素が(大体エロですが、もしかするとグロもあるかも)入ると思うので、苦手な方は気を付けてください。

入れ替わりは、晴と鳰 兎角と春紀の一号室 二号室がメインになります。他号室もちょいちょい出てくるかも。

また、ストックの無いあやふやな感じなので、そのまま聞けるかどうかは分かりませんが、こうしたらよいなどの意見も取り入れてやっていこうと思います。



SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1419329703

<金星寮一号室>

 春紀(兎)「……」

 兎角(春)「……」

 伊介「……」

 晴(鳰)「……」

 鳰(晴)「え、えっと、みんな暗い顔しないでほしいッス~!!……なんちゃって」


※以下()表記無し



 春紀「……何故だろうな、寒河江の身体のせいか大らかな気持ちで走りの顔を眺める事が出来る」ハァ

 晴「そんな言い方酷いっス!?……まぁ、まさか皆さんの心が入れ替わっちゃうなんて、驚いたッスよ~」ニヤニヤ

 兎角「ま、あたしは割と東サンの体になってから、この体の完成度の高さ具合に感動してるくらいだよ。」

 伊介「というか、何で私が春紀とじゃないワケ♥ むかつく♥」

 鳰「鳰の視線って凄いね~、皆おっきく見えちゃうよー」

 晴「っつか、案外皆さん馴染んでるっスね……そういうウチも、こうして『兎角』にスリスリしても!」グイー

 春紀「っ、離れろ走り!!」グイグイ

 晴「突っぱねられないなんて、普段じゃ信じられない事ッスよぉ~!」

 伊介「と、いうか♥ なーんでこんな事になったのか本当に鳰でも分からないワケ?♥」

 晴「うーん、別に理事長が噛んでるって訳でもなさそうっス。原因という原因も分からないっス!」テヘペロ

 鳰「に、鳰、そろそろ離れてあげないと兎角さんの目が怖いよ……?」

 晴「うわっ、なんつー顔してんスか!? 春紀さんの顔だから猶更迫力あるッス!!」

 兎角「ほんとだ、あたしの睨んでる顔ただのチンピラじゃん」

 伊介「あーもう、誰が誰だかややこしくなるし~♥ イライラする♥」

 鳰「(兎角さんの楽しそうな顔可愛いな……)」

 晴「と、とりあえずそれぞれのお部屋に戻る事にした方が良さげッスね…」

 春紀「走り、お前絶対に今度から近寄るなよ…(晴の良い匂いがして……たまらん)」

 晴「き、肝に命じるッス……」


※意見ありがとうございます。それでは表記していきます~ 後、ちょいちょい地の文挟む所もあると思いますので、それも見づらかったりしたら意見ください。
また、時期なども話していませんでしたが、一応"学園祭直前の出来事"という事にしておいてください。
そして大切なのが「まだ誰も予告表は出していない」IF設定の世界です。



<金星寮一号室>

 春紀(兎)「……慣れないな、やっぱり。」

姿見の前に立って両手を握りしめて立った春紀もとい兎角は、長い赤髪の鬱陶しさや身長の高さ、そして全く体の動かし方の違うぎこちなさに眉を潜めていた。……どう見ても春紀がそうしている様にしか見えないが、今目の前の人物の体を操っているのは自分だと実感させられた。
やたらゴテゴテしているアクセサリー類などは外し、ベージュのブレザーも脱いで白のブラウス姿になっている。

 鳰(晴)「晴はけっこう慣れましたよ。鳰も、晴と同じで入れ墨の事凄く気にしてたから、ちょっとだけ気持ちが分かった、かな」

そう口にする晴は、こちらもまた鳰の来ている黒のブレザーを脱いでおり、ブラウス袖を片腕だけまくり上げていた。
其処には目にするだけでグラグラと頭が揺さぶられてしまう様な感覚に陥る赤い入れ墨の模様が浮かび、晴は複雑な表情を浮かべていた。


 春紀(兎)「寒河江はただでさえ身長があって、それにこれだけ力があるって事は、もしこいつとやり合う時は投げ技メインで…」ブツブツ

 鳰(晴)「あはは…兎角さんこんな時までしっかり考えてるんだね。でも、今の兎角さんなんだかクールな春紀さんみたいでカッコいいね」

 春紀(兎)「まぁ、外見だけで言えば女子とか好きそうだな、このマニキュア?とかいう奴とか」

 鳰(晴)「そういえば春紀さん、マニキュアの事とっても大事そうに綺麗にしてたね。思い入れがあるのかも。」

 春紀(兎)「どうだか知らんが、こういう装飾品にはあまり興味が浮かばないし、非生産的だろ。第一暗殺者なのに目立ち過ぎるしな。」ドヤァ

 鳰(晴)「……なんだか普段と変わらないね。やっぱり兎角さんは兎角さんだなぁ。」

 春紀(兎)「?そ、そうか? 一之瀬の見た目が走りって言うのも、まぁ、なんだ、普段からそんな風に落ち着いてると可愛く見えるな。」

 鳰(晴)「えへへー、鳰の事、少しは優しく相手してくださいね? 兎角さん♪」


ブラウスの袖を戻した晴は、兎角にいたずらっぽい笑みを浮かべ、兎角もまた苦いながらも小さく笑みを浮かべた。

黒組オリエンテーションから数日経った今でも予告表は届いていない。今のところは平穏な日々が、つづいている。


<金星寮二号室>

 兎角(春)「……で、鳰サンがこっちに来るって訳か。晴ちゃんの姿だとやり辛いなぁ」

 晴(鳰)「何がやり辛いかは置いとくッスけど、ども、鳰っちッス☆」

 伊介「うっざ、さっさと死ね♥」

 兎角(春)「ま、入れ替わってる同じ境遇だし、仕方ないっちゃ仕方ないよ伊介様。抑えて抑えて。」ポッキーパクリ

 伊介「……」

 兎角(春)「んー? どした、なんか顔についてるか?」

 晴(鳰)「顔についてるっというより、顔そのものが違うッスけどね!」

 伊介「鳰は黙ってろ♥ ホントに中身は春紀なのよね……それなら、案外東さんもアリかも♥」

 兎角(春)「まぁ、身長くらいかな、特に違和感を覚えるのは。伊介様が高く見えるよ。」

 伊介「普段からそんな砕けた表情なら可愛げもあるのに♥ もったいなーい♥」ギュー

 兎角(春)「アハハ、東サンいっつも怒ってるみたいな顔してるもんな」ポリポリ

 晴(鳰)「(伊介さんがベッドに座ってる春紀さん(兎角)を頭を抱える様に抱きしめてなでなでしながらラブラブしはじめたッス……こいつらウチが居る事忘れてないんスかね……一応見た目は晴なのに)」

 伊介「でも、東さんの匂いが強すぎて春紀って感じがしなーい♥ あ、そうだ……」モミモミ

 兎角(春)「いきなり胸揉みだしてどうしたんだよ?サイズは前とあんまり変わんないな。」

 伊介「ここよ、ここ♥」ギュッ

 兎角(春)「ッ……あ、れ。」ビクッ

 伊介「ち・く・び、春紀弱かったのに、東さんあんまり効かなくてつまんなーい♥」コリコリ

 兎角(春)「んっ、ぁっ、効いてないっわけじゃない、けどっ……」

ポッキーを思わず取り落しながらも、シャツの中に手を入れられてブラの隙間からこりこりと乳首を弄られる春紀さんは、次第に頬を紅潮させながら肩を震わせているッス。
伊介さんもノリノリで弄りながら、春紀さんの耳たぶを甘噛みすると一層春紀さんがピクリと跳ね――――――

 晴(鳰)「すとーっぷすとーっぷッス!! ウチが居る事忘れてるんじゃないッスか!?」

 伊介「あら、一之瀬さんかと思ってたわ♥」

 兎角(春)「っ、はぁ…はぁっ……(東サンの体だからか、晴ちゃんに見られるだけで凄い興奮した…)」

 晴(鳰)「晴……そっか、そうッス!!あ、止めて悪かったッスね! 後は二人でごゆっくりどうぞッス!」ガチャバタン

 伊介「なぁにアイツ……」

 兎角(春)「(……予告表、出しそびれちまったな。でも、これは逆にチャンスかもしれない。)」

 伊介「ま、お言葉に甘えて♥」

 兎角(春)「お、お手柔らかに頼むよ……」




 




 
 

※あれ、この時期に晴呼びはおかしいかな……?と思ったそこのあなた!かなり早くとても親しくなっちゃったというご都合設定でゆるしてくださいなんでもしますから


<金星寮一号室>

 春紀(兎)「まぁ、こんなもんか。」

 鳰(晴)「わぁ~! アップにしてもかっこいいね!」

 春紀(兎)「そ、そうか。髪型、とかには疎いから、助かった。ありがとう、晴。」

晴(厳密に言えば鳰)の手助けで、元々広がるようなポニーテールだった髪を一度綺麗に纏めてアップにした状態で髪留めを止めたアップヘアーに変えた兎角は、ようやくスッキリとしたのか少し機嫌が良さげだった。

鬱陶しさのある長さだが、流石にバッサリと切り落とすのは本人に許可を取らないとだめ!と強く晴に止められたので、切り裂こうとしたナイフは取り敢えずしまった。
服装も、とりあえずはいきなり大きく変えてしまうのも他のクラスメイト達に変に勘付かれてしまうといけないので、せめ
て髪型だけは変更したというわけだ。



 春紀(兎)「取り敢えず当面の問題はどうして入れ替わったのか、その原因を追究する事だな」

 鳰(晴)「そうだね、でもまずは黒組のみんなに気付かれない様にしないといけないね……」

 春紀(兎)「余計な混乱を生む訳にはいかないしな。」

<ピーンポーンパーンポーン、十年黒組所属の寒河江春紀さん、寒河江春紀さん。至急教室の溝呂木まで来てください。


 鳰(晴)「あれ、溝呂木先生が春紀さんに用事なんて珍しいね。……あ、って事は、」

 春紀(兎)「私が行かないといけないのか…走り、あ、いや、晴。絶対に誰が来ても扉を開けるなよ?もしかすると二号室の奴らが狙ってくるかもしれないからな。」

 鳰(晴)「流石にそれはないとは思うけど、でも、わかりました。気をつけるね」




そうして、放送で呼び出された兎角は部屋から立ち去っていった。



<???>

 「……確かに、この事が本当ならば、もはや晴ちゃんには"価値が無い"事になるわね。」

 晴(鳰)「プライマーとしての力はウチが手にしたッスから、そういう流れが自然だと思うッスね」

 「プライマーとしての力が本当にあるかどうかは置いておくとして。鳰さん、あなたはあなた自身の肉体に未練はないの?」

 晴(鳰)「まぁ、確かに全身縫合跡やらなんやらで傷だらけッスけど、"葛葉"の刺青よりはマシっす。それに……今のウチには、貴女さえいれば何もいらないッスから」

 「あら、それは嬉しいわね。……親類だから少しばかり心苦しいところもあるけれど、仕方無いわね。」







 目一「緊急時の"一之瀬晴(ハシリニオ)"抹消プラン、実行しましょうか。」






この日、十年黒組は正しい道のりから大きく外れていく事になる。その歪みは、確かに、広がっていく。




<十年黒組教室内>

 溝呂木「(あれ、髪型変えたんだな。)いやぁ~すまないなぁ寒河江。ちょっと備品の整理を手早く済ませたくてな。力がある奴といえば寒河江かなと思って」

 春紀(兎)「別に暇だったから構わない。それで、何をすればいいんだ?」

 溝呂木「(あれ、なんで寒河江は怒ってるんだ……? 眼つきキツいし、やっぱり呼び出したこと本当は怒ってるのかなぁ…)」ウーン

 春紀(兎)「おい」テフリ

 溝呂木「あ、あぁ、すまんすまん。えっとだな、とりあえず皆の分の新しい机を取り換えるんだ。僕が前扉からどんどん中に入れるから、古い机を後ろの扉から出していってくれないか?」

 春紀「分かった」


それからは別段変わった事は無く、二人は協力して机の取り換えを行っていた。
時折見せる普段とは違う春紀の様子に首を傾げていた溝呂木だったが、とはいえそれ以上に追及することも無く。
兎角自身が教室に足止めされていると知らず。

※一応このままシリアス路線で行こうと思っています。


<最上階>

 晴(鳰)「……と、いう訳で、現状こんな状況になっているわけッスね。」


巨大スクリーンに映された、四人それぞれの"思考"が入れ替わっている事を伝える内容を指さしながらも、晴の顔をした鳰はニヤニヤと笑んだ。
普段の彼女からは到底見ることはないだろうその表情に、集まっている一号室・二号室以外のメンバーたちはそれぞれの反応を示していた。


 しえな「まさか、そんな非科学的な事が起こってしまうなんてな……」メガネクイッ
 
 乙哉「でもでもぉ~、ゲっスい表情してる晴ちゃんなんて超可愛いんだけど♪ 寧ろ晴ちゃんの体を切り刻みたい!」ハァハァ

 千足「しかし、こうなってしまったら、もはや予告表というシステムは機能しなくなるな。」フム

 柩「ボクは千足さんさえいれば良いです」ニコッ

 千足「(か、可愛いッ……やはり桐ケ谷は最高だな……)」カオアカラメ

 涼「して、まぁ予想はつくが、晴ちゃんを共同で殺害し報酬も山分けと、そんな流れになるんかの。」フゥ

 香子「……」ギリッ

 純恋子「(……呆気ない結末ですこと。結局、女王蜂はどちらかなど比べるまでも無かったという事ですのね。)」ハァ

 真昼「晴ちゃん、殺す……ます」ニヤ

 晴(鳰)「ま、各々思うところはあるんでしょッスけど、首藤さんの言った通り、此処からは共同戦線って事で一つよろしくッス!」

 しえな「でも、報酬は山分けされるんだろう? そうなると、どんな願いもって訳にはいかなくなるんじゃないか?」

 晴(鳰)「そこは一つ、条件があるッス。"一番最初に同室のクラスメイトと共に晴を殺したペア"にのみ十全な報酬が与えられるッスよ。」

 千足「それ以外はどうなるんだ?」

 晴(鳰)「それ以外は残念ッスけど、一律大金を積む位くらいッスかね。あまりミョウジョウに負担掛け過ぎるのも、いろんな組織からの干渉の危険性が高まるからッすねぇ。それぞれ、胸の内にある願いを叶えたいなら他の号室よりも先に暗殺を成功させないとダメって事ッスね。」

 涼「して、二号室の寒河江と犬飼はどうなるんじゃ? まさか、」

 晴(鳰)「いいとこに気が付いたッスねぇ~! そう、入れ替わった対象である兎角さんの肉体を持っているのは春紀さんッス。東のアズマが、元々戦闘センスのある春紀さんとはいえ本来の力を出し切れない今、晴殺害の障害となるわけで……後は分かるッスね?」

 涼「……当然、寒河江を殺そうとすれば犬飼が出てくるのう。」

 香子「一号室と二号室、つまり四人殺せという事か」

 純恋子「女王蜂としての資格すら奪われた可哀そうなプライマー崩れ、抹消するのは理にかなっていますわ。頑張りましょうね、番場さん」

 真昼「聖遺物……ふふっ」


 千足「(あの人を殺したエンジェルトランペット。どんな手を使ってでも貴様をこの手で殺してやると、そう誓った。)」

 柩「(……エンジェルトランペットとしての経歴全てを抹消しさえすれば、千足さんとも生きていける。)」 

 涼「(大金がどれほどのモノか知らんがの。ハイランダーが現代医療ではどうしようも無い今、わしがこの計画に乗る義理は無い。)」

 香子「(暗殺者を止める為にやってきたというのに……四人も。『四人』も殺して私は救われようというのか……ッ!?)」

 純恋子「(私が引導を渡して差し上げましょう。一之瀬晴。)」

 真昼「(……)」


各々が異なる想いを持ったまま、オリエンテーションは解散となる。
この時、兎角は教室内の備品整理に勤しみ、そして――――――――


 伊介「(……なるほどね♥ 用済みになった晴のついでに私達も殺そって訳。)」


鳰に取り付けた盗聴機からの音声を聞き取りながら、獰猛な笑みを浮かべる少女が一人。
また静かに。暗殺者のプロ『犬飼恵介』の意志を継ぐ暗殺者も動き出した。




  


 ―夜―

<一号室>


 春紀(兎)「ふぅ。」

 鳰(晴)「お疲れさま、兎角さん。結局夜までお手伝いしてたね」

 春紀(兎)「あぁ。まぁ、どうせトレーニングしかしないんだし、違った筋トレとしてまた面白かったぞ。」

 鳰(晴)「溝呂木先生も喜んでたし、晴たちの使ってる机の取り替え(英さん除く)をしてくれたんでしょ? ありがとう」ニコッ

 春紀(兎)「……あぁ。」ホオアカラメ

 鳰(晴)「学食も閉まっちゃってるし、晴が買ってたカップラーメン位しかないけど、食べる?」

 春紀(兎)「貰う。 そういえば、何時もよりも腹があまり減らないな。寒河江の奴、意外と小食なのか?」

 鳰(晴)「うーん、どうだろう? 晴が二号室に遊びに行く時は何時もお菓子を食べてる印象かなぁ。」

 春紀(兎)「お前、また勝手に一人でッ……はぁ、出会い頭にチョコ菓子を投げつけられたしな」

 鳰(晴)「あはは、あの時は兎角さん達、シュールで面白かったよ?」

 春紀(兎)「私は真面目にアイツの投げたモノが凶器だと思ってだな……まぁいいか、先にシャワー使わせてもらうぞ。」

 鳰(晴)「はい、お先にどうぞ~」

 
 
見た目は互いに違えど、この短期間で作り上げた絆はそう簡単に離れる事は無く、兎角も晴もそれぞれを認識して言葉を交わしていた。

はた目からすれば、鳰と春紀が親しく話しているのだから、目から鱗どころの騒ぎではないのだろうが。

シャワー室に入った兎角は、鏡に映る自らの裸を真剣な瞳で眺め、


 春紀(兎)「(余計な肉は殆どない、恐らく純粋な筋肉量で言えば体格も相まって寒河江の体は仕上がっていると言える。ただ、これはあくまで"脂肪が少ないからそう見える"だけで、栄養が足りてない様にも見える。家庭環境がどうだとか言ってた気はするが……)」



※途中なので後程追加します

※地の文混じりの書き方、見辛かったらやめようかと思いますがどうでしょう? 後、鳰については後程色々描写するつもりです



 春紀(兎)「(ただ、単純に動かす分には難しくないが、これまで出来たはずの投擲や体術に体がついていかないのは辛いな。)」


純粋な力は上でも、ソレを扱う為の技術が失われてしまったのは痛い。普段からワイヤーを武器にしたり、マニキュアを上手く手入れしたりと手先の器用さは目立っていた春紀ではあったが、やはり腕の長さや足の長さの違いなどによる"可動域"が広まったことにより、大きく違和感を覚えている。


 春紀(兎)「……それもまた対策しないとな。」


温かいシャワーに打たれながらも、長い赤髪に触れつつ一人呟いた。




 鳰(晴)「……さて、と。晴も兎角さんが上がってくるまでに課題終わらせなきゃ」


正直、晴自身は肉体が入れ替わった事に対して違和感は感じるモノの其処まで大きな変化だとは思わなかったし、寧ろ少し楽しんでいる節がある
自分よりも低い鳰の視界で観る世界はとても広く感じて、棚上の物を取るのにも椅子を引いて来たりして取らないといけなかったり、大変なんだなぁと新鮮な気持ちになったりもした。
でも、懸念していたのは『一之瀬晴という人間に価値があったとするならば、裁定者である鳰がその肉体を得た時点で』黒組は成立していけるのか?という事。
一之瀬晴が一之瀬晴として正常に行動できなくなった今、理事長はどんな判断を下すのか……せめて、せめて良い結果に終わってほしい。
願わくば、このまま十年黒組だけは解散して、卒業扱いにはならなくても、皆生きてここを出ていける様な、そんな未来が来ることを。


 鳰(晴)「(皆にだって事情はあるんだってわかってる、けど……身勝手な晴の願いだけど、叶うと良いなぁ。)」


静まり返った部屋、ノートにシャープペンシルの走る音だけが微かに広がっていた。



<金星寮二号室>

 
兎角(春紀)「(……この体を動かしてみて分かった事があった)」


東兎角という人物の肉体が、"暗殺者"という存在を体現しているということ。


重くなり過ぎない様、全身に万遍無くついたきしなやかな筋肉、いくら動いても疲労感を感じない体力、そして強靭な胆力。
元の自分の体の時の様にシャドーボクシングをした時も、動きのキレが明らかに常人のソレとは違った。
ただ、拳を引く速度や打ち込む力が落ちていたのは、格闘技全般にも言える『体格差』のせいだろう。

試しにホルスターの背に差さっていたダガーナイフを一本引き抜き、見よう見まねで投擲してみたが、あらぬ方向に飛んでいってしまった。

……技量を失ってしまった東兎角。独学の格闘技を覚えてるとはいえ、ナイフの扱いに関してはからっきしな自分にとってこれは痛いだろう。

まず身長も違うし、例の如くリーチが違う。届く範囲に届かなくなった言葉は、それだけでステップの数が増えてしまうということ。
幸い、その辺り元々の体作りがしっかりしているから問題は無いとはいえ。


 兎角(春紀)「(……さて、伊介様は何処にいったんかなぁ。)」


予告表に関しては当分出せないだろうなぁ、と其処まで深刻そうにするわけでもなく、ポッキーを一本取って齧った。
学食は……何故かやたらとカレーが食べたいしカレーにするとしようか。









※少し訂正


 兎角(春紀)「(……さて、伊介様は何処にいったんかなぁ。)」


予告表に関しては当分出せないだろうなぁ、と其処まで深刻そうにするわけでもなく、ポッキーを一本取って齧った。
明日の学食……何故かやたらとカレーが食べたいしカレーにするとしようか。


 <金星寮一号室>


 春紀(兎)「……上がったぞ、一之瀬。」

 鳰(晴)「あ、おかえり兎角さん。それじゃあ行ってくるね」

 春紀(兎)「あぁ。……」


シャワーを浴び、仕方ないからサイズが割とキツめの兎角のスウェットを着ることにした。

丁度良く袖と裾が捲れる位にフィットした感覚に違和感を覚えつつ、軽くストレッチをしようとベッドに横になった。

……曲がらない。運動神経は良さげだろうなとは思っていたが、柔軟の方はあまり得意ではないようだ。

ゴリゴリと関節が嫌な音を立て、中々の痛みを覚えながらも、しっかりと股を開いて伸ばし、何度か深呼吸をする。

其処で、聞きなれた着信音が部屋に響き渡ると、

 春紀(兎)「……何か用か?」
 
 カイバ先生「お、間違い電話だったk」

 春紀(兎)「(そうだったな…)待て、私だ、東兎角だ。」

 カイバ先生「……おかしいなァ、俺の知ってる兎角はそんなハスキーな声してなかったぜ」

 春紀(兎)「"世界は赦しで満ちている。"……これで分かるか?」

 カイバ先生「あ~、はいはい、もしかするともしかして?」

 春紀(兎)「込み入った事情があってだな、」


―事情説明中―


 カイバ先生「……つまり、お前が寒河江と入れ替わったって訳ね。まぁ~にわかには信じられんが、そういう事ならそうなんだろう。」

 春紀(兎)「意外とすんなり納得するんだな」

 カイバ先生「お前がクソ真面目で愚直なのはわかってるからなァ。……つー事は、そっちの理事長が通信拒否してやがるのもそういう事か」

 春紀(兎)「何…?」

 カイバ先生「いや、こっちの話だ。ま、お前の現状を確認したかっただけだ。それじゃあな兎角ゥ」

 春紀(兎)「おい、はぐらかすな!……チッ」



意味深な台詞を残して通話を切ったカイバに苛立ちを覚えつつも、晴がシャワーから上がってきたのを見て、携帯を投げ捨てた。



  


このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom