女勇者「帰還後王子と結婚できると思っていたら」 (152)

あぁ、清々しい空――
私は達成感で満たされながら、仲間と並んで帰り道を歩いていた。

僧侶「勇者さ~ん、足が痛いです~」

魔法使い「そうそう、急ぐ気持ちはわかるけどさ。ちょっと休んでいかない?戦闘後だし」

勇者「あぁ、ごめんね。そうだね、休んでいきましょう」

丁度いい木陰があり、私達は腰を下ろす。

僧侶「それにしても、今だに信じられないですよ…」

勇者「うん…ようやく終わるんだね――私達の旅が」


つい先刻、私達は魔王を討伐した。
旅前ばっさり切った髪も、今は大分伸びてきた頃合だ。

これで人々は魔王に怯えることなく生活することができる。

そして私は帰還したら――

王子「色んなものを背負って、本当によく頑張ったよ勇者」

勇者「…えぇ」

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>旅の前

国王『勇者よ、魔王を倒したら帰還後、王子の妻となってくれんか』

勇者『…え?』

国王『世界中の希望となり戦うお主に、できる限りの褒美を与えたい』

勇者『でも、私のような田舎者が王子に…』

王子『とんでもないよ。僕こそ、人々の希望である君には不釣り合いだと感じている位だ』

勇者『そ、そんなこと…』

国王『勿論、お主が嫌でなければだが…』

勇者『…』

見目は神秘的な程に美しく、ひと振りで5匹の魔物を斬る程の剣の腕を持つ王子。
その上紳士的な性格の彼は国の女性達の憧れであり、私も例に漏れず、勇者になる前から密かに想っていた。

私は帰還後、彼の妻となる。

王子「旅が終わっても君は勇者。人間達の英雄だ。その使命を背負っていく覚悟はできているかな…?」

魔法使い「ちょいとぉ、今は固い話はナシナシ!」

王子の幼馴染である魔法使いが、王子の肩をべしっと叩いた。

僧侶「まぁ、でもまだ魔王軍の残党が残っていますからねぇ…」

王子「彼らは散り散りになったようだけど、このまま大人しくしているとは思えないね」

魔法使い「残党刈りならバッチコイよ。この魔法使いさんに任せなさい!」

僧侶「わ、私だって頑張りますよ~」

勇者「あはは。頼りにしてる」

半年前まで剣道場のいち門下生だった私が魔王を討伐できたのも、皆のおかげだ。

私を見守りながらも、国と自らの使命を背負って戦った王子。
魔術名家の出身であり、皆のムードメーカーだった魔法使い。
聖職者の中でも才女と名高い、気は弱いが頑張り屋の僧侶。

魔法使い「勇者~、このバカ王子色々と抜けてるから、尻叩いてやんなよ」

王子「勇者は優しいからそんなことしないよ」

勇者「…皆、ずっとありがとう」

魔法使い「え?」

勇者「皆がいたから、私は魔王を討伐できた」

僧侶「とんでもない。勇者さん、すっ…ごく頑張ったじゃないですか!」

勇者「ううん。皆と一緒だから戦う勇気が湧いたんだ。だから本当に、ありがとう」

皆は一瞬キョトンとしたけど、ニコッと笑顔を返してくれた。
3人とも私の大事な仲間――それは旅が終わっても、永遠に変わらない。私は頭が良くないから、上手い言葉が見つからないけれど――

皆の事、大好きだよ。




勇者「う…」

無意識の内に川岸の雑草を掴んでいた。濁流に体を持って行かれそうになったが、必死に堪えて這い上がる。
全身が重い――水を吸い取った服のせいだけではなく、全身に受けた傷がズキズキ痛む。

どうしてこうなったの…?

意識が朦朧としているが、未だ状況を受け入れられない頭を働かせる。

私は皆と一緒に城に帰還した。そこで魔王討伐の報告をした。
その報せはすぐに世界中に伝わり、人々は確かに喜んでいた。
国では宴が開かれた。私は勇者として、恐縮する位の賞賛を受けた。
宴は数日かけて行われた。

そして、3日目の晩に事件が起こって…


「いたぞ!」

その声と足音にハッとなる。
逃げなければ――しかし体が言うことを聞かない。
そして逃げる間もなく、兵士達が私を取り囲む。

「観念しろ」
「反逆者め!」
「お前の罪は到底許されるものではない!」

観念、反逆者、罪――身に覚えのない言葉が頭を更に混乱させる。
だけれど彼らは弁解を許してくれない。

本当に、どうしてこうなったのか――

3日目の晩、国王が殺された。

その報せは今でも覚えている。
だけどショックを受けている暇は私には無かった。何故なら報せを聞いた時、既に私に疑いが向けられ、私は兵士に取り囲まれていたから。

魔法使い『昨晩国王が殺されていた部屋から、あんたが出てきたっていう証言が複数取れているの。最後に国王と会ったのはあんたしか考えられないんだって』

どうにか兵士達の囲いを突破し、合流した魔法使いはそう言っていた。
しかし身に覚えがない。昨晩は宴の最中急に眠気を催し、私は早めに休んでいた。

魔法使い『今はとにかく逃げるの!皆頭に血が昇っているわ!』

私は魔法使いに手を引かれ、一緒に逃げた。
仲間は私を信じてくれている。それだけで心強かった。

途中誰とも遭遇することなく、私達は森へ逃げ込んだ。そして、崖と出くわした。

勇者『これ以上進むことはできな――』

言いかけた所だった。

勇者『――っ』

体に感じた痛みと同時、強い衝撃が私を押した。
崖下への転落――その最中、私はほんの一瞬だけ、魔法使いを見た。


魔法使い、何で――?


魔法使いは冷たい、哀しそうな目で、転落していく私を見下ろしていた。

幸い崖下は深い川で、私は一命を取り留めたが、見つかってしまってはおしまいだ。
兵士達が迫ってくるが、体は抵抗できる状態じゃない。
このままでは捕まってしまうという状況でありながら、私は意識を手放しそうになっていた。

?「窮地のようだな勇者」

聞き覚えがあるような、でも思い出せない声が聞こえたような気がした。
しかし気付いていないのか、兵士達が私に襲いかかってくる。

?「仕方ない…」

勇者「え?」

黒い影が私と兵士達の間に入る――そして次の瞬間、兵士達がバタバタ倒れていった。
兵士達は目標を変えて黒い影に突撃していくが、その兵士達も黒い影によって倒されていった。
そしてあっという間に、全ての兵が倒れ――

?「この程度の者共もかわせんとは、手酷くやられたな」

黒い影の正体が男だとようやくわかった。

――誰?


影が男だと認識したと同時、私は遂に意識を手放した。

勇者「ん…」

目が覚めたのはベッドの上だった。
少しの間ぼけっとしてたが、徐々に頭が働き出す。

私は起き上がって周囲を見渡した。
ベッドと机だけがある簡素な部屋だ。この場所に見覚えはない。
気絶している間に川の水を吸った服は脱がされたのか、質素な夜間着に着替えさせられていた。傷の治療もしてくれている。

一体誰が…?そう考えていると、足元でにゃあと聞こえた。猫だ。
猫は私と目が合うと、ダッと部屋の外に駆けていった。

勇者「…?」

ベッドから出ようとしたが、まだ頭が痛む。
国王を殺したのは誰で、魔法使いは一体何のつもりで――嫌なことばかり思いだし、自然と表情が歪む。

?「ようやく目が覚めたか」

勇者「!」

声と同時にドアが大きく開き、男が入ってきた。先ほど、兵士達を倒した男だ。

勇者「…助けてくれたんですか」

?「あぁ」

結構長身の、逞しい美男子ではある。どこかで会ったことがあるような気はするが、思い出せない。

勇者「ありがとうございます。貴方は…」

?「あぁ、お前は俺の素顔を知らなかったな」

勇者「え?」

そして男は、いたずらっぽく笑いを浮かべた。

?「勇者よ――愛しているぞ」

勇者「―――!!」

勇者「暗黒騎士!?」

暗黒騎士と初めて会ったのは勇者としてそれなりに功績を上げてきた頃か。

暗黒騎士『魔王様の命令により、お前達を討つ――』

1度目の戦いでは、戦地にしていた廃城が崩れ勝敗が有耶無耶になった。
2度目の戦いでは、戦地にしていた山が崖崩れを起こし勝敗が有耶無耶になった。
3度目の戦いでは、戦地にしていた森で川が氾濫し勝敗が有耶無耶になった。

暗黒騎士は魔王軍の実力者で、正直戦い続けていれば私の負けだったとは思う。
それでも少しずつ剣の腕を上げ、挑んだ4度目の戦い。

暗黒騎士『いい目だな、勇者』

戦いの最中、暗黒騎士がふとそんな事を言った。皮肉を言っているのだとその時は思った。
しかし戦いの最中魔物が乱入し、魔王より即座に城に戻るよう命令が出たとかで勝敗はまたも有耶無耶になろうとしていた。

暗黒騎士『勇者よ――』

しかし去り際に暗黒騎士は言った。

暗黒騎士『次の戦いを楽しみにしている。それまでに、腕を上げるのだな』

勇者『今の私の実力では楽しめないとでも』

暗黒騎士『いや、強くなろうとひたむきなお前が好きなんだ』


―――は?


暗黒騎士『お前に、恋をした』


それが、暗黒騎士からの初めての告白だった。

勇者「な、な…」

そんな暗黒騎士が目の前にいることに、私は慌てる。しかし自然と構えを取ってしまう。

暗黒騎士「お前は魔王軍に残党を残しすぎだ。お前達が宴で浮かれている間、残党は各々動いているぞ」

魔王との決戦の時、暗黒騎士とは魔王城で出会わなかった。
魔王討伐後、いずれ戦う羽目になるとは思っていたが、今はそれどころじゃない。

勇者「じゃあ…国王を殺したのは魔王軍の残党!?」

暗黒騎士「ん?何の話だ?」

勇者「昨晩国王が暗殺されて、その疑いが私にかかった…」

暗黒騎士「あぁ、それで追われていたのか。まぁ愚帝との噂だったし、いずれこうなる気はしていたが」

勇者「何てこと…国の人達に伝えなきゃ!」

暗黒騎士「待て」

立ち上がろうとした所で、暗黒騎士が私の肩を押さえつけた。

暗黒騎士「この程度も抵抗できない位弱っている上、お前には疑いがかかっている…そんな状況で戻っては危険だろう」

勇者「誤解をとけばいい!」

暗黒騎士「魔王軍の何者かがやったと言って信じてもらえるのか?見た所、かなり疑われているようだったが?」

その言葉に冷静になる。
そうだ、私と国王が会っていたという目撃証言もある。

暗黒騎士「だがまぁ、誰かが国王を殺したせいで俺のやる事が減ったな」

勇者「…!貴方もまさか国王を狙っていたの!?」

暗黒騎士「違う違う。俺の目的は…」

勇者「!?」

暗黒騎士はぐいっと私の顎を掴み、顔を近づけてきた。

暗黒騎士「人間達から、お前を奪うことだったんだよ」

勇者「それは…」

現在の状況が正にそうだ。暗黒騎士に助けてもらったといえ、囚われの状況と言われればそうなる。

暗黒騎士「お前を奪えば、人間達はさぞ絶望するだろうからな」

勇者「…でも、無意味だったね」

暗黒騎士「ん?」

暗黒騎士の目論見は、国王が死んだことにより大分ずれただろう。

勇者「今の私は国王殺害の犯人――奪われた所で人間は絶望なんてしない」

暗黒騎士「あぁ、そうだな。だが――」

勇者「――っ!?」

ベッドに倒される。弱っている体を、暗黒騎士が組み伏せる。
暗黒騎士は私を見下ろしながら、艶っぽい笑みを浮かべた。

暗黒騎士「俺は、お前を手に入れた」

勇者「いっ――」

猫耳「何やってんだー!!」

ドゴォという音と共に暗黒騎士が吹っ飛ばされた。
と同時、突然乱入してきた猫耳の少年が着地する。

猫耳「ふー。危ねー危ねー。大丈夫だったかお嬢さん」

暗黒騎士「痛っ…」

勇者「あ、貴方は…?」

猫耳「あー俺?俺は猫耳、猫って呼んでもいいぜ。そいつ人望ねーからさぁ、俺がそいつについてきた唯一の部下なんだよ。あ、あんたを治療したり着替えさせたのは俺だからね、そのむっつり童貞野郎にそんなことできるわけが」ペチャクチャ

暗黒騎士「おい、クソ猫」

猫耳「フギャッ!?」

暗黒騎士が背後から猫耳の口を塞ぐ。猫耳はじたばた抵抗している。

暗黒騎士「とにかく今日は日も暮れてきたし、休んでいろ、な?」

勇者「はぁ…」

暗黒騎士はそう言うと猫耳を強引に引っ張って部屋から出て行った。



暗黒騎士「手加減せずに蹴りやがってこのクソ猫がぁ!」

猫耳「お前の為だろ、女を強引に押し倒すような男は嫌われるんだぞ!!」

暗黒騎士「あちこちでメス猫に種付けしてるお前に言われたくはない!」

猫耳「経験値が違うんだよ童貞が!!」



勇者(思いっきり聞こえてる)

今日はここまで。
更新ペースはゆっくり予定。多分総レス数は200いかないんじゃないかな~と。
初っ端から主人公がひどい目に合っててつらい。

おつ
機体

暗黒騎士っていうといつもの人か?
とりあえず期待

いつもの人でありますw暗黒騎士は妄想が捗りますわ…。
またストーリーもキャラの性格も変えてるので、過去作はリセットしてご覧下さいw

おつ!
過去作は知らん
けど期待している

またあんこ食う騎士か…期待(モッチャモッチャ)

暗黒騎士×女勇者モノか
女勇者が臆病者の話を書いてた人かな?

1人になり、状況を振り返る。
国王を殺したのは魔王軍の残党に違いない。だけどそれを主張したとして、信じてもらえるかどうか――

王子が、私を信じてくれていれば…。

だけれど魔法使いは私を疑っていた。だから、私を崖から突き落としたんだ。
信頼していた仲間の1人に疑われたのは、ダメージがかなり大きい。

それでも、王子なら。


王子『勇者。僕は英雄である君の夫に相応しい人間になりたい』

王子『これからどんな困難が待ち受けていようと、僕は――』

王子『君の1番の理解者でありたいと思う』



――決めた。

>翌朝

猫耳「おっはよ~う、今日の朝飯は俺特性シチューでごぜーまあぁぁす」バターン

暗黒騎士「よく眠れたか」

勇者「貴方がいると食事がまずくなるんだけど」

しかし暗黒騎士は気にせず壁に寄り掛かる。
私も気にしないようにして、猫耳が用意してくれた食事を取った。

勇者「ところで、私の服はもう乾いたの?」

猫耳「おう。後で返すよ~」

体の調子は大分良くなった。後は彼らの目を盗んでここを出て――

暗黒騎士「逃げようと思っても無駄だからな」

勇者「!?」

暗黒騎士「お前が大人しく囚われている奴だとは思えん」

読まれていたとは。

暗黒騎士「行動するのは人間達の状態を探ってからでも遅くはあるまい。今動いても捕まるだけだぞ」

勇者「…捕まっても、弁解すれば大丈夫」

暗黒騎士「昨日も言ったが、今疑われているのだろう?弁解しても――」

勇者「私には王子がいるから」

暗黒騎士の顔が少しだけ歪んだ。

勇者「国王が亡くなった今、国で1番の権力者は王子。王子が私の言葉を無視するわけがない」

暗黒騎士「…相当な信頼を寄せているんだな?」

勇者「婚約者だから」

国王が決めた婚約とはいえ、王子は誠実な方。旅の最中も私を気遣ってくれて、勇者の夫となる使命感を固めていた。
国のほとんどが敵に回っていても、王子がいるだけで心強い。

猫耳「愛ですか、愛だねぇ」ウンウン

暗黒騎士「盲目的な愛程危険なものもないな」

勇者「あ、貴方にはわからないから!」

暗黒騎士「…それじゃ困るんだよ」

暗黒騎士が私に寄ってきた。

暗黒騎士「しかし暴走中の女は厄介だ――仕方ない」

勇者「!!」

勇者「~っ」

両腕を縄で拘束されベッドにくくりつけられ、目には目隠しを巻かれている。
いくら叫んでも暗黒騎士を呼んでも、聞こえていないのか反応は返ってこない。
段々時間の感覚がわからなくなってきた。いつまでこうしていなければならないのか。トイレ行きたくなったらどうしよう…。


暗黒騎士「トイレはまだいいのか」

勇者「…っ」

しばらく経って、ようやく暗黒騎士が現れて声を発した。
今どんな風に私を見下ろしているのか、想像するだけで腹が立つ。

勇者「こんな風にされるの、やだ…」

暗黒騎士「あー、すまんな」

暗黒騎士は大して申し訳なさを感じさせずに、私の目隠しを外した。その表情はやはり、あっけらかんとしている。
私はキッときつく睨んでやった。

勇者「暗黒騎士…!」

暗黒騎士「まぁ待て。猫が帰ってきた」

勇者「え?」

トコトコと音がし、ドアの隙間から猫が入ってきた。
そして猫は次の瞬間――

猫耳「はい、ただいま~」

猫耳へと姿を変えた。

猫耳「おいおい、まさかずっと縛ってたの?鬼畜すぎねー?」

暗黒騎士「それよりもどうだった」

猫耳「あー、バッチリ。良かったな勇者さん、王子に会えるぜ」

勇者「!?」

>先刻、城

魔法使いは複雑な心境でいた。
目の前にいる王子は憂鬱な表情を浮かべている。

魔法使い「もっとシャキッとしてよ王子…」

王子「…だけど、父上が亡くなったというのに」

魔法使い「だからこそよ!あんたが次の国王になるのよ!」

叱咤の言葉をかけ、王子を奮い立たせる。
昔から変わらない。王子は、実は繊細な心の持ち主だ。

魔法使い「あんたも言っていたでしょ、早く王位を継ぎたいって」

王子「まぁ…ね」

死人の悪口は言いたくないが、王子の父は愚帝だった。
毎日のように遊びに明け暮れ、政治面では大臣や文官の言いなりになっているような王だった。
そんな父のことを、王子は苦々しく思っていたのはよく知っている。

魔法使い「そんな不安そうな顔しないでよ…。私も一緒に頑張るから…!」

王子「魔法使い――」

猫耳「おっと!一旦そこまでにしてくんない」

魔法使い「!?」

知らぬ間にベランダに少年がいた。人間に似ているが、耳は獣の耳。

王子「侵入者か!?」

猫耳「まず俺の話聞けや。あんたら、勇者の居所知りたくない?」

魔法使い「勇者…!?」

王子「勇者の居場所を知っているのか!」

猫耳「あぁ。勇者なら暗黒騎士の所にいるよ」

魔法使い「暗黒騎士って…」

勇者に熱愛を向けていた男だ。きっと勇者は、追われてボロボロの所を暗黒騎士に捕まったに違いない。

猫耳「夕方までに、西日の丘に1人で来い」

王子「えっ?」

猫耳「暗黒騎士がお前と一騎打ちを望んでいる。それに勝ったら勇者を返してやるそうだ」

王子「ちょっ――」

王子が何か言いかける前に、猫耳はベランダから飛び降りた。
ベランダの下を覗いた頃には、猫耳はいなくなっていた。

王子「暗黒騎士と一騎打ち…」

魔法使い「王子…」

魔法使いの不安は、どんどん膨らんでいた。

>西日の丘

勇者「貴方なんて王子に討たれてしまえばいい…」

拘束が解かれぬまま丘に連れてこられ、私は暗黒騎士に恨み言を言う。
兜をかぶった暗黒騎士の顔は見えないけど、きっと相変わらず平然としているに違いない。

暗黒騎士「俺は楽しみでたまらん」

勇者「何が」

暗黒騎士「勿論、お前の目の前で王子を負かすことだ。その時お前は、どんな顔をするんだろうな?」

勇者「…最低」

私のことを好きと言っていても、この男の愛情は歪んでいる。本当に迷惑な好意だ。

暗黒騎士「…噂をすれば」

勇者「あっ!」

向こうから来る人影が見えた。
見間違えるわけがない。彼は…

勇者「王子!」

王子は暗黒騎士が指定した通り、1人でやってきた。
王子が助けに来てくれた――その事実だけで、今までの鬱憤が嘘のように吹き飛んだ。

王子「勇者――良かった、無事だったんだね」

そして王子は私に、変わらない笑顔を向けてくれた。

王子「魔王軍の残党が集結しているかと思ったが、そちらもお前1人なんだな」

王子はすぐに暗黒騎士に向き直って言った。

暗黒騎士「俺は今は個人で動いているんでね」

王子「そうか。卑怯な手を使わない所は見直したけど、勇者は返してもらう」

王子は剣を構える。と同時、暗黒騎士が王子に突っ込んでいった。
王子はすぐに反応し、暗黒騎士の剣を受け止める。
そこから2人の打ち合いが始まった。カンカンと金属音が響く。

暗黒騎士「なぁ王子――」

打ち合いの中、2人が何やら会話をしている。だけど打ち合いの音で私には聞こえなかった。

王子「…!」

王子の顔に動揺が浮かんだ。
それでも王子の剣は勢いを落とさない。暗黒騎士が卑劣な手段を取った所で、それにひっかかる王子ではない。

王子「っ、黙れ!!」

王子の剣が勢いよく暗黒騎士の首へと突かれた。
暗黒騎士は足を滑らせたのか、それを大げさに避けた。

よし、王子のペースだ――と思ったのと同時だった。

勇者「…っ!?」

私のすぐ真横で、金属と金属がぶつかった。

暗黒騎士「…危なかったな」

一瞬で私の側に駆けてきた暗黒騎士が、私の髪に触れていた剣を引っ込める。
そして地面には、私に向かって飛んできたらしき弓矢が落ちていた。

今何があった?
状況からして、私を狙った弓矢を暗黒騎士が弾き落としたと思える。だけれど、何でそんなことが――

猫耳「暗黒騎士ぃーっ!」

と、向こうから猫耳が駆けてきた。

猫耳「弓兵が王子の後をつけてきてたんだ!このままじゃ囲まれるぞ、撤退しろ!」

暗黒騎士「そうか」

暗黒騎士はすぐに私を抱えた。

王子「待…」

暗黒騎士「お前の指示か、兵たちの独断かは知らんが」

勇者「っ!?」

そう言うと暗黒騎士は私の喉元に剣を突き付けた。駆け出そうとしていた王子は、それで足を止める。

暗黒騎士「俺は不利すぎる状況では戦わん」

王子「お前に勇者を殺せるのか…!?」

暗黒騎士「やれないと思うのか?」

暗黒騎士は平然と答える。それは脅しか本気か、私にも見分けがつかない。
しかし王子は完全に動きを止めてしまった。

暗黒騎士「じゃあ、早々に去るとするか」

猫耳「こっちだ、こっちならまだ弓兵が来てない」

勇者「~っ…」

こうして、私はまた連れ去られる。悔しさで、私は唇を噛み締めた。
襲撃は弓兵の独断に決まっている。そうでないなら、王子は私に剣が突きつけられても動きを止めなかったはずだ。

猫耳「お~い、冷めちゃうぞ~」

勇者「…食べたくない」

隠れ家への帰所後、私はすねていた。

猫耳「どうしたもんかねぇ、このお嬢さんは」

暗黒騎士「口移しで無理矢理食わせてやろうか?」

猫耳「おい、食わないと暗黒騎士にキモい事されるぞ」

勇者「~っ、最低!最悪!あんたなんか嫌い!死んじゃえ!」ガバッ

猫耳「あーあ、布団かぶっちゃって。仕方ねぇなぁ」

暗黒騎士「八つ当たりだな」

暗黒騎士のおかげで命が助かったのはわかっている。私を殺そうとしたのは弓兵だともわかっている。
それでも、せっかく会えた王子と引き離された怒りが収まらなかった。

勇者(王子は私を助けてくれようとした…!)

王子の笑顔を思い出す。
旅の最中、何度も私に向けてくれた笑顔。それは彼が私を思いやってくれている証。
彼に支えられて、私は勇者になることができたのだ。

猫耳「おい嫌われ者、お前とりあえず出て行け」グイグイ

暗黒騎士「後で覚えていろクソ猫」

猫耳「よし行ったな。…なぁ、飯食わなかったら体壊すだろ?体壊したら何もできないだろ?」

勇者「…」コクリ

猫耳「それじゃいつでもいいから、飯だけは食ってくれよ。食器は明日片付けるから、そのままにしておいていいよ」

勇者「…」コクリ

猫耳「ん。じゃ、俺は出て行くから」




猫耳「お前とりあえず勇者の望み通り死ね!」

暗黒騎士「ああぁ!?俺が何したと言うんだ!?」

猫耳「女心わかんねー奴に女を愛する資格はねーんだよ、せめて童貞のまま死ね!!」

暗黒騎士「何だとこのクソ猫があぁ!!」



勇者(また聞こえてるし)

ここまで。
初回乙コメントが過去作で1番多くてビビってます。ありがたやありがたや。
とりあえずあんこ食いながら頑張ります(モッチャモッチャ)

>>20
タイトルが勇者「もう勇者なんてやめたい」なら、自分で間違いないであります。

>>32
やっぱりか、期待

とりあえず作者氏が暗黒騎士と囚われシチュエーション好きなのはわかった乙

猫耳のキャラが結構好きだわ乙

毒舌ヤリチン猫耳ショタとか何て俺得

>翌朝

勇者「…ん?」

目が覚めて早々、あるものが目に入った。
これは…





暗黒騎士「目が覚めたか、今日は――」ガチャ

勇者「あ、暗黒騎士」

暗黒騎士「っ!?」

暗黒騎士が私の姿を見て仰天する。

暗黒騎士「お前…その格好」

私は村娘の服を着ていた。
朝目が覚めたら、壁にかかっていたものだ。私の服がいつの間にか無くなっていて、夜間着では居心地が悪いのでとりあえず着させてもらった。

勇者「貴方が用意したんじゃないの?」

暗黒騎士「い、いや…」

猫耳「おっはよ~。ちょっと来い暗黒騎士」グイッ

猫耳は顔を出すなり、暗黒騎士を部屋の外に引っ張った。

暗黒騎士「お、おい、用意したのお前か?」

猫耳「おう、ナイスチョイスだろ」

暗黒騎士「そう、だな…」

猫耳「何ドギマギしてんだよ、童貞か。あ、童貞だった」

暗黒騎士「いや…女の格好しているあいつを見たのは初めてで…」

猫耳「可愛いもんなぁ?」

暗黒騎士「か、かわっ…!?」

猫耳「堂々としてろ、変態キャラが台無しだぞ!たかが村娘の格好じゃねぇか、ホラ行け!」

暗黒騎士「クッ、わかった…!!」



勇者「…」

暗黒騎士「悪くはないな勇者…。どうだ?久々に小娘の格好をした感想は」フッ

勇者(ごめん全部聞いてた)

勇者「そう言えばさっき何か言いかけてなかった?」

暗黒騎士「あぁ」

暗黒騎士はフフンと鼻を鳴らす。

暗黒騎士「喜べ。城下町に連れて行ってやるぞ」

勇者「………え?」

暗黒騎士「まぁその格好なら、誰もお前が勇者とは気付かないだろう。よし、朝飯食ったら行くぞ」

勇者「え、ちょ…何をしに?」

暗黒騎士「デートだ」

猫耳「ばーかばーか。違うだろ、王子から国民に何か発表があるんだってよー」

勇者「王子から!?」

暗黒騎士「どんな発表か見当もつかんが、デートついでに聞きに行ってもいいだろう」

猫耳「とか言ってるけど露骨な点数稼ぎだから。「貴方のお陰で王子を近くで見られたわ、ありがとうチュッチュ」ってなるわけないのにねー馬鹿だねー」

暗黒騎士「殴るぞ」ゴッ

猫耳「殴ってから言うな」

勇者「猫さん、朝食早く早く!」

猫耳「あ、おう」

>城下町

久々に感じる城下町は人で賑わっていた。
この格好なら誰も私が勇者だと気付かないだろうと暗黒騎士は言っていたけど…。

「ねぇねぇ、あの人超イケメンじゃない?」キャイキャイ
「本当だ~、この辺の人じゃないよね~」キャイキャイ

勇者「…」

暗黒騎士「ん?どうした?」

鎧を脱いでも彼は結構目立っていた。

勇者「中身は残念なのに、無駄に女性の目線を集めるとは…」

猫耳「にゃあ」

猫の姿になっている猫耳も、同調するように鳴いた。

勇者「本当に私だってばれないんだろうか…」

暗黒騎士「大丈夫だろう。女の格好すればお前は、か、かわ、かわ…」

勇者「……」

暗黒騎士「かわ…変わるからな!」

勇者「あ、うん」

猫耳(ダメだこりゃ)

暗黒騎士「それより演説は城の庭でやるそうだ。いいか、目立たんようにしろよ」

勇者(あんたが言うな)

勇者(でも王子の演説か…)

ずっと一緒に旅をしていたから、私は王子の「素の顔」に慣れている。
だから公衆の面前に出る時の顔は、最近見ていなかった。

勇者(でも勇者になる前は、そっちの顔しか知らなかったなぁ)

才色兼備、勇猛果敢――そんな王子にずっと憧れていた。ただの小娘に過ぎなかった頃、彼と結婚どころか、言葉を交わす関係になれるとも思っていなかった。

勇者(素の王子もいいけれど、久しぶりにそういう王子が見れるなぁ)

暗黒騎士「ボーッとするな、人ごみに潰されるぞ」

勇者「あぁ、ごめんなさい」

だけれどニヤケるのが抑えられなかった。

暗黒騎士「そろそろ始まる時間だな」

兵士「静粛に!」

暗黒騎士「お」

城の庭園を見渡せるベランダに、正装に身を包んだ王子が姿を現す。
それだけで人々(特に女性)が歓声を上げたが、その声を王子自ら制す。

王子「まずは集まってくれた貴方がたに感謝する。早速だが知っての通り、先日我が父である国王が討たれたが――」

勇者「…」

王子「私は、勇者がやったとは思っていない」

勇者「!」

周囲がざわつく。

王子「根拠はない。しかし勇者と共に旅をした私には、彼女がそんな事をするようには思えない」

勇者「王子…」

やはり、王子は信じてくれていた。私の1番の理解者でありたいという王子の言葉に嘘は無かった。
ドキドキする。今にでも、私はここにいると叫びたい。

王子「しかし――」

王子はそこで、思わぬ言葉を発した。

王子「完全に疑いが晴れぬまま、勇者を王家に迎え入れるわけにはいかない」

勇者「――え?」

王子「そこでだ」





王子「私は、同じく旅を共にした魔法使いを妻として迎え入れようと思う」


―――!?

ざわつきはさっきより大きくなった。
それよりも、私は王子の言葉が信じられなかった。

どうして、魔法使いが――?

「確か魔法使い様は、魔術名家のご出身だったな」

噂話が耳に入る。

「家柄は勇者様と比べ物にならんな」
「それに王子とは幼少からのお付き合いだそうだな」
「それなら、勇者様よりも――」

勇者「…嘘」

王子は私を信じていると言った。それなのに、私を妻にはできないと言った。
どうして?本当は私を信じていないの?それとも――


王子『勇者。僕は英雄である君の夫に相応しい人間になりたい』


――嘘だったの?


王子『これからどんな困難が待ち受けていようと、僕は――』


――私にくれた言葉は、全部



勇者「そんなわけない…嘘、嘘っ!」

暗黒騎士「お、おい…あぁ仕方ない!」

暗黒騎士「すまない、連れの気分が悪くなったので…」

私はその後の演説を聞くことなく、暗黒騎士に引きずられるようにそこを後にした。

今日はここまで。
暗黒騎士で画像検索して目の保養してます。

ぶっちゃけ王子と魔法使い幸せになってほしい
策士幼なじみが報われる展開ぐう好き

乙乙
>>1は暗黒騎士と聞いたらまず誰を思い浮かべる?

>>46
まだ先の展開は言えないけど、期待を裏切らないか心配ですw

>>47
暗黒騎士じゃなくて鎧が黒いだけだけど、すぐ連想するのはVPのグレイですかね。
あとは画像検索で知った暗黒騎士キバが超気になってます。

>>48
あ、大丈夫ですよー
ただこういうとき魔法使いの視点から見るとホント応援したくなるだけだから

魔法使いの心理描写がまだあんま無いから、どうなっていくのかな。

あ、過去作気になったので見ました。恋愛描写で胸キュンでした、今回も楽しみです。

変態受け入れるなw乙

>街の外

勇者「…」

今だに衝撃は抜けない。さっきの言葉は嘘だったのではないかと、どうしてもそう思いたくなる。
だけど私は確かに聞いた。王子は、魔法使いを妻にすると…。

暗黒騎士「受け入れがたいと思うが、それが王子の出した結論だ…」

暗黒騎士は多少気を遣いながらそう言った。
猫耳は人の姿になり、首を縦に振る。

猫耳「けどどうも話が急すぎねぇか?文官達に押し切られたのかも…俺が探ってこようか?」

勇者「…」

答えを出せない。
確かに何か裏があるかもしれない。だけどそれを知った所でどうする?
私は、まだ自分に着せられた濡れ衣を晴らす手段も持っていない。王子が信じてくれていても、身の潔白を完全に証明できないことにはどうしようもない。

暗黒騎士「…俺は探らない方がいいと思うがな」

暗黒騎士がそう言ったが、私は理由を問わなかった。
彼の言葉をあてにしたくない気持ちもある。

猫耳「でもよ、もしかしたら国王殺しの犯人がわかるかも…」

「そんなもん知りたいの!?」

暗黒騎士「!?」

そこに姿を現したのは…

暗黒騎士「魔女じゃないか」

魔女「ヤッホー久しぶり暗黒騎士に猫ちゃん。愛する勇者ちゃんを捕まえたんだね~。お祝いに魔女の媚薬でもあげようかぁ?」

暗黒騎士「勇者の前で堂々と渡すな。何をしているんだこんな所で」

魔女「そりゃ勿論、魔王軍残党としての活動」

猫耳「あー、魔女も動いてたんか。活動って何やってんの?」

魔女「知りたい?教えてあげるよ」

魔女はケラケラ笑った。

魔女「この国の英雄に変身して、偉い人をサクッと殺っちゃいました~ぁ♪」

勇者「何だって!」

魔女「おー、初めて私に反応したね勇者ちゃーん」

勇者「…ッ!!」

魔女「わわっ」

私は魔女に飛びかかったが、魔女はすぐに反応し空中へ逃げた。

魔女「あっぶなー。流石魔王様を倒した勇者だわぁ、好戦的ぃ」

魔女を捕まえて城に連れて行けば、国王殺しの犯人が私ではないと証明できる…と思ったが、魔王軍残党の仕業だと説明すればいいだけか。王子は私を信じてくれていると言った、ならその言葉も信じてくれる。

そう思った所で、魔女はまた笑い出した。

魔女「もしかして勇者ちゃん、私のせいだって王子に言えば何とかなると思ったぁ?」ケラケラ

勇者「何…!!」

魔女「まー、そりゃあのお人好しの王子と一部の人らは納得するだろうけど…どうにもならない事だってあるんだよね~」ウンウン

勇者「何のこと!?」

魔女「怖いこわ~い。うーん、わからないかぁ…」

魔女「よし。ならこうしよう。今夜、月光の湖畔においでよ、そしたらわかるよ。あ、どっかの草葉の陰に隠れていた方がいいよ」

勇者「…そこで何があるの」

魔女「それは見てからのお楽しみ♪じゃあね~」

勇者「あっ!」

それだけ言うと魔女は煙と共に姿を消した。

勇者「今夜…!」

勿論行ってみるつもりだった。しかし。

暗黒騎士「駄目だぞ」

勇者「は…!?」

暗黒騎士「今のお前は俺の捕虜だ。俺の許しなしに、勝手な行動が許されるわけがないだろう」

勇者「暗黒騎士…!」

この男はどこまで私を邪魔する気なのか…!!
けれど武器を持たない今、まともに抵抗はできない。だが捕まれば、また拘束されるに違いない。

となれば…。

勇者「っ!」ダッ

暗黒騎士「あっ!?」

私は踵を返し、全速力で駆ける。足の速さには自信がある。
夜、湖畔へ行くことは暗黒騎士もわかっているからいずれ捕まる。それでも、魔女の言っていた何かを確認しておきたかった。

暗黒騎士は――よし、追ってこない。
私はこのまま逃げて、夜までどこかに潜むことにした。




猫耳「湖畔で張ってるしかなさそうだねぇ」

暗黒騎士「あぁ、できれば何かが起こる前にあいつを捕らえる」

猫耳「暗黒騎士…お前何か知ってるな?」

暗黒騎士「大体想像はつく…」

>夜、月光の湖畔

私は慎重に湖畔の草場に足を踏み入れた。
暗黒騎士らが近づいてきたらわかるよう、全神経を尖らせる。

勇者(それにしても…)

初めて来たが、湖畔に月光が反射して美しい光景だ。
しかも今日は満月。夜だというのに、湖畔全体が明るい。

勇者(何だか見とれてしまう…)

ガサッ

勇者「ん?」バッ

猫耳「ふにゃ!?」

振り返り、猫の姿になっていた猫耳が、私と目が合いビクッとした。
彼は暗黒騎士に私の居場所を教えるつもりか――

勇者「猫さん…悪いけどしばらくじっとしててもらうよ」ジリジリ

猫耳「にゃ、にゃー…」

猫なで声に油断せず、私は猫耳を取り押さえる。
猫耳はじたばた暴れたが、所詮は猫。まともに抵抗できるはずがなかった。

勇者「…ん?」

猫耳を取り押さえながら気付いた。向こうから足音が聞こえる。
暗黒騎士か…!?だったら隠れないと。

だけど、そこに現れたのは。

勇者「…!」

王子「…あぁ、いい景色だ」

日中とは変わり、軽装に身を包んだ王子だった。
王子は月光に照らされ、美しい姿を更に神秘的に見せている。その距離、ほんの10数メートル。
叫べば声が届く距離。私は、急がずにはいられなかった。

勇者「おうっ…」

しかし。

王子「おいで、他に誰もいないよ」

勇者「!?」

王子が手招きして姿を現したのは――



魔法使い「えぇ、本当に綺麗ね」

勇者(魔法使い!?)

間違いなかった。
私の大事な仲間だった魔法使い。
私を崖から突き落とした魔法使い。
私の代わりに、王子の妻となる魔法使い――。

魔法使い「子供の頃にも来たわね。あの頃は無邪気だったもんだわ」

王子「そうだね」

2人は並んで、湖畔のすぐ側に腰を下ろした。
私は――出ていこうにも、頭が混乱して足が止まっていた。

王子「本当に無邪気だったね。僕は花で指輪を作って、君にプロポーズした」

魔法使い「花は枯れちゃったけど、その時のことはずっと忘れていない――だって、大事な思い出だったから」

王子「…うん」

――これは、この2人は、何を言っているの?

魔法使い「私、本当はずっとずっと――あんたが勇者の夫になると決めた時も、ずっと――」

王子「…魔法使い」




勇者「――!?」



魔法使いの言葉を遮るように、王子は彼女の唇を塞いだ。

――何を、しているの?

目の前の光景は月光が見せた幻影。そう思いたくなる位、私には受け入れがたい光景だった。

暗黒騎士「…だから言ったんだ」

唐突に姿を現す暗黒騎士。
いつの間にか私の腕から猫耳がいなくなっていた。暗黒騎士は猫耳が呼んだのか。
けど目の前の光景で頭が真っ白になって、そんな事どうでも良くなっていた。

暗黒騎士「ほら戻るぞ」

私は抵抗する気もなく、暗黒騎士に連れられそこを後にした。
だけどずっと2人の姿が忘れられなくて、隠れ家に帰った後も私は茫然としていた。

どうして王子と魔法使いが?
本当なら魔法使いではなく、私があそこに――


いや。


あんな王子の顔、私は見たことがない。


それはつまり、王子は本当は魔法使いのことが――

夜も数レスだけ更新予定。
N・T・R! N・T・R!(黙れ

魔法使いが催眠で寝とった
魔女が魔法使いに化けて、催眠で寝とった
王子は最初から魔法使いの事が好きだった
王子は最初から魔法使いの事が好きだったが、それを逆手に取られて魔女に誑かされている
全部

さぁどれだ

全て魔女の幻想魔法だった

出番がない僧侶が気になる。
なんか鍵握ってるのか?

本当に勇者と暗黒騎士好きだなw
前の魔女と不死者の奴まだ読み終わってないし今日中にでも読むか

前々作と前作の暗黒騎士は男前だったのに今回のは変態かよww好きです、はい。

勇者「暗黒騎士――」

暗黒騎士「…珍しいな」

私は暗黒騎士の部屋を訪れた。ベッドに横になっていた彼は、私の訪問で体を起こす。

暗黒騎士「どうした」

勇者「知ってたの?ああなる事…」

暗黒騎士「…」

勇者「気は使わなくていい。教えて」

暗黒騎士「…王子と一騎打ちしただろう。その時に聞いたんだ」

勇者「あの時…?」

暗黒騎士「あぁ、あの時の会話だが…」

暗黒騎士『なぁ王子――お前、勇者を愛しているのか?』

王子『――!!』

暗黒騎士『お前は王子としての義務を果たそうとしているだけだ――勇者に夢を持たせて、罪な奴だ』

王子『っ、黙れ!』

勇者「そう、それでわかったの…」

暗黒騎士「魔女に、月光の湖畔と聞いて確信した。あそこは恋人達が集まる定番の場所だし、もしかしたらとな――」

勇者「そうなんだ…」

私との結婚は、王子にとって義務だった。
本当はずっと、魔法使いを想っていたんだ。

王子の私への優しさ、思いやりが嘘だったわけじゃない。
ただ、私を愛していなかっただけで――

勇者「馬鹿みたい、私」

憧れの相手と結婚できると決まって、浮かれていたんだ。
相手の気持ちすら、私にはわからなかったのに。

勇者「ねぇ、暗黒騎士」

暗黒騎士「ん?」

勇者「貴方は――どうして気付いたの?」

暗黒騎士「決まっている」

勇者「――」

暗黒騎士に抱き寄せられる。その腕に強引さはなく、包み込むように優しい。

暗黒騎士「お前を愛している俺には、あいつがそうでないことくらいわかる――」

彼の心臓の鼓動が、嘘ではないと言っていた。
このまま全て委ねてしまってもいい――私の体の力は、ゆっくり抜けていった。

暗黒騎士「…抵抗しないのか」

勇者「別に」

暗黒騎士「…」

暗黒騎士は私の顎をくいっと上げる。そのまま、彼と見つめ合う形になった。
そのまま、少しの間見つめ合ったが――

暗黒騎士「――駄目だな」

暗黒騎士はため息をついた。

暗黒騎士「今のお前は自暴自棄になっているだけだ。勢いに任せては、後悔するぞ」

勇者「…意外。貴方がそんなこと言うなんて」

暗黒騎士「女の扱いは苦手なんでな」

暗黒騎士は私を離すと、恥ずかしそうに顔をぷいっと背けた。

暗黒騎士「…お前を追いかける分には良いんだが、正直…お前が女らしい格好したり、その気になられると、どうしていいかわからなくなる」

勇者「ふーん…」

暗黒騎士「まー…とりあえず自分は大事にしろ、な?」

勇者「貴方にそんな説教されるなんて、私相当どうかしてたみたい」

暗黒騎士「あのな…」

勇者「でもありがとう、結構冷静になれた」

私はベッドから立ち上がった。

勇者「一晩経てば、きっと頭も冷えるから――明日からのことは、明日考える。それじゃ、おやすみなさい」

暗黒騎士「そうか。…また明日」

猫耳「ぷ、ぷぷぷっ…」

暗黒騎士「おい盗み聞きのクソ猫」

猫耳「はいは~い、盗み聞きのクソ猫で~す。盗み見もバッチリで~す」

暗黒騎士「…まぁ許してやる。それよりも」

猫耳「おう、城を偵察してこいって言うんだろ?」

暗黒騎士「あぁ。いくら好き合っていたとはいえ、お前の言った通り、王子の結婚が決まるのが早すぎる。何かきな臭いな」

猫耳「だね~。でもどうしたの?さっきは探らない方がいいって言ってたじゃん?」

暗黒騎士「勇者が王子の気持ちを知ってしまったから、もういいだろう」

猫耳「優しいね暗黒騎士!実にいい人止まりな男だ!」

暗黒騎士「やかましい!それにそれだけじゃない。俺の目的は…」

猫耳「人間達に絶望を…か?」

暗黒騎士「あぁ。頼んだぞ猫」

今日はここまで。
いやー、今後ここであがった予想を上回る展開ができるかどうか…(震

暗黒騎士は暗黒騎士という名前の響きと、黒くて物々しい鎧の中に隠れた男前っていうのが萌えであります。
前作読んで下さっている方にも、読んでいない方にも自分の萌えが伝わると嬉しいと思います(無謀

勇者が眠くなった件については
睡眠魔法掛けた・薬を盛ったのどっちなんだろう

セックスしないだと!?

魔法使いにその気がなかったのならわざわざ勇者を崖から突き落とさずとも警吏に引き渡せば良かったわけだしな。
でもまさか両想いだったとはね……

ようやく時間ができたのでコメントにまとめて返答したいと思います。
なお今後の展開予想にお答えできないのはご了承下さいませ。展開予想の中に「その手があったかあぁ!」ってのもいくつかあったりw

>>65
まさかその作品の話題がここで出るとは…!
あれも最初は魔女が暗黒騎士を拾った話で考えてましたw

>>66
キャラの差別化は大事であります。変態は大好物です(ただしイケメンにry

>>74
この段階でHしたら勇者が尻軽すぎる気が!
エロは書くのよりも見る方が好ry

暗黒騎士と言われると、ロードス島戦記のアシュラムしか思い浮かばない俺は年がバレるな。

アシュラムはかっこよかった
たしかに暗黒騎士と雰囲気近いかも

男勇者と女暗黒騎士ってのは1的には守備範囲じゃないのかな?

>>78>>79
検索して麗しい男前を知ることができました、ありがとうございます。

>>80
男女逆転すると守備範囲から外れますな。
女暗黒騎士で色々妄想した結果、相手役は魔王や上官がしっくりきました。


暗黒騎士って聞くと
ちょっと違うかもだけど、FEの漆黒の騎士が思い浮かぶ

>翌朝

勇者「ふわぁ…」

昨晩はなかなか眠れず、今日は少々寝坊した。
昨日は夕飯をかなり残したせいで、結構お腹がすいている。猫耳はもう朝食を作ってくれただろうか。

勇者「…ん?」

ガチャガチャせわしない音が聞こえ、部屋から出る。
音の方に行くと、暗黒騎士が厨房を散らかしていた。

勇者「…何をやっているの」

暗黒騎士「あー…起きたか。飯だ」

勇者「…」

皿に盛られた朝食は、明らかに今までよりクオリティが下がっていた。

勇者「これは」

暗黒騎士「…昨晩から猫が用事でな」

勇者「じゃあ、これ貴方が…」

暗黒騎士「食えなくはないぞ…」

心なしか暗黒騎士の声が小さい。これはかなり自信がない証拠だ。
一体どんな代物なのか…私は行儀悪く、立ったまま炒め物を一口平らげた。

勇者「何だ、どんなひどいものかと思ったら普通においしいじゃない」

暗黒騎士「そう…か?」

勇者「男の人でこれだけ作れたら十分でしょ」パクパク

暗黒騎士「そうか…まぁ猫が戻るまでの間、お前に作ってもらっても」

勇者「死にたいの?」

暗黒騎士「…もしかして壊滅的レベルか」

暗黒騎士「ほら、これ」

食後、暗黒騎士は私に剣を差し出した。

暗黒騎士「使うだろ」

勇者「え、えぇ。まぁ」

剣を受け取る。形は私が愛用していた剣に近い。
何度も剣を合わせた暗黒騎士だから、私の剣を覚えていたのだろう。
それにしても。

勇者「私に剣を持たせて良かったの?貴方を殺すかもしれないのに」

暗黒騎士「なめるな、例え寝込みを襲われても殺されん」

勇者「…それもそうか」

暗黒騎士の実力は、私がよくわかっている。

勇者「それでも捕虜に武器を持たせるなんて、普通はしないと思うけれど」

暗黒騎士「俺は、剣を振っている時のお前が1番好きだ」

昨晩恥ずかしがっていた男はどこへ行ったのか、暗黒騎士はさらりと言った。
お礼に頬にキスでもすればあたふたするかもしれないが、それはこっちも恥ずかしい。

勇者「…ねぇ暗黒騎士」

暗黒騎士「何だ」

勇者「そういえば、まだ貴方との決着がついていなかったね」

暗黒騎士「そうだな」

勇者「せっかくだし、相手してくれない?」

暗黒騎士「いいだろう」

剣の腕はほぼ互角だった。
暗黒騎士が力で私を上回るなら、私は技術で補う。女の身でありながら勇者として戦歴をあげていくにあたり、身体能力よりも技術を上げた方が効率的だった。
それでも暗黒騎士の恵まれた体格から繰り出される剣技は力強く、こちらが攻めきれない程手強い。
結果、一進一退の攻防が続き、勝敗はまたもや有耶無耶になった。

勇者「はぁはぁ…スタミナはそっちの方が上だし、真剣勝負ならそっちの勝ちだったね」

暗黒騎士「だが命のやりとりなら、負ける前に撤退する。それにお前は、初めて戦った時とは比べ物にならない程強くなったじゃないか」

勇者「うん、自分でも実感してる」

王子が剣の稽古をしてくれた。皆が戦いを助けてくれた。だから私は強くなれた。
例え私への気持ちに嘘が混ざっていたとしても、皆は私の恩人で大事な仲間だ。

暗黒騎士「お前程ひたむきなら、もっと強くなれるだろうな」

勇者「じゃあ、暗黒騎士。私が強くなる協力をして」

暗黒騎士「…俺が?」

勇者「そう。…他にいないからね」

暗黒騎士「光栄だな…愛の告白を受けたような気分だ」

勇者「…」ソッ

暗黒騎士「!!」ビクゥ

ちょっと手に触れたらこれだ。全く、面白い人だ。

勇者「貴方は私の事――」

暗黒騎士「ん?」

勇者「いえ、何でもない」


それから何となく休憩を挟みつつ剣の打ち合いをしていた。
食事中や休憩中は他愛のない会話を交わす。本当に他愛なくて、明日になれば忘れてしまうような内容だった。それでも、今の私には、そんな会話ができる相手が必要だった。

貴方は私の事、ずっと見ていてくれるの――?

聞きたかった。でもそんな約束をして、ずっと縛り付けるのは良くない気がして、言えなかった。今の私はどこに気持ちが向いているのか、自分でもわかっていなかったから。
今だけでも、私を見てくれている誰かがいるだけで良かった。

>城

結婚式は近々だ――
それでも魔法使いは素直に喜ぶことが出来なかった。

僧侶「魔法使いさん…勇者さんを取り戻すまで、式は待てませんか?」

魔法使い「とは言っても、国の文官達やうちの親戚達も急いでいてね…」

それは建前だ。本音では、王子が心変わりする前に式を挙げたかった。
万が一、冤罪を晴らした勇者が戻ってくれば、王子はまた勇者の方へ行ってしまうのではないか――そんな不安を抱いているなんて、言えるわけがない。

僧侶「私は勇者さんは絶対無実だと思います!魔法使いさんだってそうですよね!?」

魔法使い「…当たり前じゃない」

勇者がそんな事をするわけがない――それはよくわかっている。

僧侶「勇者さん可哀想ですよ…」

魔法使い「…」

自分も長い事王子への気持ちを押し殺さなくてはならない状態にあったが、それでも最終的に王子を得たのは自分。
それもこれも、あの日私が勇者を突き落としたから――勇者はきっと、私を許さないだろう。

魔法使い「…結婚のゴタゴタが終わったら、勇者を助け出すから…絶対」

大臣「…という風にお願いします」

魔女「オッケ~♪任せておきなさ~い」

魔女「…ふぅ、ハゲと会話すんのはストレスだわぁ」

魔女「ところでそこの猫ちゃん、偵察中かな?」

猫耳「にゃー」

魔女「まぁこっちはこっちで好きにやるから、そっちも好きにやればいいと思うよ」

猫耳「…にゃあ」

魔女「ところで意外だったぁ?まさか国内に内通者がいたなんてねぇ」

猫耳「にゃんにゃん」

魔女「そっか、流石猫ちゃんだね。でも、中身がドロドロしてると壊しやすいよね~」

猫耳「にゃー」

魔女「私の計画が成功するか失敗するかは賭けみたいなもんだけど…」

魔女「ド派手な舞台、作り上げてやるつもりだから」

猫耳「にゃあ」

猫耳「国王殺害は大臣や一部の文官が魔女と結託して行ったこったな、間違いねぇ」

戻ってきた猫耳は、私と暗黒騎士にそう報告した。

猫耳「勇者に罪をなすりつけたのは多分だけど、勇者のカリスマ性が邪魔になったせいじゃないかな」

暗黒騎士「で、魔女はそれだけで終わるつもりはないだろう」

猫耳「うん、大臣にとって邪魔な権力者を消すようにも依頼されてたよ」

勇者「大臣は今まで国王の代わりに国を牛耳っていたけれど、魔王を討伐し国民の支持が王子に向いたから…」

暗黒騎士「評判の悪い国王を排除し、今度は王子を王にして牛耳るつもりか」

勇者「早く王子に知らせないと」

猫耳「まぁ待ちな、実は王子と魔法使いの結婚式が明後日なんだよ」

勇者「!!」

猫耳「で、魔女の奴ド派手な舞台を作り上げると言っていたぜ。やるとしたら…」

暗黒騎士「結婚式の時か?可能性はあるな…」

勇者「なら尚更早く知らせないと」

猫耳「ん?結婚式ブチ壊せてラッキーじゃね?」

勇者「思ってないからそんな事!」

暗黒騎士「知らせるにしても、今だ国王殺害の疑いが完全に晴れていないお前が言って信じてもらえるかどうか…それどころかますます混乱するかもしれんな」

猫耳「捕まって暗殺されるかもよ」

勇者「それでも放っておけない!」

暗黒騎士「仕方ないな…おい猫、お前行ってこい」

猫耳「はいはい。俺が王子に忠告してくるよ」

勇者「猫さんが!?」

猫耳「あんたが行くよりはマシだ。まあ忠告を王子が聞くかはわかんねーけど、結婚式に備えて何かしら対策は取るだろ」

勇者「…」

暗黒騎士「じゃあ頼んだぞ猫」

投下ここまで。
暗黒騎士「くっ…殺せ!」 っていうタイトルがふと思い浮かびました。


>>82
FEはゲームシステムが合わなくて途中で断念しましたが、彼もイケメンですね(鎧が)

>>82
やあ、(´・ω・`)ようこそ、しっこくハウスへ。
このエタルドはサービスだから、まずは喰らって死んで欲しい。
うん、「絶対に勝てない」んだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない。
でも、このパラメータを見たとき、君は、
きっと言葉では言い表せない 「絶望」みたいなものを感じてくれたと思う。
殺伐とした世の中でそういう気持ちを忘れないで欲しい、
そう思ってこの攻撃をしかけたんだ。
______________じゃあ、リセットしようか。
http://i.imgur.com/onCJqck.jpg

眠ることができない。
それは国を心配してか、それとも王子達が結婚式を挙げることへの複雑な気持ちのせいか――
割り切ったつもりだったが、王子への気持ちが吹っ切れていないことを自覚する。駄目だ、これじゃあ。

暗黒騎士「おい、起きているだろう」

勇者「!」

暗黒騎士が部屋に入ってきた。
私は体を起こす。

勇者「どうして起きているとわかったの?」

暗黒騎士「王子の事を考えていたんだろう」

勇者「お見通しなわけ」

暗黒騎士「愛する女の事はな」

暗黒騎士は私のベッドに腰を下ろす。私とは一定の距離を置いており、夜這いに来たわけではなさそうだ。

暗黒騎士「大臣や魔女が動かなければ、王子の花嫁はお前だったな」

勇者「…そうだね」

暗黒騎士「王妃になりたかったか?」

勇者「そういうわけじゃ…」

王妃という地位や、権力に興味はない。豪奢なドレスを着飾って優雅な日々を送るなんてのは私の性には合わない。
ただ、私は王子のことが――

勇者「私は王子に愛されたかった」

それは王子の妻になっていたとしても、叶わなかった望み。
それでも自分は愛されていると錯覚しながら、私は幸福を感じていたのだろうか。

勇者「貴方の気持ちは報われないと思う」

私ははっきり言った。

勇者「私は、王子にずっと未練を抱いていくんだと思う」

暗黒騎士「わかっている」

それでも暗黒騎士は、

暗黒騎士「敵に惚れた時点で望みのない恋心だった」

口元に笑みを浮かべて答えてくれた。

暗黒騎士「それでもお前は、徐々に心を開いてくれている――正直、俺はそれに戸惑っている。そんな有様でお前の気持ちまで欲しいと願うのはおこがましい」

勇者「暗黒騎士…」

敵だった頃、彼がこういう風に考える人だとは知らなかった。
だけど彼を知れば知る程――

暗黒騎士「お前、王子の結婚式に行くつもりだろう?」

勇者「!」

暗黒騎士「どうしてわかったか、か?…愛する女の考える事だからな」


彼のその気持ちが、本物だとわかっていった。

暗黒騎士「無茶をするなよ」

勇者「…止めないの?」

暗黒騎士「止めたいが、お前に嫌われたくない」

勇者「前は私の嫌な事もしていたのに?」

暗黒騎士「お前の気持ちが変わっていっているように、俺の気持ちも変わっているんだよ」

勇者「…そう」

暗黒騎士「お前の腕なら、多少の危険も大丈夫だとは思うが――」

暗黒騎士は唐突に、私を抱き寄せた。

暗黒騎士「無事でいてくれ――絶対に」

勇者「――えぇ」

彼の腕に身を委ね、彼の気持ちを実感する。
私の気持ちは今でも王子を引きずっている。それでも今、私は確かに、幸せを感じていた。

式当日、私は男装して観衆に紛れていた。
魔女に命を狙われているであろう国の重役たちの姿は遠目で確認できる。
その中には、僧侶の姿もあった。彼女も命を狙われている1人なのか、それはまだわからない。
猫耳は王子だけに、大臣や魔女の件を話したと言っていた。王子はそれを聞き入れたかはわからないが、警備兵は多めに配置されている。

魔女はこの警備の中で、騒ぎを起こすつもりだろうか…?

そんな心配をよそに、ラッパの音が鳴る。
何も知らない人々からは歓声があがる。

そして、王子と魔法使いが姿を現した。

新郎新婦の格好をした2人は幸せそうに寄り添っていた。
心が少しだけ痛む。自分はもうあそこに立てないし、自分では王子のあんな顔を引き出すことはできなかった。
それでも祝福ムードの中浮かないように、私は精一杯の笑顔を浮かべた。

王家の挙式ともなると長引き、観衆の中には飽き始めている様子の者もいる。
それでも式は滞りなく進んでいる。私の心配は、果たして杞憂だったのか――

その時だった。

兵士「大変です!!」

来たか――!?

兵士「魔物の群れが、こちらに向かっています!!」

勇者「!?」

魔物の群れ?魔女1人ではなく?

王子「観衆を避難させるんだ!」

その事態を事前に予測していたのか、王子も兵士達も取り乱すことなく動く。
避難する観衆の群れから外れた私は物陰に潜み様子を伺う。
すると丁度観衆達のほとんどが避難を終えた頃、魔物達は押し寄せてきた。

敵の数、約30匹――その中に魔女もいた。そしてその先頭に立つのは、見たことのない女の魔族。

王子「お前達の目的は何だ!?」

王子が先頭の女魔族に向かって叫ぶ。
女魔族は王子とは対称に、ふふっと優雅に微笑んだ。

?「目的か――その前に自己紹介しておこうかしら」

?「私は貴方達が討った魔王の娘。私達の目的は、貴方達の破滅」

魔王の娘が言い放つと同時、魔物達がワーワーと沸いた。

魔法使い「破滅ですって、ふざけんじゃないわよ!」

魔法使いは花嫁衣装のまま勇ましく叫び、手に魔力を纏っていた。

魔法使い「英雄の結婚式に攻め込んだ度胸だけは認めてあげる」

僧侶「私達は絶対負けませんよ!」

王子「行けっ!」

魔物の群れに兵士達が攻め込む。王子も、魔法使いも、僧侶も、戦闘の群れに加わっていた。
私は戦闘の様子を冷静に観察する。数では人間側が圧倒的に上回っている。魔物を率いている魔王娘の実力は――魔物達の後方で魔法を放っており、王子が彼女に近づこうとすれば魔物達に遮られる。つまりは、魔物に守られる程度の実力という事。やはり、娘というだけでは魔王に到底及ばないのだろう。
彼女を守っている魔物達の実力も、見た所、王子達を苦戦させる程の者はいない。

勇者(私が出る幕は無さそうかな…)

私が出ることでかえって混乱を呼ぶ可能性がああった。

だが、その時――

勇者「!」

混戦の群れの中から、魔女が上空に飛び立つのが見えた。

魔女の視線の先は敵でもなく、味方でもなく――

勇者(大臣!?)

遠くの席から戦闘の様子を眺めている大臣だった。
彼は魔女の襲撃を事前に知っていたのだろう、避難をしていなかった。

だが大臣を見る魔女の目つきに嫌なものを感じ――

魔女「悪いけどぉ…」

勇者「…っ!!」

魔女「ハゲは死んでちょうだい!!」






大臣「――――え?」

勇者「させるかああぁぁ――っ!!」

王子「え!?」

僧侶「あっ!?」

魔法使い「――!?」

叫び声と共に、私は大臣に向かって放たれた魔法を一刀両断に切った。

唐突に登場した私は、周囲の視線を集めた。

魔女「あーあ、失敗」

勇者「どういうつもり?大臣を殺そうなんて」

大臣は魔女と手を組んでいると聞いていたが――
しかし魔女はあっけらかんと答えた。

魔女「別にぃ。大臣の策略では、結婚式で死者を出して…あ、大臣にとっての邪魔者ね。それで王子に精神的ダメージを負わせて御し易くする計画だったみたいだけど」

魔女「それが猫ちゃんの告げ口で王子にバレた今じゃ、全然意味ありませ~ん。だったら少しでも国にダメージ与える為に、死んでもらおうと思いました~」

そういう事か。魔女は大臣を、国王殺害の内通者として利用していただけ。利用し終わった今、排除しても問題ない存在になったのだ。

勇者「本当に性格悪いね貴方…。でもその悪巧みも、ここで終わらせる!」

魔女「へぇ~、止められるものなら止めてみれば勇者ちゃん」

魔王娘「そいつが勇者…」

魔王の娘がこちらを睨むと同時、魔物達の視線が一気にこちらに集中した。

魔王娘「私達が真っ先に排除すべき人間だわ!やりなさい!」

その命令で、魔物の群れがこちらに向かってきた。
群れで押し寄せてきたからといって、1度に全員が攻撃できるわけではない。最初の攻撃を回避し、2擊目、3擊目を防御――してから、すぐに攻撃に転じる。
大きくひと振り、2匹の魔物を同時に切りつける。と、次の魔物達が攻撃をしかけてきた。これを、攻撃を受ける前に回避。

1匹1匹は暗黒騎士に比べれば遥かに弱い。落ち着いて戦えば大丈夫――

魔王娘「たった1人相手に何をやっているの!」

勇者「だったら――」

魔王娘「――っ!?」

私は一直線に魔王娘に駆けていた。
そして1撃――と、途中で魔物が私に攻撃をしかけてきた為、回避の為攻撃を中断した。
魔王娘は動揺を顔に浮かべていた。やはり、近距離での攻撃には弱いようだ。

兵士「な、何で勇者が…!?」

兵士達は今だ状況が呑み込めずにいた。

兵士「奴は国王を殺した反逆者だろ…!?」

僧侶「そんなわけないでしょう!」

だが、僧侶の声が動揺する兵士を一喝する。

僧侶「人々の為、魔王と戦った勇者さんですよ!勇者さんがそんなことするわけないでしょう!」

王子「そうだよ」

王子も同調する。

王子「勇者は自分に罪を被せられている状態にも関わらず、僕らの為に駆けつけてくれた…!そんな勇者を、見捨てるわけにはいかない!」

兵士「…」

兵士達は勇者の様子を見た。
こんな状況にも関わらず、魔物の群れから狙われても逃げず、怯まず、勇猛果敢に立ち向かっていく姿――それは正に、自分達の希望である勇者ではないか。

兵士「…勇者様に続け!!」

兵士達から歓声が上がる。王子と僧侶はそれを聞いて安心する。
勇者を助ける――その気持ちが1つになり、彼らは勇者に襲いかかる魔物の群れに向かっていった。




ただ1人を除いて。

魔法使い「何で――」

彼女が茫然と立ち尽くしていても、不思議に思う者はいなかった。
今、この場で、彼女を見ている者はいない。

魔法使い(王子は、勇者を見ている――)

勇者を見た瞬間、王子の顔に希望が満ち溢れた。それは魔法使いでは引き出せない王子の顔。
それもそうだ、勇者は皆の希望だ。王子だけでなく、この場にいた全員が、勇者によって戦う士気を上げていた。それはつまり、勇者が勇者であると再び認められた証。




魔女「怖いの?勇者ちゃんが皆に認められるのが――」

魔法使い「!!」

魔女「そうだよねぇ。せっかく勇者ちゃんの株が落ちてたのに、一気に取り返したもんねぇあの子」

魔法使い「何を…」

魔女「だから貴方は勇者ちゃんを突き落としたんだもんねぇ?」


―――!?

何故、それを…。



魔女「知ってるよ。だってあの日、隠れて見てたんだもん」

魔女「だけどこの国にダメージ与える為に国王を殺した私でも、流石にびっくりしたわー…まさか大事な仲間が勇者ちゃんを殺そうとするなんて」

魔法使い「や、やめ…」

魔女「あ、私は感謝してるよぉ?勇者ちゃんが逮捕されるより行方不明になった方が、人間達は不安になるもんねぇ」

魔女「だからお礼に大臣に、貴方と王子の結婚を後押しするように言ったげたんだよぉ」

魔女「ま…でも、このままじゃ無意味になっちゃうよね~」

魔法使い「!!」

私は、ずっと我慢していた――


魔法使い『え――王子、勇者と婚約したの?』

王子『あぁ。父の決めたことでね』


私の方がずっと昔から王子と過ごしてきたのに。


勇者『この街は夜景が綺麗なんだって!皆で見に行かない?』

僧侶『あぁ…私と魔法使いさんは魔法の勉強があるので留守番しています』

王子『え?そうなの?』

僧侶『そうなんです!だから2人で行ってきて下さい!ね、魔法使いさん!』

魔法使い『…えぇ、そうね』


私は気持ちを押し殺さなくちゃいけなくなって。


勇者『ねぇ魔法使い…』

魔法使い『ん?どうしたの勇者、神妙な顔して』

勇者『王子をお茶にお誘いしたいんだけれど、何て言って誘えばいいかなぁ…』

魔法使い『…』


膨らんでいく気持ちを抑え続けて――


魔法使い『私が間に入ってあげるわよ』

勇者『本当!?ありがとう魔法使い、やっぱり頼りになる!』

魔法使い『…いいのよ』


黒い気持ちは、どんどん大きくなっていった。

魔女「勇者ちゃんを逃がすフリして、誰にも見つからないように手を下すなんて…本当えげつないよねぇ」

魔法使い「ちが…私は本当に、勇者を逃がすつもりで…」

魔女「でも魔が差した。それで手を下したことには変わりないよね」

魔女「暗黒騎士と王子の決闘を弓兵に邪魔させたのも、貴方だよね?」

魔法使い「…っ!!」

魔女「勇者ちゃんに死んでほしいから、そんな事したんでしょ?」

魔法使い「そ、そんな事…」

魔女「いいんだよぉ、嘘つかなくて」

魔女の目が光る。魔法使いはそれを直視してしまい――

魔女「だから私が、それの言い訳をあげる」

魔法使い「あ…」

魔法使いは手をかざした。

勇者「――っ!?」

私は突然の爆風に吹っ飛ばされる。
辛うじて着地し、ダメージは避けることができた。だが、その魔法を放ったのは…。

勇者「魔法使い!?」

魔法使い「あ…あ…」

魔法使いは私を狙っていた。
その目は正気ではない――これは一体?

魔女「教えてあげよっかぁ~?」

魔女が上空で大声で叫ぶ。

魔女「その子は私に操られているんで~す、だから今は勇者ちゃんの敵で~す♪」

勇者「なっ!!」

驚く間もなく、魔法使いからの魔法が私を狙った。
回避した所に魔物達が襲いかかってきた。だが、王子がすかさず私の前に出て攻撃を防いだ。

勇者「王子、魔法使いが…」

王子「あぁ、魔法使いを正気に戻さないとね」



魔法使い「……」

魔法使い(そう、私は操られている。だから――)

魔法使い(勇者を狙うのは、仕方のないこと――)

今日はここまで。
書いてて魔法使いに感情移入して悲しくなってくる。

>>91
何てことを。保存した。

魔法使いの気持ちはわかるが...やっぱ好きになれんなぁ

勇者「…くっ!!」

国でもトップクラスの使い手である魔法使いの魔法は、避けるだけで精一杯だった。

勇者(正気に戻すには、魔女を倒さないと…)

しかし魔女は魔法使いの側にいる。魔法使いの魔法は、彼女と結構な距離を取らないと避けることができない。
つまりは、魔女にも近づけないということ。

王子「どうすればいいんだ…!?」

勇者「僧侶、魔女の技を打ち破る方法はないの…!?」

僧侶「それが…あるにはあるんですけれど…」

僧侶は困ったように言う。

僧侶「あの技は、魔女が魔法使いさんの魔力に干渉して意識ごと操っているんですけれど…」

僧侶「でも、魔法使いさんが魔女より大きな魔力ではね返せば、簡単に打ち破ることができるんです」

王子「…じゃあ、魔法使いがそれをしない理由は…」

僧侶「恐らく…魔女の方が魔法使いさんより格上だから…?」

勇者「嘘でしょう!?魔法使いは魔王軍の魔術師にも勝る実力の持ち主なのに!」

僧侶「でも、それ以外の理由となると…魔法使いさんが魔女の技を打ち破る気がないとしか…」

王子「…それは考えられないから、魔女の方が格上だということか」

勇者「それは厄介な…」

勇者「玉砕覚悟で魔女に突っ込んでいくしかないか。僧侶、怪我したら、回復よろしく!」

僧侶「えっ、勇者さん!?」

私は僧侶の返事を聞く前に、魔女に向かって駆け出して行った。
魔法使いが魔法を放ってきたが、多少のダメージは妥協して致命傷を避ける。
そうして体に傷を増やしながら、私は魔女との距離を詰めていった。

勇者「覚悟っ――っう!!」

魔女に切りかかろうという所で、横から吹っ飛ばされた。
魔法使いの魔法は警戒していたが――

魔王娘「注意力散漫ね」

勇者「…くっ!」

魔王の娘の魔法なら魔法使いのよりは全然マシ――口から垂れる血を拭いながら、私は立ち上がる。
だが――

勇者「!!」

目の前に、魔法使いが立っていた。

魔法使い「勇者――」

勇者「っ…!!」

魔法使いは既に手に魔力を溜めている。放たれれば避けられる距離じゃない。

王子「勇者…くっ!」

王子も、兵士達も、魔物達の妨害にあって魔法使いを止められる状態ではない。

僧侶「魔法使いさん…!心を強く持って下さい!!勇者さんを殺してしまってもいいんですか!?」

魔法使い「私…は…」

魔女「逆効果だって」

魔女の言葉を私が理解する前に、魔法使いは――

魔法使い「勇者を…殺す!!」

勇者「!!」

躊躇なく、その手から攻撃を放った。



勇者「――――――っ」

「何をやっている」



勇者「――!?」


「勇者の力というのはそんなものか?」

「それとも――」



暗黒騎士「死を覚悟した――なんてバカげたこと言わないよな?」



暗黒騎士は私を庇うように、私と魔法使いの間に立っていた。魔法が直撃した鎧は、半壊している。

王子「な、何で暗黒騎士が!?」

事情を知らぬ周囲はざわつく。
しかし私はすぐに暗黒騎士に駆け寄った。

勇者「あ、暗黒騎士…私を庇って…」

暗黒騎士「何の為の鎧だと思っている。お前にそんな顔をさせない為の…」

猫耳「かっこつけんなバーカ。魔法を防いだことは防いだが、衝撃で骨の1本や2本折れてるだろ」

暗黒騎士「物陰に隠れながら毒づくなクソ猫」

猫耳「だって危ないじゃん」

魔王娘「暗黒騎士、あんた…」

魔王娘が歯を噛み締めながら暗黒騎士を睨む。
暗黒騎士は――兜のせいで、表情は伺えなかったが、静かに言った。

暗黒騎士「娘様――知っての通り俺は勇者を」

魔王娘「あぁそうだったわね…。あんたはそのせいで人望を失ったバカな男だったわね、せっかく有能だったのに」

暗黒騎士「バカついでに、敵を増やしても構わない。どうせ俺はもう魔王軍を抜けたのだしな」

魔王娘の表情には焦りが浮かんでいた。
それも頷ける。彼女も、彼女が連れている魔物も、暗黒騎士より弱い。できれば暗黒騎士とは戦いたくないというのが本音だろう。

魔女「まさか逃げるなんておっしゃいませんよね、娘様…?」

魔女は不敵に微笑んだ。
魔王娘はそれでビクッと跳ねる。

魔王娘「だけど、暗黒騎士が勇者の味方についたら…」

魔女「私達は魔王様の意志を継ぐのですよ?魔王様のような強さを持てないなら、命を賭してでも人間に絶望を与えないと――」

魔女がそう言ったと同時、魔法使いが動き出す。
魔法使いは私に向けて、また魔法を放とうとしていた。

勇者「魔法使い…!!」

魔女「この状況打破する手段はまだないでしょ?さぁどうするの!?」

勇者「そんなこと言ったって…!!」

魔女との距離は遠い。その上、私と魔女の間に魔法使いが立ちはだかっている。
魔女と距離を詰めようにも、まず魔法使いを何とかしないと。だが、それも――

魔女「教えてあげようかぁ、どうすればいいか!」

勇者「え…!?」

まさか操者が本当のことを言うとは思えなかったが、私はついその言葉に耳を傾けてしまった。
しかしその言葉は――

魔女「魔法使いちゃんを切ればいいんだよ」

私の選択肢にはない行動だった。

勇者「そんなことするわけ――」

暗黒騎士「勇者!」

暗黒騎士に体を引っ張られる――と同時、私の立っていた所が爆発した。

魔女「別にいいんだよ~、やらなくても。そうやってずっと、暗黒騎士に守られるお姫様やってればいいんじゃない?」

勇者「ふざけたことを――」

魔女「ふざけてないよ?てか勇者ちゃん、魔法使いちゃんを許すの――?」

魔女「その子、勇者ちゃんを崖から突き落として殺そうとしたのに?」

王子「は――?」

僧侶「え!?」

勇者「――っ!」

魔女「あぁ他の皆は知らなかったよね~。ま、詳細は後で勇者ちゃんか魔法使いちゃんに聞いて」

魔女「このままじゃ、どっちか死ぬだろうけど…♪」

魔法使い「私は――」

勇者を憎んでいた。
勇者がいなくなれば王子は私のものだ――私の黒い感情は、私にそう思わせる程に膨らんでいった。

勇者も私を憎んでいるはずだ。
許せるはずがない、自分の想う人を奪った相手を。
そして勇者はまた、私から王子を奪おうとしている。

だから――



勇者「魔法使い――」



―――え?

一瞬何が起こったのかわからなかった。
勇者は――力強く、私を抱きしめていた。

勇者「私ね――ずっと魔法使いの気持ち、わかっていなかった」

勇者「魔法使いに許してもらおうとは思っていない」

勇者「でも私は魔法使いのこと、許すよ」

勇者「だって魔法使いは――私の大切な、大好きな、仲間だから」

魔法使い「―――!!」



魔法使い「勇…者…」


勇者は、私にとって――

―― ――  ―――
― ―― ――― ――
――― ―― ―― ―

勇者『ううぅ~…』

魔法使い『ここにいたの勇者。…って、どうしたのよ、その干上がったクラゲのような姿は』

勇者『わからない!どうやったら王子のような力強い剣を習得できるのかわからない!!』

魔法使い『あー修行してたの…』

勇者『もっと筋肉つけないと駄目かなぁ、こうパワフルに』

魔法使い『女の子の言葉じゃないわね』

勇者『だって私勇者なのに皆に助けてもらってばっかりで、戦いでも足を引っ張ってばかりだし…』

魔法使い『焦る必要はないわよ。強くなるのは少しずつでいいの』

勇者『でも、皆に早く追いつかないと…』

魔法使い『あのね。あんたを助ける為に私らはいるのよ?競うためじゃないわ』

勇者『…助けてもらってばかりで、皆の仲間って言っていいのかな』

魔法使い『仲間だから助け合うんじゃない…あんたはもう大切な仲間だからね』

勇者『魔法使い…』

魔法使い『そーれーよーりーも!!』

勇者『な、何!?』

魔法使い『その女の子らしさゼロの姿が気に入らんわ!!風呂入って綺麗になってきなさい!!』

勇者『ひーん』バタバタ

魔法使い『…全くもう』フフッ

― ―― ――― ―
―― ―― ―――
――― ――― ――

魔法使い「…そうだ」

彼女に感じていた嫉妬も憎しみも、嘘ではない。
だけど勇者を大事だと思う気持ちも、同時に持っていた。

魔法使い「勇者…」

いつでも素直で優しかった勇者は、こんな私を許すと言ってくれている――

魔法使い「私も――」






魔女「…使えない」


魔法使い「――っ!!」

魔女「寒い寒い、そういうのいいんだって」

勇者「あ…あ…」


一瞬、魔法使いが正気の目に戻ろうとしていた。

それなのに。


王子「魔法使い――っ!!」

勇者「何で…」





魔法使いは、血まみれになって私に倒れ込んでいた。

午前中の投下はここまで。
今日中に完結できるかなー…

乙です
勇者も僧侶も無意識のうちに魔法使いを傷つけてたんだよね……
俺だったら絶対に耐えられないよ、魔法使いが健気すぎて責める気になれない
ってか魔女と大臣以外は誰も悪くないっぽい、魔王娘も何か魔女に利用されてるっぽいし

切ねえなぁ

魔王様本当に死んでるのか…?
てか>>1って姫様と暗黒騎士の人かな?従者が出てくるやつ

暗黒騎士「まさか術が解けそうになった瞬間、魔法使いを攻撃するとはな…」

何が起こったか理解していなかった私は、その言葉を聞いて魔女を睨む。

勇者「許さない…!!」

魔女「へぇ。で?」

私は魔法使いを地面に寝かせ、魔女に飛びかかろうとした――しかし、

魔法使い「待…勇者…」

勇者「魔法使い!?」

魔法使いは弱々しくも、私の手を握る。

魔法使い「私…言いたいことが…」

僧侶「無理して喋らないで下さい!」

僧侶が駆けつけ魔法使いに回復魔法を施す。しかし衰弱のスピードに回復がついていかないのか、魔法使いが回復する気配はない。
どんどん弱っていく魔法使いから、私は目を離すことができなかった。

王子「…っ、急いで回復魔法の使い手を集めるんだ!!」

勇者「魔法使い…しっかりしてよ!!」

魔法使い「勇者…私…」

魔女「アハハハハ!!なーに、死に際に許してもらおうって魂胆?都合がいいんじゃないかなー、ひっどいおん…」

暗黒騎士「黙れ」

魔女「―――!?」

暗黒騎士の剣が、魔女の腹を貫いた。

魔女「うわーこれ死ぬわ…不意打ちなんてひどぉ」

暗黒騎士「お前が言うな」

暗黒騎士が剣を引き抜くと、魔女は腹から大量の血をぶちまけ、そのまま地面に倒れ込んだ。
それでも魔女は、その顔から笑みを消すことはなかった。

魔女「私達の目的は、人間達に絶望を――私は勇者を絶望させたわ」

暗黒騎士「…あぁ、そうだな」

魔女「暗黒騎士、あんたも魔王軍残党――あんたは一体どんな絶望を…」

魔女「ま…あの世があれば、見てるわ…」

魔女は、そのまま動かなくなった。

勇者「魔法使い、魔法使い!!」

魔法使いは声も出なくなり、口元をパクパクさせていた。
私に何かを一生懸命伝えようとしている。


――ごめんね。


そう言っているような気がした。


勇者「私魔法使いのこと許すから!許すから――」

魔法使い「…う、しゃ――」

勇者「!!」





――ありがとう。大好き。




勇者「―――――――」

魔王の娘たちは混乱に乗じてか、いつの間にか姿を消していた。
大臣も混乱に乗じて城から逃げ出そうとしている所を、王子に捕まった。そして尋問により、国王殺害の件と、魔女と共謀していた残りの者の存在を吐いた。
この自供により私の無実は証明され、私は再び勇者としてこの国に迎えられることとなった。

あの混乱からどれくらいくらい経っただろうか。
勇者の名誉を回復させる為、国の権力者達が奔走していた。それだけでないゴタゴタが色々あったようだが、私にはよくわからない。
とにかくその間、私は城に保護という名目で軟禁に近い生活を送っていた。
軟禁生活の間、私の耳に届くのは――

「勇者様、王子との結婚式の日取りはいつにしましょうか」
「どんなドレスがお好みで?」
「魔法使い様の喪が明ける頃がいいでしょうか」

そればっかりだ。
私の事だというのに周囲が勝手に話を進める。

中には魔法使いの行動を責める声もあったけれど、それは私や王子や僧侶に睨まれ、堂々と言う人はいなくなった。
私も魔法使いを追い詰めた1人だ――その気持ちは2人にもあるようだ。


時が経つにつれ、人々は私に罪が被せられていた間のことも、魔法使いのことも少しずつ忘れていく。

魔法使いの喪が明ける頃合になると、結婚式の話が本格的に進んでいた。

そして結婚式前夜――

王子「勇者、月光の湖畔に行かないかい」

王子にそう誘われ、私は着いて行く。
湖畔に行きたかったというより、城での軟禁で息が詰まっていた為、解放されたい気分があった。
それに喪中期間、私は婚約者であるはずの王子とほとんど話していなかった。王子も国を継ぐにあたって忙しく、ろくに休んでいられなかったようだ。

やがて湖畔に辿り着く。
満月だ――丁度、王子と魔法使いの情事を盗み見してしまった、あの時と同じ。湖畔の風景は、あの時と全く変わらない。

王子「誰もいないね」

勇者「そうですね」

私と王子は並んで腰を下ろす。
時は静かに流れていく。王子とこんな時を過ごすなんてのは、いつぶりだろうか。

勇者「王子――」

しかし、言わねばならないことがあった。

勇者「魔法使いのことですが」

王子「――あぁ」

王子「僕は君にも魔法使いにも、誠実ではなかった」

私は否定をしない。
本当にそうだ――そこが、私が王子を許せなかった部分だ。

王子「国と、王子としての使命を背負っていたから――というのは言い訳になるかな」

勇者「かなりひどい言い訳です」

王子「手厳しいね」

勇者「今でも魔法使いが好きなんですか?」

王子「それは…」

王子は言葉を詰まらせる。
それでも私は王子を許さず、尋問するように見つめた。

王子「魔法使いが君にしたことだけど――」

王子は話題を変えた。
魔法使いが私にしたこと――私を崖から突き落として殺そうとしたことか。

王子「僕は魔法使いに代わって、その罪を背負っていくつもりだ」

勇者「――そうですか」

彼女の罪を背負っていくということ。
それはつまり、彼女を想い続けるということ。

王子「…魔王軍の残党はまだ残っている。その中から第2の魔王が生まれるかもしれない」

勇者「そうですね」

あの日ゴタゴタで魔王娘を逃がしてしまった。
それに残党は、彼女だけではない。

王子「だから僕には…いや、この国、人間達には、君が必要だ」

勇者「…」

魔王を倒したあの日にも交わした会話だ。
私はこれからも勇者として戦う使命を背負っていく。魔王の意志を継ぐ者がいる限り、その使命は無くならない。

王子「勇者、君には僕と共に、人々を守ってほしい――」





「そうはさせるか」



王子「!?」

勇者「あ―――」





暗黒騎士「よ」

あのゴタゴタがあった日、いつの間にか姿を消していた暗黒騎士。
あの日依頼、一切姿を見ていなかったが――

暗黒騎士「話は全て聞かせてもらった」

猫耳「ミミズみたく地面に這いつくばってな」

暗黒騎士「黙れクソ猫」

暗黒騎士は体についていた土埃を払う。

暗黒騎士「魔法使いを想い続けながら、勇者に同じ道を歩んでほしいと言う。本当に不誠実な男だな」

王子「…君に関係があるかい」

暗黒騎士「ある」

そう言って暗黒騎士は私に近づいてきた。
そして暗黒騎士は私の正面に立つと、頬に触れてきた。

勇者「暗黒騎士…何を」

暗黒騎士「俺は魔王軍残党として人間に絶望を与える為、そしてこの世で1番勇者を愛している男として…」

暗黒騎士「お前をさらいに来た」

勇者「!!」

勇者「ちょっ、暗黒騎士――」

王子「ねぇ勇者」

しかしこの状況にも関わらず、王子は落ち着いていた。

王子「僕はどうすればいいかな?」

勇者「は――!?」

王子「明日を迎えれば、君は一生色んなものに縛られて生きていくことになる」

王子「逃げ出すには、今がチャンスでもあるよね」

王子はずっと、王子としての使命に縛られて生きてきた。
それは愛する者に対し不誠実になってしまう程、強い義務感だった。

王子「本当は僕には、君に共に歩んでほしいと言う権利なんてないんだよ」

王子「それでも僕はこの国の王子だから――」

王子「誰もいないこの場でしか、君たちを見逃すことができないんだ」

勇者「王子」

強めに王子の名を呼ぶ。王子と私は正面から向かい合う。

勇者「…もし、また愛する人ができたなら――」

私は、愛する人になれなかったけれど――

勇者「こういう時は「行かせない」って言わないと駄目ですよ」

王子「…そうだね」

王子は苦笑いを浮かべた。
王子は踵を返す。そのまま王子は振り返ることなく、私達の関係は本当に終わったのだ――

勇者「…う」

暗黒騎士「おい?」

私はそこに座り込む。
駄目だ、割り切っていたつもりなのに――

勇者「終わった…本当に、終わっちゃった」

猫耳「走れば追いつくけど」

暗黒騎士「余計なことを言うな」

勇者「大体、暗黒騎士…」

暗黒騎士「ん?」

勇者「…来るなら来るでもっと早く来てよ!!何ヶ月待ったと思ってるの!!」

暗黒騎士「俺が悪いのか!?」

勇者「当たり前でしょ!!」

暗黒騎士「ちょっと待てわけがわからない」

勇者「うるさい!嫌い!」プイッ

暗黒騎士「…本当にわからん」

猫耳「まぁ頑張れや、俺はその辺でメス猫ナンパしてっから」スタスタ

暗黒騎士「おい猫!?」

暗黒騎士「………なぁ勇者」

勇者「なに」

暗黒騎士「座るか」

勇者「…いいよ」

暗黒騎士「まぁその何だ…。すまん!」ガバッ

勇者「…遅れた理由は?」

暗黒騎士「こっちもゴタゴタしていて…」

勇者「ゴタゴタは片付いたの?」

暗黒騎士「いや、片付いてない…魔王軍残党の派閥争いが激化していてな」

勇者「暗黒騎士にはもう関係ないんじゃ?」

暗黒騎士「そのはずなんだが、巻き込まれてな…」

勇者「じゃあ私に構っている暇なんて無かったんじゃ…」

暗黒騎士「いや最優先事項だ!!お前が他の男と結婚するなんて耐えられん!!」

暗黒騎士は真剣そのものという顔で言った。
何だかその様子が、とてもおかしくて――

勇者「フ、フフ…貴方ってもう、本当に…」

暗黒騎士「……?」

真剣に私を想ってくれている。それだけで、私は救われていた。

暗黒騎士「…これから、苦労をかける」

勇者「え?」

暗黒騎士「派閥争いにお前を巻き込むかもしれない――でも俺は絶対に」


守る、と言ったらはたいてやろう。


暗黒騎士「お前を守――」

勇者「違う」ベシッ

暗黒騎士「っ!?」

勇者「私が守られてるだけの女だと思うの?」

暗黒騎士「…」


以前約束した。


暗黒騎士「…一緒に戦ってくれ」


強くなる協力をしてくれ、と。


暗黒騎士「剣を振っている時のお前が、1番好きだ」


それは彼にとって、愛の告白に等しい願いだった。

勇者「ふ、ふふふ…」

暗黒騎士「な、何だ?」

勇者「だって。貴方は私をさらうのに、一緒に戦えってのも変だなぁって」

暗黒騎士「守るって言っても駄目なら、どう言えばいいんだ…」

勇者「さぁ?」

私は意地悪に笑った。

勇者「ところで、まださらわないの?」

暗黒騎士「…もう少し、ここにいてもいいんじゃないか」

勇者「逃げるかもよ」

暗黒騎士「じゃあ、こうする」

暗黒騎士は私の手をギュッと握る。力強く、私を繋ぎとめようとする手。
私は手を握り返す。暗黒騎士は赤くなる――それでも構わず、私は彼の肩に寄り添った。


押しには弱い彼の耳元で、私は小さく囁いた。


勇者「ねぇ暗黒騎士――」

暗黒騎士「ん?」


それは、ただ1つ彼に願うこと。


勇者「私の事、ずっと見ていてね」




私は勇者として、使命を背負い続ける。


勇者「はぁ~、久々のふかふかのベッド…」

暗黒騎士「あぁ、ゆっくり休め」


戦いはいつ終わるかわからない。


子猫たち「にゃーにゃーにゃー…」

猫耳「はいはい、待ってろ」

勇者「猫さんの子供また増えた…?」

暗黒騎士「毎晩毎晩朝帰りしやがって!」

猫耳「え?夜いなくなるのは2人に気を使ってのことじゃん」

暗黒騎士「……………」

勇者「猫さん今何て言ったの?」

猫さん「いや別に何も」

もしかしたら、ずっと戦い続けることになるかもしれないけれど。


猫耳「情報入りました~。獣王の一派が北の街を襲おうと計画してるそうで~す」

勇者「また戦いかぁ、ここの所連戦だね」

暗黒騎士「俺1人で行こうか?」

勇者「ううん、私も行く」

暗黒騎士「平気か?」

勇者「うん、平気」


私の側にいてくれる人がいるから――



勇者「ずっと貴方と一緒に行くよ、暗黒騎士!」



fin

終わりました。読んで下さりありがとうございます。
今作は沢山コメントが集まったので嬉しかったです(´∀`)
作者的には暗黒騎士×勇者の絡みをもう少し書きたかった所ですが、ストーリーぶち壊さない為にはこの程度でちょうど良かったのかなーと。

また来年も暗黒騎士ネタを書ければいいな~と思います。

寄せられたコメントに返答したいと思います。

>>62
正解は3つ目でした~と。
でも4つ目の展開も面白そうで、その手があったか!と思いましたw

>>73
その説明を入れる場所が無かったので省きましたが、大臣か共謀していた誰かが食事に薬を盛ったでいいと思います。

>>108>>122
魔法使いの行動は意見が分かれるのは致し方ないですね。
賛否両方あったのは自分的にはある意味思惑通りであります。

>>124
タイトルが 勇者の娘「お父様の仇を討ちます」 なら自分で間違いないです。

乙!
この後おまけとして日常話のような小ネタ投稿してくれると嬉しいな(チラッチラッ

では即興で


暗黒騎士「帰るのが遅くなったな」

猫耳「早く帰って晩飯作らないと」

暗黒騎士「…ん?隠れ家から煙が…」

猫耳「敵襲か!?」

暗黒騎士「まずい!!勇者あぁ――ッ!!」





勇者「お帰りなさい」

猫耳「…なぁ、この毒霧もしかして、そのテーブルの…」

勇者「晩御飯…のつもりなんだけど…」

暗黒騎士&猫耳「…」

勇者「や、やっぱり捨てるね、こんな廃棄物!」

暗黒騎士「いや、食うぞ」

勇者「え!?」

暗黒騎士「愛する女が作ったものを食う、これぞ男の願望!!」ガツガツ

勇者「ちょっやめ…」

暗黒騎士「美味い…最高だ、勇者」ギュウ

勇者「あ、暗黒騎士…///」


>その晩

勇者「すやすや」

暗黒騎士「ゲ、ゲフォッ」(吐血

猫耳「お前かっこいいよ…アホだけど」


ベタベタなメシマズネタでありました。

乙!
今回の萌えキャラは暗黒騎士だな
間違いない


勇者×暗黒騎手大好きだ!

乙、いいENDだ

おっつおっつ

スッキリしない…勇者と暗黒騎士がくっついたのに…
物語全てが完璧なハッピーエンドってわけにはいかないんだろうけど辛い!

魔王の娘から愛されドジっ子臭がする

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