サンタ「おーい童貞!プレゼントだぞ~♪」(39)

J( 'ー`)し「あらサンタちゃん。今年もご苦労さま」ガラッ

サンタ「いえっ、これも仕事っスから」

J( 'ー`)し「あらあら、若いのに偉いわぁ」

サンタ「いえいえ♪ところで、タカシ君います?」

J( 'ー`)し「ごめんなさいねぇ。実は今日いないのよ」

サンタ「えっ、クリスマスなのに?」

J( 'ー`)し「そうなのよ。なんか用事があるから帰って
     これないって」

サンタ「そうっすか…」シュン

J( 'ー`)し「そうだ!サンタちゃん、悪いんだけど見てきて
     くれないかしら?」

サンタ「見て来るって……タカシ君をですか?」

J( 'ー`)し「ええ。もしかしてあの子道に迷ってるかもしれないし」

サンタ「うーん…」

J( 'ー`)し「お願いっ♪」

サンタ「むー、他ならぬカーチャンさんの頼みなら仕方ないっすね」

J( 'ー`)し「ありがと♪」

サンタ「それでタカシ君はどこに行ったんですか?」

J( 'ー`)し「待って。今地図を渡すから……はいコレ」ガサッ

サンタ「どもっ」

J( 'ー`)し「じゃ、あの子よろしくね?」

サンタ「はいっ!ちゃんとプレゼント渡して家まで連れて帰ってきます」

J( 'ー`)し「期待してるわ♪」

サンタ「あいっ」


トコトコトコ


サンタ「えーっと場所は……と」ガサッ

サンタ「げっ、意外と遠い?」

サンタ「タカシの奴いったいこんなトコまで何しに…」

サンタ「まさか彼女とクリスマスパーティーを!?」

サンタ「……いや、ない。ないって!」

サンタ「あの根暗で引き籠りなタカシに彼女なんか…」

サンタ「…………でも」

サンタ「もし……もし、タカシが彼女といたらあたしどうすれば…」

サンタ「どんな顔してプレゼント渡せば良いんだろ…」

サンタ「……」

サンタ「だ~~~!だからないって!」

サンタ「そうそう!あんなの好きになる奴なんてこの世であたしくら……」

サンタ「ちっ、ちがうもん!別に好きなんかじゃ!」

サンタ「むぅぅぅぅぅぅ!」

サンタ「いいもん!別にタカシがドコで何してようが全然いいもん!」

サンタ「どうせ見苦しい童貞どもと闇鍋でも囲んで泣きながら『うめえ、うめえ』
    って頬張ってんのよ!」

サンタ「そうに決まってるもん!」

    ヒソヒソ ネーアノオネエチャン サッキカラヒトリゴト シッ ミチャイケマセン

サンタ「あ……」

サンタ「~~~!!!」

サンタ「ふんっ!タカシの馬鹿っ!」

そして30分後。


サンタ「え~っと、ここであってるよね?」

           ガサッ

サンタ「うん、間違いない」

サンタ「でもここってどう見ても……」

           シャランラーン♪

サンタ「ラブホ、なんですけど…」

サンタ「いや、でもやっぱり住所は……ん?」

サンタ「なんかこの地図、よく見たら部屋番号が書いてある?」

サンタ「0721号室…」

サンタ「ココにタカシが!?」

サンタ「ど、どうしよう…」

サンタ「もし彼女と性なる夜を過ごしていたら…」

サンタ「……」

サンタ「考えても仕方ないか」

サンタ「突撃あるのみっ!」

彼女はそれだけ言うと、ホテルに足を踏み入れた。

途中フロントの係員に止められたが、「あたしはサンタだから!」
と、大きな声で自己紹介したら意外にもすんなり通してくれた。

便利だね、サンタって。

とにかく、彼女はもう止められない。

エレベーターに颯爽と駆け込む姿はまさしく、世紀の大泥棒
ルパンを彷彿とさせる身のこなしだった。

そしてついに!
彼女はタカシの待つであろう0721号室に辿り着く。

「ちーっす。お届けものでーっす」

彼女は部屋の中を窺いながらノックした。
ポップな、しかしどこか沈んだ声のトーンのまま。

やはり口では強がりを言っても、胸中穏やかではないのだろう。

彼女の沈んだ声のトーンからも、その表情からもそれを読み取る
ことはたやすい。タカシの事が気になって仕方ないのだ。

無理もない。

彼女とタカシは幼稚園に入る前からのご近所付き合い、所謂
「幼馴染」という奴だった。

しかし、幼馴染とは言っても彼女たちのそれは漫画やゲームに
出て来るような腐れ縁の友達付き合いなんかでは決してなく、
ただ毎年、クリスマスに彼女がタカシにプレゼントを渡しに行く
だけというシンプルなものだった。

それ以外の関係は一切なかった。

だからなのだろう。

今までこんな気持ちにならなかったのは。

だからなのだろう。

いつしかサンタとプレゼントを待つだけの子供という間柄で
満足してしまったのは。

しかし、だからと言ってそのことで彼女を責めるのは酷である。

なぜなら……。
なぜなら、プレゼントは子供にしか渡せない。

もしタカシと彼女が恋に落ち、関係を持ってしまったら!?
もう彼女はタカシの前に姿を現す事が出来ない。

タカシが『子供』じゃなくなるから!!!

だから彼女は、今までタカシにその思いを打ち明ける事は
出来なかったのだ。

「…………」

しかし、それもこうなってしまってはいよいよ同じか。
ラブホテルの一室にタカシが居るという時点で答えは出ている
ようなものだ。

もう、彼は子供じゃないのかもしれない。

「ねえ、タカシ。聞こえる?あたしの声」

彼女はドアに向かって声を掛ける。

これが最後かもしれないから。
これでもうサヨナラかもしれないから。だから……。

「あたしさ。本当はあんたのこと好きだったんだ……」

「ずっとずっと、ず~~~っと大好きだった」

「あんたは知らないかもしれないけどさ。あたしが初めてあんたに
 プレゼント渡しに行った時からずっと……」

「でも、もうサヨナラだね。タカシ」

彼女は言った。
頬には涙が伝っている。

「タカシ……あたし、あんたを好きになって良かった」

そうして、彼女は部屋のドアを開けた。
タカシに最後のプレゼントを渡しに行く為に。

「…………えっ?」

しかし、彼女の目に飛び込んできたのはさっきまで自分が想像、
いや妄想していたものとはまるで違う光景だった。

タカシは縛られて……縛られて、一人悶え苦しんでいた。

「ちょ?あんた何やってんの?」

慌てて駆け寄るサンタ。

「ぷはっ!?はー、はー、はー?」

口を塞いでいるガムテープを外してやると、タカシは大きく
息を吐いた。

「し、死ぬかと思ったぁぁぁぁ……」

半泣きである。

「ねぇ……」

「あ、あんがとなぁ。マジでもうダメかと思ったよ」

何が何だか分からない。

「ちょっと聞いて良いかな?」

「おう、なんでもどうぞ。でも出来たら縄を解いてからにして
 ほしかったり」

「黙れ」

「あ、はい……」

「はぁぁぁぁぁぁ……」

彼女は思いっきり溜息を吐いて、それから

「ここで何してたの?」

と、聞いた。

しかしそれに対するタカシの答えは曖昧というか

「あ、あぁ実は俺もよく分からないんだ。家で漫画読んでたと
 思ったら気ぃ失って気が付いたらココに……」

といった、良く分からないものだった。

「本当?」

「信じてくれよぅ。俺だって被害者だぜ?」

サンタは顎に手を当て、考える仕草を見せる。

「となると、考えられるのは……あっ!」

だが考えるまでもなかった。

「もしかして、カーチャンさんが仕組んだの、コレ!?」

答えは初めから分かり切っていた。こんなの手の込んだ誘拐、
実行するのはあいつしかいない。

「でもだったらなんで……」

そこまで考えが及んだ所でサンタは理解に苦しんだ。

カーチャンはタカシが子供じゃなくなったら、あたしとはもう
会えなくなるのも分かっている筈。

だったらなんで?
もしかしてあたしがタカシにとって邪魔だったから?

いや、いくらなんでも……。

「それよりサンタ。よくここが分かったね」

「ああ、うん。あんたのお母さんから地図貰ったから……」

「ふーん。あっ、それよりさ。今日は……」

「分かってる。だからあたしがいるんでしょ?」

「へへっ」

サンタは取りあえずこの事は一旦胸にしまって置くことにした。
後で考えよう。

それよりも、こうして今年もタカシにプレゼントを渡せた事だし、
来年もまだ渡せそうなのは間違いない。

彼女にとってはそれだけで十分だった。

サンタは肩に掛けている大きな袋に手を突っ込んだ。

この袋、実に便利な構造になっており、プレゼントを渡そうとする
相手が欲しいものを、どこからともなく届けてくれるという優れもの
なのだ。

「えーっと」

「わくわく」

タカシは目を輝かせている。

先程まで死にかけて、現在もまだ縛られていて、しかもここはまだ
ラブホテルの一室だというのにプレゼントをせがむという、何とも
楽天的な男である。

けれどここで想定外の出来事が。

「あれ?」

「どしたの?」

「なんか、届かない」

「え~~~?」

「おかしいな~」

「そんな、楽しみにしてたのに……」

それはあたしも同じよとサンタは言いたかった。
毎年この為だけに存在していると言っても過言ではないのだ。

しかも彼と会えるのはプレゼントを渡すこの瞬間のみ。

「ちょっとあんた!変なもんお願いしてないでしょうねぇ!」

サンタはタカシに厳しい口調で言う。

「そんなっ!普通のお願いだよ!」

「ホント―?」

「本当だって!俺は彼女が欲しいってお願いしただけ!」

「えっ……?」

一瞬頭が真っ白になりかけるが……。

ああ、そっか。そういう事か。

事ここに至って、サンタはようやっと全てを理解したのだった。

つまるところ、こういう事である。

タカシは彼女が欲しいと願っていた。
カーチャンはそれを知っていた。

サンタはタカシが好きだった。
カーチャンはそれを知っていた。

そして、サンタはタカシが大人になってしまうと、もう会えなくなる。
カーチャンはそれも知っていた。

ならばタカシとサンタをカップルとして成立させるためには
どうすればいいのか?

簡単だ。

タカシにサンタを彼女にしたいという気持ちがあれば良いのだ。

サンタの持つ袋とは中々に優秀で、子供の願いを一番適した形で叶えて
くれる。

例えば最新のゲーム機が欲しいと願ったならば、本当に今しがた工場で
造られたばかりのゲーム機が袋から出て来るように。

つまり、漠然と『彼女』と言っても、タカシの最も好むであろう、タイプ
であろう『彼女』が出てくるのだ。

なら、タカシがサンタのような『彼女』が欲しいと願ったならば、やはり
それはその通りになるだろう。

もしかしたらこんな事をしなくても、タカシはサンタが好きだったかも
しれないし、そこまで意識していなくてもやっぱりサンタが彼女として
認められる可能性もあった。

だが、しかしそれはあくまでも可能性の話で、絶対とは言えない。
だから、カーチャンはこんな誘拐を企てたのだ。

「まったく。やってくれるわ♪」

「?」

頭に疑問符をのっけているタカシを尻目に、彼女は笑った。

なるほど。
確かにこれならあたしはずっとタカシと一緒にいられる。

なんてったって、あたしはタカシに『プレゼント』される彼女なのだ。
プレゼントが勝手になくなっちゃったりしたら、それはもうプレゼント
とは呼べない。

「ふへへ……」

彼女は笑った。
そして同時に感謝した。
おあつらえ向きに、ラブホテルに誘拐するなんて気が効いてる。

彼女はもう我慢する必要がないのだと悟ると、おもむろにセクシーポーズ
を取り始めた。

「何やってんだよ?」

タカシはサンタに言う。

「決まってんでしょ。セクシーポーズよ」

サンタは答えた。
もう止まりそうにない。

彼女は真っ赤なミニスカートをたくし上げ、タカシの頭の上で息を荒げる。

「おまっ、見えるぞ?」

「見せてんのよ」

タカシは縛られたままの恰好で必死に視線をスカートの中へ向けようと
頑張る。

サンタはその光景にこれまでにない興奮を覚えていた。

今までどんなにこの時を待ち望んだか。
彼と一つに繋がって愛し合い、埋めき合い、重なり合いたかった事か。

サンタはそのままゆっくりと腰を落とすとタカシの頭を股で優しく
包み込んだ。

ハアハアと荒ぶっている呼吸音が部屋中に響き渡る。

ミニスカートの中では、タカシの頭がもぞもぞと動き回っていた。
おそらくパンツのその下が気になって仕方ないのだろう。

先程から鼻と舌が敏感な部分に交互に当たっている。

サンタは嬉しそうにはにかむと、タカシのズボンのチャックをジジジと
降ろした。

ブルンと立派なモノが飛び出す。

「真っ赤なキットッオの~包茎ちんぽ~♪」

彼女は楽しげに歌い、そしてそれを……。

サンタ「……なあ」

タカシ「なんだよ?良いところなのに」

サンタ「お前せっかくのクリスマスにこんな事ばっか考えてたの?」

タカシ「うっせ、良いじゃん!夢見たって!」

サンタ「はぁ~」

タカシ「なんだよ」

サンタ「童貞」ボソッ

タカシ「どどどど童貞ちゃうわ!」

サンタ「つーかさ」

タカシ「おう」

サンタ「サンタって基本男だからな?」

タカシ「……」

サンタ「なあ、分かってる?男なんだよ、オートーコー」

タカシ「う、うっせ!知ってらあ、それくらい」

サンタ「じゃあなんでこんな美少女を妄想してるわけ?」

タカシ「良いじゃん!夢があるってのはいいことだろ?」

サンタ「20にもなって夢ばっかり追いかけてるのはどうかと」

タカシ「あっ、お前!言ってはいけないことを!」

サンタ「つーかやめてくんない?幼馴染でサンタってこの設定
    もろ俺じゃん。もし俺が女だったらお前こんなことする
    予定だったの?」

タカシ「だまれ!男のサンタに用はねえ!」

サンタ「おいおい酷い事言うなよ、全国的に見たってサンタは白ひげ
    の爺さんだろうがよ」

タカシ「うっさい!青髭のおめーには言われたくねえよ!」

サンタ「こらこら、青髭じゃないって。俺はアゴ髭のサンタだからな?」

タカシ「どっちも似たようなもんだろ!」

サンタ「いや~、これでもサンタって結構いるんだぜ?勿論青髭のサンタ
    だって…」

タカシ「そんな話は聞きたくねー!俺はミニスカで美少女のサンタちゃん
    が良いの!」

サンタ「まったく、やれやれだぜ…」

タカシ「それよりさぁ」

サンタ「あんだよ」

タカシ「今年はくれねえの?プレゼント」

サンタ「アホ。もう大人だろ」

タカシ「でも欲しいものは欲しい」

サンタ「仕方ねえなぁ」ゴソゴソ

タカシ「おっ、なになに?」

サンタ「ふひひひひひ…」

タカシ「ちょ、なにその邪悪な笑い…」

サンタ「いやナニ、お前もそろそろ大人の階段登っても良い頃かもな
    と思って」ウイィィィィン

タカシ「えっ、ちょ!?ナニそれ?ナニそのウネウネした奴!?」

タカシ「刺さないよね?まさかとは思うけどそれ刺さないよね?」

サンタ「フヒヒヒヒヒ…」

タカシ「あ、あんさん。それはあかんて!あかん言うて……アッーーーーーーーーー!!!」

サンタ「みんなも、クリスマスにはご用心だぜっ♪」

タカシ「アッーーーーーーーーー!!!」


おわり

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