【ラブライブ】パーフェクトまきちゃんクリスマス「Xmas・SP」 (53)

パーフェクトまきちゃんクリスマスとは、パーフェクトなまきちゃんのクリスマスである。

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パーフェクトまきちゃんは地球をスケッチしてみたくなった。

パーフェクトまきちゃんは考えた。どうすれば地球をスケッチできるだろう。

ロケットに乗って宇宙に行く。問題はその後だ。

宇宙は無重力なので、絵の具を使うことができない。

パーフェクトまきちゃんは考えた。宇宙でも絵の具を使う方法を考えた。

もしくは宇宙でも使える絵の具の開発を試みた。

何年もの歳月と莫大な費用をかければそんなことも可能だろう。



一方ワイルドりんは宇宙にクレヨンを持っていこうと思った。



――『μ’sと鉄のバベルの塔』より



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私の名前は西木野まき。

音ノ木坂学院一年生。知性あふれる超スーパー天才美少女よ。

この目は物事の本質を見極める。

この耳は真偽を聞き分ける。

この鼻はあらゆる物事の匂いを嗅ぐ。

この私は世界の財産。私が全て。私が掟。

唯一、私に弱点があるとすれば……そう。

くせっ毛なこと。

そんなパーフェクトなまきちゃんをみんなはこう呼ぶわ。



りん「パーフェクトまきちゃん」

まき「あら、どうしたの?ワイルドりん」

りん「もうすぐクリスマスだね」

まき「そうね」

りん「この時期はさ、特番なんかが多いよね」

まき「テレビの話?」

りん「うん、年末SP! とかやってるでしょ?」

まき「ええ。ドラマなんかも丁度終わる節だしね」

りん「そこでりんは疑問に思ったんだ」

まき「ふむ」



ワイルドりんは実に興味深い考察や、独自の視点からの疑問を持ったりする。

なので私は決して彼女の話をないがしろにしたりはしない。

私はワイルドりんを買っている。というのも私はかつてワイルドりんと激しい戦いを繰り広げた。

これが後にいう「PMMと32文字の戦い」なのだが、これはまたの機会に語るとしよう。

とにかく私はこの戦いを経てよりパーフェクトになった。

ワイルドりん含むμ’sのみんなとも絆を深めることができたと思っている。

ああ、そうだ。今はワイルドりんの話に耳を傾けなければ。

今しがた彼女の話をないがしろにはしないと言ったところだというのに。

りん「この年末SPとか、フィギュアスケートSPとかの、SPってなんだろう?」

まき「ふむ」

りん「普通にエスピーって読めばいいのかな?」

まき「それはスペシャルの略よ。ワイルドりん」

りん「なるほど。やっぱり何かのイニシャルだとは思っていたんだよ。SPのSはスペシャルのS……と。

じゃあPは何だろうね。スペシャル・ナントカだね」



そういうとワイルドりんは懐から可愛い猫をあしらったメモ帳を取り出し、何かを書き留めた。



まき「それはなに?」

りん「あっ、これはね! ふふふ。りんもパーフェクトまきちゃんに習ってメモを取ることにしたんだよ」

まき「それはとってもいいことだわ。どんなことを書いているの?」



ワイルドりんは嬉しそうに私にメモを見せてくれた。

表紙には大きな文字で「ワイルドりんち」と書かれていて、その下に小さく「ゃんメモ」。

おそらく大きく書きすぎて入りきらなくなったのね。ワイルドリンチなんて物騒だわ。

そんなことを考えなから私はワイルドりんのメモを開いた。

……が、大半はよくわからない落書きであった。

落書きというのはそのままで、メモなのに絵がたくさん書いてあった。

まき「ワイルドりんちゃんお絵描き帳に改名したほうがいいんじゃない?」

りん「それも悪くないね」



立体の放棄。さながらピカソのような絵がそのメモにはたくさんあった。

さすがワイルドりん。これはきっと数百年後には高い評価を受けているぞ。

もっとも、それまでこのメモが残っていれば話ではあるが。

……ページをめくると、次第に文字が姿を見せ始める。

「槍X」という文字がキリン(?)と北海道(?)の絵の間に申し訳なさそうに居座っていた。



りん「どう?」

まき「どうって……この槍エックスってなに?」

りん「それはエックスじゃなくて、バツだよ。マルバツのバツ」

まき「じゃあ槍バツってなに?」

りん「それはかよちんとお話してたときのものだね」

まき「マスターはなよと?」

りん「りんは矛盾について考えていたんだ」

まき「矛盾……」


以前、我がパーフェクトまきちゃんメモ(PMM)のワイルドりんの項に「矛盾撞着」と書き込んだことを思い出した。

りん「最強の槍と最強の盾のお話だよ」

まき「ええ。もちろん知っているわ。ちなみに槍ではなくて矛ね」

りん「そう! かよちんにもそう言われたんだ。『槍じゃなくて矛だよ。りんちゃん』って」

まき「それで槍X、ね」

りん「そうそう。そうだった。すっかり忘れてた。やっぱりメモしておいて正解だったにゃー」



この書き方はどう見てもバツじゃなくてエックスだけど……人の癖字にいちいち突っ込むのはやめておこう。



りん「さっきの話もメモしておいてよかったよ! じゃなきゃなんの話してたのか忘れるところだった」

まき「SPの話だったわね」

りん「そうそう。Pはなんだろうね? やっぱりパワーとかプレミアムとかかな?

スペシャル・プレミアム……うーん。マーベラスな響きだにゃ」

まき「そのことだけど、Pもスペシャルよ」

りん「え、どういうこと!?」

まき「specialの最初の二語をとってSPなの」

りん「えー! なんかそれって変だよ、まだセキュリティ・ポリスのほうがいいよ。

フィギュアスケート・スペシャルとか言われてもピンと来ないにゃー」

まき「フィギュアスケートのSPはショート・プログラムのことだけど」

りん「そっちは普通にイニシャルなの? ややこしい世の中だねえ……」

まき「そうかもしれない」

りん「うん。ショート・プログラムは納得だよ。でもスペシャルの略がSPってのはなんか納得いかないにゃ」

まき「マイケルのことをマイクって呼んだりするでしょ? 短縮形って考えれば自然よ」

りん「でもまきをマッキーって読んだり、えりをエリーチカって読んだりするよ? これは短縮どころか文字数が増えてるにゃ」

まき「それは単にニックネームってやつでしょ」

りん「じゃあその短縮形って、必ず最初の文字からとるの?」

まき「そうでもないわね。レベッカをベッキーと呼んだりするし。この場合最初のレが消えてしまったわ」

りん「消えたレはどこに行っちゃったの?」

まき「どこにも行ってないわよ。見えないけどレはベッキーのそばにいる」

りん「なるほど。レベッカはベッキーで、ベッキーの中にはレがいる……と。

つまりレベッカの中にはレがいるんだね」

まき「ええ。いるわね。見たまんま普通にいるわね」

りん「SPの中にも、見えないけどスペシャルがいるんだね」

まき「ええ。いるわね。逆にスペシャルの中にSPがいると言ってもいいわ」

りん「なるほどありがとう。りんは短縮形については理解したよ。

でも新たな疑問が生まれてしまったにゃ」

まき「どうぞ。なんでも答えてみせるわ。なにせ私はパーフェクトまきちゃんなのだから」

りん「略すと形そのものが変わってしまうものをりんは発見してしまったよ」

まき「ふむ」

りん「例えばクリスマス。普通に書くとクリスマスはCh……えっと」

まき「Christmas」

りん「それだよね。でも街中とかではよくXmasって書いてあるのを見かけるよ」

まき「ふむ」

りん「クリスがXに変わっちゃってるにゃー。果たしてこの中にはクリスが入っているのだろうか」

まき「そのエックスを数学とかで使うXと考えてみましょう」

りん「英語と数学の複合問題……りんにわかるかにゃ?」

まき「2X=4。Xの値は?」

りん「さすがにわかるよ。Xは2……だよね?」

まき「正解よ。では次の問題。Xmas= Christmas。Xは?」

りん「Christ?」

まき「正解。Christってクリスね。つまりXの中にクリスが入っているんじゃないの。

Xがクリスそのものなのよ」

りん「んー? なんか腑に落ちないよ」

まき「Xってのは何にでもなれるのよ」

りん「なんにでも? じゃあ神様にもなれるのかにゃー」

まき「ええ。なれるわよ。そもそもChristって神様のことだし」

りん「ええ!? イジワルで言ったのになれちゃうの!? Xってすごいんだね!」

まき「これでも納得いかないなら、マスターはなよを引き合いに出してもいいけど」

りん「かよちん?」

まき「ほら、それよ。『はなよ』と『かよ』は等しく『花陽』でしょ。

花は『はな』でもあり、『か』でもある。クリスも同じ」

りん「おー! なんとなくわかったにゃ」

有意義な議論を交わしたあと、私とワイルドりんはそれぞれ新たに得た疑問や知識をメモした。



P(パーフェクト)M(まきちゃん)M(メモ)



・レベッカ=ベッキー

消えたように見えるレはいつもベッキーと共にある。

こういう略し方をレベッカパターンと呼ぼう。

他にもSPパターン、クリスマスパターンがある。下記。



・SPパターン

SPのSはスペシャルのS。SPのPもスペシャルのP.



・クリスマスパターン

Xmas= Christmas

X  = Christ

X  =クリス



・・・・・



ワイルドりんち
ゃんメモ



槍X レベッカ



・・・・・

そんなメモで本当にわかるのか、と思ったが人のメモの書き方に突っ込むのはやめておこう。



りん「りんも賢くなれた気がするにゃー! 次のテストが楽しみだよ」



まき「そ、そうそれはよかったわ」

ほのか「えー! りんちゃんがテスト楽しみだなんて一体どうしたの!?」



そこに一番ややこしいタイミングでメトロノームほのか達がやってきた。



うみ「まさか、どこか具合が悪いのでは? りん」

ことり「熱とか、頭をぶつけたとか……」

りん「りんは元気だよ」

にこ「あのねぇりん、テスト勉強なんてやってる場合じゃないんだからね! ライブが近いのよ!」

のぞみ「そうやよりんちゃん。これからライブもクリスマスもあるっていうのに。

勉強なんてしてる場合じゃないよ」

えり「どういう理屈よそれ、ちゃんと勉強もしなくちゃダメよ」

はなよ「そういう話じゃないよね? りんちゃん」

りん「そうそう。さすがマスターかよちんはわかってるにゃ」

まき「でも確かに、もうすぐクリスマスね。楽しみ」

ほのか「へー? ま……パーフェクトまきちゃんがクリスマス楽しみなんてちょっと以外かも」

まき「なんでよ、いいでしょ別に」

ほのか「やあ、うん。いいことだよ。うん」

まき「みんなのおうちはクリスマスにどんなことをするの?」

えり「そうね! うちは日本の伝統的なクリスマスそのものよ」



日本の伝統的なクリスマス? なんだそれは。

私の知識欲が駆り立てられた。



えり「ケーキにロウソクを差して、それから怪談をしていくの。

それが一つ終わる度にロウソクを一つ吹き消してね……」

ことり「なんか違う伝統が……」

えり「そう。よくわかったわねことり。本当はこれ電灯を消してやるらしいんだけど、私は暗いのが嫌だから電灯をつけたままやるのよ」

ことり「へ、へえー」

えり「電灯が消えてる提でね。つまりそのときだけ我が家は電灯がついているけど真っ暗なのよ」

まき「うん……貴重なお話ありがとうスマートキューティエリー」

えり「どういたしまして」

まき「スパリゾートことりは?」

ことり「え、私? 私は別に……たくさんケーキとかを作るだけだよ」

まき「作るだけ?」

ことり「うん。でも作りすぎちゃって毎年冷凍してとっておくんだぁ。

そもそも、普段からよくケーキはつくるからね」

にこ「ふぅん」

ことり「それなのにまた作っちゃうから、うちの冷凍庫はいっつもクリスマスケーキでパンパンです」

にこ「ちょ、ちょっと分けてくれない?」

ことり「え、いいの? 在庫処分ができてうれしいなあ。にこちゃんはどんなクリスマスなの?」

にこ「別に、ごくふつーよ。みんなでケーキ食べて、それから妹たちにプレゼントを……」



一瞬にこちゃんが私の方をみた。いったいどうしたのか。



にこ「妹たちにプレゼントが届くのよ。サンタさんがきてね……」

ことり「わあ! ステキ!」

えり「ごく普通って、私みたいな?」

にこ「いや……悪いけど全然違うわ」

ほのか「私の家はねぇ……まず、ケーキにロウソクを立てるよ。歳の数だけ立てるよね」

まき「歳って誰の歳よ? っていうかソレ誕生日ケーキ……」

はなよ「クリスマスは神様の誕生日だからね」

りん「神様は何歳なの?」

はなよ「多分2014歳くらいじゃないかな?」

ほのか「そうなのか。でもさすがにそんなにロウソクを刺したらケーキが崩壊しちゃうね。

だからロウソクの数は毎年適当だよ。もしかしたら若返っちゃってるかも」

りん「ケーキにXの形になるようにロウソクを並べるといいよ。『好きな数を代入してください』ってね」

ほのか「おお……! すごいやりんちゃん!」

えり「なるほど。神様もサバを読みたいお年頃かもしれないしね……ってなんでよ」

うみ「それから『ハッピーバースデー神様』の歌を熱唱するんでしたっけ?」

ほのか「うん。最近はユッキー歌ってくれないから私のソロリサイタルだけど」

うみ「私は家柄もあって、クリスマスは特になにもありません。

……あ、ああでもサンタさんはきますよ。プレゼントは毎年頂いているんです」

まき「なんでサンタさんの話になると私の方を見るの?」

うみ「あーっ、いやー、あれ、そうでしたか?」

はなよ「あー! えっと、私はね! みんな聞いて私はね」

まき「なに? その感じだとマスターはなよは相当すごいクリスマスなのね!」

うみ「助かりました、はなよ……」

はなよ「なんと! 別に普通のクリスマスだよ!」

りん「えーっ! それはビックリだにゃー!」

はなよ「それもただの普通じゃないよ! 普通も普通、キングオブ普通です!」

まき「なるほど流石マスターはなよ。普通を極めるのもまた真理だわ」

はなよ「だよね! のぞみちゃんは?」

のぞみ「……え、ウチ?」

りん「そうにゃそうにゃ」

のぞみ「ウチは一人暮らしやから。普通にケーキ買って、食べて、終わりかな」

まき「え……それだけ?」

のぞみ「うん……」

まき「サンタさんは?」

のぞみ「こないよ」



そんな馬鹿な! しかしバットのぞみは確かめるように再度こう言うのだった。



のぞみ「ウチにはサンタさんはこないんよ」



・・・・・

・・・・・・・・・・



パーフェクトまきちゃんには夢がある。

それは立派なお医者さんになることだ。

それはもともと自分の夢だったか、誰かの夢だったかはもうわからない。

しかしそれは、今は間違いなくパーフェクトまきちゃんの夢だった。

パーフェクトまきちゃんは夢のために精進した。たくさんの複雑な何かを背負って夢を見た。



ワイルドりんちゃんも夢を見た。

しかし朝になるとどんな夢だったか忘れてしまった。



――『高坂流自己啓発! 「夢なき夢は夢じゃない」』より



・・・・・・・・・・

ある日のお昼休み、私はワイルドりんとマスターはなよとお弁当を食べていた。



まき「どうして、バットのぞみにはサンタさんがこないのかしら」

はなよ「それはある意味では簡単だけど、ある意味ではとても難しい問題だよ」

まき「マスターはなよはこの謎が解けているの?」

はなよ「うーん……」

まき「実はね、仮説はあるのよ」

りん「聞かせて欲しいにゃー」

まき「サンタさんっていうのはいい子のところにしかこないのよ。つまり……」

りん「えー? のぞみちゃんは悪い子じゃないよ」

まき「悪い子……」



――まきは悪い子だ。



これは私のメモにも書いていない、思い出。

私の人生で、一度だけサンタさんがこなかったことがあった。

……そんなことはどうでもよくて。



まき「そう。私もそう思う。だから困っているの」

はなよ「あわてんぼうのサンタクロースなんて歌があるから、もしかしたらサンタさんは間違ってしまっているのかも」

まき「サンタさんがミス? ありえないわ」

りん「それはどうかな」

まき「あらどうして?」

りん「そもそも、パーフェクトまきちゃんの元にサンタさんがやってくることが、りんには疑問だよ」

まき「どういうこと……? 私はパーフェクトなのに」

なにを隠そう、私がパーフェクトに拘る理由はサンタさんにあるのだ。

私は全知で、知らぬことなどなにもないパーフェクトだ。

つまりそれはそれはもう、ものすごいいい子というわけだ。

私はサンタさんにきて欲しくて、パーフェクトで有り続けるのだ。

なのに、ワイルドりんはそんな私の元にサンタさんがくるのはおかしいと言う。



りん「そうだよ。まきちゃんはパーフェクトだから、サンタさんがくるのはおかしいと思う」

まき「なにを言っているの?」

りん「まきちゃんがパーフェクトなら、サンタさん以上の存在ということになる。

なんでパーフェクトまきちゃんは頂点のはずなのにサンタさんからプレゼントなんかもらっちゃってるんだろう」

まき「な……な……」



私がパーフェクトでなければ、サンタさんはこない。

しかし私がパーフェクトなら、サンタさんからプレゼントを貰うはずかないのだ。

この世に私以上の存在などあってはならないのだから。

まさに矛盾……パラドクス……。

りん「パーフェクトまきちゃんはサンタさんに会ったことあるの?」

まき「え、ええもちろん。小さい頃に」

りん「あっ……そっか。そうか、うん」

まき「なによ」

りん「なんでもないにゃー!」



なにを焦っているのかワイルドりんはバタバタと教室から出て行った。

きっとお弁当の骨付きチキンを手で持って食べたから手を洗いに言ったのだろう。



はなよ「でも確かに、それなら納得が行くかも」

まき「なにが?」

はなよ「とりあえず、まきちゃんがパーフェクトだと仮定します」

まき「それは揺るぎない事実よ」

はなよ「まきちゃんはこの世で頂点の全知全能ということね。サンタさん以上の。

逆に言えば、サンタさんは完璧じゃないってことになる。

完璧じゃないってことは、無限回数の試行の中で必ずミスをするってこと。

サンタさんが間違えて悪い子のところにプレゼントをあげたり、いい子なのにあげなかったりしてしまう可能性が出てくる」

まき「ふむ……」

はなよ「そう考えれば、のぞみちゃんのもとにサンタさんがこない理由も説明がつくような」

まき「バットのぞみはいい子なのに、サンタさんが間違えてプレゼントをあげていないってこと? だとしたらそれってあんまりだわ」

はなよ「かわいそうだよね」

まき「だから私はバットのぞみにサンタさんがくるようにしてあげたいと思う」

はなよ「え?」

まき「決めた。私がサンタさんのフリをしてプレゼントをあげるの」

はなよ「それって……」

まき「大変心苦しいけど、このままじゃバットのぞみがあまりにも不憫だわ。

大丈夫。サンタさんはいる。あなたにもサンタさんがくるんだって、教えてあげたいの」



それから、私は先ほどワイルドりんに指摘された矛盾を解消しなければならない。

私はこの理論にサンタさんパラドクス(SP)と名づけた。

なんとかクリスマスまでにSPを解決しなければ。

なぜなら、私はパーフェクトまきちゃんである……はずなのだから。

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ディナー中にナイフを落としてしまいました。さてどうしましょう?

パーフェクトまきちゃんはお行儀よくナプキンで口元を拭いて、それから落ち着いてウェイターを呼びナイフを拾ってもらいました。

そして新しいナイフを用意してもらうと、そこでようやくお食事を再開しました。



一方ワイルドりんちゃんはすぐさま自分でナイフを拾いました。



――『ラブニコ?ディナーのマナー』より



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りん「りんは気づいてしまったよ。パーフェクトまきちゃんの矛盾に」

えり「……皮肉なものね。サンタさんのために全知で有り続けるまきが、サンタさんの正体を知らないなんて」

うみ「そのせいで矛盾が生じてしまったのですね」

のぞみ「これ、ウチのせいかなぁ……」

にこ「いっそ、本当のことぶっちゃけちゃえば?」

のぞみ「それはダメ! 絶対ダメやって!」



まき「あら、みんななんのお話しているの?」

えり「あー、今度のライブの話よ。パーフェクトまきも、ちゃんと気合入れて頑張りましょう!」

まき「そうね……そっちも頑張らないと」



えり「ここでこの話はマズイわ」

のぞみ「そうやね」

りん「じゃあ、りんのおうちくる?」

えり「お邪魔じゃないかしら?」

りん「別にかまわないよ」

にこ「はいはい、じゃありんの家で作戦会議よ」

あとから聞いた話だが、あのときみんなは私が抱える矛盾について話合っていたそうだ。

それからワイルドりん宅で私の矛盾を解消する方法を考えてくれたらしい。

私は実に良い友を持ったものだ。それを私の眼が許してくれるのならば、感涙したところだ。



えり「お邪魔します……」

りん「どうぞどうぞー!」

のぞみ「わーっははは、りんちゃんのお部屋かわいい!」

りん「にゃ、にゃーん……」

にこ「別にお構いなく、ね」

りん「お構うよ。今飲み物持ってくる!」

のぞみ「あらあら」

えり「……」

にこ「どうしたの? えり」

えり「りんの本棚、漫画が全てひっくり返って収納されてる」

のぞみ「ほんとや、何かのおまじないかな?」

えり「いいえ。これはおそらく逆立ちしながら漫画を読むためね」

にこ「なんじゃそりゃ」

えり「以前聞いたことがあるの。りんは休日は逆立ちをしながら過ごすって」

のぞみ「すこぶるスピリチュアルやね」

りん「おまたせー!」

えり「流石ねりん。見事だわ」

りん「そんなに喉渇いてたの?」

えり「これよこの本棚っ!」

りん「ああ、逆立ち用にカスタムしてあるんだよ。それ」

えり「どうなの? 使用感は」

りん「チッチッチ、えりちゃんわかってないなあ」

えり「なんですって?」

りん「人間には手が二本しかないんだよ」

えり「……まさか!」

りん「そのまさか。逆立ちをしたら漫画は読むことができないのさ!」

えり「ふふふ、わかったわ。つまりあなたは普通に漫画を読むのね。

普通に漫画を読むのと、逆立ちしながら逆向きの漫画を読むのは同義であると……」

にこ「ちょっとのぞみ、この二人なんの話してるの?」

のぞみ「ウチにもさっぱり」

りん「ところが、これに関してはちょっと違うんだよ」

えり「えっどういうこと?」

りん「りんが逆立ちしていようがしていまいが、りんは逆立ちしていることになっているんだから、やっぱり両手は使えないんだよ」

にこ「ヤバい……いよいよ何言ってんだかわかんない」

えり「なるほど」

にこ「なるほどなの!?」

りん「りんの結論はこうだよ。一人では逆立ちしながら漫画を読むことができない」

のぞみ「あたりまえやん」

えり「では、どうすれば逆立ちしながら漫画を読むことが?」

りん「手が足りないなら、増やせばいいんだ。

りんが普通に座って、正面にいるかよちんが漫画をめくってくれるんだよ」

えり「すばらしいわ」

にこ「普通に読めばいいのに」

えり「わかってないのねにこ。ミロのビーナスって知ってる?」

にこ「ああ、両手がない像ね。知ってる」

りん「りんも知ってるよ! 前にまきちゃんが美術品の資料みたいなの見せてくれたにゃ」

えり「あれはもともと、両手があったのよ。ところがいろいろあって両手がとれてしまったの」

のぞみ「もったいなーい! 壊れた状態でそんな有名な作品なんやから、手が残ってたらすごかったんやないの?」

えり「私はそうは考えないわ。ミロのビーナスは両手を失ったからこその価値なのよ。

原型のままだったら、今ほどの評価は得られなかったはず」

のぞみ「確かに。両手が残ってたらただのどこにでもある有象無象やね。像だけに有象無像なんちゃって」

えり「今のりんの話も同じよ。逆立ちをして両手を失うことで、りんは新たな価値を得ている。いうなれば逆立ちした時こそ、星空りんの完成なのよ」

りん「えー? あー、そうそう。そんな感じ!」

えり「事実、りんは逆立ちすることではなよの手を借りることができる。

すばらしいわ。ミロのビーナスから見る世界平和の形ね」

にこ「逆立ちしたら、武器は持てないからね」

のぞみ「いいやん! 世界中の人が逆立ちしたら戦争はなくなるんやね」



これもあとから聞いた話だが、その作戦会議は脱線に次ぐ脱線によってあまり有意義なものにはならなったそうだ。

・・・・・・・・・・



世界中の人間を二種類に分けるとしたら、あなたはどう分けますか?

「パッと浮かんだのは『男と女』かしら。でもそんなのひねりがない。

そうね『豊かな人と貧しい人』? 『善い人と悪い人』……?」



ひとしきり考えた後、パーフェクトまきちゃんはその問いにこう答えた。「『幸せな人と不幸な人』」。



世界中の人間を二種類に分けるとしたら、あなたはどう分けますか?

その問いにワイルドりんちゃんはこう答えた。

「『自分とそれ以外』」



――『HSIインタビュー・μ’s編』より



・・・・・・・・・・

えり「のぞみが欲しがっているもの?」

まき「そう。何か心当たりはない?」



バットのぞみにプレゼントを贈ることにした私は欲しいものリサーチをすることにした。

まず一緒にいることの多いスマートキューティエリーに聞いてみる。



えり「そうねえ、何か言っていたかしら……。でもどうして?」

まき「なんとなくだけど。あの子ってなんかあんまり、ほら、欲しいものとかなさそう」

えり「確かにね。純正の水晶玉とかあげたら喜ぶんじゃない? 今使っているのはガラス玉だから」

まき「なるほど」



そんなもの用意できるわけがない。



にこ「えー? のぞみが欲しそうなものねえ……」

まき「些細なことでもいいから、なにか言ってなかった?」

にこ「そういえばこの間……焼肉が食べたいなーって言ってたような」

まき「なるほど」



朝起きて枕元に生肉が置いてあったら彼女はどう思うだろうか。

トナカイの肉片だと勘違いするだろうか。



りん「のぞみちゃんはねえ、きっと何か曰くつきのものがいいよ」

まき「例えば?」

りん「所有者が必ず一ヶ月以内に不幸な目に遭っている日本人形とか」

まき「なるほど」



そんなものをプレゼントするわけにはいかない。

きっとバットのぞみは一生サンタさんを恨むだろう。

ほのか「のぞみちゃんが欲しいもの? じゃあみんなでのぞみちゃんちでパーティしようよ!」

まき「なるほど」



なんでそうなるの? 話聞いてた?



ことり「そうだねえ、のぞみちゃん一人暮らしって言ってたし、実用的なものの方が喜ばれるかも」

まき「なるほど」



ここに来てようやくまともなアイデアが出てきた気がする。



うみ「粋な計らいですね。のぞみが一人暮らしであると聞いてみんなで押しかけてしまおうと。

私はあなたのそういう不器用な優しさ、嫌いじゃありませんよ」

まき「べ、別にそんなんじゃっ」



ってあれ?



ほのか「えりちゃんはどう?」

えり「もちろん大丈夫よ。でも本人がイエスと言うかしら」

はなよ「きっと言います! だってクリスマスはイエスの生まれた日ですから!」

りん「そっか、ああ楽しみだにゃ。のぞみちゃんち行くの初めてにゃー」

ことり「じゃあクリスマスは予定を空けておくね」

うみ「えっことり、何か予定が入る予定が?」

ことり「ううん。別に予定が入る予定はない予定だけど」

にこ「にこも、そう遅くならないならね!」



あれ……いつの間にかバットのぞみの家でパーティをすることになっている。

マズイ。私はサンタさんに扮して枕元の靴下にプレゼントを入れなければならないのに。

のぞみ「みんなが、ウチのおうちに来てくれるの?」

まき「あっ」



いつの間にか本人も話を聞いていた。




えり「ええ。どうかしら? のぞみ」

のぞみ「……ええの?」

にこ「何言ってるのよ、こっちはもうその気になってるんだから。今更ダメなんてなしよ」

のぞみ「そっか、そっか……ありがとう」



その時私は、『あ、頑張らなきゃ』と思った。

バットのぞみは笑顔を見せた。

しかしその笑顔には……なにかもの悲しさを感じた。

ずっと一人暮らしだった彼女だから、その理由はわかる。




まき「ねえ、あなたは何が欲しいの?」

のぞみ「え、クリスマスプレゼントの話? それやったらウチにはサンタさんはこないって言ったやん?

……あ、もしかしてウチにプレゼントくれようとしてるん? だったらそういう気遣いは……」

まき「違う違う。そんなんだからよ。私あなたにサンタさんがこない理由わかっちゃったわ」

のぞみ「へ?」

まき「そうやって、『何も欲しくない』って言ってきたんでしょ! あなたサンタさんにきて欲しいって思ったことある?

そんなんじゃくるものもこないわよ」

のぞみ「……」

まき「私が断言してあげる。今年あなたのものにサンタさんはくる。絶対くる。

だからあなたの欲しいものを言いなさい。きっとサンタさんはそれ聞いてくれるから」

のぞみ「アハハ……。そうかあ。欲しいものを言わんかったからこなかったんやね。

そうかあ……。もし、もしも……本当にサンタさんがきてくれるなら、プレゼントがもらえるなら……」



なにかあったかいものが欲しいかな。

一人暮らしのお家は寂しくて、冷たいから。

・・・・・・・・・・



「あの丘まで競争しよう」



パーフェクトまきちゃんは考えた。どうすれば速く走れるようになるだろう。

クラウチングスタート、ピッチ走法、トルソー。

腕を振って、足を回転させて、それから……。

パーフェクトまきちゃんは速く走るための理論をつくった。

それからフォームやメンタル、あらゆる分野で研究を重ねた。



ワイルドりんちゃんは既に走り終えていた。



――『猫でもわかる体育理論』より



・・・・・・・・・

はなよ「どうするの? パーフェクトまきちゃん」

まき「今考えているところ」



というのも、クリスマス当日はバットのぞみ宅でパーティをすることになった。

しかし私はサンタさんに扮し、プレゼントを届けなくてはならない。

作戦の難易度があがってしまった。



まき「私がもう一人いればよかったんだけど」

はなよ「パーフェクトまきちゃんが増えるのは無理だけど、まきちゃんの腕を増やす方法ならあるよ」

まき「え……なにそれきもちわるい」



私は千手観音や阿修羅像を連想した。

しかし、はなよはもったくもってその逆、腕のない存在を口にした。



はなよ「パーフェクトまきちゃんがミロのビーナスになればいい」

まき「どういうこと?」

はなよ「りんちゃんがね、ミロのビーナスは『みんなで手を取り合いって協力しましょう』って言ってるって言ってた。

ミロのビーナス本人は腕がないのにね! ふふ」

・・・・・・・・・・・



雨が降ってきた。

パーフェクトまきちゃんは仕方がないので濡れて帰った。



ワイルドりんちゃんは雨宿りをした。

雨があがるまでマスターはなよと他愛のない会話をして待った。



メトロノームほのかは雨を止めた。



――『反・愛してるばんざーい運動』より



・・・・・・・・・・

授業中のことだ。ふとワイルドりんの手元に目がいった。

珍しく真剣にノートに写している……。そんな姿が本当に珍しかったのでよく見てみる。

よくよく見てみる。とそれはノートではなかったことがわかった。

そう。ワイルドりんちゃんメモだった。

ノートじゃないじゃない!

私は心の中でツッコミを入れたつもりだった。

「なにか言いましたか? 西木野さん」

先生にそう言われて気が付く。あ、今のが声に出てしまっていたか。



まき「なんでもありません……すみません……」



完全に八つ当たりであることは自分でもわかるが、ワイルドりんの方を睨んだ。

するとワイルドりんはメモに何やら書いて私に見せてきた。



「みなで!」



みないで! と書きたかったのだろうが、焦って「い」が抜けている。

しかもほかのメモに連なっているため、謎の文章が出来上がってしまった。



「槍Xレベッカみなで!」



訳がわからない。しかも、以前はなかったメモが追加されている。



『ミロのビーナス「みんなで手を取り合って協力しましょう」←取る手がないにゃー』




一体何のメモなんだ。

私は声を出して笑いそうになるのを必死にこらえた。

・・・・・・・・・・




100点を取らない子は悪い子だ!

悪い子のところにはサンタさんはこないぞ!



私は悪い子であるか、パーフェクトであるかを選ばなければならなかった。

つまり私はパーフェクトにならざるを得なかった。



――ある少女の独白




・・・・・・・・・・

いよいよクリスマスが近いというのに、私はバットのぞみの言う「あったかいもの」を見つけられずにいた。

なにをプレゼントすれば……。



そんなとき、それは唐突に訪れた。




りん「まきちゃん、りんはずっと考えていたことがあるんだ」

まき「あらどうしたのワイルドりん? ……待って。私はパーフェクトまきよ」

りん「そうだね。でもりんはあなたのことを『まきちゃん』と呼ぶことにしたよ」

まき「ちょっと、パーフェクトが消えてしまっている」

りん「ううん。まきちゃんはまきちゃんだけど、パーフェクトじゃないわけではなくて……えっと」

まき「私はパーフェクトまきよ」

りん「ううん。まきちゃん。パーフェクトは消えてしまったけど、どこかに行ってしまったわけではないんだよ」

まき「……」

りん「レベッカのことを、ベッキーって呼ぶけど、レは消えたんじゃなくてすぐそばにいるんだよね。

まきちゃんもね、まきちゃんとかマッキーとか呼ばれてもね、パーフェクトはそこにあるんだよ。

『まきちゃん』の中にパーフェクトは含まれているんだよ」

まき「レベッカパターンね……」

りん「まきちゃんはパーフェクトまきちゃんなんて呼び方されなくたって、パーフェクトだよ」

まき「それは……」

りん「だからもういいと思うんだ。まきちゃんはまきちゃんでいいと思う。だからねまきちゃん、お願いがあるんだ。

だからね、りんのことも『りん』って呼んで欲しいな」



確かにその理屈は間違っていない。

そうか。私はパーフェクトまきちゃんなんて呼び方されなくてもいいのか。

まきちゃんの中にパーフェクトは含まれていたのか。

つまりパーフェクトまきちゃんという呼び方は、朝の朝礼とか、馬の馬糞とか、頭痛が痛い、とか……。

アンドソーオンよ。

ああ、なぜだろう。なぜだか心があったかい。



まき「わかった。ありがとう。……りん」

・・・・・



りん「……ということがあってワイルドりんは、りんと呼ばれることになったよ。

でもワイルドがどこかに行ってしまったわけではないよ」

えり「あら? パーフェクトまきをパーフェクトじゃなくして矛盾から解放しようって作戦じゃなかった?」

りん「そうだった!」

にこ「なにやってんのよ……それじゃまきになってもパーフェクトは残ってるじゃない」

えり「パーフェクトなまきがサンタさんを知らないという矛盾……どうすればいいのかしら」

はなよ「本当にまきちゃんはサンタさんを知らないのかな?」

えり「どういうこと?」



はなよ「私たちは、自分の常識を社会の常識だと思ってしまうものだよね。

逆もまた然り。社会の常識を自分の常識にしてしまう。

例えばだけど、社会の常識とまきちゃんの常識に違いがあったとき、私たちの常識はどっちだろう」

えり「どちらでもなく、私たちの常識は私たちの常識じゃない?」

はなよ「私たちは私たちの常識を疑うことをしない」

りん「……? ……なに言ってるのかよちん?」

はなよ「自分の常識を疑わず、違いがあった場合まず私たちは相手の常識を疑う。

それが今回の矛盾の原因だよ」

えり「何が言いたいの?」

はなよ「みんなまきちゃんが間違っているって前提で考えている。まきちゃんはパーフェクトであるはずなのにって」

えり「ええ……それが矛盾の始まりよ」

はなよ「前提が違うんじゃないかな……。まきちゃんが正しいとしたら。いや、きっとまきちゃんは正しいんだよ。

なにせまきちゃんはパーフェクトなんですから」

にこ「ちょっと待ってよ、話が見えない」

はなよ「常識的に、サンタさんはいるのかな? いないのかな?

大人の人に聞くと、みんないるって答えるよ。

子供に聞くと、みんなサンタさんからもらったって答えるよ。

サンタさんはいるのかな? いないのかな?」

・・・・・・・・・・



訳がわからない? 言ってることがわからない?

それはその言葉に答えを求めているから。

違うでしょ。その言葉は疑問を、問いかけをしているのだから。



――ライブラリーまきちゃん



・・・・・・・・・・

まき「はなよ」

はなよ「どうしたのまきちゃん? のぞみちゃんが欲しい『あったかいもの』わかった?」

まき「ええ。わかった。でもね、これって私一人じゃ用意できないものなのよ」

はなよ「そっかぁ……どうするの?」

まき「どうすればいいのかしら」

はなよ「パーフェクトまきちゃんメモにもその答えは載っていない?」

まき「……わからない」

はなよ「どうしても、答えが見当たらないときは……他の何かに、答えが載っているかもね」

まき「他のなにか……?」



ワイルドりんちゃんメモ……。



まき「りんっ!」

りん「にゃ?」

まき「どうしても引っかかることがあるの。あなたのメモを見せてくれない?」

りん「……? いいけど」



りんに許可を得てワイルドりんちゃんメモを開く。

そう。あの謎の文と化したメモだ。



槍Xレベッカみなで!





私のパーフェクトまきちゃんメモと照らし合わせる。

X=クリス

レベッカ=ベッキー

これをこの文に代入すると……



槍クリスベッキーみなで!



遣り繰りすべき皆で!



やっぱりそうだ。私一人では成し得ないことなら、私は誰かの手を借りればいい。

九人のミロの女神(ビーナス)は、一人一人は腕を持たないが、なぜか集まると18……それ以上の腕を持つのだ。

私にはこんなにたくさんの腕があるじゃないか。猫の手を借りるまでもない。

私は見えざる神の手を持っている。

・・・・・・・・・・




それでもやっぱり訳がわからない。



――『パーフェクトまきちゃんメモ』より



・・・・・・・・・・

クリスマス当日。



のぞみ「えー……本日は……お集まりいただき……」

にこ「えーい、まどろっこしーい!」

ほのか「メリークリスマース!」

のぞみ「あっ……」

えり「いいからいいからっ。ね? のぞみ」

りん「そうにゃそうにゃー! さあみんなケーキを食べるよ」

のぞみ「んもうっ! ウチの家やんっ!」

まき「だから誰も気を使わないのよ」



それはそれは盛大なパーティだった。

ことりが持ってきた大量のケーキに、みんなでロウソクをさした。

その数なんと2014本くらい! 正確には数えてないけど、きっとそのくらいある。

ひとつのケーキに収まらないなら、ケーキを増やせばいい。

そしてそのケーキに火を灯すと、みんなが今年一年あったことや、来年の抱負を語ったりする。

一人話し終わると、一本ロウソクの火を消した。もちろん、電灯が消えている提で。

そしてみんなで「ハッピーバースデー神様」の歌を熱唱した。

まき「なんでこんなにいい天気なのかしら」



ベランダに出ると、季節に似合わず綺麗な青空が広がっていた。




りん「まきちゃん! 寒いにゃー! 閉めて閉めて」

まき「もう……あら?」



ベランダに置いてある白い大きな袋を持って部屋に戻る。



りん「えー? なにそれー?」

にこ「も、もしかしてサンタさんじゃなーいー?」

ほのか「そうだー! そうに違いないー」




のぞみ「は?」




えり「開けてみましょう」

ことり「きっと、のぞみちゃんへのプレゼントだよ」

うみ「違いありません。ほらのぞみ、こちらに」




のぞみ「はあ」




しぶしぶ白い袋を開けるのぞみ。

そのとき一斉にゴクッと喉を鳴らす音が聞こえた気がした。



のぞみ「これは……」



毛糸の帽子。

耳あて。

マフラー。

セーター。

腹巻。

膝掛け。

手袋。

靴下。



全八種(シークレット含め九種)。

私がパーフェクトであるかどうかなんてのは、今日ばかりは些細な問題だ。

ただ、間違いなく今日はパーフェクトなクリスマスになった。



まき「ほらのぞみ、サンタさんはきたでしょ?」

のぞみ「うん、きたね。サンタさんはきたよ」

まき「ね? みんな。サンタさんはいるわよね」



みんな笑って頷いてくれた。

あんなに疑っていた、もしくは信じていなかったみんなが!



のぞみ「ああ……あったかいなあ。こんなにあったかいものは他にないよ」



プレゼントを抱きしめたのぞみは、まだプレゼントを着てはいないわけだが。





パーフェクトまきちゃんクリスマス「Xmas・SP」



終劇

※この物語はμ’sのみんなが訳のわからない話をしているだけです。

考えるとより訳がわからなくなります。推奨しません。

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